‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

硝子体手術のワンポイントアドバイス:急性網膜壊死発症後晩期に生じる網膜剥離(上級編)

2021年3月31日 水曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載214214急性網膜壊死発症後晩期に生じる網膜.離(上級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに急性網膜壊死(acuteretinalnecrosis:ARN)は,ヘルペスウイルスにより生じる感染性ぶどう膜炎であり,経過中に壊死性裂孔が形成され裂孔原性網膜.離(rheg-matogenousretinaldetachment:RRD)に至ることが多い.ARNに併発するRRDは通常急性期に生じるが,ARN発症後,長期間が経過してからRRDが発症したとする報告は比較的少ない.筆者らはARNの発症から15年後にRRDを生じた一例を経験し報告したことがある1).●症例提示27歳,男性.12歳時に左眼にARNを発病.アシクロビル点滴,ステロイド内服にて加療し,手術は行わずに治癒した.その後再発することはなく定期的に通院していたが,最近になって左眼の視野欠損を自覚した.黄斑部から耳側から下方にかけて2象限に及ぶ網膜.離を認めた(図1).眼底周辺部には色素沈着およびARNの瘢痕病巣と考えられる黄色調の線維膜を全周性に認めたが,滲出病巣はなく,ARNの炎症再燃ではないと判断した.また,肥厚した後部硝子体膜の辺縁が下耳側中間周辺部に認められた.入院のうえ,左眼の硝子体切除術を施行した.以前のARNの瘢痕萎縮病巣に原因裂孔があると推測されたが,術中に明確な網膜裂孔は確認できなかった.後部硝子体膜は中間周辺から網膜と面状に強固に癒着していた.2本の硝子体鑷子あるいは硝子体鑷子と硝子体カッターの双手法で赤道部まで人工的後部硝子体.離を作製したが,術中に医原性裂孔を複数個形成した.その後,気圧伸展網膜復位術,医原性裂孔周囲および瘢痕病巣周囲に広範な眼内光凝固術を施行し,輪状締結術,シリコーンオイルタンポナーデを行った.さらに4カ月後にシリコーンオイル抜去と眼内レンズ二次挿入術を施行した.術後RRDの再発はなく経過は良好である(図2).(93)0910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1当科初診時の左眼眼底写真黄斑部から耳側から下方にかけて2象限に及ぶ扁平なRRDと,中間周辺部には肥厚した後部硝子体膜の辺縁が認められた.(文献1より引用)図2術後の左眼眼底写真輪状締結術を併用し,復位を得た.(文献1より引用)●急性網膜壊死発症後晩期に生じる網膜.離の特徴本症例では菲薄化した瘢痕萎縮病巣に硝子体による牽引が働き,小裂孔が形成されRRDが生じたと考えられるが,瘢痕病巣のため裂孔確認が困難であった.また,ARN発症から長期間が経過しているため,肥厚した後部硝子体膜が網膜と面状に癒着しており,とくに瘢痕病巣では網膜が菲薄化しており容易に医原性裂孔を形成するため,人工的後部硝子体.離作成は赤道部までに留めて,あとは輪状締結術を併用する方針とした.今回のようにARNは薬物治療にて炎症が鎮静化しても,長期間が経過したのちにRRDになることがあり,継続的な経過観察が必要あると考えられた.文献1)小林崇俊,高井七重,庄田裕美ほか:発症後15年を経過した後に裂孔原性網膜.離を生じた急性網膜壊死の1例.臨眼74:677-681,2020あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021331

抗VEGF治療:加齢黄斑変性の長期マネジメント

2021年3月31日 水曜日

●連載105監修=安川力髙橋寛二85.加齢黄斑変性の長期マネジメント中間崇仁塩瀬聡美九州大学大学院医学研究院眼科学分野抗CVEGF治療は滲出型CAMDに対する第一選択であるが,長期マネジメントにおいては患者負担や医療経済負担,治療抵抗例の存在などが問題となる.また,片眼発症症例では僚眼のマネジメントも必要となる.本稿では滲出型CAMD治療における長期マネジメントについて述べる.はじめに抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)治療が滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する治療として日本で承認されC10年以上が経過し,現在では治療の第一選択肢となっている.これにより滲出型CAMD治療は新たな時代を迎えたが,その一方で長期的には頻回の再来・投与が必要な患者の存在や,高額な薬剤費による患者負担・医療経済負担が問題となってきている.また,既存薬に対する治療抵抗症例も存在し,今なお滲出型AMD治療においてCqualityCofvision(QOV)を改善し,それを維持するための長期マネジメントには課題が多くある.本稿では滲出型CAMD治療の長期マネジメントについて,九州大学病院(以下,当院)の方針を述べる.抗VEGF治療の投与方針滲出型CAMDに対する抗CVEGF治療長期マネジメントにおいて,3回導入期投与後の投与方針は大きな要素のひとつである.投与方針として,reactive治療であるCproCrenata(PRN),proactive治療である固定投与,Ctreatandextend(TAE)があげられるが,当院では基導入期TAE・・・4週4週6週8週10週drydrydrydry本的にはCTAEでの抗CVEGF治療としている.これは,治療により改善したCQOVを可能な限り維持し,かつ再来回数を減らすためである.PRNではCSEVEN-UPstudyで示されたように,QOV維持が困難な可能性があること1),固定投与では過多投与・治療不足となる可能性があることから,それぞれ第一選択の投与方針とはしていない.しかしながら長期マネジメントとして,僚眼が視力良好で患眼の抗CVEGF治療に対する疲れを感じている患者ではCPRN,僚眼が視力不良で患眼の視力維持のために積極的な治療が必要な患者では固定投与など,治療経過や僚眼の状況などによってはCTAE以外での抗CVEGF治療を選択することもあり,個別化医療をめざしている.当院におけるCTAEは,滲出がなくなった時点からC2週ごとに延長し,投与間隔を最大C16週まで延長する.16週の投与間隔でC1年間Cdrymaculaを維持できれば,いったん抗CVEGF治療を終了して経過観察の方針とし,治療回数の軽減をめざしている.治療中止してもC1年間再発がない患者は,近医での経過観察を依頼し,地域連携をしながら診ている(図1).しかし,長らく落ち着いていても突然再発する症例も存在し,今後も最適なマネジメントの検討が必要である.また,polypoidalchoroi-・投与間隔は最大16週まで延長・16週で1年drymacula維持→治療終了・治療終了後1年再発なし→近医にて経過観察図1当院でのTAEでの抗VEGF治療3回導入期投与後,滲出がなくなったらC2週ごとに投与間隔を延長する(最大C16週).16週の投与間隔でC1年間Cdrymaculaを維持できれば治療を終了する.中止後C1年間再発がなければ近医での経過観察を依頼する.(91)あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C3290910-1810/21/\100/頁/JCOPY切り替え前切り替え後図2アフリベルセプトからブロルシズマブに切り替えた症例アフリベルセプトからブロルシズマブに切り替え,PED・SRDの改善を認める.その一方で周辺部の網膜静脈閉塞を認める.Cdalvasculopathy(PCV)やCpachychoroidCneovasculop-athy(PNV)では,EVEREST2studyなどの結果を踏まえて,抗CVEGF治療回数軽減を目的とした光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)を併用することもある2).抗VEGF治療抵抗症例への対応これまで滲出型CAMDに対する抗CVEGF薬として,おもにペガプタニブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトが用いられてきた.それぞれ効果や作用期間の点などで違いがあるものの,これら従来の薬による抗CVEGF治療に抵抗を示す症例をC10~20%程度に認める.とくに網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)は,従来の薬での抗CVEGF治療では完全に消退しないことも多い.PEDの完全消退がCQOVにどこまで寄与するかについては議論の余地があるため,滲出型AMD治療の長期マネジメントにおいてCPEDをどの程度まで積極的に治療をするかは悩ましい.とくに大きなPEDでは,抗CVEGF治療をきっかけに網膜色素上皮裂孔(retinalCpigmentCepithelialtear:RPEtear)が発生し,不可逆的なCQOV低下を招く可能性もあるため,慎重な判断が必要と考える.当院では従来の薬での抗VEGF治療で完全消退しないCPEDに対して,追加加療としてCPDTの併用を行ったり,日本でC2020年C3月に新たに承認されたブロルシズマブへの切り替えを検討したりしている.ただし,ブロルシズマブは投与後の血管炎発症の報告もあり,RPEtear発生と同様に不可逆的なCQOV低下を招く可能性もあることから,視力,治療経過,僚眼の状態などを含めて慎重に対象を選択している(図2).また,type1脈絡膜新生血管では,浅い漿液性網膜C330あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021.離が遷延する症例にも遭遇する.このような患者は視力がよいことが多く,漿液性網膜.離の完全消退をめざして投与を行っていても再発を繰り返す.各種Cstudyでフルイドの残存は視力低下の原因となることが知られてはいるが,このような患者に厳密に毎月投与を行うと通院や治療の自己中断につながるため,明らかな視力低下や患者の自覚悪化がある場合を除いて,患者と相談しながら投与間隔を決め,やや寛容な固定投与を行うことにしている.僚眼のマネジメント片眼発症の滲出型CAMD症例では,僚眼発症の可能性があり,両眼性になるとCQOVが著明に落ちるため,滲出型CAMD治療の長期マネジメントにおいて僚眼のマネジメントも重要と考える.当院では,滲出型CAMD患者の喫煙歴を必ず確認し,再来時に喫煙に対する注意喚起をするようにしている.また,食生活やサプリメント摂取に関してもアンケートを用いて積極的に聴取し,とくに片眼発症の滲出型AMD患者には,AREDS・AREDS2試験の結果を踏まえて,ビタミンCC,ビタミンCE,亜鉛,ルテイン,ゼアキサンチンなどを含むサプリメントを推奨している3,4).これにより僚眼発症リスクを軽減し,長期のCQOV維持をめざしている.AMD発症に関しては未だに病態が不明な部分があり,遺伝子の違いによる発症リスクの変化に関しても研究が進んできているため,今後も僚眼を含めた長期マネジメント方法の更新が必要であると考える.文献1)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal:Seven-yearout-comesCinCranibizumab-treatedCpatientsCinCANCHOR,CMARINA,CandHORIZON:aCmulticenterCcohortCstudy(SEVEN-UP).Ophthalmology120:2292-2299,C20132)KohCA,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal:E.cacyCandCsafetyCofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:Arandom-izedCclinicalCtrial.CJAMACOphthalmolC135:1206-1213,C20173)Age-RelatedCEyeCDiseaseCStudyCResearchGroup:ACran-domized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesup-plementationCwithCvitaminsCCCandCE,CbetaCcarotene,CandCzincCforCage-relatedCmacularCdegenerationCandCvisionloss:AREDSCreportCno.C8.CArchCOphthalmolC119:1417-1436,C20014)Age-RelatedCEyeCDiseaseCStudyC2CResearchGroup:CLutein+zeaxanthinandomega-3fattyacidsforage-relat-edCmaculardegeneration:theCAge-RelatedCEyeCDiseaseCStudy2(AREDS2)randomizedCclinicalCtrial.CJAMAC309:C2005-2015,C2013(92)

緑内障:原発閉塞隅角病:最近の話題

2021年3月31日 水曜日

●連載249監修=山本哲也福地健郎249.原発閉塞隅角病:最近の話題力石洋平琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座近年,原発閉塞隅角緑内障の概念が大きく変容し,病期によって細分化され,原発閉塞隅角病(primaryCangleclosuredisease:PACD)と総称されるようになってきている.隅角閉塞の機序によっては,以前主流であったレーザー虹彩切開術では無効な例もある.最近ではCPACDの治療として水晶体摘出術(透明水晶体を含む)が第一選択となりつつある.●はじめにPACと聞いてC1980年に発売されたアーケードゲームのキャラクターが頭をよぎるのは筆者だけだろうか.今回のPACは原発閉塞隅角症(primaryCangleCclo-sure:PAC)の話である.この数十年で原発閉塞隅角緑内障(primaryangleclosureglaucoma:PACG)の概念が大きく変化してきた.隅角所見においてC270°以上線維柱帯が観察されず(180°という考えもある),機能的隅角閉塞による眼圧上昇や,器質的隅角閉塞である周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechiae:PAS)を伴わないものを原発閉塞隅角症疑い(primaryCangleCclo-suresuspect:PACS),PACSに機能的閉塞による眼圧上昇(>21CmmHg),もしくはCPASを伴うが緑内障視神経症(glacomatousCopticCneuropathy:GON)がないものをCPAC,そしてCPACにCGONを伴うものがCPACGと定義され,近年CPACG,PAC,PACSを含めた包括的呼称として原発閉塞隅角病(primaryCangleCclosuredisease:PACD)が提唱されるようになっている(表1).治療としてはレーザー周辺虹彩切除術(laserperipheraliridotomy:LPI)やレーザー隅角形成術(laserCgonio-plasty:LGP)などがかつて行われてきたが,近年水晶体摘出術の有効性も示されてきている.では,どの時期にどの治療が適切なのかC?本稿ではCPACDに対する治療について最近の知見も交えて述べる.C●PACDの治療すべての緑内障の病型において,治療の根幹は眼圧を下げることである.ただし,眼圧上昇の原因が治療可能な病態であるなら,眼圧下降治療と並行して原因に対する治療が必要である.これが原発開放隅角緑内障(pri-maryCopenangleCglaucoma:POAG)とCPACDでは異なる.つまり,PACDでは隅角閉塞が眼圧上昇の原因であるため,閉塞を解除することが原因に対する治療ということになる.早期段階で閉塞が解除されればPACDは治癒するのである.PACDの隅角閉塞の機序として相対的瞳孔ブロック,プラトー虹彩形状,水晶体因子,水晶体後方因子があり,単一因子ではなく複数の因子が絡んでいることが多い.どの因子が隅角閉塞の主体であるかによって適切な治療法を選択する必要がある.PACDに対する従来の治療としてはCLPIが第一選択であった.TannerらはCPACSに対するCLPIはハイリスク症例にのみ行うべきとしている.ハイリスク症例とはCacutePAC(APAC)僚眼,診断や治療で散瞳が必要な場合,抗コリン作用のある抗うつ薬の使用,緑内障の家族歴,離島に在住などですぐに対応できない場合など,としている1).LPIで問題になることもある角膜内皮障害に関しては,PACSに対するCYAGレーザーを用いたLPIで,72カ月の経過期間で有意な障害はなかったと報告された2).しかし,LPIが効果あるのは瞳孔ブロックが隅角閉塞の主体である場合のみであり,そのほかの機序が主原因である隅角閉塞症例には無効である.さらにCLPI後に追加治療が必要な症例の割合はCPACSでC0~8%,PACでC42~67%,PACGでC83~100%という報告や,PACS,PAC,PACGすべてにおいてCLPIに表1原発閉塞隅角病(PACD)の分類GON(緑内障性視神経症)隅角閉塞原発閉塞隅角症疑い(PACS)なし機能的隅角閉塞原発閉塞隅角症(PAC)なし器質的隅角閉塞(PAS),または眼圧上昇原発閉塞隅角緑内障(PACG)あり同上(89)あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C3270910-1810/21/\100/頁/JCOPY図1水晶体摘出術前後の前眼部の変化PACS(70歳,女性)の前眼部光干渉断層計像.Ca:術前.b:術後.隅角は開大し,前房も深くなったのがわかる.より隅角は開大するものの,水晶体の加齢性変化により次第に浅くなっていくことも報告されている3).近年,LPIに替わってCPACDに対する治療の第一選択になりつつあるのが水晶体摘出術である.2016年には多施設ランダム化比較試験の結果が報告され,透明水晶体に対する水晶体摘出術はCLPIと比べて眼圧コントロールは良好であり,費用対効果も高いことが示された4)(図1).さらに最近の報告では,水晶体摘出術はCPACS,PAC,PACGすべてで眼圧下降があり,PAC,PACGでは抗緑内障点眼薬数が減少したとされる.この報告の中でPACGは術後に緑内障が進行したとされ,PACGに進行する前にCPACS,PACでは水晶体摘出術をすべきと結論づけている5).術前にCPASの存在が疑われる症例では隅角癒着解離術の追加も考慮する.しかし,PACDに対する水晶体摘出術に関しては通常の水晶体摘出術よりも合併症のリスクが高いことが報告されている6,7).通常の水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術の合併症の頻度はC2.2%であるのに対し6),PACD眼は短眼軸,浅前房,眼圧上昇などによる影響を受けC12.7%と高くなる7).また,以前筆者らは術前検査にて明らかな毛様小帯脆弱のないCPACD眼に対する水晶体摘出術を施行したC184眼のうち,10眼(5.4%)で毛様小帯脆弱があったと報告した8).PACDに対する水晶体摘出術では,これらの合併症に対応できる手術技量が必要である.また,水晶体を摘出するメリット,デメリットをきちんと理解してもらうことが重要である.とくに透明水晶体の場合や若年者の場合は視力低下がなく調節力もあるため,術後にCqualityofvisionが低下する可能性も説明しておくべきである.C●おわりにPACGの場合,隅角の閉塞機序にかかわらず第一選択として水晶体摘出術が必要である.これは透明水晶体の場合でも同様である.水晶体摘出術が不可能な症例にC328あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021おいて瞳孔ブロック形状が隅角閉塞の主体である場合は,LPIもしくは観血的周辺虹彩切除術を行い,プラトー虹彩形状が隅角閉塞の主体である場合はCLGPなどを考慮する.PAC,PACSに対しては,機能的閉塞がC3象限またはC2象限であっても,上述のようなCAPAC発症のハイリスク症例に関しては水晶体摘出術が第一選択と考えられる.機能的閉塞が軽度である症例に対しては定期的な隅角形状の経過観察が必要である.文献1)TannerCL,CGazzardCG,CNolanCWPCetal:HasCtheCEAGLEClandedfortheuseofclearlensextractioninangle-closureglaucoma?CAndChowCshouldCprimaryCangle-closureCsus-pectsbetreated?EyeC34:40-50,C20202)LiaoC,ZhangJ,JiangYetal:Long-terme.ectofYAGlaserCiridotomyConCcornealCendotheliumCinCprimaryCangleCclosuresuspects:aC72-monthCrandomisedCcontrolledCstudy.CBrCJCOphthalmolC2020,doi:10.1136/bjophthalmol-2020-315811.Onlineaheadofprint3)RadhakrishnanS,ChenPP,JunkAKetal:Laserperiph-eraliridotomyinprimaryangleclosure:AreportbytheAmericanCAcademyCofCOphthalmology.COphthalmologyC125:1110-1120,C20184)Azuara-BlancoCA,CBurrCJ,CRamsayCCCetal:E.ectivenessCofCearlyClensCextractionCforCtheCtreatmentCofCprimaryangle-closureCglaucoma(EAGLE):aCrandomisedCcon-trolledtrial.LancetC388:1389-1397,C20165)SongCMK,CSungCKR,CShinCJWCetal:GlaucomatousCpro-gressionafterlensextractioninprimaryangleclosuredis-easespectrum.JGlaucomaC29:711-717,C20206)PoweCNR,CScheinCOD,CGieserCSCCetal:SynthesisCofCtheCliteratureonvisualacuityandcomplicationsfollowingcat-aractCextractionCwithCintraocularClensCimplantation.CCata-ractCPatientCOutcomeCResearchCTeam.CArchCOphthalmolC112:239-252,C19947)ShamsPN,FosterPJ:Clinicaloutcomesafterlensextrac-tionCforCvisuallyCsigni.cantCcataractCinCeyesCwithCprimaryCangleclosure.JGlaucomaC21:545-550,C20128)酒井寛,與那原理子,新垣淑邦ほか:原発閉塞隅角合併白内障に対する水晶体再建術の術前,術中,術後合併症.あたらしい眼科34:292-295,C2017(90)

屈折矯正手術:年齢別角膜屈折矯正手術後の近視化

2021年3月31日 水曜日

監修=木下茂●連載250大橋裕一坪田一男250.年齢別角膜屈折矯正手術後の近視化小島美帆京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学近視は多くは学童期にもっとも進行し,学齢とともに進行速度が低下し,10代で進行がほぼ停止する.しかし,20代以降も近視が進行する例が少なからず存在する.本稿では筆者らが行った検討をもとに,年代別にみた角膜屈折矯正手術後の近視化について,眼軸長と屈折度数の観点から紹介する.●はじめに多治見スタディにおけるC40歳以上の近視の頻度は41.8%で,-5ジオプトリ(D)を超える強度近視がC8.2%を占める.世界的には近視の人口はC2050年までにC50億人に達すると予測されている.C●成人の近視進行近視の多くは学童期にもっとも進行するが,20代以降も近視の進行がみられる.単純近視(-1.0~-6.0D)の成人を対象にC10年間の変化を調べると,20代では-0.6D,30代では-0.39D,40代では-0.29D近視化していた1).また,近視(平均-3.0D)のコンタクトレンズ装用者を対象にC5年間の等価球面度数の変化を調べると,21.3%は-1.0以上の近視化がみられ,その割合を年齢別に見るとC20~25歳ではC34.9%,25~30歳では19.6%,30~35歳ではC13.6%,35~40歳ではC10.0%であった2).このようにC20代以降も近視の進行はみられ,20代とC30代を比較するとC20代のほうが近視の進行の程度が大きいことがわかる.C●屈折矯正手術後の眼軸長および等価球面度数の変化屈折矯正手術後の等価球面度数の変化については,Alioらによると術前-10.0D以下の症例(平均C33.2歳)においてCLaserinsitukeratomileusis(LASIK)術後の変化は平均-0.12±0.16D/年であった3).中村らはLASIKとCtrans-epithelialphotorefractivekeratectomy(tPRK)の術後C7年の等価球面度数変化について検討し,術後C6カ月からC7年の変化量は,LASIKでは-0.18±0.33D,tPRKでは-0.36±0.47Dであり,有意差は認めないがCtPRKでやや大きかったことを報告している4).一方,屈折矯正手術後の眼軸長変化については,屈折度数と比較すると既報は少なく,KamiyaらはCimplant-ablecollamerlens(ICL)を挿入した症例(平均C38.4歳,(87)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY術前屈折度数-10.64±2.61D,術前眼軸長C27.60C±1.18mm)の検討で,サブグループ解析として術前から術後6年の間の眼軸長変化を測定し,0.29C±0.43Cmm延長したとしている5).このほか,-6.0D未満,-6.0D以上でCLASIKを施行した群とCICLを施行したC3群に分けて術前後の眼軸長を測定した検討において,術後C5年の変化量はそれぞれC0.04C±0.07Cmm,0.04C±0.08Cmm,0.13C±0.12Cmmであったことが報告されている6).C●年齢別の角膜屈折矯正手術後の近視進行屈折矯正手術後の近視進行について,眼軸長の変化を調べた報告は少なく,また年齢別にみた報告はさらに少ない.筆者らは,LASIKまたはCepipolis-LASIK(epi-LASIK)を施行した症例C140例C280眼(平均年齢C30.6C±4.9歳)を対象に,20代とC30代の年齢別に術後眼軸長および等価球面度数の変化を検討した.術前の眼軸長および等価球面度数はC20代とC30代では有意差はなく,LASIKを施行した群(n=216)において,術後C1年から術後C5年のC4年間の眼軸長変化の平均値は,20代ではC0.059C±0.134mm,30代ではC0.027C±0.133Cmm(p=0.08),等価球面度数変化の平均値はC20代では+0.054C±0.256D,30代では+0.052±0.327D(p=0.93)であり,いずれもC20代とC30代の症例間に有意差を認めなかった(図1).一方,epi-LASIKを施行した群(n=64)においては,術後C1年から術後C5年のC4年間の眼軸長変化の平均値はC20代ではC0.124C±0.141Cmm,30代ではC0.094C±0.166Cmm(p=0.46),等価球面度数変化の平均値はC20代では-0.438±0.207D,30代では-0.259±0.454D(p=0.41)であり,LASIK群と同様にC20代と30代の症例間に有意差を認めなかった(図2).一般的にC20代とC30代を比較すると,20代のほうが近視の進行が大きいことを考えると,LASIKやCepi-LASIKに近視進行抑制効果がある可能性が示唆される結果であった.近視進行メカニズムは未だ明らかではなく議論のあるあたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C325GroupAGroupBGroupAGroupBan=84n=132a28n=28n=362827.527.5眼軸長(mm)27眼軸長(mm)26.52625.52524.5242423.523.51234512345(n=216)(n=206)(n=204)(n=208)(n=216)(n=64)(n=62)(n=64)(n=62)(n=64)術後経過観察期間(年)術後経過観察期間(年)bGroupAGroupBbGroupAGroupB0.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8等価球面度数(D)-0.2-0.4-0.6-0.8-112345(n=80)(n=80)(n=72)(n=78)(n=78)術後経過観察期間(年)図1LASIK術後4年間の眼軸長と屈折値(等価球面度数)の変化a:GroupA(20代)とCGroupB(30代)で眼軸長の変化に有意差は認めなかった.b:GroupAとCGroupBで等価球面度数の変化に有意差は認めなかった.ところであるが,調節ラグ,軸外収差による遠視性デフォーカスが一因とされている.今回の検討においては,屈折矯正手術後に周辺網膜の遠視性軸外屈折が改善したことで近視進行が抑制された可能性がある.ただ,本検討では同年代で屈折矯正手術を行っていないコントロール群を設けておらず,さらなる前向き研究が必要である.この点に関しては,Sellaらが片眼のみ屈折矯正手術(PRKまたはCLASIK)を施行し,僚眼との等価球面度数の変化を比較したC3例について報告している7).このC3例においては術眼のほうが近視進行の程度が小さいという結果であった.現在,筆者らの関連施設でも屈折矯正手術が近視の進行に及ぼす影響を調べるため,まず片眼のみCLASIKを施行し,2年間各眼の近視進行を経過観察し,その後僚眼にもCLASIKを施行する臨床研究が進行している.今後,屈折矯正手術と近視進行の関連について新たな知見が得られることが期待される.326あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021-112345(n=64)(n=34)(n=30)(n=34)(n=18)術後経過観察期間(年)図2epi.LASIK術後4年間の眼軸長と屈折値(等価球面度数)の変化a:GroupA(20代)とCGroupB(30代)で眼軸長の変化に有意差は認めなかった.b:GroupAとCGroupBで等価球面度数の変化に有意差は認めなかった.文献1)EllingsenCKI,CNizamCA,CEllingsenCBACetal:Age-relatedCrefractiveshiftsinsimplemyopia.JRefractSurgC13:223-228,C19972)BullimoreMA,JonesLA,MoeschbergerMLetal:Aret-rospectiveCstudyCofCmyopiaCprogressionCinCadultCcontactClensCwearers.CInvestCOphthalmolCVisCSci43:2110-2113,C20023)AlioJL,MuftuogluO,OrtizDetal:Ten-YearFollow-upofCLaserCInCSituCKeratomileusisCforCMyopiaCofCupCtoC-10CDiopters.AmJOphthalmolC143:46-54,C20084)中村葉,稗田牧,山村陽ほか:LaserCinCsituCKer-atomileusisとCtrans-epithelialphotorefractivekeratectomyの術後C7年の経過比較.日眼会誌120:487-493,C20165)KamiyaCK,CShimizuCK,CIgarashiCACetal:FactorsCin.uencingClong-termCregressionCafterCposteriorCchamberCphakicCintraocularClensCimplantationCforCmoderateCtoChighCmyopia.CAmJOphthalmolC158:179-184,C20146)山村陽,稗田牧,脇舛耕一ほか:屈折矯正手術後C5年の眼軸長変化.眼科手術28:417-421,C20157)SellaCS,CDurdevan-StrierCN,CKaisermanI:UnilateralCrefractivesurgeryandmyopiaprogression.JPediatrOph-thalmolStrabismusC56:78-82,C2019(88)

眼内レンズ:水晶体内異物

2021年3月31日 水曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋松島博之412.水晶体内異物獨協医科大学眼科学教室水晶体内異物は難症例である.前.染色を行い,水晶体.破損形状を確認し前.切開を行う.異物除去にはビスコエキストラクション法を活用する.眼内レンズ(IOL)挿入時は偏位を考慮してIOLを選択し,前.の亀裂を避けて支持部を固定することが重要である..内固定できない場合は強膜内固定になることも念頭に置き,準備をする.●はじめに水晶体内異物に遭遇する機会は少なくなったと思う.外傷の原因としてハンマーでの作業や電動草刈機の使用などが多いが,以前より作業中にゴーグルを着用するようになったからであろう.症例は少ないが,いざ遭遇すると最初から水晶体.が破損していて,水晶体内の異物摘出も必要であり,難症例である1,2).本稿では水晶体内異物の1症例をとりあげる.●症例患者は61歳の男性.3週間前,芝刈り中に左眼を受傷した.角膜の創口はきれいで閉じている.虹彩上に穿孔創があり,白内障が進行している(図1).視力は右眼が矯正1.2に対し,左眼は0.02.頭部CTにて左眼水晶体付近に高輝度の陰影を認めた(図2).水晶体内異物の診断で,入院手術となった.手術時間が長くなる可能性があるので,Tenon.下麻酔を施行し,異物摘出も考慮して強角膜切開を作製した(図3).水晶体への穿孔創が確認できないので,トリパンブルーを使って前.染色を行ったところ,8時の方向に前.の破損が確認できたので,この部位を避けて前.切開を行った.前.切開を進めていくと,穿孔部でフラップが穿孔創と重なり切れてしまったので,反対側のサイドポートから前.剪刀で切れ目を入れて前.切開を完成させた.超音波乳化吸引と皮質吸引に関しては,前.切開に亀裂が入っているため後.側まで亀裂が回るのを懸念し,ボトル高を40cmまで下げて,低灌流低吸引設定で超音波乳化吸引および皮質吸引を行った.超音波乳化吸引を進めると,水晶体内に異物が確認できたので,前房中に持ちあげ,ビスコエキストラクション法で切開創から摘出した.前.切開の亀裂は拡大しなかったので,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)NX-70(参天)を.内に固定した.IOL挿入時に前房が虚脱し後.に負荷がかかると,後.に亀裂が入る可能性があるので,丁寧な操作が必要である.IOL固定位置は,支持部が亀裂方向を向くと亀裂方向にIOL偏位を生じる可能図1左眼前眼部写真9時方向の虹彩上に穿孔創があり,白内障が進行している.図2頭部CT左眼水晶体付近に高輝度の陰影を認めた.(85)あたらしい眼科Vol.38,No.3,20213230910-1810/21/\100/頁/JCOPY図3水晶体内異物の摘出a:異物摘出のための創口拡大を考慮して強角膜切開を作製した.b:前.切開中に前.穿孔部で亀裂が生じたので,反対側のサイドポートから前.剪刀で修正し,前.切開を完成させた.c:異物は切開創を拡大してビスコエキストラクション法で摘出し,超音波水晶体乳化吸引と皮質吸引を行った.d:IOLは亀裂を避けて5時-11時付近に支持部が来るように固定した.性があるので,亀裂方向を避けることもポイントである.本症例は左眼視力1.0×IOL(1.2×IOL=-0.25D)まで改善した.●外傷性白内障のポイント通常の白内障手術と異なり,最初から水晶体.を破損していることが多い.術前の診察および詳細な検査によって水晶体.のどの部位が破損しているか確認し,戦略を立てておくことが重要である.後.破損を生じる可能性が高いが,さらに前.切開にも亀裂が生じることが多いため,IOL光学部キャプチャーは使いにくい.IOL強膜内固定になる可能性も考え,硝子体カッターなどもすぐに使用できるように準備をしておく.水晶体内に異物がある場合は,固く吸引不可能なことが多いので,本症例のようにビスコエキストラクション法を用いて切開創から摘出することを考え,強角膜切開を選択するとよい.外傷性白内障は遭遇する機会は少ないが,対処方法を整理しておく必要がある症例である.本症例は拙稿「外傷性水晶体疾患」(眼科グラフィック9:84-88,2020)より抜粋し,追記した.文献1)白石さや香,上山杏那,岡崎光彦ほか:20年間無症状で経過した水晶体内鉄片異物の1例.日眼会誌112:882-886,20082)高山圭,佐藤智人,桜井裕ほか:明らかな前眼部炎症を生じずに水晶体内に留まった眼内ステンレス片の1例.あたらしい眼科29:131-134,2012

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 遠近両用ハードコンタクトレンズの処方

2021年3月31日 水曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科医院10.遠近両用ハードコンタクトレンズの処方■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)ユーザーが中高年期になり近見障害を訴えた場合は,遠近両用HCLの適応となる.初期老視の場合は+0.5ジオプトリー(D)の超低加入度数の遠近両用CLでも対応可能である.ある程度老視が進んでいる場合は,老視の進行度やユーザーの見たい距離に応じて+1.0D,+1.5D,+2.0D,+2.5D,+3.0Dと加入度数を強くする.すべての遠近両用HCLは交代視型であり,遠近それぞれの光学的機能は高い.また,遠用近用の移行部はなだらかに研磨されており,この部位に累進屈折力をもたせたCLもあり,その範囲はレンズの種類により異なる(図1).どのような遠近両用HCLを選択するかは,ユーザーの生活様式に大きく依存する.セグメントタイプの遠近両用HCLは一時姿を消していたが,最近になってシード社から発売された(図2,シード・バイエキスパート).このレンズの最大の特徴は,自動車の運転時に違和感が少ないこと,といわれている1).HCLユーザーの老視化に対しては遠近両用HCLが適応となるが,まれにソフトコンタクトレンズ(SCL)を試してみたいというユーザーがいる.乱視が少なくて,遠近両用SCLに特有なコントラスト感度の低下が気に近用ゾーン遠用ゾーン図1同心円型遠近両用HCL中央部に遠用,周辺部に近用の度数が配置されている.その境界部はなだらかに研磨されており,その部位に累進屈折力を持たせたものが多いが,その範囲は各レンズによって異なっている.ならないユーザーには処方する場合もある.また,トーリックSCLを使用しているユーザーが遠近両用CLを希望する場合がある.メニコンから遠近両用トーリックSCLが発売されているので,ある程度の乱視眼には対応できるが,強い乱視や斜乱視がある場合は遠近両用HCLを処方することもある.白内障術後で単焦点眼内レンズを埋め込んでいる場合に,HCL装用経験者には遠近両用HCLを処方すると喜ばれることが多い.■遠近両用HCLの処方最近の遠近両用HCLの加入は外面にほどこされており,内面は球面であるものが大半である.このようなレンズは,これまでに装用していたHCLのデータが参考になる.しかし,加入度数が両面にほどこされており,内面が非球面のレンズでは,これまでに装用していた内面球面のレンズのデータは参考にならない.■処方例1.両面非球面遠近両用HCL(レインボーオプティカル研究所製:レインボークレール)50歳,女性.ガス透過性HCL使用中.近見障害.RV=(1.2×750/-2.75/8.8)NRV=0.3LV=(1.2×755/-3.00/8.8)NLV=0.3処方レンズ(図3)図2セグメントタイプ遠近両用HCL上方に遠用,下方に近用度数が配置されている.その境界部はなだらかに研磨されている.また,回転を防ぐためにプリズムバラスト構造になっている.レンズ周辺部はスラブオフカーブにより,全周の厚みを一定にして装用感をよくしている.(83)あたらしい眼科Vol.38,No.3,20213210910-1810/21/\100/頁/JCOPY図3両面非球面遠近両用HCLのフルオレセインパターン図4外面非球面・内面球面遠近両用HCLの全体としてはフラットなパターンではあるが,アピカル・クリアランスのよフルオレセインパターンうにもみえる.サイズとBCの変更はあるが,従来の良好なフルオレセインパターンを示す.RV=(1.2×730/-5.50/+3.0/9.0)NRV=0.6LV=(1.0×730/-6.00/+3.0/9.0)NLV=0.5このレンズのように両面非球面遠近両用HCLでは,これまで装用していたレンズのベースカーブ(BC)や度数は参考にならない.図2のように,かなりフラットめに処方しても,BCはかなり異なり,それにともない度数もかなり異なってくる.2.外面非球面・内面球面遠近両用HCL(メニコン製:メニフォーカルZ)47歳,女性.ガス透過性HCL使用中.近見障害.RV=(1.2×760/-4.75/9.0)NRV=0.4LV=(1.2×770/-5.00/9.0)NLV=0.4処方レンズ(図4)RV=(1.2×770/-4.25/+2.0/9.6)NRV=0.7LV=(1.2×780/-4.50/+2.0/9.6)NLV=0.8外面非球面・内面球面遠近両用HCLでは,これまでに装用していたレンズのデータが参考になる.これまでのレンズよりもサイズが少し大きくなるので,BCはフラットになり,その分の涙液レンズの影響を考慮してパワーは弱くなっている.図3のフルオレセインパターンは良好である.3.左眼白内障術後・ガス透過性HCL装用経験あり(サンコンタクトレンズ製:サンコンマイルドII・バイフォーカルタイプ)55歳,女性.右眼:HCL使用中.左眼:単焦点IOL挿入眼.近見障害.RV=(1.2×775/-6.50/8.8)NRV=0.4LV=(0.7×IOL)(1.2×IOL(S-1.25D)NLV=0.3処方レンズRV=(1.2×775/-6.50/+1.5/8.8)NRV=0.7LV=(1.2×765/-1.00/+2.5/8.8)NLV=0.7右眼には加入度数の低い遠近両用HCLを,左眼には加入度数の高い遠近両用HCLを処方して,遠近ともに良好な視力が得られた.4.外面非球面・内面球面遠近両用HCL(シード製:シードマルチフォーカルO2ノア)32歳,女性.ガス透過性HCL使用中.眼精疲労.RV=(1.2×820/-7.00/8.8)NRV=0.6LV=(1.2×810/-6.50/8.8)NLV=0.6処方レンズRV=(1.2×830/-6.50/+1.0/9.2)NRV=0.8LV=(1.2×820/-6.00/+1.0/9.2)NLV=0.8まだ近見障害はないが,眼精疲労を訴えている.事務職で近見作業が多いとのこと.そこで低加入度数の遠近両用HCLを処方し,眼精疲労は解消した.文献1)梶田雅義:遠近両用ハードコンタクトレンズ―同心円タイプかセグメントタイプか.あたらしい眼科37:1335-1342,2020

写真:頭頸部癌陽子線治療後の偽膜性結膜炎

2021年3月31日 水曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦442.頭頸部癌陽子線治療後の福井歩美京都府立医科大学大学院視機能再生外科学偽膜性結膜炎京都府立医科大学附属北部医療センター眼科福岡秀記京都府立医科大学大学院視機能再生外科学図2図1のシェーマ①下眼瞼に広範囲に広がる偽膜図1前眼部写真下眼瞼結膜鼻側優位の広範囲な偽膜形成を認める.図3フルオレセイン染色偽膜に一致した結膜上皮欠損と涙液貯留増大を認める.図4陽子線治療前の頭部CT画像篩骨洞から右眼窩内部に伸展する腫瘤性病変を認める.(81)あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C3190910-1810/21/\100/頁/JCOPY陽子線治療は,放射線治療の一種であり,水素の原子核(陽子)を粒子加速器を用いて加速し,病変部位に照射する.従来の放射線治療では病変部位以外の周辺正常組織にも放射線照射が及び,障害を防ぐことが困難であった.しかし,陽子線はある深さに最大の放射線エネルギー量を設定し,その深さ以降の部位には放射線の影響を及ぼさないブラッグピーク(Braggpeak)をもつという特性があるため,病変部より手前および奥の正常組織の吸収線量を減らすことができる.そのような理由から,脳幹や視神経などの臓器が隣接するような頭頸部癌には陽子線治療はよい適応とされ,2018年に局所限局性前立腺癌,骨軟部腫瘍とともに保険収載された1).陽子線治療は現段階において限られた施設でしか受けることはできないが,適応疾患が広がってきており,今後診療を続けていくうえで,出会う機会が増加すると予想される.症例はC45歳,男性.右眼の突出,眼痛,鼻閉を訴え前医を受診した.篩骨洞から右眼窩内に進展する腫瘍性病変が認められ(図4),生検により篩骨洞扁平上皮癌(cT4aN0M0)と診断され,京都府立医科大学附属病院(以下,当院)耳鼻咽喉科に紹介となった.化学療法と陽子線治療(総吸収線量C70CGy,35分割照射)を行い,眼球突出は改善したが,陽子線治療中に右眼の異物感,掻痒感,流涙を認め当院眼科に照会となった.初診時所見は,右眼のびまん性結膜充血,鼻上側の眼瞼結膜と下方から鼻側にかけての眼瞼結膜の偽膜形成,涙液貯留の増大であった(図1~3).ガチフロキサシン,0.1%フルオロメトロン点眼右眼1日C4回で治療を開始した.結膜.の細菌培養検査でメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)が検出されたため,バンコマイシン眼軟膏右眼C1日C5回を追加し除菌後,フラジオマイシン含有ベタメタゾン眼軟膏右眼C1日C4回も追加した.その後,消炎により偽膜と結膜上皮欠損部は徐々に改善を認め,自覚症状も改善し経過は良好である.涙液貯留量の増大は涙道粘膜の障害からきているものと推察された.放射線治療による有害事象は急性期と晩期に分類される.急性期有害事象とは治療開始後C6カ月以内(おもに3カ月以内)に発生することが多く,細胞分裂が盛んな部位で起こり,線量増加とともに障害の程度も重症化するが,時間経過とともに回復し,一過性であることが多い.眼科領域では眼瞼炎,結膜炎,角膜炎などがこれにあたる.晩期有害事象は治療からC6カ月以降に確率的に発症するため,全例に認められるわけではないが,発症すると難治性となることが多い.眼科領域では網膜症,白内障,視神経障害などがあてはまる2,3).本症例は陽子線治療時に生じた偽膜性結膜炎であり,急性期有害事象と考えられる.今後,晩期有害事象が生じる可能性も含めて,眼科でも定期的な診察が必要である.陽子線治療を含めた放射線治療のさらなる普及により,眼科領域においても放射線治療後の有害事象をきたした患者を診察する機会が増えると考えられる.放射線治療における副作用と治療について理解を深めておくことが重要である.文献1)秋元哲夫:陽子線治療-頭頸部癌治療における陽子線治療の現状と可能性について.日本耳鼻咽喉科学会会報C122:C947-953,C20192)BarabinoCS,CRaghavanCA,CLoe.erCJCetal:Radiotherapy-inducedocularsurfacedisease.CorneaC24:909-914,C20053)HempelCM,CHinkelbeinW:EyeCsequelaeCfollowingCexter-nalCirradiation.CRecentCResultsCCancerCResC130:231-236,C1993C

糖尿病網膜症診療ガイドラインで世界をリードするために

2021年3月31日 水曜日

糖尿病網膜症診療ガイドラインで世界をリードするためにLeadingGlobalOphthalmologywithGuidelinesonDiabeticRetinopathyClinicalPractice村田敏規*はじめに『日本眼科学会雑誌』の2020年124巻12号に,「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」が特集として掲載された1).役に立つと自負している.ぜひ,一読をお願いしたい.糖尿病網膜症は患者数が多く,ほとんどすべての眼科医が日常的にその診療に携わるので,極論すれば眼科医の数だけ,それぞれのガイドラインがある.しかし,だからこそ診断治療のコンセンサスとしてのガイドラインをまとめることが大切である.その内容は多岐にわたるので,今回は糖尿病網膜症の分類に話を絞る.今後,日本の眼科医が国際会議でのdiscussionに登壇できるよう,日本の糖尿病網膜症の分類を統一し,かつ世界との共通性をもたせることが大切だと考えている.Iわが国の糖尿病網膜症分類は世界的に孤立している海外の学会で発表を経験された先生方,英語で糖尿病網膜症関連の論文を執筆された先生は,足元が崩れるようなとまどいを感じた経験があると思う.米国でもヨーロッパでも,そしてアジアでも,世界中の学会で単純糖尿病網膜症(simplediabeticretinopathy:simpleDR),あるいは増殖前糖尿病網膜症(pre-proliferativediabet-icretinopathy:PPDR)という言葉が通じない.現在,世界標準は「糖尿病網膜症国際重症度分類」であり,ここにはPPDRという分類が存在しないからである2).一方,わが国では全国的にDavis分類,すなわち単純糖尿病網膜症,増殖前糖尿病網膜症,増殖糖尿病に分ける分類が,圧倒的に多くの眼科医に使われている.同時に,糖尿病眼学会が推奨してきた福田分類も,関東エリアを中心に愛用されている.にわかには信じがたいことと思われるが,要約すると,糖尿病網膜症の分類という観点では,日本の眼科は世界で完全に孤立している.今後,日本の若い眼科医が世界で研究成果を発信するためには,世界と共通の分類を使わなければ話が通じない.まずは日本の眼科医がDavis分類から,そして福田分類から,国際重症度分類に移行しなければいけない.II国際重症度分類の母体となったDavis分類わが国の代表的な糖尿病網膜症分類となっているDavis分類は,米国の眼科医の名を冠しているので,海外でも標準的に広く使われていると信じられてきた.しかし,筆者は1996年ロサンゼルスのDohenyEyeInstitute(UCLA)に留学して,なんと1980年代後半からは,米国では実はほとんど使われていないことを知った.米国の眼科医が,蛍光眼底造影検査を必要とするDavis分類を使うのをやめ,眼底所見のみに基づいて糖尿病網膜症を分類するETDRS分類へ,さらには国際重症度分類に移行したからである.これにすぐヨーロッパが追随した.さらには近年発展めざましいアジア諸国も,現代の米国の眼科学をダイレクトに導入した.この結果,アジアの眼科医はDavis分類をまったく知らな*ToshinoriMurata:信州大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕村田敏規:〒390-8621長野県松本市旭3-1-1信州大学医学部眼科学教室0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(77)315表1国際重症度分類とDavis分類の類似性国際重症度分類Davis分類網膜症なし(noapparentretinopathy)─軽症非増殖糖尿病網膜症(mildNPDR)毛細血管瘤のみ中等症非増殖糖尿病網膜症(moderateNPDR)軽症と重症の間単純糖尿病網膜症下記のいずれかを認める毛細血管瘤点状・斑状出血硬性白斑重症非増殖糖尿病網膜症(severeNPDR)下記のいずれかを認める4象限で20個以上の網膜出血2象限以上で静脈数珠状拡張1象限以上で網膜内細小血管異常増殖前糖尿病網膜症下記のいずれかを認める軟性白斑網膜無灌流領域(蛍光眼底造影で検出)増殖糖尿病網膜症(PDR)網膜新生血管を認める増殖糖尿病網膜症網膜新生血管を認める-図1重症非増殖糖尿病網膜症a:眼底写真.軟性白斑が多発し,intraretinalmicrovascularabnormality(IRMA)がみられる(.).b:IRMAの拡大写真(.).c:蛍光眼底造影.4象限に無灌流領域と漏出がみられる.d:OCTAngiography(OCTA)の基となる,Bscanwith.owsingals.OCTのBスキャンに赤い点で赤血球の動きがある部位を示している.bの白線の断面である.内境界膜上には赤血球の動きがないので,この異常血管網は新生血管ではなく,IRMAであることが確認される.e:OCTA3象限以上に広がる無灌流領域を明瞭に描出する.汎網膜光凝固の適応である.同じ概念と考えて問題がない.IV国際重症度分類の最大の欠点これまで述べてきたように,分類方法においてはDavis分類も国際重症度分類も大差がないようにみえる.しかし,国際重症度分類にはDavis分類での増殖前期に,無灌流領域のレーザー照射で増殖期への進行を予防するという大切な概念が欠けている.国際重症度分類は,蛍光眼底造影を不要とする目的で作成されたこともあり,無灌流領域で定義される増殖前期という概念がない.一方,わが国では増殖前期に無灌流領域をみつけて,汎網膜光凝固を開始して,増殖期への進行を抑え,失明を予防するという考え方が広く普及して成果をあげている.日本で糖尿病網膜症を失明原因の第1位から第3位に下げることに成功したのは,この予防的な汎網膜光凝固の功績であるといっても過言ではない.近年,わが国でもアレルギー反応のリスクがある蛍光眼底造影を施行してまで,予防的汎網膜光凝固を施行する眼科医が減少傾向にある.そんな状況下で救世主となるのが,近年普及がめざましいOCTAである(図1e).赤血球の動きをトレースして毛細血管レベルまで網膜血管を描出可能で,リスクのある蛍光眼底造影を行わずに無灌流領域を明瞭に描出できる.Vより治療効果が高い4.3.2.1ルールを提唱する前節でも述べたように国際重症度分類は非常に簡便で有用な分類である.個々の患者に即したきめ細かな進行予防的な治療で,患者の良好な視力を維持してきた,わが国の眼科医にとってやや物足りない.たとえば,視力予後の分岐点となりうるsevereNPDRで「汎網膜光凝固を施行してもよい」とされているが,具体的な指針がない.また,わが国では無灌流領域の有無が汎網膜光凝固の治療開始の目安としているが,この無灌流領域を示唆する眼底所見である軟性白斑が国際重症度分類の定義には登場しない.しかし,実臨床では図1aのように軟性白斑が眼底に観察されれば,蛍光眼底造影かOCTAを施行して,無灌流領域の有無を確認し,予防的な汎網318あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021膜光凝固を施行することが,その患者を失明から救うカギとなる.なぜなら,糖尿病網膜症は一生続く病態であり,患者の経過観察からの脱落率がきわめて高い.長期間の観察中断後,ハイリスクなPDRに進行してから再診して,治療が手遅れとなることが多いからである.幸いなことにわが国には厚生(労働)省班会議の報告があり,これに従い3象限に無灌流領域があれば汎網膜光凝固を完成することが,患者の失明のリスクを著しく下げることにつながる.つまり,欧米の4-2-1ルールに,治療のタイミングを加味した4-3-2-1ルール,すなわち,1)眼底4象限で20個以上の網膜出血,2)2象限以上で静脈数珠状拡張,3)1象限以上の明確な網膜内細小血管異常があれば,severeNPDRと診断し,侵襲の低さからOCTAを第一選択,蛍光眼底造影を第二選択として施行し,無灌流領域が3象限に確認されたら,汎網膜光凝固を施行することを提唱する(糖尿病網膜症診療ガイドラインの第2版に向けた試案).VIまとめ「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」は,糖尿病網膜症を網羅的に解説している.今後編集を始める第2版では,上記の4-3-2-1ルールを含めて,より日常診療に役立つ具体的なガイドラインへと改良していきたい.わが国固有の福田分類,長年使用してきたDavis分類への思いはあるが,糖尿病網膜症治療を担う次世代の若い眼科医たちが,今後世界での日本の眼科のプレゼンスを高めてくれることを何よりも願っている.まずは分類を国際重症度分類に統一していくことを,日本糖尿病眼学会理事長,そしてガイドライン委員会委員長として,第2版のひとつの使命としたいと考えている.文献1)糖尿病網膜症診療ガイドライン委員会:糖尿病網膜症診療ガイドライン.日眼会誌124:955-981,20202)WilkinsonCP,FerrisFL3rd,KleinREetal;Globaldia-beticRetinopathyProjectGroup:Proposedinternationalclinicaldiabeticretinopathyanddiabeticmacularedemadiseaseseverityscales.Ophthalmology110:1677-1682,2003(80)

糖尿病網膜症・黄斑浮腫に対する疾患レジストリー研究

2021年3月31日 水曜日

糖尿病網膜症・黄斑浮腫に対する疾患レジストリー研究ObservationalStudybyRegistryofPatientswithDiabeticRetinopathyandDiabeticMacularEdema志村雅彦*はじめに近年,レジストリー研究という言葉を耳にする機会が増えたように思う.そもそも医学において患者を対象にする臨床研究には介入試験と観察研究の2種類があり1),前者はおもに介入治療の効果を客観的に評価することを目的とするため,あらかじめ定められた介入治療以外を行うことはできず,しばしば臨床試験などともよばれる.介入試験では実験的要素を伴うため,対象患者に対する有益性が不確定であり,したがって介入試験開始前に試験の妥当性・安全性について熟慮する必要から,特定臨床研究法の対象となり,認定倫理委員会での審議・許諾を必要とする.後者である観察研究は文字通り経過を観察するのみの研究であり,意図的・実験的な要素は存在せず,疫学研究などともよばれる.観察研究のなかで,対象患者を登録する研究をレジストリー研究とよんでいる.レジストリー研究は,横断研究(cross-sectionalstudy)と縦断研究(longitudinalstudy)に分けられ,後者は後ろ向きの症例対照研究(retrospectivestudy)と前向きのコホート研究(cohortstudy)に分けられる.なお,コホート研究では前向きに収集されたデータを使って後ろ向き研究を行うことができるため,これを後ろ向きコホート研究(retrospectivecohortstudy)として,前向きコホート研究(prospectivecohortstudy)と分けて考えることもある.Iレジストリー研究の適応と限界レジストリー研究は対象症例を登録するのみであり,症例に対して意図的な介入が行われないため倫理的な問題が起こりにくく,疾患の有病率を調査したり,実臨床における臨床成績を調べるといったことを容易に行うことが可能である.研究を行うことを開示(オプトアウト)することで症例ごとの承諾が不要となるため,多くの症例を集めやすい.有病率や検査精度などを調べるためにはcross-sectionalstudyが適しており,因果関係や危険因子,発症率や治療効果,予後などを調べるためにはlongitudinalstudyが適している.反面,登録された症例の患者背景や臨床経過に統一性がないため,介入治療の有効性を評価するような比較対照を行うことはむずかしい.詳細は疫学研究の専門家にゆだねるが,観察研究による比較対照を目的にしばしば行われる傾向スコアによるマッチングでは,登録された症例のなかで患者背景や治療プロトコールなどが似通った症例ペアをみつけていくため,十分な症例ペアが得られない可能性もある.したがって,治療効果や予後などの傾向を調べるためにはかなりの症例数を集める必要があり,一般的にレジストリー研究では1,000例以上,理想的には10,000例以上の症例登録を行う必要がある.以下,実際に行われた糖尿病網膜症のレジストリー研究を紹介する.*MasahikoShimura:東京医科大学八王子医療センター眼科〔別刷請求先〕志村雅彦:〒193-0998東京都八王子市館町1163東京医科大学八王子医療センター眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(71)309II糖尿病網膜症の有病率糖尿病網膜症の有病率はレジストリー研究のなかでもCcross-sectionalstudyとしてもっとも調査しやすい項目であり,わが国においてもC1998年に久山町スタディにおいて報告されている.これによると,糖尿病患者における網膜症の有病率はC16.9%であり,その内訳は単純型C9.6%,前増殖型C6.3%,増殖型C1.0%と報告されている2).久山町スタディとは人口の年齢分布や職業構成および生活様式や栄養摂取状況が日本の平均レベルで推移していた福岡県久山町でC1961年からC40歳以上の住民のC8割以上を検診し,50年にわたる追跡調査を行った世界でも類もみない精度の高い疫学研究である.糖尿病網膜症の有病率の変化についてはC2007年およびC2012年にも同様の調査報告がなされ,2007年の網膜症の有病率はC15.0%(単純型C10.3%,前増殖型C3.0%,増殖型0.5%),2012年の網膜症の有病率はC10.3%と,有病率は低下傾向にあり,網膜症の発症が抑制されていることが判明した3).このように,同一地区の集団を年代ごとに有病率を算出するという手法はレジストリー研究のもっとも得意とする分野であり,網膜症の有病率の低下から,糖尿病患者の眼合併症に対する意識の向上と糖尿病専門医の血糖管理の厳格化,網膜症専門医の網膜光凝固術や硝子体手術の積極的導入などが有効であったとする傍証になった.一方で,久山町での有病率が他の地域においても当てはまるのかという疑問が生じる.実際,山形県舟形町でC2000.2002年にC35歳以上の全住民を対象にした糖尿病網膜症の有病率調査では糖尿病患者の23.0%と報告4)されており,地域差は無視できない.このような場合,すでに報告されたさまざまな地域や年代での研究結果を統合し,統計処理を行って結論を導くデータ統合型メタ研究という手法がある.実際に世界C35研究・登録症例数C23,000人をもとに,2010年の世界人口の年齢分布に標準化した糖尿病網膜症の有病率が計算され,これによれば糖尿病網膜症の有病率はC35.4%であり,増殖糖尿病網膜症がC7.2%,黄斑浮腫がC7.4%と報告され,両者を合わせた「視力を脅かす危険のある網膜症」の有病率はC11.7%であると報告されている5).III糖尿病網膜症の発症率・進展率糖尿病網膜症の危険因子を調査するというような臨床研究では前向きのコホート研究が威力を発揮する.CJapanDiabetesComplicationsStudy(JDCS)がC45.70歳の日本人C2型糖尿病患者(男性C1,087名,女性C946)を対象にした多施設無作為臨床試験としてC8年間の前向きコホート研究を行っており6),これによると,網膜症のC8年累積発症率はC26.6%,38.3/1,000人年で,その危険因子としてヘモグロビンCA1c濃度が高い,糖尿病の罹病期間が長い,bodyCmassindex(BMI)値が大きい,収縮期血圧が高いことが報告されている.また,網膜症の累積進展率はC15.9%,21.1/1,000人年で,その危険因子はヘモグロビンCA1c濃度が高いことであった.なお,UnitedCKingdomCProspectiveCDiabetesCStudy(UKPDS)では,厳格な血糖管理で網膜症の進展(網膜光凝固の施行)が約C25%抑制できると報告されている7).また,高血圧の厳格管理も同様の抑制効果があり,血糖の厳格管理と独立しているとの報告もある8).一方,レジストリー研究で縦断研究を行うためには,多数の登録症例数を要するだけでなく,長期の研究期間が必要となる.そこで,やはり年代別の研究結果をまとめて統計解析を行うデータ統合型メタ研究を用いることもできる.世界C28研究・登録症例数C27,120人を対象にしたメタ研究では,1975.1985年に比べC1986.2008年では増殖網膜症の発症率がC19.5%からC2.6%へと大幅に減少し,糖尿病網膜症に伴う重篤な視力障害もC9.7%からC3.2%に減少したと報告されている9).以上のように,糖尿病網膜症の発症率・有病率は大きく減少傾向にあることがさまざまなレジストリー研究によって明らかになっている一方で,糖尿病黄斑浮腫を含む糖尿病黄斑症の患者数は未だ増加傾向にあるとされる.糖尿病黄斑浮腫の診断には光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)が必須といえるが,検診などに対応するまで普及しておらず,有病率や発症率などの研究はこれからの課題とされている.CIV糖尿病黄斑浮腫への臨床研究さて,糖尿病黄斑浮腫に対する臨床研究は,そのほと310あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021(72)んどが抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬の有効性・安全性を明らかにする目的で行われており,前向き介入治療として行われている.抗CVEGF薬の有効性については,多くの大規模多施設前向き臨床研究結果が報告されており,ラニビズマブを導入期C3回毎月連続投与後,維持期には必要時(proCrenata:PRN)投与を行ったCRESTORECstudy10)では,介入前視力が小数視力C0.125.0.625の症例にC2年間で平均C14.5.15.2回投与され,2年後にはC6.7.7.9文字の改善がみられており,一方アフリベルセプトを導入期にC5回毎月連続投与,維持期にはC2カ月ごとの定期投与を行ったCVIVID/VISTACstudy11)では,介入前視力が小数視力C0.06.0.5の症例にC2年間で平均C13.5.13.6回投与され,2年後にはC9.4-11.1文字の改善がみられている.一方でラニビズマブ,トリアムシノロン,レーザー治療で比較した臨床研究12)では,ラニビズマブはC2年間でC7.9文字の改善に対し.黄斑部への光凝固で治療した場合はC2年間でC3文字の改善にとどまっており,抗炎症ステロイドの硝子体内注射で治療した場合,半年ではラニビズマブと同等の改善が認められたものの,投与後の白内障進行によってC2年間ではC2文字の改善にとどまってしまうことも報告されている.このような前向き臨床研究では治療の効果を評価することが目的であるため,基本的に介入前視力は小数視力でC0.06.0.6という条件で,単一治療・単一プロトコールで行われており,効果に応じて治療選択を変更することはないので実臨床での治療とはかなり異なっている.実臨床における糖尿病黄斑浮腫治療については,抗VEGF薬で治療を開始した症例に対するC1年の研究結果があり,7.5.7.9回の投与でC4.0.5.5文字の改善が得られたとの報告13)や,5.7回の投与でC5文字の改善といった報告14)があり,いずれも前向き研究とは投与回数も平均改善文字数も及ばないことがわかっているが,これらの報告でさえも,抗CVEGF薬を使用した症例のみを対象としており,本来の実臨床の結果とはいいがたい.実臨床における糖尿病黄斑浮腫への治療では,抗VEGF薬以外にステロイドの局所投与や黄斑部への光凝固,硝子体手術も行われているからである.実際の臨床現場では糖尿病黄斑浮腫に対してどんな治療が行われ,どんな予後が得られているのか,といった情報はレジストリー研究の得意とするところである.最近,わが国における網膜硝子体専門医が糖尿病黄斑浮腫に対してどのような治療を行い,どのような視力予後が得られたかについて,大規模多施設後ろ向き研究(STREAT-DMEstudy)が行われたので紹介する15,16).CV糖尿病黄斑浮腫治療についてのレジストリー研究STREAT-DMEstudyは,筆者のグループがわが国の網膜硝子体専門医C41名(27施設)の協力の下で行ったレジストリー研究である.未治療の糖尿病黄斑浮腫で,2010年C1月.2015年C12月に初めて介入治療が開始され,2年間の経過を終えたC1,552症例C2,049眼について,治療開始時およびC2年後の視力と黄斑部網膜厚,さらに介入治療の種類(抗CVEGF薬,ステロイド局所投与,黄斑部光凝固,硝子体手術)と回数,抗CVEGF薬は薬物別(ベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプト),ステロイド局所投与は投与経路別(硝子体内投与,Tenon.下投与)に調査し,作成されたデータベースを作成した.この臨床研究によると,糖尿病黄斑浮腫になんらかの介入治療が開始されたときの平均視力は0.44ClogMAR(小数視力換算でC0.363)であり,2年後の平均視力はC0.40ClogMAR(小数視力換算でC0.398だった.したがって視力改善度は-0.04ClogMAR,つまりC2文字の有意な改善であった.なお,介入治療開始前の小数視力はC0.01.1.2であり,実臨床では視力にかかわらず治療が行われていることがわかっている.このデータベースから抗CVEGF薬治療の有無によって分類15),あるいは治療開始年度ごとに分類16)して,視機能予後や投与パターンを比較検討した.糖尿病黄斑浮腫C2,049眼のうち,2年間に抗CVEGF薬の投与が行われたものはC1,234眼(60.2%)であり,まったく抗CVEGF薬を投与されなかったものはC815眼(39.8%)であった.なお,前者をC2年間に抗CVEGF薬のみで治療されたC427眼(20.8%)と抗CVEGF薬とその他の治療が併用されたC807眼(39.4%)に分類し,3群に分類して比較対照を行った(表1).その結果,介入前視力が良好な症例では抗CVEGF薬を使用せずに治療さ(73)あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C311表1抗VEGF薬使用の有無による2年間の糖尿病黄斑浮腫治療結果全体抗CVEGF薬のみで治療抗CVEGF薬併用治療抗CVEGF薬以外で治療3群間の有意差(p値)適応眼数2,049(C100%)427(C20.8%)807(C39.4%)815(C39.8%)<C0.001介入前視力(logMAR)C0.44C±0.37C0.45C±0.35C0.48C±0.3C0.40C±0.38<C0.001介入C2年後視力(logMAR)C0.40C±0.42C0.37C±0.42C0.46C±0.40C0.35C±0.44<C0.001視力改善度(logMAR)-0.04±0.40-0.09±0.39-0.02±0.40-0.05±0.39C0.0122文字改善4.5文字改善1文字改善2.5文字改善介入前後の有意差(p値)<C0.001<C0.001C0.225<C0.001介入前中心窩網膜厚(mm)C443.8C±154.8C446.4C±144.1C472.8C±160.1C413.7C±149.2<C0.001介入前中心窩網膜厚(mm)C335.6C±139.6C329.0C±126.5C348.6C±151.1C326.2C±133.5C0.003浮腫改善度(mm)-108.2±186.8-117.4±174.1-124.2±197.2-87.5±180.8<C0.001介入前後の有意差(p値)<C0.001<C0.001<C0.001<C0.001投与症例数抗CVEGF薬1,234(C60.2%)427(C100%)807(C100%)0(0%)抗炎症ステロイド1,077(C52.6%)0(0%)524(C64.9%)553(C67.9%)黄斑部光凝固746(C36.4%)0(0%)361(C44.7%)385(C47.2%)硝子体手術597(C29.1%)0(0%)295(C36.6%)302(C37.1%)投与回数抗CVEGF薬(回)C3.8±3.3C4.3±3.6C4.3±3.6C─抗炎症ステロイド(回)C2.0±1.3C─C2.1±1.4C1.9±1.2黄斑部光凝固(回)C1.9±1.4C─C1.8±1.4C1.9±1.3硝子体手術(回)C1.1±0.3C─C1.1±0.3C1.0±0.2(文献C15より改変)b(%)1.0a1000.8800.6600.4400.2200-0.202010-22011-32012-42013-52014-62015-72010-22011-32012-42013-52014-62015-7(n=136)(n=285)(n=365)(n=551)(n=468)(n=244)(n=136)(n=285)(n=365)(n=551)(n=468)(n=244)観察期間観察期間c(%)1008060402002010-22011-32012-42013-52014-62015-7観察期間図1実臨床における糖尿病黄斑浮腫に対する2年間の治療成績:介入年度ごとの変化a:介入前および最終(2年後)視力の推移.Cb:最終視力C0.5以上の症例割合の推移.Cc:介入治療割合の推移.(文献C16より改変引用)視力(logMAR)—-

糖尿病網膜症・黄斑浮腫に対するイメージングの進歩

2021年3月31日 水曜日

糖尿病網膜症・黄斑浮腫に対するイメージングの進歩AdvancesinRetinalImagingforDiabeticRetinopathyandDiabeticMacularEdema福田洋輔*中尾新太郎*はじめにわれわれ眼科医にとって糖尿病網膜症診療の目的は糖尿病患者の視機能維持,改善である.長年わが国の糖尿病患者数は増加の一途をたどり,糖尿病網膜症は失明原因の第一位であった1).しかし,「国民健康・栄養調査」の概要によれば,2016年での「糖尿病の可能性を否定できない者」の数は2012年よりも減少している(平成28年国民健康・栄養調査の概要:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chou-sa.html).眼科手術などの進歩により,糖尿病網膜症による失明も減少傾向にある1).また,糖尿病患者の寿命は全体の平均寿命より短いことが知られているが,日本人糖尿病患者の平均死亡時年齢も10年前と比べ延長し,平均寿命との差は過去最少となった2).そのため糖尿病患者にとっても,視機能の維持は,人生100年時代の生活の質(qualityoflife:QOL)に直結する問題となる.今後の網膜症診療は失明予防からより良いqualityofvision(QOV)達成が求められる.健常人同等の視機能維持実現には糖尿病網膜症の個別化診療が重要となり,眼底イメージングの活用が不可欠となる.本稿では,糖尿病網膜症のイメージングのアップデートについて解説する.I糖尿病網膜症のイメージング糖尿病網膜症診療において最近10年でもっとも進歩した分野の一つがイメージングである.近年のイメージング機器は糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫の治療プロトコール決定と予後予測に重要な役割を担っている.デジタル化されたカラー眼底写真は再現性が高く,保存が可能であり網膜症のフォローアップに役立つが,広角眼底観察機器がその有用性をさらに高めている.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は糖尿病黄斑浮腫の診断・治療決定・治療効果判定に不可欠である.また,糖尿病網膜症診療に有用であるフルオレセイン蛍光造影検査(.uoresceinangiography:FA)も光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangi-ography:OCTA)の登場によりその検査頻度が減少するかもしれない.II眼底写真糖尿病網膜症診療で基本となるのが眼底検査である.増殖糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症による視力低下原因であるがそのスクリーニングと進行のモニタリングに有用である病期分類のためには眼底検査が不可欠であるからである.眼底写真は現在ではデジタル化され,再現性高く記録保存可能となっており,症例のフォローアップや他施設への紹介時に有用となる.近年はさまざまなタイプの超広角眼底撮影装置が開発され,広範囲での眼底撮像が可能となった(表1).糖尿病網膜症は周辺部に病変を認める症例も少なくなく,約1割の症例で通常の眼底写真よりも病期がより重症と判定されることが報告されている3)(図1).糖尿病網膜症におけ*YosukeFukuda&*ShintaroNakao:国立病院機構九州医療センター眼科〔別刷請求先〕中尾新太郎:〒810-8563福岡市中央区地行浜1-8-1国立病院機構九州医療センター眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(63)301表1わが国で発売された超広角眼底撮影装置(2021年1月現在)製品名CCaliforniaCDaytonaCCLARUSCMiranteCEidon機種名(モデル)CICGCFACRGCplusC700C500CSLO/OCTCSLOCFaCAfメーカー名Optos(ニコンソリューションズ)Optos(ニコンソリューションズ)カールツァイスメディテックニデックCKYCentervue認証日2015年C8月2012年C2月2019年C3月2017年C11月2019年C4月2017年C11月撮影方式走査型走査型走査型走査型走査型撮影光源レーザーレーザーCLEDレーザーCLEDカラー〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇CFA〇〇C─C─C─〇C─〇*〇C─C─CIA〇C─C─C─C─*C─〇*C─C─C─CFAF〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇C─1ショットC200°C200°C133°89°(標準)C/163°(広角アダプタ)C88.8°モザイクC225°C─C225°2画像:2C00°最大C6画像:2C67°(約C220°)オート:1C63°マニュアル:2C14°構築枚数2.5画像C─2.5画像2.6画像2.4画像2.9画像*:オプションにて可能FA:.uoresceinangiography,IA:indocyaninegreenangiography,FAF:fundusauto.uorescence.図1糖尿病網膜症の眼底写真とフルオレセイン蛍光眼底造影(36歳,男性,左眼)カラー眼底写真(Ca)では比較的所見に乏しく見えるが,広角走査レーザー検眼鏡(Cb)では網膜前出血,硝子体出血が観察できる.フルオレセイン蛍光眼底造影(Cc)では視神経乳頭上の網膜血管新生とともに周辺に網膜新生血管が多発し,無灌流領域も観察できる.C-図2糖尿病黄斑浮腫のOCT所見a:健常眼の黄斑部COCT.網膜層構造が観察される().Cb:80歳,女性,右眼,糖尿病黄斑浮腫軽快後,中心窩網膜厚253Cμmであるが視力(0.15)と不良.視力不良の原因として中心窩のCELM,IS/OSlineの障害(),黄斑部のCDRIL()が考えられる.Cc:59歳,男性,右眼,中心窩網膜厚C418Cμmの中心窩にCcyst()を伴う黄斑浮腫.CystがCELMに達しておらず視力は(1.0)と良好である.図3糖尿病網膜症のOCTA所見a:OCTAのパノラマ写真.いくつかのCOCT機器にはパノラマ機能が内蔵しており,赤道部付近までの撮像が可能である.Cb:黄斑部に多くの毛細血管瘤を認める().OCTAはすべての毛細血管瘤を描出しない.Cc:OCTAはフルオレセイン蛍光眼底造影と異なり蛍光漏出がないため,無灌流領域の検出に有用である.Cd:OCTAは蛍光漏出がないため,網膜新生血管の描出にも有用である().網膜内異常血管との鑑別はCBスキャン画像が有用である.初診時3M9M15MFD=39.1FD=34.1FD=33.7FD=30.3図4OCTAによる糖尿病網膜症のフォローアップ重症非増殖網膜症患者(41歳,男性)の黄斑部COCTAにおける灌流密度(.owdensity:FD).初診時CFDはC39.1%であったが,3,9カ月目でそれぞれCFD34.1%,33.7%とCFDの低下を認めた.15カ月目でCFD30.3%となり増殖網膜症に進展した.(文献C21より改変引用)–