●連載監修=安川力髙橋寛二66.私の糖尿病黄斑浮腫の治療方針喜田照代大阪医科大学眼科学教室VEGF阻害薬の登場により,糖尿病黄斑浮腫患者のCQOLが飛躍的に向上し,硝子体内注射の施行件数が増加した.一方でトリアムシノロンアセトニド(マキュエイドCR)も承認され,また,レーザー光凝固や硝子体手術も治療選択肢の一つである.本稿では筆者の見解を述べる.はじめにVEGF阻害薬の登場により,黄斑疾患における視力予後をはじめ,患者の視覚の質(qualityCofvision:QOL)が飛躍的に向上した.わが国ではラニビズマブ(ルセンティスCR)とアフリベルセプト(アイリーアCR)の2剤が糖尿病黄斑浮腫(diabeticCmacularedema:DME)に承認されており,その恩恵を受けている.VEGF阻害薬は,反復投与の必要性や合併症の危険があること,高価な薬剤であること,薬剤耐性,抗菌薬点眼による結膜.常在細菌叢の変化などの問題もあり,これらを認識し十分なインフォームド・コンセントのうえで治療を行うことが重要である.一方で,VEGF阻害薬ではないが,副腎皮質ステロイドであるトリアムシノロンアセトニド(マキュエイドCR)もCDMEに承認されており,今なおCDME治療の重要な選択肢の一つである1).投与間隔はラニビズマブとアフリベルセプトがC1カ月であるが,トリアムシノロンアセトニドはC3カ月以上あけること,と他剤に比べ長くなっている.また,これらの注射薬登場の前より,DMEに対してはレーザー光凝固や硝子体手術が施行されてきた.症例実際の症例を示す.図1はレーザー光凝固と抗VEGF療法を組み合わせて治療した視力良好な一例で,図2は最初に抗CVEGF療法を繰り返し施行したのち白図1単純型糖尿病網膜症におけるDMEの一例(69歳,女性)治療前視力は(0.9)であった.FAで黄斑耳側に毛細血管瘤があり,FA後期で蛍光漏出がみられる(Ca:FA初期C30秒,Cb:FA後期C11分).抗CVEGF療法および毛細血管瘤へのレーザー光凝固を施行したところ,DMEは軽快した(Cc:治療前,d:治療C1カ月後のCOCT黄斑マップ).視力はC0.9~1.0を維持している.(75)あたらしい眼科Vol.36,No.7,2019C9130910-1810/19/\100/頁/JCOPY図2白内障および眼底後極部に著明な硬性白斑を伴うDMEの一例(63歳,女性)a:治療前の眼底写真.治療前視力は(0.3)であった.Cb:治療前のOCT.黄斑上膜を伴う.Cc:抗CVEGF療法後の眼底写真.硬性白斑は減少したが黄斑浮腫は残存.視力(0.2).d:手術施行C3カ月後のCOCT黄斑マップ.Ce:12カ月後のCOCT黄斑マップ.f:術後C2年半後の黄斑部OCT.術後視力は(0.7)に改善した.内障手術併用硝子体手術を施行し,後極部の硬性白斑が減少した例である.図2のような眼底で白内障がない症例では,筆者は抗CVEGF療法でなくトリアムシノロンアセトニドのCTenon.下注射をまず施行することもある.抗CVEGF療法単独で患者のCQOVが向上しない場合は組み合わせて治療するのも一案かと思われる.また,糖尿病網膜症が進行期で,フルオレセイン蛍光造影検査(.uoresceinangiography:FA)を施行して新生血管や中間周辺部の無灌流域が広範囲にみられるCDME症例では,無灌流域のレーザー光凝固を施行することにより,しばらくするとCDMEの改善がみられることがある.周辺網膜の虚血はCDMEに関与する2).いずれの眼科治療にせよ,生涯できるだけ良好なQOVを維持するためには,血糖や血圧,腎機能維持などの内科的なサポートは必要不可欠であると思う.おわりに遷延性黄斑浮腫に対しては治療に難渋することが多いが,DRCR.netのサブ解析の結果では辛抱強く抗CVEGF療法を続けるのも一法として報告されている3).DMEにかぎらず,どのような疾患であれ,治療に際し,なぜこのような状態が生じて患者が日常不自由な思いをされているのか,発症のメカニズムや病態を考慮することはC914あたらしい眼科Vol.36,No.7,2019臨床上不可欠である.まずは患者との信頼関係を築くことが重要であり,とくに通院加療期間が長いCDMEでは,治療を継続するにつれ病態も変化していくので,患者自身が今一番困っていること,通院が辛くなっていないかどうか,注射治療を受けた感想などをできるだけ聞き出すように努めている.検査面では,光干渉断層計(opti-calCcoherencetomography:OCT)画像に頼りすぎず,検眼鏡的眼底所見の確認や必要性に応じてCFAの施行を怠らないことが大切である.FAはCDMEにおける血管漏出や透過性亢進の程度を把握することができるので今なお有用であるが,侵襲的な検査であるので,非侵襲的なCOCTangiographyの進展に期待している.文献1)vanCderCWijkCAE,CCanningCP,CvanCHeijningenCRPCetal:CGlucocorticoidsCexertCdi.erentialCe.ectsConCtheCendotheli-uminaninvitromodeloftheblood-retinalbarrier.ActaOphthalmol97:214-224,C20192)WesselCMM,CNairCN,CAakerCGDCetal:PeripheralCretinalCischaemia,CasCevaluatedCbyCultra-wide.eldC.uoresceinCangiography,CisCassociatedCwithCdiabeticCmacularCoedema.CBrJOphthalmolC96:694-698,C20123)BresslerCSB,CAyalaCAR,CBresslerCNMCetal:PersistentCmacularCthickeningCafterCranibizumabCtreatmentCforCdia-beticmacularedemawithvisionimpairment.JAMAOph-thalmol134:278-285,C2016(76)