近視進行予防の近未来治療薬PresentandFuturePharmacologicalTherapiesforMyopiaControl謝詩琪*KritchaiVutipongsatorn**大野京子*はじめに近視は世界人口の約5分の1を占め,2050年までには47億を超えると推測されている1).近視の有病率は人種や地域により大きな差がある2).たとえば,学童の近視率は,モンゴルの田舎では5.8%であり,台湾の都市部では80%を超えている3,4).近視により世界的に大きな経済負担がかかるにもかかわらず,現時点では米国食品医薬品局から承認された近視治療薬は一つもない.本稿では,近視に対する近未来治療薬を紹介し,前臨床段階の近視治療薬が臨床試験に進むに際して直面している課題を紹介する(図1).I臨床試験中の薬物キーワード「近視」を使用し,ClinicalTrials.govというウェブサイトで検索した結果,近視進行に対する治験は20件あった(表1)5).そのうち,16件がアトロピンに関する研究である.1.アトロピンアトロピンに関する治験のなかで最初の大規模スタディは,アトロピンの近視治療研究(ATOM1スタディ)である6).ATOMスタディ1は,6~12歳までの子供400人を対象に1%アトロピン点眼を2年間行い,治療終了後さらに1年間経過観察した.その結果,アトロピン群の2年後の近視度数はプラセボ群より有意に低かった(-0.40D対-0.86D,p<0.001).点眼中止後には近視進行のリバウンドがみられたものの,3年間のスタディ終了時にアトロピン点眼治療群では近視進行が有意に抑制された(-1.35Dvs-1.55D,p=0.028).ATOM1スタディの結果に基づき,より低濃度のアトロピンの長期効果を調べるATOM2(n=400)スタディが実施された7).アトロピンを三つの濃度(0.5%,0.1%,0.01%)に分け,ATOM1と同様に2年間の点眼治療と1年間の経過観察をした.ただし,3年目の近視進行が-0.5Dを超える小児に対しては,2年間の0.01%アトロピン治療を再開した.その結果,予想通り最初の24カ月間に近視の進行は濃度依存的に減少したが,休薬期間中に高濃度のアトロピン群の近視進行がより早く,3年後にもっとも近視抑制効果があったのは0.01%アトロピンであった.スタディ終了時の5年後では,0.01%アトロピン群の近視進行がもっとも低い結果であった.ATOM2により,0.01%のアトロピンは高濃度ほど近視進行を抑制しないものの,休薬後のリバウンド効果が小さく,長期的により良い結果が得られることが明らかとなった.これを受けて,筆者らは,年間0.5D以上の進行を伴う小児に2年間の0.01%アトロピン治療を推奨し,良好な反応が得られるまで(たとえば進行が0.25D/年未満),リバウンドが低くなった高い年齢まで継続することを勧めている.また,休薬後に近視進行が発生した場合には治療を再開することを推奨している.近視の進行は年齢とともに減少する傾向がある一方,とくに高等教*ShiqiXie&*KyokoOhno-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野**KrithaiVutipongsatorn:インペリアルカレッジ〔別刷請求先〕謝詩琪:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(37)539=表1近視進行抑制に対する臨床試験一覧NCT耳つぼ刺激とアトロピン点眼薬併用のC1完了0.25%とC0.5%アトロピン並行群間比較試験C60台湾C00457717近視抑制効果0.25%アトロピンと鍼灸の併用単盲検法(6~15)CNCT並行群間比較試験C90C00263471近視進行とC7-メチルキサンチンの効果C2完了C7-メチルキサンチン二重盲検法(8~13)デンマークATOM:近視子供両眼に対するC0.5%,CNCT0.1%~0.01%アトロピンの治療の安全C2/3完了0.01%,0.1%とC0.5%アトロピン並行群間比較試験C400シンガポールC00371124性と有効性の評価二重盲検法(6~12)CNCT近視学童に対する低濃度アトロピンのCNA完了0.01%とC0.05%アトロピン並行群間比較試験C60台湾C02130167治療三重盲検法(参加者,保護者,研究者)(6~12)CNCT近視コントロールに対する低濃度アト0.125%アトロピン並行群間比較試験C73C02055378ロピンと耳ツボ刺激併用療法CNA完了0.125%アトロピンと耳ツボ刺激の併用単盲検法(保護者)(6~12)台湾CNCTAPPLE:軽中度近視に対するCDE-127進行中DE-127(アトロピン参天製)低,中,並行群間比較試験C100C03329638点眼薬の有効性と安全性の研究C2(募集完了)高濃度二重盲検法(参加者,研究者)(6~11)シンガポールCNCTBAM:双焦点ソフトコンタクトレンズ進行中+2.50D双焦点ソフトコンタクトレンズ単群試験C49C03312257とアトロピンの併用で近視抑制CNA(募集完了)とC0.01%アトロピンの併用非盲検(7~11)米国BHVI2点眼薬,0.02%アトロピン,まBHVI2(実験薬物)CNCTたはCBHVI2とC0.02%アトロピン点眼C1進行中0.02%アトロピン並行群間比較試験C60CNAC03690414薬の併用の短期治療の評価(未募集)BHVI2とC0.02%アトロピンの併用四重盲検法(6~13)CNCTイギリス学童の近視に対する低濃度ア進行中並行群間比較試験C289C03690089トロピン点眼薬の治療C2(未募集)0.01%アトロピン四重盲検法(6~12)イギリスCNCT0.01%アトロピン点眼薬の近視治療研進行中並行群間比較試験C150C03508817究C1(募集中)0.01%アトロピン非盲検(6~15)オマーンCNCTビタミンCB2と屋外日光暴露併用下の進行中単群試験C100C03552016学童近視進行の評価C2(募集中)経口リボフラビンC200とC400Cmg三重盲検法(参加者,保護者,研究者)(6~12)米国CNCTCHAMP:近視学童に対するCNVK-3進行中NVK-002(アトロピン)濃度C1と濃度C2クロスオーバー試験C483米国C03350620002治療(募集中)二重盲検法(参加者,研究者)(3~17)CNCTMTS1:近視に対する低濃度アトロピC3進行中0.01%アトロピン並行群間比較試験C186米国C03334253ン治療(募集中)単盲検法(治療成績評価者)(5~12)CNCTATOM3:近視予防とコントロールにC3進行中0.01%アトロピン並行群間比較試験C570シンガポールC03140358おける0.01%アトロピンの使用(募集中)四重盲検法(5~9)0.01%とC0.05%アトロピンCNCT近視学童に対する点眼薬研究CNA進行中0.25%ケトロラックトロメタミン並行群間比較試験C150台湾C03402100(募集中)0.25%ケトロラックトロメタミンとC0.01%四重盲検法(6~12)またはC0.05%アトロピンの併用CNCT近視進行率別の近視眼に対する低濃度進行中並行群間比較試験C80C03374306(0.01%)アトロピンの局所応用CNA(募集中)0.01%アトロピン二重盲検法(参加者,研究者)(7~10)中国香港CNCT少年近視に対する梅針治療vsトロピ進行中梅針鍼灸クロスオーバー試験C98C03097198カミド点眼薬治療の比較CNA(募集中)0.5%トロピカミド二重盲検法(研究者,治療成績評価者)(8~20)中国CNCT子供の近視コントロールに対するアト進行中0.01%アトロピン並行群間比較試験C60ロピンとオルソケラトロジーの併用治CNA0.01%アトロピンとオルソケラトロジーの中国香港02955927療─ランダム化比較試験(募集中)併用単盲検法(治療成績評価者)(6~11)CNCT学童近視予防に対する低濃度アトロピ不明─C2008年0.25%アトロピン並行群間比較試験C60C00541177ン治療C4完了予定0.5%トロピカミド単盲検法(治療成績評価者)(7~12)台湾CNCT近視進行予防に対するCEchothiophate不明─C2015年単群試験C33C02544529iodide治療C4完了予定0.03%CEchothiophateiodide三重盲検法(参加者,保護者,研究者)(9~15)米国ATOM,atropineintheTreatmentOfMyopia;CHAMP,studyofNVK-002inChildrenWithMyopia;NA,該当なし(文献C5から引用)分け,グループC1はC2年間C7-メチルキサンチンC400Cmgを毎日C1回服用し,グループC2はC1年目がプラセボ,2年目からC7-メチルキサンチンを服用した.両グループとも治療停止後C1年間フォローアップされた.1年目の結果,7-メチルキサンチンを摂取した子供は眼軸延長率と近視度数の増加が大幅に低下した.2年目のC7-メチルキサンチンの治療により,両グループともにC1年目と比べて近視進行が抑制されたが,休薬の観察期間には,眼軸延長と近視度数の進行がまた早まった.アデノシン(adenosine)受容体拮抗薬であるC7-メチルキサンチンは,経口摂取できるカフェインの代謝物である.アデノシンは,網膜色素上皮(retinalCpigmentepithelium:RPE)のアデノシンCAC2受容体を活性化し,活動電位を高める19).子供の屈折異常は網膜の電気生理学的異常を示す傾向があり,7-メチルキサンチンの投与はこれを緩和する可能性がある20).さらに,ウサギの研究では,7-メチルキサンチンが後部強膜のコラーゲン原線維の厚さ,コラーゲン密度,および直径を増加させることが示されている21).経口C7-メチルキサンチンは副作用の報告がなく,近視の子供にとって安全で効果的な治療法であり,今後のさらなる研究が期待される.C4.ケトロラックトロメタミン(ketorolactromethamine)ケトロラックトロメタミンは非ステロイド性抗炎症薬の一種であり,アレルギー性結膜炎のかゆみを緩和できる.あるコホート研究22)では,アレルギー性結膜炎のある子供は,ない子供と比較し,近視の発症するリスクが高いことが示唆された.ケトロラクトロメタミンは近視ヒヨコの眼軸延長を減少し,近視の進行を抑制させる報告もあった23).C5.リボフラビン(ribo.avin)近視のもう一つの仮説は,異常な眼軸伸長が強膜欠損に続発するものである24).強膜を強化する一つの方法は,リボフラビンを点眼しながら,370Cnmの長波長紫外線(ultravioletA:UVA)を角膜に照射し,コラーゲン線維間の架橋を増加する25).Liら26)の近視モルモットでの研究により,リボフラビンの経口摂取と全身UVA照射との併用が強膜の厚さを増加させ,近視進行,眼軸延長,強膜マトリックスメタロプロテイナーゼ-2(matrixmetalloproteinase-2:MMP-2)を有意に抑制させる.経口リボフラビンに関する現在進行中のランダム化比較試験では,参加者に紫外線の曝露を増やすために毎日C30分間の屋外活動が推奨されている.C6.眼圧下降薬イスラエルのC40歳以上の成人を対象とした横断研究27)は,眼圧がC20CmmHgを超える集団に多くの近視者が存在することを示唆した.これは,米国の子供に対する別の研究によって裏付けられた28).しかし,中国の前向きコホート研究29)では,7~9歳の子供を対象とし,年にC1度検査を受けさせた結果,近視と非近視の子供の眼圧は近視発症前に差がなく,近視発症後に眼圧が上昇することを示し,眼圧の上昇は原因ではなく近視の結果であることを示唆した.また,マレイン酸チモロール(timololmaleate)を用いて,159人の近視の子供を対象とした試験30)では,眼圧をC3CmmHg減少させたにもかかわらず,2年後の近視の進行に影響がないことが示されていた.CII前臨床レベルの薬物1.近視を誘発する方法前臨床段階での薬物治療をよりよく理解するには,近視の動物モデルの背景知識が重要である.実験近視には,視性刺激遮断近視(formdeprivedCmyopia:FDM)と凹レンズ誘発性近視(lensCinducedmyopia:LIM)の2種類の方法が広く使用されている.FDMは,上下眼瞼縫合されたマカクザルが眼軸延長を伴う近視を発症したことを報告したCWieselらの研究31)に基づいている.後の研究により,この特徴が暗闇で飼育されたサルに発現されなかったため,半透明の眼瞼を通した空間的なコントラストが近視に必要と考えられている32).また,これらの近視動物の後部強膜が薄くなり,人間の近視眼に類似すると思われる.FDMは瞼々縫合のみならず,半透明ディフューザーを装着することによっても実現できる.この技術は,モルモッ542あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020(40)ト33),ウサギ34),ヒヨコ35),ツパイ36),マウス37),ラット38)などの動物に適用されている.LIMは,ぼけ像が網膜に結ばれると眼球のサイズが変化して補償するという発見39)により開発された.凹レンズを装着すると焦点が網膜の後方に移動し,ぼけを引き起こし,眼の成長率を高め,結果として眼軸延長と近視が起こる.ヒヨコのほか,LIMはツパイ40),モルモット41),アカゲザル42)でも同様に実現できる.LIMは遠視性ぼけ像を完全に補正するという明確なエンドポイントをもつため,閉ループとみなされる一方,FDMは開ループとみなされる.この二つの方法は同様に近視を誘発するが,照明状態,種類,強度に対する反応の違いからみると,近視の発生機序が異なると考えられている43,44).一方,ドーパミンやCZENKなどはFDMとCLIMに共通して変化するとの報告から,両方とも一部の共同通路を介していると考えられる45).CIII動物における薬物実験Embaseというデータベースで検索すると,2008~2018年に近視抑制に対する動物実験がC30件あり,6カテゴリーに分類された(表2)5).C1.ドーパミン作動薬ドーパミン受容体がC5種類(D1~D5)あり,D3受容体を除き,すべてのドーパミン受容体サブタイプは網膜で発現している46).網膜のドーパミン貯蔵がCFDMサル11)およびヒヨコ12)で大幅に減少することが示され,このプロセスを逆にすることにより近視の進行を抑制する可能性があると考えられている.これはモルモット,ツパイ,ヒヨコに対する研究で実証された(表2).しかし,ドーパミンの影響が複雑でCDC2,D3,D4受容体の作動薬は,ツパイ47)およびヒヨコ48)の近視を軽減するが,モルモット49)の近視を促進する.ドーパミンのメカニズムは種により異なると考えられる.C2.抗炎症薬抗炎症治療は,近視が慢性炎症状態でより多く発見されたということに基づく15).研究により,瞼々縫合のハムスターにおもな炎症マーカーが上昇し,炎症性刺激物質の存在下でそれらのマーカーがさらに上昇した.逆に,免疫抑制薬の投与はそのレベルを低下させた.アトロピンで観察された同様の抗炎症効果も,その近視抑制作用の原因の一つと考えられる.C3.抗ムスカリン薬近視を抑制する非選択的ムスカリン受容体拮抗薬であるアトロピンの有効性により,ムスカリン受容体サブタイプに対する選択性が高い他の抗ムスカリン薬が研究されている.選択的CM1/4拮抗薬であるピレンゼピン(pirenzepine)は,LIMヒヨコの近視を抑制し,後部強膜でのグリコサミノグリカン合成を増加させると報告された50).これはアトロピンより副作用が少ないが,臨床試験の結果では眼科軟膏としてC2回/日の使用頻度が不便である51,52).C4.眼圧下降薬チモロールマレイン酸塩はヒトに対する試験では近視の軽減に効果がないことが示されたが,モルモットの研究では,ブリモニジン(brimonidine:Ca-アドレナリン作動薬)とラタノプロスト(latanoprost:prostaglandin類似体)が近視の進行を抑制できると報告された53~55).一つの説明は,眼内圧の上昇が調節近視の一部であるとするものである.継続的な近距離作業により一過性近視56)と進行性近視眼で調節により眼内圧の上昇57)するとの報告があり,眼圧下降薬は屈折性近視を抑制できるかもしれない.他の動物実験では,近視眼で上昇または下降する特定の分子を標的としている〔たとえばインスリン様成長因子-2(IGF-2)58)や,アポリポ蛋白質CA159)〕.これらの分子が近視化に関与することが示唆されたが,どのように寄与するかは明確ではない.ただし,これらの薬剤は注射で投与されるため(アスタキサンチンを除く),臨床試験へ進むのはむずかしい.C5.漢方薬と天然エキスビルベリー抽出物であるディフラレルと,六つのハーブ抽出物であるCBuJingYiShiは,強膜のCECMの分解を低下させることにより,FDMモルモットの近視を抑(41)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C543表22008~2018年に動物実験で近視抑制に有効と報告された薬物ドーパミン系SKF38393D1R作動薬FDMモルモットの近視抑制C49CQuinpiroleD2R作動薬FDMツパイの近視抑制,FDMヒヨコの脈絡膜の厚さの増加に伴う近視抑制,FDMモC47,C48,C49ルモットの近視促進CSulpirideD2R拮抗薬FDMモルモットの近視抑制C49CSpiperoneD2R拮抗薬FDMツパイの近視抑制C47CPD168077選択的CD4R作動薬FDMツパイの近視抑制C47CLevodopaドーパミンの前駆物質FDMモルモットの近視抑制C─CCiticoline*ドーパミンを増加させるFDMモルモットの近視抑制C─CApomorphine非選択的ドーパミン受容体作動薬FDMモルモットの近視抑制,LIMモルモットでは抑制効果なし,FDMヒヨコの近視抑制C48抗炎症系CyclosporineA†免疫抑制薬FDMハムスターの近視抑制,c-Fos,NF-kappaB,IL-6とCTNF-alphaを減少させるC15CLipopolysaccharideandpeptidoglycan起炎物質FDMハムスターの近視促進,c-Fos,NF-kappaB,IL-6とCTNF-alphaを増加させるC15CKetorolactromethamine†非ステロイド性抗炎症薬FDMヒヨコの近視抑制C23抗ムスカリン系Atropine†非選択的ムスカリン受容体拮抗薬いくつかの動物でのCFDMとCLIMの抑制C9,C10,C15Muscarinictoxin3(MT3)選択的CM4拮抗薬FDMヒヨコの近視抑制,LIMヒヨコでは抑制効果なし,FDMツパイの近視抑制C─Muscarinictoxin7(MT7)選択的CM1拮抗薬FDMとCLIMツパイの近視抑制C─CPirenzepine選択的CM1/4拮抗薬FDMヒヨコの近視抑制C50眼圧下降系Brimonidine†Alpha-adrenergic作動薬LIMモルモットの近視抑制C54CLatanoprost†Prostaglandin類似体FDMモルモットの近視抑制C53,C55そのほかBevacizumab抗CVEGF抗体FDMヒヨコの近視抑制,近視回復段階で脈絡膜が厚くなるのを抑制するC─CCyclopamineSonichedgehog中和抗体,MMP-2の活性の抑制FDMモルモットの近視抑制C─CAmphiregulinantibodyamphiregulinに対する抗体,表皮成長因子家族LIMモルモットの近視抑制C─Insulin-likegrowthfactor-2(IGF-2)CantisenseoligonucleotidesIGF-2を減少させるFDMモルモットの近視抑制C58CDL-alpha-aminoadipicacid網膜CMuller細胞を選択的に破壊するFDMモルモットの近視抑制,網膜CTGFCb2のレベルを低下させるC─C7-MethylxanthineAdenosine受容体拮抗薬FDMモルモットの近視抑制,強膜コラーゲン線維が細くなるのを抑制する,LIMアカゲC─ザルの近視抑制CCGP46381GABAB受容体拮抗薬FDMモルモットの近視抑制C─CAstaxanthin*Ketocarotenoid(抗酸化ストレス)LIMモルモットの近視抑制コラーゲンの断裂と構造の強さを補足するC─C8-Br-cAMP網膜アポリポ蛋白質CA1(ApoA1)を減少させるFDMヒヨコの脈絡膜肥厚化をはじめとする近視抑制C59共役細胞結合ペプチドと酵素分解性架橋剤を用いてCHydrogelアクリル化ヒアルロン酸から合成されたヒドロゲルFDMモルモットの近視抑制,副作用なしC─漢方薬と天然エキスDifrarel*ビルベリーエキスFDMモルモットの近視抑制,強膜におけるCMMP-2のアップレギュレーションとコラーゲC60ンCIの分解を減少させるCBuJingYiShi*漢方薬FDMモルモットの近視抑制,強膜線維芽細胞と細胞外マトリックスのリモデリングを調C61節するCTGFCb1を増加させるブラックカラントエキス*とアントシアニンFDMヒヨコの近視抑制C62C経口服用.†点眼薬,ほかのすべての薬物が眼内注射(硝子体内,結膜下,眼球周囲,Tenon.下).FDM:視性刺激遮断近視(formdeprivedmyopia);GABA,g-アミノ酪酸;IL-6,イ*ンターロイキン6;IOP,眼内圧;LIM,凹レンズ誘発性近視(lens-inducedmyopia);MMP-2,マトリックスメタロプロテイナーゼ-2;NF,核因子;TNF,腫瘍壊死因子;VEGF,血管内皮成長因子.(文献C5より引用)制すると報告した60,61).ほかに,ブラックカラント抽出物は,LIMヒヨコの近視と眼軸延長を用量依存的に低減させるとの報告もあった62).臨床試験は医薬品開発の不可欠な部分だが,高額な支出のプロセスでもある.これらの薬物は動物モデルで近視を有効に抑制することが示されたが,臨床試験段階に進む前に慎重に検討する必要がある.また,動物で試験された物質は注射が必要なものが多く,年少患者に使用することはむずかしい.点眼薬(抗生物質や眼圧下降薬)や経口錠剤(例:シチコリン,アスタキサンチン,および天然抽出物)などに対する忍容性が高いが,毎日の投与によるコンプライアンスにも注意しなければならない.最後に,緑内障や加齢黄斑変性とは異なり,近視はおもに子供に発症するため,新しい治療法は,治療中および治療後の長期的な安全性と有効性を評価して,正常な発達に対するリスクが最小限またはまったくないことを確認する必要がある.CIV結論近視治療を目的とする治療法は,現在,アトロピン,ピレンゼピンおよびC7-メチルキサンチンのみがヒトに対する試験で近視進行を抑制できると報告された.ケトロラクトロメタミン,経口リボフラビン,実験薬物などの薬物はまだ臨床試験段階である.過去C10年間で,動物モデルで近視をうまく抑制する有望な薬剤が発見されたが,それらはおもに注射が必要で臨床試験への進行はむずかしい.それにもかかわらず,これらの結果は近視に関する知識をさらに追加し,医薬品開発に対して不可欠である.また,低用量アトロピンの併用治療の優越性が証明された一方,低用量アトロピン単剤の有効性を裏付ける証拠がすでにあるため,配合錠を開発している間に高有病率の発展途上国でのアトロピンの治療も考えられる.文献1)HoldenCBA,CFrickeCTR,CWilsonCDACetal:GlobalCpreva-lenceCofCmyopiaCandChighCmyopiaCandCtemporalCtrendsCfrom2000through2050.COphthalmology123:1036-1042,C20162)BourneRR,StevensGA,WhiteRAetal:CausesofvisionlossCworldwide,1990-2010:aCsystematicCanalysis.CLancetCGlobHealthC1:e339-e349,C20133)LinLL,ShihYF,HsiaoCKetal:PrevalenceofmyopiainTaiwaneseschoolchildren:1983CtoC2000.CAnnCAcadCMedCSingaporeC33:27-33,C20044)MorganCA,CYoungCR,CNarankhandCBCetal:PrevalenceCrateofmyopiainschoolchildreninruralMongolia.OptomVisSci83:53-56,C20065)VutipongsatornK,YokoiT,Ohno-MatsuiK:CurrentandemergingCpharmaceuticalCinterventionsCforCmyopia.CBrJOphthalmolC103:1539-1548,C20196)KumaranA,HtoonHM,TanDetal:Analysisofchangesinrefractionandbiometryofatropine-andplacebo-treat-edeyes.InvestOphthalmolVisSci56:5650-5655,C20157)ChiaA,LuQS,TanD:Five-yearclinicaltrialonatropineforthetreatmentofmyopia2:myopiacontrolwithatro-pine0.01%Ceyedrops.Ophthalmology123:391-399,C20168)WilliamsCKM,CBertelsenCG,CCumberlandCPCetal:Increas-ingCprevalenceCofCmyopiaCinCeuropeCandCtheCimpactCofCeducation.Ophthalmology122:1489-1497,C20159)SchmidCKL,CWildsoetCF:InhibitoryCe.ectsCofCapomor-phineCandCatropineCandCtheirCcombinationConCmyopiaCinCchicks.OptomVisSci81:137-147,C200410)McBrienCNA,CMoghaddamCHO,CReederAP:AtropineCreducesCexperimentalCmyopiaCandCeyeCenlargementCviaCaCnonaccommodativemechanism.InvestOphthalmolVisCSci34:205-215,C199311)IuvonePM,TiggesM,FernandesAetal:Dopaminesyn-thesisandmetabolisminrhesusmonkeyretina:develop-ment,Caging,CandCtheCe.ectsCofCmonocularCvisualCdepriva-tion.VisNeurosci2:465-471,C198912)StoneRA,LinT,LatiesAMetal:Retinaldopamineandform-deprivationCmyopia.CProcCNatlCAcadCSciCUSAC86:C704-706,C198913)RadaJA,ThoftRA,HassellJR:Increasedaggrecan(carti-lageCproteoglycan)productionCinCtheCscleraCofCmyopicCchicks.CDevBiolC147:303-312,C199114)LindGJ,ChewSJ,MarzaniDetal:Muscarinicacetylcho-lineCreceptorCantagonistsCinhibitCchickCscleralCchondro-cytes.InvestOphthalmolVisSci39:2217-2231,C199815)LinCHJ,CWeiCCC,CChangCCYCetal:RoleCofCchronicin.ammationinmyopiaprogression:clinicalevidenceandexperimentalvalidation.CEBioMedicineC10:269-281,C201616)LuftWA,MingY,StellWK:Variablee.ectsofprevious-lyCuntestedCmuscarinicCreceptorCantagonistsConCexperi-mentalmyopia.InvestOphthalmolVisSci44:1330-1338,C200317)FischerAJ,MiethkeP,MorganIGetal:Cholinergicama-crineCcellsCareCnotCrequiredCforCtheCprogressionCandCatro-pine-mediatedCsuppressionCofCform-deprivationCmyopia.CBrainRes794:48-60,C199818)TrierCK,CMunkCRibel-MadsenCS,CCuiCDCetal:SystemicC7-methylxanthineinretardingaxialeyegrowthandmyo-(43)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C545piaCprogression:aC36-monthCpilotCstudy.CJCOculCBiolCDisCInforC1:85-93,C200819)GallemoreCRP,CHughesCBA,CMillerSS:Light-inducedCresponsesCofCtheCretinalCpigmentCepithelium.CInCTheCretinalpigmentCepithelium(editedCbyCMarmorMF)C,Cp175-198,COxfordUniversityPress.NewYork,199820)FlitcroftCDI,CAdamsCGG,CRobsonCAGCetal:RetinalCdys-functionCandCrefractiveerrors:anCelectrophysiologicalCstudyofchildren.BrJOphthalmolC89:484-488,C200521)TrierCK,COlsenCEB,CKobayashiCTCetal:BiochemicalCandCultrastructuralCchangesCinCrabbitCscleraCafterCtreatmentCwithC7-methylxanthine,Ctheobromine,Cacetazolamide,CorCL-ornithine.BrJOphthalmol83:1370-1375,C199922)WeiCC,KungYJ,ChenCSetal:Allergicconjunctivitis-inducedCretinalCin.ammationCpromotesCmyopiaCprogres-sion.EBioMedicineC28:274-286,C201823)LuuCCD,CFooCH,CCrewtherCSGCetal:E.ectsCofCaCnon-ste-roidal(ketorolactromethamine)andasteroidal(dexameth-asone)anti-in.ammatoryCdrugConCrefractiveCstateCandCoculargrowth.CClinExpOphthalmolC29:175-178,C200124)McBrienNA,GentleA:Roleofthesclerainthedevelop-mentandpathologicalcomplicationsofmyopia.CProgRetinEyeResC22:307-338,C200325)WollensakCG,CIomdinaE:Long-termCbiomechanicalCprop-ertiesCofCrabbitCscleraCafterCcollagenCcrosslinkingCusingCribo.avinandultravioletA(UVA)C.ActaOphthalmolC87:C193-198,C200926)LiCX,CWuCM,CZhangCLCetal:Ribo.avinCandCultravioletCaCirradiationCforCtheCpreventionCofCprogressiveCmyopiaCinCaCguineapigmodel.ExpEyeResC165:1-6,C201727)DavidCR,CZangwillCLM,CTesslerCZCetal:TheCcorrelationCbetweenCintraocularCpressureCandCrefractiveCstatus.CArchCOphthalmol103:1812-1815,C198528)QuinnCGE,CBerlinCJA,CYoungCTLCetal:AssociationCofCintraocularpressureandmyopiainchildren.Ophthalmolo-gy102:180-185,C199529)EdwardsCMH,CBrownB:IOPCinCmyopicchildren:theCrelationshipCbetweenCincreasesCinCIOPCandCtheCdevelop-mentofmyopia.COphthalmicandPhysiologicalOpticsC16:C243-246,C199630)JensenH:MyopiaCprogressionCinCyoungCschoolCchildren.CAprospectivestudyofmyopiaprogressionandthee.ectofCaCtrialCwithCbifocalClensesCandCbetaCblockerCeyeCdrops,CActaOphthalmol(Suppl200):1-79,199131)WieselTN,RaviolaE:Myopiaandeyeenlargementafterneonatallidfusioninmonkeys.Nature266:66-68,C197732)RaviolaCE,CWieselTN:E.ectCofCdark-rearingConCexperi-mentalCmyopiaCinCmonkeys.CInvestCOphthalmolCVisCSciC17:485-488,C197833)HowlettMH,McFaddenSA:Form-deprivationmyopiaintheguineapig(Caviaporcellus)C.VisionResC46:267-283,C200634)VerolinoCM,CNastriCG,CSellittiCLCetal:AxialClengthCincreaseinlid-suturedrabbits.SurvOphthalmol44(Suppl1):S103-S108,C199935)TroiloCD,CGottliebCMD,CWallmanJ:VisualCdeprivationCcausesCmyopiaCinCchicksCwithCopticCnerveCsection.CCurrCEyeCResC6:993-999,C198736)ShermanSM,NortonTT,CasagrandeVA:Myopiainthelid-suturedtreeshrew(Tupaiaglis)C.BrainRes124:154-157,C197737)Schae.elCF,CBurkhardtCE,CHowlandCHCCetal:Measure-mentCofCrefractiveCstateCandCdeprivationCmyopiaCinCtwoCstrainsofmice.OptomVisSciC81:99-110,C200438)ShinoharaCK,CYoshidaCT,CLiuCHCetal:EstablishmentCofCnovelCtherapyCtoCreduceCprogressionCofCmyopiaCinCratsCwithexperimentalmyopiaby.broblasttransplantationonsclera.CJTissueCEngRegenMedC12:e451-e461,C201839)Schae.elCF,CGlasserCA,CHowlandHC:Accommodation,CrefractiveCerrorCandCeyeCgrowthCinCchickens.CVisionCResC28:639-657,C198840)ShaikhCAW,CSiegwartCJTCJr,CNortonTT:E.ectCofCinter-ruptedlenswearoncompensationforaminuslensintreeCshrews.OptomVisSciC76:308-315,C199941)LiW,LanW,YangSetal:Thee.ectofspectralproper-tyandintensityoflightonnaturalrefractivedevelopmentandcompensationtonegativelensesinguineapigs.InvestOphthalmolVisSciC55:6324-6332,C201442)SmithCELC3rd,CHungCLF,CArumugamCBCetal:NegativeClens-inducedCmyopiaCinCinfantmonkeys:e.ectsCofChighCambientClighting.CInvestCOphthalmolCVisCSciC54:2959-2969,C201343)KeeCCS,CMarzaniCD,CWallmanJ:Di.erencesCinCtimeCcourseCandCvisualCrequirementsCofCocularCresponsesCtoClensesCandCdi.users.CInvestCOphthalmolCVisCSciC42:575-583,C200144)BartmannCM,CSchae.elCF,CHagelCGCetal:ConstantClightCa.ectsCretinalCdopamineClevelsCandCblocksCdeprivationCmyopiabutnotlens-inducedrefractiveerrorsinchickens.VisNeurosciC11:199-208,C199445)FischerCAJ,CMcGuireCJJ,CSchae.elCFCetal:Light-andCfocus-dependentCexpressionCofCtheCtranscriptionCfactorCZENKinthechickretina.NatNeurosciC2:706-712,C199946)IuvonePM:NeurotransmittersCandreceptors:dopamineCA2.CInCEncyclopediaCofCtheeye(editedCbyCDarttDA)C,Cp130-135,Oxford/AcademicPress,Cambridge,MA,195347)WardCAH,CSiegwartCJT,CFrostCMRCetal:Intravitreally-administeredCdopamineD2-like(andD4),CbutCnotCD1-like,CreceptorCagonistsCreduceCform-deprivationCmyo-piaintreeshrews.VisNeurosci34:E003,C201748)NicklaDL,TotonellyK,DhillonB:DopaminergicagoniststhatresultinoculargrowthinhibitionalsoelicittransientincreasesCinCchoroidalCthicknessCinCchicks.CExpCEyeCResC91:715-720,C201049)ZhangCS,CYangCJ,CReinachCPSCetal:DopamineCreceptorCsubtypesCmediateCopposingCe.ectsConCformCdeprivationC546あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020(44)-