Pachychoroid関連疾患PachychoroidSpectrumDisease寺尾信宏*はじめにPachychoroid関連疾患とは,一般的に脈絡膜肥厚,脈絡膜血管拡張,脈絡膜血管透過性亢進,脈絡膜紋理の不明瞭化などの共通の病態背景を有する網脈絡膜疾患をさす.現在ではpachychoroidpigmentepitheliopathy(PPE),中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouscho-rioretinopathy:CSC),pachychoroidneovasculopathy(PNV),ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV),peripapillarypachychoroidsyn-drome,focalchoroidalexcavation(FCE)の6疾患があげられている1).Pachychoroid関連疾患の疾患の間には病態進展があり,不全型CSCと定義されるPPEやCSCから続発した脈絡膜新生血管(choroidalneovascu-larization:CNV)をPNVとし,さらにはPCVへ移行していく流れが提唱されている.本稿では,pachycho-roid関連疾患の特徴的な画像所見,および日常診療で遭遇することが多い疾患について画像所見を中心に解説する.IPachychroid関連疾患に共通する特徴的な画像所見1.脈絡膜肥厚脈絡膜肥厚はpachychoroid関連疾患においてもっとも重要な所見のひとつである.しかし,脈絡膜厚は眼軸長や年齢,性別などに影響されることなどから,おもに研究で使用するpachychoroid関連疾患の診断基準などでは,脈絡膜肥厚については明確なカットオフ値が定められておらず,現状ではpachychoroidに関連する臨床所見を診断基準とするのが一般的である.Hosodaらは,機械学習を利用してpachychoroid関連疾患と滲出型AMDを分類した結果,250μmの中心窩下脈絡膜厚のカットオフ値がもっとも両疾患を分類する指標として有用であったことを報告している2).この研究結果から理解できるように,日常診療においては光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)での脈絡膜肥厚の観察が,pachychoroid関連疾患を診断するためのもっとも簡便でわかりやすい指標である.しかし,脈絡膜厚は正常範囲においても年齢や性別によって大幅に異なってくるため,脈絡膜厚のカットオフ値を診断基準に組み込みことはむずかしいかもしれない.2.脈絡膜血管拡張(図1)脈絡膜は組織学的にはBruch膜と血管層からなり,血管層はさらに脈絡膜毛細血管板,小血管が主であるSattler層,中大血管が主であるHaller層に分けられる.Haller層の拡張した脈絡膜血管はpachyvesselとよばれ,pachychoroid関連疾患の重要な特徴である.Pachyvesselの上部の脈絡膜内層は圧排され菲薄化しており,これら脈絡膜毛細血管板の循環障害が網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)異常やCNV発症に関与すると考えられており,pachyvesselはpachy-choroid関連疾患の発症や病態進行に密接に関連してい*NobuhiroTerao:京都府立医科大学附属北部医療センター眼科〔別刷請求先〕寺尾信宏:〒629-2261京都府与謝野郡与謝野町字男山481京都府立医科大学附属北部医療センター眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(35)731図1脈絡膜血管拡張a:中心性漿液性脈絡網膜症のOCTBスキャン像では拡張した脈絡膜血管(pachyvessel)を複数認める(*).Pachyvesselの上部の脈絡膜内層は圧排され菲薄化している.b:同一症例の脈絡膜enfaceOCT像では脈絡膜血管は著明に拡張し,分水嶺が消失,上下の対称性は崩れている.図2脈絡膜血管透過性亢進a:IA早期では脈絡膜血流の充盈遅延,血管拡張を認める.b:IA後期ではリング状に拡大した過蛍光所見として脈絡膜血管透過性亢進()が複数観察できる.図3Pachychoroidpigmentepitheliopathy(PPE)a:眼底写真では脈絡膜紋理ははっきりせず,ドルーゼンを認めない.b:FAではwindowdefectを認める.c:IAでは脈絡血管透過性亢進所見()を認める.d:眼底自発蛍光では顆粒状の低蛍光を呈し,RPE障害を認める.e:OCT(aの点線部位における)では脈絡膜肥厚および脈絡膜血管拡張(*)を認め,その部位に一致したRPE異常を認める.図4急性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)a:眼底写真では黄斑部に漿液性網膜.離,その内部に黄白色のプレシピテートを認める.b:FAでは視神経乳頭黄斑間に円形拡大型の蛍光漏出を認める.c:IAでは脈絡膜血管透過性亢進所見()を認める.Cd:眼底自発蛍光ではプレシピテートに一致する過蛍光を認める.Ce:OCT(水平断)では漿液性網膜.離および脈絡膜血管拡張(*)に伴う脈絡膜肥厚がみられる.図5慢性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)a:眼底写真では黄斑部にプレシピテートを伴う漿液性網膜.離を認める.Cb:FAでは淡い蛍光漏出を認める.c:IAでは複数の脈絡膜血管透過性亢進所見()を認める.Cd:眼底自発蛍光では漿液性網膜.離の範囲は過蛍光を呈し,プレシピテートに一致する点状過蛍光を認める.Ce:OCT(水平断)では脈絡膜血管の拡張(*)を伴う脈絡膜肥厚を認める.漿液性網膜.離内には視細胞外節の伸長所見を認める.致した顆粒状のCRPE異常を認める.C2.中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)(図4,5)CSCは,中高年の男性に好発する黄斑部の漿液性網膜.離を特徴とするCpachychoroid関連疾患の代表疾患である.発症原因はまだ解明されていないが,発症,増悪のリスクファクターとしてストレス,A型気質,ステロイドの使用などがよく知られている.CSCは急性および慢性に大別されマネージメントされることが多い.急性および慢性の分類には厳密な診断基準はなく,自覚症状すなわち漿液性網膜.離の出現後C6カ月以内のものを急性CCSC(図4),6カ月以上遷延しているものを慢性CCSC(図5)と呼ぶことが多い.急性CCSCの多くは,数カ月で漿液性網膜.離が吸収されることが多く,視力予後は比較的良好とされている.しかし,慢性CCSCは急性CCSCに比較して高齢者に多く,再発性の漿液性網膜.離,広範なCRPE萎縮を特徴とし,漿液性網膜.離が遷延して黄斑部に萎縮をきたすと不可逆性の視力が低下することがあるため,その管理には注意が必要である.近年,CentralCSerousCChorioretinopathyCInterna-tionalGroupからマルチモーダルイメージングを用いた新規分類が提唱され10),CSCをCsimple,complex,Catypicalsubtypesに分類している.その診断基準としてCsimpleCsubtypesとCcomplexCsubtypesはおもにCRPE異常の面積(2乳頭面積)が用いられている.CSCの画像所見の特徴として,眼底所見では黄斑部の漿液性網膜.離を認めるが,とくに漏出が強い場合では漏出点周囲に黄白色のフィブリン析出がみられることがある.フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinCangiog-raphy:FA)では,急性CCSCでは早期に点状過蛍光,後期にかけて円形増大型(ink-blottype)や吹き上げ型(smoke-stack)の蛍光漏出が認められるのが一般的である.慢性CCSCでは急性CCSCと同様の蛍光漏出を認めることもあるが,多くはびまん性の比較的弱い蛍光漏出を認める.IAでは早期に脈絡膜充盈遅延,脈絡膜血管拡張,後期には脈絡膜血管透過性亢進所見を認める.OCTでは拡張した脈絡膜血管を伴う脈絡膜肥厚を特徴とする.また,漿液性網膜内の視細胞外節延長,網膜色素上皮.離やCRPE不整所見を認めるが,漿液性網膜.離が長期間遷延しているような慢性CCSCでは,網膜外層障害をきたして網膜菲薄化を認めることが多い.また,慢性CCSCに特徴的な所見であるCdescendingCtractは漏出した網膜下液が長期間貯留した際に,重力に従い下方に移動してCRPE萎縮を生じたものであるが,眼底自発蛍光での確認が非常に有効である.C3.Pachychoroidneovasculopathy(PNV)(図6)PNVはC2015年にCPangらによって名づけられたpachychoroidの特徴を有するCCNVであり11),CNVはRPE下にとどまるCtypeC1CNVが特徴とされる.PNVはドルーゼンなどの従来の滲出型CAMDに特徴的な所見を認めないことから,滲出型CAMDとは区別して考えるべき疾患とされている.とくにアジア人はCpachyC-chooridが多いことがわかっており,日本人におけるPNV頻度は約半数とされ12),滲出型CAMDとの比較した研究では,PNVは滲出型CAMDと発症年齢,遺伝背景が異なることが報告されている13).現状ではCPNVの明確な診断基準は存在しない.しかし,その特徴的な画像所見から総合的に診断されている.眼底所見では脈絡膜紋理の減少,ドルーゼンがない(もしくはあっても少量の硬性ドルーゼンのみ)ことが特徴である.IAでは脈絡膜血管拡張,脈絡膜血管透過性亢進所見,CNVの検出が重要であるが,比較的小さなCCNVの検出にはCIAよりも光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)が適している(図7).IAのみで慢性CCSCと診断されてきた患者のなかには,PNVと診断すべき患者が含まれている可能性がある.C4.ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)(図8)PCVはCIAにより描出される異常血管網とその先端に生じるポリープ状病巣を特徴とする.PCVはわが国の診断基準では滲出型CAMDの特殊型として分類されている.しかし,PCVの多くの患者が脈絡膜肥厚などpachychoroidの特徴を認めているため,pachychoroid関連疾患のひとつに含まれ,PNVにおけるtypeC1CNVの先端にポリープ状病巣が生じることでCPCVに至ると考えられている.眼底所見ではポリープ状病巣は橙赤色隆起病巣として(39)あたらしい眼科Vol.C39,No.6,2022C735図6Pachychoroidneovasculo-pathy(PNV)a:眼底写真では黄斑部に漿液性網膜.離を認める.脈絡膜紋理は減少しており,ドルーゼンは認めない.Cb:FAでは淡い蛍光漏出を認め,occultCCNV所見が示唆される.Cc:IAでは脈絡膜血管透過性亢進所見()を認める.d:OCT(水平断)では肥厚した脈絡膜および脈絡膜血管の拡張(*),漿液性網膜.離内にCRPEの不整隆起()を認める.e:OCTAではCNVの血管構造が明瞭に確認できる.図7右眼中心性漿液性脈絡網膜症(CSC),左眼pachychoroidneovasculopathy(PNV)a:右眼COCT(水平断)では脈絡膜血管拡張を伴う脈絡膜肥厚を認め,漿液性網膜.離内に漿液性網膜色素上皮.離()と不整なCRPE隆起()を認める.Cb:右眼CIAでは複数の脈絡膜血管透過性亢進所見を認める().c:右眼COCTAでは脈絡膜新生血管は同定できず,CSCと診断できる.Cd:左眼COCT(水平断)では脈絡膜血管拡張を伴う脈絡膜肥厚を認め,漿液性網膜.離内にCRPEの不整隆起()を認める.Ce:左眼CIAでは脈絡膜血管透過性亢進所見を認める().f:左眼COCTAは脈絡膜新生血管の構造が明瞭に描出されており,PNVと診断できる.図8ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)a:眼底写真では漿液性網膜.離内に複数の橙赤色隆起病巣を認める.b:IA(早期)では網目状の異常血管網とその末端にポリープ状病巣を認める.Cc:IA(後期)では脈絡膜血管透過性亢進所見()を認める.Cd:OCT(aの点線部位における)ではではポリープ状病巣に一致してRPEの急峻な隆起を認める().ポリープ状病巣の下の脈絡膜は肥厚および脈絡膜血管の拡張を認める.Ce:OCTAでは異常血管網および複数のポリープ状病巣()が描出されている.図9Focalchoroidalexcavationa:眼底写真では中心窩に網膜色素上皮の色調変化を認める.Cb:FAでは蛍光漏出はほとんど認めない.Cc:IAでは著明な脈絡膜血管透過性亢進所見()を認める.Cd:眼底自発蛍光では顆粒状の低蛍光所見()を認め,RPE障害が示唆される.e:OCT(水平断)では中心窩に脈絡膜の陥凹()ならびに脈絡膜血管拡張を伴う脈絡膜肥厚を認める.-