●連載◯167監修=安川力五味文147.糖尿病黄斑浮腫の長期マネージメント大内亜由美順天堂大学医学部附属浦安病院眼科糖尿病黄斑浮腫による視力低下を防ぐためには,抗CVEGF薬を用いた長期的な疾患コントロールが重要である.本稿では,大規模臨床試験やリアルワールド研究の長期成績,第C2世代抗CVEGF薬の活用や切替え戦略など,長期マネージメントの要点を概説する.はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticCmacularedema:DME)治療のおもな目的は,疾患活動性を適切に抑制し,長期的に良好な視力を維持することである.現在,治療の第一選択は抗CVEGF薬硝子体内注射であり,ラニビズマブやアフリベルセプトといった第C1世代薬に加え,ブロルシズマブ,ファリシマブ,アフリベルセプトC8Cmgといった第C2世代薬が登場し,治療選択肢が広がっている.一方で,大規模なランダム化比較試験(randomizedCcontrolledtrials:RCT)と比較すると,実臨床では治療回数の不足やドロップアウトが生じやすく,これらが長期転帰の悪化と強く関連することが明らかとなっている.治療は長期的な継続を要すること,治療目標や期待される経過を初期段階で患者と共有することが重要である.大規模臨床試験における長期成績DMEに対する抗CVEGF薬のCRCTでは,薬剤ごとにプロトコールは異なるが,2年間で約C10.12文字の視力改善が報告されている.その後,一部の試験では延長研究により長期効果が評価されている.アフリベルセプト定期投与の第CIII相試験であるCVISTA試験では,3年のコア試験終了後,2年間の必要時投与(prorenata:PRN)を行ったCENDURANCE延長研究において,追加投与中央値C4回で視力改善が維持された1).一方,Pro-tocolT試験では,初期C2年間は厳格なCPRNで中央値15.17回の投与を行い,その後C3.5年目は医師裁量と保険負担に基づくCPRNに移行した.その結果,2年時点での視力改善C12.1文字は,5年時点でC7.4文字へ低下した2).延長期間で追加投与がC0回であった症例は,ENDURANCEでC25%,ProtocolTでC32%であった.治療継続により必要投与回数は減少し,一部では離脱可能な患者も存在するが,長期的な視力維持には再投与基準や来院間隔の最適化が不可欠である.(77)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPYリアルワールド研究から考える長期マネージメントの実態実臨床では,RCTと比べ治療回数が少なく,視力改善が限定的であることが国内外で報告されている.日本のCSTREAT-DME2試験(2015.2019年)では,未治療CDMEに対するC2年間の平均投与回数はC5.8回,視力改善は+5文字であり,RCTと比べ治療強度が明らかに低かった3).米国CIRISRegistryによる約C2万眼の解析では,初年度平均投与回数はC3.9回,視力改善は+3.2文字であり,6年目には年平均C2.9回,ベースライン比+0.5文字と,実臨床での長期的な視力維持の困難さが示された4).さらに,治療中断がC51.7%の症例で認められ,アンダートリートメントとドロップアウトの回避が実臨床の大きな課題である.投与レジメン十分な初期治療は視力改善の鍵であり,初期に導入期投与を設けた群では同じ総投与回数でも視力改善が良好であることなどが報告されている.維持期には,おもにPRNとCtreat&extend(T&E)レジメンが用いられる.長期視力予後について明確なコンセンサスはないものの,T&E群は投与回数が多い一方,再発が少なく網膜厚が安定しやすい傾向があり,PRN群では投与回数は少ないが診療回数が多く,実臨床での通院間隔のばらつきや受診遅延によって再発を繰り返し,視力が低下するパターンがしばしばみられる.施設の診療体制や患者の通院状況などを踏まえ,適切なレジメンを選択することが望ましい.治療抵抗例への対応抗CVEGF薬をC3.6回投与しても浮腫が残存する場合は,炎症などCVEGF非依存性の病態が関与している可能性を考慮し,薬剤の切替や一時的なステロイド併用治療(トリアムシノロンCTenon嚢下注射など)を検討すあたらしい眼科Vol.43,No.5,20265496週間後に再発アフリベルセプト×2Treat&Extendに切替図1治療反応不良例に対するファリシマブ8~12週おきファリシマブへの切替治療の反応性と患者とのコミュニケーションのもと,適宜治療の強化を行うことで,長期にわたる視力改善維持が可能であっファリシマブへ切替え×3た.3年後PRNの方針る.硝子体黄斑牽引や網膜前膜などの牽引性要因を認める場合は硝子体手術も選択肢となる.また,HbA1cの上昇,腎機能悪化,血圧不良などの全身リスク因子が治療反応性に影響する場合もあるため,全身状態の再評価も重要である.とくにCDME患者では腎機能の経時的悪化が少なくなく,腎機能変化に伴ってCDMEの活動性も変化することがあるため,注意を要する5).第2世代抗VEGF薬の活用と薬剤切替第C2世代抗CVEGF薬には,高濃度製剤のブロルシズマブ,アフリベルセプトC8Cmg,VEGFとCAng-2を同時に阻害するバイスペシフィック抗体ファリシマブがある.これらは作用持続期間の延長や強力な浮腫抑制効果により,投与回数の減少や長期的な疾患コントロールの改善が期待される.第C1世代薬で反応不良または難治性を示す患者は,第C2世代薬への切替によって解剖学的改善と治療間隔延長が得られる可能性が報告されている.ファリシマブへの切替えに関するシステマティックレビューでは,中心窩網膜厚の有意な改善と治療間隔延長が示され,ブロルシズマブについても遷延CDMEに対する有効性が報告されている6,7).第C1世代薬に対する反応が不十分な患者では,早期に第C2世代薬への切替を検討することが,長期的な視力維持に有用と考えられる(図1).おわりにDMEの長期マネージメントでは,患者教育とコミュニケーションを通じて患者と治療目標を共有し,全身リスク因子の評価や病態を踏まえて薬剤選択と投与レジメンを設定・再評価することが重要である.さらに,視機C550あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026能予後には浮腫だけでなく,黄斑虚血,炎症,神経障害など多様な要因が関与するため,網膜厚のみならず複数のバイオマーカーを活用した個別化治療戦略が今後求められる.文献1)Wyko.CCC,COuCWC,CKhuranaCRNCetal:Long-termCout-comesCwithCas-neededCa.iberceptCinCdiabeticCmacularoedema:2-yearoutcomesoftheENDURANCEextensionstudy.BrJOphthalmolC102:631-636,C20182)GlassmanAR,WellsJA3rd,JosicKetal:Five-yearout-comesafterinitiala.ibercept,bevacizumab,orranibizum-abCtreatmentCforCdiabeticCmacularedema(ProtocolCTextensionstudy)C.OphthalmologyC127:1201-1210,C20203)ShimuraM,HiranoT,TsuikiEetal:Alterationoftreat-mentCchoicesCandCtheCvisualCprognosisCforCdiabeticCmacularCedemaCinCtheCeraCofCanti-vascularCendothelialCgrowthCfac-tordrugs:AnalysisCofCtheCStreat-DMEC2Cstudy.CRetinaC45:335-344,C20254)KuoBL,TabanoD,GarmoVetal:Long-termtreatmentpatternsCforCdiabeticCmacularedema:UpCtoC6-yearCfol-low-upintheIRIS.Cregistry.OphthalmolRetinaC8:1074-1082,C20245)Usui-OuchiCA,CKishishitaCS,CSakanishiCYCetal:Longitudi-nalrenalfunctionchangesduringreal-worldanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCforCdiabeticCmacularCedemainJapan.JpnJOphthalmolC69:245-252,C20256)TahmasebiA,EbrahimiadibN,NiyoushaMetal:Switch-ingCtoCfaricimabCafterCpriorCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCforCpersistentCdiabeticCmacularedema:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC263:2693-2707,C20257)HansrajS,NarulaR,RavalVRetal:RealworldoutcomesofCintravitrealCbrolucizumabCforCpersistentCdiabeticCmacu-laredema.IntJRetinaVitreousC11:101,C2025(78)