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基礎研究コラム:網膜色素上皮とフェロトーシス

2026年8月31日 月曜日

網膜色素上皮とフェロトーシス網膜色素上皮とフェロトーシス加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD),とくに萎縮型CAMD(dryAMD)では,網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)の変性が病態の中心と考えられています.近年,鉄依存性の脂質過酸化を特徴とする制御性細胞死「フェロトーシス」が,dryAMDにおけるCRPE障害に関与する可能性が注目されています1).フェロトーシスでは,酸化ストレス下で細胞膜を構成するリン脂質が過酸化され,その反応が連鎖的に進行することで細胞は致命的な障害を受けます.フェロトーシスは,カスパーゼ活性化を伴うアポトーシスや,膜破綻を特徴とするネクロプトーシスとは異なり,鉄依存的な脂質過酸化反応そのものが細胞死を規定する点に特徴があります.これまでフェロトーシス抑制の中心的因子としてはグルタチオンペルオキシダーゼC4(GPx4)がよく知られていましたが,近年,カルシウム非依存性ホスホリパーゼCA2(iPLA2β)も,フェロトーシス抑制および膜の恒常性維持に関与することが報告されています2).iPLA2βは,過酸化された脂肪酸鎖をリン脂質から切り離し,新たな脂肪酸と置換するCLands’cycleを担うことで,膜リン脂質の質的恒常性を維持します.この機構は,すでに生じた脂質過酸化物を還元するGPx4とは異なり,過酸化脂質が蓄積・増幅する前段階で膜障害の進展を防ぐ点に特徴があります.筆者らは,NaIO3を用いたCdryAMDモデルにおけるCRPEの酸化ストレス応答において,このCiPLA2βが脂質過酸化およびフェロトーシスの抑制因子として働くのではないか,という仮説を立てました.低用量のCNaIO3を用いてCRPEに比較的軽度の酸化ストレスを負荷すると,iPLA2βノックアウト(KO)マウスでは,過酸化脂質の蓄積が顕著となり,RPE変性が明確に認められました(図1).さらにこれらの障害は,フェロトーシス阻害薬や抗酸化剤の投与によって抑制され,iPLA2βがCRPEにおいて酸化ストレスおよびフェロトーシスから細胞を保護する役割を担うことが示されました3).ネクロプトーシスに関する考察一方,NaIO3モデルでは,ネクロプトーシスという別の制御性細胞死機構の関与も報告されています4).そこで筆者らは,NaIO3投与によってネクロプトーシスの中核分子であるRIP3のリン酸化(p-RIP3)は活性化されず,さらにCRIP3KOマウスにおいてもCNaIO3によるCRPE変性は生じること監修北澤耕司・村上祐介・中川卓鈴木貴文東京大学医学部眼科学教室CNalO3図1網膜色素上皮(RPE)におけるiPLA2βの働きNaIO3により誘導される酸化ストレス下では,鉄依存性にCPUFA含有リン脂質の過酸化が進行し,RPEでフェロトーシスが惹起される.正常なマウス(WT)ではCiPLA2βが過酸化脂質を除去し脂質過酸化を抑制するのに対し,iPLA2βノックアウトマウス(KO)では脂質過酸化が蓄積し,RPE障害が増悪する.を確認しました.これらの結果から,RPE変性の主たる細胞死機序はネクロプトーシスではなく,フェロトーシスであると結論づけました.今後の展望本研究は,NaIO3モデルにおけるCRPE変性の機序として,ネクロプトーシスよりもフェロトーシスが優位であること,CiPLA2βがその抑制因子として機能しうることを示しました.今後,ヒトCRPEやCAMD患者組織での検証,さらにはCiPLA2β経路を標的とした薬理学的・遺伝学的介入を進めることで,dryAMDに対する新たな治療戦略につながる可能性が期待されます.文献1)LiuB,WangW,ShahAetal:Sodiumiodateinducesfer-roptosisCinChumanCretinalCpigmentCepitheliumCARPE-19Ccells.CellDeathDisC12:230,C20212)ChenCD,CChuCB,CYangCXCetal:iPLA2β-mediatedClipidCdetoxi.cationcontrolsp53-drivenferroptosisindependentofGPX4.NatCommunC12:3644,C20213)SuzukiCT,CTeraoCR,CNagaharaCMCetal:iPLA2βprotectsCrtinalCpigmentCepitheliumCfromCferroptosisCinCaCsodiumCiodate-inducedmodelofdryAMD.InvestOphthalmolVisSciC66:55,C20254)HanusJ,AndersonC,SarrafDetal:Retinalpigmentepi-thelialCcellCnecroptosisCinCresponseCtoCsodiumCiodate.CCellCDeathDiscovC2:16054,C2016☆☆☆(151)あたらしい眼科Vol.43,No.8,202610010910-1810/26/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:279.緑内障チューブシャント手術既往眼におけるガスタンポナーデの影響(中級編)

2026年8月31日 月曜日

279緑内障チューブシャント手術既往眼におけるガスタンポナーデの影響(中級編)池田恒彦京都中部総合医療センター眼科近畿大学奈良病院眼科●はじめに緑内障チューブシャント手術既往眼に対して硝子体手術およびガスタンポナーデが必要となる場合がある.眼内の気体が濾過経路に与える影響としては,気体によるチューブ開口部の閉塞,チューブ内への気体迷入による濾過機能低下などが考えられる.C●症例提示患者はC40歳,女性.増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopathy:PDR)の硝子体手術後に血管新生緑内障を併発したため,4年前にCAhmed緑内障バルブ(AGV)によるチューブシャント手術が施行された.AGVは毛様体扁平部から硝子体腔内に挿入されていた.その後は眼圧コントロール良好であったが,黄斑部近傍に再増殖膜と牽引性網膜.離が進行してきたため,再手術を施行した.再増殖膜除去を行い,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固を施行した.術後,硝子体腔内は気体で充満されていた(図1)が,眼圧上昇は認めなかった.経過中,濾過経路内への気体迷入も認めなかった(図2).C●チューブシャント手術既往眼におけるガスタンポナーデの影響緑内障濾過手術既往眼に対するガスの影響を検討した報告は少ないが,Endersらはトラベクレクトミー既往眼にCDescemetCmembraneCendothelialCkeratoplasty(DMEK)と前房内ガス注入を施行した症例で,濾過胞内に気体が迷入し,一過性眼圧上昇をきたしたとしてい.一方でKimらは,AGVによるチューブシャントC)1る手術後に前房内に空気を注入した群と注入しなかった群を比較して,注入した群のほうがむしろ眼圧上昇をきた.その理由として空気)2すことが少なかったとしているがチューブ開口部付近での血餅形成を防ぐ効果があった.)3ためとしており,Hwangらも同様の報告をしているMasdipaらは,AGVの圧力特性およびチューブ内に閉(149)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1硝子体手術後の細隙灯顕微鏡写真(1)硝子体腔内はガスが充満している.チューブ内に空気が迷入しているかは確認できないが,眼圧上昇はきたさなかった.図2硝子体手術後の細隙灯顕微鏡写真(2)濾過経路内への気体迷入は認めなかった.じ込められた空気の影響を実験的に評価し,AGVチューブ内の空気は,空気なしの場合に比べて再充填圧力を約2倍増加させるとしており,チューブ内に空気が残らないように注意する必要があるとしている4).本提示例は患者が術後の伏臥位を十分に保持し,チューブ先端には眼内液が十分に存在していたため,濾過機能が維持されていた可能性があるが,AGVなどのチューブシャント手術既往眼に対して硝子体手術+ガスタンポナーデを施行する際には,やはり術後の眼圧上昇に留意する必要がある.文献1)EndersCP,CAvgitidouCG,CHeindlCLMCetal:TemporaryC.lteringCblebCfailureCinducedCbyCanteriorCchamberCsulfurChexa.uoridegas:acomplicationafterdescemetmembraneendothelialCkeratoplasty.CCaseCRepCOphthalmolC10:120-126,C20192)KimCS,CKwonCY,CLeeJY:E.ectCofCintracameralCairCinjec-tionCduringCAhmedCglaucomaCvalveCimplantationConChypertensivephase.SciRepC15:2738,C20253)HwangCSH,CYooCC,CKimCYYCetal:IntracameralCairCinjec-tionCduringCAhmedCglaucomaCvalveCimplantationCinCneo-vascularCglaucomaCforCtheCpreventionCofCtubeCobstructionCwithbloodclot.MedicineC(Baltimore)96:e9092,C20174)MasdipaCA,CKaidzuCS,CTanitoM:FlowCpressureCcharac-teristicsoftheAhmedglaucomavalveandpossiblee.ectofentrappedairinthetube.TranslVisSciTechnolC12:C16,C2023あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026999

考える手術:Sagging eye syndromeの斜視手術

2026年8月31日 月曜日

考える手術監修松井良諭・奥村直毅Saggingeyesyndromeの斜視手術飯田貴絵東京慈恵会医科大学眼科学講座後関利明国際医療福祉大学熱海病院眼科CSaggingeyesyndrome(SES)は,加齢に伴い眼窩プリーの外直筋-上直筋バンドが変性・菲薄化し,外直筋プリーが下垂することにより生じる高齢者の斜視の代表疾患である.外直筋-上直筋バンドの障害と外直筋の下降が両眼で同程度であれば開散麻痺様遠見内斜視(ARDE)を呈し,左右差があれば小角度の上下回旋斜視(CVS)を呈する.ARDEの遠見内斜視角は平均約7Δ,CVSの遠見上下斜視角は平均約6Δと,SESの斜視は小角度であることが特徴である.複視の自覚や患者の希望を含め,プリズム眼鏡で対応できなければ手術を検討する.ARDEに対しては,通常の内直筋後転では低矯正となるため,遠見での最大斜視角の倍量を目標斜視角とする内直筋倍量後転を施行する.CVSに対しては,上下直筋の後転術を行い,回旋偏位が強ければ水平移動術を併施する.上下斜視角が6Δ以内であれば,点眼麻酔下で眼位を確認しながら調整する段階的垂直直筋部分切腱術も有用である.一方,術後に約20%で再発を認めると報告されており,術前の説明が必要である.聞き手:SaggingCeyesyndrome(SES)の診断と手術適す2).プリズム眼鏡は水平偏位C10CΔ以内,垂直偏位C4CΔ応の基本的な考え方を教えてください.以内,回旋偏位C8°以内の患者では有効なことが多いと飯田:SESには,開散麻痺様遠見内斜視(age-related報告されています3).SESの斜視角は小角度のため,プCdistanceesotropia:ARDE)と,小角度の上下回旋斜視リズム眼鏡で対応できることも少なくありません.しか(cycloverticalstrabismus:CVS)のC2タイプがありまし,加齢とともに斜視は進行するため,プリズム眼鏡をす.ARDEは遠見で増大する内斜視であり,遠見は内何度も作り直している患者や,多焦点眼内レンズ挿入眼斜視ですが,近見は内斜位もしくは外斜位となるのが特など眼鏡装用自体を好まない患者など,眼鏡以外の方法徴です.SESは加齢に伴う眼窩プリーの外直筋C.上直での複視解消を希望する患者には手術を検討することが筋バンドの変性と外直筋プリーの下垂により生じる斜視望ましいです.また,回旋偏位は眼鏡では補正できないですが,変性の程度が左右同程度であればCARDEとなため,8°を超える回旋偏位を有する場合は手術を検討しり,左右で程度が異なるとCCVSとなります.そのため,ます.CVSでは,外直筋プリーの下垂が強いほうの眼が下斜視眼となり,外方回旋も下斜視眼で上斜視眼より強くな聞き手:ARDEの手術方法について教えてください.ります.また,頭部傾斜試験の左右差はC5CΔ以下となり飯田:ARDEに対しては,内直筋後転術や外直筋短縮ます.そのほか,上眼瞼の陥凹や腱膜性眼瞼下垂,下眼術で対応可能ですが,通常の内直筋後転では低矯正とな瞼の脂肪脱などCsaggingClikefaceとよばれる顔貌所見るため,目標斜視角を遠見内斜視角の倍量とする内直筋を呈することや1),やせ型の人に多いことなどが特徴で倍量後転術を施行します4).その際に正面眼位だけでな(147)あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026C9970910-1810/26/\100/頁/JCOPY考える手術く,左右側方視時の第二眼位での内斜視角も確認し,もっとも内斜視角が大きい値のC2倍を目標斜視角として手術を行います.最大斜視角がC15CΔの内斜視では,目標斜視角はC30CΔとなります.Parksの定量表(表1)を参照しますが,予定手術が両眼内直筋後転術の場合は,Parksの定量表どおりC30CΔ狙いで両眼C4.5Cmm後転,片眼内直筋後転術であれば定量表のC60CΔで片眼C30CΔの効果と考えC6.5Cmm後転とします.ARDEの輻湊は良好であるため,内直筋倍量後転術を施行しても,近見での過矯正による複視を生じることはほとんどありません.私のグループでは,内直筋倍量後転術が,遠見内斜視角C10Δ以下の小角度のCSES症例に対しても,遠見内斜視の有意な改善を認め,近見での過矯正による複視は認めず有効であることを報告しています4).注意点としては,一見CARDEにみえても,微小な上下斜視を伴うCCVSであることがあります.3CΔ以上の上下斜視を有する患者では,術後に上下偏位による複視が残存する可能性があるため,上下斜視の手術を併施するか,術後に上下複視に対してプリズム眼鏡などが必要になる可能性について説明することが望ましいです.聞き手:CVSの手術方法について教えてください.飯田:上下斜視角がC6CΔ以下であれば,点眼麻酔下で眼位を確認しながら調整する段階的垂直直筋部分切腱術(gradedverticalrectustenotomy:GVRT)を施行します.直筋の全幅に対してC40%の切腱で約C2CΔ,60%で約4Δ,80%で約C6CΔの効果が得られるとされています.効果には個人差があるため,予定よりC10%ほど弱めで開始し,切腱するたびに患者を座位にし,交代カバーテストをしながら上下偏位がなくなるまで切腱を繰り返します.術中に微小な斜視角を確認するため,麻酔は必ず点眼麻酔のみで施行します.そのため,結膜切開は術野へのアプローチが容易なスワン切開で行い,筋を確保し表1Parksの斜視手術表目標内斜視角両眼内直筋後転術の術量C15ΔC3.0CmmC20ΔC3.5CmmC25ΔC4.0CmmC30ΔC4.5CmmC35ΔC5.0CmmC40ΔC5.5CmmC50ΔC6.0CmmC60ΔC6.5CmmC70ΔC7.0CmmCた後のCTenon.など筋周囲の結合組織の処理は最小限とします(動画①).視認性確保のため,切腱部位は焼灼してから切腱します.また,術前に第C2眼位での上下偏位を確認し,同側で上下斜視角が大きくなれば耳側から,対側で上下偏位が大きくなるなら鼻側から切腱します.切腱した筋が前転するのを防ぐために,結膜はタイトに縫合しないようにします(動画②).上下斜視角がC8CΔを超える場合や,回旋偏位がC8°以上ある患者では,垂直直筋後転術および水平移動を施行します.垂直直筋後転術ではC1mm後転でC3CΔの矯正効果と考えます.CVSでは基本的には外方回旋を有するため,下直筋は鼻側移動を,上直筋は耳側移動を行います.1筋腹の水平移動で約C7°の効果と考えられており,術後の外方回旋がC8°以内になるように半筋腹からC1筋腹移動させます.聞き手:術前に患者へ伝えておくべきことはありますか?飯田:SESは加齢に伴う眼窩プリーの変性により生じるため,術後も加齢に伴い斜視が増悪することがあります.SESの術後再発率は約C20%と報告されており5),術前に患者に説明する必要があります.また,内直筋倍量後転術や垂直直筋後転術および水平移動術は一般的な斜視手術の手技と変わりませんが,GVRTに関しては点眼麻酔下で施行するため,痛みが出ないよう慎重に操作する必要があります.患者には痛みが出る可能性があること,点眼麻酔で患者が痛みに耐えられないようであれば,術中に局所麻酔を追加し垂直直筋後転術に術式変更する可能性があることを伝えます.文献1)GosekiT:Saggingeyesyndrome.JpnJOphthalmolC65:C448-453,C20212)IidaCK,CGosekiCT,COnouchiCHCetal:BodyCmassCindexCisCassociatedCwithCorbitalCpulleyCdegenerationCsyndrome,Cincludingsaggingeyesyndrome.AmJOphthalmolC268:C312-318,C20243)稲垣理佐子,浅野麻衣,正木勢津子ほか:複視に対するプリズム適応の検討.日本視能訓練士協会誌C35:93-97,C20064)IidaK,GosekiT,FukayaKetal:E.cacyofthedouble-dosemedialrectusmusclerecessiontechniqueforsaggingeyesyndromewithesotropiaof10-prismdioptersorlessatdistance.CJpnJOphthalmol69:327-334,C20255)ChaudhuriZ,DemerJL:Long-termsurgicaloutcomesinthesaggingeyesyndrome.StrabismusC26:6-10,C2018998あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026(148)

抗VEGF治療セミナー:網膜静脈閉塞症に対するトリアムシノロン併用抗VEGF治療

2026年8月31日 月曜日

●連載◯監修=安川力五味文170150網膜静脈閉塞症に対するトリアムシノロン新井悠介新井眼科クリニック併用抗VEGF治療網膜静脈閉塞症(RVO)は急性期に黄斑浮腫を合併し,視力低下を引き起こす.抗CVEGF治療は有効性が確立されているが,治療無効例が存在する.本稿では,慢性化したCRVOに対するトリアムシノロン後部CTenon.下注射併用抗CVEGF治療の効果とメカニズムについて解説する.はじめに網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)では,網膜静脈のうっ滞や閉塞により網膜循環障害を生じ,網膜出血や黄斑浮腫(macularedema:ME)が発症する.MEの発症は視力低下を招き,治療介入が必要となる.大規模臨床試験によって抗CVEGF薬の有効性・安全性は確立され,標準CRVO治療となっているが,RETAINstudyの長期成績では,約半数の症例で長期にわたる抗VEGF薬投与が必要とされている1).最近では第C2世代とよばれる新しい抗CVEGF薬も登場したが,全例が軽快できるわけではない.現在のCRVO治療では,MEの再燃により抗CVEGF治療から離脱できないことが大きな課題になっている.今回はそのような患者に対して,筆者らの行っているトリアムシノロンを併用した追加治療を紹介する.慢性化したRVOへの治療アプローチRVOが慢性化すると年間複数回の抗CVEGF薬投与が継続的に必要となる.ProCrenata(PRN)法で投与を行うと患者の通院負担が増加する.こうした背景から,慢性化したCRVOに対し患者負担軽減を目的とした個別化療法の重要性が高まっている.筆者らは,RVOに対する個別化治療としてCmodi.edtreat-and-extend(TAE)法の有効性を報告した2).必要最低限の通院回数で視力改善と維持が可能だが,ある程度経過すると,投与期間の延長が困難になる患者が出てくる.このような患者に対し,抗CVEGF治療以外の治療オプションの検討が求められている.トリアムシノロン併用抗VEGF治療慢性化したCRVOに伴うCMEには炎症性サイトカインの関与が示唆されており,ステロイド治療の有効性が期待される3,4).そこで筆者らは,トリアムシノロン併用抗CVEGF治療を行い,後ろ向き研究で検証した5).(145)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPYTAE法による治療後,トリアムシノロン後部CTenon.下注射と抗CVEGF薬を同時に投与し,抗CVEGF薬単独治療から再燃期間がどのくらい延長できるかを調べた.併用療法前の抗CVEGF薬の平均投与回数はC14回であった.結果はC42眼中C26眼(62%)で投与間隔がC2週間以上延長できた.そのうちC2眼は投与後C1年間再燃が認められなかった(図1).単独療法時の平均投与間隔はC11.9週で,再燃がなかったC2眼を除いた平均延長期間はC9.7(±6.7)週であった.副作用としてC4眼で白内障の進行を認め白内障手術が施行されたが,眼圧上昇は認められなかった.急性期におけるステロイド併用療法は効果が乏しいとされている6).急性期のCME再燃ではCVEGFが主要因であり,ステロイドの効果は得られにくい.一方,慢性期ではさまざまな炎症性サイトカインが関係するため,逆に,VEGF単独を抑制する治療では再燃を防ぎきれない.そのため,慢性期においてはステロイドの効果が発揮される患者が存在するものと考えられる.本研究では,併用療法で投与間隔が延長した症例と,延長しなかった症例で,炎症性サイトカインの比較検討をした.その結果,IL-1αが大きいほど,またCIL-5,IL-6,Galectin-1が小さいほど,再燃までの期間が延長する可能性が示唆された.慢性期RVO治療における一つの選択肢筆者のCRVOに伴うCMEに対する治療方針は以下の通りである.急性期にはCmodi.ed-TAE法で抗CVEGF薬治療を行い,投与間隔がC16週まで延長できた患者は治療を中止し,経過観察する.投与間隔の延長が困難で再燃を繰り返す患者には,抗CVEGF薬を変更する前に,トリアムシノロン併用抗CVEGF治療を試みる.有効例には,再燃時に再び同治療を繰り返す.ただしトリアムシノロン併用でも再燃する患者は存在するため,抗VEGF治療からの離脱を可能とする新規治療法の開発あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026995図1トリアムシノロン併用抗VEGF治療が奏効した症例患者はC78歳,女性.網膜中心静脈閉塞症に対しアフリベルセプトC7回と汎網膜光凝固が行われていた.発症からC365日でトリアムシノロン併用抗CVEGF治療を施行.TAE期の最大投与間隔はC6週間.併用療法後,再燃なく経過し軽快.Ca:初診時眼底写真.耳側網膜血管の脱落が目立つ.Cb:併用療法前眼底写真.汎網膜光凝固が行われ,後極血管の白線化が目立つ.Cc:併用療法直前の光干渉断層計(OCT)像.中心窩網膜厚はC579Cμm.Cd:併用療法C1年後のCOCT像.黄斑浮腫の再燃を認めず,軽快状態を維持.が望まれる.文献1)CampochiaroCPA,CSophieCR,CPearlmanCJCetal:Long-termCoutcomesCinCpatientsCwithCretinalCveinCocclusionCtreatedCwithranibizumab:theCRETAINCstudy.COphthalmologyC121:209-219,C20142)AraiCY,CTakahashiCH,CInodaCSCetal:E.cacyCofCmodi.edCtreat-and-extendCregimenCofCa.iberceptCforCmacularCedemaCfromCbranchCretinalCveinocclusion:2-yearCpro-spectivestudyoutcomes.JClinMedC10:3162,C20213)NomaCH,CYasudaCK,CShimuraM:CytokinesCandCtheCpathogenesisCofCmacularCedemaCinCbranchCretinalCveinC996あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026occlusion.JOphthalmol2019:5185128,C20194)NomaH,YasudaK,ShimuraM:Cytokinesandpathogen-esisCofCcentralCretinalCveinCocclusion.CJCClinCMedC9:3457,C20205)AraiCY,CTakahashiCH,CInodaCSCetal:E.ectivenessCand.cytokinepro.leof.combinedantivascularendothelialgrowthfactorand.corticosteroidtherapyfor.chronicreti-nalCveinCocclusion.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC263:1427-1434,C20256)OsakaCR,CMuraokaCY,CNakanoCYCetal:OneyearCresultsCofCantivascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCcom-binedCwithCtriamcinoloneCacetonideCforCmacularCedemaCassociatedCwithCbranchCretinalCveinCocclusion.CJpnCJCOph-thalmolC64:605-612,C2020(146)

緑内障セミナー:緑内障診療における患者支援のための多職種連携 

2026年8月31日 月曜日

●連載◯310監修=福地健郎中野匡310.緑内障診療における患者支援のための渡辺芽里自治医科大学眼科学講座多職種連携緑内障患者は長期の経過のなかで,視機能のみならず生活環境や社会的背景も変化する.眼科医が把握しておくべき支援のための知識として,メディカルソーシャルワーカー,「スマートサイト」,移動支援にかかわる同行援護および歩行訓練士があげられる.多忙な日常診療においてこそ,多職種連携の視点が重要である.●はじめに緑内障はわが国における失明原因の第1位であり,新たに視覚障害の身体障害者手帳(以下,障害者手帳)を取得した者の約40%を占める疾患である1).進行性かつ不可逆性の疾患であり,治療期間が10年,20年と長期に及ぶなかで,福祉的介入が必要となる患者も少なくない.眼科医が診断書を作成して申請できる制度としては,障害者手帳(福祉支援)および障害年金(経済的支援)があげられる.障害者手帳の認定基準に,患者の視力や視野が該当するか否かの医学的判断は本来担当医の責務であるが,緑内障患者の視力は末期まで保たれることも多く,通常診療では中心10-2検査や両眼開放Esterman検査が必ずしもルーティンで施行されておらず,診断基準を満たしていても申請ニーズを診察時に把握することは容易ではない.こうした背景から,院内・院外における多職種連携が有用であり,担当医だけでなく,視能訓練士,看護師,受付スタッフなどの院内スタッフが患者の生活上の変化や困難に気づき,院外の福祉関係者へつなぐことが重要である.●医療と福祉のキーパーソン:メディカルソーシャルワーカーメディカルソーシャルワーカー(medicalsocialwork-er:MSW)は医療機関に所属する福祉職であり2),在宅サービスの導入・調整,各種福祉制度の紹介や申請支援,就労支援,地域資源との連携など,患者の社会的背景にかかわる支援を担っている.総合病院では「医療福祉連携室」「患者相談室」などに所属することが多く,日本医療ソーシャルワーカー協会のウェブサイトからMSWが所属する医療機関を検索することが可能である3).視覚障害に特化した支援に当初から精通しているMSWは必ずしも多くないが,眼科医療スタッフとMSWが連携し,支援内容や経過を共有することで,視覚障害者支援に関する連携体制が徐々に形成されていく.また,MSWが常駐していない医療機関においても,患者が他科で通院している総合病院やMSWと連携可能なロービジョン外来を有する眼科医療機関へ,福祉的介入を目的として紹介することは可能である.図1院内・院外における多職種連携の一例メディカルソーシャルワーカーは医療と福祉をつなぐ役割を担う.(143)あたらしい眼科Vol.43,No.8,20269930910-1810/26/\100/頁/JCOPY図2「スマートサイト」の例日本眼科医会ホームページの「スマートサイト関連情報」から各都道府県のパンフレットがダウンロードできる(栃木県版).障害者手帳の該当可否は眼科医が医学的に判断する一方,MSWは患者の生活背景や支援ニーズを踏まえ,申請手続きや申請後のサービス利用調整に関与する重要な役割を担っている(図1).●障害者手帳と同行援護緑内障患者は,障害者手帳の認定基準に該当する視覚障害を有していても(とくに視野障害のみの患者は)自立した生活を送っている例が少なくなく,手帳申請を勧めるべきか判断に迷う場面も多い.そのなかで,眼科医が把握しておくべき,視覚障害を対象とする障害者手帳関連支援の一つが同行援護である.同行援護は,視覚障害者の外出時における移動支援を目的としたサービスであり,移動時の介助に加え,外出先での代読・代筆などの視覚情報支援を含む3).障害者手帳を取得し白杖を使用すれば自由に外出できると誤解されることもあるが,白杖歩行には歩行訓練士による訓練が必要であり,白杖のみで安全かつ自由な移動が可能となるわけではない.同行援護は,通院や買い物といった日常生活上必要不可欠な外出に限らず,余暇活動などを含む社会参加を目的とした外出にも利用可能な制度である4).●「スマートサイト」と歩行訓練士,地域連携眼科医が担当医療圏における視覚障害関連の福祉・行政サービスや支援団体を把握し,患者に説明するためのツールとして,47都道府県ごとに「スマートサイト」(ロービジョンケア紹介リーフレット)が整備されている.日本眼科医会のウェブサイトから全国の「スマートサイト」をダウンロードすることが可能である(図2)5).多くの都道府県において「スマートサイト」には歩行訓練士をはじめとする地域の視覚障害支援にかかわる専門職および関係機関の連携先が明示されている.歩行訓練士は前述の通り視覚障害者が白杖などを用いて安全に移動できるよう歩行訓練を行う専門職であり,歩行訓練以外にも日常生活動作やコミュニケーション手段に関する訓練・支援を担う視覚障害生活訓練等指導者に該当する.視機能が同程度であっても,患者の年齢や生活背景により支援ニーズは大きく異なり,「スマートサイト」を契機として紹介された専門機関から,さらに別の専門機関へと支援が展開されるケースも少なくない.実際に「スマートサイト」を中心としたロービジョン支援ネットワークが構築されている都道府県も多く,ロービジョンケアの専門家でなくても,眼科医が診察室で「スマートサイト」を患者に手渡すことが,地域資源との連携に向けた重要な入口となっている.文献1)MatobaR,MorimotoN,KawasakiRetal:Anationwidesurveyofnewlycerti.edvisuallyimpairedindividualsinJapanforthe.scalyear2019:impactoftherevisionofcriteriaforvisualimpairmentcerti.cation.JpnJOphthal-mol67:346-352,20232)丸山昌子:総論医療ソーシャルワーカーの役割.小児科診療87:919-922,20243)公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会https://www.jaswhs.or.jp/4)萬代由希子:目の不自由な方に関する施策やサービス.理学療法ジャーナル58:757-762,20245)日本眼科医会:スマートサイト関連情報https://www.gankaikai.or.jp/info/detail/SmartSight.html994あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026(144)

屈折矯正手術セミナー:46 歳以上の患者におけるICL挿入術の臨床的特徴と術後成績

2026年8月31日 月曜日

●連載◯315監修=稗田牧神谷和孝315.46歳以上の患者におけるICL挿入術の大内雅之大内雅之アイクリニック臨床的特徴と術後成績46歳以上でICL手術を受ける患者は,術前は低矯正で過ごしていて,手術においては完全矯正を希望するケースが多い.術後は近用眼鏡装用率が上がるものの,高い満足度を得られるため,屈折矯正手術を希望する中年層に対するひとつの術式選択になりえると考える.●はじめに後房型有水晶体眼内レンズ(implantablecontactlens:ICL)or(implantablecollamerlens:ICL)手術をはじめとした屈折矯正手術のガイドラインでは,適応年齢を20~45歳としているが,その上限年齢は主として老視の影響を考慮してのものと考えられる.しかし,ライフスタイルや患者ニーズの変化,ICL手術の一般への周知,さらに近年では災害への備えなど,ICL手術の希望者の年齢が広がっている.筆者のクリニックでは2020年1月~2023年9月に,トーリックモデルを含むICL(EVO+,StaarSurgical社)の挿入手術を490例971眼に施行し,このうち手術時年齢46歳以上は31例(男性11例,女性20例)60眼であった.これらの症例の特徴1)から,46歳以上の患者への本手術について考察する.表1術前および術後の視力と屈折値術前裸眼視力(logMAR)0.04(1.44±0.26)(範囲0.02~0.2)矯正視力(logMAR)自覚等価球面屈折値1.24(.0.09±0.09)(範囲0.6~1.5).7.94±3.00D(範囲.16.13~.2.25D)自覚球面屈折値.0.19±0.28D(.0.75~0D)自覚円柱屈折値.0.14±0.27D(.1.0~0D)等価球面屈折値.0.25±0.33D(.1.25~0D)術後裸眼遠方視力(logMAR)1.19(.0.07±0.17)矯正遠方視力(logMAR)1.35(.0.13±0.08)裸眼近方視力(logMAR)0.68(0.16±0.28)●術前屈折値と患者背景術前の自覚等価球面屈折値は.16.13D~.2.25(平均.8.0±2.9D)で(表1),13%の医療職を含む61%がデスクワーク中心の職業についていた.全眼の術前自覚等価球面屈折値の分布を図1に示す.術前のおもな矯正方法は,眼鏡12例,ソフトコンタクトレンズ14例,ハードコンタクトレンズ5例で,これらの矯正下で近用眼鏡を使用していた例はなかった.これら主たる矯正方法下では,31例60眼中8例14眼は1D以上の低矯正であり,近方視力は平均0.61で,少なくとも片眼が0.7以上だった症例は16例(52%)であった.一方,11例(35%)は,両眼とも0.5以下であった.ここから,日常視では低矯正で近方視力をある程度確保している症例が比較的多いことがうかがえる.(眼)109876543210-16/-14/-12/-10/-8/-14/-6/-2/-16-14-12-10-16-8-4術前等価球面屈折値(未満/以上D)図1術前等価球面屈折値(141)あたらしい眼科Vol.43,No.8,20269910910-1810/26/\100/頁/JCOPY達成矯正度数(D)2015105005101520目標矯正度数(D)図2目標矯正度数と達成矯正度数の散布図(等価球面値)●術後目標屈折値しかし,術後希望屈折値はこれと異なり,カリキュレーター入力に使った矯正における残存屈折値の平均は.0.31±0.32D(平均.1.75~0D),53眼は正視から.0.5Dを希望し,両眼手術症例29例中24例(82.7%)は,両眼の完全遠方矯正を希望した.一方で0.75D以上の低矯正を希望したものは5例7眼のみであった.また,正視を希望する症例においても過矯正は確実に回避することを重視したレンズ選択をすることで,結果として,術後の自覚屈折値が若干でも遠視になる症例は一例もなく,正視を希望した症例の平均も.0.25Dであった.●予測裸眼近方視力上述の希望術後屈折(換算コンタクトレンズ装用シミュレーション)における予測裸眼近方視力は0.2~1.2,平均0.71(logMAR0.14±0.14)で,11例は少なくとも片眼が0.5以下の近方視力を認容し,術後屈折は遠方重視の傾向であることがわかった.●術後視力,屈折,予測性術後3カ月目の屈折,視力情報を表1に示す.裸眼遠方視力は平均1.19(logMAR.0.07±0.17)と良好で,裸眼近方視力は平均0.68(logMAR0.16±0.28)であった.また1眼を除き,目標矯正度数からのずれは±0.5D992あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026以内であった(図2).●有害事象眼圧は術前平均13.8±2.4mmHg,術後平均13.1±2.6mmHgと術前後で有意差はなく(p=0.27,pairedttest),4mmHgを超える眼圧上昇は術翌日から観察期間中,どの症例にもみられなかった.角膜内皮細胞密度は術前平均2,756.2/mm2,術後平均2,737.3/mm2で有意差はなく(p=0.32),減少率は平均.1.1%であった.術後の平均vaultは382.0±213.4m(111~1,051μm)であった.31例中19例(61.3%)が術後早期にグレアまたはハローを自覚したが,症状は軽度であり,二次的な介入は必要なかった.白内障の発症,著しい眼圧上昇,瞳孔ブロックは認められなかった.●眼鏡装用,患者アンケート術後の眼鏡装用は,遠用眼鏡はなく,近用眼鏡は31例中,要時装用7例,常時装用4例であった.常用すると答えた症例はいずれも50歳以上であった.患者満足度は,大変満足,満足,やや満足,やや不満,不満の5段階の選択肢で,30例が大満足と満足を選択し,やや不満と不満を選択した症例はなかった.これは注目すべき点であり,46歳以上で屈折矯正手術を希望する患者は,30年以上にわたって眼鏡もしくはコンタクトレンズが必須の生活を強いられており,手術によって平時の矯正が不要になれば,近用眼鏡の要時装用は充分認容できるケースが多いことを表している.●まとめライフスタイルや眼鏡の認容度にはバリエーションがあり,中高年層の近視に対する屈折矯正に関して,近用眼鏡装用が障壁になるという画一的な考え方があてはまらないことは,重要な知見といえる.上記の特徴をよく理解したうえで,ICL手術は屈折矯正を希望する中年層に対しても,ひとつの術式選択になりえると考える.文献1)大内雅之:46歳以上の後房型有水晶体眼内レンズ挿入症例の臨床的特徴と術後成績.IOL&RS38:273-279,2024(142)

眼科AI時代のデータ基盤Japan Ocular Imaging Registry―体制構築から活用,そして未来へ

2026年8月31日 月曜日

眼科AI時代のデータ基盤JapanOcularImagingRegistry─体制構築から活用,そして未来へTheJapanOcularImagingRegistry:EstablishingaNationwideDataPlatformforOphthalmologyintheAIEra-UtilizationandFutureProspects秋山雅人*はじめに近年,人工知能(arti.cialintelligence:AI)をはじめとするデジタル技術の発展により,医療は大きな変革期を迎えている.学術集会においてもCAIに関する講演や研究発表を目にする機会は急速に増加しており,その活用は研究領域のみならず日常診療にも広がりつつある.さらに,ゲノム情報,各種オミクスデータ,ウェアラブルデバイスなどから取得される膨大なデータを統合・解析することで,個々の患者に最適化された精密医療(precisionmedicine)の実現が期待されている.しかし,その実現には大規模かつ高品質なデータ基盤の整備と,AIをはじめとする高度な解析技術が不可欠である.眼科領域においても,欧米や中国を中心に大規模データを活用したCAI開発が急速に進展している.このような背景のもと,日本眼科学会は全国規模の眼科リアルワールドデータ基盤であるCJapanCOcularCImagingCRegistry(JOIR)を構築し,眼科CAI研究およびその社会実装を推進してきた.本稿では,JOIRの構築経緯と現状を概説するとともに,公開データや公開CAIモデルを活用した研究成果,さらに今後の展望について紹介する.なお,JOIRについては,2021年に大鹿らが本誌において構想と意義を解説1)しており,2022年にはCMiyakeらによるCJapaneseCJournalCofOphthalmologyの総説2)が報告されている.本稿ではその後の進展も含め日本のデータベースが世界へどのように影響を与えるかという視点を交えて概説する.IJOIRJOIRは,日本眼科学会が日本医療研究開発機構(JapanCAgencyCforCMedicalCResearchCandCDevelop-ment:AMED)の「臨床研究等CICT基盤構築・人工知能実用化研究事業」の支援を受けて構築した全国規模の眼科リアルワールドデータ基盤である.2017~2019年に眼科診療で日常的に取得されるデータを効率的に収集・活用するための基盤整備が進められ,その後,収集されたデータの管理,ネットワークの拡充,データ収集の継続,および利活用の推進を目的として,2019年より一般社団法人として運営されている.JOIRの活動は,眼科関連施設を結ぶネットワークの構築を基盤として,データ流通の促進,AI開発および臨床研究の推進,さらに社会実装の支援にまで及ぶ(図1).また,日本眼科CAI学会の設立・運営を通じて学術活動や人材育成にも貢献している.これらの取り組みは,日本における眼科研究基盤の強化のみならず,国際的な研究競争力の向上にも寄与することが期待されている.すなわち,JOIRは単なるデータベースではなく,眼科領域における研究開発と社会実装を支える基盤として機能している.JOIRの大きな特徴の一つは,診療データを自動的に収集できる点にある.大学病院をはじめとする大規模施設ではデータ登録作業が大きな負担となるが,JOIRでは電子カルテや検査機器から取得されたデータに個人情*MasatoAkiyama:九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座C,一般社団法人JapanOcularImagingRegistry〔別刷請求先〕秋山雅人:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座(1)(43)C893図1JapanOcularImagingRegistry(JOIR)と関連組織との関係JOIRは参加施設のデータ収集・管理を行い,専門領域学会,情報科学研究者と連携し研究開発を進め,G-Dataを介した社会実装を進めている.賛助会員,専門領域学会への取得されたデータ提供に加えて,開発したモデルAIモデルの一般公開の研究目的での一般公開も行われている.表1JapanOcularImagingRegistry(JOIR)から公開されているデータ眼科画像データ対応する眼科情報1,000枚の眼底写真静的視野検査結果3,000枚の眼底写真10,000枚の眼底写真正常とC11種類の疾患情報(ラベル)健康診断で取得される全身情報JOIRでは賛助会員に向けて収集されたデータの制限公開を行っている.現時点では三つのデータセットからなり,1,000枚以上の眼底写真とそれに対応する疾患情報や検査値がセットで公開されている.報保護のための処理を施したうえで,自動的にサーバーへ転送する仕組みを構築している.また,多施設から収集されたデータを統合・解析するためにはデータの標準化が不可欠である.この点については,日本眼科医療機器協会(JapanCOphthalmicCInstrumentsAssociation:JOIA)が策定したCJOIAstandardが重要な役割を果たしており,標準化された眼科データベースの構築を支えている.さらに,JOIRは国立情報学研究所と連携してAI開発を進めている.現在,JOIRには国内C26施設が参加意思を表明しており,そのうちC20施設でデータ転送体制が構築されている.データ収集状況はCJOIRホームページ上で公開されており,本稿執筆時点(2026年C5月)でC150万枚を超える眼底写真,60万件を超えるOCTデータ,1万枚以上の前眼部写真,170万件を超える視力・眼圧データ,さらにC25万件以上の静的視野検査結果が蓄積されている.加えて,学会主導研究で取得されたデータの保管・管理も担っており,日本における眼科リアルワールドデータ基盤として継続的に発展している.CIIJOIRから公開されているデータリソースJOIRでは,収集したデータの研究利用を促進するため,会員に対するデータ公開にも取り組んでいる.賛助会員を対象として,現在約C14,000枚の眼底写真を含むデータセットを公開している(表1).データセットは三つ存在し,それぞれ疾患や視野検査,検診情報とセット情報科学研究者AIモデルの開発G-Data社会実装賛助会員研究開発になっており研究目的の利用が可能である.また,日本眼科CAI学会では学術集会にあわせてCAIコンペティションを開催しており,その際には解析用データセットが研究者に提供される.たとえば,第C5回日本眼科CAI学会総会では,眼底写真からメタボリックシンドロームを予測するCAIモデルの開発をテーマとしたコンペティションが実施され,参加者に対してC5,000枚の眼底画像と関連する臨床情報が提供された.こうした取り組みは,研究者による利用や新規解析手法の開発を促進することを目的としたものであり,今後もデータ公開の拡充を予定している.さらにCJOIRの特徴的な取り組みとして,収集した眼底画像を用いて構築した学習済み深層学習モデルを公開している点があげられる.最初に公開されたのはC2023年の眼底年齢推定モデルであり,眼底写真から年齢を推定することが可能である.このモデルは実年齢との平均誤差がC2.39歳と高い精度を示しており,その後の加齢研究や疾患研究にも活用されている.続いてC2023年C12月には性別推定モデルが公開され,さらにC2025年C5月には血圧,血糖値,腹囲,BMIといったメタボリックシンドローム関連指標を予測するモデルが公開された.これらのモデルは高性能な計算環境を必要とせず利用できるため,研究者が独自に深層学習モデルを構築することなく解析に活用できる利点を有する.今後は,加齢研究や環境因子と疾患発症との関連解析をはじめ,眼底画像を活用したさまざまな研究への応用が期待される.なお,各モデルの性能や学習データの詳細についてはJOIRホームページで公開されている.CIIIサマリーページを用いた診療と診療録の標準化戦略JOIRでは,診療情報の標準化にも取り組んでいる.眼科診療では,診察所見,各種検査結果,治療内容に加え,既往歴や全身疾患,内服薬など多岐にわたる情報をもとに診療が行われている.本来であれば,これらの情報をできるだけ網羅的に収集することが理想である.しかし,自由記載形式の診療録から必要な情報を自動的に抽出することは現時点では容易ではなく,多施設データを統合するためには記載方法や診療情報の標準化が不可欠である.そのため,JOIRでは各分野の専門家と協力しながら,臨床的に重要な情報を効率的かつ統一的に収集する仕組みの構築を進めている.この取り組みの一環として,JOIRではサブスペシャリティ学会と共同で「サマリーページ」の開発を進めている.サマリーページは電子カルテ上で利用することを想定した電子カルテのアプリケーションであり,診療に必要な情報を統一された形式で記録できるよう設計されている.現在までに,日本角膜学会,日本緑内障学会,日本網膜硝子体学会,日本眼炎症学会との共同開発が進められており,各領域の専門家とCJOIR担当者が協議を重ねながら項目の選定を行ってきた.その結果,全診療領域に共通する項目を集約した共通サマリーページと,各専門領域に特化したサマリーページから構成される設計が採用されている.また,本システムは国内主要電子カルテメーカーC4社と共同開発されており,JOIAstan-dardに準拠した検査データについては電子カルテから自動的に反映することが可能である.サマリーページは研究データ収集のために設計されたものではなく,まず日常診療を支援するツールとして開発されている.診療に必要な情報を効率的かつ漏れなく記録できる環境を提供することで,診療の質の向上や施設間での情報共有の円滑化をめざしている.たとえば,眼瞼悪性腫瘍における睫毛禿の有無のように,専門家が診断上重要と考える項目を定型化することで,診療現場における所見の見落とし防止にもつながる可能性がある.その基本理念は,「研究のために診療情報を入力する」のではなく,「診療の過程で自然に蓄積された情報を研究に活用する」ことにある.診療支援ツールとして価値を提供しながら,その結果として得られた標準化データを研究基盤として利用できる点が本システムの大きな特徴である.さらに,入力された情報は統一された形式で出力することが可能であり,多施設間でのデータ統合や疾患レジストリ研究への活用も期待される.一方で,日常診療への導入にあたっては入力負担を最小限に抑えることが重要であり,開発段階では必要項目の絞り込みが行われている.筆者の試用経験では,1患者あたりの入力時間はおおむねC2分以内であり,外来診療のなかでも十分運用可能な範囲と考えられる.現在,共通サマリーページはすでに開発を完了しており,専門領域ごとのサマリーページについても実装準備が進められている.今後はさらに多くの学会と連携し,希少疾患を含む幅広い疾患領域への展開が期待される.CIVJOIRが支援を行うAI開発JOIRはデータ基盤の提供だけでなく,臨床研究者,情報科学研究者,関連学会を結びつける役割も担っている.また,データを収集・管理するだけでなく,関連学会,アカデミア,情報科学研究者を結びつけることで新たなCAI開発を支援している.ここでは,その代表例として前眼部CAIと眼底CAI診断支援プログラムを紹介する.JOIRは関連学会や国立情報学研究所の研究者との協力のもと,さまざまな眼科CAIの開発に取り組んでおり,その成果について研究開発と社会実装の二つの側面から述べる.研究開発については,日本角膜学会,筑波大学,国際医療福祉大学(旧東京歯科大学),国立情報学研究所らの研究グループにより前眼部CAIの開発が精力的に進められている.2024年に上野らは,前眼部写真からC36疾患を対象としたC9分類モデルを報告した3).すべての分類項目においてROC曲線下面積(areaCunderCthecurve:AUC)がC0.9を超える高い性能を示しただけでなく,スマートフォン端末上でも高い判定性能が維持されることが示されている.さらに同グループは,本モデルが一般眼科医や専修医の診断支援にも有用であることを報告している4).加えてC2026年には眼表面腫瘍の鑑別を目的としたCAIモデルも開発されている5).これらの研究において,JOIRはデータ収集基盤を提供するだけでなく,眼科医,関連学会,情報科学研究者を結びつける役割を果たしている.今後も同様の枠組みを通じて,より幅広い分野で国産CAIの開発が進むことが期待される.社会実装という観点では,2025年C10月に眼科医療機器協会の合同会社であるCG-Dataが,JOIRと国立情報学研究所が開発した眼底画像CAI診断支援プログラムの医療機器製造販売承認を取得している.本プログラムは正常眼に加え,緑内障,糖尿病網膜症,加齢黄斑変性などの主要な眼底・視神経疾患を対象として所見の有無を判定するものである.近年,世界各国で眼科CAI医療機器の開発が進められているが,本承認は日本における眼科CAIの社会実装を象徴する重要な成果といえる.JOIRはデータ基盤の整備のみならず,AI研究成果を実際の医療現場へ還元する役割も担っており,今後海外展開も含めてさらなる医療機器開発への展開が期待される.CV公開AIモデルを用いた日本からの研究成果先に述べたように,JOIRでは収集した眼底写真を用いて構築した学習済みCAIモデルを公開している.なかでも眼底年齢推定モデルは,多くの国内研究者によって活用されており,その成果は国際誌にも報告されている.本稿執筆時点で公表されているおもな研究を表2に示した.現在までに報告されている研究の多くは眼底年齢推定モデルを利用したものであり,網膜疾患との関連評価6)にとどまらず,実年齢と眼底写真から推定された年齢の誤差であるCretinalagegap(RAG)を用いた全身疾患との関連解析7),ゲノムワイド関連解析(GWAS)8),さらに白内障術後満足度との関連評価9)など,多様な研究へと発展している.これらの成果は,公開モデルが単なるCAI技術の提供にとどまらず,新たな研究仮説を創出する研究基盤として機能していることを示している.最近では,JOIRのホームページに公開モデルを利用した研究者のインタビューも掲載しており,ぜひご覧いただきたい.特筆すべきは,JOIRが公開した眼底年齢推定モデルが国内のみならず海外でも利用されている点である.中国の大規模老化研究プロジェクトでは,本モデルがCreti-nalclockとして採用されている10).Cell誌に報告された同研究では,MRI,プロテオーム,メタボロームなど複数の生体情報から構築したCmultimodalCagingCclockの一要素としてCretinalclockが組み込まれており,眼底画像が全身老化を反映するバイオマーカーとして国際的に注目されていることを示している.このことは,JOIRから生まれた研究成果が日本国内にとどまらず,国際的な老化研究にも貢献していることを示す好例といえる.眼底年齢推定モデルはCJOIRが最初に公開したモデルであり,現時点ではその活用例がもっとも多い.一方で,近年公開された性別推定モデルやメタボリックシ表2JapanOcularImagingRegistry(JOIR)公開モデルを用いた研究成果著者報告年報告誌モデル研究概要CPMIDKameiら7)C2025CJpnJOphthalmol眼底年齢RAGと高血圧・糖尿病・脂質異常症との関連を報告C40304887ItohらC2025CPloSOneメタボ関連メタボリックシンドローム予測モデルの報告C40839585Komatsuら9)C2026CAmJOphthalmol眼底年齢白内障術後満足度にCRAGが影響することを報告C41241358Nonakaら6)C2026CBMJOpenOphthalmol眼底年齢BRVOとCRAGの関連を報告C41500614Komatsuら8)C2026COphthalmologySci眼底年齢RAGのゲノムワイド関連解析.日本人で既報CSNPの関連を再現C41958711Liら10)C2026CCell眼底年齢JOIRモデルをCretinalclockとして採用しCmultimodalCagingclockを構築C42105758UtsunomiyaらC2026CSciRep眼底年齢RAGに影響する眼の状態について報告C42230934JOIRにより公開された眼底写真真相学習モデルを用いた研究成果についてまとめた.RAG:retinalagegap,BRVO:branchretinalveinocclusion,SNP:singlenucleotidepolymorphism.

眼内レンズセミナー:シングルピース眼内レンズの連結強膜内固定法

2026年8月31日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋471.シングルピース眼内レンズの連結強膜内繪野亜矢子張國中固定法えの眼科クリニック多焦点や焦点深度拡張機能,または乱視矯正機能を付加したシングルピース眼内レンズが偏位・脱臼した場合,そのレンズをポリプロピレン糸と連結することで,山根法に準じた強膜内固定法を実現し,高い視機能を再び獲得させることができる.この術式はすべてのシングルピース眼内レンズに応用でき,汎用性が高い.●はじめに近年,屈折矯正白内障手術にて,より高い視機能獲得を希望する患者が増えている.多焦点や焦点深度拡張機能,または乱視矯正機能をもつ眼内レンズによって,術後に眼鏡依存が低減あるいは眼鏡を必要としない日常を得たとしよう.術後経過において,その眼内レンズが偏位・脱臼した場合,これまではその眼内レンズを摘出し,新たな単焦点レンズを挿入して強膜内固定するという治療法を提供してきた術者が多いだろう1).しかし,その治療法では,一部の視機能は回復しても,偏位・脱臼する前に獲得していた視機能すべてを復活させることはできない.そこで,筆者らは偏位・脱臼した付加価値付き眼内レンズを救済,再利用することで,高い視機能を復活させうる方法を発案,実施し,安定した結果を得たので紹介する.●連結強膜内固定法の手技前部硝子体切除または汎硝子体切除を施行したのち,偏位・脱臼したシングルピース眼内レンズを前眼部に移動させ,作製した角膜サイドポートから一方のハプティクスを眼外に引き出す.6-0ポリプロピレン糸とハプティクスを先端3mmの位置から10-0ポリプロピレン糸にて3カ所結紮縫合して連結させる(図1).次に連結糸ごと眼内に戻し,山根法に準じて角膜輪部から1.5~2mmの位置から刺入した30ゲージ(G)針の内筒に連結糸を挿入し(図2),眼外に引き出しておく.対側のハプティクスに対しても同様の要領で連図1ハプティクスとポリプロピレン糸の連結a:2時のサイドポートから引き出したハプティクスとポリプロピレン糸を連結させる.b:連結部のシェーマ.図2山根法に準じた強膜内固定ダブルニードル法a:30G針内筒に連結糸を挿入する.b:シェーマ.(139)あたらしい眼科Vol.43,No.8,20269890910-1810/26/\100/頁/JCOPYabc図3連結強膜内固定術a:両側の連結糸を調整してセンタリングする.b:フランジ加工した連結糸を強膜内に埋め込む.c:シェーマ.ab図4トーリックレンズの固定法トーリックレンズは固定軸から反時計回り約80°の位置に30G針を刺入して固定する.a:トーリックマークが90°および270°に見える.b:シェーマ.結糸を眼外に引き出し,両側の連結糸を引っ張りながらセンタリングを調整し,やや引き出したところでパクレンにてフランジ加工し,強膜内に埋め込む(図3).これを連結強膜内固定法という.この過程で水晶体拡張リングを含め,Soem-meringリングなどの付属物はすべて取り除くのが望ましい.トーリックレンズの場合は,Alcon社やAMO社のトーリックレンズであれば挿入軸から反時計回り70~80°の位置にハプティクス先端が固定されるようにすれば乱視軽減効果が得られる(図4).●本術式の利点本術式では偏位・脱臼した眼内レンズを救済し,再利用することでいったん獲得した高い視機能を再び獲得させることが可能である.また,患者が付加価値付き眼内レンズを希望したにもかかわらず,Zinn小帯損傷合併や術中破.によって.内固定不能な場合にも,本術式を応用して希望された予定レンズを連結強膜内固定できるため,多くの患者や術者を救うことができる.偏位・脱臼した眼内レンズを再利用することで,眼内レンズの出し入れを必要としないため,角膜内皮への負担軽減が図られるほか,惹起乱視を生じないことは患者の利益にさらに貢献し2),新たな眼内レンズを消費しない点において環境に優しいともいえる.文献1)YamaneS,SatoS,InoueMetal:Flangedintrascleralintraocularlens.xationwithdouble-needletechnique.Ophthalmology124:1136-1142,20172)EumSJ,KimMJ,KimHK:Acomparisonofclinicalout-comesofdislocatedintraocularlens.xationbetweeninsiture.xationandconventionalexchangetechniquecom-binedwithvitrectomy.JOphthalmol2016:5942687,2016

写真セミナー:マイボーム腺炎関連角結膜上皮症(非フリクテン型) 

2026年8月31日 月曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史507.マイボーム腺炎関連角結膜上皮症前原紘基東京歯科大学市川総合病院眼科(非フリクテン型)図1初診時所見(右眼)角膜血管侵入,眼瞼結膜の充血を認める.図2図1のシェーマ①角膜血管侵入②眼瞼結膜の充血図3初診時のフルオレセイン染色所見(右眼)フルオレセインで染色すると,角膜にびまん性上皮障害を認める.abab図4初診3カ月後図5マイボーム腺炎角結膜上皮症(フリクテン型)温罨法の指導,アジスロマイシン点眼,ミノサイクリン塩酸塩のCa:角膜への血管侵入と結節型病変をもつ.Cb:結節型病変に一致内服で矯正視力は右眼(0.8)まで上昇した.Ca:角膜輪部の血管侵してフルオレセインで染色される.入,眼瞼結膜の充血ともに改善している.Cb:角膜上皮障害は消失している.(137)あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026C9870910-1810/26/\100/頁/JCOPY原因不明で改善の乏しい両眼角膜血管侵入を認める患者(19歳,男性)が,秋田県から東京歯科大学市川総合病院眼科(以下,当科)を受診した.12カ月前から両眼の流涙があり,11カ月前に地元の眼科クリニックを受診し,角膜輪部に血管侵入が認められたため,フルオロメトロン点眼液C0.1%両眼C4回,ヒアルロン酸ナトリウム点眼液両眼C6回,エピナスチン塩酸塩クリーム両眼C1回で加療してきたが,改善がみられないため,当科紹介受診となった.初診時の患者の訴えは羞明と視力低下であった.矯正視力は右眼(0.5),左眼(0.8)であり,角膜への血管侵入,眼瞼結膜の充血,びまん性角膜上皮障害を認めた(図1~3).マイボーム腺炎角結膜上皮症(meibomitis-relatedkeratoconjunctivitis:MRKC)であり,びまん性角膜上皮障害があるため非フリクテン型と診断した.温罨法と眼瞼清拭を指導しつつ,アジスロマイシン点眼液(初日とC2日目は両眼C1日C2回,以降C14日まで両眼1日C1回)のみで治療を開始した.遠方から通院することを考慮し,アジスロマイシン処方からC1カ月後の再診とした.再診時,自覚症状は大幅に改善したが,所見や矯正視力に大きな変化がなかったため,温罨法と眼瞼清拭を継続しつつ,1カ月後の受診を推奨した.しかし,遠方からの受診であるため患者家族と相談した結果,抗炎症治療であるフルオロメトロンC0.1%点眼液両眼C3回と抗菌薬のミノサイクリン塩酸塩錠C50Cmg2錠C2回を処方し,2カ月後の再診とした.当科で治療開始してからC3カ月後の所見が図4である.自覚症状はなくなったが,角膜輪部血管侵入を軽度認め,矯正視力は右眼(0.7),左眼(0.8)であった.今後は時間をかけて矯正視力や所見を改善していく見通しであることを説明し,近医にて治療を継続することとした.MRKCは眼瞼に常在する菌体抗原に対する遅延型アレルギー反応であり,角膜潰瘍を伴う結節病変があるフリクテン型(図5)と,びまん性角膜障害を伴う非フリクテン型に分けられる1).フリクテン型はアジスロマイシンに反応しやすいが,非フリクテン型はアジスロマイシンに反応しにくいという特徴をもつ2,3).そのため,非フリクテン型は治療に時間がかかりやすいことを患者に説明し,抗菌薬の内服も検討する.筆者は腸内フローラへの影響を憂慮し,抗菌薬の内服は点眼と眼瞼ケアで改善が得られなかった患者のみに処方している.MRKCはクリニックで正しく診断されず,長期治療をしても治らないため大学病院に紹介される患者が多い.診断と治療開始がむずかしいという声をよく聞くので,なかなか改善しない角膜への血管侵入を認める結膜炎や眼瞼炎を診た場合は,角膜専門家のいる施設への早期紹介を検討するとよいだろう.文献1)SuzukiCT,CTeramuraCS,CKinoshitaS:MeibomianCglandsCandCocularCsurfaceCin.ammation.COculCSurfC13:133-149,C20152)NejimaR,EguchiH,TodokoroDetal:Analysisoftreat-mentprotocolsusingazithromycineyedropsforbacterialblepharitis:secondCreport.bacteriologicalCinvestigation.CJpnJOphthalmol66:579-589,C20223)ShimizuCY,CShinjiCK,CMitomaCKCetal:E.cacyCofCazithro-mycinhydrateophthalmicsolutionfortreatmentofinter-nalhordeolumandmeibomitiswithorwithoutphlyctenu-larkeratitis.JpnJOphthalmolC67:565-569,C2023

総説:自分史からみた緑内障研究―これまでとこれから

2026年8月31日 月曜日

あたらしい眼科43(8):959.985,2026c第36回日本緑内障学会須田記念講演自分史からみた緑内障研究―これまでとこれからAdvancingGlaucomaResearchThroughPersonalExperience:Past,Present,andFuture柏木賢治*はじめに筆者が眼科医となり緑内障診療に携わって約C40年が経過した.この間,緑内障診療は大きく進歩し,多くの患者の視機能維持に寄与してきた(図1).1970年代以前は,緑内障治療は手術が主体であり,薬物療法は従的な位置づけであった.筆者が眼科医となったC1980年代以降,Cβ遮断薬の臨床使用が大きく拡大し,続いてプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬(現在ではプロスタノイド受容体関連薬と呼称)が登場し,治療に大きなインパクトをもたらした.その後も多くの薬剤が導入され,薬物療法は隆盛期を迎えた.しかし近年では,薬物療法に内在するさまざまな課題が明らかとなってきている.一方で,長らく大きな変化がみられなかった手術治療は,2010年頃に入ってから急速に進歩し,現在では低侵襲緑内障手術(MinimallyCInvasiveCGlau-comaSurgery:MIGS)が緑内障診療において重要な地位を占めるようになっている.レーザー治療についても選択的レーザー線維柱帯形成術の有用性に関する新たな知見(LiGTHstudy)1)が蓄積され,とくに早期治療における重要性が高まりつつある.これらの緑内障診療の進歩には,基礎研究,それに基づくトランスレーショナル研究,さらに臨床研究による有用性の検証,そして得られた臨床データを基にした新たな研究の推進という一連のサイクルを継続的に機能させることがきわめて重要である.この観点からみても,筆者が眼科医として過ごしてきた約C40年間は,緑内障の研究と診療が急速に変革してきた時代であったといえる.今後は,革新的な基礎研究の進展やデジタル化に伴う人工知能(arti.cialintelligence:AI)の活用により,この潮流がさらに加速することが期待される.本稿では,筆者がこれまでに携わってきた臨床および研究の経験を踏まえ,緑内障研究の進歩と課題について,自身の取り組みを一つの指標として振り返る.CI緑内障視神経障害の解明1.緑内障神経障害とは緑内障は,視神経乳頭部における軸索流障害を主因として,特徴的な視神経乳頭変化とそれに伴う視野障害を呈する疾患であると,緑内障診療ガイドラインにおいて定義されている2).緑内障では,視神経乳頭篩状板部における軸索流障害により,網膜神経節細胞(retinalgan-glioncell:RGC)が主としてアポトーシスを介して細胞死に至ると考えられている.軸索輸送には順行性および逆行性のC2種類が存在し,ミトコンドリアや神経栄養因子などの細胞内小器官が,微小管上をダイニンやキネシンといったモーター蛋白を介して輸送されている(図2).微小管はCαおよびCβチュブリンからなるヘテロ二量体が直線状に重合したプロトフィラメントがC13本集合することで形成される.ヒトの視神経乳頭篩板は約C10層から構成され,篩板孔の大きさや梁構造は部位によって異なることが知られている.図3には,ヒトと類似した構造を有するサルの視神経乳頭部の鋳型標本を示す.視神経軸索は視神経乳頭部で大きく屈曲しながら篩板内を通過するが,乳頭部*KenjiKashiwagi:山梨大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕柏木賢治:〒409-3898山梨県中央市下河東C1110山梨大学医学部眼科学教室C0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(109)C959C課題出現期ラタノプロストセトン手術/MIGSβ遮断薬MMCレクトミーLiGTHstudySLTALT197019801990200020102020(年)図1近年の緑内障治療の経過Multi-vesicularbodies.ミトコンドリアや神経栄養因子などの顆粒が微小管上をmotorproteinにより移動.ニューロフィラメントは軸索骨格の支持と軸索流の維持に関与高速順行性高速逆行性低速逆行性速度200~400mm/日50~100mm/日0.1~6mm/日MitochondriaReuseproteinNeuro.lamentSubstrateSynapticvesicleGrowthfactorsSynapticvesicleGrowthfactorsActinCalmodulineEnzymeetal.Toxinetal.図2軸索流の模式図960あたらしい眼科Vol.43,No.8,2026(110)は強膜と比較して構造的に疎であり,外圧による変形を受けやすい.このため,篩板部において軸索流が障害され,結果としてCRGCの変性・脱落が生じる.視神経乳頭における軸索流障害については,Quigleyらの研究により詳細に検討されている3,4).篩板部に加わる機械的ストレスが軸索流障害の主因と考えられているが,微小循環障害や炎症反応の関与も指摘されている.いずれの機序においても,視神経乳頭部で軸索輸送障害が生じる点は共通しており,この部位における分子生物学的および構造学的変化の解明が重要である.C2.サル高眼圧モデルにおける軸索骨格蛋白(ニューロフィラメント)の変化軸索の主要な構造蛋白であるニューロフィラメント(neuro.lament:NF)は,中間径フィラメントに属し,分子量の異なるCNF-L,NF-M,NF-Hの三つのサブユニットから構成される.これらは軸索の構造的安定性の維持および機能調節に重要な役割を担っている5).また,その機能はリン酸化状態によって制御されることが知られている6).しかし,緑内障におけるニューロフィラメントのリン酸化状態の変化については十分に解明されていなかった.そこで本研究では,慢性的な眼圧上昇により視神経障害を誘導したサルの実験的緑内障モデルを用い,RGC軸索における機能調節に重要なCNF-Hのリン酸化状態を検討した7).緑内障モデルを作製したうえで,網膜から視神経乳頭,さらに視交叉に至る視覚伝導路全体にわたり解析を行った.その結果,正常眼ではすべての観察部位においてCNF-Hはほぼ完全にリン酸化されていたのに対し,緑内障眼では著明な脱リン酸化が認められた.この変化は網膜,視神経乳頭,さらに視交叉においても一貫して観察された.さらに,脱リン酸化の程度は均一ではなく,視神経乳頭の耳側や上下方向など,形態学的に障害が強い部位でより顕著であった.視交叉においても,視神経乳頭の障害部位に対応する線維群で強い脱リン酸化が認められ,軸索障害が視覚伝導路全体へ連続的に波及していることが示された(図4).これらの結果は,慢性高眼圧により誘導されるCNF-Hの脱リン酸化が軸索輸送障害を引き起こし,その結果としてCRGCの機能低下および変性に関与している可能性図3サル視神経乳頭部の鋳型標本を強く示唆するものである.NF-H脱リン酸化が軸索障害の原因であるのか,あるいは結果として生じる現象であるのかについては今後の検討が必要であるが,形態学的変化が軽度な段階でもすでに脱リン酸化が認められた点は,この分子変化が病態の比較的早期に出現することを示唆している.従来,緑内障の病態は眼圧上昇,血流障害,アポトーシスといった観点からおもに議論されてきたが,本研究により軸索細胞骨格の分子レベルでの変化が明らかとなった.この知見は緑内障の進行機序の理解を深化させるとともに,NF-Hのリン酸化制御を標的とした新たな神経保護戦略の開発につながる可能性を示している8.11).CII緑内障モデルの開発1.Invitroモデル緑内障の発症および進展機序の解明や新規治療法の開発には,適切な研究モデルの構築が不可欠である.研究モデルは大きくCinvivoとCinvitroに分類される.Invivoモデルはヒトの病態に近い変化を再現できるという利点がある.一方で,眼圧上昇の再現性が不安定,炎症などヒト緑内障とは異なる要因が関与する可能性,げっ歯類では視神経乳頭構造がヒトと大きく異なる,多数例での実験が困難,コストが高いことなどの課題がある.これに対し,invitroモデルは操作性および再現性に優れ,分子・細胞レベルの機序解明に適しており,コストも比較的安価である.緑内障における主たる障害細胞はCRGCであり,その障害機序を詳細に解析するためには高純度のCRGC単離培養系が有用である.筆者らは,コントロール眼実験緑内障眼aコントロール眼実験緑内障眼bコントロール眼実験緑内障眼cd外側内側内側外側緑内障側コントロール側図4高眼圧負荷によるニューロフィラメント重鎖のリン酸化状態の変化各部位におけるニューロフィラメント重鎖(NF-H)のリン酸化状態を示す.黄色の部分はリン酸化CNF-Hを赤色の部分は脱リン酸化CNF-Hを示す.耳側網膜においては実験緑内障眼において視神経線維の脱リン酸化が高度に認められているのに対して,コントロール眼ではリン酸化状態を示している(Ca).鼻側網膜ではコントロール眼においてはリン酸化部位がほとんどであるが,実験緑内障眼では一部に脱リン酸化が認められる(Cb).篩板部においては実験緑内障眼では脱リン酸化部分が多くみられるのに対してコントロール眼ではほとんどがリン酸化状態である(Cc).視交叉部においては,緑内障眼由来の耳側視神経に対応する線維の脱リン酸化が顕著であるのに対してコントロール側由来の視神経線維の脱リン酸化は目立たない.コントロール側では緑内障側由来の内側は脱リン酸化が中程度に認められるが,外側はほとんどがリン酸化状態である(Cd).(文献C7より許可を得て改変)asmallRGClargeRGC(%)*1009080706050403020100*16mmHg28mmHgcontrol16mmHg28mmHg換算加圧値Survivalrate図5過重負荷による網膜神経節細胞への影響大型のCRGC,小型のCRGCともに過重負荷によって生存率が低下する(Ca).荷重によってCRGCの形態は大きくことなり,加重されたRGCではコントロール(Cb)に比べ数珠状の神経突起が観察される(Cc).(文献C16より許可を得て改変)Barresらが開発した免疫学的手法12)を改変し,two-steppanning法により幼弱ラット網膜からCRGCを単離・培養するCinvitroモデルを構築した.この系を用いた検討では,RGCは脳由来神経栄養因子(brain-derivedCneurotrophicfactor:BDNF)投与により濃度依存的に生存率が有意に改善するが,NT-4の効果は限定的であり,その背景として網膜内における発現量の差やトロポミオシン関連チロシンキナーゼCB(trkB)受容体サブタイプの発現差が関与する可能性が示唆された13).さらに,RGCの生存に重要な役割を果たす網膜グリア細胞(おもにCMuller細胞)を単離培養し,RGCとの共培養系を構築して相互作用を解析した.その結果,成熟した網膜グリア細胞はCRGCに対して保護的に作用する一方,増殖期の網膜グリア細胞はCRGC生存率を低下させることが明らかとなり,網膜グリア細胞の機能が状態依存的に二面性を有することが示された.また,RGC死の主要因としてグルタミン酸および一酸化窒素の関与が確認された14,15).一方,緑内障の本質である眼圧による障害を再現するためには,力学的ストレスを付加したCinvitroモデルが必要である.そこで遠心力負荷を用いた培養モデルを構築した.このモデルでは,負荷強度に依存してCRGC生存率が有意に低下し,神経突起の減少やCdendriticbeadingとよばれる異常構造の出現が増加した(図5)16).これらの形態変化はヒト緑内障眼でも報告されており,圧負荷がCRGCに対して機能的・構造的障害を引き起こすことが示されている17).興味深いことに,網膜グリア細胞単独では遠心力負荷による生存率の低下は認められず,比較的高い耐性を示した.一方,RGCとの共培養条件下では,遠心力負荷に対するCRGC生存率が有意に改善し,グリア細胞が神経保護的に作用することが明らかとなった16).分子レベルの解析として,マイクロアレイおよびリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-timeCpolymeraseCchainreaction:real-timePCR)による遺伝子発現解析を行った結果,RGCでは顕著な発現変化は認められなかったのに対し,グリア細胞では代謝関連,サイトカイン関連,アポトーシス関連遺伝子を中心に多数の発現変動が認められた.この結果は,外的ストレスに対する応答がCRGC自体よりもむしろグリア細胞において顕著であることを示し,グリア細胞が分泌因子や代謝調節を介して神経細胞の生存を制御している可能性を示唆する14,16).以上より,RGCと網膜グリア細胞の相互作用は緑内障病態においてきわめて重要であり,とくに網膜グリア細胞は神経保護の有力な治療標的となり得る.実際に,網膜グリア細胞を標的とした新規治療戦略の研究が進展しており今後の成果が期待される18.23).C2.Invivoモデルa.Srcチロシンキナーゼ制御を用いた正常眼圧緑内障モデルわが国を含むアジア地域では,正常眼圧緑内障(nor-mal-tensionglaucoma:NTG)の頻度が高い24).従来の緑内障モデルの多くは眼圧上昇によりCRGC障害を誘導するものであり,眼圧が正常範囲内で進行するCNTGの病態を十分に再現できないという課題がある.これに対しHaradaらはグルタミン酸トランスポーターの遺伝子改変モデルがCNTGモデルとして有用であることを報告している25).本研究では,これとは異なる機序に基づくCNTGモデルの構築を目的として,Srcチロシンキナーゼのリン酸化制御に着目した26).Srcは細胞膜近傍に局在する非受容体型チロシンキナーゼであり,細胞増殖,分化,移動,生存など多様な生命現象に関与する.多数の分子と相互作用し,細胞内シグナル伝達のハブとして機能する27,28).また,複数のリン酸化部位により活性が厳密に制御されている.とくに重要な調節部位であるCSer75のリン酸化に着目し,恒常的リン酸化状態を模倣した変異(S75D:SD)およびリン酸化不能変異(S75A:SA)を導入した遺伝子改変マウスを作製し,加齢に伴うCRGCの変化を検討した.その結果,SDマウスでは加齢に伴いCRGC数が有意に減少したのに対し,野生型(WT)およびCSAマウスでは有意な減少は認められなかった.RGCの減少はとくに網膜周辺部で顕著(約C25%減)であり,後極部では有意差を認めなかった.RGC障害の機序を解析したところ,SDマウスでは加齢に伴いCRho-associatedkinase(ROCK)活性が有意に上昇し,その活性はCRGC数と逆相関を示した.この結果から,SrcのCSer75リン酸化はCCdk1/Cdk5依存的にSrcの安定性および分解制御に関与し,その異常がRhoA/ROCKシグナル経路の調節破綻を介して神経変性を促進する可能性が示唆された.本モデルでは眼圧の上昇は認められず,組織学的にも炎症などの明らかな異常は確認されなかった.眼圧非依存的にCRGC変性が進行する点が特徴であり,本モデルはCNTGの病態を反映する有用な実験モデルとなり得ると考えられる(図6).現在CSrcと緑内障に関する研究が進められており今後の応用が期待される29.32).Cb.プリン受容体を介した眼圧,緑内障モデル眼圧上昇モデルの作製にはさまざまな方法があるが前述したように課題も多い,このため自然発症型の眼圧上昇モデルであるマウスモデルの有用性が報告されている(DBA/2J)33,34).筆者らはプリン受容体に注目してCinvivo緑内障モデルの構築を行ってきた.プリン作動性(purinergic)受容体は,アデノシン三リン酸(adenos-inetriphosphate:ATP)やウリジン二リン酸(uridinediphosphate:UDP)などの細胞外ヌクレオチドを介して神経・血管,免疫,炎症などの幅広い領域の制御に関与する重要なシグナル系であり,房水動態にも関与するため,近年,緑内障の病態理解と治療標的として注目されている.そこで二つの眼圧上昇型緑内障モデルマウスの研究を行った.C1)P2Y6受容体遺伝子改変モデルP2Y6受容体欠損マウス(P2Y6Cknockout:P2Y6KO)を作製し,眼圧,房水動態,視神経およびCRGC障害,視機能を包括的に解析した35).P2Y6受容体の内因性アゴニストであるCUDPを点眼すると,野生型マウスでは濃度依存的に眼圧が低下し,最大で約C10%の下降が認められた.一方,P2Y6受容体拮抗薬CMRS2578は眼圧を上昇させ,UDPによる眼圧低下作用はCP2Y6KOマウスでは消失した.これらの結果から,P2Y6受容体が生理的な眼圧低下機構に関与していることが示された(図7a).発現解析により,P2Y6受容体は毛様体の無色素上皮細胞に局在し眼圧を下降させる方向に作用することが明らかとなった.P2Y6KOマウスはC18カ月齢まで持続的な眼圧上昇を示し,中年齢以降には視神経軸索の腫脹や軸索内小器官の蓄積,網膜内層の菲薄化,RGC数の減少が認められた(図7b,c).さらに,多局所網膜電位図(multifocalaWT/WTSD/SDbSDSAワイルドワイルド(個/画像)ヘテロ(個/画像)ヘテロ100**ホモ80ホモ9050506040403030202010100070806070RGC数後極周辺(N=8-10)後極周辺(N=6-8)(bar=SD,*repeatedANOVAp<0.05)c(mmHg)SASD1414121210108866442200図6SRC遺伝子配列図IntraocularpressureWT/WTWT/WTSDまたはCSAヘテロ接合体由来の同腹仔の遺伝子型配列図.SD/SDおよびCSA/SA変異マウスにおけるSer75コドンのCTCC→GACおよびCTCC→GCG変異の存在を示すクロマトグラム(Ca).11カ月齢マウスの網膜切片標本CSD/SD(SD)およびCSA/SA(SA)変異マウスにおけるCRGC数の測定結果(Cb).眼圧測定結果(c).(文献C26より許可を得て改変)abc図7P2Y6遺伝子改変型高眼圧型緑内障モデルP2Y6欠損(P2Y6KO)マウスに対してC4カ月間,ラタノプロストを毎日点眼投与したところ,基礎眼圧(IOP)は野生型(WT)マウスと同程度まで低下(Ca).6カ月齢CP2Y6KOマウスにおいてCOCTで観察された神経節細胞層および内網状層(GCL/IPL)の菲薄化は,ラタノプロストの毎日投与により改善された(Cb).ラタノプロストは,6カ月齢P2Y6KOマウスにおける網膜神経節細胞(RGC)数の減少を抑制した(Cc,d).(文献C36より引用)abIOPchanges(%ofcontroleye)100-10-20-30-40000-MRS2179-MRS2365-MRS2179図8P2Y1遺伝子改変型高眼圧型緑内障モデルの眼圧への影響3カ月齢の野生型(WT)マウスにおける選択的CP2Y1受容体作動薬CMRS2365の点眼は濃度依存的に眼圧を低下させた(Ca).WTマウスにおいてCMRS2365点眼は速やかに眼圧を低下させ,1.5時間で最大効果を示した(Cb).選択的CP2Y1受容体拮抗薬であるMRS2179点眼はCWTマウスの眼圧を有意に上昇させた(Cc).3カ月齢のCP2Y1KOマウスでは,MRS2365の効果は消失した(Cd).MRS2179点眼はCP2Y1KOマウスでは効果を示さなかった(Ce).(文献C36より引用)electroretinogram:mfERG)ではC13カ月齢のCP2Y6KOP2Y1受容体作動薬(MRS2365)の点眼により,野生型マウスにおいて反応低下が確認され,形態学的異常に加マウスでは眼圧低下が認められ,この効果はCP2Y1欠えて機能的障害も伴う高眼圧緑内障様表現型が示され損マウス(P2Y1KO)では消失した(図8).P2Y1受容た.体は毛様体,線維柱帯,Schlemm管に発現し,その活これらの病的変化は,PGF2Cα誘導体であるラタノプ性化は房水産生を抑制するとともに流出を促進し,そのロストの長期投与による眼圧低下によって改善したこと機序にはアクアポリンC4(aquaporin4:AQP4)およびから(図7d),本モデルにおけるCRGC障害は眼圧依存内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelialCnitricCoxide的であることが示唆された.以上より,P2Y6受容体欠synthase:eNOS)が関与していた.P2Y1KOマウスで損マウスは,房水産生異常を基盤とした新規の高眼圧緑は年齢に依存した持続的な眼圧上昇が認められ,RGC内障モデルとして有用である可能性が示された.の減少や視機能低下など緑内障様変化を呈した.この変C2)P2Y1受容体遺伝子改変モデル化はラタノプロスト点眼による眼圧低下により改善され同様にCP2Y1受容体の眼圧に関する検討を行った36).た(図8,9).以上より,P2Y1受容体は房水動態を制b図9P2Y1遺伝子改変型高眼圧型緑内障モデルフルオロフォトメトリー法CA(Fph-A).腹腔内投与(i.p.)されたフルオレセインは前房内に集積した(Ca).前房内における蛍光変化の経時的推移.UDP(Cb)およびチモロール(Cc)はフルオレセイン流入速度を低下させたが,ラタノプロストは影響を示さなかった(Cd).30分時点における蛍光強度の定量データ(Ce),P2Y6ノックアウト(P2Y6KO)マウスではフルオレセイン流入が増加し(f),UDPの効果は認めなかった(Cg,h).御する重要な分子であり,その機能低下が緑内障発症に関与することが示唆された.今回,眼圧上昇型遺伝子改変モデルマウスをC2種開発した.これらのマウスは眼圧下降治療の有用性の検討や緑内障発症機序の解明に有用であると考えられる.緑内障の分子生物学的,遺伝学的手法を用いた解析は非常なスピードで進んでおり,新知見も多く報告されている.とくに有用なCinvitro,invivoの構築はより正確で詳細な緑内障の発症,増悪機序の解明,治療法の探求に必須であり,今後のさらなる進歩が期待される.(文献C36より転載)CIIIラタノプロストによる緑内障診療の衝撃緑内障の薬物治療の歴史についてはCPG関連点眼薬の出現は非常にエポックメイキングな出来事であった37).その先駆者であるラタノプロストにはそれまでの緑内障点眼薬にはない大きな特徴があった38).すなわち現在の緑内障治療薬の中でももっとも優れた眼圧下降能を有す薬剤の一つであり,かつC1日C1回点眼であること,また夜間も含めC24時間にわたり眼圧下降が得られること,さらに全身副作用がないことである.同時によくに薬理学的に注目されたことはそれまで眼房水の排出路としてacontrolblankPGF2α17phenyltriorPGF2α11-deoxy-PGE1PhXA85分子量(kDa)95-68-62-bc0.80.80.60.6Activity(Units±SE)0.40.40.200.20VehiciePGP2α11doPGE1PhXA85VehiciePGP2α11doPGE1PhXA85ゼラチン分解活性カゼイン分解活性図10PG関連剤によるSubstratezymographyとMMP活性変化ヒト毛様体平滑筋細胞の培養上清を用いたゼラチンザイモグラム.基材コントロール,200nMCPGF2α,17-フェニルトリノールCPGF2α,11-デオキシCPGEC2,またはCPhXA85によりC62kDa,68kDa,およびC95kDaの位置に強いバンドが認められた(Ca).62kDa,とC68kDaのバンドを定量するとCPG処理培養上清を含むレーンでは,コントロールに対してゼラチン分解活性(Cb)やカゼイン分解活性(Cc)を示すバンドの強度の増加が添加後C12時間,24時間,72時間と経時的に認められた.PhXA85はラタノプロストの活性体.はあまり注目されていなかったぶどう膜強膜路を介して眼圧を強力に下降させることであった.ラタノプロストは上市後すぐに第一選択薬となったが,作用機序は十分に解明されていなかった.筆者はまだ日本でラタノプロストが発売される前に米国に留学し,指導教授から薬物作用機序についての解明を課題とされたため,自身にも思い入れがある薬物となっている.(文献C42より許可を得て掲載)C1.PG関連剤の眼圧下降機序研究筆者が研究を始めた当時,PGF2Cαがプロトオンコジーンとして注目されていたCc-Fosによる転写に影響を与えることが報告されていた39,40).c-Fosは転写因子としてCactivatorprotein1(AP-1)を形成し,細胞増殖,分化関連遺伝子,細胞周期を制御すると報告されていたため,ラタノプロストが細胞増殖や細胞外マトリックス(extracellularmatrix:ECM)の代謝に関係する可能性が考えられた.そこで筆者はラタノプロストの活性体がヒト毛様体平滑筋細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(matrixmetalloprotease:MMP)の産生・分泌やCMMP活性に与える影響を検討し,緑内障治療における眼圧下降機序との関連を明らかにする研究を行った.PGF2α,11-deoxy-PGE1,およびラタノプロスト活性体(PhXA85)を添加して,MMP活性をザイモグラフィーおよびCWesternblotにより解析した.その結果,これらの細胞はCMMP-1,MMP-2,MMP-3,MMP-9を分泌し,とくに細胞間質のCECMの分解に関与するCMMPサブタイプの活性を増加させることを確認した.さらにCFP受容体のみならずCEP受容体を介するシグナルも関与しており,複数のシグナル経路がCMMP発現制御に関与することが示唆された.その結果毛様体の主要な細胞間のCECMであるコラーゲンC1型の分解を促進していた41.43)(図10).その他の研究成果と合わせて,PGによる眼圧下降作用の機序としてCPG刺激により誘導されたCMMPがコラーゲンやフィブロネクチンなどのCECMを分解し,ぶどう膜強膜流出路の通過性を高め眼圧低下を生じるという可能性が考えられた44.46)(図11).しかし,点眼後の迅速な眼圧下降がCECMの分解では十分に説明できないため,他の機序の存在もあると思われ,さらなる作用機序の解明が必要と考えられる.2.PG関連剤による内因性PGの誘導と臨床的意義イオンチャネル開口薬であるウノプロストンとラタノプロストの作用機序の違いを,とくに内因性プロスタグランジンCE2(PGE2)産生およびプロスタグランジントランスポーター(PGT)との関係から解析した47).その結果,ラタノプロストの活性体(acidoflatanoprost)およびCPGF2α誘導体は,有意にCPGE2産生を増加させたのに対し,ウノプロストンおよびその代謝産物(M1,M2)はCPGE2産生作用が弱い,あるいは非有意であった(図12).さらに,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxy-genase:COX)阻害薬であるインドメタシンにより,ラタノプロスト誘導のCPGE2産生は完全に抑制されたが,ウノプロストンでは完全には抑制されなかった.この結果は,ラタノプロストがCCOX経路依存的にCPGE2産生を介して作用するのに対し,ウノプロストンは異なる経路を介する可能性を示唆する.PGTに対する親和性の検討では,ラタノプロスト活性体は比較的高い親和性を示したが,ウノプロストンおよびその代謝産物は低親和性であった.これらの結果はC2種の細胞内取り込みや作用発現機序の違いに関与すると可能性を示している.このようなCPG薬の内因性のCPGE2の誘導が臨床的にもつ意義についてヒトにラタノプロストを点眼した際に非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalCanti-in.ammatoryCdrug:NSAID)点眼を併用使用するとラPGErelease(ng/tissuemg)28.07.06.05.04.03.02.01.00.00.1mM1mM0.1mM1mM0.1mM1mMPGF2aコントロールM1M2ラタノプロスト図12PG関連剤による内因性PGE2産生誘導高濃度のイソプロピルウノプロストンの眼内主要代謝物,ラタノプロストならびにCPGF2Cαはコントロールに対して内因性CPGE2を有意に誘導した.M1,M2:イソプロピルウノプロストン眼内主要代謝物.コントロールに対して*p,C0.01,C†p<0.05と有意なCPGE2の産生増加を示した.(文献C47より許可を得て掲載)CmmHg眼圧28262422201816141210G前P0W2W4W6W8W10W12W中止中止中止2W4W6W図13ラタノプロストによる眼圧下降に対するNSAIDの影響緑内障患者に対してラタノプロストとCNSAIDの併用を行うと,ラタノプロストによる眼圧下降作用をCNSAID群は有意に抑制した.*p<0.05,bar=SD.(文献C49より許可を得て掲載)タノプロスト点眼による眼圧下降効果の阻害作用が健常人48)でも緑内障患者49)でも確認されたことから(図IV緑内障診療における課題と対策13),PG関連薬による眼圧下降にはある程度内因性C1.閉塞隅角緑内障の課題PGE2が作用することが考えられた.この研究からC10閉塞隅角緑内障はわが国においては,有病率では開放数年経過してCPGE関連点眼薬が上市されたことは非常隅角に比べ少ないが24,50),失明率が開放隅角より高いこに興味深い.と,適切な治療により発症を予防することができるなど12111098765432(深い前房)SPACグレード(浅前房)140120100806040200眼数図145年間の前房深度の前向き調査2005年とC2010年のC5年間の中央市住民の前房深度の変化を示す.2005年の平均前房深度グレード(青いバー)はC7.9C±2.1であったのに対し,2010年(赤いバー)はC6.4C±2.0と有意な減少(=浅前房化)を示した.*Wilcoxonranked-signtest:p<0.0001.疾患の特徴を有する.狭隅角が発症の大きなリスクになるが,発症前は視神経障害を示さず,眼圧上昇も示さないケースも多いため見逃されやすい.隅角鏡による隅角評価が診断には必須であるが侵襲的検査,主観的な検査のため,正確な診断がむずかしい場合もある.また,有病率の高さなどから診療の中心が開放隅角型になっているため,研究開発についてもやや開放型に比べて遅れている状況があった.Ca.簡易式周辺前房深度評価系の開発と仕様前房深度は閉塞隅角眼の評価には重要だが,おもに瞳孔中心部において評価され,周辺はCvanHerickに代表される主観的評価法が主である.このため定量性が低く,しばしば閉塞隅角眼を見逃すことがあった.近年では超音波生体顕微鏡(ultrasoundCbiomicroscope:UBM)やCScheimp.ug検査機,前眼部光干渉断層計(anteriorCsegmentCopticalCcoherencetomography:AS-OCT)などが臨床で活用されるようになっていたが,それぞれ侵襲性,操作性,再現性,コストなどの課題があった.これらの課題の解決のため,周辺前房深度(peripheralCanteriorCchamberdepth)を非接触かつ定量的に測定可能な新規装置CscanningCperipheralCanteriorCchamberdepthanalyzer(SPAC)を開発し,その精度・再現性を検証した51,52).SPACは角膜中心から周辺までを約C0.5秒でスキャンし,0.4Cmm間隔でC21枚の画像を取得す(文献C56から許可を得て掲載)る.これらの画像から角膜および虹彩境界を自動検出し,前房深度(anteriorCchamberdepth:ACD),角膜厚,角膜曲率半径を計測することが可能である.また,患者データを活用して前房深度のC12分類と閉塞隅角眼の危険性に関する評価結果を示す.注意点としては細隙灯光を用いるため隅角の直接評価は不可能であることと耳側に限定した評価であることである.Cb.SPACを用いた閉塞隅角眼のスクリーニングSPACの閉塞隅角緑内障眼のスクリーニングにおける有用性について三つの非接触検査機器(PAC,IOLMasC-ter,AS-OCT)を用いてシンガポールのC50歳以上の無症候住民C2,052名を対象に検討を行った.隅角鏡で後部線維柱帯がC180°以上観察不能な場合を閉塞隅角と定義した.その結果,SPACおよびCIOLMasterはいずれもCAUC0.83と比較的良好な識別能を示し,AS-OCTはCAUC0.76とやや劣っていた.感度はCSPACでC90.0%,IOLMasterでC87.7%,AS-OCTでC88.4%といずれも高値であったが,特異度はそれぞれC76.6%,77.7%,62.9%と中等度にとどまった.これらの機器の陽性的中率は低く,陰性的中率が高いことから,閉塞隅角眼のスクリーニングとして有用な可能性が示された53,54).しかし,単体ではスクリーニング機器として十分なCAUCを示さなかったので,SPACと他の検査機器を段階的に用いることにより,より高い診断精度が得られた55).c.ACDの経時的評価と閉塞隅角眼の発症頻度閉塞隅角緑内障の発症パターンについては,閉塞隅角眼疑いから閉塞隅角眼,閉塞隅角緑内障と進行するが,時には閉塞隅角眼疑いから閉塞隅角緑内障発作を起こす症例も存在する.このためCACDの定量的評価による閉塞隅角緑内障の発症リスクを予見することは重要である.一般的に加齢で前房隅角は浅くなり閉塞隅角眼を発症する危険性が高くなる.山梨県中央市の地域住民を対象にC5年間の前向き研究を行った56).ACDは加齢に伴いとくに周辺部で有意に浅くなり,浅前房化を示すSPACのグレード判定は低下した(図14).本研究における隅角閉塞の発症率はC5.4%であった.隅角閉塞発症眼では,初回検査時の前房がより浅く,その後の前房浅化の進行も大きかった.一方,年齢や性別は有意な関連を示さなかった56).これらから定量的な前房隅角の評価が重要であることがわかった.Cd.開放隅角眼における前房深度の有用性前房隅角の評価はおもに閉塞隅角眼が対象となっているが,開放隅角眼においても重要である.たとえば予後が悪く眼圧の変動が大きいことで知られる.性緑内障の場合,しばしばCACDが浅くなり眼圧コントロールが悪化する.また,原田病57.59)や再発性多軟骨炎60)などの疾患では疾患の活動性とCACDが相関することも報告されている.低侵襲性で短時間の定量的なCACDの評価が可能な機器の有用性は高いと思われる.Ce.新しい閉塞隅角眼のバイオマーカーリスク要因閉塞隅角眼に関連する要因としては,浅前房,短眼軸,厚い虹彩,lensvaultなどが既に報告されている61).今回,黄斑部脈絡膜/眼軸比が閉塞隅角緑内障発作と関連の深いバイオマーカーの一つであることを明らかにした62).脈絡膜/眼軸比は急性緑内障発作眼や閉塞隅角疑い眼のほうがコントロールより有意に大きかった.今後比較的簡易な閉塞隅角眼の評価法として活用が可能となる可能性がある.C2.緑内障治療点眼薬の課題臨床的に使用可能な緑内障治療点眼薬は,1970年代にチモロールを代表とするCβ遮断薬が上市されて以降急速に拡大してきた.今日臨床的に使用可能な点眼薬を大別するとCβ遮断薬,PG関連薬(PGE受容体作動薬を含む),α2作動薬,炭酸脱水酵素阻害薬,ROCK阻害薬,コリン作動薬があり,さらに近年は各種配合剤が上市さ図15点眼支援器を用いた点眼の様子緑内障点眼薬を装填し,支援器の脚部と頬部と眉毛部に固定,軽い応力で握ることが可能なウイングをつまむとC1滴のみが滴下される.点眼の際に患者は点眼瓶挿入部のオレンジ色の部分を見つめる.れている.このように最近C50年間の間に緑内障点眼治療は急速に発展してきた.筆者らの調査では患者は平均2種の緑内障点眼を使用しており,治療開始後使用数は増加していた63).点眼治療の選択肢が増えると同時に多くの課題が明らかになった.Ca.点眼副作用緑内障治療点眼薬には主成分そのものによる副作用と含有物による副作用が認められている.たとえば第一選択薬であるCPG関連薬に関しては,全身副作用は少ないものの,睫毛伸長や上眼瞼深溝化(deepeningofuppereyelidsulcus:DEUS)などのプロスタグランジン関連眼窩周囲症(prostaglandinCassociatedCperiorbitopa-thy:PAP)などの副作用が知られている64).とくに筆者は虹彩色素沈着の発症機序65.68)やその不可逆性,ラタノプロスト点眼と黄斑浮腫の関連性などについて検討してきた69).β遮断薬は喘息症状や心不全症状の悪化など全身副作用が報告され禁忌とされているが,大規模データを用いた解析ではいまだ使用例が少なくないことが明らかになった70,71).現状多数種の緑内障点眼が多く使用されているが63,72),これにより角膜びらんや結膜充血などの眼表面への障害をきたし,時に視機能も悪化していることが明らかになった73).Cb.不適切点眼と対策1)緑内障点眼の成功と関連因子多くの緑内障患者において治療は点眼薬を主体として行われているが,実臨床では点眼手技の失敗が高頻度に認められることが報告されている74).そこで筆者らは,緑内障患者における点眼手技の失敗頻度と,それに関連(mmHg)2520151050control0.25μg/cm2LBNS2.5μg/cm2LBNS25μg/cm2LBNS貼布前1日2日4日7日9日図16ラタノプロスト担持バイオナノシート(LBNS)の眼圧下降効果ラタノプロストをC0.25,2.5,25Cμg/cmC2担持したC3種のCLBNSは貼付C1時間後にC3濃度とも同程度の最大眼圧下降能を示すが,3種の濃度間では眼圧下降維持時間が異なり,2.5とC25Cμg/cmC2のCLBNSはC7日間有効な眼圧下降を示した.する視機能および身体機能因子について検討した75).対象はC6カ月以上自己点眼を継続しているC103例とし,点眼液が結膜.に入らない場合,睫毛や眼表面へのボトルの接触,1回の点眼で複数滴が滴下される場合を点眼失敗と定義した.その結果,全体のC61.2%が少なくとも片眼で点眼失敗を認めた.もっとも多い失敗は結膜.外への滴下(76.2%)であり,次いでボトル先端の眼表面などへの接触(22.2%),複数滴滴下(11.1%)であった.点眼失敗の関連因子として,加齢に加え,頭部後屈角度の低下,ピンチ力低下,上肢機能障害,運動失調,視力低下および視野障害が有意に関連した.多変量解析では,運動失調,上肢機能障害,視力および視野障害が独立した関連因子として抽出された.以前から視機能低下や頭部後屈不足の関与が指摘されてきたが,本研究では臨床的に明らかでない軽度の運動失調も点眼失敗に関連することが示された点が重要である.さらに,点眼失敗を認める患者ではCNEI-VFQ-25における視覚関連QOLが低い傾向にあった.点眼手技の失敗は薬剤の有効性を著しく低下させるため,その改善が重要である.対策として,頭部後屈の指導や仰臥位での点眼に加え,点眼補助具の使用が有効と考えられた.そこで,汎用性の高い点眼補助器を開発した(図15).従来の補助具は(文献C79より許可を得て掲載)特定の点眼薬に限定されていたが,本装置は多くの緑内障点眼薬に対応可能である.本補助具の有用性を緑内障患者で検討したところ,通常の座位での点眼成功率は71.6%であったのに対し,補助具使用により約C97%まで有意に改善した.さらに仰臥位での使用により成功率は一層向上した76).また,小型で操作が困難なシングルユース点眼薬に対応した補助具も開発し,その有用性を検討した.通常の座位での点眼成功率は約C70%であり加齢とともに低下したが,補助具使用により約C90%まで有意に改善した.仰臥位では成功率はさらに高く,補助具使用によりC100%に達した77).緑内障患者の調査の結果,点眼手技の失敗は高頻度に存在し,適切な支援が必要であることが明らかとなった.点眼補助具の活用は,点眼成功率の向上および治療効果の最大化に寄与する有効な手段の一つとなる可能性が示唆された78).C3.緑内障治療点眼薬の発展点眼治療は患者の手技やアドヒアランスに依存するため,さまざまな工夫を行っても治療精度には課題が残るのが実情である.さらに,点眼薬の有効持続時間は最長でもC1日であり,患者は少なくともC1日C1回の点眼を継(%)治療継続率100806040200010203040506070(月)期間図17新規治療開始緑内障患者の治療継続率治療開始後の緑内障患者の治療継続率は早期から低下しC1年で約C40%が脱落していた.続する必要がある.このことが適切な治療継続の障害となっている.そのため,より長期間作用する新規ドラッグデリバリーシステム(drugCdeliveryCsystem:DDS)の開発が求められている.筆者らは,ラタノプロストを担持した生分解性ナノシート(latanoprost-loadedCbio-degradablenanosheet:LBNS)を開発し,その有効性および安全性を検討した79).本研究ではキトサンとアルギン酸ナトリウムからなる多層構造の極薄(約C40Cnm)ナノシートにラタノプロストを担持させ,角膜上に貼付することで持続的な薬物放出をめざした.異なる濃度(0.25,2.5,25Cμg/cmC2)のCLBNSを作製し,ラット角膜に適用して眼圧下降効果を経時的に評価した.その結果,2.5およびC25Cμg/cmC2のCLBNSは単回貼付で約C1週間にわたり有意な眼圧下降を示し,とくにC2.5Cμg/cmC2ではC1.7日目にかけて安定した効果が持続した(図16).一方,従来のC0.005%ラタノプロスト点眼は単回投与ではC1日のみ効果を示し,連日投与でも効果の持続は限定的であった.LBNSでは房水中にラタノプロスト代謝物が最大C6日間にわたり検出され,持続的な薬物供給が示唆された.安全性に関しては一過性の結膜充血が認められたものの,組織学的にも炎症や構造異常は確認されなかった.さらに実験動物の刺激反応の増加は認め(文献C88より許可を得て掲載)られず,高い生体適合性が示された.今回用いた超薄ナノシートはややハンドリングに課題はあるもののさまざまな物質を担持することができ,応用が期待された.今後新しいさまざまなタイプのCDDSの開発が緑内障分野でもさらに加速すると思われ,今後の臨床応用が期待される80,81).C4.診療脱落とアドヒアランス緑内障は自覚症状が少なく,点眼効果が自覚しにくいため,治療上の大きな課題の一つが不良なアドヒアランスと診療からの脱落である82,83).海外ではアドヒアランスが不良な症例が多いとされているが84,85),筆者が参加した全国規模の調査ではアドヒアランス不良例が多いことが確認された86).緑内障治療においてアドヒアランスの低下は非常に重要な問題であり,アドヒアランスの低下と障害の進行に関連性があることがわかってきた87).アドヒアランスと並んで重要な診療脱落についてはこれまでわが国のデータがほとんどなかったため,緑内障治療開始した患者のうちどの程度が診療を中断するかについて診療報酬データベースを用いて検討した88).その結果,治療継続率は時間経過とともに低下し,3カ月,6カ月,12カ月,3年後の継続率はそれぞれC73.2%,68.1ab図18インターネット活用型緑内障診療情報閲覧システムの表示代表例中央に眼圧と視野検査のCMD値の経時変化を示すグラフ,下方に投薬内容と主要検査処置内容や実施日情報などが提示される(Ca).静的視野検査については別ウインドウに検査結果が提示される.単回の結果に加え複数回の結果がある場合はそれらの比較も可能となる(Cb).0102030405060708090100(%)図19自己閲覧群と非自己閲覧群の緑内障治療点眼数の変化自己閲覧群は非自己閲覧群に比べ点眼数の増加や減少がみられ,2群間で点眼数の期間中の変化は有意に異なった(p=0.001,分割表分析).(文献C89より許可を得て掲載)%,60.9%,52.5%であった(図17).とくに治療開始するほど低下をすることもあきらかになった70).緑内障後C3カ月以内に多くの患者が中断しており,初期段階では生涯にわたり治療を要する慢性疾患であり,視機能維の対応の重要性が示された.診療継続率は点眼種が増加持のためには良好なアドヒアランスを保つことと,治療a(mmHg)経過月数(月)1.000.00-1.00-2.00-3.00-4.00b(mmHg)眼圧1086420-24-18-12-66121824図20インターネット活用型緑内障診療情報閲覧システムを用いた経過中の眼圧変化18161412同一治療薬でC4年間前向きに眼圧を調査した症例における眼圧変化を示す.閲覧群では前半のC2年間において眼圧は徐々に上昇傾向を示したが,GSSの情報を自己チェック可能となった後半のC2年間において眼圧は下降を示した(Ca).全経過中診察時のみ閲覧可能であった非自己閲覧群では期間中眼圧の変動はみられなかった(Cb).Bar=SD.(文献C89より許可を得て掲載)継続がきわめて重要であり,その対策は非常に重要であ要因の一つとしては,緑内障に対する理解不足である.る.このため患者やその保護者に患者の診療の状況を提供Ca.アドヒアランス改善,治療継続のための患者し,病態を把握してもらうこと,医師との良好なコミュリテラシーの向上ニケーションを図ることによってアドヒアランスや治療緑内障患者のアドヒアランスの不良,治療脱落が多いの脱落を防止するためにインターネット活用型緑内障診図21緑内障手術実施状況の地域差人口C10万人あたりの手術数を多いほうを暖色系,少ないほうを寒色系で示す.ジニ係数はC0.27と地域格差が強い.(文献C93より許可を得て修正掲載)療情報閲覧システム(glaucomaCcareCsupportsystem:GSS)を構築,これを運用して,患者が自身の治療状況を把握することが緑内障診療にどのように影響を与えるかについて前向き比較ランダム化試験を行った89).GSSでは患者も理解しやすいように眼圧や視野のCMD値の推移,治療薬などの状況が提示されるようになっている(図18).対象は山梨大学附属病院で治療を受けている緑内障患者で,GSSに登録後,インターネット上で自由閲覧が可能な群(IA群)と,診察時のみ閲覧可能な非自己閲覧群(NIA群)に無作為に割り付けられた.両群とも最初のC2年は診察時のみ閲覧可能とし,3年目からのC2年間についてはCIA群においては,自宅などから眼圧,視野,処方内容などの医療情報を随時確認できるのに対し,NIA群では医師同席時のみ閲覧可能とした.10050主要評価項目は点眼薬使用数の変化,眼圧,投薬状況の変化である.NIA群では期間中の点眼薬増加はC17.8%であったに対し,IA群はC8.6%,点眼薬減少はCNIA群がC3.3%であったの対しCIA群C13.6%であり,2群間には有意差を認めた(p=0.001,分割表分析)(図19).さらに期間前半に薬剤変更のない患者に限定した解析の結果,IA群ではインターネット閲覧開始前は眼圧が上昇傾向であったのに対し,閲覧開始後は低下傾向へと転じた(ANCOVA,Cp=0.002)(図20a).一方,NIA群では明確な変化は認められなかった(図20b).想定される点眼薬必要量に対する実際の処方量の比を示し,服薬アドヒアランスの指標となるCmedicationCpossessionCrate(MPR)は85)IA群で有意に改善(82.3%→C91.1%C,Cp=0.03)したが,NIA群では変化がなかった.これらの結1614121086420図22緑内障初診から手術施行までの期間分布初診C1年以内に手術加療を受けた患者は全体のC31.9%で受診患者のC1.1%を占めている.2年目以降は減少傾向,手術施行時期の中央値は初診後C3年目であった.(文献C94より許可を得て修正掲載)手術人数1年目2年目3年目4年目5年目6年目7年目8年目9年目眼科医側眼科医側:タブレット操作端末遠隔操作ロボットの濾過胞評価=対面評価Pwith一般医/NsAI-トリアージExpert:Pwith一般医/NsAI-トリアージ多サイト同時処理・・・・AI-トリアージ診療時間制限なし・・・・図23これからのオンライン眼科診療システム遠隔地からオンラインで患者の状況を眼科医が直接診察,もしくは画像を自動取得しCAIがトリアージを行う.その結果を参考に専門医が判断を下す.これによりC1名の眼科医が同時に複数の患者の診療が可能.(文献C95,96より許可を得て掲載)果は,患者が自身のデータを継続的に確認することで疾患理解(healthliteracy)が向上し,治療への積極的関CVこれからの緑内障研究・診療の方向与が促進された可能性を示唆すると考えられる.アドヒC1.人口統計学的にみた緑内障の課題アランスは緑内障診療において非常に重要であり,モニ筆者らの診療報酬データベースを用いた検討では高齢ター機器などを用いた研究やその他のさまざまな取り組社会においてC2020年代後半までは緑内障患者の絶対数みがこれまでなされてきたが,正確に捉えることが困難は増加するが,その後人口の減少に伴って絶対数は減少である90,91).今後患者や支援者のリテラシーの向上ととする,しかし,この場合でも患者に占める高齢者比率はもに技術的な革新,さらに患者に依存しない治療法の開今まで以上に上昇する63).世界的には患者数は今後増加発などさらなる発展が必要である.していくとされる92).したがって,今後の緑内障診療を撮影画像表1緑内障領域におけるAIの活用方法カテゴリー目的未発見・脱落患者スクリーニング診療支援診療データ整理・評価,検査法・治療法提案,希少疾患診断,手術支援,進行判定,予後判定予防医療,先制医療,個別化医療:遺伝子解析+個別ビッグデータ解析患者対策患者教育,点眼支援,リテラシー改善,受診勧奨,アドヒアランス向上,診療脱落防止社会貢献社会ニーズの把握,医療経済解析,社会的診断・治療法の意義評価研究臨床:研究計画,データ管理・整理・解析,未標準化データ収集,関連情報収集・整理基礎:研究計画,ビッグデータ解析,関連情報収集・整理Powertodetectslope=-0.5dB/yearPowervsDuration(3-monthintervals,α=0.05two-sided)1.00.80.60.40.2図24OCTを用いた予測視野の導入による視野障害の悪化検出シミュレーション測定再現性が良好になるほど視野進行判定は大幅に短縮する.考えるときこれらの社会的変化を念頭に置いた診療体制を構築することが求められる.近年,MIGSの普及により緑内障手術数は増加している.しかし,NDBオープンデータベースを用いた検討では,日本国内における緑内障手術数の分布は分散の程度を示すジニ係数がC0.257と地域格差が強いことが判明している.このことは手術を受けられる施設が偏在しており地域間格差が強いことを示している(図21)93).また,診療報酬データベースを用いて緑内障初回手術施行時期を検討すると,手術施行例全体のC31.9%は治療開始初年度に手術を施行されていた(図22).このことは緑内障の診療を始めて受けた際にはすでに手術が必要なほど障害が強くなっていることを示している可能性がある94).2.新しい緑内障診療体制のあり方現在の緑内障診療の課題に対応するためには,診療体制の大幅な変更が必要である.眼科診療は,優れた画像情報があれば,遠隔地からでもオンラインで診察が可能である.筆者らが開発した遠隔操作型眼科診療ロボットは線維柱帯切除術の濾過胞評価について検討したところ対面と同程度であることが判明した95,96).遠隔診療システムはデジタル画像を介して診療を行うため,多数の患者に対して同時に診察を行うこと,時差を越えて診療を行うことが可能である.また,AIを用いたトリアージやスクリーニングも可能となる可能性があり今後の普及が期待される(図23).Ca.AIを活用した新しい緑内障診療現在CAIの医学での利活用は急速に進んでいる.表1に示すように,緑内障においては診療支援,患者対策,図25これからの緑内障のあり方社会貢献,研究とあらゆる場面でのCAIの利活用が想定されている.すでに眼底写真から緑内障かどうかの診断については高いレベルで可能であることが筆者らの研究を含め報告されている97.99).最近の研究では緑内障による視野障害について三次元COCTを用いることで正確に評価できることが報告されている100).視野検査は緑内障診療においては非常に重要であるものの,自覚的検査であるため信頼性が高い結果が得られない場合がある.とくに高齢患者が増加すると進行判定などにおいて正確な視野検査ができない場合は治療方針の決定に悪影響を及ぼす可能性があり,AIを用いた推定視野は有効な可能性がある.新しい緑内障の治療薬の有効性を判断するために視野検査が重要であるがCOCTデータから視野が推定できることは,より高い精度と再現性をもって進行判定が可能となる可能性がある.図24に進行予測判定のシミュレーション結果を示す.検出力をC0.8とし,MDスロープが-0.5dB/年となった場合を進行とすると,3カ月ごとに視野を判定した際の進行判定に必要な期間を計算した.その結果,MD値の再現誤差がC0.2,1.0,2.0dBと不良になるほど進行判定には長期間が必要となる.OCT検査は患者への負担が少ないためより高頻度で施行が可能である.このためCOCTを用いた視野予測は大幅に進行の判定期間が短縮することが可能と思われる.このような事例を含め今後は緑内障診療の裏方としてCAIはすべての緑内障関連領域で利活用される時代が来ると考えられる.Cb.収集データを活用した新しい研究成果とその臨床還元デジタル化の推進により,緑内障診療に関する画像,検査,診療データ,さらにオンライン情報,遺伝子データなどの多くのデータの収集体制を進めることが可能となったが,データ収集をできるだけ負担なくかつ正確に収集,編集管理ができるためのシステム作りが今後重要になってくると思われる.日本眼科学会ではCJapanOcularImagingRegistry(JOIR)を介して包括的なデータ収集体制を構築している101).日本緑内障学会は日本眼科学会との協働を行いながら,他学会や自治体組織などを研究フィールドとしてCAIビッグデータ研究を推進することが重要である.収集されたデータやその成果を基に,生物,工学,製薬,コンピュータサイエンスの専門家と研究を進め,得られた成果をトランスレーショナル研究へと展開し,さらに臨床へ導出し,有用性等の評価を行うサイクルを繰り返し動かすことで,日本における緑内障研究を世界に通用するものへと発展させることが重要である(図25).おわりに緑内障はもっとも古い眼疾患の一つであり,近代眼科学が確立されたのはC19世紀中頃,現代眼科学が始まったのはC20世紀前半である.この約C200年の間に,緑内障の理解と治療は大きく進歩してきたが,筆者が眼科医として過ごしてきたこのC40年間における進歩は,科学的観点および臨床の両面において,きわめて顕著なものであったと実感している.このような時代に眼科医として携われたことは大きな幸運である.一方で,今後も科学の進歩はさらに加速すると考えられ,緑内障に対する眼科医の向き合い方も,従来の単に視機能を維持するという枠組みを超えたものへと変化していくであろう.筆者を含め,各々の眼科医が日々の診療および研究の中で,いかに緑内障と向き合うべきかをしっかりと考えることが重要であると感じている.謝辞:今回須田記念講演という名誉ある機会を与えていただいた第C36回日本緑内障学会会長の栗本康夫先生,日本緑内障学会理事長.庄司信行先生,日本緑内障学会の先生方に深謝いたします.今回の発表はもちろんその他の研究にもご指導,ご協力をいただいた多くの皆様に深謝いたします.卒業より今日までご指導,ご支援をいただいた山梨大学眼科学教室,山梨大学眼科学教室同窓会ならびに山梨県眼科医会の先生方にも深く感謝いたします.留学中にご指導いただいたカリフォルニア大学サンディエゴ校のCRNWeinreb教授にも深謝いたします.筆者を緑内障の世界に導き多くのご指導をいただき,残念ながら他界された故塚原重雄先生には心より深謝いたします.最後に日頃から筆者の研究活動を支えてくれた家族に感謝いたします.文献1)GazzardG,KonstantakopoulouE,Garway-HeathDetal:CSelectivelasertrabeculoplastyversuseyedropsfor.rst-lineCtreatmentCofCocularChypertensionCandCglaucoma(LiGHT):amulticentrerandomisedcontrolledtrial.Lan-cetC393:1505-1516,C20192)木内良明,井上俊,庄司信行ほか:緑内障診療ガイドライン(第C5版),解説/特集.日眼会誌126:85-177,C20223)PeaseCME,CMcKinnonCSJ,CQuigleyCHACetal:ObstructedCaxonaltransportofBDNFanditsreceptorTrkBinexper-imentalglaucoma.InvestOphthalmolVisSciC41:764-774,C20004)MartinCKR,CQuigleyCHA,CValentaCDCetal:OpticCnerveCdyneinCmotorCproteinCdistributionCchangesCwithCintraocu-larpressureelevationinaratmodelofglaucoma.ExpEyeResC83:255-262,C20065)LeeMK,ClevelandDW:Neuronalintermediate.laments.AnnRevNeurosciC19:187-217,C19966)KushkuleyJ,ChanWK,LeeSetal:Neuro.lamentcross-bridgingCcompetesCwithCkinesin-dependentCassociationCofCneuro.lamentsCwithCmicrotubules.CJCCellCSciC122:3579-3586,C20097)KashiwagiCK,COuCB,CNakamuraCSCetal:IncreaseCinCdephosphorylationCofCtheCheavyCneuro.lamentCsubunitCinCtheCmonkeyCchronicCglaucomaCmodel.CInvestCOphthalmolCVisSciC44:154-159,C20038)GuptaN,AngLC,NoeldeTillyLetal:Humanglaucomaandneuraldegenerationinintracranialopticnerve,lateralgeniculateCnucleus,CandCvisualCcortex.CBrCJCOphthalmolC90:674-678,C20069)BalaratnasingamCC,CMorganCWH,CBassCLCetal:Time-dependente.ectsofelevatedintraocularpressureonopticCnerveCheadCaxonalCtransportCandCcytoskeletonCproteins.CInvestOphthalmolVisSciC49:986-999,C200810)CrishCSD,CCalkinsDJ:NeurodegenerationCinglaucoma:CprogressionCandCcalcium-dependentCintracellularCmecha-nisms.NeuroscienceC176:1-11,C201111)NuschkeAC,FarrellSR,LevesqueJMetal:Assessmentofretinalganglioncelldamageinglaucomatousopticneu-ropathy:axonCtransport,CinjuryCandCsomaCloss.CExpCEyeCRes141:111-124,C201512)BarresCBA,CSilversteinCBE,CCoreyCDPCetal:Immunologi-cal,Cmorphological,CandCelectrophysiologicalCvariationCamongCretinalCganglionCcellsCpuri.edCbyCpanning.CNeuronC1:791-803,C198813)KashiwagiCF,CKashiwagiCK,CIizukaCYCetal:E.ectsCofCbrain-derivedCneurotrophicCfactorCandCneurotrophin-4Conisolatedculturedretinalganglioncells:evaluationby.owcytometry.CInvestCOphthalmolCVisCSciC41:2373-2377,C200014)KashiwagiCK,CIizukaCY,CAraieCMCetal:E.ectsCofCretinalCglialcellsonisolatedratretinalganglioncells.InvestOph-thalmolVisSci42:2686-2694,C200115)KashiwagiCK,CIizukaCY,CMochizukiCSCetal:Di.erencesCinCnitricCoxideproduction:CaCcomparisonCofCretinalCganglionCcellsCandCretinalCglialCcellsCculturedCunderChypoxicCcondi-tions.BrainResMolBrainResC112:126-134,C200316)KashiwagiCK,CIizukaCY,CTanakaCYCetal:MolecularCandCcellularCreactionsCofCretinalCganglionCcellsCandCretinalCglialCcellsCunderCcentrifugalCforceCloading.CInvestCOphthalmolCVisSciC45:3778-3786,C200417)PavlidisCM,CStuppCT,CNaskarCRCetal:RetinalCganglionCcellsCresistantCtoCadvancedglaucoma:CaCpostmortemCstudyCofChumanCretinasCwithCtheCcarbocyanineCdyeCDiI.CInvestOphthalmolVisSci44:5196-5205,C200318)NeufeldAH:MicrogliaCinCtheCopticCnerveCheadCandCtheCregionCofCparapapillaryCchorioretinalCatrophyCinCglaucoma.CArchOphthalmol117:1050-1056,C199919)NeufeldCAH,CLiuB:GlaucomatousopticCneuropathy:Cwhengliamisbehave.Neuroscientist9:485-495,C200320)LeeEJ,HanJC,ParkDYetal:Aneuroglia-basedinter-pretationofglaucomatousneuroretinalrimthinningintheopticnervehead.ProgRetinEyeResC77:100840,C202021)BoalCAM,CRisnerCML,CCooperCMLCetal:AstrocyteCnet-worksastherapeutictargetsinglaucomatousneurodegen-eration.Cells10:1368,C202122)ZhaoCX,CSunCR,CLuoCXCetal:TheCinteractionCbetweenCmicrogliaandmacrogliainglaucoma.FrontNeurosci15:C610788,C202123)ShinozakiCY,CNamekataCK,CGuoCXCetal:GlialCcellsCasCaCpromisingCtherapeuticCtargetCofglaucoma:CbeyondCtheIOP.FrontOphthalmol(Lausanne)C3:1310226,C202324)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapanese:TheCTajimiCStudy.Ophthalmology111:1641-1648,C200425)HaradaT,HaradaC,WatanabeMetal:FunctionsofthetwoCglutamateCtransportersCGLASTCandCGLT-1CinCtheCretina.ProcNatlAcadSciUSAC95:4663-4666,C199826)KashiwagiK,ItoS,MaedaSetal:Aser75-to-aspphos-pho-mimickingmutationinSrcacceleratesageing-relatedlossCofCretinalCganglionCcellsCinCmice.CSciCRepC7:16779,C201727)SalterCMW,CKaliaLV:Srckinases:CaChubCforCNMDACreceptorregulation.NatRevNeurosci5:317-328,C200428)KatoG,MaedaS:Neuron-speci.cCdk5kinaseisrespon-sibleCforCmitosis-independentCphosphorylationCofCc-srcCatCser75inhumanY79retinoblastomacells.JBiochemC126:C957-961,C199929)BourkeCL,CO’BrienC:FibrosisCandCsrcCsignallingCinglaucoma:CfromCmolecularCpathwaysCtoCtherapeuticCpros-pects.IntJMolSci26:1009,C202530)XuLJ,GaoF,ChengSetal:ActivatedephrinA3/EphA4forwardsignalinginducesretinalganglioncellapoptosisinexperimentalCglaucoma.CNeuropharmacologyC178:108228,C202031)TsukamotoCT,CKajiwaraCK,CNadaCSCetal:SrcCmediatesCTGF-β-inducedCintraocularCpressureCelevationCinCglauco-ma.CJCellPhysiol234:1730-1744,C201932)ChitranshiN,DheerY,MirzaeiMetal:Lossofshp2res-cuesCBDNF/TrkBCsignalingCandCcontributesCtoCimprovedCretinalCganglionCcellCneuroprotection.CMolCtherC27:424-441,C201933)ChangCB,CSmithCRS,CHawesCNLCetal:InteractingClociCcauseCsevereCirisCatrophyCandCglaucomaCinCDBA/2JCmice.CNatGenetC21:405-409,C199934)AndersonCMG,CSmithCRS,CHawesCNLCetal:MutationsCinCgenesCencodingCmelanosomalCproteinsCcauseCpigmentaryCglaucomainDBA/2Jmice.NatGenetC30:81-85,C200235)ShinozakiCY,CKashiwagiCK,CNamekataCKCetal:PurinergicCdysregulationCcausesChypertensiveCglaucoma-likeCopticCneuropathy.CJCIInsightC2:93456,C201736)HamadaCK,CShinozakiCY,CNamekataCKCetal:LossCofCP2Y(1)receptorsCtriggersCglaucoma-likeCpathologyCinCmice.CBrJPharmacolC178:4552-4571,C202137)BitoLZ:Prostaglandins:CaCnewCapproachCtoCglaucomaCmanagementCwithCaCnew,CintriguingCsideCe.ect.CSurveyCofCOphthalmologyC41(Suppl2):S1-S14,199738)CamrasCB:ComparisonCofClatanoprostCandCtimololCinCpatientsCwithCocularChypertensionCandglaucoma:CaCsix-monthmasked,multicentertrialintheUnitedStates.TheUnitedCStatesCLatanoprostCStudyCGroup.COphthalmologyC103:138-147,C199639)LindseyCJD,CToCHD,CWeinrebRN:InductionCofCc-fosCbyCprostaglandinCF2CalphaCinChumanCciliaryCsmoothCmuscleCcells.InvestOphthalmolVisSciC35:242-250,C199440)LindseyCJD,CJonesCHL,CHewittCEGCetal:InductionCofCtyrosinasegenetranscriptioninhumanirisorganculturesexposedCtoClatanoprost.CArchCOphthalmolC119:853-860,C200141)LindseyCJD,CKashiwagiCK,CBoyleCDCetal:ProstaglandinsCincreaseCproMMP-1CandCproMMP-3CsecretionCbyChumanCciliaryCsmoothCmuscleCcells.CCurrCEyeCResC15:869-875,C199642)WeinrebRN,KashiwagiK,KashiwagiFetal:Prostaglan-dinsCincreaseCmatrixCmetalloproteinaseCreleaseCfromChumanciliarysmoothmusclecells.InvestOphthalmolVisSci38:2772-2780,C199743)WeinrebCRN,CLindseyJD:MetalloproteinaseCgeneCtran-scriptionCinChumanCciliaryCmuscleCcellsCwithClatanoprost.CInvestOphthalmolVisSciC43:716-722,C200244)WeinrebRN,TorisCB,GabeltBTetal:E.ectsofprosta-glandinsConCtheCaqueousChumorCout.owCpathways.CSurvCOphthalmol47(Suppl1):S53-S64,200245)LindseyCJD,CKashiwagiCK,CKashiwagiCFCetal:Prostaglan-dinCactionConCciliaryCsmoothCmuscleCextracellularCmatrixmetabolism:CimplicationsCforCuveoscleralCout.ow.CSurvCOphthalmol41(Suppl2):S53-S59,199746)LindseyCJD,CKashiwagiCK,CKashiwagiCFCetal:Prostaglan-dinsCalterCextracellularCmatrixCadjacentCtoChumanCciliaryCmusclecellsinvitro.InvestOphthalmolVisSciC38:2214-2223,C199747)KashiwagiCK,CKanaiCN,CTsuchidaCTCetal:ComparisonCbetweenisopropylunoprostoneandlatanoprostbyprosta-glandinE2induction,a.nitytoprostaglandintransporter,andCintra-ocularCmetabolism.CExperimentalCEyeCResearchC74:41-49,C200248)KashiwagiCK,CTsukaharaS:E.ectCofCnon-steroidalCanti-in.ammatoryCophthalmicCsolutionConCintraocularCpressureCreductionCbyClatanoprost.CBrCJCOphthalmolC87:297-301,C200349)ChibaT,KashiwagiK,ChibaNetal:E.ectofnon-steroiC-dalCanti-in.ammatoryCophthalmicCsolutionConCintraocularCpressurereductionbylatanoprostinpatientswithprima-ryopenangleglaucomaorocularhypertension.BrJOph-thalmol90:314-317,C200650)SawaguchiCS,CSakaiCH,CIwaseCACetal:PrevalenceCofCpri-maryCangleCclosureCandCprimaryCangle-closureCglaucomaCinasouthwesternruralpopulationofJapan:TheKumeji-mastudy.Ophthalmology119:1134-1142,C201251)KashiwagiK,KashiwagiF,TodaYetal:Anewlydevel-opedperipheralanteriorchamberdepthanalysissystem-principle,Caccuracy,CandCreproducibility.CBrCJCOphthalmolC88:1029-1034,C200452)KashiwagiCK,CAbeCK,CTsukaharaS:QuantitativeCevalua-tionofchangesinanteriorsegmentbiometrybyperipher-allaseriridotomyusingnewlydevelopedscanningperiph-eralCanteriorCchamberCdepthCanalyzer.CBrCJCOphthalmolC88:1035-1040,C200453)LavanyaCR,CTeoCL,CFriedmanCDSCetal:ComparisonCofCanteriorchamberdepthmeasurementsusingtheIOLMas-ter,scanningperipheralanteriorchamberdepthanalyser,andanteriorsegmentopticalcoherencetomography.BrJOphthalmolC91:1023-1026,C200754)LavanyaCR,CFosterCPJ,CSakataCLMCetal:ScreeningCforCnarrowCanglesCinCthesingaporeCpopulation:CevaluationCofCnewCnoncontactCscreeningCmethods.COphthalmologyC115:C1720-1727,C200855)ChangCDS,CSakataCLM,CAungCTCetal:SingleCversusCsequentialtestingwithscanningperipheralanteriorcham-berdepthanalyser,IOLMasterandanteriorsegmentopti-calCcoherenceCtomographyCforCtheCdetectionCofCnarrowCangles.BrJOphthalmol95:1410-1414,C201156)KashiwagiCK,CChibaCT,CMabuchiCFCetal:Five-yearCinci-denceCofCangleCclosureCamongCglaucomaChealthCexamina-tionparticipants.GraefesArchClinExpOphthalmolC251:C1219-1228,C201357)AhnJK:MorphologicchangesintheanteriorsegmentinpatientsCwithCinitial-onsetCorCrecurrentCVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.COculCImmunolCIn.ammC18:314-318,C201058)OtsukiT,ShimizuK,IgarashiAetal:Usefulnessofante-riorCchamberCdepthCmeasurementCforCe.cacyCassessmentCofCsteroidCpulseCtherapyCinCpatientsCwithCVogt-Koyanagi-Haradadisease.JpnJOphthalmol54:396-400,C201059)MutoT,MachidaS:Chronologicalchangesoftheanteriorchamberstructure,axiallength,andrefractioninpatientswithCVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.CEurCJCOphthalmolC31:491-496,C202160)KashiwagiK,FuruyaT,KashiwagiF:Changesinperiph-eralCanteriorCchamberCdepthCofCaCcaseCofCrelapsingCpoly-chondritiswithrecurrentsecondaryangleclosureglauco-masectionsign.OpenOphthalmolJC2:1-4,C200861)SngCC,FooLL,ChengCYetal:Determinantsofanteri-orCchamberdepth:theCSingaporeCChineseCEyeCStudy.COphthalmologyC119:1143-1150,C201262)SudaCM,CTsuruCDV,CKashiwagiK:TheCpotentialCroleCofCtheCchoroidalCthickness-to-axialClengthCratioCinCprimaryCangle-closureCdisease.CJpnCJCOphthalmolCAprC222026;doi:10.1007/s10384-026-01353-063)SakamotoM,KitamuraK,KashiwagiK:Changesinglau-comaCmedicationCduringCtheCpastCeightCyearsCandCfutureCdirectionsCinCJapanCbasedConCanCinsuranceCmedicalCclaimCdatabase.JOphthalmolC2017:7642049,C201764)IshidaA,MikiT,NaitoTetal:Surgicalresultsoftrabec-ulectomyamonggroupsstrati.edbyprostaglandin-associ-atedCperiorbitopathyCseverity.COphthalmologyC130:297-303,C202365)ChibaT,KashiwagiK,ChibaNetal:Comparisonofiridi-alCpigmentationCbetweenClatanoprostCandCisopropylunoprostone:alongtermprospectivecomparativestudy.BrJOphthalmol87:956-959,C200366)ChibaCT,CKashiwagiCK,CIshijimaCKCetal:ACprospectiveCstudyCofCiridialCpigmentationCandCeyelashCchangesCdueCtoCophthalmicCtreatmentCwithClatanoprost.CJpnCJCOphthalmolC48:141-147,C200467)ChibaCT,CKashiwagiCK,CKogureCSCetal:IridialCpigmenta-tionCinducedCbyClatanoprostCophthalmicCsolutionCinCJapa-neseglaucomapatients.CJGlaucomaC10:406-410,C200168)KashiwagiK,TsukamotoK,SuzukiM,etal.E.ectsofiso-propylCunoprostoneCandClatanoprostConCmelanogenesisCinCmouseCepidermalCmelanocytes.CJCGlaucomaC11:57-64,C200269)FuruichiCM,CChibaCT,CAbeCKCetal:CystoidCmacularCedemaassociatedwithtopicallatanoprostinglaucomatouseyesCwithCnormallyCfunctioningCblood-ocularCbarrier.CJGlaucoma10:233-236,C200170)KashiwagiK,ChonoE,KoestersSetal:Persistenceandtreatmentpatternsof.xedcombinationdrugsforglauco-ma:aretrospectiveclaimsdatabasestudyinJapan.BMCOphthalmolC20:223,C202071)KashiwagiCK,COuchiCK,CShibasakiCYCetal:PersistenceCofCtheCcarteololChydrochloride/latanoprostC.xed-combinationCophthalmicsolution,comparedwiththeotherβC-blocker/CprostanoidFPreceptoragonist.xed-combinationophthal-micsolutions.JpnJOphthalmolC67:658-667,C202372)FujitaCA,CHashimotoCY,COkadaCACetal:PracticeCpatternsCandCcostsCofCglaucomaCtreatmentCinCJapan.CJpnCJCOphthal-mol67:590-601,C202373)KashiwagiK,MatsubaraM:Reductioninocularhypoten-siveCeyedropsCbyCabCinternoCtrabeculotomyCimprovesCnotConlyCocularCsurfaceCconditionCbutCalsoCqualityCofCvision.CJOphthalmolC2018:8165476,C201874)NaitoCT,CNamiguchiCK,CYoshikawaCKCetal:FactorsCa.ectingCeyeCdropCinstillationCinCglaucomaCpatientsCwithCvisual.elddefect.PLoSOneC12:e0185874,C201775)KashiwagiCK,CMatsudaCY,CItoCYCetal:InvestigationCofCvisualCandCphysicalCfactorsCassociatedCwithCinadequateCinstillationCofCeyedropsCamongCpatientsCwithCglaucoma.CPLoSOneC16:e0251699,C202176)KasaiY,SakamotoM,MatsudaYetal:DevelopmentofanovelCeyeCdropCaidCandCevaluationCofCitsCe.cacy.CPLoSCOneC20:e0332533,C202577)TakahashiA,KasaiY,SakamotoMetal:E.ectivenessofanewlydevelopedinstillationaidforunit-doseophthalmicsolutions.JClinMedC14:4155243,C202578)DaviesCI,CWilliamsCAM,CMuirKW:AidsCforCeyeCdropCadministration.SurvOphthalmolC62:332-345,C201779)KashiwagiCK,CItoCK,CHaniudaCHCetal:DevelopmentCofClatanoprost-loadedCbiodegradableCnanosheetCasCaCnewCdrugdeliverysystemforglaucoma.InvestOphthalmolVisSci54:5629-5637,C201380)KompellaCUB,CHartmanCRR,CPatilMA:Extraocular,Cperi-ocular,CandCintraocularCroutesCforCsustainedCdrugCdeliveryCforglaucoma.ProgRetinEyeResC82:100901,C202181)RahiC.O,TucakA,Omerovi.Netal:NoveldrugdeliverysystemsC.ghtingCglaucoma:formulationCobstaclesCandCsolutions.PharmaceuticsC13:28,C202082)QuarantaCL,CNovellaCA,CTettamantiCMCetal:AdherenceCandpersistencetomedicaltherapyinglaucoma:anover-view.OphthalmolTher12:2227-2240,C202383)BaudouinCC,CMyersCJS,CVanCTasselCSHCetal:AdherenceCandpersistenceonprostaglandinanaloguesforglaucoma:asystematicreviewandmeta-analysis.AmJOphthalmolC275:99-113,C202584)NordstromCBL,CFriedmanCDS,CMoza.ariCECetal:PersisC-tenceandadherencewithtopicalglaucomatherapy.AmJOphthalmolC140:598-606,C200585)FriedmanDS,QuigleyHA,GelbLetal:Usingpharmacyclaimsdatatostudyadherencetoglaucomamedications:Cmethodologyand.ndingsoftheglaucomaadherenceandpersistencyCstudy(GAPS)C.CInvestCOphthalmolCVisCSciC48:5052-5057,C200786)TsumuraCT,CKashiwagiCK,CSuzukiCY,CetCal.CACnationwideCsurveyoffactorsin.uencingadherencetoocularhypoten-siveeyedropsinJapan.IntOphthalmolC39:375-383,C201987)Newman-CaseyCPA,CNiziolCLM,CGillespieCBWCetal:TheCassociationbetweenmedicationadherenceandvisual.eldprogressioninthecollaborativeinitialglaucomatreatmentstudy.OphthalmologyC127:477-483,C202088)KashiwagiCK,CFuruyaT:PersistenceCwithCtopicalCglauco-maCtherapyCamongCnewlyCdiagnosedCJapaneseCpatients.CJpnJOphthalmolC58:68-74,C201489)KashiwagiCK,CTsukaharaS:ImpactCofCpatientCaccessCtoCInternethealthrecordsonglaucomamedication:random-izedcontrolledtrial.JMedInternetC16:e15,C201490)AbaidooCB,CMashigeCKP,CGovender-PoonsamyCPCetal:CGlaucomaCdisease-speci.cCadherenceCmeasurementCtoolsCvalidatedCforCmeasuringCadherenceCtoCglaucomaCmedica-tions:aCsystematicCreview.CHealthCSciCRepC8:e70427,C202591)WatermanH,EvansJR,GrayTAetal:InterventionsforimprovingCadherenceCtoCocularChypotensiveCtherapy.CCochraneDatabaseSystRevC2013:Cd006132,C201392)ThamCYC,CLiCX,CWongCTYCetal:GlobalCprevalenceCofCglaucomaCandCprojectionsCofCglaucomaCburdenCthroughC2040:CaCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.COphthal-mologyC121:2081-2090,C201493)ShigaT,TanakaA,FukudaYetal:Disparityofophthal-micsurgeriesinJapan.PLoSOneC21:e0347587,C202694)FukudaCY,CKumeCA,CKashiwagiK:MedicalCcostsCofCandCchangesCinCglaucomaCtreatmentCamongCpatientsCnewlyCstartingCglaucomaCcare.CCurrCEyeCResC46:1695-1702,C202195)KashiwagiCK,CTanabeCN,CGoCKCetal:ComparisonCofCaCremoteoperatingslit-lampmicroscopesystemwithacon-ventionalCslit-lampCmicroscopeCsystemCforCexaminationCofCtrabeculectomyeyes.JGlaucomaC22:278-283,C201396)TanabeCN,CGoCK,CSakuradaCYCetal:ACremoteCoperatingCslitClampCmicroscopeCsystem.CDevelopmentCandCitsCutilityCinCophthalmologicCexaminations.CMethodsCInfCMedC50:C427-434,C201197)PhanS,SatohSi,YodaY,etal.Evaluationofdeepconvo-lutionalCneuralCnetworksCforCglaucomaCdetection.CJpnJOphthalmol63:276-283,C201998)LiZ,HeY,KeelSetal:E.cacyofadeeplearningsys-temCforCdetectingCglaucomatousCopticCneuropathyCbasedConCcolorCfundusCphotographs.COphthalmologyC125:1199-1206,C201899)ZeppieriM,GardiniL,CuliersiCetal:NovelapproachesforCtheCearlyCdetectionCofCglaucomaCusingCarti.cialCintelli-gence.Life(Basel)C14:1386,C2024100)KoyamaCM,CUenoCY,CItoCYCetal:AutomatedClearningCofCglaucomatousvisual.eldsfromOCTimagesusingacom-prehensive,Csegmentation-freeC3DCconvolutionalCneuralCnetworkmodel.SciRepC15:13395,C2025101)MiyakeCM,CAkiyamaCM,CKashiwagiCKCetal:JapanCocularlmagingCregistry:CaCnationalCophthalmologyCreal-worldCdatabase.JpnJOphthalmolC66:499-503,C2022