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基礎研究コラム 42.リソソームの機能とオートファジー

2020年11月30日 月曜日

リソソームの機能とオートファジーオートファジーとはオートファジー(autophagy)は,ギリシャ語のCauto(自己)とCphagy(食べる)を合わせた「細胞の自食」を表す言葉です.細胞自身の成分を内包するオートファゴソームとよばれる二重膜構造がリソソームと融合し,加水分解酵素で消化される過程をいいます.不要になった蛋白だけでなく,細胞内小器官も消化できる大規模な分解システムで,細胞のリサイクルに欠かせない生命現象といえます.オートファジーは,大隅良典先生がC2016年にノーベル賞を受賞したことでも注目を集めました.大隅先生は酵母を用いた解析により,オートファジーに必須なCATG遺伝子を発見し,隔離膜が伸長し,細胞質やオルガネラの一部を包み込んでオートファゴソームを形成されるメカニズムを明らかにしました.その後,哺乳類の細胞でも同様の分解機構があることがわかり,現在では,細菌感染防御,抗原提示,細胞死,老化,腫瘍など幅広い生命現象に深くかかわっていると考えられています.たとえば,Alzheimer病にも関与するタウなどの凝集蛋白や損傷を受けたミトコンドリア,あるいは細胞内に侵入した細菌などの病原体もCp62/sqstm1といったアダプター蛋白を介して選択的にオートファゴソーム内に取り込まれ,分解されます.ファゴサイトーシスとオートファジーの関係細胞内の分解・リサイクル機構であるオートファジーと,細胞外の異物や病原体を貪食して分解するファゴサイトーシスとの密接な関係もわかってきました.ファゴサイトーシスの過程でオートファジー蛋白のCLC3が貪食胞に誘導され,分解に関与していることが報告されました1).LC3もCATGファミリーの一つで,オートファゴソームに特異的に発現し,リソソームとの融合が起こるとCLC3自身も分解されるため,オートファジーのマーカーとして使われます.このLC3がファゴサイトーシスに関与する現象はCLC3-associat-edphagocytosis(LAP)と名づけられました1).さらに眼科医にとっても興味深いことに,網膜色素上皮細胞(retinalCpigmentepithelium:RPE)における視細胞外節の貪食分解にも,このCLAPが重要であることが明らかになりました2).網膜におけるオートファジーの役割RPEにおける外節のリソソーム分解は網膜の恒常性維持に欠かせないものであり,網膜におけるオートファジーの役割は重要な研究分野です.そこで筆者らは,加齢黄斑変性納富昭司九州大学大学院医学研究院眼科学分野野生型LAMP2欠損マウス図112カ月齢の野生型マウスとLAMP2欠損マウスの電子顕微鏡写真野生型マウスではCRPEの正常な基底陥入構造がみられるが,LAMP2欠損マウスではCRPE基底膜側にbasalClaminardepositとよばれる沈着物がみられる(.).また,リポフスチン様の細胞内顆粒も認める(*).リソソーム機能の障害により,初期CAMDに類似した変化が生じていることが示されている.(文献C3より改変)(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)のリソソームの役割に着目して,ヒト眼組織標本を用いた免疫染色の解析を行いました.その結果,AMDのCRPEでは健常眼に比べてリソソーム膜蛋白CLAMP2の発現が減少していることがわかりました3).さらにこのCLAMP2を欠損したマウスの表現型を調べたところ,ドルーゼンに類似した細胞外老廃物がRPE下に蓄積していることがわかりました(図1).この沈着物は電子顕微鏡的にはCbasallaminardepositとよばれるもので,リポ蛋白やコレステロールの沈着も伴っていました.これらの結果より,リソソーム機能の異常が網膜の老化とCAMDの病態に関与している可能性が示されました.今後はリソソーム機能の調節が,AMDの前駆病変に対する新しい治療標的となる可能性があると考えられます.文献1)MartinezJ,AlmendingerJ,OberstAetal:Microtubule-associatedprotein1lightchain3alpha(LC3)-associatedphagocytosisisrequiredforthee.cientclearanceofdeadcells.ProcNatlAcadSciUSAC108:17396-17401,C20112)KimJY,ZhaoH,MartinezJetal:Noncanonicalautopha-gypromotesthevisualcycle.CellC154:365-376,C20133)NotomiCS,CIshiharaCK,CEfstathiouCNECetal:GeneticCLAMP2Cde.ciencyCacceleratesCtheCage-associatedCforma-tionCofCbasalClaminarCdepositsCinCtheCretina.CProcCNatlCAcadSciUSAC116:23724-23734,C2019(99)あたらしい眼科Vol.37,No.11,202014310910-1810/20/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 210.鉛筆の芯による穿孔性眼外傷(中級編)

2020年11月30日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載210210鉛筆の芯による穿孔性眼外傷(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに鉛筆の芯に起因する眼外傷は,受傷部位の多くが角膜,眼瞼,眼窩であるが,まれに穿孔性眼外傷により鉛筆の先端が眼内に刺入することがある1,2).筆者らは,鉛筆が角膜,水晶体を穿通して硝子体腔内に刺入し,芯が眼内異物となると同時に眼内炎を発症し,硝子体手術を施行したC1例を経験し報告したことがある3).C●症例提示8歳,男児.友達と遊んでいるときに,誤って先端の鋭利な黒鉛筆が右眼の角膜から眼内に刺入した.角膜裂傷と外傷性白内障をきたし,同日他院で角膜縫合術,水晶体摘出術,前部硝子体切除術が施行されたが,硝子体腔内の鉛筆の芯は摘出できないまま手術を終了した.そのC2日後に眼内炎を生じたため,硝子体手術目的で当科紹介となった.受診時,角膜裂傷部位はC10-0ナイロン糸で縫合されていたが,前房内に著明なフィブリン析出を認め,眼底は透見不能であった.超音波CBモードおよびCCT(図1)で眼内異物が描出された.硝子体手術にて前房内のフィブリン膜を除去し,混濁した硝子体を切除した.鉛筆の芯はC2個の断片となって網膜上にあり(図2),礫化はほとんど認めなかった(図3).網膜は一部壊死に陥り,壊死性裂孔から網膜.離が生じていた.硝子体を周辺部まで切除したあと,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固,ガスタンポナーデを施行した.術後網膜は復位したが,矯正視力は眼前指数弁に留まった(図4).術中に採取した硝子体の菌培養は陰性であったが,蛍光CX線分析でアルミニウム元素がC1ppm検出された.C●鉛筆の芯の毒性本例では硝子体液の培養で菌は検出できなかったが,臨床所見から細菌性眼内炎を併発していた可能性が高いと考えられ,術後の視機能不良は眼内炎による網膜傷害が主因と思われる.黒鉛筆の芯は黒鉛,粘土,油脂などからなり,生体内では比較的安定とされているが,本例では硝子体腔内に粘土の成分であるアルミニウム元素が(97)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1初診時の右眼CT眼内異物が描出された.(文献C3より引用)図2術中写真(1)鉛筆の芯はC2個の断片となって網膜上に認められた.(文献C3より引用)図3術中写真(2)強膜創から鉛筆の芯を摘出した.(文献C3より引用)図4術後眼底写真術後網膜は復位したが,矯正視力は眼前指数弁に留まった.(文献C3より引用)検出されたことより,これによる網膜毒性の可能性も否定できない.本例は黒鉛筆であったが,色鉛筆の芯はタルク,顔料,.,糊などからなり,とくに顔料の毒性により組織傷害を生じることが知られている.いずれにしても鉛筆の芯が眼内に刺入した場合には,早期に硝子体手術を施行し摘出すべきと考えられる.文献1)西村雅史,保科幸次,山中昭文ほか:鉛筆の芯による眼内異物のC1例.日眼紀51:1039-1042,C20002)吉田紀子,片井直達,吉村長久:色鉛筆の芯による前房内異物のC1例.日眼紀50:233-235,C19993)HamanakaCN,CIkedaCT,CInokuchiCNCetal:ACcaseCofCanCintraocularCforeignCbodyCdueCtoCgraphiteCpencilCleadCcom-plicatedbyendophthalmitis.OphthalmicSurgLasers30:C229-231,C1999あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C1429

抗VEGF治療:開業医の加齢黄斑変性治療

2020年11月30日 月曜日

●連載101監修=安川力髙橋寛二81.開業医の加齢黄斑変性治療佐藤拓医療法人明陽会高崎佐藤眼科以前,加齢黄斑変性治療は開業医に敬遠されがちであったが,患者数増加と検査や治療法の進歩に伴い,徐々に広まりをみせている.もっとも大切なポイントは患者との信頼関係の構築である.医学データをアップデートして患者や家族に伝え,検査データを一緒に見ながら,再治療の必要性を示し納得してもらうことが大切である.はじめに開業医にとって滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegenetation:AMD)治療は従来ハードルが高かった.とくに確定診断に必須の検査であったフルオレセイン蛍光造影検査やインドシアニングリーン蛍光造影検査にはアナフィラキシーショックのリスクがあり,開業医が実施して確定診断を得ることが困難であった.しかし,滲出型CAMDで脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の有無までは光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)と光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を用いることで確定できるようになった(図1).蛍光造影でしか見ることができない漏出などの活動性の評価は,OCT画像を比較することで判断可能となった.確定診断後の標準治療となる抗CVEGF薬による硝子体内注射は,現在C3種類の薬剤(ルセンティス,アイリーア,ベオビュ)の使い分けと光線力学的療法(phoC-todynamicCtherapy:PDT)を併用するという選択肢がある.治療選択を考えるうえで重要な最新の論文ALTAIR試験1):滲出型CAMDに対してC2週またはC4週間隔で調節する(最短C8週,最長C16週)アイリーアのCtreatCandextendレジメンによって,患者の治療負担軽減をめざした試験である.最大投与間隔のC16週の安全性と効果が示されたこと,維持期投与間隔C16週に約C4割で延長することが可能であったこと,有意差がないもののC2週間隔調節のほうが視力低下の割合が少ないことが示されている.CHAWKCandHARRIER試験2):滲出型CAMD治療における,ベオビュのアイリーアに対する非劣勢を検証した試験である.維持期の投与がベオビュC12週間隔(最短C8週)でアイリーアC8週間隔と同等の効果が示され,とくにC.uid減少に対して効果が示された.しかし,ベオビュに特有の眼内炎症(血管炎,血管閉塞)による視図1脈絡膜新生血管(CNV)症例のOCTangiography画像網膜外層と脈絡毛細管血管板のスラブでCCNVを確認して,Bスキャン画像でCCNVが疑われる部位の血流を確認する.(95)あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14270910-1810/20/\100/頁/JCOPY図2黄斑下血腫(硝子体内ガス注入併用ルセンティスtreatandextend症例)治療前視力(0.02)で硝子体内ガス注入とルセンティスによるCtreatandextendを施行して,2年後には視力(1.2)に改善して,投与間隔C16週間になっている.力低下症例の報告もあり,注意を要する.EVEREST2試験3):ポリープ状脈絡膜血管症(polyp-oidalCchoroidalvasculopathy:PCV)に対して,ルセンティス単独とCPDT併用治療の比較試験の結果で,PDT併用療法が治療回数が少ないことやポリープの閉塞率が高いことが示された.再治療のタイミング欧米のガイドライン4)ではCOCTを用いたC.uidの有無に基づいた治療判断を推奨している.網膜下液(SRF)や網膜内液(IRF),網膜色素上皮下液(網膜色素上皮.離)(PED)である.患者に前回のCOCTと当日のCOCTを並べて見せることにより,滲出性変化の改善や増悪が一目瞭然となり,再投与基準を満たすか説明し,納得を得られやすい.また,視力の改善が得られない場合でも,.uid減少のCOCT画像を供覧することにより治療効果の実感を得られやすい.専門施設への紹介のタイミング専門施設への紹介は,抗CVEGF薬による硝子体内注射でコントロール不良時(治療間隔C4週間など頻回)や,PCVで薬剤費負担など治療回数を減らすためにCPDT併用を検討するとき,黄斑下血腫により高度の視力障害が予想されるとき(図2)などである.患者・家族との信頼の構築が困難なときにも,専門施設への紹介を検討する.C1428あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020おわりに開業医で硝子体内注射が敬遠されることが多い理由は,大きな視力障害が生じる疾患であり,治療に伴う感染症などの大きなリスクがあることに加えて,高額な薬剤費と安価な手技料もあると思われる.AMD治療には,患者の視力を守るためにリスクをとる医師としての気概が必要である.最後に開業医として,これから出会う患者のために,より安価で安全性の高い薬剤の開発を切に願う.文献1)OhjiCM,CTakahashiCK,COkadaCAACetal:ALTAIRCInvesti-gators.E.cacyandsafetyofintravitreala.ibercepttreat-and-extendCregimensCinCexudativeCage-relatedCmaculardegeneration:52-and96-week.ndingsfromALTAIR:CACrandomizedCcontrolledCtrial.CAdvCTherC37:1173-1187,C20202)DugelCPU,CSinghCRP,CKohCACetal:HAWKCandCHARRI-ER:96-weekoutcomesfromthephase3trialsofbroluci-zumabCforCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.COphthalmologyC20:S0161-6420,C20203)LimCTH,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal;EVERESTCIIStudyGroup:Comparisonofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:TheCEVERESTCIICRandomizedCClinicalCTrial.CJAMACOphthalmol,doi:e202443.COnlineCaheadCofCprint4)Schmidt-ErfurthCU,CChongCV,CLoewensteinCACetal:CGuidelinesforthemanagementofneovascularage-relatedmacularCdegenerationCbyCtheCEuropeanCSocietyCofCRetinaSpecialists(EURETINA)C.CBrCJCOphthalmolC98:1144-1167,C2014(96)

緑内障:緑内障手術MIGSの動向

2020年11月30日 月曜日

●連載245監修=山本哲也福地健郎245.緑内障手術MIGSの動向庄司信行北里大学医学部眼科学教室海外で提唱されているCMIGSという用語は,低侵襲(minimallyinvasive)という意味だけでなく,極小切開(micro-incisional)緑内障手術という意味で用いられることもあり,必ずしもCMIGS=安全,とはならない可能性もある.各術式の効果と合併症を理解して適応を正しく判断すべきである.今後は各種CMIGSの比較試験も必要となるだろう.●線維柱帯を切開するMIGSわが国で最初に認められたCMIGSはCtrabectomeで,2010年のことである.1.7Cmmの角膜小切開創から器具を挿入し,隅角鏡で確認しながら線維柱帯を凝固・切開する術式である(図1).結膜切開や強膜弁の作製は必要ない.灌流と吸引を備えているため術中の視認性がよい.術後はC16CmmHg程度に眼圧は下降し,点眼はC1剤程度減らせる1).ただし,専用の機器が必要で,他の術式に比べて導入コストは高い.ハンドピースもディスポーザブルである.また,製造元のCNeoMedix社が2019年に権利を他社に委譲したため,ハンドピースの供給は継続されているものの,機器本体の新規購入に関してはやや不透明である.眼内から線維柱帯を切開する器具として,KahookCdualblade(KDB)や谷戸氏Cabinternoトラベクロトミーマイクロフック(マイクロフック)もよく用いられている.KDBはフットプレートの両脇がC2枚の刃になっていて,線維柱帯を帯状に切除できるように設計されたディスポーザブル製品である.マイクロフックはシンスキー・フックの先端を斜めに切り落としたような形状で,KDBよりも先端は小さい(図2).直だけでなく曲がり(右と左)のC3種類があり,リユースなのでコストパフォーマンスは非常に高い.フックを使い分けると180°以上の切開が可能である.白内障手術との同時施行でC16.4CmmHgからC11.8CmmHgに下降したと報告されている2).これら三つの術式の比較は未だないが,trabectomeとCKDBを含めたレビュー3)では,眼圧下降率は前者が24.0%,後者がC25.1%と報告されている.わが国ではtrabectomeとマイクロフックの比較試験が現在進行中である.(93)●線維柱帯に器具を留置するMIGSわが国ではC2016年にCiStentCtrabecularCmicrobypassCstentsystemが導入された(図3).全長はC1Cmmで,生体に留置するステントとしては現時点で最小のチタン製デバイスである.L字型をしており,長径部分をCSch-lemm管内に留置し,短径部分の開口部を前房内に露出することで,房水をCSchlmm管内に導く.白内障手術時にC1個のCiStentのみ留置するという制限がある.2019年C10月に第二世代のCiStentとして,形状の異なるCiStentinjectが認可された.全長C0.3Cmmの弾丸様の形状で,インサーターには最初からC2個セットされており,場所を変えてCSchlemm管内に垂直に打ち込む.白内障手術時に片眼にCtrabectome,僚眼にCiStentCinjectを行った比較試験4)では,両眼とも有意な眼圧下降が得られたが,両群間に有意差はなかったと報告されている.初代のCiStentは白内障単独手術との比較であったのに対し,injectは他のCMIGSとの比較も行われ,眼圧をより下げる効果が期待されている.なお,injectはつばの部分まで埋まり込む事例があったため,日本で販売されるものはつばの部分が少し広いCiStentinjectWというタイプになる(図4).一方,Schlemm管内に留置して拡張するデバイスもいくつか開発され,HydrusmicrostentがC2018年C8月にCFDAの認可を受けた.弾性に富み,生体適合性が高く心疾患の治療に用いられているCNitinolという素材で作られている.長さはC8Cmm程度で緩く弯曲しており,範囲にしてC3時間分のCSchlemm管を拡張できるサイズである.いずれわが国への導入も検討されるだろう.C●脈絡膜腔への房水流出をめざすMIGS外傷や手術後の脈絡膜.離によって生じる低眼圧症に注目して考案された術式で,前房から脈絡膜腔に挿入するCCyPassが注目されていた.しかし,多施設で行われあたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14250910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1Trabectome手術の術中写真Trabectomeを前房内に刺入し,線維柱帯を切開したところ.逆流性出血はほとんどみられない.図3iStentの第一世代インサーターの先端にCiStentが装着されている.たCCOMPASSCstudy5)で有意な眼圧下降が得られたものの,角膜内皮の減少が認められたため,企業が自主的に撤退した.内皮への影響がクリアできなければ,同様のコンセプトのデバイスの導入はむずかしいだろう.C●結膜下への濾過を目的としたMIGSこの術式は,minimallyinvasiveというよりもCmicro-incisionalと考えるべきもので,デバイスを用いて前房と結膜下に交通を作る術式である.XENやCPRESERF-LOという名称で知られていて,わが国でも申請に向けて準備が始まっている.従来の線維柱帯切除術における強膜弁の作製や強膜窓の作製,強膜弁や結膜の縫合などの大部分が省略できることは大きな魅力ではあるが,海外ではマイトマイシンCCを併用し濾過胞も形成されるので,当然,過剰濾過や濾過胞関連感染症のリスクが考えられる.導入に際しては,まずは従来の濾過手術に習熟した術者が行い,成績や合併症をしっかり調査する必要があるだろう.C1426あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020図2マイクロフックによる線維柱帯切開術逆流性出血を減らすために眼粘弾剤で前房を形成しておく必要がある.図4iStentinjectWiStentの第二世代CiStentinjectは,インサーターを線維柱帯に垂直に押し当ててCSchlemm管内に打ち込む.インサーターには最初からC2個のCinjectが装着されている.これまでの海外の報告で,つばの部分まで埋まり込む症例が散見されたため,日本での発売はつばの広いCiStentinjectWというタイプとなった.文献1)KonoY,KasaharaM,HirasawaKetal:Long-termclini-calCresultsCofCtrabectomeCsurgeryCinCpatientsCwithCopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol,doi:C10.1007/s00417-020-04897-0.COnlineCaheadCofCprint2)TanitoCM,CIkedaCY,CFujiharaE:E.ectivenessCandCsafetyCofCcombinedCcataractCsurgeryCandCmicrohookCabCinternotrabeculotomyinJapaneseeyeswithglaucoma:Reportofaninitialcaseseries.JpnCJOphthalmolC61:457-464,C20173)GillmannCK,CMansouriK:MinimallyCinvasiveCglaucomasurgery:WhereCisCtheCevidence?CAsiaCPacCJCOphthalmol(Phila)9:203-214,C20204)GonnermannJ,BertelmannE,PahlitzschMetal:Contra-lateralCeyeCcomparisonCstudyCinCMICSC&MIGS:Trabec-tomeRCvs.CiStentCinjectR.GraefesCArchCClinCExpCOphthal-molC255:359-365,C20175)ReissG,Cli.ordB,VoldSetal:Safetyande.ectivenessofCyPasssupraciliarymicro-stentinprimaryopen-angleglaucoma:5-yearresultsfromtheCOMPASSXTStudy.CAmJOphthalmolC208:219-225,C2019(94)

屈折矯正手術:オルソケラトロジー概論

2020年11月30日 月曜日

監修=木下茂●連載246大橋裕一坪田一男246.オルソケラトロジー概論四倉絵里沙鳥居秀成慶應義塾大学医学部眼科学教室オルソケラトロジーは,特殊デザインのコンタクトレンズ装用により角膜中央部を平坦化することで近視などの屈折異常を矯正するもので,小児においては近視進行抑制効果も期待できる.しかし,10年以上の長期予後については不明であり,患者や保護者に正しいレンズ装用と適切な管理,定期的な診察の必要性を指導することが重要である.C●はじめにオルソケラトロジーとは,特殊デザインの酸素透過性ハードコンタクトレンズ(contactlens:CL)の装用により角膜形状を変化させ,近視などの屈折異常を治療する方法である.2009年に日本で最初のオルソケラトロジーレンズであるメニコンオルソCK(メニコン)が医療機器として承認され,その後マイエメラルド(テクノピア,2010年),ブレスオーコレクト(ユニバーサルビュー,2012年),アイメディオルソケー(アイメディ,2016年)が加わり,現在国内で承認されているレンズはC4種類である.C●適応ガイドラインもC2009年に第C1版が策定されたが,その後レンズの効果と安全性を再評価し,2016年に第C2版が策定された.オルソケラトロジーによる屈折矯正は,屈折値が安定している近視,乱視の屈折異常が対象となる.適応とする屈折異常は,近視度数は原則として-4.0Dまで,乱視度数は-1.5D以下としている.旧版では年齢について,患者本人の十分な判断と同意を求めることが可能で,親権者の関与を必要としないという主旨からC20歳以上としていたが,第C2版ではC20歳以上を原則としつつも,20歳未満は慎重処方と改訂された.医学的な条件としては,眼疾患を有していない健常眼でかつ①角結膜に顕著なフルオレセイン染色がなく,CSchirmerI法試験にてC5分間でC5Cmm以上であること,②角膜内皮細胞密度がC2,000個/mmC2以上であることを求めている.C●レンズ形状オルソケラトロジーレンズは,リバースジオメトリーレンズという特殊な形状で,中央が周辺部よりも平坦にデザインされている.レンズによる屈折矯正は,角膜上(91)皮細胞層の厚さと形状を変化させ,角膜中央部を平坦化することによってなされる.角膜中央に接する光学系部分はベースカーブとよばれ,涙液を介した圧力によって角膜中央部を平坦化させる(図1).ベースカーブからリバースカーブとよばれるスティープにデザインされた部分が幅C1Cmmで続いており,この部分に涙液が貯留する.次に続くフィッティング(アライメント)カーブはレンズのセンタリングを担っており,フルオレセイン染色では暗く写る.その周辺にあるのがペリフェラルカーブであり,エッジリフトの部分にあたり,フルオレセイン染色ではレンズを縁どるように明るく写る(図2).適正なフィッティングが得られれば,角膜形状解析にてbull’seyepatternを呈する(図3).C●小児の近視進行抑制効果オルソケラトロジーには近視矯正のほかに,小児における近視進行抑制効果も報告されている.2018年のメタアナリシスでは,オルソケラトロジーによりC2年間で40%の眼軸長伸長が抑制されたと報告されており1),2020年のレビューではオルソケラトロジーによる眼軸長伸長抑制効果が報告されている2).日本においてもオルソケラトロジーのC10年間継続症例にて,安全性と近視進行抑制効果についてソフトCCL装用者との比較を行った結果,オルソケラトロジーの長期にわたる近視進行抑制効果と,ソフトCCLと比し点状表層角膜炎や結膜炎などの有害事象の頻度に有意差を認めず,その安全性が確認された3).最近では,partialreductionという方法で一部近視が残っても強度近視症例に対し,中等度近視と同等の近視進行抑制効果が得られたこと4)や,不同視症例のより近視の強い眼において,片眼と比較し眼軸長伸長が有意に抑制されたこと5)が報告されている.C●角膜感染症の予防と対処法しかし,オルソケラトロジーにも留意しなければならあたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14230910-1810/20/\100/頁/JCOPY正面図断面図ベリフェラルカーブ図1オルソケラトロジーの構造フィッティングカーブ角膜中央に接する光学系部分はベースリバースカーブカーブとよばれ,ベースカーブから外側にリバースカーブ,フィッティング直径前面光学部中心厚後面光学部(アライメント)カーブ,ペリフェラベースカーブルカーブと続く.(株式会社シードのホームページよりフロントカーブエッジ厚転載)図2適切なオルソケラトロジー装用時のスリット写真リバースカーブに涙液が貯留するためフルオレセイン染色では明るく写り(),その周辺のフィッティング(アライメント)カーブは暗く写る.レンズを縁どるように明るく写る部分はペリフェラルカーブである().ない点があり,最たるものは角膜感染症である.オルソケラトロジーによる角膜感染症は以前から報告されており,緑膿菌やアカントアメーバによるものが多いが,これらの病原菌はハード,ソフトCCLにおける角膜感染症でも知られている.ただし,オルソケラトロジーレンズは夜間就寝時に装用するものであり,閉瞼による角膜の低酸素状態が続き,レンズ下涙液交換が行われないため,角膜感染症のリスクにはとくに注意する必要がある.患者と,小児の場合は保護者にも正しいレンズケア方法,定期検査の必要性,保護者の管理の重要性を説明し理解を得る必要がある.C●おわりにこのように,オルソケラトロジーは屈折異常に対する有効な矯正手段の一つであり,小児においては近視進行抑制効果も期待できる.しかし,10年以上の長期予後については不明であり,正常な角膜に変化を与えることC1424あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020図3適切なオルソケラトロジー装用後の角膜形状解析適正なフィッティングが得られれば,角膜形状解析にてbull’seyepatternを呈する.から慎重に適応例を選択しなければならない.正しいレンズ装用と適切な管理,定期的な診察が必要不可欠であり,処方する医師は責任をもって患者や保護者を指導する必要がある.文献1)CooperJ,TkatchenkoAV:Areviewofcurrentconceptsoftheetiologyandtreatmentofmyopia.EyeContactLensC44:231-247,C20182)WallineJJ,LindsleyKB,VedulaSSetal:Interventionstoslowprogressionofmyopiainchildren.CochraneDatabaseSystRevC1:CD004916,C20203)HiraokaCT,CSekineCY,COkamotoCFCetal:SafetyCandCe.cacyCfollowingC10-yearsCofCovernightCorthokeratologyCforCmyopiaCcontrol.COphthalmicCPhysiolCOptC38:281-289,C20184)LyuCT,CWangCL,CZhouCLCetal:RegimenCstudyCofChighCmyopia-partialCreductionCorthokeratology.CEyeCContactCLensC46:141-146,C20205)LuCW,CJinW:ClinicalCobservationsCofCtheCe.ectCofCortho-keratologyCinCchildrenCwithCmyopicCanisometropia.CContCLensAnteriorEyeC43:222-225,C2020(92)

眼内レンズ:白内障手術の術中OCT

2020年11月30日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋小島隆司408.白内障手術の術中OCT慶應義塾大学医学部眼科学教室,中京眼科術中COCTは,眼科顕微鏡手術では得られない断面の情報を術者に提供可能である.白内障手術においても,後.と眼内レンズの位置関係,前部硝子体,角膜と舞い上がる核片の位置関係,切開創の閉鎖状態などが把握可能である.手術のアシストだけでなく,教育や手術手技そのものを再評価することにも有用である.●はじめに眼科手術は,手術顕微鏡で立体視して行うが,眼球組織は透明組織が多いため,立体的な把握は各組織の形状把握から行っていることが多い.たとえば角膜は非常に透明性の高い組織であるが,術者はその全体を立体的に見ているわけではなく,これまでの経験,角膜径,虹彩との位置関係から,角膜内皮面がどの位置にあるかを把握しているにすぎない.近年開発され臨床応用されている術中光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)は,リアルタイムに術中の眼球組織の断層像を術者に示すことが可能である.また,術中COCTはCheadsCupsurgeryとの相性がよいことも特徴である.術中OCTがなくても白内障手術はもちろん可能であるが,筆者が導入して使用してみたところ,白内障手術を再評価するという観点で非常に有用性を感じたため,今回まとめて報告する.C●白内障手術中の後.と眼内レンズの評価後発白内障の予防には,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)と後.の接着が重要であり,その際にCIOLのCsharpedge形状が重要であることはCNishiらの精力的な研究によって明らかになっている1).手術直後に術中COCTを用いてCIOLと後.の位置関係を調べた既報2)によると,後.とCIOL中心部が接触していない症例が87.1%,IOLエッジと後.が接触していない症例がC42.5%と,多くの症例が手術直後は後.とCIOLが接触していないことがわかる.筆者らは手術後に眼圧を調整する際に,術中COCTで観察を行った(図1).その結果,眼圧を高くすると水晶体.が膨らみCIOLとの接触がなくなり,眼圧を下げると水晶体.と接触することが確認できた.現在,多くのCIOLがCsharpedge形状であるが,後発白内障はある程度の割合で発生している.後.とIOLの接触は術後経過とともに形成されるため,手術後早期から確実に接触するようなCIOLデザインが必要か(89)もしれない.C●前部硝子体の評価前部硝子体は,水晶体後面にCWieger’sligamentで接着しており,加齢とともにこの部分が.離する場合がある.術中COCTでは,この部分の観察が可能となり,水晶体のさらに後ろの部分に線状の構造物として認識できる(図2).前部硝子体.離や前部硝子体膜の破損は,白内障手術中の房水が硝子体腔へ流入しやすくなり,後.の不安定化やCinfusionCmisdirectionsyndromeのリスクとなる.現在の術中COCTでは詳細な観察はむずかしいが,今後解像度や撮影深度に改善があれば,そのようなリスクを予測可能になるかもしれない.C●超音波乳化吸引術中の前房内の評価筆者は超音波乳化吸引術(phacoemulsi.cationCandaspiration:PEA)中は,水晶体に顕微鏡の焦点を合わせているため,舞い上がる核片が前房内でどのような位置にあるかを十分に把握しきれていないことを,術中OCTを使用して再認識した.術中COCTの焦点を角膜内皮面側に合わせてCPEAを行うと,自分が思ったより核片が角膜内皮面に近い位置に来ている場合が確認された(図3).実際に手術する際は,PEAを行いながら術中COCTを確認することは難しいため,将来自動で核片を認識してアラートを出せるようなシステムが構築できれば,白内障手術はより安全になると思われる.C●角膜切開創の評価角膜切開創の確実な閉鎖は,術後感染予防,惹起乱視のコントロールのために重要である3).通常の手術時は,上方から確認するのみであるため切開創がどのような形状になっているのか把握することは困難である.術中OCTを用いると切開創に貯留した水まで観察が可能である(図4).また,筆者は自己閉鎖を得るためにCS字状に断面を切開するようにしているが,それができていあたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14210910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1眼圧の調整前後でのIOLと後.の位置関係の変化眼圧が高い状態ではほとんどCIOLと後.は接触していないが,眼圧が下がると.はCIOLに接触するようになる.図3術中OCTで確認できる水晶体核片手術顕微鏡では少し前房に上がってきた感覚はあったが,術中OCTで確認すると,ほとんど角膜内皮に当たる寸前であった.るかどうかも確認できる.切開トンネル長もあとでビデオから測定も可能で,手術教育にも有用と思われる.文献1)NishiCO,CNishiK:PreventingCposteriorCcapsuleCopaci.ca-tionCbyCcreatingCaCdiscontinuousCsharpCbendCinCtheCcap-図2術中OCTで確認された前部硝子体膜sule.JCataractRefractSurgC25:521-526,C19992)LytvynchukCLM,CGlittenbergCCG,CFalkner-RadlerCCICetal:EvaluationCofCintraocularClensCpositionCduringCphacoemulsi.cationCusingCintraoperativeCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomography.CJCCataractCRefractCSurgC42:694-702,C20163)WallinT,ParkerJ,JinYetal:Cohortstudyof27casesofCendophthalmitisCatCaCsingleCinstitution.CJCCataractCRefractSurgC31:735-741,C2005

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 フルオレセインパターンによる判定(1)

2020年11月30日 月曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司小玉眼科医院6.フルオレセインパターンによる判定(1)■はじめに前回までのセミナーで述べた内容に沿ってハードコンタクトレンズ(HCL)のサイズ,ベースカーブ(basecurve:BC)を選定したあとは,トライアルレンズを装用させて,そのフィッティングをフルオレセインパターンによって判定する.フルオレセインパターンとは,レンズとレンズの間隙に貯留する涙液を染色することによって生じるレンズ中央部と周辺部のフルオレセイン濃度の様相をいう.フルオレセインパターン判定というと,このフルオレセイン濃度の様相によるチェックのみととらえられがちであるが,それと同時にレンズの動きと静止位置,ベベル幅,エッジの浮き上がりなどもチェックしなければならない.■レンズの動きと静止位置瞬目によるレンズの動きはさまざまである.いくつかのパターンを図1に示す.瞬目によって上方に引き上げられたレンズが,上眼瞼の影響を離れてゆっくり下方に下がってきて中央に静止する緩徐下降型が望ましい動きであり,このようなパターンを示すときがもっとも装用感もよい.このような動き方を「スムース」とよぶ.側方蛇行型や急速落下型は,BCがフラット過ぎたりベベル幅・エッジの浮き上がりが大きすぎたりした場合に生じ「ルーズ」とよばれる.ただし,ベベル幅・エッジの浮き上がりが小さすぎ,角膜への機械的刺激による流涙で急速落下型を示すこともあるので注意を要する.時間の経過により,このような場合は下方微動型を示すことになる.上方微動型,下方微動型,中央微動型はいずれも「タイト」とよばれる.上方微動型は上眼瞼のレンズを引き上げる力が強すぎて生じる場合が多い.フロント周辺部が薄いレンズに変えるか,プラスキャリアカーブを施したレンズを採用する.下方微動型は上眼瞼のレンズを引き上げる力がたりないか,前述したようにレンズのベベル・エッジデザインの不一致によって生じる.前者ではマイナスキャリアカーブを施したレンズを採用するか,修正が可能なレンズであればあらかじめM-Z加工を施してもらう(図2).後者ではベベル幅・エッジの浮き上がりが適度なレンズに変更する.■角膜曲率半径とHCLのBCとの関係角膜曲率半径とHCLのBCとの関係を表す用語として「パラレル」「フラット」「スティープ」がある.角膜曲率半径とBCが平行関係にある場合を「パラレル」(図3),角膜曲率半径のほうがBCよりも小さい場合を「フ1.緩徐下降型2.側方蛇行型3.急速落下型4.上方微動型5.下方微動型6.中央微動型図1瞬目によるHCLの動きのシェーマ(87)あたらしい眼科Vol.37,No.11,202014190910-1810/20/\100/頁/JCOPY図2M.Z加工a:レンズの最周辺部に溝が見える.b:模式図.HCL周辺部のフロント側に溝をつける.その溝に溜まる涙液による表面張力を利用して,上眼瞼によるレンズの引き上げ効果を増大させる.図3パラレル角膜曲率半径とHCLのBCが平行関係となり,全体が均一に染まる.図4フラット角膜曲率半径がBCよりも小さい場合,中央部が薄くて周辺部が濃く染まる.図5スティープ角膜曲率半径がBCよりも大きい場合,中央部が濃くて周辺部が薄く染まる.ラット」(図4),角膜曲率半径のほうがBCより大きい涙液が均一に,フラットでは中央部が薄くて周辺部が濃場合を「スティープ」(図5)とよぶ.く,スティープでは中央部が濃くて周辺部が薄く染ま角膜とHCLの間隙に貯留した涙液がフルオレセインる.によって染色されているので,パラレルではHCL下の

写真:角膜に侵入した結膜内に形成された封入嚢胞が疑われる病変

2020年11月30日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦438.角膜に侵入した結膜内に形成された千森瑛子京都府立医科大学大学院封入.胞が疑われる病変医学研究科視覚機能再生外科学京都山城総合医療センター横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①血管侵入および.胞性病変を伴う侵入結膜図1初診時前眼部所見角膜鼻側に侵入した結膜を認め,その内部に多房性の.胞性病変を認める.図3フルオレセイン染色下での前眼部所見(ブルーフリーフィルターを用いた観察).胞性病変の結膜表面に,瞬目摩擦によって生じたと考えられる点状表層上皮障害を認めた.図4前眼部光干渉断層計所見角膜に接する部位に,明瞭に輪郭を明瞭に追うことができる一塊の.胞性病変が観察され,その内腔は顆粒状の高反射を示す.結膜封入.胞に特徴的な所見である.(85)あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020C14170910-1810/20/\100/頁/JCOPY症例は42歳の女性.近医を受診した際に左眼の隆起性病変を指摘され,当科を紹介受診した.初診時の細隙灯顕微鏡検査で,左眼の角膜鼻側に結膜侵入を認め,その直下に多房性の.胞性病変を認めた(図1,2)..胞性病変の表面の結膜上皮には,フルオレセイン染色で,瞬目摩擦によって生じたと考えられる点状の表層上皮障害を認めた(図3).前眼部光干渉断層計(ante-riorCsegmentCopticalCcoherencetomography:AS-OCT)にて角膜に接する部位に明瞭に輪郭を追うことができる一塊の.胞性病変が観察され,その内腔は顆粒状の高反射を示し(図4),結膜封入.胞に特徴的な所見1)であった.受診の時点ではとくに自覚症状を認めなかったため,経過観察となった.結膜.胞は封入.胞,リンパ.胞,貯留.胞に分類され,なかでも封入.胞の頻度が高い.封入.胞は,一般に球結膜にみられる半透明でドーム状の隆起性病変であり,発症契機として外傷や手術後があげられているが,原因の明らかでない特発性のものも多い2)..胞壁は平滑で薄く,病理組織学的には結膜上皮に由来すると考えられる非角化上皮から構成され,PAS(periodicCacidSchi.)染色で陽性を示す杯細胞が含まれ,内容物としてはケラチンおよびムチンを含むことが報告されている3).発症部位は球結膜の鼻側に多いとされるが4),今回の症例では角膜の鼻側に侵入した結膜内に存在した.確定診断は病理組織学的に行われるが,非侵襲的な鑑別診断法としてCAS-OCTが有用で,リンパ.胞では.胞内は低反射であるのに対して,封入.胞では.胞内に顆粒状の高反射がみられ,しばしば.胞壁の輪郭を追うことができる1).結膜.胞は一般に,症状がなければ経過観察でよいが,異物感や流涙などの症状がある場合は治療の対象となり,点眼治療を試みても効果がない場合,あるいは整容上の問題を訴える場合は外科治療の対象となる..胞を穿刺し内容物を排出する結膜.胞穿刺は,外来で簡便に行うことができるが,被膜が残存していると数日で再発するという報告があり5),再発すると周辺組織との癒着のため摘出しにくくなる可能性があるため,最初から被膜を残さないように全摘出することが推奨されている4).また,封入.胞では周辺組織との癒着がなければ.胞を一塊として摘出しやすいが,リンパ.胞や貯留.胞では一塊に摘出することは困難であり,外科治療の方法が異なるためその鑑別は重要である.今回の症例では,.胞が角膜上に存在しており,一般的な結膜.胞とは異なる病変とも考えられたが,特徴的なCAS-OCT所見から結膜封入.胞がもっとも疑われ,今後,外科治療が必要となった場合でも,術式を選択するうえで参考になると考えられた.文献1)寺尾信彦,横井則彦,丸山和一ほか:前眼部光干渉断層計を用いた結膜封入.胞の観察と治療.あたらしい眼科C27:C353-356,C20102)横井則彦:結膜リンパ拡張症と結膜.胞.あたらしい眼科C33:1607-1608,C20163)GrossniklausCHE,CGreenCWR,CLuckenbachCMCetal:Con-junctivalClesionsCinadults:ACclinicalCandChistopathologicCreview.CCorneaC6:78-116,C19874)山田桂子,横井則彦,加藤弘明ほか:結膜封入.胞の臨床的特徴と外科的治療についての検討.日眼会誌C118:652-657,C20145)ChanCRY,CPongCJC,CYuenCHKCetal:UseCofCsodiumChyal-uronateandindocyaninegreenforconjunctivalcystexci-sion.CJpnJOphtalmol53:270-271,C2009

治療用としてのソフトコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

治療用としてのソフトコンタクトレンズの選択SelectionofSoftContactLensesforTherapeuticUsage土至田宏*はじめにコンタクトレンズ(contactlens:CL)の装用の主目的は視機能改善であり,今回の特集で触れられている多くの特殊CCLの装用目的も同様である.しかし,多岐にわたるCCLの適応の中には,少数ながら視機能改善目的ではないものもある.医学的理由での最たるものが治療用としてのCCL装用である.歴史をひもとくと,まだ視機能改善目的のCCLなどが存在しなかったC1583年に,瞼球癒着を防止するために前眼部を形どった形状のリード板を角膜上に装用するアイデアがすでに存在しており,1857年には義眼レンズにとって代わっていることから,CLの元祖は治療目的であったともいえる1).今では治療を目的とした装用は治療目的装用やメディカルユースなどとよばれるが,その期待されるおもな効果は,バンテージ効果による眼表面の保護,涙液の保持や蒸発抑制,角膜バリア機能の補.,摩擦軽減などである2,3)(表1).現在,日本国内で入手可能な治療用CCLは,円錐角膜用のハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)や輪部支持型CHCLを除くとソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)のみであり,銘柄も限定される.その少ない選択肢の中からの選択法と実際について解説する.CIわが国における治療用CLの系譜現在,普及しているCCLの基礎となったのは,1951表1治療用としてのCL装用の目的年に日系米国人のCWesleyが開発したCpolymethyl-methacrylate(PMMA)素材のCSpericonlensで,これが現在に至るCHCLの始まりであった.HCLはその後,酸素透過性CHCLに置きかわり,1970年代にはCSCLも登場,1990年代には使い捨てCSCLが出現し,2005年以降はシリコーンハイドロゲルレンズと共存しているというのが,通常の視力矯正用CCLの流れである.治療用CLもこの流れとともにある.特殊なCHCLを除けばSCLが主で,角膜保護や疼痛軽減などが主目的であるため,連続装用が原則となる.治療用の従来型CSCL,1週間使い捨てCSCL,通常のクリアレンズのC1週間使い捨てCSCLの代用を経て,治療用としての承認も受けたシリコーンハイドロゲルレンズへと至っている.CII現在入手可能な治療用SCL上記の流れのなかで,すでに終売となってしまったも*HiroshiToshida:順天堂大学医学部附属静岡病院眼科〔別刷請求先〕土至田宏:〒410-2295静岡県伊豆の国市長岡C1129順天堂大学医学部附属静岡病院眼科C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(79)C1411のも多く,かつて主流の時代もあった治療用の従来型SCLはすでにない.1週間使い捨てCSCLのうち登場から終売までがわずか数年であったものもある.治療用として承認されたCSCLのうち,現在流通しているのは以下のC2種である.C1.メダリストプラス(治療用)(ボシュロム)ボシュロム社はCpolymaconのメダリストプラス・シリーズの一つとして,度数のないプラノレンズを治療C1週間連続装用CSCLとして発売している.使い捨てレンズは通常,1箱に複数枚セットされているのに対し,このレンズはC1枚単位で用意されており,必要な時に必要なだけ処方できるよう配慮されている.C2.エアオプティクスExアクア(日本アルコン)わが国初のシリコーンハイドロゲルレンズであった2005年登場のClotra.lconB製「OC2オプティクス(旧チバビジョン)」は,現在は「エアオプティクスCExアクア」(日本アルコン)に引き継がれている.当初は通常の視力補正用としての承認のみであったが,OC2オプティクス時代のC2011年C11月に使用目的・効果として「角膜疾患眼の視力補正能も付帯する治療用」が追加承認されたことは,わが国における治療用CSCLの新たな時代の幕開けともいってよいくらいに,われわれの眼科診療に大きな恩恵をもたらした.つまり,①酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル素材であること,②ベースカーブがC8.4CmmとC8.6CmmのC2種類が用意されていること,③恐らくメーカーとしては利益に結び付きにくいであろう治療用CCLが登場と終売を繰り返してきた中で,通常のクリアレンズと同じものを治療用として追加承認を得ることで,安定した供給が見込め,当面の間は流通が継続するであろうこと,以上の点から大きな期待が寄せられた.添付文書には,その原理として「創傷部位が保護されることで,疼痛が軽減されて修復・治癒が促進される.また,前房の穿孔部位を封鎖することで,前房形成や前房水漏出防止に寄与する」との記載があり,また警告の項には「治療用として試用する場合は,眼科医の管理のもとで適切に使用してください」と追記されている.余談であるが,筆者は上記の治療用としての追加承認前に倫理委員会承認下で臨床研究を行い,その安全性と有効性を確認,対象症例中に重大な問題点は認めなかったという成果も追加承認に貢献した作業の一つであったものと思われ,個人的にも愛着のあるレンズである.しいてデメリットをあげるとすれば,シリコーンハイドロゲル素材ゆえに硬いことによる若干の使いにくさや,後述する合併症発生の可能性などである.CIII治療用CL処方の実際1.1週間使い捨てSCL使い捨てレンズは従来型CSCLに比べて価格も抑えられ,枚数も多く入手可能であることから,治療用のもの以外にも度数の低いものが頻繁に「代用」された時代があった.筆者らは既報4)で,1週間連続装用CSCLの装用期間を厳密に管理することでC10年の調査期間中に重篤な眼合併症を認めなかったことを報告している.しかし,現在も残るC1銘柄はC1カーブのみであるため,フィッティング状態が好ましくない場合は他の製品に変更しなければならない.近年は次に示すような,より酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル素材のレンズが治療用としても追加承認されたことで,おもな処方はそちらにシフトしている.C2.シリコーンハイドロゲルレンズ「エアオプティクスCExアクア」は,その髙酸素透過性,安全性からおそらく治療用CSCLとして現在誰もが第一選択として思い浮かぶレンズといっても過言ではなかろう.筆者は実際に,角膜移植術後,帯状角膜変性に対する治療的角膜切除術後,遷延性角膜上皮欠損,角膜穿孔など,多岐にわたる角膜疾患を対象に治療用として用いている.経験的にはまずベースカーブC840Cmmのものを選択することが多く,フィッティング状態が不良の場合には860Cmmに処方交換している.このレンズに限らず,角膜形状異常眼や眼瞼異常を伴う症例などでは既報5)のごとくレンズ脱落が多い.合併症としては,筆者らはシリコーンハイドロゲル素材の硬さに起因すると思われる非典型的マイクロシスト1412あたらしい眼科Vol.37,No.11,2020(80)図1シリコーンハイドロゲルレンズ装用中にみられた図2シリコーンハイドロゲルレンズの治療用としての非典型的マイクロシスト装用中にみられた非典型的ムチンボール通常のムチンボールと比べて巨大である.~~図3重度のびまん性点状表層角膜症の初診時所見(右眼)角膜全体に蛍光色素染色を認めた.視力=0.08(0.15C×sph+3.00D(cyl-2.00DCAx80°)図5図3と同一症例の治療用としてシリコーンハイドロゲルレンズ装用後の蛍光色素染色像角膜の蛍光色素染色は改善し,下方の一部に限局するのみとなった.図4図3と同一症例のシリコーンハイドロゲルレンズ装用中の前眼部所見角膜下方に楕円形の上皮下混濁を認めたが,それ以外は透明性を維持している.視力=(0.8C×CL)図6犬用バンデージコンタクトレンズ「わんタクト」(シード社)のパッケージ表2犬の角膜保護用コンタクトレンズ「わんタクト」の使用目的と効果図7猫用バンデージコンタクトレンズ「にゃんタクト」(シード社)のパッケージ図8犬用バンデージコンタクトレンズ「わんタクト」(シード社)のブリスターパック

ピギーバックレンズシステムに使用する使い捨てソフトコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

ピギーバックレンズシステムに使用する使い捨てソフトコンタクトレンズの選択ChoiceofDisposableSoftContactLensesforPiggybackLensSystemUse佐野研二*藤田博紀**はじめに本稿で述べるピギーバックレンズシステム(piggy-backlenssystem:PBLS)とは,一般的に円錐角膜(図1)を初めとする角膜形状異常眼に対して,ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)の上からハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)を処方する手法である(図2).HCL単独装用時に繰り返す角膜上皮障害や痛みによって,レンズが装用できない状態,すなわち,角膜形状異常眼におけるHCL不耐症が適応となる(図3).文献的にはSCLが登場して間もない1973年にBaldone1)がこれについて初めて記載している.その後,角膜上皮障害眼にSCLは禁忌であったことや,当時の低含水SCLが角膜形状異常眼にフィットしにくいこと,またSCLが十分な表面張力が得られず重ねたHCLがよく脱落し,取扱いも煩雑なことなどから普及に至らなかった2,3).こうしたPBLSの弱点を一気に解決してくれたのが使い捨てSCL(disposableSCL:DSCL)の登場である.清潔でフリーサイズ的な高分子デザインを受けたフレキシビリティに富む高含水レンズは,円錐角膜によくフィットし,当時,東京医科歯科大学で円錐角膜外来の担当であった筆者らは,ただちにDSCLをPBLSのキャリアーレンズ(HCLの下に敷くSCL)として導入し,良好な結果を得てきた4~7).ここではPBLSに使用するキャリアーレンズ,すなわちDSCLの選択の方法について解説する.IDSCLをPBLSに応用することのメリットDSCLはモールド製法やスピンキャスト製法といったSCLの大量生産技術を背景に登場した.このDSCLをHCLによって傷ついた円錐角膜上皮表面に装用させることで,下記のようないくつかのメリットがもたらされる.まず,使い捨てを前提に設計されたDSCLは安価で清潔なバンデージレンズとしての効果が期待でき,角膜上皮障害眼にも比較的抵抗なく使用できる.そして,DSCLはフリーサイズ的に高分子デザインが施されているため,その高いフレキシビリティから角膜形状異常眼にもよくフィットする.さらに,高含水または高親水性表面のDSCLは短期使用を前提としており,その期間内であればHCLが脱落しないだけの表面張力を保つことができる.DSCLの先駆けとなったジョンソン・エンド・ジョンソン社の「アキュビュー」シリーズの材料であるeta.lconAは,主材料が,2-ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体であり,イオン性で中性域での負の帯電による反発によりフレキシビリティと含水率を高め,さまざまな角膜形状へのフィッティングを容易にした画期的な材料であるが,これは同時に円錐角膜のような角膜形状異常眼に対してもフィットする可能性が高い材料だともいえる.DSCL材料は,シリコーンハイドロゲルなどの高酸素*KenjiSano:あすみが丘佐野眼科**HirokiFujita:藤田眼科〔別刷請求先〕佐野研二:〒267-0066千葉市緑区あすみが丘1-1-8あすみが丘佐野眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(71)1403図1円錐角膜図2ピギーバックレンズシステム非炎症性の角膜形状異常疾患である.良好な視力補正には清潔でやわらかい使い捨てSCLの上にHCLを装用させ硬質材料のコンタクトレンズが必須となるが,その角膜形て,HCLによる円錐角膜への機械的ストレスを軽減させ状からオキュラーサーフェスの角結膜上皮障害を起こしやる方法である.すい.--図3円錐角膜における角膜上皮障害円錐角膜の視力補正にHCLは必須であるが,処方を変えてみても,レンズのメカニカルストレスによって起きた傷(角膜上皮障害)による痛みで,HCL不耐症となるケースはある.図4各種SCL材料と弾性率eta.lconAは,主材料がC2-ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体であり,イオン性で中性域での帯電による反発によりフレキシビリティと含水率を稼ぎ,さまざまな角膜形状へのフィッティングを容易にした画期的な材料であるが,これは同時に円錐角膜のような角膜形状異常眼に対してもフィットする可能性が高い材料だともいえる.DSCL材料は,シリコーンハイドロゲルなどの高酸素透過性材料の登場により高性能化が図られてきたが,弾性率の低さでは,いまだにCeta.lconAを超えるCSCL用高分子材料はない.(文献C8より引用)-=(分)35NS30(p=0.370)NS25NS(p=0.526)2013.3±6.615n=611.1±5.2n=51050涙液交換半減期DSCLPLSPLS(HCL8.5)(HCL9.0)図5DSCL単独装用時とPBLS装用時の涙液交換半減期DSCL単独装用時と比べて,直径C8.5CmmとC9.0CmmのCHCLを上から載せた場合の角膜上の涙液交換率に有意差がないことがわかる.表1PBLS装用前後の円錐角膜内皮No観察期間(年)装用前装用後平均細胞面積(CμmC2)CV値平均細胞面積(CμmC2)CV値C1C1C428±145C2C1C371±111C3C1C354±156C4C1C383±164C5C2C333±130C6C2C314±95C7C2C384±123C8C2C353±129C33C348±133C38C29C360±132C36C44C401±156C38C42C424±208C49C39C364±114C31C30C276±138C49C32C338±139C41C36C346±132C381年以上可能であった円錐角膜において,角膜中央部における内皮の平均細胞密度と平均変動係数(CV値)に有意な変化は認めなかった.図6刻々と変わる見かけ上の円錐角膜形状左から右に向かって,装用期間とともにマイヤーリング像が変化している.図7コニコイド曲線円錐角膜の断面形状を最小二乗法により,コニコイド曲線へ近似させると,Q値(非球面値)とCR値(中心部の角膜曲率)が得られる.ここでCQ値は離心率の二乗にマイナスをつけたものと一致する.C0-1-2-3-4withoutDSCLQ値withDSCL7006005004003002001000.HCL単独.装用(1年間)図8HCL単独装用時とPBLS装用時における角膜形状変化縦軸CIndexKは,円錐角膜断面形状をコニコイド曲線に近似したときの離心率の二乗を,近似した曲線の角膜中央部の曲率で割り,10C3をかけたもの.PBLS装用C1年間の変化量は,少なくともCHCL単独装用時のそれに匹敵する.C8.58.07.57.06.56.05.55.04.5withoutDSCLwithDSCLR値IndexK.ピギーバック.レンズ装用(1年間)図9円錐角膜にDSCLを載せた前後の表面形状変化円錐角膜C9眼にCeta.lconA製のワンデーアキュビューモイスト(-0.50D)を載せた上から角膜形状変化をみたものであるが,Q値は球面に近づきCR値は大きくなっている.図10弾性率の高いDSCLは円錐角膜形状にフィットしにくいレンズのフレキシビリティが低いレンズでは,このように初めから円錐角膜形状にフィットせず,周辺部が浮いてしまうので除外したほうがよい.-