●連載監修=安川力髙橋寛二62.加齢黄斑変性:難症例への私のこだわり松宮亘神戸大学大学院医学研究科外科学講座眼科学分野現在の加齢黄斑変性診療において,抗CVEGF薬は必要不可欠となっている.しかし,今なお対応に苦慮する難症例や治療抵抗例は多く存在する.本稿では網膜色素上皮.離に着目したポリープ状脈絡膜血管症の治療選択について述べる.背景ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvascu-lopathy:PCV)を含めた滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)の治療は,抗VEGF薬硝子体内注射がおもに選択されている.また近年,PCVに対する抗CVEGF薬硝子体内注射と光線力学療法(photodynamicCtherapy:PDT)の併用療法の有効性も注目されている.一方で,漿液性網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)の存在や線維血管性CPEDなどは,抗CVEGF薬に対する治療反応不良因子として報告されている1).本稿ではCPEDの変化に着目したCPCVへの治療選択を取りあげ,治療抵抗例や難症例への対応について述べる.PCVに伴うPEDPEDはCBruch膜から網膜色素上皮(retinalCpigmentepithelium:RPE)が.離して形成され,その空隙に含む性状により漿液性,出血性,線維血管性,drusenoidに分類される.PCVでは約半数に漿液性CPEDもしくは出血性CPED認め,実臨床でも経験することが多い.またとくに丈の高い漿液性CPEDや出血性CPEDは,その背景に疾患活動性の高いCPCV病変を有している可能性が示唆される.抗VEGF治療現在,抗CVEGF薬硝子体内注射は加齢黄斑変性治療における第一選択とされている.一方で,抗CVEGF薬を用いてもCPEDの完全消退を達成することは困難なこ上段:(左から)治療前のCOCT,FA(3分),IA(3分).中段:(左から)12カ月後(IVA7回)のOCT,FA(1分),IA(1分).下段:18カ月後(IVA+PDT追加後C6カ月)のOCT.図1アフリベルセプト治療抵抗性PCVに対するIVA+PDT併用療法の奏効例治療前には明らかなポリープ状病変は認めず,典型加齢黄斑変性としてCIVAにて治療を行った.治療C6カ月頃からCPEDは増大し,IVAへの抵抗性を認めた.巨大なCPEDを伴うCPCVを認め,12カ月時にCIVA+PDT併用療法を行い,下液の消失とCPEDの縮小を認めた.(73)あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019C3750910-1810/19/\100/頁/JCOPY上段:(左から)治療前のOCT,FA(3分),IA(3分).中段:(左から)15カ月後(IVA+PDT1回)のCOCT,FA(1分),IA(1分).下段:(左から)48カ月後(IVA+PDT3回,IVA11回)のOCT,FA(1分),IA(1分).図2巨大なPEDを伴ったPCVの難治例巨大なCPEDを伴ったCPCVに対し,初回治療としてCIVA+PDT併用療法を施行した.1年以上追加治療なく経過観察を行っていたが,15カ月時に巨大な出血性CPEDを認めた.IAにてCPCV病変の増悪を認めた.その後もCIVA単独およびCPDT併用療法を繰り返し,視力は維持されたものの新たなCPEDの出現や新生血管の進展を認め,病勢の管理は困難である.とが多い.PEDに対する効果について議論の余地を残しているが,ラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealranibizumab:IVR)に反応しない症例でもアフリベルセプト硝子体内注射(intravitreala.ibercept:IVA)が奏効する例は少なくないため,実臨床では初回C3回連続投与を行ってもCIVRに反応しない場合は,IVAに切り替えるべきと考えられる.抗VEGF薬+PDT併用療法IVRやCIVAにもかかわらず漿液性.離が残存しCPEDが増悪するような治療抵抗例においても,抗CVEGF薬+PDT併用療法を追加することで解剖学的な改善が得られることが多い(図1).ただし再発を繰り返すなど長期にわたって治療継続している症例では,潜在的な黄斑萎縮や網膜外層障害をきたしていることが多く,PDT治療により,かえって視力低下を顕在化させるおそれもある.それゆえ,治療実施の際には蛍光眼底造影やOCT検査を施行して慎重に病態評価を行う必要がある.最近はCEVEREST2studyをはじめ,PCVに対する初回CPDT併用療法の良好な治療成績が報告されている2,3).確実なポリープの退縮や治療回数の軽減などを目標とする場合は初回からCPDT併用療法を考慮する.難症例への対応PEDの平坦化をめざした積極的な治療を行えばCRPEC376あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019tear形成の可能性やCRPE萎縮をきたす可能性も憂慮され,常に治療効果とそのリスクを天秤にかける必要性がある.一方,巨大な漿液性CPEDを有する症例では,治療継続にもかかわらずCPEDが増大し,出血性CPEDや巨大な網膜下出血をきたすことがある(図2).このような場合は,患者に十分な説明を行って理解を得たうえで,積極的な抗CVEGF治療(.xeddosingまたはCtreatCandextend)やCPDT併用療法を行い,解剖学的な改善の維持に努め,視力維持を図るべきと思われる.文献1)NagaiCN,CSuzukiCM,CUchidaCACetal:Non-responsivenessCtoCintravitrealCa.iberceptCtreatmentCinCneovascularCage-relatedCmaculardegeneration:implicationsCofCserousCpig-mentepithelialdetachment.SciRepC6:29619,C20162)KohCA,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal:E.cacyCandCsafetyCofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:Arandom-izedCclinicalCtrial.CJAMACOphthalmol135:1206-1213,C20173)MatsumiyaCW,CHondaCS,COtsukaCKCetal:One-yearCout-comeCofCcombinationCtherapyCwithCintravitrealCa.iberceptCandvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalcho-roidalCvasculopathy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC255:541-548,C2017(74)