考える手術.監修松井良諭・奥村直毅白内障硝子体同時手術における屈折誤差最小化をめざした術前戦略後藤聡大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室術前角膜評価に基づく“4ステップアプローチ”で最適なIOL選択を実現する(表1,動画①)ステップ1:角膜高次収差(higher-orderaberrations:HOAs)または不正乱視(irregularastigmatism)角膜トポグラフィーや波面収差計測を必要とする測定値であるが,角膜不正乱視を示すCHOAsがC0.3~0.5以上と検出される場合には,最良矯正視力の限界や非球面IOLの適応を十分に検討する必要があり,多焦点CIOLの使用は控えることが推奨される.ステップ2:角膜形状ケラト値の正常値はC40~48Dで,その範囲にC95%以上の患者が属することから,この値を逸脱する患者には注意が必要である.とくにC40Dより低い場合は,LASIKをはじめとしてなんらかの角膜屈折矯正手術の既往を確認する必要がある.48Dを超えるスティープな角膜では円錐角膜を疑う必要があり,角膜形状解析によって詳細に検証することが推奨される.LASIKやPRK,円錐角膜眼では特殊CIOL度数計算式を選択しなければ,術後予測屈折誤差が大きくなるため注意が必要である.ステップ3:角膜乱視ステップC1,2で不正乱視と特殊な度数計算を必要と表1眼内レンズ選択の4ステップステップ評価項目判定基準C1角膜高次収差(HOAs)HOAsが高値なら多焦点・トーリックCIOLを避け,術後視力の限界についてインフォームドコンセントが必要(HOAsはC0.3以下が望ましく,C0.3~C0.5では注意を要する)C2角膜形状屈折矯正手術後や円錐角膜のパターンなら,特別なCIOL計算式を使用C3角膜乱視規則的かつ非対称でない乱視ならトーリックCIOLが適応可能C4角膜球面収差角膜球面収差が負なら球面CIOLの適応を検討(67)あたらしい眼科Vol.42,No.12,2025C15450910-1810/25/\100/頁/JCOPY考える手術する症例を除外してきた.正乱視に対してはトーリックIOLの適応を考慮することで術後満足度向上が期待できる.適応基準値はさまざまであるが,直乱視であれば1.25~1.5D以上で,倒乱視ではC1.0D以上でトーリックレンズを使用することが多い.ステップ4:角膜球面収差(sphericalaberration:SA)角膜球面収差に応じた非球面CIOLの選択により,コントラスト感度や夜間視力の改善が期待される.平均的な日本人の球面収差はC0.27Cμmであり,非球面CIOLの球面収差は-0.27~0Cμmであることを考慮すると,眼全体の球面収差を低減させることでコントラスト感度を上昇させることが期待でき,プレミアムCIOLの選択時には考慮したい項目である.このような多角的アプローチにより,IOL選択の個別化が進み,術後の視機能満足度が向上することが期待される.聞き手:4ステップアプローチの方法を教えてください.後藤:図1と動画①で具体例を示して概説します.日本では白内障手術と硝子体手術が同時に行われることが多く,近年では日常診療において白内障硝子体同時手術後の屈折値に関しても高い予測精度を求められるケースに遭遇します.角膜形状異常眼をみつけるために有用な知識として,角膜屈折力の正常値がC40~48Dであることを覚えておくと臨床的にとても役立ちます(ゴロ合わせ図1術前角膜形状評価の例①高次収差(HOAs)の確認.本症例はやや高値で黄色にハイライトされているので,プレミアムレンズは積極的には薦められない.②角膜形状の確認.必要に応じて特殊計算式でCIOL度数計算を行う必要がある.③正乱視成分の確認でトーリックIOLの適応を検討する.本症例では乱視は大きくないのでCnon-toricIOLを選択.④角膜球面収差(SA)は負の値ではないので非球面レンズ使用可.動画①も参照のこと.C1546あたらしい眼科Vol.42,No.12,2025で「塩,しょっぱい」).さらには,眼軸長と角膜屈折力のバランスを意識することも,IOL計算をするうえで非常に重要な点です(動画②).聞き手:一般的に白内障硝子体同時手術の予測屈折誤差はどれくらいですか?後藤:これまでにさまざまな報告があり,以前はC0.5Dほど近視化するとの報告が散見されました.しかし,近年の報告をまとめると,BarrettCUniversalCII式を用いた黄斑上膜などのガスタンポナーデを使用しない場合では,予測屈折誤差はおおよそゼロであり,近視化を考慮する必要はないだろうとの見解が多いです.もちろん術者によるバイアスもあるため,個々の術者が自分の手術結果を一度はまとめることをお勧めします.聞き手:ガスタンポナーゼ症例における予測屈折値はどうですか?後藤:この場合はCIOLが前方固定される傾向にあり,C.0.4D前後の近視が報告されていることから2),近視化を考慮する必要があります.動画②のCLASIK術後眼の網膜.離症例にて多くのチップスを提示しています.聞き手:重症例での屈折値の考え方を教えてください.後藤:残存黄斑機能にもよりますが,ロービジョンの観点からは拡大効果を考慮し,C.5Dなどをターゲットレフとして選択する場合もあります.その点は,患者とよく話をする必要があります.なお,本稿で取り上げている屈折矯正白内障硝子体同時手術に関しては,十分な技術を有する硝子体術者であることが前提条件です.硝子体手術の経験が浅い術者は,まずは大原則として単焦点レンズを使用し,術後予測屈折誤差がどれほどなのかを把握するところから始めてほしいと考えています.文献1)GotoS,MaedaN:CornealtopographyforintraocularlensselectionCinCrefractiveCcataractCsurgery.COphthalmologyC128:e142-e152,C20212)ShirakiCN,CWakabayashiCT,CSakaguchiCHCetal:E.ectCofCgastamponadeontheintraocularlenspositionandrefrac-tiveerrorafterphacovitrectomy:Aswept-sourceanteri-orCsegmentCOCTCanalysis.COphthalmologyC127:511-515,C2020(68)