光線力学的療法PhotodynamicTherapy(PDT)大中誠之*髙橋寛二*はじめに光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)は,光感受性物質であるベルテポルフィンと非発熱性近赤外線レーザーの光化学反応を利用した治療法であり,わが国では2004年に滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対して認可された.欧米における大規模臨床試験TAP試験1)の結果では,PDTの効果は視力低下の抑制にとどまったが,わが国で行われたJAT試験2)においては,視力の維持あるいは改善効果が示され,2009年にラニビズマブが認可されるまでは滲出型AMD治療の主流であった.欧米と比較してPDTの効果が良好であった理由は,滲出型AMDに占めるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)の割合が高いことがあげられる.PDTによるポリープ状病巣の閉塞率は確かなものであったが,単独治療後に多量の網膜下出血などの合併症によって15%程度の患者において視力低下が生じる3)ことに加え,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の劇的な視力改善効果とその手軽さに圧倒され,多くの施設においてその使用頻度は激減した.しかし,近年,抗VEGF療法の長期経過から,視機能を維持するために抗VEGF薬を頻回に投与しなければならない症例が一定数存在することがわかり,それが問題としてクローズアップされる中,PCVに対するPDTとラニビズマブの併用療法の有効性が報告4,5)されたことで,再びPDTに注目が集まってきている.本稿では,滲出型AMD,とくにPCVに対するPDTについて基本的事項から臨床応用までを解説し,PDTの適応外疾患である中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)と脈絡膜血管腫に対するPDT治療についても触れる.IPDTの基本的事項1.方法光感受性物質ベルテポルフィン(6mg/m2体表面積)の静脈内投与を10分間かけて行い,薬剤注射開始15分後から病変最大直径(greatestlineardimension:GLD)に1,000μm(safetymargin)を加えた照射野にレーザー光〔波長689±3nm,光照射エネルギー量50J/cm2(照射出力600mW/cm2で83秒間)〕を照射する.GLDはフルオレセイン蛍光造影(?uoresceinangiogra-phy:FA)によって測定し,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)のほかに漿液性網膜色素上皮?離(retinalpigmentepithelialdetachment:PED),出血,蛍光ブロック,光凝固瘢痕を含む.ただし,乳頭近傍の病変では視神経への障害を避けるために視神経乳頭縁から200μm以上の距離をあけて照射を行う必要がある.両眼に治療対象となる病変がある場合,基本的には片眼ずつの治療が望ましいが,経済的理由などやむを得ず両眼同時に治療を行う場合には正常組織への影響を考え,ベルテポルフィンの投与開始後から20分以内に◆MasayukiOhnaka&*KanjiTakahashi:関西医科大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕大中誠之:〒573-1010大阪府枚方市新町2-5-1関西医科大学医学部眼科学教室(0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(49)163両眼の照射を終えることが推奨される.実臨床においては,上記標準的方法に加えて,①インドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangi-ography:IA)で検出されたCNVのみをカバーして照射野を決定する方法(IA-guidedPDT)6),②減弱PDTまたは半量PDT7),③PCVのポリープ状病巣のみを照射する方法(polyp-selectivePDT)8,9),④レーザースポットを動かしながら照射を行う方法(ironingPDT)10),などのmodi?edmethods11)が個々の病態に合わせて用いられている.2.CNVに対する作用機序ベルテポルフィンは血中の低比重リポ蛋白(low-den-sitylipoprotein:LDL)に結合し,CNVの血管内皮細胞に多数発現しているLDLレセプターを介して細胞内に取り込まれる.そこにレーザー光が照射されると取り込まれたベルテポルフィンが光化学反応を起こし,活性酸素の一つである一重項酸素が発生する.一重項酸素によって血管内皮細胞は傷害を受け,そこに血小板が粘着・凝集することで血栓が形成され,CNVが閉塞する.3.利点と欠点11)PDTの利点として,①眼内炎や脳梗塞などの抗VEGF療法で起こりうる重篤な有害事象がなく,全身副作用が少ないこと,②すでに脳梗塞,心筋梗塞などの脳心血管合併症を有する患者にも使用できること,③血管閉塞効果が高く長期間持続すること,④治療回数が少なくすむこと,⑤治療後の受診は3カ月間隔でよいので受診回数が少なくすむこと,などがあげられる.反面,欠点として,①治療後2日間は太陽光,ハロゲンランプなど強い光への暴露を避ける必要があること,②脈絡膜毛細血管やさらに深層の脈絡膜血管が一時的に閉塞するなど脈絡膜循環障害が生じること,③複数回の治療により網膜色素上皮が萎縮すること,④出血や急性視力低下などの術後の副反応がみられること,⑤視力0.1?0.5,病変サイズ5,400μm未満が標準的適応であり,適応に限界があること,などがあげられる.II滲出型AMDに対する治療1.PDT単独療法市販後に行われたPDT新ガイドライン調査12)の結果,PDT単独療法は日本人の滲出型AMD(典型AMDとPCV)に対して1年間の視力維持効果を示し,とくに病変最大径1,800μm未満の小さい病変やPCVに対しては視力の改善効果を認めた.しかし,PDT単独療法の副反応として急性視力低下(術後1週間以内に発生)と網膜下出血が問題としてあげられる.早期の副反応はPDT施行後に起こる著明な炎症反応やVEGFの増加によるものと考えられている13).出血はCNVへの血流の再灌流が起こり始める1カ月前後にもっとも多い.筆者らの経験では急性視力低下の頻度は約5%であり,その原因として2型新生血管を含む典型AMDや,進行した網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousprolif-eration:RAP)においてCNVの急速な収縮や線維化が発生した症例に多く,またPDT後に一過性に滲出の増強が生じやすい5,400μm以上の大きい病変に頻度が高い傾向にあった.一方,術後出血は,2005年に報告されたPDT術後出血スタディ(国内6施設,695眼,代表:白神史雄・岡山大学教授)の結果,血管アーケードを越える重症出血例は3.7%(典型AMD3.2%,PCV5.0%)にみられ,線維血管性網膜色素上皮?離(?brovascularretinalpig-mentepithelialdetachment:FVPED)における頻度も高い傾向にあった.硝子体出血の頻度は全例で1.0%(典型AMD1.3%,PCV0.5%)であった.現在は,上記副反応を減らす目的で次に述べる抗VEGF薬との併用療法が一般的であるが,脳梗塞直後など全身的な問題から抗VEGF薬が使用できない場合や,注射に対する恐怖心から硝子体注射を行えない症例には適応がある.2.抗VEGF薬とPDTの併用療法PDT単独療法後に生じる網膜下出血などの副反応を抗VEGF薬により抑制できることが報告14,15)されてから,PDTを行う場合,抗VEGF薬を併用することが一164あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020(50)般的となっている.副反応の抑制効果は,抗VEGF薬がPDT後にみられる治療後1週以内の異常な滲出を抑制すること,PDT後の脈絡膜血管閉塞(相対的虚血)によるVEGFのup-regulationを抑えることでCNVの異常増殖を抑制することなどに起因すると考えられる.PDTと抗VEGF薬の治療のタイミングに関しては,抗VEGF薬による眼内炎などの合併症を考慮して,抗VEGF薬投与をPDTの前に行う施設が多く,さらにラニビズマブを使用した場合,PDTの7日前より2日前投与のほうが治療効果が高かった16)ことから,当院では基本的にPDTの2日前に抗VEGF薬の投与を行っている.2012年に報告されたAMDの治療指針17)では,典型AMDは抗VEGF薬の単独療法,PCVは視力0.5以下の症例はPDTを含む治療法,0.6以上の症例は抗VEGF薬の単独療法,RAPは治療回数の少ないPDTと抗VEGF薬の併用療法が推奨され,視力良好例には抗VEGF薬単独療法も考慮してよいとされている.典型AMDに対してPDT併用療法が推奨されない理由は,欧米の大規模臨床試験18,19)の結果,ラニビズマブ単独群のほうがラニビズマブ+PDT併用群より12カ月後の平均視力の改善幅が大きい傾向にあったことからもわかるように,典型AMDに対するPDTの効果が弱いことがあげられる.RAPに対しては抗VEGF薬とPDTの併用療法が推奨されているが,治療指針の公表後に発売されたアフリベルセプトの治療効果の高さや早期に治療が行われるようになったことによる重症例の減少,PDTを併用することによる黄斑萎縮促進の可能性などを背景に,現在は初期治療として抗VEGF薬の単独療法を選択する施設が多い.しかしながら,典型AMD,RAPにおいても,①抗VEGF薬投与例において,最初から治療抵抗性を示すinitialnon-responder,②抗VEGF薬投与の途中から効果が減弱あるいは無効となり,投与がより頻回になる耐性例,③経済的負担の問題または高齢者で頻回の通院や家族の付添いが困難であり,患者がより少ない治療回数を望む場合には併用療法も適応となる.ただし,PDTに抗VEGF薬を併用しても出血のリスクがすべてなくなるわけではないので,視力良好例に対する適応は慎重に判断する必要がある.視力0.5以下のPCVの治療には,PDTを含む治療法が推奨されていることからわかるように,併用療法の有効性についてはこれまでに多数の報告がある.とくに併用療法の適応を考えるうえで参考となるのはEVER-ESTII4,5)試験とPLANET試験20,21)である.EVERESTII試験はPCVに対して,ラニビズマブ単独とラニビズマブ+PDT併用の治療効果を無作為前向きで比較検討した試験である.1年目のポリープ完全退縮率はラニビズマブ単独群33.8%に対し,併用群では69.7%と有意に高く,視力の改善もラニビズマブ単独群+5.1文字に対し,併用群では+8.1文字と有意に高かった.2年目22)も併用群の優位性は変わらず,ポリープ完全退縮率は単独群26.7%に対し,併用群では56.6%,視力の改善は単独群+5.5文字に対し,併用群では+9.6文字と有意に高かった.この結果から,少なくとも2年間はラニビズマブとPDTの併用療法のほうが,ラニビズマブ単独療法よりPCVに対して治療効果が高いことが示された.PLANET試験はPCVに対して,アフリベルセプト単独とアフリベルセプト+PDTによるレスキュー療法を比較検討した試験である.1年目20)のポリープ完全退縮率はアフリベルセプト単独群38.9%に対し,レスキュー群では44.8%,視力の改善はアフリベルセプト単独群+10.7文字に対し,レスキュー群では+10.8文字であった.2年目21)のポリープ完全退縮率は単独群33.1%に対し,レスキュー群では29.1%,視力の改善は単独群+10.7文字に対し,レスキュー群では+9.1文字であった.この結果から,アフリベルセプト単独療法はアフリベルセプト+PDTによるレスキュー療法と比較して非劣勢であることが示された.また,PDTによるレスキュー治療が必要であった症例が15%程度と少なく,PDTレスキュー治療による追加の有用性が認められなかったことから,アフリベルセプト単独療法でPCVのコントロールが可能であることが示された.しかし,単独療法で治療に抵抗する症例も少なからず存在するため,レスキュー治療の有効性や初回併用療法が適している症例の特徴などについての検証が必要と考える.(51)あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020165図1ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対する抗VEGF薬併用PDT70歳,女性のPCV症例.FA,IAにてCNVを同定し,1,000μmのsafetymarginを設けずにスポットサイズを決定した(3,000μm).ラニビズマブ投与後2日目にfull-dosePDTを施行した.治療1カ月後も漿液性網膜?離(serousretinaldetachment:SRD)が残存していたためラニビズマブを追加投与したところ,SRDは消失し,視力も1.0まで回復した.治療4カ月後のIAではポリープ状病巣は消失していた.現在,PCVに対する併用療法の適応を考えるうえで重要な所見としてあげられているのは,脈絡膜血管透過性亢進(choroidalvascularhyperpermeability:CVH)の有無と脈絡膜厚である.CVHのあるPCVではラニビズマブによる滲出抑制効果が弱く23),併用療法による治療成績が良好であった24)と報告されている.また,PCVは典型AMDや正常眼と比較して平均脈絡膜厚が厚いとされており25,26),併用療法の視力予後は脈絡膜の厚い症例で良好であったと報告されている27).この結果は,抗VEGF薬やPDTによって脈絡膜が薄くなること28?30),PCVでは脈絡膜の減少が視力の改善と相関があったとする報告31)からもリーズナブルである.一方,脈絡膜の薄い症例に対する併用療法は,脈絡膜のさらなる菲薄化を招き,黄斑萎縮のリスクが高くなるため適応に関しては注意が必要である.これらの結果から,CVHや脈絡膜肥厚を伴うPCVには抗VEGF薬とPDTの併用療法が推奨される.PCVに対するPDTの適応視力に関しては,2012年の治療指針では併用療法においても0.5以下が推奨されているが,前述のように併用療法によってPDT単独療166あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020(52)図2アフリベルセプトによる治療効果不良例に対する抗VEGF薬併用PDT59歳,女性のPCV症例.アフリベルセプトを4回投与したが,漿液性網膜?離(serousretinaldetachment:SRD)の完全消失が得られなかったため抵抗例と判断し,視力は良好であったが,患者と相談のうえ,ラニビズマブとfull-dosePDTの併用療法を施行した.併用療法後1カ月目にはSRDは消失し,その後3カ月間再発なく,視力も1.5と良好であった.法後に生じる網膜下出血などのリスクが減少することがわかり,最近は視力良好例にも適応が広がっている.Fujisan試験32)は,初回からラニビズマブとPDTを併用する群とラニビズマブ単独で治療を開始する群に分け,経過中に滲出性変化を伴うポリープ状病巣が確認されれば,いずれの群においてもPDTを追加するというデザインの前向き試験である.この試験では視力0.1?0.7までの症例を対象としており,結果的には8文字以上の改善が得られたことから,併用療法を行う場合は少なくとも視力0.7以下まで適応を広げてもよいと思われる.PDTを併用するタイミングに関しては,Fujisan試験の結果,1年間の治療回数が初回から併用療法を行った群で有意に少なかったことから,少なくともラニビズマブ使用時は初回からの併用が望ましく,これはPCVの治療において早期にしっかり病態を抑えることが重要であることを示唆している.以上の結果を踏まえて,当院ではGLD5,400μm未満,脈絡膜厚200μm以上,視力0.7以下のPCV症例で,全身状態が悪く初回治療としてラニビズマブを使用する,もしくはアフリベルセプトに対して抵抗性を示す場合にPDT併用を積極的に考慮している(図1,2).IIICSCと脈絡膜血管腫の治療1.CSCに対するPDTCSCの原発病巣は脈絡膜血管の異常な透過性亢進であり,そのために網膜色素上皮のバリアが破綻し,網膜下に漿液が漏出する.急性期は自然回復が望めるために患者の強い希望がなければ経過観察となるが,長期にわたって網膜下への滲出が持続する慢性CSCに対しては,網膜下への漏出を止めるために適応外使用ではあるがPDTが用いられている.(53)あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020167図3慢性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)に対する半量PDT64歳,男性の慢性CSC症例.トラック運転手で中心暗点を自覚.当院紹介受診後,カリジノゲナーゼ内服にて3カ月間経過観察したが,漿液性網膜?離(serousretinaldetachment:SRD)の増加を認めたため,半量PDTを施行した.2カ月後にはSRDは完全に消失し,中心暗点の自覚もなくなった.4カ月後の視力は1.5と良好であった.PDTを行うと異常な脈絡膜血管の透過性が抑制されるため,網膜色素上皮のバリア機能は回復し,網膜下への漏出は停止する.その結果,網膜下液は速やかに吸収される.藤田らは,慢性CSC204眼に半量PDT(ベルテポルフィン投与量半量)を行ったところ,治療1年後には89.2%で漿液性網膜?離の完全消失がみられ,著明な視力低下は1例もなく,平均視力は治療前と比較して有意に改善したと報告している33).当院でも慢性CSC症例に対して,照射時間を42秒に短縮し,造影検査による漏出部位と隣接するCVH領域を含め,最小限のスポットサイズで治療を行っており,良好な治療効果を得ている(図3).2.脈絡膜血管腫に対するPDT脈絡膜血管腫は,脈絡膜内に拡張した太い血管が集簇して存在する海綿状血管腫の組織像を示し,黄斑部に漿液性網膜?離や網膜浮腫を生じることがある.これら滲出性変化は,腫瘍血管の透過性亢進や腫瘍の隆起による脈絡膜毛細血管の圧排の結果,網膜色素上皮が傷害されて生じると考えられており,PDTは腫瘍血管の透過性亢進を抑制する目的で用いられる.5年の長期経過の報168あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020(54)図4脈絡膜血管腫に対するPDT46歳,男性の脈絡膜血管腫症例.黄斑部に漿液性網膜?離(serousretinaldetachment:SRD)が生じたため,視神経乳頭から200μm離し,safetymarginを設けずに腫瘍部全体にfull-dosePDTを施行した.治療後2カ月目にはSRDは消失し,視力も1.2まで改善した.1年後に再び黄斑部にSRDが生じたため,同様にPDTを施行したところ,3週間後にはSRDはほぼ消失し,2カ月後には視力も1.2まで改善した.2回目治療後1年目においても黄斑部にSRDはなく,視力も良好であったが,腫瘍部には網膜浮腫を認めている.告34)もあるが,症例数が少なく,脈絡膜血管腫に対するPDTは保険適用外である.標準的なfull-dosePDTを血管腫全体に照射することで,滲出は速やかに消失することが多いが,血管腫自体は残存するため再発することもまれではない(図4).しかし,過去に行われてきた光凝固治療による強い網膜色素上皮のダメージによる不可逆性のCMEはPDTでは起こりにくいという利点がある.おわりに滲出型AMDの治療にPDTを用いる場合,網膜下出血などの副反応は抗VEGF薬を併用してもゼロにはならない.しかし,抗VEGF薬の頻回投与が問題となってきている今,エビデンスのあるPDTを活用することは重要なことである.近年,脈絡膜大血管(Haller層)の拡張や造影検査による脈絡膜血管透過性亢進などを特徴とするパキコロイド関連疾患の概念が提唱され,その疾患群にCSCとPCVも含まれている.これら2疾患にPDTが有効であることから,パキコロイド関連疾患の一つであるpachychoroidneovasculopathy(PNV)に対してもPDTが有効である可能性は高い.現在,PNVに対するPDTの効果については各施設で検討されており,今のところ有効とする報告が多いようであるが,長期成績を含め,今後のさらなる検討が必要であろう.(55)あたらしい眼科Vol.37,No.2,2020169最後に,カールツァイス社のビズラスPDTシステム690Sの製造中止に伴い,現在はカンテルメディカル社の眼科用PDTレーザー装置VitraPDTレーザーシステムも保険適用機器であることを付記しておく.文献1)BresslerNM;TreatmentofAge-RelatedMacularDegen-erationwithPhotodynamicTherapy(TAP)StudyGroup:Photodynamictherapyofsubfovealchoroidalneo-vascularizationinage-relatedmaculardegenerationwithvertepor?n:two-yearresultsof2randomizedclinicaltri-als-tapreport2.ArchOphthalmol119:198-207,20012)JapaneseAge-RelatedMacularDegenerationTrial(JAT)StudyGroup:Japaneseage-relatedmaculardegenerationtrial:1-yearresultsofphotodynamictherapywithvertepor?ninJapanesepatientswithsubfovealchoroidalneovascularizationsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol136:1049-1061,20033)OishiA,KojimaH,MandaiMetal:Comparisonofthee?ectofranibizumabandvertepor?nforpolypoidalcho-roidalvasculopathy:12-monthLAPTOPstudyresults.AmJOphthalmol156:644-651,20134)KohA,LaiTYY,TakahashiKetal;EVERESTIIstudygroup:E?cacyandsafetyofranibizumabwithorwith-outvertepor?nphotodynamictherapyforpolypoidalcho-roidalvasculopathy:arandomizedclinicaltrial.JAMAOphthalmol135:1206-1213,20175)TakahashiK,OhjiM,TerasakiHetal:E?cacyandsafe-tyofranibizumabmonotherapyversusranibizumabincombinationwithvertepor?nphotodynamictherapyinpatientswithpolypoidalchoroidalvasculopathy:12-monthoutcomesintheJapanesecohortofEVERESTIIstudy.ClinOphthalmol12:1789-1799,20186)OtaniA,SasaharaM,YodoiYetal:Indocyaninegreenangiography:guidedphotodynamictherapyforp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