Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症の眼障害OcularComplicationofStevens-JohnsonSyndrome/ToxicEpidermalNecrosis松本佳保里*外園千恵*はじめにStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS)と中毒性表皮壊死症(toxicepidermalnecrosis:TEN)は,おもに薬剤への暴露により全身の皮膚粘膜で炎症が惹起され,全身の発疹,粘膜のびらん・水疱形成,熱発などの全身症状や結膜充血,角結膜上皮欠損,偽膜形成などの眼病変を生じる疾患として知られる.慢性期には粘膜病変の瘢痕化や癒着が進行し,全身に重篤な後遺症がみられる場合があり,継続した通院治療が必要な疾患である.本稿では,SJS/TENの基本的な臨床像や適切な医療費助成を得るポイントについて述べる.ISJS/TENの臨床像SJS/TENは,高熱を伴う全身性の紅斑・びらん・水疱から発症し,眼病変として結膜充血,角結膜上皮欠損,偽膜形成を特徴とする(図1).その他,粘膜病変では口唇・口腔粘膜や鼻粘膜,上気道粘膜,消化管粘膜など全身の粘膜に壊死性変化がみられ,重篤な後遺症を残すことがある.わが国では,発症後は速やかに被疑薬を中止し,全身管理および抗炎症のため全身ステロイド治療を開始することが推奨されているが,治療開始後も皮疹や粘膜病変が悪化することがあり,細やかな管理が必要である.眼病変に関しては,全身症状と同時もしくは数日早く両眼の結膜充血がみられる場合が多く,充血に加えて角結膜上皮欠損や偽膜が生じていると視力予後が不良となる.このため,SJS/TENが疑われる場合は,必ずフルオレセイン染色を用いた診察が必要である.上皮欠損が広範囲に及ぶと瞼球癒着や輪部機能不全を生じ,重篤な眼後遺症に陥る可能性がある.また,次項で述べる診断基準とは別に,重症度分類が作成されており,「眼表面(角膜・結膜)の上皮欠損(びらん),あるいは偽膜形成が高度なもの」はスコアにかかわらず眼所見のみで重症と判断されるため,眼科医による診察はSJS/TENの診断・治療において非常に重要である.II診断基準わが国では,2004年に厚生労働省の調査研究班が結成され,2005年に初めてSJS/TENの診断基準が確立された.その後,診療指針の策定や多施設調査の結果を踏まえて,2016年に「重症多形滲出性紅斑診療ガイドライン」が作成された1).SJSの診断基準は主要所見の5項目と4項目の副所見で構成されており,副所見を考慮したうえで主要所見をすべて満たす場合にSJSと診断する(表1).臨床像で述べたように,SJS/TENは治療開始にもかかわらず,しばしば病態が悪化するため,初期の評価だけでなく全経過を通して評価する.また,わが国では表皮.離面積が10%以上の症例をTENと定義しているが,欧米では10%以上30%未満の症例をSJS/TENオーバーラップ症例,30%以上の症例をTENと定義している.*KaoriMatsumoto&ChieSotozono:京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学〔別刷請求先〕松本佳保里:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(51)1619図1SJS/TENの急性期眼所見aba:結膜充血.球結膜および眼瞼結膜に著明な充血がみられる.Cb:偽膜形成.睫毛鑷子で引っ張ると偽膜がはがれてくる.Cc:角膜上皮欠損.角膜中央に上皮欠損がみられる.d:結膜上皮欠損().結膜上の偽膜を除去すると上皮欠損がみられる場合がある.表1SJSの診断基準主要所見(必須)1.皮膚粘膜移行部(眼,口唇,外陰部など)の広範囲で重篤な粘膜病変(出血・血痂を伴うびらんなど)がみられる.2.皮膚の汎発性の紅斑に伴って表皮の壊死性障害に基づくびらん・水疱を認め,軽快後には痂皮,膜様落屑がみられる.その面積は体表面積のC10%未満である.ただし,外力を加えると表皮が容易に.離すると思われる部位はこの面積に含まれる.3.発熱がある.4.病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める.5.多形紅斑重症型(erythemamultiforme[EM]major)を除外できる.副所見1.紅斑は顔面,頸部,体幹優位に全身性に分布する.紅斑は隆起せず,中央が暗紅色のC.atatypicalCtargetsを示し,融合傾向を認める.2.皮膚粘膜移行部の粘膜病変を伴う.眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性結膜炎がみられる.3.全身症状として他覚的に重症感,自覚的には倦怠感を伴う.口腔内の疼痛や咽頭痛のため,種々の程度に摂食障害を伴う.4.自己免疫性水疱症を除外できる.副所見を考慮のうえ,主要C5項目をすべて満たす場合にCSJSと診断する.(文献C1より引用)緩徐な進行・中等症進行性・重症急速進行性・最重症反応不良(重篤な眼障害)反応不良ステロイド増量不可PSL:プレドニゾロン図2急性期全身治療アルゴリズム(文献C1より引用)-2145711172126(日)病日図3急性期SJSの治療例64歳,男性.病日C4日に当院皮膚科を受診し当科紹介となった.当科初診時に結膜上皮欠損がみられ翌日から偽膜が出現した.ステロイドパルス療法を開始後も病日C7日までは眼病変は増悪したため,ベタメタゾン点眼・眼軟膏が増量された.その後は全身所見,眼所見に合わせてステロイド量は漸減された.全身所見の改善により終了(-)週2回程度で経過観察(+)毎日診察(眼科併診)充血の消褪により終了(ステロイドパルス療法など全身管理)+0.1%ベタメタゾンまたはデキサメタゾン点眼あるいは眼軟膏1日6回以上図4急性期眼科治療アルゴリズム図5SJS/TENの慢性期眼所見a:結膜.短縮,睫毛脱落,眼瞼縁の不整.涙点は急性期の炎症により自然閉鎖している.b:著明な涙液減少および角膜上皮欠損がみられる.Cc:角膜混濁,血管侵入,瞼球癒着.涙点プラグ挿入によりドライアイの治療を行っている.d:眼表面の角化が進行している.表2視覚障害認定で利用できる制度年金の受給障害基礎年金,障害厚生年金医療費の軽減1,2級を対象とした医療費助成制度補装具費の支給白杖,遮光眼鏡など支援事業の利用就労支援,自立訓練などその他の制度交通費の割引,税金の減額など表3医薬品副作用被害救済制度による給付の種類と給付額給付の種類区分給付額医療費健康保険等による給付の額を除いた自己負担分通院のみの場合1カ月のうちC3日以上月額C36,900円(入院相当程度の通院治療を受けた場合)1カ月のうちC3日未満月額C34,900円医療手当入院の場合1カ月のうちC8日以上月額C36,900円1カ月のうちC8日未満月額C34,900円入院と通院がある場合月額C36,900円障害年金*1級の場合年額C2,804,400円(月額C233,700円)2級の場合年額C2,244,000円(月額C187,000円)障害児療育年金1級の場合年額C877,200円(月額C73,100円)2級の場合年額C702,000円(月額C58,500円)遺族年金年金の支払はC10年間(ただし,死亡した本人が障害年金を受けたことがある場合,その期間がC7年に満たないときはC10年からその期間を控除した期間,その期間がC7年以上のときはC3年間)年額C2,452,800円(月額C204,400円)遺族一時金7,358,400円葬祭料212,000円*通常の視覚障害年金と別に副作用被害救済として給付される.(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページより引用)