病的近視の合併症の治療緑内障TreatmentofGlaucomaAssociatedwithPathologicalMyopia新田耕治*はじめに近視は生涯にわたり眼球がさまざまに変形し,いろいろな病態を引き起こす可能性がある.視神経乳頭部においても多種多様な変形をきたし,視神経乳頭は蒼白となり,視野障害が急速に進行する患者に遭遇することがある.強度近視の病態がどのようにしてこのような状態に陥るのかを,近視眼の構造変化,なぜ近視眼に緑内障が発症しやすいか,近視と緑内障の鑑別の決め手,近視眼緑内障の治療に眼圧下降は有効かの順で考察する.まだまだエビデンスに乏しいこのテーマであるが大変興味をもって長年取り組んできたので,筆者の考えも交えて論じることをご容赦いただきたい.I近視眼の構造変化1.若年期近視眼の構造変化若年期の眼軸長の延長に伴い視神経乳頭の耳側縁が鼻側へ偏位して視神経乳頭に傾斜や回旋が生じ,もともと円形の乳頭が縦楕円,斜楕円,横楕円などの形状を呈する.同時にもともと乳頭が存在した耳側部位はコーヌスとよばれる網脈絡膜萎縮が形成される(図1).近視は原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)発症のリスクが2~3倍増加するとされ,近視は緑内障発症の危険因子と考えられている1~2).乳頭傾斜が緑内障にどのように影響するかを報告した論文では,両眼ともに-2D以上の近視眼緑内障において視野の平均偏差(meandeviation:MD)値が悪い眼と良い眼に分けて,垂直乳頭傾斜角,水平乳頭傾斜角,最大乳頭傾斜角,最大乳頭傾斜部位などを検討した結果,MD値が悪い眼はMD値が良い眼と比較して,有意に水平乳頭傾斜角が大きく,最大乳頭傾斜部位がより下耳側であった.眼軸長の延長により眼球の非対称性が生じ,結果として,アストロサイト,毛細血管,網膜神経節細胞軸索に影響を与えたことがこのような結果をもたらしているのではないかと論じている3).よって,若年の頃から眼科を受診している患者には,乳頭を拡大した眼底写真の撮影が推奨される.電子カルテが普及してきた現代の眼科医療においては,若年の頃に撮影した眼科に関する画像は,その患者が将来緑内障を疑われた場合に緑内障診断の一助になる可能性がある.また,コンタクトレンズや眼鏡度数の修正のために不定期に受診した若年患者にもときどき光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)などの画像解析を施行し,緑内障の発症の有無について常に念頭に置いた診療を心がけたいものである.2.壮年~老年期近視眼の構造変化壮年期には加齢によりコーヌス周囲に網膜色素上皮の萎縮が形成される.もともとのコーヌスとこの網膜色素上皮の萎縮は検眼鏡的に判別が困難なので,あわせて乳頭周囲網脈絡膜萎縮(peripapillaryatrophy:PPA)とよばれている.また,後部ぶどう腫とよばれる眼球後部の一部分のみ拡張する変化を呈する近視眼が存在する.*KojiNitta:福井県済生会病院眼科〔別刷請求先〕新田耕治:〒福井市和田中町舟橋7-1福井県済生会病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(55)903abc図1若年者の視神経乳頭拡大カラー写真a:非近視眼では9年経過しても眼底写真上,視神経乳頭の変形は認めない.b:中等度近視眼では乳頭が傾斜し正面からは乳頭が小さくなったように見える.c:強度近視眼では,経年的に下方のコーヌス部が白色化をきしている.TypeIwide,macularstaphylomaTypeIInarrow,macularstaphylomaTypeIIIperipapillarystaphylomaTypeIVnasalstaphylomaTypeVinferiorstaphyloma図2後部ぶどう腫の新分類3DMRIを撮影し眼球の外観と眼底所見と組み合わせて分類した.図3強度近視眼のさまざまな乳頭および乳頭周囲形状強度近視眼では乳頭やその周囲の形態は非常にさまざまな形状を呈するので,緑内障と明確に鑑別できない.図4強度近視眼14例における乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血出現時の眼底写真14例15カ所の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血の出血部位をで示した.症例10と症例12以外は乳頭縁からかけ離れた部位に出血をきたしている.症例3,症例10,症例12,症例13,症例14は乳頭所見や視野所見から緑内障が疑われる.そのほかは,緑内障の有無は不明である.図5図4の症例の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血消退後の眼底14例15カ所の乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血はすべていったん消退している.--1996年2021年図6近視性構造変化が増悪した強度近視眼初診時40歳,女性の右眼.眼軸長27.57mmの強度近視眼.乳頭傾斜の進行やPPA拡大し近視性構造変化は増悪した.緑内障性構造変化も合併しているかは判別困難であるが,25年の経過で視野障害は増悪した.2007年2021年図7眼底に広範な網脈絡膜萎縮が出現拡大した強度近視眼初診時48歳,女性の左眼.眼軸長32.25mmの強度近視眼.15年の経過で視神経乳頭上耳側のリムの菲薄化が進行し緑内障性構造変化が増悪した.コーヌスは拡大し,眼底に広範な網脈絡膜萎縮が拡大し近視性構造変化も増悪し,両者の影響で視野障害は増悪した.図8強度近視眼の乳頭後部ぶどう腫がなく,乳頭周囲の構造変化が軽微な強度近視眼の場合,強度近視眼では緑内障合併の有無を判断しやすい.図9豹紋眼底を呈する近視眼の網膜神経線維層欠損カラー眼底写真では豹紋眼底を呈するために網膜神経線維層欠損の有無を判別できないが,青成分のみを抽出した白黒写真では上耳側や耳側に複数の網膜神経線維層欠損を確認できる.図10GCCmapにおける上下非対称性により緑内障と診断できた症例眼底写真にて右眼下耳側に網膜神経線維層欠損()を認め,GCCmapにも上下非対称性のCGCCの菲薄化を下耳側に認めた.OCTにて乳頭周囲を詳細に観察すると,右眼のCPPA部位上の網膜神経線維は左眼と比較して菲薄化を認めた.-======図11LSFG.NAVIにて左右差が顕著な症例左眼のみ緑内障と診断し加療中の症例であるが,OCTAにて深層毛細血管がの部位で脱落している.LSFG-NAVIにて乳頭および乳頭周囲のCMBRを測定すると,左眼は顕著な血流低下を認めた.2017/5/312020/1/20MBR16.416.8MV43.440.9図12血流不全型近視性視神経症に緑内障を合併した症例乳頭は傾斜回旋し,下方にはCICCを合併している.深層COCTA(上右)ではコーヌス上には太い血管のみが残存し通常は存在する太い血管をネットワークする毛細血管が顕著に脱落している.LSFG-NAVI(下中)では視神経乳頭や脈絡膜の血流は低下している.血流不全型近視性視神経症に緑内障を合併した病態と判断した.2018.102020.12018/10/182019/8/282019/8/282019/10/22019/12/92020/1/22MBR15.012.514.014.917.9MV36.629.5塩酸ブナゾシン開始31.932.338.5MT7.97.26.77.910.0図13血流不全型近視性視神経症+緑内障合併例に血流改善効果の期待できる塩酸ブナゾシンを点眼した症例塩酸ブナゾシンを点眼開始して,眼血流を表す指標が改善している.図14小児近視眼に認めた網膜内層厚の菲薄化5歳時に当院を初診した外斜視の患児である.6歳ごろから近視を認め眼鏡を常用していた.8歳C10カ月時(-3.75D)にCOCTを施行し,左眼網膜内層厚の上下差を認めた.視野検査では有意な感度低下を認めなかった.左眼視神経乳頭の傾斜や回旋を認め,上方の視神経乳頭リムの菲薄化を認め,前視野緑内障に類似した状態と判断した.の乖離が顕著で視野障害の割にCOCTやCOCTAでの変化が強いのが特徴である.さらに,上述のごとく,視神経乳頭や脈絡膜の血流は低下する(図12).そのため近視眼緑内障の対処療法として眼血流を改善する付加価値を有する薬剤を点眼することを推奨したい(表1).このうち強い眼血流改善作用を有すると考えられる点眼は,塩酸ブナゾシン(Ca1遮断薬,商品名デタントール)である.この点眼薬は,正常家兎において脈絡膜血流を有意に増加させることが報告されている31).また,NTGの眼灌流量(pulsatileCocularCblood.ow)が塩酸ブナゾシン点眼によりC1週間後には開始前より有意に増加し,さらに徐々に増加し点眼開始C3カ月後にはC50.3%増加したとの報告もある32).プロスタグランジン関連薬のうち,タフルプロストも血流改善が報告されている.家兎において視神経乳頭の組織血流の有意な増加が報告されている33).柴田らは,POAGにC3年間点眼したタフルプロスト群とラタノプロスト群を比較して,LSFG-NAVIを用いた乳頭血流は,ラタノプロスト群は経時的に血流量は低下したがタフルプロスト群で乳頭血流を維持したと報告した34).筆者は実際に,血流不全型近視性視神経症を併発したと思われる近視眼緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を開始し,LSFG-NAVIのCMBRは点眼開始前より改善している症例を経験している(図13).今後,血流不全型近視性視神経症に対する血流改善治療の有用性を検討してみたいと考えている.C3.明確な治療方法がないのであればより早期発見をめざしたいこれまで述べてきたように近視眼緑内障にエビデンスのある明確な治療方法は現時点で存在しない.であれば,視力障害を自覚してから通院治療を始めても改善しないのであるから,より早期に発見し管理を続けていくことが患者のためである.図14に当院で最近経験した症例を呈示する.5歳時に当院を初診した外斜視の患児である.6歳ごろから近視を認め眼鏡を常用し,徐々に眼鏡度数を強くしていた.8歳C4カ月時に全身麻酔にて斜視手術(直筋C2筋,斜筋C2筋)を施行し,術後経過観察中である.8歳C10カ月時にCOCTを施行し,左眼網膜内層厚の上下差を認めた.視野検査では有意な感度低下を認めなかった.左眼視神経乳頭の傾斜や回旋を認め,上方の視神経乳頭リムの菲薄化を認め,前視野緑内障に類似した状態と判断した.この患児のように,近視矯正や斜視のために定期的に通院している小児や若年者に,一度はCOCTを施行してみることを習慣化していただきたい.とくに,小学校低学年にもかかわらず近視矯正用の眼鏡を使用している場合は要注意と考える.より早期の状態での発見に努めることも強度近視眼緑内障の治療の一環と考えていただきたい.おわりに強度近視眼で緑内障に類似した構造性変化やその変化に一致すると思われる視野障害を見いだしたときに,そのような眼が眼圧依存性であるか確証が得られていないのが現状である.現時点では視野障害を伴う強度近視眼を診察した場合,エビデンスのない眼圧下降療法を行うかどうか検討することになる.しかし,このような症例に緑内障点眼を多剤併用して治療する意義はあるのか,ましてや最大耐用点眼でも視野障害が進行する場合にリスクを冒してまでも緑内障濾過手術を施行することは本当に意義のあることなのであろうか?仮に手術が成功して術後に眼圧が一桁の後半を維持できてもそれは眼科医の自己満足でしかないのではないか.患者を眼圧値のマジックで納得させているだけで,迫りくるCQOV低下,QOL低下に正面から患者と向き合うことを避けようとしているだけではないかと自責の念に駆られることがある.日本を含めたアジアでは欧米と比較して近視の罹患率が高く,近視による視神経障害の病態とその治療方法の確立は急務であると筆者は考えている.文献1)MarcusCMW,CdeCVriesCMM,CJunoyCMontolioCFGCetal:CMyopiaCasCaCriskCfactorCforopen-angleCglaucoma:CaCsys-temicCreviewCandCmeta-analysis.COphthalmologyC118:C1989-1994,C20112)MitchellCP,CHourihanCF,CSandbachCJCetal:TheCrelation-shipbetweenglaucomaandmyopia:CtheBlueMountainsEyeStudy.Ophthalmology106:2010-2015,C19993)ChoiJH,HanJC,KeeC:Thee.ectsofopticnerveheadtiltConCvisualC.eldCdefectsCinCmyopicCnormalCtensionCglau-coma.JGlaucomaC28:341-346,C2019916あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021(68)4)CurtinBJ:TheCposteriorCstaphylomaCofCpathologicCmyo-pia,CTransAmOphthalmolSocC75:67-86,C19775)HsiangCHW,COhno-MatsuiCK,CShimadaCNCetal:ClinicalCcharacteristicsCofCposteriorCstaphlomaCinCeyesCwithCpatho-logicmyopia.AmJOphthalmolC146:102-110,C20086)Ohno-Matsuikyoko:ProposedCclassi.cationCofCposteriorCstaphylomasCbasedConCanalysesCofCeyeCshapeCbyCthree-dimensionalCmagneticCresonanceCimagingCandCwide-.eldCfundusimaging.OphthalmologyC121:1798-1809,C20147)新田耕治,齋藤友護,杉山和久:乳頭周囲網脈絡膜萎縮の静的視野に及ぼす影響─眼軸長との関係─.日眼会誌C10:C257-262,C20068)JonasCJB,CBerenshteinCE,CHolbachL:LaminaCcribrosaCthicknessCandCspatialCrelationshipsCbetweenCintraocularCspaceandcerebrospinal.uidspaceinhighlymyopiceyes.InvestOphthalmolVisSci45:2660-2665,C20049)Ohno-MatsuiCK,CShimadaCN,CYasuzumiCKCetal:Long-termCdevelopmentCofCsigni.cantCvisualC.eldCdefectsCinChighlyCmyopicCeyes.CAmCJCOphthalmolC152:256C-265,C201110)AkagiT,HangaiM,KimuraYetal:PeripapillaryscleraldeformationCandCretinalCnerveC.berCdamageCinChighCmyo-piaCassessedCwithCswept-sourceCopticalCcoherenceCtomog-raphy.AmJOphthalmol155:927-936,C201311)新田耕治,杉山和久,生野恭司ほか:強度近視眼における乳頭周囲網脈絡膜萎縮出血のC14例.日眼会誌印刷中12)JonasCJB,CNagaokaCN,CFangCYXCetal:IntraocularCpres-sureCandCglaucomatousCopticCneuropathyCinChighCmyopia.CInvestOphthalmolVisSciC58:5897-5906,C201713)TanO,ChopraV,LuATetal:Detectionofmaculargan-glionCcellClossCinCglaucomaCbyCFourier-domainCopticalCcoherenceCtomography.COphthalmologyC116:2305-2314,Ce1-e2,C200914)ShojiT,SatoH,IshidaMetal:Assessmentofglaucoma-touschangesinsubjectswithhighmyopiausingspectraldomainCopticalCcoherenceCtomography.CInvestCOphthalmolVisSci52:1098-1102,C201115)ShojiT,NagaokaY,SatoHetal:ImpactofhighmyopiaonCtheCperformanceCofCSD-OCTCparametersCtoCdetectCglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmolC250:1843-1849,C201216)ShimadaN,Ohno-MatsuiK,HarinoSetal:ReductionofretinalCbloodC.owCinChighCmyopia.CGraefesCArchCClinExpOphthalmol242:284-288,C200417)AzeminCMZ,CDaudCNM,CAbCHamisCFCetal:In.uenceCofCrefractiveCconditionConCretinalCvasculatureCcomplexityCinCyoungerCsubjects.CScienti.cCWorldCJournalC2014:783525,C201418)LiCM,CYangCY,CJiangCHCetal:RetinalCmicrovascularCnet-workCandCmicrocirculationCassessmentsCinChighCmyopia.CAmJOphthalmol174:56-67,C201719)WangX,KongX,LiangCetal:Istheperipapillaryreti-nalCperfusionCrelatedCtoCmyopiaCinChealthyCeyes?CaCpro-spectivecomparativestudy.BMJOpenC11:e010791,C201620)SamraWA,PournarasC,RivaCetal:Choroidalhemody-namicinmyopicpatientswithandwithoutprimaryopen-angleglaucoma.ActaOphthalmolC91:371-375,C201321)SungCMS,CLeeCTH,CHeoCHCetal:ClinicalCfeaturesCofCsuper.cialanddeepperipapillarymicrovasculardensityinhealthymyopiceyes.PLoSCOneC12:e0187160,C201722)AizawaCN,CKunikataCH,CShigaCYCetal:CorrelationCbetweenstructure/functionandopticdiscmicrocirculationCinCmyopicCglaucoma,CmeasuredCwithClaserCspeckleC.owgraphy.BMCOphthal14:113,C201423)KiyotaCN,CKunikataCH,CTakahashiCSCetal:FactorsCassoci-atedCwithCdeepCcirculationCinCtheCperipapillaryCchorioreti-nalatrophyzoneinnormal-tensionglaucomawithmyopicdisc.ActaOphthalmolC96:e290-e297,C201824)SuwanCY,CFardCMA,CGeymanCLSCetal:AssociationCofCmyopiaCwithCperipapillaryCperfusedCcapillaryCdensityCinpatientswithglaucoma:anopticalcoherencetomographyangiographystudy.JAMA136:507-513,C201825)ShinCYJ,CNamCWH,CParkCSECetal:AqueousChumorCcon-centrationsCofCvascularCendothelialCgrowthCfactorCandCpig-mentCepithelium-derivedCfactorCinChighCmyopicCpatients.CMolVis18:2265-2270,C201226)JiaCY,CHuCDN,CZhouJ:CHumanCaqueousChumorClevelsCofTGF-b2:relationshipCwithCaxialClength.CBiomedCResCIntC2014:258591,C201427)ZhuCX,CZhangCK,CHeCWCetal:Proin.ammatoryCstatusCinCtheaqueoushumorofhighmyopiccataracteyes.ExpEyeRes142:13-18,C201628)HerbortCCP,CPapadiaCM,NeriCP:MyopiaCandCin.ammation.CJOphthalmicVisRes6:270-283,C201129)HusainR,LiW,GazzardGetal:LongitudinalchangesinanteriorchamberdepthandaxiallengthinAsiansubjectsafterCtrabeculectomyCsurgery.CBrCJCOphthalmolC97:852-856,C201330)CostaCJC,CAlioJ:CSigni.cantChyperopicCshiftCinCaCpatientCwithCextremeCmyopiaCfollowingCsevereChypotoniaCcausedCbyCglaucomaC.lteringCsurgery.CEurCJCOphthalmolC29:CNP6-NP9,C201931)杉山哲也:塩酸ブナゾシン点眼の家兎・脈絡膜組織血流量.眼圧に及ぼす影響.日眼会誌95:449-454,C199132)杉山哲也,徳岡覚,守屋伸一ほか:低眼圧緑内障に対する塩酸ブナゾシン点眼の効果.眼脈流量を中心に.臨眼C45:327-329,C199133)AkaishiCT,CKurashimaCH,COdani-KawabataCNCetal:CE.ectsCofCrepeatedCadministrationsCofCta.uprost,Clatano-prost,CandCtravoprostConCopticCnerveCheadCbloodC.owCinCconsciousCnormalCrabbits.CJCOculCPharmacolCTher26:C181-186,C201034)柴田真帆,杉山哲也,小嶌祥太ほか:原発開放隅角緑内障に対するタフルプロストC3年間点眼の視神経乳頭・形状,視野に及ぼす影響.臨眼69:741-747,C2015(69)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C917■用語解説■intrachoroidalcavitation(ICC):乳頭の主として下方にみられる扇型の黄色の病変で,OCT所見から脈絡膜内の空洞であることが明らかになった.ICCは高度の乳頭傾斜に伴って起こることが多く,眼軸延長の過程でコラーゲン線維主体である強膜と弾力が,強膜コラーゲンより強いエラスチンを多く含むCBruch膜の間で張力の差を生じ,脈絡膜に間隙が生じ発症すると考えられる.ICCの境界部にはしばしば網膜欠損を伴い,欠損部位を通じて硝子体腔とCICCが交通している.そのような症例では,網膜内層に断裂が生じるために神経線維の障害が生じ,しばしば網膜全層欠損となり,断裂部位に一致する視野障害を約C70%に伴う.いったん,網膜全層欠損に至った症例では,視野障害の進行は停止もしくは緩徐となる.これは網膜が全層欠損しCICCと硝子体腔の交通ができることによりCBruch膜による網膜の内向きの牽引が消失あるいは軽減するためと考えられる.篩状板部分欠損:視神経乳頭のエッジの篩状板が局所的に欠損する病態で,2012年に初めて緑内障眼にて報告された.その後,近視眼でも報告され,乳頭傾斜・乳頭回旋・PPAなどが篩状板部分欠損に関連していた.そのことより,近視眼での篩状板部分欠損は,乳頭の伸展や傾斜などの機械的ストレスが関連している可能性がある.強膜リッジ:Curtin分類CtypeCIXの後部ぶどう腫では,強膜が眼球内方向に急峻に突出し,視神経のすぐ耳側に隆起(リッジ)がある.これを強膜リッジとよび,リッジ部では網膜が過度に牽引され菲薄化している.Akagiらは,強膜リッジが急峻なほど網膜神経線維は薄く,中心視野障害が生じることを報告した.重症例では,リッジ部の網膜神経線維は完全に断裂する場合がある,そのような症例では高度の中心視野障害を生じる.強膜リッジ症例では,視野障害が急速に進行することをしばしば経験する.近視性視神経症:強度近視眼では,しばしば近視性黄斑疾患やコーヌスでは説明できない視野障害を呈する.40~50歳代の比較的若年で発症し完全失明に至ることも多い点で,中心視野障害にとどまる近視性黄斑病変とは予後に大きな違いがある.この病態を近視性視神経症として独立した疾患概念とする考え方がある.