■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く24.総括土至田宏聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学/川崎市立多摩病院眼科2024年C1月からC2年間にわたり連載してきた「英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く」このセミナーも今回で最終回である.本稿ではこれまでの総括として“ContactLensEvidence-BasedAcademicReports(CLEAR)”の意義をふり返るとともに,日本のコンタクトレンズ診療ガイドラインとの相違点を踏まえたうえでの両者の効果的な活用法を提案する.総覧としてのCLEAR英国コンタクトレンズ協会がC2021年に発表したCCLEAR1)を一言で表すならば,コンタクトレンズ(CL)に関するサイエンスを基盤とした「総覧」といえるだろう.CL研究はこれまで材料工学から臨床応用,感染症対策に至るまで多様な領域で発展してきたが,それらを体系的に統合し,分野全体のエビデンスを一望できる形で整理した試みはほとんど存在しなかった.「CLそのもの」に焦点を当て,素材・デザイン・ケア・臨床応用・装用感・ドライアイ・感染症・小児・近視・教育・将来技術などを横断的に俯瞰した「総合レビュー」は画期的であり,おそらく初めての試みである.このエビデンス・ベースドの統合プロジェクトのメンバーは,100名を超える世界各国の研究者・臨床医・教育者ら専門家で構成されている.その中には日本コンタクトレンズ学会常任理事の高静花先生も参加されており,今回は特別にCCLEARそのものの意義や本セミナーの活用法などについてコメントをお寄せいただいた(次頁の掲載).CCLEARの目的と意義CLEARの目的は,「CLに関するサイエンスのあらゆる分野を俯瞰し,現時点におけるエビデンスを再定義する」ことといえる.その最大の特徴は,既存の知見を単に羅列するのではなく,研究水準やエビデンスレベルを明示したうえで,臨床応用への橋渡しを試みている点にある.たとえば,レンズ素材の章では酸素透過性,表面エネルギー,湿潤性といった物理的・化学的性質が実際の装用感や涙液安定性とどのように関連するかを解説している.また,感染症の章では,微生物学的リスクに関する疫学研究と臨床報告を総合し,ケアシステムやユー(59)ザー行動との因果関係をエビデンスに基づいて再構築している.近視抑制や小児のCCL装用に関する章では,オルソケラトロジーや多焦点ソフトCCLの長期成績を解析し,エビデンスの質を評価したうえで臨床指針を提案している.このようにCCLEARは,CLに関する学術的知見を実臨床へと結びつける「国際的共通言語」としての役割を果たしている.日本のガイドラインとの関係・位置づけわが国では,日本コンタクトレンズ学会が策定した「コンタクトレンズ診療ガイドライン」(以下,ガイドライン)が臨床現場における実践指針として広く活用されている2).その内容は,適応・禁忌・処方・フィッティング・ケア・合併症管理などを中心に,国内の医療制度や医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律,販売管理制度との整合を図った実務的な指針である.これに対しCCLEARは,臨床の枠を超えて科学的根拠を国際的に体系化した「知のプラットフォーム」であり,両者は性格を異にしながらも相補的な関係にあるといえる.臨床医や教育者が現場で安全性と遵法性を確保するためにはガイドラインが不可欠であるが,その背後にある物理化学的・生理学的エビデンスを理解し,科学的根拠に基づいて判断を行うには,CLEARの知見がきわめて有用である.いいかえれば,ガイドラインが「どう行うか」を定めた手引きであるのに対し,CLEARは「なぜそれが必要なのか」を示す科学的根拠集である.ただし,CLEARの多くは欧州を中心とした製品や環境を前提としており,わが国のレンズ流通や法規,保険制度とは一部条件が異なる.そのため,国内臨床で応用する際には,日本のガイドラインの枠組み内で,CLEARの記載内容における国内外の差異あたらしい眼科Vol.42,No.12,2025C15370910-1810/25/\100/頁/JCOPYを認識しつつ活用するのが,現時点でのベストと思われる.今後は,CLEARが提示する最新の科学的知見をどのようにわが国の臨床実践に反映させるかが課題となるであろう.2年間にわたる本セミナーが,その「国際エビデンスを日本の現場へ橋渡しする」一助となったのであれば,望外の喜びである.おわりに本連載を終えるにあたって,CLEARのメンバーの一人であった高静花先生から,本セミナーを総括するにふさわしいコメントをお寄せいただいたので,ここに掲載する.文献1)Wol.sohnCJS,CMorganCPM,CBarnettCMCetal:CLEARC-Contactlenstechnologiesofthefuture.ContLensAnteri-orEyeC44:129-131,C20212)日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドライン編集委員会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌118:557-591,C2014CLEARに学ぶ:国際的エビデンスと日本の実践のあいだで高静花大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座CLEARプロジェクトは,コンタクトレンズに関する科学的知見を国際的に体系化した初の試みであり,研究と臨床を結ぶ新たな視座を提示した点で画期的であった.私自身,執筆に参加した際には,海外の考え方や用語の違いにとまどいながらも,多くを学んだことを鮮明に覚えている.欧州を中心にまとめられたCCLEARの内容は,日本のレンズ流通や法規・保険制度とは一部前提が異なるが,その違いを理解し,日本のガイドラインの枠組みのなかで活かすことが重要だと感じている.本連載を通じてCCLEARの理念を丁寧に紹介し続けてくださったことに深く感謝申しあげたい.今後,コンタクトレンズの世界はさらに発展をとげ,新しい常識が生まれていくだろう.常にアンテナを張り,研究者と企業が協力しながら,エビデンスに基づいた柔軟な視点を持ち続けて進んでいくことを心から願っている.