●連載◯281監修=福地健郎中野匡281.Heads-upsurgeryとOCTを用いた杉原一暢島根大学医学部眼科学講座緑内障手術Heads-upsurgery(HUS)は,顕微鏡の鏡筒を覗く代わりに大型の専用ディスプレイを見ながら行う手術である.網膜・角膜領域では有用性が多く報告されているが,緑内障領域では限定的な活用にとどまっている.緑内障手術中のCHUSとCOCTの活用について概説する.●はじめにHeads-upsurgery(HUS)は,角膜疾患・白内障・網膜疾患の手術では,術中光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)による移植片のアダプテーションの確認,CCCマーカー,トーリックマーカー,黄斑円孔の確認をはじめとした多彩なデジタル支援技術や,教育面での有用性との親和性もあり,使用する術者や導入する施設が増えてきており,眼科手術における一つのトピックとなっている.とくに硝子体手術においては,内境界膜.離時に黄斑円孔形成の有無や,翻転した内境界膜の位置確認,また強膜内固定術では眼内レンズの偏位の確認など,多くの有用性が報告されている.しかし,画面のハレーションや,ディスプレイがC1台だと助手の座る位置が限られる,手術室が狭いとディスプレイを置く位置に難渋する,OCTを操作する人員が必要,などいくつかのデメリットも存在している.緑内障手術では,単純なCHUSは使用できるが,術中COCTはまだまだ活用できていないのが現状である.C●HUSの手術顕微鏡顕微鏡はCAlcon社のCNgenuityとCZeiss社のCARTE-VO800が使用可能である.多少のタイムラグがあるとされるが,硝子体手術での報告では,通常の手術操作の範囲内では気にならないとしている1).これらの顕微鏡にCZeiss社のCRescan700を組み合わせることでCHUSにおける術中COCTが使用可能となる.本稿における画像はすべて当院で手術を行ったCARTEVO800とCRes-can700による術中画像である.C●緑内障手術におけるHUSとOCTの活用緑内障手術における術中COCTの活用はいくつか既報があるが,強膜フラップの確認や,エクスプレスや緑内障チューブシャント手術のチューブ位置確認,ブレブの広がりの確認などにとどまっており,正直にいうと「術(81)中COCTがあると非常に便利な手術ができる」というわけではない.実際に緑内障手術で活用しようとすると,いくつかの困難に直面する.たとえば,隅角手術では隅角レンズを使用するため,手術部位にCOCTでピントを合わせるのが困難で,どうしても解像度が下がってしまう.球後麻酔を行い眼球運動を抑制する硝子体手術とは異なり,隅角手術では眼球運動や隅角鏡の押し手によって眼球が動いてしまう.また,角膜や硝子体と違い,観察部位に少量の出血があるだけで,解像度が一気に低下してしまう.そのような限定的な条件の中でも,いくつかの挑戦を行ったので紹介する.C●隅角鏡下のSchlemm管の同定外来で前眼部COCTを撮影するとCSchlemm管や集合管が確認できることがあるが,MicrohookCabCinternoCtra-beculotomyの術中は前房内の粘弾性物質や隅角鏡の圧迫のためか,Schlemm管の同定はむずかしかった(図1).マイクロフックが金属製品のため,隅角切開の瞬間は観察がむずかしい.切開後に確実に線維柱帯が切開されてCSchlemm管が開放されていることは確認できる(図2:).切開の瞬間はマイクロフックを動かすと眼球が動くため,切開部分をCOCTで見ながら切開するのは至難の業である.切開後の開放確認にとどめることをお勧めする.CiStentinjectW挿入後に術中COCTで確認すると,隅角部に埋め込まれた本体が確認できる(図3:).深く埋没していないことは確認できるが,金属製品のため詳細はわからない.Ahmed緑内障バルブ挿入時の自己強膜弁作製を術中OCTで撮影した(図4).十分な厚さのフラップが作製されている.しかし,OCTがなくても「見ればわかる」ので,有用性という意味ではあまり利点がない.C●おわりにHUSおよび術中COCTは硝子体手術の分野では活用あたらしい眼科Vol.40,No.11,202314510910-1810/23/\100/頁/JCOPYされてきているが,緑内障手術においては有用性が低く,観察時間は単なる手術時間の延長を意味している.HUSはスタッフに対する手術教育という面では多くの利点があるが,術者に対するメリットはまだまだ少ない.ただし,今後は緑内障手術も含めて眼科手術はロボット手術化,遠隔手術化していく可能性もあり,緑内図1前房内を粘弾性物質で置換後,隅角鏡越しにOCT撮影図2赤矢印部分でSchlemm管が切開されフラップでできていることがわかる図3赤矢印部分にiStentinjectWが埋没していることがわかる図4翻転したフラップが確認できる障術者もCHUSに慣れていく必要があるかもしれない.文献1)TaKimD,ChowD:Thee.ectoflatencyonsurgicalper-formanceCandCusabilityCinCaCthree-dimensionalCheads-upCdisplayCvisualizationCsystemCforCvitreoretinalCsurgery.CGraefesArchClinExpOphthalmolC260:471-476,C20221452あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023(82)