・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司3.ベベル・エッジデザイン■はじめにハードコンタクトレンズ(HCL)のベベル・エッジデザインは各メーカーによってかなり異なっている.ベベル・エッジデザインはレンズの動き・静止位置などのフィッティングに大きくかかわってくる.また,装用感やレンズ下の涙液交換にも影響を与える.このセミナーの初回において,簡単にベベル・エッジデザインについて紹介したが,ここではさらに詳しく解説する.■HCLの内面は二つか三つの曲面から形成されている中央部の内面はベースカーブ(basecurve:BC)とよばれている.BCの曲率半径とフロントカーブの曲率半径の差とレンズ材質の屈折率によって,そのレンズのパワー(度数)が決定する.BCの外側はさらにフラットな曲率で切削され,intermediatecurve(IC)を形成する.内面が二つの曲面のみから形成されるHCLでは,この曲面がperipheralcurve(PC)となる.三つの曲面から形成されるHCLではICの外側はさらにフラットな曲率で切削され,これがこの場合のPCになる.図1は三つの曲面から形成されるHCLのデザインを示す.この図でエッジを結ぶ平面とBC中心までの距離をサジタルデプス(sagitaldepth)という.また,図における内面非球面ベベルがデザイン上のベベル幅であり,エッジリフトはデザイン上のエッジリフト(エッジの浮き上がり)ということになる.■ベベル・エッジのチェック法実際にHCLを装用した状況のチェック法はフルオレ図2フルオレセインパターンにおけるベベル幅小玉眼科医院セイン染色で行う.ここでわかるのはベベル幅である(図2)が,デザイン上のベベル幅と若干異なっている.サイズ8.8mmのレンズでは0.6mmくらいのベベル幅が適当とされている(図3).エッジリフトは,スリット光を0.1mm程度に絞って45°の角度から照射し,レンズ下端における光束のズレを観察する(図4).直乱視では下端のエッジリフトは大きくなる.レンズ自体のベベル・エッジデザインのチェックは,直管蛍光灯の反射光をルーペで観察する方法が一般的である(図5)が,以前にサンコンタクトレンズが製作したベベルビュアーなどを用いると,より簡単にチェックできる(図6).ベベル・エッジ形状を模式図で表わす(図7).■その他の部位(ブレンドとキャリアカーブ)HCLの内面は二つか三つのカーブから形成されると記したが,それぞれのカーブ間の継ぎ目は尖っており,そのままでは異物感が強くなるので,なだらかになるよ図1ベベル・エッジデザイン三つの曲面から形成されるHCLでの形状を示す.図3適度なベベル幅サイズが8.8mmのレンズでは0.6mm程度のベベル幅が最適となる.a:ベベル幅が狭すぎてレンズの動きが少なく涙液交換も不足する.b:ベベル幅が広すぎてレンズの動きが大きく不安定になる.(55)あたらしい眼科Vol.37,No.8,20209550910-1810/20/\100/頁/JCOPY図4エッジリフトのチェック図5ルーペを用いたベベル・エッジのチェック法スリットランプの光束を0.1mm程度に絞ってレンズ下端指にレンズを載せて,直管蛍光灯のベベル・エッジ部分にに照射し,レンズ下端における光束のズレをチェックすおける反射光をルーペにて観察する(撮影はタオルに置いる.光束1本くらいのズレが適量である.て行った).ab図6ベベルビュアーによるベベルエッジの観察cda:ベベルビュアー.b:ベベルビュアーで観察されるベベル・エッジ形状.ab図8キャリアカーブ(レンチクラール部)a:強度近視用HCLにおけるマイナスキャリア.b:強度遠視用(無水晶体用)HCLにおけるプラスキャリア.うに研磨されており,この作業の工程が「ブレンドをかける」とよばれている.BCとICの継ぎ目を研磨することをICブレンド,ICとPCの継ぎ目を研磨することをPCブレンドという.近年のコンタクトレンズ製作機図7ベベル・エッジ形状の模式図a:エッジリフトが小さい.b:ブレンド不良.c:ブレンド過剰.d:理想像.械は優れており,ICブレンドやPCブレンドが不足していることはほとんどないが,HCL装用の際に強く異物感を訴える場合はこれらの部位をチェックすることも必要になってくる.強度近視や強度遠視用のHCLにおいては,レンズのベベル部分が,それぞれ厚すぎたり薄すぎたりしてレンズの動きが不安定になったり,異物感が発生したりするので,キャリアカーブを設けている.厚すぎる場合はマイナスキャリア,薄すぎる場合はプラスキャリアを設ける(図8).