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眼内レンズ:モルガーニ白内障における前囊切開 ViscoexpansionTechnique

2021年1月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋410.モルガーニ白内障における前.切開飯田嘉彦北里大学医学部眼科学教室ViscoexpansionTechniqueモルガーニ白内障とは過熟白内障の皮質が液化し,茶褐色の核が水晶体下方に沈下している状態であり,手術の際には水晶体.の張りがなくなり,前.切開時の前.片のコントロールが困難となることが問題となる.粘弾性物質の使用により水晶体.の張りを保ち,前.切開を容易にする方法を紹介する.●はじめにモルガーニ白内障(MorgagnicataractあるいはMor-gagniancataract)とは過熟白内障の皮質が液化し,高度に硬化した茶褐色の核が水晶体.内で下方に沈下している状態である(図1).細隙灯顕微鏡で診察するような座位の状態では茶褐色の核が水晶体.下方に沈下していることが確認でき,仰臥位に姿勢を変えると核は後.側に沈下して,前.側は液化した皮質のみになるので,手術時に顕微鏡下で見ると均一に白く混濁しているように見える.●白内障手術時の問題点と対処法モルガーニ白内障の手術においては,液化した皮質が前房内に流出して視認性が悪くなること,硬化した核が小さく,液化した皮質は核を支える力がないため,超音波乳化吸引にて核処理を行うことが困難であることが知られているが,その前の連続円形切.(continuouscur-vilinearcapsulorrhexis:CCC)を施行する際に,脆弱なZinn小帯や,前.を穿刺し液化した皮質を吸引することにより水晶体.の張りがなくなり,前.片のコントロールが困難となることも,手術をむずかしくしている理由の一つである.白内障手術の際に使用する粘弾性物質(ophthalmicviscosurgicaldevice:OVD)は空間保持の役割を担い,前.切開時にも前.片が赤道部へ流れていかないよう,図1モルガーニ白内障(前眼部写真)前.を上から押さえるように前房内にOVDを注入することが多い.しかし,モルガーニ白内障のように皮質が液化して水晶体の張りがないような場合には,OVDを注入して上から押さえつけるのではなく,水晶体.内に凝集型OVDを注入して,水晶体.を膨らませて張りを保つように形状を形成するviscoexpansiontechniqueを用いることにより,前.切開のフラップのコントロールがしやすくなる.●手術方法前房内にOVDを注入し,視認性向上のために前.染色を行ったあと,前.に30ゲージ鋭針を穿刺し,水晶体.内の液化した皮質を吸引する(図2).液化した皮質を吸引すると,後.側に沈下している水晶体核が見えてくる.前.鑷子で前.切開を開始し,水晶体.の張りを確認し,前.片のコントロールがしにくい場合には同部位より凝集型OVDを水晶体.内に注入し,水晶体.の張りと形状を保ち,そのうえで前.切開を再開する(図3).前.切開後は,残存した核の状態に応じて摘出方法を検討する.核が小さく硬いため水晶体.内での安定性が悪い場合には,超音波乳化吸引術ではなく水晶体.外摘出術に変更するという選択肢もある.筆者は皮質を吸引したところ,非常に小さな核しか残らなかった症例を経験したことがあり,超音波乳化吸引で対応可能な場合もある(図4).(71)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021710910-1810/21/\100/頁/JCOPY液化した皮質図2皮質吸引前.を30ゲージ鋭針で穿刺し,液化した皮質を吸引する.小さく硬い核●おわりにViscoexpansiontechniqueはOVDの特徴の一つである空間保持機能を利用した方法である.以前にこのセミナーでも紹介した角膜内皮減少例に対するdoublecir-cularcapsulotomy&endophacotechnique1,2)は,.内にOVDを注入して水晶体.の張りを保ったうえで小さなCCCを拡大していく手技であり,viscoexpansiontechniqueはその手技に着想を得たものである.確実にCCCが作製されていれば,Zinn小帯が脆弱であった場図3.内へのOVD注入皮質を吸引し,虚脱気味になった水晶体.内に凝集型OVDを注入する.図4前.切開後に残存した水晶体核a:水晶体.外摘出へコンバート.b:前.切開後に液化した皮質を除去したところ,小さな核しか残っていなかった.合にも虹彩リトラクターやカプセルエキスパンダーなどを使用することも可能である.難症例であればあるほど,より確実な手技の遂行が求められる.文献1)清水公也:DoubleCircularCapsulotomyとEndocapsularPhacoemulsi.cation.眼科手術2:431-435,19892)飯田嘉彦:角膜内皮減少例に対するDoubleCircularCapsu-lotomy&EndophacoTechnique.あたらしい眼科35:353-354,2018

コンタクトレンズ:ハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 フルオレセインパターンによる判定

2021年1月31日 日曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科医院8.フルオレセインパターンによる判定(3)■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)のフィッティングを判定するには,レンズの動きや静止位置をチェックしたあとに,角膜とHCL間のフルオレセインの染まり具合をチェックしなければならない.その際に見逃されやすいのはベベル幅とエッジの浮き上がり,ブレンド状態のチェックである.今回は,前回セミナーに引き続き,ベベル幅のチェック法から解説する.■ベベル幅のチェック(2)ベベルデザインはレンズの動きに大きな影響を及ぼすことは前回記した.サイズ8.8mmのHCLのベベルの幅は0.6mm程度が最適であるが,ベベル幅が狭すぎると(図1)エッジの浮き上がりは小さくなり,レンズの動きは少なくなり(タイト),レンズの動きによる涙液図1狭すぎるベベル幅レンズの動きがタイトになり,固着を起こす場合もある.図3エッジの浮き上がりのチェック法0.1mm程度に絞った光束をレンズ下端に45°の角度から当てる.交換は不足してくる.ベベル幅が広すぎると涙液のドライアップによって将来的に3時-9時ステイニングを生じることは前回記したが,ベベル幅が狭すぎてもベベル部分と角膜の機械的刺激により3時-9時ステイニングをきたしてくることがある(図2).■エッジの浮き上がりのチェック直乱視におけるエッジの浮き上がりをチェックするには,0.1mm程度に絞ったスリットランプの光束を45°の角度からレンズ下端に当てて,エッジと角膜の間の光束のズレを観察する(図3).光束のズレが1本分が適当なエッジの浮き上がりとなる(図4).■ブレンド状態のチェックHCLの内面はベースカーブ(BC)と中間カーブ(intermediatecurve:IC)と周辺カーブ(peripheralcurve:PC)からなりたっており,それぞれの境界は鋭角になる.そのままでは異物感が強いだけでなく,角膜に損傷を与えることもある(図5).そこで,それぞれの境界は研磨してなだらかになるようにしなければならない.これを「ブレンドをかける」といい,BCとIC間の研磨をICブレンド,ICとPC間の研磨をPCブレンドとよぶ.フルオレセインパターンによってフィッティングをチェックする際に,ICブレンドの状態はある程度,推察することができる(図6).しかし,ルーペでベベル形状を実際に観察するのが確実である(図7).模式abc図4エッジの浮き上がりの検査a:光束のズレが約1本分が適当なエッジの浮き上がり.b:エッジの浮き上がりが大きくルーズになる.c:エッジの浮き上がりが小さくタイトになる.図23時.9時ステイニングベベルと角膜との間に機械的刺激が生じて3時-9時方向に点状表層角膜症が認められることがある.(69)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021690910-1810/21/\100/頁/JCOPY図5ブレンド不足による角膜上皮障害図6フルオレセインパターン判定時におけ図7ルーペによるベベルチェックICブレンドおよびPCブレンド不足にるICブレンドのチェックHCLを指に固定して直線型蛍光灯のより角膜周辺部に角膜上皮障害が認めらBCのフルオレセインとベベルのフルオレセ光をベベル部位に当てて,30~45°のれる.イン濃度がなめらかに移行している場合は,角度からルーペにて観察する.ICブレンドは良好と見なすことができる.c図8ベベル・エッジの模式図a:エッジの浮き上がりが小さい.b:ブレンド不足.c:ブレンド過剰.d:良好な状態.図を図8に示す.実際にベベル形状を観察すると,エッジの仕上がり,PCブレンドやICブレンドのかかり具合,エッジの浮き上がり,ベベル幅などを簡単に知ることができる.■フルオレセインパターン判定時の注意点フルオレセインパターンにてフィッティングを判定する場合,HCLは角膜中央部に位置していなければならない.静止位置が角膜やや上方あるいは下方にある場合,一見スティープにみえたりフラットにみえたりすることがある(図9).そういうときは,眼瞼の上から指で図9静止位置によるフルオレセインパターンの変化実際はスティープであっても,レンズがやや下方にあることによりフラットにみえる.図10フルオレセインの量による影響フルオレセインの量が多すぎると,レンズ表面にフルオレセインが溢れて,正確な判定ができないことがある.レンズを角膜中央部に押し戻してから判定する.また,フルオレセインの量が多すぎると,レンズ表面にもフルオレセインが溢れて,フラットであってもスティープであっても一見パラレルにみえてしまうことがある(図10).昭和薬加工のフローレス試験紙なら2~3等分にカットして生理食塩水で濡らして使用するとよい.現在,筆者は蛍光眼底造影剤フルオレセイン2mgを生理食塩水8mgに溶かした液を硝子棒に少し付けて,余分なフルオレセインを振り落としてから,下眼瞼結膜や上眼球結膜に付けている.

写真:偏食によって生じた小児のビタミンA欠乏症

2021年1月31日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦440.偏食によって生じた小児の細谷友雅兵庫医科大学眼科学教室ビタミンA欠乏症横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図1左眼前眼部写真耳側結膜は皮膚のように角化しており,極度の水濡れ性低下を認める.軽度の充血を伴っている.図3左眼前眼部フルオレセイン染色写真高度の角結膜上皮障害を認める.図42週後の左眼前眼部写真肝油ドロップの摂取で結膜の角化は治癒し,水濡れ性も改善した.(67)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021670910-1810/21/\100/頁/JCOPY極度の偏食に伴い発症した小児のビタミンA(VitA)欠乏症の1例を紹介する.患者は4歳の女児.主訴は数週間前からの両眼の充血と羞明であった.近医眼科で高度のドライアイといわれ,ヒアルロン酸点眼で改善しないため紹介となった.既往症として食物アレルギー(卵,乳製品),流行性角結膜炎(2カ月前)がある.発達障害はなかった.受診時所見は,右眼視力0.7,左眼視力0.6(集中力欠如のため,裸眼視力しか測定できず),両眼の眼球結膜角化と軽度の充血(図1,2),角膜全面の高度な点状表層角膜症を認めた(図3).前房,水晶体,眼底に特記すべき異常を認めなかった.網膜電位図で桿体反応の減弱を認めた.夜盲の訴えはなかった.身長,体重は4歳児の平均値内であった.所見よりVitA欠乏症を疑い,食事について問診を追加したところ,白い食物(白米,大豆製品,素麺,パンなど)を異常に好み,肉類,野菜類は食べないという極度の偏食が判明した.偏食と眼所見からVitA欠乏症と判断し,小児科に精査加療を依頼した.血液検査の結果が出るまで,肝油ドロップの摂取を勧めた.血清VitA値は5IU/l以下(基準値97~316IU/l)と非常に低下していたが,そのほかはビタミンB12の軽度低下と軽い貧血を認めるのみであった.2週後,両眼の眼球結膜角化と点状表層角膜症は著明に改善しており(図4),肝油ドロップで治療効果があったと考えられた.VitAは脂溶性ビタミンで,緑黄色野菜から摂取可能であるが,乳製品,卵,レバーなどの動物性食品にも多く含まれる.後者のほうがレチノールを多く含み,その転換効率はよい1).VitA欠乏症は夜盲を初期症状とし,皮膚や気道,消化管,尿路などの粘膜の乾燥化と角化を生じる.眼所見は夜盲に加え,眼球乾燥症による結膜角化を生じ,進行すれば角膜潰瘍,角膜軟化症に至り,失明の原因ともなる.開発途上国ではVitA欠乏が視覚障害のおもな原因である.VitAは免疫機能にとっても不可欠なため,欠乏すると感染症に弱くなる1).日本ではまれな疾患ではあるが,消化管術後2)や,自閉症で摂食障害のある小児患者に発症した報告3)がある.本症例に既往はなかったが,自閉症スペクトラム障害は偏食や好き嫌いが高率で合併する4).このため,その有無を既往歴として聴取すべきである.保護者は眼疾患の原因が偏食にあると思わず,「気になることはないか」という問診ではなかなか摂食障害にたどり着くことができない.したがって,「偏食がないか」と具体的に尋ねる必要がある.本症例は食物アレルギーで小児科通院中であったが,身長や体重は正常で,小児科医が外見からVitA欠乏症を推察するのはむずかしかったと考えられる.結膜の角化はVitA欠乏症に特異度の高い所見であり,病状が進行すると角膜潰瘍や視神経萎縮をきたし,不可逆性の機能障害が残存するため,眼科医が早期に発見する意義は大きい.今日の日本ではVitA欠乏症は非常にまれな疾患ではあるが,小児の結膜角化をみたらVitA欠乏症も鑑別にあげ,問診で発達障害や偏食の有無を聴取することが重要である.文献1)野末みほ,吉池信男:栄養失調─世界中の子どもたちが抱える栄養問題.小児科臨床58:1370-1376,20052)斎藤純一郎,板垣秀夫,平岡孝浩ほか:十二指腸癌切除術後に発症したビタミンA欠乏症の1例.眼臨紀4:693-697,20113)槫沼裕子,今井弘毅,平野隆雄ほか:自閉症を有する男児のビタミンA欠乏症により角膜潰瘍に至った1例.眼科59:457-462,20174)柏木充:発達障害と偏食.小児科臨床72:550-554,2019

導涙機能を考慮した涙道閉塞手術

2021年1月31日 日曜日

導涙機能を考慮した涙道閉塞手術LacrimalDuctObstructionSurgeryandTearClearance三谷亜里沙*鎌尾知行*はじめに涙道閉塞は涙小管閉塞(pre-saccalobstruction)と鼻涙管閉塞(post-saccalobstruction)に分けて考える必要がある.なぜなら両者は解剖学的構造や治療目的,治療法などさまざまな点で異なるためである.涙小管閉塞の治療法は,涙管チューブ挿入術,経皮的涙小管形成手術,結膜涙.鼻腔吻合術が代表的である.わが国では涙道内視鏡の開発により,ほとんどの症例が涙管チューブ挿入術で対応可能となった1).しかし,涙小管閉塞の重症例については,経皮的涙小管形成手術や結膜涙.鼻腔吻合術が必要な場合がある.一方,鼻涙管閉塞の治療法は涙.鼻腔吻合術(dacryo-cystorhinostomy:DCR)に代表されるバイパス手術と,涙管チューブ挿入術に代表される涙道再建手術に大別される.ゴールドスタンダードの治療法はDCRであるが,わが国では涙道内視鏡の改良・普及により涙管チューブ挿入術の治療適応が拡大し,治療成績の比較検討が行われるようになった.鼻涙管閉塞に対する治療成功率はDCRが90~99%2~4),近年の涙管チューブ挿入術が70~89.9%と報告されており1,5,6),涙道内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術の開発により治療成績が向上している.ただし,導涙機能に焦点を当てて比較検討した報告はない.涙道再建手術は閉塞部位を開放するため,その流れは生理的に戻るが,涙道が再狭窄などをきたすと涙液の通過障害が残存することがある.また,バイパス手術は新たな通り道を作製するため,涙液は非生理的な流れとなり,導涙機能に変化が生じている可能性が考えられる.本稿では,導涙機構とその評価法について解説し,涙道閉塞治療後の涙液クリアランスについて述べる.I導涙機構導涙機構には,蒸発や角結膜からの吸収・浸透,重力,毛細管現象,涙道のポンプ作用,Krehbiel.owなどさまざまのものが関与しているが7),そのなかでもっとも重要な機構が涙道のポンプ作用と考えられている.そして涙道のポンプ作用のメカニズムは,柿崎らが提唱したtetracompartmenttheoryがもっとも支持されている8).これは涙小管と涙.がそれぞれ二つのコンパートメントに分かれて動くという考え方で,涙小管と涙.をそれぞれ二つに分けているものがHorner筋である.Horner筋は眼輪筋の深部にあたり,後涙.稜後方から起始し,前外方に走行し,眼輪筋瞼板前部に合流する(図1a,b).涙小管の外側4/5はHorner筋内を走行するが,内側1/5は筋外を走行する.そのため,涙小管の外側と内側で図1a,bのようにHorner筋の収縮弛緩により異なる動きを示す.すなわち,Horner筋により涙小管が二つのパートに分かれて動き,涙小管のポンプ作用を発揮する.涙.については,Horner筋に接している上半部と,接していない下半部に分かれる.上半部は涙小管の内側1/5と同じ動きを示す(図1a,b).一方,下半部の涙.*ArisaMitani&*TomoyukiKamao:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学〔別刷請求先〕三谷亜里沙:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(59)59ace図1涙小管と涙.の解剖と瞬目に伴う動きa:涙小管と涙.上部の水平断図.開瞼時,つまり眼輪筋・Horner筋が弛緩している状態では涙小管の外側4/5は拡張する.一方,涙小管の内側1/5と涙.上部は,眼窩脂肪にHorner筋が後方から圧排されて縮小する.b:涙小管と涙.上部の水平断図.閉瞼時,つまり眼輪筋・Horner筋が収縮している状態では,涙小管の外側4/5はHorner筋に圧排され収縮する.一方,Horner筋の筋腹が後方に偏位することで,涙小管の内側1/5と涙.上部は拡張する.c:涙.下部の水平断図.開瞼時には眼輪筋が弛緩し,眼輪筋や眼窩脂肪が前方に偏位し,眼窩内圧の低下により涙.は外側に拡張する.d:涙.下部の水平断図.閉瞼時には眼輪筋の収縮により前方から眼窩脂肪が圧排され,眼窩内圧の上昇による外側からの圧排により涙.は縮小する.e:開瞼時の涙小管と涙.の動き.眼輪筋・Horner筋が弛緩しているため,涙小管外側と涙.下部は拡張し,涙小管内側と涙.上部が収縮している.f:閉瞼時の涙小管と涙.の動き.眼輪筋・Horner筋が収縮しているため,涙小管外側と涙.下部は収縮し,涙小管内側と涙.上部が拡張している.(a,b:眼手術学3眼瞼・涙器I.涙器手術に必要な基礎知識1.涙液,涙道の解剖生理図22より改変引用,c~f:KakizakiH,etal:ThelacrimalcanaliculusandsacborderedbytheHorner’smuscleformthefunctionallacrimaldrainagesystem.Ophthalmology112:710-716,2005Figure4,6より改変引用)表1定量的導涙機能検査検査装置トレーサーC.uorophotometryC.uorophotometerC.uorescein造影CdynamicMRICMRIガドリニウムシンチグラフィCgammacamera放射性同位体PMMA検査細隙灯顕微鏡PMMA粒子前眼部COCT検査前眼部COCT生食/ムコスタa前眼部OCT撮影生食5μl点眼涙液メニスカス面積(TMA)涙液メニスカス高(TMH)b0.80.60.40.20点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間TMH高(mm)図2前眼部OCTを用いた涙液クリアランス検査a:マイクロピペットを用いてC5Cμlの生理食塩水を下眼瞼結膜.に点眼する.前眼部COCT(CASIASS-1000,トーメーコーポレーション)を用いて,自然瞬目による下眼瞼の涙液メニスカス高(TMH)と涙液メニスカス面積(TMA)を経時的に計測する.Cb:正常者におけるTMHの経時変化.縦軸がCTMHの高さ,横軸が時間経過を示す.測定ポイントは点眼前と点眼直後(0秒),30秒後,1,2,3,4,5分後までのC8ポイントである.生食点眼直後に上昇したCTMHは,最初のC30秒間で急激に低下し,約C3分でベースラインに戻っている.Grade1Grade2Grade3図3涙小管閉塞の重症度分類(矢部・鈴木分類)涙管通水検査にて上下交通が認められる総涙小管閉塞はCGrade1,上下交通が認められず,閉塞部までの距離が涙点から7~8Cmm以上であればCGrade2,閉塞部までの距離が涙点から7~8Cmm未満の場合はCGrade3に分類される.正常者涙管チューブ挿入術結膜涙.鼻腔吻合術aGrade1bGrade2,3図4当院における涙小管閉塞の重症度別涙管チューブ挿入術治療成績当院で涙小管閉塞に対して涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例を対象とした.Ca:Grade1の治療成功率はC95.4%(151側中C144側).b:Grade2およびGrade3の治療成功率はC69.8%(43側中C30側).TMH高(mm)0.80.60.40.20点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間図5涙小管閉塞治療後のOCT涙液クリアランス検査正常者,涙小管閉塞に対する涙管チューブ挿入術治療後,または結膜涙.鼻腔吻合術後のCTMHの経時変化を示す.結膜涙.鼻腔吻合術後群は正常者群や涙管チューブ挿入術後群と比較して,点眼前と点眼C30秒以降で統計学的に有意にCTMHが高い.*:p<0.05(Tukey-Kramertest)図6結膜涙.鼻腔吻合術LesterJonestubeはパイレックスまたは硬質ガラス製のステントである.両端につばがあり,片端が涙湖に,もう片端が涙.や鼻粘膜に固定されることで落下や脱落を防止している.日本では本ステントが認可されておらず,個々で作製するか,米国より個人輸入する必要がある.aDCR後b涙管チューブ挿入術後G110.5%G22.8%正常者涙管チューブ挿入術DCRTMH高(mm)0.60.40.2時間図7鼻涙管閉塞治療後のOCT涙液クリアランス検査正常者,鼻涙管閉塞に対する涙管チューブ挿入術治療後,または涙.鼻腔吻合術後(DCR)症例のCTMHの経時変化を示す.正常者群と涙管チューブ挿入術後群はほぼ同じ動態を示す.DCR後群も統計学的に有意な差はなかった.(Tukey-Kramertest)図8鼻涙管閉塞治療後の涙道通過障害の割合涙管通水検査時の逆流量により,逆流なし,全注入量の内C50%未満が逆流してくるものをCGrade1(G1),全注入量の内C50%以上が逆流するものをCGrade2(G2)と分類した.当院で鼻涙管閉塞に対してCDCRまたは涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例の最終診察時の涙管通水検査結果を示す.a:DCR後C19側.Cb:涙管チューブ挿入術後C36側.点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分逆流なし逆流あり0.60.40.20.0TMH高(mm)点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間図9涙管通水検査の逆流の有無によるOCT涙液クリアランス検査の比較当院で鼻涙管閉塞に対して涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術治療を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例を対象とした.涙管通水検査の逆流の有無によりCOCT涙液クリアランス結果を比較すると,逆流なし群と比較してCGrade1以上の逆流を有する群は,点眼前と点眼C30秒以降で有意にCTMHが高い.*:p<0.05(Student’st-test)-’C

涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫

2021年1月31日 日曜日

涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫DevisingLacrimalSurgeriestoDecreaseRecurrenceoftheObstruction三村真士*はじめに涙道手術は,閉塞した涙道を開放して,正常な涙液排泄を促すことで健常な眼表面を保ち,視機能の発揮に貢献している.涙道手術には大きく分けて,閉塞した涙道を再建するCre-canalizationと,閉塞部を回避して新たな道を作製するCbypasssurgeryの二通りがある.Re-canalizationはCLacrifast(ロート製薬),PFカテーテル(ニデック),FCIヌンチャク(FCI)といった,日本で開発されたCbi-canalicularチューブを一時的に留置して閉塞部を開放する方法である.Bypasssurgeryは涙道の一部を外科的に切除して,バイパスを作製することで新涙道を形成する方法がもっとも一般的に行われている.いずれの涙道手術も,ハード面もソフト面も近年非常に洗練され,手術成功率の向上と低侵襲化が達成されてきており,社会への貢献度を大きく伸ばすことができているが,さらに洗練度を高める努力を怠ることはできない.本稿では,現在まで蓄積されてきたエビデンスに基づき,深く考慮した涙道手術の洗練化について紹介する.CI手術適応涙道手術は基本的に流涙症を改善するために行うが,涙液の排泄は涙道のみで行われているわけではない.涙道以外に,涙液の蒸発や涙道粘膜での涙液吸収も涙液の排泄に大いに関与する.つまり,分泌された涙液を処理する能力が上記排泄因子の総合力で賄えればそれで問題ない.したがって,涙道閉塞の有無のみならず,ドライアイや結膜・涙道粘膜の炎症(吸収が落ちる)などを同時に評価する必要があるし,逆に涙道閉塞がまったくなくても,いわゆる機能性流涙症では,涙道手術が適応となることもある.たとえば前者では,鼻涙管閉塞を伴うSjogren症候群の場合,涙道を開放することは逆に涙液減少性ドライアイを悪化させることになる可能性が高く,涙.炎を涙道洗浄や点眼で予防することで,保存的に症状の改善を図ることも一つの選択肢として考えられる.つまり,その流涙症を解決するうえで,涙道手術がどのように効果を発揮するかを,涙液の循環を総合的に評価して,手術適応を決める必要があることを念頭に入れなければならない(図1).CIIRe.canalizationsurgeryわが国においては,2000年代初頭に涙道内視鏡が登場したことより,術中に涙管チューブ誤挿入の有無を客観的に捕らえられるようになったため,現在ではとくに後天性原発性涙道閉塞においては,かぎりなくC100%に近い確率で涙管チューブを誤道なく挿入することができるようになっている.これを前提に以下の話を進めるが,このような洗練されたCre-canalizationをベースに論じられた論文はわが国以外では少なく,涙管ブジーに細いシリコーン製チューブが接続されたCCrawfordチューブといった古典的な涙管チューブを盲目的に挿入するような,誤挿入の可能性を排除できないCre-canalization*MasashiMimura:大阪医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕三村真士:〒569-8686大阪府高槻市大学町C2-7大阪医科大学眼科学教室C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(53)C53図2インジゴカルミンを使用した涙道粘膜の生体染色(涙道内視鏡写真)閉塞した涙.鼻涙管移行部がインジゴカルミンにより青く染色されている.図1涙道閉塞症とドライアイの合併a:術前.非常に軽度のドライアイとCtearmeniscusheight(TMH)の上昇を認める.Cb:術後.Re-canalizationCsur-geryによりCTMHは改善しているが,角膜上皮障害が悪化している.図3結膜鼻腔吻合術により留置したJonesチューブ(鼻内視鏡写真)ガラス製のCJonesチューブ(*)が右側中鼻道に留置されている.図4非常に厚い上顎骨前頭突起を有する症例に対する涙.鼻腔吻合術鼻内法(鼻内視鏡写真)a:3Cmmの平鑿を使用して,上顎骨前頭突起で構成された厚い左側の前涙.稜を切除している.Cb:切除後.インジゴカルミンで青染された涙.()内に挿入された涙道内視鏡の光()が透見できる.切除部位の前頭突起は約C5Cmmの厚さ()であった.図5涙管チューブ留置後のバイオフィルムと肉芽形成(涙道内視鏡写真)涙管チューブ挿入術後C1カ月間,涙道洗浄をしなかった症例の涙道内視鏡所見.涙管チューブ(*)の周りにバイオフィルム()が付着し,涙.粘膜が隆起した肉芽組織の形成を認める().-

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択

2021年1月31日 日曜日

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択Evidence-BasedSurgicalTimingandChoiceofReconstructiveMaterialsforOrbitalFractures山中行人*はじめに眼窩骨折は眼窩を構成する骨が外力によって骨折をきたした状態であり,外眼筋や眼窩脂肪の偏位,障害によって眼球運動制限が引き起こされる.救急外来,一般外来ともに眼科医がしばしば遭遇しうる疾患でありながらも,その診断・治療に関してはあまり自信をもてない眼科医が多いのではないだろうか.これは眼窩骨折の手術を施行している施設がごく限られており,一般眼科医が眼窩骨折の手術適応や手術時期について正確な知識を得る機会に乏しいことが少なからず影響していると考える.たとえば,「眼窩骨折」はしばしば「吹き抜け骨折」と同義の言葉として認識されているが,これは誤りであり,正しくは「眼窩開放型骨折=吹き抜け骨折」である.また,初診時に外来で見逃しがちな「眼窩閉鎖型骨折」のほうが「眼窩開放型骨折」と比べてより重篤な病態であり,早急な手術加療が必要であることも意外と知られていないのが現状である.本稿では,「このタイプの眼窩骨折は経過観察をしてもよいのか」「経過観察はどれくらいの期間まで可能なのか」「受傷直後に受診して経過観察とした場合,どれくらいのタイミングで再診するべきなのか」というような実際の臨床で眼科医がもつであろう疑問にもエビデンスを示して回答を提示する.眼窩骨折で複視や眼球運動時痛などの症状がある場合は速やかな手術加療が望ましい.この際に,眼窩骨折の手術の目的は「骨折を治すこと」ではなく,「眼球運動を正常化させること」であることを認識しておくことが大変重要である.眼窩骨折でも,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折であれば,速やかな全身麻酔下での整復術が必要となる.また,術後早期に眼球運動が正常化するわけではなく,術後に眼球運動のリハビリテーションを行うことで数カ月~半年程度かけて眼球運動障害が改善してくるということを理解する必要がある.本稿では,眼窩骨折診療の実際からエビデンスに基づいた手術時期と再建材料の選択までを解説する.眼科医のみならず眼窩骨折手術を行う医師にとっても,明日からの診療の一助となれば幸いである.I眼窩骨折とは眼窩骨折はSmithらによって1957年に最初に報告された1).眼窩前方からの鈍的外力によって眼窩内圧が急激に上昇し,眼窩内でもっとも弱い部分である眼窩下壁や内壁が骨折を起こすのが眼窩骨折のメカニズムである.眼窩内にはconnectivetissueseptaとよばれる結合組織のネットワークが外眼筋・眼窩脂肪・骨膜の間に形成されているが2),眼窩骨折によってこのネットワークが破綻あるいは偏位,絞扼すると眼球運動障害が引き起こされる.眼窩骨折の受傷機転としては,小児ではスポーツや偶発的な衝突が多く,青年から中年ではスポーツ,喧嘩,飲酒後の転倒などが多い.そして高齢者になると圧倒的に転倒が原因となることが多い.京都府立医科大学眼科での検討では,384例の眼窩骨折において,*YukitoYamanaka:明治国際医療大学附属病院眼科〔別刷請求先〕山中行人:〒629-0392京都府南丹市日吉町保野田ヒノ谷6-1明治国際医療大学附属病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(47)47図1右眼窩下壁開放型骨折図2右眼窩下壁閉鎖型骨折(眼窩内組織が嵌頓)図3右眼窩下壁閉鎖型骨折(筋絞扼型)る」という訴えである.眼窩下壁骨折では,三叉神経第二枝の通る眼窩下溝の鼻側が骨折の好発部位であり,骨折によって三叉神経第二枝が障害されると,頬部および口唇部の違和感が生じるからである.この訴えがあった際にも,必ず眼窩部CCTを撮像するべきである.眼窩部CCT検査については,眼窩C3方向(冠状断・矢状断・水平断)の条件で,可能な限り薄いスライス(2Cmm以下)で撮像するように放射線科にオーダーする.撮影したCCT画像は,骨条件と軟部条件を比較して臨床症状とあわせて評価する.冠状断は内下壁,左右の眼窩骨を同時に評価することが可能であり,眼窩骨折の診断を比較的つけやすい.開放型骨折であれば,眼形成専門医でなくても眼窩骨折の診断は比較的容易と考えられるが,閉鎖型骨折の場合には,眼窩骨折にあまり慣れていない眼科医にとって骨折の診断を確定するのは少しためらわれるかもしれない.その際に診断の一助になるのが,閉鎖型眼窩骨折を疑う特徴的なCCT所見である.たとえばCmissingrectusとよばれる眼窩内の外眼筋の消失所見や,bonethicknesssignとよばれる骨折部位の骨膜の肥厚所見は眼窩閉鎖型骨折を示唆する重要な所見である.また,筆者も経験があるが,骨折線が線状でCTのスライスと並行に存在する症例では,CT上明らかな骨折が確認できないこともある.このような症例では,眼球運動障害や複視・眼球運動時痛の有無といった臨床所見と合わせて眼窩骨折の診断を慎重に行う必要がある.受傷の原因が交通外傷や高所からの転落など高エネルギー外傷の場合には,眼窩骨折以外にも頬骨骨折や前頭骨骨折,鼻骨骨折,上顎骨骨折などの顔面骨折および頭蓋骨の骨折の可能性についても必ず考慮する.もしこれらの骨折が判明した場合には該当する耳鼻咽喉科・形成外科・歯科・脳神経外科などに紹介することが望ましい.とくに頭蓋内のCfreeairを認めたときは,頭蓋底骨折の可能性があるため脳神経外科に必ず紹介を行うべきである.眼窩骨折は,鈍的外傷によって引き起こされるため,前房出血・外傷性散瞳・虹彩離断・網膜振盪症などの眼球打撲による症状を合併していることも少なくない.このため,まずは視力・眼圧といった眼科一般の検査を行い,それらに追加してCHessチャートや両眼単一視野などの検査を施行する.Hessチャートでは日常生活で最低限必要な範囲とされるC30°の範囲までを必ず測定する.両眼単一視野検査ではCHessチャートでは検出できないC30°以上の範囲の複視の存在を確認することが可能である.眼窩骨折の患者であっても,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで患眼の視力が不良である場合,複視の訴えがはっきりしないことも多い.このような場合,開放型骨折の眼窩骨折であればしばらく経過観察することも可能であるため,まずは視力不良となっている状態の改善を優先するべきである.視力が改善した時点で複視,眼球運動障害,眼球運動時痛の有無を再評価して手術の必要性を検討することが望ましい.多発交通外傷などでは救命にかかわる疾患が優先され,眼科疾患は後回しにされがちであるが,眼窩骨折は放置したまま治癒すると複視が残存することも多く,その後の患者の人生におけるCQOV(qualityofvision)に大きな影響を及ぼす疾患でもあることから,適切なタイミングで眼科医が診断・治療に参加することが望ましいと考える.CIV眼窩骨折の症状開放型骨折と閉鎖型骨折では症状が若干異なる.開放型骨折は前述したように,骨折部位が開放しているために眼窩内組織の偏位はあっても絞扼はないため,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状がそれほど表れないこともある.しかしながら大きな開放型骨折ではしばしば眼窩内組織が大きく偏位しているため,眼球運動障害を引き起こし患者が複視を訴えることも多い.また,開放型骨折による副鼻腔への眼窩内組織の偏位は,眼窩内容積の減少による眼球陥凹を引き起こす.脱出した眼窩内組織と副鼻腔粘膜の癒着は受傷後C1週間程度から起こり,徐々に進行してくるので,複視の自覚症状があり,眼窩内組織,とくに外眼筋の偏位があれば手術加療を考慮する必要がある.閉鎖型骨折,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折では受傷直後より強い眼球運動障害をきたし,迷走神経反射により(49)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021C49悪心・嘔吐,頭痛などの症状が出現する.診察室にぐったりとした状態で搬送されてくることも多く,一見して重篤な状態とわかることもしばしばある.眼窩内組織が挟まったタイプの閉鎖型骨折は筋絞扼型の閉鎖型骨折ほど自覚症状が強くないが,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状が出現することが多い.また,開放型および閉鎖型いずれの骨折でも,下壁骨折であれば三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感を訴えることも多い.CV眼窩骨折の手術適応筋絞扼型の閉鎖型骨折は,絶対的な手術適応となる.開放型骨折と筋絞扼型以外の閉鎖型骨折は複視の自覚があるか,眼球運動時痛がある,いずれかの症状があれば患者と相談のうえ積極的な手術加療が望ましいと考える.ただし眼球運動時痛は受傷直後の眼球打撲に起因することもあるため,きちんとCHessチャートおよび両眼単一視野で眼球運動障害の有無を把握するべきである.実臨床では,Hessチャートで眼球運動障害があっても自覚的な複視がない眼窩骨折患者にしばしば遭遇する.この場合は手術適応となるかを患者としっかり相談することが重要である.広範囲に及ぶ開放型骨折であれば,受傷後長期の経過において眼球陥凹が顕在化することもあるので患者にしっかりそのことを説明しておく必要がある.また,前述したとおり,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで骨折側の視力が不良な場合には,健常眼と患眼の視力差が大きくなり複視の訴えが出にくいことも留意しておく.眼窩骨折の手術目的は,「骨折を治すこと」ではなく「正常な眼球運動を取り戻すこと」である.そのために手術加療によって,「骨折により眼窩外に脱出・骨折部位に嵌頓した眼窩内組織を眼窩内に元通り整復することで,正常な眼球運動を阻害している要因を取り除くこと」が重要である.また,手術はあくまで,「正常な眼球運動を取り戻すための下地作り」であり,術後に眼球運動のリハビリテーションを継続して行うことでC3カ月~半年程度かけて徐々に眼球運動障害が改善してくることを,きちんと患者に理解しておいてもらうことが大切である.手術によって眼窩内組織に侵襲が加わり炎症・腫脹が生じることから,術直後に一時的に眼球運動障害が増悪する可能性についても術前に説明しておく必要がある.また,下壁骨折では三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感をしばしば訴える.この違和感は手術加療によりすぐに軽快するわけではなく,軽快には半年~1年程度の時間を必要とすることが多い.そして少数ではあるが術後も長期にわたり違和感が残存することもある.CVI眼窩骨折の手術時期筋絞扼型の閉鎖型骨折については可及的速やかな手術が望ましい.これは外眼筋が絞扼されると,循環障害から筋肉が壊死し不可逆的な眼球運動障害が残ることが多いからである.筋絞扼型以外の閉鎖型骨折,開放型骨折の手術時期についてはまだ統一した見解がない3,4).近年,受傷後時間が経過してから眼窩骨折整復術を施行した症例の良好な成績が報告されているが5,6),基本的には受傷後C2週間以内の手術が推奨されている3,7).しかしながらこれらの報告は,開放型骨折や閉鎖型骨折について区別することなく論じられており,やや客観性に乏しい.筆者らは眼球運動を評価する客観的な指標としてCpercentageCofCHessCarearatio(HAR%)を用いて手術時期の検討を行った(図4).HAR%はCHessチャートから算出される数値であり8),健常者であればC100%である.これまでの報告ではCHAR%がC80%以上あれば日常生活の範囲で基本的に支障がないとされている9).筆者らの検討では,筋絞扼型以外の閉鎖型骨折については,受傷後C8日以内,開放型骨折であればおおむね受傷後C1カ月以内に手術加療を行うことが望ましいと考えられた10).したがって,受傷後の初診時に眼瞼腫脹などがひどく眼球運動を正確に評価することが困難である症例であれば,この期間内に再診を行い,再度眼球運動の評価を行って手術適応を決定すればよいと考える.しかし,受傷から時間が経過するほど眼窩内組織の癒着が進行するため,開放型骨折であってもなるべく早く手術加療を行うのが望ましいと考える.50あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(50)左眼右眼HAR%=A.ectedside(vertical×horizontal)mm2×100(%)HAR%=58×60/62×62×100(%)=90.5図4Hessチャートを用いたHAR%の算出図5スーパーフィクソーブMX図6図1と同一症例の術後右眼窩下壁開放型骨折(術後)耳側耳側Healthyside(vertical×horizontal)mm2

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択

2021年1月31日 日曜日

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択BiopsyorCompleteRemoval?─SelectionofSurgicalProcedureforOrbitalTumorbyDiagnosticImaging辻英貴*はじめに眼窩には,良性・悪性のさまざまな種類の腫瘍が生じ,表面からは見えない部位であるため,MRI(mag-neticCresonanceimaging)やCCT(computedCtomogra-phy)などの画像診断は必須である.腫瘍は全摘出がもっとも望ましいのは当然であるが,画像上,びまん性でリンパ増殖性疾患などが疑われる場合には,可能な範囲で十分量を切除して病理診断にて確定する.本稿では,眼窩腫瘍の画像診断に応じた術式選択について述べる.CI眼窩腫瘍の画像診断まず,画像が周囲組織と境界をもった一塊のものか,境界不鮮明なびまん性のものかを鑑別する.アレルギーや腎機能障害などがなければ,腫瘍の性状を詳しく観察可能な造影剤を併用する.腫瘍の部位,大きさ,広がり,性状,造影の様子などが重要であるが,MRIはこれらの情報に富み,有用である.周囲組織と境界をもった一塊のものであれば,腫瘍全体が染まる実質性の腫瘍か,周囲が染まる.胞かを判断する.実質性で良性のものとしては,海綿状血管腫(血管奇形)や,神経鞘腫,涙腺では多形腺腫などがある.悪性では腺様.胞癌,腺癌,肉腫などが考えられる.また,副鼻腔手術後の.胞が眼窩内に侵入したものもみられる.視神経に生じるものでは,中高年の女性に多い視神経鞘髄膜腫や,小児に多い視神経膠腫などがある.周囲との境界不鮮明なびまん性の腫瘍の場合には,MALTリンパ腫(extranodalCmarginalCzoneClymphomaCofCmucosa-associatedClym-phoidtissue)(図1)を筆頭とするリンパ増殖性疾患や,転移などが鑑別となる.リンパ腫ではCMRIの拡散強調画像(di.usionweightedimaging:DWI)が有用で,見図1MALTリンパ腫筋円錐の内外にまたがり,眼球後部を覆うように増殖したCMALTリンパ腫.a:T1強調で低信号,b:T2強調で中間信号,c:ガドリニウム造影で均質に濃染.*HidekiTsuji:がん研有明病院眼科〔別刷請求先〕辻英貴:〒135-8550東京都江東区有明C3-8-31がん研有明病院眼科C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(43)C43図2両眼窩に生じたマントル細胞リンパ腫眼窩内の隙間を埋める(molding)ようにびまん性に増殖している.図3IONE(infraorbitalnerveenlargement)IgG4関連眼疾患に特徴的な所見であるCIONE().左上眼窩の腫瘍部からの生検にて病理診断された.図4海綿状血管腫a:MRIT1強調で低信号,Cb:MRIT2強調でやや高信号,Cc:ガドリニウム造影にて特徴的な網目状の遅延性造影所見がみられる.図5類皮.胞(デルモイドシスト).胞は眼窩上方に存在し,粥状の内容物を含み,ニボー形成がみられる.内容物を周囲に散らさないように吸引しながら.胞を全摘した.海綿状血管腫図6眼窩骨を一時的にはずして腫瘍を摘出手術は視野がもっとも大切である.眼窩骨を一時的にはずして術野を確保する.図7視神経膠腫視神経自体の充実性の腫瘍で,視神経管の拡大・破壊がみられる.紡錘形で中央部に特徴的なCkinking(屈曲)がみられる.

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術

2021年1月31日 日曜日

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術EyelidTumorSurgerywithConsiderationoftheOcularSurface中山知倫*はじめに眼瞼腫瘍のうち眼瞼原発良性腫瘍で頻度の高いものとして,母斑(nevus,図1),脂漏性角化症(seborrheickeratosis,図2),乳頭腫(papilloma),類表皮.胞(epi-dermoidcyst)があり,眼瞼原発悪性腫瘍で頻度の高いものとして,基底細胞癌(basalcellcarcinoma,図3),脂腺癌(sebaceouscarcinoma,図4),扁平上皮癌(squamouscellcarcinoma)といった上皮性の悪性腫瘍がある1).わが国では基底細胞癌の頻度が欧米に比べて低く,脂腺癌は逆に高くなっており,脂腺癌と基底細胞癌が日本の2大眼瞼原発悪性腫瘍となっている2).どちらも高齢者に多い疾患であることから,今後の症例数の増加が予想される.I眼瞼の解剖と機能眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となる.眼瞼腫瘍の切除および再建術について述べる前に,まず眼瞼の解剖と機能について理解しておく必要がある.1.眼瞼の解剖(図5,6)眼瞼は上下ともに前葉と後葉に分けて理解することが重要である.前葉とは眼瞼の「前」の組織のことで,皮膚と眼輪筋をさす.後葉とは眼瞼の「後」の組織のことで瞼板と眼瞼結膜をさす.眼表面には,粘膜を含む後葉が適切に接触している必要があり,粘膜のない前葉のみでは代替ができない.また,前葉は体表面であることから,皮膚である必要があり,やはり後葉のみでは代替ができない.また,前葉と後葉とのバランスが悪く,相対的なずれが生じれば眼瞼の内反や外反の原因となりうる.前葉と後葉の位置を支持する組織は,垂直方向は上眼瞼の上眼瞼挙筋と皮膚穿通枝,下眼瞼ではlowereyelidretractors(LER)と皮膚穿通枝である.水平方向は,上下の眼瞼瞼板に適切なテンションを与えている内眥靱帯,外眥靱帯である.基本的にはこのように考えてよいが,厳密にはそれぞれの支持組織が相互に影響している.2.眼瞼の機能眼瞼の役割としては,静的な役割と動的な役割がある.静的な役割としては,眼瞼の適切な形状による眼表面の保護機能と涙液導涙経路としての機能がある.動的な役割としては,瞬目による涙液ポンプ機能と眼表面への涙液供給機能がある.静的な役割,すなわち眼瞼の適切な形状が失われる状態とは,眼瞼内反や外反のなどの場合であり,前葉と後葉の位置関係のずれによって生じる.この場合,眼表面に刺激を生じて影響を与える.また,導涙経路としての適切な眼瞼形状も保たれなくなるため,涙液の眼表面への適切な供給が失われ,ドライアイなどで眼表面へ影響を与える可能性が生じる.動的な役割,すなわち適切な瞬目が失われるとは,や*TomomichiNakayama:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕中山知倫:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(33)33図1母斑図2脂漏性角化症図3基底細胞癌図4脂腺癌結膜瞼板下瞼板動脈弓皮膚穿通枝LER前層(CPF)線維脂肪組織眼輪筋眼窩隔膜図6下眼瞼の解剖図5上眼瞼の解剖CPF:capsulopalpebralfascia,CPH:capsulopalpebralfascia,LER:lowereyelidretractors,SM:smoothmuscle(平滑筋).眼瞼の機能表1切除範囲に応じた再建法切除範囲静的役割動的役割眼表面の保護機能涙液導涙経路涙液ポンプ機能涙液供給機能破綻眼表面への刺激,違和感(内反症,外反症,ドライアイ,兔眼など)図7眼瞼の機能と障害上眼瞼1/3未満下眼瞼1/2未満上眼瞼1/3以上下眼瞼1/2以上前葉後葉全層単純縫縮(直接縫合)外眥切開Z形成Tenzel.ap1.局所皮弁2.眼輪筋皮弁3.植皮4.動脈皮弁(lateralorbital.ap)5.遊離組織移植1.硬口蓋粘膜2.鼻中隔軟骨+粘膜3.耳介軟骨+粘膜4.Hughes.ap1.眼瞼全層弁(switch.ap,cutler-beard)2.眼瞼全層遊離複合移植LERを前転することになり,lidretractionの状態となって眼表面へ影響を与えることがあり,注意を要する.表1に筆者の施設(以下,当科)での再建手術の方針をまとめて示す.2.眼瞼良性腫瘍眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となり,良性腫瘍でも同様である.所見上で明らかに良性腫瘍であるなら,必ずしも切除しなければならないことはないが,腫瘍そのものが眼表面に接触したり,導涙機能を障害したりして物理的に眼表面に影響を与えることもある.一般的に良性腫瘍であれば,切除においてマージンは必要ないため,切除範囲は大きくならないことが多い.さらに前葉から発生することがほとんどであるから,切除の影響が眼表面に影響することは少ない.したがって,患者に切除希望があるなら,手術は容易でかつ眼表面への合併症も少ないため,積極的に行って問題はないと考える.手術方法は,腫瘍径が小さい場合には腫瘍を切除し,そのままにして肉芽形成と皮膚の再生を待つopentreatmentで問題ない.切除範囲が大きくなる場合は,前葉を単純縫縮すると適切な眼瞼形状が保てなくなる可能性があるため,皮弁を用いての再建を考慮する必要があるが,良性腫瘍は進行が緩徐であるため,そこまで大きくなることは少なく,実際には頻度は多くない.前葉再建については後述する.3.眼瞼悪性腫瘍眼瞼悪性腫瘍の場合,外科的切除が第一選択となる.基本的には切除にあたりマージンが必要である.そのために腫瘍よりも切除範囲が大きくなる.脂腺癌は瞼板より発生することがほとんどであり,すなわち後葉発生となるため,当然切除においては後葉も含む必要があるし,前葉発生の悪性腫瘍であっても,マージンの必要性から切除範囲に後葉も含むことが多い.III眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術これより,それぞれの眼瞼腫瘍再建術について,表1に基づいて眼表面への影響の可能性と予防のために必要な配慮も含めて述べる.1.単純縫縮(欠損部が上眼瞼1.3未満,下眼瞼1.2未満)文字通り,切除したあとに眼瞼の耳側断端と鼻側断端を単純に縫合する方法である.前葉,後葉ともに全層で再建することになる.この場合,眼瞼の横方向の張力が増すことになり,眼表面との摩擦は増大し,瞬目も影響を受ける.あまりにきついと判断される場合には,外眥切開にて水平方向の張力を軽減するか,Tenzel.apにて外眥を移動させてしまうことで対応できる.理論的にはZ形成にて残存眼瞼組織の延長も可能であるが,残存瞼板の形状を変えることになるため,積極的に行うことはあまりない.また,水平方向の張力を軽減し過ぎれば,かえって外反内反の原因ともなり得るため,適切に調整する必要がある.単純縫縮は,基本的には元来の後葉がそのまま再建後にも後葉となるため,眼瞼の水平方向の張力を適切にコントロールできれば,眼表面への影響はほとんどない.Tenzel.apの際には耳側において,.apの皮下組織がそのまま眼球表面に接触することのないように,.apの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合する.実際のTenzel.apを用いた眼瞼腫瘍切除再建術を示す(図8).2.前葉再建前葉再建の材料としては,血流のない遊離皮弁(graft)を用いるか,血流のある有茎皮弁(.ap)を用いるかに大別される.眼瞼の場合には,太い動脈もなく,皮弁のサイズも大きくないことがほとんどであるため,血管吻合をして血流を再建するような遊離皮弁(free.ap)を用いることはまずない.血流のない遊離皮弁を用いる場合で,眼科医にとっても容易なものとして,対側の上眼瞼余剰皮膚がある.また,血流のある皮弁を用いるのであれば,単純に周囲の皮膚をadvanced.apとして用いるのがもっとも容易であるし,そのほかには下眼瞼前葉再建時に同側の上眼瞼余剰皮膚を,耳側部分を茎としてrotation.apとする方法がある.血流のない組織を使用した場合,血流のある組織を用いた場合に比べて,術後の萎縮の程度が大きくなるが,36あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(36)図8下眼瞼腫瘍(扁平上皮癌)切除術とTenzel.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:Tenzel.apのデザイン作成.Cc:下眼瞼腫瘍切除後(下眼瞼全層で眼瞼幅C1/2程度の欠損).d:Tenzel.apの作製.Ce:本来の外眥部の切断.Cf:眼瞼断端の縫合.Cg:外眥部の再作製.Ch:Flapの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合.Ci:新たな外眼角の形成.j:眼瞼耳側創部の縫合.k:手術終了時.l:手術後C6カ月.眼表面への影響はとくに認めていない.図9基底細胞癌切除術局所皮弁による再建.図10下眼瞼腫瘍(脂腺癌)切除術とHughesl.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:下眼瞼腫瘍摘出後(下眼瞼ほぼ全幅欠損).c:Hughes.apのデザイン.d:HughesC.apの作製.Ce:HughesC.apの展開.Cf:Hughes.apと残存後葉(瞼板と結膜)の縫合.Cg:前葉再建材料として,advanced.apの作製(瞼板皮膚穿通枝と眼窩隔膜の切離).h:前葉皮弁の縫合.Ci:手術終了時.Cj:手術後C1.5カ月(吸収糸で縫合し,抜糸をしていないため縫合糸が残る).眼表面への影響はとくに認めていない.ab図11上眼瞼脂腺癌に対するmodi.edHughes.ap後に生じた角膜障c害に対し上眼瞼挙筋後転術にて改善した症例a:術前.上眼瞼脂腺癌.Cb:上眼瞼腫瘍切除とCmodi.edHughesC.apによる眼瞼再建後とC.ap切り離し直後ではややClidretractionを認めた.Cc:Flap切り離しC1Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎を認める.Cd:Flap切り離しC3Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎に改善なし.Ce:挙筋後転術後.CLidretractionと点状表層角膜炎の改善Cdを認めた.Ceて加療した症例を示す(図9).C3.後葉再建先述の通り,眼瞼後葉は瞼板と眼瞼結膜である.したがって,その再建には瞼板の代替となるようなある程度固く支持力のある組織と粘膜が必要となる.そのために表1に示すような再建材料が用いられる.CHughes.apと遊離瞼板は元来の瞼板と眼瞼結膜を再建材料としているが,そのほかの粘膜はやはり本来の結膜とは異なるため,Hughes.apと遊離瞼板が再建材料としては眼表面への影響がもっとも少ない.また,これらのうちでCHughes.ap以外は血流がない再建材料であるため,再建後に大きく萎縮をして内反の原因となることがあり,それを考慮して再建時にはあえて後葉のほうが前葉よりも瞼縁側へ延長した状態にしておくなどの工夫を行う必要がある.当科では,眼表面への影響が軽微なこと,また再建材料の生着が良好なことからHughes.apを用いたHughes法を行うことが多い.Hughes.apとは上眼瞼の瞼結膜と瞼板を下眼瞼後葉再建のために有茎弁として用いるもので,後日切り離すことにより,より本来の状態に近い形での眼瞼再建が可能となる.原法は上眼瞼から下眼瞼への移植だが,当科では下眼瞼から上眼瞼への移植を行うCHughes変法も行っており,今のところ術後経過は良好である.下眼瞼腫瘍に対して,腫瘍切除後にHughes.apにて再建した症例を示す(図10).下眼瞼からの比較的サイズの小さい後葉で再建を行うHughes変法では,残存組織を瞼縁まで引き出して再建することになるため,再建後には挙筋腱膜の前転に類似した状態となりがちである.すなわち術後にClidretrac-tionを生じる可能性があり,残存組織が上眼瞼挙筋を牽引しないよう,穿通糸や眼窩隔膜を切り離しておくことが予防のために重要である.当科でCHughes変法施行後にClidretractionを生じて,点状表層角膜炎を生じたために,眼瞼挙筋後転術を施行し,lidretractionが改善し点状表層角膜炎が軽快した症例を示す(図11).CHughes.apも遊離瞼板移植も,正常瞼板から移植片を採取するため,サイズに制限があり,眼瞼欠損が大きい場合などは,自由に再建組織のサイズを決定できる硬口蓋粘膜移植などが必要となる.C4.全層再建全層再建の場合,前葉と後葉は分離されていないため,そのバランスが崩れて内反や外反になるリスクは少ない.全層再建においてはCswitch.apなどのような血流のある眼瞼有茎全層弁や眼瞼全層遊離複合移植を用いるため,生着や移植片の萎縮などによる変形の点で有利である.眼表面への影響の点で有利な術式ではあるが,移植片を提供して全層欠損した組織の形成も必要となる.当科では眼瞼脂腺癌の再建術において,.apによる後葉再建(HughesC.ap)もしくは眼瞼全層弁(Tenzel.ap,switch.ap)のほうが遊離瞼板移植や硬口蓋粘膜移植といった遊離後葉移植より術後合併症が少なかったことを報告している3).おわりに眼瞼腫瘍の治療においては,腫瘍を切除して終了ではなく,眼瞼という静的な機能と動的な機能をもつ組織を再建する必要がある.そのために,まずは眼瞼の解剖と機能を理解することが基本となる.腫瘍の摘出において,眼瞼がどの程度失われるかは個々の患者によってまったく異なる.毎回異なる眼瞼欠損状態から適切に眼瞼の機能を回復するためには,できるだけ多くの再建方法を学んでおき,状態に応じて可能な限り最適な再建方法の組み合わせを考え出し,それを実行できる技術をもつことが大切である.文献1)SinghCU,CKolavaliRR:OverviewCofCeyelidCtumors.In:CSurgicalophthalmiconcologyChauguleS,HonavarS,Fin-gerP(eds)C,p3-10,Springer,Cham,20192)中山智佳,渡辺彰英,上田幸典ほか:眼瞼脂腺癌C34例の臨床像と組織学的検討.あたらしい眼科C30:1739-1743,C20133)福井歩美,渡辺彰英,外園千恵ほか:眼瞼脂腺癌の臨床像と再建術後合併症の検討.日眼会誌124:410-416,C202040あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(40)

病態に即した眼瞼外反症手術

2021年1月31日 日曜日

病態に即した眼瞼外反症手術TreatmentStrategyforEctropionbasedonPathology米田亜規子*嘉鳥信忠*はじめに眼瞼外反症とは,さまざまな原因で眼瞼が眼表面から遊離し前方に翻ることにより眼表面および眼瞼結膜が露出した状態であり,通常は下眼瞼に生じる.眼瞼結膜との正常な接着を失った眼表面は,閉瞼時にも涙液で正常に覆われないため角結膜障害を生じ,流涙や眼乾燥感,疼痛,視力低下の原因となる.一方,眼表面に接着していない瞼縁や眼瞼結膜側も乾燥し,次第に肥厚し角化を認めるようになる.また,眼瞼内反症とは異なり機能面のみならず整容面での不満の訴えが多いのもこの疾患の特徴である.眼瞼外反症に対する治療は,これまでに多くの術式が報告されているものの,長期的にみると再発しやすく眼瞼疾患のなかでも治療に難渋することが多い.ひとくちに眼瞼外反症といってもその発生機序や病態はさまざまであり,個々の症例ごとに外反の発生機序を十分に把握したうえで,病態に即した治療方針を立てることが重要である.I下眼瞼を支持する組織下眼瞼は,眼球により後方から支える力に加えて,横方向および縦方向へ牽引される力によりその解剖学的構造を保っている.支持する力の低下やバランスの崩れ,あるいは支持されている組織自体の剛性低下が眼瞼外反の原因となる.1.水平方向の力鼻側は内眼角靱帯,耳側は外眼角靱帯でそれぞれ牽引されたハンモック構造で水平方向のバランスをとっている.水平方向の緊張が加齢や顔面神経麻痺により緩むと下眼瞼外反症を生じる.2.前後方向の力下眼瞼は眼瞼前葉(皮膚と眼輪筋)と,眼窩隔膜より結膜側に位置する眼瞼後葉〔瞼板,下眼瞼牽引筋腱膜(lowereyelidretractors:LERs)と結膜〕で構成される.後葉のLERsからcapsulopalpebralhead(CPH)につながる支持組織は,瞼板を眼球下方へ牽引することで下眼瞼が前後に翻らないように支持している.外傷や手術による皮膚の瘢痕で前葉が拘縮したり,.oppyeyelidにより後葉の支持力が低下すると眼瞼外反症が生じる.II眼瞼外反症の分類眼瞼外反症は,その原因により退行性,麻痺性,瘢痕性,機械性に大別される(表1).退行性は加齢により内眥,外眥,瞼板,眼輪筋などが全体的に弛緩した結果,外反症を生じたもの.麻痺性は顔面神経麻痺などにより,瞼板や眼輪筋が弛緩して外反症を生じたもの.瘢痕性は挫創や熱傷などの外傷や,手術による皮膚の瘢痕で前葉が拘縮し眼瞼縁が前方に牽引され外反症を生じたもの.機械性は眼瞼腫瘍や眼窩炎症,結膜浮腫などにより後葉が増大したりすることで生じる機械的な圧迫や牽引*AkikoYoneda&*NobutadaKatori:聖隷浜松病院眼形成眼窩外科〔別刷請求先〕米田亜規子:430-8558静岡県浜松市中区住吉2-12-12聖隷浜松病院眼形成眼窩外科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(25)25表1眼瞼外反症の分類分類原因病態治療方針(例)退行性加齢眼瞼が水平方向や垂直方向など全体的に弛緩LTSなど麻痺性顔面神経麻痺など瞼板と眼輪筋の弛緩LTS,Kuhnt-Szymanowski法Smith変法,耳介軟骨移植など瘢痕性熱傷,外傷,手術など皮膚の瘢痕による前葉の拘縮瘢痕切除,Z形成,植皮などによる前葉延長機械性眼瞼腫瘍,炎症,結膜浮腫など眼瞼が物理的に圧迫あるいは牽引原疾患に対する治療初診時術後6カ月図1退行性の下眼瞼外反症外眼角靱帯短縮術(LTS)を施行したことで水平方向の緩みが改善し,眼瞼外反症が改善した.当科初診時再縫合後1.5カ月再縫合後8カ月術直前術後9カ月図2眼瞼裂傷後の下眼瞼外反症下涙小管断裂および眼瞼裂傷に対して右下涙小管形成手術および裂傷部の再縫合を施行し,その後徐々に下眼瞼外反症を生じた.術後10カ月の時点で下眼瞼にZ形成術を施行し外反している部位の前葉皮膚を延長することで外反症は改善した.-術前術後6カ月graftedskin挿入した.ap図3眼瞼熱傷後の瘢痕性外反症本症例では下眼瞼前葉のボリュームを追加するために眉毛下から下眼瞼に局所皮弁術を行い,外反の改善を得た.術前術後5カ月図4顔面神経麻痺による下眼瞼外反症外反症に対するの耳介軟骨移植術は,下眼瞼を水平方向だけでなく垂直方向へ支持する効果も得られる.サンテゾーン眼軟膏開始前開始後2週間図5眼瞼周囲皮膚炎に伴う下眼瞼外反症炎症から生じる外反症では,抗炎症を図ることで外反症も改善することがあるため,手術を急がずにまず原疾患の治療を行う.術前術後1年図6下眼瞼腫瘤切開後の外反症垂直方向の弛緩による外反症や外眼角靱帯短縮術では対応しにくい鼻側の外反症に対しては,本症例のように瞼板下縁よりLERを切離し瞼板後面(結膜側)に縫着する方法が有効である2).

再発を最小限にする内反症手術

2021年1月31日 日曜日

再発を最小限にする内反症手術TheBestTreatmentsforEpiblepharonandInvolutionalEntropion尾山徳秀*はじめに今回は小児に多い下眼瞼の睫毛内反症,および高齢者に多い下眼瞼の退行性眼瞼内反症に対する手術方法を説明する.睫毛内反症と類似しているmarginalentropionや睫毛乱生などは省略する.患者はすべて顔が千差万別であり,中顔面の作りや眼周囲の形も異なる.同じようにみえて症例によって内反症の状態は必ず異なるはずである.そのような状態であるのに画一的な方法で手術に臨めば再発することは容易に想像できる.そこで小児に多い睫毛内反症では,以前より皮膚切開法(いわゆるHotz変法)が行われているが1~3),それのみでは再発しやすい症例を提示し,そのような症例に対しての手術アプローチを紹介する.また,退行性下眼瞼内反症では,下眼瞼牽引筋腱膜(lowereyelidretractors:LERs)の後層の再建および前層の皮膚穿通枝の再建というJones変法(Kakizaki法)が一般的に行われている4).しかし,これだけでは再発する症例もあり,その防止法を紹介する.I睫毛内反症1.睫毛内反症の術前検査のポイント睫毛内反症の病因は,下直筋から連続するLERsの前層の皮膚穿通枝が未発達もしくは欠損しているため,睫毛が外反しないことである(図1).さらに皮膚および眼輪筋(眼瞼前葉)が上方へ乗り上げることで睫毛を圧排し,さらに角膜障害を悪化させる.この病因を理解すれば通常の睫毛内反は,いわゆる一般的に行われているHotz変法で治癒すると思われる.しかし,内眼角ひだ(epicanthalfold)の発達した症例(図2)や下眼瞼後退がある症例(図3)では再発率が高くなるので注意が必要である.内眼角贅皮の発達した症例は,上眼瞼挙上による下眼瞼の動きを診察する(rolluptest).上眼瞼とともに下眼瞼がつられて挙上し,睫毛が眼瞼前葉の皮膚や眼輪筋に押され,睫毛内反が高度に悪化すれば陽性である(図4).下眼瞼後退のある症例では,眼瞼後葉が過剰に後退していることにより,眼瞼前葉の乗り上げがさらに過剰になり睫毛内反の程度が高度になる.これらの場合はHotz変法だけで処理すると,内反症の低矯正もしくは再発の原因となる.6カ月程度の短い術後経過では再発しないことも多く,治癒したと思っても2年程度経過をみないと再発することがあるので注意が必要である.2.手術手技と手術のポイント切開法(Hotz変法)と通糸法を比較すると,過去の報告では,通糸法では約20~30%の再発率であるが切開法のほうが約4~9%と再発率は少ない1~3).また,Hotz変法だけでは睫毛の内反矯正が悪い症例に対して,手術時にlidmarginalsplittingを加えることで睫毛が外反しやすくなり再発しにくくなる4).また,下眼瞼後退のある症例では,LERsの瞼板および結膜からの切離を追加することで眼瞼後葉の後退が改善し,眼瞼前葉とのバラ*TokuhideOyama:うおぬま眼科,長岡赤十字病院眼科,新潟大学医歯学総合病院眼科〔別刷請求先〕尾山徳秀:〒946-0001新潟県魚沼市日渡新田字ヒワタリ84-1うおぬま眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(13)13ab下眼瞼牽引筋腱膜の後層瞼板Lookwood靱帯睫毛下眼瞼牽引筋腱膜下斜筋の前層下直筋眼輪筋図1下眼瞼の解剖模式図(a)と下眼瞼睫毛内反症の病態模式図(b)a:下眼瞼牽引筋腱膜の前層が瞼板前方を走行し,皮膚穿通枝により睫毛を外反させている(文献14より改変引用).b:下眼瞼牽引筋腱膜の前層から連続する皮膚穿通枝が,正常と比較すると未発達もしくは欠損している.また,余剰皮膚の存在や瞼板前眼輪筋の乗り上げも悪化させる要因と考えられている().図2内眼角贅皮(epicanthalfold)の発達した症例a:術前.内眼角贅皮が発達し,下眼瞼前葉が睫毛を眼球に押し付けているように見える.b:Hotz変法にredraping法を組み合わせた症例.顔貌の変化も少なく睫毛内反も改善している.c:術前.この症例も内眼角贅皮が発達している.d:Hotz変法にZ形成術を組み合わせた症例.睫毛内反は改善しているが,顔貌の変化は比較的大きい.図3下眼瞼後退が顕著な症例左下眼瞼後退が著明で下方球結膜が露出している.このような症例にHotz変法だけでは対応できない.図4上下眼瞼の動きとrolluptest(surgeon'sview)a:上眼瞼を軽く挙上した状態では睫毛内反は軽度である.b:上眼瞼を通常の開瞼まで引き上げると,下眼瞼前葉がつられて挙上する(:rolluptest陽性).c:この上下の連絡()を絶つような手術手技を選択する.図5LERsの切離を加えたHotz変法a:瞼縁から3~4mm程度のところに睫毛下切開ラインを引く.b:睫毛下切開から眼輪筋を.離し瞼板下縁に到達する.c:LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離する.d:下眼瞼瞼板下縁と睫毛側皮下を7-0モノフィラメント糸で縫合する.LERsは.離したままである.e:余剰皮膚を切除する.f:皮膚を7-0モノフィラメント糸で縫合して終了である.図6Turn.overseptum.ap法によるLERs延長術を加えたHotz変法a:睫毛下切開から眼輪筋を.離し,瞼板と眼窩隔膜表面を露出する.b:LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離する.c:LERsの伸展したい量より多めに眼窩隔膜の切離幅(眼瞼後退量の2倍+2mm程度)を決める.d:横方向に眼窩隔膜を切開すると眼窩脂肪が見える.e:翻転した眼窩隔膜を鑷子で把持している.f:翻転した眼窩隔膜と下眼瞼瞼板下縁および睫毛側皮下を7-0モノフィラメント糸で埋没縫合する.g:縫合終了した状態.これを4針程度行う.図7結膜自体の伸展が悪い症例LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離したあとに,結膜横切開を加えてさらに減張している.図8Lidmarginalsplitting法a:Hotz変法を行った後に内反矯正が不十分な症例は,graylineを11番メスなど先が鋭利なもので切開する.b:瞼縁は切離した状態のまま,皮膚縫合して終了である.瞼縁の切開部は数週間で目立たなくなる.図9Z形成術のデザインa:内眼角贅皮を正中に引っ張り,涙丘鼻側にあたる位置にマーカーを置く.b:皮膚を戻し固定しておいたマーカーで付けた内眼角贅皮表側の点をA点とする.c:A点から,上眼瞼の重瞼ラインもしくは開瞼した際の瞼縁に沿ってラインを延ばしてD点とする.d:内眼角贅皮の最尾側下端をB点とする.e:B点から内眼角贅皮裏側の点をC点とする.f:A-B-Cで形成された皮弁の頂点BをD点に移動させる.g:Hotz変法と組み合わせることで睫毛内反と内眼角贅皮が解消される.h:睫毛下の皮膚切除も同時に行う場合は,切除幅が含まれるようにデザインする.図10内眼角贅皮の上下の連絡を絶つ重要な操作内眼角贅皮下のCsubcutaneous.brousband()を切離し,さらに眼輪筋を内眥腱直上まで.離し,必要に応じて眼輪筋も切離する.図11Redraping法を加えたHotz変法a:皮膚切開もしくは皮膚切除分の皮弁を作製する.b:下眼瞼瞼板下縁まで眼輪筋を.離し,subcutaneous.brousbandの切離や眼輪筋の処理を行う.Cc:Hotz変法を行う.Cd:不要な皮膚切除を行い,Z形成術のデザインのCA点とCC点を縫合する.e:睫毛下切開部も縫合して終了である.内眼角贅皮は解除されている.図12Jones変法の手術手技a:眼輪筋を.離し下眼瞼の瞼板下縁に到達した後,LERsを瞼板下縁から結膜と.離する.Cb:眼窩隔膜を切開し,LERsの前層を剖出する.Cc:剖出後はC7-0モノフィラメント糸でCLERsの前後層と瞼板下縁,睫毛側皮下の埋没縫合をC4針程度行う.Cd:Jones変法が終了した状態.これから水平方向の弛緩矯正を行う.図13Lateraltarsalstripprocedureを併用した症例a:外眼角部のCcanthotomyを行い骨膜に達する.Cb:今度はその切開部からCcanthol-ysisを下眼瞼瞼板下縁に沿って行う.Cc:下眼瞼皮膚切開ラインから瞼縁側の皮膚および眼輪筋,睫毛を横幅数Cmm分すべて切除する.Cd:瞼結膜上皮をバイポーラで焼灼して除去する.e:この段階で文字通りCtarsalstripとなる().f:Canthlysis部から眼窩内側骨膜上の周囲を.離する.g:Whitnall結節にC5-0モノフィラメント糸を通糸する.通糸できていればピンと糸が張る.Ch:Tarsalstripに同糸をかけて縫合する.Ci:しっかりと縫合できた状態では下眼瞼のテンションが変化し,ピンと張る.j:皮膚縫合を行い終了である.通常皮膚切除は必要ない.図14Lateralcanthopexyを加えた症例a:外眥部へ眼輪筋下の.離行い,lateralcanthalbandの下脚を一部切除する.Cb:眼窩内側のCWhitnall結節を剖出する.Cc:Whitnall結節の骨膜をC5-0モノフィラメント糸で通糸する.Cd:瞼板外側端に通糸し縫合する.Ce:縫合できた状態だと下眼瞼のテンションが変化する.f:皮膚縫合を行い終了である.この場合も通常皮膚切除は必要ない.–