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円錐角膜に対する各種多段カーブハードコンタクトレンズの選択

2020年11月30日 月曜日

円錐角膜に対する各種多段カーブハードコンタクトレンズの選択TipsforSelectingMulticurveRigidGas-PermeableContactLensesforKeratoconus糸井素啓*はじめに円錐角膜は角膜実質の菲薄化と角膜の前方突出をきたし,角膜不正乱視を生じる進行性の疾患である.きわめて初期の症例を除き,円錐角膜眼はメガネやソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)での視力矯正が困難であり,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)のよい適応とされている1~3).HCLには,球面,非球面,多段カーブ,周辺部トーリック,逆形状レンズなどさまざまなデザインがある.円錐角膜眼に対しては,国内外で多くの多段カーブが処方されているおり,円錐角膜眼=多段カーブレンズという考えの先生も少なくないと思われる.しかし,円錐角膜眼に対するHCL処方割合をデザイン別に比較した報告では,施設ごとに異なるが,実は全体の3~9割を球面レンズが占めている.すなわち,多段カーブは非常に有用なHCLではあるが,すべての円錐角膜眼に万能なレンズとはいいがたい,著効する症例を見きわめたうえで処方する必要がある.本稿では,多段カーブレンズの特徴を解説し,多段カーブレンズを選択する秘訣を示す.I多段カーブHCLのレンズデザイン円錐角膜眼は,「角膜中央が突出し,周辺部に向かって徐々に扁平化する」という特徴的な角膜形状をもつ.多段階カーブHCLのデザインは,原則的に円錐角膜眼の角膜形状を模しており,光学部に相当するベースカーブ(basecurve:BC)が小さく,周辺に行くに従ってBCが大きくなるように設計されている.このレンズ中央部と周辺部のBCの差を実現するために,光学径を比較的小さく設定し,周辺部に複数の異なる球面カーブをもつデザインとなっている(図1).この周辺部の複数のカーブから,多段カーブレンズとよばれている.現在,日本では複数のメーカーから色々な多段カーブHCLが販売されている(表1).しかし,多段カーブHCLといっても,レンズの種類ごとに光学径や周辺部デザインが異なる.そのため,同一眼であっても多段カーブHCLの種類ごとに,適切なBCを選択する必要がある.II多段カーブHCLのメリットとデメリット多段カーブHCLは,レンズ中央部と周辺部のBCが大きく異なるため,中等度から強度の円錐角膜に対しても角膜形状に合わせて処方することが可能である.その結果,球面HCLが装用困難な中等度以上の症例でも,良好な装用感・安定感が得やすいというメリットがある.また,角膜形状に合わせて処方することで,HCL後面による角膜頂点部の上皮障害や,レンズエッジによる角膜周辺部の上皮障害を軽減することが可能となる.一方,多段カーブHCLは,光学径がやや小さいため,センタリングが不良になれば,瞳孔領をレンズの光学域が覆えず,球面HCLに比較して矯正視力で劣り,複視・羞明などを生じやすいというデメリットがある.とくに球面HCLとの矯正視力の差に関しては,少数視力に差が出る症例もあるが,見えにくさを強く自覚するが*MotohiroItoi:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕糸井素啓:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(43)1375表1多段カーブHCLベベル周辺カーブ2図1多段カーブレンズのデザイン光学径を小さく設定し,周辺部に複数の異なる球面カーブをもつ.メーカーレンズ名サンコンタクトレンズMカーブタイプエイコーハードアフェックスKCドクターズEX-GタイプKCシードKCレンズメニコンZE-1メニコンRoseK2RoseK2NCレインボーオプチカル研究所ハイサンソa多段カーブデザイン図2周辺部が平坦な円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のaxialpowermap)角膜周辺部は,屈折力が小さいことを表す寒色系で示されている.図4突出部位と瞳孔領が離れている円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のinstantaneousmap)下方の角膜中間中変部が高屈折力を示しており,突出部位が比較的中心から離れている.図3最重症の円錐角膜眼の前眼部OCT像(角膜前面のaxialpowermap)角膜中央部から周辺部にかけて,広範囲の角膜突出を認めている.図5角膜頂点に上皮障害を有する症例のフルオレセイン染色図広範囲に点状表層角膜症を認めている.図6ピギーバックレンズシステム図7多段カーブレンズによるapical.touchハードコンタクトレンズ下にソフトコンタクトレンズを装用し角膜上方および中央部の2点がレンズと接触している.ている.図8多段カーブレンズによるapical.clearance図9多段カーブレンズによるthree.point.touch角膜中間周辺部がレンズと接触しており,角膜中央部には涙液角膜中間周辺部と角膜中央がレンズと接触しており,中間周辺が貯留している.部に涙液の貯留がみられる.る場合は,BCを0.1mm程度小さくし,HCL下の涙液交換が保たれていることに注意しつつ,apical-clear-anceに近づけることで,上皮障害の改善が得られることがある.最初のトライアルレンズのBCの選択の際には,すでに球面HCLを装用している場合,そのフルオレセイン染色パターンに問題がなければ,球面HCLのBCを参考にする.エムカーブ(サンコンタクトレンズ)であれば,球面レンズより0.6~0.9mm程度小さいBCを,RoseK2(メニコン)であれば,1.5~1.8mm程度小さいBCを選択する.HCLを装用していない,あるいは使用しているHCLを持参していない場合は,筆者はエムカーブであれば6.80mm,RoseK2であれば5.80mmからスタートすることが多い.いずれの方法においても最初のトライアルレンズはあくまでも目安であり,以後のフルオレセインパターンの評価によるtrialanderrorがもっとも重要である.V各種多段カーブHCLの選択上述のように多段カーブレンズは,レンズの種類ごとにデザインが異なるため,使い分けることが可能である.実際に,筆者はMカーブタイプ(サンコンタクトレンズ)と,RoseK2(NCを含む)(メニコン)の2種類のレンズを使用している.この2種類のレンズについて,それぞれに適した症例を紹介したい.Mカーブタイプと,RoseK2は,いずれもレンズ素材に複数の選択肢があり,レンズの制作範囲が広く,ベベル部分の形状を指定できるという特徴をもち,非常に有用な多段カーブレンズである.しかし,両者のデザインを比較した場合,Mカーブタイプは光学径が比較的広く,HCL下の涙液層は薄くなりやすく,RoseK2(NC)は光学径が比較的狭く,HCL下の涙液層は厚くなりやすいという違いがある.その結果,Mカーブタイプは,広い光学径によりHCLが偏位しても良好な視力を保ちやすく,涙液層が薄いため,よりクリアな視力が得やすいというメリットをもつ.そのため,HCLがズレやすい症例や視力の訴えが強い症例には積極的に処方を試みている.一方,Rosek2(NC)では,HCL下に分厚い涙液層を保つことが可能なため,角膜とHCLの摩擦を最小限に抑えることが可能というメリットをもつ.そのため,角膜上皮障害を有する症例や,角膜頂点とHCL接触による不快感が強い症例に勧めることが多い.しかし,上記の比較については,あくまでも私見であり,適切なフィッティングを得た場合の比較であることには留意願いたい.VI多段カーブレンズの注意点筆者はHCLの洗浄について,原則的にこすり洗いを行うよう患者に指導している.これは,HCLに付着したさまざまな種類の汚れに対して,物理的な洗浄がもっとも効果的と考えているからである.しかし,多段カーブレンズはBCが小さく,こすり洗いがしにくいため,球面HCLに比較して内面の汚れがやや落ちにくいというデメリットがある.そのため,多段カーブレンズを処方する際には,洗いにくい形状であることを説明したうえで,とくにHCL内面を意識した洗浄を行うように指導している.とくに酸素透過性が高い素材からなるHCLの場合は,汚れやすく,また洗浄の際に力を加えすぎると変形しやすいので,より注意を要する.おわりに多段カーブHCLは,球面HCLでは対応困難な症例に対しても良好な視力と装用感を提供できる有用なHCLである.万能なレンズではないため,レンズデザインを理解したうえで著効する症例を見きわめる必要があるが,うまく処方することができれば患者のqualityofvisionを大きく改善することができる.本稿が円錐角膜眼への多段カーブレンズ処方の一助になれば幸いである.文献1)GomesJA,TanD,RapuanoCJetal:Globalconsensusonkeratoconusandectaticdiseases.Cornea34:359-369,20152)ZadnikK,BarrJT,EdringtonTBetal:Baselinefindingsinthecollaborativelongitudinalevaluationofkeratoconusstudy.IOVS39:2537-2546,19983)須田秩史,松田司,真鍋礼三ほか:円錐角膜に対するハードコンタクトレンズ装用の適応について.日コレ誌24:88-94,1982(47)あたらしい眼科Vol.37,No.11,20201379

乱視用ソフトコンタクトレンズ-プリズムバラストタイプかダブルスラブオフタイプか

2020年11月30日 月曜日

乱視用ソフトコンタクトレンズ─プリズムバラストタイプかダブルスラブオフタイプかToricSoftContactLensesforAstigmatism─PrismBallastorDoubleSlab-O.Type?山岸景子*東原尚代**はじめに2019年の全世界における乱視用ソフトコンタクトレンズ(toricsoftcontactlens:トーリックSCL)処方率の平均は28%と報告されている1).とくに欧米ではトーリックSCLの処方率が30%を超える国があるのに対し,日本の処方率は17%に留まっている(図1).その背景として,海外はオプトメトリストがCL処方の業務を担うのに対し,日本は眼科医が視能訓練士とともにCLを処方するという制度の違いがあげられるだろう.さらに,トーリックSCLはその選択や軸ズレした場合の対応に経験を要することが,処方率が低くなる一因と推察される.また,弱度乱視眼においては球面SCLで矯正視力(1.0)があれば乱視矯正の必要はないとか,球面SCLより装用感が劣るとか,高価なトーリックSCLは患者に勧めにくいなどの先入観も,トーリックSCLが積極的に処方されない理由ではなかろうか.近年,相次いで発売されたトーリックSCLは性能が飛躍的に向上して軸の安定性が高くなり,大変に処方しやすくなった.本稿ではトーリックSCLによる乱視矯正の必要性と,プリズムバラストとダブルスラブオフのデザインの違い,最新のトーリックSCL事情について解説する.I正視と乱視眼の見え方正視は眼に入ってくる光が黄斑部中心窩に焦点を結ぶため,乱視視標をクリアに見ることができる(図2).一方,直乱視は,縦方向の光が水平方向の前焦線に,水平方向の光が後焦線になる結果,縦方向の線は濃く比較的鮮明に見え,水平方向の線は薄くてボケる.直乱視とは対照的に,倒乱視では水平方向の光が縦方向の前焦線となり,垂直方向の光が水平方向の後焦線となる.乱視視標の見え方のイメージでは,水平方向の線が濃くて比較的ハッキリし,垂直方向の線が薄くてボケる.いずれも正視と比較して不快な見え方となる.II球面SCLとトーリックSCLによる乱視矯正の違い乱視眼に球面SCLを処方する場合,前焦線と後焦線の中間地点(最小錯乱円)が網膜上にくるとダブリや歪みがもっとも少なくなる(図3).これが等価球面度数になるが,正視より見え方の質は低くなる.トーリックSCLはレンズの光学部の前面または後面に円柱レンズの役割を果たすトーリック面が設置されているため,二つの経線方向の光を網膜上の1点に収束させることができ,すべての経線方向が鮮明に見える.弱度乱視眼患者に球面SCLとトーリックSCLを装用させたところ,トーリックSCLで有意に矯正視力が高く,自覚的な見え方も良好だったという報告や2),乱視を有するVDT(visualdisplayterminal)作業者にトーリックSCLを処方すると不快感が減少した3)との報告があり,弱度乱視においてもトーリックSCLによる積極的な矯正が求められる.*KeikoYamagishi:かしはら山岸眼科クリニック**HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック〔別刷請求先〕山岸景子:〒634-0803奈良県橿原市上品寺町523かしはら山岸眼科クリニック0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(35)1367日本アメリカイギリスカナダフランスオランダ0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%■その他■近視抑制■カラーCL■球面■乱視■多焦点図1各国におけるタイプ別SCL処方率日本は欧米に比べて,球面SCL処方率が高いのに対して,トーリックSCLと多焦点SCLの処方率が低い.(文献1より改変引用)図2正視と乱視眼の見え方正視および乱視眼における垂直方向の光線(前焦線,水色)と水平方向の光線(後焦線,橙色)の網膜結像のイメージを示す.正視と比較して乱視眼では乱視視標がボケてみえる.最小錯乱円乱視視標の見え方のイメージ最小錯乱円正視図3乱視を球面SCLで矯正したときの見え方乱視を球面SCLで矯正する場合,前焦線と後焦線の中間(最小錯乱円)が網膜上にくるように合わせることになるが,正視と比較するとクリアな見え方は得られない.-表1乱視の人によくある症状□細かい字が見分けにくい(例:数字の3,6,8など)□パソコンの文字がぶれてみえる□ピントを合わせようとしてよく目を細めてしまう□夜,月が二つに見えたり光がにじんだりする□眼が疲れやすいab図4トーリックSCLのデザインa:プリズムバラストデザイン,b:ダブルスラブオフデザイン.厚みが厚い部分を赤色で,薄い部分を水色で示す.(クーパービジョンより提供)表2日本で処方できる代表的なトーリックSCL素材商品名メーカーデザイン最高円柱度数軸度CシードC1dayPureうるおいプラス乱視用ワンデーアキュビューモイスト乱視用シードジョンソン・エンド・ジョンソンプリズムバラストダブルスラブオフ-1.75C-2.25C20°C90°C160°C180°10°C20°C60°C80°C90°C100°C120°C160°C170°C180°デイリーズアクアコンフォートプラストーリックアルコンダブルスラブオフ-1.75C20°C90°C160°C180°1日使い捨てハイドロゲルメダリストワンデープラス乱視用バイオトゥルーワンデートーリックワンデーアクエアトーリックワンデーバイオメディックストーリック1DAYメニコントーリックボシュロムボシュロムクーパービジョンクーパービジョンメニコンプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラスト-1.75C-2.25C-1.75C-1.75C-1.75C90°C180°20°C90°C160°C180°20°C90°C160°C180°20°C90°C160°C180°90°C180°1DAYMagicトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°シリコーン1DAYメニコンプレミオトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°ハイドロゲルマイデイトーリッククーパービジョンプリズムバラスト-2.25C10°C20°C90°C160°C170°C180°CハイドロゲルシードC2weekPureうるおいプラス乱視用メダリストC66トーリックシードボシュロムプリズムバラストプリズムバラスト-2.25C-2.75C20°C90°C160°C180°10°C20°C80°C90°C100°C160°C170°C180°2週間交換シリコーンハイドロゲルアキュビューオアシス乱視用エアオプティクス乱視用メダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト乱視用バイオフィニティトーリックジョンソン・エンド・ジョンソンアルコンボシュロムクーパービジョンダブルスラブオフプリズムバラストプリズムバラストプリズムバラスト-2.25C-2.25C-2.25C-2.25C10°C20°C60°C80°C90°C100°C120°C160°C170°C180°20°C90°C160°C180°10°C20°C80°C90°C100°C160°C170°C180°10°C20°C90°C160°C170°C180°2WEEKメニコンプレミオトーリックメニコンハイブリッド-1.75C90°C180°2WEEKメニコンCReiトーリックメニコンダブルスラブオフ-0.75C180°C図5スイカの種理論濡れたスイカの種を指でつまんで力を加えると,種の厚みのあるほうが前方へ押し出される.この理論を応用し,トーリックSCLの周辺下方に厚みをつけ,瞬目時の眼瞼の力でレンズの厚み部分が押し出される形で軸を安定させている.(シードより提供)上下非対称ダブルスラブオフコンタクトレンズの厚みがやや薄い部分.左右部バラストコンタクトレンズの厚みがほぼ均一で,やや厚い部分.ガイドマーク下方部にガイドマークが施されています.本製品は,上下非対称のデザインですので,装着時にガイドマークを確認し,正しい方向でコンタクトレンズの装用を行う事で,最適なレンズ性能を発揮します.図6トーリックSCLのハイブリッドデザイン上下にやや薄い場所を作ることで装用感を改善し軸を安定させ,下方の厚みを厚くせずプリズムバラスト部をC4時C8時方向に設けている.(2WEEKメニコンプレミオトーリック:メニコンHPより引用)表3各種トーリックSCLデザインと軸安定の関係直乱視C倒乱視C斜乱視C×△眼瞼高が小さいC△C三白眼C○C吊り目や垂れ目C○C装用感を重視C△C○片眼のみ乱視用C△C○----度数選択早見表※この表は各眼鏡度数におけるトーリックコンタクトレンズのトライアルの目安を示したものです(頂点間距離は12mmを想定)。トライアルの上、見え方を確認し、最終度数を決定してください。一部、製品の製作度数範囲に含まれていない部分があります。図7トーリックSCLのトライアル度数選択の早見表縦軸は球面度数,横軸は乱視度数を示す.自覚的屈折検査を参考にしながら簡単にファーストトライアルCSCL度数を決定できる.(クーパービジョン提供)①正(時計回り)にレンズが回転して安定した場合⇒回転した角度を眼の乱視軸に加える②反時計回りにレンズが回転して安定した場合⇒回転した角度を眼の乱視軸から引く図8正加反減の法則梶田雅義先生(梶田眼科)は,軸補正を間違うと成果が半減するという意味合いで,正加反減を「成果半減」で覚えるよう提唱されている.

各種超低加入ソフトコンタクトレンズの選択-ハードかソフトか,対象患者は?

2020年11月30日 月曜日

各種超低加入ソフトコンタクトレンズの選択─ハードかソフトか,対象患者は?SelectionofUltra-LowAdditionContactLenses:HardorSoftType?─WhoAreTheTargetPatients?東原尚代*山岸景子**はじめに近年,デジタルデバイスが急速に普及し眼精疲労を訴える人が増えている.平成20年の厚生労働省の調査によると,VDT(visualdisplayterminal)作業に従事する労働者のうち身体的な疲労や症状をもつ割合は68.9%,そのうち眼の疲れや痛みを訴える割合が90.8%であった1).眼精疲労は眼の病的な疲労であり,休息しても容易に回復しないのが特徴で,患者は大きな苦痛を抱える.さらにスマートフォン(スマホ)の普及が低年齢化するに伴い,あらゆる世代においてデジタルデバイスによる視覚への影響が懸念される.本稿では,デジタルデバイスによる眼精疲労発症の背景と,超低加入度数のコンタクトレンズ(contactlens:CL)の適応と選択について考えてみる.I眼精疲労とは鈴村は眼精疲労の発症要因を外環境要因,内環境要因・心的要因,視器要因の三つに分類し,眼精疲労を三者のバランスの崩れとして説明した2).外環境要因はVDT作業,冷暖房などによる刺激をさし,内環境要因・心的要因は,人間関係や仕事へのプレッシャーなどさまざまなストレスをさす.視器要因は屈折や輻湊,眼位などの眼科的異常をさし,とくにデジタルデバイス使用時の眼精疲労には視器要因が大きくかかわわる.IIなぜデジタルデバイスで眼精疲労が起こるのか1.調節反応の酷使近見視をするときは毛様体筋が縮み,Zinn小帯がゆるんで水晶体が厚くなり屈折力を増す.パソコンではディスプレイとの視距離が約50cmと長く,視角も大きい.また,ディスプレイとキーボード,紙媒体の3点間を視線移動させるため,調節反応と調節解除を繰り返す.一方,スマホの視距離は約30cmと短い.視角が小さいために視線移動は少なくなるが,同じ視距離で画面を見続けてしまうために調節反応への負担はパソコン使用時より大きくなる.2.輻湊反応の持続近くのものを見るとき,焦点を合わせるために両眼の内直筋が収縮し,眼球は内転する.そのときの外眼筋への刺激によって瞳孔は小さくなる(輻湊反応).デジタルデバイスを長時間見る状況は,瞳孔括約筋と毛様体への負担が大きくなるとともに,輻湊眼位を持続させるために内眼筋あるいは外眼筋の作業量が増加して筋肉性の疲労が生じる.3.ドライアイUchinoらはオフィスワーカーを対象にした調査でドライアイ有病率が女性で75%,男性で60%と報告し*HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック**KeikoYamagishi:かしはら山岸眼科クリニック〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13ひがしはら内科眼科クリニック0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(27)1359表1レンズ選択の基準超低加入度SCL超低加入度・低加入度HCL使用経験から考えた適応CL未経験者◎△.×HCL経験者〇◎SCL経験者◎△.×特徴長所装用感がよい乱視矯正できる短所乱視矯正できない慣れるまで時間がかかる-表2代表的な超低加入度SCLのスペック2週間交換1日使い捨て商品名2WEEKメニコンCDUOバイオフィニティアクティブプライムワンデースマートフォーカスシードC1dayPureうるおいプラスCFLEX製造元メニコンクーパービジョンアイレCSEEDFDA分類グループCIIグループCIグループCIVグループCIV物性Dk値C34C128C28C30含水率72%48%58%58%製作範囲CBCC8.6.mmC8.6.mmC8.8.mmC8.8.mm度数-0.25D.-6.00D(0C.25Dステップ)-6.50D.-10.0D(0C.50Dステップ)5.00D.-6.00D(0C.25Dステップ)-6.50D.-10.0D(0C.50Dステップ)1.00D.-7.00D(0C.25Dステップ)5.00D.-10.0D(0C.25Dステップ)-10.50D.-12.0D(0C.50ステップ)直径C14.5CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.2Cmm加入度数C0.50DC0.25DC0.50DC0.50Dその他ガイドマーク入りシリコーンハイドロゲル素材レギュラーパック(3C0枚)ミニパック(5枚),UVカット機能UVカット機能,3C2枚入り光学イメージ図株式会社メニコンより提供クーパービジョン・ジャパン株式会社より提供株式会社アイレCHPより転載シード株式会社より提供パッケージ外観株式会社メニコンより提供クーパービジョン・ジャパン株式会社より提供シード株式会社より提供各製品のスペック,特性をまとめた.(文献C7より引用)図1症例1の調節力検査結果(NIDEKTONOREFIIIにて計測)右眼は調節力がC5.71Dの調節力があるが(Ca),左眼はC0.24Dまで調節力は低下している(Cb).=-=--=-=---=---=-=-=-=-=-コンタクトレンズ装用中の自覚症状など,以下の質問にお答えください.各項目に回答または○をご記入ください.質問1:パソコンやスマートフォンはC1日何時間くらい使いますか?()時間くらい質問2:パソコンやスマートフォンの使用時,目の疲れはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)質問3:パソコンやスマートフォンの使用時,目の乾きはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)質問4:パソコンやスマートフォンの使用時,目のかすみはありますか?なし・あり(ありの場合,1日の何時くらいが多いですか?)(時頃)図2スマホ使用と眼の疲れに着目したCL問診表の一例2.503c/d12c/d18c/d空間周波数図3単焦点SCLと超低加入度SCL装用時のコントラスト感度の比較ひがしはら内科眼科クリニックで「シードC1dayPureうるおいプラスCFLEX」を処方したC8例〔平均年齢C27.6歳(15.41歳),男性C2例/女性C6例〕についてコントラスト感度を計測.CPD-6以上では細かくなる指標の認識ができるかの評価になるが,両群でコントラスト感度に有意差を認めなかった.=-=-コントラスト感度(対数)21.5=10.5表3超低加入度・低加入度HCLの概要超低加入度低加入度商品名サンコンマイルドCiアシストタイププレリーナCIIシードマルチフォーカルCOC2ノア製造元サンコンタクトレンズCSEEDCSEED物性Dk値*C95.1C156C156製作範囲CBC7.00.C8.50Cmm7.00.C8.60Cmm7.00.C8.60Cmm度数+5.0D.-20.0D(0C.25Dステップ)C±0.0D.-15.00D(0C.25Dステップ)C±0.0D.-15.00D(0C.25Dステップ)直径C8.8/9.0/9.2/9.4.mmC9.0/9.3/9.6.mmC9.0/9.3/9.6.mm加入度数C0.50DC1.00DC1.00Dその他中央の遠用ゾーンを広く設計周辺フロントベベルを薄く設計やわらかい素材中心部に遠くを見るゾーンを広く確保し,周辺部に向かって中間.近くを見るゾーンを配置光学イメージ図株式会社サンコンタクトレンズ社より提供シード株式会社CHPより転載シード株式会社CHPより転載*:×10-11(cm2/sec)・[mLO2/(mL・mmHg)]C9080706050403020100******VASスコア(点)■低加入度HCL■従来型遠近両用HCL図4従来型遠近両用HCLと超低加入度型HCLの比較縦軸のCVASスコア(visualCanalogscore)はC100点に近いほど自覚がよいことを示す.(文献C12より引用)夜間羞明眼の疲れ乾燥感近くの見え方遠くの見え方くもり装用感良を訴えて受診するC40歳以上のCHCL装用患者を診る機会は少なくないが,老視年齢になった患者にも単焦点HCLを処方し続けている現状がうかがわれる.表3に示すように,超低加入度CHCLの光学デザインの特徴は,中心部の遠用ゾーンが広く設計されており,安定した遠方の見え方が期待できる.筆者らはC2016年コンタクトレンズ学会総会において,老視患者(平均年齢C47.7歳)を対象として超低加入度CHCLと従来型の遠近両用CHCLの成績を比較したところ,超低加入度CHCLは従来型遠近両用CHCLに比べて遠くの見え方,くもり,夜間羞明の項目で有意に自覚症状が良好で,近くの見え方も従来型遠近両用CHCLと遜色ないことを報告した(図4).また,HCLのドロップアウト率も超低加入度で有意に低く,処方成功率も高い可能性が示唆された12).また,2017年のコンタクトレンズ学会総会において,症例数はC4例と少ないものの,単焦点CHCLから超低加入度CHCLに変更した際に見え方に慣れるまでC2週間.1カ月間を要したのに対し,超低加入度CHCLから従来型遠近両用CHCLに変更したときには全例で初日から見え方に慣れたことを報告した.超低加入度CHCLは初期老視だけでなく,老視年齢に達した患者にも有効で,かつ,老視がさらに進んだ場合に加入度の高い遠近両用CHCLへスムーズな移行を助けるツールとなる可能性がある.CX超低加入度SCLの応用(小児における近視進行抑制)デジタルデバイスの普及に伴い,世界で近視の人口が増えている13).とくにアジア人ではその傾向が顕著であり,アジア各国では国をあげて近視進行抑制に取り組んでいる.そのなかで,近年,さまざまなタイプの多焦点SCLにおいて近視進行抑制効果が確認されるようになってきた.Sankaridurgら14)は,レンズ光学部の中心3Cmm領域が通常の遠方矯正度数で,周辺にかけて徐々に加入度数が増し,最周辺部では+2.00Dまで加入された多焦点CSCLを使用して,7.14歳の中国人学童を対象としたC12カ月のトライアルを行ったところ,単焦点眼鏡の対照群よりも近視進行がC34%抑制され,眼軸長伸長もC33%抑制されたと報告した.+2.0D加入の多焦点CSCLでの近視進行抑制の研究が多い中,Fujikadoら15)は超低加入度の多焦点CSCL「メニコンCDUO」を用いて,10.16歳の日本人学童C34例において近視進行抑制効果を検討し,+0.50Dの低加入でもC47%の眼軸長伸長抑制効果を報告した.低加入度ゆえに高次収差の増加を抑えられるため,QOVを損ねないのがメリットと考えられるが,超低加入度CSCLがどのように小児の近視抑制に働くのか,今後さらなる検証が待たれる.おわりに超低加入度CCLはデジタルデバイスが普及した現代にはかかせないツールとなっている.眼精疲労や老視患者だけでなく,一見,自覚症状が強くない近業に従事する青年期にもよい適応があるため,眼科医が低加入度CCLの利点を理解して患者に適切な処方の選択肢を提供することが大切である.文献1)厚生労働省:平成C20年技術革新と労働に関する実態調査.VDT作業における身体的な疲労や症状をもつ労働者の割合2)鈴村昭弘:主訴からする眼精疲労の診断.眼科CMOOK,CNoC23,眼精疲労(鈴村昭弘編),p1-9,金原出版,19853)UchinoCM,CYokoiCN,CUchinoCYCetal:PrevalenceCofCdryCeyeCdiseaseCandCitsCriskCfactorsCinCvisualCdisplayCterminalusers:theCOsakaCstudy.CAmJOphthalmolC156:759-766,C20134)PortelloCJK,CRosen.eldCM,CChuCA:BlinkCrate,CincompleteCblinksCandCcomputerCvisionCsyndrome.COptomVisSci90:C482-487,C20135)ChuCCA,CRoawn.eldCM,CPortelloJK:Blinkpatterns:CreadingCfromCaCcomputerCscreenCversusChardCcopy.COptomVisSciC91:297-302,C20146)GowrisankaranCS,CSheedyCJE,CHayesJR:EyelidCsquintCresponseCtoCasthenopia-inducingCconditions.COptomVisSci84:611-619,C20077)東原尚代,山岸景子:デジタルデバイス時代.眼精疲労とコンタクトレンズ.あたらしい眼科C36:1237-1242,C20198)木下茂,不二門尚,東原尚代:眼精疲労に関するC2003年度全国アンケート調査報告.日本の眼科C75:1319-1336,C20049)梶田雅義,山崎愛,入道香澄ほか:調節緊張を緩和する新デザインコンタクトレンズの評価.日コレ誌C54:27-30,C201210)塩谷浩:遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方テクニック.あたらしい眼科C30:1363-1368,C201311)MorganCPB,CWoodsCCA,CTranoudisCIGCetal:International(33)あたらしい眼科Vol.C37,No.C11,2020C1365

多焦点ソフトコンタクトレンズ-従来型かEDOFデザインか

2020年11月30日 月曜日

多焦点ソフトコンタクトレンズ─従来型かEDOFデザインかProgressive-AdditionLensesversusAnnualarRingsDesignEDOFLenses二宮さゆり*はじめに日本のコンタクトレンズ(contactlens:CL)装用人口は,1991年に初めて使い捨てソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)が販売されたことを機に約1,000万人から2,000万人以上へ1),CL市場規模も約300億円から2,500億円以上へと世界第2位へ急成長した(日本コンタクトレンズ協会調べ).その間に,当然ながらCL装用者の老視化も進んだはずだが,わが国での老視用CL処方の割合は10%に満たないまま推移してきた.先進国における老視者への多焦点ソフトコンタクトレンズ(multifocalSCL:MF-SCL)処方割合は25%(2005年)から40%(2019年)に増加しているので,日本は明らかに世界に出遅れた状態にあった2).しかし,やっと最近になってMF-SCLの処方が増加に転じ始めている.増加の背景には,MF-SCLの光学的デザインや素材の発達,1日使い捨てタイプを好む日本人の国民性に合う製品が増えたことなどが考えられる.IそもそもEDOFとはExtendeddepthof.eld(EDOF)は「拡張された焦点深度」を意味し,簡単にいうなら「ピントが合っていると感じる範囲が広がっている」ということである.本稿では,MF-SCLの主流である累進屈折タイプを念頭においた従来型MF-SCLと,新しく登場したEDOFデザインの「シード1dayPureEDOF」を比較することを目的としているが,最初に明確にしておきたいのは,従来型MF-SCLの主流である累進屈折SCLも焦点深度を拡張する光学特性をもっており,“EDOF”タイプなのだということである.しかし,新しく登場した「シード1dayPureEDOF」は,焦点深度を拡張させるためのレンズ設計が従来からある累進屈折SCLとはまったく異なる.II従来型MF.SCL1.累進屈折SCL従来型MF-SCLの大半は累進屈折SCLで,近見をサポートすることを主目的にしているため,ほとんどの製品において中心近用となっている.図1に示すように,単焦点SCLでは空間周波数特性(modulationtransferfunction:MTF)曲線のピークが高く,焦点が合っている距離では見え方がきわめてシャープであることを示している(MTFが高いほど,見え方の質がよい).焦点が少しずれると急激に見え方は悪くなるのだが,若年者の場合は調節力が十分あるため,このシャープな見え方を自在に近方まで引っ張り,すべての距離をクリアに見ることができている.高加入の累進屈折SCLを遠見に完全矯正した場合を想定したMTF曲線を図2に示す.ピークが下がる代わりに一峰性の山の裾幅はやや広がっていることがわかる.ピークの低下は見え方の質の全体的な低下を示し,山の裾幅の広がりは焦点深度の拡張を示している.MTFは瞳孔径に大きく影響を受けるので,加齢による縮瞳は有利に働き,実際のMTFは少し引き*SayuriNinomiya:伊丹中央眼科〔別刷請求先〕二宮さゆり:〒664-0851兵庫県伊丹市中央1-5-1伊丹中央眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(19)13511.0見えると感じる閾値→遠方調節力近方見える範囲0+1.00+2.00+3.00defocus(D)遠方近方図1単焦点SCLを装用した若者の見え方(調節力を3.0D以上とした場合)若者の場合,単焦点SCLを装用していても,自分の十分な調節力を使って遠方から近方までシャープに見ることができる.1.0MTFA)クッキリ見たい人(閾値が高い)→B)見えたらハッピーな人(閾値が低い)→調節力見える範囲見える範囲0+1.00+2.00+3.00defocus(D)遠方近方図2高加入累進屈折SCLを装用した老視者の見え方(残存調節力を1.0Dとした場合)調節力が乏しい老視者が高加入の累進屈折SCLを装用している場合,縮瞳に助けられてもMTFのピークは単焦点SCLに劣るため,完全矯正をしないと遠見の見え方に満足を得ることができない.また,見えると感じる閾値によって満足度は大きく左右される.近用部移行部遠用部瞳孔径に合わせて度数配分を変えている年齢による瞳孔径の変化図3瞳孔径の変化に対応した光学部デザイン高加入タイプの累進屈折SCLは,それが必要な老視者の瞳孔径が小さくなっていることを考慮した度数配分となっている.度数分布鼻側耳側を示すマーク遠移行部遠図4「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」(高加入タイプ)の度数分布近見時には鼻側にシフトしつつ縮瞳するという瞳孔の近見反応を利用した設計になっている.1.0見えると感じる閾値→MTF0+1.00+2.00+3.00defocus(D)遠方近方図5二重焦点MF.SCLを装用した老視者の見え方(残存調節力を1.0Dとした場合)MTFは遠方と近方に二峰性のピークをもつため,累進屈折CSCLに比べると近見に有利である.中間の見え方に対する連続性が気になる場合もある.ワンデーアキュビューモイスト・マルチフォーカル(中心近用)バイオフェニティ・マルチフォーカル(中心遠用)0.00-1.00AbsolutePower(D)-1.00-2.00-3.00-4.000.00-1.00-2.00-3.00-5.000123-4.000123Semi-Diameter(mm)Semi-Diameter(mm)図6累進屈折SCLといえども度数分布はさまざま(表示度数-3.00Dの場合)累進屈折CSCLにも中央の近見部分から遠方部分への移行部がなだらかなタイプもあれば,急峻なタイプもある.加入度数は,ワンデーアキュビューモイスト・マルチフォーカル:→Low+0.75D.+1.25D/Mid+1.50D.+1.75D/High+2.00D.+2.50Dバイオフィニティ・マルチフォーカル:→Low:+1.00D/Mid:+2.00D/Hi:+2.50D(文献C3より改変引用)累進屈折SCL(中心近用)AirOptixAquaLowMidHighAnnualarRingsDesignEDOF加入度:+0.75D相当加入度:+1.50D相当加入度:+2.25D相当図7累進屈折SCL(中心近用)とAnnualarRingsDesignEDOFの度数配置加入度数が上がるに従い,累進屈折CSCLでは徐々に中央の近見度数が変化している.AnnualarCRingsCDesignEDOFでは,年輪状に遠用度数から近用度数までさまざまな度数が同心円状に繰り返し配列されており,そのパターンもタイプごとに異なっている.(文献C4より改変引用)-4-3-2-101234(mm)レンズ中心からの距離図8Mark'ennovy社のEDOFSCLのpowerpro.leイメージ「MYLOforControl」(グラフの左側)は中央に遠用割合が多く,若年者に対し近視抑制治療用CCLとして処方されている.老視向けの「EDOFforPresbyopia」(グラフの右側)の中央に近用割合が多いという点は,中心近用の累進屈折CSCLに似た傾向といえる.(Mark’ennovy社公開資料より改変引用)累進屈折SCL遠用度数中間用度数近用度数図9中心ズレに対する違い中心ズレが生じても,AnnualarRingsDesignEDOFは瞳孔領内の度数割合への影響を受けにくい.(シード社のCHPより改変引用)累進屈折SCL(中心近用)見えると感じる閾値→High0+1.00+2.00defocus(D)AirOptixAqua遠方近方AnnualarRingsDesignEDOF0瞳孔径3.00mmHigh見えると感じる閾値→瞳孔径5.00mmLog(RetinalImageQuality)-1-2-3-4-50+1.00+2.00defocus(D)遠方近方図10累進屈折SCLとAnnualarRingsDesignEDOFのTFRIQ比較一峰性を示す累進屈折CSCLに対し,AnnualarRingsDesignEDOFは台形のCTFRIQ曲線を示し,どの距離においても一定の見え方を保つ光学設計になっている.(文献C4より改変引用)図11各種MF.SCLの分類イメージ累進屈折CSCLの中にも二重焦点CSCLに似た特徴をもつ製品もあるなど,明確に区別しにくい場合がある.

遠近両用ソフトコンタクトレンズ-中心近用レンズか中心遠用レンズか

2020年11月30日 月曜日

遠近両用ソフトコンタクトレンズ─中心近用レンズか中心遠用レンズかMultifocalSoftContactLenses─ShouldIChooseaCenter,NearoraCenter-FarLens?塩谷浩*はじめに遠近両用ソフトコンタクトレンズ〔=多焦点ソフトコンタクトレンズ(multifocalsoftcontactlens:MF-SCL)〕は,近方視時の調節補助のため球面度数に近方視用のプラス球面度数が加入されたソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)で,一般的には老視矯正に使用される.MF-SCLは,その特性により処方は単焦点SCLの処方ほど容易ではない.たとえばあるレンズメーカーの製品を選択し,その製品処方マニュアル通りに他覚的に適当と考えられる遠用度数と加入度数を単純に設定したとしても,患者の自覚的な満足が得られないことも多い.MF-SCLは光学部の機能,形状,焦点の特徴から表1のように分類されているが,同じ分類に入る製品でも光学的な特性は異なっており,見え方に違いがあることが多く,また使用する患者によっても見え方は一様ではない1).そこでMF-SCLを使用する患者の満足度を高めるため,すなわち処方を成功させるためには,各製品の特徴を十分に理解したうえで,それぞれの患者に合った光学部デザインの製品を選択する必要がある.光学部の特徴,そのなかでも光学部の構造からのレンズ選択を考えるとき,中心近用レンズか,中心遠用レンズか,どちらのレンズを選択すべきなのかという質問がとくにMF-SCLの処方経験の少ない眼科医からは最初に出てくることは容易に想像できる.その答えにたどり着く前にMF-SCLの特徴と適応について述べ,筆者の表1MF.SCLの分類機能焦点形状中心光学部種類交代視二重焦点セグメント型遠用HCL同心円型同心円型遠用SCL二重焦点近用回折型近用同時視累進屈折力非球面型遠用HCLSCL近用SCL拡張焦点深度同心円型遠用SCL近用HCL:ハードコンタクトレンズ,SCL:ソフトコンタクトレンズ.MF-SCL選択の考え方から,どうレンズを選択すべきなのか解説する.I遠近両用SCLの特徴MF-SCLは,光学部の機能はすべて同時視型であり,焦点の構造から二重焦点型と累進屈折力型,さらに最近登場した拡張焦点深度型に分けられる.光学部の形状からは同心円型,非球面型,回折型(現在は製品として販売されていない)に分けられる(表1).また,中心光学部の配置から,レンズの中心が遠用で同心円状に囲む周辺が近用の中心遠用レンズ(図1)と,レンズの中心が近用で同心円状に囲む周辺が遠用の中心近用レンズ(図*HiroshiShioya:しおや眼科〔別刷請求先〕塩谷浩:〒960-8034福島市置賜町5-26しおや眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(11)1343レンズ中央の遠用部を通った光が結像する遠方視時図1MF.SCLの見え方(中心遠用レンズ)レンズ周辺の遠用部を通った光が結像する遠方視時図2MF.SCLの見え方(中心近用レンズ)II遠近両用SCLの適応MF-SCLの適応は,SCLの使用動機が強くあり,SCLをとくに問題なく装用できることが条件で,一般的には調節力がある程度残っている40.50歳台までの老視の患者である.老視が出現していると考えられる年齢のSCL装用者すべてが必ずしも適応になるわけではなく,使用中の矯正方法や視力補正用具(眼鏡,SCLあるいは裸眼)での近方視に不満があったり不自由を感じていたりする患者が適応になる.さらに視力の必要度や要求度が低い場合であることが条件になる.たとえば自動車の運転を職業としている場合や,細かい近方のものを見る作業を職業としている場合,MF-SCLの見え方に過大な期待を抱いているような場合は,適応かどうか慎重に検討する必要がある2).また,球面SCLの使用経験のある患者であっても角膜頂点間距離補正後の全乱視が1.00Dを超える場合は,残余乱視の影響で球面レンズでは遠方,近方とも視力補正効果が不十分となることが多く,一般的なMF-SCLの適応にならない.このような場合は円柱レンズによる乱視矯正が可能なトーリックMF-SCLの適応とするか,あるいは球面SCLだけで対応する必要がある場合には,通常は優位眼に単焦点レンズであるトーリックSCLを使用し,非優位眼にMF-SCLを使用するモディファイド・モノビジョン法での処方になる.そのためには,処方がスムーズにできるように優位眼を確認しておく必要がある.MF-SCLの処方では,1日交換SCLや頻回交換SCLのようにテスト装用することができるレンズでは,トライアルレンズが実際の処方レンズと同じ見え方(トライアルレンズと処方レンズと同じ規格)になる可能性があるので,患者がテスト装用時に単焦点SCLの見え方との違いに不安感が少なくなるように,装用前にMF-SCLの見え方の特徴(眼鏡や単焦点SCLとの違い,視線の移動,見え方の仕組み,見え方の質)を説明し,MF-SCLに対する理解を得ておくようにすることも処方を成功させるために重要である.さらにMF-SCLの処方では通常は両眼ともに同等の見え方になるように設定することを基本とするが,ケースによっては両眼視機能が維持できる範囲で,遠方視に対して優位眼と非優位眼の度数を調整し,モディファイド・モノビジョン設定にすることがある.トライアルレンズを装用させる前に優位眼の確認をしておくことを忘れないようしなければならない.MF-SCLの適応と考えられた場合には,患者が見やすくしたいと希望している近方の距離,日常生活時に快適と感じている近業の距離を確認する.可能であれば,患者が現在使用している視力補正用具の度数を確認し,過矯正あるいは極端な低矯正ではない場合には,その設定度数での遠方および近方の見え方を把握する.近方視に不満や不自由がある場合には,その程度を確認する.そして患者がMF-SCL使用する場合に重視したいのが遠方の見え方なのか,近方の見え方なのか,遠近のバランスのとれた見え方なのかを処方レンズを選択する前に知っておく.III遠近両用SCLの選択方法1.CLの使用経験からのレンズの種類の選択MF-SCLの選択ではコンタクトレンズ(contactlens:CL)の使用経験を考慮して,まずレンズの種類を選択する(図3).基本的にはハードCL(hardcontactlens:HCL)の使用経験者にはMF-HCLを選択し,SCLの使用経験者にはMF-SCLを選択するが,MF-HCLを選択することになってもフィッティング検査でセンタリングが不良であった場合にはMF-SCLに変更する.CLの使用未経験者には特殊な場合を除き,CLの使用が初めてでも扱いやすく,装用感がよくて慣れるのが早く,また1日交換MF-SCLや頻回交換MF-SCLであればテスト装用ができるため,MF-SCLを選択する.2.遠方視・近方視の重視度からのレンズのタイプの選択レンズの種類がMF-SCLに決まったら,次に各レンズメーカーの中からレンズのタイプあるいは製品を選択する(図3).前述の通り,MF-SCLは光学部の特徴から同じ分類に入りデザインが似ている製品でも,光学的な特性は異なっている.どのレンズもメーカーの製品概(13)あたらしい眼科Vol.37,No.11,20201345CLの使用経験レンズの種類(HCL/SCL)を選択遠方視・近方視の重視度レンズのタイプ(デザイン/メーカー)を選択CLのフィッティング検査処方レンズのタイプを決定~見え方,装用感,ハンドリングレンズ規格を決定し,処方図3MF.SCLの選択遠方の景色道路標識テレビパソコン携帯電話良好不良良好不良良好不良遠方視遠方視遠方視図4MF.SCLの見え方からの分類近方視近方視近方視良好不良良好不良良好不良表2頻回交換MF.SCLの代表的製品製品名エアオプティクスプラスハイドラグライドマルチフォーカルバイオフィニティマルチフォーカル2weekPureマルチステージメダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト遠近両用メダリストマルチフォーカル2WEEKメニコンプレミオ遠近両用2WEEKメニコンプレミオ遠近両用トーリックメーカーアルコンクーパービジョンシードボシュロムボシュロムメニコンメニコン中心光学部近用遠用遠用近用近用近用近用ベースカーブ8.68.68.68.68.7/9.08.68.6(mm)サイズ(mm)14.214.014.214.014.014.214.2中心厚(mm)0.080.100.090.070.100.080.08±0.00..10.00球面度数(D)+5.00..10.00+6.00..10.00+5.00..10.00+5.00..10.00+5.00..7.00+5.00..13.00円柱度数.0.75/.1.25円柱軸180°,90°加入度数(D)LO/MED/HI+1.00/+1.50+2.00/+2.50+0.75/+1.50Low/HighLow/High+1.00/+2.00+1.00素材シリコーンハイドロゲルシリコーンハイドロゲルハイドロゲルシリコーンハイドロゲルハイドロゲルシリコーンハイドロゲルシリコーンハイドロゲル含水率(%)33.048.058.036.038.640.040.0FDA分類グループIグループIグループIVグループIIIグループIグループIグループIDk/t※137.5128.033.3130.09.5161.0161.0※単位:×10.9(cm/sec)・(mLO2/mL×mmHg)(.3.00Dの場合)表31日交換MF.SCLの代表的製品製品名デイリーズトータルワン遠近両用デイリーズアクアコンフォートプラスマルチフォーカルプロクリアワンデーマルチフォーカル1dayPureマルチステージ1dayPureEDOFワンデーアキュビューモイストマルチフォーカルバイオトゥルーワンデーマルチフォーカル1DAYメニコンマルチフォーカルメーカーアルコンアルコンクーパービジョンシードシードジョンソン・エンド・ジョンソンボシュロムメニコン中心光学部近用近用近用遠用遠用/近用近用近用近用ベースカーブ8.58.78.78.88.48.48.68.7(mm)サイズ(mm)14.114.014.214.214.214.314.214.2中心厚(mm)0.090.100.090.070.070.080.100.09球面度数+5.00.+5.00.+5.00.+5.00.+5.00.+5.00.+5.00.+5.00.(D).10.00.10.00.10.00.10.00.12.00.9.00.9.00.10.00加入度数(D)LO/MED/HILO/MED/HI+1.50+0.75/+1.50Low/Middle/HighLow/Mid/HighLow/High+1.50素材シリコーンハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲルハイドロゲル含水率(%)33.069.060.058.058.058.078.060.0FDA分類グループIグループIIグループIIグループIVグループIVグループIVグループIIグループIIDk/t※156.026.022.842.942.933.342.022.8※単位:×10-9(cm/sec)・(mLO2/mL×mmHg)(.3.00Dの場合)表4超低加入度数MF.SCLの代表的製品使用期間分類1日交換頻回交換製品名プライムワンデースマートフォーカス1dayPureうるおいプラスFlexバイオフィニティアクティブ2WEEKメニコンデュオメーカーアイレシードクーパービジョンメニコン中心光学部近用遠用近用遠用ベースカーブ(mm)8.88.88.68.6サイズ(mm)14.214.214.014.5中心厚(mm)0.070.070.080.11球面度数(D)+1.00..9.00+5.00..12.00+5.00..10.00.0.25..10.00加入度数(D)+0.50+0.50+0.25+0.50素材ハイドロゲルハイドロゲルシリコーンハイドロゲルハイドロゲル含水率(%)58.058.048.072.0FDA分類グループIVグループIVグループIグループIIDk/t※40.042.9160.030.9※単位:×10.9(cm/sec)・(mLO2/mL×mmHg)(.3.00Dの場合)アキュビューモイストマルチフォーカル」,ボシュロム社の「バイオトゥルーワンデーマルチフォーカル」があげられる.アルコン社の3種類のレンズは光学部の構造は同じで,レンズ全体のデザインと素材が異なっていても見え方は同等と考えられる.遠方重視タイプとしては頻回交換MF-SCLではボシュロム社の「メダリストマルチフォーカル」,クーパービジョン社の「バイオフィニティマルチフォーカル」があげられる.特殊レンズとして乱視矯正もするメニコン社の「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用トーリック」があげられる.ボシュロム社の「メダリストマルチフォーカル」は同社の「メダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト遠近両用」と光学部の構造は同じであるものの,レンズ全体のデザインと素材が異なっているために見え方が異なっていると考えられる.また,頻回交換MF-SCLの中の超低加入度数MF-SCL(老視を適応とした一般的なMF-SCLより低い加入度数で老視前年齢を適応とした,おもに眼精疲労対策として使用されるMF-SCLを,ここでは超低加入度数MF-SCLとして区別する)(表4)では,当然ながら加入度数が低いために加入度数の遠方視への影響が少なく遠方は見やすくなり,クーパービジョン社の「バイオフィニティアクティブ」,メニコン社の「2WEEKメニコンDuo」は,とくに遠方の見やすい遠方重視タイプとしてあげられる.1日交換MF-SCLではクーパービジョン社の「プロクリアワンデーマルチフォーカル」,拡張焦点深度型のシード社の「1dayPureEDOF」,メニコン社の「1DAYメニコンマルチフォーカル」があげられる.1日交換MF-SCLの中の超低加入度数MF-SCLではアイレ社の「プライムワンデースマートフォーカス」,シード社の「1dayPureうるおいプラスFlex」があげられる.この2種類の製品は同じ超低加入度数MF-SCLであるが,前者は中心近用レンズで,より遠方が見やすい遠方重視タイプで,後者は中心遠用レンズで,やや近方が見やすい遠方重視タイプである.両レンズとも本来は老視前年齢の眼精疲労対策に用いられるが,一般的なMF-SCLでは遠方の見え方に不満が強くMF-SCLの適応とならないような老視患者において,遠方の見え方を損なわずに近方の見え方に満足を得ることができること(17)もあり,MF-SCL処方の最後の砦として可能性を秘めた有用な製品である.とくに前者は,筆者の処方経験では遠方視力補正効果が良好で自覚的な満足度も高く,これまでほかのMF-SCLの処方がうまくいかなかった老視患者に試してみてもらいたい製品である.近方重視タイプとしては頻回交換MF-SCLではシード社の「2weekPureマルチステージ」,1日交換MF-SCLではシード社の「1dayPureマルチステージ」があげられる.両レンズの光学部の構造と素材は同じであるが,レンズの中心厚さなどのレンズ全体のデザインが微妙に異なっているために,遠方の見え方には変わりはないものの,近方の見え方では1dayPureマルチステージがやや見やすく感じる患者が多い製品である.おわりに以上は筆者の処方経験からの私見であることをご理解いただいて,本稿をMF-SCL選択の参考にしてほしい.MF-SCLの処方はメーカーの処方マニュアルに従っても必ずしも患者の満足が得られるとは限らないため,一人一人の患者に応じた度数設定のアレンジが必要になる.したがって当然,製品の評価や選択の基準が処方する眼科医によって異なってくる.読者の皆様も処方経験を積んで,自分なりに各レンズ製品の機能を評価してみると,今後の自分流のレンズ選択の役に立つのではないかと思う.文献1)渡邉潔,稲葉昌丸,佐渡一成ほか:バイフォーカルコンタクトレンズの臨床.日コレ誌42:101-112,20002)塩谷浩:各種バイフォーカルコンタクトレンズの選択.あたらしい眼科18:463-468,20013)塩谷浩,梶田雅義:頻回交換遠近両用ソフトコンタクトレンズ処方例の検討.日コレ誌44:103-107,20024)塩谷浩,梶田雅義:頻回交換型遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方成績─二重焦点型と累進屈折力型の比較─.日コレ誌48:226-229,20065)塩谷浩:頻回交換遠近両用ソフトコンタクトレンズの選択法.あたらしい眼科24:711-716,20076)塩谷浩:遠近両用コンタクトレンズの処方─適応の判断から処方に至るまで─.日コレ誌51:47-51,20107)塩谷浩:遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方テクニック.あたらしい眼科30:1363-1368,2013あたらしい眼科Vol.37,No.11,20201349

遠近両用ハードコンタクトレンズ-同心円タイプかセグメントタイプか

2020年11月30日 月曜日

遠近両用ハードコンタクトレンズ─同心円タイプかセグメントタイプかRigidContactLensesforPresbyopia─ConcentricTypesorSegmentTypes梶田雅義*はじめに屈折異常のある眼の老視矯正には,二重焦点の遠近両用眼鏡が用いられており,中間距離を明視する必要性が高い場合には三重焦点レンズが用いられていた.そのため,累進多焦点レンズが開発されたのは斬新的な進歩であった.その後,累進屈折力眼鏡が普及し,現在ではわずかにデザインを異にする遠中近累進屈折力,中近累進屈折力,近々累進屈折力と使用者のニーズに応じて処方の選択肢が多くなってきている.一方,老視矯正をコンタクトレンズ(contactlens:CL)で行いたいという要望も強くなってきた.最初に,二重焦点レンズが登場した.その後,同心円状の二重焦点レンズが登場し,累進屈折力レンズ,二重焦点の境目を累進屈折力デザインでつないだタイプが主流になると,上下に遠用と近用レンズを配置したデザインは姿を消した.ところが最近になって,再び遠近度数を上下に配置した二重焦点タイプが登場してきた.本稿では,遠近両用ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)の種類の変遷と,筆者の臨床経験から得た各レンズの特徴について述べる.I矯正効果から分類する遠近両用HCLのデザイン遠近両用HCLのデザインは,1.二重焦点セグメントデザイン2.二重焦点同心円デザイン3.二重焦点移行部累進屈折力同心円デザイン4.累進屈折力同心円デザインに分類できる(図1).筆者がこれまでに処方した遠近両用HCLに対する患者の反応から,レンズのデザインと見え方には以下のような特徴がある.1.二重焦点セグメントデザインの特徴初期のセグメントタイプで,近用部と遠用部に明らかな境目(セグメントライン)が確認できた(図1a).レンズが回転しないようにプリズムバラスト(図2)が採用されていた.このセグメントラインの位置が正面視の状態で瞳孔下縁付近に安定するのがよいフィッティングとされていたが,HCLは瞬目による動きが大きく,安定位置も毎回の瞬目後でまったく同じではなく,セグメント位置を適切に処方することはかなり困難であった.また,瞬目直後にはセグメントラインは瞳孔上縁よりも上方に位置し,すぐに下方に落ちて安定するが,その瞬間に像のジャンプが生じ,不快感をもたらした.30年ほど前の話ではあるが,筆者が数名に処方を試みて,実際に装用を続けてくれた患者は1名だけだった.2.二重焦点同心円デザインの特徴初期の同心円状デザインのレンズには遠用度数と近用度数の間に境目が確認できた(図1c).瞬目後にこの境目が瞳孔を通過するときに像のジャンプが生じて,不快*MasayoshiKajita:梶田眼科〔別刷請求先〕梶田雅義:〒108-0083東京都港区芝浦3-6-3協栄ビル4階梶田眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(3)1335abcdef図1遠近両用HCLの種類(筆者の分け方)a:旧二重焦点セグメントタイプ.セグメントラインが明確に観察でき,セグメント位置を設定して処方する必要があった.プリズムバラストでレンズ回転を抑制している.b:新二重焦点セグメントタイプ.セグメントラインは観察することができない.セグメントの位置は変更できない.プリズムバラストでレンズ回転を抑制している.c:旧二重焦点同心円タイプ.遠用度数と近用度数に境目が観察できた.今はもう存在しない.d:新二重焦点同心円タイプ.遠用度数と近用度数の境目を摺り下ろし,境目は観察できなくなった.これによって境目で生じていたゴーストは生じなくなった.e:二重焦点移行部累進屈折力同心円タイプ.遠用度数と近用度数の境目を累進屈折力デザインでつないだ構造になっている.これによって,遠用度数から近用度数への移行部での違和感が少なくなり,中間距離も見やすくなっている.f:累進屈折力同心円タイプ.中央から周辺に累進的に連続的に度数が分布している.ハードレンズ特有の交代視に加えて,同時視的な遠近の見え方を提供できる.一方で,二重焦点レンズタイプに比べると,全体的にピントはあまく感じるが,見え方を許容できれば加入度数以上に明視できる範囲が広がる.プリズム部図2プリズムバラストレンズの一方の厚みを増して,全体としてプリズムレンズのような構造にすることによって,角膜と上眼瞼でCLを圧迫すると,厚い部分が圧迫から早く解放されるように滑り出してくる(スイカの種理論).これによって,CLの分厚い部分が常に下方に位置し,CLの回転を抑える仕組みである.a.理想的な安静位b.開瞼直後のレンズ位置c.開瞼中のレンズ位置d.下方視時のレンズ位置e.下方視時の安静位置(下眼瞼潜り込み)(下眼瞼突き上げ)図3単焦点レンズの位置のイメージa.理想的な安静位b.やや上方安定のセグメントc.やや下方安定のセグメント位置設定位置設定d.開瞼直後のレンズ位置e.下方視時のレンズ位置f.下方視時の安静位置(下眼瞼潜り込み)(下眼瞼突き上げ)図4旧二重焦点セグメントタイプレンズの位置のイメージa.理想的な安静位b.やや上方安定の場合c.やや下方安定の場合d.開瞼直後のレンズ位置e.下方視時のレンズ位置f.下方視時の安静位置(下眼瞼潜り込み)(下眼瞼突き上げ)図5新二重焦点セグメントタイプレンズの位置のイメージa.理想的な安静位b.やや上方安定の場合c.やや下方安定の場合d.開瞼直後のレンズ位置e.下方視時のレンズ位置(下眼瞼潜り込み)図6二重焦点同心円タイプレンズの位置のイメージf.下方視時の安静位置(下眼瞼突き上げ)a.理想的な安静位b.やや上方安定の場合c.やや下方安定の場合d.開瞼直後のレンズ位置e.下方視時のレンズ位置(下眼瞼潜り込み)f.下方視時の安静位置(下眼瞼突き上げ)図7二重焦点移行部累進屈折力同心円タイプレンズの位置のイメージa.理想的な安静位b.やや上方安定の場合c.やや下方安定の場合d.開瞼直後のレンズ位置e.下方視時のレンズ位置f.下方視時の安静位置(下眼瞼潜り込み)(下眼瞼突き上げ)図8累進屈折力同心円タイプレンズの位置のイメージ

序説:コンタクトレンズ-選択の秘訣

2020年11月30日 月曜日

コンタクトレンズ─選択の秘訣TheSecretsofPropeContactLensSelection小玉裕司*近年のコンタクトレンズ(CL)の開発には目覚ましいものがあり,続々と新しいCLが市販されてきている.それらのCLの中から,患者の要望に合うレンズを選択するのは容易ではない.比較的多くのCLを処方している筆者でも,臨床の場においてCLの選択に迷うことがある.あまりCLを処方することのない先生方においては,なおさら困られているのではないかと危惧し,今回の企画を立てた.まずは遠近両用CLについてであるが,ハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)とでは光学的デザインがまったく異なっている.HCLは交代視型であり,遠用と近用でレンズにおいて用いる部位が異なり,その点では光学的機能は損なわれない.最初はセグメント型のもののみであったが,最近では同心円型が主流となり,一時的にセグメント型は姿を消した.しかしごく最近になって,セグメント型の長所を活かしたかたちで再登場した.このセグメント型レンズと同心円型のレンズとの違いなどを梶田雅義先生に解説していただいた.同時視型の遠近両用SCLは加入度数が累進的に入っている多焦点SCL(multifocalsoftcontactlens)がほとんどであるが,大きく分けて中心遠用レンズと中心近用レンズがある.最初は筆者も中心近用レンズは近方の視力がよく,中心遠用のレンズは遠用の視力がよいと思っていたが,いろいろな多焦点SCLを処方していくなかで,そのような単純なものではないと思い直している.この観点から塩谷浩先生に両者の選択法について解説していただいた.最近市販されたEDOF(正確にはAnnualRingsdesignEDOF)は,従来の多焦点SCLと比較して,いかなる性格を有しているのか,その実態がわかりにくかった.その点については二宮さゆり先生に詳細に解説していただいた.遠近両用CLの中でも,加入度数がきわめて低いレンズがHCL,SCL双方で市販されている.このような超低加入度数のCLについて,その使用目的と選択法に関して東原尚代先生と山岸景子先生に解説していただいた.乱視矯正には光学的にHCLのほうがよいとされているが,近年の乱視用SCLの開発は目覚ましく,ある程度までの乱視であれば十分に満足できる矯正視力を提供できるSCLが市販されている.乱視用SCLにはレンズの回転防止(軸の安定)のためにデザイン上の工夫がなされており,プリズムバラストタイプとダブルスラブオフタイプに大別される.それらのレンズの選択法について山岸景子先生と東原尚代先生に解説していただいた.*YujiKodama:小玉眼科医院0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(1)1333

網膜静脈閉塞症発症とコントロール不良高血圧の存在─仮面高血圧を考慮して

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1322.1326,2020c網膜静脈閉塞症発症とコントロール不良高血圧の存在─仮面高血圧を考慮して土屋徳弘*1,3戸張幾生*2宮澤優美子*2西山功一*2,4田中公二*3森隆三郎*3*1表参道内科眼科内科*2表参道内科眼科眼科*3日本大学病院眼科*4オリンピア眼科病院CDevelopmentofRetinalVeinOcclusionandPresenceofUncontrolledHypertensioninConsiderationofMaskedHypertensionNorihiroTsuchiya1,3),IkuoTobari2),YumikoMiyazawa2),KoichiNishiyama2,4),KojiTanaka3)andRyusaburoMori3)1)OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,InternalMedicine,2)OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,Ophthalmology,3)DivisionofOphthalmology,DepartmentofVisualSciences,NihonUniversitySchoolofMedicine,4)OlympiaOphthalmologyHospitalC目的:網膜静脈閉塞症(retinalveinocclusion:RVO)発症時の血圧コントロール状態に関し,家庭血圧(仮面高血圧)を考慮し後ろ向きに検討する.対象および方法:対象はCRVOを発症し表参道内科眼科の眼科を受診し,同時に全身状態検索のため同院内科受診に同意したC130例.内科では高血圧の既往・降圧薬内服の有無の問診と診察室血圧を測定し,診察室血圧正常例には仮面高血圧検索のため家庭血圧測定(起床時・就寝前)が行われた.結果:130例中,高血圧ありの診断C129例(99.2%)(降圧薬内服中C34例C26.2%).内訳は診察室血圧C140/90CmmHg以上の高血圧C84例(64.6%),診察室血圧C140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg以上の仮面高血圧C45例(34.6%).診察室血圧140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg未満の非高血圧C1例(0.8%).高血圧と診断されたC129症例は,降圧薬治療の有無にかかわらず診察室血圧または家庭血圧が治療目標値を超えており,コントロール不良・管理不良の高血圧状態であった.考按:RVO発症例は,高血圧が無治療ならば降圧治療の開始が,また降圧薬内服中でも治療の再検討が必要な病態であることが示唆された.CPurpose:Toretrospectivelyanalyzethebloodpressure(BP)controlstatusatthetimeofretinalveinocclu-sion(RVO)onsetinconsiderationofthepatient’shomeBP(maskedhypertension).SubjectsandMethods:ThisretrospectiveCstudyCinvolvedC130CRVOCpatientsCinCwhomCBPCcontrolCwasCexaminedCinCconsiderationCofCmaskedChypertension.Results:Ofthe130patients,129(99.2%)werediagnosedwithhypertension.Therewere85(65.4%)patientsCwithCanCo.ceCBPCofC≧140/90mmHg.CThereCwere44(33.8%)patientsCwithCanCo.ceCBPCof<C140/90CmmHgandahomeBPof≧135/85CmmHg(maskedhypertension).Therewas1patientwithano.ceBPof<140/90CmmHgandahomeBPof<135/85CmmHg.Inall129patientsdiagnosedwithhypertension,thehyper-tensionwasuncontrolled.Conclusion:The.ndingsinthisstudysuggestthatincasesinwhichRVOdevelops,ifhypertensionisnotbeingtreated,treatmentwithanantihypertensivetherapyshouldbestarted,andthatevenifthepatientiscurrentlybeingtreatedwithanantihypertensivedrug,thetreatmentshouldbereexamined.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(10):1322.1326,C2020〕Keywords:網膜静脈閉塞症,仮面高血圧,家庭血圧,コントロール不良高血圧.retinalveinocclusion:RVO,maskedhypertension,homebloodpressure,uncontrolledhypertension.Cはじめに意な相関がみられたと報告され,140/90CmmHg以上の高血網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)は全身的圧だけでなく,130/80CmmHg以上の正常高値血圧のレベルな因子との関連で,久山町研究では高血圧の罹患との間に有からCRVO発症のリスクが増加すると報告されている1).RVO〔別刷請求先〕土屋徳弘:〒107-0061東京都港区北青山C3-6-16表参道内科眼科Reprintrequests:NorihiroTsuchiya,M.D.,Ph.D.,OmotesandoInternalMedicine&OphthalmologyClinic,3-6-16Kitaaoyama,Minato-ku,Tokyo107-0061,JAPANC発症においては高血圧合併の有無だけでなく血圧コントロールの状態が重要な要因として考えられる.また,現在の高血圧治療ガイドライン2,3)では,高血圧の診断と血圧コントロール状態の判断や管理において,仮面高血圧を考慮した家庭血圧が重要とされている.これまでのRVOにおける高血圧に関する報告は,健康診断データを基にしたCRVO既往のある症例における高血圧合併の有病率を検討した疫学研究であり,実際にCRVOを発症したときの診察室血圧値に関する報告は少ない.さらにCRVO発症時の仮面高血圧の有無や血圧コントロール・管理状態に関する検討はなされていない.内科と眼科の併設されている筆者らのクリニックでは,眼科を受診したCRVO発症例はCRVOの危険因子とされている全身状態を検索するため,内科においても同時に診察し血圧など全身状態を詳細に観察している.診察室血圧正常例においては,高血圧治療ガイドライン2,3)に従い仮面高血圧検索のため家庭血圧測定を指示している.今回筆者らはCRVO発症時に測定された診察室血圧値と,診察室血圧正常例において測定された家庭血圧値を後ろ向き横断的に調査し,RVO発症時のコントロール不良高血圧の存在に関し検討した.CI対象および方法対象はC2012年C3月.2020年C2月に新規にCRVO(網膜静脈分枝閉塞症CbranchCretinalCveinocclusion:BRVOと網膜中心静脈閉塞症Ccentralretinalveinocclusion:CRVO)を発症し表参道内科眼科の眼科を受診した患者で,同時に全身状態検索のため同院内科受診に同意したC130例.BRVO102例,CRVO28例.内科で高血圧の既往・降圧薬内服の有無の問診と診察室血圧測定などの内科的診察が行われた.診察室血圧正常例に関しては,仮面高血圧検索のため家庭血圧測定(起床時・就寝前)が行われた.血圧測定と高血圧診断に関してはC2014年およびC2019年高血圧治療ガイドライン2,3)に従って行われた.高血圧の診断は両ガイドラインとも,診察室血圧C140/90CmmHg以上,家庭血圧C135/85CmmHg以上とし,診察室血圧と家庭血圧の診断が異なる場合は家庭血圧の診断を優先するとされている.診察室血圧は内科医が聴診器を使ったコロトコフ法で測定し,血圧C140/90CmmHg以上は高血圧と診断した.診察室血圧が正常範囲であるC140/90CmmHg未満の症例は,仮面高血圧検索のために家庭血圧測定が指示され,朝起床時と夜就寝前の家庭血圧測定がなされた.家庭血圧計は日本国内で市販されている上腕カフ・オシロメトリック法の自動家庭血圧計が用いられた(わが国の血圧計は医薬品医療機器総合機構によって認可を得て販売されており,「自動血圧計の精度は日本の製造会社の装置であれば問題なし」と高血圧治療ガイドライン2,3)に明記されている).家庭血圧測定はガイドラインの推奨どおりに行われ,朝起床後(起床後C1時間以内で排尿後・朝食前・朝の服用前)と,夜就床前,それぞれ座位1.2分間の安静後に測定された.家庭血圧は最低C5日間以上測定し,135/85CmmHg以上を認めた場合に仮面高血圧と診断した.全症例の年齢・性別・身長・体重・BMIが調べられた.調査期間において,すでに他の内科通院中であるとの理由や,他院より降圧薬が処方されているなどの理由により当院内科受診の同意を得られなかった症例は対象から除外した.統計学的な検討は対応のないCt検定を使用し,p<0.05をもって有意差ありと判定した.本研究は表参道内科眼科の倫理審査委員会で承認後,ヘルシンキ宣言を順守して実施された.研究情報は院内掲示などで通知公開され,研究対象者が拒否できる機会を保障した.CII結果表1に患者背景を示す.RVO全C130例の内訳は男:女55:75,平均年齢C66.2歳C±11.2歳(41.91歳),BRVO102例,CRVO28例,降圧薬内服中C34例.全C130例の診察室血圧値はC146.3C±18.5/83.9±11.1CmmHg(96.202/58.116mmHg)であった.図1に高血圧診断手順とその内訳を示す.全C130例中高血圧ありの診断C129例(99.2%降圧薬内服中C34例,26.2%).内訳は診察室血圧C140/90CmmHg以上の高血圧C84例(64.6%.うち降圧薬内服中C25例,19.2%),診察室血圧C140/90CmmHg未満かつ家庭血圧C135/85CmmHg以上の仮面高血圧C45例(34.6%.うち降圧薬内服中C9例,6.9%).診察室血圧および家庭血圧正常かつ降圧薬内服がない非高血圧C1例(0.8%).図2に降圧薬内服治療の有無による血圧コントロール状態を示す.全C130例中C34例(26.2%)は,RVO発症時にすでに降圧薬服用中であった.そのうちC25例(19.2%)は診察室血圧がガイドラインで示されている診察室血圧治療目標値の140/90CmmHgを超えており,管理不良高血圧と診断された.残りC9例(6.9%)は診察室血圧が正常域であったが,家庭血表1対象者の背景n=130C性別(例)男性C55:女性C75年齢(歳)C66.2±11.2(41.91)BMI(kg/mC2)C23.7±4.4(15.8.37.4)病型(例)BRVO102:CRVO28降圧剤服用有:無(例)34:96収縮期血圧(mmHg)C146.3±18.5(96.202)拡張期血圧(mmHg)C83.9±11.1(58.116)BMI:bodymassindex.平均値±標準偏差.診察室血圧測定家庭血圧測定図1高血圧診断手順BP:bloodpressure(mmHg).診察室血圧測定診察室血圧測定家庭血圧測定家庭血圧測定図2降圧薬内服治療有無別の血圧コントロール状態BP:bloodpressure(mmHg).圧が家庭血圧治療目標値のC135/85CmmHgを超えており,コントロール不良の高血圧(治療中仮面高血圧)と診断された.全C130例中C96例(73.8%)はCRVO発症時に降圧薬の服用がなかった.そのうちC59例(45.4%)は診察室血圧がC140/90mmHgを超えており無治療の高血圧と判断された.診察室血圧が正常範囲であったC37例(28.5%)においても,36例(27.7%)は家庭血圧がC135/85CmmHgを超えており,無治療の高血圧(仮面高血圧)と判断された.1例のみが家庭血圧も正常の非高血圧であった.降圧薬の内服がなく診察室血圧・家庭血圧ともに正常域であったC1例を除き,130例中C129例が降圧薬内服の有無を問わずコントロール不良の高血圧と判断された.表2に降圧薬内服中症例と降圧薬内服のない症例との比較検討を示す.降圧薬服用の有無で比較すると,診察室血圧がC152.4±19.6vs144.2±17.6CmmHg(p=0.013)と降圧薬服用症例のほうが高値であった.表2降圧薬有無の比較による患者背景項目降圧剤服用ありn=34降圧剤服用なしn=96p値性別(例)男性C15:女性C19男性C16:女性C56C0.403年齢(歳)C67.4±9.16C65.7±11.8C0.237BMI(kg/mC2)C24.0±3.3C23.6±4.8C0.173収縮期血圧(mmHg)C152.4±19.6C144.2±17.6C0.013拡張期血圧(mmHg)C85.1±13.8C83.5±9.9C0.199BMI:bodymassindex.平均値±標準偏差.Unpairedttestで比較した.有意水準p<0.05.III考按RVOにおける高血圧の存在は,その有病率の高さとリスクファクターとしての重要性が久山町研究1)でも示されている.同研究では血圧がC130/80CmmHg以上の正常高値レベルからCRVOが多かったことも報告されており,RVO発症時においては高血圧有無の判断だけでなく,血圧の絶対値に対する検討が必要と考えられた.現在の高血圧診断・治療においては家庭血圧測定の重要性が示されている.高血圧治療ガイドライン2,3)においては,仮面高血圧は非高血圧を示す一般住民のC10.15%,高血圧治療中でコントロール良好な診察室血圧が収縮期C140CmmHg未満かつ拡張期C90CmmHg未満の高血圧患者のC9.23%にみられるとしている4).また同ガイドラインでは仮面高血圧患者の臓器障害と心血管イベントのリスクは,未治療か治療中かにかかわらず持続性高血圧患者と同程度と示されている5).そのため同ガイドラインでは「家庭血圧を指標とした降圧治療の実施を強く推奨する」と明示している.また高血圧患者の治療管理率(降圧薬を服用している患者における診察室血圧が収縮期C140CmmHg未満かつ拡張期C90CmmHg未満)は男性約C33.44%,女性約C43.48%としており6),高血圧の診断を受け降圧薬を服用している患者においても,実際は血圧コントロール不良である可能性がある.RVOと高血圧の関連に関しての検討では,これら家庭血圧を指標とした仮面高血圧の存在や治療管理率を考慮した最新の高血圧診療における視点を考慮することが必要と考えられる.今回筆者らは,RVO発症時に内科にて全身状態や血圧が観察された症例に関し検討した.診察室血圧正常例においては家庭血圧測定が施行された.それにより診察室高血圧の有無に加え,仮面高血圧や治療中仮面高血圧の存在が確認された.またCRVO発症時の血圧値が実測され,RVO発症時の血圧コントロール状態に関し検討が可能であった.その結果,既報告以上にCRVOにおける高血圧の有病率は高率であった.また高血圧ありと判断された症例は,降圧薬服用の有無を問わず全例が診察室血圧高値または家庭血圧が高値であり,コントロール不良の高血圧と判断された.コントロール不良の高血圧の存在は,高血圧治療の不十分または破綻を示している.RVOを発症した症例は,降圧薬内服の有無にかかわらず高血圧治療の開始や再検討が必要な状態であることが示唆された.本研究の限界と今後の課題を述べる.今回の研究では診察室血圧高値例の家庭血圧は計測されていなかった.そのため白衣高血圧の存在が確認できなかった.白衣高血圧に関しては高血圧治療ガイドライン2,3)では「白衣高血圧は非高血圧より予後不良である可能性が高い.」とされており,家庭血圧値にかかわらず診察室血圧高値は血圧コントロール不良と考えられた.今回の研究ではCRVO発症におけるコントロール不良の高血圧の存在の深いかかわりが示唆されたが,その病理は明らかではない.筆者らはCRVO発症機転における高血圧の関与に関し,全身循環における静脈灌流と動脈硬化時の血管に生ずる血管生物学的変化を考慮した病態生理をこれまでに発表したが7,8),より一層の検討が必要であると考えられる.高血圧が重要な危険因子である疾患として脳血管疾患・冠動脈疾患・腎疾患が広く認知されており,それらの発症や予後は高血圧治療の影響を強く受ける.今回の研究ではCRVOもこれらの疾患と同様である可能性が示唆されたが,実臨床においては高血圧治療とCRVOの関連に関してはほとんど報告がない.RVOは眼科疾患として扱われているが,RVO発症は全身の循環障害存在のサインともとらえられ,内科・高血圧専門医との密接な連携が必要な病態であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)YasudaM,KiyoharaY,ArakawaSetal:PrevalenceandsystemicriskfactorsforretinalveinocclusioninageneralJapaneseCpopulation:TheCHisayamaCStudy.CInvestCOph-thalmolVisSciC51:3205-3209,C20102)日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014).日本高血圧学会,20143)日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019).日本高血圧学会,20194)KarioCK,CShimadaCK,CSchwartzCJECetal:SilentCandCclini-callyovertstrokeinolderJapanesesubjectswithwhite-coatCandCsustainedChypertension.CJCAmCCollCCardiolC38:C238-245,C20015)MatsuiY,EguchiK,IshikawaJetal:Subclinicalarterialdamageinuntreatedmaskedhypertensivesubjectsdetect-edCbyhomebloodpressuremeasurement.AmJHypertensC20:385-391,C20076)三浦克之:新旧(1980-2020年)のライフスタイルからみた国民代表集団大規模コホート研究:NIPPONDATA80/90/2010/2020平成C30年度総括・分担研究報告書.20197)土屋徳弘:血圧変動に伴う網膜静脈変化と黄斑浮腫変化─網膜は血圧変動による血管障害を直接観察できる臓器─.血圧C25:696-703,C20188)土屋徳弘,戸張幾夫:高血圧・動脈硬化と網膜静脈閉塞症.日本の眼科C89:1368-1376,C2018***

悪性緑内障に対するマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術が奏効した1症例

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1319.1321,2020c悪性緑内障に対するマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術が奏効した1症例中西美穂中島圭一井上俊洋熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座CACaseofMalignantGlaucomaSuccessfullyTreatedwithMicropulseTransscleralCyclophotocoagulationMihoNakanishi,Kei-IchiNakashimaandToshihiroInoueCDepartmentofOphthalmology,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversityC症例:94歳,女性.近医にて左眼閉塞隅角症に対し水晶体再建術を施行した.左眼術前眼圧はC38CmmHgであり,術翌日,浅前房は残存するが左眼眼圧はC17CmmHgへと下降した.術後C2日目から眼圧C34CmmHgと上昇し,降圧点眼および炭酸脱水酵素阻害薬の内服を開始したが,眼圧上昇が持続した.悪性緑内障が疑われ,Nd:YAGレーザーにて後.および前部硝子体膜切開を行ったが,眼圧下降を認めず熊本大学病院紹介となった.受診時(水晶体再建術C6日),著明な浅前房と高眼圧を認めており,悪性緑内障と診断した.高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったために硝子体手術を含む観血的加療を希望されなかった.そのため,マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(MP-CPC)を施行した.左眼術前眼圧C28CmmHg,術翌日,1週後,3週後の眼圧はそれぞれC23CmmHg,10CmmHg,6CmmHgと下降を認めた.前房深度についてはCMP-CPC施行C3週後に改善を認めた.結論:悪性緑内障に対して従来の治療方法が困難な場合,MP-CPCが有効である可能性が示された.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofmalignantCglaucoma(MG)postCcataractCsurgeryCthatCwasCsuccessfullyCtreatedwithmicropulsetransscleralcyclophotocoagulation(MP-TSCPC)C.Casereport:Thisstudyinvolveda94-year-oldwomanCwhoCunderwentCcataractCsurgeryCforCprimaryCangleCclosureCinCtheCleftCeye.CTheCpreoperativeCIOPCwasC38CmmHg,yetitdecreasedto17CmmHgat1-daypostoperative.However,at2-dayspostoperative,itincreasedto34CmmHg.ShewasdiagnosedasMG,andunderwentincisionoftheposteriorcapsuleandanteriorvitreousmem-braneCwithCaNd:YAGClaser.CHowever,CtheCtreatmentCwasCine.ective.CSinceCsheCwasCelderlyCandCsu.eringCfromCdementia,shewastreatedwithMP-TSCPCinsteadofvitrectomy.TheIOPat1-daypreand1-day,1-week,and3-weeksCpostoperativeCwasC28CmmHg,C23CmmHg,C10CmmHg,CandC6CmmHg,Crespectively,CandCtheCanteriorCchamberCbecamedeepat3-weekspostsurgery.Conclusion:MP-TSCPCcanbeane.ectivetreatmentforMGwhencon-ventionaltreatmentscannotbeperformed.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1319.1321,C2020〕Keywords:悪性緑内障,マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術,水晶体再建術,続発緑内障,閉塞隅角症.malig-nantglaucoma,micropulsetransscleralcyclophotocoagulation,cataractsurgery,secondaryglaucoma,primaryangleclosure.Cはじめに悪性緑内障は極端な浅前房と高眼圧をきたす重篤な続発緑内障であり,1869年にCVonCGraefeにより従来の治療法が奏効しないことからその名が付けられた1).Simmonsらは悪性緑内障に対する初期治療は薬物療法であると報告している2).悪性緑内障に対する薬物療法としては,アトロピン,交感神経Cb受容体遮断薬の点眼,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼あるいは内服,高張浸透圧薬の点滴である.薬物療法に奏効しない場合は,Nd:YAGレーザーによる前部硝子体膜の切開,経強膜毛様体光凝固術,硝子体切除術を行う3).経強〔別刷請求先〕中西美穂:〒860-8556熊本市中央区本荘C1-1-1熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座Reprintrequests:MihoNakanishi,DepartmentofOphthalmology,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversity,1-1-1Honjo,Chuo-ku,Kumamoto860-8556,JAPANC0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(143)C1319図1前眼部OCT検査結果a:右眼.やや浅前房であり,有水晶体眼であった.Cb:左眼マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(MP-CPC)施行前.眼内レンズが前方移動し,浅前房であった.周辺は虹彩と角膜が接触していた.Cc:左眼CMP-CPC施行C3週間後の左前眼部COCT検査結果.左前房の著明な深化を認めた.膜毛様体光凝固術はC1930年代から悪性緑内障のような難治緑内障に対し用いられてきたが,疼痛,前房出血,視力低下,低眼圧,眼球癆などの副作用から,他の治療法が有効な場合には敬遠されてきた4).しかし,近年用いられているマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(micropulseCtranss-cleralcyclophotocoagulation:MP-CPC)は,ON/OFFサイクルを繰り返すことで周囲組織の熱凝固を抑え,効率よく凝固することでそれらの副作用を抑えることができると報告されているが5),悪性緑内障に使用した報告はない.今回,閉塞隅角緑内障に対する水晶体再建術後に生じた悪性緑内障に対し,MP-CPCが奏効した症例を経験したので報告する.CI症例患者:94歳,女性.現病歴:近医にて左眼閉塞隅角症に対し水晶体再建術を施行され問題なく終了した.左眼術前眼圧はC38CmmHgであり,術翌日に浅前房は残存するものの左眼眼圧はC17CmmHgに下降した.術後C2日目から左眼眼圧はC34CmmHgと上昇し,降圧点眼および炭酸脱水酵素阻害薬の内服を開始したが,眼圧下降が得られなかった.悪性緑内障が疑われ,Nd:YAGレーザーにて後.および前部硝子体膜切開を行ったが,眼圧下降を認めず,水晶体再建術C6日後に当科紹介となった.初診時所見:視力は右眼C0.7(矯正不能),左眼C0.06C×IOL(0.7C×IOL×sph.6.00D(cyl.2.5DAx100°).眼圧は右眼10CmmHg,左眼C20CmmHg.右眼はやや浅前房で有水晶体眼であった(図1a).左眼は眼内レンズが前方移動し,浅前房であった.周辺は虹彩と角膜が接触していた(図1b).眼底は両眼ともに視神経乳頭拡大や網膜神経線維層厚の菲薄化などの緑内障性変化を認めなかった.眼軸長は右眼がC20.75mm,左眼がC20.95Cmmであり,両眼とも短眼軸であった.経過:初診時左眼圧が前医よりも下降傾向であったことと,左中心前房深度が典型的な悪性緑内障の状態よりは深くなっていることから,病状が改善傾向である可能性を考え,外来で経過観察の方針となった.初診時よりC10日後,左眼圧C27CmmHgと高値を認めたため,手術加療を勧めたが,高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったため,硝子体手術を含む観血的手術は希望されなかった.そのため,MP-CPCを施行した.左眼CMP-CPC術前眼圧はC28CmmHgであったが,術翌日,1週後,3週後の眼圧はそれぞれC23mmHg,10CmmHg,6CmmHgと下降を認めた.左眼前房深度はCMP-CPC施行C3週後に著明な深化を認めた(図1c).MP-CPC施行C3カ月後の左眼矯正視力はC0.5,眼圧はC9CmmHgで,前房深度は保たれていた.CII考按悪性緑内障の平均発症年齢はC70歳で,男女比はC3:11とされている6).閉塞隅角緑内障眼の術後にC2.4%の頻度で発症し,手術既往なく発症することもある7).また,アジア人に多いとされているが,その原因は眼軸が短く,前房が浅い傾向にあるためと推測されている8).今回の症例では両眼ともに短眼軸であり,高齢の女性であったことから,悪性緑内障のリスクを有していた可能性がある.悪性緑内障の機序は明確にはわかっていないが,房水異常流入が考えられてきた.房水異常流入では毛様体から前部硝子体,水晶体,眼内レンズにかけて房水流出が阻害され,房水が前房ではなく,硝子体腔に流入することにより硝子体圧が上昇し,浅前房と高眼圧を引き起こすと考えられている9).また,白内障手術中は急激な眼圧下降により毛様体が前方回旋し,毛様体扁平部と硝子体が離れることにより房水異常流入が生じるという報告もある10).その他の機序としては,術中,術後の低眼圧が脈絡膜.離を引き起こし,それにより前1320あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020(144)房が浅くなるとの報告もある11).悪性緑内障の初期治療は薬物療法であるとCSimmonsらは報告している2).薬物療法には,毛様体筋を弛緩させ,lens-irisdiaphragmを後方回転させる毛様体麻痺薬の点眼,房水産生を抑制するための房水産生抑制薬の点眼や炭酸脱水酵素阻害薬の内服,硝子体を収縮させるための高張浸透圧薬の点滴などがある3).Luntzらはかつて悪性緑内障のC50%は薬物療法をC5日間継続し治癒したと報告している12).薬物療法で効果がない場合は,白内障術後であればCNd:YAGレーザーによる後.,前部硝子体膜の切開,それでも治癒しない場合は硝子体切除術を行い,段階的に治療することで効果がより期待できるとCVarmaらは報告している13).今回の症例では薬物療法およびCNd:YAGレーザーによる後.,前部硝子体膜切開を行うも治癒しなかったために硝子体切除術の適応があったと考えられるが,前述のように高齢であり,アルツハイマー型認知症もあったためにCMP-CPCを施行した.従来型の経強膜毛様体光凝固術は,これまでも悪性緑内障に対し選択されてきた治療法である.Daveらは,悪性緑内障C28眼のうち,4眼は薬物療法,7眼の眼内レンズ挿入眼はCYAGレーザー,4眼は硝子体切除術,12眼は経強膜毛様体光凝固術で治癒したと報告している.彼らは,経強膜毛様体光凝固術の奏効機序として,毛様体突起の凝固壊死と収縮が毛様体と硝子体の境界面を変化させ,この変化が房水産生の抑制だけでなく,房水流出の促進と毛様体の後方回転に寄与しているのではないかと考察している3).今回筆者らが使用したCMP-CPCでは,従来型の経強膜毛様体光凝固術とは異なり,マイクロパルス秒でレーザー照射のCON/OFFを繰り返すことで周囲組織の熱凝固を抑えることができるのではないかと推測されている4).ONサイクルでは,マイクロ秒で繰り返されるレーザー照射が色素上皮に吸収され,色素上皮の熱エネルギーが上昇することで熱凝固を引き起こすが,無色素上皮では熱エネルギーを吸収しづらく,OFFサイクルでのクーリングタイムを得られるために凝固されることがないと報告されている14).MP-CPCの眼圧下降の作用機序の詳細は解明されておらず,作用機序解明のためにリアルタイムビデオを用いてレーザー照射中の房水流出路の観察が行われた研究も報告されている(JohnstoneCMACetCal,CARVOCAnnualCMeeting2019).それによると,強膜厚の変化,毛様体筋の収縮による脈絡膜上腔の拡大,線維柱帯の内方,後方回転によるCSchlemm管の拡大が観察されている.また,毛様体無色素上皮への傷害は認めなかった.そのため,MP-CPCの眼圧下降機序は房水産生抑制よりも房水流出促進の影響が大きいと思われる.今回の症例では,従来の経強膜毛様体光凝固術の作用機序である房水産生抑制による前房と後房の圧格差の解消に加え,毛様体筋の収縮および毛様体皺襞部の後方回転により房水異常流入が解除(145)されたため,前房が深くなり,房水流出が促進されたことにより眼圧が下がったと推測される.悪性緑内障は比較的まれな疾患ではあるが,発症リスクを理解したうえでの的確な診断,および段階的な治療を施すことにより視機能を保てる可能性が高くなる.薬物療法およびNd:YAGレーザーによる後.・前部硝子体膜切開が奏効せず,観血的手術困難な悪性緑内障に対して,MP-CPCが有効である可能性が示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)vonGraefeA:BeltragezurPathologieundTherapiedesGlaucomas.ArchivfurOphthalmologieC15:108-252,C18692)SimmonsCRJ,CBelcherCCD,CDallowRL:PrimaryCangle-clo-sureCglaucoma.In:DuaneC’sCClinicalOphthalmology(Tas-manCW,CJaegerCEA,eds.)C.CVolC3,CPhiladelphia,CLippincott,Cp23-31,C19853)DaveCP,CSenthilCS,CRaoCHLCetal:TreatmentCoutcomesCinCmalignantglaucoma.OphthalmologyC120:984-990,C20134)NdulueCJK,CRahmatnejadCK,CSanvicenteC:EvolutionCofCcyclophotocoagulation.CJCOphthalmicCVisCResC13:55-61,C20185)AbdelrahmanAM,ElSayedYM:Micropulseversuscon-tinuouswavetransscleralcyclophotocoagulationinrefrac-torypediatricglaucoma.JGlaucomaC27:900-905,C20186)TropeCGE,CPavlinCCJ,CBauCACetal:MalignantCglaucoma.CClinicalCandCultrasoundCbiomicroscopicCfeatures.COphthal-mologyC101:1030-1035,C19947)SchwartzCAL,CAndersonDR:C“MalignantCGlaucoma”inCanCeyeCwithCnoCantecedentCoperationCorCmiotics.CArchCOphthalmolC93:379-381,C19758)ShenCCJ,CChenYY,CSheuSJ:TreatmentCcourseCofCrecur-rentmalignantglaucomamonitoringbyultrasoundbiomi-croscopy:aCreportCofCtwoCcases.CKaohsiungCJCMedCSciC24:608-613,C20089)KaplowitzK,YungE,FlynnRetal:CurrentconceptsintheCtreatmentCofCvitreousCblock,CalsoCknownCasCaqueousCmisdirection.SurvOphthalmolC60:229-241,C201510)MuqitMK:MalignantCglaucomaCafterCphacoemulsi.ca-tion:treatmentCwithCdiodeClaserCcyclophotocoagulation.CJCataractRefractSurgC33:130-132,C200711)QuigleyHA,FriedmanDS,CongdonNG:Possiblemecha-nismsofprimaryangle-closureandmalignantglaucoma.JGlaucomaC12:167-180,C200312)LuntzMH,RosenblattM:Malignantglaucoma.SurvOph-thalmolC32:73-93,C198713)VarmaDK,BelovayGW,TamDYetal:Malignantglau-comaaftercataractsurgery.JCataractRefractSurgC40:C1843-1849,C201414)KucharS,MosterMR,ReamerCBetal:Treatmentout-comesCofCmicropulseCtransscleralCcyclophotocoagulationCinCadvancedglaucoma.LasersMedSciC31:393-396,C2016あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020C1321

広義原発開放隅角緑内障における眼圧季節変動の地域差の検討

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1315.1318,2020c広義原発開放隅角緑内障における眼圧季節変動の地域差の検討清水美穂*1池田陽子*2,3森和彦*3今泉寛子*1吉井健悟*4上野盛夫*3,4木下茂*5外園千恵*3*1市立札幌病院眼科*2御池眼科池田クリニック*3京都府立医科大学眼科学*4京都府立医科大学生命基礎数理学*5京都府立医科大学感覚器未来医療学CRegionalDi.erenceinIntraocularPressureSeasonalVariationinPrimaryOpenAngleGlaucomaPatientsMihoShimizu1),YokoIkeda2,3)C,KazuhikoMori3),HirokoImaizumi1),KengoYoshii4),MorioUeno3,4)C,ShigeruKinoshita5)andChieSotozono3)1)SapporoCityGeneralHospitalOphthalmology,2)Oike-IkedaEyeClinic,3)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,4)DepartmentofGenomicMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,5)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC眼圧季節変動には気候や気温が関与している.今回,札幌市と京都市で広義原発開放隅角緑内障(POAG)の眼圧季節変動を調べた.対象はC2016年の春(3.5月),夏(6.8月),秋(9.11月),冬(12.2月)に眼圧測定でき,市立札幌病院眼科(札幌市)と御池眼科池田クリニック(京都市)通院中の投与薬剤の変更がない広義CPOAG患者,札幌109例,京都C326例である.平均眼圧は春夏秋冬の順に,札幌C13.9C±3.0/13.7±2.8/14.1±3.0/13.6±2.7CmmHg,京都C13.0±3.1/12.3±2.7/12.3±2.8/13.0±2.9CmmHgであった.札幌では有意な眼圧季節変動がなく,京都ではあり,冬季に眼圧が高値であった.CPurpose:Tocompareregionaldi.erencesinintraocularpressure(IOP)seasonalvariation(IOP-SV)betweenprimaryCopen-angleCglaucoma(POAG)patientsCseenCinCSapporoCandCKyoto,CJapan.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC435CPOAGpatients(109CseenCatCSapporoCCityCGeneralCHospital,CSapporo,CJapan,CandC326CseenCatOike-IkedaEyeClinic,Kyoto,Japan)inwhomIOPwasmeasured4timesperseason;i.e.,Season1:Spring(MarchthroughMay)C,CSeason2:Summer(JuneCthroughAugust)C,CSeason3:Fall(SeptemberCthroughNovember)C,CandCSeason4:Winter(DecemberthroughFebruary)C.TheIOPineachseasonwasevaluatedusingrepeatedmeasuresANOVAandWelch’st-testwithBonferronicorrection.Results:IntheSapporoandKyotopatients,themeanIOPinCSeasonsC1-4CwereC13.9±3.0,C13.7±2.8,C14.1±3.0,CandC13.6±2.7CmmHg,CandC13.0±3.1,C12.3±2.7,C12.3±2.8,CandC13.0±2.9CmmHg,respectively.Conclusion:Signi.cantPOAG-relatedIOP-SVwasobservedintheKyotopatients,yetnotintheSapporopatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1315.1318,C2020〕Keywords:広義原発開放隅角緑内障,眼圧季節変動,地域差,皮膚体感温度差.primaryopenangleglaucoma,intraocularpressureseasonalvariation,regionaldi.erence,apparenttemperature.Cはじめに緑内障の進行に関与する因子としてもっともエビデンスの高い要因は眼圧であり,眼圧は日内変動,日々変動,季節変動,体位による変動,体内水分量の変化による変動などさまざまな要因で変動する1.5).眼圧の季節変動に関しては,健常人にも存在するが,緑内障患者においては健常人より変動幅が大きい6)ことが報告されており,眼圧は冬季に高値を示す2,5,7,8).眼圧季節変動の要因は明確に判明していないが,気温が大きく影響していると考えられている.日本は南北に長い地形をしており,北と南では気候や気温が大きく異なって〔別刷請求先〕清水美穂:〒060-8604北海道札幌市中央区北C11条西C13丁目C1-1市立札幌病院眼科Reprintrequests:MihoShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,1-1Nishi13-Chome,Kita11-Jo,Chuo-Ku,Sapporo,Hokkaido060-8604,JAPANC表1対象の背景札幌Cn=109京都Cn=326p値性別(男/女)C46/63C139/187C1.000平均年齢(歳)C72.2±9.3C67.8±12.4C0.002病型C0.906POAGC44C92性別(男/女)C24/20C41/51C0.342NTGC65C234性別(男/女)C22/43C98/136C0.474平均眼圧(mmHg)C13.8±2.9C12.7±2.9<C0.001平均点眼スコア(点)C1.5±0.7C1.4±1.5C0.023POAG:開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障.数値はすべて(平均C±SD)で示した.いるが,いずれも夏と冬の気温差が大きい.今回,筆者らは日本最北地域である札幌市(北海道)と本州の中心に近い京都市(京都府)において,広義開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)患者の眼圧季節変動の存在などを調査した.これまで日本の異なる地方における広義CPOAGの眼圧季節変動を比較した報告はない.CI対象および方法対象は札幌市にある市立札幌病院と京都市にある御池眼科池田クリニックに通院中の線維柱帯切開術および線維柱帯切除術の既往のない広義CPOAG患者のうち,2016年の春,夏,秋,冬の各季節に受診し,そのC1年間に投与薬剤の変更がなかった,札幌C109例(男性C46例,女性C63例,平均年齢C72.2C±9.3歳),京都C326例(男性C139例,女性C187例,平均年齢C67.8C±12.4歳)である(表1).季節を,春をC3.5月,夏をC6.8月.秋をC9.11月,冬をC12.2月と規定し,札幌と京都でそれぞれに眼圧季節変動があるかを検討した.眼圧は,両施設ともCGoldmann圧平式眼圧計を用いて,札幌群ではC2名の医師,京都群ではC3名の緑内障専門医が,それぞれ担当の患者についてC1年を通し担当を変えずに測定を行った.同一患者が同一季節内に数回受診した場合は測定できた眼圧を平均して,その季節の眼圧結果とした.測定眼が両眼の場合は右眼を選択した.統計分析は札幌と京都の患者背景の違いをCWelchのCt検定またはCc2検定を用いて評価した.眼圧季節変動はCrepeatedCmeasuresANOVAの実施後,事後解析でCBonferroni補正によるCWelchのCt検定を用いた.また,使用中の緑内障点眼薬の数をスコア化(単剤:1,配合剤:2,内服C1錠をC1とカウント)し,Wilcoxonの順位和検定を用いて評価した.データ表示は平均値±標準偏差,統計解析にはCTheRsoftware(Version3.4.3)を用いた.また,統計的有意水準は5%とした.II結果対象の背景を表1に示す.男女比はCc2検定で有意差はなかったが,平均年齢はCt検定でCp値=0.002と有意に札幌群が高齢であった.点眼スコアは札幌C1.5C±0.7(1.4剤),京都C1.4C±1.5(0.9剤)と札幌が有意に多かった(p=0.023)が,平均点眼本数は両群ともC1.5剤であり,1年を通じて点眼内容も変化がないため,季節変動に点眼スコアが及ぼす影響はないと考えた.眼圧は春夏秋冬の順に札幌C13.9C±3.0/C13.7±2.8/14.1±3.0/13.6±2.7CmmHg,京都C13.0C±3.1/12.3C±2.7/12.3±2.8/13.0±2.9CmmHgであった.Repeatedmea-suresANOVAにて,札幌では眼圧の季節変動がなかった(p=0.593)が,京都では眼圧の季節変動に有意差があった〔春対夏,春対秋,夏対冬,秋対冬(p<0.05)〕(図1).CIII考按患者背景として札幌群と京都群において,男女比はC4対6,病型もPOAG:正常眼圧緑内障(normaltensionglaucoma:NTG)=4:6で同じであったが,その他の背景要因として平均年齢は札幌C72.2歳,京都C67.8歳と札幌のほうが有意に高齢で,平均眼圧は札幌群C13.8C±2.9CmmHg,京都群C12.7C±2.9CmmHgと札幌群で有意に高かった(WelchのCt検定p<0.001)ことが異なっている.測定時間については後ろ向き研究で統一されていない.CShiose7)は,全身状態と眼圧の関係において,日本人では年齢とともに眼圧が下降することを報告しているが,今回の結果では平均年齢の高い札幌群で眼圧が高かった.またNTGよりCPOAGや高眼圧症で眼圧の季節変動幅が大きいこと8)が報告されている.本研究で眼圧平均値の高い札幌群で眼圧の季節変動の有意差がなかったことから,年齢や平均眼圧が眼圧の季節変動に及ぼす影響はそれほど大きくないと考えられる.また,平均眼圧が収縮期血圧,肥満と正の相関を示すというCShiose7)の報告や,収縮期血圧が眼圧にかかわるという報告7,9,10)があり,血圧が眼圧季節変動にもかかわる可能性があるため,今後検討してゆきたい.眼圧季節変動のパターンについて,今回は図1に示すように京都では夏と比較して気温が下がる春,秋,冬に眼圧が上昇したのに対し,札幌では各季節間の有意差がなかった.一般的に眼圧は夏より冬が高い傾向を示す2,5,7,8).その理由としてはいまだ明確なものはないが,眼圧調整機構に自律神経系が深くかかわっていることが示唆されている.ヒトの交感神経機能は寒冷に晒されると亢進し,血中,尿中カテコラミン含量が冬季に有意に上昇,カテコラミンの上昇がCb受容体を介した房水産生を増加させ,眼圧が上昇すると考えられている11,12).眼圧季節変動に寒冷や交感神経が大きな影響を与えることを踏まえて,札幌と京都の気候,とくに冬季の室内****30.030.025.025.05.05.0*<0.050.00.0春夏秋冬春夏秋冬札幌の眼圧京都の眼圧図1各季節の眼圧京都群は春対夏,春対秋,夏対冬,秋対冬(p<0.05)で眼圧に有意差があった.札幌群では各季節において有意差がなかった.エラーバーは標準偏差を示す.眼圧(mmHg)20.020.015.015.010.010.0環境の影響を考えてみた.日本は南北に長い地形をしており,北と南では気候や気温が大きく異なっている.日本で唯一の亜寒帯気候地域である北海道は図213)に示すように年間の寒暖の差が激しいが,夏は涼しく,冬も部屋や公共場所は暖かく保たれているという特徴がある.一方,京都は日本列島の中心に位置しながら,盆地という特殊な地形上,夏は非常に暑く冬は寒く,寒暖の差が激しい.このC2地域では夏冬の寒暖の差は大きくても体感する温度が違うという特徴がある.張らは,冬季(1.2月)の居間の室温について全国をC6地域に分け調査したところ,北海道は第一位でC22.0℃だったのに対し関西はC15.9℃でC6地域中最下位であったと報告している14).冬季において札幌では室内温度が温暖かつ一定に保持できるよう十分考慮された住宅構造,暖房設備があり,また,外出時も極寒のため長時間の徒歩移動はせず交通機関の利用により外気に晒される時間が短く,公共機関・施設内も温度が高く設定されており,体感皮膚温度の変動が少ないことが,先に示したような交感神経系の持続的な亢進が少ないことにつながり眼圧の変動が小さく,季節変動の差が少なかった一因になったと考えられた.一方,京都は冬季の室内温度も低く,体感皮膚温度の低下により交感神経が長期間亢進され冬季の眼圧上昇につながった可能性が考えられた.札幌で冬季より秋季に眼圧が高かった理由としては,秋季の環境要因の影響,すなわち,冬への移行期間で暖房設備が完備されないまま気温が急に下がる時期のため,逆に冬季に比べて皮膚温度が低かった可能性が考えられた.西野らは15)札幌市の平均気温から,20℃以上になる7.8月を夏季,1℃以下のC3月を含めたC12.3月を冬季とし,4.6月を春季,9.11月を秋季として季節変動を検討したところ,冬季の有意な眼圧上昇があったことを報告している.本検討のような他地域との比較にはこのような解析は選択できないものの,北海道の特殊な気象状況を考慮のうえこのような切り口で解札幌気温(℃)札幌京都C35京都1C.3.5C5.7C302C.2.3C6.4C253C2.1C9.9C4C7.8C16.1C205C14.9C21C156C16.3C23C7C20.7C27.8C108C23.9C29C59C19.4C25.3C010C10.6C19.7C11C2.1C12.5-512C.1C8.2-10123456789101112(月)図22016年札幌と京都の年間気温13)札幌,京都ともに,夏と冬の温度差が大きい.(気象庁ホームページより作成)析をしてみると今回と異なる結果となる可能性がある.緑内障治療の一番強力なエビデンスは眼圧下降である16)が,眼圧はさまざまな要因で常に変動しており,季節や地域もその一つであることがわかった.眼圧変動幅の大きさが視野進行にかかわる17)ということからも,眼圧の季節変動への留意も必要である.今回は使用した点眼スコアは両地域で有意差がなかったが,使用点眼内容については検討していないこと,眼圧測定時刻は後ろ向き研究のため統一されておらず,緑内障患者の多様な背景因子を十分に考慮した検討とはいえない.今後はこれらの要因も考慮したうえでさらに解析をしてゆく予定である.これらの要旨は,第C28回日本緑内障学会で発表した.文献1)安田典子:より質の高い緑内障治療をめざして.あたらしい眼科28:1115-1123,C20112)BlumenthalCM,CBlumenthalCR,CPeritzCECetal:SeasonalCvariationCinCintraocularCpressure.CAmCJCOphthalmolC69:C608-610,C19703)KiuchiCT,CMotoyamaCY,COshikaT:RelationshipCofCpro-gressionCofCvisualC.eldCdamageCtoCposturalCchangesCinCintraocularpressureinparentswithnormal-tensionglau-coma.OphthalmologyC113:2150-2155,C20064)HuntCAP,CFeiglCB,CStewantIB:TheCintraocularCpressureCresponsetodehydration:apilotstudy.EurJApplPhysi-olC112:1963-1966,C20125)IkadaCY,CUenoCM,CYoshiCKCetal:LongitudinalCseasonalCvariationsCofCintraocularCpressureCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCpatientsCasCrevealedCbyCreal-worldCdata.CActaOphthalmologica:1-2,C20206)WilenskyCJT,CGieserCDK,CDietscheCMLCetal:IndividualCvariabilityinthediumalintraocularpressurecurve.Oph-thalmologyC100:940-944,C19937)ShioseY:Intraocularpressure:NewCperspectives.CSurvCOphthalmolC34:413-435,C19908)逸見知弘,山林茂樹,古田仁志ほか:眼圧の季節変動.日眼会誌98:782-786,C19949)SuzukiCY,CIwaseCA,CAraieCMCetal:RiskCfactorCforCopen-angleglaucomainaJapanesepopulation:theTajimiStudy.Ophthalmology113:1613-1617,C200610)KawaseK,TomidokoroA,AraieMetal:Ocularandsys-temicCfactorsCrelatedCtoCintraocularCpressureCinCJapaneseadults:theTajimiStudy.BrJOphthalmolC92:1175-1179,C200811)太田東美,宇治幸隆,服部靖ほか:トラベクレクトミー術後における眼圧季節変動.日眼会誌C96:1148-1153,C199212)長瀧重智,比嘉敏明:房水産生機構:緑内障の薬物療法(東郁郎編),p12-19,ミクス,199013)気象庁ホームページ,2016;www.data.jma.go.jp/obd/Cstats/etrn/index.php14)張会波,吉野博,村上周三ほか:全国の住宅における室内温度環境に関する分析.日本建築学会技術報告集C15:C453-457,C200915)西野和明,吉田富士子,新田朱里ほか:広義の原発開放隅角緑内障患者に対する自動静的視野検査直後の冬期における一過性眼圧上昇.日眼会誌117:990-995,C201316)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C201817)木内良明:眼圧変動の意義と考え方.臨眼C63(増):28-33,C2009C***