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正常眼圧緑内障におけるプロスタグランジン関連薬単剤からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液への切り替えにおける眼圧下降効果と安全性の検討

2020年8月31日 月曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(8):980.984,2020c正常眼圧緑内障におけるプロスタグランジン関連薬単剤からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液への切り替えにおける眼圧下降効果と安全性の検討多田香織*1池田陽子*2,3上野盛夫*2森和彦*2木下茂*4外園千恵*2*1京都中部総合医療センター眼科*2京都府立医科大学眼科学教室*3御池眼科池田クリニック*4京都府立医科大学感覚器未来医療学CShort-termSafetyandE.cacyofSwitchingfromMonotherapyProstaglandinAnaloguestoMikelunaCombinationOphthalmicSolutioninJapaneseNormal-tensionGlaucomaPatientsKaoriTada1),YokoIkeda2,3),MorioUeno2),KazuhikoMori2),ShigeruKinoshita4)andChieSotozono2)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)Oike-IkedaEyeClinic,4)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC正常眼圧緑内障患者におけるプロスタグランジン(PG)関連薬からカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ,大塚製薬)への切り替え効果と安全性を検討した.PG関連薬単剤で加療中の正常眼圧緑内障患者C33例C33眼を対象に,点眼切り替え前,切り替え後C1カ月とC3カ月における眼圧および副作用を検討した.点眼液切り替え後C1カ月とC3カ月の眼圧はそれぞれC11.0±2.6CmmHgおよびC11.3±2.7CmmHgであり,切り替え前のC12.0±2.2CmmHgと比較していずれも有意に下降した(p<0.05).血圧は点眼液切り替え後C1カ月,脈拍はC1カ月後とC3カ月後時点で有意な低下(p<0.05)を認めたが,経過観察期間において眼局所,全身副作用で点眼中止に至る症例はなかった.以上より,カルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液は正常眼圧緑内障患者の治療強化に有効であり,副作用の少ない点眼液であることが確認された.CPurpose:ToCinvestigateCtheCsafetyCandCe.cacyCofCMikelunaCCombinationCOphthalmicSolution(OtsukaCPhar-maceuticalCo.),CaClong-acting2%CcarteololChydrochlorideCandClatanoprost.xed-combination(CLFC)eye-dropCmedication,CinCJapaneseCnormalCtensionglaucoma(NTG)patientsCinCtheCclinicalCsetting.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC33CeyesCofC33CNTGCpatientsCwhoCswitchedCfromCtopicalCprostaglandinCanaloguesCmonotherapyCtoCCLFCeyedrops.Intraocularpressure(IOP),bloodpressure,andheartratewasmeasuredbeforetheinitiation(baseline)Candat1-and3-monthspostadministration,andassociatedadverseeventswereinvestigated.Results:MeanIOPatCbaselineCandCatC1-andC3-monthsCpost-administrationCwasC12±2.2CmmHg,C11±2.6CmmHg,CandC11.3±2.7CmmHg,respectively[signi.cantIOPreduction(p<0.05)].Bloodpressuredecreasedsigni.cantlyafter1month(p<0.05)CandCheartCrateCafterC1CandC3months(p<0.05)withoutCsubjectiveCsympotoms.CNoneCofCtheCpatientsCdiscontinuedCuseCdueCtoCadverseCdrugCreaction.CConclusion:CLFCCeyeCdropsCwereCfoundCe.ectiveCforCstrengtheningCtheCIOPCloweringe.ectwithasafeandwell-toleratedpro.leinNTGpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(8):980.984,C2020〕Keywords:カルテオロール,ラタノプロスト,配合点眼液,正常眼圧緑内障,眼圧.carteololhydrochloride,latanoprost,.xed-combination,normaltensionglaucoma(NTG),intraocularpressure(IOP).C〔別刷請求先〕多田香織:〒629-0197京都府南丹市八木町八木上野C25京都中部総合医療センター眼科Reprintrequests:KaoriTada,DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,25Yagiueno,Yagi,Nantan,Kyoto629-0197JAPANC980(80)はじめに2017年C1月に世界に先駆けて日本で販売されたカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ配合点眼液,大塚製薬.以下,CLFC)は,プロスタグランジン(PG)関連薬のラタノプロスト点眼液とC1日C1回のCb遮断薬であるカルテオロール塩酸塩C2%を配合した抗緑内障点眼液である.1日C1回製剤同士の組み合わせは世界初であり,かつCb遮断薬としてカルテオロール塩酸塩を含有していることから,眼圧下降効果に加え,眼底血流改善作用や内因性交感神経刺激作用(intrinsicsympathomimeticCactivity:ISA)も期待される.また,防腐剤としてベンザルコニウム塩酸塩(BAC)を含まず,角膜への障害が軽減される可能性がある.点眼液販売開始からC1年以上が経過したが,CLFCの眼圧下降効果に関する報告は調べる限りまだ少ない1,2).今回は緑内障病型を正常眼圧緑内障に限定し,PG関連薬単剤からCLFCへの切り替えにおける眼圧下降効果と安全性について検討したので報告する.CI対象および方法京都府立医科大学および御池眼科池田クリニックに通院中の正常眼圧緑内障患者のうち,PG関連薬単剤からCCLFCに切り替え,治療強化を行ったC33例C33眼〔男性C7例,女性26例,平均年齢C62.9C±13.8歳(平均値C±標準偏差)(39.90歳)〕を対象とし,レトロスペクティブに評価を行った.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,京都府立医科大学病院の倫理委員会の承諾を得て実施した.切り替え前,切り替え後C1,3カ月の眼圧をCGoldmann圧平眼圧計で測定し,眼圧下降効果を検討した.なおCCLFCの両眼処方例では右眼を対象とし,眼圧に影響を及ぼす可能性のある他剤と同時に開始した症例は除外した.緑内障病期を,静的視野検査では初期:meandeviation(MD)値≧C.6CdB,中期:C.6CdB>MD値≧C.12CdB,後期:C.12CdB>MD値,Goldmann動的視野検査では初期:I,II,中期:III,後期:IV,Vと定義し,対象の視野障害の程度を評価した.安全性については,切り替え前後の眼表面障害の程度,血圧と脈拍で評価を行った.眼表面障害の程度の評価はC33例中,前眼部写真での記録があるC29例(男性C5例,女性C24例,平均年齢C62.5C±13.2歳)を対象に行った.評価にはCrichtonら3)の用いた分類を使用し,結膜充血スコア:0=none(normal),0.5=trace(trace.ush,reddishpink),1=moderate(brightCredcolor),3=sever(deep,CbrightCdif-fuseredness),点状表層角膜症(super.cialCpunctaCkera-topathy:SPK)スコア:0=none(no.ndings),0.5=trace(1.5puncta),1=mild(6.20puncta),3=sever(tooCmanypunctatocount)とした.また従来,来院患者には院内の自動血圧計(健太郎CHBP-9020,OMRON,もしくはハートステイションCSMPV-5500,日本電工)を用いた安静時の収縮期/拡張期血圧,脈拍の測定を指示しており,点眼切り替え前後での測定値の変動を検討し安全性の評価を行った.統計学的検討は対応のあるCt検定を用いた.CII結果対象の内訳を表1に示す.切り替え前平均眼圧はC12.0C±2.2CmmHgと低値であった.対象の視野障害の程度について,33例中,静的視野検査で経過観察されていたC31例のCMD値の平均は.5.0±3.8CdB(C.0.4.C.12.7CdB)であり,Gold-mann動的視野検査で経過観察されていた残りC2例の湖崎分類はCIIbとCIVであった.対象の緑内障病期は初期:22例(66.7%),中期:8例(24.2%),後期:3例(9.1%)であった.切り替え前の眼表面障害の程度については,33例中,前眼部写真での記録があるC29例において結膜充血スコア:C0.4±0.2(0.0.5),SPKスコア:0.4C±0.6(0.2)であった(表2).血圧は収縮期がC119.2C±16.8CmmHg,拡張期がC70.9C±12.1CmmHg,脈拍はC81.1C±17.1/分であった(表1).切り替え前の使用薬剤の内訳はC33例中C32例がラタノプロスト点眼液(内C5例は防腐剤が添加されていないラタノプロスト表1点眼切り替え前の対象の内訳n年齢眼圧緑内障病期(%)血圧(mmHg)脈拍(/分)(男:女)(歳)(mmHg)初期中期後期収縮期拡張期33(7:26)C62.9±13.8C12±2.2C66.7C24.2C9.1C119.2±16.8C70.9±12.1C81.1±17.1C表2点眼切り替え前後の眼表面障害の変化n(男:女)年齢(歳)結膜充血スコアSPKスコア切り替え前切り替え後1カ月切り替え後3カ月切り替え前切り替え後1カ月切り替え後3カ月29(5:24)C62.5±13.2C0.4±0.2C0.5±0.1C0.5±0.1C0.4±0.6C0.4±0.6C0.3±0.516*******:p<0.05NS:有意差なし***NS12.0mmHg11.0mmHg11.3mmHg***:p<0.05NS:有意差なし:収縮期血圧:拡張期血圧:脈拍NS眼圧(mmHg)140切り替え前切り替え後切り替え後1カ月3カ月40図1眼圧の推移点眼切り替え後C1カ月,3カ月いずれの時点でも有意な眼圧下降が確認された.PF点眼液),1例がビマトプロスト点眼液からの切り替えであった.CLFCへ切り替え後C1,3カ月の眼圧はそれぞれC11.0±2.6CmmHgおよびC11.3C±2.69CmmHgであり,切り替え前のC12.0C±2.2CmmHgと比較し有意に下降した(p<0.05)(図1).検討したC29例の眼表面障害の程度について,切り替え後C1カ月とC3カ月の結膜充血スコアは変動なく両時点ともC0.5C±0.1(0.0.5)であり,切り替え前と有意差はみられなかった.SPKスコアは切り替え後1,3カ月でそれぞれC0.4C±0.6(0.2),0.3C±0.5(0.2)であり,切り替え前と切り替え後C1,3カ月,また切り替え後C1カ月とC3カ月で有意差はみられなかった(表2).33例すべての症例で切り替えC3カ月目以降も点眼継続可能であった.また,切り替え前,切り替え後C1,3カ月における収縮期血圧はそれぞれC119.2C±16.8,114.6C±14.1,116.9C±15.0CmmHg,拡張期血圧はC70.9C±12.1,67.5C±11.3,69.3C±13.7CmmHg,脈拍はC81.1C±17.1,C75.0±12.1,73.1C±10.3/分であった.血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差を認めたが(p<0.05),切り替え前と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は切り替え前に対し,切り替え後C1,3カ月ともに有意差をもって下降した(p<0.05).切り替え後C1カ月とC3カ月の値に有意差はなかった(図2).CIII考察今回の検討の結果,PG製剤単剤からの切り替えC33例中,32例がラタノプロスト点眼液からの切り替えであり,残りのC1例はビマトプロスト点眼液からの切り替え例であった.ラタノプロスト点眼液からの切り替えC32例で検討しても点眼切り替え前後の平均眼圧はほぼ変わりなく,点眼切り替え前,切り替え後1,3カ月の眼圧はそれぞれC12C±2.2CmmHg,C11±2.6CmmHg,11.3C±2.70CmmHgであった.Yamamotoら20201000切り替え前切り替え後切り替え後1カ月3カ月図2収縮期/拡張期血圧と脈拍の推移血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差をもって下降したが,処方時と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は処方時に対し切り替え後C1カ月,3カ月ともに有意差をもって下降した.切り替え後C1カ月とC3カ月の間には有意差を認めなかった.は,CLFCの第CIII相臨床試験において,原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症の患者C118例を対象にC4週間のラタノプロスト点眼液単剤投与期間の後CCLFCに切り替えを行ったところ,8週間後の朝点眼前眼圧はC20.1CmmHgから17.2CmmHgまでC2.9CmmHg下降したと報告されている4).このうち正常眼圧緑内障患者はC9例含まれておりC8週間で3.7CmmHgの下降を認めたと報告されているが,エントリー基準がC18CmmHg以上に設定されており,筆者らの検討よりベースライン眼圧が高値であり,それゆえに眼圧下降幅も大きかった可能性がある.また,今回の筆者らの検討においてビマトプロスト点眼液からの切り替え例がC1例含まれていた.ビマトプロスト点眼液はラタノプロスト点眼液など従来のCPG製剤と異なり,プロスタマイド受容体に作用することで強力な眼圧下降効果を持つCPG製剤である5).ビマトプロスト点眼液とラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合剤の眼圧下降効果を比較した過去の報告はいくつかあり,その効果を同等とするもの6)やビマトプロスト点眼液より配合剤のほうが優れているとするものもある7).今回のC1例では,ビマトプロスト点眼液からの切り替え前,切り替え後C1,3カ月の眼圧はC14CmmHg,12CmmHg,11CmmHgであり,CLFCへ切り替えたことによりC20%以上の眼圧下降が得られた.PG製剤単剤からCPG/Cb配合剤への変更におけるメリットは,点眼本数,点眼回数を増やさずに治療強化でき,アドヒ120100血圧(mmHg)脈拍(/分)8060アランスの維持もしくは点眼切り替えによるアドヒアランスの向上が期待できる点である.また,配合剤では,点眼同士の間隔が不十分でC1剤目の点眼液がC2剤目にCwashoutされて効果が薄れてしまうという心配もない.これまで,国内で臨床使用可能となっているCPG/Cb配合剤の眼圧下降効果はいずれも,それぞれの併用群と比較して非劣性が示されている8,9)が,一方で配合剤のほうが劣っていたという報告もある10.12).これまでのCPG/Cb配合剤に配合されているCb遮断薬はすべてC1日C2回点眼のチモロールであり,配合剤として1日C1回点眼となるとC1日当たりの投与量が減ってしまう.そのためもともとコンプライアンスが良好である患者においては,併用療法より配合剤治療のほうが眼圧下降効果が劣ってしまう可能性がある.今回使用したCCLFCではC1日C1回点眼のカルテオロールが配合されており,1日C1回の製剤同士を配合した点眼液は世界で初めてである.単剤からの治療強化においても併用療法からの変更においても安定した眼圧下降効果が期待できるとされている.CLFCは配合剤として,眼圧コントロール不十分な正常眼圧緑内障患者の治療強化に有用である可能性が示された.安全性において,まずCPG関連薬単剤からの切り替えによりラタノプロストにCb遮断薬としてカルテオロール塩酸塩の成分が追加されるため角膜障害性の増悪が懸念された.検討したC29例すべての症例で眼表面に関する副作用の悪化を認めず,全対象において切り替えC3カ月目以降も点眼継続可能であった.CLFCは防腐剤としてCBACを含まない製剤である.そのうえ,併用療法に比べ点眼回数減少に伴う防腐剤曝露機会の減少という配合剤のメリットも生かされ,CLFCはドライアイなどの眼表面疾患のある患者の治療強化にも有用と考える.また,カルテオロールは内因性交感神経刺激作用(intrinsicsympathomimeticactivity:ISA)をもつ非選択的Cb遮断薬で,チモロールに比べて循環器系や呼吸機能に及ぼす影響が小さいことが報告されている13).今回,点眼切り替え前,切り替え後の収縮期/拡張期血圧,脈拍を測定しその変動を検討した.血圧は収縮期,拡張期ともに切り替え前と切り替え後C1カ月では有意差をもって低下した.切り替え前と切り替え後C3カ月では有意差を認めなかった.脈拍は切り替え前に対し,切り替え後1,3カ月ともに有意差をもって低下した.切り替え後C1カ月とC3カ月の間には有意差はなかった.Yamamotoらの報告4)でもラタノプロスト点眼液からの切り替え後C2カ月で血圧および脈拍の低下(下降幅:収縮期/拡張期血圧はC1.2/1.1CmmHg,脈拍はC1.8/分)を認めており,筆者らのC1カ月での下降幅(それぞれC4.9/3.4CmmHg,脈拍はC6.3/分)はCYamamotoらの報告より大きい値であった.今回検討した対象においては,これらのことが原因で体調不良をきたし点眼中止に至る症例はなく,最高齢の患者はC90歳であったが安全に使用できた.しかし,今回のようにCPG関連薬単剤からCPG/Cb配合剤への切り替えにおいては,常にCb遮断薬の全身性副作用の可能性を念頭におき,切り替え時には十分な問診を行い,切り替え後にも体調の変化がないかなどの確認が必要と考える.今回の検討における限界としては点眼時刻,各種パラメータ測定時刻,観察シーズンを対象間で統一できていないことがあげられ,季節変動や日内変動が影響している可能性がある.また今回はC3カ月という短期の報告であるため,今後はさらに長期にわたり評価を行っていく必要がある.CIV結論CLFCは正常眼圧緑内障患者の治療強化において有意な眼圧下降が得られる副作用の少ない点眼液であることが確認された.利益相反:木下茂:参天製薬【F】【P】,千寿製薬【F】【P】,大塚製薬【F】【P】,興和【F】【P】外園千恵:参天製薬【F】【P】森和彦:【P】池田陽子:【P】上野盛夫:【P】多田香織:【R】-II大塚製薬文献1)中牟田爽史ら:ラタノプロスト点眼液からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬への変更.臨眼C73:729-735,C20192)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼薬の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科36:1083-1086,C20193)CrichtonAC,VoldS,WilliamsJMetal:Oclarsurfacetol-erabilityCofCprostaglandinCanalogsCandCprostamidesCinCpatientswithglaucomaorocularhypertension.AdvTherC30:260-270,C20134)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:RandomizedCcontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationinprimaryopen-angleglaucomaorhyperten-sion.AmJOphthalmolC171:35-46,C20165)SharifCNA,CWilliamsCGW,CKellyCR:BimatoprostCandCitsCfreeCacidCareCprostaglandinCFPCreceptorCagonists.CEurJPharmacolC432:211-213,C20016)RossettiL,KarabatsasCH,TopouzisFetal:ComparisonofCtheCe.ectsCofCbimatoprostCandC.xedCcombinationCofClatanoprostCandCtimololConCcircadianCintraocularCpressure.COphthalmologyC114:2244-2251,C20077)FacioAC,ReisAS,VidalKSetal:Acomparisonofbima-toprost0.03%versusthe.xed-combinationoflatanoprost0.005%CandCtimolol0.5%CinCadultCpatientsCwithCelevatedCintraocularpressure:anCeight-week,Crandomaized,Copen-labeltrial.JOculPharmacolTherC25:447-451,C20098)IgarashiR,ToganoT,SakaueYetal:E.ectonintraocu-larpressureofswitchingfromlatanoprostandtravoprostmonotherapytotimolol.xedcombinationsinpatientswithnormal-tensionCglaucoma.CJCOphthalmolC2014:720385,C20149)桑山泰明,DE-111共同試験グループ:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験.あたらしい眼科32:133-143,C201510)DiestelhorstM,LarssonL-I,EuropeanLatanoprostFixedCombinationCStudyGroup:AC12-weekCstudyCcomparingCtheC.xedCcombinationCofClatanoprostCandCtimololCwithCtheCconcomitantCuseCofCtheCindividualCcomponantsCinCpatientsCwithCopenCangleCglaucomaCandCocularChypertension.CBrJOphthalmolC88:199-203,C200411)SchumanJS,KatzGJ,LewisRAetal:E.cacyandsafetyofC.xedCcombinationCofCtravoprost0.004%/timolol0.5%CophthalmicCsolutionConceCdailyCforCopen-angleCglaucomaCandocularhypertension.AmJOphthalmolC140:242-250,C200512)WebersCA,BeckersHJ,ZeegersMPetal:TheintraocuC-larpressure-loweringe.ectofprostaglandinanalogscom-binedwithtopicalb-blockertherapy:asystematicreviewandmeta-analysis.OphthalmologyC117:2067-2074,C201013)NetlandPA,WeissHS,StewartWCetal:Cardiovasculare.ectsoftopicalcarteololhydrochlorideandtimololmale-ateinpatientswithocularhypertensionandprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalmolC123:465-477,C1997***

高度な角膜障害を発症したため,バルベルト緑内障インプラントを摘出した1例

2020年8月31日 月曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(8):975.979,2020c高度な角膜障害を発症したため,バルベルト緑内障インプラントを摘出した1例砂川珠輝*1小菅正太郎*1太田博之*2横山康太*2齋藤雄太*2恩田秀寿*2*1昭和大学江東豊洲病院眼科*2昭和大学医学部眼科学講座CACaseofBaerveldtGlaucomaImplantExtractionforSevereCornealDisorderTamakiSunakawa1),ShotaroKosuge1),HiroyukiOta2),KotaYokoyama2),YutaSaito2)andHidetoshiOnda2)1)DepartmentofOphthalmology,ShowaUniversityKoto-ToyosuHospital,2)DepartmentofOphthalmology,ShowaUniversitySchoolofMedicineC目的:バルベルト緑内障インプラント(BGI)挿入術を施行後C27カ月目に遷延性角膜浮腫を発症しCBGIを摘出したC1症例を報告する.症例:32歳,男性.既往歴はアトピー性皮膚炎,糖尿病.他院にて併発白内障で両眼白内障手術を施行後,右眼眼圧上昇を認め,線維柱帯切除術を施行されるも眼圧が下降しないため,当院受診.初診時眼圧右眼60CmmHg,左眼C43CmmHg.両眼眼内レンズ挿入眼で前眼部清明,眼底所見上視神経乳頭陥凹拡大を認めた.右眼CBGI挿入術を施行し,術後経過良好となり,4カ月後に左眼CBGIを挿入した.両眼チューブは前房内上耳側に留置し,角膜との接触はなく,術後眼圧はC10CmmHg台前半に下降した.術C2年後から左前房内チューブの先端と角膜裏面との間に白色線維性索状物を認め,その位置に角膜混濁を発生した.徐々に混濁は拡大し,遷延性角膜浮腫を認めたため,術27カ月後に左眼CBGIを摘出した.しかし,角膜混濁はさらに悪化したため,左眼全層角膜移植術を施行した.結論:BGI術後の角膜障害はチューブと角膜が接触してなくとも発症することがあり,長期的な経過観察が必要である.CPurpose:ToCreportCaCcaseCinCwhichCaCBaerveldtglaucomaCimplant(BGI)wasCextractedCatC27-monthsCpostCimplantationCdueCtoCtheCdevelopmentCofCpersistentCcornealCedema.CCase:ThisCstudyCinvolvedCaC32-year-oldCmaleCpatientwithatopicdermatitisanddiabeteswhoexperiencedincreasedintraocularpressure(IOP)inhisrighteyepostcataractsurgery.HewasreferredtoourhospitalaftertrabeculectomyperformedatanotherclinicresultedinnodecreaseofIOP.Uponexamination,theIOPinhisrightandlefteyewas60CmmHgand43CmmHg,respectively,andexpansionofoptic-disccuppingwasobserved.ABGIwasimplantedinhisrighteye,andalsoinhislefteye4monthslater.BothBGItubeswereplacedintotheuppertemporalsideoftheanteriorchamberwithouttouchingthecornea.At2-yearspostoperative,arestiformbodyappearedbetweenthecorneaandthetubeintheleft-eyeanteriorchamber,andcornealopacitywasobserved.Theopacityhadspreadandcausedpersistentcornealedema,sotheBGIinhislefteyewasextractedat27-monthspostoperative.However,thecornealopacityworsenedpostBGICextraction,CsoCpenetratingCkeratoplastyCwasCperformed.CConclusion:EvenCifCtheCBGICtubeCdoesCnotCcontactCwithcornea,cornealproblemsmayoccurpostBGIsurgery.Thus,long-termfollow-upisnecessary.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(8):975.979,C2020〕Keywords:バルベルト緑内障インプラント,術後晩期合併症,角膜混濁,BGIの摘出.BaerveldtCglaucomaCim-plant,latepostoperativecomplications,cornealopacity,removedBGI.Cはじめに少や水疱性角膜症などの角膜障害があげられる.線維柱帯切バルベルト緑内障インプラント(BaerveldtCglaucoma除術とCBGIを比較したCTubeVersusTrabeculectomyStudyimplant:BGI)挿入術の重篤な術後期合併症の一つに角膜内(TVTStudy)1)において,遷延性角膜浮腫は術後C17%に発皮細胞密度(coronealCendothelialCcelldensity:ECD)の減生したと報告されている.術後浅前房や前房内のチューブの〔別刷請求先〕砂川珠輝:〒135-8577東京都江東区豊洲C5-1-38昭和大学江東豊洲病院眼科Reprintrequests:TamakiSunakawa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShowaUniversityKoto-ToyosuHospital,5-1-38Toyosu,Koto-ku,Tokyo135-8577,JAPANC先端が角膜内皮に接触すること,また眼圧の急激な変化などがCECDの減少原因とされている2.4).今回,BGI挿入術後,前房内のチューブと角膜は接触していないにもかかわらず,急激に遷延性角膜浮腫が進行し,術後C27カ月目にCBGIを摘出するに至ったC1症例を経験したので報告する.CI症例患者:32歳,男性.主訴:右眼圧上昇.現病歴:2012年に他施設で併発白内障に対し,両眼白内障手術〔右眼水晶体全摘術+眼内レンズ(IOL)縫着術,左眼超音波乳化吸引術+IOL〕を施行された.その後,両眼の眼圧上昇を認め,点眼にて左眼は下降したが,右眼はコントロール不良で線維柱帯切除術,前部硝子体切除術が行われた.しかし術後も右眼眼圧高値が持続するため,2014年C6月に昭和大学病院附属東病院を受診となった.既往歴:アトピー性皮膚炎(皮膚科通院中),2型糖尿病(HbA1c5.5%),高度肥満(身長C161Ccm,体重C130CKg:BMI50以上).家族歴:特記すべきことなし.初診時所見:視力は右眼C0.4(0.6C×.2.5D(cyl.1.75DAx165°),左眼C1.2(n.c.).眼圧は右眼C60mmHg,左眼C43mmHg.両眼とも角膜は透明で,前房は深く清明であった.右眼はC10時方向に周辺虹彩切除を認め,IOL縫着眼(3,9時結膜下に縫着糸)で,左眼はCIOL挿入眼であった(図1).眼底所見上として右眼は視神経乳頭陥凹拡大を認め,左眼は特記すべき所見はなかった(図2).Goldmann視野検査は右眼湖崎分類CIIb,左眼は正常であった.隅角所見は両眼ともShaffer分類Cgrade4,Scheie分類Cgrade0であり,右眼C2時方向と左眼C6時方向に周辺虹彩前癒着(peripheralanteri-orsynechia:PAS)を認めた.また,ECD値は右眼C2,119個/mm2,左眼C2,410個/mmC2であった.経過:2014年C6月に右眼CBGI(BG101-350)挿入術を施行し,術後眼圧はC15CmmHg前後に下降した.その後外来にて,左眼に対し薬物加療を行うも,眼圧が下降しなかったた図1初診時前眼部写真a:右眼.10時方向に周辺虹彩切除を認める.IOL縫着眼(3,9時結膜下に縫着糸).b:左眼.IOL挿入眼.図2初診時眼底写真a:右眼.視神経乳頭陥凹拡大を認める.b:左眼.特記すべき所見はなかった.図3術後12カ月目前眼部写真(a:右眼,b:左眼)両眼ともチューブは前房内の上耳側に留置されている.図4術後前眼部OCT写真(a:右眼,b:左眼)前房内チューブは角膜と虹彩の中間に位置し,角膜内皮面との接触はない(C.).図5術後24カ月目前眼部写真(左眼)前房内チューブと角膜裏面の間に白色線維性索状物を認め,その位置に角膜混濁が発生.め,同年C10月左眼にもCBGI(BG101-350)挿入術を右眼同所見は,視力右眼C0.9(n.c.),左眼C0.4(n.c.),眼圧右眼C15様に施行した.両眼とも保存強膜パッチを行った.両眼チュmmHg,左眼C10CmmHg,ECD右眼C1,873個/mmC2,左眼ーブは前房内の上耳側に留置され(図3),前眼部光干渉断層2,105個/mmC2であった.隅角所見は両眼とも開放隅角で,計(前眼部COCT;CASIA)で前房内チューブは角膜と虹彩左眼はC6時方向のCPASは増加していたが,隅角・虹彩ともの中間に位置し,角膜内皮面との接触はなかった(図4).術新生血管は認めなった.後眼圧は両眼とも緑内障点眼薬(ブリンゾラミド・チモロー左眼は術後C18カ月目に虹彩新生血管や網膜血管の蛇行,ルマレイン酸塩配合,ブリモニジン酒石酸塩)を使用して,黄斑浮腫を認め,視力(0.08)に低下した.そのためラニビ10CmmHg台前半に落ち着いていた.術後C12カ月目の検査ズマブ硝子体内注射をC1回施行したが,視力の大きな改善は図6BGI抜去手術中写真a:結膜を切開すると厚い被膜に包まれたCBGIを認めた.Cb:被膜を切開し,プレートのホール内を貫通している結合組織を切断した.図8BGI抜去後12カ月前眼部OCT写真(左眼)虹彩前癒着が進行し,前房がほぼ消失した.図7BGI抜去後12カ月前眼部写真(左眼)角膜混濁は改善することなく,ほとんど前房が透見できないほどに悪化.図9PKP後8カ月前眼部写真(左眼)PKPを行うも,徐々に遷延性角膜浮腫の再発を認めた.なかった.また,虹彩新生血管は減少するも消失までは至らなかった.その間,眼圧は緑内障点眼を使用し,10台前半を推移していた.しかし,術後C24カ月目に前房内チューブとC2時方向の角膜裏面との間に,白色線維性索状物を認め,その位置に角膜混濁が発生した(図5).その角膜混濁は徐々に拡大し,遷延性角膜浮腫となり,左眼視力(0.01),ECD約C1,000個/mmC2に低下した.また,前房内の透見性が不良となり,虹彩新生血管の有無などは観察することができなくなった.そのため,術後C28カ月目に左眼CBGI抜去術を施行した.手術はCTenon.下麻酔で行い,結膜を切開し,厚い被膜に包まれたCBGIを露出させた(図6a).そののち,前房内チューブを引き抜き,続いて被膜を切開し,プレートと強膜を縫着している縫合糸およびプレートのホール内を貫通している結合組織を切断し(図6b),BGIを摘出した後,結膜を縫合した.また,術中に病理検査の検体として,前房内のチューブと角膜裏面間に存在した白色線維性索状物を摘出した.その病理所見は,炎症細胞の浸潤を伴わない,扁平な上皮で覆われた無構造な線維様組織であった.しかし,BGIを摘出後も角膜混濁は改善することなく,ほとんど前房が透見できないほどに悪化した(図7).前眼部OCTでは,虹彩と角膜内皮面の癒着が徐々に進行し,前房がほぼ消失した所見を認めた(図8).BGI抜去後C12カ月目には左眼視力は手動弁に低下し,左眼眼圧はC22CmmHgであった.そのため摘出後C22カ月目に全層角膜移植(penetratingkeratoplasty:PKP)を施行した.術直後は角膜の透明性が改善し眼底の透見も可能であったが,全身状態の悪化などで術後加療困難となった時期もあり,徐々に遷延性角膜浮腫の再発が出現した(図9).角膜移植後C8カ月で左眼は視力(0.01),眼圧C16CmmHgとなっており,再度CPKPなどの外科的治療を検討している.右眼は視力C0.6(0.9C×.0.75D(cyl.1.75DAx20°),眼圧16mmHgとなっている.CII考察BGI挿入術は一般的に線維柱帯切除術の不成功例や血管新生緑内障などの難治性緑内障に対し施行される術式であるが,その晩期合併症である角膜浮腫はCTVTStudy1)ではC17%,またCBGIともう一つのロングチューブインプラントであるアーメド緑内障インプラントの手術成績を他施設ランダム化で比較したCAhmedBaerveldtComparison(ABC)Study2)やCAhmedversusBaerveldt(AVB)Study3)においても,それぞれC22%,12%に認めており,比較的高頻度に発生する.その原因としてはチューブの挿入位置不良による物理的な障害や術後の眼圧変動が大きいことなどが影響するのではないか4)といわれている.またCIwasakiら5)は,角膜と前房内に留置されたチューブとの距離が術後CECD減少率と負の相関があると述べている.しかし,今症例は前眼部COCT検査所見上(図4),角膜とチューブとの距離は十分にあったと思われる.また,BGI挿入術後の眼圧もC15CmmHG前後で安定しており,大きな眼圧変動は認めなかった.それにもかかわらず,徐々に角膜混濁を認め,急激に遷延性角膜浮腫が進行し,術後C27カ月目にCBGIを摘出するに至った.患者はアトピー性皮膚炎の既往があるので,日頃からの強い瞬目や眼球圧迫により,前房内チューブが角膜内皮面に近づいて,徐々に角膜障害が起こった6)可能性が考えられる.また,植田ら7)は角膜移植眼に,小菅ら8)はぶどう膜炎続発緑内障にCBGIを挿入し,角膜と留置したチューブとの接触はないにもかかわらず,角膜混濁の悪化やCECDの大きな減少を認めた症例を報告している.そのことから,物理的な障害以外にも角膜を悪化させる要因があると思われる.実際,本例ではCBGI挿入術後C18カ月目に虹彩新生血管を認めた.眼底所見上,網膜血管の蛇行も認めており,網膜中心静脈閉塞症などの網膜血管の閉塞性病変が疑われたが,網膜出血は認めなかった.年齢的にも血管炎によるものではないかと考えられるが,はっきりとした原因はわからなかった.BGI抜去時に採取した白色索状物からは炎症を示唆する物質は認められなかったものの,前房内は血管内皮増殖因子(vascular(79)endothelialCgrowthfactor:VEGF)などの何らかのサイトカインの増加が予想され,そのような環境変化が角膜混濁の誘因になったのかもしれない.今症例ではCBGI挿入後の角膜障害に対しCBGIを抜去したが,抜去後の眼圧コントロールや抜去術の侵襲を考慮すると,BGIを摘出するのではなく前房内チューブを毛様溝に再挿入する対処9)でよかった可能性がある.また,そもそも左眼は緑内障手術の既往がなかったにもかかわらず,右眼にBGIを挿入し良好な眼圧下降を示したという理由で,初回手術からCBGI挿入術を選択した.しかしCBGI挿入術は緑内障診療ガイドライン10)が指摘するように,ロングチューブインプラント挿入術は代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術が不成功に終わった症例,手術既往により結膜の瘢痕化が高度な症例,線維柱帯切除術の成功が見込めない症例などが適応であり,まずは他の緑内障手術を選択すべきであったと思われる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GeddeCSJ,CSchi.manCJC,CFeuerCWJCetal:TreatmentCout-comesCinCtheCTubeCVersusTrabeculectomy(TVT)StudyCafter.veyearsoffollow-up.AmJOphthalmolC153:789-803,C20122)BartonK,FeuerWJ,BudenzDLetal:AhmedBaerveldtComparisonCStudyCGroup:Three-yearCtreatmentCout-comesCinCtheCAhmedCBaerveldtCcomparisonCstudy.COph-thalmologyC121:1547-1557,C20143)ChristakisCPG,CTsaiCJC,CKalenakCJWCetal:TheCAhmedCversusBaerveldtstudy:Three-yeartreatmentoutcomes.OphthalmologyC120:2232-2240,C20134)赤木忠道:AhmedCBaerveldtStudy(ABCCStudy,CAVBStudy)の長期成績.眼科手術C28:72-76,C20155)IwasakiK,ArimuraS,TakiharaYetal:ProspectivecohortstudyofcornealendothelialcelllossafterBaerveldtglau-comaimplantation.PLoSONEC13:e0201342,C20186)小林賢,杉本洋輔,柳昌秀ほか:広島大学病院におけるバルベルト緑内障インプラントの術後成績.臨眼C70:C315-321,C20167)植田俊彦,平松類,禅野誠ほか:経毛様体扁平部CBaerC-veldt緑内障インプラントの長期成績.日眼会誌C115:C581-588,C20118)小菅正太郎,塚越美奈,安田健作ほか:続発緑内障に対するバルベルト緑内障インプラント手術.眼科手術C29:149-153,C20169)田辺芳樹,伊藤勇,植田俊彦ほか:バルベルト緑内障インプラントのチューブ先端を毛様溝から挿入したC1例.臨眼68:1459-1462,C201410)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C2018あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C979

基礎研究コラム 39.網膜内脂質代謝と加齢黄斑変性

2020年8月31日 月曜日

網膜内脂質代謝と加齢黄斑変性加齢黄斑変性と脂質加齢黄斑変性の前駆病態の象徴であるドルーゼンは,網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)下に蓄積する黄色/白色の物質で,その構成成分は脂質,補体,アミロイド,クリスタリンなどです.これまで血中脂質と加齢黄斑変性の関連について多くの研究が行われましたが,現在では血中脂質異常と加齢黄斑変性の関連はないか,あっても非常に少ないと考えられています.でも,ドルーゼンは脂質で構成されているのに,本当に脂質代謝と加齢黄斑変性は無関係なのでしょうか?もちろんそんなことはありません.近年,加齢黄斑変性の病態には,血中脂質よりも網膜組織における脂質代謝が重要だということが明らかになってきています1~3).主役はRPE,脇役に視細胞とマクロファージ網膜組織内の脂質代謝を考えるとき,その中心(主役)がRPEであることは加齢黄斑変性の病態を考えれば異論はないでしょう.また,RPEの機能の一つが視細胞外節の貪食であり,視細胞が重要な脇役であることも予想されます.そして,最後の脇役はマクロファージ(マイクログリア)です.これは少し意外かもしれませんが,厳密には網膜組織の一部ではないマクロファージ/マイクログリアも,網膜内の脂質代謝の恒常性維持に重要な役割を担っているのです(図1).実験動物を用いて組織特異的に遺伝子操作を行い,脂質(コレステロール)代謝を阻害すると,加齢黄斑変性様の表伴紀充慶應義塾大学医学部眼科学教室現型が得られますが1~3),RPEに遺伝子操作を行った変化がRPEに出るのは当然として3),視細胞1)およびマクロファージ2)に同様の遺伝子操作を行った場合も,その変化がCRPEとその周辺におきます.まさに,加齢黄斑変性はCRPEを主役に,脇役であるその周辺組織との相互作用により発症するのです.今後の展望網膜内組織の脂質代謝をターゲットにした治療が実現すれば,加齢黄斑変性の超早期から治療的介入が可能になるでしょう.また,パキコロイド関連疾患の概念の登場とともに注目を集めている脈絡膜にも,新たな脇役としての可能性を感じます.RPEと隣接する脈絡膜と加齢黄斑変性の関連にも今後大注目です.文献1)BanCN,CLeeCTJ,CApteCRSCetal:DisruptedCcholesterolCmetabolismCpromotesCage-relatedCphotoreceptorCneurode-generation.JLipidResC59:1414-1423,C20182)BanN,LeeTJ,ApteRSetal:Impairedmonocytecholes-terolCclearanceCinitiatesCage-relatedCretinalCdegenerationCandvisionloss.JCIInsightC3:e120824,C20183)StortiCF,CKleeCK,CGrimmCCCetal:ImpairedCABCA1/CABCG1-mediatedClipidCe.uxCinCtheCmouseCretinalCpig-mentepithelium(RPE)leadstoretinaldegeneration.ElifeC8:e45100,C2019図1網膜内脂質代謝と加齢黄斑変性コレステロール代謝関連遺伝子をマクロファージ特異的にノックアウトすると,マクロファージにコレステロールが蓄積(Ca:)するだけでなく,加齢とともに網膜に加齢黄斑変性様の変化が出現する(Cb).(67)あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C9670910-1810/20/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 207.自然閉鎖と再発を繰り返す黄斑円孔(初級編)

2020年8月31日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載207207自然閉鎖と再発を繰り返す黄斑円孔(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに黄斑円孔の自然閉鎖および自然閉鎖後の再発の報告は散見されるが,多くは硝子体手術後眼あるいは強度近視眼である1~3).筆者らは以前に,手術既往のない正視眼に自然閉鎖と再発を複数回繰り返したCstage2黄斑円孔のC1例を経験し報告したことがある4).C●症例提示76歳,男性.右眼視力低下を主訴に受診.初診時,視力は右眼(0.4),屈折は正視,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)でCstage2の黄斑円孔を認めた(図1).1週間後に診察したところ,後部硝子体.離が生じており,黄斑円孔は閉鎖傾向を認め,2カ月後には完全に閉鎖し,視力は(0.9)に改善した(図2).そのC6カ月後,再度右眼視力低下を自覚.右眼視力(0.4)と低下し,stage2の黄斑円孔が再発していた.OCTでは明らかな硝子体牽引は認められなかった(図3).1カ月後に再度,自然閉鎖を認め,視力は(0.8)に回復した(図4).C●黄斑円孔が自然閉鎖と再発を繰り返す機序本症例では,初診時には中心窩への牽引を認めたが,1週間後には牽引が解除され,自然閉鎖に至ったと考えられる.自然閉鎖した黄斑円孔は,特発性でも外傷性でも再発する可能性は低いと考えられるが,過去に自然閉鎖と再発を繰り返したとする報告がいくつかみられ,その多くは硝子体手術後の症例であり,再発には術後に生じた黄斑上膜の牽引が関与するというものが多い1~3).また,原疾患に黄斑部を含む裂孔原性網膜.離や糖尿病黄斑浮腫などが含まれており,黄斑部の脆弱性が関与すると推測している報告もある.手術既往のない症例の報告としてはCGolanらのC1編のみであり,彼らは手術既往のない強度近視眼にC3度にわたって黄斑円孔の自然閉鎖(65)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1初診時の右眼OCTStage2の黄斑円孔を認めた.(文献C4より引用)図22カ月後の右眼OCT1週間後に後部硝子体.離が生じ,2カ月後には黄斑円孔は完全に閉鎖した.(文献C4より引用)図36カ月後の右眼OCTStage2の黄斑円孔が再発していたが,明らかな硝子体牽引は認められなかった.(文献C4より引用)図47カ月後の右眼OCT再度,自然閉鎖を認めC,視力は(0.8)に回復した.(文献C4より引用)と再発を繰り返した症例を報告している5).また,その機序としてグリア細胞の増殖の関与を指摘している.今回の筆者らの症例と共通点は多いが,異なる点として本症例は正視眼であることがあげられる.本症例のCOCT所見を見ても初回と再発時の黄斑円孔の所見は明らかに異なっており,黄斑円孔発症に異なった機序が関与している可能性が考えられるが詳細は不明である.文献1)SridharJ,TownsendJH,RachitskayaAV:RapidmacularholeCformation,CspontaneousCclosure,CandCreopeningCafterCparsCplanaCvitrectomyCforCmacula-sparingCretinalCdetach-ment.CRetinCasesBriefRepC11:163-165,C20172)KimCJY,CParkSP:MacularCholeCformationCandCspontane-ousCclosureCafterCvitrectomyCforCrhegmatogenousCretinalCdetachmentCdocumentedCbyCspectral-domainCopticalCcoherencetomography:CaseCreportCandCliteratureCreview.IndianJOphthalmolC63:791-793,C20153)MoriCT,CKitamuraCS,CSakaguchiCHCetal:TwoCcasesCofCrepeatingCrecurrencesCandCspontaneousCclosuresCofCmacu-larholesinvitrectomizedeyes.JpnJOphthalmolC62:467-472,C20184)MiyamotoM,ShimizuK,SatoYetal:Spontaneousdisap-pearanceCandCrecurrenceCofCimpendingCmacularhole:aCcasereport.JMedCaseRepC13:335,C20195)GolanCS,CBarakA:ThirdCtimeCspontaneousCclosureCofCmyopicCmacularChole.CRetinCCasesCBriefCRepC9:13-14,2015あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C965

抗VEGF治療:加齢黄斑変性の長期マネジメント

2020年8月31日 月曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二湧田真紀子1)能美なな実2)木村和博1)78.加齢黄斑変性の長期1)山口大学大学院医学系研究科眼科,2)下関医療センター眼科マネジメント加齢黄斑変性診療における長期マネジメントでは,個々の患者の再発傾向に即した抗CVEGF薬の投与法を選択することで,視機能を維持するとともに投与回数を削減することができる.また,長期間治療が継続できるよう,十分な説明や対話による心理サポートや地域連携を利用した遠距離通院の低減も含め,多面的な患者ケアを心がける.長期マネジメントにおける二つのポイント滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegenera-tion:AMD)の診療において,視機能を改善・維持するために抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法は不可欠である.一方で,患者にとって維持期の抗CVEGF療法は効果を実感しづらく,繰り返し眼に注射されるという心理的苦痛や費用面での負担感が大きいため,途中で挫折してしまうケースもみられる.つまり,AMD診療の長期マネジメントでは,可能な限り長期に視機能を維持できる治療方針を選択し,かつその治療が継続できるように患者のトータルケアに努めること,このC2点を両立させることが必要となる.抗VEGF薬の投与法:三者療法AMDに対する抗CVEGF療法の大規模研究では,導入期治療によって改善した視力はほぼプラトーに達し,以降は投与を継続しても大きな改善はみられない1,2).つまり,AMD診療における長期目標とは,導入期治療で改善した視力をいかに長期に維持するかということになる.しかし,実際に抗CVEGF療法を行っていると,数回の投与で長期に再発を認めない患者もいれば,頻回の投与が必要となる患者もいる.現状ではこのような違いを治療開始前に予測することはむずかしいため,病状に応じた個別化治療が求められる.維持期の抗CVEGF薬投与法には,1)定期的に投与を行う固定投与(FIX),2)再発など必要時にCreactiveに投与を行うCproCrenata(PRN),そしてC3)黄斑ドライを維持できるよう投与間隔を調整し,proactiveに投与を行うCtreatandextend(TAE)のC3種類がある.それぞれの方法には一長一短があるため,筆者らは個々の患者の病状に即してこのC3法を使い分ける三者療法(図1)を考案した.(63)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY導入期後1カ月目2カ月目3カ月目まず導入期治療として抗CVEGF薬をC3カ月連続投与し,その後さらにC3カ月経過観察を行う.この間に光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で滲出病変の再発がない反応良好例にはC3カ月ごと通院のPRNを選択し,3カ月以内に再発があればCTAEで治療する.TAEでは開始時の投与間隔でC2回連続ドライならC2週延長(最大C12週),再発時にはC2週短縮する.2回目の再発時には延長・短縮をC1週間隔で調整したのち,再発のない最大投与間隔で固定(FIX)して継続する.導入期治療で滲出が残る抵抗例では光線力学療法(photodynamicCtherapy:PDT)の併用を検討する.また,いずれの投与法でもC2段階以上の視力低下や黄斑出あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C963例:TAE/8週間隔図2当院でのTreatandExtend(TAE)法再投与はCOCT所見で決定し,開始時投与間隔でC2回連続滲出がなければC2週間延長,再発時にはC2週間短縮する(最大C12週).2回目の再発時には延長・短縮幅をC1週間隔で調整し,再発のない最大投与間隔で固定する.logMAR値0.70.60.50.40.30.2(カ月)PRNTAE/8週間隔TAE/4週間隔平均図3三者療法の視力経過平均値およびCPRN群ではC3カ月目以降,8週間隔CTAE群ではC24カ月目で有意に視力が改善しており,4週間隔CTAE群でも視力は維持された.血を生じる重症な再発時には導入期治療に戻る.この三者療法を用いて未治療のCAMDをアフリベルセプト単独で加療したC31眼のC2年経過では,導入期治療後の治療法はCPRN,8週間隔CTAE,4週間隔CTAEがそれぞれC15眼,12眼,4眼だった.視力経過(図3)ではCPRNおよびC8週間隔CTAEの症例全例でC24カ月目のC964あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020視力は有意に改善し,再発傾向の強いC4週間隔CTAEの症例でも視力は維持されていた.31眼中C11眼(35.5%)でClogMAR0.3以上の視力改善がみられ,0.3以上悪化した症例はC2眼(6.5%)のみだった.2年間の投与回数は,導入期治療C3回を含めて全例でC9.7回,PRN例で5.3回,8週間隔CTAE例でC13.1回,4週間隔CTAE例で15.8回であり,視力を維持しつつも集中治療が必要な症例と,少ない回数で維持できる症例を選別した治療が可能であった.患者のトータルケアAMDの長期管理には多面的な患者ケアも必須である.眼科医がベストと考えて選択した治療を患者に納得して継続してもらうために,当院ではCOCTなどの画像を見せて十分な説明と対話を心がけている.また,通院負担を軽減するために地域のかかりつけ医と治療方針を共有し,分担して治療や経過観察を行う地域連携システムの構築も進めている.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:RanibizumabforneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CNEnglJMedC355:1419-1431,C20062)HeierCJS,CBrownCDM,CChongCVCetal:Intravitreala.ibercept(VEGFtrap-eye)inCwetCage-relatedCmacularCdegeneration.OphthalmologyC119:2537-2548,C2012(64)

緑内障:臨床および基礎研究からみたブリモニジンの効果

2020年8月31日 月曜日

●連載242監修=山本哲也福地健郎242.臨床および基礎研究からみた横山悠東北大学病院眼科ブリモニジンの効果ブリモニジン点眼液はアドレナリンCa2受容体作動薬であり,房水産生抑制,房水排出促進という二つの作用をもつ薬剤である.その高い眼圧下降効果はいくつかの研究で実証されており,薬理作用的にも他の緑内障,高眼圧治療薬と組み合わせやすい.現在,その眼圧下降作用以外にも網膜神経節細胞になんらかの影響を及ぼし,神経保護の観点からも有益ではないかという期待から広く用いられている.●緑内障治療薬としてのブリモニジン米国に緑内障・高眼圧症治療薬としてのC0.2%ブリモニジン酒石酸塩点眼液(以下,ブリモニジン点眼液)が登場したのはC1996年である.それに対し,日本では2012年に,濃度の低いC0.1%ブリモニジン点眼液が承認されている(図1).ブリモニジン点眼液はアドレナリンCa2受容体作動薬であり,房水産生の抑制およびぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進するという機序により眼圧下降作用を有すると考えられている.原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした研究において,0.2%ブリモニジン点眼液の眼圧下降率は点眼C2時間値でC23.6~24.8%,トラフではC12~14.8%と高いものであった1~3).しかし,0.2%ブリモニジン点眼液には結膜炎などの眼局所の副作用の発現頻度が高いという問題があった(図2).この点において,現在普及するC0.1%の製剤は,防腐剤を塩化ベンザルコニウムから亜塩素酸ナトリウムに変更しpHを調整したことで,高い眼圧下降作用を維持しつつ,副作用発現頻度を減少させたものとなっている.C●ブリモニジンに関する臨床研究Low-PressureGlaucomaTreatmentStudy(LoGTS)は,視野保持能に関してC0.2%ブリモニジン点眼液とC0.5%チモロール点眼液を比較した多施設共同無作為化二重盲検試験である4).正常眼圧緑内障C178例を対象としており,最大C48カ月経過を観察した.この研究における主要評価項目はCprogressorsoftwareによる視野障害進行であり,進行の定義を,三つかそれ以上の検査点で有意な負のスロープ(innerC.1.0CdB/Y,edgeC.2.0CdB/Y,p<5%)を示し,その後C2回の検査で確認した場合としている.この研究において,眼圧下降作用は両群間で有意な差は認めなかったが,Kaplan-Meier法を用いた生存分析ではC0.2%ブリモニジン点眼液群のほうが有意に(61)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY視野障害に至った症例が少なかった.追加解析では,加齢,高血圧治療薬の使用,平均眼灌流圧の低下などが危険因子であったことが報告された5).筆者らの施設でも,日本で市販されるC0.1%ブリモニジン点眼液を用いて,0.5%チモロール点眼液を比較した研究を行っている6).ブリモニジン点眼液の濃度以外にもCLoGTSと方法が異なっており,少なくともプロスタグランジン関連薬を含む抗緑内障点眼液C1剤以上を使用しても進行傾向にある広義原発開放隅角緑内障を対象とし,主要評価項目をCMD(meandeviation)スロープの変化と定めている.この研究ではCMDスロープは両治療群とも改善を示したが,群間差を認めなかった.しかし,視野障害進行の定義をCHumphrey視野計に搭載されるCGuidedProgressionCAnalysisで「進行の可能性あり」と判定される検査点がC3点以上とした場合,生存分析では生存曲線に有意差を認め,ブリモニジン群の生存率が高かった(図3)6).これらの研究成果では眼圧下降作用以外にも視野保持図10.1%ブリモニジン酒石酸塩液わが国で市販されるアイファガン点眼液C0.1%.図2ブリモニジン点眼液により生じた濾胞性結膜炎著明な球結膜充血と瞼結膜に濾胞性変化を認める.ブリモニジン点眼液で多い眼局所の副作用の一つである.あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C961ab14MeanIOP(mmHg)1312111098760M4M8M12M16M20M24M04812162024MonthMonthNumberatrisk(Events)Brimonidine21(0)21(0)21(1)20(0)20(0)20(0)20(0)Timolol20(0)20(0)20(0)20(1)19(1)18(4)14(1)図3当施設で行われた0.1%ブリモニジン点眼液と0.5%チモロール点眼液の比較a:眼圧の推移.0.1%ブリモニジン点眼液のほうが全体的に眼圧が若干低いが,薬剤としての効果に有意差はみられなかった.Cb:生存時間分析.主要評価項目であるCMDスロープは両群間で有意差を認めなかったが,Kaplan-Meier生存分析では有意差を認めた(ログランクテスト:p=0.0198).(文献C6より引用)になんらかの影響を及ぼしていたことが示唆されており,ブリモニジン点眼液が緑内障臨床医から期待される理由となっている.C●ブリモニジンに関する基礎研究ブリモニジンには虚血再灌流モデル,軸索挫滅モデルなどで実験的に障害された網膜神経節細胞(retinalgan-glioncell:RGC)に対してなんらかの影響を及ぼすことがいくつかの基礎研究で報告されている.Sembaらは興奮毒性により神経変性を引き起こすCEAAC1ノックアウトマウスを用いた研究において,ブリモニジンはN-methyl-D-aspartatereceptor2B(NR2B)subunitのリン酸化を抑制して神経変性を抑えたことを報告した7).また,彼らは培養CMuller細胞においてブリモニジン投与により脳由来神経栄養因子(brainCderivedCneurotrophicfactor:BDNF)などの神経栄養因子の発現量が上昇したことも確認もしており,グリア-ニューロン相互作用を含むさまざまな経路を介して緑内障性網膜変性を抑えたのではないかと考察している.当施設でもラットの軸索切断によるCRGC障害モデルにおいて,ブリモニジン硝子体注射によりCRGCが多く残存し,また電気生理学的検査でその活動を確認している8).C●おわりに現在,緑内障治療において十分なエビデンスに基づいているものは眼圧下降療法のみである.しかし,実臨床では眼圧下降療法を十分行っても進行する難症例にしばしば遭遇する.さまざまな研究から,ブリモニジン点眼液は緑内障治療において期待される薬剤ではあるが,そC962あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020の薬理作用にはまだまだ不明な点が多い.今後さらなる緑内障研究が求められている.文献1)SerleJB:ACcomparisonCofCtheCsafetyCandCe.cacyCofCtwiceCdailyCbrimonidine0.2%CversusCbetaxolol0.25%CinCsubjectswithelevatedintraocularpressure.TheBrimoni-dineCStudyCGroupCIII.CSurvCOphthalmolC41:S39-S47,C19962)WhitsonJT,HenryC,HughesBetal:Comparisonofthesafetyande.cacyofdorzolamide2%andbrimonidine0.2%CinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularChypertension.CJGlaucomaC13:168-173,C20043)CantorLB,HoopJ,KatzLJetal:Comparisonoftheclini-calsuccessandquality-of-lifeimpactofbrimonidine0.2%andCbetaxolol0.25%CsuspensionCinCpatientsCwithCelevatedCintraocularpressure.ClinTherC23:1032-1039,C20014)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsCfromCtheCLow-PressureCGlaucomaCTreatmentStudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C20115)DeCMoraesCCG,CLiebmannCJM,CGreen.eldCDSCetal:RiskCfactorsCforCvisualC.eldCprogressionCinCtheClow-pressureCglaucomaCtreatmentCstudy.CAmCJCOphthalmolC154:702-711,C20126)YokoyamaCY,CKawasakiCR,CTakahashiCHCetal:E.ectsCofCbrimonidineCandCtimololConCtheCprogressionCofCvisualC.eldCdefectsinopen-angleglaucoma:Asingle-centerrandom-izedtrial.JGlaucomaC28:575-583,C20197)SembaK,NamekataK,KimuraAetal:Brimonidinepre-ventsneurodegenerationinamousemodelofnormalten-sionglaucoma.CellDeathDisC5:e1341,C20148)YukitaCM,COmodakaCK,CMachidaCSCetal:BrimonidineCenhancesCtheCelectrophysiologicalCresponseCofCretinalCgan-glionCcellsCthroughCtheCTrk-MAPK/ERKCandCPI3KCpath-waysCinCaxotomizedCeyes.CCurrCEyeCResC42:125-133,C2017(62)

屈折矯正手術:iDesign Refractive Studio

2020年8月31日 月曜日

監修=木下茂●連載243大橋裕一坪田一男243.iDesignRefractiveStudio荒井宏幸みなとみらいアイクリニック新しいwavefrontanalyzerであるiDesignRefractiveStudio(Johnson&Johnson)は,測定された収差情報をレーザー照射プログラムに変換する際に,トポグラフィーのデータを元に余弦効果を最適化することで,より理想的なwavefrontguidedLASIKを可能とした.●より精緻なWavefrontGuidedLASIKのためにかねてよりwavefrontguidedLASIKを提唱してきたJohnson&Johnson社が,新たなwavefrontanalyz-erを開発した.初代のWaveScan,2代目のiDesignに続く3世代目として登場したのがiDesignRefractiveStudioである.外観は2代目のiDesignを踏襲しているが,測定部・CPU・ソフトウェアなどの心臓部は一新されている(図1).それに伴い,測定・解析可能な項目も増加している(表1).また,データを受け取るVISXStarS4IRエキシマレーザーシステムのソフトウェアも変更され,測定精度の向上に見合った精緻なレーザー照射を行えるよう,システム全体に改良が施された.図1iDesignRefractiveStudioの外観従来のiDesignと大きな変更はない.付属のテーブルが小型になったので,設置は容易になった.LAN端子を備え,ネットワークにも対応している.●トポグラフィーを活用したWavefrontGuidedLASIKが可能に従来のiDesignは,1,257ポイントのHartman-Shack像による精緻なwavefront解析が行えるアナライザーである.同一撮影にてトポグラフィーも取得しており,角膜形状マップも表示されていたが,エキシマレーザーの照射プログラムにはトポグラフィーの結果は反映されていなかった.新たに開発されたiDesignRefractiveStudioでは,測定されたトポグラフィーの結果を照射プログラムに反映させ,余弦効果の補正を正確に行えるようになった.余弦効果とは,角膜周辺部の斜面状の部分にレーザーが当たった場合にスポット面積が広くなり,レーザーによる照射効率が変化することである.VISXStarS4IRでは従来より余弦効果に対する補正を行ってレーザー照射をしてきたのであるが,補正の基礎情報としてはK値のみを使用していた.したがって,角膜周辺部の微細なK値変化には対応することができなかった.iDesignRefractiveStudioでは,トポグラ表1新旧iDesignの性能の違いiDesigniDesignrefractiveStudioaxialpower●●irregularity○○elevation●●meancurvature○●tangentialcurvature○●cornealwavefront○●keratometry●●internalaberrations○●di.erencemaps●●WF/auto-refraction●●○計測不可●限定つき計測可能●計測可能iDesignRefractiveStudioでは形状解析および収差解析における解析可能な項目が増えている.(59)あたらしい眼科Vol.37,No.8,20209590910-1810/20/\100/頁/JCOPY表2エキシマレーザー照射プログラムの違い変換のプロセスiDesigniDesignrefractiveStudio変換の基礎情報WavefrontmapWavefrontmap1Wevefront情報の角膜上への変換角膜形状はK値より数学的に推定値が計算される角膜形状はトポグラフィーの数値より実際に算出される2レーザーと角膜の相互作用(余弦効果)余弦効果はK値より数学的に解析され,レーザーエネルギーに反映される余弦効果はレーザー照射面のすべてにおいて,トポグラフィーのデータに基づいて算出される新しいプログラムでは,トポグラフィーの結果を用いて,エキシマレーザーのプロファイルを余弦効果が最適になるように補正している.フィーを補正の基礎情報として使用するため,照射面全体で正確な余弦効果の補正が行えるようになった(表2).●Wavefront波面を角膜上に反映させる多くの波面収差計が臨床使用されており,計測の精度も向上している.観察や解析のみであれば,計測精度だけの追求で問題はないが,角膜上で収差を補正する場合には,角膜が球状の形態であることが大きな障壁となる.波面収差計で得られた収差マップをLASIK,pho-torefractivekeratectomy(PRK)の照射プログラムに反映しようとする場合には,レーザーの1ショット当たりのエネルギー効率が同一であることが望ましい.そのためには先述した余弦効果をいかに効率的に補正できるかがポイントとなる.iDesignRefractiveStudioでは,iDesignで得られたwavefront情報を正確にエキシマレーザー照射プログラムに反映させることができるようになった.●WavefrontGuidedLASIKの有意性LASIKによる感染症多発事件を発端とした消費者庁の注意喚起情報が発信されて以来,国内におけるLASIK症例数は激減している.おそらくは以前のような症例数に戻ることはないであろう.しかし,LASIKに代わる技術が未だに存在せず,白内障術後のtouchupなどのような軽微な屈折異常を治療できるのはLASIK以外にはない.1991年にPallicalisによって考案されたLASIKは,すでに30年の歴史を持つ手術となった.当初のLASIKは単純に球面度数と円柱度数を矯正するものであったが,グレア軽減のために移行帯(トランジッションゾーン)の設定,球面収差補正,topographyguidedなどへ発展し,最終的なカスタマイズとしてwavefrontguidedが登場した.Topographyguidedも個々の症例に対するカスタマイズであるが,wavefrontguidedは角膜形状による屈折変化を包含した全収差解析であるため,原理的にはtopographyguidedよりも上位に位置する.真の意味でのカスタマイズLASIKはwavefrontguidedだけであるといってもよいであろう.世界的には現在でも多くのLASIKが行われており,今回紹介したiDesignRefractiveStudioのような精度向上への進化が続いていることは,屈折矯正手術を専門とする筆者としては嬉しいかぎりである.今後もこの分野のさらなる発展を願っている.☆☆☆960あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020(60)

眼内レンズ:カートリッジと鑷子による眼内レンズ摘出法

2020年8月31日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋福岡佐知子405.カートリッジと鑷子による眼内レンズ摘出法多根記念眼科病院低侵襲な眼内レンズ(IOL)摘出法“cartridgepull-throughtechnique”を考案したので報告する.D1カートリッジ(HOYA)内腔に福岡氏CIOL摘出鑷子(はんだや)を通す.鑷子を前房内に挿入,IOL光学部を把持,カートリッジ内にCIOLを引き込み摘出する.前房内操作が少なく,角膜や虹彩の保護が可能で,低侵襲にCIOLを摘出できる有効な術式であると考える.●はじめに近年,白内障手術の低年齢化やアトピー性疾患の増加,長寿命などによる眼内レンズ(intraocularlens:IOL)脱臼,偏位症例の増加,白内障手術後の度数ずれやプレミアムレンズの不満症例などへの対応として,IOLを摘出する機会が増えている.現在は,IOLを鑷子で半分に折り曲げたり,剪刀で分割して摘出している.前房という狭いスペースで行うため,角膜や虹彩に侵襲を与えてしまうことがある.そこで,カートリッジと鑷子を使い,低侵襲にCIOLを摘出する“cartridgeCpull-throughtechnique”1)を考案したので紹介する.C●Cartridgepull.throughtechniqueの標準術式D1カートリッジ(HOYA)と福岡氏CIOL摘出鑷子(はんだや)を使用する(図1).3.2Cmm以上の強角膜切開創を作製する.IOLに硝子体が絡んでいる場合は粘弾性物質や硝子体カッターで硝子体を郭清しておく.カートリッジ内腔に粘弾性物質を充.したあとに,鑷子を通し,鑷子先端がカートリッジ先端から出るようにセットする.右手で持った鑷子を前房内に挿入しCIOL光学部を把持する(図2a).次に左手でカートリッジ先端を創口から前房にゆっくり押し込んだら,そのままの位置で固定する.右手の鑷子はCIOLを把持したまま手前に引いて,IOLをカートリッジ内に引き込む(図2b).IOL全体がカートリッジに引き込まれてから摘出するのが理想的だが,光学部の半分くらいがカートリッジに引き込まれて筒状になった時点で,カートリッジと鑷子を一緒に引き抜けば,IOLが摘出できる.IOLの入れ替えや,IOL偏位で虹彩付近にCIOLがある場合は上記方法で行う.IOLが網膜表面に落下している場合は,硝子体切除後,IOLを硝子体鑷子で虹彩後方鑷子先端の拡大図図1D1カートリッジ(右下)と福岡氏IOL摘出鑷子図2Cartridgepull.throughtechniqueの手順a:右手で持った鑷子を前房内に挿入しCIOL光学部を把持する.光学部の把持部位は手前ループ付け根の少し右側.Cb:左手でカートリッジ先端を創口から前房にゆっくり押し込んだら,そのままの位置で固定する.右手の鑷子はCIOLを把持したまま手前に引いて,IOLをカートリッジ内に引き込む.(57)あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C9570910-1810/20/\100/頁/JCOPYまで持ち上げる.IOLを虹彩上に引き上げてもよいが,硝子体腔から直接摘出することもできる.いずれの場合も,眼球が虚脱する可能性があるときはCinfusionCportを作製し,眼内灌流をしながら行う.C●より摘出しやすくするための工夫使用しているCD1カートリッジは光学部径がC6.5CmmのCIOL挿入用で,推奨切開創は角膜C3.2mm,強角膜C3.0mmである.カートリッジの中を光学径がC6.0mmのフォーダブルCIOLだけが通過するのであれば摘出可能と感じるが,実際は光学部を把持した鑷子とループが同時に通過するためタイトである.ゆえに切開幅は強角膜切開であればC3.2Cmm以上がよい.さらに摘出CIOLが厚いと予測される場合は,カートリッジを使用前に保温庫で温めて伸展しやすくしたり,カートリッジ先端に切り込みを入れて口径の拡大を試みてもよい.現在CD1カートリッジは入手困難なため,6.0CmmIOL挿入用のCC1カートリッジ(HOYA)でも同手技が可能である.粘弾性物質の種類は問わないが,低温の粘弾性物質を使用するとCIOLが硬くなり,摘出しにくくなるので,常温に戻しておく.また,カートリッジをそのまま前房に挿入すると虹彩が陥頓するため,カートリッジ内に粘図3IOL光学部の把持部位によるループの挙動a:ループ付け根のやや右側の光学部を把持すると,対側のループはまっすぐ伸びるので摘出しやすい.Cb:両ループの中間の光学部を把持すると,ループが硝子体側や角膜内皮側に立ち上がり,虹彩や角膜(IOL入れ替えの場合は後.)を損傷する可能性があるので注意が必要である.弾性物質を充.しておく.これは潤滑剤にもなる.C●注意点本術式は,PMMAなど折りたためない硬い材質のIOLは摘出できない.またCIOLを摘出する際,IOLに絡んだ硝子体を一緒に引っ張ると,網膜.離を起こす可能性があるので,粘弾性物質や硝子体カッターで硝子体を郭清してから摘出する必要がある.そしてCIOL光学部の把持部位にも注意が必要である(図3).ループ付け根のやや右側の光学部を把持すると,対側のループがまっすぐ伸びるので摘出しやすいが(図3a),両ループの中間の光学部を把持すると,ループが硝子体側や角膜内皮側に立ち上がり,虹彩や角膜内皮細胞(IOL入れ替えの場合は後.)を損傷する可能性があるので注意が必要である(図3b).今回考案したCcartridgeCpull-throughCtechniqueは,すべてのCIOLが摘出できるわけではないが,低侵襲で簡便に行うことができる有効な術式であると考える.文献1)福岡佐知子,木下太賀,森田真一他:カートリッジと鑷子による低侵襲CIOL摘出法(CartridgeCpull-throughCtech-nique).IOL&RS,投稿中

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 ベベル・エッジデザイン

2020年8月31日 月曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司3.ベベル・エッジデザイン■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)のベベル・エッジデザインは各メーカーによってかなり異なっている.ベベル・エッジデザインはレンズの動き・静止位置などのフィッティングに大きくかかわってくる.また,装用感やレンズ下の涙液交換にも影響を与える.このセミナーの初回において,簡単にベベル・エッジデザインについて紹介したが,ここではさらに詳しく解説する.■HCLの内面は二つか三つの曲面から形成されている中央部の内面はベースカーブ(basecurve:BC)とよばれている.BCの曲率半径とフロントカーブの曲率半径の差とレンズ材質の屈折率によって,そのレンズのパワー(度数)が決定する.BCの外側はさらにフラットな曲率で切削され,intermediatecurve(IC)を形成する.内面が二つの曲面のみから形成されるHCLでは,この曲面がperipheralcurve(PC)となる.三つの曲面から形成されるHCLではICの外側はさらにフラットな曲率で切削され,これがこの場合のPCになる.図1は三つの曲面から形成されるHCLのデザインを示す.この図でエッジを結ぶ平面とBC中心までの距離をサジタルデプス(sagitaldepth)という.また,図における内面非球面ベベルがデザイン上のベベル幅であり,エッジリフトはデザイン上のエッジリフト(エッジの浮き上がり)ということになる.■ベベル・エッジのチェック法実際にHCLを装用した状況のチェック法はフルオレ図2フルオレセインパターンにおけるベベル幅小玉眼科医院セイン染色で行う.ここでわかるのはベベル幅である(図2)が,デザイン上のベベル幅と若干異なっている.サイズ8.8mmのレンズでは0.6mmくらいのベベル幅が適当とされている(図3).エッジリフトは,スリット光を0.1mm程度に絞って45°の角度から照射し,レンズ下端における光束のズレを観察する(図4).直乱視では下端のエッジリフトは大きくなる.レンズ自体のベベル・エッジデザインのチェックは,直管蛍光灯の反射光をルーペで観察する方法が一般的である(図5)が,以前にサンコンタクトレンズが製作したベベルビュアーなどを用いると,より簡単にチェックできる(図6).ベベル・エッジ形状を模式図で表わす(図7).■その他の部位(ブレンドとキャリアカーブ)HCLの内面は二つか三つのカーブから形成されると記したが,それぞれのカーブ間の継ぎ目は尖っており,そのままでは異物感が強くなるので,なだらかになるよ図1ベベル・エッジデザイン三つの曲面から形成されるHCLでの形状を示す.図3適度なベベル幅サイズが8.8mmのレンズでは0.6mm程度のベベル幅が最適となる.a:ベベル幅が狭すぎてレンズの動きが少なく涙液交換も不足する.b:ベベル幅が広すぎてレンズの動きが大きく不安定になる.(55)あたらしい眼科Vol.37,No.8,20209550910-1810/20/\100/頁/JCOPY図4エッジリフトのチェック図5ルーペを用いたベベル・エッジのチェック法スリットランプの光束を0.1mm程度に絞ってレンズ下端指にレンズを載せて,直管蛍光灯のベベル・エッジ部分にに照射し,レンズ下端における光束のズレをチェックすおける反射光をルーペにて観察する(撮影はタオルに置いる.光束1本くらいのズレが適量である.て行った).ab図6ベベルビュアーによるベベルエッジの観察cda:ベベルビュアー.b:ベベルビュアーで観察されるベベル・エッジ形状.ab図8キャリアカーブ(レンチクラール部)a:強度近視用HCLにおけるマイナスキャリア.b:強度遠視用(無水晶体用)HCLにおけるプラスキャリア.うに研磨されており,この作業の工程が「ブレンドをかける」とよばれている.BCとICの継ぎ目を研磨することをICブレンド,ICとPCの継ぎ目を研磨することをPCブレンドという.近年のコンタクトレンズ製作機図7ベベル・エッジ形状の模式図a:エッジリフトが小さい.b:ブレンド不良.c:ブレンド過剰.d:理想像.械は優れており,ICブレンドやPCブレンドが不足していることはほとんどないが,HCL装用の際に強く異物感を訴える場合はこれらの部位をチェックすることも必要になってくる.強度近視や強度遠視用のHCLにおいては,レンズのベベル部分が,それぞれ厚すぎたり薄すぎたりしてレンズの動きが不安定になったり,異物感が発生したりするので,キャリアカーブを設けている.厚すぎる場合はマイナスキャリア,薄すぎる場合はプラスキャリアを設ける(図8).

写真:顆粒状角膜ジストロフィ2型の治療的レーザー角膜切開術(PTK)後再発

2020年8月31日 月曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦435.顆粒状角膜ジストロフィ2型の治療的稗田牧京都府立医科大学大学院医学研究科レーザー角膜切除術(PTK)後再発視覚機能再生外科学図1症例1の前眼部写真55歳,女性.顆粒状角膜ジストロフィC2型所見.13年前にCPTKを受けた.視力低下を自覚して来院.図3症例1の前眼部細隙灯顕微鏡写真角膜混濁は角膜中央部の上皮直下の浅い層に限局している.図4症例2の前眼部写真68歳,男性.顆粒状角膜ジストロフィC2型所見.13年前にPTKを受けた.(53)あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C9530910-1810/20/\100/頁/JCOPY症例1(図1~3)は55歳の女性で,13年前に両眼の顆粒状角膜ジストロフィと診断され,遺伝子検査の結果は,TGFBI遺伝子R124H変異(顆粒状角膜ジストロフィ2型:granularcornealdystrophytype2:GCD2)ヘテロ接合体であった.右眼については矯正視力がC0.4まで低下していたため,エキシマレーザーによる治療的レーザー角膜切除術(phototherapeuticCkera-tectomy:PTK)が施行され,矯正視力はC1.2まで改善した.術後C3年ごろから少しずつ視力が低下していたが,術後C5年以降通院はとだえていた.今回の受診時の矯正視力はC0.3まで低下していた.再度CPTKを行い,術後C0.9まで矯正視力は改善した.症例2(図4)はC78歳の男性で,13年前に両眼の顆粒状角膜ジストロフィと診断され,遺伝子検査でCGCD2であった.初回のCPTK後C13年間,ほとんど矯正視力の変化はなかった.GCD2は日本や韓国で多い角膜ジストロフィである1).当初はイタリアのCAvellino地方に限られた遺伝性角膜ジストロフィと考えられたためCAvellino角膜ジストロフィと命名されたが2),そのほかの地域でも症例が報告され,現在では顆粒状角膜ジストロフィC2型が正式名称である.マッソントリクローム染色で赤色に染まるヒアリン様物質と,コンゴレッド染色で偏光顕微鏡下に複屈折を呈するアミロイドの両方が沈着しており,granu-lar-latticedystrophyとよばれることもある.ヘテロ接合体であればC50歳以降に視力が徐々に低下してくる.ホモ接合体は幼少期より強い混濁を起こす.日本でもっとも多くみられるCGCD2はCPTKのよい適応である.混濁が上皮直下で集簇して面状に瞳孔領を覆うと,矯正視力の低下をきたすので,その時点でCPTKを行うと矯正視力が改善する.レーザー機種によっても異なるが,1.5~3Dの遠視化が起こるので,術後の老視症状についても注意する.高齢者に大きな上皮欠損をつくるので,術後の感染対策も重要である.PTK後GCD2は数年で再発をきたす3)が,瞳孔領を覆うまでには時間がかかり,矯正視力がC2段階低下するには平均で10年程度かかる4).症例C1はC13年でかなり矯正視力が低下しているが,症例C2はC13年経過しても瞳孔領はまだ透明な部分が多い.GCD2のCPTK後再発はゆっくりと起こり,かつそのスピードは症例によってバリエーションが大きいことを示す写真である.文献1)WeissJS,MollerHU,AldaveAJetal:IC3Dclassi.cationofCcornealCdystrophies–editionC2.CCorneaC34:117-159,C20152)HollandCEJ,CDayaCSM,CStoneCEMCetal:AvellinoCcornealCdystrophy.CClinicalCmanifestationsCandCnaturalChistory.COphthalmologyC99:1564-1568,C19923)DinhCR,CRapuanoCCJ,CCohenCEJCetal:RecurrenceCofCcor-nealdystrophyafterexcimerlaserphototherapeutickera-tectomy.Ophthalmology106:1490-1497,C19994)HiedaCO,CKawasakiCS,CYamamuraCKCetal:ClinicalCout-comesCandCtimeCtoCrecurrenceCofCphototherapeuticCkera-tectomyinJapan.Medicine(Baltimore)C98:e16216,C2019