●連載監修=安川力髙橋寛二湧田真紀子1)能美なな実2)木村和博1)78.加齢黄斑変性の長期1)山口大学大学院医学系研究科眼科,2)下関医療センター眼科マネジメント加齢黄斑変性診療における長期マネジメントでは,個々の患者の再発傾向に即した抗CVEGF薬の投与法を選択することで,視機能を維持するとともに投与回数を削減することができる.また,長期間治療が継続できるよう,十分な説明や対話による心理サポートや地域連携を利用した遠距離通院の低減も含め,多面的な患者ケアを心がける.長期マネジメントにおける二つのポイント滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegenera-tion:AMD)の診療において,視機能を改善・維持するために抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法は不可欠である.一方で,患者にとって維持期の抗CVEGF療法は効果を実感しづらく,繰り返し眼に注射されるという心理的苦痛や費用面での負担感が大きいため,途中で挫折してしまうケースもみられる.つまり,AMD診療の長期マネジメントでは,可能な限り長期に視機能を維持できる治療方針を選択し,かつその治療が継続できるように患者のトータルケアに努めること,このC2点を両立させることが必要となる.抗VEGF薬の投与法:三者療法AMDに対する抗CVEGF療法の大規模研究では,導入期治療によって改善した視力はほぼプラトーに達し,以降は投与を継続しても大きな改善はみられない1,2).つまり,AMD診療における長期目標とは,導入期治療で改善した視力をいかに長期に維持するかということになる.しかし,実際に抗CVEGF療法を行っていると,数回の投与で長期に再発を認めない患者もいれば,頻回の投与が必要となる患者もいる.現状ではこのような違いを治療開始前に予測することはむずかしいため,病状に応じた個別化治療が求められる.維持期の抗CVEGF薬投与法には,1)定期的に投与を行う固定投与(FIX),2)再発など必要時にCreactiveに投与を行うCproCrenata(PRN),そしてC3)黄斑ドライを維持できるよう投与間隔を調整し,proactiveに投与を行うCtreatandextend(TAE)のC3種類がある.それぞれの方法には一長一短があるため,筆者らは個々の患者の病状に即してこのC3法を使い分ける三者療法(図1)を考案した.(63)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY導入期後1カ月目2カ月目3カ月目まず導入期治療として抗CVEGF薬をC3カ月連続投与し,その後さらにC3カ月経過観察を行う.この間に光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で滲出病変の再発がない反応良好例にはC3カ月ごと通院のPRNを選択し,3カ月以内に再発があればCTAEで治療する.TAEでは開始時の投与間隔でC2回連続ドライならC2週延長(最大C12週),再発時にはC2週短縮する.2回目の再発時には延長・短縮をC1週間隔で調整したのち,再発のない最大投与間隔で固定(FIX)して継続する.導入期治療で滲出が残る抵抗例では光線力学療法(photodynamicCtherapy:PDT)の併用を検討する.また,いずれの投与法でもC2段階以上の視力低下や黄斑出あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020C963例:TAE/8週間隔図2当院でのTreatandExtend(TAE)法再投与はCOCT所見で決定し,開始時投与間隔でC2回連続滲出がなければC2週間延長,再発時にはC2週間短縮する(最大C12週).2回目の再発時には延長・短縮幅をC1週間隔で調整し,再発のない最大投与間隔で固定する.logMAR値0.70.60.50.40.30.2(カ月)PRNTAE/8週間隔TAE/4週間隔平均図3三者療法の視力経過平均値およびCPRN群ではC3カ月目以降,8週間隔CTAE群ではC24カ月目で有意に視力が改善しており,4週間隔CTAE群でも視力は維持された.血を生じる重症な再発時には導入期治療に戻る.この三者療法を用いて未治療のCAMDをアフリベルセプト単独で加療したC31眼のC2年経過では,導入期治療後の治療法はCPRN,8週間隔CTAE,4週間隔CTAEがそれぞれC15眼,12眼,4眼だった.視力経過(図3)ではCPRNおよびC8週間隔CTAEの症例全例でC24カ月目のC964あたらしい眼科Vol.37,No.8,2020視力は有意に改善し,再発傾向の強いC4週間隔CTAEの症例でも視力は維持されていた.31眼中C11眼(35.5%)でClogMAR0.3以上の視力改善がみられ,0.3以上悪化した症例はC2眼(6.5%)のみだった.2年間の投与回数は,導入期治療C3回を含めて全例でC9.7回,PRN例で5.3回,8週間隔CTAE例でC13.1回,4週間隔CTAE例で15.8回であり,視力を維持しつつも集中治療が必要な症例と,少ない回数で維持できる症例を選別した治療が可能であった.患者のトータルケアAMDの長期管理には多面的な患者ケアも必須である.眼科医がベストと考えて選択した治療を患者に納得して継続してもらうために,当院ではCOCTなどの画像を見せて十分な説明と対話を心がけている.また,通院負担を軽減するために地域のかかりつけ医と治療方針を共有し,分担して治療や経過観察を行う地域連携システムの構築も進めている.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:RanibizumabforneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CNEnglJMedC355:1419-1431,C20062)HeierCJS,CBrownCDM,CChongCVCetal:Intravitreala.ibercept(VEGFtrap-eye)inCwetCage-relatedCmacularCdegeneration.OphthalmologyC119:2537-2548,C2012(64)