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序説:コンタクトレンズ-選択の秘訣

2020年11月30日 月曜日

コンタクトレンズ─選択の秘訣TheSecretsofPropeContactLensSelection小玉裕司*近年のコンタクトレンズ(CL)の開発には目覚ましいものがあり,続々と新しいCLが市販されてきている.それらのCLの中から,患者の要望に合うレンズを選択するのは容易ではない.比較的多くのCLを処方している筆者でも,臨床の場においてCLの選択に迷うことがある.あまりCLを処方することのない先生方においては,なおさら困られているのではないかと危惧し,今回の企画を立てた.まずは遠近両用CLについてであるが,ハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)とでは光学的デザインがまったく異なっている.HCLは交代視型であり,遠用と近用でレンズにおいて用いる部位が異なり,その点では光学的機能は損なわれない.最初はセグメント型のもののみであったが,最近では同心円型が主流となり,一時的にセグメント型は姿を消した.しかしごく最近になって,セグメント型の長所を活かしたかたちで再登場した.このセグメント型レンズと同心円型のレンズとの違いなどを梶田雅義先生に解説していただいた.同時視型の遠近両用SCLは加入度数が累進的に入っている多焦点SCL(multifocalsoftcontactlens)がほとんどであるが,大きく分けて中心遠用レンズと中心近用レンズがある.最初は筆者も中心近用レンズは近方の視力がよく,中心遠用のレンズは遠用の視力がよいと思っていたが,いろいろな多焦点SCLを処方していくなかで,そのような単純なものではないと思い直している.この観点から塩谷浩先生に両者の選択法について解説していただいた.最近市販されたEDOF(正確にはAnnualRingsdesignEDOF)は,従来の多焦点SCLと比較して,いかなる性格を有しているのか,その実態がわかりにくかった.その点については二宮さゆり先生に詳細に解説していただいた.遠近両用CLの中でも,加入度数がきわめて低いレンズがHCL,SCL双方で市販されている.このような超低加入度数のCLについて,その使用目的と選択法に関して東原尚代先生と山岸景子先生に解説していただいた.乱視矯正には光学的にHCLのほうがよいとされているが,近年の乱視用SCLの開発は目覚ましく,ある程度までの乱視であれば十分に満足できる矯正視力を提供できるSCLが市販されている.乱視用SCLにはレンズの回転防止(軸の安定)のためにデザイン上の工夫がなされており,プリズムバラストタイプとダブルスラブオフタイプに大別される.それらのレンズの選択法について山岸景子先生と東原尚代先生に解説していただいた.*YujiKodama:小玉眼科医院0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(1)1333

網膜静脈閉塞症発症とコントロール不良高血圧の存在─仮面高血圧を考慮して

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1322.1326,2020c網膜静脈閉塞症発症とコントロール不良高血圧の存在─仮面高血圧を考慮して土屋徳弘*1,3戸張幾生*2宮澤優美子*2西山功一*2,4田中公二*3森隆三郎*3*1表参道内科眼科内科*2表参道内科眼科眼科*3日本大学病院眼科*4オリンピア眼科病院CDevelopmentofRetinalVeinOcclusionandPresenceofUncontrolledHypertensioninConsiderationofMaskedHypertensionNorihiroTsuchiya1,3),IkuoTobari2),YumikoMiyazawa2),KoichiNishiyama2,4),KojiTanaka3)andRyusaburoMori3)1)OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,InternalMedicine,2)OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,Ophthalmology,3)DivisionofOphthalmology,DepartmentofVisualSciences,NihonUniversitySchoolofMedicine,4)OlympiaOphthalmologyHospitalC目的:網膜静脈閉塞症(retinalveinocclusion:RVO)発症時の血圧コントロール状態に関し,家庭血圧(仮面高血圧)を考慮し後ろ向きに検討する.対象および方法:対象はCRVOを発症し表参道内科眼科の眼科を受診し,同時に全身状態検索のため同院内科受診に同意したC130例.内科では高血圧の既往・降圧薬内服の有無の問診と診察室血圧を測定し,診察室血圧正常例には仮面高血圧検索のため家庭血圧測定(起床時・就寝前)が行われた.結果:130例中,高血圧ありの診断C129例(99.2%)(降圧薬内服中C34例C26.2%).内訳は診察室血圧C140/90CmmHg以上の高血圧C84例(64.6%),診察室血圧C140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg以上の仮面高血圧C45例(34.6%).診察室血圧140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg未満の非高血圧C1例(0.8%).高血圧と診断されたC129症例は,降圧薬治療の有無にかかわらず診察室血圧または家庭血圧が治療目標値を超えており,コントロール不良・管理不良の高血圧状態であった.考按:RVO発症例は,高血圧が無治療ならば降圧治療の開始が,また降圧薬内服中でも治療の再検討が必要な病態であることが示唆された.CPurpose:Toretrospectivelyanalyzethebloodpressure(BP)controlstatusatthetimeofretinalveinocclu-sion(RVO)onsetinconsiderationofthepatient’shomeBP(maskedhypertension).SubjectsandMethods:ThisretrospectiveCstudyCinvolvedC130CRVOCpatientsCinCwhomCBPCcontrolCwasCexaminedCinCconsiderationCofCmaskedChypertension.Results:Ofthe130patients,129(99.2%)werediagnosedwithhypertension.Therewere85(65.4%)patientsCwithCanCo.ceCBPCofC≧140/90mmHg.CThereCwere44(33.8%)patientsCwithCanCo.ceCBPCof<C140/90CmmHgandahomeBPof≧135/85CmmHg(maskedhypertension).Therewas1patientwithano.ceBPof<140/90CmmHgandahomeBPof<135/85CmmHg.Inall129patientsdiagnosedwithhypertension,thehyper-tensionwasuncontrolled.Conclusion:The.ndingsinthisstudysuggestthatincasesinwhichRVOdevelops,ifhypertensionisnotbeingtreated,treatmentwithanantihypertensivetherapyshouldbestarted,andthatevenifthepatientiscurrentlybeingtreatedwithanantihypertensivedrug,thetreatmentshouldbereexamined.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(10):1322.1326,C2020〕Keywords:網膜静脈閉塞症,仮面高血圧,家庭血圧,コントロール不良高血圧.retinalveinocclusion:RVO,maskedhypertension,homebloodpressure,uncontrolledhypertension.Cはじめに意な相関がみられたと報告され,140/90CmmHg以上の高血網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)は全身的圧だけでなく,130/80CmmHg以上の正常高値血圧のレベルな因子との関連で,久山町研究では高血圧の罹患との間に有からCRVO発症のリスクが増加すると報告されている1).RVO〔別刷請求先〕土屋徳弘:〒107-0061東京都港区北青山C3-6-16表参道内科眼科Reprintrequests:NorihiroTsuchiya,M.D.,Ph.D.,OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,3-6-16Kitaaoyama,Minato-ku,Tokyo107-0061,JAPANC発症においては高血圧合併の有無だけでなく血圧コントロールの状態が重要な要因として考えられる.また,現在の高血圧治療ガイドライン2,3)では,高血圧の診断と血圧コントロール状態の判断や管理において,仮面高血圧を考慮した家庭血圧が重要とされている.これまでのRVOにおける高血圧に関する報告は,健康診断データを基にしたCRVO既往のある症例における高血圧合併の有病率を検討した疫学研究であり,実際にCRVOを発症したときの診察室血圧値に関する報告は少ない.さらにCRVO発症時の仮面高血圧の有無や血圧コントロール・管理状態に関する検討はなされていない.内科と眼科の併設されている筆者らのクリニックでは,眼科を受診したCRVO発症例はCRVOの危険因子とされている全身状態を検索するため,内科においても同時に診察し血圧など全身状態を詳細に観察している.診察室血圧正常例においては,高血圧治療ガイドライン2,3)に従い仮面高血圧検索のため家庭血圧測定を指示している.今回筆者らはCRVO発症時に測定された診察室血圧値と,診察室血圧正常例において測定された家庭血圧値を後ろ向き横断的に調査し,RVO発症時のコントロール不良高血圧の存在に関し検討した.CI対象および方法対象はC2012年C3月.2020年C2月に新規にCRVO(網膜静脈分枝閉塞症CbranchCretinalCveinocclusion:BRVOと網膜中心静脈閉塞症Ccentralretinalveinocclusion:CRVO)を発症し表参道内科眼科の眼科を受診した患者で,同時に全身状態検索のため同院内科受診に同意したC130例.BRVO102例,CRVO28例.内科で高血圧の既往・降圧薬内服の有無の問診と診察室血圧測定などの内科的診察が行われた.診察室血圧正常例に関しては,仮面高血圧検索のため家庭血圧測定(起床時・就寝前)が行われた.血圧測定と高血圧診断に関してはC2014年およびC2019年高血圧治療ガイドライン2,3)に従って行われた.高血圧の診断は両ガイドラインとも,診察室血圧C140/90CmmHg以上,家庭血圧C135/85CmmHg以上とし,診察室血圧と家庭血圧の診断が異なる場合は家庭血圧の診断を優先するとされている.診察室血圧は内科医が聴診器を使ったコロトコフ法で測定し,血圧C140/90CmmHg以上は高血圧と診断した.診察室血圧が正常範囲であるC140/90CmmHg未満の症例は,仮面高血圧検索のために家庭血圧測定が指示され,朝起床時と夜就寝前の家庭血圧測定がなされた.家庭血圧計は日本国内で市販されている上腕カフ・オシロメトリック法の自動家庭血圧計が用いられた(わが国の血圧計は医薬品医療機器総合機構によって認可を得て販売されており,「自動血圧計の精度は日本の製造会社の装置であれば問題なし」と高血圧治療ガイドライン2,3)に明記されている).家庭血圧測定はガイドラインの推奨どおりに行われ,朝起床後(起床後C1時間以内で排尿後・朝食前・朝の服用前)と,夜就床前,それぞれ座位1.2分間の安静後に測定された.家庭血圧は最低C5日間以上測定し,135/85CmmHg以上を認めた場合に仮面高血圧と診断した.全症例の年齢・性別・身長・体重・BMIが調べられた.調査期間において,すでに他の内科通院中であるとの理由や,他院より降圧薬が処方されているなどの理由により当院内科受診の同意を得られなかった症例は対象から除外した.統計学的な検討は対応のないCt検定を使用し,p<0.05をもって有意差ありと判定した.本研究は表参道内科眼科の倫理審査委員会で承認後,ヘルシンキ宣言を順守して実施された.研究情報は院内掲示などで通知公開され,研究対象者が拒否できる機会を保障した.CII結果表1に患者背景を示す.RVO全C130例の内訳は男:女55:75,平均年齢C66.2歳C±11.2歳(41.91歳),BRVO102例,CRVO28例,降圧薬内服中C34例.全C130例の診察室血圧値はC146.3C±18.5/83.9±11.1CmmHg(96.202/58.116mmHg)であった.図1に高血圧診断手順とその内訳を示す.全C130例中高血圧ありの診断C129例(99.2%降圧薬内服中C34例,26.2%).内訳は診察室血圧C140/90CmmHg以上の高血圧C84例(64.6%.うち降圧薬内服中C25例,19.2%),診察室血圧C140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg以上の仮面高血圧C45例(34.6%.うち降圧薬内服中C9例,6.9%).診察室血圧および家庭血圧正常かつ降圧薬内服がない非高血圧C1例(0.8%).図2に降圧薬内服治療の有無による血圧コントロール状態を示す.全C130例中C34例(26.2%)は,RVO発症時にすでに降圧薬服用中であった.そのうちC25例(19.2%)は診察室血圧がガイドラインで示されている診察室血圧治療目標値の140/90CmmHgを超えており,管理不良高血圧と診断された.残りC9例(6.9%)は診察室血圧が正常域であったが,家庭血表1対象者の背景n=130C性別(例)男性C55:女性C75年齢(歳)C66.2±11.2(41.91)BMI(kg/mC2)C23.7±4.4(15.8.37.4)病型(例)BRVO102:CRVO28降圧剤服用有:無(例)34:96収縮期血圧(mmHg)C146.3±18.5(96.202)拡張期血圧(mmHg)C83.9±11.1(58.116)BMI:bodymassindex.平均値±標準偏差.診察室血圧測定家庭血圧測定図1高血圧診断手順BP:bloodpressure(mmHg).診察室血圧測定診察室血圧測定家庭血圧測定家庭血圧測定図2降圧薬内服治療有無別の血圧コントロール状態BP:bloodpressure(mmHg).圧が家庭血圧治療目標値のC135/85CmmHgを超えており,コントロール不良の高血圧(治療中仮面高血圧)と診断された.全C130例中C96例(73.8%)はCRVO発症時に降圧薬の服用がなかった.そのうちC59例(45.4%)は診察室血圧がC140/90mmHgを超えており無治療の高血圧と判断された.診察室血圧が正常範囲であったC37例(28.5%)においても,36例(27.7%)は家庭血圧がC135/85CmmHgを超えており,無治療の高血圧(仮面高血圧)と判断された.1例のみが家庭血圧も正常の非高血圧であった.降圧薬の内服がなく診察室血圧・家庭血圧ともに正常域であったC1例を除き,130例中C129例が降圧薬内服の有無を問わずコントロール不良の高血圧と判断された.表2に降圧薬内服中症例と降圧薬内服のない症例との比較検討を示す.降圧薬服用の有無で比較すると,診察室血圧がC152.4±19.6vs144.2±17.6CmmHg(p=0.013)と降圧薬服用症例のほうが高値であった.表2降圧薬有無の比較による患者背景項目降圧剤服用ありn=34降圧剤服用なしn=96p値性別(例)男性C15:女性C19男性C16:女性C56C0.403年齢(歳)C67.4±9.16C65.7±11.8C0.237BMI(kg/mC2)C24.0±3.3C23.6±4.8C0.173収縮期血圧(mmHg)C152.4±19.6C144.2±17.6C0.013拡張期血圧(mmHg)C85.1±13.8C83.5±9.9C0.199BMI:bodymassindex.平均値±標準偏差.Unpairedttestで比較した.有意水準p<0.05.III考按RVOにおける高血圧の存在は,その有病率の高さとリスクファクターとしての重要性が久山町研究1)でも示されている.同研究では血圧がC130/80CmmHg以上の正常高値レベルからCRVOが多かったことも報告されており,RVO発症時においては高血圧有無の判断だけでなく,血圧の絶対値に対する検討が必要と考えられた.現在の高血圧診断・治療においては家庭血圧測定の重要性が示されている.高血圧治療ガイドライン2,3)においては,仮面高血圧は非高血圧を示す一般住民のC10.15%,高血圧治療中でコントロール良好な診察室血圧が収縮期C140CmmHg未満かつ拡張期C90CmmHg未満の高血圧患者のC9.23%にみられるとしている4).また同ガイドラインでは仮面高血圧患者の臓器障害と心血管イベントのリスクは,未治療か治療中かにかかわらず持続性高血圧患者と同程度と示されている5).そのため同ガイドラインでは「家庭血圧を指標とした降圧治療の実施を強く推奨する」と明示している.また高血圧患者の治療管理率(降圧薬を服用している患者における診察室血圧が収縮期C140CmmHg未満かつ拡張期C90CmmHg未満)は男性約C33.44%,女性約C43.48%としており6),高血圧の診断を受け降圧薬を服用している患者においても,実際は血圧コントロール不良である可能性がある.RVOと高血圧の関連に関しての検討では,これら家庭血圧を指標とした仮面高血圧の存在や治療管理率を考慮した最新の高血圧診療における視点を考慮することが必要と考えられる.今回筆者らは,RVO発症時に内科にて全身状態や血圧が観察された症例に関し検討した.診察室血圧正常例においては家庭血圧測定が施行された.それにより診察室高血圧の有無に加え,仮面高血圧や治療中仮面高血圧の存在が確認された.またCRVO発症時の血圧値が実測され,RVO発症時の血圧コントロール状態に関し検討が可能であった.その結果,既報告以上にCRVOにおける高血圧の有病率は高率であった.また高血圧ありと判断された症例は,降圧薬服用の有無を問わず全例が診察室血圧高値または家庭血圧が高値であり,コントロール不良の高血圧と判断された.コントロール不良の高血圧の存在は,高血圧治療の不十分または破綻を示している.RVOを発症した症例は,降圧薬内服の有無にかかわらず高血圧治療の開始や再検討が必要な状態であることが示唆された.本研究の限界と今後の課題を述べる.今回の研究では診察室血圧高値例の家庭血圧は計測されていなかった.そのため白衣高血圧の存在が確認できなかった.白衣高血圧に関しては高血圧治療ガイドライン2,3)では「白衣高血圧は非高血圧より予後不良である可能性が高い.」とされており,家庭血圧値にかかわらず診察室血圧高値は血圧コントロール不良と考えられた.今回の研究ではCRVO発症におけるコントロール不良の高血圧の存在の深いかかわりが示唆されたが,その病理は明らかではない.筆者らはCRVO発症機転における高血圧の関与に関し,全身循環における静脈灌流と動脈硬化時の血管に生ずる血管生物学的変化を考慮した病態生理をこれまでに発表したが7,8),より一層の検討が必要であると考えられる.高血圧が重要な危険因子である疾患として脳血管疾患・冠動脈疾患・腎疾患が広く認知されており,それらの発症や予後は高血圧治療の影響を強く受ける.今回の研究ではCRVOもこれらの疾患と同様である可能性が示唆されたが,実臨床においては高血圧治療とCRVOの関連に関してはほとんど報告がない.RVOは眼科疾患として扱われているが,RVO発症は全身の循環障害存在のサインともとらえられ,内科・高血圧専門医との密接な連携が必要な病態であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)YasudaM,KiyoharaY,ArakawaSetal:PrevalenceandsystemicriskfactorsforretinalveinocclusioninageneralJapaneseCpopulation:TheCHisayamaCStudy.CInvestCOph-thalmolVisSciC51:3205-3209,C20102)日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014).日本高血圧学会,20143)日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019).日本高血圧学会,20194)KarioCK,CShimadaCK,CSchwartzCJECetal:SilentCandCclini-callyovertstrokeinolderJapanesesubjectswithwhite-coatCandCsustainedChypertension.CJCAmCCollCCardiolC38:C238-245,C20015)MatsuiY,EguchiK,IshikawaJetal:Subclinicalarterialdamageinuntreatedmaskedhypertensivesubjectsdetect-edCbyhomebloodpressuremeasurement.AmJHypertensC20:385-391,C20076)三浦克之:新旧(1980-2020年)のライフスタイルからみた国民代表集団大規模コホート研究:NIPPONDATA80/90/2010/2020平成C30年度総括・分担研究報告書.20197)土屋徳弘:血圧変動に伴う網膜静脈変化と黄斑浮腫変化─網膜は血圧変動による血管障害を直接観察できる臓器─.血圧C25:696-703,C20188)土屋徳弘,戸張幾夫:高血圧・動脈硬化と網膜静脈閉塞症.日本の眼科C89:1368-1376,C2018***

悪性緑内障に対するマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術が奏効した1症例

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1319.1321,2020c悪性緑内障に対するマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術が奏効した1症例中西美穂中島圭一井上俊洋熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座CACaseofMalignantGlaucomaSuccessfullyTreatedwithMicropulseTransscleralCyclophotocoagulationMihoNakanishi,Kei-IchiNakashimaandToshihiroInoueCDepartmentofOphthalmology,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversityC症例:94歳,女性.近医にて左眼閉塞隅角症に対し水晶体再建術を施行した.左眼術前眼圧はC38CmmHgであり,術翌日,浅前房は残存するが左眼眼圧はC17CmmHgへと下降した.術後C2日目から眼圧C34CmmHgと上昇し,降圧点眼および炭酸脱水酵素阻害薬の内服を開始したが,眼圧上昇が持続した.悪性緑内障が疑われ,Nd:YAGレーザーにて後.および前部硝子体膜切開を行ったが,眼圧下降を認めず熊本大学病院紹介となった.受診時(水晶体再建術C6日),著明な浅前房と高眼圧を認めており,悪性緑内障と診断した.高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったために硝子体手術を含む観血的加療を希望されなかった.そのため,マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(MP-CPC)を施行した.左眼術前眼圧C28CmmHg,術翌日,1週後,3週後の眼圧はそれぞれC23CmmHg,10CmmHg,6CmmHgと下降を認めた.前房深度についてはCMP-CPC施行C3週後に改善を認めた.結論:悪性緑内障に対して従来の治療方法が困難な場合,MP-CPCが有効である可能性が示された.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofmalignantCglaucoma(MG)postCcataractCsurgeryCthatCwasCsuccessfullyCtreatedwithmicropulsetransscleralcyclophotocoagulation(MP-TSCPC)C.Casereport:Thisstudyinvolveda94-year-oldwomanCwhoCunderwentCcataractCsurgeryCforCprimaryCangleCclosureCinCtheCleftCeye.CTheCpreoperativeCIOPCwasC38CmmHg,yetitdecreasedto17CmmHgat1-daypostoperative.However,at2-dayspostoperative,itincreasedto34CmmHg.ShewasdiagnosedasMG,andunderwentincisionoftheposteriorcapsuleandanteriorvitreousmem-braneCwithCaNd:YAGClaser.CHowever,CtheCtreatmentCwasCine.ective.CSinceCsheCwasCelderlyCandCsu.eringCfromCdementia,shewastreatedwithMP-TSCPCinsteadofvitrectomy.TheIOPat1-daypreand1-day,1-week,and3-weeksCpostoperativeCwasC28CmmHg,C23CmmHg,C10CmmHg,CandC6CmmHg,Crespectively,CandCtheCanteriorCchamberCbecamedeepat3-weekspostsurgery.Conclusion:MP-TSCPCcanbeane.ectivetreatmentforMGwhencon-ventionaltreatmentscannotbeperformed.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1319.1321,C2020〕Keywords:悪性緑内障,マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術,水晶体再建術,続発緑内障,閉塞隅角症.malig-nantglaucoma,micropulsetransscleralcyclophotocoagulation,cataractsurgery,secondaryglaucoma,primaryangleclosure.Cはじめに悪性緑内障は極端な浅前房と高眼圧をきたす重篤な続発緑内障であり,1869年にCVonCGraefeにより従来の治療法が奏効しないことからその名が付けられた1).Simmonsらは悪性緑内障に対する初期治療は薬物療法であると報告している2).悪性緑内障に対する薬物療法としては,アトロピン,交感神経Cb受容体遮断薬の点眼,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼あるいは内服,高張浸透圧薬の点滴である.薬物療法に奏効しない場合は,Nd:YAGレーザーによる前部硝子体膜の切開,経強膜毛様体光凝固術,硝子体切除術を行う3).経強〔別刷請求先〕中西美穂:〒860-8556熊本市中央区本荘C1-1-1熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座Reprintrequests:MihoNakanishi,DepartmentofOphthalmology,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversity,1-1-1Honjo,Chuo-ku,Kumamoto860-8556,JAPANC0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(143)C1319図1前眼部OCT検査結果a:右眼.やや浅前房であり,有水晶体眼であった.Cb:左眼マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(MP-CPC)施行前.眼内レンズが前方移動し,浅前房であった.周辺は虹彩と角膜が接触していた.Cc:左眼CMP-CPC施行C3週間後の左前眼部COCT検査結果.左前房の著明な深化を認めた.膜毛様体光凝固術はC1930年代から悪性緑内障のような難治緑内障に対し用いられてきたが,疼痛,前房出血,視力低下,低眼圧,眼球癆などの副作用から,他の治療法が有効な場合には敬遠されてきた4).しかし,近年用いられているマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(micropulseCtranss-cleralcyclophotocoagulation:MP-CPC)は,ON/OFFサイクルを繰り返すことで周囲組織の熱凝固を抑え,効率よく凝固することでそれらの副作用を抑えることができると報告されているが5),悪性緑内障に使用した報告はない.今回,閉塞隅角緑内障に対する水晶体再建術後に生じた悪性緑内障に対し,MP-CPCが奏効した症例を経験したので報告する.CI症例患者:94歳,女性.現病歴:近医にて左眼閉塞隅角症に対し水晶体再建術を施行され問題なく終了した.左眼術前眼圧はC38CmmHgであり,術翌日に浅前房は残存するものの左眼眼圧はC17CmmHgに下降した.術後C2日目から左眼眼圧はC34CmmHgと上昇し,降圧点眼および炭酸脱水酵素阻害薬の内服を開始したが,眼圧下降が得られなかった.悪性緑内障が疑われ,Nd:YAGレーザーにて後.および前部硝子体膜切開を行ったが,眼圧下降を認めず,水晶体再建術C6日後に当科紹介となった.初診時所見:視力は右眼C0.7(矯正不能),左眼C0.06C×IOL(0.7C×IOL×sph.6.00D(cyl.2.5DAx100°).眼圧は右眼10CmmHg,左眼C20CmmHg.右眼はやや浅前房で有水晶体眼であった(図1a).左眼は眼内レンズが前方移動し,浅前房であった.周辺は虹彩と角膜が接触していた(図1b).眼底は両眼ともに視神経乳頭拡大や網膜神経線維層厚の菲薄化などの緑内障性変化を認めなかった.眼軸長は右眼がC20.75mm,左眼がC20.95Cmmであり,両眼とも短眼軸であった.経過:初診時左眼圧が前医よりも下降傾向であったことと,左中心前房深度が典型的な悪性緑内障の状態よりは深くなっていることから,病状が改善傾向である可能性を考え,外来で経過観察の方針となった.初診時よりC10日後,左眼圧C27CmmHgと高値を認めたため,手術加療を勧めたが,高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったため,硝子体手術を含む観血的手術は希望されなかった.そのため,MP-CPCを施行した.左眼CMP-CPC術前眼圧はC28CmmHgであったが,術翌日,1週後,3週後の眼圧はそれぞれC23mmHg,10CmmHg,6CmmHgと下降を認めた.左眼前房深度はCMP-CPC施行C3週後に著明な深化を認めた(図1c).MP-CPC施行C3カ月後の左眼矯正視力はC0.5,眼圧はC9CmmHgで,前房深度は保たれていた.CII考按悪性緑内障の平均発症年齢はC70歳で,男女比はC3:11とされている6).閉塞隅角緑内障眼の術後にC2.4%の頻度で発症し,手術既往なく発症することもある7).また,アジア人に多いとされているが,その原因は眼軸が短く,前房が浅い傾向にあるためと推測されている8).今回の症例では両眼ともに短眼軸であり,高齢の女性であったことから,悪性緑内障のリスクを有していた可能性がある.悪性緑内障の機序は明確にはわかっていないが,房水異常流入が考えられてきた.房水異常流入では毛様体から前部硝子体,水晶体,眼内レンズにかけて房水流出が阻害され,房水が前房ではなく,硝子体腔に流入することにより硝子体圧が上昇し,浅前房と高眼圧を引き起こすと考えられている9).また,白内障手術中は急激な眼圧下降により毛様体が前方回旋し,毛様体扁平部と硝子体が離れることにより房水異常流入が生じるという報告もある10).その他の機序としては,術中,術後の低眼圧が脈絡膜.離を引き起こし,それにより前1320あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020(144)房が浅くなるとの報告もある11).悪性緑内障の初期治療は薬物療法であるとCSimmonsらは報告している2).薬物療法には,毛様体筋を弛緩させ,lens-irisdiaphragmを後方回転させる毛様体麻痺薬の点眼,房水産生を抑制するための房水産生抑制薬の点眼や炭酸脱水酵素阻害薬の内服,硝子体を収縮させるための高張浸透圧薬の点滴などがある3).Luntzらはかつて悪性緑内障のC50%は薬物療法をC5日間継続し治癒したと報告している12).薬物療法で効果がない場合は,白内障術後であればCNd:YAGレーザーによる後.,前部硝子体膜の切開,それでも治癒しない場合は硝子体切除術を行い,段階的に治療することで効果がより期待できるとCVarmaらは報告している13).今回の症例では薬物療法およびCNd:YAGレーザーによる後.,前部硝子体膜切開を行うも治癒しなかったために硝子体切除術の適応があったと考えられるが,前述のように高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったためにCMP-CPCを施行した.従来型の経強膜毛様体光凝固術は,これまでも悪性緑内障に対し選択されてきた治療法である.Daveらは,悪性緑内障C28眼のうち,4眼は薬物療法,7眼の眼内レンズ挿入眼はCYAGレーザー,4眼は硝子体切除術,12眼は経強膜毛様体光凝固術で治癒したと報告している.彼らは,経強膜毛様体光凝固術の奏効機序として,毛様体突起の凝固壊死と収縮が毛様体と硝子体の境界面を変化させ,この変化が房水産生の抑制だけでなく,房水流出の促進と毛様体の後方回転に寄与しているのではないかと考察している3).今回筆者らが使用したCMP-CPCでは,従来型の経強膜毛様体光凝固術とは異なり,マイクロパルス秒でレーザー照射のCON/OFFを繰り返すことで周囲組織の熱凝固を抑えることができるのではないかと推測されている4).ONサイクルでは,マイクロ秒で繰り返されるレーザー照射が色素上皮に吸収され,色素上皮の熱エネルギーが上昇することで熱凝固を引き起こすが,無色素上皮では熱エネルギーを吸収しづらく,OFFサイクルでのクーリングタイムを得られるために凝固されることがないと報告されている14).MP-CPCの眼圧下降の作用機序の詳細は解明されておらず,作用機序解明のためにリアルタイムビデオを用いてレーザー照射中の房水流出路の観察が行われた研究も報告されている(JohnstoneCMACetCal,CARVOCAnnualCMeeting2019).それによると,強膜厚の変化,毛様体筋の収縮による脈絡膜上腔の拡大,線維柱帯の内方,後方回転によるCSchlemm管の拡大が観察されている.また,毛様体無色素上皮への傷害は認めなかった.そのため,MP-CPCの眼圧下降機序は房水産生抑制よりも房水流出促進の影響が大きいと思われる.今回の症例では,従来の経強膜毛様体光凝固術の作用機序である房水産生抑制による前房と後房の圧格差の解消に加え,毛様体筋の収縮および毛様体皺襞部の後方回転により房水異常流入が解除(145)されたため,前房が深くなり,房水流出が促進されたことにより眼圧が下がったと推測される.悪性緑内障は比較的まれな疾患ではあるが,発症リスクを理解したうえでの的確な診断,および段階的な治療を施すことにより視機能を保てる可能性が高くなる.薬物療法およびNd:YAGレーザーによる後.・前部硝子体膜切開が奏効せず,観血的手術困難な悪性緑内障に対して,MP-CPCが有効である可能性が示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)vonGraefeA:BeltragezurPathologieundTherapiedesGlaucomas.ArchivfurOphthalmologieC15:108-252,C18692)SimmonsCRJ,CBelcherCCD,CDallowRL:PrimaryCangle-clo-sureCglaucoma.In:DuaneC’sCClinicalOphthalmology(Tas-manCW,CJaegerCEA,eds.)C.CVolC3,CPhiladelphia,CLippincott,Cp23-31,C19853)DaveCP,CSenthilCS,CRaoCHLCetal:TreatmentCoutcomesCinCmalignantglaucoma.OphthalmologyC120:984-990,C20134)NdulueCJK,CRahmatnejadCK,CSanvicenteC:EvolutionCofCcyclophotocoagulation.CJCOphthalmicCVisCResC13:55-61,C20185)AbdelrahmanAM,ElSayedYM:Micropulseversuscon-tinuouswavetransscleralcyclophotocoagulationinrefrac-torypediatricglaucoma.JGlaucomaC27:900-905,C20186)TropeCGE,CPavlinCCJ,CBauCACetal:MalignantCglaucoma.CClinicalCandCultrasoundCbiomicroscopicCfeatures.COphthal-mologyC101:1030-1035,C19947)SchwartzCAL,CAndersonDR:C“MalignantCGlaucoma”inCanCeyeCwithCnoCantecedentCoperationCorCmiotics.CArchCOphthalmolC93:379-381,C19758)ShenCCJ,CChenYY,CSheuSJ:TreatmentCcourseCofCrecur-rentmalignantglaucomamonitoringbyultrasoundbiomi-croscopy:aCreportCofCtwoCcases.CKaohsiungCJCMedCSciC24:608-613,C20089)KaplowitzK,YungE,FlynnRetal:CurrentconceptsintheCtreatmentCofCvitreousCblock,CalsoCknownCasCaqueousCmisdirection.SurvOphthalmolC60:229-241,C201510)MuqitMK:MalignantCglaucomaCafterCphacoemulsi.ca-tion:treatmentCwithCdiodeClaserCcyclophotocoagulation.CJCataractRefractSurgC33:130-132,C200711)QuigleyHA,FriedmanDS,CongdonNG:Possiblemecha-nismsofprimaryangle-closureandmalignantglaucoma.JGlaucomaC12:167-180,C200312)LuntzMH,RosenblattM:Malignantglaucoma.SurvOph-thalmolC32:73-93,C198713)VarmaDK,BelovayGW,TamDYetal:Malignantglau-comaaftercataractsurgery.JCataractRefractSurgC40:C1843-1849,C201414)KucharS,MosterMR,ReamerCBetal:Treatmentout-comesCofCmicropulseCtransscleralCcyclophotocoagulationCinCadvancedglaucoma.LasersMedSciC31:393-396,C2016あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020C1321

広義原発開放隅角緑内障における眼圧季節変動の地域差の検討

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1315.1318,2020c広義原発開放隅角緑内障における眼圧季節変動の地域差の検討清水美穂*1池田陽子*2,3森和彦*3今泉寛子*1吉井健悟*4上野盛夫*3,4木下茂*5外園千恵*3*1市立札幌病院眼科*2御池眼科池田クリニック*3京都府立医科大学眼科学*4京都府立医科大学生命基礎数理学*5京都府立医科大学感覚器未来医療学CRegionalDi.erenceinIntraocularPressureSeasonalVariationinPrimaryOpenAngleGlaucomaPatientsMihoShimizu1),YokoIkeda2,3)C,KazuhikoMori3),HirokoImaizumi1),KengoYoshii4),MorioUeno3,4)C,ShigeruKinoshita5)andChieSotozono3)1)SapporoCityGeneralHospitalOphthalmology,2)Oike-IkedaEyeClinic,3)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,4)DepartmentofGenomicMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,5)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC眼圧季節変動には気候や気温が関与している.今回,札幌市と京都市で広義原発開放隅角緑内障(POAG)の眼圧季節変動を調べた.対象はC2016年の春(3.5月),夏(6.8月),秋(9.11月),冬(12.2月)に眼圧測定でき,市立札幌病院眼科(札幌市)と御池眼科池田クリニック(京都市)通院中の投与薬剤の変更がない広義CPOAG患者,札幌109例,京都C326例である.平均眼圧は春夏秋冬の順に,札幌C13.9C±3.0/13.7±2.8/14.1±3.0/13.6±2.7CmmHg,京都C13.0±3.1/12.3±2.7/12.3±2.8/13.0±2.9CmmHgであった.札幌では有意な眼圧季節変動がなく,京都ではあり,冬季に眼圧が高値であった.CPurpose:Tocompareregionaldi.erencesinintraocularpressure(IOP)seasonalvariation(IOP-SV)betweenprimaryCopen-angleCglaucoma(POAG)patientsCseenCinCSapporoCandCKyoto,CJapan.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC435CPOAGpatients(109CseenCatCSapporoCCityCGeneralCHospital,CSapporo,CJapan,CandC326CseenCatOike-IkedaEyeClinic,Kyoto,Japan)inwhomIOPwasmeasured4timesperseason;i.e.,Season1:Spring(MarchthroughMay)C,CSeason2:Summer(JuneCthroughAugust)C,CSeason3:Fall(SeptemberCthroughNovember)C,CandCSeason4:Winter(DecemberthroughFebruary)C.TheIOPineachseasonwasevaluatedusingrepeatedmeasuresANOVAandWelch’st-testwithBonferronicorrection.Results:IntheSapporoandKyotopatients,themeanIOPinCSeasonsC1-4CwereC13.9±3.0,C13.7±2.8,C14.1±3.0,CandC13.6±2.7CmmHg,CandC13.0±3.1,C12.3±2.7,C12.3±2.8,CandC13.0±2.9CmmHg,respectively.Conclusion:Signi.cantPOAG-relatedIOP-SVwasobservedintheKyotopatients,yetnotintheSapporopatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1315.1318,C2020〕Keywords:広義原発開放隅角緑内障,眼圧季節変動,地域差,皮膚体感温度差.primaryopenangleglaucoma,intraocularpressureseasonalvariation,regionaldi.erence,apparenttemperature.Cはじめに緑内障の進行に関与する因子としてもっともエビデンスの高い要因は眼圧であり,眼圧は日内変動,日々変動,季節変動,体位による変動,体内水分量の変化による変動などさまざまな要因で変動する1.5).眼圧の季節変動に関しては,健常人にも存在するが,緑内障患者においては健常人より変動幅が大きい6)ことが報告されており,眼圧は冬季に高値を示す2,5,7,8).眼圧季節変動の要因は明確に判明していないが,気温が大きく影響していると考えられている.日本は南北に長い地形をしており,北と南では気候や気温が大きく異なって〔別刷請求先〕清水美穂:〒060-8604北海道札幌市中央区北C11条西C13丁目C1-1市立札幌病院眼科Reprintrequests:MihoShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,1-1Nishi13-Chome,Kita11-Jo,Chuo-Ku,Sapporo,Hokkaido060-8604,JAPANC表1対象の背景札幌Cn=109京都Cn=326p値性別(男/女)C46/63C139/187C1.000平均年齢(歳)C72.2±9.3C67.8±12.4C0.002病型C0.906POAGC44C92性別(男/女)C24/20C41/51C0.342NTGC65C234性別(男/女)C22/43C98/136C0.474平均眼圧(mmHg)C13.8±2.9C12.7±2.9<C0.001平均点眼スコア(点)C1.5±0.7C1.4±1.5C0.023POAG:開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障.数値はすべて(平均C±SD)で示した.いるが,いずれも夏と冬の気温差が大きい.今回,筆者らは日本最北地域である札幌市(北海道)と本州の中心に近い京都市(京都府)において,広義開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)患者の眼圧季節変動の存在などを調査した.これまで日本の異なる地方における広義CPOAGの眼圧季節変動を比較した報告はない.CI対象および方法対象は札幌市にある市立札幌病院と京都市にある御池眼科池田クリニックに通院中の線維柱帯切開術および線維柱帯切除術の既往のない広義CPOAG患者のうち,2016年の春,夏,秋,冬の各季節に受診し,そのC1年間に投与薬剤の変更がなかった,札幌C109例(男性C46例,女性C63例,平均年齢C72.2C±9.3歳),京都C326例(男性C139例,女性C187例,平均年齢C67.8C±12.4歳)である(表1).季節を,春をC3.5月,夏をC6.8月.秋をC9.11月,冬をC12.2月と規定し,札幌と京都でそれぞれに眼圧季節変動があるかを検討した.眼圧は,両施設ともCGoldmann圧平式眼圧計を用いて,札幌群ではC2名の医師,京都群ではC3名の緑内障専門医が,それぞれ担当の患者についてC1年を通し担当を変えずに測定を行った.同一患者が同一季節内に数回受診した場合は測定できた眼圧を平均して,その季節の眼圧結果とした.測定眼が両眼の場合は右眼を選択した.統計分析は札幌と京都の患者背景の違いをCWelchのCt検定またはCc2検定を用いて評価した.眼圧季節変動はCrepeatedCmeasuresANOVAの実施後,事後解析でCBonferroni補正によるCWelchのCt検定を用いた.また,使用中の緑内障点眼薬の数をスコア化(単剤:1,配合剤:2,内服C1錠をC1とカウント)し,Wilcoxonの順位和検定を用いて評価した.データ表示は平均値±標準偏差,統計解析にはCTheRsoftware(Version3.4.3)を用いた.また,統計的有意水準は5%とした.II結果対象の背景を表1に示す.男女比はCc2検定で有意差はなかったが,平均年齢はCt検定でCp値=0.002と有意に札幌群が高齢であった.点眼スコアは札幌C1.5C±0.7(1.4剤),京都C1.4C±1.5(0.9剤)と札幌が有意に多かった(p=0.023)が,平均点眼本数は両群ともC1.5剤であり,1年を通じて点眼内容も変化がないため,季節変動に点眼スコアが及ぼす影響はないと考えた.眼圧は春夏秋冬の順に札幌C13.9C±3.0/C13.7±2.8/14.1±3.0/13.6±2.7CmmHg,京都C13.0C±3.1/12.3C±2.7/12.3±2.8/13.0±2.9CmmHgであった.Repeatedmea-suresANOVAにて,札幌では眼圧の季節変動がなかった(p=0.593)が,京都では眼圧の季節変動に有意差があった〔春対夏,春対秋,夏対冬,秋対冬(p<0.05)〕(図1).CIII考按患者背景として札幌群と京都群において,男女比はC4対6,病型もPOAG:正常眼圧緑内障(normaltensionglaucoma:NTG)=4:6で同じであったが,その他の背景要因として平均年齢は札幌C72.2歳,京都C67.8歳と札幌のほうが有意に高齢で,平均眼圧は札幌群C13.8C±2.9CmmHg,京都群C12.7C±2.9CmmHgと札幌群で有意に高かった(WelchのCt検定p<0.001)ことが異なっている.測定時間については後ろ向き研究で統一されていない.CShiose7)は,全身状態と眼圧の関係において,日本人では年齢とともに眼圧が下降することを報告しているが,今回の結果では平均年齢の高い札幌群で眼圧が高かった.またNTGよりCPOAGや高眼圧症で眼圧の季節変動幅が大きいこと8)が報告されている.本研究で眼圧平均値の高い札幌群で眼圧の季節変動の有意差がなかったことから,年齢や平均眼圧が眼圧の季節変動に及ぼす影響はそれほど大きくないと考えられる.また,平均眼圧が収縮期血圧,肥満と正の相関を示すというCShiose7)の報告や,収縮期血圧が眼圧にかかわるという報告7,9,10)があり,血圧が眼圧季節変動にもかかわる可能性があるため,今後検討してゆきたい.眼圧季節変動のパターンについて,今回は図1に示すように京都では夏と比較して気温が下がる春,秋,冬に眼圧が上昇したのに対し,札幌では各季節間の有意差がなかった.一般的に眼圧は夏より冬が高い傾向を示す2,5,7,8).その理由としてはいまだ明確なものはないが,眼圧調整機構に自律神経系が深くかかわっていることが示唆されている.ヒトの交感神経機能は寒冷に晒されると亢進し,血中,尿中カテコラミン含量が冬季に有意に上昇,カテコラミンの上昇がCb受容体を介した房水産生を増加させ,眼圧が上昇すると考えられている11,12).眼圧季節変動に寒冷や交感神経が大きな影響を与えることを踏まえて,札幌と京都の気候,とくに冬季の室内****30.030.025.025.05.05.0*<0.050.00.0春夏秋冬春夏秋冬札幌の眼圧京都の眼圧図1各季節の眼圧京都群は春対夏,春対秋,夏対冬,秋対冬(p<0.05)で眼圧に有意差があった.札幌群では各季節において有意差がなかった.エラーバーは標準偏差を示す.眼圧(mmHg)20.020.015.015.010.010.0環境の影響を考えてみた.日本は南北に長い地形をしており,北と南では気候や気温が大きく異なっている.日本で唯一の亜寒帯気候地域である北海道は図213)に示すように年間の寒暖の差が激しいが,夏は涼しく,冬も部屋や公共場所は暖かく保たれているという特徴がある.一方,京都は日本列島の中心に位置しながら,盆地という特殊な地形上,夏は非常に暑く冬は寒く,寒暖の差が激しい.このC2地域では夏冬の寒暖の差は大きくても体感する温度が違うという特徴がある.張らは,冬季(1.2月)の居間の室温について全国をC6地域に分け調査したところ,北海道は第一位でC22.0℃だったのに対し関西はC15.9℃でC6地域中最下位であったと報告している14).冬季において札幌では室内温度が温暖かつ一定に保持できるよう十分考慮された住宅構造,暖房設備があり,また,外出時も極寒のため長時間の徒歩移動はせず交通機関の利用により外気に晒される時間が短く,公共機関・施設内も温度が高く設定されており,体感皮膚温度の変動が少ないことが,先に示したような交感神経系の持続的な亢進が少ないことにつながり眼圧の変動が小さく,季節変動の差が少なかった一因になったと考えられた.一方,京都は冬季の室内温度も低く,体感皮膚温度の低下により交感神経が長期間亢進され冬季の眼圧上昇につながった可能性が考えられた.札幌で冬季より秋季に眼圧が高かった理由としては,秋季の環境要因の影響,すなわち,冬への移行期間で暖房設備が完備されないまま気温が急に下がる時期のため,逆に冬季に比べて皮膚温度が低かった可能性が考えられた.西野らは15)札幌市の平均気温から,20℃以上になる7.8月を夏季,1℃以下のC3月を含めたC12.3月を冬季とし,4.6月を春季,9.11月を秋季として季節変動を検討したところ,冬季の有意な眼圧上昇があったことを報告している.本検討のような他地域との比較にはこのような解析は選択できないものの,北海道の特殊な気象状況を考慮のうえこのような切り口で解札幌気温(℃)札幌京都C35京都1C.3.5C5.7C302C.2.3C6.4C253C2.1C9.9C4C7.8C16.1C205C14.9C21C156C16.3C23C7C20.7C27.8C108C23.9C29C59C19.4C25.3C010C10.6C19.7C11C2.1C12.5-512C.1C8.2-10123456789101112(月)図22016年札幌と京都の年間気温13)札幌,京都ともに,夏と冬の温度差が大きい.(気象庁ホームページより作成)析をしてみると今回と異なる結果となる可能性がある.緑内障治療の一番強力なエビデンスは眼圧下降である16)が,眼圧はさまざまな要因で常に変動しており,季節や地域もその一つであることがわかった.眼圧変動幅の大きさが視野進行にかかわる17)ということからも,眼圧の季節変動への留意も必要である.今回は使用した点眼スコアは両地域で有意差がなかったが,使用点眼内容については検討していないこと,眼圧測定時刻は後ろ向き研究のため統一されておらず,緑内障患者の多様な背景因子を十分に考慮した検討とはいえない.今後はこれらの要因も考慮したうえでさらに解析をしてゆく予定である.これらの要旨は,第C28回日本緑内障学会で発表した.文献1)安田典子:より質の高い緑内障治療をめざして.あたらしい眼科28:1115-1123,C20112)BlumenthalCM,CBlumenthalCR,CPeritzCECetal:SeasonalCvariationCinCintraocularCpressure.CAmCJCOphthalmolC69:C608-610,C19703)KiuchiCT,CMotoyamaCY,COshikaT:RelationshipCofCpro-gressionCofCvisualC.eldCdamageCtoCposturalCchangesCinCintraocularpressureinparentswithnormal-tensionglau-coma.OphthalmologyC113:2150-2155,C20064)HuntCAP,CFeiglCB,CStewantIB:TheCintraocularCpressureCresponsetodehydration:apilotstudy.EurJApplPhysi-olC112:1963-1966,C20125)IkadaCY,CUenoCM,CYoshiCKCetal:LongitudinalCseasonalCvariationsCofCintraocularCpressureCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCpatientsCasCrevealedCbyCreal-worldCdata.CActaOphthalmologica:1-2,C20206)WilenskyCJT,CGieserCDK,CDietscheCMLCetal:IndividualCvariabilityinthediumalintraocularpressurecurve.Oph-thalmologyC100:940-944,C19937)ShioseY:Intraocularpressure:NewCperspectives.CSurvCOphthalmolC34:413-435,C19908)逸見知弘,山林茂樹,古田仁志ほか:眼圧の季節変動.日眼会誌98:782-786,C19949)SuzukiCY,CIwaseCA,CAraieCMCetal:RiskCfactorCforCopen-angleglaucomainaJapanesepopulation:theTajimiStudy.Ophthalmology113:1613-1617,C200610)KawaseK,TomidokoroA,AraieMetal:Ocularandsys-temicCfactorsCrelatedCtoCintraocularCpressureCinCJapaneseadults:theTajimiStudy.BrJOphthalmolC92:1175-1179,C200811)太田東美,宇治幸隆,服部靖ほか:トラベクレクトミー術後における眼圧季節変動.日眼会誌C96:1148-1153,C199212)長瀧重智,比嘉敏明:房水産生機構:緑内障の薬物療法(東郁郎編),p12-19,ミクス,199013)気象庁ホームページ,2016;www.data.jma.go.jp/obd/Cstats/etrn/index.php14)張会波,吉野博,村上周三ほか:全国の住宅における室内温度環境に関する分析.日本建築学会技術報告集C15:C453-457,C200915)西野和明,吉田富士子,新田朱里ほか:広義の原発開放隅角緑内障患者に対する自動静的視野検査直後の冬期における一過性眼圧上昇.日眼会誌117:990-995,C201316)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C201817)木内良明:眼圧変動の意義と考え方.臨眼C63(増):28-33,C2009C***

MPC ポリマーが点眼用保存剤ベンザルコニウム塩化物の角膜傷害性および薬物眼内移行性へ与える影響

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1309.1314,2020cMPCポリマーが点眼用保存剤ベンザルコニウム塩化物の角膜傷害性および薬物眼内移行性へ与える影響南実沙*1山口瑞季*1山﨑由夏*1大竹裕子*1櫻井俊輔*2原田英治*2長井紀章*1*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2日油株式会社ライフサイエンス事業部CE.ectofMPCPolymeronCornealToxicityandCornealDrugPermeationofBenzalkoniumChlorideinCornealEpithelialCellsMisaMinami1),MizukiYamaguchi1),YukaYamasaki1),HirokoOtake1),ShunsukeSakurai2),EijiHarata2)andNoriakiNagai1)1)FacultyofPharmacy,KindaiUniversity,2)LifeScienceProductsDivision,NOFCorporationC筆者らは生体適合性ポリマーであるCMPCポリマーが一般的な点眼用添加剤ベンザルコニウム塩化物(BAC,0.005.0.02%)の角膜傷害性および薬物眼内移行性に与える影響について検討を行った.まず,不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用い,BAC角膜傷害性に対するCMPCポリマーの保護機構を評価したところ,MPCポリマーにCBAC細胞傷害軽減効果が認められた.また,これら細胞傷害軽減機構を明らかにすべく,MPCポリマー処理時におけるCHCE-T細胞増殖性,接着性およびウサギ赤血球モデルを用いた膜安定性を測定したところ,MPCポリマーに高い膜安定化作用が認められた.さらに,MPCポリマー配合または非配合とした市販チモロールマレイン酸塩(TM)点眼液を調製し,ウサギに点眼した際の薬物眼内移行量を調べたところ,MPCポリマー配合・非配合間での眼内CTM挙動は同等であった.以上,点眼剤処方におけるCMPCポリマー使用は,BACの薬物眼内移行性に影響することなく,BAC細胞傷害性を軽減する可能性を示した.本研究結果は,眼科領域におけるCMPCポリマーの応用性拡大につながるものと考えられる.CInthisstudy,weinvestigatedthee.ectof2-methacryloyloxyethylphosphorylcholine(MPC)polymeroncor-nealCtoxicityCandCcornealCdrugCpermeabilityCofCbenzalkoniumchloride(BAC)C.CWeCfoundCthatCtheCMPCCpolymerCattenuatedthedecreaseofcellviabilityinahumancornealepithelialcell-transformed(HCE-T)celllinestimulatedwith0.005-0.02%CBAC.CItCisCknownCthatCtheCcellCgrowth,CcellCadhesion,CandCtheCtolerationConCtheCcellCmembraneCareCrelatedCtoCtheCpreventiveCe.ectCofCHCE-TCviability.CTherefore,CweCinvestigatedCtheCrelationshipCbetweenCtheCMPCpolymerandthosefactors.TheMPCpolymerhadnoe.ectonthecellgrowthandadhesionintheHCE-TcellCline,CyetCitCwasCfoundCtoCenhanceCtheCtolerationConCtheCcellCmembrane,CasCitCshowedCtheCpreventiveCe.ectCforCcellstimulationofBACinrabbitredbloodcells.Inaddition,nodi.erencewasobservedinthecornealdrugperme-abilityofcommerciallyavailabletimololmaleateeyedropswithorwithoutMPCpolymer.TheseresultsshowthataCcombinationCofCBACCandCMPCCpolymerCmayCprovideCaCsafeCtherapyCforCpatientsCrequiringClong-termCeye-dropCadministration.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1309.1314,C2020〕Keywords:MPCポリマー,ベンザルコニウム塩化物,角膜毒性,点眼液,チモロールマレイン酸塩.MPCCpoly-mer,benzalkoniumchloride,cornealtoxicity,eyedrops,timololmaleate.Cはじめに加物(保存剤)として使用されており,かつ薬物眼内移行性ベンザルコニウム塩化物(benzalkoniumchloride:BAC)の向上に寄与している.しかし,ドライアイ患者や長期の点は広い抗菌域を有していることから市販点眼液の約C7割に添眼や多剤点眼が必要な緑内障患者などでは,点状表層角膜症〔別刷請求先〕長井紀章:〒577-8502東大阪市小若江C3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:NoriakiNagai,Ph.D.,FacultyofPharmacy,KindaiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,CJAPANCCH3CH3CH2CCH2CCOO-CH3COOCH2CH2OPOCH2CH2N+CH3C4H9OCH3mn図1MPCポリマーの化学構造式といった細胞傷害性の眼局所副作用がみられる.このため,角膜傷害性の少ない新たな添加物として,塩化ポリドロニウムやSofZia(トラバタンズ点眼液で用いられる保存システム)といった細胞毒性の低い新規保存剤の開発,配合剤やC1回使い切りタイプの容器やCPFデラミ容器などが開発されている.筆者らもまた,BACにCD-マンニトールやセリシンといった添加物を配合することで,BACの細胞傷害性が軽減できることを報告してきた1,2).このように,処方設計の変更により眼に優しい点眼製剤の開発は現在臨床で重要視されており,さらなる添加物候補の模索が続いている.MPCポリマー(図1)は日油株式会社により製造され,細胞を構成する細胞膜のホスファチジルコリンの極性基をもつ,2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートとの共重合体である.吸保湿性にすぐれた生体親和性材料であり,すでに人工心臓,ステント,カテーテルなど臨床にて実用化されている安全性の面からも,保湿,皮膚保護,刺激緩和および肌荒れ改善への適用拡大が期待されている.また,MPCポリマーには三次元ヒト角膜モデルに対する細胞毒性軽減効果が認められることが報告されている3).本研究では,これらCMPCポリマーの眼科領域での点眼用添加物としての応用化をめざし,BAC角膜傷害に対するCMPCポリマーの軽減効果およびそのメカニズムについて評価を行った.また,MPCポリマー併用がCBACの薬物眼内移行性に及ぼす影響についても検討した.CI対象および方法1.使用薬物および実験動物点眼用保存剤として多用されているCBACは関東化学から,市販チモロールマレイン酸点眼液C0.5%(0.005%BAC含有)は参天製薬から購入した.また,MPCポリマーは日油から譲渡されたものを用いた.培養細胞は理化学研究所より供与された不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T,RCBNo.1384)4,5)を用い,5.0%ウシ胎児血清を含むCDMEM/F12培地(GIBCO社製)にて培養した.日本白色種雄性ウサギ(2.5.3.0Ckg)は清水実験材料から購入し,近畿大学実験動物規定に従い実験を行った.2.薬物による細胞傷害性評価HCE-TをC96wellプレートにC100Cμl(1C×104個)ずつ播種し,37℃,5%CO2インキュベーター内でC24時間培養後,0,30,60およびC120秒間CMPCポリマー(0.1%またはC0.5%),BAC(0.005%またはC0.02%),およびその組み合わせにて処理し,PBSにてC2回洗浄を行った.その後,各CwellにC100Cμlの培地およびCCellCCountCReagentSF(ナカライテスク製)を加え,37℃,5%CO2インキュベーター内でC1時間処理後,マイクロプレートリーダー(BIO-RAD社製)にてC450Cnmの吸光度(Abs)を測定した.本研究では,薬剤処理後の細胞死亡率(%)を次式(1)により算出した.細胞死亡率(%)=(Abs未処理.Abs薬剤処理)/Abs未処理×100(1)一般的に,点眼された薬物は涙液により希釈され,5分程度で涙点から鼻涙管を介し涙液とともに眼表面から排出される.これら背景から,BAC濃度は市販点眼液中で使用されるC0.005%およびC0.02%とし,処理時間は眼表面上での薬物滞留時間および希釈されていないCBAC濃度での処理といった点を考慮し,処理C120秒後までのCBACによるCHCE-T細胞傷害性とCMPCポリマー併用処理による保護効果を検討した.C3.MPCポリマーによる細胞増殖性評価HCE-T細胞をC96wellプレートにC100Cμl(0.5C×104個)ずつ播種し,37℃,5%CO2インキュベーター内でC24時間培養後,MPCポリマー含有CDMEM/F12培地C100Cμlにて処理を行った.その後24時間培養し,各wellにCellCCountCReagentSFを加え,37℃,5%CO2インキュベーター内で1時間処理を行い,マイクロプレートリーダーにてC450Cnmの吸光度(Abs)を測定することで細胞増殖性を調べた.細胞増殖率は次式(2)により算出した.細胞増殖率(%)=AbsMPCポリマー処理C/Abs未処理×100(2)本研究では,MPCポリマーは終濃度がC0.01,0.1および0.5%になるように添加した.4.MPCポリマーによる細胞接着性評価HCE-T細胞をC96wellプレートにC75Cμl(0.5C×104個)ずつ播種し,終濃度がC0.01,0.1およびC0.5%になるようCPBSで希釈したCMPCポリマーC25Cμlを添加し,37℃,5%CO2インキュベーター内でC12時間培養後,各CwellにCCellCountReagentSFを加え,37℃,5%CO2インキュベーター内で1時間処理を行い,マイクロプレートリーダーにてC450Cnmの吸光度(Abs)を測定することで細胞接着性を調べた.細胞接着率は次式(3)により算出した.細胞接着率(%)=AbsMPCポリマー処理C/Abs未処理×100(3)C5.BAC処理に伴うウサギ赤血球溶血率変化の測定ウサギ耳静脈より採血した血液1CmlとC100Cμlヘパリン(10mg/ml)を混和後,遠心分離(600g,37oC,5分)を行った.その後上清を捨て,沈殿物とCPBSがC1:3となるようにCPBSを加え,さらに遠心分離(400Cg,37oC,5分)を行い,沈殿物の回収を行った.これら洗浄操作をC2回繰り返したものを赤血球標品として実験に用いた.陽性対照とした完全溶血赤血球は,精製水C2Cmlに赤血球標品C40Cμlを添加することで作製した.実験は以下の方法にて行った.赤血球標品C40CμlをCMPCポリマー(0.1%またはC0.5%)およびCBAC含有または非含有の生理食塩水(BAC濃度,8.12Cμg/ml)2Cml中に加え,37oCにてC1時間インキュベートを行った.その後,遠心分離(460Cg,37oC,5分)にて上清を採取し,576Cnmにおける吸光度を測定することでCBAC刺激に伴う溶血率変化を示した.また,MPCポリマー前処理時には,赤血球標品をCMPCポリマー(0.1%またはC0.5%)含有または非含有の生理食塩水にてC30分間インキュベート後,生理食塩水にて洗浄を行い,上記に示した8.12Cμg/mlBACにより刺激を行った実験に用いた.処理後の溶血率(%)算出には次式(4)を用いた.溶血率(%)=Abs試験液/Abs陽性対照×100(4)C6.Invivo薬物眼内移行性評価ペントバルビタールC15Cmg/kg腹腔投およびイソフルランにて吸入麻酔下,ファイコンチューブをつけた注射針(26G)を雄性日本白色種ウサギの角膜輪部から前房内に挿入し,イトーマイクロシリンジ(伊藤製作所)にて眼房水C5Cμlを採取した.その後,MPCポリマー含有,非含有CTM製剤をC50μl点眼し,一定時間ごとに眼房水C5Cμlを採取し,下記CHPLC法にて薬物量の測定を行った.試料C50Cμlに内標p-オキシ安息香酸エチル(4Cμg/ml,MeOHにて溶解)100Cμlを加え,移動相:リン酸緩衝液/メタノール/アセトニトリル(70/20/10v/v/v)を用い測定することでCTM濃度測定を行った.HPLCには,高速液体クロマトグラフィー装置CLabSolutions(島津製作所),およびCInertsilODS-3(2.1C×50Cmm,ジーエルサイエンス)を用い,カラム温度はC35℃とした.また,移動相の流速C0.20Cml/分,検出波長C294(nm),試料注入量C10Cμlとし,オートインジェクターCSIL-20ACを使用した.点眼された薬物は涙液により希釈され,その濃度はおよそ点眼液中のC10%程度となる.さらに眼表面の点眼成分は涙液とともに鼻涙管から排出される.これら生体での薬物挙動とCinvitro実験の結果を考慮し,invivo実験ではCMPCポリマー濃度C10%と設定した.C7.統.計.解.析得られたデータは平均値±標準誤差(SE)として表した.各々の実験値はCStudentのCt-testまたはCDunnettの多重比較検定にて解析した.本研究ではCp値がC0.05以下を有意差ありとした.CII結果1.MPCポリマー添加時におけるBAC角膜上皮細胞傷害性の変化まず,MPCポリマーの細胞傷害性を確認したところ,0.1%およびC0.5%MPCポリマー処理では傷害性は確認されず,処理後の細胞生存率も生理食塩水と同程度であった(図2a).BAC単独処理では細胞傷害が認められ,0.005%BAC処理C120秒後におけるCHCE-T細胞生存率はC55.7%であり(図2b),0.02%BAC処理群では,生存率C0%であった(図2c).一方,これらCBACにCMPCポリマーを併用処理することでCBACの角膜細胞傷害性が軽減され,MPCポリマー併用CBAC0.02%群のC120秒時における細胞生存率はC55.3%と非併用群に比べ有意に高値を示した(図2b,Cc).また,市販TM点眼液をC120秒処理した群では細胞生存率はC49.1%であったが,MPCポリマーを併用することでC76.1%まで細胞傷害性の緩和がみられた(図2d).C2.MPCポリマー処理時における角膜細胞増殖性および細胞接着性の変化細胞が傷害を受けた際の生存率を高める因子として細胞増殖性や細胞接着性の向上が知られている.本研究では,HCE-Tを用いCMPCポリマー自身における細胞増殖性および細胞接着性を測定した(図3).まず,細胞増殖性を検討したところ,0.01.0.5%MPCポリマー処理群の増殖率はPBS処理時の増殖率と同程度であった(図3a).さらに,細胞接着性についても検討したところ,増殖性と同様C0.01.0.5%MPCポリマーに細胞接着能の向上はみられなかった(図3b).C3.CMPCポリマー処理時におけるBAC誘発ウサギ赤血球溶血率の変化図4はCBAC刺激に伴うウサギ赤血球溶血性の変化とCMPCab120120100100細胞生存率(%)8080*60604040202003060901200306090120時間(sec)時間(sec)cd1201200.02%BAC100100細胞生存率(%)*細胞生存率(%)80604080604020*20003060901200TMTM+MPC時間(sec)図2MPCポリマー(MPC)によるBAC細胞傷害軽減効果a:MPC処理がCHCE-Tに与える影響.Cb:MPC処理がC0.005%BAC傷害に及ぼす影響.Cc:MPC処理がC0.02%BAC傷害に及ぼす影響.Cd:MPC処理が市販CTM点眼液傷害に及ぼす影響.平均値C±標準誤差,n=6-10.*p<0.05,vs.BAC.#p<0.05,vs.Saline.Cポリマーによる膜保護効果を示す.BAC刺激により溶血が認められ,8Cμg/mlCBAC刺激による溶血率はC21.2%,10Cμg/CmlBAC刺激ではC98.0%であった(図4b).一方,BACとMPCポリマーを併用処理することで,赤血球の溶血は軽減され,8Cμg/mlおよびC10Cμg/mlBACとC0.5%MPCポリマー併用処理時における溶血率はそれぞれC8.9%,46.3%であり(図4b),MPCポリマーによる膜保護効果は濃度依存的であった.さらに,これらCMPCポリマーのCBAC刺激による溶血抑制効果は,MPCポリマーをC30分間前処理した系においても認められた(図4a).C4.MPCポリマー併用が市販TM点眼液の角膜透過性に与える影響BACは界面活性作用を有していることから,併用時には点眼液の薬物眼内移行性が高まることが知られている.本研究では,緑内障治療薬として多用されている市販CTM点眼液を対象に,MPCポリマー併用および非併用時におけるTMの眼内移行性をウサギにて検討した(図5).市販CTM点眼液点眼C5分後以降から房水中にてCTMが検出され,眼内CTM濃度は点眼C60分後まで緩やかに上昇し,その後減少傾向が認められた.また,MPCポリマー併用時においても点眼C5分後以降でCTMが房水中に移行し,点眼C90分後までの房水中薬物挙動はCMPCポリマー非併用時と類似していた.CIII考按MPCポリマーのCBAC角膜毒性軽減機構について検討するうえで評価モデルの選択は重要である.筆者らはこれまで,各種緑内障治療薬によるCHCE-T傷害作用が,正常ヒト角膜上皮培養細胞への傷害作用に非常に類似し,さらに細胞増殖性,感受性にばらつきが少ないため,HCE-Tが正常ヒト角膜上皮細胞の代わりにCinvitro角膜傷害性評価に使用できることを報告してきた6).そこで本研究ではまず,HCE-Tを用いCMPCポリマーのCBAC角膜毒性軽減機構について検討した.その結果,BACとCMPCポリマーを併用処理することでCBACの角膜細胞傷害性が濃度依存的に軽減された(図2).小林-安藤らはウサギ角膜上皮を用い,MPCポリマーが塩化ポリヘキサニドに対する細胞毒性軽減効果を有することを示しており7),高田らは三次元培養ヒト角膜モデルにaa120120100100細胞増殖率(%)80溶血率(%)8060604040202000PBS0.010.10.581012MPC(%)BAC(mg/ml)bb120120100100細胞接着率(%)80溶血率(%)8060604040202000PBS0.050.10.5MPC(%)BAC(mg/ml)図3MPCポリマー(MPC)がHCE.Tの細胞増図4MPCポリマー(MPC)前処理(a)または併用処理殖(a)および接着(b)に与える影響(b)がBAC刺激による赤血球溶血性に与える影響平均値±標準誤差,n=4.8C.C平均値±標準誤差,n=4.*p<0C.05,vs.Saline.C50マーの細胞毒性軽減機構を検討した.角膜細胞の生存率には細胞増殖,細胞接着および膜安定性TM濃度(mM)の三つが主として関与しており,これらのうち一つまたは複数が高まった際にCinvitro系では細胞生存率が高まると考えC4030られる.本研究にてCMPCポリマー処理時における細胞増殖,C20細胞接着性を測定したところ,MPCポリマーの両機能に対C10する影響は認められなかった(図3).このためCMPCポリマーの膜安定作用の有無について評価した.HCE-Tは刺激時C00102030405060708090にさまざまな防御機構が働き,MPCポリマーの膜のみに対時間(min)する影響を評価することはむずかしい.一方,赤血球は核を図5MPCポリマー(MPC)配合が市販TM点眼液の薬物眼内移行性に与える影響平均値±標準誤差,n=3.て種々市販点眼液の細胞毒性をCMPCポリマーが緩和することを報告している3).本結果はこれら過去の報告を支持するものであり,本結果を踏まえ,HCE-Tを用いてCMPCポリ持たないことから細胞分裂などを行わないのが特徴であり,薬剤自体の直接的な刺激性やそれに対する保護作用の評価が可能である8).この赤血球モデルを用い,BAC刺激に対するCMPCポリマーの膜保護効果を評価したところ,MPCポリマー処理により赤血球の溶血が軽減され,その保護効果は濃度依存的であった(図4).さらに,MPCポリマーを前処理した際にもCMPCポリマーの膜保護効果が認められた.MPCポリマーは生体膜の主要構成成分であるレシチンと類似した構成であり,細胞膜表面に薄い皮膜を形成することが知られている9).これら結果および過去の知見から,MPCポリマーの膜保護効果は,BACが細胞表面を直接刺激するのを防ぐ,または膜の強度を高めることに起因するものと示唆された.BACには界面活性作用があることから,薬物の角膜透過性向上にも寄与している.このためCMPCポリマーがCBACの薬物眼内移行性に影響を与えては,点眼用添加物としての有用性は十分とはいえない.そこで次に,MPCポリマーおよびCBAC併用処理時における薬物眼内移行性を評価した(図5).薬効発現において薬物眼内移行性が必須な市販緑内障治療薬CTM点眼液を対象薬物とし,点眼後の眼房水中薬物挙動をウサギにて測定したところ,MPCポリマー併用,非併用にかかわらず,点眼C5分以降でCTMが房水中に移行し,両群において点眼C90分後までの房水中薬物挙動は類似していた.本結果は,MPCポリマーの膜表面への付着は薬物の膜透過性に影響を及ぼすほどのものではなく,MPCポリマー併用はCBACの薬物角膜透過性に影響しないことを示唆した.以上,MPCポリマーはCBACの薬物角膜透過性促進効果に影響せず,副作用であるCBAC細胞毒性を軽減する可能性があることを示した.今後,MPCポリマーとCBAC抗菌作用の関係についても検討を進めていく予定である.利益相反:長井紀章(カテゴリーF,クラスCIII:日油株式会社)原田英治,櫻井俊輔(カテゴリーE)大竹裕子,南実沙,山口瑞希,山崎由夏(なし)文献1)NagaiN,YoshiokaC,TaninoTetal:DecreaseincornealdamageCdueCtoCbenzalkoniumCchlorideCbyCtheCadditionCofCmannitolCintoCtimololCmaleateCeyeCdrops.CJCOleoCSciC64:C743-750,C20152)NagaiCN,CItoCY,COkamotoCNCetal:DecreaseCinCcornealCdamageCdueCtoCbenzalkoniumCchlorideCbyCtheCadditionCofCsericinintotimololmaleateeyedrops.JOleoSciC62:159-166,C20133)高田洋平,櫻井俊輔,宮本幸治ほか:ヒト重層化培養角膜上皮モデルを用いた眼科用製剤の眼刺激性に関する新規評価手法の開発.あたらしい眼科C31:409-413,C20144)ToropainenE,RantaVP,TalvitieAetal:Culturemodelofhumancornealepitheliumforpredictionofoculardrugabsorption.InvestOphthalmolVisSciC42:2942-2948,C20015)TalianaCL,CEvansCMD,CDimitrijevichCSDCetal:TheCin.u-enceCofCstromalCcontractionCinCaCwoundCmodelCsystemConCcornealCepithelialCstrati.cation.CInvestCOphthalmolCVisCSciC42:81-89,C20016)長井紀章,伊藤吉將,岡本紀夫ほか:抗緑内障点眼薬の角膜障害におけるCInVitroスクリーニング試験:SV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いた細胞増殖抑制作用の比較.あたらしい眼科C25:553-556,C20087)小林-安藤亮太,土田衛,猪又潔ほか:MPCポリマーによるポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)製剤の細胞毒性低減効果.日コレ誌C52:265-269,C20108)長井紀章,藤田裕美,伊藤吉將ほか:ウサギ赤血球を用いたベンザルコニウム塩化物の傷害性評価とセリシンによる保護効果.あたらしい眼科C31:729-732,C20149)釈政雄,黒田秀夫,大場愛ほか:両機能リン脂質ポリマー(吸保湿能と角層細胞間脂質バリヤ一機能強化)による角層機能の改善強化.日本化粧品技術者会誌C30:273-285,C1996C***

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1299.1308,2020cブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験相原一*1関弥卓郎*2*1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学*2千寿製薬株式会社CPhaseIIIStudytoEvaluatetheE.cacyandSafetyofNovelBrimonidine/BrinzolamideOphthalmicSuspensionComparedwithBrinzolamideOphthalmicSuspensioninPatientswithPrimaryOpen-AngleGlaucoma(Broad-De.nition)orOcularHypertensionMakotoAihara1)andTakuroSekiya2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandFacultyofMedicine,TheUniversityofTokyo,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.C0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)の眼圧下降効果および安全性をC1%ブリンゾラミド点眼剤(以下,ブリンゾラミド)と比較した.原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症患者を対象に,ブリンゾラミドをC4週間投与した後,眼圧値がC18.0CmmHg以上のC423例にCSJP-0125またはブリンゾラミドをC4週間投与した.治療期C4週の眼圧変化値は,SJP-0125群C.3.7±2.1mmHg,ブリンゾラミド群C.1.7±1.9CmmHgで,群間差は.2.0CmmHg(95%信頼区間:C.2.4.C.1.5,p<0.0001)であり,SJP-0125のブリンゾラミドに対する優越性が検証された.副作用はCSJP-0125群C8.8%,ブリンゾラミド群C10.2%に発現し,両群で同程度であった.重篤な副作用も認められなかったことから,SJP-0125の安全性に問題はないと考えられた.CPurpose:ToCcompareCtheCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationCophthalmicCsuspensionCofCbrimonidineCtartrate0.1%/Cbrinzolamide1%(SJP-0125)withCthoseCofCbrinzolamide1%(brinzolamide).Subjects:Thisstudyinvolved423patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhyperten-sionwhoseIOPwas≧18.0CmmHgafterbrinzolamideadministrationfor4weeksandwhounderwentSJP-0125orbrinzolamideadministrationforanadditional4weeks.ThemeanIOPchangesatWeek4ofthetreatment-periodwere.3.7±2.1CmmHgintheSJP-0125groupand.1.7±1.9CmmHginthebrinzolamidegroup,andthedi.erencebetweenthetwogroupswas.2.0CmmHg(95%CI:.2.4to.1.5,p<0.0001)C,thusdemonstratingthesuperiorityofSJP-0125tobrinzolamide.IntheSJP-0125groupandthebrinzolamidegroup,treatment-relatedadverseevents(TRAEs)wereCobservedCin8.8%Cand10.2%,Crespectively,CandCtheCratesCinCbothCgroupsCwereCsimilar.CNoCseriousCTRAEsCwereCreported.CConclusion:SJP-0125CwasCfoundCe.ectiveCforCloweringCIOPCandCsafe,CwithCnoCseriousCTRAEs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1299.1308,C2020〕Keywords:ブリモニジン,ブリンゾラミド,配合剤,緑内障,比較試験.brimonidine,brinzolamide,.xedcombi-nationophthalmicsuspension,glaucoma,comparativestudy.Cはじめにである1).緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場緑内障は進行性かつ非可逆的な視野障害を引き起こす疾患合は単剤療法から開始し,有効性が十分でない場合には多剤であり,エビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1).一方,わ〔別刷請求先〕関弥卓郎:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部Reprintrequests:TakuroSekiya,ResearchandDevelopmentDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0047,JAPANCが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合わせはプロスタグランジン関連薬とCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬,a2作動薬とCb遮断薬のC3種のみであるため,これら以外の組み合わせの配合点眼剤の開発は治療の選択肢を拡大するという点で臨床的意義があると考える.また,緑内障に対して適切な治療が行われない場合,失明に至る可能性がある1)ため,早期発見と早期治療による視機能障害の進行抑制が重要となるが,自覚症状に乏しいことから点眼治療のアドヒアランスが悪いことが報告されており2.4),アドヒアランスの不良は緑内障が進行する重要な要因の一つとなっている1).多剤併用による治療を行う場合には,薬剤数および点眼回数を減らすことのできる配合点眼剤を使用することで,患者のアドヒアランスが向上すると考えられる.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)は,Ca2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミドを有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は,a2受容体を選択的に刺激し,毛様体上皮でCcyclicCade-nosinemonophosphate(cyclicAMP)産生を抑制して房水の産生を抑制し,さらに,ぶどう膜強膜流出路を介して房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す5,6).ブリモニジン酒石酸塩点眼液は,わが国ではC2012年に千寿製薬株式会社が承認を得た緑内障治療薬(アイファガンCR点眼液C0.1%)であり,唯一のCa2作動薬である.臨床試験では他の緑内障治療薬と併用することでさらなる眼圧下降効果が得られており7,8),眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている9).一方,ブリンゾラミドは炭酸脱水酵素阻害薬であり,II型炭酸脱水酵素を特異的に阻害して,CHCO3C.の生成を抑制することにより,Na+の能動輸送機構を抑制し,その結果房水の産生を抑制して眼圧を下降させる10,11).両剤は良好な眼圧下降効果と忍容性により,プロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬の単剤では目標眼圧に達しない患者に対し,第二選択薬として併用されることが多い.また両剤は,プロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬を副作用または禁忌のために使用できない患者にも使用されている.SJP-0125は作用機序の異なるC2成分を配合することから,各単剤よりも高い眼圧下降効果が期待できることに加えて,各単剤を併用するよりも患者の利便性が増し,アドヒアランスを向上させることが期待される.そこで,SJP-0125の第CIII相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0125の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0125の有効成分の一つであるC1%ブリンゾラミド点眼剤(以下,ブリンゾラミド)を対照に比較検討したので報告する.I方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,表1に示す全国C45医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第C14条第C3項および第C80条のC2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験情報の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMINC000028494).C2.目的原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0125をC1日C2回C4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性を,ブリンゾラミドを対照に比較検討する.さらに,参照群としてC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)およびブリンゾラミドの併用群を設定し,SJP-0125の有効性および安全性が各単剤の併用と同程度であることを確認する.C3.対象原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,ブリンゾラミドをC4週間投与後の眼圧がC18.0CmmHg以上で,表2の基準に該当する患者を対象とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.C4.方法a.被験薬被験薬(SJP-0125)は,点眼剤C1Cml中にブリモニジン酒石酸塩をC1Cmg,ブリンゾラミドをC10Cmg含有する懸濁性点眼剤である.Cb.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮蔽(評価者遮蔽)並行群間比較試験として実施した.観察期にブリンゾラミドをC1回C1滴,1日C2回朝(8:00.10:00)および夜(20:00.22:00),両眼にC4週間点眼した後,治療期にCSJP-0125,ブリンゾラミド,ブリモニジンおよびブリンゾラミドの両剤のいずれかを,1回C1滴,1日2回朝および夜,両眼にC4週間点眼した.ブリモニジンおよびブリンゾラミドの併用群では,治験薬の点眼間隔はC10分以上C15分以内とした.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬割付責任者が識別不能性を確認した後,治験薬の無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値のC2時間値および観察期終了日(治療期開始日)のC2時間値のスクリーニング検査日表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師医療法人社団山田眼科特定医療法人丸山会丸子中央病院医療法人社団いとう眼科医療法人社団悠琳会しぶや眼科クリニック医療法人社団優美会川口あおぞら眼科医療法人社団仁香会しすい眼科医院三橋眼科医院道玄坂加藤眼科成城クリニック医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科医療法人豊潤会松浦眼科医院医療法人社団富士青陵会なかじま眼科医療法人社団ムラマツクリニックむらまつ眼科医院医療法人社団優あい会小野眼科クリニック北川眼科医院医療法人社団シー・オー・アイいしだ眼科医療法人社団康順会丹羽眼科医療法人やすまつ佐藤眼科医院医療法人社団風帆会赤塚眼科はやし医院日本医科大学付属病院医療法人社団高友会立川通クリニック医療法人社団済安堂お茶の水・井上眼科クリニック医療法人社団浩仁医会水天宮藤田眼科大谷地裕明野原雅彦大原睦子渋谷裕子清水潔呉輔仁三橋正忠加藤卓次松﨑栄佐藤功松浦雅子中島徹村松知幸小野純治北川厚子石田玲子丹羽やす子佐藤圭吾林殿宣中元兼二高橋義徳岡山良子藤田浩司実施医療機関治験責任医師医療法人光耀会菊地眼科クリニック菊地琢也医療法人健究社スマイル眼科クリニック岡野敬大塚眼科クリニック大塚宏之医療法人社団律心会辻眼科クリニック辻一夫医療法人社団ケアライトさいとう眼科医院齋藤憲医療法人庸倫会スズキ眼科服部博之京都大学医学部附属病院赤木忠道かなもり眼科クリニック金森章泰医療法人社団おじま眼科クリニック尾島知成医療法人朔夏会さっか眼科医院属佑二医療法人中森眼科医院中森玄司医療法人圭明会原眼科病院原岳医療法人社団みすまるのさと会アイ・ローズクリニック安達京大阪大学医学部附属病院松下賢治慶應義塾大学病院結城賢弥琉球大学医学部附属病院古泉英貴杉浦眼科杉浦寅男医療法人稲本眼科医院稲本裕一医療法人湖崎会湖崎眼科湖崎淳尾上眼科医院尾上晋吾医療法人社団秀光会かわばた眼科川端秀仁医療法人社団うえだ眼科クリニック上田裕子表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力がC0.3以上の者3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値がC18.0CmmHg以上C31.0CmmHg以下の者おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去C180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon.下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)角膜障害を有する者10)ブリモニジン酒石酸塩または他のCa2作動薬,ブリンゾラミドまたは他の炭酸脱水酵素阻害薬,スルホンアミド系薬剤,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者11)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬,1日あたりC4.5Cgを超えるアスピリンの大量投与または別に規定したもの以外の眼局所の治療薬を使用する予定のある者12)治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者スクリーニング検査日治療期観察期前治療4週4週現行治療(緑内障点眼剤の・ブリンゾラミドを点眼SJP-0125群:SJP-0125を点眼種類は問わない)または無治療・観察期終了日の0時間値およびブリンゾラミド群:ブリンゾラミドを点眼2時間値の眼圧値が18.0mmHg以上併用群:ブリモニジンおよび31.0mmHg以下の場合、治療期へブリンゾラミドを点眼移行する図1治験デザイン表3検査・観察スケジュール○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.測定時点C7時間での眼圧,血圧・脈拍数は,原則測定した.からの眼圧変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的に割付群を決定した.SJP-0125群,ブリンゾラミド群,併用群の割付比はC3:3:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで治験薬割付責任者が保管した.Cc.被.験.者.数SJP-0125群とブリンゾラミド群の眼圧下降の差をC1.0mmHg,共通の標準偏差を約C2.6CmmHgと推定,有意水準両側C5%,検出力C90%と設定し必要な評価被験者数を各群144例と算出した.併用群は参照群とし,評価被験者数を50例とした.中止脱落を考慮してCSJP-0125群,ブリンゾラミド群の目標被験者数を各群C160例,併用群をC56例,合計C376例と設定した.C5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,細隙灯顕微鏡検査所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野,血圧・脈拍数の各検査を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前かつC8:00.10:00の間にC0時間値を測定し,点眼後はC2時間値および原則としてC7時間値を測定した.また,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を有害事象として収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用と表4被験者背景(FAS)SJP-0125ブリンゾラミド併用合計項目分類(n=181)(n=176)(n=61)(n=418)性別男79(C43.6)87(C49.4)27(C44.3)193(C46.2)女102(C56.4)89(C50.6)34(C55.7)225(C53.8)年齢(歳)平均値±標準偏差C60.5±12.9C62.3±12.7C62.1±11.8C.最小値.最大値28.9C026.8C932.8C2C.対象疾患1原発開放隅角緑内障(広義)115(C63.5)121(C68.8)42(C68.9)278(C66.5)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障79(C43.6)89(C50.6)27(C44.3)195(C46.7)前視野緑内障36(C19.9)32(C18.2)15(C24.6)83(C19.9)高眼圧症66(C36.5)55(C31.3)19(C31.1)140(C33.5)緑内障治療薬2有127(C70.2)134(C76.1)46(C75.4)307(C73.4)無54(C29.8)42(C23.9)15(C24.6)111(C26.6)眼局所の合併症2有108(C59.7)102(C58.0)42(C68.9)252(C60.3)無73(C40.3)74(C42.0)19(C31.1)166(C39.7)眼局所以外の合併症有128(C70.7)122(C69.3)44(C72.1)294(C70.3)無53(C29.3)54(C30.7)17(C27.9)124(C29.7)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層390(C49.7)84(C47.7)32(C52.5)206(C49.3)(有効性評価対象眼)中眼圧層457(C31.5)57(C32.4)19(C31.1)133(C31.8)高眼圧層534(C18.8)35(C19.9)10(C16.4)79(C18.9)例数(%)C.:該当なし1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経障害の存在2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした3:18CmmHg以上C20CmmHg未満4:20CmmHg以上C22CmmHg未満5:22CmmHg以上した.C6.併用薬および併用処置治験期間中,表2の除外基準に抵触する薬剤または処置の併用は禁止した.C7.評価方法および解析方法a.有効性最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を有効性の主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期C4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした(優越性の検証).欠測値に対しては,lastCobservationCcarriedforward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の各観察日(治療期C2週および治療期C4週)の眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれのC0時間値,2時間値,7時間値,0時間値とC2時間値の平均値,0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値)とした.t検定(有意水準両側C5%)によりCSJP-0125群およびブリンゾラミド群のC2群間で比較した.参照群との比較には検定を行わないこととした.眼圧値は,治療期開始日と投与後の各観察日の値をCpairedt検定(有意水準両側C5%)で比較した.また,治療期C4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に解析した.Cb.安全性治療期に組み入れられた被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,治療期開始日以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS例数)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧・脈拍数は治療期の治験薬投与前後を比較した.眼底および視野はスクリーニング検査日からの悪化の有無を比較した.CII結果1.被験者の構成同意を取得した被験者はC498例,観察期にブリンゾラミドの投与を開始したのはC483例であった.このうち無作為化され,治療期の投与を開始したのはC423例であった.治験完了例はC414例,治験未完了例はC9例であった.治療期の投与を開始したC423例(SJP-0125群C182例,ブ表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移(FAS)測定時点CSJP-0125ブリンゾラミド併用0時間値治療期開始日眼圧値C20.7±2.0(1C81)C20.6±1.9(1C76)C20.5±2.0(61)治療期C2週眼圧値C18.5±2.5*†(1C80)C19.3±2.4*†(1C74)C18.2±2.4*(60)変化値C.2.3±2.0†(1C80)C.1.2±1.9†(1C74)C.2.3±2.1(60)変化率C.10.9±9.7†(1C80)C.5.9±9.2†(1C73)C.10.9±9.9(60)治療期C4週眼圧値C18.2±2.8*†(1C80)C19.0±2.7*†(1C73)C18.1±2.1*(59)変化値C.2.5±2.1†(1C80)C.1.6±2.0†(1C73)C.2.4±1.9(59)変化率C.12.3±10.2†(1C80)C.7.7±9.7†(1C73)C.11.6±8.4(59)2時間値治療期開始日眼圧値C20.1±2.0(1C81)C20.0±1.9(1C76)C19.8±1.8(61)治療期C2週眼圧値C16.5±2.4*†(1C80)C18.5±2.4*†(1C74)C16.7±2.6*(60)変化値C.3.6±2.2†(1C80)C.1.5±1.6†(1C74)C.3.2±2.1(60)変化率C.17.7±10.3†(1C80)C.7.7±7.8†(1C73)C.15.9±10.2(60)治療期C4週眼圧値C16.4±2.5*†(1C80)C18.3±2.6*†(1C73)C16.5±2.7*(59)変化値1C.3.7±2.1†(1C81)C.1.7±1.9†(1C76)C.3.4±2.4(60)変化率C.18.1±10.3†(1C80)C.8.5±9.3†(1C73)C.17.1±11.6(59)7時間値治療期開始日眼圧値C19.1±2.1(1C64)C19.2±2.1(1C57)C19.0±2.3(55)治療期C2週眼圧値C16.8±2.6*†(1C63)C18.0±2.4*†(1C54)C17.0±2.4*(54)変化値C.2.3±2.2†(1C63)C.1.1±1.9†(1C54)C.2.0±1.8(54)変化率C.12.0±11.4†(1C63)C.5.7±9.7†(1C54)C.10.2±9.1(54)治療期C4週眼圧値C16.8±2.5*†(1C63)C17.8±2.7*†(1C54)C16.7±2.2*(53)変化値C.2.2±2.1†(1C63)C.1.4±1.9†(1C54)C.2.3±1.7(53)変化率C.11.5±10.7†(1C63)C.7.4±9.8†(1C54)C.11.9±8.8(53)0時間値とC2時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.4±1.9(1C81)C20.3±1.9(1C76)C20.2±1.8(61)治療期C2週眼圧値C17.5±2.3*†(1C80)C18.9±2.3*†(1C74)C17.4±2.3*(60)変化値C.2.9±1.8†(1C80)C.1.4±1.5†(1C74)C.2.7±1.9(60)変化率C.14.3±8.7†(1C80)C.6.9±7.3†(1C74)C.13.4±8.9(60)治療期C4週眼圧値C17.3±2.5*†(1C80)C18.7±2.6*†(1C73)C17.3±2.2*(59)変化値C.3.1±1.9†(1C80)C.1.6±1.7†(1C73)C.2.9±1.9(59)変化率C.15.2±9.2†(1C80)C.8.2±8.5†(1C73)C.14.4±8.8(59)0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.0±1.9(1C64)C19.9±1.9(1C57)C19.8±1.8(55)治療期C2週眼圧値C17.3±2.3*†(1C63)C18.6±2.2*†(1C54)C17.4±2.1*(54)変化値C.2.7±1.8†(1C63)C.1.3±1.4†(1C54)C.2.4±1.5(54)変化率C.13.6±8.7†(1C63)C.6.7±6.9†(1C54)C.12.4±7.3(54)治療期C4週眼圧値C17.2±2.4*†(1C63)C18.3±2.5*†(1C54)C17.1±2.1*(53)変化値C.2.8±1.7†(1C63)C.1.6±1.5†(1C54)C.2.7±1.5(53)変化率C.14.1±8.7†(1C63)C.8.2±7.9†(1C54)C.13.5±7.4(53)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.*:p<0.0001(治療期C2週またはC4週の眼圧値Cvs治療期開始日の眼圧値Cpairedt検定,有意水準両側5%)C†:p<0.01(SJP-0125vsブリンゾラミドCt検定,有意水準両側5%)リンゾラミド群C177例,併用群C64例)をCSSとした.このC2.有効性うち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データの眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率ないC3例および除外基準に抵触したC2例を除くC418例(SJP-を表5,眼圧変化値の推移を図2,対象疾患別,治療期開始0125群C181例,ブリンゾラミド群C176例,併用群C61例)を日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期C4週,FASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.2時間値)を表6,図3および図4に示した.主要評価項目である治療期C4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,SJP-0125群ではC.3.7±2.1CmmHg,ブリ0時間値1ンゾラミド群では.1.7±1.9CmmHgであり,統計学的に有0意な差を認め(点推定値:C.2.0mmHg,95%両側信頼区間:-1-2*.2.4.C.1.5CmmHg,p<0.0001),SJP-0125群のブリンゾラミド群に対する優越性が検証された.副次評価項目である治療期C2週および治療期C4週の眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率は,すべての測定時点で-3*-4-5SJP-0125ブリンゾラミド併用-6SJP-0125群のブリンゾラミド群に対する統計学的に有意な治療期開始日治療期2週治療期4週差を認めた(いずれもCp<C0.01).さらに,治療期C2週および2時間値治療期C4週の眼圧値は,いずれの群もすべての測定時点で投1与前と比較して統計学的に有意に低下した(いずれもCp<0.0001).併用群の眼圧下降効果は,SJP-0125群と同程度であった.また,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に治療期4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を解析した結果,いずれの層も全体の解析結果と同じ傾向を示した.眼圧変化値(mmHg)0-1-4**-2-3-5-6SJP-0125ブリンゾラミド併用3.安全性治療期開始日治療期2週治療期4週治療期にCSJP-0125群,ブリンゾラミド群および併用群に7時間値発現した有害事象はそれぞれ47例(25.8%)59件,43例C1**-3眼圧変化値(mmHg)(24.3%)67件およびC12例(18.8%)13件であった.このうち副作用は,それぞれC16例(8.8%)22件,18例(10.2%)23件,7例(10.9%)7件で,各群の発現割合は同程度であった.治療期の副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,SJP-0125群では霧視C6例(3.3%),点状角膜炎C5例(2.7%),0-1-2-4-5-6SJP-0125ブリンゾラミド併用ブリンゾラミド群では霧視C11例(6.2%),点状角膜炎C4例(2.3%),味覚障害C3例(1.7%),併用群では眼刺激C2例(3.1%)であった.重度と判定された副作用はいずれの群にもなく,中等度と判定された副作用は併用群でC1例C1件(眼瞼紅斑)認めた.その他の副作用は軽度であった.副作用による中止は併用群でC2例(霧視,眼瞼紅斑)であった.副作用による死亡および重篤な副作用はなかった.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数には,臨床上問題となるような変動や所見はみられなかった.CIII考按SJP-0125の有効性を検証するにあたり,SJP-0125の有効成分の一つであり,わが国で第二選択薬として広く使用されているブリンゾラミドを対照に比較試験を行った.治療期C4週での眼圧変化値(2時間値)を比較した結果,SJP-0125群はブリンゾラミド群よりも優れた眼圧下降効果を示した.さらに,治療期C2週および治療期C4週のC0,2,7時間のすべての時点で,SJP-0125群はブリンゾラミド群よりも大きな眼圧下降を示し,1日を通して良好な眼圧下降効治療期開始日治療期2週治療期4週平均値±標準偏差,*:p<0.01(SJP-0125vsブリンゾラミドt検定,有意水準両側5%)図2眼圧変化値の推移果を示した.また,眼圧変化値および眼圧変化率は全測定時点でCSJP-0125群と併用群で同程度であった.これらのことから,SJP-0125はブリンゾラミド単剤から切り替えることで追加の眼圧下降効果が得られ,ブリモニジンとブリンゾラミドの併用から切り替えることで薬剤数を減らしかつ同程度の眼圧下降効果が得られると考える.プロスタグランジン関連薬,Cb遮断薬および炭酸脱水酵素阻害薬のC3剤併用でコントロール不良の患者を対象とした臨床研究では,ブリモニジンの追加投与で眼圧下降効果が得られることが確認されている12).このことから,ブリンゾラミドを第一選択薬であるプロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬と併用している場合にも,ブリンゾラミドからCSJP-0125への切り替えによってさらなる眼圧下降効果が得られることが期待される.また,対象疾患別に解析した結果から,SJP-0125は原発開放隅角緑内障,前視野緑内障および高眼圧症のいずれに対しても眼圧下降効果を示すと考えられる.さらに,治療期開表6対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期4週,2時間値)項目CSJP-0125ブリンゾラミド併用眼圧値(治療期開始日,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C20.0±2.0(1C15)C19.9±1.8(1C21)C19.9±2.0(42)原発開放隅角緑内障C20.1±2.2(79)C20.0±1.8(89)C19.6±1.6(27)前視野緑内障C19.7±1.4(36)C19.5±1.7(32)C20.6±2.4(15)高眼圧症C20.4±2.1(66)C20.4±2.1(55)C19.7±1.6(19)眼圧値(治療期開始日,2時間値)低眼圧層:1C8CmmHg以上C20CmmHg未満C18.6±0.5(90)C18.5±0.5(84)C18.5±0.6(32)中眼圧層:2C0CmmHg以上C22CmmHg未満C20.5±0.6(57)C20.4±0.5(57)C20.3±0.4(19)高眼圧層:2C2CmmHg以上C23.6±1.5(34)C23.2±1.3(35)C23.3±1.0(10)図3対象疾患別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)SJP-0125ブリンゾラミド併用低眼圧層中眼圧層高眼圧層眼圧変化率(%)0-5-10-15-20-25-30-35平均値±標準偏差低眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)18mmHg以上20mmHg未満中眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)20mmHg以上22mmHg未満高眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)22mmHg以上図4治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)表7治療期の副作用一覧(SS)SJP-0125ブリンゾラミド併用副作用名1C(n=182)(n=177)(n=64)件数例数(%)件数例数(%)件数例数(%)全体C2216(C8.8)C2318(C10.2)C77(C10.9)眼障害C2015(C8.2)C2016(C9.0)C66(9C.4)霧視C66(3C.3)C1111(C6.2)C11(1C.6)点状角膜炎C75(2C.7)C54(2C.3)C00(0C.0)結膜充血C11(0C.5)C11(0C.6)C11(1C.6)眼脂C11(0C.5)C11(0C.6)C00(0C.0)眼の異物感C11(0C.5)C11(0C.6)C00(0C.0)眼刺激C11(0C.5)C00(0C.0)C22(3C.1)眼瞼炎C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)眼乾燥C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)硝子体浮遊物C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)眼痛C00(0C.0)C11(0C.6)C00(0C.0)眼瞼紅斑C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)眼そう痒症C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)胃腸障害C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)口内乾燥C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)臨床検査C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)視野検査異常C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)神経系障害C11(0C.5)C33(1C.7)C00(0C.0)味覚異常C11(0C.5)C33(1C.7)C00(0C.0)1:副作用名はCICH国際医薬用語集CMedDRA/JVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.始日(2時間値)の眼圧値別に解析した結果から,SJP-012525.8%,ブリンゾラミド群でC24.3%,併用群でC18.8%であは投与開始前の眼圧値にかかわらず眼圧下降効果を示すと考り,各群での発現割合は同程度であった.副作用発現割合もえられる.3群間で同程度であり,いずれの群でも重篤な副作用は認め安全性に関しては,有害事象の発現頻度はCSJP-0125群でなかった.SJP-0125群で比較的発現頻度の高かった副作用は霧視(3.3%)および点状角膜炎(2.7%)であったが,これらはC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液またはC1%ブリンゾラミド点眼液において既知の副作用であり13,14),発現割合はブリンゾラミド群および併用群と同程度であった.このことから,4週間の使用ではCSJP-0125の安全性はブリンゾラミド単剤および併用療法と同様に良好であると考える.海外ではC0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(SIMBRINZACR,米国CAlconCResearch,Ltd.)が市販されている.単剤で眼圧コントロール不良または眼圧降下薬を多剤併用している開放隅角緑内障または高眼圧症患者のうち,休薬期間後の眼圧値がC9:00時点でC24.36CmmHg,11:00時点でC21.36CmmHgである患者を対象とした海外第CIII相試験では,0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤群の投与開始日からの眼圧変化値(0,2,7時間値の平均)は投与C2週でC.7.6mmHg,3カ月でC.7.9CmmHg,6カ月でC.7.8CmmHgであり,投与後2週からC6カ月にかけて安定した眼圧下降効果が確認されている15).これらのことから,SJP-0125も同様に,本試験で検証したC4週間を超えて長期間投与した場合でも,安定した眼圧下降効果を示すことが期待される.また,投与C6カ月における有害事象の発現頻度はC0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤群と各単剤群および併用群で同程度であったことから15,16),SJP-0125でも長期投与時の安全性に問題はないことが期待される.以上の結果より,SJP-0125は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるブリンゾラミド点眼剤に比べ眼圧下降効果は有意に大きく,その効果は1日を通じて良好であること,安全性に問題のないことを確認した.このことから,ブリンゾラミド単剤からCSJP-0125に変更することで,薬剤数および点眼回数を変えることなく,より優れた眼圧下降効果を得ることができると考えられる.この追加の眼圧下降効果は,第一選択薬とブリンゾラミドを併用している場合にブリンゾラミドをCSJP-0125に変更することでも得られると期待される.また,すでにCa2作動薬および炭酸脱水酵素阻害薬を併用している場合は,SJP-0125に変更することで併用治療と同程度の治療効果が得られることに加え,薬剤数および総点眼回数が減ることで患者のアドヒアランスが向上すると考えられる.SJP-0125はわが国初のCb遮断薬を含まない配合点眼剤であり,さらにプロスタグランジン関連薬も含まないことから,それら単剤で効果不十分またはそれらを使用できない患者に使用できる配合剤としても期待される.以上より,SJP-0125は緑内障治療において有用性の高い配合点眼液であると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内C1308あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌122:5-53,C20182)GrayCTA,COrtonCLC,CHensonCDCetal:InterventionsCforCimprovingadherencetoocularhypotensivetherapy.CochraneDatabaseSystRevC2009:CD006132,C20093)QuigleyHA,FriedmanDS,HahnSR:Evaluationofprac-ticeCpatternsCforCtheCcareCofCopen-angleCglaucomaCcom-paredwithclaimsdata:theglaucomaadherenceandper-sistencystudy.OphthalmologyC114:1599-1606,C20074)TsaiJC,McClureCA,RamosSEetal:Compliancebarri-ersCinglaucoma:aCsystematicCclassi.cation.CJCGlaucomaC12:393-398,C20035)TorisCB,GleasonML,CamrasCBetal:E.ectsofbrimo-nidineConCaqueousChumorCdynamicsCinChumanCeyes.CArchCOphthalmolC113:1514-1517,C19956)BurkeCJ,CSchwartzM:PreclinicalCevaluationCofCbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,19967)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌C116:955-966,C20128)新家眞,坂本祐一郎:ブリモニジン点眼液C0.1%の臨床的有用性に関する多施設前向き観察的研究─使用成績調査中間報告.臨眼C71:859-867,C20179)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentCstudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C201110)中島正之:新しい緑内障治療薬:点眼用炭酸脱水酵素阻害剤.あたらしい眼科10:959-964,C199311)IesterM:BrinzolamideCophthalmicsuspension:aCreviewCofCitsCpharmacologyCandCuseCinCtheCtreatmentCofCopenCangleglaucomaandocularhypertension.ClinOphthalmolC2:517-523,C200812)松浦一貴,寺坂祐樹,佐々木慎一:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害剤のC3剤併用でコントロール不十分な症例に対するブリモニジン点眼液の追加処方.あたらしい眼科31:1059-1062,C201413)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C201214)MarchCWF,COchsnerCKI,CtheCBrinzolamideCLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyande.cacyofCbrinzolamide1.0%(Azopt)inCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC151:671-681,C201115)AungCT,CLaganovskaCG,CHernandezCParedesCTJCetal:CTwice-dailyCbrinzolamide/brimonidineC.xedCcombinationCversusbrinzolamideorbrimonidineinopen-angleglauco-maCorCocularChypertension.CAmericanCAcademyCofCOph-thalmologyC121:2348-2355,C201416)GandoliSA,LimJ,SanseauACetal:Randomizedtrialofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbrimo-nidineCforCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAdvTherC31:1213-1227,C2014(132)

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III 相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1289.1298,2020cブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験相原一*1関弥卓郎*2*1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学*2千寿製薬株式会社CPhaseIIIStudytoEvaluatetheE.cacyandSafetyofNovelBrimonidine/BrinzolamideOphthalmicSuspensionComparedwithBrimonidineOphthalmicSolutioninPatientswithPrimaryOpen-AngleGlaucoma(Broad-De.nition)orOcularHypertensionMakotoAihara1)andTakuroSekiya2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandFacultyofMedicine,TheUniversityofTokyo,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.C0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)の眼圧下降効果および安全性をC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)と比較した.原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症患者を対象に,ブリモニジンをC4週間投与した後,眼圧値がC18.0CmmHg以上のC355例にCSJP-0125またはブリモニジンをC4週間投与した.治療期C4週の眼圧変化値は,SJP-0125群C.2.9±2.0mmHg,ブリモニジン群C.2.4±2.0CmmHgで,群間差は.0.6CmmHg(95%信頼区間:C.1.0.C.0.1,p=0.0109)であり,SJP-0125のブリモニジンに対する優越性が検証された.副作用はCSJP-0125群C12.9%,ブリモニジン群C1.1%に認められた.重篤な副作用は認めず,おもな副作用は既知のものであったことから,SJP-0125の安全性に問題はないと考えられた.CPurpose:ToCcompareCtheCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationCophthalmicCsuspensionCofCbrimonidineCtartrate0.1%/brinzolamide1%(SJP-0125)withCthoseCofCbrimonidineCtar-trate0.1%(brimonidine)C.Subjects:Thisstudyinvolved355patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension,whoseIOPwas≧18.0CmmHgafterbrimonidineadministrationfor4weeksandwhounderwentSJP-0125orbrimonidineadministrationforanadditional4weeks.ThemeanIOPchangesatWeek4ofthetreatment-periodCwereC.2.9±2.0CmmHgCinCtheCSJP-0125CgroupCandC.2.4±2.0CmmHgCinCtheCbrimonidineCgroup,CandCtheCdi.erencebetweenthetwogroupswas.0.6CmmHg(95%CI:.1.0to.0.1,Cp=0.0109)C,thusdemonstratingthesuperiorityCofCSJP-0125CtoCbrimonidine.CInCtheCSJP-0125CgroupCandCtheCbrimonidineCgroup,Ctreatment-relatedCadverseevents(TRAEs)wereCobservedCin12.9%Cand1.1%,Crespectively.CAlthoughCpreviouslyCreportedCTRAEsCassociatedwithbrimonidineorbrinzolamidecommonlyoccur,noseriousTRAEswereobserved.Conclusion:SJP-0125wasfounde.ectiveforloweringIOPandsafe,withnoseriousTRAEs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1289.1298,C2020〕Keywords:ブリモニジン,ブリンゾラミド,配合剤,緑内障,比較試験.brimonidine,brinzolamide,.xedcombi-nationophthalmicsuspension,glaucoma,comparativestudy.Cはじめに治療法は眼圧下降である1).わが国では単剤としてプロスタ緑内障治療の目的は患者の視機能を維持させることであグランジン関連薬,Cb遮断薬,Ca2作動薬,炭酸脱水酵素阻り,現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な害薬,Rhoキナーゼ阻害薬,Ca1遮断薬,交感神経非選択性〔別刷請求先〕関弥卓郎:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部Reprintrequests:TakuroSekiya,ResearchandDevelopmentDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0047,JAPANC作動薬,副交感神経作動薬が承認されている.緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場合まず単剤療法から開始し,目標眼圧に達していないなど有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1)が,わが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合わせはプロスタグランジン関連薬とCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬,Ca2作動薬とCb遮断薬のC3種のみである.そのため,上記以外の組み合わせで配合点眼剤を開発することは治療の選択肢を広げることができる点で臨床的意義があると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)は,Ca2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミドを有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は房水産生を抑制し,ぶどう膜強膜路からの房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す2).また,眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている3).ブリンゾラミドは房水産生を抑制することで眼圧下降効果を示す4).そこで,SJP-0125の第CIII相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0125の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0125の有効成分の一つであるC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)を対照に比較検討したので報告する.CI方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,表1に示す全国C55医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第C14条第C3項および第C80条のC2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験情報の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMINC000028493).C2.目的原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0125をC1日C2回C4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性を,ブリモニジンを対照に比較検討することを目的とした.C3.対象原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,ブリモニジンをC4週間投与後の眼圧がC18.0CmmHg以上で,表2の基準に該当する患者を対象とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.C4.方法a.被験薬被験薬(SJP-0125)は,点眼剤C1Cml中にブリモニジン酒石酸塩をC1Cmg,ブリンゾラミドをC10Cmg含有する懸濁性点眼剤である.Cb.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮蔽(評価者遮蔽)並行群間比較試験として実施した.観察期にブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝(8:00.10:00)および夜(20:00.22:00),両眼にC4週間点眼した後,治療期にCSJP-0125またはブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝および夜,両眼にC4週間点眼した.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬割付責任者が識別不能性を確認した後,治験薬の無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値のC2時間値および観察期終了日(治療期開始日)のC2時間値のスクリーニング検査日からの眼圧変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的に割付群を決定した.SJP-0125群,ブリモニジン群の割付比はC1:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで治験薬割付責任者が保管した.Cc.被.験.者.数SJP-0125群とブリモニジン群の眼圧下降の差を1.0mmHg,共通の標準偏差を約C2.6CmmHgと推定,有意水準両側C5%,検出力C90%と設定し,必要な評価被験者数を各群C144例と算出した.中止脱落を考慮してCSJP-0125群,ブリモニジン群の目標被験者数を各群C160例とし,合計C320例と設定した.C5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,細隙灯顕微鏡検査所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野,血圧・脈拍数の各検査を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前かつC8:00.10:00の間にC0時間値を測定し,点眼後はC2時間値および原則としてC7時間値を測定した.また,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を有害事象として収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用とした.C6.併用薬および併用処置治験期間中,表2の除外基準に抵触する薬剤または処置の併用は禁止した.C7.評価方法および解析方法a.有効性最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を有効性の表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師実施医療機関治験責任医師たかはし眼科髙橋俊明松村眼科医院松村明金沢大学附属病院杉山和久医療法人明和会宮田眼科病院大谷伸一郎医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック貞松良成医療法人陽山会井後眼科馬渡祐記医療法人社団深志清流会清澤眼科医院清澤源弘医療法人恕心会さめしま眼科鮫島基泰医療法人社団はしだ眼科クリニック橋田節子医療法人社団彩光会札幌かとう眼科加藤祐司たまがわ眼科クリニック關保中の島たけだ眼科竹田明野村眼科野村亮二東北大学病院津田聡吉村眼科内科医院吉村弦公益財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院神田尚孝医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌眼科君塚医院君塚佳宏医療法人大宮はまだ眼科濱田直紀医療法人誠療会尾﨏眼科クリニック尾﨏雅博医療法人大宮はまだ眼科西口分院福岡詩麻市橋眼科クリニック市橋慶之医療法人社団泰成会こんの眼科今野泰宏東京大学医学部附属病院坂田礼医療法人社団うえだ眼科クリニック上田裕子東京浜松町眼科クリニック南光太郎医療法人社団瑞英会野近眼科医院吉見裕美子藤井眼科藤井博明医療法人社団碧明会大沢眼科・内科大澤彰岸根公園眼科斉藤秀典武蔵小金井さくら眼科安田佳守臣国保直営総合病院君津中央病院中村洋介医療法人社団慶翔会両国眼科クリニック岩崎美紀医療法人天神疋田眼科医院*疋田直文東京医科大学病院丸山勝彦渡辺眼科渡辺純子いまい眼科今井雅仁大森町眼科クリニック天野由紀医療法人湘山会眼科三宅病院三宅豪一郎医療法人良仁会柴眼科医院柴宏治医療法人社団秀明会遠谷眼科遠谷茂東京慈恵会医科大学附属病院久米川浩一健康保険組合連合会大阪中央病院井上由美子諸星眼科クリニック諸星計草津眼科クリニック望月英毅西府ひかり眼科野口圭医療法人鈴木眼科クリニック鈴木亨医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功医療法人宮本眼科宮本秀久医療法人かがやきくぼた眼科久保田泰隆望月眼科望月泰敬医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二医療法人杏水会右田眼科右田雅義杉浦眼科杉浦寅男医療法人宮嶋会みやじま眼科宮嶋聖也*旧:医療法人福ビル疋田眼科医院表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力がC0.3以上の者3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値がC18.0CmmHg以上C31.0CmmHg以下の者おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去C180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon.下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)角膜障害を有する者10)ブリモニジン酒石酸塩または他のCa2作動薬,ブリンゾラミドまたは他の炭酸脱水酵素阻害薬,スルホンアミド系薬剤,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者11)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬,1日あたりC4.5Cgを超えるアスピリンの大量投与または別に規定したもの以外の眼局所の治療薬を使用する予定のある者12)治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者スクリーニング検査日前治療現行治療(緑内障点眼剤の種類は問わない)または無治療図1治験デザイン表3検査・観察スケジュール○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.測定時点C7時間での眼圧,血圧・脈拍数は,原則測定した.主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期C4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした(優越性の検証).欠測値に対しては,lastCobservationCcarriedforward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の各観察日(治療期C2週および治療期C4週)の眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれのC0時間値,2時間値,7時間値,0時間値とC2時間値の平均値,0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値)とした.t検定(有意水準両側C5%)によりCSJP-0125群およびブリモニジン群のC2群間で比較した.眼圧値は,治療期開始日と投与後の各観察日の値をCpairedt検定(有意水準両側5%)で比較した.また,治療期C4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に解析した.Cb.安全性治療期に組み入れられた被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,治療期開始日以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS例数)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧・脈拍数は治療期の治験薬投与前後を比較し表4被験者背景(FAS)SJP-0125ブリモニジン合計項目分類(n=173)(n=177)(n=350)性別男87(C50.3)91(C51.4)178(C50.9)女86(C49.7)86(C48.6)172(C49.1)年齢(歳)平均値±標準偏差C62.7±12.9C61.5±13.3C.最小値.最大値21.8C522.8C7C.対象疾患1原発開放隅角緑内障(広義)126(C72.8)126(C71.2)252(C72.0)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障87(C50.3)89(C50.3)176(C50.3)前視野緑内障39(C22.5)37(C20.9)76(C21.7)高眼圧症47(C27.2)51(C28.8)98(C28.0)緑内障治療薬2有137(C79.2)133(C75.1)270(C77.1)無36(C20.8)44(C24.9)80(C22.9)眼局所の合併症2有118(C68.2)112(C63.3)230(C65.7)無55(C31.8)65(C36.7)120(C34.3)眼局所以外の合併症有131(C75.7)131(C74.0)262(C74.9)無42(C24.3)46(C26.0)88(C25.1)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層3102(C59.0)105(C59.3)207(C59.1)(有効性評価対象眼)中眼圧層441(C23.7)41(C23.2)82(C23.4)高眼圧層530(C17.3)31(C17.5)61(C17.4)例数(%)C.:該当なし1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経障害の存在2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした.3:18CmmHg以上C20CmmHg未満4:20CmmHg以上C22CmmHg未満5:22CmmHg以上た.眼底および視野はスクリーニング検査日からの悪化の有無を比較した.CII結果1.被験者の構成同意を取得した被験者はC452例,観察期にブリモニジンの投与を開始したのはC438例であった.このうちC355例が無作為化され,治療期の投与を開始した.治験完了例はC345例,治験未完了例はC10例であった.治療期の投与を開始したC355例(SJP-0125群C178例,ブリモニジン群C177例)をCSSとした.このうち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データのないC4例および除外基準に抵触したC1例を除くC350例(SJP-0125群C173例,ブリモニジン群C177例)をCFASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.C2.有効性眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率を表5,眼圧変化値の推移を図2,対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)を表6,図3および図4に示した.主要評価項目である治療期C4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,SJP-0125群ではC.2.9±2.0CmmHg,ブリモニジン群では.2.4±2.0CmmHgであり,統計学的に有意な差を認め(点推定値:C.0.6CmmHg,95%両側信頼区間:C.1.0.C.0.1CmmHg,p=0.0109),SJP-0125群のブリモニジン群に対する優越性が検証された.副次評価項目である治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,治療期C4週のC2時間値を除くすべての測定時点でCSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).また,治療期C2週および治療期C4週での眼圧変化値および眼圧変化率は,すべての測定時点でSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).さらに,治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,すべての測定時点で投与前と比較して統計学的に有意に低下した(いずれもp<0.0001).また,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に治療期4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を解析した結果,いずれの層も全体の解析結果と同じ傾向を示した.表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移(FAS)測定時点CSJP-0125ブリモニジン0時間値治療期開始日眼圧値C21.2±2.3(173)C21.1±2.4(177)治療期C2週眼圧値C19.0±2.8*††(171)C19.8±3.1*††(173)変化値C.2.2±1.9††(171)C.1.3±1.9††(173)変化率C.10.5±8.8††(171)C.6.1±9.3††(173)治療期C4週眼圧値C18.6±2.8*††(172)C19.5±3.2*††(173)変化値C.2.6±2.0††(172)C.1.6±2.0††(173)変化率C.12.2±9.4††(172)C.7.6±9.9††(173)2時間値治療期開始日眼圧値C19.9±2.1(173)C19.8±2.1(177)治療期C2週眼圧値C17.1±2.8*†(171)C17.8±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.9††(171)C.2.0±2.1††(173)変化率C.14.0±9.9††(171)C.10.2±10.4††(173)治療期C4週眼圧値C16.9±2.9*(172)C17.5±2.9*(173)変化値1C.2.9±2.0†(173)C.2.4±2.0†(177)変化率C.14.8±10.3†(172)C.12.1±10.5†(173)7時間値治療期開始日眼圧値C19.6±2.6(163)C19.5±2.7(164)治療期C2週眼圧値C17.4±2.7*††(161)C18.4±3.1*††(159)変化値C.2.2±1.9††(161)C.1.1±2.3††(159)変化率C.10.8±9.7††(161)C.5.3±12.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.3±2.8*††(161)C18.2±3.1*††(158)変化値C.2.3±1.9††(161)C.1.3±2.1††(158)変化率C.11.8±9.4††(161)C.6.3±10.9††(158)0時間値とC2時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.5±2.1(173)C20.5±2.2(177)治療期C2週眼圧値C18.0±2.6*††(171)C18.8±2.9*††(173)変化値C.2.5±1.6††(171)C.1.6±1.8††(173)変化率C.12.2±8.1††(171)C.8.2±8.9††(173)治療期C4週眼圧値C17.8±2.7*†(172)C18.5±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.8††(172)C.2.0±1.8††(173)変化率C.13.5±8.7††(172)C.9.8±9.0††(173)0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.2±2.2(163)C20.1±2.2(164)治療期C2週眼圧値C17.8±2.6*††(161)C18.7±2.8*††(159)変化値C.2.4±1.5††(161)C.1.4±1.6††(159)変化率C.11.8±7.6††(161)C.7.3±8.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.6±2.6*†(161)C18.4±2.9*†(158)変化値C.2.6±1.6††(161)C.1.7±1.6††(158)変化率C.12.8±8.0††(161)C.8.7±8.6††(158)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.*:p<0.0001(治療期C2週またはC4週の眼圧値Cvs治療期開始日の眼圧値Cpairedt検定,有意水準両側5%)C†:p<0.05C††:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンCt検定,有意水準両側5%)C3.安全性31件,2例(1.1%)2件であった.治療期にCSJP-0125群およびブリモニジン群に発現した有治療期の副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,害事象はそれぞれ50例(28.1%)68件および32例(18.1%)SJP-0125群では霧視12例(6.7%),眼刺激5例(2.8%),36件であった.このうち副作用は,それぞれC23例(12.9%)味覚異常C4例(2.2%),結膜充血C2例(1.1%),眼の異常感C2例(1.1%)および結膜炎C2例(1.1%),ブリモニジン群では0時間値1結膜充血C1例(0.6%)およびアレルギー性結膜炎C1例(0.6%)であった.-2**副作用はすべて軽度であった.副作用による中止はCSJP-0125群でC1例(結膜炎)あり,副作用による死亡および重篤な副作用はなかった.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血-3**-4-5SJP-0125ブリモニジン-6圧・脈拍数には,臨床上問題となるような変動や所見はみら治療期開始日治療期2週治療期4週れなかった.2時間値III考按SJP-0125の有効性を検証するにあたり,SJP-0125の有効成分の一つであり,わが国で第二選択薬として広く使用されているブリモニジンを対照に比較試験を行った.治療期C4週での眼圧変化値(2時間値)を比較した結果,SJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降効果を示した.さら眼圧変化値(mmHg)-2-3*-4-5SJP-0125ブリモニジン-6に,治療期C2週および治療期C4週の0,2,7時間値のいずれ治療期開始日治療期2週治療期4週でもCSJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降を7時間値1****-3-4示し,1日を通して良好な眼圧下降効果を示した.治療期C4週のC2時間値では,SJP-0125群のブリモニジン群に対する追加の眼圧下降効果はC0.6CmmHgに留まったが,0時間値およびC7時間値での追加眼圧下降効果はC2時間値よりも大きかった(図2).この結果から,ブリンゾラミドの炭酸脱水酵素阻害作用による終日にわたる基礎房水分泌の抑制作用が,ブ眼圧変化値(mmHg)0-1-2-5SJP-0125ブリモニジン-6リモニジンの眼圧下降効果を補完することで,SJP-0125は治療期開始日治療期2週治療期4週ブリモニジン単剤と比較してより良好なC1日を通した眼圧下降効果を示すと期待される.これらのことから,ブリモニジン単剤からCSJP-0125への切り替えは有用であると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤はプロスタグランジン関連薬と併用することでさらなる眼圧下降効果を示すことが国内第CIII相試験で確認されている5).またチモロールの単独治療で効果不十分の患者を対象とした海外第CIII相試験では,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤により追加の眼圧下降効果が得られることが確認されている6).これらのことから,SJP-0125も作用機序が異なる他の緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果を示すことが期待される.また,対象疾患別に解析した結果から,SJP-0125は原発開放隅角緑内障,前視野緑内障および高眼圧症のいずれに対しても眼圧下降効果を示すと考えられる.さらに,治療期開始日(2時間値)の眼圧値別に解析した結果から,SJP-0125は投与開始前の眼圧値にかかわらず眼圧下降効果を示すと考えられる.安全性に関しては,有害事象の発現頻度はCSJP-0125群で28.1%,ブリモニジン群でC18.1%,副作用の発現頻度はSJP-0125群でC12.9%,ブリモニジン群でC1.1%であり,いずれの群にも重篤な副作用は認めなかった.SJP-0125群で平均値±標準偏差,*:p<0.05**:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンt検定,有意水準両側5%)図2眼圧変化値の推移比較的発現頻度の高かった副作用は霧視(6.7%),眼刺激(2.8%),味覚異常(2.2%)であり,これらはC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤またはC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤で既知の副作用である7,8).もっとも頻度の高かった霧視はC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤でもおもな副作用として報告されており,SJP-0125群でのみ認められた.また,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤の点眼後,涙液の白濁化や涙液層の不安定化によって霧視が生じることが報告されている9,10)ことから,ブリンゾラミドを懸濁させた製剤であるCSJP-0125でも,同様の機序で霧視が発現した可能性が考えられる.これらのことから,各単剤と比較して,4週間の使用ではCSJP-0125の安全性に問題はないと考える.以上の結果より,SJP-0125は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるブリモニジンに比べ眼圧下降効果は有意に高く,その効果はC1日を通じて良好であること,安全性に問題のないことを確認した.ま表6対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期4週,2時間値)項目CSJP-0125ブリモニジン眼圧値(治療期開始日,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C19.7±2.1(126)C19.5±2.0(126)原発開放隅角緑内障C19.6±2.1(87)C19.5±2.2(89)前視野緑内障C20.0±2.0(39)C19.5±1.6(37)高眼圧症C20.3±2.1(47)C20.6±2.3(51)眼圧値(治療期開始日,2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C18.5±0.6(102)C18.5±0.5(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C20.6±0.6(41)C20.5±0.5(41)高眼圧層:22CmmHg以上C23.5±1.9(30)C23.7±1.7(31)眼圧変化値(治療期C4週,2時間値)C1対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.3.0±2.1(126)C.2.4±2.0(126)原発開放隅角緑内障C.3.1±2.0(87)C.2.4±2.1(89)前視野緑内障C.2.9±2.2(39)C.2.4±2.1(37)高眼圧症C.2.7±2.0(47)C.2.3±2.0(51)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.2.8±2.0(102)C.2.5±2.0(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.3.3±1.7(41)C.1.9±2.0(41)高眼圧層:22CmmHg以上C.2.8±2.5(30)C.2.6±2.3(31)眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.15.5±10.5(125)C.12.5±10.9(123)原発開放隅角緑内障C.15.9±10.2(87)C.12.5±10.8(86)前視野緑内障C.14.5±11.2(38)C.12.4±11.1(37)高眼圧症C.13.1±9.7(47)C.11.1±9.6(50)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.15.3±10.8(102)C.13.5±10.8(103)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.15.9±8.6(41)C.9.2±9.8(39)高眼圧層:22CmmHg以上C.11.4±10.5(29)C.10.9±9.6(31)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg,変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.CSJP-0125ブリモニジン眼圧変化率(%)平均値±標準偏差図3対象疾患別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)眼圧変化率(%)SJP-0125ブリモニジン0低眼圧層中眼圧層高眼圧層-5-10-15-20-25-30(102)(103)(41)(39)(29)(31)(例数)平均値±標準偏差低眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)18mmHg以上20mmHg未満中眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)20mmHg以上22mmHg未満高眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)22mmHg以上図4治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)表7治療期の副作用一覧(SS)副作用名1CSJP-0125(n=178)ブリモニジン(n=177)件数例数(%)件数例数(%)全体C3123(C12.9)C22(1C.1)眼障害C霧視C眼刺激C結膜充血C眼の異常感C結膜炎Cアレルギー性結膜炎C結膜浮腫C眼脂C点状角膜炎C27125222111122(C12.4)C12(C6.7)C5(2C.8)C2(1C.1)C2(1C.1)C2(1C.1)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C20010010002(1C.1)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)0(0C.0)神経系障害C味覚異常C444(2C.2)C4(2C.2)C000(0C.0)0(0C.0)1:副作用名はCICH国際医薬用語集CMedDRA/JVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.た,各単剤の臨床試験結果より,SJP-0125を作用機序が異なる緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果が期待されることから,各単剤と他の緑内障治療薬との併用で効果不十分な場合に,各単剤からCSJP-0125への切り替えが有効であると考えられる.さらに,SJP-0125はわが国で初めてのCb遮断薬を含まない配合点眼剤であり,プロスタグランジン関連薬も含まないことから,それらが使用できない患者にも使用できる配合剤として期待される.加えてCSJP-0125は眼圧下降効果に相応しない視野維持効果が報告されている3)ブリモニジン酒石酸塩を有効成分として含有することから,SJP-0125でも同様の効果が期待される.以上より,SJP-0125は緑内障治療において有用性の高い配合点眼剤であると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌122:5-53,C20182)BurkeCJ,CSchwartzM:PreclinicalCevaluationCofCbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,19963)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentCstudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C20114)IesterM:BrinzolamideCophthalmicsuspension:aCreviewCofCitsCpharmacologyCandCuseCinCtheCtreatmentCofCopenCangleglaucomaandocularhypertension.ClinOphthalmolC2:517-523,C20085)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌116:955-966,C20126)MichaudCJE,CFrirenB:ComparisonCofCtopicalCbrinzol-amide1%CandCdorzolamide2%CeyeCdropsCgivenCtwiceCdailyinadditiontotimolol0.5%inpatientswithprimaryopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC132:235-243,C20017)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C20128)MarchCWF,COchsnerCKI,CtheCBrinzolamideCLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyande.cacyofCbrinzolamide1.0%(Azopt)inCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC151:671-681,C20119)石橋健,森和彦:二種類の炭酸脱水酵素阻害点眼薬投与に伴う霧視について.日眼会誌110:689-692,C200610)野口毅,川﨑史朗,溝上志朗ほか:ブリンゾラミド点眼後の霧視の発生機序.日眼会誌114:369-373,C2010***

基礎研究コラム 41.自己免疫網膜症の診断と自己抗体

2020年10月31日 土曜日

自己免疫網膜症の診断と自己抗体自己免疫網膜症自己免疫網膜症(autoimmuneretinopathy:AIR)は,網膜組織が異常自己抗原として認識され重篤な網膜障害が引き起こされる,まれな炎症関連疾患として近年注目されています.AIRは担癌患者における原因不明の重度の網膜変性を伴った癌関連網膜症(cancer-associatedretinopathy:CAR)として報告されました.1980年代初期に患者血清を用いたウェスタンブロット(WB)法によってC26kDの網膜抗原を認識する自己抗体の存在が示され,その後の解析で抗原蛋白が双極細胞および視細胞に局在するリカバリンであることが判明しました.また,CARを発症した肺癌患者では,腫瘍組織にリカバリンが発現していることも報告されています1).以上のことから,CARでは担癌患者の血清中に腫瘍組織と網膜に共通する抗原に対する自己抗体が生じ,なんらかの自己免疫機序を介して網膜細胞が傷害されると考えられています(図1).非腫瘍随伴性自己免疫網膜症1997年以降,非担癌患者におけるCCARに酷似した網膜病変を呈する症例が多数報告され,癌を含む悪性腫瘍に随伴するCAIRが腫瘍随伴性自己免疫網膜症(paraneoplasticAIR:pAIR)と総称される一方で,これらは非腫瘍随伴性自己免疫網膜症(non-paraneoplasticAIR:npAIR)と呼ばれています.npAIRはCCARよりも若い世代に多く,進行はやや緩徐なものの重篤な視力障害をきたしうることから,実臨床において重要な課題となっています.また,筆者らのグループでは,急性に発症する光視症や視野障害などの特徴を有する急性帯状潜在性網膜外層症(acutezonaloccultouterretinopathy:AZOOR)がCnpAIRである可能性を考え,患者血清を用いてCWB法および免疫組織化学染色を行ったところ,網膜に反応する自己抗体の存在を示唆することができました(図2).さらに続いて行った質量分析による解析で図1自己免疫網膜症の病態松宮亘神戸大学大学院医学系研究科外科系講座眼科学CByersEyeInstituteatStanfordUniversityは,複数のターゲットとなる網膜抗原に関するデータを得ることに成功しました2).自己免疫網膜症の診断AIRでは,光干渉断層計画像(OCT)を含めた複数の画像診断技術を用いて評価を行うことが重要です.また,血中自己抗体の証明はCAIR診断に必須となっていますが,残念ながら日本では研究レベルでの検査にとどまっています.一方,米国ではCOregonCHealthC&CScienceUniversity(CaseyCEyeInstitute)が抗網膜抗体の受注検査サービスを提供しています3).抗網膜抗体の測定はCAIRの診断と疾患管理において非常に重要ですので,わが国においても十分な検査体制が確立されることを期待したいところです.文献1)SubramanianCL,CPolansAS:Cancer-relatedCdiseasesCoftheeye:theroleofcalciumandcalcium-bindingproteins.BiochemBiophysResCommunC322:1153-1165,C20042)TagamiM,MatsumiyaW,ImaiHetal:Autologousanti-bodiestoouterretinainacutezonaloccultouterretinopa-thy.JpnJOphthalmolC58:462-472,C20143)ForooghianF:ConsensusConCtheCdiagnosisCandCmanage-mentofnonparaneoplasticautoimmuneretinopathyusingaCmodi.edCdelphiCapproach.CAmCJCOphthalmolC170:241-242,C2016CAZOOR患者正常者図2患者血清を用いた抗網膜自己抗体の証明a:OCTではで示される範囲におけるCellipsoidzoneの不整が明らかです.Cb:マウス網膜を用いた免疫組織化学染色では,患者血清中に視細胞外節および外顆粒層に存在する視細胞核に対する自己抗体が存在することが示唆されます(赤:患者血清,青:TO-PRO-3,緑:N-ethylmaleimide-sensitivefactor).c:OCTでは網膜外層に異常所見は認められません.Cd:免疫組織化学染色では正常者血清はマウス網膜に対して非特異的な反応を示すのみです.Bar:20CμmONL:外顆粒層,IS:視細胞内節,OS:視細胞外節.(103)あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020C12790910-1810/20/\100/頁/JCOPY

抗VEGF治療:抗VEGF療法と病診連携:大学病院の立場から

2020年10月31日 土曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二80.抗VEGF療法と病診連携:齋藤昌晃弘前大学大学院医学研究科眼科学講座大学病院の立場から滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対しての第一選択治療は抗CVEGF薬硝子体内注射であるが,基本的にはAMD自体は完治しないため,その治療は長期化してしまう.そのため,大学病院などの拠点病院と,市中病院,開業医との連携が重要になってくる.本稿では大学病院の立場からCAMD治療での連携における留意点について概説する.はじめに大学病院などの拠点病院(以下,診断拠点病院)に,適切なタイミングで患者を紹介することはなかなかむずかしいが,未治療の場合と治療中あるいは治療歴のある場合とに分けて述べる.未治療患者の場合加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)治療において大事な点は,ベースラインの視力が良いと最終視力も良かったという報告があるよう図1網膜下出血を伴う加齢黄斑変性(61歳,男性)a:初診時カラー眼底写真で左眼黄斑部に網膜下出血を認める.視力は矯正C1.0.Cb:初診時COCT水平断で網膜下に出血による高輝度反射と,網膜色素上皮の急峻な隆起()を認める(ポリープ状脈絡膜血管症と考えられる).造影検査や治療は施されず,経過観察となった(AMD専門医へのコンサルトが推奨される).c:初診からC2週間後.左眼矯正視力はC0.9だが網膜下出血の器質化が進む.に1),いかに早く治療を開始できるかということである(図1,2).そのため診断拠点病院では,まず受け入れの体制作りが重要である.常日頃から地域の眼科医とのコミュニケーションをとり,紹介しやすい環境を作ることが大事である.患者を紹介する側は,AMDが疑われた時点で行うことで,初期治療のタイミングを逃さないことにつながると思われる.視力良好であっても,患者本人に自覚症状があれば治療の十分な対象になる2).また,多くの施設で導入されている光干渉断層計(opticalCcoherencetomograpgy:OCT)で網膜内液,網膜下液が認められれば重要な所見になる.もちろん,治療に当たっては網膜静脈分枝閉塞症,糖尿病黄斑浮腫,黄斑部毛細血管拡張症などの鑑別が必要になってくるが,そういった鑑別および確定診断は診断拠点病院の役割である.また,受け入れの際にはCFAXによる病診連携を行う施設が多いと思われるが,当科でも導入する簡単なチェックリストを設けることで,重症度区別が簡単にでき,お互いの連携の効率化が図られる(図3).AMDの診断後,その治療が遅れてしまうとC1年後の視力が悪くなるという報告もあるように3),診断拠点病図2図1と同一症例の最終受診時所見初診からC1カ月後のカラー眼底写真(Ca)で網膜下出血は吸収傾向にあるが,OCT(Cb:水平断,Cc:垂直断)で中心窩の視細胞層の障害を認める.矯正視力はC0.1に低下した.(99)あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020C12750910-1810/20/\100/頁/JCOPY項目矯正視力OCT所見:異常出血車の運転受診C3日前からの抗菌薬の点眼指導備考右ありありするあり左なしなししないなし図3弘前大学の紹介チェックリスト(黄斑疾患の例)病診連携時に本チェックリストに記入をお願いしている.このリストによって,患者の眼の状態と生活状況が簡単にわかる.その結果,個々の緊急度が容易に判断でき,受診日の調整を行える.また,注射前の抗菌薬の点眼薬の使用状況によっては,紹介受診当日の加療も可能になる.院でもCAMDの診断と適した治療を早急に行える環境作りは必須である.AMDのサブタイプの鑑別にはフルオレセイン蛍光造影,インドシアニングリーン蛍光造影が必要になってくるので,同日あるいは近日に検査が施行できるよう,そしてスムーズに抗CVEGF療法に移行できるようなシステム作りが重要である.治療中あるいは治療歴のある患者の場合診断拠点病院で治療方針が決まり,その後,逆紹介されて加療および経過観察中の場合と,自院で診断し加療中の場合があると思われる.いずれも診断拠点病院への紹介のタイミングとしては,網膜下出血の出現や増大,さらには硝子体出血などの明らかな所見の増悪変化が生じた場合のみならず,視力の維持が不安定になったり,OCTで網膜内液,網膜下液などC.uidコントロールの不良が認められるなど,治療の効果が減弱した場合にも,躊躇なく紹介すべきと思われる.診断拠点病院から紹介元への逆紹介AMDの加療は長期化するため,すべてのCAMD患者の治療を診断拠点病院で継続することは現実的に不可能である.そのため紹介元に逆紹介することになるが,その際に明確かつ具体的な治療方針を示すことが大事である.先に述べたように,症状が悪化した場合には再度診断拠点病院で再評価する必要があるので,そういった連携しやすい環境づくりが重要である.現在多くの施設でCAMD治療の維持期は,抗CVEGF薬硝子体内注射のCtreatandextend(TAE)法が主流にC1276あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020なっていると思われる.しかし,治療間隔の増減には所見の判定および評価が必要であり,AMD非専門医には負担になってしまうと考える.そのため当科ではCtreatCandCextend-thenC.xedCregimenの考えで治療を行い,紹介元への逆紹介時にはC2~4カ月ごとの定期的な硝子体内注射か,定期検査のみのいずれかの状態で診ていただくかたちで行い,少しでも負担を軽減するように考えている.AMDの状態が変化するような場合には先に述べたように診断拠点病院で治療の再評価を行うようにする.おわりにAMDはわが国でも増大している疾患であり,この先の日本では超高齢社会に移行するためさらに増えていくことが強く予想されている.2020年C3月C25日には新たな抗CVEGF薬であるブロルシズマブ(ベオビュ)がわが国でも承認された.臨床試験のデータより新たな期待のもてる薬剤ではあるが4),現在おもに使用されているラニビズマブ,アフリベルセプトとの違いや使い分けが必要になってくると思われる.診断拠点病院の役割として,こういった新しい薬剤の効果や使用方法,これまでの薬剤との違いや使い分けを発信し続けること,そして本稿で述べた病診連携をしっかりと行っていくことが,AMD治療における長期的な視力の維持のために重要と思われる.文献1)WritingCCommitteeCforCtheCUKCAge-RelatedCMacularCDegenerationCEMRCUsersGroup:TheCneovascularCage-relatedmaculardegenerationdatabase:multicenterstudyofC92976Cranibizumabinjections:report1:visualCacuity.OphthalmologyC121:1092-1101,C20142)SaitoCM,CIidaCT,CKanoM:IntravitrealCranibizumabCforCexudativeCage-relatedCmacularCdegenerationCwithCgoodCbaselinevisualacuity.RetinaC32:1250-1259,C20123)TakahashiCH,COhkuboCY,CSatoCACetal:RelationshipCbetweenCvisualCprognosisCandCdelayCofCintravitrealCinjec-tionCofCranibizumabCwhenCtreatingCage-relatedCmacularCdegeneration.RetinaC35:1331-1338,C20154)DugelCPU,CKohCA,COguraCYCetal:HAWKCandCHARRI-ER:phase3,multicenter,randomized,double-maskedtri-alsCofCbrolucizumabCforCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.Ophthalmology127:72-84,C2020(100)

緑内障:プロスタグランジン関連薬と瞳孔間距離

2020年10月31日 土曜日

●連載244監修=山本哲也福地健郎244.プロスタグランジン関連薬と瞳孔間距離善岡尊文旭川医科大学眼科学講座伊野田悟髙橋秀徳自治医科大学眼科学講座プロスタグランジン(PG)関連薬は,緑内障治療薬の第一選択薬として広く使用されている.しかし,臨床的にはCPG関連の局所的な副作用として,プロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)が認められる.今回,PAPの定量指標として瞳孔間距離の変化について概説する.●はじめにプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬は,全身性の副作用がなく,眼圧下降効果に優れ,さらに点眼回数も少ないことから,緑内障の第一選択薬として広く使用されており,わが国では,ビマトプロスト,ラタノプロスト,タフルプロスト,トラボプロストのC4種類が臨床使用されている.しかし,PG関連薬は眼瞼色素沈着,上眼瞼溝深化(deepeningCofCupperCeyelidCsul-cus:DUSE),上眼瞼下垂,眼窩周囲脂肪萎縮などの局所的な副作用が生じることに注意しなければならない.これらの同時に発生するいくつかの症状は,プロスタグランジン関連眼窩周囲症(prostaglandin-associatedperiorbitopathy:PAP)として認識される1).PAPは,眼窩周囲の美容上の問題や点眼アドヒアランスに関係する.また,近年では緑内障に対してもっとも広く施行される手術の一つである線維柱帯切除術の術後成績に与える影響も報告されている2).その報告によると,線維柱帯術切除後の眼圧再上昇を死亡と定義し,Kaplan-Meier法を用いてCDUES(+)群とCDUES(-)群を比較したところ,術後C24カ月の生存率はCDUES(+)群で統計的優位に少なかった.また,点眼薬の種類やその他の因数について多変量解析を行った結果では,ビマトプロストのみが有意に関連する因子として選択されたという.しかしながら,PAP評価というものは困難である.いくつかのCDUESに関連した既報はあるが,前述の既報での評価を含めて,経時的な眼窩周囲写真での評価となり1,3,4),客観性と定量的評価は困難である.MRIによる評価はこういった点では優れているが,経時的に何度も撮影するのは時間・費用対効果から困難である.最近佐野らは,PG関連薬に伴うCPAPの定量的評価として,瞳孔間距離(pupillarydistance:PD)に着目し,比較検討を行った5)ので概説する.C●試験の概要対象は,中心視野を失うことなく両眼視力がC0.5以上,初回CPG関連薬点眼開始からC2カ月以上経過観察ができ,PDを測定できたこととした.除外基準として,局所・全身ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬の使用,経過観察期間内の眼内または眼窩周辺の手術歴,甲状腺機能異常,中枢神経系機能障害など,眼の位置に影響を与える可能性のある疾患歴とした.コントロールとして,同様の除外基準のほか緑内障点眼を使用していないものとした.眼圧はCGoldmann圧平眼圧計を測定し,屈折誤差とともにCPDはオートレフラクトメーターを測定した.C●結果PG関連薬投与群はC152人,コントロール群はC61人であった.PG関連薬のうち,ビマトプロストC14人,トラボプロストC25人,ラタノプロストC55人,タフルプロストC58人であり,投与前・投与後の測定間のCPG関連薬投与平均期間はC12C±5.6カ月であり各CPG関連薬の投与期間に有意差はみられなかった(p=0.38).PG関連薬投与群の投与前CPDおよび投与後CPDの平均は,それぞれC63.1C±3.0Cmm,62.3C±3.2mmであり,有意に短縮を認めた(p<0.001).ビマトプロスト,ラタノプロスト,タフルプロスト,トラボプロスト投与群のそれそれのCPD変化は,-2.20±0.97Cmm(p<0.001),-0.84±1.6mm(p=0.008),-0.74±2.4mm(p=0.012),-0.49±2.0Cmm(p=0.035)であった.ビマトプロスト投与群のCPD短縮は,他C3剤と比較して統計的有意に認められた(p=0.007).(97)あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020C12730910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1眼球陥凹により瞳孔間距離が短縮する機序解剖学的に眼窩は正中に平行ではなく,やや外向きになっているため,眼窩脂肪萎縮により瞳孔間距離が狭小化する.コントロール群ではCPDの減少は認められなかったとのことである.C●PG関連薬投与でなぜPDが短縮するのかPAPのおもな症状である眼球陥凹やCDUESは,眼窩脂肪組織の変化であると考えられている.PG関連薬に起因するプロスタグランジン受容体の活性化による眼窩脂肪組織での脂肪生成の減少であると考えられている6~8).生理的に両側の眼窩間の距離は,前方方向に向かって長くなっているため,眼窩脂肪組織が減少すればその分眼球が陥凹し,PDは同時に短くなると考えられる(図1,2).C●瞳孔間距離の短縮PAPは美容上の問題を生じ,またそれが点眼アドヒアランスに関連し,さらには緑内障手術の術後経過にも関連する可能性があり,PG関連薬処方中は必ず注意しなければならないことの一つである.PAPの一つにCPDの短縮がありえるという今回の結果は,将来的なCPAPの定量的な評価として有用である可能性がある.日常臨床においては,PDが短縮すれば眼鏡処方の変更が必要となる.また,PDの変化は私たち眼科医にとっては細隙灯顕微鏡検査でのCPDの変更や,手術などに重要な両眼視機能へ影響を与える可能性もある.今後のさらなる検討は必要であるが,興味をもってい図2PG関連薬による副作用a:点眼前,Cb:点眼後.PG関連薬の副作用により,点眼前後で眼窩脂肪萎縮による眼球陥凹()と瞳孔間距離の短縮()を認める.ただいた方は,まずはCPG関連薬処方後数カ月経過した患者に,眼鏡の具合を確認してみてはいかがだろうか.文献1)SakataR,ShiratoS,MiyataKetal:Incidenceofdeepen-ingoftheuppereyelidsulcusinprostaglandin-associatedperiorbitopathyCwithCaClatanoprostCophthalmicCsolution.Eye(Lond)C28:1446-1451,C20142)MikiT,NaitoT,FujiwaraMetal:E.ectsofpre-surgicaladministrationofprostaglandinanalogsoftheoutcomesoftrabeclectomy.PLoSONEC12:e0181550,C20173)JayaprakasamA,Ghazi-NouriS:Periorbitalfatatrophy:CanCunfamiliarCsideCe.ectCofCprostaglandinCanalogs.COrbiC29:357-359,C20104)PeplinskiCLS,CAlbianCSmithK:DeepeningCofClidCsulcusCfromtopicalbimatoprosttherapy.OptomVisSci81:574-577,C20045)SanoI,TakahashiH,InodaSetal:Shorteningofinterpu-pillaryCdistanceCafterCinstillationCofCtopicalCprostaglandinCanalogeyedrop.AmJOphtalmol206:11-16,C20196)CasimirCDA,CMillerCCW,CNtambiJM:PreadipocyteCdi.erentiationCblockedCbyCprostaglandinCstimulationCofCprostanoidCFP2CreceptorCinCmurineC3T3-L1Ccells.CDi.erentiationC60:203-210,C19967)MillerCCW,CCasimirCDA,CNtambiJM:TheCmechanismCofCinhibitionCofC3T3-L1CpreadipocyteCdi.erentiationCbyCpros-taglandinF2alpha.EndocrinologyC137:5641-5650,C19968)SerreroG,LepakNM:ProstaglandinF2alphareceptor(FPreceptor)agonistsarepotentadiposedi.erentiationinhibi-torsCforCprimaryCcultureCofCadipocyteCprecursorsCinCde.nedCmedium.CBiochemCBiophysCResCCommunC233:C200-202,C1997C1274あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020(98)