病的近視の合併症の治療脈絡膜新生血管TreatmentofComplicationsAssociatedwithHighMyopia:MyopicChoroidalNeovascularization(mCNV)若月優*森隆三郎*はじめに病的近視は,さまざまな網脈絡膜疾患を合併し,わが国の失明原因の上位を占める病態である.なかでも近視性脈絡膜新生血管(myopicchoroidalneovasculariza-tion:mCNV)は重篤な視力障害をきたすことも多い.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)や光干渉断層計血管造影(OCTAngiography:OCTA)の登場によりmCNVの診断は以前より容易になった.また,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法が主流となり,以前に比べmCNVの短期的な視力予後は改善したが,長期的にはmCNV周囲の網脈絡膜萎縮などが問題になっている.本稿ではmCNVの治療について視力予後を含めて解説する.I病的近視の黄斑部新生血管近視は日本をはじめアジア諸国に多く,日常診療でも一般的な疾患だが,病的近視にまで至るとさまざまな病態を合併する.病的近視は,後極部に特有の近視性黄斑病変または後部強膜ぶどう腫を伴う近視とされ,-8D以上に生じやすいとされている.病的近視(強度近視)はわが国の視覚障害の全国調査(2015年)の報告では,視覚障害の原因疾患の第10位(1%)となっており,失明原因の一つとされている1).病的近視眼において視覚障害を引き起こす疾患は,近視性視神経症,固定内斜視,近視性牽引黄斑症,黄斑円孔,黄斑円孔網膜.離,mCNV,黄斑部萎縮などがあげられる.なかでもmCNVは不可逆的な視力障害をきたす疾患として重要である.mCNVは中高年女性に好発し,病的近視の約5~10%に発症し,30%程度が8年以内に両眼に発症するとされている2).mCNVの自然軽快はまれで,無治療では網脈絡膜萎縮(chorioretinalatrophy:CRA)を形成し高度な視力障害をきたすため早期治療が必要である(図1).また,最近では,CNVとperforatingvessel(PV)との関係も注目されている.PVは強度近視眼に認められ,OCTのBスキャン像で観察される強膜内低輝度領域である.PVは短後毛様または長後毛様体動脈にあたるとされ,このPVがmCNV眼の75%にCNV直下に存在し,そのうち11%はCNVと直接連絡していると報告されている3).II診断一般的なmCNVは眼底検査において,後部ぶどう腫内で中心窩あるいは傍中心窩の灰白色病巣とその周囲に網膜下出血を認めるが,近視眼底のために診断は容易ではない(図1).さらに漿液性網膜.離やフィブリンを伴う場合は,検眼鏡検査でCNV全体像を確認することは困難である.また,CNVが小さい場合や網膜下出血のみを認める場合は近視性単純出血との鑑別がむずかしく,フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiogra-phy:FA)が重要である.mCNVのほとんどはtype2CNVであり,FAでもほぼ全例classicCNVの所見を呈する.FAでは造影早期からCNVが明瞭な網目状過*YuWakatsuki&*RyuzaburoMori:日本大学病院眼科〔別刷請求先〕若月優:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-6日本大学病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(39)887図1近視性脈絡膜新生血管(mCNV)a:近視性変化に伴い視神経乳頭耳側にコーヌス,紋理眼底を認め,傍中心窩にはmCNVを示唆する白色病巣()を認める.b:OCT.aで認めた灰白色病巣部はtype2CNV()を示す.図2小型の近視性脈絡膜新生血管(mCNV)a:カラー眼底写真.中心窩鼻側に小型の白色病巣を認め(),中心窩に淡い出血を認める().b:OCT.CNVは隆起所見として認められ(),その上方の高反射は出血を示唆する().c:FA17秒.d:FA36秒.e:FA5分.小型のCNVは造影早期から過蛍光を呈し(c,d:),後期に蛍光色素の漏出を認める(e:).FAで小型のCNVの活動性が確認できる.図3単純型出血とlacquercracka:カラー眼底写真.中心窩に網膜下出血を認める().Lacquercrackは,FAで鮮明にみられるような連続した線状病変にはみえない().b:OCT.網膜下出血により網膜が隆起しているが(),網膜色素上皮の隆起はなく,脈絡膜新生血管(CNVを示唆する高反射所見も認めない.Cc:FA27秒.Cd:FA5分.Ce:FA15分.中心窩の出血部位とその周囲にCCNVを示唆する過蛍光所見を後期まで認めない.Lacquercrackは,早期には萎縮した脈絡毛細血管板から漏出した蛍光色素がCwindowdefectによる線状の過蛍光を示し,後期には,組織染となり過蛍光が持続する(e:).図4近視性脈絡膜新生血管(mCNV)のOCTAa:カラー眼底写真.近視眼底および中心窩に灰白色病巣を認める().b:OCT.網膜色素上皮より上にCCNVを示唆する高反射病巣()を認める.Cc:左からCOCTAのCsuper.cial(表層),deep(深層),outerretina(網膜外層),choroidcapillary(脈絡毛細血管板層)レベルのセグメンテーション.OuterretinaおよびCchoroidcapillaryレベルでCCNVを検出している.d:cのCouterretinaレベルでのセグメンテーションの拡大.正常であればCouterretinaレベルに網膜血管は存在しないため,血管が描出さえすれば網膜外層まで隆起したCCNVの存在が示唆される.Ce:dの黄色のラインでのCcross-sectionalOCTA.CNVの血流を示唆する赤色部位を網膜色素上皮上に認めCtype2CNVが示唆される.ab最高矯正視力文字数の平均変化量0123456789101112月最高矯正視力文字数の平均変化量+13.5121086420-2週-4ラニビズマブ0.5mgⅠ群(n=105):初回および1カ月後アフリベルセプト2mg:初回および1カ月後に投与,以降に投与,以降はPRNはPRN(n=90)ラニビズマブ0.5mgⅡ群(n=116):初回に投与,以降は偽注射6カ月まで→アフリベルセプト2mg1回投与,以降PRNはPRN(n=31)PDT(Ⅲ群)(n=55):1日目に光線力学療法を実施,投与B/L:ベースライン開始3カ月後以降はPRN,PDT単独,ラニビズマブ0.5mg単独,もしくは両剤併用のいずれかを実施図5RADIANCE試験とMYRROR試験(一部改定)a:RADIANCE試験(第CIII相臨床試験:国際共同試験).mCNVに対しCPDTを対照としたラニビズマブの前向き臨床試験である.1~3カ月の時点での平均視力変化量はCI群,II群ともCIII群と比較して有意に視力改善が得られた.さらに視力改善の効果はC12カ月まで持続した.Cb:MYRROR試験(第CIII相臨床試験:国際共同試験).アフリベルセプト投与群とコントロール群を比較して治療効果を比較した前向き臨床試験である.24週目における視力の平均変化量はアフリベルセプト群が良好な結果を示した.さらにC48週目の視力の平均変化量はアフリベルセプト投与群のほうが有意に改善しており,早期治療の重要性が示唆されている.図6線維瘢痕化した脈絡膜新生血管(瘢痕期)と限局性萎縮病変(斑状病変)a:カラー眼底写真.中心窩に線維瘢痕化した脈絡膜新生血管(CNV)を認め(),その周囲に境界鮮明な限局性萎縮病変の斑状病変を認める().b:OCT.中心窩にCCNVを示唆する隆起病巣を認め,()その上方には線維化した境界明瞭な高反射病巣を認める().図7近視性脈絡膜新生血管(mCNV)の治療経過a,b:mCNV治療前のCOCTとOCTA.70歳,女性.矯正視力(0.4).OCTでは中心窩にCtype2CNVを示唆する網膜下高反射病巣とその上にフィブリンを認め(),OCTAでもCCNVを示唆する信号()を認める.抗CVEGF薬硝子体内注射を開始した.Cc,d:抗CVEGF薬硝子体内投与C1カ月後のCOCTとOCTA.矯正視力は(0.6)に改善した.OCTでは明らかなCCNVは確認できず,網膜色素上皮のラインも整である.OCTAでは高信号が残存しているが明らかなCCNV所見は認めない().e,f:抗CVEGF薬硝子体内投与C1~5カ月後のCOCTとCOCTA.OCTで網膜色素上皮のライン上に高反射病巣を認め()CNVの再発が疑われ,矯正視力も(0.4)と低下した.OCTAでもCCNVの再発を示唆する高信号域を認める().直ちに抗CVEGF薬硝子体内注射を施行した.年目でC63.6%,3,4年目でC72.7%と徐々に増加するとの報告もある12).これらを考えると抗CVEGF療法を早期に行うことでCCNVの早期退縮と出血によるCCRAを最小限にすることが重要であるといえる.C3.追加投与基準と経過観察(図7)先に述べた通りCmCNVの抗CVEGF療法は導入期C1回投与後,再燃に応じて再投与を行うCPRNである.追加投与の判断基準は,中心窩網膜厚の増加,新規または遷延性の網膜内液,再出血などCmCNVの再燃が認められたときであり,基本的には診断で述べたものと同様の所見が認められたときである.再燃の判断は検眼鏡的にも可能だが,mCNVの出血は小さく近視性眼底も相まって同定はむずかしく,画像診断が有用である.具体的にはCOCTでは,治療後ははっきりとしていたCmCNVの境界が不鮮明になってきた場合や,網膜下液や網膜浮腫の滲出性変化が生じた場合,FAで消失していた蛍光漏出が再出現した場合は再投与が必要である.視力低下や患者の自覚悪化などがあるにもかかわらず,滲出性変化が乏しく判断が困難なときには,網膜色素上皮のラインの不明瞭化や,新たな出血などの悪化所見から判断することも必要である.多くは一度の硝子体内注射で鎮静化することが多いが,再発することもある6).ただし,投与に伴う急激な新生血管の退縮が網膜分離症の悪化や黄斑円孔網膜.離の形成につながることもあり注意が必要である.また,OCTAは侵襲がほとんどなくCFAと同等もしくはそれ以上の血流評価ができるため診断に有用であり,治療に伴ってCOCTAの新生血管網の高輝度病変が縮小することも知られており,活動性の指標となる可能性もある.しかし,FAで蛍光漏出のないCFuchs斑の状態であってもシグナルが検出されることも多く,実際にOCTAを施行したCmCNV眼のうち,活動期はC100%検出可能であった一方で,瘢痕期にも約C80%,萎縮期でもC90%以上でCCNV内にシグナルが認められたとの報告もある3).今後さらなる研究によって変わるかもしれないが,今のところCOCTAはCmCNVの診断には有用なツールであるが,活動性の評価にはいま一つであり,活動性評価,すなわち再投与評価にはCFAとCOCTが主要ツールとなっている.おわりにOCTの改良やCOCTAの開発,および抗CVEGF薬硝子体内注射の普及によって,以前と比べるとCmCNVの診断から治療に至るまでの短期的な視力成績は格段に改善した.一方で,長期的な予後にかかわるCCRAの発生および拡大を防ぐ効果的な方法は未だにない.さらに,最近では学童期からの近視増加も問題視されており,今後はさらに若年齢からのCmCNV罹患も懸念されるため,長期的な視機能維持は今後の課題といえる.文献1)MorizaneCY,CMorimotoCN,CFujiwaraCACetal:IncidenceCandCcausesCofCvisualCimpairmentCinJapan:CtheC.rstCnation-wideCcompleteCenumerationCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividuals.CJpnCJCOphthalmolC63:26-33,C20192)WongTY,FerreiraA,HughesRetal:Epidemiologyanddiseaseburdenofpathologicmyopiaandmyopicchoroidalneovascularization:anevidence-basedsystematicreview.CAmJOphthalmolC157:9-25.Ce12,C20143)IshidaT,WatanabeT,YokoiTetal:Possibleconnectionofshortposteriorciliaryarteriestochoroidalneovasculari-zationsCinCeyesCwithCpathologicCmyopia.CBrCJCOphthalmolC103:457-462,C20194)MiyataM,OotoS,HataMetal:DetectionofmyopicchoC-roidalneovascularizationusingopticalcoherencetomogra-phyangiography.AmJOphthalmolC165:108-114,C20165)WolfCS,CBalciunieneCVJ,CLaganovskaCGCetal;RADIANCECStudyGroup:RADIANCE:CaCrandomizedCcontrolledCstudyofranibizumabinpatientswithchoroidalneovascu-larizationCsecondaryCtoCpathologicCmyopia.COphthalmologyC121:682-692,Ce2,C20146)TanCNW,COhno-MatsuiCK,CKohCHJCetal:Long-termCout-comesofranibizumabtreatmentofmyopicchoroidalneo-vascularizationCinCEast-AsianCpatientsCfromCtheCRADI-ANCEStudy.Retina38:2228-2238,C20187)IkunoCY,COhno-MatsuiCK,CWongCTYCetal;MYRRORInvestigators:Intravitreala.iberceptinjectioninpatientswithmyopicchoroidalneovascularization:CTheMYRRORStudy.OphthalmologyC122:1220-1227,C20158)YoshidaCT,COhno-MatsuiCK,CYasuzumiCKCetal:MyopicCchoroidalneovascularization:CaC10-yearCfollow-up.COph-thalmologyC110:1297-1305,C20039)SayanagiK,UematsuS,HaraCetal:E.ectofintravitre-alCinjectionCofCa.iberceptCorCranibizumabConCchorioretinalCatrophyCinCmyopicCchoroidalCneovascularization.CGraefesC(45)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C893