考える手術.監修松井良諭・奥村直毅Mooren潰瘍の外科的治療四條泰陽東京歯科大学市川総合病院眼科周辺部角膜潰瘍は,感染,自己免疫・炎症性疾患,変性疾患など,さまざまな原因によって発症する.本稿では,その中でもとくに治療に難渋することの多いMooren潰瘍に対する外科的治療について述べる.軽症例では,病変が視軸から離れた部位に限局しているため,ステロイド点眼やシクロスポリン点眼などの薬物療法が主たる治療となる.角膜穿孔がわずかである場合には治療用ソフトコンタクトレンズの装用により改善する例もあるが,重症化する例もあり,進行の抑制が重要である.一方,若年者や両眼性の患者には,局所治療外科的治療には,病巣に隣接する結膜を輪部から約3mm切除する結膜切除術(Brown手術)や潰瘍底の掻爬が標準的な手技とされているが,さらに角膜輪部幹細胞疲弊症をきたすような重症例や再発を繰り返す場合は,角膜輪部移植や角膜上皮形成術の併用が有効であり,長期的な炎症制御と視機能の維持が報告されている.穿孔をきたし前房が消失しているような患者には表層角膜移植も併用する.角膜移植を行う際には,視機能への影響を最小限に抑えるため,移植片のサイズやデザイン(円形,扇形),縫合糸のテンションや方向,さらには切除範囲の決定にも十分配慮する.また,早期に上皮化するように移植片との間に段差が生じないように注意し縫合する.術後は炎症が消退するまでステロイドや,シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬による局所および全身治療を継続・漸減していくが,その間も緑内障や感染症,全身性副作用,さらには再発に注意しながら慎重に経過観察する必要がある.聞き手:周辺部角膜潰瘍の原因について教えてください.連角膜症(lacrimalCdrainageCpathwayCdisease-associat-四條:周辺部角膜潰瘍の原因は感染性角膜潰瘍,Cedkeratopathy:LDAK)に周辺部角膜潰瘍が発生するMooren潰瘍,膠原病による角膜炎,角膜フリクテンなことが報告されています.これらのように周辺部角膜潰どによる非感染性の炎症性疾患,円錐角膜やCTerrien辺瘍には複数の原因があることを知っておくことが大事で縁角膜変性などの変性疾患など多岐にわたります.ます.た,潰瘍には至りませんが,隆起性構造物(翼状片や濾過胞など)が原因で生じる菲薄性変化(dellen)は鑑別す聞き手:では,Mooren潰瘍の外科的治療について教える必要があります.最近は,涙道閉塞などに伴う涙道関てください.(89)あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C11690910-1810/25/\100/頁/JCOPY考える手術四條:Mooren潰瘍は基本的にステロイドや免疫抑制薬の点眼や全身投与などの薬物療法で疾患の消炎を図ることが第一選択となりますが1),若年で両眼性の場合(atypicalやCmalignantとよばれる)は治療に反応が悪いとされます.そのような患者には薬物療法を併用しつつ,外科的治療も視野に入れます.具体的には,①結膜切除術(Brown手術),②角膜上皮形成術,③表層層状角膜移植術があげられます.聞き手:まずは,Brown手術について教えてください.四條:Brown手術は,病変部に一致した輪部からおおよそC3Cmmの結膜を切除し,強膜を露出させる手技です.結膜血管からの炎症細胞の遊走を物理的に遮断し,角膜組織への接触を抑制します.Brown手術単独では沈静化しないケースも多く,潰瘍底に蓄積した炎症細胞の掻爬や,浸潤を伴った角膜の切除も並行して行われます.手術だけに頼らず,点眼や内服治療も同時に行うことが大切です2).聞き手:次に,角膜上皮形成術に用いる切片の作製について教えてください.四條:上皮形成術に使用するClenticuleには,結膜組織の侵入をブロックする効果があります3).さまざまな作製方法がありますが,ここでは全層移植後の強角膜片からの作製方法を述べます.全層移植後の強角膜片の輪部付近に剪刀やメスでC2mm程度の切れ込みを入れ,Katzin剪刀で輪部に沿って切開をしていきます.その後,実質側を剪刀で押し当てるようにトリミングし,厚みをC1/3程度まで薄くして縫合後にホスト角膜と段差が生じないようにします.このとき,裏表がわからなくならないように皮膚ペンなどで上皮側にマーキングしておきます.また,作業中に角膜が乾燥しないよう粘弾性物質を塗布するなどします.Lenticuleの作製が終わったら縫合ですが,潰瘍部の外周に設置して両端をC10-0ナイロン糸で緩みがないように縫合します.重症なCMooren潰瘍では,全周性に輪部組織が傷害され輪部幹細胞疲弊に至っていることもあります.そのような場合は,上皮供給のために輪部移植片を作製して,掻爬した潰瘍部を覆うように縫着します.聞き手:表層層状角膜移植の際の角膜切除について注意点はありますか?四條:Mooren潰瘍の場合,病変が輪部に沿って広範囲に広がっているケースがほとんどですので,扇形のデザインで表層角膜移植をすることが多いです.まず,手動トレパンを用いて中心側をマーキングして,病変部をすC1170あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025べて覆うように扇状に切除範囲を決定します(病変部よりC0.5Cmm以上距離をとります).また,その後の移植片作製のために,カリパーなどで各頂点間の距離を測定しておきます.次にマーキングに沿ってできるだけ垂直にメスを入れ,表層.離刀やゴルフ刀を用いて角膜を切除します.穿孔していても虹彩が嵌頓して前房が形成されていればそのまま処置を行い,前房が保持されていない場合は粘弾性物質を用います.また,顕著な菲薄部や穿孔部周辺の切除はなるべく最後に回して,他の部分からとりかかるといいでしょう.聞き手:扇形の移植片の作製で注意点はありますか?四條:前述したマーキングを参照にして移植片の作製を行います.移植片の作製は可能なかぎり透明な角膜組織部分を用いるようにします.用意した強角膜切片に対して,最初に中心側の円形部分のトリミングから行います.ドナーパンチを用いて角膜裏面から打ち抜く場合は,0.25Cmm大きいサイズで打ち抜きます.穿孔して眼球が虚脱しているような場合はC0.5Cmm大きく打ち抜くこともあります.続いて各頂点間の距離を参考にして,打ち抜いて残った強角膜切片をスプリング剪刀や角膜剪刀を用いてさらにトリミングします.切除部分に合わせて適宜形状や厚みを確認し調整していきます.とくに重要な点は,上皮同士がしっかり合うようにデザインすることです.聞き手:表層層状角膜移植の縫合で注意点はありますか?四條:扇形の移植片の内側からC10-0ナイロン糸を用いて端々縫合していきます.その後,移植片の両端を縫合して周辺側の強膜側という順で縫合していきます.中心側は上皮を合わせること,乱視をできるかぎり惹起しないようにすること,瞳孔に縫合糸がかからないようにすることなどに注意します.周辺部の強膜側の縫合はバイトを長めにして,少し強めに縫うなどすると,上皮が合わせやすくなります.ある程度縫合が終わったら,嵌頓していた虹彩の整復や前房内の粘弾性物質の除去を行います.文献1)木下茂,大橋裕一:Mooren潰瘍の病態と治療.日眼紀C41:2055-2061,C19902)MallemCK,CLibermanCP,CBerkenstockCMKCetal:ClinicalCoutcomesinperipheralulcerativekeratitis.AmJOphthal-molC272:98-105,C20253)KinoshitaS,OhashiY,OhjiMetal:Long-termresultsofkeratoepithelioplastyCinCMooren’sCulcer.COphthalmologyC98:438-445,C1991(90)