網膜色素上皮の代謝機能と加齢黄斑変性成松俊雄網膜色素上皮と加齢黄斑変性加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)は先進国を中心に失明原因の上位を占め,患者数も増加傾向です.抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法の確立により滲出型CAMDの病状の改善が図れるようにはなりましたが,萎縮型を含めその予防や根治が可能な治療法はまだ報告されていません.AMDの病態からは,網膜色素上皮(retinalCpigmentCepi-thelium:RPE)が病態の主座である可能性は高そうです.RPEの加齢性変化は一般に光曝露により発生,進行すると考えられています.すなわち光曝露により視細胞外節がRPEで代謝され,RPE内でリポフスチンが蓄積し,脂質の沈着と過酸化が起こり,酸化ストレスが発生し,RPEが機能・形態学的に障害され,軟性ドルーゼン蓄積などのCAMD前駆病変が生じる,という説です.光曝露とRPEの代謝機能RPEや網膜の光曝露については,これまで数多くの研究成果が報告されています.現在のところ光障害については酸化ストレスの関与は確かなようですが,下流の分子機構については決定打がない状況です.筆者の実験動物を用いた研究では,RPEにおける光障害では酸化ストレスの下流ではCRho/Rho-associatedCcoiled-coilCcontainingCproteinCkinase(Rho/ROCK)シグナル伝達経路が関与していました1).視細胞の光障害についてはアンジオテンシンIIC1型受容体シグナル伝達経路の関与もわかりました.また,生理的強度の光曝露ではCPGC-1Ca/エストロゲン関連受容体C-aシグナル伝達経路が関与するという報告があります2).ただ光曝露された実験動物においてCAMDやその前駆病変に似た組織像を模倣することはむずかしい状況です.このような状況を踏まえると,やはりCRPEのより詳細な機能と病態の解明が重要と考えられます.RPEのおもな機能としては貪食,ロドプシン再生(視覚サイクル),VEGF分泌による脈絡膜毛細血管保持,Bruch膜リモデリングなどがあります(図1).また,ドルーゼンが脂質を多く含むことから,脂質とその代謝機構の研究も盛んです.RPEや視細胞,マクロファージへの遺伝子操作で脂質代謝を阻害するとAMD様変化を生じうるという報告や,RPE内のオートファジー異常による脂質代謝機構への影響3),脂質メディエーターの網膜光障害への関与などが報告されています.臨床応慶應義塾大学医学部眼科学教室,CMassachusettsEyeandEarIn.rmaryC網膜色素上皮(RPE)外節代謝→脂質沈着→過酸化→RPE障害→AMD変化図1加齢黄斑変性への関与が目されるおもな網膜色素上皮(RPE)の機能網膜色素上皮は視細胞貪食能,視細胞との間での視覚サイクルの循環,細胞内での脂質代謝などでの恒常性維持,といった機能をもつ.加齢黄斑変性の原因がこのいずれか単独の障害なのか,複合的なのかは現時点では未知であり,その早期解明が待たれる.用に至る新機構の解明には至っていませんが,今後の発展が期待されます.今後の展望AMDの加療や予防においてCRPEの代謝機構とその異常は有力な研究対象と目されますが,今現在は臨床応用に至る成果は得られていません.今後一層の知見の蓄積と研究の進展によって,この表現型の多彩な疾患について,より有効な治療法や予防法が発見されることが望まれます.文献1)NarimatsuCT,COzawaCY,CMiyakeCSCetal:DisruptionCofCcell-cellCjunctionsCandCinductionCofCpathologicalCcytokinesCinCtheCretinalCpigmentCepitheliumCofClight-exposedCmice.CInvestOphthalmolVisSciC54:4555-4562,C20132)UetaT,InoueT,YudaKetal:IntensephysiologicallightupregulatesCvascularCendothelialCgrowthCfactorCandCenhanceschoroidalneovascularizationviaperoxisomepro-liferator-activatedCreceptorCgcoactivator-1ainCmice.CArteriosclerThrombVascBiol32:1366-1371,C20123)NotomiCS,CIshiharaCK,CEfstathiouCNECetal:GeneticCLAMP2Cde.ciencyCacceleratesCtheCage-associatedCforma-tionCofCbasalClaminarCdepositsCinCtheCretina.CProcCNatlCAcadSciUSA116:23724-23734,C2019(93)あたらしい眼科Vol.39,No.4,2022C4850910-1810/22/\100/頁/JCOPY