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写真セミナー:リウマチ性角膜潰瘍

2026年2月28日 土曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史宇都宮嗣了501.リウマチ性角膜潰瘍旭川医科大学眼科学講座図1初診時前眼部所見a:右眼.角膜中央の角膜浸潤,周辺部角膜実質の高度菲薄化,周辺部からの血管侵入を伴う結膜上皮侵入がみられる.b:左眼.周辺部角膜実質が高度菲薄化している.図2図1のシェーマ①角膜実質菲薄化図3初診時のフルオレセイン染色写真a:右眼.角膜中央から周辺部にかけての角膜上皮欠損.b:左眼.角膜周辺部全周の角膜上皮欠損.(63)あたらしい眼科Vol.43,No.2,20261810910-1810/26/\100/頁/JCOPY自己免疫疾患に起因すると考えられる角膜潰瘍症例を提示する.患者は76歳の男性.不整脈,高血圧,脂質異常症,肺気腫,腎機能低下の既往あり.アレルギーなし.1カ月半前より眼のかすみを自覚,2週間前より眼脂も出てくるようになったとのことで近医総合病院眼科を受診した.両眼ともに結膜充血・前房炎症・周辺部角膜潰瘍を認め,自己免疫疾患による病態が疑われたため,同院内科で精査となった.2週間後,点眼加療による改善がないとのことで旭川医科大学(以下,当院)眼科を紹介受診した.紹介時の加療はレボフロキサシン点眼両眼6回,セフメノキシム点眼両眼6回,オフロキサシン眼軟膏両眼寝る前1回で,ステロイド点眼は処方されていなかった.当院初診時の視力は右眼手動弁,左眼0.04(矯正不能).眼圧は右眼5mmHg,左眼8mmHg(非接触眼圧計による測定).右眼は角膜中央から周辺にかけて角膜上皮欠損,周辺部角膜実質は高度菲薄化,周辺部から血管侵入を伴う結膜上皮侵入,高度の結膜充血,多量の眼脂,高度の虹彩後癒着がみられた.左眼は角膜周辺部全周に角膜上皮欠損,周辺部角膜実質は高度菲薄化,高度の結膜充血,多量の眼脂がみられた.加療はレボフロキサシン点眼両眼を6回から4回に変更,セフメノキシム点眼両眼6回を中止,オフロキサシン眼軟膏寝る前両眼1回をベタメタゾン眼軟膏寝る前両眼1回に変更,ベタメタゾン0.1%点眼両眼6回追加,トロピカミドフェニレフリン点眼両眼3回を追加し,治療用ソフトコンタクトレンズ装用も行った.前医総合病院内科から当院膠原病内科へ紹介となり,入院精査した結果,新規に関節リウマチの診断に至り,プレドニゾロン内服1日30mgが開始された.炎症は徐々に落ち着いたが,角膜実質は高度に菲薄化しており,1週間後に右眼角膜穿孔,1カ月後に左眼角膜穿孔となり,周辺部の角膜層状移植や中心部の全層角膜移植を要した.術後に矯正視力は両眼とも0.6まで回復したが,角膜不正乱視を残した.その後も真菌感染や角膜移植片不全による再移植などの経過をたどっており,発症早期にステロイド加療が行われず角膜移植が必要になったことが悔やまれる症例であった.リウマチ性角膜潰瘍は周辺部角膜潰瘍であり,Ⅲ型アレルギーによる血管炎が基本の病態である.免疫複合体が角膜輪部や結膜に沈着して炎症による組織障害を生じると考えられており,血管に近い周辺部から角膜が障害されることが多い.本症例の右眼は,炎症により角膜実質が進行性に融解した結果,角膜潰瘍が中央まで至り,輪部機能不全を伴う異常な創傷治癒過程をたどったと考えられる.左眼のような状態のまま適切な加療が行われないと右眼のような状態に至ると考えられ,リウマチ性角膜潰瘍の病態の経時的変化を同一症例の左眼から右眼に観察することができる興味深い症例であった.周辺部角膜潰瘍では自己免疫疾患を精査すると同時に,早期から適切な治療介入をする必要がある.自己免疫疾患があれば原疾患の治療を,なければMooren潰瘍として治療していく.保存的治療に限らず外科治療になっても関節リウマチの全身管理が必要になる.局所のステロイド治療が重要であり,治療用ソフトコンタクトレンズの連続装用も有効である.角膜穿孔や角膜菲薄化を生じて外科的治療が必要にならないよう,早期からの適切な治療介入が重要である.文献1)眞鍋禮三,木下茂,大橋裕一ほか:角膜クリニック.第3版,医学書院,20212)木下茂(編):角膜疾患外来でこう診てこう治せ.改訂第2版,メジカルビュー社,2015

黄斑浮腫とまぎらわしい網膜分離症

2026年2月28日 土曜日

黄斑浮腫とまぎらわしい網膜分離症ClinicalManagementofMacularRetinoschisisAssociatedwithMyopiaandOpticDiscAbnormalities高橋洋如*はじめに網膜分離とは,神経網膜の特定の層または層間が伸展,もしくは裂開することであり,形成された空隙には液貯留が生じてschisiscavityと呼称される1).病理学的には多くの場合,retinoschisis(網膜分離症)は網膜神経線維層(retinalneuro.berlayar:RNFL)から内網状層(innerplexiformlayer:IPL),外網状層(outerplexiformlayer:OPL),外顆粒層(outernuclearlayer:ONL)から視細胞層に発生し,OPLについては若年性網膜分離症で生じやすく,その他の部位は,網膜上膜(epiretinalmembrane:ERM)など硝子体網膜界面の異常,加齢に伴う周辺網膜の退行性分離,強度近視に伴う網膜分離などで発生しやすい.検眼鏡による眼科診察では網膜分離はしばしば見落とされてしまうため,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)での断層画像による診断が不可欠である.本稿では,さまざまな原因により生じる網膜分離症をまとめたうえで,治療や予後における違いについて概説する.I先天網膜分離症(X染色体性若年網膜分離症)X染色体性若年網膜分離症(X-linkedjuvenilereti-noschisis:XLRS)は5,000.25,000人に1人の確率で発症するまれな遺伝性硝子体網膜変性疾患で,男児および若年男性の黄斑変性の主たる原因の一つである.網膜の双極細胞,錐体細胞,および桿体細胞から分泌されるretinoschisinを発現するRS1遺伝子の異常が原因であることがわかっており,遺伝形式は性染色体劣性遺伝である.患者は学童期に視力不良を指摘されて眼科を受診する場合が多く,視力障害の程度には幅があるものの,若年者では通常0.2以上であることが多い.XLRSの屈折値は遠視であることが多く,不十分な眼底検査により屈折性弱視と診断されていることも少なくない.XLRSの臨床像は多様性に富むものの,50.70%の患者で車軸状の皺襞を伴う中心窩網膜分離と周辺部網膜分離がみられる(図1).周辺部網膜分離は耳側に好発し,癒合して大きな.胞腔となったうえで,破綻すると内層円孔となる.患者は幼少時からの視力低下と,若年の原因不明の黄斑浮腫として紹介受診されることもあり,注意を要する.画像診断においては,フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)にて血管からの蛍光漏出がみられないこと,OCTにて中心窩のOPLに癒合する不均一な.胞を呈し,傍中心窩のIPLに別の.胞を生じることが特徴である.現在も有効な治療法はなく,希望者には遺伝子検査とカウンセリングを提供する..胞様の分離については,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼が暗点の軽減などのために使用されることもあるが,効果は限定的である.加齢に伴い黄斑部の萎縮は不可逆的に進行するため,障害者手帳の申請や,ロービジョンケアも検討する.黄斑円孔や黄斑部網膜.離を伴う患者では硝子体手術が行われること*HiroyukiTakahashi:東京科学大学眼科学教室〔別刷請求先〕高橋洋如:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京科学大学眼科学教室(1)(55)1730910-1810/26/\100/頁/JCOPYb図1X染色体遺伝性網膜分離症(XLRS)と診断された眼底画像と視野30歳,男性.a,b:中学生の頃より視力低下があったが,原因不明とされていた.進行あり精査希望のために紹介された.右眼(a)と左眼(b)の視力はそれぞれ(0.3×+0.25D)と(0.4×.0.50D)であった.眼底写真では黄斑部の拡大画像で不整な色調を呈する.c,d:右眼(c)と左眼(d)の水平断OCT画像では内網状層(IPL)に分離があり,中心窩の網膜外層は萎縮している().e,f:Goldmann視野計で,右眼(e)と左眼(f)ともに中心暗点があった.網膜電図にてb波陰性化があり,XLRSと診断された.図2乳頭ピット黄斑症の眼底画像50歳,男性,左眼.Ca:コンタクトレンズ作製のための検診時に眼底の異常を指摘されて紹介受診した.左眼の視神経乳頭内部の耳下側に視神経乳頭ピットがみられる.矯正視力は(1.5C×.6.00D)と保たれている.Cb:左眼の蛍光造影検査の後期相.視神経乳頭ピットは後期相で過蛍光を呈している.Cc:左眼の広角COCT水平断画像.後部硝子体は網膜表面と接着しており,Cloque管や硝子体皮質前ポケットの前壁が確認できる().乳頭ピットの付近でも後部硝子体が網膜表面に接着しているのは確認できる().d:視神経乳頭のCvolumeスキャンデータ内の断層像.視神経乳頭ピットと網膜外層が裂隙()を通じて連絡しているのがわかる.d図3強度近視による網膜分離症の眼底画像57歳,男性,左眼.Ca:カラー眼底写真では豹紋状眼底を呈し,視神経乳頭耳側には乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)がある.PPAの耳下部位に接して,円形の網脈絡膜萎縮病変()があり,その中心部には毛様網膜動脈の異所性走行がある().矯正視力は(1.2C×.11.0D)と保たれていて,眼軸はC29.70Cmmである.Cb:水平断のCOCT画像では視神経乳頭脇から中心窩への広がる網膜.離がある.Cc:視神経乳頭を中心とした鉛直断OCT画像.視神経乳頭上方にも網膜.離()が広がっており,乳頭下方には網膜.離に加え,脈絡膜内部の空隙がある().d:視神経乳頭を中心とした水平断COCT画像.乳頭の鼻側には強度近視眼にしばしばみられるCprelaminarschisisがみられる().耳側の視神経乳頭傍の空隙は黄斑部の網膜.離と交通している().図4Nonopticpitretinoschisis(NOPIR)の眼底画像と視野78歳,女性,左眼.Ca:視神経乳頭の下方リムが不明瞭となっており,中心窩の反射は不整である.矯正視力は(0.4),眼軸はC22.3Cmm.眼圧はC15CmmHgである.Cb:蛍光造影検査では乳頭ピットはないことが確認できる.中心窩にわずかなCpoolingがみられる.Cc:OCTの水平断画像.視神経乳頭脇から中心窩まで広がる網膜分離に加えて,中心窩に網膜.離がある().d:視神経乳頭を中心とした水平断のCOCT画像.耳側には網膜神経線維層の分離があり,本症に特徴的である().e:視野検査では全般的な低下に加え,上方有意の感度低下があった.図5図4と同一症例の硝子体手術後の眼底画像と視野a:硝子体手術および内境界膜(ILM).離後C1カ月のCOCT水平断画像.膜.離時の牽引によって中心窩網膜.離は丈が増して増悪している.Cb:手術後C2カ月でのCOCT水平断画像.全層黄斑円孔を発症している.矯正視力は(0.2)に低下した.Cc:再手術後に円孔は閉鎖した.矯正視力は(0.6)程度に回復した.Cd:左眼のカラー眼底写真.脈絡膜血管が明瞭にみられ,網膜の菲薄化の影響が考えられる.Ce:視野検査では上方有意の感度低下の進行があり,眼圧下降点眼を開始された.–

薬剤の副作用としての黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

薬剤の副作用としての黄斑浮腫Drug-InducedCystoidMacularEdema加藤久美子*はじめに薬剤に起因する.胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)は,視機能に影響しうる重要な副作用である.薬剤性CMEの発症機序は必ずしも明らかではないが,薬剤固有の毒性,代謝産物の蓄積,血液網膜関門(blood-retinalbarrier:BRB)の透過性変化や炎症,局所血流の変動などが関与すると考えられている.本稿では,米国食品医薬品局(FoodandDrugAdmin-istration:FDA)の有害事象自発報告システムに収載された報告を用いた最新の解析結果1)に基づき,薬剤性CMEとの関連が示唆された薬剤(表1)を中心に概説する.I薬剤性のCMEを疑う条件と対応薬剤性CMEの鑑別には,炎症性(ぶどう膜炎や周術期),虚血性(糖尿病黄斑症,網膜静脈閉塞症),牽引性(網膜上膜や硝子体牽引)を含む.新規薬剤開始後の数週.数カ月に視機能低下を発症した場合,薬剤性を第一に鑑別にあげる.診察の際には,現在治療中の疾患だけでなく,高血圧・糖尿病などの全身疾患,眼疾患の既往,直近の眼科手術歴の有無を確認する.薬歴は開始時期,用量,投与間隔,併用まで具体的に聴取する.CMEの診断は光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で可能であるが,必要に応じて蛍光造影検査を行って鑑別を進める.薬剤性が疑われる場合は,主治医と連絡をとり一時中止・減量や代替の可否を協議し,眼科では保存的治療〔非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatorydrugs:NSAIDs)点眼±ステロイド点眼〕を基本として経過をみる.再開の可否は所見の消退・必要性・代替の有無を踏まえ個別に判断する.II緑内障点眼とCME1.プロスタノイドFP受容体作動薬プロスタノイドFP受容体作動薬(以下,FP作動薬)(ラタノプロストなど)は,線維柱帯流出およびぶどう膜強膜流出を促進して眼圧を低下させる.副作用としては眼瞼皮膚・虹彩の色素沈着,上眼瞼溝陥凹,睫毛の増毛・肥長などが知られている.FP作動薬使用に伴うCMEに関する臨床報告は国内外に多数あるが,その多くは白内障手術の周術期や,後.破損・前部硝子体切除などバリア破綻眼での発症である.糖尿病網膜症,ぶどう膜炎既往,網膜上膜など素因のある眼で相対的に報告が多い.CMEが生じた場合はFP作動薬を中止し,ステロイド点眼やNSAIDs点眼で対処する.多くは可逆的であるが,再開の可否はリスク因子と代替手段の有無を踏まえ個別に判断する.発症機序:FP作動薬単独の毒性というより,周術期炎症や基礎疾患との相互作用が強いと考えられる.FPシグナルによる細胞骨格・タイトジャンクションの変化を介したBRBの透過性調節異常が関与すると考えられ*KumikoKato:三重大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕加藤久美子:〒514-8507三重県津市江戸橋2-174三重大学医学部眼科学教室(1)(47)1650910-1810/26/\100/頁/JCOPY表1黄斑浮腫を惹起しうる薬剤分類一般名(商品名)効能/作用発症時期・リスク・禁忌など点眼ラタノプロストなど(キサラタンなど)緑内障・高眼圧症治療薬FP受容体作動薬周術期・バリア破綻眼(後.破損など)およびぶどう膜炎でリスク上昇低リスク眼ではまれオミデネパグイソプロピル(エイベリス)緑内障・高眼圧症治療薬選択的EP2受容体作動薬無水晶体眼,眼内レンズ挿入眼では使用禁忌タフルプロストとの併用は禁忌内眼手術既往眼でも要注意パクリタキセル(タキソール,アブラキサン)抗悪性腫瘍薬微小管安定化による有糸分裂阻害開始後2.4カ月で発症タモキシフェン(ノルバデックス)抗乳癌薬エストロゲン受容体拮抗作用投与開始後数カ月.数年で発症高齢,高累積投与,肝疾患でリスク上昇内服エンコラフェニブ(ビラフトビ)抗悪性腫瘍薬BRAF阻害薬投与開始初期に発症ビニメチニブ併用でリスク上昇表現型はSRFが多いシルデナフィル(バイアグラ)肺高血圧症・勃起不全治療薬PDE5阻害薬投与開始初期に発症表現型はSRFが多いフィンゴリモド(イムセラ)シポニモド(メーゼント)多発性硬化症治療薬S1P受容体モジュレーター開始後3.4カ月で発症糖尿病,ぶどう膜炎ではリスク上昇注射薬IFN(アボネックス,ベタフェロン,ペガシス,ベスレミ,スミフェロン)多発性硬化症の再発予防C型肝炎,B型肝炎のウイルス血症治療真正多血症治療Ⅰ型IFN受容体作動薬→JAK/STAT活性化開始後数週.数カ月で発症網膜出血や網膜白斑などの虚血性変化に続発するCME高血圧や糖尿病ではリスク上昇眼内投与セフロキシム(Aprokam)白内障術後の術後眼内炎予防第二世代セフェム,細胞壁合成阻害投与直後に発症高用量でCMEのリスク上昇国内未承認BRAF:B-rafproto-oncogene,serine/threonine,PDE5:phosphodiesterasetype5,S1P:sphingosine-1-phosphate,IFN:interferon,JAK:januskinase,STAT:signaltransducerandactivatoroftranscription,SRF:subretinal.uid(網膜下液),CME:cystoidmacularedema(.胞様黄斑浮腫)-右眼左眼図1パクリタキセルによる黄斑浮腫上段:初診時の眼底写真.明らかな異常を認めない.中段:初診時のOCT.両黄斑浮腫を認めた.下段:パクリタキセル中止後C1カ月後のOCT.黄斑浮腫は消失した.右眼左眼図2タモキシフェンによる黄斑浮腫上段:網膜色素上皮(RPE)が萎縮し,脈絡膜大血管の透見を認める.中段:初診時のOCT.両眼の網膜内に.胞を認めた.下段:タモキシフェン中止後C1年目のOCT..胞病変は消失した.3.PDE5阻害薬ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)5阻害薬(シルデナフィル)はCNO-cGMP経路を増強し平滑筋弛緩・血管拡張をもたらす.肺高血圧症や勃起不全の治療薬として用いられる.全身副作用として,頭痛,ほてり,胃部不快,鼻閉などがある.眼副作用としては,CME,視覚異常が報告されている.PDE5阻害薬に起因するCCMEの報告は少ない.発症時期は投与初期.数週が多いが,数年後に発症したという遅発例もある.CMEだけではなく,漿液性CSRFを認めることがある.FAでもインドシアニングリーン蛍光造影(indocyanineCgreenangiography:IA)でも血管充盈が遅延する.FAでは軽微な点状の蛍光漏出を認めることがある8).多くは中止で改善するが,再投与で再発する例がある.必要性とリスクを秤にかけて再導入可否を判断する.既存の黄斑疾患や内眼手術後早期では観察間隔を短くする.発症機序:NO-cGMP経路の賦活化に伴う脈絡膜循環変化とCBRB調節異常が想定される.C4.BRAF阻害薬B-RafCproto-oncogene,Cserine/threonineCkinase(BRAF)阻害薬(エンコラフェニブ)は,BRAFCV600のキナーゼ活性を選択的に阻害し,腫瘍細胞の増殖シグナルを低下させ,アポトーシスを誘導する.根治切除不能な悪性黒色腫や甲状腺癌の治療に用いられる.通常,Cmitogen-activatedCproteinCkinasekinase(MEK)阻害薬(ビニメチニブなど)との併用で用いられる.全身副作用として,疲労,消化管症状(悪心,下痢,嘔吐,腹痛),関節痛,発疹などが多く報告されている.眼副作用はCSRFが中心で,FA漏出は乏しく,多くは一時休薬・減量で速やかに改善する(図3).発症頻度は約C20%と報告されている9).MEK阻害薬併用下で発現頻度が高まるため,開始早期の自覚症状の有無にかかわらずCOCTで評価し,症候性・所見高度例では腫瘍内科と協議のうえレジメン調整を行う.発症時期:投与初期(数日.数週)に出現する.発症機序:RPEのタイトジャンクションやポンプ機能の障害により,非炎症性にCSRFを発症すると考えられる.C5.S1P受容体モジュレータースフィンゴシンC1リン酸(sphingosine-1-phosphate:S1P)受容体モジュレーター(フィンゴリモド/シポニモド)は末梢リンパ球の再循環を抑制し,多発性硬化症の再発を抑える疾患修飾薬である.全身副作用として,初回投与時の徐脈,房室ブロック,リンパ球減少,肝機能障害などが報告されている.眼副作用はCCMEであり,FAでは黄斑部で蛍光色素の漏出を認める.休薬により改善する例が大半である.発症頻度は約C1%と報告されているが,糖尿病やぶどう膜炎既往でリスクが上昇する.臨床では,開始前に眼底写真+OCTでベースラインを取得し,開始後3.4カ月に再評価,その後も症状に応じて随時フォローする.発症時期:開始後3.4カ月が多い.発症機序:S1Pシグナル低下が内皮細胞骨格・タイトジャンクションの制御を乱し,BRB透過性を上げることがCCME発現に関与すると考えられている.C6.免疫調節薬(インターフェロンb製剤)インターフェロン(interferon:IFN)はCI型CIFN受容体を介してヤヌスキナーゼ(Januskinase:JAK)/シグナル伝達兼転写活性化因子(signaltransducerandacti-vatorCoftranscription:STAT)を活性化し,ウイルス複製と蛋白合成を抑制することでウイルス排除を促進する.多発性硬化症では,抗炎症性サイトカインの増加と抑制系CT細胞への転化,接着分子低下により血液脳関門の透過性が下がり,炎症細胞の中枢侵入が抑えられることで再発と炎症活動性を低下させる.全身副作用は,インフルエンザ様症状(発熱,悪寒,倦怠感,筋痛),頭痛,消化器症状である.IFN製剤の眼合併症のメインはインターフェロン網膜症であり,軟性白斑や点状出血などの微小血管虚血所見を呈する.CMEはこれに続発する二次性所見として出現しうる.糖尿病・高血圧を有する患者でリスクが高く,投与前の眼底評価と投与中の定期フォローが望ましい.発症時は減量または中止を第一に,保存的治療を併(51)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C169右眼左眼図3B-rafproto-oncogene,serine/threoninekinase(BRAF)阻害薬とmitogen-activatedproteinkinasekinase(MEK)阻害薬による漿液性網膜.離と黄斑浮腫BRAF阻害薬とCMEK阻害薬開始後C1日目に霧視を訴えて眼科を受診した.上段:初診時に検眼鏡的には明らかな異常を認めなかった.中段:初診時のCOCTでは両眼に漿液性網膜.離を,左眼に黄斑浮腫を認めた.下段:エンコラフェニブ・ビニメチニブ中止後C10日目のOCT.休薬により速やかに改善した.—

網膜硝子体界面疾患に伴う黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

網膜硝子体界面疾患に伴う黄斑浮腫MacularEdemainVitreoretinalInterfaceDiseases伊藤逸毅*はじめに網膜上膜などの網膜硝子体界面疾患においてCintraretC-inalcysts(網膜内.胞)がみられることがある.最近,この網膜内.胞にはぶどう膜炎でみられるような網膜血管からの漏出によって発生するものだけでなく,それとは異なり非滲出性に内顆粒層に形成されるCmicrocyst(微小.胞)もある,といわれるようになってきた.本稿では,最近の報告に基づいて,網膜硝子体界面疾患における網膜内.胞について概説する.CI微小.胞性黄斑浮腫最近,種々の疾患において光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)により傍中心窩の内顆粒層の小さな網膜内.胞,微小.胞が検出されるようになってきた1).当初は多発性硬化症による視神経炎や視神経脊髄炎などの視神経疾患での報告2)であったが(図1),そのほかに緑内障3,4),糖尿病網膜症5),網膜上膜6)でも報告されている.微小.胞の大きな特徴は,内顆粒層にあること,.胞のサイズは比較的均一で小さいこと,およびフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)で蛍光漏出を示さない,つまり,網膜血管からの滲出により発生したものではない,ということである.その発生原因には諸説あげられているが,有力視されている原因仮説の一つは,Muller細胞が存在する内顆粒層に微小.胞が形成されることから,Muller細胞障害が微小.胞性黄斑浮腫(microcysticCmacularedema:MME)の原因である,というものである.Muller細胞はそのアクアポリンC4(aqua-porin-4:AQP4)チャンネルにより,網膜内の水やイオン濃度の恒常性の調整にかかわることから7),種々の疾患によるCMuller細胞障害がCMMEをきたす,という仮説である.この仮説では,視神経疾患においては経シナプス的に神経節細胞の逆行性変性が起き,これがCMuller細胞障害を引き起こす“retrogrademaculopathy”の一環という説が考えられている.Retrogrademaculopathyは逆行性に起きる神経節細胞層の菲薄化,内顆粒層の肥厚,さらに一部の症例でみられるCMMEがおもな特徴である.そのほかに,硝子体牽引により神経節細胞やCMuller細胞の障害が起きてCMMEが発症する,という仮説も検討されている1).MMEの研究の進展により,これまでは網膜の.胞性変化はすべて滲出性の.胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)でひとまとめに表現されていた病名が,この非滲出性の内顆粒層の微小.胞については,MMEと滲出性のCCME(図2)とは区別されるようになってきている.MMEの所見名は未だ確定的なものではなく,網膜厚が正常範囲内あるいは菲薄化した状態でもCMMEがあるときもあるためにCedema(浮腫)をつけずにただmicrocyst(微小.胞),あるいはCinnerCnuclearClayercysticCchanges(内顆粒層.胞性変化),microcystoidCmacularchange(黄斑部微小.胞様変化),microcysticCmacularchange(黄斑部微小.胞性変化),実際の.胞ではないためCmicropseudocystとよばれることもある.*YasukiIto:藤田医科大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕伊藤逸毅:〒470-1101愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪C1-98藤田医科大学医学部眼科学教室(1)(41)C1590910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1視神経炎後の視神経萎縮眼の微小.胞性黄斑浮腫(MME)a:患眼COCT垂直スキャン.黄斑全体で神経線維層,神経節細胞層が菲薄化し,内顆粒層が厚くなっている.内顆粒層内にCMME()を認める.Cb:正常眼COCT垂直スキャン.患眼と正常眼で比べると層厚の変化がよくわかる.c:患眼のフルオレセイン蛍光造影.非滲出性CMMEでは蛍光漏出は認められない.bc図2ぶどう膜炎による滲出性.胞様黄斑浮腫(CME)a:OCT断層像.網膜の内顆粒層()に小さな.胞腔,Henle層.外網状層(★)に大きな.胞腔が認められる.漿液性網膜.離もみられる(.).b:フルオレセイン蛍光造影.滲出性CCMEでは蛍光色素の漏出,貯留がみられる.c:内顆粒層から外網状層のCOCTenface画像.花弁状(petaloidpattern)に.胞が広がっている.C-b図3術前のMMEが術後に消失した網膜上膜(ERM)の症例a:術前COCT水平スキャン.網膜表面にCERM(.),内顆粒層にCMME()を認める.b:術後COCT水平スキャン.ERM,MMEともに消失している.図5牽引性ERMの症例a:OCT9Cmm水平スキャン.網膜表面にCERM(),Henle層に.胞腔(.)を認める.b:3×3CmmOCT内顆粒層.外網状層のCenface画像.Henle層に沿って形成された.胞腔がスポークホイール状に広がっている.図4術前のMMEが術後も消失しなかった緑内障併発ERMの症例a:術前COCT垂直スキャン.網膜表面にCERM(),内顆粒層にCMME(.)を認める.緑内障のためにCERM直下の神経線維層および神経節細胞層が菲薄化しているのがわかる.b:術後COCT垂直スキャン.ERMは除去されているが,MME(.)は残存している.growthfactor:VEGF)薬が有効である.一方で,MMEは上述のように非滲出性,非炎症性であるため,これらの薬剤では効果が出にくい.MMEの.胞サイズはCCMEに比べればかなり小さくCCMEのように直接的な網膜障害を起こすことはほとんどないので,一般的に積極的な加療は必要とされず,経過観察が基本である.CIII牽引性.胞様黄斑浮腫ERMが中心窩周囲に形成されて収縮し中心窩を遠心性に牽引すると,中心窩に層状黄斑円孔が形成され,その周囲のCHenle層には.胞腔が形成される.また,黄斑牽引症候群では硝子体が後部硝子体.離に伴って中心窩網膜を持ち上げても同様に傍中心窩のCHenle層に.胞腔が形成される.これは牽引によって形成された.胞腔であるため,牽引性.胞様黄斑浮腫(牽引性CCME),あるいはCtractionalcystoidmaculopathy(牽引性.胞様黄斑症)とよばれる8,17).この概念には硝子体やCILM,網膜動脈血管の牽引で発症するCmyopicfoveoschisis(近視性黄斑分離症)も含まれる.牽引性CCMEは牽引により発症し,MMEと同様に基本的に非滲出性の.胞であるため,滲出性を示唆する用語のCCMEを用いることは混乱をきたす用法であるが,現在のところ呼称のコンセンサスはできていないため,本稿では牽引性CCMEを用いる.牽引性CCMEは基本的に非滲出性であるが,牽引が網膜血管障害,つまり,血液網膜関門の障害を起こすこともあるため,成因には滲出性の要素が加わることもある.この鑑別にはCFAが必要である.牽引性CCMEの.胞腔の分布は滲出性CCMEでみられる花弁状と異なり,spoke-wheel(スポークホイール状)である.これは.胞腔がCHenle線維に沿って形成されるためと推測されている(図5).牽引性CCMEでは牽引が原因であるため,治療は牽引の除去である.牽引性CERMならCERMおよびCILMの除去,黄斑牽引症候群では牽引の解除である.文献1)CarlaCMM,CRipaCM,CCrincoliCECetal:TheCspectrumCofCmicrocysticmacularedema:pathogeneticinsights,clinicalentities,CandCfunctionalCprognosis.CSurvCOphthalmolC70:C982-994,C20252)GelfandCJM,CNolanCR,CSchwartzCDMCetal:MicrocysticCmacularCoedemaCinCmultipleCsclerosisCisCassociatedCwithCdiseaseseverity.BrainC135(Pt6):1786-1793,C20123)Wol.B,AzarG,VasseurVetal:MicrocysticchangesintheCretinalCinternalCnuclearClayerCassociatedCwithCopticatrophy:aCprospectiveCstudy.CJCOphthalmolC2014:C395189,C20144)BrazerolJ,IlievME,HohnRetal:RetrogrademaculopaC-thyCinCpatientsCwithCglaucoma.CJCGlaucomaC26:423-429,C20175)ForteR,CennamoG,FinelliMLetal:Retinalmicropseu-docystsCinCdiabeticretinopathy:prospectiveCfunctionalCandanatomicevaluation.OphthalmicResC48:6-11,C20126)GovettoCA,CFranconeCA,CLucchiniCSCetal:MicrocystoidCmacularedemainepiretinalmembrane:notaretrogrademaculopathy.AmJOphthalmolC272:48-57,C20257)SpaideRF:RetinalCvascularCcystoidCmacularedema:Creviewandnewtheory.RetinaC36:1823-1842,C20168)GovettoCA,CSarrafCD,CHubschmanCJPCetal:DistinctiveCmechanismsCandCpatternsCofCexudativeCversusCtractionalCintraretinalCcystoidCspacesCasCseenCwithCmultimodalCimag-ing.AmJOphthalmolC212:43-56,C20209)GovettoA,SuD,FarajzadehMetal:Microcystoidmacu-larCchangesCinCassociationCwithCidiopathicCepiretinalCmem-branesCinCeyesCwithCandCwithoutglaucoma:clinicalCinsights.AmJOphthalmolC181:156-165,C201710)ShiodeY,MorizaneY,ToshimaSetal:Surgicaloutcomeofidiopathicepiretinalmembraneswithintraretinalcysticspaces.CPLoSOne11:e0168555,C201611)的場亮,森實祐基:網膜上膜・黄斑円孔.RetinCMedC13:123-128,C202412)LeeCDH,CParkCSE,CLeeCS:MicrocysticCmacularCedemaCandCcystoidCmacularCedemaCbeforeCandCafterCepiretinalCmembranesurgery.RetinaC41:1652-1659,C202113)MurataCN,CToganoCT,CMiyamotoCDCetal:ClinicalCevalua-tionofmicrocysticmacularedemainpatientswithglauco-ma.Eye(Lond)C30:1502-1508,C201614)PeckCT,CSalabatiCM,CMahmoudzadehCRCetal:EpiretinalCmembraneCsurgeryCinCeyesCwithglaucoma:visualCout-comesCandCclinicalCsigni.canceCofCinnerCmicrocystoidCchanges.OphthalmolRetinaC6:693-701,C202215)CamposCA,CMotaCC,CCruzCHCetal:PseudophakicCmacularedema:reviewCandCnewCinsightsConCtreatmentCandCpro-phylaxis.CSurvOphthalmol(inpress):https://doi.Corg/10.1016/j.survophthal.2025.11.00116)SchaubF,AdlerW,EndersPetal:Preexistingepiretinalmembraneisassociatedwithpseudophakiccystoidmacu-larCedema.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC256:909-917,C201817)GaudricA,AudoI,VignalCetal:Non-vasogeniccystoidmaculopathies.ProgRetinEyeResC91:101092,C2022(45)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C163

網膜色素変性とその他の網膜変性疾患に伴う 黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

網膜色素変性とその他の網膜変性疾患に伴う黄斑浮腫CystoidMacularEdemaAssociatedwithRetinitisPigmentosaandOtherRetinalDystrophies大石明生*はじめに網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)は,遺伝的な異常により視細胞が進行性に変性・脱落する疾患群である.一般に症状は夜盲や求心性視野障害から始まり,中心視野は後期まで保たれる.RPE65遺伝子の異常による一部の患者に対しては遺伝子治療が承認されているが,これも障害された視細胞を回復するものではなく,RPE65遺伝子と関連しない大多数の患者に対してはそもそも有効な治療がない.一方で,RPでは合併症として白内障や.胞様黄斑浮腫(cystoidCmacularedema:CME)を生じることがある.これらの合併症は治療介入の可能性があること,後期まで保たれる中心視野に影響することから臨床上重要である.本稿では,RPに伴うCCMEを中心に,他の網膜変性疾患に関連する黄斑所見について概説する.CI有病率,原因遺伝子など上記のように,RPは周辺部から網膜が障害され,黄斑部は比較的後期まで保たれる疾患であるが,黄斑部にも変化をきたすことはまれではない.既報では,細かいものまで含めれば患者の最大半数程度にCCMEが生じるとされている1)(図1).一方で,このCCMEは網膜静脈閉塞症や糖尿病黄斑症に伴うものと比較すると,.胞腔が内顆粒層に留まることも多く,視機能への影響は限定的なことも多い.たとえば,RPやCUsher症候群(Ushersyndrome:USH)でCCMEのある眼とない眼を単純に比較すると視力は同等,またはCCMEのない眼のほうがむしろ悪い傾向である2,3).これは,一定以上網膜萎縮が進行するとCCMEが生じにくくなる,つまりCCMEが存在することが,網膜組織がある程度保たれていることを示す指標になっていることが一つの理由と考えられる.また,CMEがある眼のみに限っても網膜厚は視力とは直接相関せず,重要なのはCellipsoidCzone(EZ)の状態である4).さらに,USHでC5年間経時的に変化をみた検討では,EZの障害の速度もCCMEの有無による差がなかったとされている3).このように,すべてのCMEが積極的な治療の対象になるわけではないということには留意しておく必要がある.RPはさまざまな原因遺伝子によって引き起こされること,それぞれの遺伝子のおもな働きが異なることを考えると,原因遺伝子によってCCMEの起こりやすさが異なっても不思議はない.最近まで特定の原因遺伝子とCMEの関連を報じた研究は乏しかったが,原因遺伝子の特定されたCRP-CME179人を扱った研究で,顕性遺伝を呈するCRHO,PRPF8,PRPF3でCCMEの頻度が高かった(58.75%)一方で,X染色体連鎖性のCRP2やRPGRでは低かった(3.9%)とされている5).他の報告でも,RHOを含む顕性遺伝の遺伝子でCCMEが多く,X染色体連鎖性のCRP2やCRPGRで少ないという傾向は認められている6).ただし,この結果を解釈するには考慮すべき点もある.上記のように,網膜萎縮が進行するとCCMEを認めなくなる.一般的にCX染色体連鎖性*AkioOishi:長崎大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕大石明生:〒852-8501長崎市坂本C1-7-1長崎大学医学部眼科学教室(1)(35)C1530910-1810/26/\100/頁/JCOPYab図1網膜色素変性(RP)に伴う.胞様黄斑浮腫(CME)の光干渉断層計(OCT)所見aのような内顆粒層に少しだけ.胞腔がある症例は少なくない.このような症例は治療の対象にはならない.Cbのようにはっきりした.胞腔があってもCellipsoidzone(EZ)が保たれていれば,僚眼と視力の差がないといったことはしばしば認められる.図2RPのある眼に加齢黄斑変性(AMD)と黄斑部新生血管(MNV)を生じた例RP眼でもCAMD発症により,またはCRPの合併症としてMNVを生じることがある.Ca:右眼初診時のCOCT所見.この写真のみでは一見わかりにくいが,中心部のみしか外顆粒層が残っておらず,眼底所見とあわせCRPとそれに併発したCAMDの診断となった.左眼はCCMEを伴っていた.Cb:この症例では右眼に抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬による治療を行い,視力はC0.2からC0.3に改善した.Cc:CMEを伴う左眼も視力は0.3であった.図3若年性網膜分離症の症例OCTで内顆粒層に連なる特徴的な網膜分離所見を認める.この症例では下方周辺部にも分離をきたしていたが(↓),幸い内層のみの分離で網膜.離には至っておらず,経過をみることとなった.図4RPに伴うCMEに対して炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)の内服および点眼を行った症例CMEが増悪し,視力がC0.6からC0.4まで低下,それまで読めていた新聞が読めなくなってきたとの訴えがあった.Ca:アセタゾラミド内服によってCCMEは改善し,視力もC0.6まで戻り新聞が読めるようになった.Cb:腎機能低下のため使用を中断するとCCMEが再発し視力もC0.4に悪化した.Cc:ブリンゾラミド点眼薬C1日C2回を試したが効果がなく,1日C5回まで回数を増やしたところ改善を認めた.Cd:視力はC0.4で変わらなかったが,また新聞が読めるようになった.が,とくに長期使用では副作用が問題になる.また,一度よくなっても再発はまれではない(図4).C2.ステロイド治療ステロイドの内服や点眼は一般的に効果が乏しい.炎症の関与が大きそうな患者では,トリアムシノロンTenon.下注射,海外ではデキサメタゾンインプラントなどが用いられることがあり,有効とする報告もある.ただし,眼圧上昇や白内障などの副作用もあり,長期の使用には問題がある.C3.抗VEGF療法一部の施設から抗CVEGF薬を使用して効果があったとする報告がある.しかし,RPに伴うCCMEではVEGF過剰発現は主因でなく,VEGFの神経栄養因子としての側面を考えると,これを阻害することの潜在的な害もありうる.高額な薬剤であり,硝子体内注射という侵襲的な投与経路もあわせ,通常は推奨されない.C4.その他の治療グリッドレーザー,閾値下レーザー,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatoryCdrugs:NSAIDs),硝子体手術,ルテインなどに関しての報告もあるが8),評価は定まっていない.とくに,レーザーや硝子体手術など侵襲的な手技については非常に慎重な判断が望まれる.CVIまとめRP患者のC10.30%に黄斑浮腫を認め,可逆的視力低下要因となりうる.主病態はCMuller細胞障害とCRPEポンプ機能低下によるものと考えられており,眼科でよく問題になる血管からの漏出によるものとは異なる.診断はおもにCOCTによるものとなり,治療効果の判定にも用いる.治療はCCAIが第一選択だが,適応外である.治療は形態的,機能的な反応をみながら行う.そもそも視機能にあまり影響していないこともあり過剰治療は避けるべきである.文献1)LiewCG,CStrongCS,CBradleyCPCetal:PrevalenceCofCcystoidCmacularoedema,epiretinalmembraneandcataractinreti-nitispigmentosa.BrJOphthalmolC103:1163-1166,C20192)MakiyamaY,OishiA,OtaniAetal:Prevalenceandspa-tialdistributionofcystoidspacesinretinitispigmentosa:CinvestigationCwithCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.RetinaC34:981-988,C20143)ArrigoCA,CAragonaCE,CAntropoliCACetal:TheCimpactCofCcystoidCmaculopathyCinCUSH2ACretinitispigmentosa:aCretrospective5-yearanalysis.RetinaC45:1959-1966,C20254)OishiA,OtaniA,SasaharaMetal:Photoreceptorinteg-rityandvisualacuityincystoidmacularoedemaassociat-edCwithCretinitispigmentosa.CEye(Lond)C23:1411-1416,C20095)TestaFKaraliM,BocciaRetal:CystoidmacularedemainCnon-syndromicCretinitispigmentosa:associationsCwithCcausativeCgenesCinCaClargeCcohort.CInvestCOphthalmolCVisCSciC66:5,C20256)AsbothB,SanroccoA,BeszterceiBetal:Cystoidmacu-larClesionsCinCinheritedCretinaldiseases:prevalence,Cchar-acteristics,andgeneticassociationsinahungariancohort.Genes(Basel)C16:1212,C20257)ReichenbachCA,CWurmCA,CPannickeCTCetal:MullerCcellsCasCplayersCinCretinalCdegenerationCandCedema.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC245:627-636,C20078)StrongCS,CLiewCG,CMichaelidesM:RetinitisCpigmentosa-associatedCcystoidCmacularoedema:pathogenesisCandCavenuesCofCintervention.CBrCJCOphthalmolC101:31-37,C20179)HeckenlivelyCJR,CJordanCBL,CAptsiauriN:AssociationCofCantiretinalCantibodiesCandCcystoidCmacularCedemaCinCpatientsCwithCretinitisCpigmentosa.CAmCJCOphthalmolC127:565-573,C1999(39)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C157

ぶどう膜炎黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

ぶどう膜炎黄斑浮腫UveiticMacularEdema岩橋千春*はじめにぶどう膜炎は,虹彩・毛様体・脈絡膜からなるぶどう膜に炎症が生じた病態である.ぶどう膜炎の合併症のうち,視力低下につながる疾患としては,白内障,緑内障,硝子体混濁,ぶどう膜炎黄斑浮腫(uveiticmacularedema:UME),網膜上膜(epiretinalmembrane:ERM)形成などがある1).UMEはぶどう膜炎の視力障害の原因としてもっとも頻度が高く,中間部,後部,汎ぶどう膜炎の約C40%に発症すると報告されている2).2019年に報告された国際的な文献レビュー論文では,UMEは高齢者,中間部ぶどう膜炎や汎ぶどう膜炎,罹病期間が長い場合に多くみられると報告されている3).CI病態ぶどう膜炎による眼内炎症により,サイトカインなどの炎症性メディエーターが誘導され,網膜組織の恒常性を維持するために重要な血液網膜関門(blood-retinalbarrier:BRB)の破綻が生じる.BRBは網膜血管内皮細胞のタイトジャンクションによる内側CBRBと,網膜色素上皮細胞より構成される外側CBRBからなり,これらが破綻すると,血管透過性亢進により血漿成分あるいは間質液が漏出し,網膜内あるいは網膜下に貯留して黄斑浮腫(macularedema:ME)となる.UMEでは,インターロイキン(interleukin:IL)-6,IL-8,腫瘍壊死因子(tumorCnecrosisfactor:TNF)C-aの血清および前房水中での上昇4)や,可溶性CIL-6受容体,BcellactivatingfactorbelongtotheTNFfamilyの硝子体液中での上昇5)などが報告されており,UMEに関与する炎症メディエーターである可能性がある.CIIMultimodalimagingUMEの診断には,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)による検査が非侵襲で検出可能であり,再現性が高く高感度であるため,臨床で広く用いられている6).UMEは形態から網膜内に低反射の.胞様の領域が存在するCcystoidspaces(.胞様網膜浮腫),小さな低反射域を伴う網膜厚の増加と網膜層がスポンジ状に見える外観を呈するびまん性網膜肥厚(di.usethickening),漿液性網膜.離(serousCretinalCdetach-ment:SRD)などに分類される3).これらは単独でみられることもあれば,同時に存在することもあり,視機能予後や治療反応性に関連をもつ可能性が示唆されている7).網膜厚測定による定量的な評価も治療効果の判定に有用であり,黄斑マップ解析をみると浮腫が改善している様子を捉えるのにわかりやすい(図1).フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)は侵襲的な検査ではあるが,黄斑部の血管漏出,血管炎,脈絡膜新生血管,虚血領域の検出に有用である(図2).また,MEを呈する他疾患との鑑別にも有用である.CIII治療UMEの治療にあたっては,まず診断が重要である.*ChiharuIwahashi:近畿大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕岩橋千春:〒589-8511大阪狭山市大野東C377-2近畿大学医学部眼科学教室(1)(29)C1470910-1810/26/\100/頁/JCOPYabc図1黄斑マップ解析カラーマップ表示により経時的な変化が捉えやすい.a:治療前.b:トリアムシノロンCTenon.下投与C2週間後.Cc:トリアムシノロンCTenon.下投与C2カ月後.図2フルオレセイン蛍光造影網膜血管からの色素漏出,視神経乳頭過蛍光,黄斑部の花弁状の色素貯留がみられる.図3梅毒性ぶどう膜炎による黄斑浮腫a:前医でリアムシノロンCTenon.下投与後.黄斑浮腫と軽度の硝子体混濁がみられる.Cb:抗菌薬内服治療後(aのC2カ月後).黄斑浮腫と硝子体混濁はともに改善している.図4トリアムシノロンTenon.下投与前後のOCT像a:治療前..胞様網膜浮腫と軽度の漿液性網膜.離がみられる.b:治療C2カ月後..胞様黄斑浮腫と漿液性網膜.離の改善がみられる.図5硝子体手術を行ったぶどう膜炎黄斑浮腫a:手術前.網膜上膜による牽引がみられる.硝子体混濁により画像が不鮮明である.b:手術後.黄斑浮腫の改善がみられる.ある.抗CTNF-a薬はCBehcet病によるCUMEに対しては有効であったが,サルコイドーシスによるCUMEに対しては有効でなかったという報告がわが国でなされている22).また,わが国では保険適用外であるが,抗CIL-6薬であるトシリズマブの有効性と安全性の評価を目的として米国で行われた前向き試験であるCSTOP-UveitisStudyでは,トシリズマブのC4週毎静脈内投与により治療開始6カ月後に中心窩網膜厚の減少および視力改善が得られたこと,UMEだけでなく,硝子体混濁も約半数の症例で改善したことが報告されている23).また,Behcet病によるCUMEに対する抗CTNF-a薬とトシリズマブの治療効果を比較した後ろ向き試験では,両薬剤ともに有効であるが,抗CTNF-a薬に抵抗性の症例でトシリズマブが有効であったとの報告もある24).わが国でも今後の保険適用が望まれる.CVIIIその他ERMがある場合にはCUMEに対する薬物治療への反応が悪くなるという報告があることから25),薬物治療以外に硝子体手術によりCERMを除去し,ERMによる牽引を解除することはCUMEの治療となりうる.また,硝子体手術は牽引解除のみならず炎症メディエーターのクリアランスにもつながり,解剖学的な改善は限定的であるが,視力の改善が得られることも報告されている26).UMEに対する硝子体手術は,牽引要素が明確な患者(図5),硝子体混濁が視機能に影響する患者,薬物治療に抵抗する患者で,炎症の十分なコントロールを前提として検討される治療選択肢となる.文献1)JonesNP:TheCManchesterCuveitisclinic:theC.rstC3000Cpatients,2:uveitisCmanifestations,Ccomplications,CmedicalCandCsurgicalCmanagement.COculCImmunolCIn.ammC23:C127-134,C20152)RothovaA,SchultenMSS,Tre.ersWFetal:CausesandfrequencyCofCblindnessCinCpatientsCwithCintraocularCin.ammatorydisease.BrJOphthalmolC80:332-336,C19963)AccorintiM,OkadaAA,SmithJRetal:EpidemiologyofmacularCedemaCinCuveitis.COculCImmunolCIn.ammC27:C169-180,C2019C4)vanCKooijCB,CRothovaCA,CRijkersCGTCetal:DistinctCcyto-kineCandCchemokineCpro.lesCinCtheCaqueousCofCpatientsCwithuveitisandcystoidmacularedema.AmJOphthalmolC142:192-194,C20065)TakedaA,HasegawaE,YawataNetal:Increasedvitre-ousClevelsCofCBCcellCactivationfactor(BAFF)andCsolubleCinterleukin-6CreceptorCinCpatientsCwithCmacularCedemaCdueCtoCuveitisCrelatedCtoCBehcet’sCdiseaseCandCsarcoidosis.CGraefesArchClinExpOphthalmolC260:2675-2686,C20226)KoronisCS,CStavrakasCP,CBalidisCMCetal:UpdateCinCtreat-mentCofCuveiticCmacularCedema.CDrugCDesCDevelCTherC13:667-680,C20197)CicinelliMV,GerosolimaC,ScandalePetal:Clinicalandimagingbiomarkersofresponsetointravitrealdexametha-soneCimplantCinCeyesCwithCnon-infectiousCuveiticCmacularedema.Eye(Lond)C38:910-916,C20248)AllegriCP,CMurialdoCU,CPeriCSCetal:Randomized,Cdouble-blind,Cplacebp-controlledCclinicalCtrialConCtheCe.cacyCofC0.5%CindomethacinCeyeCdropsCinCuveiticCmacularCedema.CInvestOphthalmolVisSci55:1463-1470,C20149)LederCHA,CJabsCDA,CGalorCACetal:PeriocularCtriamcino-loneCacetonideCinjectionsCforCcystoidCmacularCedemaCcom-plicatingCnoninfectiousCuveitis.CAmCJCOphthalmolC152:C441-448.e2,C201110)MaedaCY,CIshikawaCH,CNishikawaCHCetal:IntraocularCpressureCelevationCafterCsubtenonCtriamcinoloneCacetonideinjection;MulticenterCretrospectiveCcohortCstudyCinCJapan.PLoSOneC14:e0226118,C201911)HiranoY,ItoT,NozakiMetal:Intraocularpressureele-vationfollowingtriamcinoloneacetonideadministrationasrelatedCtoCadministrationCroutes.CJpnCJCOphthalmolC53:C519-522,C200912)CallananDG,Je.eGJ,MartinDFetal:Treatmentofpos-teriorCuveitisCwithC.uocinoloneCacetonideimplant:three-yearCclinicalCtrialCresults.CArchCOphthalmolC126:1191-1201,C200813)ThorneCJE,CSugarCEA,CHolbrookCJTCetal:PeriocularCtri-amcinoloneCvsCintravitrealCtriamcinoloneCvsCintravitrealCdexamethasoneimplantforthetreatmentofuveiticmacu-laredema:thePeriOcularvsINTravitrealcorticosteroidsforCuveitcCmacularedema(POINT)trial.COphthalmologyC126:283-295,C201914)YehCS,CKhuranaCRN,CShahCMCetal;PEACHTREECStudyInvestigators:E.cacyandsafetyofsuprachoroidalCLS-TACforCmacularCedemaCsecondaryCtoCnoninfectiousCuve-itis:phaseC3CramdomizedCtrial.COphthalmologyC127:948-955,C202015)WeissCK,CSteinbruggerCI,CWegerCMCetal:IntravitrealCVEGFClevelsCinCuveitisCpatientsCandCtreatmentCofCuveiticCmacularCoedemaCwithCintravitrealCbevacizumab.CEye(Lond)23:1812-1818,C200916)TaylorCSR,CHabot-WilnerCZ,CPachecoCPCetal:IntreocularCmethotrexateCinCtheCtreatmentCofCuveitisCandCuveiticCcys-(33)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C151’C’C-

黄斑浮腫を伴う加齢黄斑変性と鑑別疾患

2026年2月28日 土曜日

黄斑浮腫を伴う加齢黄斑変性と鑑別疾患MacularEdemaAssociatedwithAge-RelatedMacularDegenerationandItsMimics片岡恵子*はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)は脈絡膜から生じた黄斑新生血管(macularneovascularization:MNV)が網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)下に伸展する1型MNV,RPEを穿破し網膜下に進展する2型MNVと,網膜血管から生じた網膜内新生血管が網膜下やRPE下に伸展していく3型MNVがある.病的血管であるMNVは正常な血管と比べ脆弱であり,容易にMNVからの滲出を生じる.MNVからの滲出は.uidの貯留や硬性白斑,出血として眼底写真および光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で捉えることができる.MNVの存在部位やRPEの破綻などから滲出が生じる部位は異なってくるため,病変の広がりをイメージしながら画像を読影するのがポイントである.以下,症例ごとに黄斑浮腫〔網膜内液(intraretinal.uid:IRF)〕を伴うnAMDとその鑑別疾患について画像を読み解いていく.I黄斑浮腫を伴うnAMD①1型MNVはRPE下に存在するので,滲出が生じるとRPE下液(sub-RPE.uid)が生じることが多い.Sub-RPE.uidがめだたずに網膜下液(subretinal.uid:SRF)を生じることもしばしば目にする.1型MNVで黄斑浮腫を伴うことは多くないが,炎症などによりRPEと網膜の癒着が生じると1型MNVからの.uidが癒着部位を通過して直接網膜内へ流入することで黄斑浮腫が生じる.2型MNVはRPE上にMNVが伸展しているため,SRFに加えフィブリンや出血による網膜下高輝度物質(subretinalhyperre.ectivemate-rial:SHRM)がみられることが多い.さらに,MNVが網膜内に伸展したり,MNVと網膜の癒着が生じるとMNVからの.uidは網膜内へ直接流入し黄斑浮腫を生じる.これらをイメージしながら画像を見ていく.図1は,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvas-culopathy:PCV)の症例である.眼底カラー写真で網膜出血や硬性白斑がみられ,活動性が高いことがうかがえる(図1a).OCTでは中心窩を横切る縦方向のスキャンで中心窩下に及ぶSRFと中心窩近傍に黄斑浮腫,つまりIRFがみられる(図1b).OCTのスキャン位置を上方にずらしたスキャンでは黄斑浮腫とSRF,急峻に立ち上がる網膜色素上皮.離(pigmentepithelialdetachment:PED)がみられる.PEDにはノッチと内部にリング状の構造物がみられる(図1c).OCTにおけるリング状の構造物は,ポリープ状病変として特異度の高い所見である1).この時点で視力は右眼(0.8),活動性のあるPCVと診断し,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法を開始した.抗VEGF薬を毎月計7回投与した時点でSRFは消失したが,PEDはまだ大きく(図1e),その後慎重に投与間隔を調整し,抗VEGF薬16回目投与時点のOCTにてPEDは縮小,PED内部のリング状構造物も消失して硬*KeikoKataoka:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕片岡恵子:〒188-8611東京都三鷹市新川6020-2杏林大学医学部眼科学教室(1)(23)1410910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1網膜浮腫を伴うポリープ状脈絡膜血管症の1例a:出血と硬性白斑を伴う橙赤色病変がみられる.b:中心窩を通る縦方向のOCT画像.黄斑浮腫(.)と中心窩下にも網膜下液(SRF)が及んでいる(*).c:カラー眼底写真の矢印に該当する部分のOCTでは,黄斑浮腫(.)とSRF(*)がみられる.急峻に立ち上がる網膜色素上皮.離(PED)はノッチ()を伴い,PED内部には血管腔を示唆するリング状構造物がみられる.d,e:抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬を7回毎月投与後のカラー眼底写真(d)とOCT(e)である.黄斑浮腫とSRFは消失したが,PEDとPED内部のリング状構造物はまだ残存している().f,g:抗VEGF薬16回目の投与時点のカラー眼底写真(f)とOCT(g)である.硬性白斑は減少し(f),黄斑浮腫,SRFは完全に消失し,PEDの丈の減少に加え,内部のリング状構造物やsub-RPE.uidを示唆する低輝度領域は消失している.図2黄斑浮腫を伴う3型黄斑新生血管a:カラー眼底写真では,網膜出血を周囲に伴う淡い赤色病変(.)と大型ドルーゼン(),網膜下ドルーゼン様沈着物(SDD)がみられる.b:中心窩を通る水平スキャンでは黄斑浮腫がみられる(.).c:中心窩を通る垂直スキャンでは中心窩の上方に黄斑浮腫(.)と網膜色素上皮下液(sub-RPE.uid)を伴うPED()がみられる.d:スキャンの位置を中心窩より上方へずらすと,網膜色素上皮(RPE)の断裂(bumpsign)が捉えられる(.).OCTの近赤外線画像上のの部位はaの.と一致する.e:Bumpsignの部位のOCTAのBスキャンでは,RPEの断裂部位に網膜外層から続く血流シグナルがみられる(.).f:抗VEGF療法の1カ月後のOCTでは,網膜浮腫とsub-RPE.uidは消失している.図3黄斑浮腫を伴う慢性中心性漿液性脈絡網膜症の1例a:カラー眼底写真ではRPE障害を示唆する色素異常がみられる.b:中心窩を横切るOCTでは黄斑浮腫と中心窩下にSRFがみられる.c:OCTのスキャンを中心窩より上方へずらすとRPEの欠損部位と,その後方の脈絡膜ではOCTの輝度の上昇がみられる(に挟まれた部位).d:眼底自発蛍光では低蛍光領域があり,RPEの欠損部位と一致する(.).図4毛細血管瘤による黄斑浮腫がみられる陳旧性網膜静脈分枝閉塞症の1例a:カラー眼底写真では硬性白斑()と小さな血管病変がみられる(.).b:中心窩を通る垂直スキャンのOCTでは黄斑浮腫(.)とSRF(*)がみられる.c:中心窩を通る水平スキャンでは黄斑浮腫(.)とSRF(*)に加えて,網膜内にリング上の構造物がみられるが(),PEDはない.d:FAでは視神経乳頭から下耳側に向かう網膜静脈の蛇行と狭細化,上下の網膜静脈の吻合,網膜血管の拡張と大きな毛細血管瘤()がみられる.e,f:毛細血管瘤へ直接光凝固を施行後3カ月のカラー眼底写真とOCTである.硬性白斑は一時的に増加しているが(e),黄斑浮腫およびSRFは消失し,リング状構造物の内腔も消失している()ことから,光凝固が著効したことがわかる.

網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫MacularEdemaAssociatedwithRetinalVascularDiseases長谷川泰司*はじめに網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫の基本病態は,内側血液網膜関門の破綻によって生じる滲出性変化である.そのため,網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫の形態パターンとしては,①網膜内浮腫が単独で存在するパターンと②網膜内の滲出性変化が網膜下にまで及び,網膜内浮腫に加えて漿液性網膜.離が合併するパターンの二つが存在する.つまり,網膜血管疾患に伴う黄斑浮腫では,外側血液網膜関門障害の代表疾患である急性中心性漿液性脈絡網膜症のように漿液性網膜.離が単独で生じるということはない.日々の臨床現場では,検眼眼鏡による眼底検査に加えて光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)やフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)を活用し滲出性所見の確認を行うが,原因となる疾患を探っていく過程で,内側および外側血液網膜関門のどちらが障害されているのか,または両方の障害なのかを常に考え,鑑別診断を行うことが重要となる.今回は代表的な網膜血管疾患である網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)と黄斑部毛細血管拡張症(maculartelangiectasia:MacTel)に伴う黄斑浮腫をとりあげ,鑑別が必要な疾患についても解説する.CIRVOとMacTelに伴う黄斑浮腫の病態RVOは,その閉塞部位によって網膜静脈分枝閉塞症(branchRVO:BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(centralRVO:CRVO)に分類され,BRVOは網膜動静脈交叉部で,CRVOは視神経乳頭篩状板付近で動脈による静脈圧排によって血栓が形成され静脈閉塞を発症すると考えられている.加齢,高血圧,脂質異常症などの動脈硬化がリスクファクターとなるが,CRVOの一部では若年層での発症があり,そのような例では乳頭血管炎や凝固能亢進など内科疾患が背景にある場合がある.日本で行われたCHisayamaCstudyでは,RVOのC40歳以上の有病率はC2.14%と報告されており,その内訳をみるとBRVOはC1.97%,CRVOはC0.17%でCBRVOが約C10倍高い1).BRVOでは,急性期に病変全体から滲出性変化がみられ,OCTでは病変から中心窩にかけて黄斑浮腫が広がることが多い(図1a).BRVO発症からC1年以上経過する陳旧期になると中心窩近傍に毛細血管瘤が生じ,それが原因で黄斑浮腫をきたすことがある.そのような患者では,中心窩近傍に限局する黄斑浮腫の形態をとることが多い(図1b).CRVOに伴う黄斑浮腫は,BRVOのように滲出性変化の分布に偏りがなく黄斑を中心に広がる形態となる(図1c).MacTelは特発性に黄斑部の毛細血管拡張を呈する症候群の総称であり,type1とCtype2がある.MacTelCtype1とCtype2には,FAで中心窩周囲の毛細血管拡張と蛍光漏出が確認されるという共通点があり,毛細血管拡張症というカテゴリーでまとめられているが,それぞれの病態生理はまったく異なっており,別々の疾患であるという点に留意する必要がある.MacTeltype1は,*TaijiHasegawa:東京女子医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕長谷川泰司:〒162-8666東京都新宿区河田町C8-1東京女子医科大学眼科学教室(1)(13)C1310910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫の特徴a:網膜静脈分岐閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫は,病変から中心窩にかけて浮腫が広がり,OCT水平断よりも垂直断でその特徴がわかりやすい.Cb:陳旧性CBRVOに伴う黄斑浮腫(白線化した静脈,)は,中心窩近傍に限局する浮腫となりやすく,毛細血管瘤が原因となることが多い.c:網膜中心静脈閉塞(CRVO)に伴う黄斑浮腫は,黄斑を中心に広がる形態となる.図2黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)type1MacTeltype1は片眼性で,中心窩周囲に毛細血管瘤や毛細血管拡張がみられ,それが原因で黄斑浮腫を生じる.血管変化が耳側縫線をまたいで上下に分布するのが特徴である.抗CVEGF療法を行っても黄斑浮腫はほとんど軽減していない.図3MacTeltype2左眼(Cb)は中心窩耳側の網膜色調が灰色である.Cc,d:FAでは両眼ともに中心窩耳側の毛細血管の拡張と蛍光漏出がみられる.Ce,f:OCT水平断では中心窩耳側のCellipsoidzoneの断裂と内境界膜を前壁としたCinnerlamellarcystとよばれる.胞様変性所見がみられる.f図4アーケード血管外のBRVOと網膜細動脈瘤a~e:アーケード血管外のCBRVOに伴う黄斑浮腫.FA(Cb)では病変全体から旺盛な蛍光漏出がみられる.網膜出血が濃いため,FAよりもCIAのほうが網膜血管を鮮明に確認でき,静脈の充盈遅延(Cc,)と動静脈交叉部位での静脈閉塞(Cd,)がみられる.OCT垂直断(Ce)では外網状層の網膜内浮腫と漿液性網膜.離がみられる.Cf,g:網膜細動脈瘤からの滲出.網膜表層出血と網膜下出血が広がっている.網膜出血が濃いが,IA(Cg)で細動脈瘤が確認できる.OCT垂直断(Ch)では細動脈瘤付近に外網状層の網膜内浮腫があり,黄斑下には丈の高い漿液性網膜.離がみられる.図5高血圧網脈絡膜症a,b:両眼に軟性白斑と硬性白斑.小さな網膜表層出血がみられる.c,d:OCT水平断では,右眼は漿液性網膜.離がみられ,左眼は乳頭黄斑間の網膜内浮腫と黄斑下の漿液性網膜.離がみられる.高血圧の内科治療を自己中断しており,眼科受診時の収縮期血圧はC220CmmHgであった.Ce,f:内科で降圧療法を再開し,1カ月後には滲出性所見は消失している.図6アーケード血管外のBRVOに伴う黄斑浮腫の治療反応パターン(図4の症例)抗CVEGF療法C1カ月後には網膜内浮腫は消失している.しかし,漿液性網膜.離はわずかに増えている.網膜内浮腫の消失は,抗CVEGF療法によって網膜内への新たな滲出が抑制されたためである.漿液性網膜.離が増えたのは,網膜内に存在していた大量の滲出液が黄斑下に移動してきたためと考えられる.その後は無治療で漿液性網膜.離は小さくなり,抗CVEGF療法C3カ月後には漿液性網膜.離は消失した.当科初診時12カ月後図7陳旧性BRVOに伴う黄斑浮腫a~d:当科初診時.a:白線化した血管()がみられ,黄斑に硬性白斑が散在しており,中心窩鼻側に毛細血管瘤()がみられる.b,c:FAでは狭窄し蛇行した静脈枝()があり,その末梢側に毛細血管瘤()がみられる.Cd:OCTでは黄斑浮腫がみられる.前医では複数回の抗CVEGF療法を実施しても,黄斑浮腫の軽減が得られなかった.毛細血管瘤に対して複数回の網膜光凝固を実施し,12カ月後(Ce,f)には毛細血管瘤および黄斑浮腫は消失している.–

糖尿病黄斑浮腫

2026年2月28日 土曜日

糖尿病黄斑浮腫DiabeticMacularEdema野崎実穂*はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は,糖尿病による細小血管障害に起因する血管からの漏出が原因の浮腫であり,視力障害の原因となる1).わが国の糖尿病患者の失明(身体障害者手帳取得)原因のうち,3.6級のいわゆるロービジョンに相当するなかでは,DMEが原因の約3割を占めている2).DMEを正しく診断し,病態に基づいた治療方針を立てることは,失明を防ぐためにも重要である.本稿では,DMEの病態,診断,鑑別診断および治療について述べる.IDMEの病態DMEの有病率は,1型糖尿病で4.2.7.9%,2型糖尿病で1.4.12.8%と報告されている3).また,わが国において大規模保険請求データを用いて行われた調査では,糖尿病患者の約2.4%にDMEが認められていた4).一般的に,糖尿病網膜症の重症度が進行するにつれてDMEの有病率も上昇する.しかし,単純糖尿病網膜症(軽症非増殖糖尿病網膜症)であってもDMEを合併する患者が少なからず存在することは,臨床上注意を要する点である(図1)5).DMEは,慢性的な高血糖により引き起こされる網膜血管内皮細胞障害(網膜血管関門の破綻)からの血管透過性亢進のほかに,毛細血管瘤からの漏出,硝子体牽引,組織の膠質浸透圧の上昇,網膜色素上皮障害(網膜血管関門の破綻),炎症性サイトカインの増加など,複数の病態が関与する多因子性疾患である(図2).IIDMEの診断検眼鏡で認められる黄斑部の網膜肥厚,硬性白斑,点状・斑状出血などがDME診断の手がかりとなるが,浮腫の程度や局在を定量的に評価することは困難である(図3).一方で,光干渉断層計(opticalcoherencetomog-raphy:OCT)は,網膜厚の定量評価や浮腫の局在,形態を客観的に把握できる非侵襲的検査であり,現在のDME診療において不可欠な検査法といえる.OCTにより,中心窩を含む浮腫(center-involvedDME:CI-DME)(図3)と,中心窩を含まない浮腫(non-center-involvedDME:non-CI-DME)(図4)の分類が可能となり,治療開始の判断に有用である1).EarlyTreat-mentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)では,網膜肥厚部位と硬性白斑の部位から,治療を開始しない場合視力が低下する浮腫をclinicallysigni.cantmacularedema(CSME,わが国の診療ガイドラインでは「視力をおびやかす浮腫」1))と定義しており,non-CI-DMEでCSMEは局所凝固のよい適応とされている(図4)6).また,OCTでは,スポンジ状網膜肥厚,.胞様黄斑浮腫,漿液性網膜.離など,DMEの形態的特徴を評価できるほか,硝子体黄斑牽引や網膜上膜(epiretinalmembrane:ERM)などの硝子体網膜界面異常の有無も同時に確認できる(図3,4).また,OCTで観察できる網膜内層構造の障害(disorganizationofretinalinner*MihoNozaki:名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科・レーザー治療センター〔別刷請求先〕野崎実穂:〒464-8547名古屋市千種区若水1-2-23名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科・レーザー治療センター(1)(3)1210910-1810/26/\100/頁/JCOPY糖尿病黄斑浮腫を有する患者の割合(%)100777562503925180軽症非増殖中等症非増殖重症非増殖増殖糖尿病網膜症糖尿病網膜症糖尿病網膜症糖尿病網膜症図1糖尿病網膜症重症度別の糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する図2糖尿病黄斑浮腫(DME)の病態患者の割合DMEは多因子疾患である.単純糖尿病網膜症(軽症非増殖糖尿病網膜症)であってもDMEを合併する症例は存在する.(文献5より改変引用)-cd図3中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)73歳,男性.a:カラー眼底写真では,網膜出血,硬性白斑が黄斑部にみられる.b:OCTmapでは,網膜の肥厚部位が中心窩を含んでおり,CI-DMEと判定できる.c:OCTBスキャンでは,網膜上膜を伴った.胞様黄斑浮腫を認める.d:中心網膜厚(ILM-RPE)は640μmである.図4中心窩を含まない浮腫(non-CI-DME)78歳,女性.左眼視力は(0.8)と比較的良好である.a:カラー眼底写真では黄斑耳側に輪状に硬性白斑が沈着し,その中心に網膜出血を認める.b:OCTmapでは,網膜肥厚部位は中心窩にかかっていない.c:OCTBスキャンでは,中心窩下に漿液性網膜.離と,黄斑耳側に網膜肥厚,高輝度点を認める.中心窩から1乳頭径以内にある1乳頭径大以上の網膜肥厚がみられる黄斑浮腫で,視力をおびやかす黄斑浮腫(CSME)である.d:フルオレセイン蛍光造影(FA)で,輪状の硬性白斑の毛細血管瘤から強い漏出があり(),局所凝固が有用である.図5図3の症例のFA,IA,OCTAa:フルオレセイン蛍光造影(FA)早期に中心窩周囲および黄斑部に多数の毛細血管瘤を認める.b:FA後期では漏出が強く中心窩近傍の毛細血管瘤以外は同定が困難である.c:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)早期に多数の毛細血管瘤を認める.d:IA後期には黄斑鼻側に毛細血管瘤を認め,その分布は図3bのOCTmapの網膜肥厚部位と一致している.e,f:OCTA.表層毛細血管層(e)に比較し深層毛細血管層(f)に毛細血管瘤を認めるが(.),その数はFA早期(a)に認められる毛細血管瘤よりはるかに少ない.図6黄斑部毛細血管拡張症1型61歳,男性.抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬に反応しない黄斑浮腫として紹介された.カラー眼底写真(Ca)では輪状に沈着する硬性白斑に囲まれて網膜出血を認める.黄斑部以外の網膜には点状出血は認めない.OCTmap(Cb)では中心窩を含む広範囲に網膜肥厚を認める.OCTBスキャン(Cc)では.胞様変化を認める.FA早期(Cd)では黄斑とくに耳側に多数の毛細血管瘤を認め,後期(Ce)には旺盛な漏出を認める.IA早期(Cf)でも耳側を中心に毛細血管瘤を認め,後期(Cg)には輪状の硬性白斑による蛍光ブロックに囲まれた毛細血管瘤がはっきり同定できる.図7黄斑部分枝網膜静脈閉塞症(MacularBRVO)による黄斑浮腫59歳,男性.a:カラー眼底写真では黄斑部に網膜出血をわずかに認める以外に出血はみられない.b:OCTmapで中心窩にかかる黄斑浮腫を認める.c:OCTA.網膜表層毛細血管層では毛細血管瘤を認めない.d:網膜深層毛細血管層では黄斑上方で毛細血管瘤血管の拡張や脱落を認める().e:OCTAのフローシグナルを示すCBスキャンでは,.胞に隣接して毛細血管瘤(.)を認める.NPDR網膜硝子体界面異常なしNPDR:non-proliferativediabeticretinopathy(非増殖糖尿病網膜症),PDR:proliferativediabeticretinopathy(増殖糖尿病網膜症),CSME:clinicallysigni.cantmacularedema(視力をおびやかす黄斑浮腫),IVTA:トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射,STTA:トリアムシノロンアセトニド後部Tenon.下注射.図8わが国におけるDME治療フローチャートの1例(文献C12より改変引用)cd図9ステロイド治療が有効であったhyperre.ectivefociを認めるDME(a,b)と硝子体手術が有効であった網膜上膜を伴うDME(c,d)a,b:80歳,男性.視力(0.3).a:第一世代抗CVEGF薬を複数回注射しても改善がみられないため紹介受診..胞とChyperre.ectivefociを多数認める.Cb:トリアムシノロンアセトニド注射を行い浮腫は改善.視力(0.5)に改善した.Cc,d:65歳,男性.Cc:第一世代抗CVEGF薬を複数回注射したが,浮腫が改善せず,スポンジ状浮腫,漿液性網膜.離,網膜上膜を認めた.視力(0.1).d:硝子体手術施行後C4カ月.視力(1.0)に改善し浮腫も改善した.局所凝固(とくにCSME)中心窩外硝子体手術(or抗VEGF薬)網膜硝子体界面異常あり中心窩を含む有水晶体眼図10透析導入により浮腫が消失したDME61歳,男性.2カ月ごとに抗CVEGF薬治療を行っていた(Ca)が,透析導入後に黄斑浮腫の再発は認めなくなった(Cb).

序説:黄斑浮腫を正しく診断・治療する

2026年2月28日 土曜日

黄斑浮腫を正しく診断・治療するCorrectDiagnosisandManagementofMacularEdema古泉英貴*辻川明孝**黄斑浮腫は,糖尿病網膜症,網膜血管疾患,加齢黄斑変性,ぶどう膜炎,網膜変性疾患など,さまざまな疾患に合併しうる病態であり,日常診療において眼科医がもっとも頻繁に遭遇する所見の一つである.一方で,黄斑浮腫はあくまで「所見」であり疾患名ではなく,その背景にある病態を正しく理解しないまま診療を進めることは,誤診や不適切な治療介入につながる危険性をはらんでいる.血管からの滲出,炎症,硝子体牽引,網膜色素上皮機能障害,さらに漏出を伴わない構造変化まで,多彩な機序が「黄斑浮腫」という共通の形態を呈しうる点に,この病態のむずかしさがある.近年では,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)を中心とした画像診断技術の進歩により,黄斑浮腫の形態や局在,背景病態を詳細に評価することが可能となった.さらに,フルオレセイン蛍光造影や光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を組み合わせたマルチモーダルイメージングにより,血管漏出の有無や虚血,微細な血管異常まで把握できるようになっている.その一方で,画像所見が詳細化するほど,形態的変化と病態の解釈を混同しやすくなっている側面も否定できない.すなわち,画像上「浮腫様」に見える所見が,必ずしも治療介入を要する滲出性浮腫とは限らないという認識が,これまで以上に重要となっている.このような背景のもと,「浮腫があるから治療する」のではなく,「なぜ浮腫が生じているのか」「本当に治療すべき浮腫なのか」を見きわめたうえでマネージメントを行う姿勢が,現在の黄斑浮腫診療において強く求められている.本特集は,網膜専門医のみならず,一般眼科医や若手医師が実臨床で黄斑浮腫に直面した際に,その原因や病態を正しく整理し,合理的な診断と治療につなげられることを目的として企画した.まず,糖尿病黄斑浮腫については,野崎実穂先生(名古屋市立大学東部医療センター)により,病態,診断,鑑別,治療戦略を包括的に解説していただいた.続いて,網膜血管病変に伴う黄斑浮腫については,長谷川泰司先生(東京女子医科大学)により,網膜静脈閉塞症および黄斑部毛細血管拡張症(mac-ulartelangiectasia:MacTel)を中心に,鑑別を含めた実践的な解説がなされている.加齢黄斑変性およびその類縁疾患に伴う黄斑浮腫については,片岡恵子先生(杏林大学)により,網膜内液を伴う新生血管型加齢黄斑変性や慢性中心性漿液性脈絡網膜症など,診断に迷いやすい病態を画像読影の視点から整理していただいた.ぶどう膜炎*HidekiKoizumi:琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座**AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(1)119