眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋388.フェムトセカンドレーザー白内障手術における増田洋一郎東京慈恵会医科大学ガス形成誘発Capsularblocksyndrome葛飾医療センター眼科フェムトセカンドレーザー白内障手術は,レーザー照射中にガスを発生させるため,水晶体.内圧を上昇させる.豚眼においてレーザー照射中に水晶体を後方から観察すると,発生ガスは時間とともに癒合し,大きなバブルとなって後方へ膨張し,後.を拡張させる挙動を呈した.これはCcapsularblocksyndromeの要因となるため,注意を要する.●FLACS時の後.破損とレーザー照射誘発ガスの関係フェムトセカンドレーザー白内障手術(femtosecondClaser-assistedcataractsurgery:FLACS)は,レーザー照射によってCZinn小帯脆弱や前房の浅さとは無関係に,確実に水晶体前.切開を行うことができ,また事前に水晶体核断片化をしておくことで,超音波乳化吸引時の使用エネルギーを減少させることができる.そのため確実で低侵襲な白内障手術に貢献するといわれている.しかし,FLACSは従来のマニュアルによる超音波白内障手術(manualcataractsurgery:MCS)では認めなかった特徴を有しているため,留意すべきポイントがある.Popovicらは,FLACSとCMCSとを比較したC14,567眼におけるメタ解析で,FLACSのほうがCMCSより後.破損の発生率が高いと報告している1).この要因の一つとして,FLACSのユニークな特徴である水晶体内に発生するレーザー照射誘発ガスに起因するものが考えられる.Robertsらは,このレーザー照射誘発ガスにより水晶体.内圧が上昇した状態でのハイドロダイセクションが,.内圧を上昇させてCcapsularCblockCsyndrome(CBS)による後.破損をきたす危険性を指摘し,ハイドロダイセクションの際に十分な留意が必要であると報告している2).そのため,このレーザー照射誘発ガスの特性を知っておくことは,CBS回避のために重要である.C●豚眼を用いたレーザー照射中の水晶体後面の観察そこで今回,発生ガスの挙動を知ることを目的に,豚眼水晶体にフェムトセカンドレーザーを照射中に,硝子体手術用内視鏡を用いて水晶体後方を観察した(図1).図1硝子体内視鏡を用いた豚眼水晶体後面像a:フェムトセカンドレーザー照射前.Cb:フェムトセカンドレーザー照射初期.レーザー照射により白色に反射するガスが発生している.Cc:フェムトセカンドレーザー照射後期.発生ガスが癒合し大きなバブルとなり後.を拡張させている.黄線:レーザー照射開始部位,白線:レーザー照射前の後.位置,△:移動した後.位置.(67)あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019C3690910-1810/19/\100/頁/JCOPY図2フェムトセカンドレーザー照射後摘出水晶体(豚眼)摘出水晶体を後.側から観察したもの.後.側に優位に膨張したレーザー照射誘発ガスのバブルを認めた.レーザーは水晶体後部から順次階層的に前方へ照射されてゆく.レーザーを照射された水晶体は白色に反射するガスを発生させ,レーザー照射の経過とともに発生ガスは癒合し大きく膨張したバブルとなり,当初の照射部位を越えて後方へ拡張した.レーザー照射後の後.位置は,レーザー照射前の後.位置と比較して,膨張したガスによる.内圧上昇によって後方へ拡張することが観察された(図1c白矢頭).さらにレーザー照射エネルギーを増加させると誘発ガスも増加していき,耐圧を超えた水晶体.が破裂することも観察された(レーザー照射中CBS).C●照射エネルギー量による水晶体径の変化レーザー照射後に摘出した水晶体を観察すると,内視鏡で観察されたものと同様,癒合し膨張したガスのバブ30.9J19.4J8.1JControl図3フェムトセカンドレーザー照射後摘出水晶体(豚眼)レーザー照射エネルギー量が増加するにつれ,水晶体径が増加していることが観察される.左からコントロール,8.1CJ照射,19.4CJ照射,30.9CJ照射.ルが水晶体後面に優位に分布していた(図2).また,照射エネルギー量を変更してレーザー照射された水晶体を並べると,エネルギー量に依存して誘発ガスが増加し,水晶体径が増加していた(図3).C●おわりにこの実験によって判明した興味深い点は,癒合し膨張したレーザー照射誘発ガスが,後方へ拡張し分布していくため,発生ガスが水晶体内にトラップされやすくCBSの要因になりやすい点であった.以上より,FLACSにおけるCCBSを回避するためには,レーザー照射条件とレーザー照射後のハイドロダイセクションなどの加圧手技に十分留意する必要性があることが示唆された.文献1)PopovicCM,CCampos-MollerCX,CSchlenkerCMBCetal:CE.cacyandsafetyoffemtosecondlaser-assistedcataractsurgeryCcomparedCwithCmanualCcataractsurgery:ACmeta-analysisCofC14567CEyes.COphthalmologyC123:2113-2126,C20162)RobertsTV,SuttonG,LawlessMAetal:Capsularblocksyndromeassociatedwithfemtosecondlaser-assistedcata-ractCsurgery.CJCCataractCRefractCSurgC37:2068-2070,C2011C