蛍光造影剤に伴う副作用とその対策SideE.ectsAssociatedwithFluorescentAngiographicAgentsandTheirManagement松本英孝*はじめに現在,眼科領域で使用されている蛍光造影剤はフルオレセインとインドシアニングリーンである.これらを用いた蛍光造影検査では,一定の割合で副作用が起きることが知られている.本稿では,それぞれの蛍光造影剤の特徴をまとめ,副作用とその対策について解説する.I蛍光造影剤の特徴1.フルオレセインフルオレセインはフルオレサイト静注500mg1)としてノバルティスファーマから発売されている.1バイアル5.mlの赤色~黄赤色澄明の水性注射液である.通常,フルオレセイン200~500mgを肘静脈に注射する(留置針で静脈路を確保して側管から投与する).フルオレセインは血中で約80%が蛋白質(おもにアルブミン)と結合する.アルブミンと結合したフルオレセインは脈絡毛細血管板は透過するが,血液―網膜関門である網膜色素上皮と網膜血管は透過しない.フルオレセインの血中最大吸収波長は490nm付近で,最大蛍光波長は520~530nmであり,励起光,蛍光ともに網膜色素上皮に吸収されやすいため,脈絡膜血管の観察は困難である.網膜血管や網膜色素上皮の評価に有用である.静注されたフルオレセインは肝臓で代謝され,健常人では24時間以内に大部分は尿中に,一部は胆汁中に排泄される.このため,尿は変色する.また,フルオレセイン静注後1分以内に皮膚は黄染し,この変化は約2時間続く.禁忌として,フルオレセインに対して過敏症の既往歴のある患者,全身衰弱の患者,重篤な糖尿病の患者,重篤な心疾患のある患者,重篤な脳血流障害のある患者,妊婦または妊娠している可能性のある患者,肝硬変の患者があげられている.2.インドシアニングリーンインドシアニングリーンはオフサグリーン静注用25.mg2)として参天製薬から発売されている.1バイアル25mgの暗緑青色塊を添付の注射用水2mlで溶解する.通常,インドシアニングリーン25mgを肘静脈に注射する(留置針で静脈路を確保して側管から投与する).インドシアニングリーンは血中で約98%が蛋白質(おもにグロブリン分画のa1もしくはb-リポプロテイン)と結合し,脈絡毛細血管板は透過するが,血液―網膜関門である網膜色素上皮と網膜血管は透過しない.インドシアニングリーンの血中最大吸収波長は766nm,最大蛍光波長は826nmといずれも近赤外領域にある.近赤外領域の波長は網膜色素上皮で吸収されないため,脈絡膜の観察が可能である.網膜色素上皮の変化は検出されにくく,網膜の大血管は観察可能だが,毛細血管は観察困難なことが多い.静注されたインドシアニングリーンは血中から肝臓に選択的に取り込まれ,肝臓から胆汁中に高率かつ速やかに排泄される.禁忌として,インドシアニングリーンに対して過敏症の既往歴のある患者,ヨード過敏症の既往歴のある患者(薬剤にヨウ素が*HidetakaMatsumoto:群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学〔別刷請求先〕松本英孝:〒371-8511群馬県前橋市昭和町3-39-15群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(31)31表1フルオレセイン蛍光造影の副作用頻度報告者(年度)調査数全副作用率重篤合併症率死亡率Zografos(1983)Yannuzzi(l986)Kwiterovich(1991)Jennig(l994)Lepri(1997)松浦(1996)京兼(1997)Mai(2004)Musa(2006)Kwan(2006)Kalogeromitros(2007)Lira(2007)河田(2007)Moosbrugger(2008)Bearelly(2009)Kalo(2009)Kalogeromitros(2009)594,687例22,781回2,025例2,789回1,173例6,524例10,003回1,499例580例8,344例3,58例1,1898回224例1,039例3,497例1,200例1,400例1,284回1,284回4.8%7.5%5.7%10.7%8.3%11.2%1.1%3.6%9.72%1.53%2.5%4.3%4.3%0.006%0.005%0.2%0%0.27%0.35%0%0.48%0.3%0.08%0.16%0.002%0.005%0%0%0%(文献3より引用)報告者(報告年)調査数全副作用率軽症中等症重症死亡率河内(1983,他科)文献検索0.05~0.3%0.009~0.07%(ショック)Hope-Ross(1994)1,226例1,923回0.15%0.2%0.05%0.0003%Obana(1994)2,820例3,774回0.34%0.26%今本(1993)2,820例3,774眼0.34%B社調査(2007)1,024例0.68%0.29%0.2%0.2%(文献3より引用)図1アナフィラキシーの診断基準(文献4より引用)さらにステップ4,5,6を速やかに並行して行う1アナフィラキシーを認識し,治療するための文書化された緊急時用プロトコールを作成し,定期的に実地訓練を行う.可能ならば,曝露要因を取り除く.例:症状を誘発していると思われる検査薬や治療薬を静脈内投与している場合は中止する.23患者を評価する:気道/呼吸/循環,精神状態,皮膚,体重を評価する.4助けを呼ぶ:可能ならば蘇生チーム(院内)または救急隊(地域).5大腿部中央の前外側にアドレナリン(1:1,000[1mg/ml]溶液)0.01mg/kgを筋注する(最大量:成人0.5mg,小児0.3mg).投与時刻を記録し,必要に応じて5~15分毎に再投与する.ほとんどの患者は1~2回の投与で効果が得られる.6患者を仰臥位にする,または呼吸困難や嘔吐がある場合は楽な体位にする.下肢を挙上させる.突然立ち上がったり座ったりした場合,数秒で急変することがある.7必要な場合,フェイスマスクか経ロエアウェイで高流量(6~8l/分)の酸素投与を行う.8留置針またはカテーテル(14~16Gの太いものを使用)を用いて静脈路を確保する.0.9%(等張)食塩水1~2lの急速投与を考慮する(例:成人ならば最初の5~10分に5~10ml/kg,小児ならば10ml/kg).必要に応じて胸部圧迫法で心肺蘇生を行う.910頻回かつ定期的に患者の血圧,心拍数・心機能,呼吸状態,酸素濃度を評価する(可能ならば持続的にモニタリング).図2アナフィラキシーの初期対応(文献4より引用)酸素(酸素ボンベ,流量計付きバルブ,延長チューブ)リザーバー付きアンビューバッグ(容量:成人700~1,000.ml,小児100~700.ml)使い捨てフェイスマスク(乳児用,幼児用,小児用,成人用)経口エアウェイ:口角(前歯)から下顎角までに対応する長さ(40.mm~110.mm)ポケットマスク,鼻カニューレ,ラリンジアルマスク吸引用医療機器挿管用医療機器静脈ルートを確保するための用具ー式,輸液のための備品一式心停止時,心肺蘇生に用いるバックボード,または平坦で硬質の台手袋(ラテックスを使用していないものが望ましい)聴診器血圧計,血圧測定用カフ(乳幼児用,小児用,成人用,肥満者用)時計心電計および電極継続的な非侵襲性の血圧および心臓モニタリング用の医療機器パルスオキシメータ除細動器臨床所見と治療内容の記録用フローチャートアナフィラキシーの治療のための文書化された緊急時用プロトコール(文献4より引用)