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近視進行予防の治療 2. オルソケラトロジー

2020年5月31日 日曜日

近視進行予防の治療2.オルソケラトロジーOrthokeratology平岡孝浩*はじめにハードコンタクトレンズを角膜前面カーブよりもフラットに処方すると角膜中央が扁平化し,その結果として近視が軽減することは1960年代から確認されており,これを意図的に行う手法がオルソケラトロジー(ortho-keratology:OK)とよばれるようになった.1980年代に入るとリバースジオメトリーデザインが考案され,精度が飛躍的に向上した.さらに高酸素透過性のレンズ素材の開発や角膜トポグラフィーの登場とともにOKの手法も洗練され,1990年代後半には就寝時装用OKが本格的に普及するようになった.そして,未成年や学童にも処方されるようになったが,本治療を継続していると近視が進みにくくなることが広く経験されるようになった.そして,2004年に初めて学術論文としてケースレポートが掲載され,片眼のみOKを行っていた11歳男児の2年間の眼軸長伸長が僚眼の半分以下(治療眼0.13mmvs僚眼0.34mm)に抑えられていたことが紹介された1).以降,非常に多くの臨床研究が行われているが,本稿では代表的な研究を取り上げ,OKによる近視進行予防について解説する.Iオルソケラトロジーによる近視進行抑制初めてパイロットスタディを行ったのは香港のChoら2)のグループである.2年間の研究期間において,OK治療群の眼軸長伸長は眼鏡装用対照群と比較して46%抑制されていたと報告した.また,米国のWallineら3)の研究では,ソフトコンタクトレンズ装用対照群と比較して2年間で56%の眼軸長伸長抑制効果が確認された.しかし,これらの研究では適切な対照群が設定されておらず,他の報告からの引用データ(historicaldata)を用いて比較しているため,エビデンスレベルは低いといわざるを得なかった.その後,日本やスペインで単焦点眼鏡装用を対照とした非ランダム化比較試験が施行され,Kakitaら4)の報告では日本人において2年間で36%,またSantodomin-go-Rubidoら5)の白人を対象とした研究では2年間で32%の有意な眼軸長伸長抑制効果が認められた.さらに2012年にはChoら6)のグループによりROMIOスタディという初めてのランダム化比較試験(randomizedcontrolledtrial:RCT)が行われ,OK群は単焦点眼鏡群と比較して2年間で43%の眼軸長伸長抑制が達成されていることが確認された.II適応の拡大強度近視眼や高度乱視眼に対する処方も試みられている.2013年に報告されたHighmyopia-partialreduc-tionOKという研究では,強度近視眼に対してOKを用いて4Dだけ部分的に近視矯正を行い,残存した近視度数に対して眼鏡を装用させるという手法が用いられ,2年間の眼軸長変化が検討されている.その結果,OK治療群では眼鏡対照群と比較してきわめて強い眼軸長伸長抑制効果(63%)が確認された7).また,TO-SEEと命*TakahiroHiraoka:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕平岡孝浩:〒305-8575茨城県つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(23)525Choetal.文献2)Wallineetal.文献3)Kakitaetal.文献4)Santodomingoetal.文献5)Choetal.文献6)Charmetal.文献7)Chenetal.文献8)010203040506070対照群に対する眼軸長伸長抑制効果(%)図1オルソケラトロジー眼軸長伸長抑制効果に関する既報の比較グラフに提示したものはすべてC2年間の臨床研究であり,対照群(単焦点眼鏡もしくはソフトコンタクトレンズ)に対する眼軸長伸長抑制効果をパーセンテージ表記している.つまり数値が大きい(棒グラフが長い)ほど抑制効果が強いことを示している.いずれの研究においてもオルソケラトロジー群は対照群よりも眼軸長伸長が有意に抑制されており,その抑制効果はC32.63%と報告されている.図2眼鏡(凹レンズ)による網膜結像面と周辺部遠視性デフォーカスの発生近視を眼鏡で矯正すると,周辺部に遠視性デフォーカス(焦点ぼけ)を生じやすく,これが眼軸長を伸長(近視を進行)させるトリガーとなると考えられている.角膜周辺部がスティープ化図3オルソケラトロジー後の網膜結像面と周辺部遠視性デフォーカスの改善オルソケラトロジー後は角膜中央がフラット化し近視が軽減するが,周辺部角膜は肥厚,スティープ化するため周辺での屈折力が増し,その結果,周辺網膜像での遠視性デフォーカスが改善する.それゆえ眼軸長伸長が抑制され近視が進行しにくくなると考えられている.Changeinaxiallength(mm)21.5r=-0.584p<0.000110.5000.20.40.6-0.5Cornealtotalhigher-orderaberration(mm)図4近視学童における高次収差と眼軸長の相関縦軸にC2年間の眼軸長変化量,横軸にベースラインの角膜高次収差をとった散布図が示されている.両パラメータに有意な負の相関が認められており,つまり角膜高次収差が大きい症例ほど眼軸長変化が小さい(近視が進みにくい)という関連が読み取れる.本データは近視学童の自然経過で確認された相関であるが,オルソケラトロジー患者でも類似の関連が確認されている.(文献C18より引用)C0.40.35Combinationgroup*Changeinaxiallength(mm)0.30.250.20.150.10.050-0.05-0.1StudyentryPre-studyOver6monthsOver1year(atbaseline)(atenrollment)Durationofstudy図5オルソケラトロジー単独治療群とアトロピン点眼併用群の眼軸長経時変化縦軸に眼軸長変化量,横軸に観察期間の折れ線グラフで両群の推移が比較されている.オルソケラトロジー+0.01%アトロピン点眼併用群(combinationgroup)ではオルソケラトロジー単独治療群(monotherapygroup)と比較して眼軸長変化量が明らかに小さく,治療開始後C6カ月およびC1年時点で有意差が認められている.1年間の眼軸長変化量はそれぞれC0.09C±0.12Cmm,0.19C±0.15Cmmであり,併用療法の単独療法に対する抑制効果はC53%と算出される.(文献C23より引用)Increaseinaxiallengthover1year(mm)Combinationgroupp<0.001*Monotherapygroup0.4*Unpairedt-test0.3p<0.900*0.20.10.0Sphericalequivalentrefractiveerroratenrollment(D)図6オルソケラトロジー単独治療群とアトロピン点眼併用群の眼軸長変化(ベースラインの屈折度数でサブグループ解析)3Dを超える近視眼では眼軸長変化量に群間差はないが,3D以下の症例でサブグループ解析するとオルソケラトロジー+0.01%アトロピン点眼併用群(combinationgroup)はオルソケラトロジー単独治療群(monotherapygroup)と比較して有意に眼軸長変化量が小さい.つまり,アトロピン点眼併用療法はベースラインの近視が軽度の症例に有効であることを示している.(文献C23より引用)–

近視進行予防の治療 1. 低濃度アトロピン

2020年5月31日 日曜日

近視進行予防の治療1.低濃度アトロピンLow-ConcentrationAtropineEyeDrops稗田牧*Iアトロピンの基礎知識アトロピンはムスカリン受容体阻害薬である.神経の末端から放出される神経伝達物質であるアセチルコリン(acetylcholine:ACh)で刺激される受容体は,ニコチン受容体とムスカリン受容体に大別される.ムスカリン受容体は副交感神経の神経終末に存在し,副交感神経の活動を制御する.アトロピンはこのムスカリン受容体を競合的に阻害することにより拮抗薬として働き,散瞳,調節麻痺,心拍数の増大などを起こす.アトロピンは,ナス科のベラドンナ植物由来有機化合物である.ベラドンナとはイタリア語で美しい女性を意味し,女性が瞳孔を拡張させるために使用したことが語源の由来である.眼に対する影響として,散瞳効果は30~40分で最大となりC12日間程度継続する.調節麻痺効果はC2~3時間で最大効果を示しC2週間継続するとされている.効果が強い薬剤であるが,効果発現に時間がかかり,かつ長く持続する特徴がある.また,虹彩色素が多い眼では効果の発現がさらに遅く,効果の消失にも時間がかかる1).CIIアトロピン点眼による子供の近視治療アトロピンの近視進行予防効果を明らかにする研究がなされている.シンガポールのCAtropineCforCtheCtreat-mentCofCchildhoodmyopia-1(ATOM-1)研究である.この研究によりC1%アトロピン点眼による近視進行抑制効果のエビデンスが確立された2).400人の6~12歳の片眼にC1日C1回C1%アトロピンもしくは偽薬をC2年間点眼して効果を比較した.2年経過後でアトロピン点眼をしていた眼は,平均でC0.28Dほど近視化したものの,点眼していなかった眼ではC1D以上の近視化が観察された.アトロピン点眼群において眼軸長は開始時とほぼ同じだが,点眼していなかった眼では平均C0.38Cmmの延長が認められた(図1)2).1%アトロピンの点眼は近視の進行および眼軸延長を抑制する効果があることが確認された.その後,1%アトロピン点眼を中止した状態でC1年間経過を観察した.2年間C1%アトロピン点眼を行い,その後中止した眼は急激に近視が進行し,眼軸長が延長した.1%アトロピン点眼中止後のリバウンド現象が起こったのである3).ただし,研究開始からC3年経過後の時点でもコントロール群と比較するとC1%アトロピン点眼を行っていた眼の近視進行は抑制されていた.高濃度アトロピンのリバウンド現象への対策として,より低濃度でも点眼の効果を確かめる研究が行われた.ATOM-2研究ではアトロピンをC0.5%,0.1%,0.01%に希釈しC400人のC6~12歳の両眼にC1日C1回C2年間点眼して濃度ごとの近視進行を比較した4).その結果,濃度依存性に近視進行が抑制されていたが,ATOM-1の偽薬群に比較すると,0.01%であっても近視進行は抑制されていた.アレルギー性結膜炎や接触性皮膚炎はC0.01%点眼では認められなかった.さらに点眼を中止したあ*OsamuHieda:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕稗田牧:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(17)C51925.425.325.225.125.024.924.824.724.6AtropineTreatedEyeAtropineUntreatedp<0.0001EyePlaceboTreatedEyePlaceboUntreatedBaseline1Year2YearsEyeTimeSphericalEquivalent(Dioptres)近視度数AxialLengthChange(mm)眼の大きさ図11%アトロピン点眼の効果AtropineCforCtheCtreatmentofCchildhoodCmyopia(ATOM)-1の結果.1%アトロピン点眼によりC2年間の平均で近視はわずかに進行し,眼軸は不変だった.(文献C2より引用).4.20-.2-.4-.6-.8-1-1.2-1.4SphericalEquivalent(D)MonthPlacebo(ATOM1)A0.01%A0.1%A0.5%A1.0%(ATOM1)図20.01%アトロピン点眼にリバウンドなしATOM-2,第C2期の結果.0.01%アトロピンで点眼中止後にリバウンドがないので,3年の経過ではより高濃度点眼より近視進行が抑制されている.(文献C5より引用)Cessationof-.2-.4-.6-.8-1-1.2-1.4-1.6-1.8-2Placebo(ATOM1)A0.01%A0.1%A0.5%A1.0%(ATOM1)図3ATOM.2の第三期の結果点眼中止中に近視進行している症例に,0.01%アトロピン点眼が再開された.0.01%点眼で治療開始するとC5年間で偽薬のC2.5年分の近視進行にとどまる.(文献C6より引用)Changeinaxiallengths(mm)ChangeinSphericalEquivalent(D)0.00-0.10-0.20-0.30-0.40-0.50-0.60-0.70-0.80-0.90baseline4m8m12mAtropine0.05%Atropine0.025%Atropine0.01%Placebo図4LAMPの1年目までの結果低濃度アトロピンはC3群とも偽薬より近視進行が抑制されている.(文献C10より引用)0.700.600.500.400.300.200.100.00Baseline4months8months12months16months20months24monthsAtropine0.05%Atropine0.025%Atropine0.01%Switch-overgroup図5LAMPフェーズ2の結果偽薬群はC2年目にC0.05%へスイッチして,そのほかの群はC2年間同じ点眼を行った.スイッチ群とC0.01%アトロピン群はほぼ同じ眼軸長変化となった.(文献C11より引用)-’C

近視発症の疫学と環境因子

2020年5月31日 日曜日

近視発症の疫学と環境因子EpidemiologyofMyopiaandEnvironmental-RelatedFactors上田瑛美*安田美穂*はじめに近視有病率の急激な増加傾向は全世界的に公衆衛生上の問題となっている.わが国においても,筆者らの久山町研究ではここC10年でC40歳以上の日本人のうち等価球面度数が-0.5D以下の近視が有意に増加していることがわかった1).さらに,東アジア系人種のC18歳の小児ではC80%以上に近視がいることが報告されている2).今後もますます近視が増加することが予想される.そのため,近視発症の特性を把握することが可能な疫学的アプローチはきわめて重要である.最近数十年での世界的な近視人口急増の原因は,遺伝因子の変化というよりも,むしろ環境要因の変化によることが多いことが指摘されている.また,古くから社会環境要因および生活環境要因が近視に関連することが報告されており,それらの環境因子が複合的に重なり合って,近視化に影響するといわれている.近視に関連した環境要因は近視の病態解明,さらには予防・管理につながる可能性があるため,それらを検討することは意義がある.本稿では,近視発症の疫学と環境因子について解説する.CI近視発症の疫学横断研究による近視の有病率の報告は古くC1980年代からさまざまな国で行われ,その人種差,地域差が明らかになっている.一方,縦断研究に基づいた近視の発症率の報告がされるようになったのはC2005年ごろと比較的新しく,まだその報告数は少ない.近視の発症率に関する各国の疫学調査結果を図1にまとめた.屈折度数は年齢,研究時期で大きく異なるため,結果を比較,解釈する際には年齢,研究時期を統一する必要がある.研究時期をC2005年以降,対象年齢をC6.7歳に統一してみると,米国の白人を対象としたCOrindastudy3)ではC2.8%,イギリスの白人を対象としたCNorthernCIrelandCChildhoodCErrorsCofRefraction(NICER)study4)では2.2%である.一方,中国都市部の東アジア系人種を対象にした研究5)ではC19.1%,シンガポールの東南アジア系人種を対象としたCSingaporeCCohortCStudyCofCtheCRiskFactorsforMyopia(SCORM)6)ではC15.9%と明らかにその発症率は高かった.とくに同地域で近視発症の人種差を調べたオーストラリアのSydneyCMyopiaCstudy7)では,近視の発症が白人種C1.3%と比較して東アジア系人種でC6.9%と東アジア系人種が白人種に対して5倍高いと報告している.これらの結果から,アジア系人種ではその他の人種,地域に比べて発症率が高いことがわかる.次に,わが国と同じ東アジア系人種を対象としたWangらの研究5)における年齢別の近視および強度近視の発症率の結果を図2に示した.どの年齢においてどのくらいの割合で近視を発症しているかを知ることで,臨床上の近視の発症に注意すべき時期を知ることができる.等価球面度数-0.5D以下の近視の発症率は小学校時から中学就学時までおよそC20.30%と高い割合を維*EimiUeda&*MihoYasuda:九州大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕上田瑛美:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学医学部眼科学教室C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(11)C513NICERstudyヨーロッパ系白人種2.2%Wangetal東アジア系人種19.1%Orindastudy白人種2.8%SCORMstudy東南アジア系人種15.9%SydneyMyopiastudy白人種1.3%東アジア系人種6.9%図1Population.basedstudyによる各人種における近視の発症率アジア系人種は白人種に比べて近視の発症率が高いことがわかる.研究時期C2005年以降,対象年齢6.7歳,1年発症率に統一.近視は等価球面度数-0.5D以上で定義.NICER:NorthernIrelandchildhooderrorsofrefraction.SCORM:Singaporecohortstudyoftheriskfactorsformyopia.発症率(%)小学校中学校3530.228.829.13025.724.823.72519.120近視(.-0.5D)15強度近視(.-6.0D)1050.10.20.50.91.61.92.301~22~33~44~55~66~77~8学年(年)図2年齢別にみた近視および強度近視の発症率わが国と同じ東アジア系人種を対象とした研究によると,等価球面度数-0.5D以下の近視の発症率は小学校時から中学就学時までおよそC20.30%と高い割合を維持する.小学校入学時から徐々に上昇し,小学C5年時でピークを迎え,その後中学校でやや低下する.(文献C5より改変引用)持する.グラフのカーブをみると,小学校入学時から徐々に上昇し,小学C5年時でピークを迎え,その後中学校でやや低下する.これは,小学校から中学校の間は全般的に近視の発症予防を心がけ,小学C5年時でもっとも発症予防に注意が必要であることを示唆する.加えて,小学入学時で近視の発症率はC19.2%とすでに高いこともわかる.近年,早期発症の近視(early-onsetmyopia)の頻度の増加に伴い強度近視へ進行するものが増えていることも指摘されている8).強度近視は軽度近視と比較して網膜.離,近視性黄斑症,緑内障のリスクが高いため,近視の視力予後を考えるうえで重要である.小学校入学以前から近視発症を予防することで,強度近視による合併症に罹患する者をより少なくすることができるかもしれない.以上,近視発症の疫学の最新の知見を述べた.まだまだ縦断研究による近視の発症の研究は人種・地域が限られており,歴史も浅く,今後世界中で経時的なエビデンスの蓄積が期待される.514あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020(12)有病率(%)普通教育限定的現代的な現代的ななし普通教育西洋教育東アジア教育100806040200図3教育システムにおける各地域と近視の有病率との関係イヌイット,ネパールなどの普通教育の普及していない民族や地域では近視の有病率はC5%未満に過ぎないのに対して,シドニー,ポーランドなどの現代的な西洋教育が普及している地域ではC20.30%に上昇し,さらにはソウル,台湾,シンガポールなどの現代的な高等教育が普及している地域においてはC80.90%と圧倒的に高くなっている.(文献C12より引用改変)ソウルシンガポール台湾山東省北京市広東省北京順義区ポーランド北アイルランドシドニーチリダーバンインド都市部インド農村部ネパールイヌイットガボン表1屋外活動が近視発症・進行に与える影響をみた介入試験の既報研究研究国対象者(介入/コントロール)近視の定義観察期間介入内容結果CWuetalC2013台湾Cn=333/2387.C11歳C≦-0.5D1年1日80分間の屋外活動発症率は介入群C8.41%C/対照群C17.65%で有意に介入群で低率近視進行は介入群-0.25D/対照群-0.38Dで有意に介入群で抑制CHeetalC2015中国Cn=919/9296.C7歳C≦-0.5D3年1日40分間の屋外活動発症率は介入群C30.4%C/対照群C39.5%で有意に介入群で低率近視進行は介入群-1.42D/対照群-1.59Dで有意に介入群で抑制CJinetalC2015中国Cn=1,735/1,3166.C14歳C≦-0.5D1年一日C40分間の屋外活動発症率は介入群C3.7%C/対照群C8.5%で有意に介入群で低率近視進行は介入群-0.10D/対照群-0.27Dで有意に介入群で抑制図4屋外活動の増加が近視化を抑制する要因屋外活動の近視抑制効果は,光環境,近業時間の減少,運動などの環境要因が独立して影響しているのではなく,複合的に作用しているといわれている.1日C80分間以上を屋外で過ごすプログラムを介入群に導入したところ,近視の発症率は介入群がC8.41%,対照群がC17.65%で介入群が有意に低率であった24).また,1年後の近視の進行は介入群において-0.25D,対照群では-0.38Dと有意に抑制することができたとしている.中国広州の前向きランダム化試験では平日にC1日40分の屋外活動を追加で設けた介入群を導入し,3年後に近視の発症率と近視の進行を評価した.その結果,近視の発症率は介入群がC30.4%,対照群がC39.5%で介入群が有意に低率であった25).また,近視の進行も屋外活動をすることで有意に抑制することができたと報告している.同様の研究が中国の農村地域でも行われており,1日C20分間の屋外活動をC1日にC2回行うプログラムを介入群に割りつけ,近視の発症,進行ともに介入群が対照群と比較して有意に抑制できたとしている26).屋外活動と近視が関連するメカニズムには諸説あり,近業時間の減少,光環境27),運動28)などが基礎実験や臨床試験でわかっている.これらが近視抑制に独立して影響しているのではなく,複合的に作用しているといわれている(図4).したがって,近視抑制に取り組むためには単独ではなく,複数の因子を考慮する必要がある.おわりに近視発症の疫学に加え,近視に関連する環境因子について最近の研究を紹介した.現時点では近視発症を予防できる環境因子としてエビデンスレベルがもっとも高いものは屋外活動時間の増加である.われわれの視覚環境は今後も大きく変化していくことが予想され,近視化に与える影響を確立することは重要なことである.長年積み重ねてきた研究により,近視を予防できる可能性が出てきており,複雑に絡み合った環境因子の近視への影響が徐々にひもとかれていっていることは間違いなく,今後の研究の進展が期待される.文献1)UedaE,YasudaM,FujiwaraKetal:Trendsintheprev-alenceCofCmyopiaCandCmyopicCmaculopathyCinCaCJapanesepopulation:theCHisayamaCStudy.CInvestCOphthalmolCVisCSciC60:2781-2786,C20192)RudnickaAR,KapetanakisVV,WathernAKetal:Globalvariationsandtimetrendsintheprevalenceofchildhoodmyopia,asystematicreviewandquantitativemeta-analy-sis:implicationsCforCaetiologyCandCearlyCprevention.CBrJOphthalmolC100:882-890,C20163)JonesLA,SinnottLT,MuttiDOetal:Parentalhistoryofmyopia,CsportsCandCoutdoorCactivities,CandCfutureCmyopia.CInvestOphthalmolVisSci48:3524-3532,C20074)McCulloughCSJ,CO’DonoghueCL,CSaundersKJ:SixCyearCrefractiveCchangeCamongCwhiteCchildrenCandCyoungadults:evidenceforsigni.cantincreaseinmyopiaamongWhiteUKChildren.PLoSOne16:e0146332,C20165)WangCSK,CGuoCY,CLiaoCCCetal:IncidenceCofCandCfactorsCassociatedCwithCmyopiaCandChighCmyopiaCinCChineseCChil-dren,basedonrefractionwithoutcycloplegia.JAMAOph-thalmolC136:1017-1024,C20186)SawSM,TongL,ChuaWHetal:Incidenceandprogres-sionofmyopiainSingaporeanschoolchildren.InvestOph-thalmolVisSci46:51-57,C20057)FrenchCAN,CMorganCIG,CBurlutskyCGCetal:PrevalenceCand5-to6-yearincidenceandprogressionofmyopiaandhyperopiaCinCAustralianCschoolchildren.COphthalmologyC120:1482-1491,C20138)ChuaCSY,CSabanayagamCC,CCheungCYBCetal:AgeCofConsetCofCmyopiaCpredictsCriskCofChighCmyopiaCinClaterCchildhoodCinCmyopicCSingaporeCchildren.COphthalmicCPhysiolOptC36:388-394,C20169)CohnH:TheHygieneoftheeyeinschools.Simkin,Mar-shallandCompany,London,188310)BarCDayanCY,CLevinCA,CMoradCYCetal:TheCchangingprevalenceofmyopiainyoungadults:a13-yearseriesofpopulation-basedCprevalenceCsurveys.CInvestCOphthalmolCVisSci46:2760-2765,C200511)MirshahiCA,CPontoCKA,CHoehnCRCetal:MyopiaCandClevelCofeducation:resultsCfromCtheCGutenbergCHealthCStudy.COphthalmologyC121:2047-2052,C201412)MorganCIG,CFrenchCAN,CAshbyCRSCetal:TheCepidemicsCofmyopia:Aetiologyandprevention.ProgRetinEyeResC62:134-149,C201813)WongCTY,CFosterCPJ,CJohnsonCGJCetal:Education,Csocio-economicCstatus,CandCocularCdimensionsCinCChineseadults:theTanjongPagarSurvey.BrJOphthalmolC86:C963-968,C200214)WilliamsCKM,CBertelsenCG,CCumberlandCPCetal:Increas-ingCprevalenceCofCmyopiaCinCeuropeCandCtheCimpactCofCeducation.COphthalmologyC122:1489-1497,C201515)SawCSM,CShankarCA,CTanCSBCetal:ACcohortCstudyCofCincidentCmyopiaCinCSingaporeanCchildren.CInvestCOphthal-molVisSciC47:1839-1844,C200616)IpCJM,CSawCSM,CRoseCKACetal:RoleCofCnearCworkCinmyopia:.ndingsCinCaCsampleCofCAustralianCschoolCchil-dren.CInvestOphthalmolVisSciC49:2903-2910,C200817)GwiazdaJ,ThornF,BauerJetal:Myopicchildrenshowinsu.cientCaccommodativeCresponseCtoCblur.CInvestCOph-(15)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C517

総説:近視進行を抑制するための総合アプローチ

2020年5月31日 日曜日

総説:近視進行を抑制するための総合アプローチReview:AComprehensiveApproachfortheControlofMyopiaProgression五十嵐多恵*大野京子*はじめに子供たちを取りまく視環境の変化に伴い,世界的に近視人口が急増している1).2016年にHoldenらは,これまでどおりの増加が続くと,2050年には近視人口が全世界人口の半数に,強度近視人口も全世界人口の約1割に増加すると推定した2).さらに,このような近視の増加と重症化によって高齢期の視覚障害者が急増することを懸念し,近視の増加は国際的な公衆衛生上の問題であるとして警鐘を鳴らした.2015年に日本を含む世界の著名な近視研究者らはこの課題に取り組むために集結し,TheInternationalMyopiaInstitute(IMI)が設立された.2019年からはIMIのホームページにおいて,眼科医療従事者・近視研究者のみならず,政府関係者,政策立案者,教育者,一般市民が国際的エビデンスがある正しい知識を習得できるよう近視関連白書(定義・分類,新規治療,臨床試験,近視ビジネスと倫理指針,ガイドライン,実験近視,医療遺伝学に関する白書:それぞれ2年に一度の更新を目標)が公開されるようになった(https://www.myopiainstitute.org/imi-white-papers.html).近視人口の増加が著しいシンガポールや中国,台湾などのアジア先進諸国では,国家規模での近視の一次予防が行われ,一定の成果を上げるようになった(近視の一次予防とは,近視発症前の小児に対して,近視発症の原因と考えられるものの除去や忌避に努め,近視発生を防ぐ予防措置をとることをいう.図1).日本でも2017年に日本近視学会が設立され,日本眼科学会,日本眼科医会,日本近視学会,日本視能訓練士協会の協力のもと,文部科学省の主導で公益法人日本学校保健会によって小児の近視の実態調査が2020年度から行われることとなった(新型コロナウイルス感染症対策による影響で調査は現在延期中).一次予防の第一歩が本格的に踏み出されるにあたり,今後は地域医療を支える眼科医が中心的役割を担い,啓発活動,調査協力,治療を行うことが不可欠となる.同時に,発症した近視の進行に対する二次予防,病的近視の眼合併症に対する三次予防の知識をアップデートしていく必要もある(図1).本稿では,近視の発症と進行を抑制するための総合的アプローチを一次予防,二次予防,三次予防に分けて概説する.I一次予防対策1.近視の危険因子近視の一次予防策を講じるには,日本の小児の近視の有病率を明確にし,追跡調査を行う体制を確立する必要がある.また,具体策を講じるために,介入可能な近視の危険因子を同定し,費用対効果の高い戦略を練る必要がある.これまでに明らかとなっている近視の危険因子はさまざまあるが,これらのなかで屋外活動と近業に対する対策が介入可能な最優先課題である.*TaeIgarashi-Yokoi&*KyokoOhono-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕五十嵐多恵:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(3)505早期発症(10歳以下)予防進行予防病的近視の管理介入可能な危険因子を同定進行リクスの高い小児を病的近視の対費用効果の高い戦略を練る同定,臨床的治療を行う眼合併症に対する集学的管理図1近視の発症と進行を抑制するための総合アプローチ一次予防,二次予防,三次予防に分けて体制を確立する必要がある.近視の一次予防とは,近視発症前の小児に対して,近視発症の原因と思われるものの除去や忌避に努め,近視発生を防ぐ予防措置をとることをいう.国家政策として,眼科医療従事者を中心に,地域・学校ベースでの体制作りが必要である.二次予防は,近視になった小児をできるだけ早期に発見し,早期治療を行うことで近視の進行を抑え,近視が強度に至らないように努めることをいう.三次予防は,近視が強度に至ったあとのさまざまな眼合併症に対する治療や進行・再発防止,残存視機能の回復・維持,視覚リハビリテーション,社会復帰などの対策を立て,実行することをいう.専門施設での長期的な集学的管理が必要と考えられる.照度計のついたマネキン20,00018,00016,000サングラスの影響14,000広場12,00010,000サングラス(広場)8,000温白色蛍光灯下で大きな6,000窓のある屋内4,000白色LED下で窓のない屋内2,00009am12noon2pm4pmEnvironmentalConditions/Timeoftheday20,00018,000帽子の影響16,00014,000広場12,000帽子(広場)10,0008,000サングラスと帽子(広場)6,000温白色蛍光灯下で大きな窓のある屋内4,000白色LED下で窓のない屋内2,00009am12noon2pm4pmEnvironmentalConditions/Timeoftheday図2屋外サングラスや帽子をつけて紫外線対策を行ったときの照度への影響と屋内・屋外の照度との比較サングラスはSolarClass2Classicタイプを使用.帽子とサングラスを併用した場合の照度は低下するが,それでも屋内に比較すれば十分な照度が得られている.(文献7より改変引用)==LightLevel(Lux)atEyeLevelLightLevel(Lux)atEyeLevel表1近視に関する質問票の変遷と利点・欠点1.レーザー測距モジュール:距離と間隔のモニタリング計測範囲:0~120cm精度:+/ー12.照度監視モジュール:光環境と日光暴露のモニタリング計測範囲:0~60,000lux精度:+/ー10%3.三軸センサー:角度のモニタリング計測範囲:360°精度:+/ー1°図3クラウクリップによる環境因子の可視化眼鏡に装着することで,近見焦点距離,時間,照度,頭部の傾きなどのさまざまな情報を負担なく収集できるよう設計されている.図4低濃度アトロピン点眼を主軸とした近視進行抑制治療のフローチャート(文献C17より改変引用)表2現在進行中の低濃度アトロピン点眼の治験研究名ATOM3studyCHAMPstudyAPPLEstudyLAMPstudyDE-127点眼液(地域)C(シンガポール)C(イギリス)C(シンガポール)C(香港)(日本)研究デザイン四重盲検CRCT二重盲検CRCT二重盲検CRCT二重盲検CRCT二重盲検CRCTプラセボCプラセボアトロピン濃度プラセボ0.01%プラセボ0.01%Low-doseCMedium-doseC0.01%0.025%プラセボ濃度非公開High-dose0.05%人数570人289人100人438人288人対象5.9歳-1.50.+1.00D6.C12歳-10.00.-0.5D6.C11歳-6.00.-1.00D4.C12歳-1.0D以下5.C15歳-6.00.-1.00D治療期間24.C30カ月24カ月12カ月36カ月非公開ATOM3では近視発症前の小児も対象であり,CHAMPスタディでは-10Dまでの強度近視も対象となっている.CRCT=無作為化比較試験.図5近視性黄斑症の長期経過における進行形式とOCTによる診断基準乳頭周囲のびまん性萎縮病変は,中心窩からC3,000Cμm鼻側の脈絡膜厚がC56.5Cμm以下であること,また黄斑に及ぶびまん性萎縮は中心窩脈絡膜厚がC62.0Cμm以下であることによって定義される.また,びまん性萎縮から限局生萎縮への進行,もしくは黄斑部萎縮への進行や独立病変の形成は,Bruch膜の孔が新たに形成されることにより新たに定義される.(文献C20より改変引用)低リスクの近視通常の治療:経過観察もしくは短期間の低濃度アトロピン高リスクの近視188個のSNPのGWAS遺伝子パネル(CREAM/23andME)などを使用して,遺伝要因を特定厳格な管理:長期的な低濃度アトロピンによる治療/多焦点ソフトコンタクトレンズ/オルソケラトロジーなど図6PrecisionMedicineClinicforMyopiaの構想-

序説:近視進行予防の国際スタンダード

2020年5月31日 日曜日

近視進行予防の国際スタンダードInternationalStandardsforthePreventionofMyopia大野京子*生野恭司**全世界的な近視の急増がとまらない.Holdenらの推計によると,2050年には全世界の人口の約半数である40億人が近視になり,世界人口の約1割にあたる9億人が強度の近視に至ると見積もられている.また,多くの疫学研究において,たとえ軽度であっても,近視は緑内障,網膜.離などの合併症の発症リスクを上昇させることが報告されている.スマートフォンやタブレットの頻用など,子供をとりまく生活環境が劇的に変化するなかで,いかに小児の近視の発症と進行を最小限に抑えるかは,喫緊の課題である.わが国における小児の近視の進行抑制を謳う治療法には,明確なエビデンスやコンセンサスが得られていないものも多い.眼鏡処方においても,日本では低矯正が多く行われてきたが,実験近視研究などから,完全矯正を原則とするように勧められている.近視はとくに東アジア諸国に多くみられるが,台湾,シンガポール,中国といった他の諸国では,すでに学童近視を抑制すべく国家的戦略がとられている.台湾では政府の支援により,学校のカリキュラムが改訂され,1日2時間約1,000lux(木陰や建物の陰に相当)が徹底された結果,世界で初めて小児の近視の頻度を減少させることに成功した.こういった各国の近視進行抑制の取り組みは,2019年9月に東京で開催された第17回国際近視学会で紹介され,大きな反響をよんだ.一方,日本では学校保健の現場において屈折度検査,眼軸長測定がなされてきておらず,そのため視力不良の小児の頻度は報告されてきたが,小児の近視の頻度は不明であった.このような背景のもと,文部科学省と日本眼科学会,日本眼科医会,日本近視学会,日本視能訓練士協会の協調のもと,全国複数地域の小学生・中学生を対象に,屈折度・眼軸長測定の調査が行われようとしており,その結果が期待される.小児の近視の急増の原因として,スマートフォンなどの環境因子の変化が重要と考えられる.従来,環境因子を客観的・定量的に測定することは困難であったが,近年,眼鏡に装着するタイプやペンダント型,腕時計型などのITを駆使したさまざまなデバイスが開発されており,環境因子を正確に定量し,改善のためのフィードバックをしようとする試みがなされており注目されている.近視進行抑制治療にも大きな進歩があった.「近視は治療すべき疾患である」ことを示したのは,シンガポールでなされたATOM試験,ATOM2試験であり,0.01%の低濃度アトロピンが近視進行抑制に有効であることを明らかにし注目されることとな*KyokoOhono-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野**YasushiIkuno:いくの眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(1)503

線維柱帯切除術後早期の限局性濾過胞からの房水漏出に対し,結膜縫合に濾過胞再建術を併用することで房水漏出が消失した3例

2020年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(4):493?496,2020?線維柱帯切除術後早期の限局性濾過胞からの房水漏出に対し,結膜縫合に濾過胞再建術を併用することで房水漏出が消失した3例相原佑亮陳進輝木嶋理紀大口剛司新明康弘石田晋北海道大学大学院医学研究院眼科学教室ThreeCasesthatRequiredSurgicalBlebRevisiontoResolveaLeakingBlebafterTrabeculectomyYusukeAihara,ShinkiChin,RikiKijima,TakeshiOhguchi,YasuhiroShinmeiandSusumuIshidaDepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicineandGraduateSchoolofMedicine,HokkaidoUniversityはじめにマイトマイシンC併用線維柱帯切除術(trabeculectomy:LEC)後早期の房水漏出は,低眼圧のみならず,感染症や脈絡膜?離,低眼圧黄斑症,角膜内皮障害などさまざまな合併症の原因となるため,積極的な処置が必要となる.対処法として,自己血清点眼などの保存的療法のほか,結膜縫合などさまざまな観血的治療法が報告されている.術後早期の房水漏出に関しては,術直後で漏出量がごくわずかな自然治癒が期待される症例を除き,結膜縫合による観血的処置を行うことが基本である1).〔別刷請求先〕陳進輝:〒060-8648北海道札幌市北区北14条西5丁目北海道大学大学院医学研究院眼科学教室Reprintrequests:ShinkiChin,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicineandGraduateSchoolofMedicine,HokkaidoUniversity,N-14,W-5,Kita-ku,Sapporo,Hokkaido060-8648,JAPAN図1濾過胞再建術と結膜縫合の併用法症例1に行ったシューレース縫合であるが,症例2と症例3にはブロック縫合を行った.針を用いて行った場合には,①の部位の結膜を穿刺して2%キシロカインを結膜下注射しながら?離していったが,癒着が強く?離できなかった場合には以下のように行った.まず輪部から離れた結膜部を小さく切開し(①),癒着した濾過胞部周囲を円蓋部側までスプリング剪刀で?離した(②),最後は輪部の結膜を10-0ナイロン丸針で結膜縫合を行った(③).しかしながら,術後早期に限局性の濾過胞となって房水漏出がみられる場合,房水を十分に吸収できる機能的な濾過胞とならないためか,単純な結膜縫合のみでは改善せずに治療に苦慮することがある.今回筆者らは,円蓋部基底切開によるLEC術後早期に生じた限局性濾過胞の輪部付近から房水漏出に対し,結膜縫合に濾過胞再建術を併用することで漏出を止めることに成功した3例4眼を経験したので報告する.I症例〔症例1〕37歳,男性.4年前に両眼の原発開放隅角緑内障と診断され点眼治療を行ったが視野障害が進行してきたため,手術目的に北海道大学病院眼科(以下,当院)に紹介となった.入院時視力は右眼0.01(0.5×sph?10.50D(cyl?1.00DAx165°),左眼0.01(0.1×sph?10.25D(cyl?1.75DAx180°),眼圧は右眼21mmHg,左眼19mmHg.視野はHumphrey30-2SITA-standard(Humphrey30-2)にて,右眼が重度視野欠損(MD値?17.16dB),左眼も重度視野欠損(MD値?18.35dB)であった.眼圧日内変動検査にて,右眼19?25mmHg,左眼19?26mmHgと両眼の眼圧上昇が認められたため,両眼にLECを施行した.左眼はLEC後6日目より濾過胞が限局化し,輪部側に虚血性の濾過胞が出現した.術後8日目に輪部から房水漏出がみられたため,同日輪部の結膜を縫合し,0.3%ヒアルロン酸ナトリウム1日6回点眼を開始.術後12日目に0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼を自己血清点眼に変更したが,房水漏出は消失しなかった.術後14日目にはabcd図2限局性濾過胞と輪部からの房水漏出の経過aは症例1の左眼.LEC術後19日目に濾過胞再建術を併用した結膜縫合を行い,房水漏出の再発はなかった.bは症例1の右眼.LEC術後14日目に濾過胞再建術を併用した結膜縫合を行い,房水漏出の再発はなかった.cは症例2.LEC術後18日目に濾過胞再建術を併用した結膜縫合を行い,房水漏出の再発はなかった.dは症例3.LEC術後14日目に濾過胞再建術を併用した結膜縫合を行い,その後は房水漏出の再発はなかった(術後4日目のoozingによる房水漏出は,輪部から離れたブレブの中央部分であり,図から省いた).図3症例1の右眼の濾過胞再建術併用結膜縫合術前の濾過胞(a)と術後1日目の濾過胞(b)濾過胞再建術併用結膜縫合術前には,虚血部を伴う限局性の濾過胞を認め,周囲の結膜は充血し,輪部結膜からの房水漏出を認めた.術後はびまん性の濾過胞が形成され房水漏出は消失した.輪部に縫合を追加したが房水漏出は改善しなかった.術後19日目にスプリング剪刀を用いた濾過胞再建術を併用した輪部の結膜縫合を行ったところ(図1),びまん性の濾過胞が形成され,房水漏出は停止した(図2a).右眼は左眼と同様な経過をたどり,LEC後7日目より,輪部に接する部分に虚血部を伴う限局性の濾過胞となった.術後13日目には輪部結膜から房水漏出が出現したため自己血清点眼1日6回を開始した(図3).しかしながら,術後14日目になっても房水漏出に改善がみられず,眼圧も18mmHgに上昇したため,スプリング剪刀を用いた濾過胞再建術を併用した輪部結膜縫合を行った.その後はびまん性の濾過胞を形成して虚血部位は消失し,房水漏出は消失した(図2b,3).〔症例2〕63歳,男性.6年前に両眼の原発開放隅角緑内障と診断されて点眼治療が行われていたが,右眼の視野進行を認めたため,手術目的にて紹介となった.入院時視力は,右眼0.04(0.5×sph?6.50D(cyl?1.00DAx155°),左眼0.09(0.3×sph?1.50D(cyl?3.00DAx90°),眼圧は右眼20mmHg,左眼20mmHg.視野はHumphrey30-2にて右眼は重度視野欠損(MD値?13.73),左眼は早期視野欠損(MD値?5.88)がみられた.眼圧日内変動検査にて,右眼17?20mmHg,左眼17?19mmHgであったが,右眼は重度視野欠損であり,かつ視野進行が認められたため,LECを行った.LEC後12日目に輪部に接した部分が虚血性となって濾過胞が限局化し,輪部側からの房水漏出がみられた.房水漏出は軽微であったため,0.1%ベタメタゾン点眼を中止して0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼を1日6回開始した.術後13日目になっても房水漏出に改善がないため,自己血清点眼1日6回に変更した.術後15日目も房水漏出が続いていたため,輪部結膜に縫合を行い,0.1%ベタメタゾン点眼右眼1日6回を再開,自己血清点眼を終了した.しかし,術後17日目になって,輪部結膜からの房水漏出が再発したため,術後18日目にスプリング剪刀を用いた濾過胞再建術を併用した輪部結膜の縫合を行った.その後はびまん性の濾過胞が形成され,虚血部位が消失して房水漏出もなくなった(図2c).〔症例3〕78歳,女性.両眼の原発開放隅角緑内障の診断で約20年前から点眼治療が開始され,7年前に右眼のLECが施行されていた.今回は右眼視野が進行したため,手術目的にて当院紹介となった.視力は右眼0.2(0.2×sph+0.25D(cyl?1.00DAx110°),左眼0.01(0.02×sph+2.00D).眼圧は右眼15mmHg,左眼16mmHg.Goldmann動的視野検査にて,右眼は湖崎分類III-b,左眼は湖崎分類V-bであった.眼圧日内変動検査にて右眼15?22mmHg,左眼16?27mmHgと両眼とも眼圧上昇が認められたため,両眼にLECを施行した.左眼はLEC後とくに問題なく経過した.右眼のLECは,前回行われた上耳側を避けて上鼻側に行った.LEC術後4日目に角膜輪部から離れたブレブ中央の菲薄部分からoozingが出現したため,1日4回点眼していた0.1%ベタメタゾンを中止し,0.3%ヒアルロン酸ナトリウムを1日6回開始したところ,翌日には房水漏出は停止した.術後6日目には0.1%ベタメタゾン点眼を1日4回で再開した.術後12日目に限局性となった濾過胞の輪部側から房水漏出が出現したため,結膜縫合を行った.翌日には房水漏出は停止し0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼を中止としたが,術後14日目に再び輪部より房水漏出が出現したため,25G鋭針を用いた濾過胞再建術を併用した輪部結膜の縫合を行った.その後はびまん性の濾過胞を形成し,房水漏出は停止した.(図2d).II考按一般に,円蓋部基底結膜切開によるLECの早期合併症の一つとして輪部付近からの房水漏出があり2),輪部結膜切開創に対するさまざまな縫合法が考案されてきた1,3).LEC術後,濾過胞周囲に癒着が生じるのに伴い,局所的な濾過胞となって濾過機能を失い,眼圧上昇を伴う場合がある4).このような濾過胞に対し行う濾過胞再建術として,鋭針やナイフなどを用いて結膜?強膜間の瘢痕癒着を解除し,結膜下腔への房水の流れを回復させる手法があり4),さらなる緑内障手術を回避するために有効な手段とされる5).LEC術後早期の段階で限局性の濾過胞となってしまい,輪部結膜からの房水漏出が生じた際に,通常の結膜縫合だけでは改善せず,房水漏出を繰り返す症例をしばしば経験する.このような症例では,濾過胞が限局化したことにより,濾過胞内の前房水による圧力負荷が高くなっているものと推察される.その結果として結膜が伸展され,圧力の低い結膜の細血管や毛細血管が虚脱2),虚血性の濾過胞様の所見になっているのではないかと考えられる6).今回筆者らは,結膜縫合のみでは房水漏出を止められなかった症例に対して,濾過胞再建術を併用することで房水漏出を止めることに成功した.癒着が強く,針では解除できない症例に対しては,先端の細いスプリング剪刀を用いて行った.房水漏出直前の平均眼圧は7.0±2.5mmHg(4?11mmHg)であり,眼圧が上昇しはじめた頃に漏出が起こっている(図2).漏出が起こったのは術後平均11.3±1.6日目(8?13日)であり,いずれも濾過胞の限局化が生じてから1週間以内に発生していた.このことから,創傷治癒に伴う限局化によって起こる濾過胞機能低下と濾過胞内圧の上昇が,漏出に関与している可能性が示唆された.また,漏出が止まったときの平均眼圧は10.0±3.5mmHg(3?16mmHg)であり,症例2を除き,縫合前より上昇した症例はみられなかった.これは結膜縫合に併用した濾過胞再建による機能性濾過効果と考えられる.さらに,この眼圧下降に加え,濾過胞周囲の癒着を?離したことにより,限局化して輪部方向へ集中していた水圧が減圧され,その結果,水圧によって生じていた縫合不全が起こらず,創部は上皮化され房水漏出の停止に至ったと考えられた.症例2で濾過胞再建術併用後の眼圧下降が小さかったのは(図2c),外見上びまん性の機能性濾過胞様にみえても,内部の瘢痕化や肉芽形成などにより機能性濾過胞効果が低下7)していた可能性がある.また,濾過胞再建術併用後に濾過胞の虚血部位が消失した理由としては,前述のような濾過胞内圧の上昇によって一過性に虚脱した結膜の細血管や毛細血管が,濾過胞再建によってびまん性の濾過胞となり,局所性にかかる圧力が低下したことによって結膜血管が復元した結果と推測された.今回,術後早期の限局化した濾過胞の輪部からの房水漏出に対して濾過胞再建術を併用した結膜縫合を行った結果,房水漏出を止めることができた.一方,症例1の右眼に関しては,房水漏出を繰り返した左眼と同様の経過をたどり房水漏出に至ったため,結膜縫合を単独で行うことなく初めから濾過胞再建術を併用し,良好な結果を得た.術後早期の限局化した濾過胞からの房水漏出で,濾過胞内の圧力負荷がその一因と疑われる症例では,結膜縫合を縫合する際に,初めから濾過胞内圧を下げる濾過胞再建術を併用した結膜縫合をすべきであると考えられた.文献1)陳進輝:トラベクレクトミー術後の房水漏出について.FrontiersinGlaucoma54:172-176,20172)相原一:線維柱帯切除術における切開部位と創傷治癒の検討.FrontiersinGlaucoma7:226-232,20063)庄司信行:結膜切開方法による違いは?緑内障(根木昭,相原一編),眼手術学6,97-99,文光堂,20124)LinS,BylesD,SmithM:Long-termoutcomeofmitomy-cinC-augmentedneedlerevisionoftrabeculectomyblebsforlatetrabeculectomyfailure.Eye(Lond)32:1893-1899,20185)AminiH,EsmailiA,ZareiRetal:O?ce-basedslit-lampneedlerevisionwithadjunctivemitomycin-Cforlatefailedorencapsulated?lteringblebs.MiddleEastAfrJOphthal-mol19:216-221,20126)HirookaK,MizoteM,BabaTetal:Riskfactorsfordevel-opingavascular?lteringblebafterfornix-basedtrabecu-lectomywithmitomycinC.JGlaucoma18:301-304,20097)金本尚志:濾過胞維持─増殖・瘢痕抑制のための試み.眼科手術21:179-184,2008◆**

原発閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術の角膜内皮細胞に及ぼす長期的影響

2020年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(4):490.492,2020c原発閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術の角膜内皮細胞に及ぼす長期的影響窪倉真樹子中元兼二白鳥宙髙野靖子高橋浩日本医科大学眼科学教室CLong-TermE.ectofLaserIridotomyonCornealEndothelialCellDensityinCasesofPrimaryAngle-ClosureGlaucomaMakikoKubokura,KenjiNakamoto,NakaShiratori,YasukoTakanoandHiroshiTakahashiCDepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchoolC日本医科大学付属病院緑内障外来を受診した患者のうち,原発閉塞隅角症(PAC)および原発閉塞隅角緑内障(PACG)患者を対象に,レーザー虹彩切開術(LI)による角膜内皮細胞密度(CD)への影響を調べた.CD減少率を目的変数,LI施行日から最終CCD検査日までの期間(観察期間)を説明変数として回帰分析を行った.PAC(G)患者は15例26眼(男性3例5眼,女性12例21眼),年齢64±12歳,LI施行日からの観察期間はC34.5±15.7月であった.CDはCLI:治療前C2,810±173個/mm2,治療後C2,682±197個/mm2で有意に減少していた(p=0.02).CD減少率と観察期間との間に有意な正の関係があった(CD減少率=.0.4+0.1×観察期間(月),p=0.046,r2=0.16).PAC(G)に対する予防的CLIでは,CDは年間C1.6%減少し,約C40年間で半減すると予測された.CWeevaluatedthee.ectoflaseriridotomy(LI)oncornealendothelialcelldensity(ECD)inprimaryangle-clo-sureandprimaryangle-closureglaucomapatients.Thesubjectswere26eyesof15cases(male:3cases,5eyes;female:12Ccases,C21eyes).CTheCmeanCpatientCageCwasC64±12Cyears,CandCtheCmeanCfollow-upCperiodCwasC34.5±15.7months.ThemeancornealECDsigni.cantlydecreasedfrom2,810±173Ccells/mm2CpreLIto2,682±197Ccells/Cmm2CpostLI(p=0.02).Asigni.cantcorrelationwasfoundbetweentherateofcornealECDreductionandlengthofthepostoperativeobservationperiod(p=0.046).CornealECDwasestimatedtodecrease1.6%peryearpostLI,withanestimatedlossof50-percentat40-yearspostoperative.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):490.492,C2020〕Keywords:原発閉塞隅角症,原発閉塞隅角緑内障,レーザー虹彩切開術,角膜内皮細胞,長期的影響.primaryCangleclosure,primaryangleclosureglaucoma,laseriridotomy,cornealendothelialcell,long-terme.ect.Cはじめに緑内障はわが国の中途失明原因の第一位であるが1),原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureglaucoma:PACG)は原発開放隅角緑内障に比し数倍失明率が高く2),臨床上注意を要する緑内障病型である.また,原発閉塞隅角症(pri-maryangleclosure:PAC)は無治療で経過観察すると,5年以内にC22%がCPACGに移行することが報告されており3),PACG発症予防のため外科的治療が必要である.わが国における緑内障の治療指針を示した緑内障診療ガイドライン第4版では,瞳孔ブロックによるCPACおよびCPACGに対しては,レーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)または水晶体再建術が標準治療となっている4).LIは外来で簡便に瞳孔ブロックを解除できるので有用な治療法であるが,術後長期を経て発症する水疱性角膜症の合併はいまだ皆無ではない5.7).今回,筆者らは日本医科大学付属病院眼科(以下,当科)における急性緑内障発作の既往のないCPACおよびCPACGに対するCLIが角膜内皮細胞に及ぼす影響を後ろ向きに検討し,角膜内皮障害への長期的影響が予測できたので報告する.〔別刷請求先〕窪倉真樹子:〒113-8603東京都文京区千駄木C1-1-5日本医科大学眼科学教室Reprintrequests:MakikoKubokura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,1-1-5Sendagi,Bunkyo-ku,Tokyo113-8603,JAPANC490(114)0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(114)C4900910-1810/20/\100/頁/JCOPY3,5003,000LI後細胞密度(個/mm2)LI後眼圧(mmHg)151052,500005101520LI前眼圧(mmHg)図1LI前後の眼圧変化眼圧はCLI前後で有意差はなかった(p=0.60).C1510500102030405060702,0002,0002,5003,0003,50025LI前細胞密度(個/mm2)図2LI前後の角膜内皮細胞密度の変化角膜内皮細胞密度はCLI施行後にC129C±136個/mmC2有意に減少していた(p=0.02).しているものとした.LIの術式は全例アルゴンレーザー・Nd:YAGレーザー法であった.アルゴンレーザー(グリーン)で穿孔予定部位周囲を照射し虹彩を伸展菲薄化後,Nd:YAGレーザーで穿孔した.それぞれのレーザー設定と照射数は,アルゴンレーザーにて第一段階としてC200Cμm,0.2秒,200CmWでC4発,第二段階としてC50Cμm,0.02秒,1,000CmWでC10.20発したのち,Nd:YAGレーザーにてC1.5CmJで1.2発照射とし,全例この範囲で施行した.CD減少率(%)-5観察期間(月)図3CD減少率と観察期間との関係CD減少率と観察期間との間に有意な正の関係があった(CD減少率=0.4+0.1×観察期間(月),rC2=0.16,Cp=0.046).CI対象および方法2016年C6月.2016年C11月に当科を受診した患者のうち,緑内障専門医(K.N.)が施行した予防的CLI後のCPACおよびPACG患者を対象とした.内訳は,年齢(平均値C±標準偏差)C64±12歳(39.78歳),男性C3例(5眼),女性C12例(21眼)のC15例C26眼であった.病型の内訳は,PACがC11例C19眼,PACGがC4例C7眼であった.選択基準は,LI前後に角膜内皮細胞測定が行われているものとした.除外基準は,内眼手術の既往,滴状角膜,Fuchs角膜内皮ジストロフィなど,緑内障以外の眼疾患を有するものとした.PACおよびCPACGの診断は,LI術前のカルテ所見より行った.緑内障診療ガイドライン4)に準じて,PACは,原発隅角閉塞によって眼圧上昇(少なくともC20CmmHgをC1回でも超える)をきたしている,もしくは周辺虹彩前癒着があるが緑内障性視神経症がないものとした.PACGはCPACに緑内障性視神経症を有角膜内皮細胞はスペキュラマイクロスコープCSP-2000P(トプコン)を用いて測定し,角膜中央部のデータを解析に用いた.視力,眼圧,角膜内皮細胞密度(celldensity:CD)(個/Cmm2)をCLI前後で比較した(WilcoxonCsigned-ranktest).また,CD減少率を[(LI前CCD-最終観察時CCD)/LI前CCD]C×100(%)として算出し,目的変数をCCD減少率,説明変数をCLI施行日から最終角膜内皮細胞検査日までの期間(観察期間)として,直線回帰分析を行った.統計解析は,JMP8(SASInstitute社)を用いて,有意水準p<0.05(両側検定)で検定した.CII結果1.視力(logMAR)および眼圧の変化視力については,LI前後で視力測定が行われていたC15例24眼で検討した.LI前(平均値C±標準誤差):.0.06±0.04(.0.08.0),LI後:0.02C±0.20(C.0.08.0.7)(p=0.03)であり,白内障進行により有意に低下した.また,眼圧の検討では,LI前:13.8C±3.8CmmHg(7.5.21CmmHg),LI後:C13.5±3.7CmmHg(8.21CmmHg)であり,LI前後に有意差はなかった(p=0.60,図1).C2.CDの変化およびCD減少率と観察期間との関係観察期間はC34.5C±15.7月であった.角膜内皮細胞数はCLI前:2,810C±173/mm2,LI後:2,682C±197mm2であり,LI(115)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020C491施行後にC129C±136個/mmC2有意に減少していた(p=0.02,図2).また,目的変数をCCD減少率(%),説明変数を観察期間(月)として直線回帰分析を行ったところ,両者に有意な正の関係があった〔CD減少率=0.4+0.1×観察期間(月),Cr2=0.16,Cp=0.046,図3〕.CIII考按今回,アルゴンレーザー・Nd:YAGレーザー法によるLIが施行されたCPACおよびCPACG患者を対象に,LIの角膜内皮細胞への影響について後ろ向きに検討したところ,LI後のCCD減少率はC1.6%/年であり,加齢によるCCD減少率は0.3.0.7%/年8)に比し早かった.また,これは同様の検討をした宇高らの報告9)におけるCCD減少率C1%/年より早かった.本検討の結果から算出すると,CDはCLI施行後約C40年間で半減することがわかった.ただし,回帰式の決定係数はCr2=0.16と低く,回帰式の精度の問題がある.PACGにおけるCLI後では,通常,眼圧は有意に下降することが多いが10),今回の検討では有意な眼圧下降はなかった.この原因として,対象にCPACGの割合が少ないこと,治療前に眼圧下降薬が使用されている症例が含まれていることなどが考えられる.本検討の問題点および限界としては,①CCDがCLI前後で1回ずつしか測定されていないため,測定値の精度が低い可能性があること,②大学病院での後ろ向き研究のため,通院困難などの理由で近医に転院した症例が多く,結果として症例数が少ないこと,③今回対象から除外された症例のなかには,LIではなく水晶体再建術が施行されたものも多く,とくに隅角閉塞機序に水晶体因子の影響が強い症例などは除外されている可能性が高いこと,などがあげられる.最近,白内障のないCPACおよびCPACGを対象としたCLIと水晶体再建術の前向き比較試験(EAGLEstudy)10)の結果が報告され,水晶体再建術のほうが,LIより生活の質,経済面および眼圧コントロールにおいて優れていることが高いエビデンス・レベルで実証された.そのため,最近ではPACおよびCPACGにおける第一選択は水晶体再建術となりつつある11).しかし,PACおよびCPACGに対する水晶体再建術は通常の手術に比し手術難易度が高いため,術中合併症のリスクがより高くなることが知られている4).元来,水晶体再建術でもCCDは減少し,ときに水疱性角膜症もきたしうるという問題もある5).ただし,角膜内皮細胞の再生医療の進歩は目覚ましく12),将来は,LIによるものも含めて水疱性角膜症が現在ほど重篤な合併症の扱いではなくなる可能性がある.今回の結果からCPACおよびCPACGに対するCLIによって,CD減少率は年間C1.6%/年減少し,CDはCLI後約C40年間で半減すると予測された.LIは簡便で瞳孔ブロック解除に有用な治療法であるが,現時点では年齢およびCLI前のCCDを考慮して慎重に適応を決める必要がある.文献1)白神史雄:厚生労働科学研究研究費補助金,難治性疾患克服研究事業2)QuigleyCHA,CBromanAT:TheCnumberCofCpeopleCwithCglaucomaCworldwideCinC2010CandC2020.CBrCJCOphthalmolC90:262-267,C20063)ThomasCR,CParikhCR,CMuliyilCJCetal:Five-yearCriskCofCprogressionofprimaryangleclosuretoprimaryangleclo-sureglaucoma:ACpopulation-basedCstudy.CActaCOphthal-molScandC81:480-485,C20034)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌C122:5-53,C20185)ShimazakiJ,AmanoS,UnoTetal:NationalsurveryonbullouskeratopathyinJapan.CorneaC26:274-278,C20076)SchwartzAL,MartinNF,WeberPAetal:Cornealdecom-pensationCafterCargonClaserCiridectomy.CArchCOphthalmolC106:1572-1574,C19887)LimLS,HoCL,AngLPetal:Inferiorcornealdecompen-sationfollowinglaserperipheraliridotomyinthesuperioriris.AmJOphthalmolC142:166-168,C20068)天野史郎:正常者の角膜内皮細胞.あたらしい眼科C26:C147-152,C20099)宇高靖,横内裕敬,木本龍太ほか:レーザー虹彩切開術が角膜内皮細胞密度に与える長期的影響.あたらしい眼科C28:553-557,C201110)Azuara-BlancoCA,CBurrCJ,CRamsayCCCetal:E.ectivenessCofCearlyClensCextractionCforCtheCtreatmentCofCprimaryangle-closureCglaucoma(EAGLE):aCrandomisedCcon-trolledtrial.LancetC388:1389-1397,C201611)KimCYY,CJungHR:ComparisonCofC2007-2012CKoreanCtrendsinlaserperipheraliridotomyandcataractsurgeryrates.JpnJOphthalmolC58:40-46,C201412)KinoshitaCS,CKoizumiCN,CUenoCMCetal:InjectionCofCcul-turedcellswithaROCKinhibitorforbullouskeratopathy.NEnglJMedC378:995-1003,C2018***(116)

感受性からみた年齢別眼科領域抗菌薬選択2018

2020年4月30日 木曜日

感受性からみた年齢別眼科領域抗菌薬選択2018加茂純子*1村松志保*2赤澤博美*2阿部水穂*2*1甲府共立病院眼科*2甲府共立病院細菌検査室CRecommendationofAntibioticsfortheEyebyAgeGroupin2018BasedonMicroorganismSensitivityJunkoKamo1),ShihoMuramatsu2),HiromiAkazawa2)andMizuhoAbe2)1)DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,2)DepartmentofBacterialLaboratory,KofuKyoritsuHospitalC目的:今回筆者らは既存抗菌点眼と比べ,わが国で新しく発売予定の強粘性により薬剤の滞留性を高めたマクロライド系の抗菌点眼薬アジスロマイシン(AZM)が結膜炎の眼脂培養で得られた細菌への感受性を年代別に調べた.方法:当院で採用している抗菌薬のセフメノキシム(CMX),ジベカシン(DKB),クロラムフェニコール(CP),バンコマイシン(VCM),オフロキサシン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシン(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)に加え,AZMのディスクを用い感受性を調べた.対象:2016年C12月C1日.2018年C6月C30日に甲府共立病院,甲府共立診療所眼科外来に結膜炎,角膜炎で訪れた患者C246人(男C131,女115)から採取されたC630の菌,平均年齢はC53歳±38.歳(0.99歳).結果:1位CCorynebacterium,2位CCNS,3位CNS-MRS,4位Ca-Hemolytic-streptococcus,5位CStaphylococcusaureus.上位菌種にはCCMX,CP,VCMが強い.AZMに対する感受性がC80%以上なのはCS.aureus,Haemophilusin.uenzae,MoraxellaCsp.のみであった.AZMはCNS-MRSに対してはキノロン系よりは強いがCCMX,CP,VCMには劣る.CMXに対する感受性はCMRSA,Pseudo-monasaeruginosa以外の上位C14種の細菌は感受性C80%以上であった.MRSAに有効なのはCCPとCVCMであった.結論:AZMはCS.aureus,H.in.uenzae,MoraxellaCsp.にはC80%以上の有効性を示すが,既存の抗菌薬と比べてとくに高いわけではない.あくまでもCinvitroの結果であり,invivoでは粘弾性で結果は変わる可能性はある.CMXはMRSA,P.aeruginosa以外は感受性よく,結膜炎のファーストチョイスといえる.CPurpose:WeCinvestigatedCtheCsensitivityCofazithromycin(AZM)macrolideCantimicrobialCeyeCdrops,CwhichChaveanenhanceddrugretentionduetostrongviscosity,tobacteriaobtainedineyedischargeculturesofconjunc-tivitiscomparedwithexistingantimicrobialeyedrops.Methods:Thisstudyinvolved630bacteriasamplescollect-edfrom246patients[meanage:53years(range:0-99years)]whopresentedwithconjunctivitisandkeratitisattheDepartmentofOphthalmologyOutpatientClinicatKofuKyoritsufromDecember1,2016toJune30,2018.InadditiontotheantimicrobialagentsCMX,DKB,CP,VCM,OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,andMFLX,whichhadbeenadoptedforuseinourhospital,thesensitivitywasexaminedwithadiskofAZM.Results:Themostcom-monlyCfoundCbacteriumCwasCCorynebacterium,CwithCtheCsecondCbeingCCNSCandCtheCthirdCbeingCNS-MRS;CMX,CCP,andVCMwerestrongagainstthefrequentlyoccurringbacteria.AZMwasstrongagainstStaphylococcusCaure-us,CHaemophilusCin.uenzae,andMoraxellaCsp.CForCCNS-MRS,CAZMCwasCstrongerCthanCquinolones,CbutCinferiorCtoCCMX,CP,andVCM.AZMwasweakagainstCPseudomonasaeruginosa.CConclusions:Althoughtheviscoelasticprop-ertiesofAZMmayhavealteredtheresults,CMXremainedthe.rst-choiceantimicrobialagentforconjunctivitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):484.489,C2020〕Keywords:結膜炎,角膜炎,抗菌薬点眼,感受性率.conjunctivitis,keratitis,antibioticeyedrops,susceptibility.〔別刷請求先〕加茂純子:〒400-0034山梨県甲府市宝C1-9-1甲府共立病院眼科Reprintrequests:JunkoKamo,M.D.,KofuKyoritsuHospital,1-9-1Takara,Kofu,Yamanashi400-0034,JAPANC484(108)2019年に承認されたアジスロマイシン点眼1,2)はマクロライド系の抗菌点眼薬で,DuraSite,DuraSite21)による強粘性により薬剤の滞留性を高め,点眼回数の減少をはかっている.筆者らは,結膜炎の眼脂培養から出た菌について,薬剤感受性からみた眼科領域の抗菌薬選択をC2006年3),患者の年齢別にはC2007年4),2009年5)にも検討し,抗菌薬の感受性率の変化はC2014年6)にも検討している.今回筆者らはアジスロマイシンと既存のキノロン系,セフメノキシム,アミノグリコシド,クロラムフェニコールやバンコマイシンと比べて細菌への有効性を調べた.また,既報と患者の年齢別の検出菌,感受性率も比較も検討した.CI対象および方法前向きに結膜炎,角膜炎における起炎菌につき,下記C10種の薬剤についてディスクで感受性を調べ,年齢別に検討した.本研究は甲府共立病院倫理委員会から承認を得ている.市場に流通しているセフメノキシム(CMX),ジベカシン(DKB),クロラムフェニコール(CP),バンコマイシン(VCM),キノロン系C5種類〔オフロキサン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシ(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)〕,そしてアジスロマイシン(AZM)である.表1に略号と商品名,ジェネリックを示した.2016年C12月C1日.2018年6月C30日に甲府共立病院および診療所眼科外来に結膜炎,角膜炎で訪れた患者C246人(男131,女C115),平均年齢はC52.9C±38.1歳(0.99歳)から採取されたC630株の菌種を対象とした.角膜炎・結膜炎患者の眼脂を輸送用培地付き綿棒(シードスワブ)で採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室でヒツジ血液寒天培地,ドリガルスキー培地,ガム半流動培地でC48時間培養し,その後同定および薬剤感受性試験を行った.角膜炎・結膜炎患者の眼脂を輸送用培地付き綿棒(シードスワブ)で採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室でヒツジ血液寒天培地,ドリガルスキー培地,ガム半流動培地,ガム寒天培地,チョコレート寒天培地でC48時間培養し,その後同定およびCKBディスク(栄研化学)を用い薬剤感受性試験を行った.感受性はCS/(SC+I+R)×100%で計算した.S:Sensitive,I:Intermediate,R:Resistanceである.2006年とC2008年4,5)に行った研究と同様,全体とC1歳未満,1.15歳,16.64歳,65歳以上に分けて感受性率を検討した.CII結果表2に検出菌の割合を示す.全体の検出菌で一番多いのがC1.CorynebacteriumCsp.146株(23.2%)で,以下,2.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativeCStaphylococ-cus:CNS)でC111株(17.6%),3.CNS-MRS(methicillin-resistanceStaphylococcus)59株(9.4%),4.a-Hemolytic-Streptococcus(以下Ca-Hem-Streptococcus)59株(9.4%),5.Staphylococcusaureus(以下CS.aureus)43株(6.8%),6.CMethicillin-resistanceStaphylococcusaureus(MRSA)28株(4.4%),7.Haemophilusin.uenzae(以下CH.in.uenzae)30株(4.8%),8.Moraxellacatarrhalis(以下CM.catarrhalis)13株(2.1%),9.未同定グラム陽性球菌C12株(1.9%),10.CNeisseriaCsp.10株(1.6%),11.嫌気性グラム陰性菌C10株(1.6%),12.CMoraxellaCsp.8株(1.3%),13.B群Ca型CStrep-表1検討した薬剤の略号と一般名および代表的な薬品名とジェネリック(2019.7月現在)一般名おもな商品名ジェネリックCCMXセフメノキシム塩酸塩ベストロン点眼用C0.5%なしCCPクロラムフェニコールクロラムフェニコール点眼用C0.5%オフサロン点眼コリナコール点眼CVCMバンコマイシンバンコマイシン眼軟膏なしCDKB硫酸ジベカシンパニマイシン点なしCAZMアジスロマイシンアジマイマイシン点眼(2C019.6承認)COFLXオフロキサシンタリビッド点・軟膏点眼後発品:1C3種眼軟膏後発品:1種CLVFXレボフロキサシン水和物クラビッド点眼点眼C0.5%後発品:1C9種点眼C1.5%後発品:2C0種CTFLXトスフロキサシントスフロ点眼液C0.3%オゼックス点眼液CGFLXガチフロキサシン水和物ガチフロ点眼なしCMFLX塩酸モキシフロキサシンベガモックス点眼なし順位.菌種株数%C1.CorynebacteriumCspecies(sp.)C146C23.2C2.CoaglaseNegativeStaphylococci(CNS)C111C17.6C3.CNSmethicillinresistanceStaphylococci(MRS)C59C9.4C4.a-Hemolytic-Streptococcus(Ca-Hem-streptococcus)C59C9.4C5.Staphylococcusaureus(S.aureus)C43C6.8C6.S.CaureusCmethicillinCresistanceCStaphylococcusAureus(MRSA)C28C4.4C7.Haemophilusin.uenzae(H.in.uenzae)C30C4.8C8.Moraxellacatarrhalis(M.catarrhalis)C13C2.1C9.未同定グラム陽性球菌C12C1.910.CNeisseriaCspecies(sp.)C10C1.6C11.嫌気性グラム陽性球菌C10C1.6C12.CMoraxellaCsp.C8C1.313.CB群Cb型CStreptococcusC8C1.314.CPseudomonasaeruginosa(P.aeruginosa)C7C1.115.CHaemophilusparain.uenzae(H.parain.uenzae)C6C1.016.CG群Cb型CStreptococcusC5C0.8C17.ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌C6C1.0C順位.菌種株数%18.CStreptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)C5C0.8C19.CPropiunibacteriumacnes(P.acnes)C5C0.8C20.グラム陽性球菌(微好気)C5C0.8C21.CYeastCsp.C5C0.8C22.CEnterococcusCsp.C3C0.5C23.CHemophilusparahaemolyticus(H.Cparahaemo-3C0.5lyticus)C24.Cnon-hemolyticstreptococcusC3C0.525.CStenotrophomonasmaltophilia(S.maltophilia)C3C0.526.CA群Cb型CStreptococcusC2C0.327.CCitrobacterkoseri(C.koseri)C2C0.328.CKlebsiellapneumoniae(K.pneumoniae)C2C0.329.CClostridiumperfringens(C.perfringens)C2C0.330.CStreptococcusmilleriCgroup(S.millerigrp)C2C0.3その他C27C4.3合計C630Ctococcus8株(1.3%),14.PseudomonasaeruginosaC7株(1.1%)と続く.表3は全年齢における上位菌種の感受性がC80%以上のものをグレー背景にした.以前からわかっていたようにMRSAにはCCPとCVCMのみが強く,CMXは多くの菌に感受性がある一方で第C4世代も含めてキノロン系は1,2,3位の菌に弱くなってきている.AZMはCS.Caureus,CH.Cin.uen-zae,未同定グラム陽性菌には強いものの,キノロンには劣る.以下年齢別に検出割合の高い菌を取りあげ,それらに有効な抗菌薬をみてみる.C1.0歳の細菌と感受性率(表4)全C126株のうちもっとも多く検出された細菌は上位からCNS36株,ついでCa溶血性連鎖球菌C26株,H.Cin.uenzae13株,Corynebacterium属12株,S.aureus7株,MRSA4株,NeisseriaCsp.4株,グラム陽性球菌(微好気)4株,M.catarrhalis3株,S.Cpneumoniae3株である.80%の感受性を示すものを有効と定義すれば,上位の菌に有効なのはCMXのみであった.VCM,CPはCMRSAがあるときのみ使う.C2.1~15歳の細菌と感受性率(表5)全C75株のうちもっとも多く検出された細菌はCH.Cin.uenzae16株,ついでCa溶血性連鎖球菌C12株,CNS10株,Coryne-bacterium6株,M.Ccatarrhalis6株,Neisseriasp.6株,CMoraxella5株,CNSMRS3株,S.aureus3株,MRS2株である.上位C5種類に関していえばCCMX,TFLX,GFLX,MLFXが有効である.VCMはCH.in.uenzaeに無効である.3.16~64歳の細菌と感受性率(表6)全C57株のうちもっとも多く検出された細菌はCCNS14株,ついでCCorynebacterium6株C,CNSMRS6株,嫌気性グラム陽性球菌C4株,EnterococcusCsp.2株であった.上位C5菌種にはCCMX,CP,VCMが有効である.キノロン系は残念ながらC80%未満となっている.C4.65歳以上の細菌と感受性率(表7)全C368株のうちもっとも多く検出された細菌はCCoryne-bacterium30.7株,CNS19.6株,CNS-MRS7.6株,S.aureus6.5株,MRSA6.3株.Ca溶血連鎖球菌C5.2%,B群Ca型CStreptococcus8株,嫌気性グラム陽性球菌C6株であった.1位のCCorynebacteriumに有効なのはCVCMのみであるが,軟膏はオーファンドラッグであり,MRSA存在下のみにしか使えない.4位まではCCMXが有効であるが,CPはC8位の嫌気性菌まで有効である.C5.結果まとめ高齢者では検出数でCCorynebacteriumがC1位となった.2008年の筆者らの施設にはなかったCCNS-MRSが台頭してきている.上位菌種にはCCMX,CP,VCMが強い.AZMが強いのは小児に多いCH.in.uenzae,S.aureus,未同定グラム陽性球菌,MoraxellaCsp.でCCNSMRSに対してはキノロン系よりは強いがCCMX,CP,VCMには劣る.AZMはCP.aeruginosaには弱い.キノロン系薬のなかでは第C4世代のキノロンであるCGFLXとCMFLXの有効性が落ちて他の世代とほとんど変わりなくなってきている4,5).CMXはCCory-nebacteriumにも強く,結膜炎のファーストチョイスにすることができる.CMXCCPCVCMCDKBCAZMCOFLXCLVFXCTFLXCGFLXCMFLXC薬剤菌種(株数)C1.Corynebacterium(146)C2.CNS(111)C3.CNSMRS(59)C4.a-Hem-streptococcus(59)C5.S.aureus(43)C6.MRSA(30)C7.H.in.uenzae(28)C8.M.catarrhalis(13)C9.未同定グラム陽性球菌(12)10.CNeisseriasp.(10)C11.嫌気性グラム陽性球菌(10)12.CMoraxellasp.(8)13.CB群Cb型CStreptococcus(8)14.CP.aeruginosa(7)グレイ背景はC80%以上の感受性.CNS:coagulaseCnegativeCStaphylococci,MRS:methicillinCresistanceStaphylococcusCspecies,MRSA:methicillinCresis-tanceStaphylococcusaureus,P.aeruginosa:Pseudomonasaeruginosa.表40歳における上位検出菌に対する感受性率(%)表51~15歳における上位検出菌に対する感受性率(%)表765歳以上における上位検出菌に対する感受性率(%)III考察アジスロマイシン点眼は小児も含め結膜炎の治療薬としてはファーストチョイスとはなりえない.しかし,上記研究はあくまでもCinvitroの結果であり,DuraSiteによる眼表面での滞留がよければ,薬剤感受性試験でCI,Rと判定された菌に対しても,効果があることもあるかもしれない.アジスロマイシン点眼の細菌に関する感受性の論文を調べると,Daveらによれば,フルオロキノロン系薬またはアジスロマイシンに繰り返しさらされる結膜性表皮ブドウ球菌は,急速に耐性を発現する.他の抗生物質に対する共耐性も観察したと報告している.Kimら10)によれば硝子体注射前にフルオロキノロン系薬に繰り返し曝露された眼から培養されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は,旧世代(p=.002)および新世代(p<.01)のフルオロキノロン系薬に対する耐性率の有意な増加を示した.対照的に,アジスロマイシンに曝露された眼から分離されたCCNSは,マクロライド系薬に対する抵抗性の有意な増加(95%;p<.001)と,旧世代(p=.03)および新世代(p<.001)フルオロキノロン系薬に対する抵抗性の低下を示した.治療を受けた眼から分離されたCCNSの多剤耐性に有意な増加があり,分離株のC81.8%およびC67.5%がそれぞれ少なくともC3種(p=.01)および少なくともC5種(p=.009)の抗菌薬に耐性であったと述べている.筆者らの施設では抗菌薬を漫然と使うことはなく,結膜炎でもC1週間以上しても治らない場合には,細菌培養に従って,感受性のある点眼に変えている.硝子体注射後の抗菌薬はC1週間,白内障術後の抗菌薬点眼もC1カ月以内に終了しているにもかかわらず,2008年当時にはCCNSがトップだったものが,Corynebacterium種が一位となり,CNS-MRSが出てきている.これは世間の細菌全体が変化していることを示唆している.2008年の筆者らの論文5)と各年代の傾向を考察する.1歳未満について:上位C5菌種であるCCNS,Ca-Hem-streptococcus,H.in.uenzae,Corynebacterium,S.CaureusとC2008年当時と出てくる菌もそれほど変わらず,CMXがどの菌でも感受性がよい.MRSAがC2008年はC1例であったのに対して今回はC4例と若干多い.DKBとCAZMはC2位のCa-Hem-streptococcusに弱い.1位のCCNSはC2008年当時はどのキノロン系薬にもC70%の感受性を示していたが,軒並みC39%に落ちている.これは,抗菌薬に曝露されていない可能性の高いC0歳に起こるということは世間のフローラが変(112)わっているということになる.1.15歳について:H.in.uenzae,Ca-Hem-streptococcus,CNS,Corynebacterium,M.catarrhalisはC2008年から上位菌種であった.当時もCCMXはどの菌でも感受性がよかった.当時はCCNSMRSがなかったが,今回は出てきた.CMXや他のキノロン系薬はC67%,CP,VCM,DKBがC100%有効であるのに対しCAZMはC33%である.S.aureusに対してはAZMのC0%に対して,他の抗菌薬はC100%である.MRSAにはCP,VCM,DKBがC100%なのに対し,他の抗菌薬はC0%である.16.64歳について:2008年当時なかったCCNS-MRSがC3位である.これに有効なのはCCMX,CP,VCMである.この年代のCS.aureusにはCCMX,CP,VCM,DKBに加えてAZMも有効である.2008年当時キノロン系薬はC100%であったが,今回は軒並みC67%と下がっている.65歳以上:この年齢層はC2008年当時からCCorynebacteri-umがC1位であり,有効なのはCCMX,VCMであった.現在80%以上の感受性を示すのはCVCMだけである.続いてCP,CMXが有効であるが,キノロン系薬は総じてC3%と低い感受性となっている.2位のCCNSにはC2008年当時,CMX,VCM,CP,GFLX,MFLXがC80%超えていた.現在C80%超えるのはCCMX,CP,VCMにCDKBである.AZMがC75%と次点につくが,キノロン系薬は第C4世代も含めてC68.69%と感受性が落ちている.S.aureusに関してはCAZM以外C80%を保っている.MRSAに関しては以前と同様にCCPとCVCMのみが有効である.P.aergionosaに関してはCAZMとDKB,すべてのキノロンがC80%以上の感受性を保っている.総じていえば,CMXはCCorynebacteriumにも強く,結膜炎のファーストチョイスにすることができる.これにキノロン系薬かCDKBを加えればCMRSA以外のほぼすべての菌を網羅できる.漫然と一種類の抗菌薬を使い続けることなく,難治の場合には感受性を調べて適切な処方をすることが,抗菌薬の寿命を保つことになると考えられる.マイボーム腺の治療として,抗菌薬(とくにマクロライド系やテトラサイクリン系)の効果が期待できるとして,報告がある13).マクロライド系であるアジスロマイシンが直接,マイボーム腺の上皮細胞に作用し,脂の分泌を促進することもある11).また,眼瞼炎の治療薬として有効とのレビューもある12).むしろこの方面での効果を期待したい.文献1)OpitzCDL,CHarthanJS:ReviewCofCazithromycinCophthal-mic1%solution(AzaSiteCR)forCtheCtreatmentCofCocularCinfections.OphthalmolEyeDisC4:1-14,C20122)FriedlaenderMHandProtzkoE:Clinicaldevelopmentof1%azithromycininDuraSiteCR,atopicalazalideanti-infec-tiveforocularsurfacetherapy.ClinOphthalmolC1:3-10,C20073)加茂純子,山本ひろ子,松村志保ほか:病棟・外来の眼科領域細菌と感受性の動向2001.2005年.あたらしい眼科C23:219-224,C20064)加茂純子,喜瀬梢,鶴田真ほか:感受性からみた年代別の眼科領域抗菌剤選択C2006.臨眼C61:331-336,C20075)加茂純子,村松志保,赤澤博美らほか:感受性からみた年代別の眼科領域抗菌薬選択C2008.臨眼C63:1635-1640,C20096)加茂純子,荘子万可,村松志保ほか:細菌性結膜炎の眼脂培養によるC2008年からC2011年の抗菌薬の感受性率の変化.あたらしい眼科31:1037-1042,C20147)OlsonRJ:EncounteringCresistanceCinCtheCbattleCagainstCbacteria.ReviewofOphthalmology,p76-78,20078)DeramoCVA,CLaiCJC,CFasteningCDMCetal:AcuteCendo-phthalmitisineyestreatedprophylacticallywithgati.oxa-cinCandCmoxi.oxacin.CAmCJCOphthalmolC142:721-725,C20069)DaveCSB,CTomaCHS,CKimSJ:OphthalmicCantibioticCuseCandmultidrug-resistantCstaphylococcusCepidermidis:aCcontrolled,ClongitudinalCstudy.COphthalmologyC118:2035-2040,C201110)KimCSJ,CTomaHS:AntimicrobialCresistanceCandCophthal-micantibiotics:1-yearresultsofalongitudinalcontrolledstudyCofCpatientsCundergoingCintravitrealCinjections.CArchCOphthalmolC129:1180-1188,C201111)LiuCY,CKamCWR,CDingCJCetal:E.ectCofCazithromycinConClipidCaccumulationCinCimmortalizedChumanCmeibomianCglandCepithelialCcells.CJAMACOphthalmolC132:226-228,C201412)KagkelarisCKA,CMakriCOE,CGeorgakopoulosCCDCetal:AnCeyeCforazithromycin:reviewCofCtheCliterature.CTherCAdvCOphthalmol10,C2018C2515841418783622.CPublishedConline2018CJulC30.Cdoi:10.1177/251584141878362213)https://biosciencedbc.jp/dbsearch/Patent/page/ipdl2C_CJPP_an_2014190105.htmlC***

著明なマイボーム腺脱落を認めた前立腺肥大症患者の1例

2020年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(4):480.483,2020c著明なマイボーム腺脱落を認めた前立腺肥大症患者の1例清水翔太*1有田玲子*1,2,3井上佐智子*1,4伊藤耕三*2川島素子*1,3坪田一男*1*1慶應義塾大学医学部眼科学教室*2伊藤医院*3CLidCandCMeibomianGlandCWorkingCGroup*4羽根木の森アイクリニックCACaseofBenignProstaticHyperplasiaPatientwithSevereMeibomianGlandDysfunctionShotaShimizu1),ReikoArita1,2,3),SachikoInoue1,4),KozoItoh2),MotokoKawashima1,3)CandKazuoTsubota1)1)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,2)ItohClinic,3)LidandMeibomianGlandWorkingGroup,4)HaneginomoriEyeClinicCマイボーム腺機能不全(MGD)は加齢,環境,ホルモン障害などさまざまな因子の影響を受けている.非接触型マイボグラフィー(NCM)で,著明なマイボーム腺脱落を認めた前立腺肥大症(BPH)患者を経験したので報告する.症例は72歳,男性.BPHでCa1交感神経遮断薬をC7年間内服していた.眼科的自覚症状は軽度の眼精疲労と乾燥感であった.細隙灯顕微鏡では,眼瞼に軽度のCpluggingとCvascularityを認め,meibumスコアはC3であった.フルオレセイン染色では,角結膜上皮障害(SPK)スコアはC1で,涙液層破壊時間(BUT)1秒と短縮していた.NCMでは,上下眼瞼ともにマイボスコアはC3で,マイボーム腺は高度に脱落しており,DR-1aでは非侵襲的涙液層破壊時間(NIBUT)はC2秒で涙液の状態は非常に不安定だった.また,Schirmer値はC9Cmm,男性型脱毛症のCNorwood-Hamilton(N-H)分類はCVであった.BPHを含め,MGDの危険因子を有する患者のマイボーム腺を観察することは重要である.CThisCisCaCcaseCofCaC72-year-oldCmaleCpatient,CwhoChadCabenignCprostateChypertrophy(BPH)andCtookCa1blockerfor7years.Hisophthalmicsymptomsweremildeyestrainanddryeye.Ophthalmicexaminationshowedalittlepluggingandvascularityinhiseyelid.However,meibumscorewasgrade3.InC.uoresceinstaining,super.cialpunctatekeratopathy(SPK)scorewas1andbreakuptimeoftear.lm(BUT)was1second.Non-contactinfraredmeibography(NCM)revealedCextensiveClossCofCbothCupperCandClowerCmeibomianCglandsCandCnon-invasiveCbreakCuptime(NIBUT)wasC2secondsCbyCDR-1a.CAlso,CSchirmerCvalueCwasC9CmmCandandrogeneticCalopecia(AGA)CscoreCwasCgradeC5.CItCmayCbeCimportantCtoCobserveCtheCmeibomianCglandsCofCpatientsCwithCtheCriskCfactorsCforCMGD,includingBPH.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):480.483,C2020〕Keywords:前立腺肥大症,マイボーム腺機能不全,ドライアイ,非接触型マイボグラフィー,DR-1a.benignprostatehypertrophy,meibomianglanddysfunction,dryeye,non-contactinfraredmeibography,DR-1a.Cはじめにマイボーム腺は,上下の眼瞼に存在する外分泌腺で,瞬目により開口部から脂質を分泌して眼球表面の水分の蒸発を防いでいる.このマイボーム腺の機能や形態は,加齢,環境,ホルモン障害などさまざまな因子によって影響を受けている.たとえば,マイボーム腺を構成する腺細胞は,加齢や炎症などにより萎縮を引き起こす1).また,腺細胞はアンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモンのレセプターを発現しており2),性ホルモンがマイボーム腺機能に影響を及ぼしていることが示されている3).したがって,前立腺肥大症(benignprostaticChyperplasia:BPH)や閉経などといった性に関連する体内の変化が,マイボーム腺の変化とそれに伴うドライアイ症状に相関していると推測される.これらのさまざまな要因によって異常をきたした状態をマイボーム腺機能不全(meibomiangrandCdysfunction:MGD)と称し,MGDを有する患者は眼不快感や乾燥感などの自覚症状をしばしば訴える.MGDの診断は,細隙灯顕微鏡での眼瞼・眼表面の詳細な観察がもっとも重要である.加えて,補助診断や重症度評価方法のために,マイボグラフィーやドライアイ観察装置CDR-1a(興和)などを用いることで病態〔別刷請求先〕有田玲子:〒337-0042さいたま市見沼区南中野C626-11伊藤医院Reprintrequests:ReikoArita,M.D.,Ph.D.,ItoClinic,626-11Minaminakano,Minuma-ku,Saitama-shi,Saitama337-0042,CJAPANC480(104)が可視化され,より本質的な眼表面症状の原因究明が可能となる.今回,筆者らは,BPHで長期間内服治療中の患者を診察し,マイボーム腺の著明な脱落を認めたので報告する.CI症例患者:72歳,男性.主訴:軽度の眼精疲労,乾燥感.既往歴:BPH.治療のため,Ca1交感神経遮断薬をC7年間内服.初診時所見:2016年受診時,軽度の眼精疲労と乾燥感があった.進行した男性型脱毛症(androgeneticCalopecia:AGA)を認め,Norwood-Hamilton(N-H)分類はCV(I.VII)であった.細隙灯顕微鏡では,眼瞼スコアはC1(0.3)と軽度で,眼瞼縁に軽度のCpluggingや瞼縁の不整がみられ,一部Cvascularityがみられた.フルオレセイン染色で,角結膜上皮障害(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK)のスコアはC1(0.9)であり,涙液層破壊時間(tearC.lmCbreakCuptime:BUT)はC1秒と短縮していた.また,マイボーム腺圧迫検査によるCmeibumスコアはC3(0.3)で,meibumの質は悪化していた.非接触型マイボグラフィー(non-contactinfraredmeibography:NCM)によるマイボスコアは上下眼瞼ともにC3(0.3)であり,全体的にマイボーム腺の消失領域がかなり広範囲であった.DR-1Ca(興和)で涙液動態を確認したところ,非侵襲的涙液層破壊時間(non-invasiveCbreakuptime:NIBUT)はC2秒で涙液の状態は非常に不安定であり,油層の干渉縞がまったくみられなかった.しかし,SchirmerI法による涙液機能の評価では,Schirmer値9Cmmで,涙液量はある程度保たれていた.CII考按MGDは「さまざまな原因によってマイボーム腺の機能がびまん性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う」と定義されている4).ところが,軽度のマイボーム腺の変化では自覚症状を伴わないことも多く,症状をきたしていないものは臨床的定義から外そうということになっている.しかし,機能の異常があっても自覚症状が伴わない場合,眼科を受診する可能性は低く,予防や治療を介することなくMGDが重症化する可能性がある.今回,眼科的自覚症状の軽度な患者を診察したが,MGDのリスクファクターであるCBPH5)で治療中であった.細隙灯顕微鏡における眼瞼縁の形態学的評価では,本患者に眼瞼縁の慢性炎症所見やマイボーム腺開口部の閉塞を一部認めたが,いずれも比較的軽症なCMGD所見であった.しかし,フルオレセイン染色による涙液層の評価では,BUT1秒の蒸発亢進型ドライアイを認め,眼表面の安定性は悪かった(図1).このため,さらに詳細に眼瞼を観察することとし,NCMを用いて形態学的な評価を行ったところ,本症例は,上下眼瞼ともにマイボスコアC3であり,広範囲で高度にマイボーム腺が脱落,短縮している像が観察された(図1).これらのことから眼瞼縁の形態学的変化以上にマイボーム腺構造の破壊は重度であることが示唆された.つぎに,DR-1Caを使用して機能的な評価を行った.DR-1Caは,中央部を含む角膜全体の涙液動態の観察,油層の定性的観察が可能であり,健常者,水分減少型ドライアイ患者,およびCMGD患者によって干渉縞のパターンが異なる6).本患者の涙液は不安定であり,油層の干渉縞がまったくみられなかった(図2).これは,マイボーム腺からのCmeibumの量が絶対的に不足していることを意味しており,NCMで観察したマイボーム腺の形態学的な異常所見を裏付けしているものといえる.検査結果から,マイボーム腺の広範囲な形態異常が考えられ,それに伴いマイボーム腺からのCmeibumの絶対量が不足して眼表面の油層が減少し,蒸発亢進型のドライアイになっていることが考えられた.Schirmer値の明らかな減少は認めておらず,水分層の絶対量不足ではないことからも,油層の減少による水分の蒸発が原因であることが強く示唆される.眼瞼縁周囲の形態学的な異常所見は軽症であったため,マイボーム腺からのCmeibum排出口の閉塞には影響がなかったものと考えられる.NCMは,マイボーム腺内のCmeibumを可視化する.したがって,腺構造は破壊されずに保たれ,腺細胞のCmeibum分泌が抑制されている可能性も考えられる.マイボーム腺からのCmeibum分泌機構は不明の部分が多い.マイボーム腺には神経支配があり,交感神経,副交感神経,あるいはこれらに関連する神経伝達物質の受容体が存在することが組織学的に示されており,性ホルモンの受容体も存在している2,7).しかし,神経系やホルモンがどのようにマイボーム腺の分泌制御にかかわっているのかはよくわかっていない.本患者はBPHやCAGAを発症していたため,性ホルモンのバランスが崩れていた可能性があることや,Ca1交感神経遮断薬を内服していたため,薬剤の作用がマイボームの分泌制御に関与していた可能性がある.本症例は,眼表面の機能が悪化しているにもかかわらず,自覚症状が軽度であった.眼瞼縁の異常が軽症であることが要因と考えられたが,自覚症状と眼瞼縁の異常所見に関する相関はCStudyによってばらつきがあり,はっきりしたことは不明である8,9).ドライアイにおける眼痛や眼不快感の発生メカニズムとしては角膜神経による知覚が源流であり,角膜神経と性ホルモンやCa1交感神経遮断薬との関連性が予想される.今後,検討していきたい.今回,眼科的に自覚症状や眼瞼周囲所見の異常が明らかでないにもかかわらず,NCMやCDR-1Caなどの診断検査機器図1症例患者の前眼部所見a:plugging(.),vascularity(.).b:BUT(1秒),SPK(+).c:上眼瞼所見(マイボスコア3).d:下眼瞼所見(マイボスコア3).機能に影響を及ぼす疾患,あるいは薬剤使用の患者に対し,これらの機器を用いて前向きに検討することは,MGDの重症化予防に貢献するかもしれない.実際,BPHに有意にドライアイが多いことは大規模な疫学調査で報告があり10,11),閉経に伴うドライアイ症状の変化も報告されている12).また,国内のCBPHの患者数は高齢化や食の西洋化に伴い増加の一途であり13),経産婦女性人口の減少により14),以前と比べて女性の性ホルモンのバランスに変化が生じている可能性がある.このような変化は,将来的に,多人数のマイボーム腺機能に影響を与え,MGDの有病率が増加することが予測される.今後,日常診療で細隙灯顕微鏡に加え,NCMやCDR-1aなどの機器を合わせて使用することで,MGDのより本質的な症状の原因究明が可能となり,病態に合わせた適切な治療に結びつくことが期待される.文献1)AritaCR,CItohCK,CInoueCKCetal:NoncontactCinfraredCmei-bographytodocumentage-relatedchangesofthemeibo-を用いたことで,マイボーム腺の萎縮や眼表面の涙液層動態Cmianglandsinanormalpopulation.OphthalmologyC115:の異常を確認する結果となった.このことは,MGDの患者C911-915,C2008が報告数以上に潜伏していることを示唆するものと考えられ2)WickhamLA,OnoM,SullivanDAetal:Identi.cationofandrogen,estrogen,andprogesteronereceptormRNAsinる.したがって,性ホルモン関連疾患のようなマイボーム腺図2DR.1aによる眼表面涙液動態の観察NIBUT2秒.不安定な涙液で,まったく油層の干渉縞がみられない.theeye.ActaOphthalmolScandC78:146-153,C20003)SullivanDA,SullivanRM,DanaMRetal:Androgende.-ciency,meibomianglanddysfunction,andevaporativedryeye.AnnNYAcadSciC966:211-222,C20024)天野史郎,有田玲子,木下茂ほか;マイボーム腺機能不全ワーキンググループ:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科27:627-31,C20105)SchaumbergDA,NicholsJJ,PapasEBetal:Theinterna-tionalCworkshopConCmeibomianglandCdysfunction:reportCofthesubcommitteeontheepidemiologyof,andassociat-edCriskCfactorsCfor,CMGD.CInvestCOphthalmolCVisCSciC52:C1994-2005,C20116)AritaR,FukuokaS,MorishigeN:FunctionalmorphologyofCtheClipidClayerCofCtheCtearC.lm.CCorneaC36(Suppl1):CS60-S66,C20177)LeDouxMS,ZhouQ,RyanPetal:Parasympatheticinner-vationCofthemeibomianglandsinrats.InvestOphthalmolVisSciC42:2434-2441,C20018)LekhanontCK,CRojanapornCD,CChuckCRSCetal:PrevalenceCofCdryCeyeCinCBangkok,CThailand.CCorneaC10:1162-1167,C20069)JieY,XuL,WuYYetal:PrevalenceofdryeyeamongadultCChineseCinCtheBeijingCEyeCStudy.CEye(Lond)C23:C688-693,C200910)SchaumbergCDA,CDanaCR,CSullivanCDACetal:PrevalenceCofCdryCeyeCdiseaseCamongCUSmen:estimatesCfromCtheCPhysicians’CHealthCStudies.CArchCOphthalmolC127:763-768,C200911)AlghamdiCYA,CKarpCCL,CGalorCACetal:EpidemiologyCofCmeibomianCglandCdysfunctionCinCanCelderlyCpopulation.CCorneaC35:731-735,C201612)SuzukiCT,CMinamiCY,CKomuroCACetal:MeibomianCglandCphysiologyCinCpre-andCpostmenopausalCwomen.CInvestCOphthalmolVisSciC58:763-771,C201713)厚生統計協会:「患者調査」2002年14)厚生労働省:人口動態統計月報年計.2018年***

若年女性の外眼角に発症した緑膿菌による難治性結膜肉芽腫の1例

2020年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(4):476.479,2020c若年女性の外眼角に発症した緑膿菌による難治性結膜肉芽腫の1例三宅瞳宮崎大井上幸次鳥取大学医学部視覚病態学講座CACaseofRefractoryConjunctivalGranulomaduetoPseudomonasaeruginosaContheLateralCanthusinaYoungFemalePatientCHitomiMiyake,DaiMiyazakIandYoshitsuguInoueCDivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversityC目的:若年女性の外眼角部に,緑膿菌による難治性の結膜肉芽腫を生じた症例を経験した.症例:26歳,女性.左眼外眼角に眼痛・眼脂を伴う腫瘤性病変が出現し前医を受診した.培養にて緑膿菌が検出され,感受性のある抗菌薬が投与されるも改善せず,腫瘤切除を施行されたが症状の改善はなく,再発を認めたため鳥取大学医学部附属病院眼科(以下,当科)へ紹介となった.当科にて再度腫瘤切除を行ったところ,涙石のような黄色い塊が多数認められた.病巣部を広く切開し十分郭清したことによって再発は認められなかった.結論:本症例は涙腺から結膜への排出管に先天異常などがあり,排出管の閉塞による石灰化をベースに感染を起こしたのではないかと考えられた.本症例が難治性であった原因としては,病巣部が閉鎖空間となっていたため抗菌薬の移行が不良であったことが考えられた.CPurpose:WeCreportCaCcaseCofCrefractoryCconjunctivalCgranulomaCcausedCbyCPseudomonasCaeruginosaConCtheClateralCcanthusCofCaCyoungCwoman.CCase:AC26-year-oldCfemaleCvisitedCanotherCclinicCwithCtheCcomplaintCofCaCtumoronthelateralcanthusofherlefteyefollowedbypainanddischarge.PseudomonasaeruginosaCwasdetectedbyculture.However,shewasreferredtousaftertreatmentwithantibioticsandsurgicalexcisionwasunsuccess-ful.CSheConce-againCunderwentCsurgicalCexcision,CandCnumerousCyellowCmassesCresemblingClacrimalCstonesCwereCobserved.Therefore,weremovedallofthemasses,andleftthewoundwidelyopen,resultinginacompletecurewithnorecurrence.Conclusion:Thiscaseofrefractorytumorwasconsideredtobecausedbyasecondaryinfec-tiontocalci.cationduetoblockadeoftheductfromthelacrimalglandtotheconjunctivabyacongenitalanomaly.Moreover,weconsideredthattheclosedspaceoftheinfectiousfociinhibitedthepenetrationofantibiotics.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(4):476.479,C2020〕Keywords:結膜肉芽腫,緑膿菌,涙腺排出管結石.conjunctivalgranuloma,Pseudomonasaeruginosa,lacrimalglandductulestones.Cはじめに結膜良性腫瘍は,乳頭腫や母斑,.胞が多いとされており,肉芽腫はまれである1).また,結膜肉芽腫は,霰粒腫や異物,外傷後,外眼部術後などによって起こる炎症性の肉芽腫で,感染による化膿性の症例の報告は少ない.今回筆者らは,若年女性の外眼角部に,緑膿菌による難治性の結膜肉芽腫を生じた症例を経験したので報告する.I症例患者:26歳,女性.主訴:左眼の眼脂・異物感.現病歴:平成C26年頃より左眼外眼角に腫瘤性病変が出現し,次第に眼痛,眼脂を認めるようになり近医眼科を受診した.抗菌薬点眼,内服加療を行われるも改善せず,平成C27年C9月末頃,左眼外眼角部に排膿を伴う腫瘤性病変が出現し〔別刷請求先〕三宅瞳:〒683-8504鳥取県米子市西町C36-1鳥取大学医学部視覚病態学分野Reprintrequests:HitomiMiyake,DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedeicine,TottoriUniversity,36-1Nishi-cho,Yonago,Tottori683-8504,JAPANC476(100)図1初診時前眼部写真a:外眼角部に腫瘤を認め,周囲に眼脂を伴っている.b:外眼角腫瘤部を拡大したもの.図2術中写真腫瘤を切除すると奥に涙石のような黄色の塊を多数認めた.たため,前医に紹介された.培養検査にて緑膿菌が検出されたため,1.5%レボフロキサシン点眼,ゲンタマイシン点眼,およびレボフロキサシン内服,セフタジジム点滴が行われるも十分改善しなかった.平成C27年C12月,左眼結膜腫瘤切除・病巣開放を施行された.術後は抗菌薬点眼に加え,1.5%レボフロキサシン結膜下注射を週C1回で施行されたが,やや改善を認めるも効果は限定的であった.イソジン点眼も試みられたが,しみるとの訴えで継続できなかった.また,0.1%フルオロメトロン点眼も一時期投与されたが,眼脂が悪化したとの訴えがあり中止となった.その後腫瘤が再発し,眼脂改善も認めなかったため,平成C28年C4月鳥取大学医学部附属病院眼科(以下,当科)紹介初診となった.既往歴・家族歴:特記すべきことなし.初診時所見:VD=0.1(1.2C×sph.3.75D(cyl.1.50DAx180°),VS=0.1(1.2C×sph.3.75D(cyl.2.00DCAx5°),図3創部の塗抹鏡検(グラム染色C40倍)グラム陰性桿菌を多数認めた.RT=11CmmHg,LT=12CmmHg.左眼外眼角部に肉芽腫性腫瘤を認め,周囲に眼脂を伴っていた.結膜充血は腫瘤周囲に軽度認められた(図1).角膜・前房・中間透光体・眼底には特記すべき所見はなかった.眼脂を培養に供したところ,やはり緑膿菌が検出された.薬剤感受性検査は前医でも当科初診時に行ったものでも,通常緑膿菌に効果のあるどの抗菌薬にも耐性は認めなかった.抗酸菌培養も行ったが検出されなかった.経過:入院のうえ,肉芽腫をきたす全身性の炎症性疾患の鑑別のため採血を施行したが,いずれも正常範囲内であった.入院C4日目,左結膜腫瘍摘出術を施行.結膜を広く切開し,まず肉芽腫を切除すると,奥のほうに涙小管炎でみられる涙石のような黄色い塊が出てきたため除去した(図2).黄色い塊は多数認められ,確認できたものはすべて取り除いた.最後にポビドンヨードで創部を消毒し,創部は開放した図4切除した腫瘤の病理組織化膿性肉芽腫に一致する所見で悪性所見なし.まま終了した.術中切除した組織は黄色い塊も含めて培養・Creal-timePCR・病理検査に提出した.その結果,創部の塗抹鏡検にてグラム陰性桿菌が多数確認された(図3).培養では緑膿菌は検出されなかった.Real-timePCRでは緑膿菌のCDNAが総量C37,000コピー認められた.病理検査では化膿性肉芽腫に一致する所見で,一部石灰化を示す滲出液様の物質を認め,陳旧化した涙腺分泌液などを思わせる所見だが菌は認められず,悪性所見なしとの結果だった(図4).術翌日よりC1.5%レボフロキサシン点眼C6回/日,ベタメタゾン点眼C4回/日,セフタジジム点滴C2Cg/日の投与を開始.術後経過良好にてC9日目に退院となった.その後外来にて経過をみていたが,術後C4カ月の時点で眼脂や肉芽腫の再発は認めず経過良好にて終診となった(図5).CII考按結膜に肉芽腫を生じた症例の報告は国内では数例散見されたが2.10),多くは異物反応によるものや術後に生じたもので,感染性の症例は結核によるものがC1例あるのみだった11).また,本症例のように涙腺部に涙石のような石灰化を認めた症例は,1972年に長嶋らが12),1981年に藤関らが13)報告しているが,最近の報告はない.一方海外では数件の文献が確認され14.20),緑膿菌感染を引き起こした症例もC1例認められた21).本症例は起因菌も検出されており,長期にわたりさまざまな種類の抗菌薬が投与され,一度は外科的処置が行われているにもかかわらず腫瘤が再発し,難治性だった.そのため,まず薬剤耐性菌である可能性が考えられたが,前医での検査も含め培養結果は毎回緑膿菌しか検出されておらず,薬剤感受性検査でも耐性は認められず,否定的だった.また,緑膿菌以外の菌,とくに肉芽腫を形成しやすい結核菌や非定型抗図5最終診察時写真腫瘍は切除され再発なく,眼脂も認められない.酸菌などに感染している可能性も考え,初診時に抗酸菌培養を行ったが検出されず否定的と考えた,また,そもそも感染性でない腫瘤の可能性も考えたが,とくに全身的な既往歴もなく,採血検査などで異常を認めないことなどからも否定的かと思われた.本症例は当科における手術で,深部に多数の結石を認め,外眼角付近の結膜円蓋部にある主涙腺と副涙腺の開口部までの管に先天異常やClacrimalglandductalepithelialcyst(dac-ryops)などの疾患があり,そこが詰まって石灰化を起こし,それをベースに感染を起こしたのではないかと考えられた.また,病巣が深部にあり,抗菌薬が十分病巣まで移行していなかった可能性が考えられた.そのため今回の手術では結膜を広く切開し,できる限り奥まで術野を広げ,腫瘤をすべて切除し,確認できた黄色い涙石のような塊をすべて摘出した.これが菌石ではないかと思われたが,病理検査の結果からは否定的だった.また,創部を開放したことによって,術後抗菌薬の移行がよくなるよう図った.十分な外科的切除および郭清が奏効し,治癒することができた.若年の女性で,眼脂が慢性に出続けるというのはきわめてまれな事態であり,今回のようなまれな病態が隠れている可能性があり,外科的なアプローチを含め徹底した原因究明が必要であると考えられた.文献1)大島浩一,後藤浩:知っておきたい眼腫瘍診療.p67-68,医学書院,20152)武田憲夫,外岡わか,安倍弘晶:眼窩内木片異物による結膜・眼窩の異物性肉芽腫.眼紀34:1785-1788,C19833)綾木雅彦,藤村博美,大出尚郎:シリコンスポンジ縫着術のC20年後に結膜肉芽腫を発症したC1例.眼科手術C6:295-298,C19984)石田乾二,曽谷治之,絵野尚子ほか:長期間放置された結膜異物.あたらしい眼科15:433-435,C19985)上野一郎,吉川洋,向野利一郎ほか:両眼結膜の腫瘤で発見されたサルコイドーシスのC1例.眼紀C56:274-277,C20056)越前成旭,大越貴志子,山口達夫ほか:結膜下腫瘤の組織診により診断に至ったアレルギー性肉芽腫性血管炎のC1例.臨眼60:1605-1608,C20067)森山涼,中村敏,渡辺孝也ほか:治療が遅れた上眼瞼結膜下異物肉芽腫のC6例.臨眼61:1471-1474,C20078)石嶋漢,加瀬諭,野田実香ほか:角結膜上皮内新生物術後に急速に増大した化膿性肉芽腫のC1例.日眼会誌114:C1036-1039,C20109)福居萌,勝村浩三,服部昌子ほか:ハードコンタクトレンズがC3年間結膜.に残存したC1例.眼科C54:1667-1670,C201210)中沢陽子,植田次郎,横山佐知子ほか:睫毛を含む外眼筋周囲白色塊のために眼球運動障害をきたしたC1例.眼臨紀C6:320-323,C201311)齋藤和子,安積淳,塚原康友ほか:抗結核薬内服が奏効した肉芽腫性結膜腫瘍のC1症例.眼紀51:1035-1038,C200012)長嶋孝次:涙腺排出管結石症のC1例.臨眼C26:105-106,C197213)藤関能婦子,小泉屹:涙腺排出管結石のC2例.臨眼C35:1358-1361,C198114)NaitoH,OshidaK,KurokawaKetal:Atypicalintermit-tentCexophthalmosCdueCtoChyperplasiaCofClacrimalCglandCassociatedCwithCdacryolithiasis.CSurgCNeurolC1:84-86,C197315)BakerCRH,CBartleyGB:LacrimalCglandCductuleCstones.COphthalmologyC97:531-534,C199016)ZaferCA,CJordanCDR,CBrownsteinCSCetal:AsymptomaticClacrimalductuledacryolithiasiswithembeddedcilia.Oph-thalmicPlastReconstrSurgC20:83-85,C200417)HalborgCJ,CPrauseCJU,CToftCPBCeta:StonesCinCtheClacri-malgland:aCrareCcondition.CActaCOphthalmolC87:672-675,C200918)AltenF,DomeierE,HolzFGetal:Dacryolithsinthelac-rimalglandductule.ActaOphthalmolC90:155-156,C201219)KimCSC,CLeeCK,CLeeSU:LacrimalCglandCductstones:Cmisdiagnosedaschalazionin3cases.CanadianJournalofOphthalmologyC49:102-105,C201420)ZhaoJ,XuZ,HanAetal:Ahugelacrimalglandductuledacryolithwithahairynucleus:acasereport.BMCOph-thalmolC18:244-245,C201821)MawnLA,SanonA,ConlonMRetal:PseudomonasdacC-ryoadenitisCsecondaryCtoCaClacrimalCglandCductuleCstone.COphthalmicPlastReconstrSurgC13:135-138,C1997***