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網膜静脈分枝閉塞症に対するレーザー治療の抗 VEGF治療としての役割

2022年1月31日 月曜日

網膜静脈分枝閉塞症に対するレーザー治療の抗VEGF治療としての役割TheRoleofMacularLaserSurgeryasanAnti-VEGFTreatmentforBranchRetinalVeinOcculusion村田敏規*はじめに網膜静脈分枝閉塞症(branchretinalveinocclusion:BRVO)におけるレーザー治療の目的は二つある.一つ目は無灌流領域を凝固し,新生血管に続発する硝子体出血と網膜.離を予防することであり,二つ目は黄斑浮腫治療で抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬(用語解説参照)投与が頻回になった場合に,無灌流領域を凝固してCVEGF産生を低下させ,抗CVEGF薬からの離脱を図ることである.CI新生血管の形成による硝子体出血と網膜.離の予防BRVOでは無灌流領域で産生されるCVEGFにより網膜新生血管が形成され,慢性期に硝子体出血や網膜.離の原因となる症例が少なくない1).図1のように初診時に軟性白斑が著明なCBRVOは虚血が強く(図1a),虚血細胞のCVEGFの過剰産生により網膜新生血管が生じて,増殖膜を伴う網膜.離が起きる(図1b).この症例では,静脈閉塞部位では網膜の菲薄が高度であり,増殖膜だけを切除できないので,広範な網膜切除を行い復位を得た(図1c).光干渉断層血管撮影(opticalCcoherencetomographyCangiography:OCTA)(用語解説参照)のCB-scanCwithC.owsignalsをみると,血流がない(赤い点がない領域)網膜は著明に菲薄化していて,境界部から新生血管が硝子体に伸びている(図1d).ここに硝子体牽引がかかると,硝子体出血の原因となる.本症例のように網膜が菲薄化していると,血管がきれるより先に網膜裂孔が形成され(図1b)網膜.離が生じる.硝子体出血や網膜.離が起きた症例だけ硝子体手術するほうが効率的であるとする欧米の考え方も一理あるが,本症例のような重篤な視力障害に至る患者を減らすためには,BRVOの無灌流領域への予防的なレーザーを,病変を発見次第,全例に施行すべきである.CII中心窩周囲の毛細血管が保たれている症例はcapillarydropoutへのレーザーにより抗VEGF薬を離脱できる上耳側静脈のCBRVOの症例を提示する(図2a).蛍光眼底造影(図2b)で出血範囲に無灌流領域(capillarydropout)が確認され,傍中心窩の上耳側毛細血管に漏出が強い.黄斑Cmapでは同部位に白と赤で示される網膜肥厚があり(図2c),Bスキャンでも上半分網膜に網膜内浮腫がみられる(図2d).抗CVEGF薬を硝子体内注射しても繰り返し再発し,1年間でC7回抗CVEGF薬硝子体内注射を必要としたが,幸い視力は(1.0)に保たれた.蛍光眼底造影とCOCTAで確認されるCcapillaryCdrop-outの網膜神経細胞には酸素が十分に供給されない.虚血細胞によるCVEGFの過剰産生を抑制する目的でCshortpulselaserを施行した(図2e).Shortpulselaser(0.03秒,50Cμm,150.250CmW)は経時的に凝固班が拡大しないので,アーケード内の虚血部位を凝固するときは,*ToshinoriMurata:信州大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕村田敏規:〒390-8621長野県松本市旭C3-1-1信州大学医学部眼科学教室C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(57)C57図1網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の晩期合併症(増殖膜形成に伴う網膜.離)a:虚血のサインである軟性白斑が目立つ.レーザーは施行されなかった.Cb:1年後.新生血管にかかった硝子体牽引で,網膜裂孔が形成され(),強固な増殖膜形成()を伴う網膜.離.白線化した血管が,この部位が閉塞静脈による無灌流領域であることを示す().c:増殖膜を切除除去する過程で,菲薄化した網膜ごと切除した().白線化した血管から,ここが増殖膜があった位置であることが確認できる().Cd:OCTのCB-scanCwithC.owsingals.赤い点で示される血流シグナル(.owsingnal)がない右半分が,BRVOで血流が低下した範囲で,著明に網膜が非薄化している.VEGFが過剰発現される虚血網膜に,新生血管が発芽している().この新生血管に硝子体牽引がかかり,断裂して硝子体出血と,非薄化した網膜に裂孔が形成され網膜.離が生じた.図2頻回の抗VEGF薬硝子体内注射をcapillarydropoutへのshortpulselaserで離脱できた症例a:上耳側静脈のBRVO.Cb:蛍光眼底造影.出血範囲に無灌流領域(capillarydropout)が形成されている.正常に保たれている中心窩近傍の毛細血管がもっとも漏出が強い.Cc:OCTmapで白い部分が500Cμmを越える黄斑浮腫を示す.Cd:OCTBスキャン.上方半分に中心窩に届く黄斑浮腫がある().e:OCTAは毛細血管を観察可能なので,中心窩周囲の毛細血管がC360°完全に保たれていることを確認できる.漏出で覆われないので,capillaryCdrop-outも蛍光眼底造影よりも明瞭に観察できる(の間).Cf:蛍光眼底造影(b)とCOCTA(e)でCcapillarydropoutが確認された部位に,凝固班が拡大しないCshortCpulseClaserとよばれる凝固条件(0.03秒,50Cμm,150.250CmW)でレーザー施行.Cg:蛍光眼底造影.黄斑部のCcapillarydropoutへのCshortCpulselaserの結果,中心窩毛細血管からの漏出が著明に減少している.この結果,黄斑浮腫の再発が止まり,抗CVEGF薬を離脱できた.図3中心窩周囲の毛細血管が閉塞し,毛細血管瘤など漏出点が形成され,抗VEGF薬を離脱できない症例a:上耳側静脈のCBRVO.1年間でC6回,抗CVEGF薬硝子体内注射を受け,視力は(1.0)に保たれた.Cb:蛍光眼底造影(早期像).無灌流領域(capillarydropout)が中心窩に及び,中心窩に拡張した毛細血管と毛細血管瘤()が形成されている.後期像では著明な漏出がみられる.Cc:OCTAではCcapillaryCdropoutが中心窩まで届いていることが明瞭に描出される.拡張した毛細血管と毛細血管瘤()が観察される.Cd:Capillarydropoutと正常血管の境界部に漏出に伴う浮腫が観察され,とくに中心窩近傍の拡張した毛細血管と毛細血管瘤が形成された部位に,黄斑浮腫の再発を繰り返す.■用語解説■血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfac-tor:VEGF):2019年ノーベル生理学医学賞を受賞したChypoxiaCinduciblefactorにより産生が誘導される.虚血細胞の生存のために,血漿を既存の血管から漏出させ酸素を供給する.これが黄斑浮腫の原因となる.さらに,新生血管を誘導するが,これが硝子体出血や牽引性網膜.離の原因となる.抗CVEGF薬は硝子体内に注射することで,VEGFが誘導する黄斑浮腫や新生血管を抑制する.光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA):赤血球の動きをCOCTで検出し,これを三次元的につなぎ合わせて線を引くことで,網膜などの血管を造影剤なしで描出することができる.

網膜静脈閉塞症に対する薬物治療

2022年1月31日 月曜日

網膜静脈閉塞症に対する薬物治療MedicalTherapyforRetinalVeinOcclusion永里大祐*はじめに網膜静脈閉塞症(retinalveinocclusion:RVO)(図1)治療の歴史をひもとくと,おもに網膜中心静脈閉塞症(centralretinalveinocclusion:CRVO)に対して1950年代から行われていた抗凝固療法1)に始まり,血栓溶解療法2)や,高張浸透圧薬療法3),血漿交換療法4)が知られている.そして網膜静脈分枝閉塞症(branchretinalveinocclusion:BRVO)において1984年にBVOStudygroupが,3カ月以上持続する矯正視力が0.5未満で,かつ傍中心窩毛細血管網が正常なBRVOに対する格子状光凝固術による治療を報告した5).しかし,この報告には,比較的視力が良好な症例や,強い.胞状黄斑浮腫や傍中心窩毛細血管網の閉塞などを含む重症例が含まれていなかった.そして,1995年にCVOStudygroupが,CRVOに伴う黄斑浮腫(macularedema:ME)に対する格子状光凝固術による治療を報告した6).しかし,この報告では,レーザー治療によって蛍光眼底造影検査で認められる蛍光漏出は有意に改善するものの,視力の有意な改善は認めなかった.また,格子状光凝固は網膜に不可逆的な障害をもたらすため,BRVO,CRVOに伴うMEを消失,減少させ,視機能の改善を目的としている現在のRVO治療を考慮すると,格子状光凝固術単独治療がRVO治療の第一選択になることはない.MEは,網膜静脈閉塞および網膜出血後の低酸素誘発性毛細血管透過性の結果であることが推定されており7),よって現在は下記に記載するさまざまな治療に併用して施行されている.2000年代に入り,RVOに伴うME(図2)に対するトリアムシノロン8,9)やデキサメサゾン10)の硝子体内投与の報告があった.結果の詳細は後述するが,非虚血型のCRVOに対して,トリアムシノロン硝子体内投与が,またCRVOとBRVO両方に対してデキサメサゾン硝子体内投与が有効であることが示された.また,同時期に硝子体手術の技術,機器の著しい進歩に伴って,硝子体手術がより小切開で施行できるようになった.黄斑部への外科的アプローチが比較的容易になったため,CRVO,BRVOによって硝子体出血を発症した場合のみならず,硝子体出血を伴わない単純なMEに対しても後部硝子体.離や内境界膜.離,放射状視神経乳頭切開を含む硝子体手術(図3,4)が近年施行されている.しかし,2021年現在,BRVOとCRVOを含むRVOに伴うMEの治療のメインが,2010年前半に承認されたラニビズマブやアフリベルセプトなどの抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の硝子体内注射であることに異論はないであろう.本稿では抗VEGF療法の代表的な研究を中心に,日本で行われているRVOに対する薬物療法の現状について述べる.Iコルチコステロイド硝子体内投与21世紀の初頭,BRVO,CRVOに伴うMEに対して,毛細血管透過性を低下させることとVEGF発現を阻害*DaisukeNagasato:ツカザキ病院眼科〔別刷請求先〕永里大祐:〒671-1227兵庫県姫路市網干区和久68-1ツカザキ病院眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(47)47図1超広角眼底画像における正常画像とBRVO画像,CRVO画像(典型例)a:正常画像.b:BRVO(下方)画像.c:CRVO画像.図2BRVO画像と同画像の黄斑部の縦切りのOCT画像黄斑部の網膜厚の肥厚と.胞様黄斑浮腫,および漿液性網膜.離を認める.図3半側CRVOの超広角眼底画像,造影検査画像,OCT画像(59歳,男性)半年前に脳梗塞を発症した.矯正視力(0.1).下方の網膜出血と,それに伴う.胞様黄斑浮腫,漿液性網膜.離を認める.後部硝子体.離は完全に起こっていない.a:超広角眼底画像.b:造影検査画像.c:OCT画像.図4図3の症例に対する硝子体手術後4カ月の超広角眼底画像とOCT画像硝子体手術によって後部硝子体.離を完全に作製し,内境界膜.離も施行している.矯正視力(1.0p)であった.a:超広角眼底画像.b:OCT画像.薬の投与によってC6カ月目までにはほとんどの症例で軽快した.CII抗VEGF薬硝子体内投与現在,CRVO,BRVOに伴うCMEに対して世界的に標準治療となっている抗CVEGF薬硝子体内投与(図5~8)であるが,実臨床において最初にその効果を調べた研究が,2010年のCKingeらによるCROCCstudy(aCRan-domizedCStudyCComparingCRanibizumabCtoCShamCinCPatientsCwithCMECSecondaryCtoCRVO)である13).CRVO-MEの患者をラニビズマブ投与群と偽薬投与群に分け,比較検討が行われた.結果は偽薬群と比較してラニビズマブ投与群では,3回以上の初期注射(4.3C±0.9)がC80%の患者に必要であったが,視力の改善とOCTによる黄斑浮腫の減少を認めた.32例で行われたこの報告以降,CRVOのみならずCBRVOを含んだ大規模な研究が世界中で施行された.ここでは代表的な研究を取りあげる.C1.CRVO.MEにおける代表的研究CRVO-MEの治療において,ラニビズマブを用いたCRUISEstudyがまずあげられる14).この研究では,CRVO-MEに対してラニビズマブ投与群(0.3Cmg,0.5Cmg)の有効性をプラセボ投与群と比較検討した.結果はラニビズマブC0.3Cmg,0.5Cmg投与群はどちらもC6カ月後矯正視力,黄斑浮腫は,プラセボ投与群よりも有意に改善した.この報告に続いてCCamC-pochiaroらは,CRUISEstudyのC12カ月の結果を報告した15).このより長い期間で治療,経過観察された研究では,ラニビズマブ治療後に矯正視力がC20/40未満またはCRTが250Cμmを超える場合,患者はCprorenata(PRN)ベースでC0.5Cmgのラニビズマブで継続治療するレジメンで行われた.結果はラニビズマブ投与群では,平均C14文字の改善を認めプラセボ投与群と比較して有意に改善していた.よって,CRVO-MEに対するC0.5Cmgのラニビズマブ硝子体内投与は効果的であることが示された.それ以降CCRUISEstudy完了症例を対象に行われたCHORIZONCtrial16)において治療開始後C2年目(13.24カ月)もラニビズマブの有効性と安全性が示され,続くCRETAINCstudy17)においても,48カ月後にもラニビズマブ投与における視力改善維持が有意にあることも報告された.一方,ヒトCIgGFCフラグメントとの融合蛋白であるアフリベルセプトを用いた研究としてCCOPERNICUSstudyがある18).この研究においてアフリベルセプト硝子体内投与群は対照群と比較して,6カ月後の矯正視力とCCRTは有意に改善した.また,CRVO診療,治療においてしばしば遭遇する新生血管(図9)の発生率も有意に低かった.続いてCBrownら19)は,7.12カ月目までC4週間ごとにアフリベルセプトC2CmgのCPRN投与を行うCCOPERNICUS試験のC12カ月の結果を報告した.この研究において初めのC6カ月の期間にアフリベルセプトが投与されず,6カ月以降に投与可能に分けられた対照群のC12カ月後に平均C4文字の改善しか認めなかったが,アフリベルセプト硝子体内投与群では平均C16文字の改善と著明な改善を認めた.その後C24カ月の経過観察を行ったCCOPERNICUSCstudy20),およびC6.18カ月の経過観察が行われたCGALLILEOCstudy21.23)が報告され,CRVO-MEに対するアフリベルセプトの有効性が報告されている.とくに,COPERNICUSCstudy,CGAL-LILEOstudyはCstudyCdesignにおいて治療群と偽注射群(24Cor52週後に偽注射群にもアフリベルセプトを投与)に分けて研究を行っており,どちらも発症直後に治療介入した群(治療群)のほうが,偽注射群よりも視力改善の程度がよかった.筆者らはC24カ月以上経過観察できたC150症例のCRVO-MEを最終視力からC2群〔視力不良群(20/200未満)と対照群(20/200以上)〕に分類し,抗CVEGF薬硝子体投与後の視力不良群の因子を調べる研究を行い,高齢,初診時視力不良,内頸動脈疾患と糖尿病網膜症が併存していることが重要なリスク要因であることを報告した24).長期経過を含むこれらの多数の研究結果から,現在のCRVO-MEに対する治療の第一選択は抗CVEGF薬硝子体内注射となり,かつ発症後早期に施行することが肝要であることが示された.50あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022(50)図5CRVOにおける抗VEGF薬硝子体内投与前後のベースラインの小数視力別の最高矯正視力(logMAR換算値)の推移(日本における多施設研究)発症時の矯正視力が比較的良好または不良であっても,その数値にかかわらず,12カ月後の矯正視力はベースラインと比較して有意に改善している.Cabd図6CRVO(非虚血型)に対するラニビズマブ投与後の経過(代表症例,58歳,男性)a:発症時,.胞様黄斑浮腫およびごく軽度の漿液性網膜.離を認める.矯正視力(0.3).b:導入期にアフリベルセプト硝子体内投与をC3回施行した.その後.胞様黄斑浮腫,漿液性網膜.離は消失した.最終投与後C1カ月での矯正視力(1.2).c:最終投与後C3カ月後に患者は視力低下を自覚した.再度.胞様黄斑浮腫を認めた.矯正視力(0.9).患者と相談してアフリベルセプト硝子体内投与を追加でC1回施行した.Cd:追加投与後,.胞様黄斑浮腫は消失した.その後C24カ月の経過観察中に一度も黄斑浮腫の再発を認めなかった.矯正視力(1.2).c0.000.680.850.200.610.400.350.49MAR0.600.15log0.800.220.5以上1.000.3以上0.5未満1.200.040.1以上0.3未満0.1未満1.40開始時3M6M12M18M24M観察時期図7BRVOにおける抗VEGF薬硝子体内投与前後のベースラインの小数視力別の最高矯正視力(logMAR換算値)の推移(日本における多施設研究)発症時の矯正視力が不良な例を含めて,12カ月後の矯正視力はベースラインと比較して有意に改善している.Cab図8BRVO(maculartype)に対するラニビズマブ投与後の経過(代表症例,73歳,女性)a:発症時,.胞様黄斑浮腫を認める.矯正視力(0.4).b:導入期にラニビズマブ硝子体内投与をC3回施行した.その後.胞様黄斑浮腫は消失し,24カ月の経過観察中に一度も黄斑浮腫の再発を認めなかった.矯正視力(1.2).図9CRVOに続発した虹彩新生血管を示す左眼の前眼部写真(41歳,女性)虹彩に多数の新生血管を認める.左眼圧はC62CmmHgであった.文献1)Du.I,FallsH,LinmanJ:Anticoagulanttherapyinocclu-sivevasculardiseaseoftheretina.ArchOphthalmolC46:C601-617,C19512)KohnerCEM,CPettitCJE,CHamiltonCAMCetal:StreptokinaseCincentralretinalveinocclusion:acontrolledclinicaltrial.BrMedJ1:550-553,C19763)HansenLL,DanisevskisP,ArntzHRetal:ArandomizedprospectiveCstudyConCtreatmentCofCcentralCretinalCveinCocclusionCbyCisololaemicChaemodilutionCandCphotocoagula-tion.BrJOphthalmol69:108-116,C19854)DoddsEM,LowderCY,FosterRE:Plasmapheresistreat-mentCofCcentralCretinalCveinCocclusionCinCaCyoungCadult.CAmJOphthalmolC119:519-521,C19955)TheCBranchCVeinCOcclusionStudyCGroup:ArgonClaserCphotocoagulationformacularedemainbranchveinocclu-sion.AmJOphthalmolC98:271-282,C19846)TheCentralVeinOcclusionStudyGroupMreport:Eval-uationofgridpatternphotocoagulationformacularedemaincentralveinocclusion.OphthalmologyC102:1425-1433,C19957)IpMS:IntravitrealCtriamcinoloneCforCtheCtreatmentCofCmacularCedemaCassociatedCwithCcentralCretinalCveinCocclu-sion.JAMAOphtalmologyC122:1131,C20048)IpCMS,CScottCIU,CVanVeldhuisenCPCCetal;SCORECStudyCResearchGroup:ACrandomizedCtrialCcomparingCtheCe.cacyCandCsafetyCofCintravitrealCtriamcinoloneCwithCobservationCtoCtreatCvisionClossCassociatedCwithCmacularCedemaCsecondaryCtoCcentralCretinalCveinocclusion:theCStandardCCareCvsCCorticosteroidCforCRetinalCVeinCOcclu-sion(SCORE)studyCreportC5.CArchCOphthalmolC127:C1101-1114,C20099)ScottIU,IpMS,VanVeldhuisenPCetal;SCOREStudyResearchGroup:ACrandomizedCtrialCcomparingCtheCe.cacyandsafetyofintravitrealtriamcinolonewithstan-dardCcareCtoCtreatCvisionClossCassociatedCwithCmacularCEdemaCsecondaryCtoCbranchCretinalCveinocclusion:theCStandardCCareCvsCCorticosteroidCforCRetinalCVeinCOcclu-sion(SCORE)studyCreportC6.CArchCOphthalmolC127:C1115-1128,C200910)HallerCJA,CBandelloCF,CBelfortCRCJrCetal;OZURDEXCGENEVAStudyCGroup:Randomized,Csham-controlledCtrialCofCdexamethasoneCintravitrealCimplantCinCpatientsCwithCmacularCedemaCdueCtoCretinalCveinCocclusion.COph-thalmologyC117:1134-1146,C201011)IpMS,ScottIU,VanVeldhuisenPCetal:ArandomizedtrialCcomparingCtheCe.cacyCandCsafetyCofCintravitrealCtri-amcinolonewithobservationtotreatvisionlossassociatedwithCmacularCedemaCsecondaryCtoCcentralCretinalCveinocclusion:theCstandardCcareCvsCcorticosteroidCforCretinalveinocclusion(SCORE)studyreport5.JAMAOphtalmol-ogyC127:1101-1114,C200912)HallerJA,BandelloF,BelfortRetal:Randomized,sham-controlledCtrialCofCdexamethasoneCintravitrealCimplantCinCpatientswithmacularedemaduetoretinalveinocclusion.Ophthalmology117:1134-1146,Ce3,C201013)KingeCB,CStordahlCPB,CForsaaCVCetal:E.cacyCofCranibi-zumabinpatientswithmacularedemasecondarytocen-tralCretinalCveinocclusion:ResultsCfromCtheCsham-con-trolledCROCCCStudy.CAmCJCOphthalmolC150:310-314,C201014)BrownDM,CampochiaroPA,SinghRPetal:Ranibizum-abformacularedemafollowingcentralretinalveinocclu-sion.CSix-monthCprimaryCendCpointCresultsCofCaCphaseCIIICstudy.OphthalmologyC117:1124-1133,Ce1,C201015)CampochiaroCPA,CBrownCDM,CAwhCCCCetal:SustainedCbene.tsCfromCranibizumabCforCmacularCedemaCfollowingCcentralCretinalCveinocclusion:twelve-monthCoutcomesCofCaphaseIIIstudy.COphthalmologyC118:2041-2049,C201116)HeierJS,CampochiaroPA,YauLetal:RanibizumabformacularCedemaCdueCtoCretinalCveinocclusions:long-termCfollow-upintheHORIZONtrial.Ophthalmology119:802-809,C201217)CampochiaroCPA,CSophieCR,CPearlmanCJCetal;RETAINStudyCGroup:Long-termCoutcomesCinCpatientsCwithCreti-nalCveinCocclusionCtreatedCwithranibizumab:theCRETAINstudy.OphthalmologyC121:209-219,C201418)BoyerCD,CHeierCJ,CBrownCDMCetal:VascularCendothelialCgrowthfactorTrap-EyeformacularedemasecondarytocentralCretinalCveinocclusion:Six-monthCresultsCofCtheCphaseC3CCOPERNICUSCStudy.COphthalmologyC119:1024-1032,C201219)BrownCDM,CHeierCJS,CClarkCWLCetal:IntravitrealCa.iberceptinjectionformacularedemasecondarytocen-tralretinalveinocclusion:1-yearresultsfromthephase3CCOPERNICUSCstudy.CAmCJCOphthalmolC155:429-437,Ce7,C201320)HeierCJS,CClarkCWL,CBoyerCDSCetal:IntravitrealCa.iberceptinjectionformacularedemaduetocentralreti-nalCveinocclusion:two-yearCresultsCfromCtheCCOPERNI-CUSstudy.OphthalmologyC121:1414-1420,C201421)HolzCFG,CRoiderCJ,COguraCYCetal:VEGFCtrap-eyeCforCmacularCoedemaCsecondaryCtoCcentralCretinalCveinCocclu-sion:6-monthCresultsCofCtheCphaseCIIICGALILEOCstudy.CBrJOphthalmolC97:278-284,C201322)KorobelnikCJF,CHolzCFG,CRoiderCJCetal:IntravitrealCa.iberceptCinjectionCforCmacularCedemaCresultingCfromCcentralCretinalCveinocclusion:one-yearCresultsCofCtheCphaseC3CGALILEOCstudy.COphthalmologyC121:202-208,C201423)OguraCY,CRoiderCJ,CKorobelnikCJFCetal:IntravitrealCa.iberceptformacularedemasecondarytocentralretinalveinocclusion:18-monthCresultsCofCtheCphaseC3CGALI-LEOstudy.AmJOphthalmolC158:1032-1038,C201424)NagasatoD,MuraokaY,OsakaRetal:Factorsassociat-54あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022(54)

網膜静脈閉塞症の病態

2022年1月31日 月曜日

網膜静脈閉塞症の病態RetinalVeinOcclusionPathologeis錦織奈緒美*村岡勇貴*I網膜静脈閉塞症とは網膜静脈閉塞症(retinalveinocclusion:RVO)は,糖尿病網膜症についで頻度の高い網膜循環疾患で,わが国におけるRVOの有病率は約2.0%である.高齢,高血圧・動脈硬化がリスク因子である1).RVOは閉塞部位によって,網膜中心静脈閉塞症(cen-tralRVO:CRVO)と網膜静脈分枝閉塞症(branchRVO:BRVO)に分類される.CRVOの臨床病型には,半側網膜中心静脈閉塞症(hemi-CRVO)や切迫型CRVO(impendingCRVO)とよばれるものがある.網膜中心静脈は通常1本であるが,2本存在することもあるとされ,そのうちの1本が視神経乳頭内で閉塞するとhemi-CRVOとなる.また,網膜出血や静脈蛇行を認めるが,黄斑浮腫をきたさないような閉塞機転が軽度と考えられるものをimpendingCRVOとして区別することがある.BRVOの発症は,中高年以上がメインであるが,CRVOでは,中高年者とともに若年者においてもときどきみられ,そのような患者には,抗リン脂質抗体症候群,過粘稠症候群,全身の炎症性疾患などの合併が背景にある場合がある(表1).BRVOの臨床病型は,原因動静脈交叉部の場所により,網膜循環障害が黄斑部に限局されるmacularBRVOと,黄斑部や血管アーケードを超えて周辺網膜まで及ぶmajorBRVOに分類される.RVOにおける静脈内の血栓形成は,CRVOは視神経乳頭篩状板付近で,BRVOは原因網膜動静脈交叉部で生じることが多い.BRVOでは,動脈壁の硬化によって静脈が圧排されることで血栓形成が生じ,発症に至ると考えられていた.しかし,筆者らが以前行った光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)によるBRVOの原因交叉部の観察では,静脈の内腔は完全には狭窄していなかった.原因動静脈交叉部において動脈が表層を通過するarterialovercrossingのタイプのBRVOでは静脈が動脈の深層を迂回することで静脈の内腔が保たれていた.一方,原因交叉部で静脈が表層を通過するvenousover-crossingのタイプでは静脈が内境界膜と動脈壁の狭いスペースで高度に圧迫されていることがわかった(図1)2).このように,交叉する血管の位置関係によってBRVO発生機序がやや異なると推測している.OCT上,原因交叉部に血栓形成が認められる場合は,交叉部下流(視神経乳頭側)で検出されることがほとんどで,静脈の形態変化によって生じる交叉部下流での血流障害(乱流)が発症に関与する機序を推測している(図1)2).また,venousovercrossingのタイプのBRVOでは,arterialovercrossingのタイプのBRVOよりも交叉部での責任静脈の閉塞の程度が強く,末梢の網膜無血管領域(nonperfusionarea:NPA)が広範囲であり,網膜新生血管が発生しやすいこともわかってきた3)(図2)14).従来の画像診断では,venousovercrossingの交叉部では,静脈の狭細化の程度が強いためか,その血管形*NaomiNishigori&YukiMuraoka:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕錦織奈緒美:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(39)39表1網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の比較BRVOCRVO頻度4.4/1,000人0.8/1,000人好発年齢高齢者に多い高齢者に多いが,若年者にもみられる併存疾患高血圧,動脈硬化などの生活習慣病高血圧,動脈硬化などの生活習慣病,血栓性疾患,炎症性疾患(若年者に多い)ab図1BRVOに伴う静脈内の血栓a:病変交叉部において動脈が静脈の表層を走行するBRVO.b:病変交叉部において静脈が動脈の表層を走行するBRVO.フルオレセイン蛍光眼底造影写真における緑矢印はOCT断面の方向を示す.いずれの交叉パターンにおいても,静脈内の血栓は原因交叉部からその下流(視神経側)におもに認められる.(文献2より改変して転載)ab図2Arterialovercrossingとvenousovercrossingの蛍光眼底造影写真a:病変交叉部において動脈が静脈の上を走行するBRVO(arterialovercrossing).b:病変交叉部において静脈が動脈の上を走行するBRVO(venousovercrossing).蛍光眼底造影写真では,arterialovercrossingタイプはNPAが目立たない一方で,venousovercrossingタイプの症例は初診時に比して,1年後にNPAの著明な拡大を認める.(文献14より改変して転載)b図3BRVOに併発する黄斑浮腫のOCTa:急性期のCRVOに伴う.胞様腔は網膜のあらゆる層に形成されるが,中心窩下の大きな.胞様腔と中心窩外の内顆粒層・外網状層の比較的小さな.胞様腔が特徴的である.Cb:慢性期のRVOに伴う黄斑浮腫は,急性期のものに比べ浮腫の範囲は限局的である.ab図4BRVOに伴う後極の網膜出血の眼底写真と蛍光眼底造影写真a:後極の刷毛状出血.同部の網膜循環は比較的良好に保たれている.b:後極の斑状出血.同部には網膜無灌流領域を認める.(文献C8より改変して転載)図5BRVOに認める網膜下出血a:急性期の黄斑部カラー写真.網膜下出血は,中心窩の中心にベタッとした暗赤色領域として認められる.Cb:急性期の黄斑部OCT.網膜下出血はCOCTでみると,中心窩の網膜下腔に不定形の高反射像を呈す.(文献C10より改変して転載)図6BRVOに伴う硬性白斑a:亜急性期CBRVO症例の眼底写真と蛍光眼底造影写真.硬性白斑を伴っている.はCOCTの断面方向を示す.Cb:眼底写真とフルオレセイン蛍光眼底造影写真のコンポジット写真.硬性白斑はCBRVO領域を取り囲むように健常網膜との境界に集積している.c:OCTにおいて,hyperre.ectivefociは網膜のあらゆる層に認められるが,健常網膜の外網状層に沿って集積している.(文献C11より改変して転載)図7慢性期のBRVOa:慢性期CBRVO症例の眼底写真.中心窩に硬性白斑を伴っている.はCOCTの断面方向を示す.Cb:慢性期CBRVO症例のフルオレセイン蛍光眼底造影写真.黄斑部上側と耳側にフルオレセインの漏出を伴う血管瘤を認め,硬性白斑の供給源と考えられる.c:OCTでは硬性白斑は中心窩の網膜下にも集積している.abc図8黄斑浮腫を多く認めたBRVOの2症例a:初期治療後のOCTA浅層.Cb:初期治療後のCOCTA深層.Cc:a,bのCOCTA撮像時より3カ月後のOCT.OCTAにて傍中心窩(患側,耳側)に網膜血管拡張が目立つ箇所と一致して,黄斑浮腫の再発を認めている.(文献C13を改変)浅層深層3カ月後-

網膜動脈閉塞症

2022年1月31日 月曜日

網膜動脈閉塞症RetinalArteryOcclusion津田聡*中澤徹*はじめに網膜動脈閉塞症(retinalarteryocclusion:RAO)は,網膜動脈の閉塞により突然の視力低下として発症する急性疾患であり,救急対応疾患である.発症後早期に網膜血流の再灌流が得られないと,視力低下や視野欠損が残存する.さまざまなアプローチで治療が行われるが,有効な治療法が確立されておらず,難治性の眼疾患といえる.また,脳卒中などの心血管イベントの合併リスクもあり,全身リスクへの対応も必要な疾患である.本稿では,RAOについて,基本的な病態や治療を中心に述べる.I病態解剖学的には,内頸動脈の分枝である眼動脈は,眼窩内で網膜中心動脈,短後毛様動脈,長後毛様動脈,前毛様動脈に分かれる.網膜中心動脈および網膜動脈は網膜内層を栄養している.また,32.1%の眼が短後毛様動脈の分枝である毛様網膜動脈を有しており,さまざまな程度で中心窩や網膜内層を栄養している場合がある.RAOの原因による分類では,巨細胞性動脈炎などがRAOの背景となる動脈炎性RAOと,動脈硬化による塞栓症が原因となる非動脈炎性RAOに分類される.動脈炎性RAOは非常にまれであり,全身ステロイドによる早急な治療が必要であり,非動脈炎性RAOとは異なる対応となる.そのため本稿では,非動脈炎性RAOを中心に述べる.RAOは,多くの場合は塞栓症として発症する.閉塞部位によって,網膜中心動脈閉塞症(centralretinalarteryocclusion:CRAO),網膜動脈分枝閉塞症(bra-chialretinalarteryocclusion:BRAO),毛様網膜動脈閉塞症(cilioretinalarteryocclusion)に分類される.とくに網膜中心動脈が閉塞するCRAOは,重篤な視機能障害につながる予後不良の疾患の一つである.CRAOの閉塞部位は,網膜中心動脈の内腔がもっとも狭くなる部位であり,網膜中心動脈の視神経の硬膜鞘の貫通部位とされ,その他の一部が篩状板のすぐ後方とされる1).CRAOの動物モデルでは,発症後97分を超えると検出可能な障害が認められるようになり,発症後4時間を超えると大規模な不可逆性の視神経および神経線維の障害になることが示されている2).RAOは,比較的まれな疾患であるが,動脈硬化性疾患であるため,若年よりも高齢者のほうが発症しやすい.実際にRAO患者では高血圧症,糖尿病,脂質異常症,脳梗塞症,虚血性心疾患などの有病率が高く,また喫煙率も高い.塞栓源は,おもに内頸動脈のプラークや心臓由来の塞栓子とされ,RAOの約70%で内頸動脈にプラークが認められ,心臓超音波ではCRAOの約50%,BRAOの約40%で塞栓源を伴う異常な像が認められるとされる3).塞栓子の成分は,74%がコレステロールとされ,残りが石灰化およびフィブリン成分である4).一方,動脈*SatoruTsuda&ToruNakazawa:東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座眼科視覚科学分野〔別刷請求先〕津田聡:〒980-8574仙台市青葉区星陵町1-1東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座眼科視覚科学分野0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(31)31図1網膜中心動脈閉塞症a:眼底写真.後極は黄斑部を除き網膜の白濁を認め,cherryredspotとなっている.視力は手動弁のままであった.b:OCT画像.黄斑部の垂直断.網膜内層が肥厚し,高反射となっている.網膜内層の浮腫が強く,内強膜.離を認める.網膜外層の層構造は保たれているが,網膜内層での測定光の減衰により低反射となっている.図2網膜中心動脈閉塞症のレーザースペックルフローグラフィーa:レーザースペックルフローグラフィー画像.図1と同じ症例.網膜中心動脈の閉塞により網膜動脈の血流が不明瞭になっている.b:レーザースペックルフローグラフィー画像.再灌流により網膜動脈の血流が明瞭となった.図3毛様網膜動脈の開存を伴う網膜中心動脈閉塞症a:眼底写真.中心窩の周囲を毛様網膜動脈が灌流しており,黄斑部を含む毛様網膜動脈の灌流域が虚血を免れている.矯正視力はC1.2.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.毛様網膜動脈の灌流を認めるが,網膜中心動脈が閉塞している.Cc:レーザースペックルフローグラフィー画像.フルオレセイン蛍光眼底造影検査と同様の血流所見が認められている.d:OCTangiography画像.視神経乳頭を中心とした網膜表層の血流画像.毛様網膜動脈の灌流域では毛細血管の血流像が確認できる.e:OCTangiography画像.黄斑部を中心とした網膜表層の血流画像.毛様網膜動脈の灌流により黄斑部では血流が維持されている.図4網膜動脈分枝閉塞症a:眼底写真.後極上方の網膜が白濁している.矯正視力はC0.7.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.眼底写真の白濁部位を栄養している網膜動脈の閉塞が認められる(.).Cc:OCT画像.黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層が肥厚し,高反射となっている(.).同部位の網膜外層の層構造は保たれているが,網膜内層での測定光の減衰により低反射となっている.図5網膜動脈分枝閉塞症a:広角眼底画像.後極上方の網膜が白濁している.初診時の矯正視力はC0.15.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.眼底写真の白濁部位を栄養している網膜動脈の閉塞が認められる(.).Cc:OCT画像.発症早期の黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層が肥厚し,高反射となっている(.).Cd:OCT画像.発症C2カ月後の黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層は菲薄化している.矯正視力はC0.4に改善した.X予後BRAOでは,一定程度の視力が維持されることが多い.多数例の自然経過の報告では,発症後C1週間以内のBRAOのC74%が視力C0.5以上を示し,最終的にC89%が視力C0.5以上であったとされている.また,一過性BRAOではC94%,毛様網膜動脈閉塞症ではC73%が視力0.5以上を示し,いずれも最終的にC100%がC0.5以上の視力であったことが報告されている8).視力予後に関連する因子としては,HDL低値,頸動脈超音波での頸動脈洞の内中膜厚の増加,女性が低視力と関連することが報告されている9).CRAOの自然経過は,発症後C7日以内の視力は,視力C0.5以上がC10.8%で,74%が指数弁以下であったことが報告されている.病型により視力経過は異なり,視力0.5以上は一過性CCRAOでC38%,毛様網膜動脈開存を伴うCCRAOではC20%,その他の非動脈炎性CCRAOおよび動脈炎性CCRAOではいずれもC0%であり,指数弁以下は一過性CCRAOでC38%,毛様網膜動脈の開存を伴うCCRAOではC60%,非動脈炎性CCRAOはC93.2%,動脈炎性CCRAOではC75%と報告されている.経過中,一過性CCRAOのC82%,毛様網膜動脈開存を伴うCCRAOのC67%で改善が認められたものの,その他の非動脈炎性CCRAOではC22%に留まるとされる5).また,RAO患者では,脳卒中,心筋梗塞,あらゆる原因による死亡のリスクが高く,とくにCRAO発症後14日以内の脳卒中発症のリスク比は約C50と高く10),RAO発症後の経過観察中の発症にも十分に注意する必要がある.CXI治療RAOに対する治療は,急性期の網膜虚血に対する治療,中期的な新生血管の発生に対する管理,長期的な心血管イベントの予防である.急性期には,再灌流や血流改善を目的として,眼球マッサージ,前房穿刺,眼圧下降薬,血流改善薬,星状神経節ブロックなどによる従来治療が行われている.いずれも有効性は明確とはいえず,RAO治療としてのエビデンスは確立されていない.高圧酸素療法は動脈血および組織の酸素圧を高めることができる.RAOの発症早期に施行することで,脈絡膜循環を介して網膜内層への酸素供給を高め,虚血に伴う組織障害を軽減することができるとされる.さらに高圧酸素療法では開始後に一時的に網膜血流の減少が生じるが,その後に血管拡張が生じる.高圧酸素療法によるRAOの視機能改善が報告され,発症後C12時間以内など,より早期に行うことが効果的とされているが,大規模な臨床試験がむずかしいこともあり,有効性に関して十分なエビデンスは確立されていない11).血栓溶解療法に関しても,さまざまな有効性の報告が散見される.しかし,発症C20時間以内のCCRAOに対して,欧州の多施設で実施された眼動脈への局所投与による線溶療法と従来治療の無作為化比較試験では,両群間で有効性に差異は認められず,局所線溶療法で有害事象の発現割合が高く,中間解析後に試験が中止された12).CRAO治療の有効性に関するメタアナリシスでは,視力C0.1以下が視力C0.2以上に改善した割合について,自然経過はC17.7%であったが,従来治療(眼球マッサージ,前房穿刺,血管拡張薬,眼圧下降薬,アスピリン,炭酸ガスなど)ではC7.4%であり,自然経過を有意に下回ることが報告されている.さらに,血栓溶解療法の有効性は,改善した割合がC31.8%であったが,発症C4.5時間以内の全身投与の線溶療法でのみ自然経過を有意に上回る改善割合(50.0%)が示され,4.5時間以降の介入については自然経過を有意に上回る結果は認められていない13).近年,CRAOに対する新しい治療法の開発も進められている.発症早期に神経保護治療薬の硝子体内注射を行うことで,有意な視機能改善が得られたという日本発の治験結果が報告されており,今後の開発の進展が期待される14).また,硝子体切除術により,47ケージのマイクロニードルで網膜中心動脈のカニュレーションとt-PAの注入を行うことで再灌流と視力の改善が得られたというわが国の報告もある15).以上のように,RAOに関して現状では有効性のエビデンスが十分に確立されている治療法はなく,有効な治療法が模索されている状況である.とくに重篤な視機能障害をきたすCCRAOに関しては,C“aCdiseaseCwithoutC36あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022(36)

Paracentral Acute Middle Maculopathyと Acute Macular Neuroretinopathy

2022年1月31日 月曜日

網膜動脈閉塞症RetinalArteryOcclusion津田聡*中澤徹*はじめに網膜動脈閉塞症(retinalarteryocclusion:RAO)は,網膜動脈の閉塞により突然の視力低下として発症する急性疾患であり,救急対応疾患である.発症後早期に網膜血流の再灌流が得られないと,視力低下や視野欠損が残存する.さまざまなアプローチで治療が行われるが,有効な治療法が確立されておらず,難治性の眼疾患といえる.また,脳卒中などの心血管イベントの合併リスクもあり,全身リスクへの対応も必要な疾患である.本稿では,RAOについて,基本的な病態や治療を中心に述べる.I病態解剖学的には,内頸動脈の分枝である眼動脈は,眼窩内で網膜中心動脈,短後毛様動脈,長後毛様動脈,前毛様動脈に分かれる.網膜中心動脈および網膜動脈は網膜内層を栄養している.また,32.1%の眼が短後毛様動脈の分枝である毛様網膜動脈を有しており,さまざまな程度で中心窩や網膜内層を栄養している場合がある.RAOの原因による分類では,巨細胞性動脈炎などがRAOの背景となる動脈炎性RAOと,動脈硬化による塞栓症が原因となる非動脈炎性RAOに分類される.動脈炎性RAOは非常にまれであり,全身ステロイドによる早急な治療が必要であり,非動脈炎性RAOとは異なる対応となる.そのため本稿では,非動脈炎性RAOを中心に述べる.RAOは,多くの場合は塞栓症として発症する.閉塞部位によって,網膜中心動脈閉塞症(centralretinalarteryocclusion:CRAO),網膜動脈分枝閉塞症(bra-chialretinalarteryocclusion:BRAO),毛様網膜動脈閉塞症(cilioretinalarteryocclusion)に分類される.とくに網膜中心動脈が閉塞するCRAOは,重篤な視機能障害につながる予後不良の疾患の一つである.CRAOの閉塞部位は,網膜中心動脈の内腔がもっとも狭くなる部位であり,網膜中心動脈の視神経の硬膜鞘の貫通部位とされ,その他の一部が篩状板のすぐ後方とされる1).CRAOの動物モデルでは,発症後97分を超えると検出可能な障害が認められるようになり,発症後4時間を超えると大規模な不可逆性の視神経および神経線維の障害になることが示されている2).RAOは,比較的まれな疾患であるが,動脈硬化性疾患であるため,若年よりも高齢者のほうが発症しやすい.実際にRAO患者では高血圧症,糖尿病,脂質異常症,脳梗塞症,虚血性心疾患などの有病率が高く,また喫煙率も高い.塞栓源は,おもに内頸動脈のプラークや心臓由来の塞栓子とされ,RAOの約70%で内頸動脈にプラークが認められ,心臓超音波ではCRAOの約50%,BRAOの約40%で塞栓源を伴う異常な像が認められるとされる3).塞栓子の成分は,74%がコレステロールとされ,残りが石灰化およびフィブリン成分である4).一方,動脈*SatoruTsuda&ToruNakazawa:東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座眼科視覚科学分野〔別刷請求先〕津田聡:〒980-8574仙台市青葉区星陵町1-1東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座眼科視覚科学分野0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(31)31図1網膜中心動脈閉塞症a:眼底写真.後極は黄斑部を除き網膜の白濁を認め,cherryredspotとなっている.視力は手動弁のままであった.b:OCT画像.黄斑部の垂直断.網膜内層が肥厚し,高反射となっている.網膜内層の浮腫が強く,内強膜.離を認める.網膜外層の層構造は保たれているが,網膜内層での測定光の減衰により低反射となっている.図2網膜中心動脈閉塞症のレーザースペックルフローグラフィーa:レーザースペックルフローグラフィー画像.図1と同じ症例.網膜中心動脈の閉塞により網膜動脈の血流が不明瞭になっている.b:レーザースペックルフローグラフィー画像.再灌流により網膜動脈の血流が明瞭となった.図3毛様網膜動脈の開存を伴う網膜中心動脈閉塞症a:眼底写真.中心窩の周囲を毛様網膜動脈が灌流しており,黄斑部を含む毛様網膜動脈の灌流域が虚血を免れている.矯正視力はC1.2.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.毛様網膜動脈の灌流を認めるが,網膜中心動脈が閉塞している.Cc:レーザースペックルフローグラフィー画像.フルオレセイン蛍光眼底造影検査と同様の血流所見が認められている.d:OCTangiography画像.視神経乳頭を中心とした網膜表層の血流画像.毛様網膜動脈の灌流域では毛細血管の血流像が確認できる.e:OCTangiography画像.黄斑部を中心とした網膜表層の血流画像.毛様網膜動脈の灌流により黄斑部では血流が維持されている.図4網膜動脈分枝閉塞症a:眼底写真.後極上方の網膜が白濁している.矯正視力はC0.7.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.眼底写真の白濁部位を栄養している網膜動脈の閉塞が認められる(.).Cc:OCT画像.黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層が肥厚し,高反射となっている(.).同部位の網膜外層の層構造は保たれているが,網膜内層での測定光の減衰により低反射となっている.図5網膜動脈分枝閉塞症a:広角眼底画像.後極上方の網膜が白濁している.初診時の矯正視力はC0.15.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影検査画像.眼底写真の白濁部位を栄養している網膜動脈の閉塞が認められる(.).Cc:OCT画像.発症早期の黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層が肥厚し,高反射となっている(.).Cd:OCT画像.発症C2カ月後の黄斑部の垂直断.中心窩より上方の網膜内層は菲薄化している.矯正視力はC0.4に改善した.X予後BRAOでは,一定程度の視力が維持されることが多い.多数例の自然経過の報告では,発症後C1週間以内のBRAOのC74%が視力C0.5以上を示し,最終的にC89%が視力C0.5以上であったとされている.また,一過性BRAOではC94%,毛様網膜動脈閉塞症ではC73%が視力0.5以上を示し,いずれも最終的にC100%がC0.5以上の視力であったことが報告されている8).視力予後に関連する因子としては,HDL低値,頸動脈超音波での頸動脈洞の内中膜厚の増加,女性が低視力と関連することが報告されている9).CRAOの自然経過は,発症後C7日以内の視力は,視力C0.5以上がC10.8%で,74%が指数弁以下であったことが報告されている.病型により視力経過は異なり,視力0.5以上は一過性CCRAOでC38%,毛様網膜動脈開存を伴うCCRAOではC20%,その他の非動脈炎性CCRAOおよび動脈炎性CCRAOではいずれもC0%であり,指数弁以下は一過性CCRAOでC38%,毛様網膜動脈の開存を伴うCCRAOではC60%,非動脈炎性CCRAOはC93.2%,動脈炎性CCRAOではC75%と報告されている.経過中,一過性CCRAOのC82%,毛様網膜動脈開存を伴うCCRAOのC67%で改善が認められたものの,その他の非動脈炎性CCRAOではC22%に留まるとされる5).また,RAO患者では,脳卒中,心筋梗塞,あらゆる原因による死亡のリスクが高く,とくにCRAO発症後14日以内の脳卒中発症のリスク比は約C50と高く10),RAO発症後の経過観察中の発症にも十分に注意する必要がある.CXI治療RAOに対する治療は,急性期の網膜虚血に対する治療,中期的な新生血管の発生に対する管理,長期的な心血管イベントの予防である.急性期には,再灌流や血流改善を目的として,眼球マッサージ,前房穿刺,眼圧下降薬,血流改善薬,星状神経節ブロックなどによる従来治療が行われている.いずれも有効性は明確とはいえず,RAO治療としてのエビデンスは確立されていない.高圧酸素療法は動脈血および組織の酸素圧を高めることができる.RAOの発症早期に施行することで,脈絡膜循環を介して網膜内層への酸素供給を高め,虚血に伴う組織障害を軽減することができるとされる.さらに高圧酸素療法では開始後に一時的に網膜血流の減少が生じるが,その後に血管拡張が生じる.高圧酸素療法によるRAOの視機能改善が報告され,発症後C12時間以内など,より早期に行うことが効果的とされているが,大規模な臨床試験がむずかしいこともあり,有効性に関して十分なエビデンスは確立されていない11).血栓溶解療法に関しても,さまざまな有効性の報告が散見される.しかし,発症C20時間以内のCCRAOに対して,欧州の多施設で実施された眼動脈への局所投与による線溶療法と従来治療の無作為化比較試験では,両群間で有効性に差異は認められず,局所線溶療法で有害事象の発現割合が高く,中間解析後に試験が中止された12).CRAO治療の有効性に関するメタアナリシスでは,視力C0.1以下が視力C0.2以上に改善した割合について,自然経過はC17.7%であったが,従来治療(眼球マッサージ,前房穿刺,血管拡張薬,眼圧下降薬,アスピリン,炭酸ガスなど)ではC7.4%であり,自然経過を有意に下回ることが報告されている.さらに,血栓溶解療法の有効性は,改善した割合がC31.8%であったが,発症C4.5時間以内の全身投与の線溶療法でのみ自然経過を有意に上回る改善割合(50.0%)が示され,4.5時間以降の介入については自然経過を有意に上回る結果は認められていない13).近年,CRAOに対する新しい治療法の開発も進められている.発症早期に神経保護治療薬の硝子体内注射を行うことで,有意な視機能改善が得られたという日本発の治験結果が報告されており,今後の開発の進展が期待される14).また,硝子体切除術により,47ケージのマイクロニードルで網膜中心動脈のカニュレーションとt-PAの注入を行うことで再灌流と視力の改善が得られたというわが国の報告もある15).以上のように,RAOに関して現状では有効性のエビデンスが十分に確立されている治療法はなく,有効な治療法が模索されている状況である.とくに重篤な視機能障害をきたすCCRAOに関しては,C“aCdiseaseCwithoutC36あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022(36)

網膜細動脈瘤

2022年1月31日 月曜日

網膜細動脈瘤RetinalArterialMacroaneurysm(RAM)阪口沙織*I病態・疫学網膜細動脈瘤(retinalarterialmacroaneurysm:RAM)は網膜細動脈に生じる後天的な血管瘤である.100年以上前からその存在は報告されていたが,1973年にRobertsonが13症例の報告において初めて臨床的特徴を説明し,retinalarterialmacroaneurysmという用語を用いた1).その報告に基づいてRAMは,一般的に網膜中心動脈から第3分枝以内の網膜動脈に生じる血管瘤と定義される.患者背景としては高齢者や女性の割合が高く,約75%で高血圧の併存を認めるとされ,動脈硬化や脂質異常症との関連も示唆されている(表1).その病態生理は完全には解明されていないものの,動脈硬化で血管壁の弾性が低下することで静水圧上昇の影響を受けやすくなる可能性が推測されている.組織学的には動脈瘤内に血栓とコレステロール結晶の存在が報告されている.ほとんどが片眼性である一方で10%では両眼性にみられるほか,複数個の動脈瘤を認める患者もいる.後極部の耳側,なかでも耳上側に生じる割合が高いとされる.網膜動静脈閉塞症に続発することもある2).II診断慢性の滲出性変化や急性の出血性変化による視力低下を契機に受診し,診断されることがほとんどである.とくに動脈瘤破裂による出血をきたした場合は,硝子体出血,網膜前出血,内境界膜(innerlimitingmembrane:表1網膜細動脈瘤の特徴性別女性の割合が高い(70.80%)年齢高齢者に多い(平均:約70歳)併存疾患高血圧(75%),動脈硬化,脂質異常症などが多い部位後極部の耳側に多い(とくに耳上側)定義:網膜中心動脈から第3分枝以内の網膜動脈に生じる血管瘤.ILM)下出血,網膜内出血,網膜下出血などさまざまな層に出血が広がるのが特徴的であり,黄斑に及ぶと急激な視力低下をきたす.多彩な出血を呈するため鑑別すべき疾患は多岐にわたり,滲出型加齢黄斑変性,Valsalva網膜症,後部硝子体.離に伴う出血,増殖糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症などがあげられる.とくに黄斑下出血を多量に認めるが,RAMが明らかでない場合はポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalcho-roidalvasculopathy:PCV)との鑑別に難渋することがある.RAMの破裂は突然発症であるのに対して,PCVでは以前から視力低下や変視症を自覚している可能性が高く,病歴が鑑別に有用である.加えてPCVに特徴的な網膜色素上皮.離やdouble-layersignの有無もポイントとなる.また,ILM下出血を認める場合,両眼であれば血液疾患に伴う出血が考えられるが,片眼であればRAM破裂である可能性が非常に高く,診断的価値の高い所見である.硝子体出血により眼底を透見できない場合は,診断的治療として硝子体手術を行う.眼虚血症候群がない限り*SaoriSakaguchi:京都大学大学院医学研究科眼科学,大津赤十字病院眼科〔別刷請求先〕阪口沙織:〒520-8511滋賀県大津市長等1-1-35大津赤十字病院眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(17)17ab網膜内出血ILM下出血網膜下出血図1眼底所見a:破裂時の眼底写真.黄斑部はCILM下出血により網膜血管を視認できず,周囲には網膜下出血および網膜内出血が広がっている.出血の上縁には橙赤色の動脈瘤を確認できる.上方の網膜内出血は綿毛のように円形に広がる“.u.ysign”を示している.Cb:破裂からC3カ月後.硝子体手術により出血は除去されており,動脈上に器質化した白色の動脈瘤を認める(→).周囲に硬性白斑が輪状に広がっている.図2蛍光眼底造影a:フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)19秒.出血によるブロックで詳細は不明である.Cb:インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)19秒.IAでは早期から動脈上に一致して過蛍光を認め,動脈瘤を確認できる.Cc:FA10分C30秒.後期では動脈瘤周囲への漏出を認める.Cd:IA10分30秒.動脈瘤はより明瞭に描出されている.表2網膜細動脈瘤の形状分類紡錘状.状形状FA所見早期から不均一な充.を示す中期.後期にかけて不均一な充.を示すb図3OCTa:破裂時のOCT.ILM下出血および網膜下出血を認める.ILM下出血のニボーが確認でき,その上方は一部Ccoagulaを形成している.厚いCILM下出血が存在する部分は一部網膜が描出されていない.Cb:術後,網膜内層に器質化した網膜細動脈瘤を認める.壁は中程度の反射,内腔は低反射を示している.網膜下出血が中心窩に及んだ影響で,中心窩の網膜は菲薄化し網膜外層障害が強い.図4OCT(図1と同一症例)破裂からC3カ月後.網膜内層に網膜細動脈瘤を認める.周囲には外層を含む網膜浮腫,硬性白斑が広がっている.表3検査所見のまとめ眼底所見蛍光眼底造影COCT網膜細動脈瘤動脈上に黄白色.赤色の血管瘤血管瘤への蛍光貯留(CFAよりCIAのほうが有用なことがある)網膜内層に位置する壁は高反射,内腔は低反射を示す出血性変化硝子体出血網膜前出血ILM下出血網膜内出血網膜下出血ILM下出血:ニボー形成,類円形網膜内出血:火炎状,線状,.u.ysignなど網膜下出血:不整形.類円形,網膜血管を視認できる出血による蛍光ブロック網膜のさまざまな層に高反射の出血を認める滲出性変化黄斑浮腫漿液性.離硬性白斑硬性白斑:動脈瘤を中心に輪状に広がる周囲への蛍光漏出を伴うことがある黄斑浮腫:網膜外層を含む(網膜内出血や硝子体出血のみで少量の場合→経過観察)滲出性変化が残存することもある※1ガス注入やt-PA注入を併用する※2わが国では保険適用外図5網膜細動脈瘤治療のフローチャート-

眼虚血症候群の血流動態

2022年1月31日 月曜日

眼虚血症候群の血流動態OcularHemodynamicsinOcularIschemicSyndrome橋本りゅう也*はじめに日常診療で遭遇する眼虚血症候群(ocularischemicsyndrome:OIS)は発見の遅れが失明につながるため,眼科医として患者の訴えから早急に診断・治療を行うことが非常に重要である.近年,眼血流を非侵襲的に評価できるレーザースペックルフローグラフィー(laserspeckle.owgraphy:LSFG)1,2)の普及により,造影検査を行う前に簡便に網脈絡膜・視神経乳頭血流や波形を評価できるようになり,OISの診断に大いに活用できるようになった.本稿ではおもにLSFG(図1)を用いたOISの眼血流評価について述べる.I眼虚血症候群とはOISは,同側の内頸動脈の狭窄・閉塞により眼動脈の血流が慢性的に低下して生じる多彩な眼症状を示す疾患である.初期の内頸動脈狭窄では,外頸動脈からの側副血行路により眼動脈の血流は維持されるが,狭窄が進行すると一過性黒内障や網膜動脈閉塞症をはじめ,慢性的な網膜組織の低酸素状態から虹彩ルベオーシスを伴う血管新生緑内障を発症することが多く,治療に難渋する場面に多く遭遇する.80%は片眼性で3),その要因はおもに脂質異常症,高血圧症,糖尿病などによる粥状動脈硬化症が多く,65歳前後の男性に好発するといわれている4).また,1年間の発症率は100万人あたり7.5人との報告されている5).日常診療において,眼症状を訴え眼科に受診したのちに内頸動脈狭窄が発見されることも多く,眼科医にとってOISと全身疾患との関連を深く知ることはとても重要であると考えている.II眼虚血症候群の所見とチェックポイント眼底所見では,網膜動脈の狭細化,網膜静脈の拡張を認める.網膜中心静脈閉塞症と異なり静脈内圧の上昇を認めないことから,血管蛇行はあまりみられない.軟性白斑や網膜出血,虹彩ルベオーシスなどを呈している場合が多く,急に眼循環障害が生じた場合は,軟性白斑とともにcherryredspot類似の網膜白濁を認めることがある.OISでは基礎疾患に糖尿病を有している患者が多く,上記の所見に加え,明らかに網膜症の左右差を認める場合は積極的にOISを疑う.しかし,OIS患者の中には,眼底所見で異常所見がみられないにもかかわらず,眼血流の評価目的でLSFG検査を行うと,著明に血流が低下しているケースも隠れていることがあり,一過性黒内障などの症状のみを訴えている患者に対しても眼血流測定を行うことは非常に重要である.III眼虚血症候群の検査1.蛍光眼底造影検査現在,OISに有用な検査としてまずフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)があげられ,腕・網膜時間の著明な遅延を認める.また,眼動脈の造影が遅延するため,インドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiography:IA)も有用であり,*RyuyaHashimoto:東邦大学医療センター佐倉病院眼科,アイオワ大学眼科〔別刷請求先〕橋本りゅう也:〒285-8741千葉県佐倉市下志津564-1東邦大学医療センター佐倉病院眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(9)9①簡便性:1回の測定時間4秒②安全性:造影剤は使用しない③再現性:変動係数は約3%前後血流値:高正常眼血流値:低図1レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)の特徴造影剤を用いることなく眼血流・波形を測定可能であり,全身疾患を有する眼虚血症候群ではとくに有用である.図2左内頸動脈閉塞による眼虚血症候群患眼(左眼)の眼血流は著明に低下しており,網膜出血,網膜動脈の蛇行と白線化がみられ,虹彩ルベオーシス()を認めた.頸部血管造影検査で左内頸動脈閉塞を認める.図3左内頸動脈狭窄による眼虚血症候群(LSFGと眼底検査)眼底所見では左右差を認めないものの,LSFG検査で患眼(左眼)の著明な眼血流低下を認める.図4図3の症例の蛍光眼底造影検査蛍光眼底造影検査で腕・網膜時間の遅延と虹彩ルベオーシスからの漏出所見を認める.図5図3の症例の眼血流変化(LSFG)治療後,乳頭組織・網膜動脈・脈絡膜血流の著明な改善を認める.図6一過性黒内障の訴えがある左内頸動脈狭窄症LSFG検査にて左眼の網膜血流は右眼と比較し低下しており,血管造影検査で左内頸動脈はC80%ほど狭窄している.ステント留置前ステント留置後2日目図7図6の症例の内頸動脈ステント留置前後の狭窄部血管造影検査でステント留置後,内頸動脈狭窄部は解除され血流が改善した.(13)あたらしい眼科Vol.39,No.1,2022C13血流値MBR(AU)ステント留置前ステント留置後2日目2525Opticnerve2020RetinalarteryChoroidWatershed1510MBR(AU)151055000123401234Time(seconds)Time(seconds)図8図6の症例の内頸動脈ステント留置前後の眼血流波形変化(LSFG)ステント留置後,各測定領域で血流の振幅は大きくなり血流値の改善を認める.MBR:meanblurrate.~

血液疾患

2022年1月31日 月曜日

血液疾患RetinalDiseaseDuetoHematologicalDisorders永井由巳*はじめに網膜血管は,全身の血管のなかで生体の血管・血流を直接観察できる箇所である.それゆえに,人間ドックや健康診断でも眼底検査が直視下あるいはカメラ撮影で行われている.血管を観直接察できる特殊性から,眼疾患のみならず全身性血液疾患による眼所見を診察時に認めることもあり,眼科診療から全身性疾患がみつかることもある.さまざまな血液疾患のうち,日常診療でしばしばみることがある疾患について述べる.CI白血病(図1,2)白血病(leukemia)は,造血幹細胞が骨髄中で癌化して無制限に白血球系細胞が増殖する疾患である.白血球は,好中球や好酸球,単球などの骨髄球系細胞とCBリンパ球やCTリンパ球などのリンパ球系細胞とから構成されていることや,進行が急性のものとゆっくり進行する慢性のものがあることから,白血病は以下のように分類されている.・急性白血病急性骨髄性白血病(acutemyeloidleukemia:AML)急性リンパ性白血病(acutelymphoblasticleukemia:ALL)急性リンパ芽球性白血病急性前骨髄性白血病・慢性白血病慢性骨髄性白血病(chronicmyeloidleukemia:CML)慢性リンパ性白血病(chroniclymphocyticleukemia:CLL)慢性リンパ芽球性白血病白血病では,白血病細胞の全身浸潤による症状や,白血病細胞の異常増殖による貧血,血小板減少,血液粘稠性亢進などによる症状を認める.これらの症状は眼部にもみられ,眼窩や眼周囲に腫瘍細胞が直接浸潤して腫瘤を形成することや,眼内では頻度は低いとされているが虹彩に浸潤して虹彩炎や毛様体腫脹,毛様体炎などのぶどう膜炎を生じたり,前房内への白血病細胞浸潤による偽前房蓄膿を認めたりすることもあるが,とくに網膜で認める代表的な所見に白血病網膜症がある.白血病網膜症は,白血病患者のC50.70%でみられるとされている1,2).白血病細胞の浸潤による網膜血管の拡張や蛇行,口径不同による血管のソーセージ様変化,網膜出血,Roth斑,網膜静脈閉塞症,軟性白斑などを認め,ときに新生血管を生じたり硝子体出血を起こしたりすることもある.網膜出血は急性白血病で多く,とくに急性骨髄性白血病で多い.網膜出血は眼底の後極部から周辺にかけて散在性に生じることが多いが,網膜前出血となることもある.白血病の出血で特徴的なものとして,中央が白色を示すCRoth斑がある.Roth斑とは,もともと細菌性心内膜炎でみられる中央に敗血症病巣によ*YoshimiNagai:関西医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕永井由巳:〒573-1010大阪府枚方市新町C2-5-1関西医科大学眼科学教室C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(3)3図1白血病網膜症の眼底とOCT所見a:眼底写真.急性リンパ性白血病(ALL).網膜出血を中心窩領域の他数カ所に認め(細いC→),内部が白色のCRoth斑を認める().また網膜血管の蛇行も認める.右眼矯正視力(0.15).b,c:OCT画像(Cb.水平断,c.垂直断).中心窩領域の網膜出血の部分は,内境界膜下の網膜内層に出血による高輝度反射を認める.図2図1の症例の白血病治療後の眼底とOCT所見a:眼底写真.骨髄移植後,眼底にみられた網膜出血やCRoth斑は吸収され,矯正視力も(1.0)に回復した.Cb,c:OCT画像(Cb.水平断,Cc.垂直断).中心窩領域に認めた網膜出血は吸収され,中心窩陥凹も回復している.図3骨髄異形成症候群(MDS)の症例の眼底とOCT所見(右眼)a:眼底写真.眼底後極部から周辺にかけて点状,円形,斑状の出血を認める.受診前に生じた硝子体出血が器質化して残存しており(→),右眼の矯正視力は(0.2).b,c:OCT画像(Cb.水平断,Cc.垂直断).器質下した硝子体出血のため透見度は不良であるが,網膜には形態的な変化は認めない.図4図3の症例の眼底とOCT所見(左眼)a:眼底写真.右眼と同様,視神経乳頭を中心に周辺にかけて点状,円形,斑状の出血を認める.左眼の矯正視力は(1.5).b,c:OCT画像(Cb.水平断,Cc.垂直断).網膜には形態的な変化は認めていない.b-3図5原発性眼内悪性リンパ腫(PIOL)症例の経時的な変化a.1:眼底写真.黄斑部に卵黄様沈着物を認める.左眼矯正視力(0.6).a.2:OCT画像(水平断).中心窩に一致した高反射塊を認め,眼底の卵黄様沈着物よりも広い範囲で網膜色素上皮ラインの波打ち様の肥厚がみられた.b:aの受診日からC30日後.b.1:眼底写真.黄斑部の耳側に白色結節病巣が新たに出現.b.2:フルオレセイン蛍光眼底造影中期(4分C9秒).網膜静脈の分節状過蛍光(C→)と,視神経乳頭からの蛍光漏出()を認めた.b.3:OCT画像.aの受診日の時と同じく高輝度病巣を認めた.Cc:aの受診日からC70日後.c.1:眼底写真.結節病変の拡大と癒合を認め,耳側周辺部網膜に黄色滲出斑を認めた.c.2:フルオレセイン蛍光眼底造影中期(3分C46秒).耳側周辺網膜の白矢印の領域に軽度の網膜循環障害を認めた.

序説:序説:眼科診療における半世紀の歴史と変遷

2022年1月31日 月曜日

網膜循環疾患アップデートUpdateonRetinalVascularDiseases辻川明孝*長い間,網膜循環疾患の病態評価は眼底検査・写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)が中心であった.おおよそ40年前に行われたBVOstudyでは網膜静脈分枝閉塞症(branchretinalveinocclusion:BRVO)に伴う黄斑浮腫に対する格子状光凝固の有効性が示された.その一方で,5乳頭径大以上の無灌流領域を伴った虚血型BRVOに対する予防的光凝固の硝子体出血予防に対する有効性は示されなかった.その後のCVOstudyでは,網膜中心静脈閉塞症(centralretinalveinocclusion:CRVO)に伴う黄斑浮腫に対する格子状光凝固の有効性,10乳頭面積以上の無灌流領域を伴った虚血型CRVOにおける予防的汎網膜光凝固の虹彩・隅角新生血管予防に対する有効性は示されなかった.その結果,虚血型CRVOに対して,注意深く経過観察を行い,新生血管が発症してからの光凝固が推奨されるようになった.これらのエビデンスは欧米では長期にわたり,BRVO,CRVOの診療における基礎となってきた.一方,わが国では,虚血型BRVO,CRVOに対しては予防的光凝固を施行することが一般的であり,BRVOに伴う黄斑浮腫に対する格子状光凝固はあまり普及しなかったように,マネージメントに独自の修正が行われてきた.近年の眼底検査機器の進歩により,網膜循環疾患の病態が次々と明らかにされ,病態理解に基づいた治療が行われるようになってきた.とくに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の功績はきわめて大きい.これまでの二次元の評価から,網膜の精細な三次元観察が可能となり,病態理解が大きく進歩した.また,OCTを用いて網膜厚の定量的な評価を繰り返して行うことが可能となった.それまで,黄斑浮腫に対する治療効果の判定は,“あり”か“なし”かの二者択一であったものが,マイクロメートル単位で示された網膜厚で評価できるようになった.その結果,ステロイド,血栓溶解(t-PA)療法,硝子体手術などさまざまな治療が普及するようになった.その後登場した抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬が網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の診療を一変させたのは間違いない.抗VEGF薬は即効性があり,効果は劇的であった.その反面,再燃が問題であったが,OCTにより網膜厚を繰り返し定量的に計測することが可能になり,現在行われているようなprorenata(PRN)レジメンでの抗VEGF薬の投与が普及するようになった.抗VEGF薬の固定投与はその負担から一般化しそうになく,OCTなしには加齢*AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(1)1

ベンダムスチン投与後の濾胞性リンパ腫に合併した 両眼性サイトメガロウイルス網膜炎の1 例

2021年12月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科38(12):1509.1513,2021cベンダムスチン投与後の濾胞性リンパ腫に合併した両眼性サイトメガロウイルス網膜炎の1例浅井あかり*1石川邦裕*1鈴木裕太*1志関雅幸*2佐伯忠賜朗*1北野滋彦*1*1東京女子医科大学病院糖尿病センター眼科*2東京女子医科大学病院血液内科CACaseofCytomegalovirusRetinitisinwhichLong-TermAdministrationofValganciclovirwasPossibleAkariAsai1),KunihiroIshikawa1),YutaSuzuki1),MasayukiShiseki2),TadashirouSaeki1)andShigehikoKitano1)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversityHospital,2)DepartmentofHematology,TokyoWomen’sMedicalUniversityHospitalC濾胞性リンパ腫の化学療法後に両眼性サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎(CMVR)を発症したが,血液内科と連携して治療を行うことでC12カ月間良好な視機能維持が可能であった症例を経験したので報告する.症例はC73歳,男性.濾胞性リンパ腫の再発によりオビヌツズマブ+ベンダムスチン塩酸塩C6コース施行後に左眼の霧視にて受診,左眼前眼部に角膜後面沈着物を伴う前房炎症所見を認めた.右眼眼底には黄斑耳側に網膜出血を伴った白色顆粒状病変を認め,左眼には著明な硝子体混濁および後極部の血管に沿った黄白色の滲出性病変と乳頭浮腫を認めた.前房水を用いたCPCR法にて中にCCMV-DNAが検出されたため,CMVRと診断し,バルガンシクロビル内服,ガンシクロビル硝子体内注射による治療を行った.ベンダムスチン投与患者はCCD4陽性CTリンパ球を含む白血球が長期的に低下しやすいため,CMVRの発症に留意するとともに,CMVRの治療に関しても眼科と血液内科との密な連携が必要と考えられた.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCbilateralCcytomegalovirusretinitis(CMVR)afterCchemotherapyCforCfollicularClymphomawithoutdeteriorationofvisualacuityfor12months.CaseReport:Thisstudyinvolveda73-year-oldmalewhopresentedwithblurredvisioninhislefteyeaftertreatmentwithobinutuzumabplusbendamustinefortherelapsedfollicularlymphoma.Keraticprecipitateswereobservedintheanteriorchamberofthelefteye.WhitelesionsCwithCassociatedCretinalChemorrhagesCwereCobservedConCtheCtemporalCsideCofCtheCmaculaCinCtheCrightCeye.CSigni.cantCvitreousCopacity,CperivascularCexudativeClesion,CandCpapilledemaCwereCobservedCinCtheCleftCeye.CWeCdetectedCMV-DNAinaqueoushumorbyPCR,anddiagnosedCMVR.Wetreatedwithoraladministrationofval-ganciclovirCfollowedCbyCanCintravitrealCloadingCinjectionCofCganciclovir.CConclusion:PatientsCtreatedCwithCbenda-mustinetendtohavealong-termdecreaseinleukocytes,andganciclovircanalsocauseleukopenia,solong-termtreatmentandcooperativecarebetweenhematologistsandophthalmologistsisneeded.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(12):1509.1513,C2021〕Keywords:CMV網膜炎,バルガンシクロビル,ベンダムスチン,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法,濾胞性リンパ腫.cytomegalovirusCretinitis,Cvalganciclovir,Cbendamustine,CpolymeraseCchainreaction(PCR)C,CfollicularClymphoma.Cはじめにサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)網膜炎(cytomegalovirusretinitis:CMVR)は真菌性眼内炎と並んで多くみられる日和見感染症であり,とくに後天性免疫不全症候群患者においては主要な合併症の一つである.しかし,近年では後天性免疫不全症候群患者のみならず,血液腫瘍性疾患や臓器移植,抗癌剤治療による免疫不全に伴うものや,明らかな免疫不全のない健常者といった非後天性免疫不全症候群患者におけるCCMVRも多数報告1.4)されている.今回,濾胞性リンパ腫(follicularlymphoma:FL)の化学〔別刷請求先〕浅井あかり:162-8666東京都新宿区河田町C8-1東京女子医科大学病院糖尿病センター眼科Reprintrequests:AkariAsai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversityHospital,8-1Kawadacho,Shinjuku-ku,Tokyo162-8666,JAPANC図1初診時眼底写真a:右眼.黄斑耳側に白色顆粒状病変と網膜出血を認める.Cb:左眼.硝子体混濁と後極部の血管に沿って乳頭浮腫を伴う黄色の滲出性病変と網膜出血を認める.療法後に両眼性のCCMVRを発症し,CD4陽性リンパ球数が減少した背景に加えて,経過中バルガンシクロビルによる白血球減少も認めたため,フィルグラスチムの投与(granulo-cyte-colonyCstimulatingfactor:G-CSF製剤),ガンシクロビルの硝子体注射を併用し,良好な視力を約C12カ月以上維持できた症例を経験したので報告する.CI症例患者:73歳,男性.主訴:左眼霧視.既往歴:50歳,2型糖尿病.64歳,悪性リンパ腫(濾胞性リンパ腫).現病歴:2009年頃から左鼠径部に腫瘤を自覚していたが放置しており,東京女子医科大学病院(以下,当院)血液内科にてC2011年C7月左鼠径リンパ生検およびCPET/CT(posi-tronCemissionCtomography/computedtomography)検査で濾胞性悪性リンパ腫と診断された.2011年C8月下旬より,シクロホスファミド,ビンクスリチン,リツキシマブ,ドキソルビシン,プレドニゾロンを用いた化学療法(R-CHOP療法)を施行し,最終的にC8コース施行した.その後,2012年C5月からは放射免疫療法がC5コース施行された.2018年9月のCPET/CT検査にて左鼠径部以外,体幹部の広範な各リンパ節領域や脾臓,横隔膜に集積を認め,再燃と判断されたためC2019年C1月よりオビヌツズマブ(ヒト化抗CCD20モノクローナル抗体薬)1,000Cmg+ベンダムスチン(アルキル化剤)170CmgのC1コース目が開始された.2019年C3月頃より白血球数C3.42C×103/μlと低下を認め,適宜フィルグラスチム(G-CSF製剤)投与を行いながら,2019年C8月までにオビヌツズマブ+ベンダムスチンが計C6コース施行され,終了時の血液検査では,白血球C1.85C×103/μlと低下していた.糖尿病網膜症のスクリーニング目的でC2019年C10月に当院糖尿病センター眼科初診となった際,問診にてC2019年C8月頃からの左眼霧視の訴えがあった.初診時所見:矯正視力は右眼C1.2,左眼C0.7,眼圧は右眼13CmmHg,左眼C13CmmHgであった.左眼には角膜後面沈着物(keraticprecipitate:KP)を伴う前房炎症所見を認めた.右眼眼底には,黄斑耳側に白色顆粒状病変と一致して網膜出血を認めた(図1a).左眼には著明な硝子体混濁と,後極部の血管に沿って乳頭浮腫を伴う黄色の滲出性病変と網膜出血を認めた(図1b).PCR法にて左眼前房水よりCCMV-DNAが検出され,単純ヘルペスウイルスCDNA,水痘帯状疱疹ウイルスCDNAは検出されなかった.血液検査では白血球数C1.85C×103/μl,分画は好中球C47.1%,リンパ球C20.5%,単球C13.5%,好酸球17.8%,好塩基球C1.1%とリンパ球の低下を認めた.CD4陽性CTリンパ球数は未測定.CMV抗原血症検査(CMVアンチゲネミア:C7-HRP法)結果はC236/50,000と陽性であった.CII治療および経過眼底所見および前房水CPCR法の結果よりCCMVRと診断し,バルガンシクロビルC1,800Cmg/日の内服を開始した.開始後,約C10日目頃より両眼ともに滲出性病変は縮小したが,投与開始C35日目の採血検査結果で白血球数が約C600/μlと著明な減少を認めたため,同日よりバルガンシクロビルを900Cmg/日の内服に減量した.当初よりフィルグラスチム(G-CSF製剤)75Cμgが約C7日ごとに継続的に投与されていた.バルガンシクロビル減量後に白血球数は速やかに回復し,約C1.5C×103/μlで経過したため,バルガンシクロビルの投与は継続した.治療開始C85日目のCCD4陽性CTリンパ球数はC59/μlであった.治療開始C166日目に白血球数約C1.3C×103/μlと再度白血球減少を認めたため,バルガンシクロビルを中止した.治療開始C198日目で右眼眼底C5時方向に新たな白色病変が出現,左眼も硝子体混濁が増強し乳頭浮腫も認めた.そこで,バルガンシクロビルC1,800Cmg/日の内服を再開し,再開後C15日目に右眼の白色病変および左眼の硝子体混濁,乳頭浮腫の軽減を認めたため,900Cmg/日に減量した.治療開始C236日目において上記所見の再増悪が疑われたため,バルガンシクロビル投与量の増量が検討されたが,白血球数C1.35C×103/μlと減少していたため,さらなる血球減少を避けるためにC1眼当たりガンシクロビルC2,000Cμg/0.08Cmlを両眼に硝子体注射した.その後もガンシクロビル硝子体注射C2,000μg/0.08mlをC7日に1回のペースでC4回施行し,点眼液を使用することなく,前房炎症は徐々に軽快,治療開始C295日目には右眼眼底C5時方向の白色病変はほぼ消失し(図2a),左眼も硝子体混濁,乳頭浮腫は改善,下耳側の白色滲出病変も退縮傾向となった(図2b).その後はガンシクロビルの硝子体内注射をC1,000Cμg/0.04Cmlに減量し同じくC7日ごとに計C9回施行した.経過中の矯正視力は右眼C1.2,左眼C1.0と不変であった.また,経過中に眼圧上昇や角膜内皮細胞密度の減少は認めなかった.CIII考按CMVRの治療としてはガンシクロビルの点滴静注が第一にあげられるが,本症例のように連日の受診が困難な場合などには,ガンシクロビルのプロドラッグであるバルガンシクロビルの経口投与が選択される.ガンシクロビルおよびバルガンシクロビルを日和見感染症としてのCCMVRに対して使用する際には,そもそも白血球数が減少した背景で投与が必要となることに加え,その副作用によってさらに好中球減少を主体とする汎血球減少をきたしうることに配慮が必要となる.本症例でも眼治療開始時,すなわちバルガンシクロビル内服投与開始C35日目において白血球減少を認めたため減量を行い,173日目には投与中止,198日目には網膜炎再燃に対して内服投与再開,213日目に所見改善を踏まえて減量,さらにC236日目には白血球減少および網膜炎再増悪を認めたため,ガンシクロビルの硝子体内投与への切り替えと,頻回な治療内容変更が必要であった.悪性リンパ腫は組織学的にホジキンリンパ腫(Hodgkinlymphoma:HL)と非ホジキンリンパ腫(nonCHodgkinClym-phoma:NHL)に大別されるが,大半がCNHLであり,わが国におけるCHLの頻度は全悪性リンパ腫のうちC5.10%とされている.NHLは,成熟CB細胞腫瘍,成熟CT細胞腫瘍,NK細胞腫瘍,および前駆リンパ細胞腫瘍に分類され,FLは成熟CB細胞腫瘍にあたる.また,NHLの悪性度はその進行スピードによって,進行が年単位の低悪性度,月単位の中悪性度,週単位の高悪性度に分類される.FLはCNHL全体のC10.20%を占める代表的な低悪性度CB細胞リンパ腫であ図2治療開始295日目の眼底写真a:右眼.5時方向の白色病変はほぼ消失した.Cb:左眼.硝子体混濁,乳頭浮腫は改善,下耳側の白色滲出病変も退縮傾向.り,B細胞の機能低下による日和見感染症や,B細胞の異常増殖による赤血球や血小板の産生低下による疲労感や出血傾向などをきたす.治療は病期によって異なり,放射線療法,リツキシマブ,放射性同位元素(RI)標識抗体療法,造血幹細胞移植,抗CCD20抗体併用化学療法による治療が一般的に行われる.本症例は濾胞性リンパ腫の再発例であることから血液内科によってオビヌツズマブ+ベンダムスチンの投薬が行われていた.ベンダムスチンは国内では再発または難治性の低悪性度CB細胞性CNHLおよびマントル細胞リンパ腫を適応症として2010年C10月に単剤での使用が承認され,2016年C8月には慢性リンパ性白血病の効能・効果追加の承認を取得,2016年C12月には未治療の低悪性度CB細胞性CNHLおよびマントル細胞リンパ腫に対する効能・効果追加の承認を取得した薬剤であり,今後も使用される機会が増える可能性がある.副作用としては当初よりCCD4陽性CTリンパ球数の減少が報告5.7)されいる.7,000白血球数(/μl)6,000G-CSF5,0004,0003,0002,0001,0000143085121173194219236281331355463経過日数(日)図3治療経過と白血球数の推移本症例においても図3のとおりCCD4陽性CTリンパ球数は随時C100Cμl以下(45.100/μl)と低かったことが,CMV網膜炎が発症し再燃を繰り返した要因として考えられる.ベンダムスチン投与後のCCD4陽性CTリンパ球数の減少は約C1年にわたるとの報告もあり8,9),当症例でも図3のとおり眼科治療開始C295日目すなわちベンダムスチン最終投与後C364日目にCCD4陽性CTリンパ球数はC100/μlと上昇がみられ,その後は一貫してCCD4陽性CTリンパ球数C100/μl以上の状態が維持されていたため,CMVRの再燃はC2021年C2月現在みられていない.本症例では当初よりフィルグラスチム(G-CSF製剤)が継続投薬されており,白血球数を含む汎血球数の増減と眼局所所見の増悪寛解を密にモニタリングし血液内科と眼科との連携を緊密に行ったことで,抗CCMV薬の投与量や投与方法の変更を適宜行いつつもCCMVRに対する治療継続が可能であったと考えられた.また,眼科受診機転が視機能低下ではなく糖尿病網膜症のスクリーニング目的であり,ほぼ無症状の段階でCCMVRの早期発見と治療開始がなされたことも,その後の良好な経過につながったと考えられる.一方で眼底所見(図1b)からは,周辺部顆粒型が無症状に遷延進行し後極に進展しつつあった可能性があり,糖尿病網膜症スクリーニング目的での当科受診がなければ,さらに後極網膜の障害が進行して視機能低下を伴ってからの発見および治療開始となったことも懸念される.後天性免疫不全症候群(AIDS)患者においてはCCD4陽性Tリンパ球数がC100/μl以下でCCMVRのリスクが高いと考えられており,50/μl以下の症例では約C40%でCCMV網膜炎が再燃するとの報告もある10,11).またCHIV(humanimmuno-de.ciencyvirus)感染者においてCCD4陽性CTリンパ球数が50/μl未満の患者のC5%,200/μl未満の患者のC3%にCCMVRの存在が認められ12),CD4陽性CTリンパ球減少時にはCMVRに対するスクリーニングが勧められている.一方で造血器腫瘍患者,免疫抑制剤や抗癌剤投与患者に対するCMV感染症のスクリーニングは必ずしも一般的といえない.CMVに対する適応免疫としては他のウイルスに対する適応免疫と同様に液性免疫および細胞性免疫の関与が考えられている.細胞性免疫としてはCCMVの構成蛋白に対する特異的なCCD4陽性およびCCD8陽性CTリンパ球が証明されており13),これらの障害によるCCMV感染症の発症が想定される.一方でCCD4陽性CTリンパ球数が正常でありながら全身性エリトマトーデス(systemiclupuserythematosus:SLE)にCCMVRを合併した症例も報告14)されているが,これらの症例ではCSLEに対して経口コルチコステロイドとアザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルが投与されている.CMVの潜伏感染および再活性化に際してはCCMVの特定の遺伝子の発現や宿主の免疫との関係が複雑に関与していることが示唆されており,これらの症例ではCSLEそのものや治療薬の投与の影響でCCD4陽性CTリンパ球数以外の免疫機能が変化した結果,CMVRを発症した可能性がある.すなわちCCD4陽性リンパ球数の著しい減少がみられる場合にはCCMVRを含めた日和見感染症のリスクが上昇するが,CD4陽性リンパ球数が正常であるからといってCCMVRのリスクがないとはいえない.本症例は濾胞性リンパ腫の再発例であることから,他の免疫機能の変化もCCMVRの発症・遷延に関与した可能性があるが,ベンダムスチン投与後にリンパ球減少を認めCCMVRを含めた全身性のCCMV感染症をきたした報告8)もあることを踏まえると,本症例においてもベンダムスチンによるCCD4陽性リンパ球の減少が関与した可能性が否定できない.一症例のみの経過からではあるが,筆者らは造血器腫瘍患者においても,とりわけ本症例のようなベンダムスチン投与後のCCD4陽性CTリンパ球数低下症例においてはCCMVRの発症を念頭に置き,眼科スクリーニングを考慮する必要があるのではないかと考えた.また,当症例においてはCCD4陽性CTリンパ球数がC100/μlを超えた眼科治療開始C295日目以降も,主治医の判断によってC355日目までにガンシクロビル硝子体注射C1,000Cμg/0.04Cmlを7回投与行ってはいるが,その後は最終投与後C108日経過したC2月C4日現在においてCCMVRの再燃がみられていない.CMVRに対する治療は長期に行う必要があり再燃の懸念もあることから,投薬中止の判断を局所所見のみから行うのがむずかしいが,この点においてもCCD4陽性CTリンパ球数が目安となる可能性がある.今後の症例追加による検証が期待される.CIV結論濾胞性リンパ腫に対するベンダムスチン投与症例においてCD4陽性CTリンパ球の減少を認めた場合には自覚症状がなくてもCCMVR発症の可能性があり,CD4陽性CTリンパ球低下は投与終了後C1年後ほど遷延するため,回復するまで長期にわたってCCMVRに対するスクリーニングおよび治療が必要な可能性がある.文献1)谷口行恵,佐々木慎一,矢倉慶子ほか:悪性リンパ腫患者に発症した前眼部炎症を伴うサイトメガロウイルス網膜炎のC1例.あたらしい眼科34:875-879,C20172)柳田淳子,蕪城俊克,田中理恵ほか:近年のサイトメガロウイルス網膜炎の臨床像の検討.あたらしい眼科C32:699-703,C20153)島崎晴菜,高山圭,菅岡晋平ほか:後天性免疫不全症候群以外の患者に発症したサイトメガロウイルス網膜炎C5例の臨床的検討.あたらしい眼科37:609-614,C20204)浅井純志,宇根宏容,白木邦彦ほか:過去C5年間のサイトメガロウイルス網膜炎のC6症例の検討.臨眼C70:1270-1274,C20165)KathR,BlumenstengelK,FrickeHJetal:Bendamustine,vincristine,Cprednisolone(BOP)inCtherapyCofCadvancedClow-gradeCnon-HodgkinClymphoma.CDtschCMedCWochen-schrC126:198-202,C20016)KathR,BlumenstengelK,FrickeHJetal:Bendamustinemonotherapyinadvancedandrefractorychroniclympho-cyticleukemia.JCancerResClinOncolC127:48-54,C20017)BremerK:HighCratesCofClong-lastingCremissionsCafterC5-dayCbendamustineCchemotherapyCcyclesCinCpre-treatedClow-gradeCnon-Hodgkin’s-lymphomas.CJCCancerCResCClinCOncolC128:603-609,C20028)ConaA,TesoroD,ChiamentiMetal:Disseminatedcyto-megalovirusCdiseaseCafterbendamustine:aCcaseCreportCandCanalysisCofCcirculatingCB-andCT-cellCsubsets.CBMCCInfectDisC19:881,C20199)GarciaCMunozCR,CIzquierdo-GilCA,CMunozCACetal:LymC-phocyteCrecoveryCisCimpairedCinCpatientsCwithCchronicClymphocyticCleukemiaCandCindolentCnon-HodgkinClympho-masCtreatedCwithCbendamustineCplusCrituximab.CAnnCHematolC93:1879-1887,C201410)SongCMK,CKaravellasCMP,CMacDonaldCJCCetal:Charac-terizationCofCreactivationCofCcytomegalovirusCretinitisCinCpatientshealedaftertreatmentwithhighlyactiveantiret-roviraltherapy.RetinaC20:151-155,C200111)VrabecTR:PosteriorCsegmentCmanifestationsCofCHIV/CAIDS.SurvOphthalmolC49:131-157,C200412)NishijimaCT,CYashiroCS,CTeruyaCKCetal:RoutineCeyeCscreeningCbyCanCophthalmologistCisCclinicallyC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