眼内レンズセミナー監修/佐々木洋・永田万由美473.フック付灌流ハンドピースによる浅野泰彦昭和医科大学医学部眼科学講座虹彩操作水晶体再建術やその際の破.処理時,ならびに水晶体・IOL亜脱臼手術時において,散瞳不良例では皮質吸引や前部硝子体切除の難度が高い.筆者らが開発したフック付灌流ハンドピースを用いることにより,灌流と同時に先端フックによる虹彩拡張などを行うことが可能となり,効率的な皮質吸引や前部硝子体切除が可能となる.●はじめに水晶体再建術,術中の後.破損処理,水晶体あるいは眼内レンズ(intraocularlens:IOL)亜脱臼に対する手術の際に,散瞳不良例では水晶体皮質吸引や前部硝子体切除の操作がむずかしくなる.灌流ハンドピースと吸引ハンドピースあるいは硝子体カッターを用いたバイマニュアル操作は有用であるが,瞳孔径が不十分な場合には虹彩下の視認が困難となり,皮質の取り残しや操作の不確実性が生じることがある.このような場合は虹彩拡張デバイスの使用や前房メインテナーの設置が有用である.しかし,器具設置の手間や術中脱落の可能性など,手技上の煩雑さが問題となる.そこで筆者らは,灌流ハンドピースの先端にフックを付加し,灌流を維持しながら虹彩操作などを行うことを目的としたフック付灌流ハンドピース(以下,Irriga-tionHook)を開発した.本稿では本器具の構造と基本的な使用方法について紹介する.●構造IrrigationHookは,外径0.65mm,内径0.50mmのチタン製灌流ハンドピースの先端に,0.3×0.5mmの球状フックを備えた構造を有する(図1).灌流口は器具先端に位置しており,眼内灌流を維持した状態で虹彩の牽ab引や圧排などのフック操作を行うことが可能である.●使用方法白内障または硝子体手術装置の灌流チューブをIrri-gationHook後端に接続して,使用する.チストトーム針を挿入するのと同様の要領で,フック部を先端として角膜サイドポートから挿入することで,20Gの切開創から使用可能である.眼内灌流を維持しながら対側ポートより吸引ハンドピースまたは硝子体カッターを挿入し,バイマニュアル操作を行う.先端フックで虹彩を牽引あるいは圧排することで瞳孔径を拡大でき,虹彩下の皮質を直接視認しながら吸引することが可能となる(図2).通常の同軸I/Aハンドピースでは操作が困難な主創口直下の皮質吸引も,虹彩を圧排して視認することにより容易に行うことができる(図3).さらに応用として,前部硝子体切除時の硝子体ワイパリングにも利用できる.前房メインテナーを設置し,フックを用いてワイパリングを行う方法もあるが,Irri-gationHookでは灌流を維持しながらフックを硝子体に掛けることができ,前房メインテナーを設置せずとも効率的なワイパリング操作が可能となる(図4).図1IrrigationHookの構造製品名:浅野氏フック付灌流ハンドピース23G(販売:MEテクニカ).外径0.65mm,内径0.50mmのチタン製灌流ハンドピースである(a).先端には0.3×0.5mmの球状フックを備える(b).(87)あたらしい眼科Vol.43,No.10,202612610910-1810/26/\100/頁/JCOPY図2虹彩牽引による瞳孔拡張を用いた皮質吸引手技フック部で虹彩を牽引して瞳孔拡張を行う().灌流口が器具先端にあるため眼内灌流は維持され,虹彩下の皮質を直接視認して吸引することが可能となる.図4硝子体ワイパリング手技前部硝子体切除を行う際は,フック部を硝子体に掛けることにより,創口に陥頓した硝子体ストランド()を効率よくワイパリングすることが可能である.●使用上の注意点IrrigationHookは肉薄構造とすることで比較的大きな内径を確保しており,同程度の外径を有する従来の灌流ハンドピースと比較すると灌流量は多い.しかし,通図3虹彩圧排による瞳孔拡張を用いた皮質吸引手技フック部で虹彩を圧排して瞳孔拡張を行い,虹彩下の皮質を確認する.通常の同軸I/Aハンドピースでは吸引困難な主創口直下の皮質()も容易に吸引可能となる.常のI/Aハンドピースと比べると灌流量はやはり少ないため,前房安定性に配慮した設定と操作が必要である.皮質吸引時にI/Aモードで使用する際には,通常時よりも灌流圧をやや高めに設定し,吸引圧を過度に上げないことに留意する.具体的には通常時より20mmHg程度灌流圧を高く設定し,フットペダルの踏み込みをゆっくり少しずつ行う.皮質を捕捉したあとは吸引ハンドピースの動きで.から.離するように操作すると,前房を安定させた状態で効率的に皮質吸引を行うことができる.●おわりにIrrigationHookは,灌流とフック操作を同時に行うことを可能にし,散瞳不良例においても効率的な皮質吸引および前部硝子体切除を実現するデバイスである.従来のバイマニュアルI/Aと同様に前房安定性の保持には注意が必要であるが,操作に慣れれば違和感なく使用できる.今後,臨床での使用経験の蓄積により,本器具の有用性がさらに明らかになることが期待される.