考える手術②監修松井良諭・奥村直毅黄斑円孔への硝子体手術向後二郎聖マリアンナ医科大学眼科学教室特発性黄斑円孔に対する治療法を考えるうえで,その歴史と変遷を知るということは非常に重要です.1990年にKellyとWendelによってそれまで難治性疾患とされていた黄斑円孔に対する硝子体手術および液空気置換の手術成績が報告されました.その後,論文ベースでは2000年にBrooksが内境界膜(ILM)を硝子体手術に併用して.離することで95%以上の脅威的な円孔閉鎖率を報告し,同時期に門之園やBurkがインドシアニングリーン(ICG)を用いたchromo-vitrectomyを考案して手術の難易度が下がりました.そして2010年ような歴史から黄斑円孔の病態と治療の最適化を考える必要があります.黄斑円孔手術は,core-vitrectomy,shaving,ILM.離,液空気置換というように手術の行程数は少ないですが後部硝子体.離(PVD)の有無,周辺の硝子体癒着,ILM.離方法,タンポナーデ物質などさまざまな場面でのバリエーションがあります.また,手術目的は当然,円孔閉鎖ですが,そのメカニズム・ILMの特性を意識して挑むことが重要と考えます.たとえばどんなに大きな円孔であってもC3F8ガスなどの長期滞留ガスを用いて厳格なうつ向きをとれば閉鎖することが多いと思いますが,どれだけ患者負担を減らせるか(体位制限の短縮),どれだけ網膜に負担をかけず閉鎖させるか(ILM.離の方法),術後の変視症・歪視をどう減らすかなど,まだまだ改良の余地があると思います.聞き手:黄斑円孔の手術時期としてはいつがよいのでStageIIでは1~2週間単位で進行し,手術する時期にしょうか?網膜.離ほどの緊急性はないと思いますがはIII以降になっていることをよく経験します.これを適切な時期はあるのでしょうか?踏まえて黄斑円孔は準緊急疾患として2週間以内に手術向後:まず重要なこととしては当然ですが,ステージに予定を立てています.よってPVDが起きているかを理解することが重要です.StageI~IIはPVDが完成されておらず,StageIIIでは聞き手:円孔径の大きさによって手術内容は変える必要黄斑部にPVD,StageIVでは完全なPVD完成というこはありますか?とになります.手術時期に関しては,StageIII以降の黄向後:よくいわれていることは,円孔径が400μm以上斑部のPVDが完成されている場合は,比較的それ以降を巨大黄斑円孔とよぶことが多いのですが,これはさまの進行(円孔拡大)が遅いことが多いですが,とくにざまな研究でも400μmを超えると円孔閉鎖率が低くな(73)あたらしい眼科Vol.39,No.2,20222050910-1810/22/\100/頁/JCOPY考える手術ることがその理由となっています.術前のOCTのBスキャン画像から円孔径(この場合は最小円孔径)を測定することは重要です.感覚的に普通の円孔径くらいと思っていてもしっかり測定すると400μm以上であることもあります.一般的には400μm以下の円孔であればおよそ2乳頭径のILM.離を行い,20%SF6ガスを留置すればよいとされています.ガスの注入法は濃度調整をしたガスを全置換する方法や,正視眼であれば眼内容積はおよそ4mlなので0.8~1mlの100%ガスを注入するとおよそ20%になるのでワンショットで注入したりもしますが,術者の嗜好によります.聞き手:それでは400μm以下の円孔ではすべて同じ手技を用いるということになりますか?向後:術者によってはすべて同じ方法という場合もありますが,うつ向き姿勢の時間などは術者や施設によって異なると思います.3~7日間のうつむき姿勢,1日のみ,3時間のみ,術直後よりうつむきなしの側臥位などさまざまです.いずれの場合においてもガスが円孔に触れていることが重要です.円孔縁にガスが触れている時間が継続するとgliosisが促進され,円孔にbridgingが起こり,円孔閉鎖へと進みます.400μm以下では手術後3時間程度で円孔閉鎖がOCTで認められることもあります.聞き手:400μm以上の場合はいかがでしょうか?注入ガス濃度を濃くしたり,ILM.離の範囲を広げたりすると思いますが.向後:そうですね,invertedILM.ap法が出てくるまでは多くの術者がそうしていたと思いますが,現在では400μm以下でも罹病期間の長い患者やうつむき姿勢をとることが困難な患者に対してもinvertedILM.ap法を用いることが多いと思います.聞き手:その理由はなんでしょうか?通常のILMpeelhemi-temporalILMpeel向後:まずは高い閉鎖率が期待できるということと,うつむき姿勢をとらなくても閉鎖しやすいためです.聞き手:それでは全例でinvertedILM.ap法を用いるということはしないのでしょうか?向後:まずは手技的に多少煩雑であるため,経験の浅い術者にとっては不向きであるということと,400μm以下の円孔に対する通常のILM.離とinvertedILM.ap法で比べると,術後の網膜外層の回復に差があり,通常のILM.離のほうが良好であったとする報告があり(差がなかったという報告もありますが),見解がさまざまです.現法のinvertedILM.ap法よりILMを一方から(耳側や上方から)coveringする方法の術者のほうがわが国では多い気がします.聞き手:先生はILM.離に関して考え方やこだわりはありますか?向後:はい,非常にこだわりをもってやっています.円孔閉鎖という目的を達成することは前提として,どれだけ術後の視機能を回復させられるかを研究しています.聞き手:たとえばどんなことでしょうか?向後:ILM.離を行うと,どんな疾患においても黄斑部の網膜は鼻側の視神経乳頭側に移動するという特性があります.さらに,中心窩より耳側のほうが,鼻側より大きく移動するということまでわかっています.この特性を利用して円孔の耳側のみILM.離を行う手法をとっています(hemi-temporalILMpeelingと同僚の塩野先生が名づけました).この手法で円孔が閉鎖すると,通常の.離の際より中心窩の移動が抑えられ,術後の歪視の軽減につながる可能性があります.しかも円孔の鼻側,つまり乳頭黄斑線維束に触れないため,網膜障害のリスクが低く,安全に行えるというメリットもあります.とにかく現在は,ILM.離に伴うさまざまな合併症を減らすために,侵襲の少ない手術を心がけています.ILMcoveringinvertedILM.aptechnique図1さまざまなILM.離方法206あたらしい眼科Vol.39,No.2,2022(74)