●連載◯165監修=安川力五味文145新生血管型加齢黄斑変性の太田光名古屋大学医学部附属病院眼科長期マネージメントのコツ新生血管型加齢黄斑変性の治療は抗VEGF薬投与が基本であり,treatandextend(TAE)法は視力維持と治療負担の軽減を両立する方法として現在主流となっている.本稿では,長期マネージメントに関して筆者の病院のデータを中心に現状と課題を述べる.はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularage-relatedmaculardegeneration:nAMD)は,抗VEGF薬の硝子体内注射の登場により視力予後は飛躍的に改善した.一方で,この治療法は継続的な投与が必要であり,薬剤コストの高さも相まって,患者のみならず医療従事者や医療経済全体にとって大きな負担となっている.抗VEGF薬の投与方法nAMDの治療は抗VEGF薬投与が第一選択である.投与方法としては,固定投与法,reactive治療であるprorenata(PRN)法,proactive治療であるtreatandextend(TAE)法に大別され,病状や患者背景に応じて選択される.抗VEGF薬は投与方法によって視力予後が異なることが報告されている.システマティックレビューおよびメタ解析により,TAE法は視力予後において固定投与法と同等であり,PRN法よりも良好であることが示されている.また,注射回数は固定投与法より少なく,PRN法より多い.これらの結果から,視力予後の維持と患者負担の軽減を両立できるTAE法が,現在では主流の投与方法となっている.00.1**TAE法の長期成績の実際日本においてアフリベルセプト2mgが発売されてから10年以上が経過し,長期使用における安全性と治療効果に関するエビデンスが確立されている.筆者らは以前,nAMD症例に対するアフリベルセプト2mgを使用したTAE法の5年間の成績を報告した1).対象は2014年1月.2016年12月に名古屋大学附属病院を受診した未治療nAMD患者111例112眼であり,後ろ向きに解析を行った.そのうち,アフリベルセプト2mgをTAE法で5年以上継続したのは66眼,脱落したのは46眼であった.脱落群は5年継続群と比較して有意に高齢であった(p<0.05)が,初診時の視力やnAMDの病型に有意差はなかった.最高矯正視力は,脱落群を含む全症例および5年継続群のいずれにおいても,初診から1年後に有意に改善し,その後5年目まで維持された(図1).ただし,3年目と4年目では有意差が消失していた.これは,19眼において白内障の進行に伴い,治療開始から平均38.3カ月後に白内障手術が行われたことが影響したと考えられる.網膜厚も初診から1年後に有意に減少し,5年目まで維持された.注射回数は1年目が平均約7回,2年**0.20.30.4012345(N=66)(N=66)(N=66)(N=66)(N=66)(N=66)Post-treatmentperiod(year)図1アフリベルセプト投与をTAE法で5年間継続した症例における視力推移*:p<0.05,Wilcoxon検定,Bonferroni補正MeanBCVA(logMAR)(69)あたらしい眼科Vol.43,No.3,20262970910-1810/26/\100/頁/JCOPY■4weeks■5~8weeks■9~12weeks■13~15weeks100%80%60%40%20%0%目から5年目は平均約5回であった.これらの結果は,nAMD症例においてアフリベルセプト2mgでTAE法を継続することで,比較的少ない治療負担で良好な視力成績が得られることを示している.一方で,注射間隔が8週以下に留まった症例が1.5年で21.7.30.3%存在し,頻回投与が必要な患者における治療負担軽減も今後の重要な課題と考えられる(図2).難治症例に対する治療法の変更これまでに,アフリベルセプト2mgで注射間隔の延長が困難な症例が他剤へ切り替えた場合の治療成績が報告されている.アフリベルセプト2mgからブロルシズマブへ切り替えた場合は,87%の症例で滲出性変化の改善が認められ,65%の症例で注射間隔の延長が得られている2).一方で,ブロルシズマブ使用例では,日本人において11.3.22.1%と比較的高率に眼内炎症が報告されており,使用にあたっては注意が必要である.ファリシマブへの切り替えでは,29.52%の症例で滲出性変化の改善が認められ,41%の症例で注射間隔の延長が得られている.また,アフリベルセプト8mgへの切り替えでは,68%の症例で滲出性変化の改善が報告されている.これらの結果から,頻回の注射を要する患者においては,他剤への切り替えにより注射間隔の延長が可能となり,患者負担の軽減につながることが期待されるTAE法の中断先述の筆者らの研究では,アフリベルセプト2mgでTAE法を継続した場合,最長注射間隔が16週以上に到達した症例は1.5年目で22.7.47.0%であった(図2).これらの症例は病状が安定していると考えられ,注射を中断する試みも報告されている.中断の方法として298あたらしい眼科Vol.43,No.3,202612345Post-treatmentperiod(year)図2アフリベルセプト投与をTAE法で5年間継続した症例における注射間隔の割合16~weeksは,TAE法で最長12.16週まで注射間隔を延長し,その間隔で2.3回連続して滲出性変化の再発を認めない場合に注射を中断し,その後は2.3カ月ごとに経過観察を行うというプロトコールが用いられている.その結果,1.2年間の経過で13.0.52.9%に再発が認められている.また,これらの報告の一部では,再発例において中断時と比較して有意に視力が悪化しており,中断に伴う再発や視力低下には注意が必要である.さらに,注射中断後1年間は,中断前と比較して有意に通院回数が増加することも報告されている.以上より,現状ではすべてのnAMD患者において,条件を満たした場合に注射を中断することのメリットがあるかどうかについては,依然として議論が分かれている.おわりに現時点でnAMDの完治は不可能であり,適切な治療と長期管理を行わなければ不可逆的な視力低下を容易に招く.黄斑新生血管の活動性は一時的に安定しても長期的には再発する可能性があり,滲出を繰り返すことで萎縮性変化や線維性瘢痕を生じ,視力が著しく低下する.今後も蓄積されるエビデンスを注視しつつ,病状や患者負担を考慮し,患者とともに持続可能な管理方法を選択することが求められる.文献1)OtaH,KataokaK,AsaiKetal:Five-yearoutcomesoftreatandextendregimenusingintravitreala.iberceptinjectionfortreatment-naiveage-relatedmaculardegen-eration.GraefesArchClinExpOphthalmol262:1-9,20242)OtaH,TakeuchiJ,NakanoYetal:Switchingfroma.ibercepttobrolucizumabforthetreatmentofrefractoryneovascularage-relatedmaculardegeneration.JpnJOph-thalmol66:1-7,2022(70)