■オフテクス提供■1.CLEARについてはじめにコンタクトレンズ(contactlens:CL)がC1887年に発明されて以降,CLに関する査読を経た学術論文はすでにC19,000以上にも及ぶ.英国コンタクトレンズ協会(BritishCContactCLensAssociation:BCLA)はC2021年にCCLのエビデンスに基づく総説“ContactClensCevi-dence-basedCacademicCreports”(CLEAR)を発表した1).CLEARは,約C100人に及ぶ多くの分野の専門家らが,これまでのCCL研究のエビデンスをもとにレビューを行い,今後の実臨床,製造に関するイノベーション,研究の方向性を示すためにまとめたもので,その内容は表1に示す全C11章にわたっている.本セミナーでは,この叡智の結晶ともよべるCCLEARに日本の眼科医やスタッフが少しでも親しんでいただけるよう,紐解くこととした.しかし,英国と日本との考え方や習慣などの違いや,用語や略語の相違などの点から,日本においては次期尚早,あるいはにわかには受け入れがたいと思われる内容も含まれている.プロセスについてCLEARのプロジェクトでは,CLに関連するトピックが包括的にカバーされるように,専門家からなる複数の作業グループが構成された.各章のサブトピックは各専門家に割り振られ,エビデンスに基づいた臨床的なガイドラインとなるように執筆された.システマティック・レビューについてCLEARではシステマティック・レビュー方式が採用された.これは一定の基準以上の複数の論文からエビデンスを収集し,評価,総合する方法で,個別の研究論文よりも高いエビデンスレベルとされ,ガイドラインの策定に活用されている.CL研究においては,異なる研究デザインや試験方法,被験者の選択などによって,研究の質が異なることがある.一部のCCL研究では,一般的な研究の質が担保されていない研究デザインが用いられている場合がある.土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科表1CLEARの目次第C1章CLEARについて第C2章前眼部の解剖学・生理学第C3章CL水濡れ性,洗浄,消毒,相互作用第C4章CLの素材およびデザインによる眼への解剖学的・生理学的影響第C5章CL関連眼光学第C6章オルソケラトロジー第C7章スクレラルレンズ第C8章CLの治療目的装用第C9章CL眼合併症第C10章エビデンスに基づいたCCL装用練習C1第C11章CL技術の未来CL用語についてCLの分野では異なる用語が混在しており,混乱を招く可能性がある.解剖学的用語の一部は,たとえばBowman膜やCDescemet膜は個人名に由来する命名であるが,それらは解剖学用語委員会によってCanteriorClimitinglaminaとCposteriorClimitinglaminaと再定義された.Rigidgaspermeable(RG)レンズという用語は当初,酸素透過性の硬いCCLを,ポリメチルメタクリレート(PMMA)をはじめとする既存の酸素を通さない素材と区別するために用いられるようになった経緯がある.RGは硬いものと解釈され,これがCCL装用時の不快感を引き起こす印象を患者に与えると考えられたことから,最近では単純に「ガス透過性」または「GP」と短縮されるようになった.しかし,現存するCCLはソフトCCL(softCL:SCL)を含め,すべて「酸素透過性」である点に意義を唱える者もいた.そこで「角膜レンズ」という用語への変更をメンバーに問うたところ,62%が賛成し,18%が反対した.反対のおもな理由はCLも角膜に接触しているためとした.CLEARは結局,日本でいうところの酸素透過性ハードCCLに対してはRGという用語を採用した.スクレラルレンズの用語は最近再定義された経緯があったが,CLEARではこれを受け入れ,角膜を超えるサイズのすべてのCRGは「スクレラルレンズ」とよぶこととした.(53)あたらしい眼科Vol.41,No.1,2024C530910-1810/24/\100/頁/JCOPY表2CLEAR提示のコンタクトレンズ分野の一般的な略語リスト略語英名日本名CBAKCBOZR/BOZDCCIECCLDCCLIDECCLPCCDk/tCECPCEDOFCEDTACHEMACHPMCCHVIDCLIPCOFCLWECMGDCMKCMPDSCOrtho-kCPEGCPHMBCPMMACPoLTFCPVACPVPCSICSCSiHyCVPACbenzalkoniumchlorideCbackopticzoneradius/diameterCCornealin.ltrativeeventCcontactlensdiscomfortCcontactlensinduceddryeyeCcontactlens-inducedpapillaryconjunctivitisCoxygenpermeability/transmissibilityCeyecarepractitionerCextendeddepthoffocusCethylenediaminetetraaceticacidC2-hydroxyethylmethacrylateChydroxypropylmethylcelluloseChorizontalvisibleirisdiameterClid-parallelconjunctivalfoldsClidwiperepitheliopathyCmeibomianglanddysfunctionCmicrobialkeratitisCmultipurposedisinfectingsolutionCorthokeratologyCpolyethyleneglycolCpolyhexamethylenebiguanideCpolymethylmethacrylateCpost-lenstear.lmCpolyvinylalcoholCpolyvinylpyrrolidoneCsolutioninducedcornealstainingCsilicone-hydrogelsoftcontactlensCverticalpalpebralaperture塩化ベンザルコニウムレンズ後面曲率半径/直径CL装用による上眼瞼結膜の乳頭結膜炎酸素透過率/透過性拡張焦点深度エチレンジアミン四酢酸C2-ヒドロキシエチルメタクリレートヒドロキシプロピルメチルセルロースマイボーム腺機能不全細菌性角膜炎多目的消毒製剤オルソケラトロジーポリエチレングリコールポリヘキサメチレンビグアニドポリメチルメタクリレートレンズ下の涙液層ポリビニルアルコールポリビニルピロリドンシリコーンヒドロゲルレンズ注:空欄はまだ適切な日本名のないもの.略語について用語の統一を図るためにCCLEARでは略語の使用について検討し,略語は広範に知られている場合や読みやすさを向上させる場合にのみ使用することとした.2語の略語は,略語が表す言葉よりも一般的に使用される場合にのみ採択された.これらの用語リストが今後の著作物で標準的に使用され,新しい眼科医療従事者に用いられることを期待していると綴られた.標準単位および国の略語は,一般的に受け入れられている用語であるため省略された.略語の代表例を表2に示す.ちなみに,これらはあくまでCBCLAによるCCLEARで提示された略語であって,日本眼科学会用語集や日本コンタクトレンズ学会の見解とは相違があるものもあることをお断りしておく.まとめCLEARは全C300頁である.そのすべてを解説するのは到底不可能であるため,本セミナーで取りあげる内容は,筆者が重要と考える主観に基づく構成になるであろう点はご容赦いただきたいが,まずは本セミナーを通じてCCLEARについて知り,これを取っかかりとして興味が湧いた分野の原著に触れるきっかけにしていただければと思う.文献1)WolffsohnCJS,CMorganCPB,CBarnettCMCetal:ContactClensCevidence-basedCacademicreports(CLEAR)C.CContCLensCAnteriorEyeC44:129-131,C2021