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緑内障手術既往眼に対するSuture Trabeculotomy眼内法の成績

2020年7月31日 金曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(7):865.868,2020c緑内障手術既往眼に対するSutureTrabeculotomy眼内法の成績小林聡*1稲村幹夫*1鍵谷雅彦*1田岡梨奈*2猪飼央子*1*1稲村眼科クリニック*2地域医療機能推進機構横浜保土ヶ谷中央病院眼科COutcomesofSutureTrabeculotomyAbInternoinEyeswithPriorIncisionalGlaucomaSurgerySatoshiKobayashi1),MikioInamura1),MasahikoKagiya1),RinaTaoka2)andNakakoIkai1)1)Inamuraeyeclinic,2)DepartmentofOphthalmology,YokohamaHodogayaCentralHospital,JapanCommunityHealthCareOrganizationC目的:緑内障手術既往眼に対するCsuturetrabeculotomy眼内法(s-lot)の成績について報告する.対象および方法:s-lotを施行し,3カ月以上経過観察が可能であった緑内障手術既往眼C19例C19眼を対象とした.既往術式の内訳は流出路再建術がC7眼,チューブシャントを含む濾過手術がC12眼であった.平均年齢はC75.7C±11.6歳,平均観察期間はC8.0C±3.7カ月であった.眼圧,生存率,薬剤スコア,合併症について後ろ向きに検討した.累積成功率は眼圧が5CmmHg以上C21・18・15CmmHg以下を成功基準と定義した.結果:平均眼圧は術前C23.3C±5.8CmmHg,術後C12カ月C13.5±1.4CmmHgと有意に下降した.術後C12カ月での累積生存率は基準眼圧がC21,18,15CmmHgでそれぞれC100%,89.4%,84.2%であった.平均薬剤スコアは術前C4.5C±0.86,術後C12カ月C3.2C±1.7と有意に減少した.術後に前房出血がC9眼,30CmmHg以上の眼圧上昇がC9眼にみられたが,いずれも自然経過または薬物治療で改善した.結論:s-lotは緑内障手術既往眼に対して有用な術式と考えられる.CPurpose:Toinvestigatethesurgicaloutcomesofsuturetrabeculotomy(S-LOT)abinternoineyeswithpriorincisionalglaucomasurgery.Methods:Thisretrospectivestudyinvolved19eyesof19caseswithpriorincisionalglaucomasurgerythatunderwenttheS-LOTprocedure.Ofthe19eyes,7hadpreviouslyundergonetrabeculoto-myand12hadpreviouslyundergone.ltrationsurgery.Inallcases,intraocularpressure(IOP)C,cumulativesurviv-alrate,numberofglaucomamedications,andsurgicalcomplicationswereexamined.Surgerywasjudgedasasuc-cessCwhenCIOPCwasCkeptCbetweenC5CandC21/18/15CmmHg.CResults:TheCmeanCIOPCsigni.cantlyCdecreasedCfromC23.3±5.8CmmHgCbeforeCsurgeryCtoC13.5±1.4CmmHgCatC12-monthsCpostoperative.CTheCmeanCnumberCofCglaucomaCmedicationswassigni.cantlyreducedfrom4.5±0.86beforesurgeryto3.2±1.7at12-monthspostoperative.ThecumulativeCsurvivalCratesCwereC100,C89.4,Cand84.2%CatCtheCIOPCofC21,C18,CandC15CmmHgCorCless,Crespectively,CatC12-monthspostoperative.Hyphemawasseenin9eyes,andanIOPelevationof30CmmHgormorewasseenin9eyes.Conclusion:S-LOTabinternoineyeswithpriorincisionalglaucomasurgerywasfoundtobeane.ectiveprocedure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(7):865.868,C2020〕Keywords:suturetrabeculotomy眼内法,s-lot,低侵襲緑内障手術,MIGS,緑内障手術既往眼.suturetrabecu-lotomyabinterno,s-lot,minimallyinvasiveglaucomasurgery,priorglaucomasurgery.CはじめにをCSchlemm管内に挿入することによって全周の線維柱帯をCSuturetrabeculotomy眼内法(s-lot)は緑内障に対する流切開しCSchlemm管を開放することができる.従来の線維柱出路再建術に用いられる新しい手法であり,5-0ナイロン糸帯切開術に比較して,広範囲に線維柱帯を切開することがで〔別刷請求先〕小林聡:〒231-0045横浜市中区伊勢佐木町C5-125稲村眼科クリニックReprintrequests:SatoshiKobayashi,M.D.,Inamuraeyeclinic,5-125Isezaki-cho,Naka-ku,Yokohama,Kanagawa231-0045,CJAPANCきる点で有用である可能性がある.本術式は角膜切開のみで施行することができ,いわゆるCminimallyCinvasiveCglauco-masurgery(MIGS)とよばれる低侵襲緑内障手術の一つである.2014年に初めて報告があり1),その後も多数の臨床成績の報告がなされており日本でも広く行われている2,3).緑内障手術既往眼に対する報告は海外から良好な結果が報告がされているが4),現在のところ日本での報告はない.そこで今回筆者らは緑内障手術既往眼に対するCs-lotの手術成績を報告し有効性,安全性を検討した.CI対象および方法対象はC2016年C11月.2019年C3月に地域医療機能推進機構・横浜保土ヶ谷中央病院および稲村眼科クリニックにおいてCs-lotを用いて緑内障流出路再建術を施行し,3カ月以上経過観察が可能であったC19例C19眼である.男性C8眼,女性C11眼,平均年齢はC74.2C±13.2歳(42.87歳),平均観察期間はC7.0C±3.8カ月(3.12カ月)であった.疾患の内訳は広義原発開放隅角緑内障C9眼(47.4%),落屑緑内障C7眼(36.8%),原発閉塞隅角緑内障C2眼(10.5%),外傷性緑内障1眼(5.3%)であった.既往術式の内訳は緑内障濾過手術に分類される手術が合計C15眼(78.9%)で,線維柱帯切除術C5眼(26.3%),エクスプレスC7眼(36.8%),濾過胞再建術(ニードリングを除く)2眼(10.5%),チューブシャント手術C1眼(5.3%)であった.緑内障流出路再建術に分類される手術が合計C8眼(42.1%)で,線維柱帯切開術(眼外法)2眼(10.5%),トラベクトームC3眼(15.8%),Kahookdualblade1眼(5.3%),隅角癒着解離術C2眼(10.5%)であった.複数回の既往がある症例がC4眼(21.1%)であった.手術による結膜瘢痕が残る症例はC15眼(78.9%)であった.手術はすべて同一術者により施行された.手術方法は耳側角膜切開を作製し,粘弾性物質にて前房形成したあとに頭部を患眼と対側へ傾斜する.隅角鏡を乗せ鼻側の線維柱帯を確認し,23ゲージ鋭針にて鼻側線維柱帯を一部切開し,そこからC5-0ナイロン糸をCSchlemm管内に挿入する.1周して対側から現れたナイロン糸の先端を把持して,対側の糸を引くことによって線維柱帯を全周切開する.挿入途中でナイロン糸が止まった場合はその範囲までの切開を行い,続いて対側から再度ナイロン糸を挿入して可能な限り広範囲を切開するように試みた.その後前房洗浄を行い,創口閉鎖を確認した.創口は全例無縫合で自己閉鎖とした.白内障同時手術を施行する場合は,そのあとに同一創口で施行した.白内障同時手術を行った症例はC5眼(26.3%)で,単独手術のうち眼内レンズ挿入眼がC13眼(68.4%),有水晶体眼がC1眼(5.3%)であった.眼圧,手術成功率,術後合併症,視力,点眼スコアについて後ろ向きに検討を行った.眼圧,視力,点眼スコアの推移についてはCDunnetttestを用いて評価した.手術成功率は,眼圧がC5CmmHg以上C21,18,15CmmHg以下,かつ眼圧下降率C20%以上を成功基準として,術後C1カ月以上経過してからC2回連続で基準を超えた場合,緑内障手術を追加した場合,光覚を喪失した場合を死亡と定義しCKaplan-Meierの生命曲線およびCLogranktestを用いて評価した.視力に関して指数弁はC0.005,眼前手動弁はC0.003,光覚弁はC0.001と換算し,小数視力をClogMAR視力へ変換したうえで解析を行った.点眼スコアは眼圧下降薬の点眼薬C1種類につきC1点,アセタゾラミド内服の併用はC1錠につきC1点,配合剤点眼薬はC1成分ごとにC1点とした.術後合併症としての角膜内皮細胞への影響は,術前,術後に角膜中央部で測定した角膜内皮細胞密度を用いて検討した.本研究はヘルシンキ宣言に則り,検査データを研究,教育目的のために利用する可能性について事前に文書にてインフォームド・コンセントを得ていた症例を対象とし,当施設の倫理委員会での承認のもとに行った.CII結果平均切開範囲はC325.3C±50.3°,360°切開することができた症例がC10眼(52.6%),180°以上C360°未満がC9眼(47.4%),180°未満の症例はいなかった.術前術後の眼圧の推移と生存曲線と薬剤スコアの推移について図1.3に示す.平均眼圧は術前C23.3C±5.8mmHg,術後C12カ月C13.5C±1.4CmmHgと有意な下降がみられた(p<0.05).累積生存率は術後C12カ月の時点での基準眼圧をC5CmmHg以上C21,18,15CmmHg以下としたときにそれぞれC100%,89.4%,84.2%であった.死亡原因はいずれも眼圧の成功基準の上限をC2回連続で超えたものであり,再手術を要した症例や光覚を消失した症例はいなかった.平均ClogMAR視力は術前C0.04C±0.22,術後C12カ月C0.0C±0.17と有意差はみられなかった.平均薬剤スコアは術前C4.5C±0.86,術後C12カ月C3.2C±1.7と有意な下降がみられた(p<0.01).既往術式により濾過手術と流出路再建術のC2群に分類して比較すると術前平均眼圧がそれぞれC22.3C±4.5CmmHg,23.2C±5.0mmHg,術後C12カ月の平均眼圧はそれぞれC12.7C±0.5CmmHg,14.5C±1.5mmHgで有意差はなかった.また,累積生存率は術後C12カ月の時点で基準をC5CmmHg以下C15mmHg以上としたときに,それぞれC91.7%,71.4%で有意差はなかった(図4).合併症については,前房出血がC9眼(47.4%),30CmmHgを超える一過性眼圧上昇がC9眼(47.4%)にみられたが,追加処置や手術を要する症例はなかった.周辺虹彩前癒着が術前よりC30°以上広がった症例が2眼(10.5%)であった.術前,術後C12カ月の平均角膜内皮細胞密度はそれぞれC2177.5C±463.7,2255.3C±563.5Ccells/mm2と有意差はなく,30%以1.003530**********0.80スコア眼圧(mmHg)累積生存率累積生存率0.600.401050.200術前1D1W2W1M2M3M6M12M0.00n=19n=19n=19n=19n=19n=19n=18n=13n=6観察期間図1眼圧の推移図2累積生存率Dunnetttest*:p<0.05,**:p<0.01.Kaplan-Meierの生存曲線.02468101214観察期間(M)1.000.804320.600.400.20図3薬剤スコアの推移Dunnetttest*:p<0.01.上の減少を認めた症例はなかった.CIII考按一般的に線維柱帯切除術やチューブシャント手術などの濾過手術や従来の線維柱帯切開術(眼外法)は結膜への侵襲を伴い術後に結膜瘢痕を残すことが多く,緑内障手術を追加する場合に術式の選択に苦慮することがある.MIGSは角膜切開のみで施行できるものがほとんどで,結膜や強膜の状態は手術適応に影響を及ぼさない.当術式もCMIGSの一種であり,結膜瘢痕を伴う症例に対する緑内障手術の術式選択に有利である.実際に本研究の対象で結膜瘢痕を伴う症例はC15眼(78.9%)であったが,問題なく施行することができた.追加手術の作用機序を既往術式別に考察すると,流出路再建術についてはCChinらによってCs-lot眼外法におけるCSch-lemm管開放の範囲と眼圧下降幅の相関が報告されており5),今回の流出路再建術既往眼に対する効果は切開範囲の拡大が寄与していると考えられる.切開範囲と眼圧下降効果の関係の有無についてはさまざまな報告があるが5,6),筆者らは広0.00図4術式別の累積生存率Kaplan-Meierの生存曲線,Logranktestp=0.28.範囲の切開が眼圧下降に寄与すると考えている.その理由として,短期的には広範囲の切開により多くの集合管が開放されること,長期的には術後に切開部への虹彩の陥頓により周辺虹彩前癒着を生じた場合に切開範囲が広ければ影響が限定されるためと考えている.濾過手術に関してはCJohnsonらにより濾過手術後には主流出路への房水流出が減少してCSchlemm管が縮小し集合管以降の機能が低下すると報告されており7),Schlemm管を介した房水流出の改善を機序とする流出路再建に分類される本術式は効果が低いと予想されたが,結果は逆であった.今回の濾過手術既往眼に対する効果は縮小したCSchlemm管や集合管以降の主流出路が再度機能しうることを示唆している.症例数が少ないために有意差は出なかったが,術式別の比較ではむしろ濾過手術既往眼のほうが成績の良い傾向があった.流出路再建術で効果が不十分であった症例の原因は集合管以降の主流出路の機能低下に起因している可能性があり,その場合にはCs-lotによる線維柱帯の切開は範囲の拡大によらず効果が期待できなかったとも考えられる.流出路再建術術前1M3M6M12Mn=19n=19n=18n=13n=6観察期間02468101214観察期間(月)の不成功例のなかには一定数そのような症例が存在すると考えられているが予測は困難である.既報では既往術式によらず有効であったと報告されているが4),本研究は症例数が少ないために十分な評価ができず,今後の課題としたい.以上,緑内障手術既往眼に対するCs-lotの手術成績について評価を行った.良好な成績と安全性を示すことができ,有効な治療法と考えることができる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Gonioscopy-assist-edCtransluminalCtrabeculotomy,CabCinternoCtrabeculoto-my:techniqueCreportCandCpreliminaryCresults.COphthal-mologyC121:855-861,C20142)SatoT,KawajiT,HirataAetal:360-degreesuturetra-beculotomyCabCinternoCtoCtreatCopen-angleglaucoma:2-yearoutcomes.ClinOphthalmol17;C12:915-923,C20183)GroverDS,SmithO,FellmanRLetal:Gonioscopy-assist-edtransluminaltrabeculotomy:Anabinternocircumfer-entialtrabeculotomy:24CmonthsCfollow-up.CJCGlaucomaC27:393-401,C20184)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Outcomesofgoni-oscopy-assistedCtransluminaltrabeculotomy(GATT)inCeyesCwithCpriorCincisionalCglaucomaCsurgery.CJCGlaucomaC26:41-45,C20175)ChinS,NittaT,ShinmeiYetal:Reductionofintraocularpressureusingamodi.ed360-degreesuturetrabeculoto-mytechniqueinprimaryandsecondaryopen-angleglau-coma:apilotstudy.JGlaucomaC21:401-407,C20126)ManabeCS,CSawaguchiCS,CHayashiCKCetal:TheCe.ectCofCtheCextentCofCtheCincisionCinCtheCSchlemmCcanalConCtheCsurgicaloutcomesofsuturetrabeculotomyforopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmolC61:99-104,C20177)JohnsonCDH,CMatsumotoY:SchlemmC’sCcanalCbecomesCsmallerCafterCsuccessfulC.ltrationCsurgery.CArchCOphthal-molC118:1251-1256,C2000***

基礎研究コラム 38.細胞内エネルギーと神経細胞死

2020年7月31日 金曜日

細胞内エネルギーと神経細胞死細胞内エネルギー不足と細胞死脳の神経細胞が変性する神経変性疾患にはアルツハイマー病やパーキンソン病,ハンチントン病などがあります.網膜の神経細胞の障害では,緑内障では網膜神経節細胞,網膜色素変性では視細胞が細胞死を起こし,疾患が進行します.神経細胞変性を引き起こす要因はさまさまですが,細胞内エネルギーの不足が脳や網膜の神経細胞の変性につながる可能性も報告されています1).細胞内エネルギーの保持による細胞死抑制細胞内のエネルギーであるCadenosinetriphosphate(ATP)の不足が神経細胞の細胞死につながるのであれば,細胞内のエネルギーの低下を防ぐことにより,神経細胞の細胞死を防ぐことができるのではないか,と考えられます.そこで筆者らはまず,細胞内エネルギーの消費を抑制して,細胞内のエネルギーを保持するため,生体内に普遍的に豊富に存在するATP分解酵素であるCvalosin-containgCprotein(VCP)のATP分解活性を阻害したところ,細胞内CATPの減少が抑制でき,神経細胞の細胞死を抑制できることがわかりました.VCPのCATP分解活性阻害薬は網膜色素変性や,緑内障,網膜虚血のモデル動物で有効性が示され,網膜中心動脈閉塞症急性期の患者に対する医師主導治験で有効性が示唆されました2).次に,細胞内エネルギーを保持して神経細胞変性を抑制するもう一つの戦略として,ATPの生産を増強することを考え,分岐鎖アミノ酸に着目しました.分岐鎖アミノ酸は芳香族環を含まない側鎖をもつアミノ酸で,必須アミノ酸であるロイシン,イソロイシン,バリンがあります.分岐鎖アミノ長谷川智子京都大学眼科学教室,日本学術振興会特別研究員酸をストレス下の培養細胞に投与すると,細胞内エネルギー低下が抑制され,細胞死が抑制されることが明らかになりました.また,網膜変性モデルマウスでは視細胞の変性が抑制され,緑内障のモデルマウスでは網膜神経節細胞の細胞死が抑制されました.網膜変性モデルマウスでは視細胞の変性が進行した時期から投与を開始した場合にも,視細胞変性が抑制され,視機能の低下が抑制されました3).今後の展望筆者らは現在,分岐鎖アミノ酸による網膜色素変性に対する進行抑制効果を検討するため,医師主導治験を行っています(jRCT2051180072).今後,分岐鎖アミノ酸による細胞内エネルギーの保持と細胞死抑制のメカニズムの解明を進めていこうと考えています.細胞内エネルギーを保持することで細胞死を抑制する,という戦略は,今後,網膜色素変性や緑内障などの,神経細胞が変性する疾患に幅広く応用できる進行抑制治療法になることが期待されます.文献1)UminoCY,CEverhartCD,CSolessioCECetal:HypoglycemiaCleadsCtoCage-relatedClossCofCvision.CProcCNatlCAcadCSciCUSAC103:19541-19545,C20062)IkedaCHO,CMuraokaCY,CHataCMCetal:SafetyCandCe.ectivenessCofCaCnovelCneuroprotectant,CKUS121,CinCpatientsCwithCnon-arteriticCcentralCretinalCarteryCocclu-sion:AnCopen-label,Cnon-randomized,C.rst-in-humans,Cphase1/2trial.PLoSOneC15:e0229068,C20203)HasegawaCT,CIkedaCHO,CIwaiCSCetal:BranchedCchainCaminoacidsattenuatemajorpathologiesinmousemodelsofretinaldegenerationandglaucoma.CHeliyonC4:e00544,C2018C細胞内ATP濃度生細胞数分岐鎖アミノ酸(-)***1.0***15***図1分岐鎖アミノ酸による細胞内エネルギー低下抑制と細胞死抑制培養細胞に小胞体ストレス負荷(ツニカマイシン)を加えると,細胞内エネルギー(ATP)が減少し,生細胞数が減少するが,分岐鎖アミノ酸を添加することによって,細胞内エネルギー低下が抑制され,細胞死が抑制された.(文献C3より改変引用)RelativeATPlevels/cell0.8100.6*分岐鎖アミノ酸(+)0.450.200BCAA(mM)0040BCAA(mM)0040小胞体ストレス負荷小胞体ストレス負荷(79)あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020C8530910-1810/20/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 206.周辺部に網膜硝子体癒着を有する硝子体黄索引症候群(中級編)

2020年7月31日 金曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載206206周辺部に網膜硝子体癒着を有する硝子体黄斑牽引症候群(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに硝子体黄斑牽引症候群(vitreomacularCtractionCsyn-drome:VMTS)は,後部硝子体.離が生じる際に,中心窩網膜を前方に牽引して中心窩陥凹の変形をきたす疾患である1).診断には光干渉断層計(OCT)が非常に有用で,網膜硝子体癒着の範囲および網膜分離や網膜.離,網膜内の.胞様変化を容易にとらえることができる.通常,網膜硝子体癒着は黄斑部に限局しており,周辺部に認めることは少ない.筆者らは以前に黄斑部だけでなく,視神経乳頭周囲および周辺部の網膜硝子体癒着が非常に強固であったCVMTSのC4例を経験し,その臨床的特徴につき報告したことがある2).C●周辺部に網膜硝子体癒着を有する硝子体黄斑牽引症候群の臨床的特徴大阪医科大学眼科で硝子体手術を施行したCVMTSのうち,黄斑部以外に周辺部にも強固な網膜硝子体癒着を認めたC4例C4眼を対象とした.年齢はC60~86歳(平均75歳)で,性別は女性C3例,男性C1例であった.このC4眼について術前の屈折,眼底所見,OCT所見,術中所見,術後経過につき検討した.その結果,術前の眼底所見およびCOCTで,乳頭周囲にも線維増殖膜をC3例に認めた.また,肥厚した後部硝子体膜が後極部から周辺部まで伸長している所見が全例に認められた.術前の屈折値は+0.5D~+2.75D(平均+1.25D)で全例遠視であった.術中所見では肥厚した後部硝子体膜が黄斑部,視神経乳頭および周辺部の網膜と強固に癒着し,2眼で人工的後部硝子体.離作製時に周辺部に医原性裂孔を形成した.術後矯正視力はC3眼で改善したが,改善度合いは通常のCVMTSに比較して不良であった.C●硝子体手術時の注意点このように肥厚した後部硝子体膜を有するCVMTSで(77)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1代表症例術前の眼底写真で右眼は異常を認めなかった(Ca)が,左眼は肥厚した後部硝子体膜が黄斑部から周辺部にかけてみられた(b).OCTでは右眼は異常を認めなかった(Cc)が,左眼は肥厚した黄斑上膜を伴う硝子体黄斑牽引症候群を認めた(d).術中所見として,肥厚した後部硝子体.離膜が明瞭に観察され(Ce),周辺部まで面状に癒着しており,人工的後部硝子体.離作成時,周辺部に医原性裂孔を形成した(Cf).術後COCTで黄斑部の形態は改善した(Cg).(文献C2より引用)は,視神経乳頭周囲や周辺部にも網膜硝子体癒着があることを念頭に置き,人工的後部硝子体.離時に周辺部に医原性裂孔を形成しないように注意する必要がある.文献1)SonmezCK,CCaponeCACJr,CTreseCMTCetal:VitreomacularCtractionsyndrome:impactofanatomicalcon.gurationonanatomicalCandCvisualCoutcomes.CRetinaC28:1207-1214,C20082)FukumotoM,SatoT,OosukaSetal:ClinicalfeaturesofvitreomacularCtractionCsyndromeCwithCperipheralCvitreo-retinaladhesion.ClinOphthalmolC14:281-286,C2020あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020C851

抗VEGF治療:抗VEGF薬と診療連携:市中病院の立場から

2020年7月31日 金曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二77.抗VEGF薬と病診連携:宮原晋介田附興風会医学研究所北野病院眼科市中病院の立場から抗CVEGF薬による治療は硝子体内注射の回数が長期間かつ多数回にわたることが多く,病診連携による協力体制が重要である.病診連携を深めるには密な意思疎通がその根幹となる.診療情報提供書や地域連携パス,学会や勉強会などでの医師同士の直接対話などの方法を駆使して双方向の連携を密にしていく.治療としての病診連携抗CVEGF薬の登場は患者にとって大きな福音であり,加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)1),網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)2,3),糖尿病黄斑浮腫(diabeticCmacularedema:DME)4)など複数の疾患に対する抗CVEGF薬の効果が,各種大規模スタディにて確認されている.近年の政策によって,病院への紹介状なし初診患者は抑制されており,新患として市中病院を訪れるのは,眼科診療所などからの紹介患者が主体である.抗CVEGF薬治療における病診連携の重要性はますます高まっている.病診連携の基本は診療情報提供書のやり取りとなる.市中病院の側からは,初回受診時,診断確定時,病態悪化時,返患時などに書くのが一般的であろう.初回受診時には必ず返事を書き,ちゃんと患者が来院したことを紹介元に連絡しておく.初回受診時に診断と治療方針が決まればそれを記載するが,初回受診時にすべての検査を施行できず,診断確定が次回受診以降になる場合は,初回受診時にその旨の返事を書いたうえで,検査結果が揃って診断と治療方針が確定した時点で,再度返事を書く.抗VEGF薬治療についての連絡導入期の治療については,初回報告にて投与予定を記載できるが,その後のCPRN(prorenata)投与や再発時の投与については5),診療情報提供書でやり取りしてもいいが,多忙な外来中に毎回文書を作成していては診察時間が足りなくなってくる.当院では,抗CVEGF薬投与時の簡潔な連絡表を作成し,抗CVEGF薬を硝子体内注射(硝注)するたびに,これに記入したものを患者に(75)C0910-1810/20/\100/頁/JCOPY渡している(図1).この連絡表を持った患者が,硝注の数日後に連携施設を受診して,硝注後のチェックを受ける.PRNや定期投与についてはこれにて連携し,あとは病状変化時や,返患時に詳しい診療情報提供書を作成することとなる.地域レベルで連携パスを作成して,より円滑な病診連先生御机下いつも御世話になりありがとうございます。○○○○○様(xxxx-xx-xx生)(当院患者番号:xxxxxxxx)につきまして下記のとおり御報告ならびに御願い申し上げます。上記患者様につきましては、本日、(右・左)眼硝子体内注射を施行させていただきました。薬剤:ルセンティスアイリーアマクジェン刺入部位:耳上側鼻上側今後の加療につきましては先生に御願いさせていただきたいと思います。御多忙と存じますが何卒よろしく御願いいたします。現在の処方は以下のとおりです。ベガモックス4回この度は患者様の御紹介をいただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。年月日〒530-8480大阪市北区扇町2丁目4番20号公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院眼科拝TEL(06)6312-1221(代)図1北野病院における硝子体内注射術後報告書あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020C849図2左眼網膜静脈分枝閉塞症(80歳,男性)のOCT像a:9月C3日初診時.発症後C10年以上経過した陳旧性網膜静脈分枝閉塞症.矯正視力C0.3.Cb:初回注射(9月C24日,ルセンティス)からC2週間後のC10月C15日.矯正視力C0.4.Cc:2回目注射(11月C5日,アイリーア)からC3週間後のC11月C26日.矯正視力C0.2.変化はみられず,あとは経過観察となった.携を模索しているところもある.筆者の前任地の北九州市では,産業医科大学,JCHO九州病院,小倉記念病院を中心として各病院や診療所が参加して,医療圏全体として北九州市黄斑疾患研究会を運営していた.定期的に眼科医が集まって意見交換を行うとともに,各種の臨床検討を重ねていた.そのなかでも特筆すべきものが,地域としてのパス治療指針の策定で,AMDパス,DMEパス,RVOパスを作成して,パスシートを患者自身に持参してもらうことで円滑な病診連携を行っていた.パスシートには治療経過が一目でわかるよう簡潔にまとめてあり,わざわざ診療情報提供書を毎回作成する必要がない.上記施設のホームページからパスシートをダウンロードできるので参照されたい.ロービジョン外来AMD,RVO,DMEなどは本来は難治性疾患であり,適切な治療を行ったにもかかわらず視力予後が不良となる患者に対しては,身体障害の申請や,ロービジョン外来の紹介が必要となる.ロービジョン外来については,日本ロービジョン学会が国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)で定期的に行っている視覚障害者用補装具適合判定医師研修会に参加して,厚生労働C850あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020省の認定に合格すれば診療報酬がつく.働き方改革の影響病期については,抗CVEGF薬による治療適応となる活動期だけでなく,治療適応前の早期,治療適応がなくなる末期の状態もある.早期や末期については,基本的には視力,眼底所見,光干渉断層計所見を確認しながらの経過観察のみとなる.抗CVEGF薬の登場もそうだし,各種手術の発達によって治せる病気が増えたことで,市中病院の勤務医の仕事量はC10年前,20年前に比べてますます増加している.定期の手術に加えて,網膜.離などの緊急患者も受け入れる必要があり,すべてを勤務医だけでこなそうとすると勤務時間がいくらあっても足りない.その一方で,もちろんサラリーマンにとっては歓迎すべきことなのだが,近年の働き方改革による残業時間の制限などによって,勤務時間は短縮傾向となっている.抗CVEGF薬治療が必要な新規患者を紹介していただくのも病診連携であるが,一方で経過観察のみである患者をどの程度まで市中病院が診るのか,つまり限られた医療資源をどう振り分けていくのか,地域として決めていくのもまた病診連携の課題であるといえる.文献1)HeierCJS,CBrownCDM,CChongCVCetal:Intravitreala.ibercept(VEGFtrap-eye)inCwetCage-relatedCmacularCdegeneration.COphthalmologyC119:2537-2548,C20122)BrownCDM,CCampochiaroCPA,CBhisitkulCRBCetal:Sus-tainedCbene.tsCfromCranibizumabCforCmacularCedemaCfol-lowingbranchretinalveinocclusion:12-monthoutcomesofCaCphaseCIIICstudy.COphthalmologyC118:1594-1602,C20113)CampochiaroCPA,CBrownCDM,CAwhCCCCetal:SustainedCbene.tsCfromCranibizumabCforCmacularCedemaCfollowingCcentralCretinalCveinocclusion:twelve-monthCoutcomesCofCaphase3study.OphthalmologyC118:2041-2049,C20114)IshibashiCT,CLiCX,CKohCACetal;REVEALStudyCGroup:CTheCREVEALStudy:ranibizumabCmonotherapyCorCcom-binedCwithClaserCversusClaserCmonotherapyCinCAsianCpatientsCwithCdiabeticCmacularCedema.COphthalmologyC122:1402-1415,C20155)Iida-MiwaCY,CMuraokaCY,CIidaCYCetal:BranchCretinalveinocclusion:Treatmentoutcomesaccordingtothereti-nalCnonperfusionCarea,CclinicalCsubtype,CandCcrossingCpat-tern.SciRepC9:6569-6581,C2019(76)

緑内障:緑内障とAI

2020年7月31日 金曜日

●連載241監修=山本哲也福地健郎241.緑内障とAI田淵仁志広島大学大学院医系科学研究科医療のためのテクノロジーとデザインシンキング寄附講座ツカザキ病院眼科深層学習を用いた緑内障自動診断は,陽性的中率がおおむねC30%弱であるため,偽陽性の多さから一般眼科施設に普及するとは考えにくい.一方で,点眼アドヒアランス向上の目的に応用するなど,深層学習の緑内障臨床応用への取り組みは今後も発展が期待される.●はじめに深層学習(deeplearning)が日本の眼科業界に衝撃を与えたのは,Googleの人工知能(arti.cialCintelli-gence:AI)開発チームが糖尿病網膜症をCAIで判定できるとする論文をCJAMAに発表し,その後あまり間をおかずにCIDxTechnologies社の糖尿病網膜症CAI自動診断装置がCFDAを通過した,2016年末からC2017年にかけての時期であろう.シンガポールアイセンターが糖尿病網膜症と加齢黄斑変性とともに緑内障のCAI識別に関する論文を出したのもC2017年である1).デカい資本による高火力のマシンパワー,デカい研究チームによるものすごい数の症例データが,国策で均てん化配置された施設の集合体である日本の眼科業界に脅威を与えた.C●AIリテラシー(最新版)国産医療機器開発支援に的を絞り,緑内障を含めて多岐にわたる眼科疾患の診断CAI研究開発2)を行う筆者らは,すべての工程を自分達のアライアンスのなかで完結している.だからこそ深層学習の良いも悪いも等身大で感じている.その結果,世界中の医療関係者みんなが勝Ca手に抱いていた思い込みから徐々に解放されてきた.この点を,大変重要な最新版CAIリテラシーとして解説させていただく.第一に画像認識のCdeeplearningモデルの進化はC2015年時点で止まっており,2020年C3月時点でも当時の解析能力から大きくは変わっていないということである(図1).第二に,AI診断に必要な画像枚数はさほど多くないということである.筆者らの超広角走査レーザー検眼鏡(Optos社)による緑内障診断論文2)は,わがCAIチーム立ち上げ時期の論文であり,AIモデル自体も自作のものであった.この論文のデータを,主要有名CAIモデルの複数組み合わせという現時点最強の方法論で解析しなおすと,一挙に先のシンガポール緑内障CAIのCareaCunderCthecurve(AUC)0.94を凌駕するCAUC0.97が得られた(図2).すなわち画像枚数に関係なく,ある一定数以上はCAIモデル側での性能限界にぶつかって,収集と処理にかかるコストから費用対効果は下がるのである.Googleの論文が出たとき,筆者らはこの技術の「始まり」と勝手に思い込んでいたが,それは「終わり」だったのである.そして,中華系の大量のデータ圧力に対して無力感を勝手に感じていたが,それは杞憂だったのである.CbError(%)0.260.160.07感度(%)特異度(%)OuroldNewSEC■Newensemble20102011201220132014201520162017Year■SECmodel0.023■Ouroldmodelmodelensemblemodel図1画像認識モデルの誤認率の推移図2緑内障診断モデルの感度・特異度・AUCの比較画像認識技術のコンペティション“ImageNetLargeOuroldmodel:ツカザキ眼科による緑内障診断モデル(文献2).Newemsem-ScaleCVisualRecognitionCChallenge(ILSVRC)”のble:同データに対する三つの有名モデル(VGG19,CDenseNetC121,CDenseNet優勝モデルによる誤認率の推移グラフ.2012年の深201)アンサンブルによる緑内障診断モデル.SEC:SingaporeEyeCenterのモ層学習登場により誤認率が一気に下がった.2015年デル(文献C1).a:3モデルの感度・特異度.b:同C3モデルのCAUC.ツカザキからの改善はわずかである.眼科のアンサンブルのCAUCが大幅に改善し,SECモデルを上回っている.(73)あたらしい眼科Vol.37,No.7,20208479487.280.2AUC0910-1810/20/\100/頁/JCOPY表1緑内障診断AIの年齢別陽性的中率年齢緑内障有病率陽性的中率40歳代2.2%14.5%50歳代2.9%18.3%60歳代6.3%33.4%70歳代10.5%46.9%80歳代11.4%49.2%40歳以上5%28.40%健診年齢(4C0~C60歳)2.55%16.40%多治見スタディ(Ophthalmology,2004)による年齢別緑内障有病率を当てはめた場合の,シンガポールアイセンターモデル(文献1)の性能(特異度C87.2%,感度C96.4%)を用いた陽性的中率.年齢で大きく陽性的中率が異なる.AIが最適な年代であっても,半数以上の偽陽性を出す性能であることがわかる.陽性的中率=真陽性者/真陽性者+偽陽性者C●陽性的中率から緑内障AIを考える(AIの性能と有病率)先にも述べたが,現在緑内障診断CAIを考えるときにベンチマークとなる論文が,シンガポールの研究論文である1).この時点で深層学習の技術的レベルはピークに達していて,画像枚数もC125,189枚と莫大であるこの論文の性能(感度C96.4%特異度C87.2%)を超える深層学習CAIはもう出てこない.大なり小なりの緑内障CAIの性能である.その性能と多治見スタディーの国家的データから,陽性的中率を算出してみる(表1).陽性的中率が年齢別の有病率で大きく変化することがよくわる.40歳以上全体ではC28.4%,80歳代でC49.2%である.AI利用が想定されるC40~60歳の健診年齢層での有病率平均値C2.55%で計算するとC16.4%である.10人の緑内障疑いのうちC2人しか真の緑内障を当てられない技術を利用する健診センターがあるだろうか?AIにとって最適なC70歳以上の年齢層に絞っても,半分以上間違うCAIを眼科医がわざわざ使うだろうか?C●AIの応用先は多岐にわたる緑内障診断CAIの脅威が職場から過ぎ去ったからといって,AIの医療応用開発が無意味になったわけではない.これまでできなかったことへのブレークスルーになる事例が数多くある.筆者らのチームがC2011年から開発している点眼瓶センサーという案件がある3).携帯電話用の超小型モーションセンサーを点眼瓶にアタッチさせて,得られた動作波形から点眼動作だけをCAIが抽出していく(図3).深層学習以前は正答率がC90%程度であり論文にすらできなかったが,100%の正答率を得て社会実装への確かな道を切り開いてくれたのである.b2,0001,5001,0005000-500-1,000-1,500-2,000図3筆者らの開発した点眼瓶センサーa:点眼瓶センサーの分解写真.点眼瓶を入れるアタッチメントにモーションセンサー(検出器)とリチウム電池を入れる.Cb:センサーから得られた点眼動作時の波形の一例.(文献C3より引用)●AIをいろいろなところに応用しよう外国製の緑内障診断CAIは必要ない.どこかにニーズが発見されたときは簡単に国内で作れる.それよりも,積年の臨床的懸案事項はないだろうか?深層学習がブレークスルーになるかも知れない.連絡いただければ喜んでお手伝いさせていただく.文献1)TingCDSW,CCheungCCY,CLimCGCetal:DevelopmentCandCvalidationofadeeplearningsystemfordiabeticretinopa-thyCandCrelatedCeyeCdiseasesCusingCretinalCimagesCfromCmultiethnicCpopulationsCwithCdiabetes.CJAMAC318:2211-2223,C20172)MasumotoCH,CTabuchiCH,CNakakuraCSCetal:Deep-learn-ingCclassi.erCwithCanCultrawide-.eldCscanningClaserCoph-thalmoscopeCdetectsCglaucomaCvisualC.eldCseverity.CJGlaucomaC27:647-652,C20183)NishimuraK,TabuchiH,NakakuraSetal:EvaluationofautomaticCmonitoringCofCinstillationCadherenceCusingCeyeCdropperCbottleCsensorCandCdeepClearningCinCpatientsCwithCglaucoma.TransCVisSciTechnolC8:55,C2019848あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020(74)

屈折矯正手術:オルソケラトロジーの継続可能性

2020年7月31日 金曜日

監修=木下茂●連載242大橋裕一坪田一男242.オルソケラトロジーの継続可能性中村葉四条烏丸眼科小室クリニックオルソケラトロジーを継続していくためには,必ず定期的な検診を行い,角膜上皮障害,角膜内皮細胞密度などのチェックを行う必要がある.レンズに対する角膜の反応には個人差があるため,一度レンズを中断しての確認が必要となる場合もある.●はじめにオルソケラトロジーは,中央部曲率がフラットなハードコンタクトレンズを夜間就寝時に装用することによって角膜を平坦化させ,近視矯正を行う方法である.日中眼鏡なしで過ごせるというメリットに加えて,近視進行抑制効果を期待しての学童への処方が多くなっているのが現状である.成人の場合は,一度開始すると,問題がなければ通常のコンタクトレンズ同様,長期にわたって使用する患者が多い.しかし学童の場合は,保護者が近視進行抑制効果を期待して開始すること,生活スタイルの変化が大きい時期であること,矯正できる近視度数に制限があることなどの関係で,途中で中止する患者が一定の割合で存在する.本稿では,当院において自費診療として開始した症例,中止した症例を検討し,オルソケラトロジーの継続可能性について考察する.●当院におけるオルソケラトロジー診療自費診療として行っている.適応検査にて適応と判定された患者に自宅で装用体験をしてもらったうえで,希望者のみ開始する.開始後3カ月までは1カ月ごと,その後も継続的に3カ月ごとの経過観察を行い,1年ごとに契約を更新するかどうかを確認して継続する方法をとっている.●装用開始可能症例の検討2016年の柿田らの報告ではオルソケラトロジー装用者の年齢別の内訳は,就学前児童0.7%,小学生25.0%,中学生~19歳41.1%,成人33.2%となっていた1).当院は京都府立医科大学で臨床研究に参加していた患者の継続希望者がいたため,学童期症例が多くなっている可能性は否定できない.当院における装用希望患者の年齢別内訳を図1に示す.2019年度現在,12歳以下が68%と高率であり,(71)13~19歳が21%,20歳以上が11%であった.このうち,装用体験期間を経て装用開始した患者は12歳以下73%,13~19歳70%,20歳以上62%であった.適応外となった患者は,12歳以下は7%で,その理由は低度数,アレルギー性結膜炎やうつぶせ寝であることなどであった.13歳以上での理由は,度数が強すぎる,が主であった.12歳以下であっても装用困難症例は10%以下であり,70%の患者で装用を開始することができていた.●装用中止症例の検討3カ月以上経過観察できた82症例〔平均経過観察期間2年1カ月(3カ月~4年)〕中,中止症例は14例(17%)であった.中止時の年齢別グラフを図2に示す.中止時年齢が12歳以下は5例,13~19歳は6例,20歳以上は3例であった.12歳以下で開始した症例が全体の70%を占めることを考えると,12歳以下での中止率は他の年齢よりもかなり低いことがわかる.中止理由を,本人希望と医師との相談のうえ中止となった場合とに分類すると,19歳以下では割合が半々だが,20歳以上では全例が本人希望であった.12歳以下と20歳以上での本人希望の理由が来院困難や転居に伴うものであったのに比較して,13~19歳での本人希望理由は,通常のコンタクトレンズへの移行や睡眠時間の確保困難など生活スタイルの変化が多い傾向にあった.医師との相談のうえ中止した6例の理由は,角膜内皮細胞密度(以下,CD)の低下が3例,上皮障害が2例,適応外度数が1例であった.CDの低下により相談のうえ中止した3例について検討する.10歳(装用開始後1.5年),12歳(同2年),13歳(同1.5年)である.13歳症例の装用前,1.5年時,装用中止後1.5年時のCDを図3に示す.装用前CDは2,857cells/mm2,形状のばらつきを示す変動係数(以下,CV)は41%であったが,装用後1.5年時にCD2,521cells/mm2,CV49%となっており,一度レンズ装用を中断しての経過観察を提あたらしい眼科Vol.37,No.7,20208450910-1810/20/\100/頁/JCOPY装用前CD(cells/mm2)CV(%)装用前2,85741装用後1.5年2,52149中止後1.5年2,81740装用後1.5年中止後1.5年図313歳症例の右眼角膜細胞密度の経過自動解析手動解析図2中止症例(年齢別)中止は17%であった〔平均経過観察期CD:2,599cells/mm2,CV:44%CD:3,037cells/mm2間2年1カ月(3カ月~4年)〕.12歳以下5例,13~19歳6例,20歳以上3例.図412歳症例の左眼角膜細胞密度の自動解析と手動解析の結果比較案したが,患者側が不安を感じたため中止することとなった.中止後1.5年時の測定結果はCD2,817cells/mm2,CV40%であり,装用前と同様の状態であった.12歳症例での1.5年時のスペキュラーマイクロスコープの自動解析結果と手動解析結果を図4に示す.自動解析ではCDは2,599cells/mm2であったが,自動解析では3,073cells/mm2であった.オルソケラトロジー装用によって生じる上皮の形状変化のため,自動解析では内皮面よりの反射像が不鮮明になり,境界を不明瞭ととらえるために細胞数が減少しているかのように測定されるのではないかと考えている2,3).このようにオルソケラトロジーレンズ装用中,CDが減少したかのように測定される場合は,自動解析ではなく手動解析で確認するか,一度中断して確認するほうがよい場合もある.レンズに対する角膜の反応は個人差がある可能性もあるため,定期的な経過観察を必ず行い,説明のうえ継続についての可否を判断するべきであろう.846あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020●おわりにオルソケラトロジーはエビデンスのある近視進行抑制法として認められつつあり,学童へのレンズ処方が増加している.適応を正しくみきわめ,定期的な経過観察を行い,安全性を担保したうえでメリットを最大限いかせるように努めることが大切であると考える.文献1)柿田哲彦,高橋和博,山下秀明ほか;日本眼科医会医療対策部:オルソケラトロジーに関するアンケート調査集計結果報告.日本の眼科87:527-534,20162)LaingRA,OakSS,LeibowitzHM:Specializedmicroscopyofthecornea-specularmicroscopy-.In:Cornealdisor-ders:Clinicaldiagnosisandmanagement(eds:LeibowitzHM,WaringGO3rd),2nded,p83-99,W.B.Saunders,Philadelphia,19983)稲葉昌丸,細谷比佐志:スペキュラーマイクロスコープ.角膜クリニック(木下茂,大橋裕一編),p129-132,医学書院,1990(72)

眼内レンズ:水晶体嚢拡張リング(CTR)併用眼での急性隅角閉塞

2020年7月31日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋404.水晶体.拡張リング(CTR)川路隆博医療法人樹尚会佐藤眼科・内科併用眼での急性隅角閉塞水晶体.拡張リング併用眼内レンズ(CTR-IOL)が挿入された落屑緑内障眼において,Zinn小帯脆弱とCCTR-IOLが要因となり,急性隅角閉塞を生じたC1例を報告する.前眼部COCTで,虹彩周辺部が全周にわたり前方に強く圧迫されて生じた隅角閉塞と,虹彩中央部が平坦になっている特徴的な形状がみられた.●はじめに落屑症候群を伴う白内障手術においてはCZinn小帯脆弱が合併する場合があり,手術時には水晶体.内に眼内レンズ(intraocularlens:IOL)が固定されたとしても,手術後の経過中にCIOLが.ごと脱臼することがある.術中の状況によっては,そのリスクの軽減を目的として水晶体.拡張リング(capsularCtensionring:CTR)が挿入されることがある.今回,水晶体.拡張リング併用眼内レンズ(CTR-IOL)が挿入された落屑緑内障眼において,Zinn小帯脆弱とCCTR-IOLが要因となり,非典型的な急性隅角閉塞を生じたC1例を報告する.C●症例74歳,男性.既往歴はアレルギー性気管支炎.右眼の白内障と落屑緑内障に対しC2013年に超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術+360°Csuturetrabeculotomyの同時手術を施行されており,このときにCCTRも併用されていた.その後,2018年C3月頃までは眼圧はC14~18mmHgで推移していたが,その頃より眼圧上昇が進行し,緑内障点眼薬C5剤使用下でC23~27CmmHgとなり,追加治療が検討された.視力は術後より(0.6)~(0.7)で推移していた.眼圧下降のため,2018年C9月C18日にマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(CYCLOG6)を施行し,とくに問題ない術後経過だった(図1a).ところが術後C9日目に,前日から見えなくなったとの訴えで受診した.視力はC30Ccm/手動弁(n.c.)に低下,眼圧はC41CmmHgであり,前房出血を認め,前房深度は正常であった(図1b).数日経過観察したが改善なく,10月C1日に前房洗浄を施行した.手術は問題なく終了し,終了時の前房形成も良好であったが,翌日診察したところ,前房出血は軽快していたが,著明な浅前房と高眼圧(46CmmHg)を認めた(図2a,b).前眼部光干渉断層計(opticalcoher-encetomography:OCT)の所見では,虹彩周辺部が全周にわたり前方に強く圧迫された結果,急性隅角閉塞を呈しており,かつ虹彩中央部は平坦であった(図2c).これらの所見より,CTR-IOL自体の前方移動による圧迫と思われる非典型的な急性隅角閉塞と考えた.治療法としては,瞳孔ブロックを生じていない浅前房で高眼圧の病態として,aqueousmisdirectionの関与が疑われるため,まずは硝子体カッターを用いた前部硝子体切除+Zinn小帯切除+虹彩切除を考えるが,本症例では多量の硝子体出血を認め,急性隅角閉塞を生じる前から眼圧下降が必要な状態であったため,硝子体切除術+アーメド緑内障バルブ(チューブは硝子体腔へ挿入)+虹彩切除を選択した.術後経過は翌日より良好であり(図2d,e),術後C18カ月の時点で,視力は(0.6),眼圧図1マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術の術後経過a:マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(CYCOLG6)翌日の前眼部COCT画像.Cb:術後9日目のスリット写真.前房出血を認めた.(69)あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020C8430910-1810/20/\100/頁/JCOPY図2前房洗浄施行後の急性隅角閉塞の経過a,b:前房洗浄翌日のスリット写真,c:同日の前眼部COCT画像,Cd:硝子体手術+アーメド緑内障バルブ+虹彩切除術翌日のスリット写真,e:同日の前眼部COCT画像.はC2剤使用下でC17CmmHg,前房深度も術後を通して深く維持されている.C●考案本症例では,潜在的なCZinn小帯脆弱眼に対する前房洗浄という介入が契機となったのか,CTR-IOLの前方移動+aqueousmisdirectionC→隅角閉塞の急速な進行,という機序により浅前房や高眼圧を生じたと思われた.前眼部COCT画像では,虹彩周辺部が全周にわたり前方に強く圧迫されて生じた隅角閉塞と,虹彩中央部が平坦になっている形状が特徴的であった.Bochmannらは,落屑症候群において,同様の機序による浅前房,近視化,特徴的な超音波生体顕微鏡所見を示す隅角閉塞,断続的~慢性的な眼圧上昇を呈したCCTR-IOLのC7例を報告している1).この報告では,このような症例の機序は瞳孔ブロックによるものではなく,CTR-IOLが周辺部まで広範囲に圧迫しているためであり,レーザー虹彩切開術は無効であると述べており,CTR-IOL摘出を勧めている.また,前房洗浄の理由となったマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術施行後C1週目での急な前房・硝子体出血の原因として,本症例はCsuturetrabeculotomy後でSchlemm管が広く開放しており,眼圧下降に伴うCSchC-lemm管からの逆血の可能性があるが,そこまでの眼圧下降も考えにくく,明らかではない.既報でも述べられたように,Zinn小帯が脆弱なCTR-IOLにおいては,断続的~慢性的な眼圧上昇の可能性があり,本症例でも今後も注意深い経過観察が必要と思われる.文献1)BochmannCF,CSturmerJ:ChronicCandCintermittentCangleCclosureCcausedCbyCin-the-bagCcapsularCtensionCringCandCintraocularlensdislocationinpatientswithpseudoexfolia-tionsyndrome.JGlaucomaC26:1051-1055,C2017

コンタクトレンズ:ハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識 角膜形状の把握(2)

2020年7月31日 金曜日

・・提供コンタクトレンズセミナー今だからハードコンタクトを見直すハードコンタクトレンズ処方のための基礎知識小玉裕司2.角膜形状の把握(2)■はじめに前回のセミナーでは角膜周辺部の扁平化の存在意義について解説した.今回は角膜乱視眼において,乱視が角膜のどの部位にまで及んでいるのかについて解説する.■角膜形状の把握優れた乱視用ソフトコンタクトレンズ(トーリックSCL)が市販されているが,その乱視度数は最大で-2.75D(軸は90°と180°のみ)までであり,強度乱視眼の矯正にはハードコンタクトレンズ(HCL)が不可欠である.角膜乱視眼にHCLを処方するとして,通常のHCLを用いるのか,ラージサイズのHCLを用いるのか,あるいは内面トーリックHCLやベベルトーリックHCLを用いるのかを判断するには,角膜乱視が角膜上のどの範囲まで及んでいるのかを把握しなければならない.■角膜乱視は角膜中央部のみ?あるいは周辺部にも?角膜乱視眼をカラーコードマップを用いて分析した結果,直乱視では乱視が角膜周辺部まで及んでいる周辺部型,中央部に局在している中央部型,それらが混在する混合型の3タイプに分類することができた(図1).これは倒乱視にもあてはめることができる.軽度乱視眼までの角膜においては,レンズサイズ,ベースカーブ(base小玉眼科医院curve:BC),ベベル形状を適切に合わせることによって処方は比較的簡単に行うことができる.しかし,中程度以上の乱視眼においては,レンズのBC部分,あるいはベベル・エッジ部分と角膜の機械的接触によって装用感が著しく悪化する.倒乱視眼ではレンズの動きや静止位置をコントロールすることがむずかしい.■タイプ別のHCL処方法中央部型では,周辺部の乱視のない部分にベベル部分が存在するようなラージサイズのHCLを処方するとレンズの動きもよく,装用感もよくなる(図2).しかし,乱視が周辺部にまで及んでいる2タイプは,ラージサイズHCLでは対処できない.筆者がよく使用するのはサンコンタクトレンズ製ツインベベルのベベル部分がトーリックデザインになっているツインベルベベルトーリックHCL(図3,4)である.このレンズを使用すると,角膜周辺部において,ベベル幅が全周均一となり,乱視眼で角膜周辺部とベベル・エッジ部位との機械的刺激が少なくなり,球面HCLに比較すると装用感が大幅に改善する(図5).ツインベルベベルトーリックHCLで満足のいく装用感が得られない場合は,後面トーリックHCLを試してみる(図6).周辺部型角膜乱視が角膜周辺部にまで及んでいる.中央部型角膜乱視は角膜中央部に局在している.混合型周辺部型と中央部型が混在している.図1角膜乱視の3タイプ(67)あたらしい眼科Vol.37,No.7,20208410910-1810/20/\100/頁/JCOPY図3ツインベルベベルトーリックHCLのイメージ図サンコンマイルドIIツインベベルタイプのレンズのダブルベベル部位がトーリック差を付けてデザインされている.図5周辺部型へのツインベルベベルトーリックHCL処方ツインベルベベルトーリックHCLのフルオレセインパターンは,球面HCLに比べてかなり特異な様相を呈する.■ツインベルベベルトーリックHCL処方の実際症例:18歳,女性.良好な視力を希望.左眼視力:0.3p(1.2p×sph-4.00D(cyl-2.50DAx180°)左眼角膜曲率:8.08mm(41.80D)178°,7.18mm(47.00D)88°左眼角膜乱視タイプ:周辺部型最終処方レンズ:8.25/-4.50/9.0,トーリック差0.3この症例ではラージサイズHCLでは装用感が強く,後面トーリックHCLで装用感は改善したものの,ベベルトーリックHCLで初めて装用可能になった(図7).IC2IC2図4ツインベルベベルトーリックHCL断面のイメージ図たとえばBC8.0mmでトーリック差を0.4にすると,垂直方向はツインベルタイプのBCより0.4mm小さい7.60mmのBCのときのゲタの高さ(赤色部分)になる.図6混合型への後面トーリックHCL処方L)7.45/8.45/±0.00/9.0.少しフラット目に処方し,固着を予防する.図2中央部型へのラージサイズHCL処方周辺部の乱視のない部分までレンズサイズを大きくして処方する.図7周辺部型へのツインベルIIベベルトーリックHCL処方L)8.25/-4.50/9.0.水平面のベベル幅が少し狭くなっており,もう少しトーリック差をつけて処方してもよい症例である.

写真:ステロイド内服治療が奏功した壊死性角膜炎

2020年7月31日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦434.ステロイド内服治療が奏効した柴田学横井則彦京都府立医科大学眼科学教室壊死性角膜炎図1初診時前眼部所見高度の結膜充血,角膜への血管侵入,繰り返す上皮型角膜ヘルペスの既往によると考えられる瘢痕性角膜混濁に加えて,今回の再発によると考えられる浸潤性角膜混濁を認めた.図3初診時前眼部のフルオレセイン染色所見図4初診1カ月後の前眼部所見初診時に認めた結膜充血,角膜の浸潤性混濁は改善し,角膜に侵入した血管の拡張所見も軽減した.樹枝状病変を伴わず,浸潤性角膜混濁の部位を中心に角膜上皮浮腫所見を認める.(65)あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020C8390910-1810/20/\100/頁/JCOPY症例は79歳,男性.前医で再発する左眼の上皮型角膜ヘルペスに対して治療がなされていたが,次第に角膜に白色の混濁が生じ,矯正視力は0.5程度で推移していた.その後,角膜浮腫と角膜後面沈着物を認め,アシクロビル眼軟膏点入,0.1%ベタメタゾン点眼,モキシフロキサシン点眼を開始するも改善が得られず,当院を紹介されて受診した.受診時の左眼には高度の結膜充血および血管侵入を伴う角膜実質混濁を認め(図1~3),視力はC30Ccm指数弁(矯正不能),眼圧は左眼C36CmmHg,右眼C12CmmHgと左眼に高値を認めた.上皮型角膜ヘルペスの既往,血管侵入を伴う角膜実質混濁,および炎症所見から実質型角膜ヘルペス(壊死性角膜炎)と診断し,0.1%ベタメタゾン(4回/日)をC0.1%フルオロメトロン(4回/日)に変更し,アシクロビル眼軟膏(2回/日),ガチフロキサシン点眼(2回/日),バラシクロビル内服(1,000Cmg/日),ベタメタゾン内服(1g/日)で治療を開始した.1週後,矯正視力はC0.01に改善,眼圧はC23CmmHgに下降した.充血は改善し,経過良好であったため,0.1%フルオロメトロンの点眼回数をC6回/日とした.当科初診からC2週後,矯正視力はC0.15まで改善,眼圧はC12mmHgに下降し,角膜の混濁所見は著明に改善したため,ベタメタゾン内服をC1g/隔日,バラシクロビル内服をC1,000Cmg/隔日とし,2週間で中止とした.初診から1カ月後,矯正視力C0.2,眼圧C9CmmHgとさらなる改善を認め,角膜の混濁所見や炎症所見はさらに減少した(図4).自覚症状も改善し,0.1%フルオロメトロンを減量(4回/日),ガチフロキサシン点眼(2回/日),アシクロビル眼軟膏(2回/日)として紹介医に戻った.ヘルペス性角膜炎は,三叉神経節に潜伏感染したCI型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の再活性化によって生じるとされる1).上皮型角膜ヘルペスは,ウイルスが上皮細胞内で複製され,細胞を破壊することで引き起こされ,小胞状の上皮病変に始まるが,急速に癒合して樹枝状・地図状の病変となる2).実質型角膜ヘルペスは,円板状角膜炎と壊死性角膜炎に分類される.円板状角膜炎は角膜実質に沈着したヘルペスウイルス関連抗原に対する免疫反応(Ⅳ型アレルギー反応)による炎症で,必ずしも活発なウイルスの複製は関与しないとされる.臨床所見としては,角膜実質浮腫に加えて,病巣部の境界に免疫輪とよばれる特徴的な円盤状の炎症細胞浸潤を認める.壊死性角膜炎はⅢ型アレルギー反応であり3),一般には,円板状角膜炎を繰り返すことで生じるとされる.臨床所見としては,角膜中央部から中間部にかけて血管侵入がみられ,炎症細胞の浸潤による円形あるいは楕円形の角膜混濁が認められる.角膜融解ひいては角膜穿孔をきたすことがあり,その予防のために積極的な治療と管理が必要である.治療としては,実質型角膜ヘルペスでは炎症の根底に免疫反応があるため,上皮型の治療であるアシクロビルなどの抗ウイルス薬に加えて,0.1%フルオロメトロンなどのステロイド点眼を用いる.壊死性角膜炎では,アシクロビル眼軟膏およびステロイド点眼を中止すると再発することがあり,改善しても治療を継続する(たとえば眼前C1回投与)ほうが良い場合がある.本症例では,ベタメタゾン点眼治療では改善が乏しく,それによると考えられる眼圧上昇を認めた.そこで,局所治療による眼圧上昇を回避し,薬剤を血行性に病巣に届けるべく,ステロイド点眼治療をフルオロメトロンに弱めつつベタメタゾンの内服を開始し,抗ウイルス薬の内服を追加することで,改善を得た.文献1)ShimeldC,HillTJ,BlythWAetal:PassiveimmunizationprotectsthemouseeyefromdamageafterherpessimplexvirusCinfectionCbyClimitingCspreadCofCvirusCinCtheCnervousCsystem.JGenVirolC71:681-687,C19902)DarougarS,WishartMS,ViswalingamND:EpidemiologiC-calCandCclinicalCfeaturesCofCprimaryCherpesCsimplexCvirusCocularinfection.BrJOphthalmolC69:2-6,C19853)HollandEJ,SchwartzGS:Classi.cationofherpessimplexviruskeratitis.CorneaC18:144-154,C1999

総説:広島から見た緑内障の危険因子

2020年7月31日 金曜日

あたらしい眼科37(7):827~837,2020c第30回日本緑内障学会須田記念講演広島から見た緑内障の危険因子ViewofGlaucomaRiskFactorsfromHiroshima木内良明*はじめに緑内障が多因子疾患であることはよく知られている.開放隅角緑内障発症の危険因子を明らかにするために世界各地でpopulationbasedstudyが行われている.2000~2002年に行われたTajimiStudy1)では開放隅角緑内障発症の危険因子として眼圧,近視,加齢が報告された2).KumejimaStudy3)では加齢,男性,高眼圧,薄い中心角膜厚,長い眼軸長が,韓国で行われた同様の疫学研究であるNamilStudy4)では眼圧,高齢,甲状腺疾患(自己免疫)があげられている.多くの疫学研究の結果をまとめると,眼局所因子として眼圧上昇,薄い中心角膜厚,近視,全身因子としては高齢のほか,血圧の異常(収縮期血圧の上昇,拡張期血圧の低下など),糖尿病,bodymassindex(BMI)の低下が危険因子として取りあげられこともある5).いずれにせよ高眼圧が最大の危険因子であることは間違いない.広島と長崎にある放射線影響研究所は原爆被爆者の健康調査を継続的に行っている6).筆者らは2006~2008年にかけて広島,長崎の原爆被爆者を対象として眼科診察を行い,放射線被曝と緑内障の関係について調査した.明治時代からハワイと米国西海岸には広島から多くの人が移民として渡った歴史がある.2000年の国勢調査によると日系人はカリフォルニア州にもっとも多く,ついでハワイ州となっている.2015年にロサンゼルス在住の日系米国人を対象に栄養調査を行い,緑内障と栄養摂取の関係を検討した.広島と関連が深いこれらの調査結果を報告する.I放射線の人体に対する影響7)人に対する放射線の影響は,症状発現の時期の違いによって急性期の反応と晩発性の反応に分けられる.急性期の反応は「急性放射線症」(acuteradiationsyn-drome)とよばれる.高線量の放射線(約1~2Gyから10Gy)によるDNAの損傷を原因として,被曝後数時間から数週間の間に出てくる症状である.腸の粘膜上皮細胞が障害されると下痢を生じる.造血幹細胞がダメージを受けると出血と血液細胞数が減少する.毛根細胞が障害を受けると毛髪が細くなり折れるために毛髪が失われる.分裂が盛んな細胞ほど放射線の影響を受けやすい.晩発性の反応は急性反応から回復したあと,あるいは低線量被曝者に出現する.被曝後,障害を受けたDNAが修復される過程で正しく修復されないことが原因である.II原爆被爆者を対象とした放射線障害の調査研究放射線影響研究所は1945年8月に広島と長崎に投下された原子爆弾による放射線の人体に対する影響を調べることを目的として設立された.放射線影響研究所では原爆被爆者を登録するだけでなく,被爆時の状況も細かく調査している.爆心地からどのくらいの距離にいたか,そこの地形,建物の中か外か,建物は木造か鉄筋か,どのような姿勢をとっていたかを把握している.そこから各臓器の被曝線量を推測することができる8,9).*YoshiakiKiuchi:広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学(眼科学)〔別刷請求先〕木内良明:〒734-8553広島市南区霞1-2-3広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学(眼科学)0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(53)827現在も数多くの研究プログラムが進行中である.12万人を対象とする「寿命調査」(死因調査),2万3,000人を対象とする成人健康調査(AdultHealthStudy:AHS)のほかに体内被爆者調査,被爆二世の調査などが行われている.III放射線による眼障害の研究放射線影響研究所のAHSはとくにnon-cancerdis-easeに焦点を当てた研究である.眼科に関係する代表的な研究としては「CataractStudyinAtomicBombSurvivors」がある10).放射線が水晶体の後.下混濁をきたすことは従来から知られていた.この研究は水晶体核や皮質の混濁と被曝線量の関係を明らかにする目的で行われた.その結果,後.下混濁と皮質混濁は被曝線量に比例して増加すること,核混濁は関係ないという結果になった.同時に糖尿病網膜症,動脈硬化が被曝線量に応じて増加することも明らかになった.2004年に同じく放射線影響研究所のYamadaら6)は被曝線量とnon-cancerdiseaseの発生状況を報告している.そのなかで甲状腺疾患,慢性肝疾患,子宮筋腫,白内障,高血圧は被曝線量に応じて発症リスクが増える.逆に緑内障は被曝線量に比例して発症率が低下するという結果になった.2005年に米国メイン州バーハーバーにあるJack-sonLaboratoryから興味深い研究が報告された.DBA/2Jmouseは多くの批判があるものの高眼圧の自然発症緑内障モデルとみなされている.生後12カ月になるとDBA/2Jmouseでは神経節細胞の軸索がほとんど消失する.生後5~8週の時期に10Gyの放射線を照射すると,神経節細胞死が抑制されるというものである11).10Gyの放射線は造血幹細胞が障害されて致死的であるため,この研究では骨髄移植を併用している.2012年には同じグループから,より低線量の3.6Gyでも神経節細胞に対する保護効果があることが報告されている12).比較的低線量であるため,このときは骨髄移植も行っていない.はたして低線量放射線被曝は緑内障性神経障害を抑制するのかという点を明らかにするために,筆者らは「GlaucomaStudyinAtomicBombSurvivors」13)を企画した.IV放射線被曝と緑内障AHSを受ける2,699人を対象に2006年10月~2008年9月に緑内障のスクリーニング調査と精密検査を行った.最終的に1,589人(平均年齢は74.3歳)を解析対象とした.広島,長崎の放射線影響研究所で,無散瞳眼底カメラによる眼底写真,frequencydoublingtechnologyによる視野検査,非接触型の空気眼圧計による眼圧測定を行った.緑内障を含めてなんらかの眼疾患の存在が疑われたときは,精密検査のために広島大学病院あるいは長崎大学病院に紹介した.細隙灯顕微鏡検査,Goldmann圧平式眼圧計による眼圧測定,隅角検査,HumphreyFieldAnalyzer30-2SITAstandardprogramによる視野検査,眼底カメラによる立体眼底撮影を行った.視神経乳頭陥凹および視神経乳頭辺縁部の評価にはCDsketch14)を使って垂直陥凹乳頭径比(C/D比),リム乳頭径比(R/D比)を求めた.緑内障の診断基準はTajimiStudyと同様のものを用いた1).すなわち,視神経乳頭所見,Humphrey視野検査結果,網膜神経線維欠損から緑内障を判定する.カテゴリー1:信頼できる視野検査があるものは垂直C/D比が0.7以上あるいは耳上側,耳下側のR/D比が0.1以下,神経線維束欠損がある.そして眼底の異常と視野障害の場所が一致する.あるいはC/D比の左右差が0.2以上ある.カテゴリー2:信頼できる視野検査を行えない場合は垂直C/D比が0.9以上あるいは耳上側,耳下側のR/D比が0.05以下,C/D比の左右差が0.3以上ある場合を緑内障と診断した.隅角検査で開放隅角と閉塞隅角に分類し,開放隅角緑内障で検査時の眼圧が21mmHg以下の場合を正常眼圧緑内障とした.緑内障と診断された患者の平均年齢は74.3歳で,患者を年齢別に70歳未満,70~79歳,80歳以上の3群に分けると緑内障の患者比率は年齢とともに増えた.正常眼圧緑内障を含めた開放隅角緑内障はTajimiStudyの70歳代の結果1,15)と比較すると頻度が多いようにみえた.しかし,続発緑内障と閉塞隅角緑内障の発生頻度はほぼ同じであった(図1).緑内障と診断された患者のうち86%の人は緑内障と診断された既往がなかった.開放隅角緑内障は男性に多く,閉塞隅角緑内障は女性に多かった(図2).問診によって明らかにされた診断名と被曝放射線の量の関係をみると,白内障,網膜出血,糖尿病は被曝すると増える,逆に緑内障は被曝すると減少するという結果になった(表1).年齢,性別,都市(広島か長崎か),白内障手術既往,糖尿病の有無で調整し(%)(%)1210864201412108642■■MaleFemale0POAGPACGSecondary図2緑内障病型における男女差図1病型別有病率のTajimiStudyとの比較表1問診によって診断された疾患に及ぼす被曝線量の影響(oddsratioat1Gy)Ophthalmologicdiseasesundertreatment*Oddsratio95%Con.denceintervalCataract(n=1,762)1.180.701.311.03~1.360.49~0.981.04~1.66Glaucoma,typesunspeci.ed(n=112)Retinalbleeding(n=91)420OddsratioOddsratio024EyeDose(Gy)OcularHypertension642864200DS02EyeDose(Gy)EyeDose(Gy)図3被曝線量と開放隅角緑内障,閉塞隅角緑内障,高眼圧症0240246420DS02EyeDose(Gy)図4被曝線量と正常眼圧緑内障(KiuchiY,etal:Glaucomainatomicbombsur-vivors.RadiatRes.180:422-430,2013から引用)た結果,調査時に眼圧が21mmHgを超える開放隅角緑内障は被曝線量が増えるとともに発症リスクが下がる傾向があったが有意な関係ではない(p=0.28).基本的に眼圧依存性の病態である閉塞隅角緑内障と高眼圧症の発症リスクは被曝線量ともに下がった(それぞれp=0.057,0.099)が有意なレベルに到達しなかった(図3).これらの結果は,JacksonLaboratoryから出されたDBA/2Jmouseに対する放射線の研究,放射線が容量依存性に神経節細胞死を抑制するという研究結果11,12)と同じ傾向があるようにみえた.一方,正常眼圧緑内障は被曝線量が増えるにしたがい,緑内障の発症リスクが有意に増えたp=0.001)(図4).正常眼圧緑内障に対するリスク因子を回帰分析で求めたところ,放射線量(p=0.001)と検査時の年齢が高いこと(p=0.001),高血圧(p=0.01),低体重(p=0.01)が選択された.被曝放射線の影響は眼圧が高い緑内障病型と眼圧が低い緑内障病型で異なった.つまり,眼圧が低い開放隅角緑内障は眼圧が高い緑内障病型とその視神経障害機序が異なることが示唆された.V眼循環と正常眼圧緑内障ここでいくつかの疑問が生じた.放射線被曝が眼圧の高い緑内障病型の発症リスクを減少させる傾向があるがそれは本当か?またその理由は何か?また眼圧が低い正常眼圧緑内障の発症リスクが増加する機序は何か?である.かつて緑内障性視神経障害の発症機序として機械障害Oddsratio024説と循環障害説が唱えられていた16~18).機械障害説というのは,眼圧による負荷のために篩状板が変形して,軸索が直接圧迫される.軸索輸送障害が生じて神経節細胞死につながるというものである.一方,正常眼圧緑内障では乳頭出血の頻度が高く,しかもこの乳頭出血は神経線維層欠損部位と一致して生じる.正常眼圧緑内障では片頭痛など血管の攣縮性疾患を伴いやすく,眼灌流圧が低いこと,視神経障害と視神経乳頭部や球後の眼血流の低下が相関することなどから,循環障害が緑内障性視神経障害とかかわっていると考えられるようになった.実際は眼圧による篩状板部での機械的圧迫と個人のもつ循環因子が絡み合って神経節細胞の軸索障害が進行するのであろうと考えられている.その一方で,0.5Gy以上の放射線は心血管疾患のリスクと関連することが報告されている.さらに被曝者では被曝線量が増えるほど,脳卒中や虚血性心疾患で死亡する症例が増えるという報告があり,放射線被曝が循環状態に影響を及ぼすことが明らかにされている19~22).VI網膜血管径の評価眼底の血流状態を評価する方法として,眼科外来,研究室では蛍光眼底撮影,colordopplerimaging,laserdopplervelocimetry,laserspeckle.owmetryなどの手技が報告されている.しかし,疫学研究では短時間に多数の対象者の検査を行う必要があり,これらの特殊な装置を要する検討はできない.現在,疫学研究での網膜循環の評価には眼底写真から網膜血管径を測定する方法が一般的になっている23).網膜血管径に関与する因子は数多くある.炎症は網膜動脈も静脈も拡張させる.喫煙,肥満,糖尿病や血流の増加は網膜静脈血管系を拡張する.一方,網膜動脈径を細くする因子として血流の減少,高血圧,動脈硬化があり,静脈を細くする因子として加齢と血流の減少が知られている24).2004年と2005年に報告されたBeaverDamEyeStudy25)とRotterdamStudy26)では緑内障と網膜血管径に有意な関係がないとされた.しかし,それ以降のBlueMountainsEyeStudy27),BeijingEyeStudy28),SingaporeMalayStudy29)を含めて緑内障患者では網膜血管径が細いという結果が得られている.これら横断的な報告のほかに,Kawasakiら30)はBlueMountainsEyeStudyの対象者のうち2,417人を10年間追跡調査し,82人104眼で新たに緑内障が発症し,緑内障発症の危険因子としてbaseline網膜血管径が細いことを報告している.横断的研究だけでなく縦断的研究でも緑内障と網膜血管径の関係が明らかにされた.今回の筆者らの研究31)では「GlaucomaStudyinAtomicBombSurvivors」のスクリーニング検査に用いた無散瞳眼底カメラ(TRC-NW200,トプコン)で得られた画像を利用した.前述の研究と同じくセミオートマチックの画像解析プログラム(RetinalAnalysis-IVAN,UniversityofWisconsin)を用いた32,33).網膜動脈と静脈の直径を視神経乳頭から0.5~1乳頭離れたエリアで計測した.太い順に6本の動静脈の径を測定し,そこから網膜中心動脈径推計値(centralretinalarteryequivalents:CRAE)と網膜中心静径推計値(centralretinalveinequivalents:CRVE)を計算した34).計測はトレーニングを受けた測定員一人が行った.今回は1,640人が解析対象となり,開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,閉塞隅角緑内障の3群に分けて解析した.多項ロジックモデルで緑内障病型と網膜血管径(CRAE,CRVE),被曝線量,その他の因子の関係を調べた.年齢ともに各病型の発症リスクは増える傾向があった(図5).正常眼圧緑内障群では他のグループと比べてCRAEもCRVEも有意に小さかった(p<0.01,図6).網膜動脈径に注目すると,眼圧依存性の病型と考えられる閉塞隅角緑内障は緑内障をもたない対象者とほぼinmm=0.97,95%信頼区間(CI):0.95~0.98,p<0.01)とCRVE(oddsratioperunitincreaseinmm=0.98,95%CI:0.97~0.99,p<0.01)が減少するにつれてそのリスクは有意に高くなった(図7).被曝線量が増えるほどNTGになりやすいことが示された(oddsratioperunitincreaseinGy=1.39,95%CI:1.15~1.69,p<0.01).しかし,他の病型と網膜血管径や被曝線量の関係は明らかではなかった(図8).VII網膜血管径に影響する因子線形回帰分析を用いて正常眼圧緑内障のCRAEとCRVEに影響する因子を検討した.CRAEとCRVEはともに年齢が上がるに従って細くなる(図9).正常眼圧緑内障の病期をAndersonPatellaの進行期分類にしたがってmild(-6dB>),moderate(-6~12dB),severe(-12dB<)に分類して網膜血管径との関係を調べた.CRAE(右眼p=0.01,左眼p=0.05)もCRVE(両眼ともp<0.01)病期の進行ともに細くなった(図10).被曝4.50p=0.01p=0.04p=0.074.003.50Oddsratio3.002.502.001.501.00同じ径があった.眼圧だけでなく循環障害もその発症に0.50関与していると思われる開放隅角緑内障は,閉塞隅角緑0.00NTGPOAGPACG内障と正常眼圧緑内障の中間に収まっている.正常眼圧■<=70■71~80■81+緑内障の発生率はCRAE(oddsratioperunitincrease図5年齢と緑内障病型(mm)CRAE(mm)CRVE136.0134.0132.0130.0128.0126.0124.0122.0120.0118.0202.0200.0198.0196.0194.0192.0190.0188.0186.0図6緑内障病型と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)(57)あたらしい眼科Vol.37,No.7,2020831CRAECRVE3.001.601.402.501.202.00OddsratioOddsratio1.000.800.601.501.000.400.500.200.00<125125~<135135+<190190~<205205+0.00*p-value<0.01ANOVAF-test図7網膜中心動脈径推計値(CRAE)と網膜中心静脈径推計値(CRVE)の正常眼圧緑内障の発症リスク3.002.001.002.500.00Oddsratio2.001.501.000.500.00図8被曝線量による各緑内障病型の発症リスク線量はCCRAEに対して有意な影響はなかったが(p=0.49),CRVEは被曝線量が増えるにしたがって細くなっていた(p=0.03)(図11).正常眼圧緑内障の患者うち現在喫煙中の対象者は有意にCCRVEが大きくなっていた.BlueMountainStudy35)でもCRotterdamCStudy36)でも喫煙すると網膜静脈径が太くなると報告されている.喫煙と網膜血管径の関係は別途詳細に調べた34).1日の喫煙本数は年齢とともに少なくなり,喫煙本数が増えると白血球数や中性脂肪は多くなり,CRVEは太くなる(testCforCtrendCp=0.002)(図12).CRAEも同様の変化をきたしたが,有意なレベルではなかった(testfortrendp=0.06).CRVEの変化は女性のほうが顕著であった.禁煙するとCCRAEもCCRVEも減少した.禁煙期間がC10年を超えると喫煙中の者と比べて有意にCCRVEが細くなることがわかった(p=0.003)(図13).喫煙はCC-reactiveprotein,IL-6,白血球など炎症を示唆するマーカーを増加させNTGPOAGPACG■<0.005■0.005~0.2■0.2~1■1+81+<=7071~80Oddsratio-1.00-2.00-3.00-4.00-5.00-6.00■CRAE■CRVE図9年齢と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)ると考えられている.CRVEの増加は喫煙がもたらした炎症の結果かもしれないが,その詳細な機序は不明である.CBodymassindex(BMI)を各緑内障病型で比較すると,網膜血管径と同じように正常眼圧緑内障がもっとも小さく,閉塞隅角緑内障が緑内障をもたない対象と同程度で開放隅角緑内障は正常眼圧緑内障と閉塞隅角緑内障の間に位置した(図14).BMIは各種疾患による死亡のリスク因子の一つであることは良く知られている.標準よりも大きくても小さくても死亡率は上昇する.男女差は関係ないが,若い人ほどCBMIの影響を受けやすい37).そこでCBMIを高,中,低のC3群に分けて緑内障各病型の関係を調べた.正常眼圧緑内障群では有意にCBMIが低い群のリスクが高く(p=0.04),閉塞隅角緑内障では標準的な体型の人のリスクが低く,BMIが高くても低くてもそのリスクは増えた(図15).正常眼圧緑内障患者では脳脊髄液圧が低いことはよく知られている38).まCRAEleftCRAEright網膜動脈径の変化(mm)100150200250801201601001502002508012016001230123CRVEleftCRVEright網膜静脈径の変化(mm)01230123O:withoutglaucoma,1:mild,2:moderate,3:severe図10正常眼圧緑内障の病期と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)CRAECRVE1.501.501.000.005~0.20.2~11+0.005~0.21+0.2~1Testfortrendp=0.49Testfortrendp=0.031.000.500.500.00-0.500.00-1.00-1.50-2.00-0.50-1.00-2.50-1.50-3.00図11被曝線量と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)た,BMI,拡張期血圧と年齢から脳脊髄液圧を推測するい.このことが低いCBMIをもつ人は正常眼圧緑内障に次の予測式が報告されている39).なりやすい理由の一つとして考えられるかもしれない.CSFP[mmHg]=0.44×BMI[kg/mC2]+0.16×Dia-BMIと緑内障の関係を調べた報告は多くあり,そのCstolicCBloodCPressure[mmHg]-0.18×Age[Years]-結果は必ずしも一致していない.BMIと多くの疾患はC1.91.必ずしもリニアな関係にないことが結果の不一致に影響この予測式によるとCBMIが低いほど脳脊髄液圧は低している可能性がある40).(mm)CRAE(mm)CRVE135134133132131130129128127208206204202200198196194192190nonsmoker>0to<10>10to<20>20nonsmoker>0to<10>10to<20>20図12喫煙本数と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)(mm)CRAE(mm)CRVE130.5130129.5129202201200199198197128.5196128195194127.5193127192never>10years<10yearscurrentnever>10years<10yearscurrentcessationcessationcessationcessation図13禁煙期間と網膜中心動脈径推計値(CRAE)および網膜中心静脈径推計値(CRVE)Bodymassindex(kg/m2)23.13.002.5023.0Oddratio0.0022.6NTGPOAGPACG22.5■<18.5■18.5~<25■25+22.422.3noglaucomaNTGPOAGPACG図15Bodymassindexと緑内障病型のリスク図14緑内障病型とBodymassindexらハワイに渡った移民は広島県出身者がもっとも多く,ついで山口県,熊本県と続く.1898年にハワイが米国CVIII栄養摂取と緑内障に併合されると日系移民はハワイから米国西海岸に移住2.0022.91.501.000.5022.822.71800年代の後半,ハワイにおいては白人の入植者が増え,白人の投資家たちの手によってハワイ各地にサトウキビ農場が設立された結果,労働力が不足していた.カメハメハ王国からの要請を受けて日本政府とカメハメハ王国の間で移民に関する協定がC1885年に結ばれた.日本政府の後押しを受けて多くの日本人がハワイに渡った.正確な理由は不明であるがC1885~1994年に日本かすることが容易になった.日本と米国では生活習慣,とくに食事内容が異なると考えられる.広島大学の糖尿病代謝内科は,同じような遺伝背景をもつ日系移民と日本人の生活環境,食事習慣が糖代謝に及ぼす影響を明らかにするためにC1970年から定期的にハワイとロサンゼルス在住の米国日系移民の健康調査を行っている41,42).1993年の報告では日系移民と広島在住の日本人の摂取カロリーがほとんど変わらないこと,日系米国人は炭水化物よりも脂肪からカロリーを得る量が多いことが報告されている43).2015年C8月にロサンゼルスにおいて第C23回目の日系米国人の健康調査が行われた44).視能訓練士と栄養士も参加した.無散瞳眼底カメラ(AFC-300,ニデック)で画角C45°の眼底写真を撮影した.緑内障の診断は眼底写真を用いた垂直CC/D比,耳上側,耳下側のCR/D比と垂直CC/D比の左右差から判定した1).診断は右眼の眼底写真を基に行い,右眼が利用不能であるときは左眼の写真を用いた.食事内容の情報はCfoodCfrequencymethodで得た.食品をC80の食品群に分けて,それぞれの調理方法と摂取量を栄養士が聞き取り調査を行った.栄養管理ソフト“Chatty”(TotalCSoftwareCorp.)に入力して摂取された栄養素の量と摂取総カロリーを計算した45,46).581人が解析対象になった.そのうち緑内障と診断された人はC61人(平均年齢C63.8C±1.6歳),緑内障がないと診断された人はC520人(平均年齢C61.8C±0.6歳)であった.眼底写真だけから緑内障の診断を行ったために,緑内障病型や眼圧レベルは不明である.緑内障と診断された対象者をCBMIレベル別にC3群に分けると,BMIが低い人ほど緑内障の頻度が高い傾向にあったが,有意差はなかった(p=0.31).単変量解析でCp値がC0.2以上の因子を除外し重回帰分析を行ったところ,鉄分の摂取が多いほど(p=0.004),ビタミンCAの摂取が少ないほど(p=0.02),vegetableClipidが少ないほど(p=0.004)緑内障と関係が深いことがわかった.鉄分は酸化物質であり,ビタミンCAとCvegetablelipidは抗酸化物質である.酸化物質は網膜神経節細胞とその軸索に存在するミトコンドリアの機能を低下させ,緑内障の引き金になると報告されている47).また,線維柱帯にも作用して眼圧上昇をきたす48~50).ビタミンCA,B,C,E,カロチノイドなどは抗酸化作用がある.Tanitoら51)は緑内障の病期が進行するほど体内の抗酸化力が少なくなると報告している.男性緑内障患者はエネルギー摂取量が増えると増加するという報告もあるが52),今回の検討ではエネルギー摂取量と緑内障の関係は明らかでなかった(p=0.303).肉類,卵の消費を控えめにして,オリーブオイル,果物,野菜,穀物,魚を多く摂取して,赤ワインを適度に飲む食事は地中海食とよばれている.ユネスコの無形文化遺産に登録されている.食事内容に多価不飽和脂肪酸が含まれており,心血管疾患,癌死亡率を減らす効果があると報告されている53).一方で,脂肪の摂取量を減らし野菜や果物を多く取る食事を指導してC8.1年間観察した研究では,心血管疾患は減らなかったと報告されている54).疾患の発症に食事内容が及ぼす影響が必ずしも大きくない可能性はある.しかし,食事内容に介入する研究は生活習慣に逆らう研究手法である.個別の栄養素や食品の摂取を制限あるいは推奨するよりも,無理なく継続できる健康的な食習慣を続けることが大切なのかもしれない55).まとめ眼圧が低い開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障)は他の病型と異なり,被曝線量が増えると増加する.このことからにCNTGおける網膜神経節細胞障害の機序は他の病型と異なると考えられる.正常眼圧緑内障における網膜血管径が他の病型よりも細いことから,正常眼圧緑内障の網膜循環状態が他の病型と異なり,ひいては神経節細胞のダメージに循環障害が関与している可能性を示した.正常眼圧緑内障ではCBMIが低い人ほどそのリスクが高いことが確認できた.酸化物質の摂取が多く,抗酸化作用のある食物の摂取が少ないことが緑内障の発症に関与するが,摂取カロリーと緑内障発症には因果関係がないという結果になった.緑内障研究とは別に喫煙は網膜の血管に影響を及ぼすこと,喫煙の網膜血管に対する影響はC10年の禁煙でなくなることも明らかにできた34).緑内障とは関係がないが,同じ眼底写真セットを用いて加齢黄斑変性の発症は被曝線量と関連がないことも報告できた56).1945年C8月に広島と長崎に落とされた原子爆弾の生存者と在米日系移民の健康調査を通して行った緑内障研究の結果を紹介した.原子爆弾も米国への移民も広島と関連が深い.そのため「広島から見た緑内障の危険因子」というタイトルで第C30回日本緑内障学会須田記念講演を行った.本稿はそのときの講演内容に基づいて執筆した.本研究にご指導,ご協力いただいた多くの方々に感謝いたします.文献1)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapanese:theCTajimiCStudy.OphthalmologyC111:1641-1648,C20042)SuzukiY,IwaseA,AraieMetal:Riskfactorsforopen-angleCglaucomaCinCaJapaneseCpopulation:theCTajimiCStudy.OphthalmologyC113:1613-1617,C20063)IwaseCA,CSawaguchiCS,CTanakaCKCetal:RelationshipCbetweenCocularCriskCfactorsCforCglaucomaCandCopticCdiscCriminnormaleyes.BrJOphthalmol.doi:10.1136/bjoph-thalmol-2019-314696.4)KimM,KimTW,ParkKHetal:Riskfactorsforprimaryopen-angleCglaucomaCinCSouthKorea:theCNamilCstudy.CJpnJOphthalmolC56:324-329,C20125)藤原康太:疫学調査における緑内障の非眼圧的要素.眼科C59:611-618,C20176)YamadaCM,CWongCFL,CFujiwaraCSCetal:NoncancerCdis-easeCincidenceCinCatomicCbombCsurvivors,C1958-1998.CRadiatResC161:622-632,C20047)https://www.rerf.or.jp/programs/roadmap/health_e.ects/8)CullingsCHM,CPierceCDA,CKellererAM:AccountingCforCneutronexposureintheJapaneseatomicbombsurvivors.RadiatResC182:587-598,C20149)CullingsHM,FujitaS,FunamotoSetal:Doseestimationforatomicbombsurvivorstudies:itsevolutionandpres-entstatus.RadiatResC166:219-254,C200610)MinamotoA,TaniguchiH,YoshitaniNetal:CataractinatomicCbombCsurvivors.CIntCJCRadiatCBiol80:339-345,C200411)AndersonMG,LibbyRT,GouldDBetal:High-doseradi-ationwithbonemarrowtransferpreventsneurodegenera-tionCinCanCinheritedCglaucoma.CProcCNatlCAcadCSciCUSAC102:4566-4571,C200512)HowellCGR,CSotoCI,CZhuCXCetal:RadiationCtreatmentCinhibitsCmonocyteCentryCintoCtheCopticCnerveCheadCandCpreventsneuronaldamageinamousemodelofglaucoma.JClinInvestC22:1246-1261,C201213)KiuchiY,YokoyamaT,TakamatsuMetal:Glaucomainatomicbombsurvivors.RadiatResC180:422-430,C201314)TanitoCM,CSagaraCT,CTakamatsuCMCetal:IntraobserverCandinterobserveragreementofcomputersoftware-assist-edCopticCnerveCheadCphotoplanimetry.CJpnCJCOphthalmolC58:56-61,C201415)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreport2:prevalenceofprimaryangleclosureandsecond-aryCglaucomaCinCaCJapaneseCpopulation.COphthalmologyC112:1661-1669,C200516)FlammerJ,OrgulS,CostaVPetal:Theimpactofocularblood.owinglaucoma.ProgRetinEyeResC21:359-393,C200217)MorrisonCJC,CJohnsonCEC,CCepurnaCWCetal:Understand-ingmechanismsofpressure-inducedopticnervedamage.ProgRetinEyeResC24:217-240,C200518)YanagiM,KawasakiR,WangJJetal:Vascularriskfac-torsCinglaucoma:aCreview.CClinCExpCOphthalmolC39:C252-258,C201119)Shimizu,Y,KodamaK,NishiNetal:RadiationexposureandCcirculatoryCdiseaserisk:HiroshimaCandCNagasakiCatomicCbombCsurvivorCdata,C1950.2003.CBMJC340,Cb5349,C2010C20)LittleCMP,CAzizovaCTV,CBazykaCDCetal:SystematicCreviewCandCmeta-analysisCofCcirculatoryCdiseaseCfromCexposureCtoClow-levelCionizingCradiationCandCestimat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