網膜硝子体界面疾患に伴う黄斑浮腫MacularEdemainVitreoretinalInterfaceDiseases伊藤逸毅*はじめに網膜上膜などの網膜硝子体界面疾患においてCintraretC-inalcysts(網膜内.胞)がみられることがある.最近,この網膜内.胞にはぶどう膜炎でみられるような網膜血管からの漏出によって発生するものだけでなく,それとは異なり非滲出性に内顆粒層に形成されるCmicrocyst(微小.胞)もある,といわれるようになってきた.本稿では,最近の報告に基づいて,網膜硝子体界面疾患における網膜内.胞について概説する.CI微小.胞性黄斑浮腫最近,種々の疾患において光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)により傍中心窩の内顆粒層の小さな網膜内.胞,微小.胞が検出されるようになってきた1).当初は多発性硬化症による視神経炎や視神経脊髄炎などの視神経疾患での報告2)であったが(図1),そのほかに緑内障3,4),糖尿病網膜症5),網膜上膜6)でも報告されている.微小.胞の大きな特徴は,内顆粒層にあること,.胞のサイズは比較的均一で小さいこと,およびフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)で蛍光漏出を示さない,つまり,網膜血管からの滲出により発生したものではない,ということである.その発生原因には諸説あげられているが,有力視されている原因仮説の一つは,Muller細胞が存在する内顆粒層に微小.胞が形成されることから,Muller細胞障害が微小.胞性黄斑浮腫(microcysticCmacularedema:MME)の原因である,というものである.Muller細胞はそのアクアポリンC4(aqua-porin-4:AQP4)チャンネルにより,網膜内の水やイオン濃度の恒常性の調整にかかわることから7),種々の疾患によるCMuller細胞障害がCMMEをきたす,という仮説である.この仮説では,視神経疾患においては経シナプス的に神経節細胞の逆行性変性が起き,これがCMuller細胞障害を引き起こす“retrogrademaculopathy”の一環という説が考えられている.Retrogrademaculopathyは逆行性に起きる神経節細胞層の菲薄化,内顆粒層の肥厚,さらに一部の症例でみられるCMMEがおもな特徴である.そのほかに,硝子体牽引により神経節細胞やCMuller細胞の障害が起きてCMMEが発症する,という仮説も検討されている1).MMEの研究の進展により,これまでは網膜の.胞性変化はすべて滲出性の.胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)でひとまとめに表現されていた病名が,この非滲出性の内顆粒層の微小.胞については,MMEと滲出性のCCME(図2)とは区別されるようになってきている.MMEの所見名は未だ確定的なものではなく,網膜厚が正常範囲内あるいは菲薄化した状態でもCMMEがあるときもあるためにCedema(浮腫)をつけずにただmicrocyst(微小.胞),あるいはCinnerCnuclearClayercysticCchanges(内顆粒層.胞性変化),microcystoidCmacularchange(黄斑部微小.胞様変化),microcysticCmacularchange(黄斑部微小.胞性変化),実際の.胞ではないためCmicropseudocystとよばれることもある.*YasukiIto:藤田医科大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕伊藤逸毅:〒470-1101愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪C1-98藤田医科大学医学部眼科学教室(1)(41)C1590910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1視神経炎後の視神経萎縮眼の微小.胞性黄斑浮腫(MME)a:患眼COCT垂直スキャン.黄斑全体で神経線維層,神経節細胞層が菲薄化し,内顆粒層が厚くなっている.内顆粒層内にCMME()を認める.Cb:正常眼COCT垂直スキャン.患眼と正常眼で比べると層厚の変化がよくわかる.c:患眼のフルオレセイン蛍光造影.非滲出性CMMEでは蛍光漏出は認められない.bc図2ぶどう膜炎による滲出性.胞様黄斑浮腫(CME)a:OCT断層像.網膜の内顆粒層()に小さな.胞腔,Henle層.外網状層(★)に大きな.胞腔が認められる.漿液性網膜.離もみられる(.).b:フルオレセイン蛍光造影.滲出性CCMEでは蛍光色素の漏出,貯留がみられる.c:内顆粒層から外網状層のCOCTenface画像.花弁状(petaloidpattern)に.胞が広がっている.C-b図3術前のMMEが術後に消失した網膜上膜(ERM)の症例a:術前COCT水平スキャン.網膜表面にCERM(.),内顆粒層にCMME()を認める.b:術後COCT水平スキャン.ERM,MMEともに消失している.図5牽引性ERMの症例a:OCT9Cmm水平スキャン.網膜表面にCERM(),Henle層に.胞腔(.)を認める.b:3×3CmmOCT内顆粒層.外網状層のCenface画像.Henle層に沿って形成された.胞腔がスポークホイール状に広がっている.図4術前のMMEが術後も消失しなかった緑内障併発ERMの症例a:術前COCT垂直スキャン.網膜表面にCERM(),内顆粒層にCMME(.)を認める.緑内障のためにCERM直下の神経線維層および神経節細胞層が菲薄化しているのがわかる.b:術後COCT垂直スキャン.ERMは除去されているが,MME(.)は残存している.growthfactor:VEGF)薬が有効である.一方で,MMEは上述のように非滲出性,非炎症性であるため,これらの薬剤では効果が出にくい.MMEの.胞サイズはCCMEに比べればかなり小さくCCMEのように直接的な網膜障害を起こすことはほとんどないので,一般的に積極的な加療は必要とされず,経過観察が基本である.CIII牽引性.胞様黄斑浮腫ERMが中心窩周囲に形成されて収縮し中心窩を遠心性に牽引すると,中心窩に層状黄斑円孔が形成され,その周囲のCHenle層には.胞腔が形成される.また,黄斑牽引症候群では硝子体が後部硝子体.離に伴って中心窩網膜を持ち上げても同様に傍中心窩のCHenle層に.胞腔が形成される.これは牽引によって形成された.胞腔であるため,牽引性.胞様黄斑浮腫(牽引性CCME),あるいはCtractionalcystoidmaculopathy(牽引性.胞様黄斑症)とよばれる8,17).この概念には硝子体やCILM,網膜動脈血管の牽引で発症するCmyopicfoveoschisis(近視性黄斑分離症)も含まれる.牽引性CCMEは牽引により発症し,MMEと同様に基本的に非滲出性の.胞であるため,滲出性を示唆する用語のCCMEを用いることは混乱をきたす用法であるが,現在のところ呼称のコンセンサスはできていないため,本稿では牽引性CCMEを用いる.牽引性CCMEは基本的に非滲出性であるが,牽引が網膜血管障害,つまり,血液網膜関門の障害を起こすこともあるため,成因には滲出性の要素が加わることもある.この鑑別にはCFAが必要である.牽引性CCMEの.胞腔の分布は滲出性CCMEでみられる花弁状と異なり,spoke-wheel(スポークホイール状)である.これは.胞腔がCHenle線維に沿って形成されるためと推測されている(図5).牽引性CCMEでは牽引が原因であるため,治療は牽引の除去である.牽引性CERMならCERMおよびCILMの除去,黄斑牽引症候群では牽引の解除である.文献1)CarlaCMM,CRipaCM,CCrincoliCECetal:TheCspectrumCofCmicrocysticmacularedema:pathogeneticinsights,clinicalentities,CandCfunctionalCprognosis.CSurvCOphthalmolC70:C982-994,C20252)GelfandCJM,CNolanCR,CSchwartzCDMCetal:MicrocysticCmacularCoedemaCinCmultipleCsclerosisCisCassociatedCwithCdiseaseseverity.BrainC135(Pt6):1786-1793,C20123)Wol.B,AzarG,VasseurVetal:MicrocysticchangesintheCretinalCinternalCnuclearClayerCassociatedCwithCopticatrophy:aCprospectiveCstudy.CJCOphthalmolC2014:C395189,C20144)BrazerolJ,IlievME,HohnRetal:RetrogrademaculopaC-thyCinCpatientsCwithCglaucoma.CJCGlaucomaC26:423-429,C20175)ForteR,CennamoG,FinelliMLetal:Retinalmicropseu-docystsCinCdiabeticretinopathy:prospectiveCfunctionalCandanatomicevaluation.OphthalmicResC48:6-11,C20126)GovettoCA,CFranconeCA,CLucchiniCSCetal:MicrocystoidCmacularedemainepiretinalmembrane:notaretrogrademaculopathy.AmJOphthalmolC272:48-57,C20257)SpaideRF:RetinalCvascularCcystoidCmacularedema:Creviewandnewtheory.RetinaC36:1823-1842,C20168)GovettoCA,CSarrafCD,CHubschmanCJPCetal:DistinctiveCmechanismsCandCpatternsCofCexudativeCversusCtractionalCintraretinalCcystoidCspacesCasCseenCwithCmultimodalCimag-ing.AmJOphthalmolC212:43-56,C20209)GovettoA,SuD,FarajzadehMetal:Microcystoidmacu-larCchangesCinCassociationCwithCidiopathicCepiretinalCmem-branesCinCeyesCwithCandCwithoutglaucoma:clinicalCinsights.AmJOphthalmolC181:156-165,C201710)ShiodeY,MorizaneY,ToshimaSetal:Surgicaloutcomeofidiopathicepiretinalmembraneswithintraretinalcysticspaces.CPLoSOne11:e0168555,C201611)的場亮,森實祐基:網膜上膜・黄斑円孔.RetinCMedC13:123-128,C202412)LeeCDH,CParkCSE,CLeeCS:MicrocysticCmacularCedemaCandCcystoidCmacularCedemaCbeforeCandCafterCepiretinalCmembranesurgery.RetinaC41:1652-1659,C202113)MurataCN,CToganoCT,CMiyamotoCDCetal:ClinicalCevalua-tionofmicrocysticmacularedemainpatientswithglauco-ma.Eye(Lond)C30:1502-1508,C201614)PeckCT,CSalabatiCM,CMahmoudzadehCRCetal:EpiretinalCmembraneCsurgeryCinCeyesCwithglaucoma:visualCout-comesCandCclinicalCsigni.canceCofCinnerCmicrocystoidCchanges.OphthalmolRetinaC6:693-701,C202215)CamposCA,CMotaCC,CCruzCHCetal:PseudophakicCmacularedema:reviewCandCnewCinsightsConCtreatmentCandCpro-phylaxis.CSurvOphthalmol(inpress):https://doi.Corg/10.1016/j.survophthal.2025.11.00116)SchaubF,AdlerW,EndersPetal:Preexistingepiretinalmembraneisassociatedwithpseudophakiccystoidmacu-larCedema.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC256:909-917,C201817)GaudricA,AudoI,VignalCetal:Non-vasogeniccystoidmaculopathies.ProgRetinEyeResC91:101092,C2022(45)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C163