新生血管型加齢黄斑変性の診断DiagnosisofNeovascularAge-RelatedMacularDegeneration森隆三郎*はじめに2024年の日眼会誌に「新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン」1)(以下,新ガイドラインと表記)が掲載された.これまでわが国では2008年の「加齢黄斑変性の分類と診断基準」2)および2012年の「加齢黄斑変性の治療指針」3)(以下,旧ガイドラインと表記)に基づいて加齢黄斑変性(age.relatedmaculardegeneration:AMD)の診断と治療が行われてきたが,今後は新ガイドラインを基に診療を行うことになる.新ガイドラインは日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループにより作成され,画像も豊富で細かな解説もなされているので,PDFをダウンロードして一読することを推奨する.本稿ではカラー眼底写真,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT),光干渉断層血管撮影(OCTangiogra-phy:OCTA)を中心に,新生血管型加齢黄斑変性(neo-vascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)の診断について新ガイドラインに則って解説する.I新ガイドラインで押さえるべきポイント1.AMD分類の改訂旧ガイドラインでは,AMDを萎縮型AMDと滲出型AMDに分類していたが,新生血管があるが滲出性変化がない状態のAMDが存在することから,新ガイドラインでは萎縮型(atrophic)AMDと新生血管型(neovascu-lar)AMDに分類している.表1新ガイドラインのMNVの分類分類,病型などMNVの位置(深さ)1型MNV網膜色素上皮下PCVポリープ状病巣あり2型MNV網膜色素上皮上から網膜下1+2型MNV網膜色素上皮上下に混在3型MNV(RAP)網膜血管から生じる2.「脈絡膜新生血管」を「黄斑新生血管」に従来は新生血管型AMDにみられる黄斑部の新生血管を脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)としていたが,黄斑部の網膜血管由来の新生血管も含まれることから,国際的にも黄斑新生血管(macu-larneovascularization:MNV)とすることが多くなっており4),新ガイドラインではCNVではなくMNVとしている.3.MNVの分類旧ガイドラインでは,滲出型AMDをポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)を特殊型,それ以外を典型AMDと分類し,治療については,その病型別に抗血管内皮増殖因子(vascu-larendothelialgrowthfactor:VEGF)薬硝子体内注射,光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT),および両者の併用療法が推奨治療として組み込まれてい*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-6日本大学病院眼科0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(31)31dc図11型MNVの所見(MNVはOCTで,網膜色素上皮の不整な隆起部位はOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に灰白色病巣()と網膜色素上皮.離(PED)を認める.().b:OCT.網膜色素上皮の不整な隆起と網膜色素上皮下にMNVを示唆する高反射病巣を伴う.brovascularPED()と漿液性網膜.離(SRF)を認める.c:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮下にMNVの血流が確認できる().d:フルオレセイン蛍光造影(FA)後期..brovascularPEDの蛍光漏出を認めるが,MNVの範囲は不明である.e:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)後期.PED内にMNVを示唆する面状の過蛍光を認める().c図22型MNVの所見(subretinalhyperre.ectivematerial(SHRM)内のMNVをOCTAのBスキャンで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認める().b:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上にMNVとフィブリンを示唆する高反射病巣(SHRM)を認める(,).c:OCTA.網膜外層レベルのセグメンテーションの範囲にMNVの血管を認め(),BスキャンでSHRM内のMNVの血流を確認でき,SHRM内のフィブリンとMNVは分離して捉えることができる().d,e:FA.早期(d)からMNVの血管網を鮮明に認め,後期(e)に旺盛な蛍光色素漏出に伴う過蛍光を呈するClassicCNV.図33型MNVの所見(軟性ドルーゼン上の網膜内浮腫をOCTで,網膜内MNVをOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に多発する軟性ドルーゼンを認めるが滲出の有無は不明.b:OCT.軟性ドルーゼンは隆起した網膜色素上皮内に高反射病巣として認め(),中心窩に網膜内浮腫(IRF,),網膜内に新生血管を示唆する高反射病巣()を認める.c:OCTA.網膜外層レベルのセグメンテーションの範囲にMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮上にMNVの血流が確認できる().d,e:FA(d)およびIA(e)で超早期に網膜血管と吻合するType3MNVを認める().c図43型MNVの所見(網膜浅層出血を伴う網膜色素上皮.離(PED)をOCTで,網膜内~下MNVをOCTAで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に網膜浅層出血を伴うCPEDを認める().b:OCT.上段に網膜内浮腫(IRF,),網膜内に新生血管を示唆する高反射病巣()を認める.下段に大型のCPED()を認める.Cc:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にCMNV()を認め,Bスキャンで網膜色素上皮上にCMNVの血流が確認できる().図5PCVの所見(ポリープ状病巣をOCTとOCTAのマニュアル解析で確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う橙赤色病巣を認める().b:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣を認める().c:OCTA.セグメンテーションのラインを網膜色素上皮下から網膜下に設定し(),異常血管網()とポリープ状病巣()の両方が検出できる.Bスキャンで異常血管網()とポリープ状病巣()の血流を確認ができる.Cd:IA.異常血管網()とポリープ状病巣()を鮮明に認める.図6PCVの所見(網膜色素上皮裂孔を眼底自発蛍光とOCTで確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部耳側に出血()と灰白色病巣伴う橙赤色病巣()を認める.Cb:FAF.RPE欠損部位は低蛍光として認める().c:OCT.中心窩下に漿液性網膜.離(SRF,),網膜色素上皮上の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣()異常血管網を示唆するダブルレイヤーサインを認める().網膜色素上皮欠損部位(の範囲)の脈絡膜反射は高輝度として認める().Cd:FA.網膜色素上皮欠損部位は早期から過蛍光を示す().e:IA.網膜色素上皮欠損部位は境界鮮明な過蛍光を示し(),ポリープ状病巣()は鮮明に検出される.図7大型の網膜色素上皮.離(PED)の所見(OCTでPED辺縁のノッチの有無でMNVの有無を確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部にCPEDを認める().b:OCT.黄斑部に大型のCPEDを認めるが,PED内にCMNVを示唆する高反射病巣()とCPED辺縁にノッチを認めず(),MNVの存在は否定できる.Cc:FA後期.PED内は色素貯留(pooling)による過蛍光を認めるがCMNVの存在は不明.Cd:IA後期.PED内にCMNVを示唆する所見は認めず,PED内は下液に伴う蛍光遮断(block)による低蛍光を示す.dec図8PNV(type1MNV)(PNVと中心性漿液性脈絡網膜症との鑑別は,OCTAでMNVを確認する)a:カラー眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離(SRF)を認める().b:OCT;SRF()を伴う網膜色素上皮の扁平隆起()および脈絡膜中大血管の拡張を伴う脈絡膜肥厚を認める().c:OCTA.脈絡毛細血管板レベルのセグメンテーションの範囲にCMNVを認め(),Bスキャンで網膜色素上皮下にCMNVの血流が確認できる().d:FA後期.びまん性の蛍光漏出を認める.Ce:IA後期.MNVを示唆する面状の過蛍光を認める.-部の範囲となっている.OuterRetina層は,正常眼では網膜血管が存在しないため,血管が描出されればRPEから網膜側に隆起したCMNVの存在が示唆されるが,下縁がCBruch膜上部までの範囲で,RPEより上にMNVが存在するC2型CMNV(図2)だけでなく,RPEより下にCMNVが存在するC1型CMNVも描出される.つまり,自動層別解析のCOuterRetina層の画像は,MNVの有無を確認するためにある.ChoroidCapillary層は,Bruch膜上部から下部の範囲となっているが,RPEよりやや深い部分に存在するC1型CMNV(図1)やCPCVの異常血管網が検出される.MNVの存在の有無については,自動層別解析で得られる画像で簡便に確認できるが,MNVの正確な大きさや位置の深さについては,マニュアル解析で詳細に確認する必要がある.OCTAのマニュアル解析は,得られた画像を読影する際に,血流を示す赤色部位を表示したCBスキャンの画像を確認しながらセグメンテーションの幅を任意に設定し,それを上下にずらし解析する手段でCMNVがCRPEより上の網膜下にあるのかCRPEの下にあるのかを証明できるとする報告が以前よりある13).さらにCprojectionアーチファクトによる偽血管の有無を確認できる(projectionアーチファクトは,網膜内層血管がそれより深層に影となって映り込む現象で,実際にはその層には存在しない血管を描出してしまうので読影を困難にさせるアーチファクトの一つである14)).セグメンテーションの幅を任意に設定する(たとえばスキャン幅を大きくする)ことにより,部位により深さが異なるCMNVでも全体像を描出できる.カラー眼底で黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認め,OCTで高反射病巣(subretinalChyperre.ectivematerial:SHRM)の所見を認めた場合にCSHRM内のフィブリンとCMNVは一塊となり所見の分離はできないため,OCTAマニュアル解析をする.BモードでSHRM内の深部にCMNVの血流を確認し,フィブリンと分離して捉えることができる(図2).PCVのポリープ状病巣(図5)や3型MNV(図3,4)についてもCOCTABスキャンによる高度の検出が可能との報告もあり15,16),これが,MNVの存在を確認するのにすべての患者にCFAとCIAが必須とならない理由になる.おわりにPNVはCOCTAによる診断が容易となり,抗CVEGF薬注射やCPDTを施行する機会も多くなってきているが,PNVのCAMDとしての位置づけがわが国では明白でなかった.しかし,新ガイドラインには,アジア人のMNVは欧米とは異なる病態も多いことを考慮し,新生血管型CAMDにCPNVを含めたとする記載があり,躊躇なくCAMDとしての保険治療が可能となった.新ガイドラインにはCPNV以外にも多くの新しい情報が記載されている.これからは網膜疾患専門医でなくても,新生血管型CAMDを病型に分類し正しく診断する必要があるが,新ガイドラインには新生血管型CAMDに伴う所見の検出方法についても,多くの画像と検査機器ごとの所見の解説がわかりやすく提示されている.新ガイドラインを参照し,新生血管型CAMDの診断を確実なものとしたい.文献1)飯田知弘,五味文,安川力ほか;日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループ:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン.日眼会誌128:680-698,C20242)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ:加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,C20083)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性治療指針作成ワーキンググループ:加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌C116:1150-1155,C20124)SpaideRF,Ja.eGJ,SarrafDetal:Consensusnomencla-tureforreportingneovascularage-relatedmaculardegen-erationdata:consensusonneovascularage-relatedmacu-larCdegenerationCnomenclatureCstudyCgroup.COphthalmologyC127:616-636,C20205)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.日眼会誌109:417-427,C20056)WarrowCDJ,CHoangCQV,CFreundKB:PachychoroidCpig-mentepitheliopathy.Retina33:1659-1672,C20137)PangCE,FreundKB.Pachychoroidneovasculopathy.Ret-inaC35:1.9,C20158)CheungCCMG,CLeeCWK,CKoizumiCHCetal:Pachychoroiddisease.Eye(Lond)C33:14-33,C20199)YanagiY:Pachychoroiddisease:aCnewCperspectiveConCexudativemaculopathy.JpnJOphthalmolC64,C202010)SatoT,KishiS,WatanabeGetal:Tomographicfeatures38あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025(38)-