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記憶型病原性Th2細胞とアレルギー -好酸球浸潤から線維化反応まで

2020年4月30日 木曜日

記憶型病原性Th2細胞とアレルギー─好酸球浸潤から線維化反応までMemory-TypePathogenicTh2CellsandAllergy平原潔*中山俊憲*はじめに眼瞼結膜をはじめとする粘膜組織は,外界からの異物進入に対して物理的なバリアとして働く.近年,粘膜上皮から産生される各種の“上皮サイトカイン”がアレルギーの発症に深く関与していることが明らかになった.IL-33は,その受容体のST2を発現した細胞に作用し,さまざまな生体反応を誘導する.本稿では,近年,筆者らのグループが同定した新規IL-33のターゲット細胞である記憶型病原性Th2細胞について,慢性アレルギー性炎症疾患の病態形成における役割を紹介する.筆者らは,IL-33の刺激によって炎症性サイトカインの一種であるIL-5を多量に産生する記憶型病原性Th2細胞の誘導と同時に,組織修復因子であるamphiregulinを産生する異なる記憶型病原性Th2細胞集団が誘導されることを見いだしており,記憶型病原性Th2細胞の多様性が病態形成において重要であることが示唆される.さらに,記憶型病原性Th2細胞の組織常在性と異所性リンパ組織の役割を紹介する.I粘膜臓器の2面性―バリア機能とアレルギー性疾患の病態形成における2型免疫応答の誘導全身に存在する粘膜臓器は,外界からの異物進入に対して物理的なバリアとして働くことが知られている.たとえば,眼表面においては,表層の結膜上皮細胞は微絨毛を有し,微絨毛には上皮間の杯細胞から分泌されるグリコカリックスおよびムチンが付着している.上皮細胞間をつなぐタイトジャンクションおよびこれら細胞表面の分泌物は,免疫調節特性を有する強力な物理的障壁として役立つ.さらに,気道上皮を構成する線毛細胞は繊毛を有し,繊毛運動が喉頭方向へ向かうことで物理的に異物を体外へ出す.また,気道上皮を構成する別の細胞集団である杯細胞やClara細胞は,さまざまな蛋白質を分泌し,上皮を保護する役割を担っている.このように,粘膜組織の上皮は,それぞれが有する特化した物理的な作用によって異物の侵入から宿主を防御している.これらに加えて,粘膜の上皮細胞は,上皮サイトカインとよばれる一連のサイトカインを放出することで粘膜局所に炎症反応を誘導し,異物を排除する.異物が進入し,気道上皮が障害されると,IL-25,IL-33などの上皮サイトカインが上皮細胞から放出される.上皮サイトカインは,粘膜組織の炎症局所において,その受容体を発現した多様な免疫細胞に直接・間接的に作用し,宿主防御や組織修復に重要な2型免疫応答を惹起する.上皮サイトカインによって誘導された2型免疫応答は,寄生虫などの排除に重要な役割を果たす一方,アレルギー性疾患の発症および病態形成にも重要な役割を担っていることが近年の研究から明らかになってきた.たとえば,CD4T細胞,B細胞,2型自然リンパ球(type2innatelymphoidcells:ILC2s),好酸球などさまざまな免疫担当細胞が病態形成に深く関与する気管支喘息では,IL-25やIL-33といった上皮サイトカインで活性化され*KiyoshiHirahara&*ToshinoriNakayama:千葉大学大学院医学研究院免疫発生学〔別刷請求先〕平原潔:〒260-8670千葉市中央区亥鼻1-8-1千葉大学大学院医学研究院免疫発生学0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(59)435た記憶型Th2細胞をはじめとする免疫担当細胞が慢性の病態形成において中心的役割を果たしている.II上皮サイトカインのアレルギー疾患病態形成における役割上皮サイトカインの一種であるIL-33は,IL-1サイトカインファミリーに属する上皮サイトカインであり,その受容体であるST2とIL-1RAcPの複合体に結合し作用する.ST2(IL1RL1)は,1989年に同定された後,長年にわたってオーファン受容体であったが,2005年にIL-33がリガンドとして同定された1,2).IL-33は,他のIL-1サイトカインファミリーであるIL-1aと同様に,定常状態では細胞の核内に局在する3).粘膜の上皮バリアが壊され,バリアの構成細胞が破壊されると,核内のIL-33が受動的に細胞外へ放出されると同時に,クロマチン結合ドメインが切断され活性化する.炎症局所で活性化した好中球や肥満細胞由来の酵素がIL-33を切断する作用があるほかに,真菌,ゴキブリ,花粉由来のアレルゲンも量依存的に直接IL-33を切断し活性化する作用を有する4,5).つまり,アレルギー性角結膜炎の発症に重要であると考えられている各種アレルゲンが,侵入した粘膜局所において直接IL-33を活性化し炎症反応を誘導する.近年,オーストラリアやイギリス,イタリアなどの各国で,激しい雷雨後に発症する重症喘息発作がサンダーストーム喘息とよばれるようになり,話題となっている6).サンダーストーム喘息は,激しい雷雨に伴う多量の花粉や真菌などのアレルゲンの飛散が発症の原因として指摘されている.多量に飛散したアレルゲンを吸入した場合,肺内でIL-33が著明に活性化され重症喘息発作を引き起こしている可能性が考えられる7).実際,肺組織中のIL-33の発現上昇が,重症の気管支喘息患者で報告されている8).各種genome-wideassociationstudy(GWAS)においても,IL33とIL1RL1の気管支喘息発症の関連が繰り返し報告されている9.12).別の上皮サイトカインであるIL-25(IL-17E)は,IL-17サイトカインファミリーに属する.IL-25は,Th2細胞,好酸球,肥満細胞など2型免疫応答の誘導に関与する免疫担当細胞や一部の粘膜上皮細胞が産生する.また,肺や腸管の粘膜では,タフト細胞とよばれる特殊な上皮細胞の一群がIL-25を産生する13,14).肺ではタフト細胞が産生するIL-25は,寄生虫感染の際に感染防御に深く関与する13).一方,腸管においては,ノロウイルスがタフト細胞上に発現するCD300lfを介して感染する15).また,腸管には,IL-25を産生する1型タフト細胞とTSLPとIL-25の両方を産生する2型タフト細胞の少なくとも2種類の異なるタフト細胞が存在する14).以上,上皮サイトカインは,全身の粘膜臓器において各種免疫担当細胞を活性化し,2型免疫応答を誘導することでアレルギー炎症の発症に関与する.IIIヘルパーT細胞の多様性と可塑性獲得免疫反応の中心的役割を果たす細胞集団であるCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)は,抗原特異的な免疫応答を誘導することで,微生物病原体の侵入から宿主を守る.しかし,ヘルパーT細胞の質的・量的異常は,自己免疫疾患や気管支喘息などのアレルギー疾患の原因となる.眼におけるアレルギー疾患は,軽度で急性の季節性アレルギー性結膜炎(seasonalallergiccon-junctivitis:SAC)および通年性アレルギー性結膜炎(perennialallergicconjunctivitis:PAC)から重度で慢性の疾患であるアトピー性角結膜炎(atopickeratocon-junctivitis:AKC)および春季カタル(vernalkerato-conjunctivitis:VKC)に及ぶ.これらの疾患において,その発症にはいずれもCD4陽性ヘルパーT細胞が関与しており,なかでもヘルパーT(Th)2細胞が,病態形成の中心的な役割を果たす16).1980年代の発見当初には,おもにIFN-gを産生するTh1細胞とIL-4を産生するTh2細胞に分類されたヘルパーT細胞は,近年の精力的な研究の結果によって,実にさまざまな亜集団(サブセット)から構成されていることが明らかになった.具体的には,Th1細胞やTh2細胞のほかに,IL-17を産生し真菌感染症から生体を防御するTh17細胞,IL-22を産生するTh2細胞,IL-9を産生するTh9細胞,生体の免疫応答を抑制する制御性T細胞,B細胞からの抗体産生を制御する濾胞ヘルパーT細胞などの多様な亜集団が報告されている〔多様性(diversity)〕436あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(60)胸腺IL-6,IL-21TfhBcl6CD4+CD8-B細胞からの抗体産生制御SLEIL-4Th2GATA3IL-4,IL-5,IL-13,Amphiregulin寄生虫排除アレルギー疾患ナイーブCD4+TIL-12Th1T-betIFNg細胞内感染病原体排除IL-6,IL-23自己免疫性甲状腺炎TGF-bTh17RORgtIL-17細胞内感染病原体排除IL-2乾癬,多発性硬化症pTregTGF-bFoxp3TGFb免疫寛容tTregFoxp3免疫寛容IPEX症候群図1さまざまなヘルパーT細胞の亜集団とその生体内での役割る.興味深いことに,この好酸球性気道炎症は,ステロイド投与に治療抵抗性を示すと同時に,IL-33によって活性化された記憶型CTpath2細胞は,ステロイド投与後もCIL-5の産生低下は認めない21).IL-33で誘導される2型自然リンパ球(ILC2s)依存性の気道炎症においてもステロイド抵抗性が報告されている22).以上,IL-33はステロイド抵抗性の粘膜炎症の病態形成に関与している可能性が示唆されることから,ステロイド治療抵抗性の粘膜炎症に対して,IL-33が新たな治療ターゲットとなりうる.米国の複数の研究グループが好酸球性胃腸障害およびアトピー性皮膚炎の患者やスギ花粉やピーナツに対するアレルギー患者において,筆者らが同定したCTpath2細胞と同様にCIL-5を多量に産生するCCRTH2陽性,CD161陽性のCTpath2細胞が末梢血中に増加していることを報告しており,さまざまなアレルギー性疾患におけるCTpath2細胞の関与が示唆される23,24).筆者らは,ヒト好酸球性副鼻腔炎のポリープ中に浸潤している記憶型CCD4T細胞の一部がCST2を高発現し,IL-33刺激に反応して多量のCIL-5を産生することを明らかにしている20,25).つまり,マウスのみならずヒトにおいてもTpath2細胞が,抗原特異的なアレルギー炎症疾患の病態形成に深く関与している.CV記憶型Tpath2細胞と組織線維化慢性アレルギー性疾患をはじめとするさまざまな長期にわたる炎症は,組織の線維化の原因になる.組織の線維化は肺や肝臓,心臓,腎臓,皮膚などのあらゆる臓器で認められ,臓器不全を引き起こし,死に至る重篤な病態である.しかし,これまで慢性炎症の結果,生じる組織の線維化について詳細な機序は不明であった.そこで筆者らは,臨床上重要なアレルゲンの一種であるハウスダストを抗原とした慢性気道アレルギー炎症のマウスモデルを新たに作製し,同モデルを用いて気道周囲の線維化が誘導される分子メカニズムを解析した.筆者らは,IL-33刺激によってCIL-5を産生する病原性記憶型CTh2細胞とは別に組織修復因子のCamphiregulinを産生する記憶型病原性CTh2細胞が増加することを発見した.Amphiregulin欠損マウスおよびCamphiregulin欠損記憶型CTh2細胞を移入したマウスでは,気道周囲の線維化は著明に減弱しており,amphiregulinを産生する記憶型CTh2細胞が線維化を誘導することが明らかになった.Amphiregulinは,上皮成長因子受容体(epidermalCgrowthfactorreceptor:EGFR)を発現する好酸球に作用して炎症性好酸球へリプログラミングし,同好酸球からの細胞外マトリックスの一種のオステオポンチン産生を亢進する.以上のような機序で,組織の線維化を誘導するCamphiregulin産生記憶型CTh2細胞を筆者らは,「線維化誘導C-病原性CTh2細胞」と定義した26).この線維化誘導C-病原性CTh2細胞は,既報のCIL-5を大量に産生する病原性CTh2細胞とは異なるが,病原性を有するこれらの細胞がネットワークを形成して相互作用することで慢性好酸球性気道炎症は増悪し,難治化に至ることが推察される(図2)26).一方で,IL-33刺激によって,ST2を高発現する記憶型病原性CTh2細胞からどのようにCIL-5を産生する記憶型CTpath2細胞とCamphiregulinを産生する記憶型CTpath2細胞がそれぞれ誘導されるかについては,いまだに詳細は不明である.今後,さらなる研究が望まれる.CVI粘膜局所におけるTpath2細胞の維持これまで述べてきた通り,記憶型CTpath2細胞は局所の慢性炎症の病態形成に深く関与している.一方で,粘膜局所における記憶型CTpath2細胞がどのように維持されるかについては不明な点が多い.全身のさまざまな粘膜臓器において,慢性炎症によってリンパ節に構造がよく似た異所性リンパ組織とよばれる三次リンパ組織が誘導される.たとえば眼瞼結膜では,重症のアレルギー性結膜炎患者において,conjunctiva-associatedClymphoidtissue(CALT)とよばれる三次リンパ組織が形成される27).また,肺では感染症や喫煙,膠原病などさまざまな原因による慢性炎症で誘導性気管支関連リンパ組織(inducibleCbronchus-associatedClymphoidtissue:iBALT)が形成される28).筆者らは,マウス慢性アレルギー性気道炎症モデルを用いて,慢性炎症によって肺内にCiBLATが誘導されることを見いだした.大変興味深いことに,記憶型CTpath2細胞は炎症局所において誘導されるCiBALT内で生存・維持されていた(図3)25).こ438あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(62)図2Tpath2細胞の線維化における役割上皮サイトカインと免疫担当細胞と積極的にクロストークすることで粘膜臓器における炎症応答に深く関与することを示唆している.IL-33レセプター(ST2)を高発現しCIL-33が作用したCTpath2細胞はCIL-5を多量に産生し好酸球性の炎症を誘導する.このCTpath2細胞は,慢性炎症巣に形成される誘導である.図3好酸球性炎症における気道周囲の線維化誘導機構抗原侵入により気道上皮細胞から分泌されたCIL-33がその受容体であるCST2を発現する記憶型Th2細胞に作用し,amphiregulin産生を誘導する.このCamphiregulinが上皮成長因子受容体(EGFR)を介して組織中の好酸球に作用し,炎症性好酸球へとリプログラムする.炎症性好酸球はオステオポンチンを産生することで直接的に組織線維化を誘導する.肺(慢性気道炎症時)Lyve-1CD3eIL-7Lyve-1CD3eIL-7図4Tpath2細胞による慢性好酸球性気道炎症の誘導機構OVAの経鼻投与によって誘導されたCiBALT内に,IL-7(緑色)産生リンパ管内皮(Lyve-1陽性,青色)が多数認められ,同細胞周囲に多くのヘルパーCT細胞(赤色)が存在する.(文献C25より引用)図5病原性Th細胞疾患誘導モデル病原性CTh細胞疾患誘導モデルでは,ヘルパーCT細胞のサブセット間のバランスには関係なく,病原性の高いCT細胞亜集団が記憶型CTh細胞集団中に生まれ,病態の形成に深く関与しているという考え方で,これまでのCTh1/Th2パラダイムとは根本的に異なる考え方である.(文献C19より改変引用)C–

IL-33によって活性化される自然リンパ球ILC2からみたアレルギー性結膜炎

2020年4月30日 木曜日

IL-33によって活性化される自然リンパ球ILC2からみたアレルギー性結膜炎TheRolesofIL-33andILC2(Type2InnateLymphoidCells)inAllergicConjunctivitis松田彰*浅田洋輔*はじめに科学の進歩によって,どのようにアレルギー性反応が引き起こされるのかというコンセプトが変わってきている.獲得免疫反応(特定の抗原に対する免疫学的な記憶をもとに,感作が成立している抗原に対してのみ選択的な炎症反応が生じる)を中心とする従前のコンセプトが間違っていたわけではなく,抗原非特異的な自然免疫反応の要素がアレルギー反応の理解に加わり,2型炎症反応というコンセプトが広く受け入れられつつある.III型炎症反応のコンセプト従来の獲得免疫反応を主体にしたアレルギー炎症のコンセプトは次のようなものである.生体がアレルゲンに暴露されることで,アレルゲンが抗原提示細胞に取り込まれ,リンパ節での抗原提示によってリンパ球を活性化して,Tリンパ球(Th2)およびIgE産生能を獲得したBリンパ球の働きで抗原特異的IgEが産生される.この抗原特異的IgEがマスト細胞の表面にあるIgE受容体に結合した状態でアレルゲンに再度暴露されると,マスト細胞表面のIgEにアレルゲンの抗原部位が結合する(複数のIgEに結合するのでIgEを架橋=クロスリンクする)ことでマスト細胞の脱顆粒を起点とする一連のアレルギー反応が生じる.この炎症反応の中心的な役割を果たすのがTh2型リンパ球であることからTh2型炎症反応とよばれてきた(図1).アレルギー反応のコンセプトの変化はいくつかの鍵となる発見からもたらされ,現在では獲得免疫を主体としたTh2型炎症反応という病態コンセプトに,自然免疫反応の要素を加味した2型炎症反応というコンセプト(図2)で考えられることが多い.この変化の鍵となった発見として以下の二つがあげられる.1.上皮由来2型炎症起始サイトカインの発見アレルゲンの暴露によって,生体バリアとして機能している上皮細胞からIL-33,IL-25およびTSLP(thy-micstromallymphopoietin)といったサイトカインが産生・放出され,自然免疫反応・獲得免疫反応の両者を活性化するトリガーサインとなることが報告されてきた.これら3種のサイトカインは上皮由来2型炎症起始サイトカインとして知られ,精力的な研究がなされている.なかでもIL-33分子はアレルゲンの暴露によって傷害された上皮細胞から放出され,周囲の組織へ危険を知らせるアラーミンとしての役割をもっていることが知られている.2.2型自然リンパ球の発見自然リンパ球(innatelymphoidcells:ILCs)はリンパ球と同様の形態学的な特徴をもつ細胞だが,リンパ球と異なりT細胞・B細胞受容体をもたず,抗原特異的な免疫応答をしない.ILCには三つのサブタイプ(ILC1,ILC2,ILC3)があるが,なかでも2型自然リンパ球ILC2は上述のIL-33およびIL-25によって活性化され*AkiraMatsuda&*YosukeAsada:順天堂大学大学院医学研究科眼アトピー研究室〔別刷請求先〕松田彰:〒113-8431東京都文京区本郷3-1-3順天堂大学大学院医学研究科眼アトピー研究室0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(51)427アレルゲン上皮細胞バリアを通過リンパ節で抗原提示分解されたアレルゲン抗原特異的Th2細胞Bリンパ球Th2活性化図1Th2型免疫反応(獲得免疫系の主体のアレルギー反応)アレルゲンが抗原提示細胞に取り込まれ,Th2細胞とB細胞を介して抗原特異的IgEが産生される.IgEはアレルゲンが再度体内に取り込まれると好塩基球やマスト細胞上に発現しているIgE受容体(FceRI)をクロスリンクし脱顆粒をを誘導する.アレルゲン・機械的刺激・寄生虫ー上皮細胞を傷害傷害された上皮細胞Th2細胞(獲得免疫の活性化)B細胞からのIgE産生IL-33によるILC2活性化図22型炎症反応の概念図上皮細胞が傷害されることで上皮細胞から産生・放出されるIL-33はマスト細胞,ILC2,Th2細胞を活性化する.Th2型のアレルギー反応に加えて自然免疫系の活性化による抗原非特異的なアレルギー炎症が病態を形成している.る自然リンパ球で,2型炎症反応の中核をなすCIL13と好酸球の活性化に重要なCIL-5を多量に産生することで,抗原非特異的にC2型免疫反応を引き起こすことが明らかになった.この発見によって,獲得免疫に依存しないアレルギー反応の存在がクローズアップされ,従来のTh2反応(獲得免疫)のコンセプトがC2型免疫反応(自然免疫+獲得免疫)へと進化することになるきっかけとなった.ILC2の概念の成立には日本の茂呂和世先生,小安重夫先生の研究グループが多大な貢献をされている.CII眼アレルギー疾患におけるIL-33の関与の発見筆者(松田)がなぜC2型炎症に興味をもち,眼表面におけるC2型炎症の研究に従事することになったのかを述べながら,アレルギー性結膜炎とC2型炎症との関係を説明してゆく.松田はアトピーの遺伝的背景を研究するためにC2000年に英国の研究所に留学した.留学中のテーマは当時はやっていた質量分析計を使ってのアトピー関連分子の機能解析という,今考えるとポスドクのテーマとしては無謀としかいいようのないものだった.2年間の留学後,横浜の理化学研究所で当時黎明期であった遺伝子多型とアトピー性疾患の相関を調べる研究に従事することになった.アトピー性皮膚炎の患者対照相関研究のプロジェクトを遂行していくなかで,筆者は候補遺伝子のリストにCST2(遺伝子名ではCIL1RL1)という遺伝子があることに注目した.この分子は自治医科大学生化学講座の富永眞一教授がクローニングし,Th2細胞に高発現することを同教室の柳沢健先生が見いだし,報告した.二人の先生との共同研究でアトピー性皮膚炎とST2の関連を論文としてC2005年に報告した1).その論文が公表されたC1カ月後に,当時リガンドが不明であったオーファン受容体であったCST2分子のリガンドとしてCIL-33がクローニングされたという論文が米国のDNAX研究所のグループから発表された2).2005年に筆者は京都府立医科大学眼科に移動し,IL-33と眼アレルギーの研究を始めた.当初CIL-33を研究する道具はまったくなく,唯一わかっていた遺伝子配列からリコンビナント蛋白を自作し,マウスの腹腔に注射したところ,著明な好酸球の浸潤を認め,IL-33がアレルギー反応に重要な分子であることを確信した.当時はまだタクロリムスの点眼が治験段階で,ステロイド点眼と抗アレルギー薬の点眼でコントロールできない眼瞼結膜の巨大乳頭を伴う春季カタル(vernalCkeratocon-junctivits:VKC)やアトピー性角結膜炎(atopicCkera-toconjunctivitis:AKC)の患者がおり,京都府立医科大学眼科の横井則彦先生の協力で治療目的に切除した巨大乳頭組織を収集し,IL-33がCVKCとCAKCの結膜組織において上皮細胞と血管内皮細胞に高発現していることを報告した3).CIIIマウスを使ったアレルギー性結膜炎研究1.IL-33欠損マウスの解析現在の免疫・アレルギー学の研究においては,特定分子の機能解析には遺伝子改変マウスを使用することが主流であり,IL-33のノックアウトマウスをなんとか作れないかと画策したが,CRISPR/Cas9システムを使える現在の状況とは異なり,一介の眼科医がノックアウトマウスを作るのはむずかしかった.2009年に筆者が順天堂大学眼科に移動した頃,東京大学医科学研究所の中江進先生が作製したCIL-33ノックアウトマウスの論文がCPNASに掲載された4).運よく中江先生は順天堂大学アトピー疾患研究センターの客員研究員も兼任されており,順天堂大学眼科の海老原伸行先生と免疫学の奥村康教授の紹介で中江先生とCIL-33ノックアウトマウスを使用した眼アレルギーの研究をスタートすることができた.アレルギー性結膜炎のマウスモデルとして普及しているブタクサ花粉誘発アレルギー性結膜炎モデルの導入には高知大学眼科の福島敦樹教授,福田憲先生に共同研究をお願いし,IL-33分子がマウスのアレルギー性結膜炎の発症に必須の分子であることを大学院生であった筆者(浅田)が報告した5).IL-33ノックアウトマウスを使った研究から判明したことは,IL-33分子を欠くとアレルギー性結膜炎の重症度が低下すること(図3),結膜組織におけるC2型炎症に関連するサイトカインCIL-4,CIL-13,IL-5の発現が有意に抑制されること,結膜組織における好酸球の浸潤数が減少すること,一方で血中の(53)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020C429野生型マウスIL-33欠損マウス図3ブタクサ花粉誘発マウスアレルギー性結膜炎上段:ブタクサ花粉を点眼してアレルギー性結膜炎を誘発.IL-33欠損マウスでは野生型マウスと比較して,結膜の充血,眼瞼の腫脹が軽症化している.下段:赤色はCIL-33の発現を,緑色は好酸球の局在を示す.IL-33欠損マウスでは好酸球の結膜への浸潤数が減少している.(文献C5より改変引用)図4パパインコンタクトレンズ誘発角結膜炎モデルの作製方法パパイン溶液に浸漬したC2Cmm径のソフトコンタクトレンズをマウスに装着させ(Ca),眼瞼をC1糸縫合し(Cb),5日後にコンタクトレンズを摘出(Cc)する.このようにして角結膜組織への好酸球の浸潤を伴う自然免疫依存のアレルギー性結膜炎のモデルを作製した.(文献C7より引用)CLacrimalGlandConjunctivaCervicalLymphnode図5パパインコンタクトレンズ誘発角結膜炎の結膜組織中のILC2細胞の存在マウスの涙腺(左),結膜(中央),頸部リンパ節(右)を摘出し,フローサイトメーターで解析.上段:獲得免疫系の細胞マーカーのカクテル抗体に対する反応が陰性でかつCIL-33受容体(ST2)陽性の細胞群を抽出,中段:その中からさらにCCD127陽性かつCCD25陽性細胞群を抽出,下段:さらにCCD90.1陽性細胞群を抽出し,ILC2細胞を同定した.涙腺組織と結膜組織にCILC2細胞の存在を確認した(赤丸印の中).(文献C7より引用)といったC2型炎症性サイトカインの発現亢進がみられ,獲得免疫系の細胞を欠くCRag2欠損マウスでも同程度の型炎症がみられることから,自然免疫系のアレルギー性結膜炎モデルであること,2)パパイン角結膜炎モデルの結膜組織には獲得免疫系の炎症細胞マーカーをもたず(lineageCnegative),CD25陽性,ST2陽性,CD127陽性,CD90.1陽性のCILC2細胞が存在すること(図5),ILC2細胞を抗CCD25抗体の全身投与で除去すると結膜組織への好酸球浸潤が抑制されること,3)パパイン角結膜炎モデルにおける自然免疫系依存のC2型炎症反応がIL-33欠損マウスとCTSLP受容体欠損マウスでは著しく減弱することを発見・報告した7).これらの結果から,眼表面においても抗原非特異的な自然免疫応答によるC2型炎症(アレルギー反応)が存在すること,自然免疫依存性のパパイン角結膜炎の病態において,ILC2細胞と上皮由来C2型炎症起始サイトカインのCIL-33とCTSLPが重要である可能性ことが示唆された.また,ヒトVKC患者由来の結膜巨大乳頭組織にもCILC2が存在することをCFACSで確認(未発表データ)しており,VKCやCAKCの病態にも自然免疫系のC2型炎症反応が関連している可能性が考えられる.CIVIL-33トランスジェニックマウスはアトピー性角結膜炎の表現型上述のパパイン角結膜炎モデルとほぼ同時期に,兵庫医科大学皮膚科の今井康友先生,山西清文教授のグループから,IL-33トランスジェニックマウスがアトピー性角結膜炎様の表現形を呈するとの報告がなされた.このマウスはヒトケラチンC14(皮膚,角膜,結膜といった上皮細胞の基底細胞層に発現するケラチン)のプロモーターの下流にマウスのCIL-33遺伝子を組み込んで,過剰発現させると無処置のマウスの血中CIgE濃度が上昇し,アトピー性皮膚炎様の炎症を生じるという報告8)に使われたマウスで,皮膚炎の解析が終了し,今井先生が留学したあとも,そのまま飼育されていた.飼育を担当していた人が,生後C20週を過ぎた頃から眼球が白くなる現象を発見,眼の解析をするために今井先生は留学先から呼び戻された(今井先生の談).このマウスの角結膜には何も刺激をしなくても加齢とともに好酸球,マスト細胞,好塩基球の浸潤が認められ,角膜上皮の角化を伴う角結膜炎の発症を認めた.さらに,このマウスの眼表面にはCILC2細胞の浸潤も確認されている.すなわち,IL-33が眼表面で過剰に産生されると,アレルゲンの暴露に関係なく,アトピー性角結膜炎様の表現形をとること,そこにはCILC2細胞の関与が示唆されることが明らかになった9).この結果はアレルゲン刺激が抗原特異的なもの(獲得免疫依存性)であっても抗原非特異的なもの(自然免疫依存性)であっても上皮からのCIL-33放出を引き起こす刺激であればC2型炎症性反応を眼表面にもたらすことを示しており,筆者らの研究結果とも矛盾しない結果と考えられる.CVヒトの慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態とILC2前項で自然免疫系の反応に依存するアレルギー性結膜炎を説明したが,実際のヒトの慢性重症アレルギー性角結膜炎では,ハウスダストをはじめとする多種のアレルゲンによる慢性の炎症反応が生じており,抗原特異的IgEを中心とした獲得免疫系の反応と,アレルゲンによって傷害された結膜上皮が放出するCIL-33/TSLPならびにCILC2を中心とした自然免疫系の反応が同時に進行していると考えられる.実際にヒト難治性CAKC患者由来の上眼瞼結膜乳頭組織を治療目的で採取したサンプルを用いて,次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析(RNA-sequencing:RNA-seq)を施行したところ,2型炎症反応の中心となるCIL-4,IL-13といったCTh2サイトカインのほかにC2型炎症起始サイトカインであるCIL-33遺伝子の発現が亢進し,ILC2の活性化にかかわる遺伝子群の発現亢進が認められた10).すなわち,マウスの実験データから考えられたC2型炎症を中心とするアレルギー性角結膜炎の病態仮説が,実際のヒト慢性アレルギー性角結膜炎のトランスクリプトーム解析においても矛盾のないことが示された.CVI今後の研究と臨床応用の方向性現在,臨床上問題となっているタクロリムスに抵抗する難治性のCAKC,VKCに対する治療戦略として,今後,自然免疫依存の炎症コンポーネントに対する介入が考え432あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(56)–

アレルギー性結膜疾患の発症と上皮バリア機能

2020年4月30日 木曜日

アレルギー性結膜疾患の発症と上皮バリア機能AllergicKeratoconjunctivalDisordersandBarrierFunctionsoftheEpithelium海老原伸行*はじめにアトピー性皮膚炎患者の多くに皮膚バリア機能の要になる角質形成に重要な分子であるフィラグリンの一塩基多型が認められることや,乳児期の経皮感作が引き続き発症するアトピーマーチ(アトピー性皮膚炎→食物アレルギー→喘息→アレルギー性鼻炎・結膜炎)の重要なイニシエーションであることが明らかになり,アレルギー発症における上皮バリア機能の重要性が注目されている.各種アレルギー性疾患動物モデルを使用した解析により,上皮バリア機能の破壊・低下はCTh2反応を惹起すること,また破壊されたタイトジャンクションの細胞間隙より細胞突起を伸ばしたCLangerhans細胞をはじめとする抗原提示能力をもつ樹状細胞によって抗原捕足され,全身感作が成立することなどが三次元イメージングで明らかになっている.さらに,上皮層はアレルギー性炎症における自然型アレルギー反応の発症に関与していることで注目されている.花粉やダニなどのプロテアーゼ活性をもつ抗原が上皮細胞を刺激すると,あるいは大量の抗原暴露によって上皮細胞がネクローシスに誘導されると,damageCassociatedCmolecularpatterns(DAMP)であるCIL-33やCATPが放出される.また,上皮由来CTh2誘導サイトカインであるCTSLPやCIL-25が産生され,新しく同定された自然リンパ球であるCinnateClymphoidCcellC2(ILC2)を刺激して多量のCIL-13・IL-5を産生し,T細胞の関与なしでアレルギー反応が起動される.自然型アレルギーについては本特集の松田彰先生の項(p.00)を参照していただければ幸いである.本稿では,オキュラーサーフェスの最大のバリア機構である涙液層に注目する.まず①肥満細胞顆粒蛋白であるキマーゼや抗原由来プロテアーゼと涙液中のプロテアーゼインヒビターの相克について,次に②オキュラーサーフェスにおける膜型ムチンとCgalectin-3の結合によって形成されるグリコカリックス(glycocalyx)構造の破壊と自然型アレルギー反応の発症について,③新しいバリア機能低下メカニズムであるオンコスタチンCM(oncostatin-M:OSM)による結膜上皮間葉系移行とバリア機能の低下について,最後に④重症アレルギー性結膜疾患のバリア機能と⑤治療戦略について述べる.CI涙液中のプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターとの相克1.涙液中のキマーゼとバリア機能低下春季カタルをはじめとする重症アレルギー性結膜疾患患者の涙液中には肥満細胞由来の顆粒蛋白であるキマーゼ(chymase)が高濃度で存在している1)(図1).培養ヒト角膜上皮細胞に実際に重症春季カタル患者で検出できる同活性のキマーゼを添加すると,タイトジャンクション関連蛋白であるオクルーディンやCZO-1の発現が低下し,バリア機能が低下する.バリア機能の低下は,CtransCelectricalresistance(TER)法でキマーゼ添加前後の電位差が減少することで明らかになる(図2).添加*NobuyukiEbihara:順天堂大学医学部附属浦安病院眼科〔別刷請求先〕海老原伸行:〒279-0021千葉県浦安市富岡C2-1-1順天堂大学医学部附属浦安病院眼科C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(43)C419涙液中トリプターゼ春季カタルの巨大乳頭活性(mU/ml)r=0.1999(NS)76543210071319角膜重症度涙液中キマーゼ脱顆粒直前の肥満細胞(電子顕微鏡像)活性(mU/ml)r=0.9245(p<0.001)32.21.10.0(EbiharaNetal:CurrEyeRes28:417-420,2004)図1春季カタル患者涙液中のトリプターゼ,キマーゼ活性春季カタル巨大乳頭組織には多数の脱顆粒した肥満細胞が存在する.脱顆粒すると顆粒内プロテアーゼであるトリプターゼやキマーゼが放出される.両プロテアーゼとも春季カタル患者涙液中に高活性に存在するが,キマーゼのみが角膜の重症度スコアと相関する.071319角膜重症度(海老原伸行ほか:日眼会誌,112:581-589,2008)140120TransepithelialElectrical100ResistanceChopstick-typeelectrodesElectricalmeter角膜上皮細胞W.cm2(Kashiwagietal:Ophthalmologica215,2001)(EbiharaNetal:CurrEyeRes30:1061.1069,2005)図2角膜上皮細胞のバリア機能に対するキマーゼの作用TER法によってキマーゼ添加で電位差が低下しバリア機能が低下していることがわかる.806040200真菌,ウイルス,プロテアーゼ(加畑宏樹ほか:アレルギー疾患研究,2013)図3自然型アレルギーと獲得型アレルギー表1涙液中のprotease.inhibitor表2a1.AT,SLPIのchymase,trptaseに対する作用R(re.ex)C(closed)(ng/Cμl)(ng/Cμl)Calp1(alphaC1-proteaseinhibitor)C1.3±0.4C30±6.6Cal-Achy(alphaC1-antichymotrypsin)<1C7.2±2.1SLPI(secretoryleukocyteproteaseinhibitor)C8.1±1.4C52±5.6Cela.n<C0.1-2C1-2Ca2-M(alphaC2-macroglobulin)C2.0±1.0C21±1.5CCystainCC4±1.5C19.7±6.0(SatheSetal:CurrEyeRes17:348-362,C1998)涙液中のプロテアーゼインヒビターではCSLPIがもっとも高濃度に存在する.肥満細胞の脱顆粒抗原ドライアイ肥満細胞キマーゼ抗原プロテアーゼ>内因性プロテアーゼインヒビター(SLPI)(↓)TGF-b1結膜のタイトジャンクション蛋白の分解・炎症バリアの破壊好酸球抗原の結膜固有層への侵入抗原+IgE肥満細胞の活性化・脱顆粒アレルギー反応・発症の増悪図4涙液中のプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターとの相克図5巨大乳頭組織におけるTGF.b1の陽性細胞春季カタル巨大乳頭組織中のCTGF-b1陽性細胞は好酸球である.(OhtomoKetal:ExpEyeRes91:748-754,C2010)ムチン(分泌型,膜型)PARPARPARPARTolllikereceptorTSLP活性化DC炎症Th2細胞IL-25IL-33図7ムチンは自然型アレルギー反応の発症を抑制するAllergenseosinophilsTGF-b1Dryeyeprotease>SLPI(↓)MUCIN(↓)←in.ammation(IL-6I・L-8)PARDryeyeIL-33TSLPinvasionofantigensundertheepitheliumILC2activateDCAntigen-IgE(IL-5・IL-13)TH2in.ammatorycells図8アレルギー性炎症とバリアとしての涙液層-

結膜充血の診断と眼アレルギー診療へのAIの応用

2020年4月30日 木曜日

結膜充血の診断と眼アレルギー診療へのAIの応用DiagnosisofConjunctivalHyperemiabyAIandItsApplicationinOcularAllergyTreatment田淵仁志*升本浩紀**米田剛***角環****福島敦樹*****はじめに結膜充血は眼科診療においてもっとも一般的な所見の一つである.さまざまな要因による結膜炎はもちろんのこと,ぶどう膜炎,緑内障発作による眼圧上昇,点眼薬の副作用など,多くの眼疾患の一徴候として結膜充血は日常的にカルテに記載される.たとえば,緑内障点眼薬の副作用として結膜充血は重篤な問題ではないとはいえ,比較的重要である.なぜなら整容面を気にかける患者からの点眼後の結膜充血の訴えは強く,薬剤コンプライアンスに実質的に悪影響があるからである.したがって,緑内障点眼後の結膜充血反応について個別に臨床試験が行われてきた.その際に問題になるのが結膜充血の程度判断である.現在結膜充血を重症度別に分類した診断システムに,日本眼科アレルギー学会提唱の結膜充血重症度分類がある1).この診断システムは提示されている標準写真を参考にして,判定者が充血の原因となっている結膜血管の拡張の程度を充血なしを含めて4段階で判定するものである.この重症度分類は前述した緑内障点眼薬の臨床試験で実際に用いられている2).この主観的判定システムの問題点はすでにいくつか指摘されている.米田らはこの判定システムによるエキスパート間の一致度の低さを報告し,さらに判定を客観的に行うための結膜撮影専用システムとその画像を用いた分析アプリケーションを考案している.ただこのシステムの実臨床への応用には,煩雑さの問題を解決する必要がある点を,米田自身が認めている3).一方で最近になって,医療分野への応用研究が盛んに報告されているのが深層学習(deeplearning)とよばれる機械学習を用いた自動診断手法である.眼科領域でも糖尿病網膜症を皮切りに,緑内障,加齢黄斑変性,網膜.離など数多くの疾患で報告が相次いでいる4).その撮影装置も多岐にわたっており,通常の眼底カメラ,OCT,広角眼底カメラなどである.深層学習を用いた診断,判断システムの利点はその適応範囲の広さと経済効率性の高さである.たとえば,多少の画像の位置ずれや,ピントの問題などを学習過程で内包させることが可能であるために,実臨床での使用範囲が広い可能性が指摘されている.さらに学習過程には多大なコンピューター演算が必要であるが,実際の判定は単純化された四則計算で行われるために,非常に軽い演算能力で実臨床に応用可能である点も普及が期待される所以の一つである.すなわち充血所見判定を深層学習で自動的に行うシステムには,原理的に臨床応用への可能性が示唆されるわけだが,筆者らの知る限りその試みは筆者らのチームだけが行っている.本稿では細隙灯顕微鏡画像,および前眼部計測装置画像への人工知能(arti.cialintelligence:AI)応用の取り組み,さらにvirtualprivatenetwork(VPN)で接続された複数施設での検討を紹介する.*HitoshiTabuchi:ツカザキ病院眼科,広島大学大学院医系科学研究科**HirokiMasumoto:ツカザキ病院眼科***TsuyoshiYoneda:川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科****TamakiSumi:高知大学医学部眼科学講座*****AtsukiFukushima:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕田淵仁志:〒671-122兵庫県姫路市網干区和久68-1ツカザキ病院眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(35)411Score(0)軽度(1)中等度(2)高度(3)結膜充血所見なし数本の血管拡張多数の血管拡張全体の血管拡張図1日本眼科アレルギー学会結膜充血重症度判定基準写真(文献1より引用)図2ツカザキ病院眼科データベースより抽出した結膜充血判定用スリット画像回答は平視能訓練士4人均する使用データ専門医1人872枚1,000枚1,000枚ミスなど128枚図3事前判定者評価およびモデル評価用データフロー前半2,004枚回答一致使用データ視能訓練士2人で2,707枚3,816枚4,008枚後半不一致2,004枚1,209枚専門Dr視能訓練士2人でミスなど92枚診断不能50枚図4AIモデル作成用データフロー表1日本眼科アレルギー学会認定専門医1名と視能訓練士4名のweighted.k係数opponentFukMatNisOhiOkaFukMatNisOhiOka10.7165990.7553710.7316010.7120630.71659910.6406430.7623760.7826090.7553710.64064310.6619160.6304740.7316010.7623760.66191610.7708430.7120630.7826090.6304740.7708431(Fuk=日本眼科アレルギー学会認定専門医,Mat,Nis,Ohi,Oka=視能訓練士)てC92枚が判定用画像から失われた.残りのC3,916枚について,2名の判定が一致したC2,707枚は一致したグレードをそのまま採用し,グレードが不一致であった1,209枚の画像は日本眼科アレルギー学会専門医が最終判定を行った.この際,100枚について日本眼科アレルギー学会専門医が診断不能の判定を下した.C5.AIモデル作成画像データをC5ブロックに均等に分割した.そのうち,4ブロックの画像を学習用として,残りのC1ブロックをテスト用として使用した(K-FoldCCrossCValida-tion).学習用データに対して画像処理を行いC18倍に増幅した.画像増幅処理は,コントラスト調整,Cg補正,ヒストグラム均一化,ノイズ付加,反転で構成した.増幅された画像を対象にC6種類のCDNN(DeepCNeuralNetwork)(VGG16,VGG19,ResNet50,InceptionV3,InceptionResNetV2,Xception)訓練を行い,モデルを構築した.それぞれのモデルを用いて,テストデータに対してテストを行い,モデルの評価を行った.この作業をC5回行うことで,すべてのブロックがテスト用として使用されるようにした.C6.DeepLearningModelandTrainingtheModel今回用いたCDNNのうち代表的なCVGG16とよばれる深層学習モデルを説明する.VGG16はCConvolutionLayerとCMaxPoolingCLayerからなるCblockがC5つと,全結合層に分かれる.まず,入力された画像はすべてC256×192pixelsに事前に変換し,0-255のCRGBで読み込み,それをC255で割ることでC0-1の範囲に正規化した.ConvolutionalLayerは,畳み込みフィルターを通して対象の特徴量を取得する.各ブロックの最後にはCMaxPoolingLayerを配置した.MaxPoolingLayerは畳み込み層からの出力された特徴量の位置感度を落とし,より汎用的な認識が行えるようにする.最後に三次元の行列を平滑化したうえで,全結合層CFullyConnec-tionLayerをC2層配置し,softmax関数によりC2クラス分類を行った.全結合層は,抽出された特徴量から空間的な情報をそぎ落とし,それ以外の特徴ベクトルから統計的に対象を識別するための層である.最初の全結合層にC25%の確率でマスクを行うようドロップアウト処理をした.ドロップアウト処理の目的は,学習の過程で過学習が起きないように,汎化性能の向上を図ることである.あらかじめ別のデータで,学習済みであるパラメータを利用する転移学習(.ne-tuning)という方法を用いた.学習速度が速くなり,少ないデータでも高い性能が出やすくすることが目的である.パラメータはCImageNetのものを用いて,block1.4までは固定,blockC5と全結合層のみを調整した.最初のこの重みは確率的勾配降下法の一つであるCMomentumSGD(学習係数=0.001,慣性項=0.9)という最適化アルゴリズムに従って更新を行った.モデルの構築および評価はCPythonのtensor.ow(https://www.tensor.ow.org/)がバックエンドで動くCkeras(https://keras.io/ja/)を用いて行った.C7.AIモデル複合評価(アンサンブルメソッド)作成されたC6種類の学習モデルを組み合わせて,評価用データC872枚についての判定を行い,エキスパート判定との一致度を検討した.この際エキスパートの判定は平均値を採用した.6つのCDNNモデルの半数がエキスパートの回答に一致していた場合を正答とすると正答率はC83.5%であった.実際のモデルによる回答の例を図5に示す.代表モデルであるCVGG16による判定はCExpert1,CExpert2とCweighted-kでそれぞれC0.76,0.78であり,CExpert1とCExpert2のCweighted-kはC0.73であった.すなわち,AIモデルによる判定とエキスパート判定とのズレは,エキスパート判定同士の判定のズレよりも小さかった.つまり,AIは人間と人間の間を取るように学習を行っているということになる(図6).C8.客観的指標との相関それではCAI判定結果と,米田らが開発してきた球結膜の血管占有面積比率3)を指標とする客観的指標(図7a)との相関関係はどうなっているのだろうか.筆者らの検討によると,その結果も良好なものであり,相関係数はC0.74と非常に高いものであった(図7b).414あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(38)図5六つのDNNモデルを用いた複合モデル学会判定回答確率表示の1例0.8Expert10.780.780.760.760.760.740.730.73AI0.720.70.78VGG16Expert1Expert1Expert2Expert2VSVSVSExpert2AIAI図6AIとエキスパート判定1と2の一致度(weighted.k係数)の関係カッパ係数は高いほど一致度が高い.人間同士よりCAIと人間のほうが近い判定を下している.a5.2%9.5%13.0%33.4%a:米田らによる血管占有面積比率指標計測の実際.矩形で囲まれた領域で血管を計測(緑色).画像下部にそれぞれの比率値%を記載.b:AI判定結果(X軸)と米田らによる血管占有面積比率指標の相関関係グラフ*:Kruskai-Wallistestp<0.01**:Steel-Dwasstestp<0.01図7血管占有面積比率ab図8前眼部計測装置と多施設での検討a:MR6000で撮影した前眼部写真とこの画像に対する最適化後CAIモデル判定結果.b:ベースAIモデル作成に必要だった画像枚数と,このデバイスに最適化するために必要だった追加画像枚数の比較グラフ.-

眼表面常在細菌叢とアレルギー -次世代シークエンス解析への期待

2020年4月30日 木曜日

眼表面常在細菌叢とアレルギー─次世代シークエンス解析への期待OcularSurfaceMicrobiomeandAllergy─ExpectationsforNext-GenerationSequencingAnalysis堀田芙美香*はじめに微生物叢(マイクロバイオーム)とは,細菌,真菌,ウイルス,原虫などのすべての微生物を含む,微生物の総体を表す言葉である.このなかでも,とくに細菌の総体は「細菌叢」とよばれ,特定の部位において安定的に定着・増殖する細菌群は「常在細菌叢」とよばれる.ヒトの体のさまざまな部位には常在細菌叢が存在することが知られている.常在細菌叢は,その菌種構成に偏りがなく多様であることが重要であり,菌同士が絶妙なバランスで存在する(共生関係,symbiosis)ことにより,宿主の生理機能の恒常性が維持されており,また病原微生物の侵入や増殖を防いでいると考えられている.ヒトの常在細菌叢の代表といえば腸内細菌叢であるが,この分野の研究は近年めざましい発展をとげている.抗菌薬により腸内細菌叢の共生関係が破綻(dysbiosis)した結果,偽膜性腸炎を発症することは以前からよく知られているが,近年の菌叢研究により,腸内細菌叢のCdysbio-sisは,肥満,糖尿病,自己免疫性疾患,炎症性腸疾患など,感染症以外のさまざまな疾患とも関連することが明らかになってきている.CI培養法を用いた眼表面常在細菌叢の解析眼表面にも常在細菌叢が存在すると考えられている.図1は培養法で眼表面の常在細菌叢を検討した結果である1).眼表面からは,表皮ブドウ球菌(Staphylococcusepidermidis),Propionibacteriumacnes(現CCutibacteri-StaphylococcusepidermidisStreptococcusoralisPropionibacteriumacnesPropionibacteriumgranulosumCorynebacteriumspp.StreptococcusmitisStaphylococcusaureusStaphylococcuslugdunensisEnterococcusfaecalisその他図1培養法で検討した眼表面の常在菌眼表面からはCStaphylococcusepidermidis,Propionibacteriumacnes(現CCutibacteriumacnes),Corynebacterium属が高頻度に分離される.(文献C1より一部改変引用)Cumacnes),Corynebacterium属が高頻度に分離され,これらC3属で全分離株のC4分のC3近くを占めている.これらC3属は,他の報告においても分離頻度が高く2),そのため眼表面の常在細菌叢を構成する代表菌種と考えられてきた.しかし,培養法における結果が本来の常在細菌叢を表しているかは疑問といわざるをえない.なぜなら,培養法では,培養が比較的容易な細菌しか分離できないためである.眼表面は外界と接していることから,環境菌が眼表面に移行し定着している可能性がある.しかし,環境菌のほとんどは難培養菌もしくは培養不可能*FumikaHotta:近畿大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕堀田芙美香:〒589-8511大阪府大阪狭山市大野東C377-2近畿大学医学部眼科学教室C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(29)C405①②③サンプル採取16SrDNA3’5’V1V2V3V4V5V6V7V8V93’5’R.primer5’3’3’5’さらにPCRを行い,ターゲット領域にF.primerAdaptor配列()とIndex配列()をDNA抽出ターゲット領域をPCRで増幅する.付加する.④⑤⑥SampleBSampleASampleC解析ソフトを用いてデータを解析する.①~③まで行った各検体の次世代シークエンサーでPCR産物をすべて混合する.塩基配列を決定する.図2メタ16S解析のプロトコール①.⑤の順で作業を行い,最後に解析ソフトを用いてシークエンスデータを解析する(⑥).(%)10090Stenotrophomonas80Haemophilus70NeisseriaSphingomonas60Agrobacterium50PhyllobacteriumStreptococcusPrevotella4030Propionibacterium20Corynebacterium100ABC図3菌叢の組成症例A,B,Cから採取した検体において,各菌種が菌叢のどの程度の割合を占めているか(%)がグラフで表されている(凡例の一部を省略).F2(13.59%)1050-5-10図4主成分分析各検体の菌叢の特徴が二次元座標として表されている.プロットの位置が近ければ近いほど,互いの菌叢構造は類似していることを示す.-15-10-5051015F1(20.27%)PseudomonasHaemophilusCorynebacteriumNesterenkoniaDelftiaStaphylococcusVeillonellaGranulicatellaStreptococcusAcinetobacterBrevibacteriumその他Bradyrhizobium図5メタ16S解析で検討した眼表面常在細菌叢代表例の菌叢解析結果.Pseudomonas属が最優位菌であるなど,培養法での結果と大きく異なる.(文献C5より一部改変引用)VeillonellaStreptococcusMannheimiaUnclassi.edHaemophilusその他図6涙.分泌物のメタ16S解析結果培養法では分離されなかった細菌が複数検出され,偏性嫌気性菌であるCVeillonella属が最優位菌であった.図7被災地の大気マイクロバイオームの主成分分析陰性コントロールだけの群,それに近い群,およびそれ以外の群のC3グループに分けられ,大気の採取地により菌叢の特徴は異なっていた.(文献C13より引用)C–

バイオマーカーによる眼アレルギー検査

2020年4月30日 木曜日

バイオマーカーによる眼アレルギー検査Biomarkers-BasedOcularAllergyTest庄司純*はじめにアレルギー性結膜疾患における眼アレルギー検査は,診断,重症度判定および治療効果判定を補助する眼科臨床検査である.現在,眼アレルギー検査として用いられている検査は,涙液総IgE検査と結膜擦過塗抹標本による好酸球検査である.涙液総IgE検査は高い感度と特異度によりアレルギー性結膜疾患の準確定診断に,好酸球検査は感度がやや低いものの特異度に優れ,アレルギー性結膜疾患の確定診断に用いられている1).しかし,両検査では重症度判定や治療効果判定を行うことは困難であるという眼アレルギー検査の限界が示されている.一方,バイオマーカーは,疾患特異性が高く,その測定値が疾患の重症度や治療を反映して増減する物質である2).したがって,バイオマーカーを用いた眼アレルギー検査が確立されれば,アレルギー性結膜疾患の診断と治療とを大きく発展させる眼科検査になるであろうと考えられる.しかし,バイオマーカーとして同定した物質を眼アレルギー検査として実用化するためには,検体は何を使うか,検査に要する時間と費用は妥当かなど,乗り越えなくてはならないハードルがいくつか存在する.本稿では,バイオマーカー探索の道のりと,バイオマーカーを用いた眼アレルギー検査の実際と今後について述べる.Iアレルギー性結膜疾患の病態とバイオマーカーの探索1.獲得型アレルギーCoombsとGell分類のI型アレルギー(即時型アレルギー)反応は,獲得型アレルギーとよばれるようになった.即時型アレルギー反応は,抗原侵入から20~30分後に発症する即時相と抗原侵入後6~12時間以降に発症する遅発相とからなる二相性反応と考えられている(図1).即時相は,マスト細胞の表面に発現されている高親和性IgE受容体(FceRI)を介して結合した抗原特異的IgE抗体が,外来からの抗原と反応することでマスト細胞が脱顆粒を起こし,ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが放出される反応である.獲得型アレルギーの即時相を狙ったバイオマーカーとしてはヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが検討されているが,眼アレルギー検査として有望なケミカルメディエーターの確立には至っていない.遅発相は,好酸球や2型ヘルパーT細胞(Th2)を主体とした細胞浸潤によりアレルギー炎症を生じる反応である.遅発相を狙ったバイオマーカーとしては,炎症細胞浸潤に関連するケモカイン,好酸球が放出する物質,Th2が産生するサイトカイン,その他のアレルギー炎症関連物質などが眼アレルギー検査のバイオマーカーとして検討されている(表1).*JunShoji:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕庄司純:〒173-8610東京都板橋区大谷口上町30-1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(19)395獲得型アレルギー030min6hr48hr即時相遅発相IgEMastcellEosinophils,lymphocytesEpithelialcellAlarmin(TSLP,IL-33)IL-5IL-13Innatelymphocytetype2(ILC2)図1アレルギー炎症マスト細胞の脱顆粒に関しては,獲得型アレルギーによるIgE抗体依存性反応と自然型アレルギーによるIgE抗体非依存性反応とがある.好酸球炎症に関しては,獲得型アレルギー反応の遅発相で生じるほか,自然型アレルギー反応の2型自然リンパ球(ILC2)が放出するサイトカインによっても生じる.IL:interleukin,TSLP:thymicstromallymphopoietin.表1アレルギー炎症に関連する代表的サイトカイン.ケモカインサイトカイン・ケモカイン受容体作用2型炎症関連サイトカイン(Th2・ILC2)IL-4IL-5IL-13IL-4RIL-5RIL-4R・IL-13R1IgE産生亢進好酸球分化・好酸球浸潤好酸球炎症・粘膜異形成Th2関連ケモカインMDC/CCL22TARC/CCL17CCR4CCR4Th2遊走Th2遊走自然免疫関連サイトカイン(アラーミン)TSLPIL-25IL-33IL-7Ra・TSLPRIL-17RBIL-33Ra・IL-1RAcPTh2誘導ILC2による2型炎症関連サイトカイン産生亢進ILC2による2型炎症関連サイトカイン産生亢進好酸球関連ケモカインEotaxin-1/CCL11Eotaxin-2/CCL24Eotaxin-3/CCL26MCP-4CCR3CCR3CCR3CCR3好酸球遊走好酸球遊走好酸球遊走好酸球遊走Th2,helperTcelltype2;ILC2,innatelymphocytetype2;:interleukin;:macrophage-derivedchemokineTARC,thymusandactivation-regulatedchemokine;TSLP,thymicstromallymphopoietin;MCP,monocyteche-motacticprotein=涙液検査眼表面検査採取方法(濾紙法)Schirmer試験Impressioncytology保存方法-80℃①濾紙のまま保存②溶出後保存-4℃(RNAlater中で保存)測定方法・ビーズアッセイ法・抗体アレイ法・IC,ELISA蛋白・PCRarray・Real.timePCRmRNAIC:immunochromatography,ELISA:enzyme.linkedimmunosorbentassay,PCR:polymerasechainreaction.図2眼アレルギー検査と検体採取法Schirmer試験に準じて採取した涙液は,涙液中に含まれるサイトカインやケモカインなどの蛋白測定が可能である.Impressioncytologyで採取した眼表面被覆液と表層の上皮細胞からはmRNAを抽出してmRNAの発現量が測定可能である.100101平均値(ng/ml)7.430.0147.0172.84687.6診断率30.1%78.6%53.8%100%涙液ECP値(ng/ml)100,00010,0001,000SteelDwasstest*:p<0.05**:p<0.01**NS:notsigni.cant対照SACPACAKCVKCSAC:seasonalallergicconjunctivitis,PAC:perennialallergicconjunctivitisAKC:atopickeratoconjunctivitis,VKC:vernalkeratoconjunctivitis図3アレルギー性結膜疾患における病型別涙液ECP値涙液Ceosinophilcationicprotein(ECP)値が健常域(<20Cng/ml)を超えた検体を陽性として診断率を算出した.涙液CECP値の測定値は重症度判定に役立つ.涙液中eotaxin-2値(ng/ml)a**b1,000**1,000涙液中eotaxin-2値(ng/ml)100101001010.10.011CACAKCVKC0.010.1110100涙液中ECP値(μg/ml)図4涙液中eotaxin.2値a:アトピー性角結膜炎(atopicCkeratoconjunctivitis:AKC)群および春季カタル(vernalCkerato-conjunctivitis:VKC)群の涙液中Ceotaxin-2値は,アレルギー性結膜炎(allergicconjunctivitis:AC)群と比較して有意に高値を示した(*:p<0.01).b:アレルギー性角結膜炎全体では,涙液中Ceotaxin-2値は,涙液中CeosinophilCcationicprotein(ECP)値と有意な相関を示した(p=0.68,p<0.005).涙液検査・眼表面検査における好酸球炎症関連バイオマーカーBiomarkerCorrelationmarkerCorrelationcoe.cientP-value文献Eotaxin-2(protein)Eotaxin-2(mRNA)H4R(mRNA)ECP(protein)臨床スコアEotaxin-2(mRNA)r=0.68r=0.80r=0.83p<0.005p<0.01p<0.01文献6)文献9)文献8)H4R:histaminH4receptor,ECP:eosinophilcationicprotein.蛍光抗体法(眼脂塗抹標本)図5好酸球炎症のバイオマーカー涙液検査と眼表面検査とにより,ECP,eotaxin-2,H4Rと臨床スコアとの間には相関関係があることが示されている.好酸球の特異顆粒中に含有されるCmajorCbasicprotein(MBP)とCeosinophilCcationicprotein(ECP)は二重染色により検討され,結膜擦過物中の好酸球にCH4RとCeotaxin-2とが陽性であることが示された.初診時(涙液ECP値2,140ng/ml)治療後4週(涙液ECP値121ng/ml)図6タクロリムス点眼治療を行い涙液ECP値でモニタリングした春季カタルの症例症例は春季カタルと診断されたC14歳,男子.タクロリムス点眼薬と抗アレルギー点眼薬とによる二者併用療法で治療した.治療開始時には涙液CECP値がC2,140Cng/mlであったが,治療開始後C4週間では,他覚所見の軽に伴い涙液CECP値はC121Cng/mlに低下した.SteelDwasstest*:p<0.01NS:notsigni.cant*IL-8(pg/ml)NS*7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000対照CL装用者GPC図7涙液IL.8値涙液CIL-8値は,コントロール(対象)症例と眼合併症がみられないコンタクトレンズ(contactlens:CL)装用者との間に差はみられない.また,涙液CIL-8値は,コントロールおよびCCL装用者と比較して巨大乳頭結膜炎(giantCpapillaryCconjunctivitis:GPC)症例では,有意に増加している.mRNA発現が増加するような巨大乳頭結膜炎や重症春季カタルでは,獲得型アレルギー反応に加えて,Th17関連炎症や酸化ストレス関連炎症の関与が疑われるため,春季カタルの難治化予防を考慮して,さらに詳細な病態解明が急がれている.Cc.ペリオスチンペリオスチンは,分泌型の細胞接着蛋白質で,細胞外マトリックス蛋白質の一種である.フィブロネクチンやネイシンCCなどの細胞外マトリックス構成蛋白質と接着し,組織構築や線維化に関与する機能のほかに,細胞表面のインテグリン分子を介して細胞機能を調節するマトリセルラー蛋白質としての作用も有する20).アレルギー疾患では,IL-13により誘導されるアレルギー炎症により組織中の発現が増加することが知られており,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,好酸球性食道炎などでは病変部にペリオスチンが高発現していることが報告されている.また,気管支喘息では,血中ペリオスチン値がCTh2型喘息や小児喘息のよい指標になることが示され21),抗CIgE抗体療法や抗CIL-13抗体療法のバイオマーカーであることが報告されていることから,ペリオスチンは,気管支喘息診断におけるバイオマーカーとして有用なだけでなく,2型炎症,リモデリング,ステロイド抵抗性などのバイオマーカーとしても活用できる可能性が示されている22).アレルギー性結膜疾患では,Fujishimaらにより,涙液中ペリオスチン値がアレルギー性結膜疾患の診断と春季カタルやアトピー性角結膜炎治療のよいバイオマーカーになることが示された23).現在,涙液検査における有望なバイオマーカーとして期待され,眼アレルギー検査への応用の検討が続けられている.おわりにアレルギー性結膜疾患と総称される疾患の中には,季節性アレルギー性結膜炎と春季カタルのように,明らかに病態が異なる疾患が含まれている.これらの疾患に共通するバイオマーカーの発見と臨床応用が理想ではあるが,現在の所まだ見つかっていない.しかし,複数のバイオマーカーを組み合わせて使用することで,徐々に眼表面の炎症病態がみえてくるようになっている.血液検査の代わりに眼科医が行う眼アレルギー検査により,より適切な治療薬選択が行われ,アレルギー性結膜疾患の難治化が予防できるようになることを願っている.文献1)庄司純,内尾英一,海老原伸行ほか:アレルギー性結膜疾患診断における自覚症状,他覚所見および涙液総CIgE検査キットの有用性の検討.日眼会誌116:485-493,C20122)庄司純:アレルギー性結膜疾患のバイオマーカー.アレルギー62:641-651,C20133)KoyasuS,MoroK:Type2innateimmuneresponsesandthenaturalhelpercell.Immunology132:475-481,C20114)ShojiCM,CShojiCJ,CInadaN:ClinicalCseverityCandCtearCbio-markers,eosinophilcationicproteinandCCL23,inchronicallergicCconjunctivalCdisease.CSemiCOphthamolC33:325-330,C20165)室本圭子,庄司純,稲田紀子ほか:季節性アレルギー結膜炎における涙液中CeosinophilCcationicproteinの測定.日眼会誌110:13-18,C20066)ShojiCJ,CInadaCN,CSawaM:EvaluationCofCeotaxin-1,C-2,CandC-3CproteinCproductionCandCmessengerCRNACexpres-sionCinCpatientsCwithCvernalCkeratoconjunctivitis.CJpnJOphthalmolC53:92-99,C20097)FukagawaCK,COkadaCN,CFujishimaCHCetal:CornealCandCconjunctivalC.broblastsCareCmajorCsourcesCofCeosinophil-recruitingchemokine.AllergolInt58:499-508,C20098)InadaCN,CShojiCJ,CShirakiCYCetal:HistamineCH1CandCH4CreceptorCexpressionConCocularCsurfaceCofCpatientsCwithCchronicCallergicCconjunctivalCdiseases.CAllergolCIntC66:C586-593,C20179)ShirakiY,ShojiJ,InadaN:Clinicalusefulnessofmonitor-ingCexpressionClevelsCofCCL24(eotaxin-2)mRNAConCtheCocularsurfaceinpatientswithvernalkeratoconjunctivitisandCatopicCkeratoconjunctivitis.CJCOphthalmolC2016:C3573142,C201610)原田奈月子,稲田紀子,石森秋子ほか:春季カタルにおけるタクロリムス点眼治療の臨床経過の報告.日眼会誌C118:378-384,C201411)藤澤隆夫,長尾みづほ,野間雪子ほか:小児アトピー性皮膚炎の病勢評価マーカーとしての血清CTARC/CCL17の臨床的有用性.日本小児アレルギー学会誌C19:744-757,C200512)玉置邦彦,佐伯秀久,門野岳史ほか:アトピー性皮膚炎の病勢指標としての血清CTARC/CCL17値についての臨床的検討.日皮会誌116:27-39,C200613)堀眞輔,庄司純,稲田紀子ほか:タクロリムス点眼液0.1%で治療した春季カタル症例の涙液中アレルギー関連因子の検討.日眼会誌115:1079-1085,C201114)FodorCM,CFacskoCA,CRajnavolgyiCECetal:EnhancedCreleaseCofCIL-6CandCIL-8CintoCtearsCinCvariousCanteriorCsegmenteyediseases.OphthalmicRes38:182-188,C2006402あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(26)-

アレルギー性結膜炎とプロバイオティクス

2020年4月30日 木曜日

(23)かのぼり,生乳の入った容器に乳酸菌が入り込んでできた偶然の産物であるといわれている.ノーベル生理学・医学賞を受賞したIlyaIlyichMechnikov博士が,ブルガリア人が長寿であることを発見し,その原因を現地の伝統食品であるヨーグルトであると考え,『ヨーグルト不老長寿説』を発表したことによって,ヨーグルトは健康食品として世界から注目されるようになった.IIプロバイオティクスの抗アレルギー効果腸内の微生物細菌叢の存在は,免疫寛容の発達を促進すると考えられている2).この考えの下,プロバイオティクスを摂取することにより腸内細菌叢を整えることがアレルギー疾患のコントロールに有用ではないかとされ,さまざまな研究が行われてきた.実際,マウスモデルにおいては,ヨーグルトの摂取によりIgEや各種アレルギー関連のサイトカインの産生が抑制されることが証明されている3).ヒトにおいても,アトピー性皮膚炎,湿疹,喘息,アレルギー性鼻炎などに対する抗アレルギー効果に対し,ランダム化比較試験が多数施行されている.たとえば,妊娠中および授乳中の母親がヨーグルトを摂取すると,乳幼児のアトピー性皮膚炎,湿疹などアレルギー性皮膚疾患の発症を有意に抑制したと報告されている4).また,アレルギー性鼻炎においても,ヨーグルトの摂取により症状の緩和,末梢血のサイトカイン産生を抑制している5).一方,喘息では,3千人余りの子供を対象にしたメタ解析でプロバイオティクス摂取によIプロバイオティクスとはプロバイオティクス(probiotics)とは,人体によい影響を与える微生物自体,またはそれらを含む製品,食品のことをさす.抗生物質(antibiotics)が他の微生物の発育を阻害する物質であるのに対し,プロバイオティクスはラテン語のpro(~とともに)という接頭語が付いており,微生物を殺すのではなく,ともに共生していくという意味で,対比して用いられることも多い.人間の体内には,人体を構成する細胞より多数の微生物が存在しているといわれており,この微生物のバランスが崩れると病気になるという概念がかなり以前より提唱されてきた.そのため,体内の微生物の環境を整えることにより,体調が改善したり,病気の発症が予防できるとも信じられている.「probiotics」を文献検索すると,1950年代からこの用語は登場しているが,現在いわれている「腸内フローラのバランスを改善することにより宿主の健康に好影響を与える微生物」と定義されるようになったのは1980年代である1).ヨーグルトはプロバイオティクスとしてもっとも受け入れられている食品である.世界保健機関(WorldHealthOrganization:WHO)では,「ヨーグルトとは乳および乳酸菌を原料とし,ブルガリア株(Lactobacillusbulgaricus)とサーモフィルス株(Streptococcusthermophilus)が大量に存在し,その発酵作用で作られた物」と定義されている.ヨーグルトの起源は7千年前にもさ(13)389*YukoHara:愛媛大学大学院医学研究科眼科学講座,愛媛大学大学院地域眼科学〔別刷請求先〕原祐子:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学研究科眼科学講座特集●眼アレルギー診療の新時代に向けてあたらしい眼科37(4):389?393,2020アレルギー性結膜炎とプロバイオティクスEffectofProbioticsonAllergicConjunctivitis原祐子*0910-1810/20/\100/頁/JCOPY390あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(14)の菌株が共通ではないこと,投与期間や投与量,また投与するタイミングにばらつきがあるため,その効果が一定の基準で判断できないことがあげられる.また,プロバイオティクスの抗アレルギー効果のメカニズムがブラックボックスであることも,その効果を明確に言及できない一因になっていると思われる.IIIミカン果皮配合ヨーグルトの開発愛媛大学農学部では,乳製品に含有されるbラクトグロブリンと柑橘類の果皮に多く含まれるノビレチンの組み合わせに着目して研究を行ってきた.ノビレチンはフラボノイド水酸基のうち六つがメトキシ基に置換されたポリメトキシフラボノイドに分類され,肥満細胞の脱顆粒の抑制や,好塩基球によるヒスタミン,IL(interleukin)-4,IL-13の産生を抑制することが報告されており,その抗炎症作用,抗アレルギー作用についても報告されている7~9).bラクトグロブリンとノビレチンはともに抗アレルギー作用を有しているが,その作用点は異なっており,ラット好塩基球様細胞株RBL-2H3細胞において,ノビレチンはPI3K(phosphatidynositide3-kinase)を,bラクトグロブリンはSyk(spleentyrosinekinase)のリン酸化を阻害することにより脱顆粒を抑制する(図1).Yasunagaらはスギ花粉症モデルマウる有意な症状抑制効果は認めらないと結論づけており6),報告ごとにその効果の結論は異なっているのが現状である.このように効果がばらつく原因の一つは,これらの多数の研究で用いられているプロバイオティクスLynPI3KFynSykPLCgCa2+PKC顆粒の放出(脱顆粒)FceRIIgE抗原ノビレチンb-ラクトグロブリン好塩基球肥満細胞図1bラクトグロブリン,ノビレチンの脱顆粒抑制作用ノビレチンはPI3Kを,bラクトグロブリンはSykのリン酸化を阻害する.*p<0.05,**p<0.01vs.Control0くしゃみ回数/30分10203040***p<0.05非感作対照温州ミカン果皮ヨーグルト混合図2ヨーグルト,ミカン果皮摂取によるマウスモデルの抗アレルギー効果両者を混合投与した群でもっともアレルギー反応を抑制した.(15)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020391スを作製し,5日間食餌にヨーグルトを混入した群,ミカン果皮を混入した群,両者を混合して投与した群をスギ花粉に暴露したところ,ヨーグルト単独摂取群では無摂取群より有意にアレルギー症状を緩和したが,混合投与群では単独で投与した群よりもさらに有意な抑制効果が示された10)(図2).IVミカン果皮配合ヨーグルトのアレルギー性結膜炎抑制効果の検証筆者らはこれらの結果より,ヒトでも一定の抗アレルギー効果が得られるのではと考え,ノビレチンを含有するミカン果皮配合ヨーグルトを試作し,ヒトでの検証を行った11).ミカン果皮配合ヨーグルトは,四国乳業株式会社で作製した.1ボトル(150g)あたりbラクトグロブリン摂取開始前ミカン果皮配合ヨーグルト摂取後コントロールヨーグルト摂取後PatientNo.11PatientNo.21PatientNo.29図4結膜抗原誘発試験後の前眼部写真試験開始時およびコントロールヨーグルト接種後に比較して,ミカン果皮配合ヨーグルトを摂取後は充血が軽減されている.図3OcularSurfaceThermographer(OST)TG?1000(トーメーコーポレーション)の外観392あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(16)subsp.,Bulgaricus.,Streptococcusthemophillius.,LactobacillusacidophilusLA-5,BifidobacteriumlactisBB-12で,四国乳業で一般的に用いられている菌種である.対象はスギ花粉症によるアレルギー性結膜炎既往者31名(男性7名,女性24名,平均年齢32.5±12.2歳)である.すべての症例でスギ抗原特異的IgE抗体が陽性であり,試験実施時には全身および局所のアレルギー治療を行っていないことを確認した.まず,全例に結膜抗原誘発試験を行った.結膜抗原誘発試験は,抗原稀釈液を被検者に点眼してアレルギー性結膜炎を誘発させる試験で,一定の症状を計画的に起こすことができるため,抗アレルギー点眼薬の効果を判定する際によく用いられている.結膜抗原誘発試験前後に自覚症状アンケートを実施し,細隙灯顕微鏡検査,結膜表面温度を測定した.その後被験者をランダムに2群に分けて,ミカン果皮配合ヨーグルト,コントロールヨーグルトを3週間ずつ摂取し,次の3週間は最初に摂取したものとは異なるヨーグルトを摂取し,各ヨーグルトの摂取終了時に結膜抗原誘発試験を行った.この試験は,二重盲検,クロスオーバーのプロトコールとして設計し150mg,ノビレチン0.53mgを含有している.また,二重盲検試験のために,bラクトグロブリンを半量の93mg,ノビレチンは非含有,ミカンフレーバーで味をつけたコントロールヨーグルトも作製した.ヨーグルト作製に用いた乳酸菌は,Lactobacillusdelbrueckii00.20.40.60.811.2℃*х+コントロールヨーグルトミカンヨーグルト摂取前摂取前ミカンヨーグルトコントロールヨーグルト図6結膜抗原誘発試験後の結膜表面温度の変化ミカン果皮配合ヨーグルト摂取後の温度上昇は,摂取前と比較して有意に抑制され,さらにコントロールヨーグルト摂取後よりも低下していた.右側に同一患者の摂取前,ミカンヨーグルト摂取後,コントロールヨーグルト摂取後のOST画面および前眼部写真を示す.*p<0.001,×p<0.01,+p<0.05;Friedmantest,ScheffeMultiplecontraststest.01234567**+*******p<0.001,+p<0.01:Friedman,ScheffeMultiplecontraststest.摂取前ミカンヨーグルトコントロールヨーグルト充血スコア結膜浮腫スコア掻痒感スコア図5結膜抗原誘発試験後の自覚症状,他覚所見スコアの変化ミカン果皮配合ヨーグルト摂取後,自覚症状,他覚所見は有意に低下していた.(17)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020393することができておらず,今後も検討を行う予定である.文献1)FullerR:Probioticsinmanandanimals.JApplBacteriol66:365-378,19892)HooperLV,LittmanDR,MacphersonAJ:Interactionsbetweenthemicrobiotaandtheimmunesystem.Science336:1268-1273,20123)AbebayehuD,SpenceAJ,CaslinHetal:LacticacidsuppressesIgE-mediatedmastcellfunctioninvitroandinvivo.CellImmunol341:103918,20194)LiL,HanZ,NiuXetal:Probioticsupplementationforpreventionofatopicdermatitisininfantsandchildren:Asystematicreviewandmeta-analysis.AmJClinDermatol20:367-377,20195)KawaseM,HeF,KubotaAetal:EffectoffermentedmilkpreparedwithtwoprobioticstrainsonJapanesecedarpollinosisinadouble-blindplacebo-controlledclinicalstudy.IntJFoodMicrobiol128:429-434,20096)AzadMB,ConeysJG,KozyrskyjALetal:Probioticsupplementationduringpregnancyorinfancyforthepreventionofasthmaandwheeze:systematicreviewandmetaanalysis.BMJ347:f6471,20137)TheoharidesTC,AlexandrakisM,KempurajDetal:Anti-inflammatoryactionsofflavonoidsandstructuralrequirementsfornewdesign.IntJImmunopatholPharmacol14:119-127,20018)HiranoT,HigaS,ArimitsuJetal:Flavonoidssuchasluteolin,fisetinandapigeninareinhibitorsofinterleukin-4andinterleukin-13productionbyactivatedhumanbasophils.IntArchAllergyImmunol134:135-140,20049)YasunagaS,DomenM,NishiKetal:Nobiletinsuppressesmonocytechemoattractantprotein-1(MCP-1)expressionbyregulatingMAPKsignalingin3T3-L1cells.JFunctFoods27:406-415,201610)YasunagaS,KadotaA,KikuchiTetal:Effectofconcurrentadministrationofnobiletinandb-lactoglobulinonthesymptomsofJapanesecedarpollinosismodelsinmice.JFunctFoods22:389-397,201611)HaraY,ShiraishiA,SakaneYetal:Effectofmandarinorangeyogurtonallergicconjunctivitisinducedbyconjunctivalallergenchallenge.InvestOphthalmolVisSci58:2922-2929,201712)HaraY,ShiraishiA,YamaguchiMetal:Evaluationofallergicconjunctivitisbythermography.OphthalmicRes51:161-166,2014ている.結膜表面温度の測定には,OcularSurfaceThermographer(OST)TG-1000(トーメーコーポレーション)を使用した(図3).OSTは簡便に眼表面温度が測定でき,再現性もよく,一定領域の平均温度を算出したり,経時的な温度変化も解析可能である.筆者らは,結膜抗原誘発試験前後に温度を測定する今回と同様のプロトコールを用いて,抗アレルギー点眼薬の効果を温度によって判定する実験系を確立している12).摂取開始前,ミカン果皮配合ヨーグルト摂取後,コントロールヨーグルト摂取後の前眼部写真を図4に示す.結膜抗原誘発試験後20分の時点の所見で,すべての写真で結膜充血を認めるが,摂取開始前の所見に比べ,とくにミカン果皮配合ヨーグルト摂取後の充血が3例とも抑制されている.図5に充血,結膜浮腫,掻痒感自覚症状のスコアを示す.コントロールヨーグルト摂取後も摂取前に比べ,掻痒感,充血スコアでは有意な低下を認めている(p<0.01:Friedmantest,ScheffeMultiplecontraststest).しかし,ミカン果皮配合ヨーグルトでは,すべてのスコアで摂取前より有意な低下を認めただけでなく(p<0.001:Friedmantest,ScheffeMultiplecontraststest),掻痒感スコア,充血スコアではコントロールヨーグルトよりその抑制効果は勝っていた.図6には結膜抗原誘発試験前後の結膜の温度変化を示すが,ミカン果皮ヨーグルト摂取後は試験開始前,コントロールヨーグルト摂取後に比べ,その温度上昇抑制効果は有意に強く,アレルギー性結膜炎抑制効果を有しているとの結論に至った.おわりにこのミカン果皮配合ヨーグルトは,すでに四国乳業より「N+ドリンクヨーグルト」として市販されており,現在特定保健用食品としての申請を行っている.筆者らは今回の検討でミカン果皮配合ヨーグルトがアレルギー性結膜炎を抑制しているという現象を証明した.しかし,いまだそのメカニズムに関しては明らかに

アレルギー性結膜炎の免疫療法 -舌下免疫療法と経口免疫療法の可能性

2020年4月30日 木曜日

(23)口免疫療法(oralimmunotherapy:OIT)に分類される.歴史的にはまず皮下免疫療法が施行され,その有効性は証明されたが,頻回の通院が必要であること,投与ごとに注射の疼痛を伴うこと,まれにアナフィラキシーや喘息などの重篤な副作用が生じることなどが問題点であった.皮下免疫療法では約250万回の注射に1回の割合で致死的な副作用が生じるとされる4).その後1980年代から欧州でアレルゲンを口に含むことで免疫寛容を誘導する舌下免疫療法が始められた.舌下免疫療法は,注射の疼痛がないこと,通院の必要がなく自宅でもできることなどから,低年齢者でも開始しやすい治療法である.また,皮下免疫療法と比して比較的アナフィラキシーなどの重篤な合併症が少なく,口腔内の浮腫などの局所の副作用が多いとされる.しかしながら,標準化された舌下免疫療法であってもアナフィラキシーは報告されている5).IIスギ花粉症に対する舌下免疫療法わが国においても2000年頃より舌下免疫療法の検討が開始され,2014年にスギ花粉舌下薬が,2015年にはダニ舌下薬が保険収載され,おもに耳鼻咽喉科を中心に行われている.鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版にも,通年性アレルギー性鼻炎,花粉症いずれの治療にもアレルゲン免疫療法が記載されている.舌下免疫療法については,すでにスギ花粉症に対する臨床治験の3シーズン目までの成績が報告され,鼻症状はじめにわが国のスギ花粉症患者は,発症が低年齢化し,増加の一途をたどっている.東京都の調査でも,平成28年度の都内の花粉症の有病率は48.8%と,10年前の調査の28.2%から急激に増加していることが明らかとなった1).花粉症では鼻症状と眼症状を呈するが,眼科には眼の掻痒感を訴えて受診し,アレルギー性結膜炎と診断される.眼科医が行う治療は,現時点では抗原回避などのセルフケアと点眼薬による薬物療法が中心である.抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬による治療は症状の程度を軽減するだけの対症療法に過ぎず,根治できないので患者は増える一方であるのは当然である.本稿ではアレルギー性結膜炎の根治の可能性のある免疫療法について述べる.I免疫療法とはアレルゲン免疫療法(抗原特異的免疫療法)は,アレルギー疾患の原因であるアレルゲンを投与する治療法である.抗原の反復投与により免疫寛容2)が誘導され,唯一アレルギー疾患で根治あるいは長期の寛解が期待できる治療法である.古くは減感作療法とよばれていた.免疫療法は,1911年にLeonardNoon博士が花粉性結膜炎に対して皮下投与によりその有効性を報告したのが始まりである3).アレルゲンの投与経路の違いにより,皮下免疫療法(subcutaneousimmunotherapy:SCIT),舌下免疫療法(sublingualimmunotherapy:SLIT),経(7)383*KenFukuda:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕福田憲:〒783-8505高知県南国市岡豊町小蓮高知大学医学部眼科学講座特集●眼アレルギー診療の新時代に向けてあたらしい眼科37(4):383?387,2020アレルギー性結膜炎の免疫療法─舌下免疫療法と経口免疫療法の可能性ImmunotherapyforAllergicConjunctivitis福田憲*0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(7)384あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(8)が44.3%,点眼薬の使用は67.5%減少した.3シーズン目の花粉飛散時期ではさらに効果が増強し,それぞれ47.0%,55.3%,77.7%の減少が報告されている6)(図1).今後治療を終了してからどの程度症状の寛解が継続するか,さらなるデータの蓄積・解析が期待される.しかしながら現時点では,スギ花粉性結膜炎に対して舌下免疫療法を施行している眼科医は耳鼻咽喉科医に比しての有意な改善が認められている.くしゃみ,鼻汁,鼻閉は3シーズン目にはプラセボ群に比してそれぞれ35.2%,38.1%,44.9%の減少が,3シーズン目にはそれぞれ38.9%,39.3%,47.0%の減少がみられている6).また,舌下免疫療法ではスギ花粉症の鼻症状のみならず,眼症状にも同様に軽減効果がある.舌下免疫療法開始後,最初の花粉飛散時期では眼の痒みが30.3%,涙目500450400350300250200150100500JCpollencounts(grains/cm2/day)43.532.521.510.50AveragedailyTOSMSaSecondseason(2016)PPAPPAAAJCpollendispersalseasonPeaksymptomperiod8-Jan15-Jan22-Jan29-Jan5-Feb12-Feb19-Feb26-Feb4-Mar11-Mar18-Mar25-Mar1-Apr8-Apr15-Apr22-Apr29-Apr500450400350300250200150100500JCpollencounts(grains/cm2/day)43.532.521.510.50AveragedailyTOSMSbThirdseason(2017)PPAPPAAAJCpollendispersalseasonPeaksymptomperiod8-Jan15-Jan22-Jan29-Jan5-Feb12-Feb19-Feb26-Feb5-Mar12-Mar19-Mar26-Mar2-Apr9-Apr16-Apr23-Apr30-Apr図1舌下免疫療法による2シーズン目(a)と3シーズン目(b)のスギ花粉症の眼症状と点眼薬使用のスコアPP:プラセボ群,AA:実薬群,灰色はスギ花粉の飛散状況を示す.(文献6より引用転載)(9)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020385IVスギ花粉症治療米による花粉性結膜炎の治療の可能性スギ花粉症治療米10)は,スギ花粉の主要アレルゲンであるCryj1およびCryj2のすべてのT細胞エピトープを改変して発現しているtransgenicriceである.この米を免疫療法の治療薬として用いることで,さまざまな遺伝背景をもつ多くの患者に有効であると考えられる.また,米に発現している抗原は遺伝子組換え技術により元々の抗原とは立体構造を変えて発現しており,スギ花粉特異的IgEには結合しないと考えられる.実際にこの米に発現している改変抗原は,マウスにおいてスギ花粉特異的IgEに結合しないこと,好塩基球を脱顆粒させないことが示されている10).さらにこの改変抗原はスギ花粉症患者の好塩基球を有意に活性化しないことも示されている11).したがって,この治療米に発現している抗原は,IgEとマスト細胞の脱顆粒によって引き起こされる副作用,アナフィラキシーや喘息などの合併症が生じにくく,これまで用いられている抗原よりも安全な治療薬であると考えられる.筆者らはこのスギ花粉症治療米を食べることで,花粉性結膜炎が予防できるかを検討した12).マウスに10日間あるいは20日間治療米と対照の非組換え米を食べさせてから,スギ花粉による感作と点眼を行った.その結非常に少ないと思われる.眼症状のみのスギ花粉症患者だけが免疫療法から取り残されないように,眼科医も免疫療法に積極的に関与するときが来ていると思われる.舌下免疫療法の最大の問題点は3~5年間という長い治療期間にわたり毎日継続しなければならない点であり,とくに海外では継続率の低さが問題となっている.イタリアからの報告では2年間継続できた患者は15%以下であった7).より効果的な免疫療法を開発するためには,この継続率を上げる工夫,そして副作用を減らす工夫が必要である.IIITransgenicriceを用いた免疫療法経口免疫療法とは,人体最大の免疫組織である腸管に存在する腸管関連リンパ組織(gut-associatedlymphoidtissue:GALT)に抗原を運び,免疫寛容を誘導する治療法である.経口的に,すなわち抗原を食べることによってアレルギーを治す治療法である.近年,食物アレルギーの治療に対して経口免疫療法が行われ,その有効性や安全性が解析されてきており,一定の効果が得られることが報告されている8).筆者らは農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の高岩文雄博士らの開発した米の胚乳部分にアレルゲンを発現させた遺伝子組換え米(transgenicrice)9)を用いた経口免疫療法の共同研究を行っている.経口免疫療法における最大の問題点は,通常の蛋白質抗原は腸に届く前に胃酸などの消化酵素によって,そのほとんどが消化されてしまうことである.しかしながら,米に発現したアレルゲンは,難消化性の蛋白質顆粒(proteinbody)という特殊器官に蓄積されるため熱に強く,普通の白米として炊飯して食べても抗原性が保たれ,また消化酵素にも強く,食べても胃酸で分解されず効率よく腸まで到達でき,経口免疫療法に非常に適していることがわかった.さらに米に抗原を発現させる利点として,発現した抗原の蓄積量が非常に多いこと,冷蔵保存の必要がなく常温で保存や輸送が可能であることなどがあげられる.そして何より日本人の主食であるため,無理なくおいしく治療を継続できることが最大の利点であり,舌下免疫療法の欠点である低い継続率を解決する一つの手段になると思われる.非組換え米花粉症治療米非組換え米花粉症治療米結膜好酸球数臨床症状スコア12080400ab6420***図2スギ花粉症治療米による花粉性結膜炎の予防効果マウスに10日間治療米と対照の非組換え米を食べさせてから,スギ花粉による感作と点眼を行うと,治療米を食べたマウスでは非組換え米を食べたマウスに比して,結膜の好酸球浸潤(a)および臨床症状(b)とが有意に抑制された.(文献12より改変引用)386あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(10)の脾臓細胞をスギ花粉抗原で刺激して,サイトカインの産生を調べると,Th2サイトカインであるIL-4やIL-5のみならず,Th1サイトカインであるIL-2やIFN-gなども広く抑制されており(図3),deletionあるいは果,治療米を食べたマウスでは非組換え米を食べたマウスに比して,臨床症状と結膜の好酸球浸潤が有意に抑制された(図2).血清の総IgEおよびスギ花粉特異的IgEも,治療米を食べたマウスで有意に抑制された.マウス非組換え米治療米12840IL-4(pg/ml)*非組換え米治療米3020100IL-2(pg/ml)*非組換え米治療米12080400IL-17A(pg/ml)**非組換え米治療米16012080700IL-12p70(pg/ml)**非組換え米治療米7550250IL-5(pg/ml)*非組換え米治療米100500IL-10(pg/ml)非組換え米治療米420IFN-g(pg/ml)非組換え米治療米6040200IL-13(pg/ml)図3スギ花粉症治療米の予防投与による全身への作用マウスに花粉症治療米あるいは非組換え米を20日間食べさせた.その後スギ花粉で感作・点眼してアレルギー性結膜炎を誘導したマウスの脾臓細胞にスギ花粉抽出物を添加して培養し,上清のサイトカイン濃度を測定した.Th2サイトカイン(上段)のみならずTh1サイトカイン(下段)も広く抑制されている.(文献12より改変引用)臨床症状スコア非組換え米治療米非組換え米治療米非組換え米治療米結膜好酸球数非組換え米治療米ab864209060300****図4スギ花粉症治療米の投与による結膜炎の臨床症状の抑制効果一度結膜炎を発症させたマウスに,花粉症治療米あるいは非組換え米を食べさせたあとでスギ花粉を再度点眼すると,結膜炎の臨床症状は花粉症治療米を食べたマウス群において有意に抑制された.(文献13より改変引用)(11)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020387文献1)東京都福祉保健局:花粉症患者実態調査報告書(平成28年度).20172)福田憲:免疫寛容.あたらしい眼科35:511,20183)NoonL:Prophylacticinoculationsagainsthayfever.Lancet1:1572-1573,19114)BernsteinDI,WannerM,BorishLetal:Twelve-yearsurveyoffatalreactionstoallergeninjectionsandskintesting:1990-2001.JAllergyClinImmunol113:1129-1136,20045)CochardMM,EigenmannPA:Sublingualimmunotherapyisnotalwaysasafealternativetosubcutaneousimmunotherapy.JAllergyClinImmunol124:378-379,20096)YonekuraS,GotohM,KanekoSetal:Treatmentduration-dependentefficacyofJapanesecedarpollensublingualimmunotherapy:EvaluationofaphaseII/IIItrialoverthreepollendispersalseasons.AllergolInt68:494-505,20197)SennaG,LombardiC,CanonicaGWetal:Howadherenttosublingualimmunotherapyprescriptionsarepatients?Themanufacturers’viewpoint.JAllergyClinImmunol126:668e9,20108)StadenU,BlumchenK,BlankensteinNetal:Rushoralimmunotherapyinchildrenwithpersistentcow’smilkallergy.JAllergyClinImmunol122:418-419,20089)TakaiwaF,WakasaY,TakagiHetal:Riceseedfordeliveryofvaccinestogutmucosalimmunetissues.PlantBiotechnolJ13:1041-1055,201510)WakasaY,TakagiH,HiroseSetal:OralimmunotherapywithtransgenicriceseedcontainingdestructedJapanesecedarpollenallergens,Cryj1andCryj2,againstJapanesecedarpollinosis.PlantBiotechnolJ11:66-76,20111)TakaishiS,SaitoS,KamadaMetal:EvaluationofbasophilactivationcausedbytransgenicriceseedsexpressingwholeTcellepitopesofthemajorJapanesecedarpollenallergens.ClinTranslAllergy9:11,201912)FukudaK,IshidaW,HaradaYetal:Preventionofallergicconjunctivitisinmicebyarice-basedediblevaccinecontainingmodifiedJapanesecedarpollenallergens.BrJOphthalmol99:705-709,201513)FukudaK,IshidaW,HaradaYetal:Efficacyoforalimmunotherapywitharice-basedediblevaccinecontaininghypoallergenicJapanesecedarpollenallergensfortreatmentofestablishedallergicconjunctivitisinmice.AllergolInt67:119-123,2018anergyによって免疫寛容が誘導されたと考えられた.次に実際の花粉症患者の治療を想定して,一度スギ花粉による結膜炎を発症させたあとに治療米を食べさせて,治療効果があるかを検討した13).マウスにスギ花粉による感作と点眼を行い結膜炎症状が生じることを確認したあと,治療米と対照として非組換え米を食べさせて再度スギ花粉を点眼した.その結果,臨床症状(図4a)と結膜への好酸球浸潤(図4b)は,治療米を食べた群において対照群に比して有意に抑制された.血清の総IgEおよびスギ花粉特異的IgEは,治療米と対照群で差はみられなかった.脾臓細胞のスギ花粉抗原による刺激後のサイトカインの産生は,Th2サイトカインは対照群と治療米投与群で不変であったが,Th1サイトカインであるIFN-gの産生が治療米投与群で有意に上昇していた.これらの結果より,いったん花粉症を発症したマウスにおいてはスギ花粉症治療米を食べることによって,Th1/Th2バランスが偏倚して免疫寛容が誘導され,治療効果を示したと考えられた.これらの結果はスギ花粉症治療米を食べることで,花粉症患者を治療できる可能性を示唆している.高岩博士らは,スギ花粉抗原のtransgenicrice9)のみならず,シラカバ花粉,ダニ抗原などのtransgenicriceも開発しており,近い将来さまざまなアレルギー疾患を原因となる抗原を発現蓄積した米を「一日一膳」食べることで無理なく,おいしく治療できる日が来ることが期待される.おわりに眼科領域では,免疫療法はまだまだ普及していない.アレルギー性結膜炎が不治の病にならずに根治できるように,舌下免疫療法や米を食べて治す新しい免疫療法が眼科でも普及してアレルギー性結膜炎が根絶されることを願っている.

春季カタルに対する免疫抑制点眼薬の現状と課題

2020年4月30日 木曜日

(23)関与させると強い結膜好酸球浸潤が誘導された3).このことから,春季カタルの病像形成には,Th2細胞が重要な役割を果たしていることが判明した.III重症アレルギー性結膜疾患の治療1.重症に対する薬物治療の基本軽症・重症にかかわらずアレルギー性結膜疾患の発症にはI型アレルギーが関与するため,春季カタルにおいても,I型アレルギーを抑制する抗アレルギー点眼薬を基盤点眼薬として使用する.重症型ではTh2細胞が病態形成の中心的役割を果たすが,抗アレルギー点眼薬にはT細胞抑制能はない.したがって,T細胞の機能を制御する免疫抑制点眼薬やステロイド点眼薬が必要となる.2.免疫抑制点眼薬免疫抑制薬はおもにT細胞を抑制する.免疫抑制点眼薬は自家調整薬あるいは治験薬として使用された結果,重症アレルギー性結膜疾患にすぐれた効果をもつことが明らかとなった.2006年にシクロスポリン点眼薬が発売され,市販後調査が行われ,その結果から,自覚症状,他覚所見とも点眼開始後1カ月目より有意な改善を認め,ステロイド点眼薬の減量または中止が可能となった症例が多数みられている4,5).また,2008年5月よりタクロリムス点眼薬も発売され,市販後全例調査結果から非常に優れたT細胞抑制効果が確認された6,7).I重症アレルギー性結膜疾患とはアレルギー性結膜疾患の分類のカギになる所見は巨大乳頭や輪部増殖などの結膜増殖性変化であり,増殖性変化が顕著である春季カタルなどは重症に分類される1).アトピー性角結膜炎は増殖性変化を認める場合と認めない場合があるが,角膜病変を伴うことが多く,重症に分類される.II重症アレルギー性結膜疾患の発症機序アレルギー性結膜疾患に共通する発症機序はI型アレルギーである.しかし,結膜増殖性変化はI型アレルギーのみでは説明がつかない.巨大乳頭の病理組織像では好酸球浸潤,線維芽細胞の増生,細胞外マトリックスの沈着に加えて,数多くのT細胞の浸潤もみられる.すなわち,巨大乳頭の形成にはI型アレルギー反応のみならず,T細胞も関与している.重症化の指標である角膜障害に関しては,涙液中好酸球数との関連性が報告されている2).アレルギー性結膜疾患は抗原特異的な疾患であるが,好酸球には抗原認識能はなく,好酸球浸潤には抗原特異性認識能をもつT細胞あるいは抗体の関与が考えられる.T細胞あるいは抗体のいずれが結膜好酸球浸潤に関与するのかを動物モデルを用いて検討したところ,I型アレルギーを単独で関与させた場合は,結膜好酸球浸潤は誘導できないのに対し,T細胞とくにヘルパー2型T細胞(Th2細胞)を(3)379*AtsukiFukushima:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕福島敦樹:〒783-8505高知県南国市岡豊町小蓮高知大学医学部眼科学講座特集●眼アレルギー診療の新時代に向けてあたらしい眼科37(4):379?382,2020春季カタルに対する免疫抑制点眼薬の現状と課題PresentStateandFutureDirectionsofImmunosuppressiveEyeDropsforVernalKeratoconjunctivitis福島敦樹*0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(3)379380あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(4)り,角膜上皮障害もタクロリムス点眼薬単独で制御できる可能性が出てきた.宮崎らは,角膜上皮障害について,市販後調査結果を用いてタクロリムス点眼単独治療群とタクロリムス点眼にステロイド点眼もしくはステロイド内服を追加投与されている群を比較した9).その結果,シールド潰瘍を含め角膜上皮障害の改善度はタクロリムス単独群とステロイド追加群で差は認められなかった.この結果から,ステロイドの副作用を考えると,重症例で認められる角膜上皮障害はタクロリムス点眼薬単独で効果を評価し,改善しない場合にはステロイド点眼薬を追加するべきかもしれない.2.アトピー性皮膚炎の有無が治療効果に及ぼす影響アトピー性皮膚炎の合併は,アレルギー炎症自体の悪化に加え,感染症の合併など,経過や予後に影響を与える.庄司らは,アトピー性皮膚炎合併の有無で2群に分けて,タクロリムス点眼薬による眼瞼結膜,輪部,角膜の所見の改善度を比較した10).点眼開始後6カ月の時点で両群とも8割以上の割合で寛解状態に至った.このように,アトピー性皮膚炎合併の有無にかかわらず,タクロリムス点眼薬は重症アレルギー性結膜疾患の抑制に効これら二つの免疫抑制点眼薬をどのように使い分けるかに関して,市販後全例調査結果を評価してきた春季カタル治療薬研究会が中心となり,治療指針を提案した8)(図1).ポイントは治療薬の使用方法をパターン1~4に分類し,春季カタルの重症度に対応するパターンを選択して治療を行う点である.その際のポイントは,タクロリムス点眼薬のほうがシクロスポリン点眼薬と比較し免疫抑制効果がより強い点である.本指針を用いることにより,薬剤の変更,追加,中止など,診療における重要なターニングポイントを把握しやすくなったと考えられる.免疫抑制点眼薬に関しては,現時点までの重篤な副作用は報告されていないが,今後長期間の観察により,感染症を含め安全性の面でのエビデンスを蓄積していく必要がある.IV市販後調査から明らかになったタクロリムス点眼薬の新知見1.角膜上皮病変における効果上記のパターン治療8)にも記載されているように,重症例ではステロイド点眼薬と免疫抑制点眼薬を併用することが多い.しかし,タクロリムス点眼薬の登場によパターン4パターン3パターン2aパターン2bパターン1抗アレルギー薬(点眼)免疫抑制薬(点眼)ステロイド(点眼)抗アレルギー薬(点眼)免疫抑制薬(点眼)抗アレルギー薬(点眼)抗アレルギー薬(点眼)抗アレルギー薬(点眼)免疫抑制薬(点眼)ステロイド(点眼)ステロイド(点眼)ステロイド(内服)(瞼結膜下注射)重症軽症※1:シクロスポリン点眼液ルート※2:タクロリムス点眼液ルート※1※2図1春季カタルのパターン治療のための免疫抑制点眼薬の使い方ステロイド点眼薬と併用するか,ステロイド点眼薬から変更するかに関して,シクロスポリン点眼薬とタクロリムス点眼薬の使い分けがポイントとなる.(文献8より引用)(5)あたらしい眼科Vol.37,No.4,202038130眼を対象とした.平均年齢は17.3歳で,平均観察期間は64.6カ月間であった.病型は20眼が眼瞼型,10眼が混合型であった.9例にアトピー性皮膚炎,8例に気管支喘息,3例にアレルギー性鼻炎の合併を認めた.他覚所見は「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」(第2版)1)の臨床評価基準に基づき,治療開始時と1カ月後,1年後を比較した.春季カタルの他覚所見は治療開始1年後に全項目で改善した(図2~5).タクロリムス点眼薬での治療開始時,12例でステロイド点眼薬を併用していたが,ステロイド点眼薬は1年後には全例で終了できた.タクロリムス点眼薬開始時に角膜障害を果的であることが証明された.Vタクロリムス点眼薬の長期成績上記のように,6カ月までの経過観察ではタクロリムス点眼薬は著効を示すことが確認されている.長期経過観察の報告は数少ないが,北海道大学からの報告では短期経過観察結果と同様に効果的であったとされている11).筆者の施設でも,春季カタルに対する0.1%タクロリムス点眼薬の長期使用成績を評価した.0.1%タクロリムス点眼薬で治療した春季カタル患者のうち,1年以上追跡が可能であった15例(男性13例,女性2例)乳頭充血腫脹巨大乳頭3濾胞2.521.510.50開始時1カ月後1年後Dunnett法(投与開始時との比較)*:p<0.05,**:p<0.01***************図2眼瞼結膜スコアの推移32.521.510.50開始時1カ月後1年後*******Dunnett法(投与開始時との比較)*:p<0.05,**:p<0.01充血浮腫図3眼球結膜スコアの推移32.521.510.50開始時1カ月後1年後Dunnett法(投与開始時との比較)*:p<0.05,**:p<0.01****上皮障害図5角膜上皮障害スコアの推移32.521.510.50開始時1カ月後1年後Dunnett法(投与開始時との比較)*:p<0.05,**:p<0.01********腫脹トランタス斑図4角膜輪部スコアの推移382あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(6)3)FukushimaA,OzakiA,FukataKetal:Ag-specificrecognition,activation,andeffectorfunctionofTcellsintheconjunctivawithexperimentalimmune-mediatedblepharoconjunctivitis.InvestOphthalmolVisSci44:4366-4374,20034)EbiharaN,OhashiY,UchioEetal:Alargeprospectiveobservationalstudyofnovelcyclosporine0.1%aqueousophthalmicsolutioninthetreatmentofsevereallergicconjunctivitis.JOculPharmacolTher25:365-372,20095)高村悦子,内尾英一,海老原伸行ほか:春季カタルに対するシクロスポリン点眼液0.1%の全例調査.日眼会誌115:508-515,20116)OhashiY,EbiharaN,FujishimaHetal:Arandomized,placebo-controlledclinicaltrialoftacrolimusophthalmicsuspension0.1%insevereallergicconjunctivitis.JOculPharmacolTher26:165-174,20107)FukushimaA,OhashiY,EbiharaNetal:Therapeuticeffectsof0.1%tacrolimuseyedropsforrefractoryallergicoculardiseaseswithproliferativelesionorcornealinvolvement.BrJOphthalmol98:1023-1027,20148)大橋裕一,内尾英一,海老原伸行ほか:免疫抑制点眼薬の使用指針-春季カタル治療薬の市販後前例調査からの提言-.あたらしい眼科30:487-498,20139)MiyazakiD,FukushimaA,OhashiYetal:Steroid-sparingeffectof0.1%tacrolimuseyedropfortreatmentofshieldulcerandcornealepitheliopathyinrefractoryallergicoculardiseases.Ophthalmology124:287-294,201710)ShojiJ,OhashiY,FukushimaAetal:Topicaltacrolimusforchronicallergicconjunctivaldiseasewithandwithoutatopicdermatitis.CurrEyeRes44:796-805,201911)品川真有子,南場研一,北市伸義ほか:春季カタルにおけるタクロリムス点眼薬の長期使用成績.臨眼71:343-348,201712)FukudaK,EbiharaN,KishimotoTetal:Ameliorationofconjunctivalgiantpapillaebydupilumabinpatientswithatopickeratoconjunctivitis.JAllergyClinImmunolPract8:1152-1155,201913)藤島浩:重症アレルギー性結膜疾患の治療選択.臨眼73:48-56,201912例で認めたが,1例を除いて改善を認めた.1例でタクロリムス点眼薬の使用開始4カ月後にヘルペス性眼瞼炎を発症した.14例に一過性の増悪を認めた.以上の結果から,春季カタルに対する0.1%タクロリムス点眼薬の長期使用は,有効で安全な治療であると考えられたが,経過観察中に再燃を認める症例が存在することも明らかとなった.VIタクロリムス点眼薬の問題点と展望治療に抵抗する症例が一定割合存在すること,またタクロリムス点眼薬を用いても一定の割合で再燃することがわかってきた.タクロリムスはT細胞の機能を選択性高く抑制することが知られている.したがって,タクロリムス抵抗性の症例ではT細胞以外の細胞群の関与も考えられる.最近,続々と登場してきている生物学的製剤が結膜増殖性変化の抑制に効果を発揮する可能性もあり12),今後の検討が待たれる.再燃に関しては,タクロリムスの投与法・漸減法を検討する必要があると考える.皮膚科領域で推奨されているプロアクティブ療法が点眼でも試みられており13),エビデンスの蓄積を待ちたい.文献1)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン.日眼会誌114:831-870,20102)FukagawaK,NakajimaT,TsubotaKetal:Presenceofeotaxinintearsofpatientswithatopickeratoconjunctivitiswithseverecornealdamage.JAllergyClinImmunol103:1220-1221,1999

序説:眼アレルギー診療の新時代に向けて

2020年4月30日 木曜日

0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(Th2)に加えて,2型自然リンパ球(ILC2)や2型病原性記憶T細胞(Tpath2)などの新しいリンパ球がアレルギー炎症をコントロールする役割を担っていることが明らかにされており,これらの知見をもとに,アレルギー性結膜疾患の病態への理解をより深めていく必要があると思われる.また,結膜?内常在細菌叢はこれまで細菌培養検査の結果で評価されていたが,近年では,細菌DNAを次世代シーケンサーにより評価する方法が開発され,培養では検出できない細菌のアレルギー炎症への関与が示されており,アレルギー性結膜疾患と結膜?内常在細菌叢との関連についても今後の検討が待たれるところである.眼アレルギー検査では,眼局所のアレルギー炎症を評価し,診断や治療評価につなげるための新たな検査法および評価法の開発が切望されており,とくにアレルギー性結膜疾患を確定診断するための検査法の開発は重要課題に位置づけられる.現在,有望視されているのは,バイオマーカー(イメージングバイオマーカーを含む)を用いた眼局所検査であり,アレルギー炎症に関連するサイトカイン,ケモカイン,および炎症関連物質をバイオマーカーとした涙液検査と眼表面検査の開発,および画像の変化をバイオマーカーとして用いるイメージングバイオ新たな病態解明,検査法の進歩,新規治療法の開発を背景として,眼アレルギー診療は,新時代に向けて着実に歩みを進めている.今後,アレルギー性結膜疾患の研究・治療をさらに発展させるためには,他領域における新たな知見を柔軟に取り入れ,眼表面に生じるアレルギー炎症の病態を再考する必要がある.今回の特集は,すべての眼科医に,眼アレルギー診療の現状と未来とをさまざまな視点から理解していただくために企画した.近年注目されている病態因子としては,「眼表面のバリア機構」と「自然アレルギー反応」があげられる.アレルギー炎症は,外部環境と常に接している粘膜組織や皮膚組織を中心に生じる炎症反応であるが,最近になって,外部環境との境界(environmentalinterface)を形成し,バリアとして機能する皮膚・粘膜上皮,粘膜上皮を被うムチン層および常在する細菌叢が炎症を制御すると考えられるようになり,眼表面のバリア機構とアレルギー炎症との関係,およびその生理学的機序の解明が重要な課題となっている.また,アレルギー炎症の病態に,従来のI・IV型アレルギー反応による獲得型アレルギー反応と,自然免疫が関与する自然型アレルギー反応とが関与していることが解明されたほか,2型ヘルパーT細胞(1)377*JunShoji:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野**NobuyukiEbihara:順天堂大学医学部附属浦安病院眼科***YuichiOhashi:愛媛大学●序説あたらしい眼科37(4):377?378,2020眼アレルギー診療の新時代に向けてTheNewEraofAllergicMedicalExaminationandTreatmentinOphthalmology庄司純*海老原伸行**大橋裕一***378あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(2)マーカーの開発が現在進行中である.今回の特集では,バイオマーカーを用いた涙液検査と眼表面検査に加えて,AIを用いた充血評価の取り組みが解説されている.治療に目を向けると,まず眼科治療の特徴でもある点眼治療の進歩があげられる.抗アレルギー点眼薬と副腎皮質ステロイド点眼薬とによる春季カタル治療を大きく変化させたのは,免疫抑制点眼薬の登場であるが,市販されてから約10年がたち,さまざまな臨床データによってエビデンスに基づいた使用指針が確立されるとともに,治療上の課題も明らかになってきた.また,難治化,慢性化するアレルギー疾患に対する治療として,抗体療法に代表される分子標的治療薬,舌下免疫療法に代表される免疫療法,そしてプロバイオティクスなどが登場している.これらの治療法の眼科応用に関してはまだデータが十分集積されてはいないが,未来の治療法として大いに期待される.アレルギー疾患対策基本法の施行を通じてアレルギー疾患制御への取り組みが加速されるなか,新たな理論に基づく検査法や治療法が次々に生み出されており,アレルギー性結膜疾患診療への応用に向けてわれわれも動き始めている.本企画に集約された,新時代の眼アレルギー疾患診療に向けた取り組みにぜひご注目いただきたい.