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屈折矯正手術セミナー:放射状角膜切開術後の角膜混濁

2024年2月29日 木曜日

●連載◯285監修=稗田牧神谷和孝285.放射状角膜切開術後の角膜混濁小野喬東京大学医学部眼科学教室放射状角膜切開術(RK)は,1970~80年代を中心に行われた屈折矯正手術の一つである.現在,わが国で行われる機会は少ないが,他の角膜屈折矯正手術と同様に,RK後の白内障手術では術後の屈折誤差が大きくなりやすい.また,長期経過後の合併症の一つとして角膜混濁がある.本稿では,RK術後に角膜混濁が進行した眼において,深層層状角膜移植術,白内障手術,硝子体手術を行った症例を提示する.●はじめに放射状角膜切開術(radialkeratotomy:RK)は,1970~80年代を中心に行われた屈折矯正手術の一つである.角膜に放射状に切開を入れることで角膜形状を変化させ,屈折矯正効果を得る1).現在,わが国で行われる機会は少ないが,代表的な合併症として,角膜穿孔,視力の日内変動,角膜感染症,近視の過矯正・低矯正や,切開による不正乱視などがあげられる2).他の角膜屈折矯正手術と同様に,RK後の白内障手術では術後の屈折誤差が大きくなりやすい.また,長期経過後の合併症の一つとして角膜混濁がある2).RK後には,切開部における線維芽細胞の増殖やコラーゲンの増加が長期間にわたり生じるため,角膜混濁が生じると考えられている.視軸に重なった混濁は視力を妨げるだけでなく,グレアの原因にもなる.今回は,RK術後に角膜混濁が進行した眼において,深層層状角膜移植術(deepCanteriorClamellarkeratoplasty:DALK)3),白内障手術,硝子体手術を行った症例を提示する.C●症例143歳,女性.27年前に海外で両眼のCRKを行い,両眼の視力低下を主訴に受診した.矯正視力は右眼がC0.05(n.c.),左眼は(0.1p×sph.3.0D)であった.両眼ともRK後の角膜切開部の瘢痕が大きく拡大し,角膜中央部を覆っていた(図1a,右眼).前眼部光干渉断層計では,角膜実質深層まで混濁が認められた(図1b).角膜上皮欠損はなく(図1c),角膜中心部が混濁していたため,角膜内皮細胞は接触型スペキュラマイクロスコピーを用いて評価したところ正常であった.DALKを行い,右(69)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY眼視力は(0.4)まで改善した(図1d).左眼も同様に角膜中央部に及ぶ実質深層までの混濁が観察され(図2a,b),角膜形状解析では強い不正性が明らかになった(図2c).しかし,強度近視に伴う黄斑変性を認め,患者が手術を希望しなかったため,外来で経過観察を行っている.C●症例265歳,男性.約C30年前に他院でCRKを行い,白内障手術目的に紹介となった.視力は右眼がC0.3(0.6p×sph+1.0D(cyl.4.5DCAx90°),左眼がC0.4(0.6×sph+3.0D(cyl.3.0DAx90°)であった.角膜中心部の混濁を両眼に認めた(図3a,d).前眼部光干渉断層計の断層像ではフラット化した角膜と混濁が確認され(図3b,e),角膜形状解析では角膜中央部が前後面ともフラット化していた(図3c,f).ASCRSのCIOLcalculatorのデータを参考にして.2D程度の近方狙いでCIOLを挿入したところ,術後視力は右眼C0.7(0.8×sph+3.0D(cyl.2.0DAx100°),左眼0.4(0.7p×cyl.3.0DAx85°)であり,目標屈折より遠視ずれを生じていた.角膜混濁および角膜不正乱視のため矯正視力が出づらいと考えられたが,患者はハードコンタクトレンズを希望せず,眼鏡装用として外来で経過観察している.C●症例360歳,男性.他院でのCRK後,右眼に耳上側の裂孔原性網膜.離を認めた.広角眼底撮影像ではCRK創部の陰影が拡大されて大きく映っていた(図4).RK後の眼底写真では撮影時の創部の陰影が観察対象と重ならないように注意する必要がある.本症例では角膜中央部の混濁は小さく,硝子体手術後の視力は(1.2)であった.あたらしい眼科Vol.41,No.2,2024179図1RK後の角膜混濁に対してDALKを行った症例(症例1)a:術前の右眼前眼部写真.Cb:右眼の前眼部光干渉断層像.Cc:右眼のフルオレセイン染色像.Cd:右眼のCDALK術後の前眼部写真.(文献C3より許可を得て転載)be図3RK後の角膜中心部の混濁(症例2)a:右眼の前眼部写真.Cb:右眼の前眼部光干渉断層像.Cc:右眼の角膜形状解析結果.Cd:左眼の前眼部写真.Ce:左眼の前眼部光干渉断層像.f:左眼の角膜形状解析結果.C●おわりにRKを行った患者が,高齢化に伴って白内障手術を希望する機会は少なくない.RK後の患者は高い裸眼視力を求めることが多く,術前に角膜混濁の程度と範囲を十C180あたらしい眼科Vol.41,No.2,2024b図2RK後の角膜切開部の瘢痕拡大と中央部の混濁(症例1)a:左眼の前眼部写真.Cb:左眼の前眼部光干渉断層像.Cc:左眼の角膜形状解析結果.図4RK後に裂孔原性網膜.離を生じた症例の広角眼底画像(症例3).:RK後の混濁により生じた陰影.(写真は宮田眼科病院・宮田和典先生のご厚意による)分に評価し,角膜混濁により視力が出づらくなる可能性や,場合によっては角膜移植を要することについて患者に説明することが必要である.文献1)WaringCGOC3rd,CLynnCMJ,CCulbertsonCWCetal:Three-yearresultsoftheProspectiveEvaluationofRadialKera-totomy(PERK)Study.COphthalmologyC94:1339-1354,C19872)RashidCER,CWaringCGO3rd:ComplicationsCofCradialCandCtransverseCkeratotomy.CSurvCOphthalmolC34:73-106,C19893)OnoCT,CNejimaCR,CMiyataK:CentralCcornealCopacityC27CyearsCafterCradialCkeratotomy.COphthalmologyC129:889,C2022(70)

コンタクトレンズセミナー:英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く 前眼部の解剖学と生理学

2024年2月29日 木曜日

■オフテクス提供■2.前眼部の解剖学と生理学土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactLensEvidence-BasedAcademicReports(CLEAR)”の第2章1)は,コンタクトレンズ診療に必要な前眼部の解剖と生理についてである.その概要と,その中でも比較的新しい知見について解説する.はじめにコンタクトレンズ(CL)診療においては,前眼部の各組織の臨床的評価や組織解剖学,生理学的知識の整理が重要である.これらはCL装用による前眼部への影響と相互作用の考察する際の基盤となりうるものである.本章では,検索可能なすべての情報源からの知見が集約され,眼表面に対する検査手技にまで及ぶ.本章はまた,解剖学的用語委員会推奨の専門用語使用を推進することをも目的としているとのことである.角膜と角膜輪部最初の解説は角膜組織のマクロとミクロの解剖についてで,既知の内容が多いが,ミクロでの角膜の5層構造以外に第6の角膜層であるDua層2)の存在説についての言及があった.既知の事象としては,角膜輪部基底上皮の幹細胞は一生上皮に留まると考えられており,上皮の恒常性は基底細胞の有糸分裂(X)+細胞の移動(Y)=表面からの細胞の損失(Z)の理論で表され,角膜上皮細胞は約10日ごとに入れ替わり,健康な角膜上皮では細胞の4%が有糸分裂し,表面細胞の約1%でアポトーシスを生じる,などの解説がとりあげられた.Anteriorlimitinglamina(Bowman層),角膜実質,pos-teriorlimitinglamina(Descemet膜),角膜内皮に関する基本事項の解説がなされた.角膜の神経支配については,角膜神経の発生と分布,機能についてのほか,最近の話題である角膜の感覚神経について解説がなされている.これは単なる知覚のみならず,瞬目,涙液分泌,角膜恒常性維持など,さまざまな生理学的反応にも関与しており,動物での研究では主に①ポリモーダル痛覚受容体,②冷感受容体,③機械.痛覚受容体に分類される.これらのうちポリモーダル痛覚受容体がもっとも多く,おもにC線維から構成され,機械的,温度や化学的刺激に応答する.ポリモーダル痛覚受容体の分子マーカーは,一過性受容器ポテンシャル(TRP)サブファミリーVメンバー1(TRPV1)である.(67)0910-1810/24/\100/頁/JCOPY冷感受容体は角膜の感覚神経の約10~15%を占め,Aデルタ(Ad)およびC線維からなり,眼表面の温度変化と涙液の浸透圧の変化を検出する.機械.痛覚受容体は感覚神経の約20~30%を占め,角膜表面に加えられる機械的な刺激に反応する.異物が眼に入るなどの強い刺激は,涙液の流れを最大100倍増加させることがあり,これらの神経経路への障害は,乾燥眼症,神経痛,および神経性角膜炎など,さまざまな眼表面の合併症を引き起こす可能性がある.角膜の生理機能についての基本事項は以下のように示された.角膜は透明で,その透明性の維持には水分が必要で,その割合は約78%である.眼球の屈折の2/3を担い,紫外線から眼を守る役割を果たす.角膜は無血管組織で,酸素と栄養はおもに涙液と房水から供給される.角膜の酸素消費はおもに上皮,角膜実質,内皮の各層に均等に分散する.涙液は主たる酸素供給源であり,房水はブドウ糖や必須アミノ酸を供給する.角膜の代謝には酸素が必要で,解糖が主要な経路でありブドウ糖消費の85%を占める.代謝の結果,乳酸が生成され前房に放出される.低酸素状態では乳酸蓄積が角膜浮腫を引き起こす.角膜上皮と内皮は水分含有率を維持するのに関与し,涙液の浸透バリアを形成する.角膜内皮細胞はイオンポンプ作用があり,このプロセスが妨げられると角膜浮腫が発生する.角膜上皮は損傷からの回復力が高く,角膜実質はある程度回復力があるが瘢痕組織を形成しやすく,角膜内皮細胞は再生しない.結膜解剖学,血流,神経支配,生理と機能などの解説があり,リンパについても以下の言及がある.鼻側の眼球結膜からのリンパ液は顎下リンパ節に流入する一方,耳側の眼球結膜からのリンパ液は前耳リンパ節に流入する.円蓋部結膜からのリンパ液も同様である.眼瞼結膜内側からのリンパ液は,眼瞼のリンパ管を介して顎下リンパ節に流入するが,外側からのリンパ液は耳前リンパ節にあたらしい眼科Vol.41,No.2,2024177流入する.強膜解剖学,血流,神経支配,生理と機能などの解説がなされた.眼瞼・睫毛眼瞼のマクロとミクロの解剖に続き,眼瞼炎,粘膜・皮膚移行部,lidwiper,眼瞼の神経解剖,筋,血管系・リンパ系,神経支配,マイボーム腺,脂腺,汗腺,副涙腺について解説している.そのうちlidwiperについては,粘膜皮膚移行部の一部ではなく,結膜の初期部分であり,扁平上皮細胞と粘膜細胞を含む最大で15層の細胞層で構成され,この領域の厚さ約100μmの上皮の隆起が角膜の表面を「拭く」役割を果たすと考えられ,そのためlidwiperとよばれると解説している.眼瞼の生理としては,機能,瞬目,涙液拡散と涙道へのポンプ作用,マイボーム腺,副涙腺,睫毛の役割について記載されている.涙器主涙腺についてはマクロとミクロの解剖,血管系,神経支配,生理と機能,鼻道については解剖,涙点,涙.,鼻涙管の解剖と,生理と機能について記載されている.涙液涙液は眼球表面に存在する保護的な液体層であり,それらは互いに密接に関連しており,その破綻はドライアイの悪化を引き起こす.涙液は約3~4μmの厚さで,瞬目によって約16%が補充される.涙液構造は,従来の3層モデルから,マイボーム腺由来の脂層,粘液を含む水層,膜結合性ムチンからなる構造へと考え方がシフトした.摩擦の軽減,保湿,抗酸化作用,防御機能を担っており,涙液の恒常性維持に重要な役割を演じている.涙液は主涙腺以外にも副涙腺や結膜などから生成され,その組成は蛋白質,脂質,粘液,電解質などから構成される.涙液は涙液産生,分布,蒸発,吸収のバランスでなりたっている.先進的な眼表面検査法角膜厚測定(パキメトリー)は角膜の厚さを測定するための方法である.角膜知覚検査は,角膜を刺激して瞬目が誘発されるかどうかを評価する.CochetBonnet知覚計は定量的に測定できるが,やや侵襲的であるのと,しばしば閾値を超えてしまうこともあるのが欠点である.インプレッションサイトロジーは,局所麻酔下でニトロセルロース膜を用いて角結膜の細胞サンプルを採取し,組織学的,免疫学的,分子特性の評価が可能である.結論と今後の展望本章はCL診療実践の基盤としての前眼部の解剖と生理をまとめたものである.関連する基本的研究に加え,光干渉断層計や生体共焦点顕微鏡などの技術の進歩により,生体内の動的解剖学・生理学の理解が進化し,CL装用を含む外的要因の影響を定義するために縦断的な評価が可能となった.これらの複雑な構造機能の関係に関する科学的理解は,CLの継続的な進歩の基盤を提供し,CL装用時の快適さ,生体適合性,安全性のさらなる最適化につながると思われる.おわりに原著1)ではCLに関連する眼組織から涙液の解剖と生理機能,さらにはそれらの検査法のほとんどを網羅しているが,本項では誌面の都合でそのすべてに言及することはできなかった.最近のトピックスに関してはこの領域の理解を深めるきっかけになれば幸いである.文献1)DownieLE,BandlitzS,BergmansonJPGetal:CLEAR.anatomyandphysiologyoftheanterioreye.ContactLensAnteriorEye44:132-156,20212)DuaHS,FarajLA,SaidDGetal:Humancornealanato-myrede.ned:anovelpre-Descemet’slayer(Dua’slayer).Ophthalmology120:1778-1785,2013

写真セミナー:アカントアメーバ角膜炎による角膜上皮の肥厚

2024年2月29日 木曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史477.アカントアメーバ角膜炎による伊藤正也福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科角膜上皮の肥厚視覚機能再生外科学図1初診時前眼部所見角膜中央部に偽樹枝状角膜炎を認めた.図3初診時の角膜上皮厚カラーマップ前眼部光干渉断層計CANTERIONを用いて測定.左眼と比較すると,右眼は偽樹枝状病変の範囲に一致して上皮の肥厚を認める.図4角膜擦過物のファンギフローラY染色による塗沫検査二重壁構造を伴うアカントアメーバの胞子(シスト)を認める.(65)あたらしい眼科Vol.41,No.2,2024C1750910-1810/24/\100/頁/JCOPY2週間使い捨てのソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)を装用していた53歳の男性の症例を提示する.SCLの使用状況として,洗浄液や保存液はほとんど使用せず,保存ケースに直接SCLを保存していたとのことであった.2,3週間前から続く右眼の充血を主訴に近医眼科を受診.ガチフロキサシン点眼,0.1%フルオロメトロン点眼による治療が開始されるも,6日後の診察で角膜所見は悪化.角膜上皮に樹枝状欠損を疑う所見を認めたため,ヘルペス角膜炎を疑い,0.1%フルオロメトロン点眼を中止ししたうえで,アシクロビル眼軟膏が追加された.その後C6日間加療するも角膜所見の改善を認めないため,京都府立医科大学附属病院(以下,当院)に紹介受診となった.当院初診時の視力は右眼(1.0),左眼(1.5).前眼部所見として右眼に偽樹枝状角膜炎を認めた(図1,2).前眼部Cswept-source光干渉断層計CANTERION(ハイデルベルグ社)を用いて角膜上皮厚を測定したところ,右眼は左眼より有意に肥厚しており,偽樹枝状病変に一致していた(図3).アカントアメーバ角膜炎(Acanthamoebakeratitis:AK)を疑い,角膜上皮肥厚を認めた部分を擦過しファンギフローラCY染色による塗沫検査を施行したところ,二重壁構造を伴うアカントアメーバ(以下,AA)の胞子(シスト)(図4)を認め,PCR検査ではCAAの陽性を認めた.ガチフロキサシン点眼C4回/日のほか,0.02%クロルヘキシジン点眼をC1時間ごと,0.1%ミコナゾール点眼6回/日,ピマリシン眼軟膏C5回/日による治療を開始した.治療開始後C1カ月の時点で角膜病変は改善を認めた.AKはCAcanthamoebacastellaniiやCA.polyphagaなどの原虫が角膜に寄生することにより生じる感染性角膜炎である.角膜炎の原因微生物として頻度が高く,そのほとんどがコンタクトレンズ(contactlens:CL)装用を契機としたもので,重症のCCL関連角膜炎のひとつである1).AKの症状は高度の眼痛,羞明,充血である.病変は初期と完成期で所見が異なる.初期では角膜上皮層の神経線維に沿って線上の浸潤をきたす放射状角膜神経炎(radialkeratoneuritis)や偽樹枝状病変を認める.完成期にはCAAが角膜実質内へ侵入し,角膜中央に大きな横長楕円形の浮腫と混濁を呈する円板状浸潤を認める.診断は前述の臨床所見に加えて,塗沫検鏡やCPCR検査でCAAを検出することによる.治療は病巣掻爬や点眼治療などがあげられるが,AAに特異的に効果のある薬剤は開発されておらず,保険適用となる薬剤も存在しない.2023年に改訂された「感染性角膜炎診療ガイドライン」においては,自家調整剤点眼であるクロルヘキシジングルコン酸塩の使用を強く推奨している1).従来,感染性角膜炎に対しては,従来は角膜形状解析装置を用いて角膜乱視や角膜厚を測定し,炎症評価を行ってきた.本症例で用いた前眼部光干渉断層計ANTERIONは角膜上皮のみの厚さを測定することが可能である.角膜上皮厚モジュールはCANTERIONの内蔵アプリケーションのひとつで,角膜上皮および角膜実質に関するデータを高い再現性で提示し,非侵襲的かつ簡便に施行でき,屈折矯正の計画および経過観察やドライアイなどの評価に用いられている.角膜上皮は中央部でもっとも厚く,平均値はC53.7C±4.0Cμmと報告されている2).本症例では偽樹枝状角膜炎の所見に一致して70Cμm以上の角膜上皮の肥厚を認めた.AAはおよそ12~18Cμmと細菌のC10倍ほどの大きさがあり,肥厚を示している部分は原虫が棲みついている,もしくはそれによる炎症が起こっていると考えられ,擦過塗沫をする際の位置の指標となりうる.AKは初期に放射状角膜神経炎などの特徴的な所見が乏しいことや,偽樹枝状角膜炎がヘルペス性角膜炎などと誤診されやすく,治療に難渋することが少なくない.今後,他の感染性角膜炎の疾患についても検討し,本症例の検査方法がCAKの診断に有用なものかを検証したい.文献1)日本眼感染症学会感染性角膜炎診療ガイドライン第C3版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン(第C3版).日眼会誌127:859-895,C20232)MohammadA:CornealepithelialmappingcharacteristicsinCnormalCeyesCusingCanteriorCsegmentCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.CTranslCVisCSciC&CTechnolC11:6,C2022

ICLが変えた日本の屈折矯正手術 

2024年2月29日 木曜日

ICLが変えた日本の屈折矯正手術RefractiveSurgeryinJapanChangedbyICL五十嵐章史*はじめに屈折矯正手術はCLASIK(laserinsitukeratomileusis)に代表されるレーザー角膜屈折矯正手術(laserCvisioncorrection:LVC)とCICL(implantableCcollamerlens,STAAR社)に代表されるCphakicIOL(intraocularlens)の二つに大別される.LVCとCICLの割合は日本ではユニークな傾向があり,世界的にはほとんどの国で屈折矯正手術のC70~80%はCLVCであるのに対して,日本は逆にC60%程度がCICLであるといわれている.これは国内のCLVCが過去に単一施設での集団感染例があったことや消費者庁の注意勧告がでたことが要因であり,国民の中にレーザー手術のネガティブな印象があることが示唆される.一方でアジア地域は強度近視が多いことから,日本の割合こそ妥当であるという風にも考えることはできる.本稿では国内の屈折矯正手術において第一選択となったCICLについて,なぜそのような傾向になったのかをさまざまな側面から解説する.CIICLの変遷ICLの世界における変遷を図1に,国内の変遷を図2に示す.ICLはCFyodorovらの研究をもとにC1993年にCSTAARsurgical社が原型となるcollamer素材のIC2020-Mを開発したのが始まりとされている.STAAR社はこのレンズをもとに,フットプレートを追加したCV1モデル,フットプレートのC2カ所にポジショニングマークを追加したCV2モデル,光学部を拡大したV3モデル,レンズの弯曲を強くし水晶体への接触を抑制したCV4モデルへと改良を加えた.このCICLV4は国内臨床治験の良好な臨床成績からC2010年に厚生労働省の認可を受けるに至り,翌C2011年には乱視矯正レンズであるCtoricICLV4も承認されたが,ICLV4には虹彩切除が必要なこと,一定の割合で代謝性白内障の進行のリスクがあるという欠点が残っていた.それらの欠点に対してC2004年に清水はレンズに穴をあけてレンズを通して房水が循環する画期的なデザインを考案し,現在はおおむね解決に至っている.HoleICL(ICLKS-Aqua-PORT)とよばれるこのレンズは,房水の流れを妨げず,視機能に影響しない大きさとしてC0.36Cmmの貫通孔をレンズ中央に作製され,その後の良好な成績1,2)から2011年にCCEマークを取得し,2014年に国内で承認が得ることになった.STAAR社はその後,このCholeICLをもとにハロー・グレアの改善目的に光学部を最大11%拡大したモデルを登場させ,そのレンズが現状では最新モデルである.現在,holeICLにおいて従来の光学部径のものをCEVO(V4c),光学部が拡大したものをCEVO+(V5)とよんでいる.CIIICLのスペックICLはCcollamerとよばれるCcollagenとCHEMAの重合体でできたプレート型の眼内レンズで,虹彩と水晶体の間のスペースである後房へ移植される.レンズの中央にはC0.36Cmmの貫通孔がある.また,四隅にはフット*AkihitoIgarashi:代官山アイクリニック〔別刷請求先〕五十嵐章史:〒150-0021東京都渋谷区恵比寿西C1-30-3グリーンヒル代官山C1F代官山アイクリニックC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(57)C1672011・HoleICL(ICLKS.AP)CEマーク取得承認1993・STAAR社がCollamerICL(IC2020.M)を開発,埋植19972005・ICLはCEマーク取得・VisianICLとして・FDA承認2016・光学部径が拡大したICLEVO+承認・販売20172022・EDOFモデルの・EVO/EVO+VisianICLがFDA承認ICLEVOVivaCEマーク取得・世界累計枚数200万眼達成図1世界におけるICLの変遷19972003~2010,2011・国内で初のICL埋植・国内でICLV4の治験(清水公也)・2010年non-toricICLV4認可・2011年toricICLV4認可2016・光学部径が拡大したICLEVO+承認・販売図2国内におけるICLの変遷Centralhole(0.36mm)フットプレートポジショニングマークアライメントマーク(TORICLINE)図3ICLレンズのデザイン中央に房水を循環させるC0.36Cmmの貫通孔があり,周辺の四つのフットプレートを毛様溝へ固定するデザインになっている.レンズ表裏が分かるようにポジショニングマークが左上,右下にある.表1国内承認範囲におけるICLレンズ度数球面レンズ:CEVO+ModelVICM5C球面度数CD(0C.5Dステップ)円柱度数CDEVO(VICMO)光学部径CmmCEVO+(VICM5)光学部径CmmCEVO+角膜面換算光学部径CmmC.3.0~C.9.0C─C5.8C6.1C7.6C.9.5~C.10.0C─C5.5C5.9-6.1C7.4-7.6C.10.5~C.12.5C─C5.3C5.3-5.8C6.6-7.3C.13.0~C.14.0C─C4.9C5.0-5.2C6.3-6.5C.14.5~C.18.0C─C4.9C─C─各モデル全長:12.1Cmm・12.6Cmm・13.2Cmm・13.7Cmm.球面度数+14.5DからC-18.0DはCEVOモデル(ModelVICMO)になる.トーリックレンズ:CEVO+ModelVTICM5C球面度数CD(0C.5Dステップ)円柱度数CD(0C.5Dステップ)EVO(VTICMO)光学部径CmmCEVO+(VTICM5)光学部径CmmCEVO+角膜面換算光学部径CmmC.3.0~C.9.0+1.0-+4.5C5.8C6.1C7.6C.9.5~C.10.0+1.0-+4.5C5.5C5.9-6.1C7.4-7.6C.10.5~C.12.5+1.0-+4.5C5.3C5.3-5.8C6.6-7.3C.13.0~C.14.0+1.0-+4.5C4.9C5.0-5.2C6.3-6.5C.14.5~C.18.0+1.0-+4.5C4.9C─C─Changesinhigher-orderaberrations(μm)球面度数.14.5DからC.18.0DはCEVOモデル(ModelVTICMO)になる.C1.501.000.500.00DComa-likeDSpherical-likeDTotalHOAsaberrationsaberrations図4強度近視例にける術前後の高次収差変化(6mm解析径)コマ様,球面様,全収差すべてにおいてCLASIKはCICLと比較して優位に増加している(p<0.001.Mann-WhitneyUtest).logcontrastsensitivityICLimplantationWavefrontguidedLASIK2.52.5221.51.510.500logspatialfrequency(cycle/degree)logspatialfrequency(cycle/degree)図5強度近視例における術前後のコントラスト感度コントラスト曲線の面積を示すCAULCSF(theareaunderthelogcontrastsensitivityfunction)において,ICLは術前に比べ術後コントラスト感度が有意に上昇しているのに対し,LASIKは術後有意に低下している(ともにp<0.001.Wilcoxonsigned-ranktest).図6ICL摘出ICLは長期間眼内に挿入されていても癒着はせず,レンズ素材も柔らかいため,レンズハプティクスの根本をしっかり把持し,2本のレンズ鑷子で手繰り寄せるように引っ張り出すと2.6~2.8Cmm程度の切開創でも摘出が可能である.00.20.40.60.811.21.400.20.40.60.811.21.4ICL術前検査:OCOS(OnlineCalculationandOrderingSystem)VS=0.06(1.2p×S-4.00D:Cyl-1.00Ax15°)R>G(1.5×S-4.25D:Cyl-1.00Ax15°)R>G◎(1.5×S-4.50D:Cyl-1.00Ax15°)R>G(1.5×S-4.75D:Cyl-1.00Ax15°)R=G(1.5p×S-5.00D:Cyl-1.00Ax15°)R<G(1.2×S-5.25D:Cyl-1.00Ax15°)R<G(1.2p×S-5.50D:CylAx°)best(1.5×S-4.25D:Cyl-1.00Ax15°)SEVS=(1.0×S-4.75D)※SE:SphericalEquivalent図8ICL術前視力検査の一例

術中計測ORAは本当に有用か

2024年2月29日 木曜日

術中計測ORAは本当に有用かValidityofIntraoperativeAberrometryintheRealWorld大内雅之*はじめに白内障手術,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入術において,目標屈折の正しい設定に続いて,球面・円柱度数,そして固定軸を精度よく行うことが重要なことは論をまたない.そこで,従来の各種IOL度数の各種計算式,トーリックカリキュレーターなど,術前計測,術前計算に加えて,術中波面収差解析装置(intraoperativeaberrometry)のORAシステム(アルコン社)が注目されている.本稿では,この術中計測ORAの有用性について解説する.IORAとはこのシステムは,aphakia測定からIOLの球面度数,トーリックスタイル,そして固定角度を決定し,トーリックレンズでは,挿入後の再測定で,固定軸の調整まで行う,つまり,水晶体摘出がすんでIOLを挿入する直前の屈折情報からIOLを決定するシステムである.これにより,術前計測ではどうしても避けられない角膜後面乱視,水晶体の影響,眼底形状による乱視,回帰式では避けられない眼球プロポーションのバリエーションによる計算式精度の不確実性などを排除した,より術後眼に近い状態でIOLを決定できるわけである.ORAは測定ユニットと計算・オペレーションユニットからなる(図1).基本プロセスとしては,術中計測値だけでなく術前生体計測から得られたデータも合わせて目標屈折を得るIOL度数を算出するが,この操作が行われるのが,オペレーションユニットである.さらに,トーリックIOLを選択した場合は,その推奨スタイル(T2,T3,T4など)と,そのスタイルを選択したときに残存乱視が最少になる固定軸が表示され,それをメルクマールに挿入したあとで改めて測定すると,挿入後の実測の残存乱視と,そこからさらに時計回りか反時計回りか,どちらに回せば,最少残存乱視に近づくかの指示も表示してくれる.これらの操作のあと,残存乱視が0.5ジオプトリー(D)以下になれば,それ以上回さなくてよい.norota-tionrecommended(NRR)のサインが出るのを確認し,トーリックの操作を終了するという手順を踏むことで,乱視矯正精度もより向上させるシステムである.IIORAの構成としくみORAは,多くの読者が思われるような単純なシステム(オートレフやIOLマスターのように,パシャッと測定すれば結果が出るという代物)ではない.術中に全眼球屈折を測定し,そこからIOL度数やトーリック固定角度を指示してくれるツールではあるのだが,そこには,術前情報,さらには,常時更新されている各IOLに関するグローバルのデータやパーソナル定数が大いに加味されており,その一部はブラックボックスだからである.ORAの使用には,術前に光学的眼軸長測定装置での角膜曲率・眼軸長・BarretUniversalIIによる推奨IOL度数の入力が必要で,これが他社製だとすべて手入力しなければならず,スタッフの作業が膨大になる.そ*MasayukiOuchi:大内雅之アイクリニック〔別刷請求先〕大内雅之:〒601-8449京都市南区西九条大国町9-1大内雅之アイクリニック0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(49)159図1ORAシステムa:測定ユニット(顕微鏡下部に装着したボックス状のユニット).b:オペレーションユニット.アルコン社クラウド⑤次の測定時の術後屈折入力②術前情報取得図2ORAの最適化システム術前生体計測器・ARGOS(左)から得られたデータとORAによる術中計測データを合わせて,眼内レンズ度数を決定する(①②).術後自覚屈折をArgosに入力すると,術後情報はクラウドに吸い上げられて最適化され,最適化情報が,各ユーザーのORAに反映される(③④⑤).眼圧<15mmHg15mmHg<眼圧<20mmHg眼圧>20mmHgbc15mmHg角膜圧平リング図3ORA測定前の眼圧調整角膜圧平リングが眼圧計の二つのリング(15CmmHg,20mmHg)の間になるよう,粘弾性物質で調整してから,測定に入る.Ca:15CmmHg以下.Cb:眼圧はC15CmmHgとC20CmmHgの間の至適眼圧.Cc:眼圧はC20CmmHG以上.Cab20mmHg第1,第3purkine像角膜表面のフォーカス測定光のモニターHartmann-Shack像確認図4ORAの測定モニター術野(Ca)と,測定条件をリアルアイムに表示するCwindow(Cb)で,術野,角膜のコンディション,眼内レンズの偏位や傾きを確認しながら測定する.a表1大内雅之アイクリニックにおけるORA使用1,727眼の基本情報術前自覚球面:.30.0.+10.0D,中央値C.0.25D自覚円柱:0.5.0D,中央値C0.75D眼軸長:20.26.34.11mm,中央値C24.23Cmm前房深度:1.68.4.87mm,中央値C3.18Cmm角膜屈折力:34.47.52.13mm,中央値C44.05Cmm使用CIOL:Clareon(Alcon社),TechnisOnepieceOptiblue(AMO社),XY-1(HOYA社),MPlus(Teleon社)とそれぞれのトーリックモデル,BBR,BB(HOYA社)b図5ORAの眼内レンズ選択画面a:40回の測定がすむと,即座に指定した眼内レンズの各度数における予測術後屈折が表示される.b:球面度数を選んだら,トーリックスタイル選択時の予測残存乱視が表示される.Cc:トーリック眼内レンズ挿入後,再度測定し残存乱視を確認する.ここではC0.03Dでこれ以上調整は不要(NRR)のサインが表示されている.a(D)b0.50.4(D)0.60.50.40.30.20.10屈折誤差0.30.20.10ORABarretORABarretORABarretORABarretORABarret全症例>27mm<22mm乖離乖離正視図6ORAとBarretuniversalIITK式の術後屈エラー(絶対値)の比較a:全症例では差はなく,長眼軸眼ではCBarretuniversalCIICTK式(B式)がやや良好,短眼軸ではCORAがやや良好.Cb:ORAとCB式の推奨眼内レンズパワーがC2段階以上乖離した例(左),さらにその中で正視を目標とした例(右)を抽出すると,いずれも,ORAのエラーが少ない(注1)ORA:ORAの予測.Barret:BarretuniversalCIICTK式の予測.>27mm,<22Cmはそれぞれ眼軸長.Ca(D)0Barret中間ORA-0.05屈折誤差-0.1-0.15c-0.2-0.05-0.25裸眼視力(logMAR)00.05b屈折誤差(絶対値)0.30.250.20.150.10.0500.1Barret中間ORABarret中間ORA図7各種手法で推奨度数を挿入した例,それぞれの術後成績正視を目標にした予想CIOL度数が,BarretとCORA間でC2段階(1.0D)以上差がある症例の術後屈折誤差(Ca),屈折誤の絶対値(Cb),裸眼視力(Cc)C※CORA:ORAの推奨度数を選択したもの.CBarret:BarretuniversalCIICTK式の推奨度数を選択したもの.中間:両者の間の度数を選択したもの.abc図8術前角膜乱視と全乱視の乖離の大きな症例の術後乱視a:オートレフケラトメーターによる測定(左)では,角膜乱視はC0.25Dなのに対し,屈折乱視はC2.25D.Casiaによる術前計測(右)は,角膜前面乱視C0.23D,総角膜乱視C0.86D.Cb:ORAによる術中計測では,円柱加入度数C2.0DのCZCW300が推奨される.Cc:術後角膜乱視は術前と変わらないC0.67D(中)だが,内眼乱視はCZCW300挿入によりC1.59D(右)で,全乱視はC0.5D(左)に矯正されている.=図93Dモニターを併用したORA使用手術測定中は画面をC2分割し,術野と屈折情報をリアルタイムに視認しながら,トーリック眼内レンズの軸調整を行える.C-

なぜ未承認レンズを使うのか?

2024年2月29日 木曜日

なぜ未承認レンズを使うのか?WhyUseanUnapprovedMultifocalIOL秦誠一郎*Iなぜ未承認レンズを使うのか?これまで自費診療であった多焦点眼内レンズ(intraoc-ularlens:IOL)は,2012年に「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」として先進医療に組み込まれ,急速に普及したが,2020年3月,医師も市場も十分に多焦点IOLに対する理解が深まったところで先進医療への組み込みは終了した.その後,選定療養に代わった現在でも,毎年10万枚を超えるまでに成長している.しかし,選定療養で使用できるIOLは国内承認を取得したものに限られ,近年,選択肢は増えたものの,高度近視や強度乱視例などではIOL選択にジレンマを感じることもある.一方で,世界に目を向けると,多焦点IOLの光学的進歩はめざましく,毎年のように新たな光学設計をもったレンズが大小さまざまなメーカーによって開発され,約100種類のレンズが市場にあるといわれている.現在ではレンズ加工機と素材をメーカーより購入することで,ベンチャー企業でもレンズの製造は可能なため,比較的容易に承認が得られる欧州を中心に,多くの会社が新しい設計思想のもとでレンズの開発に乗り出しており,多種多様な光学特性に優れた多焦点IOLが発売されてきた.新たに開発されたレンズが速やかに日本の薬事承認を得られれば一番よいのだが,残念ながらベンチャー企業の多くは,時間的制約や承認に至るコストなど,わが国の薬事承認取得の困難さにより国内販売をあきらめていく姿が見受けられる.未承認レンズを使用する醍醐味は,それらの最新設計されたレンズをいちはやく提供できることである.一方,未承認レンズを取り扱ううえで問題になるのが流通・製品情報・アフターフォローの問題である.わが国では医師による限定的条件を満たす輸入であるなら,海外の未承認医療機器を使用できる法的な道が開かれているものの,取り扱いについてはレンズのオーダー,輸入手続き,外貨での支払いなど,代行業者を通したとしても,国内流通とは比べものにならないほどの負担を覚悟しなくてはならない.実際,国民性の違いもあり,小さなベンチャー企業ではレンズの遅延,パッケージの破損は日常茶飯事に起こりうるので,そのつど対処する必要がある.また,もし問題が生じた場合もその対処はクリニックと海外メーカーで直接行わなくてはならず,実際,筆者が経験した親水性アクリルレンズのカルシウム沈着例では,メーカーとの問題意識のギャップに悩まされた1).トラブルの責任は,最終的には輸入・手術を行った医師が負う可能性があり,未承認レンズを取り扱うにはこれらの困難を受け入れたうえで,最新のレンズの魅力に取り憑かれるかどうかであろう.情報を鵜呑みにしただけの安易な使用は慎むべきと考える.使用後も自施設での結果や海外からの情報を精査し,自信をもって患者にベストなレンズを勧められるようになることが理想であろう.また,患者側のニーズとして最新のIOLを使用したいという層は必ず存在する.そのニーズに応*SeiichiroHata:スカイビル眼科〔別刷請求先〕秦誠一郎:〒220-0011神奈川県横浜市西区高島2-19-12スカイビル9Fスカイビル眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(41)151図2ActivaTrinovaProCPupilAdaptive好評であったActivaTrinovaから新素材,新設計レンズへ移行したが,乱視用レンズはラインナップされていないため早期の導入が待たれる.図1FINEVISIONダブルCループが水晶体.内での優れた安定性を実現している.左右対称設計で乱視軸の安定性も高い.ENOVAADVANCEDACRYSOFVIVITYLightTailoringTechnologyX-WaveTechnology図3EnovaAdvancedEnovaAdvancedは中心C2CmmにCLTS1とCLTS2の異なる構造を有しており,LTS1で遠方・中間・近方に光を広げ,LTS2で中間と近方に焦点を作り出している.図4MiniWELLMiniWELLReady(左)にはC3ゾーン,MiniWELLPROXA(右)はC5ゾーンが組み込まれており,二つのレンズを組み合わせることで広い焦点距離を実現している.光学面を見ただけでは単焦点レンズと区別できない.図5AutofocusPro光学部の上方に遠方,下方に中間・近方が加入されている.COvalOptic構造をとることで,後発白内障と陰性異常光視症を防いでいる.同様のCOpticデザインの工夫は他社でも見受けられ,今後流行するかもしれない.C-図6Intensity4loop(Ca)・Plate(Cb)・Cloop(Cc)のC3種類のハプティックスをもつ.Cloop以外はセミプリセット型のインジェクターを使用しており,レンズに触れずに眼内への挿入が可能である.図7FemtisとLentis上方に遠方,下方に近方の分節構造の光学部をもつ.Femtisは前.を挟み込むように上下左右に四つの追加ハプティック図8IC-8老視矯正用リングをCIOL光学部中をもつ.央に入れたレンズである.ピンホール効果で遠方の見え方を損なうことなく,連続視域を実現している.表1国内未承認のおもな多焦点IOLの比較FINEVISIONtoricPODFCAcrivaTrinovaProCCenovaadvancedCActivatrinovaCMiniWELLReady&MiniWELLPROXACAutofocusProCIntensityCLentisMplusCFEMTISCIC-8CPrecizonPresbyopicNVACMakerCBVICVSYCVSYCVSYCSi.MedtechCLifelineCHANITACTeleonCTeleonCBausch&LombCOphtecCTechnologyCApodization&ConvolusionCEnhancedSinusoidalPupilAdaptiveTrifocalIOLCLightTailoringTechnologyCTrifocalSinusoidalVisionTechnology,Foldable,SinglePiece,CPolyfocalProgressiveOpticCDynamicLightUtilizationCFilterRingDeviceDesignC.Material:Polyvinylidene.uoride(PVDF)CwithcarbonblackC.Centralaperture:C1.36CmmC.Totaldiameter:C3.23CmmCContinuousTransitionalFocustechnologyCDioptricPowerRange+6.0Dto+35.0DC0.0CtoC32.0DC10.0DCtoC32.0DC0.0Dto+32.00DC4.75DCto31.5D+10.0to+30.0D+10to+30.0DC0.5Dto36.0DC15.0DCto30.0D+10.0to+30.0D+1.0Dto+35.0DCAstigmaticPowerRangeC1.0DCtoC6.0D+1.0Dto+10.0DC1.0DCtoC4.5DCPowers10.20.0:1,.3C.0Powers20.5-30.0:C1.C4.5C0.5Dto10.0DC0.75DCtoC3.0DCOpticSizeC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC6.00CmmC5.70CmmC6.00CmmC6.00CmmCOverallLengthC11.4CmmC13.00CmmC13.00CmmC11.00CmmC10.75CmmC13.0CmmCCloop13.0Cmm4loop11.0Cmmplate11Cmm(>1C6D)11.5Cmm(<1C6D)C11.0CmmC10.5CmmC12.5CmmC12.5CmmCHapticDesignCDouble-C-loopCCLoopCCLoopCPlateHapticC4loopCL-Loopwithzig-zagouteredgeCCloop,4loop,plateCPlateHapticCPlateHapticCModi.edCCOpenCloopCMaterialCAcrylichydrophobicC25%hydrophilicacrylicCAcrylichydrophobicCCombinationofhydrophobicandhydrophilicmonomersCCopolymerCHydrophobic+philicAcrylicCo-polymerC26%hydrophilicacrylicC25%hydrophilicacrylicC25%hydrophilicacrylicCAcrylichydrophobicCHybridhydrophobic&hydrophilicmonomersCFilterCViolet,BlueLightFilterCViolet,BlueLightFilterCUVFilterCUVFilterCUVFilterCViolet,BlueLightFilterCUVFilterCUVFilterCUVFilterCUVFilterCUVFilterCLightTransmissionC86%C93%C92.0%C93.5%CAdditionpowers+1.75D+3.5D+3.6D,+1.8D+2.2D+3.0D,+1.5D+3.0D+0.9D+2.0D+1.75D+3.5DCMF20,+2.0D,MF30+3.0D,MF80+8.0DCComfort+1.5D,MF30+3.0D+2.75CDC図9PrecizonPresbyopicNVA11個のセグメントに中央より遠方,近方度数を交互に配置しているユニークなレンズである.C-

レンティスコンフォートとアイハンスの利点と限界

2024年2月29日 木曜日

レンティスコンフォートとアイハンスの利点と限界AdvantagesandLimitationsofLENTISComfortandTECNISEyhanceIOLs鈴木久晴*西山美穂*はじめに白内障手術は混濁した水晶体を除去するという開眼手術から,術後の見え方をどのように改善し,患者の生活の質を向上させるかという観点の屈折矯正手術的な意味合いとなって久しい.よって,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の選択は,屈折矯正手術としての白内障手術の大きな部分を占めている.日本における医療は,国民皆保険を基本としており,水晶体再建術としてのコストは決まっている.その中でどのようなIOLを選ぶかには制限があり,IOLそのもののコストが高額である場合には選定療養もしくは自由診療で治療しなければならない.よって,患者に対して高額な治療費を請求しなければならないこととなり,IOLの決定においては,患者個人の経済状態に大きく依存する形となってきた.IOLの説明時には,単焦点か多焦点かの違いによって患者のコスト負担が大きく変わるだけでなく,IOLのそれぞれの特性も説明しなければならず,医師の負担は非常に大きなものとなっている.その中で,保険診療内で用いることができる焦点深度の拡張効果をもったレンティスコンフォート(参天製薬)とアイハンス(AMOジャパン)については適応患者をしっかりと選択すれば患者の満足度は非常に高くなり,より高度な医療を提供できる.今回,保険診療内で用いることができるこの二つのIOLについて概要を解説し,その使い分けを提示する.I保険診療における高機能レンズの位置づけ保険診療内で用いることが可能で,眼鏡の依存度を減らすことができるカテゴリーとして,焦点深度拡張効果をもったIOLがある.これらのIOLの適応は,大きく二つの項目を満たすことと考える.まずは患者が眼鏡の依存度を減らしたいかどうかである.眼鏡をかけることに不自由を感じていない患者は基本的には適当とならない場合が多い.しかし,焦点深度拡張効果に関しては単眼で眼鏡完全フリーをめざすことができる可能性は低いことをまず患者に伝えるべきである.もちろん,眼鏡完全フリーをめざすのであれば,選定療養の範囲内である回折構造を中心とした多焦点IOLを勧めるべきである.ただし,その際にも適応はきちんと守らなければならない.次に他に重度の眼疾患に罹患していないかどうかである.黄斑疾患などの網膜疾患,また重度の緑内障などの場合は,絶対禁忌ではないにしても用いないほうがよい.しかし,選定療養の中で用いる多焦点IOLと比べると適応範囲は広く,軽度の網膜疾患や緑内障でも用いることができることもある.IIレンティスコンフォートの概要レンティスコンフォートは,+1.5D加入度数のレンズが下方に約1/3入っている屈折型で,異なる二つの単焦点機構をもつ低加入度数分節IOLであり,いわゆる屈折型の2焦点IOLである(図1).よって,屈折型多*HisaharuSuzuki&MihoNishiyama:善行すずき眼科〔別刷請求先〕鈴木久晴:〒251-0871神奈川県藤沢市善行1-22-2善行すずき眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(35)145図1レンティスコンフォート(参天製薬)の外観遠用ゾーンと+1.5D加入された中間ゾーンに分かれている.図2レンティスコンフォートのトーリックバージョンプレート型であるため軸合わせに若干の慣れを必要とする.軸のマーキングは太く見やすい.(参天製薬提供)ab図3アイハンス(AMOジャパン)図4アイハンスの光学マップa:通常のアイハンス.Cb:トーリックバージョン.従来のテアイハンス(Ca)は通常のテクニス(Cb)に比べて中心部が急峻クニスプラットフォームを用いているため,挿入にストレスはになっている.(ジョンソン・エンド・ジョンソン社提供)ない.図5Zernike多項式アイハンスはC6次の高次収差に影響する高次非球面構造である.logMAR視力5m1m70cm50cm40cm30cm-0.100.10.20.30.40.50.60.70.8レンティスアイハンスレンティスn=20対応のないt検定アイハンスn=20全距離において有意差なし図6全距離裸眼視力レンティスコンフォートをレンティスとしてブルーのライン,アイハンスはグリーンのラインで示す.グレアなしグレアあり****2.52.5221.51.5110.50.500C3c/dC6c/dC12c/dC18c/dC3c/dC6c/dC12c/dC18c/d*****20-55歳標準レンティスアイハンス20-55歳標準レンティスアイハンスレンティスn=20対応のないt検定アイハンスn=20p<0.05*p<0.01**図7コントラスト感度視力レンティスコンフォートをレンティスとしてブルーのライン,アイハンスはグリーンのラインで示す.+2.00+1.000-1-2-3-4logMAR視力-0.3-0.10.10.30.50.70.91.1レンティスn=7対応のないt検定アイハンスn=10全距離において有意差なし図8両眼の焦点深度曲線レンティスコンフォートをレンティスとしてブルーのライン,アイハンスはグリーンのラインで示す.

なぜEDOFか

2024年2月29日 木曜日

なぜEDOFかReasonsforChoosingtoUseanExtendedDepthofFocus(EDOF)IOL佐々木洋*はじめに2020年4月から老視矯正眼内レンズ(intraocularlens:IOL)は選定療養の適用となり,白内障手術において屈折矯正に加え老視矯正も希望する患者に選択されている.国内で認可されている老視矯正IOLは,回折型の3焦点あるいは連続焦点と焦点深度拡張型(extend-eddepthoffocus:EDOF)がある.それぞれメリット・デメリットがあり,その特徴を十分に理解して選択する必要があるが,EDOFIOLは単焦点IOLと比較してデメリットが非常に少ないため,最近は老視矯正IOLに占めるEDOFの割合は増加傾向にある.本稿ではEDOFの特徴および使用法について解説する.I3焦点・連続焦点IOLの特徴と問題点回折型2焦点IOLは遠方と近方の2カ所にフォーカスをもつ老視矯正IOLで,中間距離が見えにくく,コントラスト感度の低下,waxyvisionを自覚することがあり,不快光視現象も強いなど,単焦点IOLと比べデメリットが多く,必ずしも患者満足度の高いIOLではなかった.その後,中間距離の見え方が改善された3焦点や連続焦点IOLが登場し,より自然な見え方が獲得できるようになり,術後満足度は著しく向上した.しかし,コントラスト感度の低下や不快光視現象については,2焦点に比べて顕著な改善は得られていない.現在,国内で使用可能な3焦点IOLとしてはPanOp-tix(以下,PO,アルコン社),FINEVISIONHP(以下,FV,BVI社),連続焦点IOLとしてSynergy(以下,SN,ジョンソン・エンド・ジョンソン社)がある(図1).全距離視力に関して遠方視力は3種のIOLで差はないが,中間距離はFVに比べてPOおよびSNが良好,近方視力はSNがPOおよびFVより良好1),近方視力がPOに比べてSNで良好2)との報告があり,國正らもPOとSN挿入眼の比較で,焦点深度曲線では.3.0Dで有意にSNが良好であるが,それ以外の距離では両IOL間に有意差はないことを報告している(図2)3).また,POおよびSNは屈折誤差,残余乱視への許容性は小さく,いずれも0.5D以下にコントロールすることでIOL本来のパフォーマンスが発揮されるが,屈折ずれあるいは残余乱視が大きい場合,裸眼全距離視力およびコントラスト感度は著明に低下する3).近方視の質の評価として読書スピードを指標とした研究では,FVに比べてSNで有意であったと報告されている4).また,0.1logMAR以上の視力が得られた実験的な光学特性の比較では,瞳孔径3~4.5mmの遠見の変調伝達関数(modulationtransferfunction:MTF)はSNに比べFV,POが良好であり,近見のMTFはSNがPOより良好な傾向がみられたと報告されている5).IOL挿入眼のコントラスト感度は若年者に比べて高齢者で不良であることが知られている.自験例において6種類のIOL挿入眼の年代別遠見コントラスト感度を比較した結果では,POでは75歳以上でコントラスト感度が著明に低下,SNでは全年代で他のIOLより不良であり(図3),*HiroshiSasaki:金沢医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕佐々木洋:〒920-0293石川県河北郡内灘町大学1-1金沢医科大学眼科学講座0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(25)135PanOptixSynergyFINEVISIONHP図1選定療養で使用できる回折型老視矯正IOL視力(logMAR)-0.4-0.20.00.20.40.60.8SynergyPanOptixn=16(60.8±14.0歳)n=29(58.6±9.9歳)1.51.00.50.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0-3.5等価球面値(D)t検定:*p<0.05図2SynergyとPanOptix挿入眼の焦点深度曲線(文献3より引用)*****************単焦点高次非球面65歳未満65歳未満1.691.691.571.5765歳以上65歳以上75歳未満75歳未満1.491.481.561.5675歳以上75歳以上1.481.481.501.50低加入度数分節型1.591.591.551.561.471.47焦点深度拡張型1.541.541.501.501.501.503焦点1.91.59.541.541.321.32連続焦点型1.461.461.421.421.361.36Turkey:*p<0.05,**p<0.01・単焦点(94眼):72.8±7.8歳・高次非球面(93眼):71.3±9.5歳・低加入度数分節型(LC,185眼):70.6±7.2歳・焦点深度拡張型(SF,171眼):63.0±11.0歳・3焦点(PO,163眼):64.6±11.3歳・連続焦点(SN,169眼):62.8±14.8歳図36種IOL挿入眼の年代別コントラスト感度(明所グレアo.:AULCSF)小数視力logMAR65歳未満PanOptixSynergy44例63眼39例65眼小数視力logMAR65歳未満-0.4065歳以上75歳未満46例86眼-0.4065歳以上75歳未満45例66眼75歳以上23例35眼75歳以上11例22眼1.5-0.201.5-0.201.00.001.00.000.200.200.40.400.40.400.600.600.20.20.800.801.001.0030cm40cm50cm70cm100cm5m30cm40cm50cm70cm100cm5m●65歳未満0.640.870.940.970.991.32*●65歳未満0.580.911.000.960.911.28*******************●65歳以上75歳未満0.580.800.900.910.841.11******●65歳以上75歳未満0.49**0.74**0.85**0.820.78*1.17*******●75歳以上0.440.680.700.710.770.94●75歳以上0.490.650.790.770.700.95ANOVAwithtukey:*:p<0.05,**:p<0.01図4PanOptixとSynergy挿入眼の年代別全距離視力(文献6より引用)単焦点PanOptixSynergyFINEVISIONHP図5PPTによる不快光視現象の比較術後1カ月での平均的な見え方.(%)100n=34(62.8±11.4歳)****:p<0.05806040200%0%0グレアハロースターバースト夜間運転満足度術前明所下みかけ瞳孔径:3.0mm未満(24%)3.0~3.4mm(24%)3.5mm以上(52%)・術前瞳孔径3.5mm以上では不快光視現象のリスクが高いので連続焦点型適応には注意・術前瞳孔径3.0mm未満では不快光視現象のリスクは低く連続焦点型のよい適応図6Synergy挿入眼における術前瞳孔径別での術後不快光視現象・夜間運転不満例の頻度(術後3カ月でのアンケート調査)Fisherの正確検定SymfonylogMAR-0.20-0.100.000.100.200.300.400.500.600.700.80Vivity図7焦点深度拡張型IOLLENTISComfort30cm40cm50cm70cm100cm5mANOVAwithtukey:*:p<0.05,**:p<0.01図83種類のEDOFIOLの全距離視力値であるほど良好な眼球光学系であることを客観的に示す指標として有用であり,HDAnalyzerあるいはCTFAnalyzer(Visiometrics社)により測定できる14,15).異なるCIOL間でのCOSIの比較の報告は少ないが,単焦点IOL挿入眼に比べて,多焦点CIOL挿入眼のCOSIは有意に高値であることが報告されており(16),EDOFに関しては,VVとCSF挿入眼におけるCOSIが同等であるとされている17).単焦点CIOLに比べてコントラスト感度が不良である多焦点CIOLでCOSIが高いことはCOSIが視機能評価指標として有用であることを示す結果であり,VVとCSFのCOSIが同程度であることは両CIOLにおけるコントラスト感度に差がないことの裏付けになるとも考えられる.不快光視現象については,VVは単焦点CIOLと同等であることが報告されている18).一方で,SFでは不快光視現象を自覚する割合は高く,POと同等7),VVより有意に強く自覚すること13)などが報告されている.LCでは翌日~1週目までは中程度以上のグレア,ハローを自覚することがあるが,1カ月目以降は重篤な症状を自覚する症例はほとんどない19).MitoらはCPPTによりCLCでの不快光視現象を測定し,中間部領域挿入方向に一致した扇状ハローが確認されることを報告した20).また,挿入方向により自覚症状に差はなく,ほとんどの症例で自覚症状はないか,ごく軽度であることを報告している.CIIIEDOFの適応と実際の使用法EDOFの特徴を一言で表現すると「デメリットの少ない老視矯正CIOL」といえる.VVの場合,国内でこれまで一般的に使用されているワンピースCIOLであり,素材も改良がありCglisteningやCsub-surfaceCnano-glis-tening(SSNG)の懸念も払拭されている21~23).さらにコントラスト感度は単焦点CIOLよりもわずかに不良ではあるが,患者がそれを強く自覚する可能性は低く,不快光視現象も単焦点とほぼ同等である.年齢,瞳孔径,高次収差,残余乱視などの視機能への影響については今後の検討が必要であるが,IOL光学部の構造がシンプルであるためにC3焦点・連続焦点に比べて影響は少ない可能性が高い.従来の回折型老視矯正CIOLの適応は単焦点CIOLにおける適応基準とはまったく異なるのに対して,VVの適応基準に関しては高度の角膜高次収差,黄斑疾患,進行した緑内障,視神経疾患,活動性のぶどう膜炎など単焦点CIOLでも十分な視力改善が期待できない症例以外であれば,単焦点と同等の遠方視機能に加え明視域の拡大というメリットを享受できる可能性が高いので,適応としてよいかもしれない.しかし,単焦点とは違い患者は選定療養での費用負担があるので,術後視機能への期待度は保険適用CIOLでのそれとは違うため,見え方の限界についての十分な術前説明は必須である.メリットの多いCEDOFであるが,最後に使用法のポイントについて述べる.図9は両眼CLCの自験例で,両眼とも正視(正視群)と優位眼正視,非優位眼がC.0.5あるいは.0.75D(micro-monovision群)の患者の裸眼での両眼全距離視力である.有意差があったのはC50cmのみだが,遠方視力に差がなく,ほぼ全距離でCmicro-monovision群が良好であった.近用眼鏡装用率は細かい文字を読むときのみ使用,あるいはほとんど使用しない患者の割合が正視群(59%)に比べてCmicro-monovi-sion群(82%)と有意に高く,8割程度の患者ではmicro-monovision法を用いることでほぼ眼鏡フリーの生活が可能になる(図10).患者は片眼ずつでの見え方を重要視する傾向があるため,両眼正視を希望するケースも多い.しかし,日常生活において片眼視することは少なく,優位眼で良好な遠方裸眼視力が獲得できていれば,非優位眼の遠方裸眼視力が若干低下していても両眼での遠方の見え方への影響は少ない.優位眼の術後にCfellow-eyeself-tuning法(FEST法)を用い,優位眼の全距離視力を測定し非優位眼の屈折値を決定することで,より正確で患者の希望に近い見え方を提供することができる24).3焦点,連続焦点に比べると近用眼鏡装用率はやや高いが,他のデメリットが少ないことを勘案するとCmicro-monovision法での全距離視力はきわめて良好であり,患者満足度も高く有用である.優位眼にCEDOF,非優位眼にC3焦点あるいは連続焦点を使用するCMixC&Match法も有用である25).優位眼にCEDOFを挿入後,FEST法により全距離視力を測定し,micro-monovision法で遠方視力の著明な低下を生じるか良好な近方視力が得られない場合は,非優位眼に3焦点あるいは連続焦点を使用することで良好な全距離140あたらしい眼科Vol.C41,No.2,2024(30)小数視力1.00.80.60.50.4logMAR-0.30-0.20-0.100.000.100.200.300.400.500.600.703030cm40c40cm50cm50cm60cm60cm70cm70cm100cm100cm5m5m両眼0D0.40240.580.160.690.090.810.030.93-0.031.07-0.41.38micro-mono340.46180.660.070.850.020.95-0.021.05-0.071.17-0.31.35T-test●両眼正視:40例(71.1±6.7歳)●micro-monovision(優位眼-0.25D≦MRSE≦+0.25D,非優位眼-1.0D

球面収差と色収差の意味と意義 

2024年2月29日 木曜日

球面収差と色収差の意味と意義TheMeaningandSigni.canceofSphericalandChromaticAberrations小島隆司*はじめに現在,白内障手術は混濁除去による開眼手術にとどまらず,患者に合わせた正確な屈折矯正や見え方の質をより高めるニーズが高まっている.このような流れを受け,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)は着色CIOL,非球面眼内レンズ,トーリックIOL,多焦点IOL,調節IOLなど付加価値をもつようになり,視機能改善,屈折矯正,老視矯正を目的として進歩してきている.本稿では,球面収差と色収差の基本事項および臨床での留意事項にスポットを当てて解説する.CI収差とはまず,収差(aberration)についての解説から始める.収差とは「1点から出た光が光学系を通過後,1点に収束しない現象」をいう.近視,遠視,乱視もこの収差の一種である.眼鏡矯正できるものは低次収差,できないものは高次収差と分類される.また,収差を幾何学的に捉えた場合は,単色収差と色収差に分類される.単色収差はさらにCSeidelのC5収差に分類される.SeidelのC5収差は,①球面収差,②コマ収差,③非点収差,④像面弯曲,⑤歪曲収差である.CII球面収差とは平行な光線が前面後面ともに凸面の球面レンズに入射すると,レンズ周辺部を通った光ほどレンズに近い光軸上の点に結像する.このような場合は正の球面収差となる.逆に非球面レンズなどで,レンズ周辺部を通った光ほどレンズから遠い位置の光軸上に結像する場合は負の球面収差となる1).角膜はC6Cmm径で約C0.2.0.3Cμmの正の球面収差をもつ(図1a)2).角膜の高次収差の変化は,水晶体に比較すると小さいことが知られている.水晶体は若年では負の球面収差をもち(図1b),加齢とともに正の球面収差に変化していく3).眼球全体で考えると,若年では角膜の正の球面収差を水晶体の負の球面収差が打ち消しているが(図1c),加齢とともにそのキャンセル効果が効かなくなり,網膜像にボケが生じるようになる.CIII非球面眼内レンズ上述したように角膜は正の球面収差を有するレンズである.非球面CIOLは,この角膜の球面収差を低減するように負の球面収差をもたせたCIOLである.過去に数多くの球面CIOLと非球面CIOLを比較した研究が報告されているが,ここではそれらをまとめたメタ解析を紹介する.43のランダム化比較試験を調査したこの研究4)では,非球面CIOLのほうが有意に矯正視力,明所および暗所コントラスト感度が球面CIOLよりも良好であった.ただし矯正視力,明所コントラスト感度に関しては小さい差であり,一番大きな差は暗所コントラスト感度であった.しかし,患者の自覚としては見え方に大きな差はないことが示された.暗所でコントラスト感度が改善する理由には瞳孔径が関係している.明所のように瞳*TakashiKojima:名古屋アイクリニック〔別刷請求先〕小島隆司:〒456-0003愛知県名古屋市熱田区波寄町C24-14CCOLLECTMARK金山C2F名古屋アイクリニックC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(21)C131a角膜における球面収差b水晶体における球面収差c眼球全体の収差図1若年における角膜,水晶体,眼球全体の球面収差の関係a:角膜は正の球面収差をもち,周辺部を通過した光はより角膜側で結像する.b:水晶体は負の球面収差をもち,水晶体周辺部を通過した光は,網膜側に結像する.Cc:角膜と水晶体を通過した光は,角膜の正の球面収差が水晶体の負の球面収差である程度打ち消される.図2軸上色収差と倍率色収差(文献C6より改変引用)響が出るのかを検討した研究では,コントラストの向上が得られることが示されている8).色収差がC1.5D程度もありながら,日常で色のボケは感じにくい.これは,視感度曲線のピークが明所では555Cnmにあり,赤や青の光は人間の明るさ感覚に与える波長の影響が小さいためである.色収差は屈折力が強く,Abbe数(物質固有の値で,透明体の色分散(屈折率の波長による変化)を評価する指標)が小さいほど増加する6).CVII眼内レンズにおける色収差IOLによる色収差は,上述したようにCAbbe数によって色収差が異なるため,IOLの素材によって大きく異なる.PMMAはC58,シリコーンはC57,アクリソフはC37程度のCAbbe数であるため,アクリソフよりもCPMMAやシリコーン素材のCIOLは色収差が小さくなる7).正常水晶体のCAbbe数がC50であるため,現在主流であるアクリソフは正常水晶体と比較しても色収差が大きいといえる.IOLの選択の観点では,色収差のみに限っていえば,Abbe数が大きいものを選択することが望ましい.実際に過去に根岸らは,Abbe数の小さいアクリソフIOL挿入眼において,色収差によってコントラスト感度低下が起こりうることを示している9).CVIII色収差の生理的役割色収差はコントラスト低下を起こす負の側面ばかりではなく,メリットも存在すると考えられている.それが調節と色立体視である.調節に関しては,単色光での調節刺激は白色光に比べて弱いことがわかっている10).色立体視は,長波長光ほど短波長光の物体よりも近くに見えるという現象である.色収差をなくす(色消し)と立体視にも影響する可能性がある.CIX球面収差,色収差を補正したIOL近年,IOLの主流になりつつある非球面CIOLであるが,球面収差を低減することによりコントラスト感度上昇が期待されるが,色収差の影響でその影響は限定的であることが報告されている11,12).さらに最近発売されているCIOLには,球面収差とともに色収差を低減するものもある.色収差は前述したように立体視にも影響するため,どこまでCIOLで補正すべきかは議論の余地がある.おわりに白内障手術の進歩によって,術後の低次収差だけでなく,高次収差のコントロールが可能な時代に突入してきている.また人生C100年時代といわれるように,患者が白内障術後にアクティブに過ごす時間が長くなり,手術後早期だけではなく長期の見え方も考慮する必要が生じてきている.IOLの耐久性は十分にあると思われるが,Zinn小帯などCIOLを支える組織の変化はCIOLの位置を変化させ高次収差に影響する可能性がある.また,技術が進むことによって,これまでは正常の眼球光学系よりも色収差を低減することなどが可能になってきているが,前述したように色収差は立体視にも影響しており,どこまで収差を補正することがよいのか,今後さらなる研究が必要な分野である.文献1)大沼一彦:不正乱視の基礎と臨床研究(3-1)球面収差の基礎.視覚の科学C28:132-139,C20082)BeikoCGH,CHaigisCW,CSteinmuellerA:DistributionCofCcor-nealCsphericalCaberrationCinCaCcomprehensiveCophthalmolo-gyCpracticeCandCwhetherCkeratometryCcanCpredictCaberra-tionCvalues.CJCataractRefractSurg33:848-858,C20073)ArtalCP,CBerrioCE,CGuiraoCACetal:ContributionCofCtheCcor-neaCandCinternalCsurfacesCtoCtheCchangeCofCocularCaberra-tionsCwithCage.CJCOptCSocCAmCACOptCImageCSciCVisC19:C137-143,C20024)SchusterCAK,CTesarzCJ,CVossmerbaeumerU:TheCimpactConCvisionCofCasphericCtoCsphericalCmonofocalCintraocularClensesCinCcataractsurgery:aCsystematicCreviewCwithCmeta-analysis.COphthalmology120:2166-2175,C20135)ラウ・ツンデウオ:各種眼内レンズの位置ズレによる波面収差と見え方への影響.日視能訓練士協誌C46:35-39,C20176)大沼一彦:不正乱視の基礎と臨床研究(4-1)色収差の基礎.視覚の科学C29:3-11,C20087)根岸一乃:不正乱視の基礎と臨床研究(4-2)色収差の臨床.視覚の科学C29:12-15,C20088)鶴田匡夫:第C7・光の鉛筆C.光技術者のための応用光学.p480-494,アドコム・メディア,20069)NegishiCK,COhnumaCK,CHirayamaCNCetal;Policy-BasedCMedicalCServicesCNetworkCStudyCGroupCforCIntraocularCLensCandCRefractiveSurgery:E.ectCofCchromaticCaberra-(23)あたらしい眼科Vol.C41,No.2,2024C133

トーリックに必須の知識

2024年2月29日 木曜日

トーリックに必須の知識EssentialClinicalKnowledgeforToricIOL二宮欣彦*はじめにトーリック眼内レンズ(intraocularlens:IOL)には球面度数〔単位はディオプトリ(D)〕と円柱度数(スタイルもしくはモデルとして表される)の二つの度数の組み合わせがあり,術前にはこの度数の組み合わせと角膜の強主経線を決定する.手術では,角膜の強主経線に対してトーリックIOLの弱主経線(トーリック軸マークを結んだ線)を合わせることで乱視を矯正する.本稿では,スタイル選択そして術前検査で最低限必要なことを示し,手術についてはサージカルガイダンスだけでなく,簡便な方法について紹介する.また,せっかくのトーリックIOLを用いた手術の結果を台なしにしかねない落とし穴とその対策についてわかりやすく解説する.IトーリックIOLのスタイルとは世界で初めて商用化され普及したトーリックIOLはアルコン社のもので,先行した非トーリックモデルと同じプラットフォームにそのトーリックモデルが追加された.トーリックモデルには複数の異なる円柱度数のものが用意され,円柱度数の小さいものから簡易的にT3,4,5,6…というスタイル名でよばれるようになった.このため本稿では円柱度数を表すのに,レンズのモデルとは区別しスタイルとよぶことにする.ケラトメータなどで測定できる角膜乱視の円柱度数と,その矯正のために用いられるトーリックIOLの円表1角膜乱視の円柱度数とトーリックIOLの円柱度数が完全に同じとはならない理由キーワード説明①度数の刻みトーリックIOLの円柱度数には刻み(ピッチ)があるから②頂間補正角膜面とIOL面の間には距離があり頂間補正が必要であるから③角膜後面乱視ケラトメトリーでは測定できない角膜後面乱視などを加味する必要があるから柱度数は完全に同じとはならない.その理由を表1に示す.表中の①,②,③について順に説明する.①についてはケラトメトリーの角膜面での乱視を0.5D刻みで矯正するようにスタイルが決定されている.表2の第3列「角膜面換算の円柱度数(D)」でT3以降は0.5刻みとなっていてわかりやすい.なお,わが国では現在,T2は3焦点レンズのPanOptix(アルコン社)のみ設定されていて,「IOL面換算の円柱度数(D)」だけは例外的にこの刻みに従っておらず,1.0である.同じく「角膜面換算の円柱度数(D)」も例外的に,表2下の「IOL面換算:角膜面換算=1:約2/3」の換算式に照らして,IOL面の円柱度数1.0Dから計算して約2/3倍,すなわちきりのよい0.65Dであると覚えておけばよい.②については先述のIOL面換算と角膜面換算の違いを理解するとよい(表2).「IOL面換算の円柱度数」とは,IOLの球面度数同様,IOLのもつ円柱レンズ度数そ*YoshihikoNinomiya:行岡病院眼科〔別刷請求先〕二宮欣彦:〒530-0021大阪市北区浮田2-2-3行岡病院眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(15)125表2トーリックIOLの円柱度数スタイルIOL面換算の円柱度数(D)角膜面換算の円柱度数(D)CT2C1.0C0.65CT3C1.5C1CT4C2.25C1.5CT5C3.0C2CT6C3.75C2.5CT7C4.5C3CT8C5.25C3.5CT9C6C4IOL面換算:角膜面換算=1:約2/3.円柱度数は角膜面ではCIOL面の約C2/3倍(=0.65倍)となる.===表3トーリックIOLによる乱視矯正の成果を左右するものA)術前の角膜正乱視の定量的評価が正しくできているかCa.角膜不正乱視の検出Cb.正乱視のみを抽出し,トーリックCIOLで矯正(ただし円錐角膜などには注意)B)術前のトーリックCIOLのスタイル・固定軸決定が適切に行われているかC)手術におけるトーリックCIOLの固定(軸のアライメント)が正確に行われているかD)術後回旋が起こっていないかCa.長眼軸長眼に起こりやすいCb.IOLによって異なるCc.術後安静が関係する可能性表4Baylornomogramをわかりやすくした換算表トーリックCIOL乱視の種類スタイル角膜面換算の円柱度数(D)直乱視(D)倒乱視(D)CT3C1C1.7C0.4CT4C1.5C2.2C0.8CT5C2C2.7C1.3CT6C2.5C3.2C1.8CT7C3C3.8C2.3CT8C3.5C4.4C2.8CT9C4C5C3.3トーリックCIOLの各スタイルの角膜面換算の円柱度数に対し,その乱視の種類によって適応範囲を増減している.直乱視ではC0.7Dだけ消極的に(),倒乱視ではC0.7Dだけ積極的に()適応を推奨するノモグラム.(文献C4から改変引用)C3C斜乱視そのまま図1後面乱視も考慮した簡便なトーリックIOLのスタイルおよび固定軸の決定ab図2IOLマスター700の前眼部写真と実際の手術でのトーリック固定軸表示(右眼)a:IOLマスターC700(CarlZeiss社)の前眼部写真とトーリックカリキュレーターで求められたトーリック固定軸.Cb:実際の手術でのトーリック軸表示(surgeonC’sviewで術者は患者の上耳側に座している.画面下が患者の頭側).IOLマスターC700と手術顕微鏡CLumera700への連携であるカリストアイ(CALLISTOeye;CarlZeiss社)により,トーリックカリキュレーターで求められたトーリック固定軸が術野にオーバーレイされる.黄色の破線はC180°の基準線,青色のC3本線は固定軸を表す.図3IOLマスター700に搭載されたBarretttoriccalculatorの表示(図2と同一眼)青色四角で囲んだ部分:角膜前面のケラトメトリーの情報から全角膜屈折力を数学的に考慮して球面および円柱レンズ度数および固定軸角度の計算を行う,BarrettToricの結果を表したもの.赤色四角で囲んだ部分:前面だけでなく後面を考慮した,全角膜屈折力測定(TotalKeratometry:TK)を用いて球面および円柱レンズ度数および固定軸角度の計算を行う,BarrettTKToricの結果を表したもの.青・赤色の楕円:それぞれの式において,術後乱視ゼロを得るための最適の円柱度数と固定軸角度を示したもの.b図4マニュアルで基準点マーキング,固定軸マーキングを順に行う方法ディスポのトーリックゲージ/マーカー(カイインダストリーズ)を用いた例.Ca:術前に細隙灯顕微鏡で付けられたC6時の基準点マーキング()に分度器のC.90°()を合わせる.Cb:固定軸マーキング.Cc:圧痕()で視認性は十分あり,インクは用いていない(は術前に付けられたC6時の基準点マーキング).