加齢黄斑変性・パキコロイド関連疾患Age-RelatedMacularDegenerationandPachychoroidSpectrumDisease森隆三郎*はじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)・パキコロイド関連疾患(pachychoroidspec-trumdisease:PSD)の診療において,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)や光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を用いることにより,黄斑部新生血管(macularneovascularization:MNV)の有無や疾患活動性の判断が可能となり,網膜疾患専門医でなくてもフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)やインドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiography:IA)を施行せず,多くの患者で診断や治療後の評価が可能となっている.ベストの治療をめざすためには初診時の確定診断と治療開始後の効果判定が重要であり,そのためにOCTとOCTAの読影は正確に即時にしなければならない.本稿では,AMDとPSDの日常診療におけるOCTとOCTAの読影について画像を提示し解説する.なお,AMDはわが国の診断基準では,滲出型AMDと萎縮型AMDに分類されるが1),前者についてのみ触れる.また,PSDにはpachychoroidpigmentepitheliopa-thy(PPE),pachychoroidneovasculopathy(PNV),中心性漿液性脈絡網膜(centralserouschorioretinopa-thy:CSC),ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalcho-roidalvasculopathy:PCV),局所脈絡膜陥凹(focalchoroidalexcavation:FCE)やperipapillarypachycho-roidsyndrome(PPS)が含まれるが2),PCVはAMDに含め,CSCとPNVについて触れる.網膜疾患専門医ではない臨床医が診察時にOCT,OCTAをどのように読影するのかの内容に絞ったため,それぞれの疾患の病態や実際の治療方法など専門的な内容については割愛した.また,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)は,海外でのAMDに関する用語変更に伴いMNVと表記した3).IOCT1.眼底疾患鑑別のファーストタッチはOCTで網膜色素上皮を確認するカラー眼底写真のみでは診断ができない黄斑疾患は多いが,AMDとそれ以外の黄斑疾患の鑑別のファーストタッチはOCTである.わが国のAMDの分類と診断基準では,主要所見以外の滲出性変化〔網膜下灰白色斑(網膜下フィブリン)〕,硬性白斑,網膜浮腫,漿液性網膜.離)と網膜または網膜下出血は,MNVに伴う二次的な所見としてのみみられる所見ではなく,特異度は高くないものとして,随伴所見と記載されている1).黄斑部の網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)を見て,大きさにかかわらずRPEの隆起がなければAMDおよびパキコロイド関連疾患の多くは否定できる.たとえば黄斑浮腫を伴う陳旧性網膜静脈分枝閉塞症では,急性期と異なり網膜出血がめだたず硬性白斑と網膜内浮腫がおもな所見のため,MNVに伴う滲出と診断してしまうかもしれない(図1a~c).また,網膜出血*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-6日本大学病院眼科0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(55)291図1AMDにみられる随伴所見を網膜色素上皮(RPE)の隆起の有無で鑑別a~c:陳旧性網膜静脈分枝閉塞症.a:カラー眼底写真.黄斑部に硬性白斑と網膜浮腫()と網膜出血を認める.b,c:OCT.黄斑浮腫を認めるが,RPEの隆起所見はみられない().d~f:網膜細動脈瘤.d:カラー眼底写真.黄斑部に網膜出血と上耳側に白色病変を認める().e,f:OCT.網膜下出血を認めるが,RPEの隆起所見はみられない().細動脈瘤を網膜内に認める().~~図2軟性ドルーゼンと小型の網膜色素上皮.離(PED)の鑑別RPEの隆起部内部の高輝度の有無をみる.a,b:軟性ドルーゼン.a:カラー眼底写真.黄斑部に多発する軟性ドルーゼンを認める.b:OCT.RPEの隆起部内部は高輝度を示す().c~e:小型のPED(中心性漿液性脈絡網膜症).c:カラー眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離と小型のPED()を認める.d:OCT.RPEの隆起部内部は高輝度を示さない().はeの漏出部位.e:フルオレセイン蛍光眼底(FA).PED上部辺縁に蛍光色素の漏出部位を認める().~~ef図3大型のPEDは辺縁のノッチで黄斑新生血管(MNV)の有無を判定a:カラー眼底写真.大型のPEDを認める.MNVなし.b~d:OCT.PED辺縁の全周囲にノッチを認めない(◯)ことからMNVの存在はおおよそ否定できる.e:FA後期.f:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)後期.FAとIAともにMNVを示唆する過蛍光を認めない.図4CSCとVogt・小柳・原田病の鑑別脈絡膜所見で鑑別する.a:カラー眼底写真.後極部に漿液性網膜.離〔網膜下液(subretinal.uid:SRF)〕を認める.b:OCT.隔壁のあるSRF(),脈絡膜の間質の肥厚とRPEの不整な起伏所見を認める().図5CSCと脈絡膜腫瘍の鑑別脈絡膜所見で鑑別する.a,b:脈絡膜骨腫.a:カラー眼底写真.黄斑部鼻側に白色病巣を認める().b:OCT.SRF()と脈絡膜骨腫に伴うRPEの隆起所見を認める().c,d:脈絡膜血管腫.c:カラー眼底写真.黄斑部鼻側に橙赤色隆起病巣を認める().d:OCT.SRF()と脈絡膜血管腫に伴うRPEの隆起所見を認める().e,f:転移性脈絡膜腫瘍.e:カラー眼底写真.黄斑部上耳側に灰白色病変を認める().f:OCT.SRF()と転移性脈絡膜腫瘍に伴うRPEの隆起所見を認める().図6CSCの中心窩網膜厚の菲薄化視力の回復が期待できないことを把握する所見である.a:中心性漿液性脈絡網膜症.右眼中心窩網膜厚は40μmで,bの左眼の190μmと比較すると菲薄化が著明である.矯正視力右眼0.3,左眼1.2.c:右眼.光線力学的療法5カ月後,中心窩網膜厚は50μmで,矯正視力右眼0.3のままである.図7網膜色素上皮裂孔(RPEtear)の範囲a~c:Type1MNV治療前.a:カラー眼底写真.多発するドルーゼンと黄斑部下耳側にPEDを認める.b:眼底自発蛍光(FAF).黄斑部下耳側に過蛍光を認める().c:OCT.MNVに伴うRPEの不正な隆起を認める().d~f:抗VEGF薬注射20日後のRPEtear.d:カラー眼底写真.RPE欠損部位は灰黒色として認める().e:FAF.RPE欠損部位は低蛍光として認める().f:OCT.RPE欠損部位(の範囲)の脈絡膜反射は高輝度として認め(□),重積したRPEをその辺縁に認める().図8PEDのRPE菲薄化の範囲a:カラー眼底写真.黄斑部にPEDを認める.b:IA中期.低蛍光を示すPED内に過蛍光認める().c:FAF.RPE菲薄化部位は低蛍光として認める().d:OCTRPE菲薄化部位(の範囲)の脈絡膜反射は高輝度として認める(□).図9抗VEGF薬注射長期継続中のType1MNVRPE菲薄と萎縮の有無は脈絡膜反射の輝度で確認する.a:カラー眼底写真.複数回の抗CVEGF薬注射を長期継続中のCType1MNV.Cb:FAF.RPE萎縮部位は低蛍光として認める()c:OCT.RPE菲薄と萎縮部位(の範囲)の脈絡膜反射は高輝度として認める(□).診療録に毎回記載するIRF+-↑↓→SRF+-↑↓→PED+-↑↓→図10AMDの滲出液(.uid)分類a:網膜内液(IRF),b:網膜下液(SRF),c:網膜色素上皮下(sub-RPE).uid(PED).診察時にそれぞれの所見について,ある(+),なし(.),増加(↑),減少(↓),不変(→)のいずれかを診療録に記載する.図11ポリープ状脈絡膜血管症に対する抗VEGF薬注射導入期の経過同部位のスキャンラインで所見の変化を確認.a:中心窩を横切るラジアルC12本のスキャンライン(b~eのOCTは6番のスキャンライン).b:抗CVEGF薬注射前.SRF(※)とフィブリンを伴うポリープ状病巣()と異常血管網のダブルレイヤーライン()を認める.c:1カ月後.SRFは吸収し,ポリープ状病巣()の縮小化とダブルレイヤーライン()の平坦化を認める.d:2カ月後(2回目注射後C1カ月).ポリープ状病巣()の縮小化とダブルレイヤーライン()の平坦化を認める.e:4カ月後(3回目注射後C2カ月).SRFは認めないが,ポリープ状病巣()の再拡大とダブルレイヤーライン()の再隆起を認める.図12ポリープ状脈絡膜血管症PRN経過観察中(ポリープ状病巣の拡大:たけのこポリープからの出血)同部位のスキャンラインで所見の変化を確認.a:導入期後抗CVEGF薬注射追加なくC9カ月,カラー眼底写真.橙赤色隆起病巣は認めない.Cb:OCT.ポリープ状病巣は認めない.Cc:3カ月後,カラー眼底写真.橙赤色隆起病巣を認める().d:OCT.ポリープ状病巣(たけのこポリープ)の出現()を認める.Ce:3カ月後,カラー眼底写真.橙赤色隆起病巣を認める().f:OCT.たけのこポリープの拡大()を認めるも漿液性網膜.離など滲出性変化は認めない.g:17日後,カラー眼底写真.網膜下出血を認める().h:OCT.ポリープ状病巣に伴う出血性色素上皮.離を認める().C③C④図13自動層別解析画像のouterretina層とchoriocapillaris層でMNVの血管網を確認する(pachychoroidalneovasculopathy)a:カラー眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離を認める.b:OCT.漿液性網膜.離(※)とCRPEの不整な隆起を認める().脈絡膜は肥厚している().c:OCTA自動層別解析画像.①Csuper.cial,②Cdeep,③Couterretina,④Cchoriocapillarisの四つのセグメンテーションの画像.③Couterretinaと④Cchoriocapillarisの層でCMNVの血管網を認める.図14Subretinalhyperre.ectivematerial(SHRM)内のMNVをOCTAのB-スキャンで確認a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認める.b:OCT.網膜下にCMNVとフィブリンを示唆する高反射病巣(SHRM)を認める(□).c:OCTA.dのC2本のライン()のセグメンテーションの範囲にCMNVの血管網を認める.d:Bスキャン.SHRM内のCMNVの血流を確認ができる().OCTで認めるCSHRMの深部のみがCMNVである.図15治療前後のMNVの血流と治療後の網膜感度〔治療前〕a:OCTA.choriocapillaris層.MNVの血管網を認める().b:OCT.SRF(※)とCRPEの不整な隆起を認める.脈絡膜は肥厚している().〔抗CVEGF注射併用光線力学療法C3年後(追加治療なし)〕c:OCTA.Choriocapillaris層.MNVの血管網は拡大している.FA(10分)面状の過蛍光を認める().d:OCT(※).RPEの不整な隆起は残存しているが(),SRFを含め滲出性所見は認めない.e:マイクロペリメトリー.OCTAで認めるCMNVの血管網の範囲の網膜感度は良好に保たれている.□はCOCTAと同範囲.