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緑内障性視神経症と乳頭周囲脈絡網膜萎縮 乳頭深層微小血管脱落

2021年1月31日 日曜日

●連載247監修=山本哲也福地健郎247.緑内障性視神経症と乳頭周囲脈絡網膜萎縮,阪口仁一石川県立中央病院金沢大学眼科乳頭深層微小血管脱落乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)は緑内障眼や近視眼に多く認める所見であり,Bruch膜の有無により,緑内障と関連が深いCb領域,近視と関連が深いCg領域がある.乳頭深層微小血管脱落(MvD)はCOCTangiographyでPPA内に検出される網膜深層の血管脱落であり,種々の緑内障性変化や進行と関連し,近視のみで緑内障がないCPPA内にはまれである.●はじめに緑内障性視神経症(glaucomatousopticneuropathy:GON)を示唆する所見のうち,本稿では乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillaryCatrophy:PPA)について,そして光干渉断層血管撮影(opticalCcoherenceCtomographyangiography:OCTA)によって明らかにされた所見である乳頭深層微小血管脱落(microvasculatureCdrop-out:MvD)について,最近の話題を交えて述べる.C●乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)PPAは視神経乳頭周囲にみられる構造変化である.古くから検眼鏡的に緑内障と関連する所見と報告1)されており,検眼鏡的にC2領域に分類2)されていた.スペクトラルドメインCOCTや組織学的検討により,Cb領域内にCBruch膜の有無など組織構造の多様性が存在することが示され,JonasらはCa,b,gの3領域(図1a)に分類することを提唱した.PPAは乳頭形状によりさまざまな形態をとる(図1b,c).PPAは従来から緑内障,近視,加齢などで拡大することが知られていた.そして臨床的には,ある患者におけるCPPAの成因を鑑別するという課題であった.スペクトラルドメインCOCTの登場により領域ごとの特性の解明が進み,Cb領域は緑内障性変化と,Cg領域は近視性図1PPAの分類と形態a:PPAの各領域と,断面のCOCT画像.Ca:青と赤の間.網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)があり,色素がまだらに過剰もしくは乏しい領域.b:赤と緑の間.RPEがなく,Bruch膜が存在する領域.検眼鏡的に脈絡網膜萎縮が強く,大血管や強膜が透見される.g:緑と紫の間.RPEがなく,Bruch膜が存在しない領域.検眼鏡ではCb領域と鑑別しにくい場合がある.Cb:典型的なCPPAとしてよくみられる例で,乳頭耳側からCa→Cb→Cgの順に並ぶ.c:PPAが全周に存在する緑内障眼.脈絡網膜萎縮が強く,Cb領域は広く存在するが,Bruch膜開口部は耳側に引き伸ばされており,Cg領域はCbと大差ない.変化と関連が強いという報告が多い.また,OCTAを用いた研究2)では,Cb領域とCg領域を別々にして重回帰分析したところ,Cb領域のみが網膜血管密度に対する有意な説明変数であった.これらの報告からも,Cb領域は緑内障と,g領域は近視と関連が強いことが示唆される.bc(75)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021C750910-1810/21/\100/頁/JCOPY図2緑内障眼と強度近視眼の比較a:緑内障眼の眼底写真.PPAを認め,耳上側/耳下側の視神経乳頭縁が菲薄化している.Cb:同眼のCOCTA(choroidalslab).耳上側/耳下側に血管構造の描出がない部位(=MvD)を認める.Cc:強度近視眼の眼底写真.広範なCPPA,傾斜乳頭を認める.d:同眼のOCTA.MvDは認めない.C●乳頭深層微小血管脱落(MvD)MvDは,OCTAでCPPA内の深層(choroidalslab)の血管がある程度の幅や角度で完全に脱落している所見3)である(図2).MvDと対応する部位にインドシアニングリーン蛍光造影検査でも血流低下が示されたことから,実際になんらかの循環障害が存在すると考えられる.また,乳頭内から篩状板にかけての血流脱落に連続しているとの報告4)がある.網膜深層血管は篩状板前部とともに短後毛様動脈支配であり,緑内障の発症や進行と血管障害との関連が示唆される.MvDを認める眼の特徴として,耳上側および耳下側に多いこと,視野欠損部位や網膜神経線維層欠損(nerve.berlayerdefect:NFLD)部位と対応すること,緑内障の重症度と相関すること,視野進行速度が早いこと,乳頭出血を多く認めること,角度が大きいと中心視野障害をきたしやすいことなどが報告されている.最近の報告では,とくに強度近視患者において,緑内障合併群ではC97%にCMvDを認め,視野欠損部位と良好に対応したのに対し,緑内障のない強度近視眼ではCMvDを認めなかった5).これらの性質からCMvDは緑内障の発症や進行の新たなリスクファクターであると考えられる.ただし,圧迫性視神経症でもCMvDを認めるという報告もあり,MvDの存在が即座に緑内障を意味しないことに注意が必要である.C76あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021●日常診療での活用先述のように,PPA(とくにCb領域)やCMvDはCGONに関連がある所見である.その病態生理や解釈には未解明な部分が残されているが,診断や治療方針の決定,緑内障眼と近視眼の鑑別に役立つ可能性がある.日常診療において,強度近視眼は大きな脈絡網膜萎縮や乳頭の傾斜などのために,検眼鏡的にCGONと区別しにくい場合がある.OCTではCsegmentationerrorのため,内蔵ソフトウェアによる解析が正しく行われないことが多い.視野検査でもCMariotte盲点の拡大や屈折暗点などのために,評価が正確に行われない場合がある.そのほかの緑内障と紛らわしい所見として,高血圧,糖尿病,原発性アルドステロン症などの全身疾患における網膜循環障害に続いて形成されるCNFLDがある6).これらのCNFLD部位では視野感度も低下しており,一見すると構造(NFLD)と機能(視野異常)が対応した緑内障性変化のように思われる.しかし,これらの疾患では長期的に乳頭陥凹拡大,NFLD拡大,視野進行などを認めにくいこと,反対眼の所見,全身疾患の既往などが鑑別点となり,加えてCPPAやCMvDも緑内障性変化の判別に役立つ場合がある.一方で,実用に堪える画像を得るには質の高いCOCT撮影が必要であり,正常眼を含めた自動解析ソフトがないため,計測や解析に熟練とマンパワーを要するという現状がある.OCTのさらなる発展が,診断や治療方針に悩む緑内障患者の一助となることが期待される.文献1)PrimroseJ:EarlyCsignsCofCtheCglaucomatousCdisc.CBrJOphthalmol55:820-825,C19712)SakaguchiK,HigashideT,UdagawaSetal:ComparisonofCsectoralCstructure-functionCrelationshipsCinglaucoma:CVesseldensityversusthicknessintheperipapillaryretinalCnerveC.berClayer.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:5251-5262,C20173)SuhMH,ZangwillLM,ManalastasPICetal:DeepretinallayerCmicrovasculatureCdropoutCdetectedCbyCtheCopticalCcoherencetomographyangiographyinglaucoma.Ophthal-mology123:2509-2518,C20164)AkagiT,ZangwillLM,ShojiTetal:Opticdiscmicrovas-culatureCdropoutCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCmea-suredCwithCopticalCcoherenceCtomographyCangiography.CPLoSONEC13:e0201729,C20185)NaCH,CLeeCEJ,CLeeCSHCetal:EvaluationCofCperipapillaryCchoroidalCmicrovasculatureCtoCdetectCglaucomatousCdam-ageCinCeyesCwithChighCmyopia.CJCGlaucomaC29:39-45,C20206)OhshimaY,HigashideT,SakaguchiKetal:Theassocia-tionCofCprimaryCaldosteronismCwithCglaucoma-relatedCfun-dusabnormalities.PLoSONECaccepted(76)

角膜移植術後のコンタクトレンズ処方のコツ

2021年1月31日 日曜日

●連載248248.角膜移植術後のコンタクトレンズ処方のコツ監修=木下茂大橋裕一坪田一男東原尚代ひがしはら内科眼科クリニック山岸景子かしはら山岸眼科クリニック角膜移植術後の視力矯正はハードコンタクトレンズ(HCL)が第一選択となるが,非球面性が高いためにケラト値を参考にできない.台形化した角膜に合うようC10.0Cmmなど大きな直径で,ベースカーブC9.0Cmm以上のトライアルレンズを選択する.センタリングに注意してトライアルアンドエラーにてCHCLを処方する.●はじめに角膜移植術術後は,角膜の透明性は回復するものの,縫合糸による角膜の歪みで強い不正乱視が生じるために,裸眼や眼鏡矯正で十分な生活視力は期待できない.今回,全層角膜移植術(penetratingCkeratoplasty:PKP)の適応疾患のなかで,若年発症,かつCPKP術後に高い視力改善が求められる円錐角膜を取りあげ,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)処方のコツを解説する.C●PKP術後の円錐角膜形状の特徴PKPが適応になる円錐角膜は,重症で突出が強いだけでなく,周辺角膜までも薄くなっている.そのため,正常角膜厚の移植片を縫合すると,中央部は大きく扁平化して角膜は台形化する(図1).さらに縫合糸による歪みも加わって角膜形状解析を行ってもトライアルレンズ選択の指標となるケラト値を得ることができない.C●PKP後のHCL処方の注意点通常,HCLの処方は術後C6カ月程度経過して角膜の形状が安定したことを確認し,0.5以上の矯正視力を求める場合に試みる1,2).HCLを処方する際には,センタリングに注意して安定した視力を出すことと,涙液交換が良好なフィッティングをめざして酸素不足による内皮細胞へのダメージを減らすことに留意する.C●HCL処方手順①レンズサイズPKP後は,角膜の台形化と縫合部分の隆起のためHCLが偏位しやすい.筆者らはCPKP後眼に対して球面レンズを第一選択としている.球面レンズはオプチカルゾーンが広いのが特徴で,直径は最大C11.0Cmmまで製作できる.たとえCHCLが鼻側もしくは耳側に偏位しても,大きな直径であれば瞳孔領をカバーできる.さらに,レンズ周辺フロント部に溝加工(MZ加工)を施せば,なおいっそう良好なセンタリングが期待できる.ただし,大きな直径のCHCLでは,エッジが球結膜に当たり,充血や異物感の原因になるため,エッジリフトは高く調整しておく.②ベースカーブベースカーブ(basecurve:BC)は角膜の扁平化を考慮してC9.0~9.6Cmmなど大きなものを選ぶ.小さいCBCではレンズ下に空気が入りやすいうえに,縫合部の隆起を乗り越えられずに固着して涙液交換は低下する.図2に連続縫合抜糸後C1カ月の写真を示す.PKP直後に比図1円錐角膜に対してPKPを施行した症例a:PR-8000写真,Cb:前眼部写真.PKP後,角膜の透明性は改善したが,角膜中央部の扁平化と縫合部分の不正性が強い.ケラト値は測定不能だった.(73)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021C730910-1810/21/\100/頁/JCOPY図2連続縫合抜糸後のHCL処方(図1と同一症例)a:PR-8000写真,Cb:前眼部写真,c:HCL装用時のフルオレセイン染色.連続縫合抜糸後に角膜形状は改善する.BC9.60mm,度数+4.0D,直径C10.0Cmmの球面CHCL(エッジリフトCIII型,MZ加工)を処方した.図3HCL処方4カ月後(図1,2と同一症例)a:PR-8000写真,Cb:前眼部写真,c:HCL装用時のフルオレセイン染色.角膜形状解析では角膜中央から周辺にかけてプラチドリングの連続性が確認できる.角膜形状が球面性を帯びたことで,レンズ下の涙液貯留は減少した.この症例ではCBC9.60Cmmと直径C10.0Cmmはそのままで,度数のみ+0.50Dに変更して矯正視力は(1.2)に改善した.較して角膜形状は改善していたが,扁平化は残っていた.製作範囲の最大となるCBC9.60CmmのトライアルHCLを選択したところ,レンズ下に涙液と空気の貯留を生じたものの,HCLの動きは悪くなく,矯正視力(1.0)を得た.③デザインの見直し度数はトライアルCHCLの上から眼鏡矯正を行い決定する.HCL装用を再開すると角膜形状は大きく改善する(図3).その変化に合わせて度数,BC,サイズも見直さなければならない.C●難症例対策①逆形状多段階カーブレンズ球面レンズで強い異物感やずれが生じる場合に,逆形状多段階カーブレンズを試す3).逆形状多段階カーブレンズは,屈折矯正術後に処方することを念頭において作られたCHCLで,BCより第C1中間カーブが小さく設計され,レンズ全体が台形状をなす.PKP後のような台形化した角膜においても,角膜中央のフルオレセインの溜まりを最小にできる.②ピギーバックレンズシステムHCLの偏位が強い場合に,ピギーバッグレンズシステムを試みる.ソフトコンタクトレンズ(softCcontactC74あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021lens:SCL)装用により,角膜の球面性が高まり,異物感の軽減にも役立つ.ただし,角膜の非球面性が強いとSCLがたわんで装用自体ができない場合もあるので注意する.C●おわりにPKP後の角膜形状は,術前の円錐角膜の重症度,移植片角膜と宿主角膜の差(角膜厚,曲率半径),術式や術後の経過時期(抜糸の状態)などの影響を受けるため,症例ごとにトライアルアンドエラーを行ってCHCLを処方するしかない.また,PKP後はC20年以上経過すると円錐角膜様に角膜が突出してくるため,数年に一度はHCLのフィッティングを見直すことも大切である.文献1)GenvertCGI,CCohenCEJ,CArestsenCJJCetal:FittingCgasC-permeableCcontactClensesCafterCpenetratingCkeratoplasty.CAmJOphthalmologyC99:511-514,C19852)大家義則,前田直之,相馬剛至ほか:全層角膜移植後のガス透過性ハードコンタクトレンズ装用状況/臨床応用.日コレ誌46:153-156,C20043)柳井亮二,石田康仁,植田喜一ほか:角膜移植後角膜に対する多段カーブハードコンタクトレンズの有用性.日コレ誌49:166-170,C2007(74)

眼内レンズ:モルガーニ白内障における前囊切開 ViscoexpansionTechnique

2021年1月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋410.モルガーニ白内障における前.切開飯田嘉彦北里大学医学部眼科学教室ViscoexpansionTechniqueモルガーニ白内障とは過熟白内障の皮質が液化し,茶褐色の核が水晶体下方に沈下している状態であり,手術の際には水晶体.の張りがなくなり,前.切開時の前.片のコントロールが困難となることが問題となる.粘弾性物質の使用により水晶体.の張りを保ち,前.切開を容易にする方法を紹介する.●はじめにモルガーニ白内障(MorgagnicataractあるいはMor-gagniancataract)とは過熟白内障の皮質が液化し,高度に硬化した茶褐色の核が水晶体.内で下方に沈下している状態である(図1).細隙灯顕微鏡で診察するような座位の状態では茶褐色の核が水晶体.下方に沈下していることが確認でき,仰臥位に姿勢を変えると核は後.側に沈下して,前.側は液化した皮質のみになるので,手術時に顕微鏡下で見ると均一に白く混濁しているように見える.●白内障手術時の問題点と対処法モルガーニ白内障の手術においては,液化した皮質が前房内に流出して視認性が悪くなること,硬化した核が小さく,液化した皮質は核を支える力がないため,超音波乳化吸引にて核処理を行うことが困難であることが知られているが,その前の連続円形切.(continuouscur-vilinearcapsulorrhexis:CCC)を施行する際に,脆弱なZinn小帯や,前.を穿刺し液化した皮質を吸引することにより水晶体.の張りがなくなり,前.片のコントロールが困難となることも,手術をむずかしくしている理由の一つである.白内障手術の際に使用する粘弾性物質(ophthalmicviscosurgicaldevice:OVD)は空間保持の役割を担い,前.切開時にも前.片が赤道部へ流れていかないよう,図1モルガーニ白内障(前眼部写真)前.を上から押さえるように前房内にOVDを注入することが多い.しかし,モルガーニ白内障のように皮質が液化して水晶体の張りがないような場合には,OVDを注入して上から押さえつけるのではなく,水晶体.内に凝集型OVDを注入して,水晶体.を膨らませて張りを保つように形状を形成するviscoexpansiontechniqueを用いることにより,前.切開のフラップのコントロールがしやすくなる.●手術方法前房内にOVDを注入し,視認性向上のために前.染色を行ったあと,前.に30ゲージ鋭針を穿刺し,水晶体.内の液化した皮質を吸引する(図2).液化した皮質を吸引すると,後.側に沈下している水晶体核が見えてくる.前.鑷子で前.切開を開始し,水晶体.の張りを確認し,前.片のコントロールがしにくい場合には同部位より凝集型OVDを水晶体.内に注入し,水晶体.の張りと形状を保ち,そのうえで前.切開を再開する(図3).前.切開後は,残存した核の状態に応じて摘出方法を検討する.核が小さく硬いため水晶体.内での安定性が悪い場合には,超音波乳化吸引術ではなく水晶体.外摘出術に変更するという選択肢もある.筆者は皮質を吸引したところ,非常に小さな核しか残らなかった症例を経験したことがあり,超音波乳化吸引で対応可能な場合もある(図4).(71)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021710910-1810/21/\100/頁/JCOPY液化した皮質図2皮質吸引前.を30ゲージ鋭針で穿刺し,液化した皮質を吸引する.小さく硬い核●おわりにViscoexpansiontechniqueはOVDの特徴の一つである空間保持機能を利用した方法である.以前にこのセミナーでも紹介した角膜内皮減少例に対するdoublecir-cularcapsulotomy&endophacotechnique1,2)は,.内にOVDを注入して水晶体.の張りを保ったうえで小さなCCCを拡大していく手技であり,viscoexpansiontechniqueはその手技に着想を得たものである.確実にCCCが作製されていれば,Zinn小帯が脆弱であった場図3.内へのOVD注入皮質を吸引し,虚脱気味になった水晶体.内に凝集型OVDを注入する.図4前.切開後に残存した水晶体核a:水晶体.外摘出へコンバート.b:前.切開後に液化した皮質を除去したところ,小さな核しか残っていなかった.合にも虹彩リトラクターやカプセルエキスパンダーなどを使用することも可能である.難症例であればあるほど,より確実な手技の遂行が求められる.文献1)清水公也:DoubleCircularCapsulotomyとEndocapsularPhacoemulsi.cation.眼科手術2:431-435,19892)飯田嘉彦:角膜内皮減少例に対するDoubleCircularCapsu-lotomy&EndophacoTechnique.あたらしい眼科35:353-354,2018

コンタクトレンズ:ハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 フルオレセインパターンによる判定

2021年1月31日 日曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科医院8.フルオレセインパターンによる判定(3)■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)のフィッティングを判定するには,レンズの動きや静止位置をチェックしたあとに,角膜とHCL間のフルオレセインの染まり具合をチェックしなければならない.その際に見逃されやすいのはベベル幅とエッジの浮き上がり,ブレンド状態のチェックである.今回は,前回セミナーに引き続き,ベベル幅のチェック法から解説する.■ベベル幅のチェック(2)ベベルデザインはレンズの動きに大きな影響を及ぼすことは前回記した.サイズ8.8mmのHCLのベベルの幅は0.6mm程度が最適であるが,ベベル幅が狭すぎると(図1)エッジの浮き上がりは小さくなり,レンズの動きは少なくなり(タイト),レンズの動きによる涙液図1狭すぎるベベル幅レンズの動きがタイトになり,固着を起こす場合もある.図3エッジの浮き上がりのチェック法0.1mm程度に絞った光束をレンズ下端に45°の角度から当てる.交換は不足してくる.ベベル幅が広すぎると涙液のドライアップによって将来的に3時-9時ステイニングを生じることは前回記したが,ベベル幅が狭すぎてもベベル部分と角膜の機械的刺激により3時-9時ステイニングをきたしてくることがある(図2).■エッジの浮き上がりのチェック直乱視におけるエッジの浮き上がりをチェックするには,0.1mm程度に絞ったスリットランプの光束を45°の角度からレンズ下端に当てて,エッジと角膜の間の光束のズレを観察する(図3).光束のズレが1本分が適当なエッジの浮き上がりとなる(図4).■ブレンド状態のチェックHCLの内面はベースカーブ(BC)と中間カーブ(intermediatecurve:IC)と周辺カーブ(peripheralcurve:PC)からなりたっており,それぞれの境界は鋭角になる.そのままでは異物感が強いだけでなく,角膜に損傷を与えることもある(図5).そこで,それぞれの境界は研磨してなだらかになるようにしなければならない.これを「ブレンドをかける」といい,BCとIC間の研磨をICブレンド,ICとPC間の研磨をPCブレンドとよぶ.フルオレセインパターンによってフィッティングをチェックする際に,ICブレンドの状態はある程度,推察することができる(図6).しかし,ルーペでベベル形状を実際に観察するのが確実である(図7).模式abc図4エッジの浮き上がりの検査a:光束のズレが約1本分が適当なエッジの浮き上がり.b:エッジの浮き上がりが大きくルーズになる.c:エッジの浮き上がりが小さくタイトになる.図23時.9時ステイニングベベルと角膜との間に機械的刺激が生じて3時-9時方向に点状表層角膜症が認められることがある.(69)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021690910-1810/21/\100/頁/JCOPY図5ブレンド不足による角膜上皮障害図6フルオレセインパターン判定時におけ図7ルーペによるベベルチェックICブレンドおよびPCブレンド不足にるICブレンドのチェックHCLを指に固定して直線型蛍光灯のより角膜周辺部に角膜上皮障害が認めらBCのフルオレセインとベベルのフルオレセ光をベベル部位に当てて,30~45°のれる.イン濃度がなめらかに移行している場合は,角度からルーペにて観察する.ICブレンドは良好と見なすことができる.c図8ベベル・エッジの模式図a:エッジの浮き上がりが小さい.b:ブレンド不足.c:ブレンド過剰.d:良好な状態.図を図8に示す.実際にベベル形状を観察すると,エッジの仕上がり,PCブレンドやICブレンドのかかり具合,エッジの浮き上がり,ベベル幅などを簡単に知ることができる.■フルオレセインパターン判定時の注意点フルオレセインパターンにてフィッティングを判定する場合,HCLは角膜中央部に位置していなければならない.静止位置が角膜やや上方あるいは下方にある場合,一見スティープにみえたりフラットにみえたりすることがある(図9).そういうときは,眼瞼の上から指で図9静止位置によるフルオレセインパターンの変化実際はスティープであっても,レンズがやや下方にあることによりフラットにみえる.図10フルオレセインの量による影響フルオレセインの量が多すぎると,レンズ表面にフルオレセインが溢れて,正確な判定ができないことがある.レンズを角膜中央部に押し戻してから判定する.また,フルオレセインの量が多すぎると,レンズ表面にもフルオレセインが溢れて,フラットであってもスティープであっても一見パラレルにみえてしまうことがある(図10).昭和薬加工のフローレス試験紙なら2~3等分にカットして生理食塩水で濡らして使用するとよい.現在,筆者は蛍光眼底造影剤フルオレセイン2mgを生理食塩水8mgに溶かした液を硝子棒に少し付けて,余分なフルオレセインを振り落としてから,下眼瞼結膜や上眼球結膜に付けている.

写真:偏食によって生じた小児のビタミンA欠乏症

2021年1月31日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦440.偏食によって生じた小児の細谷友雅兵庫医科大学眼科学教室ビタミンA欠乏症横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図1左眼前眼部写真耳側結膜は皮膚のように角化しており,極度の水濡れ性低下を認める.軽度の充血を伴っている.図3左眼前眼部フルオレセイン染色写真高度の角結膜上皮障害を認める.図42週後の左眼前眼部写真肝油ドロップの摂取で結膜の角化は治癒し,水濡れ性も改善した.(67)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021670910-1810/21/\100/頁/JCOPY極度の偏食に伴い発症した小児のビタミンA(VitA)欠乏症の1例を紹介する.患者は4歳の女児.主訴は数週間前からの両眼の充血と羞明であった.近医眼科で高度のドライアイといわれ,ヒアルロン酸点眼で改善しないため紹介となった.既往症として食物アレルギー(卵,乳製品),流行性角結膜炎(2カ月前)がある.発達障害はなかった.受診時所見は,右眼視力0.7,左眼視力0.6(集中力欠如のため,裸眼視力しか測定できず),両眼の眼球結膜角化と軽度の充血(図1,2),角膜全面の高度な点状表層角膜症を認めた(図3).前房,水晶体,眼底に特記すべき異常を認めなかった.網膜電位図で桿体反応の減弱を認めた.夜盲の訴えはなかった.身長,体重は4歳児の平均値内であった.所見よりVitA欠乏症を疑い,食事について問診を追加したところ,白い食物(白米,大豆製品,素麺,パンなど)を異常に好み,肉類,野菜類は食べないという極度の偏食が判明した.偏食と眼所見からVitA欠乏症と判断し,小児科に精査加療を依頼した.血液検査の結果が出るまで,肝油ドロップの摂取を勧めた.血清VitA値は5IU/l以下(基準値97~316IU/l)と非常に低下していたが,そのほかはビタミンB12の軽度低下と軽い貧血を認めるのみであった.2週後,両眼の眼球結膜角化と点状表層角膜症は著明に改善しており(図4),肝油ドロップで治療効果があったと考えられた.VitAは脂溶性ビタミンで,緑黄色野菜から摂取可能であるが,乳製品,卵,レバーなどの動物性食品にも多く含まれる.後者のほうがレチノールを多く含み,その転換効率はよい1).VitA欠乏症は夜盲を初期症状とし,皮膚や気道,消化管,尿路などの粘膜の乾燥化と角化を生じる.眼所見は夜盲に加え,眼球乾燥症による結膜角化を生じ,進行すれば角膜潰瘍,角膜軟化症に至り,失明の原因ともなる.開発途上国ではVitA欠乏が視覚障害のおもな原因である.VitAは免疫機能にとっても不可欠なため,欠乏すると感染症に弱くなる1).日本ではまれな疾患ではあるが,消化管術後2)や,自閉症で摂食障害のある小児患者に発症した報告3)がある.本症例に既往はなかったが,自閉症スペクトラム障害は偏食や好き嫌いが高率で合併する4).このため,その有無を既往歴として聴取すべきである.保護者は眼疾患の原因が偏食にあると思わず,「気になることはないか」という問診ではなかなか摂食障害にたどり着くことができない.したがって,「偏食がないか」と具体的に尋ねる必要がある.本症例は食物アレルギーで小児科通院中であったが,身長や体重は正常で,小児科医が外見からVitA欠乏症を推察するのはむずかしかったと考えられる.結膜の角化はVitA欠乏症に特異度の高い所見であり,病状が進行すると角膜潰瘍や視神経萎縮をきたし,不可逆性の機能障害が残存するため,眼科医が早期に発見する意義は大きい.今日の日本ではVitA欠乏症は非常にまれな疾患ではあるが,小児の結膜角化をみたらVitA欠乏症も鑑別にあげ,問診で発達障害や偏食の有無を聴取することが重要である.文献1)野末みほ,吉池信男:栄養失調─世界中の子どもたちが抱える栄養問題.小児科臨床58:1370-1376,20052)斎藤純一郎,板垣秀夫,平岡孝浩ほか:十二指腸癌切除術後に発症したビタミンA欠乏症の1例.眼臨紀4:693-697,20113)槫沼裕子,今井弘毅,平野隆雄ほか:自閉症を有する男児のビタミンA欠乏症により角膜潰瘍に至った1例.眼科59:457-462,20174)柏木充:発達障害と偏食.小児科臨床72:550-554,2019

導涙機能を考慮した涙道閉塞手術

2021年1月31日 日曜日

導涙機能を考慮した涙道閉塞手術LacrimalDuctObstructionSurgeryandTearClearance三谷亜里沙*鎌尾知行*はじめに涙道閉塞は涙小管閉塞(pre-saccalobstruction)と鼻涙管閉塞(post-saccalobstruction)に分けて考える必要がある.なぜなら両者は解剖学的構造や治療目的,治療法などさまざまな点で異なるためである.涙小管閉塞の治療法は,涙管チューブ挿入術,経皮的涙小管形成手術,結膜涙.鼻腔吻合術が代表的である.わが国では涙道内視鏡の開発により,ほとんどの症例が涙管チューブ挿入術で対応可能となった1).しかし,涙小管閉塞の重症例については,経皮的涙小管形成手術や結膜涙.鼻腔吻合術が必要な場合がある.一方,鼻涙管閉塞の治療法は涙.鼻腔吻合術(dacryo-cystorhinostomy:DCR)に代表されるバイパス手術と,涙管チューブ挿入術に代表される涙道再建手術に大別される.ゴールドスタンダードの治療法はDCRであるが,わが国では涙道内視鏡の改良・普及により涙管チューブ挿入術の治療適応が拡大し,治療成績の比較検討が行われるようになった.鼻涙管閉塞に対する治療成功率はDCRが90~99%2~4),近年の涙管チューブ挿入術が70~89.9%と報告されており1,5,6),涙道内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術の開発により治療成績が向上している.ただし,導涙機能に焦点を当てて比較検討した報告はない.涙道再建手術は閉塞部位を開放するため,その流れは生理的に戻るが,涙道が再狭窄などをきたすと涙液の通過障害が残存することがある.また,バイパス手術は新たな通り道を作製するため,涙液は非生理的な流れとなり,導涙機能に変化が生じている可能性が考えられる.本稿では,導涙機構とその評価法について解説し,涙道閉塞治療後の涙液クリアランスについて述べる.I導涙機構導涙機構には,蒸発や角結膜からの吸収・浸透,重力,毛細管現象,涙道のポンプ作用,Krehbiel.owなどさまざまのものが関与しているが7),そのなかでもっとも重要な機構が涙道のポンプ作用と考えられている.そして涙道のポンプ作用のメカニズムは,柿崎らが提唱したtetracompartmenttheoryがもっとも支持されている8).これは涙小管と涙.がそれぞれ二つのコンパートメントに分かれて動くという考え方で,涙小管と涙.をそれぞれ二つに分けているものがHorner筋である.Horner筋は眼輪筋の深部にあたり,後涙.稜後方から起始し,前外方に走行し,眼輪筋瞼板前部に合流する(図1a,b).涙小管の外側4/5はHorner筋内を走行するが,内側1/5は筋外を走行する.そのため,涙小管の外側と内側で図1a,bのようにHorner筋の収縮弛緩により異なる動きを示す.すなわち,Horner筋により涙小管が二つのパートに分かれて動き,涙小管のポンプ作用を発揮する.涙.については,Horner筋に接している上半部と,接していない下半部に分かれる.上半部は涙小管の内側1/5と同じ動きを示す(図1a,b).一方,下半部の涙.*ArisaMitani&*TomoyukiKamao:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学〔別刷請求先〕三谷亜里沙:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(59)59ace図1涙小管と涙.の解剖と瞬目に伴う動きa:涙小管と涙.上部の水平断図.開瞼時,つまり眼輪筋・Horner筋が弛緩している状態では涙小管の外側4/5は拡張する.一方,涙小管の内側1/5と涙.上部は,眼窩脂肪にHorner筋が後方から圧排されて縮小する.b:涙小管と涙.上部の水平断図.閉瞼時,つまり眼輪筋・Horner筋が収縮している状態では,涙小管の外側4/5はHorner筋に圧排され収縮する.一方,Horner筋の筋腹が後方に偏位することで,涙小管の内側1/5と涙.上部は拡張する.c:涙.下部の水平断図.開瞼時には眼輪筋が弛緩し,眼輪筋や眼窩脂肪が前方に偏位し,眼窩内圧の低下により涙.は外側に拡張する.d:涙.下部の水平断図.閉瞼時には眼輪筋の収縮により前方から眼窩脂肪が圧排され,眼窩内圧の上昇による外側からの圧排により涙.は縮小する.e:開瞼時の涙小管と涙.の動き.眼輪筋・Horner筋が弛緩しているため,涙小管外側と涙.下部は拡張し,涙小管内側と涙.上部が収縮している.f:閉瞼時の涙小管と涙.の動き.眼輪筋・Horner筋が収縮しているため,涙小管外側と涙.下部は収縮し,涙小管内側と涙.上部が拡張している.(a,b:眼手術学3眼瞼・涙器I.涙器手術に必要な基礎知識1.涙液,涙道の解剖生理図22より改変引用,c~f:KakizakiH,etal:ThelacrimalcanaliculusandsacborderedbytheHorner’smuscleformthefunctionallacrimaldrainagesystem.Ophthalmology112:710-716,2005Figure4,6より改変引用)表1定量的導涙機能検査検査装置トレーサーC.uorophotometryC.uorophotometerC.uorescein造影CdynamicMRICMRIガドリニウムシンチグラフィCgammacamera放射性同位体PMMA検査細隙灯顕微鏡PMMA粒子前眼部COCT検査前眼部COCT生食/ムコスタa前眼部OCT撮影生食5μl点眼涙液メニスカス面積(TMA)涙液メニスカス高(TMH)b0.80.60.40.20点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間TMH高(mm)図2前眼部OCTを用いた涙液クリアランス検査a:マイクロピペットを用いてC5Cμlの生理食塩水を下眼瞼結膜.に点眼する.前眼部COCT(CASIASS-1000,トーメーコーポレーション)を用いて,自然瞬目による下眼瞼の涙液メニスカス高(TMH)と涙液メニスカス面積(TMA)を経時的に計測する.Cb:正常者におけるTMHの経時変化.縦軸がCTMHの高さ,横軸が時間経過を示す.測定ポイントは点眼前と点眼直後(0秒),30秒後,1,2,3,4,5分後までのC8ポイントである.生食点眼直後に上昇したCTMHは,最初のC30秒間で急激に低下し,約C3分でベースラインに戻っている.Grade1Grade2Grade3図3涙小管閉塞の重症度分類(矢部・鈴木分類)涙管通水検査にて上下交通が認められる総涙小管閉塞はCGrade1,上下交通が認められず,閉塞部までの距離が涙点から7~8Cmm以上であればCGrade2,閉塞部までの距離が涙点から7~8Cmm未満の場合はCGrade3に分類される.正常者涙管チューブ挿入術結膜涙.鼻腔吻合術aGrade1bGrade2,3図4当院における涙小管閉塞の重症度別涙管チューブ挿入術治療成績当院で涙小管閉塞に対して涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例を対象とした.Ca:Grade1の治療成功率はC95.4%(151側中C144側).b:Grade2およびGrade3の治療成功率はC69.8%(43側中C30側).TMH高(mm)0.80.60.40.20点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間図5涙小管閉塞治療後のOCT涙液クリアランス検査正常者,涙小管閉塞に対する涙管チューブ挿入術治療後,または結膜涙.鼻腔吻合術後のCTMHの経時変化を示す.結膜涙.鼻腔吻合術後群は正常者群や涙管チューブ挿入術後群と比較して,点眼前と点眼C30秒以降で統計学的に有意にCTMHが高い.*:p<0.05(Tukey-Kramertest)図6結膜涙.鼻腔吻合術LesterJonestubeはパイレックスまたは硬質ガラス製のステントである.両端につばがあり,片端が涙湖に,もう片端が涙.や鼻粘膜に固定されることで落下や脱落を防止している.日本では本ステントが認可されておらず,個々で作製するか,米国より個人輸入する必要がある.aDCR後b涙管チューブ挿入術後G110.5%G22.8%正常者涙管チューブ挿入術DCRTMH高(mm)0.60.40.2時間図7鼻涙管閉塞治療後のOCT涙液クリアランス検査正常者,鼻涙管閉塞に対する涙管チューブ挿入術治療後,または涙.鼻腔吻合術後(DCR)症例のCTMHの経時変化を示す.正常者群と涙管チューブ挿入術後群はほぼ同じ動態を示す.DCR後群も統計学的に有意な差はなかった.(Tukey-Kramertest)図8鼻涙管閉塞治療後の涙道通過障害の割合涙管通水検査時の逆流量により,逆流なし,全注入量の内C50%未満が逆流してくるものをCGrade1(G1),全注入量の内C50%以上が逆流するものをCGrade2(G2)と分類した.当院で鼻涙管閉塞に対してCDCRまたは涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例の最終診察時の涙管通水検査結果を示す.a:DCR後C19側.Cb:涙管チューブ挿入術後C36側.点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分逆流なし逆流あり0.60.40.20.0TMH高(mm)点眼前0秒30秒1分2分3分4分5分時間図9涙管通水検査の逆流の有無によるOCT涙液クリアランス検査の比較当院で鼻涙管閉塞に対して涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術治療を行い,涙管チューブ抜去後半年以上経過観察可能であった症例を対象とした.涙管通水検査の逆流の有無によりCOCT涙液クリアランス結果を比較すると,逆流なし群と比較してCGrade1以上の逆流を有する群は,点眼前と点眼C30秒以降で有意にCTMHが高い.*:p<0.05(Student’st-test)-’C

涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫

2021年1月31日 日曜日

涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫DevisingLacrimalSurgeriestoDecreaseRecurrenceoftheObstruction三村真士*はじめに涙道手術は,閉塞した涙道を開放して,正常な涙液排泄を促すことで健常な眼表面を保ち,視機能の発揮に貢献している.涙道手術には大きく分けて,閉塞した涙道を再建するCre-canalizationと,閉塞部を回避して新たな道を作製するCbypasssurgeryの二通りがある.Re-canalizationはCLacrifast(ロート製薬),PFカテーテル(ニデック),FCIヌンチャク(FCI)といった,日本で開発されたCbi-canalicularチューブを一時的に留置して閉塞部を開放する方法である.Bypasssurgeryは涙道の一部を外科的に切除して,バイパスを作製することで新涙道を形成する方法がもっとも一般的に行われている.いずれの涙道手術も,ハード面もソフト面も近年非常に洗練され,手術成功率の向上と低侵襲化が達成されてきており,社会への貢献度を大きく伸ばすことができているが,さらに洗練度を高める努力を怠ることはできない.本稿では,現在まで蓄積されてきたエビデンスに基づき,深く考慮した涙道手術の洗練化について紹介する.CI手術適応涙道手術は基本的に流涙症を改善するために行うが,涙液の排泄は涙道のみで行われているわけではない.涙道以外に,涙液の蒸発や涙道粘膜での涙液吸収も涙液の排泄に大いに関与する.つまり,分泌された涙液を処理する能力が上記排泄因子の総合力で賄えればそれで問題ない.したがって,涙道閉塞の有無のみならず,ドライアイや結膜・涙道粘膜の炎症(吸収が落ちる)などを同時に評価する必要があるし,逆に涙道閉塞がまったくなくても,いわゆる機能性流涙症では,涙道手術が適応となることもある.たとえば前者では,鼻涙管閉塞を伴うSjogren症候群の場合,涙道を開放することは逆に涙液減少性ドライアイを悪化させることになる可能性が高く,涙.炎を涙道洗浄や点眼で予防することで,保存的に症状の改善を図ることも一つの選択肢として考えられる.つまり,その流涙症を解決するうえで,涙道手術がどのように効果を発揮するかを,涙液の循環を総合的に評価して,手術適応を決める必要があることを念頭に入れなければならない(図1).CIIRe.canalizationsurgeryわが国においては,2000年代初頭に涙道内視鏡が登場したことより,術中に涙管チューブ誤挿入の有無を客観的に捕らえられるようになったため,現在ではとくに後天性原発性涙道閉塞においては,かぎりなくC100%に近い確率で涙管チューブを誤道なく挿入することができるようになっている.これを前提に以下の話を進めるが,このような洗練されたCre-canalizationをベースに論じられた論文はわが国以外では少なく,涙管ブジーに細いシリコーン製チューブが接続されたCCrawfordチューブといった古典的な涙管チューブを盲目的に挿入するような,誤挿入の可能性を排除できないCre-canalization*MasashiMimura:大阪医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕三村真士:〒569-8686大阪府高槻市大学町C2-7大阪医科大学眼科学教室C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(53)C53図2インジゴカルミンを使用した涙道粘膜の生体染色(涙道内視鏡写真)閉塞した涙.鼻涙管移行部がインジゴカルミンにより青く染色されている.図1涙道閉塞症とドライアイの合併a:術前.非常に軽度のドライアイとCtearmeniscusheight(TMH)の上昇を認める.Cb:術後.Re-canalizationCsur-geryによりCTMHは改善しているが,角膜上皮障害が悪化している.図3結膜鼻腔吻合術により留置したJonesチューブ(鼻内視鏡写真)ガラス製のCJonesチューブ(*)が右側中鼻道に留置されている.図4非常に厚い上顎骨前頭突起を有する症例に対する涙.鼻腔吻合術鼻内法(鼻内視鏡写真)a:3Cmmの平鑿を使用して,上顎骨前頭突起で構成された厚い左側の前涙.稜を切除している.Cb:切除後.インジゴカルミンで青染された涙.()内に挿入された涙道内視鏡の光()が透見できる.切除部位の前頭突起は約C5Cmmの厚さ()であった.図5涙管チューブ留置後のバイオフィルムと肉芽形成(涙道内視鏡写真)涙管チューブ挿入術後C1カ月間,涙道洗浄をしなかった症例の涙道内視鏡所見.涙管チューブ(*)の周りにバイオフィルム()が付着し,涙.粘膜が隆起した肉芽組織の形成を認める().-

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択

2021年1月31日 日曜日

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択Evidence-BasedSurgicalTimingandChoiceofReconstructiveMaterialsforOrbitalFractures山中行人*はじめに眼窩骨折は眼窩を構成する骨が外力によって骨折をきたした状態であり,外眼筋や眼窩脂肪の偏位,障害によって眼球運動制限が引き起こされる.救急外来,一般外来ともに眼科医がしばしば遭遇しうる疾患でありながらも,その診断・治療に関してはあまり自信をもてない眼科医が多いのではないだろうか.これは眼窩骨折の手術を施行している施設がごく限られており,一般眼科医が眼窩骨折の手術適応や手術時期について正確な知識を得る機会に乏しいことが少なからず影響していると考える.たとえば,「眼窩骨折」はしばしば「吹き抜け骨折」と同義の言葉として認識されているが,これは誤りであり,正しくは「眼窩開放型骨折=吹き抜け骨折」である.また,初診時に外来で見逃しがちな「眼窩閉鎖型骨折」のほうが「眼窩開放型骨折」と比べてより重篤な病態であり,早急な手術加療が必要であることも意外と知られていないのが現状である.本稿では,「このタイプの眼窩骨折は経過観察をしてもよいのか」「経過観察はどれくらいの期間まで可能なのか」「受傷直後に受診して経過観察とした場合,どれくらいのタイミングで再診するべきなのか」というような実際の臨床で眼科医がもつであろう疑問にもエビデンスを示して回答を提示する.眼窩骨折で複視や眼球運動時痛などの症状がある場合は速やかな手術加療が望ましい.この際に,眼窩骨折の手術の目的は「骨折を治すこと」ではなく,「眼球運動を正常化させること」であることを認識しておくことが大変重要である.眼窩骨折でも,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折であれば,速やかな全身麻酔下での整復術が必要となる.また,術後早期に眼球運動が正常化するわけではなく,術後に眼球運動のリハビリテーションを行うことで数カ月~半年程度かけて眼球運動障害が改善してくるということを理解する必要がある.本稿では,眼窩骨折診療の実際からエビデンスに基づいた手術時期と再建材料の選択までを解説する.眼科医のみならず眼窩骨折手術を行う医師にとっても,明日からの診療の一助となれば幸いである.I眼窩骨折とは眼窩骨折はSmithらによって1957年に最初に報告された1).眼窩前方からの鈍的外力によって眼窩内圧が急激に上昇し,眼窩内でもっとも弱い部分である眼窩下壁や内壁が骨折を起こすのが眼窩骨折のメカニズムである.眼窩内にはconnectivetissueseptaとよばれる結合組織のネットワークが外眼筋・眼窩脂肪・骨膜の間に形成されているが2),眼窩骨折によってこのネットワークが破綻あるいは偏位,絞扼すると眼球運動障害が引き起こされる.眼窩骨折の受傷機転としては,小児ではスポーツや偶発的な衝突が多く,青年から中年ではスポーツ,喧嘩,飲酒後の転倒などが多い.そして高齢者になると圧倒的に転倒が原因となることが多い.京都府立医科大学眼科での検討では,384例の眼窩骨折において,*YukitoYamanaka:明治国際医療大学附属病院眼科〔別刷請求先〕山中行人:〒629-0392京都府南丹市日吉町保野田ヒノ谷6-1明治国際医療大学附属病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(47)47図1右眼窩下壁開放型骨折図2右眼窩下壁閉鎖型骨折(眼窩内組織が嵌頓)図3右眼窩下壁閉鎖型骨折(筋絞扼型)る」という訴えである.眼窩下壁骨折では,三叉神経第二枝の通る眼窩下溝の鼻側が骨折の好発部位であり,骨折によって三叉神経第二枝が障害されると,頬部および口唇部の違和感が生じるからである.この訴えがあった際にも,必ず眼窩部CCTを撮像するべきである.眼窩部CCT検査については,眼窩C3方向(冠状断・矢状断・水平断)の条件で,可能な限り薄いスライス(2Cmm以下)で撮像するように放射線科にオーダーする.撮影したCCT画像は,骨条件と軟部条件を比較して臨床症状とあわせて評価する.冠状断は内下壁,左右の眼窩骨を同時に評価することが可能であり,眼窩骨折の診断を比較的つけやすい.開放型骨折であれば,眼形成専門医でなくても眼窩骨折の診断は比較的容易と考えられるが,閉鎖型骨折の場合には,眼窩骨折にあまり慣れていない眼科医にとって骨折の診断を確定するのは少しためらわれるかもしれない.その際に診断の一助になるのが,閉鎖型眼窩骨折を疑う特徴的なCCT所見である.たとえばCmissingrectusとよばれる眼窩内の外眼筋の消失所見や,bonethicknesssignとよばれる骨折部位の骨膜の肥厚所見は眼窩閉鎖型骨折を示唆する重要な所見である.また,筆者も経験があるが,骨折線が線状でCTのスライスと並行に存在する症例では,CT上明らかな骨折が確認できないこともある.このような症例では,眼球運動障害や複視・眼球運動時痛の有無といった臨床所見と合わせて眼窩骨折の診断を慎重に行う必要がある.受傷の原因が交通外傷や高所からの転落など高エネルギー外傷の場合には,眼窩骨折以外にも頬骨骨折や前頭骨骨折,鼻骨骨折,上顎骨骨折などの顔面骨折および頭蓋骨の骨折の可能性についても必ず考慮する.もしこれらの骨折が判明した場合には該当する耳鼻咽喉科・形成外科・歯科・脳神経外科などに紹介することが望ましい.とくに頭蓋内のCfreeairを認めたときは,頭蓋底骨折の可能性があるため脳神経外科に必ず紹介を行うべきである.眼窩骨折は,鈍的外傷によって引き起こされるため,前房出血・外傷性散瞳・虹彩離断・網膜振盪症などの眼球打撲による症状を合併していることも少なくない.このため,まずは視力・眼圧といった眼科一般の検査を行い,それらに追加してCHessチャートや両眼単一視野などの検査を施行する.Hessチャートでは日常生活で最低限必要な範囲とされるC30°の範囲までを必ず測定する.両眼単一視野検査ではCHessチャートでは検出できないC30°以上の範囲の複視の存在を確認することが可能である.眼窩骨折の患者であっても,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで患眼の視力が不良である場合,複視の訴えがはっきりしないことも多い.このような場合,開放型骨折の眼窩骨折であればしばらく経過観察することも可能であるため,まずは視力不良となっている状態の改善を優先するべきである.視力が改善した時点で複視,眼球運動障害,眼球運動時痛の有無を再評価して手術の必要性を検討することが望ましい.多発交通外傷などでは救命にかかわる疾患が優先され,眼科疾患は後回しにされがちであるが,眼窩骨折は放置したまま治癒すると複視が残存することも多く,その後の患者の人生におけるCQOV(qualityofvision)に大きな影響を及ぼす疾患でもあることから,適切なタイミングで眼科医が診断・治療に参加することが望ましいと考える.CIV眼窩骨折の症状開放型骨折と閉鎖型骨折では症状が若干異なる.開放型骨折は前述したように,骨折部位が開放しているために眼窩内組織の偏位はあっても絞扼はないため,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状がそれほど表れないこともある.しかしながら大きな開放型骨折ではしばしば眼窩内組織が大きく偏位しているため,眼球運動障害を引き起こし患者が複視を訴えることも多い.また,開放型骨折による副鼻腔への眼窩内組織の偏位は,眼窩内容積の減少による眼球陥凹を引き起こす.脱出した眼窩内組織と副鼻腔粘膜の癒着は受傷後C1週間程度から起こり,徐々に進行してくるので,複視の自覚症状があり,眼窩内組織,とくに外眼筋の偏位があれば手術加療を考慮する必要がある.閉鎖型骨折,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折では受傷直後より強い眼球運動障害をきたし,迷走神経反射により(49)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021C49悪心・嘔吐,頭痛などの症状が出現する.診察室にぐったりとした状態で搬送されてくることも多く,一見して重篤な状態とわかることもしばしばある.眼窩内組織が挟まったタイプの閉鎖型骨折は筋絞扼型の閉鎖型骨折ほど自覚症状が強くないが,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状が出現することが多い.また,開放型および閉鎖型いずれの骨折でも,下壁骨折であれば三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感を訴えることも多い.CV眼窩骨折の手術適応筋絞扼型の閉鎖型骨折は,絶対的な手術適応となる.開放型骨折と筋絞扼型以外の閉鎖型骨折は複視の自覚があるか,眼球運動時痛がある,いずれかの症状があれば患者と相談のうえ積極的な手術加療が望ましいと考える.ただし眼球運動時痛は受傷直後の眼球打撲に起因することもあるため,きちんとCHessチャートおよび両眼単一視野で眼球運動障害の有無を把握するべきである.実臨床では,Hessチャートで眼球運動障害があっても自覚的な複視がない眼窩骨折患者にしばしば遭遇する.この場合は手術適応となるかを患者としっかり相談することが重要である.広範囲に及ぶ開放型骨折であれば,受傷後長期の経過において眼球陥凹が顕在化することもあるので患者にしっかりそのことを説明しておく必要がある.また,前述したとおり,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで骨折側の視力が不良な場合には,健常眼と患眼の視力差が大きくなり複視の訴えが出にくいことも留意しておく.眼窩骨折の手術目的は,「骨折を治すこと」ではなく「正常な眼球運動を取り戻すこと」である.そのために手術加療によって,「骨折により眼窩外に脱出・骨折部位に嵌頓した眼窩内組織を眼窩内に元通り整復することで,正常な眼球運動を阻害している要因を取り除くこと」が重要である.また,手術はあくまで,「正常な眼球運動を取り戻すための下地作り」であり,術後に眼球運動のリハビリテーションを継続して行うことでC3カ月~半年程度かけて徐々に眼球運動障害が改善してくることを,きちんと患者に理解しておいてもらうことが大切である.手術によって眼窩内組織に侵襲が加わり炎症・腫脹が生じることから,術直後に一時的に眼球運動障害が増悪する可能性についても術前に説明しておく必要がある.また,下壁骨折では三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感をしばしば訴える.この違和感は手術加療によりすぐに軽快するわけではなく,軽快には半年~1年程度の時間を必要とすることが多い.そして少数ではあるが術後も長期にわたり違和感が残存することもある.CVI眼窩骨折の手術時期筋絞扼型の閉鎖型骨折については可及的速やかな手術が望ましい.これは外眼筋が絞扼されると,循環障害から筋肉が壊死し不可逆的な眼球運動障害が残ることが多いからである.筋絞扼型以外の閉鎖型骨折,開放型骨折の手術時期についてはまだ統一した見解がない3,4).近年,受傷後時間が経過してから眼窩骨折整復術を施行した症例の良好な成績が報告されているが5,6),基本的には受傷後C2週間以内の手術が推奨されている3,7).しかしながらこれらの報告は,開放型骨折や閉鎖型骨折について区別することなく論じられており,やや客観性に乏しい.筆者らは眼球運動を評価する客観的な指標としてCpercentageCofCHessCarearatio(HAR%)を用いて手術時期の検討を行った(図4).HAR%はCHessチャートから算出される数値であり8),健常者であればC100%である.これまでの報告ではCHAR%がC80%以上あれば日常生活の範囲で基本的に支障がないとされている9).筆者らの検討では,筋絞扼型以外の閉鎖型骨折については,受傷後C8日以内,開放型骨折であればおおむね受傷後C1カ月以内に手術加療を行うことが望ましいと考えられた10).したがって,受傷後の初診時に眼瞼腫脹などがひどく眼球運動を正確に評価することが困難である症例であれば,この期間内に再診を行い,再度眼球運動の評価を行って手術適応を決定すればよいと考える.しかし,受傷から時間が経過するほど眼窩内組織の癒着が進行するため,開放型骨折であってもなるべく早く手術加療を行うのが望ましいと考える.50あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(50)左眼右眼HAR%=A.ectedside(vertical×horizontal)mm2×100(%)HAR%=58×60/62×62×100(%)=90.5図4Hessチャートを用いたHAR%の算出図5スーパーフィクソーブMX図6図1と同一症例の術後右眼窩下壁開放型骨折(術後)耳側耳側Healthyside(vertical×horizontal)mm2

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択

2021年1月31日 日曜日

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択BiopsyorCompleteRemoval?─SelectionofSurgicalProcedureforOrbitalTumorbyDiagnosticImaging辻英貴*はじめに眼窩には,良性・悪性のさまざまな種類の腫瘍が生じ,表面からは見えない部位であるため,MRI(mag-neticCresonanceimaging)やCCT(computedCtomogra-phy)などの画像診断は必須である.腫瘍は全摘出がもっとも望ましいのは当然であるが,画像上,びまん性でリンパ増殖性疾患などが疑われる場合には,可能な範囲で十分量を切除して病理診断にて確定する.本稿では,眼窩腫瘍の画像診断に応じた術式選択について述べる.CI眼窩腫瘍の画像診断まず,画像が周囲組織と境界をもった一塊のものか,境界不鮮明なびまん性のものかを鑑別する.アレルギーや腎機能障害などがなければ,腫瘍の性状を詳しく観察可能な造影剤を併用する.腫瘍の部位,大きさ,広がり,性状,造影の様子などが重要であるが,MRIはこれらの情報に富み,有用である.周囲組織と境界をもった一塊のものであれば,腫瘍全体が染まる実質性の腫瘍か,周囲が染まる.胞かを判断する.実質性で良性のものとしては,海綿状血管腫(血管奇形)や,神経鞘腫,涙腺では多形腺腫などがある.悪性では腺様.胞癌,腺癌,肉腫などが考えられる.また,副鼻腔手術後の.胞が眼窩内に侵入したものもみられる.視神経に生じるものでは,中高年の女性に多い視神経鞘髄膜腫や,小児に多い視神経膠腫などがある.周囲との境界不鮮明なびまん性の腫瘍の場合には,MALTリンパ腫(extranodalCmarginalCzoneClymphomaCofCmucosa-associatedClym-phoidtissue)(図1)を筆頭とするリンパ増殖性疾患や,転移などが鑑別となる.リンパ腫ではCMRIの拡散強調画像(di.usionweightedimaging:DWI)が有用で,見図1MALTリンパ腫筋円錐の内外にまたがり,眼球後部を覆うように増殖したCMALTリンパ腫.a:T1強調で低信号,b:T2強調で中間信号,c:ガドリニウム造影で均質に濃染.*HidekiTsuji:がん研有明病院眼科〔別刷請求先〕辻英貴:〒135-8550東京都江東区有明C3-8-31がん研有明病院眼科C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(43)C43図2両眼窩に生じたマントル細胞リンパ腫眼窩内の隙間を埋める(molding)ようにびまん性に増殖している.図3IONE(infraorbitalnerveenlargement)IgG4関連眼疾患に特徴的な所見であるCIONE().左上眼窩の腫瘍部からの生検にて病理診断された.図4海綿状血管腫a:MRIT1強調で低信号,Cb:MRIT2強調でやや高信号,Cc:ガドリニウム造影にて特徴的な網目状の遅延性造影所見がみられる.図5類皮.胞(デルモイドシスト).胞は眼窩上方に存在し,粥状の内容物を含み,ニボー形成がみられる.内容物を周囲に散らさないように吸引しながら.胞を全摘した.海綿状血管腫図6眼窩骨を一時的にはずして腫瘍を摘出手術は視野がもっとも大切である.眼窩骨を一時的にはずして術野を確保する.図7視神経膠腫視神経自体の充実性の腫瘍で,視神経管の拡大・破壊がみられる.紡錘形で中央部に特徴的なCkinking(屈曲)がみられる.

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術

2021年1月31日 日曜日

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術EyelidTumorSurgerywithConsiderationoftheOcularSurface中山知倫*はじめに眼瞼腫瘍のうち眼瞼原発良性腫瘍で頻度の高いものとして,母斑(nevus,図1),脂漏性角化症(seborrheickeratosis,図2),乳頭腫(papilloma),類表皮.胞(epi-dermoidcyst)があり,眼瞼原発悪性腫瘍で頻度の高いものとして,基底細胞癌(basalcellcarcinoma,図3),脂腺癌(sebaceouscarcinoma,図4),扁平上皮癌(squamouscellcarcinoma)といった上皮性の悪性腫瘍がある1).わが国では基底細胞癌の頻度が欧米に比べて低く,脂腺癌は逆に高くなっており,脂腺癌と基底細胞癌が日本の2大眼瞼原発悪性腫瘍となっている2).どちらも高齢者に多い疾患であることから,今後の症例数の増加が予想される.I眼瞼の解剖と機能眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となる.眼瞼腫瘍の切除および再建術について述べる前に,まず眼瞼の解剖と機能について理解しておく必要がある.1.眼瞼の解剖(図5,6)眼瞼は上下ともに前葉と後葉に分けて理解することが重要である.前葉とは眼瞼の「前」の組織のことで,皮膚と眼輪筋をさす.後葉とは眼瞼の「後」の組織のことで瞼板と眼瞼結膜をさす.眼表面には,粘膜を含む後葉が適切に接触している必要があり,粘膜のない前葉のみでは代替ができない.また,前葉は体表面であることから,皮膚である必要があり,やはり後葉のみでは代替ができない.また,前葉と後葉とのバランスが悪く,相対的なずれが生じれば眼瞼の内反や外反の原因となりうる.前葉と後葉の位置を支持する組織は,垂直方向は上眼瞼の上眼瞼挙筋と皮膚穿通枝,下眼瞼ではlowereyelidretractors(LER)と皮膚穿通枝である.水平方向は,上下の眼瞼瞼板に適切なテンションを与えている内眥靱帯,外眥靱帯である.基本的にはこのように考えてよいが,厳密にはそれぞれの支持組織が相互に影響している.2.眼瞼の機能眼瞼の役割としては,静的な役割と動的な役割がある.静的な役割としては,眼瞼の適切な形状による眼表面の保護機能と涙液導涙経路としての機能がある.動的な役割としては,瞬目による涙液ポンプ機能と眼表面への涙液供給機能がある.静的な役割,すなわち眼瞼の適切な形状が失われる状態とは,眼瞼内反や外反のなどの場合であり,前葉と後葉の位置関係のずれによって生じる.この場合,眼表面に刺激を生じて影響を与える.また,導涙経路としての適切な眼瞼形状も保たれなくなるため,涙液の眼表面への適切な供給が失われ,ドライアイなどで眼表面へ影響を与える可能性が生じる.動的な役割,すなわち適切な瞬目が失われるとは,や*TomomichiNakayama:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕中山知倫:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(33)33図1母斑図2脂漏性角化症図3基底細胞癌図4脂腺癌結膜瞼板下瞼板動脈弓皮膚穿通枝LER前層(CPF)線維脂肪組織眼輪筋眼窩隔膜図6下眼瞼の解剖図5上眼瞼の解剖CPF:capsulopalpebralfascia,CPH:capsulopalpebralfascia,LER:lowereyelidretractors,SM:smoothmuscle(平滑筋).眼瞼の機能表1切除範囲に応じた再建法切除範囲静的役割動的役割眼表面の保護機能涙液導涙経路涙液ポンプ機能涙液供給機能破綻眼表面への刺激,違和感(内反症,外反症,ドライアイ,兔眼など)図7眼瞼の機能と障害上眼瞼1/3未満下眼瞼1/2未満上眼瞼1/3以上下眼瞼1/2以上前葉後葉全層単純縫縮(直接縫合)外眥切開Z形成Tenzel.ap1.局所皮弁2.眼輪筋皮弁3.植皮4.動脈皮弁(lateralorbital.ap)5.遊離組織移植1.硬口蓋粘膜2.鼻中隔軟骨+粘膜3.耳介軟骨+粘膜4.Hughes.ap1.眼瞼全層弁(switch.ap,cutler-beard)2.眼瞼全層遊離複合移植LERを前転することになり,lidretractionの状態となって眼表面へ影響を与えることがあり,注意を要する.表1に筆者の施設(以下,当科)での再建手術の方針をまとめて示す.2.眼瞼良性腫瘍眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となり,良性腫瘍でも同様である.所見上で明らかに良性腫瘍であるなら,必ずしも切除しなければならないことはないが,腫瘍そのものが眼表面に接触したり,導涙機能を障害したりして物理的に眼表面に影響を与えることもある.一般的に良性腫瘍であれば,切除においてマージンは必要ないため,切除範囲は大きくならないことが多い.さらに前葉から発生することがほとんどであるから,切除の影響が眼表面に影響することは少ない.したがって,患者に切除希望があるなら,手術は容易でかつ眼表面への合併症も少ないため,積極的に行って問題はないと考える.手術方法は,腫瘍径が小さい場合には腫瘍を切除し,そのままにして肉芽形成と皮膚の再生を待つopentreatmentで問題ない.切除範囲が大きくなる場合は,前葉を単純縫縮すると適切な眼瞼形状が保てなくなる可能性があるため,皮弁を用いての再建を考慮する必要があるが,良性腫瘍は進行が緩徐であるため,そこまで大きくなることは少なく,実際には頻度は多くない.前葉再建については後述する.3.眼瞼悪性腫瘍眼瞼悪性腫瘍の場合,外科的切除が第一選択となる.基本的には切除にあたりマージンが必要である.そのために腫瘍よりも切除範囲が大きくなる.脂腺癌は瞼板より発生することがほとんどであり,すなわち後葉発生となるため,当然切除においては後葉も含む必要があるし,前葉発生の悪性腫瘍であっても,マージンの必要性から切除範囲に後葉も含むことが多い.III眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術これより,それぞれの眼瞼腫瘍再建術について,表1に基づいて眼表面への影響の可能性と予防のために必要な配慮も含めて述べる.1.単純縫縮(欠損部が上眼瞼1.3未満,下眼瞼1.2未満)文字通り,切除したあとに眼瞼の耳側断端と鼻側断端を単純に縫合する方法である.前葉,後葉ともに全層で再建することになる.この場合,眼瞼の横方向の張力が増すことになり,眼表面との摩擦は増大し,瞬目も影響を受ける.あまりにきついと判断される場合には,外眥切開にて水平方向の張力を軽減するか,Tenzel.apにて外眥を移動させてしまうことで対応できる.理論的にはZ形成にて残存眼瞼組織の延長も可能であるが,残存瞼板の形状を変えることになるため,積極的に行うことはあまりない.また,水平方向の張力を軽減し過ぎれば,かえって外反内反の原因ともなり得るため,適切に調整する必要がある.単純縫縮は,基本的には元来の後葉がそのまま再建後にも後葉となるため,眼瞼の水平方向の張力を適切にコントロールできれば,眼表面への影響はほとんどない.Tenzel.apの際には耳側において,.apの皮下組織がそのまま眼球表面に接触することのないように,.apの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合する.実際のTenzel.apを用いた眼瞼腫瘍切除再建術を示す(図8).2.前葉再建前葉再建の材料としては,血流のない遊離皮弁(graft)を用いるか,血流のある有茎皮弁(.ap)を用いるかに大別される.眼瞼の場合には,太い動脈もなく,皮弁のサイズも大きくないことがほとんどであるため,血管吻合をして血流を再建するような遊離皮弁(free.ap)を用いることはまずない.血流のない遊離皮弁を用いる場合で,眼科医にとっても容易なものとして,対側の上眼瞼余剰皮膚がある.また,血流のある皮弁を用いるのであれば,単純に周囲の皮膚をadvanced.apとして用いるのがもっとも容易であるし,そのほかには下眼瞼前葉再建時に同側の上眼瞼余剰皮膚を,耳側部分を茎としてrotation.apとする方法がある.血流のない組織を使用した場合,血流のある組織を用いた場合に比べて,術後の萎縮の程度が大きくなるが,36あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(36)図8下眼瞼腫瘍(扁平上皮癌)切除術とTenzel.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:Tenzel.apのデザイン作成.Cc:下眼瞼腫瘍切除後(下眼瞼全層で眼瞼幅C1/2程度の欠損).d:Tenzel.apの作製.Ce:本来の外眥部の切断.Cf:眼瞼断端の縫合.Cg:外眥部の再作製.Ch:Flapの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合.Ci:新たな外眼角の形成.j:眼瞼耳側創部の縫合.k:手術終了時.l:手術後C6カ月.眼表面への影響はとくに認めていない.図9基底細胞癌切除術局所皮弁による再建.図10下眼瞼腫瘍(脂腺癌)切除術とHughesl.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:下眼瞼腫瘍摘出後(下眼瞼ほぼ全幅欠損).c:Hughes.apのデザイン.d:HughesC.apの作製.Ce:HughesC.apの展開.Cf:Hughes.apと残存後葉(瞼板と結膜)の縫合.Cg:前葉再建材料として,advanced.apの作製(瞼板皮膚穿通枝と眼窩隔膜の切離).h:前葉皮弁の縫合.Ci:手術終了時.Cj:手術後C1.5カ月(吸収糸で縫合し,抜糸をしていないため縫合糸が残る).眼表面への影響はとくに認めていない.ab図11上眼瞼脂腺癌に対するmodi.edHughes.ap後に生じた角膜障c害に対し上眼瞼挙筋後転術にて改善した症例a:術前.上眼瞼脂腺癌.Cb:上眼瞼腫瘍切除とCmodi.edHughesC.apによる眼瞼再建後とC.ap切り離し直後ではややClidretractionを認めた.Cc:Flap切り離しC1Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎を認める.Cd:Flap切り離しC3Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎に改善なし.Ce:挙筋後転術後.CLidretractionと点状表層角膜炎の改善Cdを認めた.Ceて加療した症例を示す(図9).C3.後葉再建先述の通り,眼瞼後葉は瞼板と眼瞼結膜である.したがって,その再建には瞼板の代替となるようなある程度固く支持力のある組織と粘膜が必要となる.そのために表1に示すような再建材料が用いられる.CHughes.apと遊離瞼板は元来の瞼板と眼瞼結膜を再建材料としているが,そのほかの粘膜はやはり本来の結膜とは異なるため,Hughes.apと遊離瞼板が再建材料としては眼表面への影響がもっとも少ない.また,これらのうちでCHughes.ap以外は血流がない再建材料であるため,再建後に大きく萎縮をして内反の原因となることがあり,それを考慮して再建時にはあえて後葉のほうが前葉よりも瞼縁側へ延長した状態にしておくなどの工夫を行う必要がある.当科では,眼表面への影響が軽微なこと,また再建材料の生着が良好なことからHughes.apを用いたHughes法を行うことが多い.Hughes.apとは上眼瞼の瞼結膜と瞼板を下眼瞼後葉再建のために有茎弁として用いるもので,後日切り離すことにより,より本来の状態に近い形での眼瞼再建が可能となる.原法は上眼瞼から下眼瞼への移植だが,当科では下眼瞼から上眼瞼への移植を行うCHughes変法も行っており,今のところ術後経過は良好である.下眼瞼腫瘍に対して,腫瘍切除後にHughes.apにて再建した症例を示す(図10).下眼瞼からの比較的サイズの小さい後葉で再建を行うHughes変法では,残存組織を瞼縁まで引き出して再建することになるため,再建後には挙筋腱膜の前転に類似した状態となりがちである.すなわち術後にClidretrac-tionを生じる可能性があり,残存組織が上眼瞼挙筋を牽引しないよう,穿通糸や眼窩隔膜を切り離しておくことが予防のために重要である.当科でCHughes変法施行後にClidretractionを生じて,点状表層角膜炎を生じたために,眼瞼挙筋後転術を施行し,lidretractionが改善し点状表層角膜炎が軽快した症例を示す(図11).CHughes.apも遊離瞼板移植も,正常瞼板から移植片を採取するため,サイズに制限があり,眼瞼欠損が大きい場合などは,自由に再建組織のサイズを決定できる硬口蓋粘膜移植などが必要となる.C4.全層再建全層再建の場合,前葉と後葉は分離されていないため,そのバランスが崩れて内反や外反になるリスクは少ない.全層再建においてはCswitch.apなどのような血流のある眼瞼有茎全層弁や眼瞼全層遊離複合移植を用いるため,生着や移植片の萎縮などによる変形の点で有利である.眼表面への影響の点で有利な術式ではあるが,移植片を提供して全層欠損した組織の形成も必要となる.当科では眼瞼脂腺癌の再建術において,.apによる後葉再建(HughesC.ap)もしくは眼瞼全層弁(Tenzel.ap,switch.ap)のほうが遊離瞼板移植や硬口蓋粘膜移植といった遊離後葉移植より術後合併症が少なかったことを報告している3).おわりに眼瞼腫瘍の治療においては,腫瘍を切除して終了ではなく,眼瞼という静的な機能と動的な機能をもつ組織を再建する必要がある.そのために,まずは眼瞼の解剖と機能を理解することが基本となる.腫瘍の摘出において,眼瞼がどの程度失われるかは個々の患者によってまったく異なる.毎回異なる眼瞼欠損状態から適切に眼瞼の機能を回復するためには,できるだけ多くの再建方法を学んでおき,状態に応じて可能な限り最適な再建方法の組み合わせを考え出し,それを実行できる技術をもつことが大切である.文献1)SinghCU,CKolavaliRR:OverviewCofCeyelidCtumors.In:CSurgicalophthalmiconcologyChauguleS,HonavarS,Fin-gerP(eds)C,p3-10,Springer,Cham,20192)中山智佳,渡辺彰英,上田幸典ほか:眼瞼脂腺癌C34例の臨床像と組織学的検討.あたらしい眼科C30:1739-1743,C20133)福井歩美,渡辺彰英,外園千恵ほか:眼瞼脂腺癌の臨床像と再建術後合併症の検討.日眼会誌124:410-416,C202040あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(40)