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黄斑ジストロフィ

2025年3月31日 月曜日

黄斑ジストロフィMacularDystrophy角田和繁*はじめに黄斑ジストロフィ(maculardystrophy)とは,遺伝学的要因により黄斑部に進行性の機能障害をきたす疾患の総称である.日本眼科学会の診断ガイドラインにより,卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病),Stargardt病,オカルト黄斑ジストロフィ(三宅病),錐体ジストロフィ/錐体-杆体ジストロフィ,X連鎖性若年網膜分離症(先天網膜分離症),中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ,およびその他の黄斑ジストロフィに分類されている1,2).黄斑ジストロフィの発症原因となる遺伝子についてはこれまでに数多く報告されているが,未だに原因遺伝子が特定できない患者も多く,全症例のなかでも網羅的遺伝学的検査によって原因特定に至るのは約60%程度と考えられている2).上述の疾患分類はおもに眼底所見(検眼鏡的所見)や電気生理学的所見を中心とした表現型(phenotype)をもとに確立されたものである.しかし,網膜ジストロフィに対する遺伝子治療の研究が進むとともに,表現型ではなく,遺伝型(genotype)をもとにした分類の重要性が高まりつつある.たとえばPRPH2遺伝子による網膜障害は,網膜色素変性と黄斑ジストロフィのどちらも生じることが知られており,それらの症例は一括して「PRPH2遺伝子関連網膜ジストロフィ」とよばれることがある.黄斑ジストロフィの臨床診断にあたっては,初発症状,症状経過,家族歴を詳細に聴取したうえで,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT),眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF)などの画像検査や,網膜電図(electroretinogram:ERG),眼電位図(electrooculogram:EOG)などの電気生理学的検査を包括的に行う必要がある.なお臨床の現場では,前述の6分類のいずれにも当てはまらない「その他の黄斑ジストロフィ」の患者が多くみられることも重要なポイントである.本稿では診断ガイドラインの分類に従い,黄斑ジストロフィのうち卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病),Star-gardt病,オカルト黄斑ジストロフィ,中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィおよびその他の黄斑ジストロフィについて解説する.なお,錐体ジストロフィ/錐体-杆体ジストロフィとX連鎖性若年網膜分離症については,それぞれ本特集の別項目で解説されている.I卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)ベストロフィン蛋白の異常に関連した黄斑ジストロフィはベストロフィン症(bestrophinopathy)と総称され,代表疾患として卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病),常染色体潜性ベストロフィノパチー,さらに成人発症卵黄様黄斑変性症があげられる.卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の黄斑ジストロフィであり,Best1遺伝子の異常を原因とする(図1)3).Best1遺伝子は網膜色素上皮細胞の基底膜に存在する蛋白質であるベストロ*KazushigeTsunoda:東京医療センター臨床研究センター(感覚器センター)視覚研究部〔別刷請求先〕角田和繁:〒152-8902東京都目黒区東が丘2-5-1東京医療センター臨床研究センター(感覚器センター)視覚研究部0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(57)321図1Best病の眼底所見,眼底自発蛍光,OCT所見a:卵黄期(8歳,男児).矯正視力1.0.眼底写真(左)では,黄斑部に卵黄様物質の沈着を認める.眼底自発蛍光(右)では卵黄様物質の部位に一致したリポフスチン様物質の過蛍光を認める().b:炒り卵期(45歳,男性).矯正視力0.3.眼底写真(左)では黄斑部の楕円形病変部と,その内部に散在する網膜下沈着物を多数認める.眼底自発蛍光(右)では楕円形病変部の辺縁に過蛍光を認める().c:炒り卵期(45歳,男性)のOCT所見.黄斑部に網膜下液が貯留し,視細胞外節は中心窩を除いて萎縮している.本症例では,網膜色素上皮層が中心部において肥厚している.い前卵黄期,眼底に卵黄様物質が沈着する卵黄期(図1a),卵黄が崩れて下方に貯留する偽蓄膿期,黄色斑がまだらになる炒り卵期(図1b),黄斑部に萎縮性変化をきたす萎縮期のC5期に分類されている5).このうち卵黄期の「卵黄状病変」が特徴的とされるが,眼底に卵黄様の変化がみられる期間は無症状であることが多く,実際に眼科を受診するのは卵黄期を過ぎた患者が大半である.すなわち,通常の診療で典型的な卵黄期病変をみる機会はきわめて少ない.また,偽蓄膿期以降には黄斑部にドーム状の漿液性網膜.離が観察されるため,中心性漿液性脈絡網膜症と誤って診断されるケースが非常に多い.さらに,萎縮期には脈絡膜新生血管を生じるケースもある.視力は中心窩における視細胞外節の有無に依存しており,このため,萎縮期に至らないうちは眼底所見の割に視力低下が軽度である患者も多い.視力低下を訴える時期には学童期から中年以降までと幅があり,自覚症状の出現年齢にばらつきがある.全視野CERGは多くの患者で正常であるが,EOGでは基礎電位の低下,Arden比の低下が顕著にみられる6).Best病の診断にはとくに眼底自発蛍光が有用であり,卵黄期,偽蓄膿期,および炒り卵期にみられる黄色のリポフスチン様物質の分布に一致して,強い過蛍光が両眼性に観察される(図1a,b).卵黄期のリポフスチン様物質は次第に漿液性の網膜下液に置換され,偽蓄膿期以降では中心性漿液性脈絡網膜症によく似たCOCT所見がみられることが多い(図1c).また,Best病と臨床的特徴が類似しているものの,同じCBest1遺伝子の変異を両アレルにもつことで発症する常染色体潜性(劣性)ベストロフィノパチー(autoso-malCrecessivebestrophinopathy:ARB)の症例報告が増えてきている7,8).ARBではCBest病と同様に眼底異常が黄斑部に限定した症例から,リポフスチン様物質の蓄積が黄斑部を越えて後極の広範囲に広がる患者まで多彩である.一般的に,ARBはCBest病に比べて網膜障害範囲が広く重症といわれているが,実際には両親を含めた遺伝学的検査を施行しないとCBest病との正確な鑑別は困難である.また,経過中に網膜色素上皮層の変性に伴い脈絡膜新生血管を生じる症例があるため,注意深い経過観察が必要である.さらに,Best病とCARBに共通した特徴として遠視および狭隅角が知られており,とくに中年以降には狭隅角に伴う眼圧上昇に注意する必要がある.なお,家族歴がなく成人期に発症するタイプは,成人発症卵黄様黄斑変性症(adult-onsetvitelliformmaculardystrophy:AVMD)とよばれている.眼底所見はCBest病に類似しているが黄斑部病変が小さく,EOGも正常か軽度の異常を示す.遺伝学的にはCBest1遺伝子に変異を認める患者も含まれるが頻度は高くはなく,PRPH2遺伝子に異常を認める患者も知られている.臨床的にBest病とCAVMDの区別が困難な患者もときおりみられる.CIIStargardt病黄斑部における網膜外層の萎縮病変および黄斑部周囲に散在する多発性黄色斑(.eck)を特徴とする黄斑ジストロフィで,ABCA4遺伝子の異常を原因とする常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患である(図2)9,10).ABCA4蛋白はCvisualcycleにおいて視細胞外節円板における膜輸送蛋白質として機能しており,同蛋白の機能不全によってリポフスチンの主要成分であるCDi-retinoid-pyridini-umethanolamine(A2E)が網膜色素上皮層に蓄積することで細胞障害を引き起こすと考えられている.若年発症例では,10歳前後で両眼の視力低下を主訴に来院することが多い.初期には黄斑部萎縮,黄色斑などの検眼鏡的所見は明瞭ではないが,OCTで観察すると明らかな視細胞変性がみられる.また,フルオレセイン蛍光造影における背景蛍光の低下(darkchoroid)も特徴的な所見である.とくに進行期においては,眼底自発蛍光で黄斑部の楕円形低蛍光(図2a),黄色斑に一致した斑状の過蛍光(図2b),および視神経乳頭周囲の眼底自発蛍光が正常に保たれるCperipapillaryCsparing(図2c)など,本疾患に特徴的な所見が多くみられる.小児期の進行は比較的早く,数年のうちに黄斑部萎縮が進行し,視力が低下していく.一方で,発症年齢が20歳以上の晩期発症例においては中心窩が長期的に温存されことが多く(中心窩回避),視力予後は比較的よいとされる.このようにCABCA4遺伝子異常による病(59)あたらしい眼科Vol.42,No.3,2025C323図2Stargardt病の眼底所見(左)と眼底自発蛍光所見(右)a:小児期にみられる典型的な黄斑部萎縮所見(10歳,男児.矯正視力C0.2).まだ黄色斑は出現していない.眼底自発蛍光では楕円形の蛍光低下領域がみられる().b:黄斑部の萎縮と黄斑部周囲に黄色斑がみられる晩期発症型の所見(41歳,男性.矯正視力C0.4).眼底自発蛍光では黄色斑に一致した過蛍光がみられる().c:病変が後極を超えて広範囲に広がるものの,中心窩回避により視力良好な症例(44歳,男性.矯正視力C0.8).視神経乳頭周囲には自発蛍光の異常がみられないCperipapillarysparingが観察される().bad図3オカルト黄斑ジストロフィの眼底所見,眼底自発蛍光,ERG,OCT所見a:28歳,男性.矯正視力C0.5.眼底写真(左),眼底自発蛍光(右)はともに正常である.Cb:多局所CERG.両眼において,黄斑部に相当する領域での振幅低下がみられる().c:黄斑部局所CERG.5°,10°,15°の刺激に対する応答がいずれも健常者に比べて減弱している.d:OCT所見.黄斑部においてCinterdigitationzoneが消失し,ellipsoidzoneは不明瞭化,膨潤化している(楕円内).とくに中心窩におけるCEZの不明瞭化が顕著であるが,黄斑部周囲のCEZは明瞭である.=図4中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィの眼底写真および眼底自発蛍光a:眼底写真では萎縮病巣のなかに脈絡膜血管が観察される(44歳,男性,矯正視力C0.5).b:眼底自発蛍光では,自発蛍光の消失領域がまだ中心窩に及んでいないことがわかるが,さらに進行すると円形の萎縮病巣となる.図5その他の黄斑ジストロフィの眼底写真および眼底自発蛍光50歳,女性.矯正視力C1.2.全視野CERGにおける錐体反応が正常であるため「その他」に分類されているが,黄斑ジストロフィとしては非常によくみられるタイプである.同じ眼底所見でも,全視野CERGにおける錐体反応が低下している症例は「錐体ジストロフィ」に分類されることになる.眼底写真(Ca),眼底自発蛍光(Cb)において,中心窩が温存されている様子がわかる().—

錐体優位の網膜ジストロフィ

2025年3月31日 月曜日

錐体優位の網膜ジストロフィCone-DominantRetinalDystrophy溝渕圭*はじめに本稿では遺伝性網膜疾患(inheritedretinaldystro-phy:IRD)において錐体機能不全を呈する疾患として,錐体ジストロフィ(conedystrophy:COD),錐体-杆体ジストロフィ(cone-roddystrophy:CORD),全色盲(杆体一色覚,青錐体一色覚)について解説する.前半は,錐体機能が優位に障害されるIRDの代表的な疾患として,COD/CORDをとりあげ,後半では全色盲について述べる.COD/CORDの一般的な特徴には,進行性の視力障害,両眼性の黄斑変性・萎縮の存在,そして全視野刺激網膜電図(electroretinogram:ERG)で錐体系応答の減弱があげられる.しかし,臨床の現場では,黄斑変性・萎縮がほとんど認められない患者や晩期まで視力が維持される患者など,典型的な特徴に当てはまらない例もあり,診断に苦慮することが少なくない.現在までにCOD/CORDの原因と考えられる遺伝子は50程度報告されており,その数だけ臨床的な多様性が存在する.このような遺伝的背景の多様性が,臨床所見だけで診断を下すことを困難にしている要因の一つである.このため,次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析の重要性は今後さらに高まると考えられる.全色盲(杆体一色覚,青錐体一色覚)は先天性の錐体機能不全を呈するきわめてまれなIRDである.弱視として経過観察されている患者も少なくなく,実際の頻度は報告以上に高いと考えられる.そのため,正確な診断には臨床的特徴の把握が重要となる.全色盲の一般的な特徴はCOD/CORDと類似するものの進行に乏しく,生来視力が良好な時期がない点で鑑別可能である.一方で,杆体一色覚と青錐体一色覚の鑑別には色刺激ERGおよび遺伝子解析が有用であるが,いずれの検査も結果の解釈・評価がむずかしい点が課題となる.I錐体/杆体ジストロフィ1.概要COD/CORDは黄斑部を越えて眼底の広範囲に錐体機能不全を呈する疾患の総称であり,多くの場合に黄斑ジストロフィに分類される.一般的な特徴として,両眼性に進行性の黄斑部病変を呈すること,それに伴い視力低下,羞明(まぶしさ),色覚異常の悪化,そして遺伝性疾患であることがあげられる.日本では,遺伝性網膜疾患のなかで網膜色素変性についで頻度が高いとされるが,その発症率は欧米と比べると約5分の1程度と推定されている1).原因遺伝子や遺伝形式は多岐にわたり,日本では常染色体潜性遺伝形式が多いと考えられている2).2.臨床症状と検査所見本疾患の診断には,眼底写真,眼底自発蛍光(fundusauto-.uorescence:FAF),光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT),ERGがおもに用いられる.かつては蛍光造影検査が広く使用されてきたが,現在はFAFにとって代わられ,必須の検査ではなくな*KeiMizobuchi:東京慈恵会医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕溝渕圭:〒105-8461東京都港区西新橋3-25-8東京慈恵会医科大学眼科学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(49)313図1錐体ジストロフィ/錐体-桿体ジストロフィ(COD/CORD)の眼底所見上段:40歳.Ca:眼底写真では黄斑部から視神経乳頭にかけて黄斑変性・萎縮を認める.b:FAFでは萎縮部位に一致して低蛍光がみられ,その周囲に過蛍光が存在する.c:OCTでは,中心窩にCEZを含む外層網膜の消失および著しい菲薄化を認めるが,耳側網膜には外顆粒層(ONL),外境界膜(ELM),EZが温存されている.下段:68歳.Cd:眼底写真では黄斑変性・萎縮が著明に拡大し,その範囲が視神経乳頭やアーケード血管を越えている.Ce:FAFにおいても低蛍光部位(黄斑変性・萎縮)が拡大し,周囲の過蛍光領域がアーケード血管周囲まで広がっていることが確認される.f:OCTにおいても外層網膜の消失および欠損が進行しており,撮像範囲内に外層網膜が温存されている部位は確認できない.(文献C3より改変引用)10代30代30代30代60代60代controlKA34615y.oKA24830y.oKA24435y.oJU125931y.oJU098368y.oJU125869y.o100μV100μV100μV100μV50μV50μV図2錐体ジストロフィ/錐体-桿体ジストロフィのERG所見10代の症例:錐体系応答は著しく振幅が減弱しているが,杆体系応答の振幅は正常範囲内である.30代の症例:錐体系応答はほとんど検出されないが,杆体系応答はC10代の症例と同様に温存されている.60代の症例:錐体系応答だけでなく,杆体系応答の振幅も減弱している.この結果より,錐体機能だけでなく杆体機能も年齢依存性に増悪することがわかる.(文献C3より改変引用)ab図3中心窩の網膜構造が温存された錐体ジストロフィ/錐体-桿体ジストロフィの眼底所見a:FAF(右から2番目)では黄斑変性・萎縮に一致した低蛍光を認めるが,中心窩は正常所見である.OCT(一番右)でも中心窩のみ外境界膜,ellipsoidzoneを含む外層網膜がわずかに温存されており,変性が中心窩を回避していることがわかる.Cb:傍中心窩に過蛍光および低蛍光所見を認めるが,中心窩は正常所見である.OCT(一番右)において傍中心窩にCEZを含む外層網膜の欠損を一部認めるが,撮像範囲のほとんどで変性が回避されていることが明らかである.(文献C4より改変引用)ab図4Stargardt病の眼底所見a:初回検査時.FAF(中央)では黄斑変性・萎縮に一致する低蛍光を認め,黄色斑は低蛍光と過蛍光の両方を示している.OCT(右)では黄斑変性・萎縮に一致して著しく外層網膜が消失・菲薄化している.Cb:7年後検査時.眼底写真(左)およびCFAF(中央)では,黄斑変性・萎縮が拡大し,黄色斑の数および分布範囲が増大・拡大している.OCT(右)においても消失・菲薄化している外層網膜の範囲が広がっていることが明らかである.(文献C5より改変引用)ac図5典型的な杆体一色覚の眼底所見,全視野刺激ERG,視力の経過a:眼底写真(左)およびCFAF(中央)では明らかな変化を確認できない.OCT(右)ではCEZは視認可能であるが撮像範囲のすべてで不明瞭となっている.その他の外境界膜,外顆粒層などの外層網膜の異常所見を認めない.Cb:全視野刺激CERG.杆体系応答は正常範囲内であり,一方で錐体系応答は反応を認めない.Cc:視力の経過.15年の経過観察期間で矯正視力は小数視力でC0.1(logMAR視力でC1.0に該当)程度で推移しており,停止性であることが示唆される.(文献C7より改変引用)a20-40μVμVμVμVμV0-20-60-80050100150ms杆体応答(0.010cd・s/m2)60504030050100150ms050100150ms最大応答(3.0cd・s/m2)フラッシュ応答(10.0cd・s/m2)642μV302010020-1010-200-30-8-20020406080020406080100-20020406080-10msmsms錐体応答30HzFlicker応答S-錐体応答(3.0cd・s/m2背景光30cd・s/m2)(3.0cd・s/m2背景光:30cd・s/m2(青色光:0.25cd・s/m2赤色背景:560cd/図6S錐体一色覚の症例における眼底所見とERG所見a:眼底写真(左)およびCFAF(中央)では明らかな変化を認めない.OCT(右)では中心窩のCEZが不明瞭でCfovealbulgeも消失している.杆体一色覚と非常に類似した眼底所見であることがわかる.Cb:全視野刺激CERGでは杆体系応答および錐体系応答は杆体一色覚と同様に杆体系応答が正常範囲内で,錐体系応答は消失している.色刺激CERG(右下)はCS錐体応答でC40ミリ秒付近(→)に反応を認める.

網膜中層障害

2025年3月31日 月曜日

網膜中層障害InheritedRetinalDystrophyofMiddleRetinalLayers小南太郎*はじめに光受容のプロセスは,まず網膜の最外層に存在する視細胞で光を受容し,光が電気信号に変換されたのちに視細胞から双極細胞や神経節細胞を通じて外層から内層へと伝達され,最終的に視神経を介して脳の視覚中枢に送られる.このどこに障害が生じても視覚障害が生じるが,遺伝性網脈絡膜疾患では網膜外層の視細胞に障害が生じる網膜色素変性がもっとも代表的な疾患である.しかし,遺伝性網脈絡膜疾患のなかには,双極細胞の障害や網膜間細胞接着不全を起こす網膜中層障害といえる疾患がある.網膜中層障害は眼底に異常が出にくい場合や,網膜電図が特徴的な変化を起こす場合があり,その診断には注意を要する.本項では網膜中層疾患の代表的な停在性夜盲と先天性網膜分離症について概説する.CI先天停在性夜盲1.概要先天停在性夜盲(congenitalCstationaryCnightCblind-ness:CSNB)は,生まれつき夜盲を呈し,かつ非進行性の網膜疾患である.小口病などの眼底が異常なものと,眼底が正常な狭義のCCSNBに分類される.狭義のCSNBはCSchubert-Bornschein型,Riggs型,Nouga-ret型に分かれるが,このうちCSchubert-Bornschein型はCON型双極細胞機能不全による完全型CCSNBと,ON型・OFF型双極細胞への伝達障害が生じる不全型CSNBに分かれる1~5).網膜中層障害を扱う本稿では完全型CCSNBと不全型CCSNBについて解説する.CSNBは学童期に視力低下で受診する場合が多い.弱視や心因性視力障害との鑑別が重要である.治療法はないが,その名のとおり非進行性で,学童期に視力不良であっても青年期には(0.7)以上の視力となり運転免許も取得できる場合がある.C2.病態完全型CCSNBの病因遺伝子としてCNYX,CTRPM1,GRM6などが知られており,ON型双極細胞機能障害が生じる.杆体に障害がなくとも,杆体で受け取った情報を伝達するCON型細胞に障害(図1)があることから暗所視が障害され夜盲が生じる.不全型CCSNBの病因遺伝子としてCCACNA1Fとrodconerodcone図1視細胞から双極細胞へのシグナル伝達の模式図a:完全型.ON型双極細胞の機能障害.b:不全型.ON型,OFF型双極細胞への不完全な伝達障害.*TaroKominami名古屋大学医学部附属病院眼科〔別刷請求先〕小南太郎:〒466-8560名古屋市昭和区鶴舞町C65名古屋大学医学部附属病院眼科C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(43)C307表1完全型先天停在性夜盲(CSNB)と不全型CSNBの違い完全型不全型屈折異常(強度)近視近視~遠視夜盲あり少ないERG杆体反応なし減弱ERG杆体-錐体最大応答陰性型陰性型(律動様小波あり)ERG錐体反応幅広のCa波減弱ERGFlicker応答振幅正常減弱遺伝形式伴性潜性,常染色体潜性伴性潜性,常染色体潜性おもな病因遺伝子CNYX,TRPM1,GRM6CCACNA1F,CABP4正常完全型先天停在性夜盲不全型先天停在性夜盲100μV杆体応答反応なし反応あり50ms杆体-錐体最大応答200μV25ms陰性型100μ錐体応答25ms幅広のa波反応減弱30Hz25μVFlicker応答反応減弱25ms図2ERG波形の違いab杆体応答フラッシュ最大応答錐体応答Flicker応答(30Hz)図3完全型CSNBの所見16歳,男性.NYX遺伝子変異検出.Ca:眼底写真.近視性の眼底変化がある.b:OCTでも長眼軸によるものと思われる弯曲がめだつ.c:ERGはフラッシュ応答で陰性型を呈し,杆体応答は検出されないが,錐体応答,Flicker応答の振幅は減弱が確認されない.錐体応答で幅広のCa波が検出される.杆体応答フラッシュ最大応答錐体応答Flicker応答(30Hz)図4不全型CSNBの所見26歳,男性.CACNA1F遺伝子変異検出.眼底写真(Ca)やCOCT(Cb)に特記すべき異常はないが,ERG(Cc)はフラッシュ最大応答で陰性型を呈し,杆体系・錐体系・Flicker応答の反応は減弱している.杆体応答フラッシュ最大応答錐体応答Flicker応答(30Hz)図5先天網膜分離症の画像所見と網膜電図所見7歳,男性.RS1遺伝子変異,就学時健診の視力不良で受診.Ca:黄斑部に車軸様変化を認める.b:OCTで網膜分離所見を認める.Cc:全視野CERGのフラッシュ最大応答でCb波振幅がCa波振幅を下回る陰性型のCERGを認める.図6周辺の反射と耳下側の胞状の網膜分離所見27歳,男性.左眼の広角眼底写真.RS1遺伝子変異.一見すると網膜.離と思えるような,耳下側の大きな内層孔を伴う胞状の網膜分離がある().OCTでは網膜内層の牽引および網膜分離が認められるが,視細胞と網膜色素上皮は接着しており,網膜.離ではないことを確認している.3歳児健診で内斜視の指摘があり初診して以来,20年以上にわたる経過観察をしているが,著明な悪化傾向はない.周辺には小口病~網膜震盪症類似の網膜反射もみられる().図7先天網膜分離症の網膜分離が軽減する経過先天網膜分離患者(RS1遺伝子変異,男性)のC48歳,49歳,50歳,51歳時の左眼のCOCT(水平断)所見を示す.経時的に網膜分離は軽減したが(),51歳時にはエリプソイドゾーンが不鮮明になるなど外層の萎縮がみられ,患者は左眼の見えにくさを訴えている.

非進行性夜盲疾患(白点状眼底と小口病)

2025年3月31日 月曜日

非進行性夜盲疾患(白点状眼底と小口病)CongenitalStationaryNightBlindness(FundusAlbipunctatusandOguchiDisease)近藤峰生*はじめに夜盲は暗所における視機能異常と定義され,暗所視機能を担当する杆体系細胞の広範囲な障害に起因する.その原因の多くは遺伝性網膜ジストロフィが占めている.夜盲性疾患の診断は十分な問診と眼底検査が基本になるが,視野検査,網膜電図(electroretinogram:ERG),光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT),暗順応検査などの検査も重要である.さらに診断が困難な患者では,確定診断として遺伝学的検査も有用である.しかし,現時点では夜盲の症状だけで遺伝学的検査の保険適用とはならず,研究目的の検査となるのが実情である.問診では,夜盲の発症時期,進行の有無,夜盲以外の眼症状,そして家族歴を詳細に聴取する.とくに患者が小児の場合には,家族に具体的な日常の動作や生活の様子(夜や暗所で歩きにくそうにしているかなど)を聞くとよい.夜盲の発症時期と進行の有無を問診することによって,疾患の大体の見当をつけることが可能である.進行性の夜盲であれば,網膜色素変性およびその類縁疾患をまず念頭に置く.これに対して停止性(幼少より夜盲が存在し,しかも進行している様子がない)夜盲であれば,小口病,白点状眼底,先天停在性夜盲の可能性を考える.このうち,小口病と白点状眼底は眼底所見が特徴的で診断は比較的容易である.眼底が正常である場合には先天停在性夜盲の可能性を考える.さらに,後天性夜盲の場合にはビタミンA欠乏や腫瘍関連網膜症〔癌関連網膜症(cancer-associatedretinopathy:CAR),悪性黒色腫関連網膜症(melanoma-associatedretinopa-thy:MAR)など〕も念頭に置くことが大切である.本稿では,先天停在性夜盲のなかで特徴的な眼底所見を示す白点状眼底と小口病について,最近の話題も含めて解説する.I白点状眼底1.疾患の概念と原因白点状眼底(fundusalbipunctatus)1.5)は,眼底に多数の白点(図1)がみられ,生来の夜盲を示す遺伝性網膜ジストロフィの一つである.小児期に夜盲あるいは眼底異常を指摘されて専門医を受診することが多い.遺伝形式は常染色体潜性(劣性)であり,原因遺伝子はRDH5である6,7).RDH5の遺伝子産物は11シスレチノールデヒドロゲナーゼとよばれる酵素である8.10).RDH5の異常は,この酵素の機能を低下または消失させ,11シスレチノールの異常蓄積や11シスレチナールの欠乏など,視サイクルのリサイクル障害を引き起こし,夜盲の原因となる.2.臨床症状と検査所見白点状眼底の主症状は生来の夜盲であり,視力,色覚,視野などの異常は訴えないのが普通である.ただし,後述するように一部の患者は黄斑変性や錐体ジストロフィを合併することがあり,その場合は視力低下や羞*MineoKondo:三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学〔別刷請求先〕近藤峰生:〒514-8507津市江戸橋2-174三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(35)299図1白点状眼底の典型的な所見a:眼底写真.眼底には無数の小さな白点がみられる.b:フルオレセイン蛍光造影ではそれほどめだった変化はみられない.正常白点状眼底30分暗順応後120分暗順応後杆体応答(DA0.01)50ms100μV200μV最大応答(DA10.0)25ms錐体応答(LA3.0)25ms100μV25μVFlicker応答(LA30-Hz)25ms図2白点状眼底の全視野ERG所見30分暗順応後に記録する通常の全視野ERGにおいては,杆体応答や最大応答の振幅が低下するが,2時間程度の暗順応でほぼ正常に回復する.6543210暗順応時間(分)図3正常者,白点状眼底,および小口病の暗順応検査の結果白点状眼底も小口病も暗順応の遅延がみられるが,小口病のほうが遅延の程度が強い.光覚閾値の対数01020304050100200300400500図4白点状眼底の白点部位のOCT所見a:白点状眼底.Cb:網膜色素上皮からCellipsoidzone(EZ)()を貫くような筒状の高反射帯がみられる.は外境界膜.C200150100500年齢(歳)図5白点状眼底における全視野ERGの錐体応答の振幅と年齢の関係.-加齢に伴って錐体応答の振幅が徐々に低下していく傾向があることがわかる.(文献C14より改変引用)錐体ERGの振幅(μV)図6典型的な小口病の眼底「.げた金箔様の反射」がみられる.図7小口病患者の眼底にみられる水尾・中村現象a:暗順応前の眼底.b:3時間暗順応後の眼底.金箔様反射は長時間の暗順応後に色調が正常に戻る.正常小口病杆体応答100μV(DA0.01)50ms杆体-錐体最大応答200μV(DA10.0)25ms錐体応答100μV(LA3.0)25msFlicker応答25μV(LA30Hz)25ms図8小口病患者から記録された全視野ERG杆体応答は消失しており,最大応答も減弱している.最大応答は,a波が正常よりかなり小さく,b波がCa波より小さい「偽陰性波」となる.錐体応答やC30HzFlicker応答は正常である.図9眼底の後極部に網脈絡膜萎縮を伴った小口病患者の所見a:眼底写真.Cb:フルオレセイン蛍光造影.c:Goldmann視野検査,Cd:OCT.ab正常患者杆体応答100μV(DA0.01)50ms錐体応答100μV(LA3.0)25msFlicker応答25μV(LA30-Hz)25ms最大応答200μV(DA10.0)25ms図10眼底の後極部に網脈絡膜萎縮を伴った小口病患者の所見a:暗順応前の眼底(左)とC3時間暗順応後の眼底(右).長時間の暗順応後に金箔様反射が正常に戻る水尾・中村現象が認められた.b:全視野CERGの結果.すると金箔状の変化は消失した(図10a).そこで小口病を疑って全視野CERGを記録すると,全体的に振幅は小さいが小口病に特徴的なCERG変化がみられた(図10b).患者の遺伝子解析の結果,SAG遺伝子のC1147delAのホモ接合が検出された.これらの結果から,この患者はCSAG遺伝子変異による,眼底後極部に網脈絡膜萎縮を伴った小口病であると診断した.おわりに本稿では停在性夜盲の中で特徴的な眼底所見を示す白点状眼底と小口病について,最近の話題も含めて解説した.この二つの疾患は,以前は停止性の夜盲疾患と信じられてきたが,その後進行性の網膜変性を伴いうることがわかり,その発見に日本人研究者の多大な貢献があった.これらの疾患の病態メカニズムや治療に向けた研究が今後さらに進むことを祈る.文献1)CarrRE,RippsH,SiegelIM:VisualpigmentkineticsandadaptationCinCfundusCalbipunctatus.CDocCOphthalCProcCSeriesC4:193-204,C19742)CarrRE,MargolisS,SiegelIM:FluoresceinangiographyandvitaminAandoxalatelevelsinfundusalbipunctatus.CAmJOphthalmolC82:549-558,C19763)MarmorMF:Fundusalbipunctatus:ACclinicalCstudyCofCthefunduslesions,thephysiologicde.cit,andthevitaminAmetabolism.DocOphthalmolC43:277-302,C19774)DryjaTP:MolecularCgeneticsCofCOguchiCdisease,CfundusCalbipunctatus,CandCotherCformsCofCstationaryCnightCblind-ness:LVIICEdwardCJacksonCMemorialCLecture.CAmCJOphthalmolC130:547-563,C20005)ZeitzCC,CRobsonCAG,CAudoI:CongenitalCstationaryCnightblindness:ananalysisandupdateofgenotype-phenotypecorrelationsCandCpathogenicCmechanisms.CProgCRetinCEyeCResC45:58-110,C20156)Gonzalez-FernandezCF,CKurzCD,CBaoCYCetal:11-cisCreti-noldehydrogenasemutationsasamajorcauseofthecon-genitalCnight-blindnessCdisorderCknownCasCfundusCalbi-punctatus.MolVisC5:41,C19997)YamamotoCH,CSimonCA,CErikssonCUCetal:MutationsCinCtheCgeneCencodingC11-cisCretinolCdehydrogenaseCcauseCdelayedCdarkCadaptationCandCfundusCalbipunctatus.CNatCGenetC22:188-191,C19998)DriessenCA,JanssenBP,WinkensHJetal:CloningandexpressionCofCaCcDNACencodingCbovineCretinalCpigmentCepithelial11-cisretinoldehydrogenase.InvestOphthalmol306あたらしい眼科Vol.42,No.3,2025VisSciC36:1988-1996,C19959)SimonA,HellmanU,WernstedtCetal:Theretinalpig-mentCepithelial-speci.cC11-cisCretinolCdehydrogenaseCbelongstothefamilyofshortchainalcoholdehydrogenas-es.JBiolChemC270:1107-1112,C199510)ThompsonDA,GalA:VitaminAmetabolisminthereti-nalpigmentCepithelium:genes,Cmutations,CandCdiseases.CProgRetinEyeResC22:683-703,C200311)MakiyamaY,OotoS,HangaiMetal:ConeabnormalitiesinCfundusCalbipunctatusCassociatedCwithCRDH5CmutationsCassessedusingadaptiveopticsscanninglaserophthalmos-copy.AmJOphthalmolC157:558-570,C201412)MiyakeY,ShiroyamaN,SugitaSetal:Fundusalbipunc-tatusCassociatedCwithCconeCdystrophy.CBrCJCOphthalmolC76:375-379,C199213)NakamuraM,HottaY,TanikawaAetal:Ahighassocia-tionwithconedystrophyinFundusalbipunctatuscausedbyCmutationsCofCtheCRDH5Cgene.CInvestCOphthalmolCVisCSciC41:3925-3932,C200014)NiwaCY,CKondoCM,CUenoCSCetal:ConeCandCrodCdysfunc-tionCinCfundusCalbipunctatusCwithCRDH5mutation:AnCelectrophysiologicalstudy.CInvestOphthalmolVisSci46:C1480-1485,C200515)KatagiriS,HayashiT,NakamuraMetal:RDH5-relatedfundusCalbipunctatusCinCaClargeCJapaneseCcohort.CInvestCOphthalmolVisSciC61:53,C202016)小口忠太:夜盲症ノ一種ニ就テ.日眼会誌C11:123-134,C190717)CarrCRE,CGourasP:OguchiC’sCdisease.CArchCOphthalmolC73:646-656,C196518)MiyakeY,HoriguchiM,SuzukiSetal:Electrophysiologi-calC.ndingsCinCpatientsCwithCOguchi’sCdisease.CJpnCJCOph-thalmol40:511-519,C199619)FuchsCS,CNakazawaCM,CMawCMCetal:AChomozygousC1-baseCpairCdeletionCinCtheCarrestinCgeneCisCaCfrequentCcauseCofCOguchiCdiseaseCinCJapanese.CNatCGenetC10:360-362,C199520)YamamotoCS,CSippelCKC,CBersonCELCetal:DefectsCinCtheCrhodopsinCkinaseCgeneCinCtheCOguchiCformCofCstationaryCnightblindness.NatGenetC15:175-178,C199721)UenoCS,CKondoCM,CNiwaCYCetal:LuminanceCdependenceCofneuralcomponentsthatunderliestheprimatephotopicelectroretinogram.CInvestCOphthalmolCVisCSciC45:1033-1040,C200422)NakazawaCM,CWadaCY,CFuchsCSCetal:Oguchidisease:CphenotypicCcharacteristicsCofCpatientsCwithCtheCfrequentC1147delAmutationinthearrestingene.Retina17:17-22,C199723)NishiguchiCKM,CIkedaCY,CFujitaCKCetal:PhenotypicCfea-turesCofCOguchiCdiseaseCandCretinitisCpigmentosaCinCpatientswithS-antigenmutations:along-termfollow-upstudy.OphthalmologyC126:1557-1566,C2019(42)

網膜色素変性の類縁疾患

2025年3月31日 月曜日

網膜色素変性の類縁疾患RetinitisPigmentosaandAssociatedDiseases大石明生*はじめに本稿のタイトルは「網膜色素変性(retinitisCpigmen-tosa:RP)の類縁疾患」となっている.“鑑別疾患”ではなく“類縁疾患”となっているのは,症状や所見だけでなく,原因が共通している,つまり原因遺伝子にも一部重複があるということを示唆している.教科書ではそれぞれ別の項目で記載してあるのに,網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)の類縁疾患としてまとめることには違和感があるかもしれないが,実際に専門外来がない施設などでは“RP”と一くくりに診断されていることも多いと感じる疾患群である.RPの類縁疾患といったときにどこまでを含むか正確な定義はないが,わが国のガイドラインではCLeber先天盲,クリスタリン網膜症,コロイデレミア,脳回状脈絡網膜萎縮がこのカテゴリとしてあげられている1).ただし,考え方によっては本特集の別項で扱われる停止性夜盲の疾患群も遺伝性,杆体細胞の障害という点で類縁であり,全身症状を伴う症候性のジストロフィも基本的に眼所見からはCRPと区別できないため,広い意味では網膜ジストロフィはすべてCRPの類縁疾患ともいえる(図1).RPの類縁疾患とは,このように曖昧な用語であるということは意識しておくほうがよい.ちなみに,今回の特集の対象からははずれるが,RPの鑑別疾患として癌関連網膜症,自己免疫網膜症,ビタミンCA欠乏,風疹や梅毒などの感染性,クロロキンなど薬剤性など遺伝性以外のものが含まれることには留意しておきたい.これらは診断が治療に結びつくため,適切な診断がより重要な疾患ともいえる.CILeber先天盲Leber先天盲(LeberCcongenitalamaurosis:LCA)は,遺伝的要因により網膜が障害される疾患のうち,とくに生後早期に発症する疾患群をさす病名である.最初に報告したCLeberの名前を冠してこの病名がついている.なお,Leber遺伝性視神経症,Leber粟粒血管腫のLeberとは同一人物である.LCAとその治療は大きなトピックになっており2),本特集の別項で扱われているのでそちらを参照されたい.CIIクリスタリン網膜症クリスタリン網膜症(BietticrystallineCdystrophy:BCD)もCLCAのCLeber同様,最初に報告したCBiettiの名前が冠されている疾患で,常染色体潜性の遺伝形式をとる.周辺部から始まる網脈絡膜萎縮をきたす点ではRPと同様であるが,クリスタリン様物質とよばれる検眼鏡的にキラキラ光る結晶様の沈着物を多数認めることが特徴である.注意深く観察すると角膜輪部にもクリスタリン様物質がみられるが,顕微鏡の倍率を相当上げてやっと見える程度で診断的意義は低い.画像診断では赤外光(infraredre.ectance:IR)画像が有用で,検眼鏡的に見える以上に多くのクリスタリン様物質が描出される.光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:*AkioOishi:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座眼科・視覚科学〔別刷請求先〕大石明生:〒852-8501長崎市坂本C1-7-1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座眼科・視覚科学C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(29)C293図1網膜障害に嗅覚障害を合併した症候性網膜色素変性(RP)の眼底写真とOCT画像a:眼底写真.Cb:OCT画像.網膜変性に聴覚障害を合併するとCUsher症候群とよばれるが,嗅覚障害の合併はCCNGB1のバリアントによって生じる名前のついていない症候性CRPである.黄斑部にわずかに正常に近い色調の部位が残るのみで,網膜は広範に萎縮変性,OCTでも菲薄化がみられる.眼底所見のみから「これは症候性CRPである」とか,「RPのなかでもこの遺伝子が原因である」ということは,今後CAIの活用で可能になるのかもしれないが,現時点では不可能である.図2クリスタリン網膜症の眼底写真とOCT画像a:眼底写真.Cb:全体に粗造な色調の変性した網膜に加え,無数の黄白色の沈着物(クリスタリン様物質)がみられる.Cb:赤外光(IR).この沈着物はCIR画像のほうが確認しやすい.Cc:OCT画像.クリスタリン様物質に対応した網膜色素上皮上の沈着のほか,outerretinaltubulation(→)がほとんどの症例にみられることが特徴である.図3遺伝学的検査でCHM遺伝子の異常が同定されたコロイデレミア(CHM2)の2症例の眼底写真とOCT画像aの症例は色素が抜けた白っぽい背景に脈絡膜血管が透けてみえる典型的なCCHMの所見に近い.Cbの症例はまだ20代と年齢が低いこともあってか,CHMらしいとはいいにくい眼底像である.どちらの症例もCOCT画像(Cc,d)は萎縮部位に対応して網膜外層の菲薄化を呈す.図4コロイデレミア(CHM)患者の症例の母親の眼底写真,自発蛍光画像,OCT画像眼底写真(Ca)では網膜全体にごま塩状といわれるような変性所見を呈し,自発蛍光(Cb)も増強/減弱の異常を,OCT(Cc)でも網膜外層構造の乱れを認めるが,自覚的には無症状である.CHMに限らず,X連鎖性の網膜ジストロフィではしばしばキャリアにも所見がみられるため(図5参照),診断の補助になる.(京都大学・沼尚吾先生のご厚意による)図5RPGR遺伝子のバリアントによる網膜色素変性患者の母親の眼底写真と自発蛍光画像検眼鏡や眼底写真(Ca)では異常は指摘しにくいが,特徴的な放射状の異常自発蛍光を認める(Cb).このように,X連鎖性の網膜ジストロフィでは家族の検査が診断に有用である.一方で,遺伝学的検査では遺伝カウンセリングなど慎重な対応が求められるのに対し,これらの検査では所見をみただけで原因遺伝子がほぼ絞られてしまう.検査結果の伝え方には配慮が必要である.(京都大学・沼尚吾先生のご厚意による)–

Leber先天盲とRPE65遺伝子網膜ジストロフィの遺伝子治療

2025年3月31日 月曜日

Leber先天盲とRPE65遺伝子網膜ジストロフィの遺伝子治療GeneTherapyforLeber’sCongenitalAmaurosisandRPE65-AssociatedRetinalDystrophy前田亜希子*はじめにLeber先天盲の一つであるCRPE65関連網膜症への遺伝子治療が,網膜疾患における初の遺伝子治療として2023年C8月に保険適用となった.本治療の実施に必須である遺伝学的検査も同時に保険収載されており,わが国における網膜ゲノム医療が始まっている.CILeber先天盲生後すぐからC1歳までに視力低下を含む眼症状のみられる重症な網膜ジストロフィがC1869年にCLeberによって報告されCLeber先天盲(LeberCcongenitalCamauro-sis:LCA)とよばれている1).LCAは,乳児期からC5歳までに発症する早期発症型重度網膜ジストロフィ(earlyonsetCsevereCretinaldystrophy:EOSRD)と原因遺伝子に重複があることが知られており,両者は同一の疾患群として扱われることが多い.原因遺伝子は常染色体潜性遺伝形式をとるものがC24種類,常染色体顕性遺伝形式をとるものがC3種類報告されている(表1)2).わが国での34家系における解析では,CRB1,NMNAT1,RPGRIP1が多く検出されている(表2)3).LCAとEOSRDは早期発症の重症な視覚障害を呈するが,原因遺伝子により臨床的にさまざまな特徴があり,一部には視機能の低下はあるものの網膜構造は維持されているものがある.RPE65関連網膜症はその代表であり(図1),網膜構造が維持されている幼少期あるいは疾患早期における治療の可能性が示唆されていた.IIRPE65と網膜ビタミンA代謝RPE65は網膜色素上皮(retinalpigmentepithelial:RPE)細胞に存在する分子量C65kDaの蛋白質であり,網膜ビタミンCA代謝における必須分子である.視細胞では光信号から電気信号への変換が行われている.ビタミンCA誘導体であるC11シスレチナールは光感受性分子であり,11シスレチナールからオールトランスレチナールへの光異性化(立体構造変化)が光受容の最初の反応である.この立体構造変化により,視細胞のロドプシンが活性化され,一連の生化学反応が惹起され,その結果として視細胞膜上のイオンチャンネルが閉鎖し,膜内外に電位差が生じることにより電気信号が発生する.ビタミンCA(オールトランスレチノール)は食物として摂取され,RPE細胞へと運ばれる.RPEではこのビタミンCAから光感受性のC11シスレチナールが産生されるが,この最初の反応を行っているのがCRPE65である(図2).また,11シスレチナールの光異性化で産生されるオールトランスレチナールはCRPE細胞に運ばれて再び光感受性のC11シスレチナールに変換され,再利用される.RPE65は光受容に必須なC11シスレチナール産生に不可欠な酵素である.CIIIRPE65関連網膜症RPE65関連網膜症では,RPE65異常により光感受性ビタミンCA誘導体C11シスレチナールの産生が停止・*AkikoMaeda:神戸アイセンター病院〔別刷請求先〕前田亜希子:〒650-0047神戸市中央区港島南町C2-1-8神戸アイセンター病院C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(23)C287表1LCAとEOSRDの原因遺伝子AILP1,CCABP4,CCCT2,CCEP290,CCLUAP1,CCRB1,CCRX,C常染色体潜性(劣性)遺伝CDTHD1,CGDF6,CGUCY2D,CIFT140,CIQCB1,CKCNJ13,CLCA5,CLRAT,NMNAT1,PRPH2,RD3,RDH12,RPE65,RPGRIP1,SPATA7,TULP1,USP45常染色体顕潜性(優性)遺伝CCRX,IMPDH1,OTX2(文献C2より改変引用)表2日本人LCAとEOSRDの34家系における原因遺伝子の頻度LCA・EOSRD原因遺伝子CCRB1,NMNAT1,RPGRIP1(各C8.8%)GUCY2D(5.9%)CCEP290,CRX,IMPDH1,LRAT,PRPH2(各C2.9%)他のCIRD原因遺伝子CRP2,RPGR,BEST1(各C2.9%)同定なし(44.5%)(文献C3より引用)図1若年RPE65関連網膜症例の網膜画像患者はC5歳で,視力は右眼C0.1(0.1×sph+1.75D(cyl.2.25DAx10°),左眼C0.07(0.08×sph+1.50D(cyl.3.00DAx180).a:カラー眼底写真では明らかな異常所見は認めない.b:眼底自発蛍光像では全体に健常者よりも低蛍光であるが,視神経周囲を含む後極部に周辺よりも高い自発蛍光を認める.c:OCTでは網膜層構造が維持されていることがわかる.10代50代図3RPE65関連網膜症における視野変化RPE65関連網膜症では,幼少期には視野は維持されていることが多い.徐々に視野狭窄が進行し,10代以降で色覚異常を呈し,50代で失明することが多い.図4壮年期以降のRPE65関連網膜症例の網膜画像a:患者はC45歳,視力は右眼(0.01×sph+3.00D),左眼(0.01C×sph+3.00D).網膜層構造は比較的維持されているが,黄斑部のCellipsoidzoneは不明瞭である.b:患者はC67歳,視力は両眼ともに光覚なし.OCTで視細胞層は確認できない.図5RPE65遺伝子治療RPE65遺伝子治療(ルクスターナ注)ではCAAV2に搭載されたヒトCRPE65遺伝子配列が網膜下に注射液として投与される.治療群治療前治療開始30901801年2年3年4年5年図6RPE65遺伝子治療効果ルクスターナ注の投与後における網膜感度の経過を示す.網膜感度は全視野網膜感度(full.eldstimulusthresholdtest:FST)を測定している.両群において治療後にC100.1000倍の網膜感度の改善が記録されている.(文献C5より改変引用)表3RPE65関連網膜症を疑う所見①常染色体潜性(孤発を含む)の遺伝形式が疑われる②学童期までに発症した重度の夜盲,および視力低下③全視野網膜電図の低下または消失(文献C7より引用)表4遺伝学的検査実施施設とRPE65遺伝子治療実施施設遺伝学的検査実施施設RPE65遺伝子治療施設北海道大学病院,国立病院機構東京医療センター,国立成育医療研究センター,東京慈恵会医科大学病院,順天堂大学病院,浜松医科大学病院,名古屋大学病院,京都大学病院,大阪大学病院,神戸アイセンター病院,産業医科大学病院,九州大学病院・国立病院機構東京医療センター・神戸アイセンター病院(文献8,9より作成)

網膜色素変性の診断,検査と最新の治療

2025年3月31日 月曜日

網膜色素変性の診断,検査と最新の治療Diagnosis,ClinicalExamination,andLatestTreatmentsforRetinitisPigmentosa池田康博*はじめに網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)は,「視細胞および網膜色素上皮細胞を原発とした進行性の広範な変性がみられる遺伝性の疾患群」と定義される1).すなわち,網膜外層にある視細胞や網膜色素上皮(retinalpig-mentepithelium:RPE)に発現している遺伝子の異常により,一般には若年期に発症して緩徐に進行し,中年ないし老年で高度な視機能障害に至る疾患の総称である.眼科領域の代表的な難病で,指定難病の一つである2).定型RPは,病初期には杆体の変性が先行し,疾患の進行とともに錐体の変性が生じる杆体錐体ジストロフィと同義で,典型的な臨床所見を呈する.臨床所見が典型的でないRPは非定型RPと分類され,網膜の一部のみにしか変性が認められない区画性RP,片眼性RP,中心型(傍中心型)RPなどが含まれる.さらに,他臓器疾患あるいは全身的な疾患に合併するRPも認められ,感音難聴を伴うUsher症候群は頻度が高い(表1).国内における頻度は4,000.5,000人に1人程度とされており,視覚障害の原因疾患では第二位となっている3).1990年に常染色体顕性(優性)RPの原因として報告されたロドプシン遺伝子をはじめとして,これまでに80種類以上の遺伝子がRPの原因となることが知られているが,わが国ではEYS遺伝子に変異のある患者の頻度が高い4).遺伝形式は,常染色体顕性遺伝(15%程度),常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)(30%程度),X染色体潜性遺伝(2%程度)で,家系内に他の発症者が確認できない孤発例も約半分存在する5).I診断と検査網膜色素変性診療ガイドラインに記載されている診断基準は,指定難病の認定基準とほぼ同義である(表2)1).進行性の夜盲,求心性視野狭窄,視力低下,羞明や昼盲という自覚症状に加え,後述の検査所見により診断される.杆体細胞の障害により生じる夜盲が初発症状としては多い.検査としては眼底検査,網膜電図(electroret-inogram:ERG),視野検査,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT),眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF)が有用であるが,このうち確定診断に必要な検査は,眼底検査とERGである(視野検査は自覚症状の確認のために必要).眼底検査では,RPEの粗造化(色素むら),網膜血管の狭細化,骨小体様などの色素沈着が両眼性に認められるが(図1),特徴的な色素沈着が認められない無色素性表1網膜色素変性を合併する全身疾患Alagille症候群Bardet-Biedl症候群Cockayne症候群Hunter症候群Hurler症候群Kearns-Sayre症候群Scheie症候群Usher症候群*YasuhiroIkeda:宮崎大学医学部眼科学〔別刷請求先〕池田康博:〒889-1692宮崎市清武町木原5200宮崎大学医学部眼科学0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(17)281表2網膜色素変性の診断基準1自覚症状①夜盲②視野狭窄③視力低下④羞明(または昼盲)2臨床検査所見(1)眼底所見網膜血管狭小粗造な網膜色調骨小体様色素沈着多発する白点視神経萎縮黄斑変性(2)網膜電図の異常(減弱型,陰性型,消失型)(3)眼底自発蛍光所見で網膜色素上皮萎縮による過蛍光または低蛍光(4)光干渉断層計で中心窩におけるエリプソイドゾーン(IS/OS)の異常(不連続または消失)3診断の判定①進行性の病変である.②自覚症状で,上記のいずれかC1つ以上がみられる.③眼底所見で,上記のいずれかC2つ以上がみられる.④網膜電図で,上記の所見がみられる.⑤炎症性または続発性でない.上記,①.⑤のすべてを満たすものを,指定難病としての網膜色素変性と診断する.注C1:矯正視力,視野ともに,良好なほうの眼の測定値を用いる.注2:視野狭窄ありとは,中心の残存視野がCGoldmannI-4視標でC20度以内とする.(文献C1より引用)図1網膜色素変性の眼底所見網膜色素上皮細胞の粗造化(色素むら),網膜血管の狭細化が認められる.色素沈着の程度は患者によってさまざまである.a:黄斑部まで変性が進行している.b:後極が保たれている.図2Goldmann視野検査の経時的な変化a,b:中間周辺部の暗点が少しずつ拡大する.c,d:輪状暗点(Cc)から求心性視野狭窄(Cd)に進行していく.図3網膜色素変性患者のOCT所見a:初診時.網膜が菲薄化し,周辺部のCEZは消失している.Cb:12年後.EZがさらに短縮している.図4網膜色素変性患者の眼底自発蛍光所見a:網膜変性の部位に一致した低蛍光を認める.b:視野検査(GP)では,眼底自発蛍光写真を上下反転した低蛍光の部分に対応した視野欠損を認める.図5眼底自発蛍光とOCTの対応黄斑部に輪状の過蛍光(AFring)を認める.AFringの内側はEZが保たれている.表3遺伝子治療の第III相臨床試験一覧臨床試験登録CNo.対象疾患フェーズ治験薬投与方法被験者数開発者CNCT00999609CLCA2第CIII相CAAV2-hRPE65v2網膜下31名CSparkTherapeuticsCNCT04516369CLCA2第CIII相VoretigeneNeparvovec(AAVC2-hRPE65v2)網膜下4名CNovartisPharmaceuticalsCNCT03496012コロイデレミア第CIII相CAAV2-REP1網膜下169名CNightstaRxLtd/BiogenCompanyCNCT03116113RP(RPGR)第CIC/II/III相CAAV8-RPGR網膜下63名CNightstaRxLtd/BiogenCompanyCNCT03584165コロイデレミア&RP(RPGR)第CIII相BIIB111(AAVC2-REP1)C&BIIB112(AAVC8-RPGR)網膜下330名CNightstaRxLtd/BiogenCompanyCNCT06388200RP(RHO,その他)第CIII相OCU400(AAVC5,gene-agnosticmodi.ergenetherapyproductbasedonNHRgene,NR2E3)網膜下150名COcugenCNCT04671433RP(RPGR)第CIII相CAAV5-hRKp.RPGR網膜下97名CJanssenResearch&Development,LLCCNCT05926583RP(RPGR)第CIII相CAAV5-hRKp.RPGR網膜下4名CJanssenPharmaceuticalCK.K.CNCT03913143CLCA10第CIIC/CIII相QR-110(RNAantisenseoligonucleotide)硝子体内36名CProQRTherapeuticsCNCT04855045CLCA10第CIIC/CIII相QR-110(RNAantisenseoligonucleotide)硝子体内15名CProQRTherapeuticsCNCT05158296RP(USHC2A)第CIIC/CIII相Ultevursen(QR-421a,ssRNAoligo)硝子体内7名CProQRTherapeuticsCNCT05176717RP(USHC2A)第CIIC/CIII相Ultevursen(QR-421a,ssRNAoligo)硝子体内5名CProQRTherapeuticsCNCT04850118RP(RPGR)第CIIC/CIII相AGTC-501(AAVC2tYF-GRK1-RPGR)網膜下75名CBeaconTherapeuticsLCA:Leber先天盲,RP:網膜色素変性-

遺伝性網膜疾患と遺伝子解析 

2025年3月31日 月曜日

遺伝性網膜疾患と遺伝子解析GeneticAnalysisofInheritedRetinalDisease西口康二*はじめにこれまで長らく,遺伝性網膜疾患に対しては病因遺伝子や変異に対する特異的な治療法はなかった.しかし,遺伝子治療を含め病因遺伝子や変異をターゲットとした治療の社会実装が全科横断的に進むなか,網膜分野でも遺伝子治療薬のボレチゲンネパルボベクルクスターナ注(ノバルティスファーマ)が保険収載され,遺伝子検査や検査結果に基づく病因遺伝子ごとの病型の把握の重要性が増している.本稿では,遺伝子検査の現状を研究と臨床応用の両面から考察し,治療開発の観点で注目を集めているいくつかの病因遺伝子などについて,遺伝子異常が引き起こす網膜疾患の特徴を解説する.I遺伝性網膜疾患と遺伝子解析法遺伝性網膜疾患に対して網羅的な遺伝子解析を行った場合,遺伝子診断に至る確率(遺伝子診断率)は地域や人種によって大きく異なる.日本人の遺伝子診断率は40%程度であり1.3),他の地域の多くで診断率が60%程度以上であるのに比べて低い3).しかし,ゲノム医療の拡大が予測されるなか,遺伝性網膜疾患の遺伝子診断の向上は遺伝子研究で解決しなければならない重要な課題である.ここでは,眼科領域の研究で行われている代表的な四つの遺伝子解析法について長所と短所を比較しつつ説明する(表1).1.パネルシーケンス特定の疾患と関連する既知の病因遺伝子群についてターゲットを絞ってDNA配列を調べることで,解析に要するコストや時間を節約可能である.しかし,未知の病因遺伝子変異を検出する目的に用いることはできない.解析対象の遺伝子では,蛋白質をコードしているすべてのエクソン(用語解説参照)を評価することで,これまで報告されているほとんどの病因遺伝子変異とエクソン内の未知の変異を検出可能である.一方で,蛋白をコードしていない非翻訳領域や,イントロン(用語解説参照)の変異の多くは検出することがむずかしい.これらの点は新規性が重要な研究では欠点とも考えられるが,判断や扱いに困る余分な情報が発生しにくいことにもなるため,臨床現場での遺伝子診断への応用に適している.一方で,遺伝子診断率向上に資する新規遺伝子変異を特定することを視野に入れた研究では,異なった遺伝子解析手法と組み合わせて行われることが多い.2.全エクソーム解析全エクソーム解析(wholeexomesequencing:WES)は,エクソンに絞ってシーケンスする点はパネルシーケンスに似ているが,解析対象が特定の遺伝子ではなく全遺伝子である点が異なる.眼科領域においても,既知の病因遺伝子だけでなく,未知の遺伝子や新たな病因遺伝子を発見する際に広く用いられている.一方で,WESにはいくつかの制約もある.パネルシーケンスと同様*KojiNishiguchi:名古屋大学大学院医学系研究科眼科学分野〔別刷請求先〕西口康二:〒980-8574名古屋市昭和区鶴舞町65名古屋大学大学院医学系研究科眼科学分野0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(11)275表1遺伝子解析法の長所・短所手法長所短所パネルシーケンス・疾患に関連する既知の病因遺伝子を効率よく解析可能・データ量が比較的少なく解析が容易・臨床に応用されやすい・解析対象が限られる(対象外の遺伝子や未知の原因は検出できない)全エクソーム解析・すべての遺伝子のエクソン領域(蛋白質をコードする部分)全体を網羅・未知の病因遺伝子などの探索に適している・イントロン(エクソンとエクソンの間の非翻訳領域)などエクソン外の領域の変異の多くは検出できない・データ解析がパネルシーケンスより複雑全ゲノム解析・ゲノム全体を網羅的に解析可能・エクソン外の領域や構造変異も検出可能・膨大なデータ量が生じるために解析が複雑・コストが高い・解析に時間を要するゲノムワイド関連解析・非翻訳領域にあるバリアントなど直感的にわかりにくい疾患関連バリアントを検出可能・バイアスなくゲノム全体を解析可能・疾患感受性遺伝子と病因変異の両方を検出可能・集団レベルの情報が得られる・頻度が比較的高い疾患関連バリアントのみ検出可能であるため,検出感度は低い・単独では病因変異の特定に至らない・解析を外注できない・膨大な数の患者と対象者のCDNAを解析する必要があるため,要する費用も解析時間も桁違いに大きい図1RPE65関連網膜色素変性の眼底写真型を示すことが多い可能性がある.これらの患者は眼振もなく,幼少期に生活に大きな支障が出にくく,早期に眼科受診しないことも多々ある.網膜電図(electroretinogram:ERG)では幼少期から「消失型」の反応が一般的であるが,残存機能がある場合は「杆体-錐体型」の反応が観察されることがある.光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)では,網膜外層の菲薄化が確認されるものの,視機能の低下に比べて組織が比較的良好に保たれている点も特徴的である.また,眼底自発蛍光検査では全体的な蛍光低下が顕著であり,網膜色素上皮の機能不全と眼内ビタミンCA代謝異常に矛盾しない9).CVRPGR関連網膜色素変性RPGR(retinitisCpigmentosaCGTPaseregulator)は,網膜視細胞の繊毛構造に局在し,細胞内輸送機能を維持するために不可欠な蛋白質をコードする遺伝子である.この遺伝子の変異による網膜色素変性は,若年で発症する傾向があり,進行性の視力低下や視野欠損が生じる.近年,RPGR関連網膜色素変性に対する遺伝子治療の開発が進められており,現在,わが国でも治験が行われている.RPGR関連網膜色素変性は,おもにCX染色体性遺伝を示し,男性(XY染色体)はC1コピーしかないCRPGR遺伝子に病的変異があると症状が重症化する傾向がある.これに対し,女性(XX染色体)は同遺伝子をC2コピーもつため,通常はキャリアとして無症状または軽症であることが多い.しかし,女性患者でもまれに網膜変性が進行し,男性患者と区別がつかない重症な表現型を示す場合もある.視力や視野に関して,RPGR関連網膜色素変性は初期に比較的良好であることが多いが,病状の進行は比較的早く,経過に伴い視機能の低下が顕著となる10,11).とくに視野欠損が進行し,早期に中心性視野狭窄を呈することもある.また,強度近視を示す患者が多く,女性保因者でも強度近視を示すことも報告されている11).男性患者の眼底自発蛍光検査では,網膜色素変性に特徴的な斑状・顆粒状・弓状・輪状の低蛍光や過蛍光が周辺網膜を中心に広い範囲でみられる.一方で女性保因者は,黄斑部から周辺部に向かって放射状に低蛍光や過蛍光が混ざって広がる特徴的なパターンがみられるケースが多い12).このため,女性保因者の眼底自発蛍光はCRPGR関連網膜色素変性の診断にも有用である.また,RPGR遺伝子の変異の多くはCORF15というリピート配列が多い領域に存在する.この領域にバリアントをもつ患者は重症化しやすいことが知られており,また,杆体錐体ジストロフィを呈しやすい傾向もある13).CVIEYS関連網膜色素変性EYS蛋白質は健常者の視細胞において結合線毛に局在する.EYS遺伝子変異は常染色体潜性遺伝形式をとる.マウスやラットではCEYS遺伝子が欠損しているため,適切な疾患モデルの確立が課題である.また,光暴露による視細胞胞死がCEYS関連網膜変性疾患の病態に重要な役割を果たしていることが報告されている13).EYS関連網膜色素変性は東アジアに多いとされるが,日本人患者のなかではとりわけ頻度が高い.とくに,Cp.S1653Kfs*2,p.Y2935XまたはCp.G843E変異が多くみられることが,日本人患者の大きな遺伝的特徴である4).遺伝子サイズが大きいため,アデノ随伴ウイルスを用いた通常の遺伝子補充療法の開発はむずかしいが,高頻度変異を標的としたゲノム編集遺伝子治療の対象となりうる.臨床的には夜盲,視野狭窄で発症し,進行すると順応障害,視力低下,羞明などを訴える.また,ほとんどのケースでは網膜色素変性のフェノタイプを示すが,杆体錐体ジストロフィを呈することもある.ERGでは典型的な杆体錐体ジストロフィを示す.一部のCEYS関連網膜症は,視神経乳頭を挟んで鼻側と耳側の両側の網膜温存された結果,あたかも∞(インフィニティ)マークのような所見を示したり(図2),下方赤道部網膜が強く障害され,上方または鼻側網膜が比較的温存される所見を示すなど,眼底自発蛍光検査で特徴的な結果がみられることがある.CVIISAG関連網膜色素変性小口病はきわめてまれな疾患であり,病因遺伝子としてCSAGとCGRK1の二つが知られている.同疾患は日本278あたらしい眼科Vol.42,No.3,2025(14)図2EYS関連網膜色素変性の所見a:眼底自発蛍光画像.特徴的な∞(インフィニティ)サインがみられる.Cb:眼底写真.図3SAG関連網膜色素変性の眼底写真網膜変性の周辺に金屏風様反射が認められる().■用語解説■エクソン:遺伝子のなかで蛋白質をコードする部分.遺伝子はエクソンとイントロンから構成されており,エクソンは実際に蛋白質の設計図となる配列をもっている.エクソン内の変異は,蛋白質の機能に直接影響を与えるため,病気の原因となることがある.イントロン:遺伝子のなかで蛋白質をコードしない部分.エクソンと交互に存在し,mRNAのスプライシング過程で除去される.イントロンの役割は完全には解明されていないが,遺伝子の発現調節に関与していると考えられている.CPrismGuideIRDパネル:遺伝性網膜疾患の原因となるC82の遺伝子を対象にした遺伝子検査.2023年に薬事承認され,全国C12施設で実施可能.治療適応の判定を目的とし,とくにルクスターナ注の投与対象患者の同定に用いられる.体外診断薬(IVD):生体試料(血液など)を用いて体外で解析し,治療の適応判定などの評価を行うための検査薬である.また,IVDは高い品質管理基準が適用されているため,検査代が高額になり,適応が限定される傾向がある.–

遺伝性網膜疾患の診断と評価

2025年3月31日 月曜日

遺伝性網膜疾患の診断と評価DiagnosisandEvaluationofInheritedRetinalDiseases上野真治*はじめに近年の遺伝子解析技術の進歩により,遺伝性網膜疾患(inheritedretinaldystrophy:IRD)の病態解明が飛躍的に進んできた.世界的にはIRDの診断は遺伝子解析によって行われる流れではあるが,一方で多くのIRDと考えられる患者で原因遺伝子が同定できない現実もある.わが国ではまだIRDの一部しか遺伝子診断が保険で認められていない状況ではあるが,たとえ遺伝子診断ができるようになっても適切な臨床診断・評価の重要性は変わらないであろう.本稿では,総説としてIRDの診断と評価について概説する.I問診1.症状IRDの診断および病状把握のためには,症状の聞き取りが重要である.症状は障害の部位や程度によって多様であり,視力障害,視野障害に加えて夜盲,羞明,色覚異常などがみられる.杆体細胞が優先的に障害される網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)では,夜盲が視野狭窄や視力低下などの症状に先行することが多い.一方で,錐体機能が障害される錐体ジストロフィや黄斑ジストロフィでは,視力低下に加えて羞明や色覚異常が主訴となる.幼少期から障害があるLeber先天盲や杆体一色覚では眼振がみられることが多く,Leber先天盲では手で目を押さえたりこすったりするdigito-ocularsignがみられる場合もある.2.既往歴全身疾患を伴う症候性のIRDでは,視細胞の繊毛(cilia)に関連する遺伝子の変異により網膜障害を生じるが,腎臓や内耳などの他臓器のciliaの障害も併発するciliopathyとよばれる病態が有名である.それ以外にミトコンドリアの異常や神経難病に伴う障害も知られており,IRDを疑った場合に頻度は低いが症候性も考慮する.3.家族歴IRDにおいて家族歴の正確な聴取は重要で,家系図をカルテに記載する.遺伝形式は常染色体潜性,常染色体顕性,伴性潜性,孤発の四つに大きく分けられる.近年は少子化に伴い孤発例が増えている.両親が近親婚であれば,常染色体潜性の可能性が高いので,問診で聴取すべきである.常染色体顕性では同じ遺伝子変異をもっても重症度に差があり,軽度な場合は罹患者自身が疾患に気がついてないこともあり,正確な家族歴の聴取がむずかしいときもある.男性の場合は伴性潜性を考慮する必要がある.伴性潜性のRPや伴性潜性であるコロイデレミアや眼白皮症では,保因者である母親の眼底に異常があることが知られており,診断に役立つこともある.II視力検査視力は黄斑の中心窩の障害程度によって決まるが,RPでは中心機能が比較的保たれ,黄斑ジストロフィや*ShinjiUeno:弘前大学大学院医学研究科眼科学講座〔別刷請求先〕上野真治:〒036-8562弘前市在府町5弘前大学大学院医学研究科眼科学講座0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(3)267図1比較的軽症な網膜色素変性(RP)の画像所見a:眼底所見は典型的なRPのものである.b:OCTではellipsoidzone(EZ)が比較的広範囲に残存しているが,中心から離れたところでは外顆粒層の菲薄化()とEZの消失がみられる.c:超広角眼底カメラによる眼底所見.d:眼底自発蛍光所見.過蛍光リングとよばれる過蛍光の輪状所見()がみられ,その周囲には網膜色素上皮の萎縮に伴う低蛍光領域がみられる.図2眼底は正常だがOCTでEZの不鮮明化とIZの消失がみられた症例a:正常.Cb:眼底が正常な錐体ジストロフィの患者.aと比較してCEZが淡い.Cc:オカルト黄斑ジストロフィの患者.EZが不鮮明になり,顆粒状になっている.C-図3Best病の偽蓄膿における眼底写真と眼底自発蛍光検査(FAF)a:眼底写真.b:FAF.眼底写真の黄色の網膜下の沈着物に一致した過蛍光がみられる.図4白点状眼底の眼底写真と眼底自発蛍光検査(FAF)a:眼底写真.b:FAF.全体的に低蛍光となっている.これは,白点状眼底がレチノイドサイクルの酵素であるCRDH5の遺伝子の変異により生じるため,レチノイドサイクルが回らずにリポフスチンが蓄積されないことが理由と考えられている.a杆体応答(rodresponse)b杆体―錐体混合応答rodcone錐体応答(coneresponse)30HzFlickerLA3.0図5国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)プロトコールによるERG波形とその細胞起源a:杆体応答.Cb:杆体-錐体混合応答.Cc:錐体応答.30HzCFlicker応答の正常波形.錐体完全型正常小口病ジストロフィ停在性夜盲杆体応答100mV(DA0.01)50ms杆体-錐体混合応答(DA10.0)200mV25ms錐体応答100mV(LA3.0)25msFlicker応答25mV(30HzFlicker)25ms図6網膜障害のパターンによるERGの相違正常,小口病(選択的な杆体機能の低下),錐体ジストロフィ,完全型停在性夜盲(双極細胞レベルでの障害)のCISCEVプロトコールに従ったCERG波形.C-

序説:遺伝性網脈絡膜疾患アップデート

2025年3月31日 月曜日

遺伝性網脈絡膜疾患アップデートUpdatesontheKnowledgeofHereditaryChorioretinalDisorders上野真治*辻川明孝**RPE65遺伝子変異によるLeber先天盲に対する遺伝子治療薬が日本でも認可された.それに伴い,RPE65遺伝子関連網膜ジストロフィを疑う場合には遺伝学的検査が保険適用となっている.また,RPE65以外の原因遺伝子による網膜疾患に対しても国内で治験が進行しており,遺伝性網脈絡膜疾患はこれまでの「治療法がない疾患」から「治療の可能性がある疾患」へと変わりつつある.今後,眼科医には患者を適切に診断し,治療適応のある患者を見落とさないことが求められる.しかし,網膜色素変性以外の遺伝性網脈絡膜疾患は比較的珍しく,知識がなければ診断がむずかしい.さらに,遺伝子解析や画像検査の急速な進歩に知識が追いついていないのが眼科医の現状ではないだろうか.また,患者がインターネットで自身の疾患について調べ,その情報をもとに質問する時代となっており,眼科医にも遺伝性網脈絡膜疾患に関する一定の知識が必要となっている.本特集では,さまざまな遺伝性網脈絡膜疾患の検査,病態,治療に至る最新知識を網羅的に掲載し,知識のアップデートをはかることを目的としている.本書では,まず総論として遺伝性網脈絡膜疾患の診断に必要な臨床検査所見,遺伝子検査の実際とその具体例について述べ,続いて各論として疾患につ視細胞障害視細胞以外の障害網膜全体の異常網膜中層障害(双極細胞)おもに杆体の異常・進行性-網膜色素変性とその類縁疾患・停在性-小口病,白点状眼底・停在性夜盲・先天網膜分離おもに錐体の異常・停在性-杆体一色覚・進行性-錐体ジストロフィ視神経の障害・遺伝性視神経萎縮黄斑の異常硝子体の異常・黄斑ジストロフィ(Stargardt病,Best病,ほか多数)・家族性滲出硝子体網膜症図1遺伝性網脈絡膜疾患の分類いて解説する.遺伝性網脈絡膜疾患の分類を図1に示した.まず,視細胞の障害か視細胞以外の障害かに分類する.視細胞の障害の場合は,網膜全体の異常か黄斑の異常かで分類する.網膜全体の障害であれば,さらに錐体障害か杆体障害かで分類し,さらに進行性と停在性のものに分類する.本特集では視神経疾患と硝子体異常以外の疾患について解説していただいた.遺伝性網脈絡膜疾患のなかでもっとも頻度が高いのは網膜色素変性である.これは,視細胞障害のなかで網膜全体の杆体機能が進行性に障害される代表的な疾患である.網膜色素変性の項では,その診断*ShinjiUeno:弘前大学大学院医学研究科眼科学講座**AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(1)265-