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大学病院(教育施設)におけるインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

大学病院(教育施設)におけるインフォームド・コンセントInformedConsentforCataractSurgeryatUniversityHospitals木澤純也*はじめに教育機関である大学病院におけるインフォームド・コンセント(informedconsent:IC)が他の施設と異なる点としては,病院は教育現場であるためさまざまな職種の学生や研修医が手術および診療にかかわること,初期研修医や眼科専攻医が将来自身でICを取得するための教育を行うこと,研究機関でもあるため臨床研究についてICを取得する必要があることと考える.本稿では大学病院でのICの取得について要点について解説を行う.I大学病院(教育施設)の医学教育大学病院において「●●大学附属病院は教育機関でもあるため,学生が診療に参加することへ,患者さんのご協力とご理解をお願いします.また,学生の診療参加を望まない場合は,気兼ねなく申し出てください」などの医学教育に関する協力をお願いする掲示は,病院内の新患受付や各診療科の診察受付前に設置されている.しかし,白内障患者のなかにはこれらの掲示を確認できない人もいるため,個々の患者へ医学養育への協力の説明は必要であると考える.大学病院(教育施設)での白内障手術のICにおいても最重要事項は,医師と患者間での手術法・麻酔法・術後予後・合併症に関するICを医療スタッフの同席のもとに取得・了承を得ることであり,この点においてはクリニックや他の病院でのICの取得と同様であると考える.その際に,教育施設では学生(医学部,看護学部,薬学部,視能療法学科)や研修医,眼科専攻医が術前後の診察を行うことや,手術時の見学や助手や執刀医として参加する医学教育の重要性を説明し,医学教育に関するICも取得する必要がある.医学教育における手術場や術前後の病棟診療での体験により,眼科医を志すきっかけとなる場合もあるため,学生が参加できる現場を多く設ける努力を指導医はするべきであると思う.IC取得のほとんどが外来診察室で執刀医と医療スタッフ1名程度が同席する少人数で行うことが多いと思われる.しかし,入院後は多くの病棟スタッフがかかわることや,手術室内にも複数の医師と看護師,各業種の学生など,多くの人が在室していると事前に説明しておくとよい.この理由としては,少数ではあるがこの説明していないと手術室への入室時に患者が急に不安になり,「こんなに人がいるとは聞いていなかった.この手術室では晒し者にされるから手術したくない」と患者にいわれ,在室する関係者の多くを退室させてから手術を行ったことがあるからである.また,手術前後の病棟診療を研修医,専攻医,高次臨床実習の医学生,さらに指導医もそれぞれが行うことなども説明すると,入院中に病棟診察室と病室を何往復もしてもらうことにも了承していただけることがほとんどである.術後経過が良好な患者においては,視機能改善した喜びがこれらの労力よりも優るため,問題にはならないと考えている.しかし,とくに術翌日の視機能改善が思わしくない患者においては,自覚症状が改善していないにもかか*JunyaKizawa:岩手医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕木澤純也:〒020-8505岩手県盛岡市内丸19-1岩手医科大学医学部眼科学講座0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(45)757わらず何度も診察室に呼び出されることに激高した患者を経験しているので,入院後の診療体制についても説明しておいたほうがよいと考えている.II指導医が完遂する手術のIC取得:眼科専攻医や研修医(医学生)が同席している場合指導医が眼科専攻医や研修医(医学生)と同席してIC取得する場合は,患者に専攻医などを紹介し,一緒に診察してよいか確認し,了承を得ておくと,その後は専攻医などと交代して診察することができる.専攻医などに白内障所見を細隙灯顕微鏡で診させ,指導医がその場で指導がすることによる臨床教育の効果は高いと考えている.コロナ禍では一緒に患者を診る機会が少なく,電子カルテの画像によるカンファランスなどにより白内障所見の教育をしていたが,実際に診察室で細隙灯顕微鏡を使用して徹照像を含めて白内障や前眼部疾患の所見を指導医と一緒に確認できると,専攻医などはスキルアップを実感できるようである.とくに一般のクリニックや病院では比較的まれな症例とされる患者を多く診療している大学病院では,このような患者を指導を受けながら交互に診療した経験は,その後の眼科医としての重要な経験値となると思っている.たとえば白色瞳孔が疑われている新生児や乳児の先天白内障と網膜芽細胞腫などを含めた網膜疾患との鑑別方法や,新生児の水晶体所見,診察時に行う抑制帯やバスタオルによる患児の抑制方法などは,実際に行った経験があるかどうかで,独り立ちした後の診療が変わると思うので,専攻医などに実際に体験させることが重要であると思う.また,全身疾患に伴う他科と関連する水晶体や白内障診療の機会も多いので,これらの患者に対する診療経験も重要であり,ぜひ経験させる必要があると思う.IC取得においては,患者やその家族が理解しやすい説明を行うだけではなく,専攻医自身が将来ICを取得する際に参考になる内容で行うことはIC取得の教育にもなるが,自身の説明方法を見直すきっかけとなることもあると考えている.1.麻酔方法現在,白内障手術の麻酔方法はほとんどが局所麻酔で行われるが,患者の心身の状態により全身麻酔が必要な患者は大学病院に紹介になることがある.麻酔方法選択を判断する基準としては,入室時の自立歩行や杖歩行の状況,車いすの場合は高齢女性の脊椎圧迫骨折による円背の程度や腰痛の有無,問診により15分程度の仰臥位が可能であるかなどを確認し,まずは判断する.先天白内障や小児白内障は全身麻酔を選択し,重度の統合失調症,認知症,発達障害を伴う患者の白内障手術では,外来診察に協力が得られなければ全身麻酔を選択する.しかし,軽度の統合失調症,認知症,発達障害を伴う白内障手術における術中の安静維持ができるかの判断は,外来処置ベッド上で圧布と開瞼器を使用して外来手術顕微鏡による模擬手術環境を整えて判断すると,手術中止となる患者は少なくなると考え実践している.さらに振戦がある患者では,体位や緊張により振戦の具合が変動することもあるので,外来の処置ベッドで体動を確認する.これらの過程を患者の家族と一緒に行うと,全身麻酔の必要性について家族の理解も得られやすい.全身麻酔が可能な全身状態の判断については,かかりつけ医に紹介するなどの確認を行ってから,麻酔科へ麻酔を依頼する必要がある.また,局所麻酔での手術が可能であると判断した患者が,手術室で不穏状態となり,安全な手術が不能となった場合はその日の手術を中止して退院となる場合もある.この際も事前に不穏で手術中止になる可能性を説明しておけば,後日改めて行う全身麻酔での白内障手術の検査や再入院をスムーズに行うことができることが多い.2.現症と術後屈折値の説明現症については,白内障の病型や原因,左右の進行程度,病型により予測される複視や霧視などの視機能症状,視力など現状に状況について説明する.白内障の病型などについては前眼部写真撮影を行うと説明に対する理解度が高くなると思う.白内障手術を行うべきか判断を患者が迷っている場合は,白内障が軽微であればその病型と症状が一致するかどうか重要であり,その白内障病型と症状が一致しない場合はコントラスト感度や波面収差解析の結果が手術適応になるかの判断材料になるこ758あたらしい眼科Vol.40,No.6,2023(46)

大学病院におけるインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

大学病院におけるインフォームド・コンセントInformedConsentatKeioUniversityHospital西恭代*はじめに本稿では,慶應義塾大学病院における白内障手術患者に対するインフォームド・コンセント(informedcon-sent:IC)の実際について述べる.当院における初診から白内障手術までの診療の流れは表1のとおりである.以下に各項目の詳細を述べる.I初診から術前検査までの確認事項1)1.全身および眼合併症の有無ICを行う前に全身および手術眼の合併症の有無,使用している内服薬(とくにa遮断薬),薬剤アレルギーの有無を確認する.どの眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を選択するかについては,患者の希望を聞く前に,医学的にみた適応・不適応を検討する.たとえば,糖尿病などの全身疾患により眼底管理が必要な場合は,光学径が一定以上大きいレンズを選択するなどの配慮も必要である.また,眼合併症によって視機能が著しく低下している眼に多焦点IOLを入れても,その機能を十分に発揮できない可能性があるため,ICの前に医師が十分にこの点を把握して,患者のIOL選択の際に情報として伝える必要がある.また,小児や認知症のある患者,迷走神経反射などのため局所麻酔が困難な患者については,あらかじめ麻酔科説明外来を受診してもらい,全身麻酔に関する説明と同意を得る.2.ライフスタイル単焦点IOLの場合,ねらい度数を決めるのに患者のライフスタイルを把握することは重要である.仕事や趣味,自動車の運転,スポーツなど,どのようなときにできるだけ裸眼でいることがメリットなのか,患者の希望を把握したうえ推奨する狙いを提案する.また,多焦点IOLを希望する場合も,仕事の内容やライフスタイル,性格,期待度によっては多焦点IOLが推奨できない場合もあるので,これらについて把握すべきである.多焦点IOLの希望者には,あらかじめ多焦点IOLの特徴や,術後の見え方の違い(単焦点IOLに比べハロー・グレアが強く,コントラスト感度の低下が起こりやすいなどデメリットを含む)についてまとめた動画を視聴してもらい,医師との最終的な度数決定の際の参考にしてもらう.3.患者の理解度初診時の面談で理解度に問題があると感じられた場合には,ICを行う日に必ず家族あるいは家族に近い第三者に来てもらうよう手配しておく.説明同意書は事前に渡しておき,ICまでに家族などとともに自宅でゆっくり眼を通してきてもらったうえで話をする.II看護師によるオリエンテーション術前後の点眼や術後の療養上の注意などは,看護師がオリエンテーションを行う.看護師から手術前点眼や手*YasuyoNishi:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕西恭代:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(39)751表1初診から白内障手術までの診療の流れ1.初診:手術適応の検討2.術前検査3.(全身麻酔の場合)麻酔科説明外来4.看護師オリエンテーション5.執刀医によるIC6.手術表2慶應義塾大学ICガイドライン1.インフォームド・コンセントについて2.目的3.対象者4.対象となる医療行為5.方法6.カルテへの記載・保管7.理解・意思の確認8.患者からICを取得できない場合9.患者が同意書に署名できない場合10.外国人など日本語が堪能でない患者の場合11.身体抑制に関する説明および同意12.麻酔科外来における全身麻酔手術説明13.反復して輸血・特定生物由来製品を投与する場合14.感染症検査を実施する場合15.説明同意書標準フォーマット16.説明同意書の作成・修正・廃止17.当ガイドラインの改廃について表3患者が若年の場合のIC対象者0歳.6歳7歳.18歳未満18歳以上親権者のみでもよい.本本人と親権者が必ず説明本人のみでもよい.人にも年齢相応の説明をを受ける.本人への説明親権者がいる場合には,することが望ましい.内容は,本人の年齢や性親権者にも説明すること格を考慮し,事前に親権が望ましい.者と相談をすること.(文献2より改変引用)表4医療行為のグレード分類と説明同意者・病院側同席者グレード123医療行為の内容侵襲度が低い医療行為(生理検査,造影剤を用いない画像検査,採血,末梢静脈路確保,抗癌剤・生物学的製剤以外の薬物治療,など)侵襲度が中等度の医療行為(造影剤を用いる画像検査,髄液検査,骨髄検査,内視鏡検査,局所麻酔を伴う手術・処置,内視鏡による手術・処置,抗癌剤治療,生物学的製剤,血管内カテーテル治療・検査,輸血療法,人工透析療法,中心静脈カテーテル挿入,身体抑制など)侵襲度が高い医療行為(全身麻酔を伴う手術,ハイリスク症例に対する治療,高難度治療,など)説明者主治医,または主担当医,または担当医など主治医,または主担当医,または担当医など主治医,または主担当医病院側同席者必ずしも同席しなくともよい看護師あるいは説明者以外の医師,その他の医療者の同席が望ましい看護師あるいは説明者以外の医師の同席を必要とする患者(家族等)の理解・意思(賛同)確認必ずしも確認しなくともよい説明者以外の医療者による確認が望ましい説明者以外の医療者による確認を必要とする文書同意必ずしも必要としない必要必要(文献2より改変引用)表5説明同意書に記載される一般事項・病名と病態(眼の解剖を含む)・手術の目的・手術の方法麻酔方法,レンズの種類,狙い・注意事項・避けられない合併症その他の不利益後.破損,Zinn小帯断裂,感染性眼内炎,駆逐性出血,術後屈折の予測誤差・当該の治療・検査に代替可能な治療・検査の有無眼鏡,コンタクトレンズについて・何も治療・検査を行わなかった場合に予想される経過・セカンドオピニオン他の医療機関でセカンドオピニオンを受けることが可能であること個人的な病状について以下の項目の通りですので疑問の点は主治医におたずねください..以下の病状がありますので,その影響で視力は通常通りには回復しない可能性があります..網膜・黄斑疾患.緑内障.糖尿病網膜症.強度近視性網脈絡膜萎縮.網膜色素変性症.不正乱視.その他().白内障の進行のため,眼底検査ができません.手術後の視力回復の程度は,眼底の状態によります.眼底に病気があった場合は,手術後に改めて,検査とご説明をさせていただきます..以下のため,眼内レンズの度数を計算する際に誤差が生じやすい可能性があります..LASIK(laserinsitukeratomileusis)などの屈折矯正手術後.PTK(PhotoThelapeuticKeratetomy,治療的角膜切除術)術後.円錐角膜.角膜移植後.白内障手術時は,瞳孔を広げて(散瞳)手術を行いますが,前立腺肥大の治療薬を内服している場合,手術中に広がっていた瞳孔が縮んで,手術の難易度が上がる可能性があります..レンズを支えるZinn小帯という組織がもろい状況が考えられます.Zinn小帯脆弱・Zinn小帯断裂という合併症をおこしやすくなります.次の合併症の項目をご覧ください..緑内障によって失われた視野は,白内障手術によって悪化する可能性はありますが,改善することはありません..その他()図1ハイリスク症例の説明同意書厚生労働省承認多焦点眼内レンズ使用をご希望の方へ以下の点については,単焦点レンズ使用の場合と異なります.説明を受けられた後,不明な点がありましたら,何でもおたずねください.【ご注意いただきたい事項等】《手術前》1.多焦点眼内レンズ説明用DVD「白内障手術と眼内レンズ」を視聴していただいた後,内容について不明な点は必ず確認してください.《手術後》2.手術後,見え方に順応するまでに3カ月.6カ月を要することがあります.3.手術後に屈折異常(近視,遠視,乱視など)がある場合には,眼鏡が必要なことがあります.眼鏡をかけたくない場合,適応があれば手術(乱視矯正手術やレーシックなど)により矯正可能ですが,その場合の費用は自費になります.4.将来的に他の眼科疾患になった場合,眼内レンズを摘出しなければならない事があります.【避けられない合併症その他の不利益】5.多焦点眼内レンズを使用しても,見るものの距離によっては眼鏡が必要なことがあります.6.多焦点眼内レンズをいれるとコントラスト感度の低下(見え方の質の低下)がおこることがあります.7.多焦点眼内レンズをいれるとグレア・ハロー(光のにじみ,ハレーションを起こしたようにみえる現象)を生じることがあります.そのため夜間の作業(例えば車の運転等)がしづらくなることがあります.8.手術中の状況によっては,挿入予定の多焦点眼内レンズではなく,単焦点眼内レンズに変更することがあります.【費用について】9.厚労省承認の多焦点眼内レンズを使用する場合,手術費用(眼内レンズ代を含む)は以下の金額となり,全額自費になります..厚労省承認の多焦点眼内レンズを使用する場合1眼あたり60万円(税別)になります..厚労省承認の乱視矯正多焦点眼内レンズを使用する場合1眼あたり63万円(税別)になります.10.入院の場合には,入院費用は自費での追加負担となります.11.合併症が生じた場合には,治療費は患者さんの負担となります.12.合併症なく手術および術前後の管理が十分に行われたにもかかわらず,患者が多焦点眼内レンズの見え方に満足せず,眼内レンズ摘出や交換を希望した場合,あるいは原因不明の視機能低下により眼内レンズ摘出や交換を希望した場合,その要用は原則全額自費担となります.図2多焦点眼内レンズの説明同意書図3ICノート

特殊症例(追加説明を要する症例)のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

特殊症例(追加説明を要する症例)のインフォームド・コンセントInformedConsentinSpecialCases(RequiringAdditionalExplanations)松島博之*I白内障手術における特殊症例とは本稿では通常の白内障手術とは異なる条件が追加された,いわゆる難症例を中心に解説する.難症例にはたくさんの種類がある.少し例をあげるだけで,小瞳孔,浅前房,角膜混濁,角膜内皮障害,硬い核,成熟白内障,Zinn小帯断裂,水晶体亜脱臼,外傷性白内障,術中虹彩緊張低下症,認知障害,閉所恐怖症,聴覚障害などと枚挙にいとまがない.今回はこの中から日常診療でよく遭遇する特殊症例に絞って,筆者が実際にインフォームド・コンセント(informedconsent:IC)を活用している図を用いて解説する.特殊症例の説明をするためには,まず通常の白内障手術のことを知ってもらう必要がある.わかりやすく+効率よく説明するために,iPadにPDF化した図を用意して患者に見せながらICを行っている.PDFデータを分類して保存するアプリは多数あるが,筆者はNoteshelf(FluidTouch社)を利用している(図1).Noteshelfは手書きノートやPDFデータを保存し書き込みができるアプリで,保存しているIC図をいつでも選択してスライドショーとして見せることができるので,ICの内容をパターン化できる.ほかにもGoodNotes(APLEON)などのアプリがある.外来時間が長くなり,疲れてきたときなどに生じやすい説明の抜けを予防する効果もある.電子カルテを使用している施設では,説明内容を文書化して電子カルテ内に保存できるので,IC後のカルテの記入も短時間で可能となる.さらに,外勤に行く場合にもiPadを持参していけば同じICができるという有用性もある.最初に通常の白内障手術について理解してもらったうえで,特殊症例の解説を始める.大学病院への紹介であると前クリニックである程度説明を受けていることも多いが,実際に話を聞くと,なぜ大学病院まで白内障手術を受けにきているのか不思議に思っている患者も多い.口頭の説明だけはわかりにくいことも多いので,特殊症例のパターンもiPadに図として保存してあり,ICに活用している.ここからは,それぞれの説明内容について解説する.II通常症例のIC通常症例のICについては,他項目で解説1,2)しているので,簡単に説明する.まずは,眼球解剖は必要で,水晶体がどこにあってどのような役目をしているのか説明する.水晶体核硬度の相違は柔らかいものから硬いものまでカラー写真で用意しておき,外来で撮影した患者の水晶体と比較すると,混濁の程度を理解してもらえる(図2).核硬度を知ってもらうことは,硬い核や成熟白内障の解説前にとくに有用である.後は水晶体がカプセルに囲まれた細胞の塊で,カプセル内の混濁水晶体を破砕吸引除去して,その中にプラスチック素材の眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を入れることで水晶体の代用となることを知ってもらう(図3).通常では水晶体.*HiroyukiMatsushima:獨協医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕松島博之:〒321-0293栃木県下都賀郡壬生町北小林880獨協医科大学眼科学教室0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(31)743図1iPadを活用した白内障手術のICアプリであるNoteshelf内にいくつかのパターンの説明用図を保存し,ICに活用している.軽度中等度重度図2白内障程度の解説水晶体核硬度をカラー写真で用意しておき,外来で撮影した患者の水晶体と比較すると,混濁の程度を共有できる.白内障を削り取る眼内レンズを入れる図3通常白内障手術のIC水晶体がカプセルに囲まれた細胞の塊であり,手術ではカプセル内の混濁水晶体を破砕吸引除去して,その中に眼内レンズを入れることを説明する.あとの特殊症例の説明時に有用となる.通常の白内障手術小瞳孔図4小瞳孔の解説先にiPadで通常と小瞳孔の散瞳状態をみてもらう.その後に患者の眼を撮影した細隙灯顕微鏡写真を見せることで,自分の眼の状態が理解できる.図5前眼部OCTによる狭隅角の説明CASIA2(トーメーコーポレーション)では正常症例(左)と実症例(右)を並べて表示できるので,隅角が狭くなっていることをわかりやすく解説できる.毛様体図6狭隅角眼に対する白内障手術の効果水晶体と眼内レンズで厚みに差があることを説明し,白内障手術によって隅角が開大することを理解してもらう.通常の白内障角膜混濁のある白内障図7角膜混濁眼の解説先にCiPadで通常の白内障の状態と角膜混濁眼の白内障状態を見てもらう.その後に患者の眼を撮影した細隙灯顕微鏡写真を見せることで,自分の眼の状態が理解できる.図8角膜内皮障害の解説角膜の最内層に角膜内皮細胞があり,ポンプのように水の量をコントロールして角膜の透明性を維持していることを説明する.通常の白内障進行した白内障図9硬い核・成熟白内障の解説同様にCiPadで通常と進行した白内障状態を見てもらう.図C2の白内障程度も一緒に見せるとさらに効果的である.その後に患者の眼を撮影した細隙灯顕微鏡写真を見てもらい,自分の眼の状態を理解してもらう.通常の白内障進行した白内障図10外傷白内障の解説外傷白内障は虹彩形状が異なることを説明する.虹彩離断部に一致してCZinn小帯断裂が疑われることを理解してもらう.図11Zinn小帯断裂白内障手術のICZinn小帯の一部が断裂していると,水晶体が傾いてしまい手術操作ができない.水晶体.拡張(CTR)リングを使って補強しながら白内障手術を行う.水晶体.が取れてしまうと特殊な眼内レンズを眼内レンズが入らない強膜に固定する図12強膜内固定術のICZinn小帯断裂などで水晶体.が取れてしまうことがある.水晶体.がないと眼内レンズを入れる場所がないので,支持部が細く硬い眼内レンズを使用して,強膜に直接固定する方法を行う.■用語解説■水晶体.拡張リング(capsulartensionring:CTR):Zinn小帯断裂や脆弱によって白内障手術が困難な状況で,水晶体.をCPMMA製のリングを挿入して安定性を増し,白内障手術を可能にする補助器具.2014年C7月より国内で認可された.

白内障手術特殊症例のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

白内障手術特殊症例のインフォームド・コンセントInformedConsentinSpecialCataractSurgeryCases鵜飼祐輝*佐々木洋*はじめに近年の白内障手術はさまざまな眼内レンズ(intraocu-larlens:IOL)が開発され,より良い視機能の獲得をめざした屈折矯正・老視矯正手術としての意味合いが大きくなった.選択できるCIOLが増えたことにより,術後視機能への期待度は高くなっている.しかし,白内障手術後には術前にはなかった不快光視現象を自覚したり,期待した視力やコントラスト感度が得られなかったりすることがある.さらに,同じCIOLを使用しても瞳孔径により術後の明視域は異なることや,残余乱視が術後視機能に大きく影響するなど,さまざまな因子が患者満足度に影響する.このような事象に関しては,術前に適切なインフォームド・コセント(informedconsent:IC)を行うことで患者の理解を得られやすい.また,患者に最適なCIOL選択もきわめて重要である.本稿では術後不快光視現象を考慮したCIC,術後に良好な視力が期待できにくい患者のCIC,近方視狙いの単焦点CIOL挿入における瞳孔径別目標屈折値のCIC,術後CIOL軸回転を生じやすいアトピー白内障のCICについて解説する.CI術後不快光視現象を考慮したIC術後不快光視現象には,グレア,ハロー,スターバーストがあり,とくに夜間の運転時に自覚され,まぶしさと視界を妨げることから不満の原因となっている.有水晶体眼や単焦点CIOL挿入眼でもグレアとスターバーストは自覚されるが,ハローを自覚することはほとんどない.低加入度数分節型CIOLのCLENTISComfort挿入眼では小型の扇状のハロー,3焦点CIOLのCPanOptixおよび連続焦点CIOLのCSynergy挿入眼では円形のハローを自覚するが,その程度はCSynergy挿入眼で強いことが報告されている1).正視眼に比べ軽度近視で不快光視現象が増強され,瞳孔径の大きい患者でも不快光視現象は強く自覚されることが報告されている2,3).図1はCLEN-TISComfortを挿入したC71歳の男性に凸レンズを負荷することで近視状態を作り,不快光視現象測定検査であるCphoticCphenomenatest(PPT)4)を施行した結果である.患者の矯正少数視力は(1.5),遠見みかけ瞳孔径は明所でC3.29Cmmであった.正視状態では比較的軽度だったスターバーストおよび扇状ハローが,近視量の増加に伴い増強していることがわかる.患者の自覚症状としても近視化に伴い「徐々に眩しさが増していく」ことを訴えた.次に,LENTISComfort挿入眼(54例C76眼,C69.0±8.6歳,瞳孔径C3.83±0.75mm),PanOptix挿入眼(35例C35眼,65.8±8.3歳,瞳孔径C4.15±0.84Cmm),Synergy挿入眼(33例C33眼,62.8±9.0歳,瞳孔径C4.05C±0.63Cmm)についてCPPT環境下での瞳孔径とCPPT測定値の関係について検討した(表1).3種CIOLともグレアと瞳孔径の間には有意な相関はなかったが,LENTISComfort挿入眼では瞳孔径が大きい症例ほど大きいハローを自覚し,Synergy挿入眼では瞳孔径が大きいほど大きく強いハローとスターバーストを自覚した.Pan-Optix挿入眼では瞳孔径と不快光視現象には有意な相関*YukiUkai&HiroshiSasaki:金沢医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕鵜飼祐輝:〒920-0293石川県河北郡内灘町大学C1-1金沢医科大学眼科学講座C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(25)C7370D-0.50D-1.00D-1.50D-2.00D図1LENTIS挿入眼における屈折値ごとの不快光視現象表1不快光視現象と瞳孔径の関係IOL不快光視現象回帰式Crp値ハローサイズCy=0.0554x.0.0179C0.35<C0.05LENTIS挿入眼ハロー明度CスターバーストサイズC─C─Cn.s.n.s.スターバースト明度C─Cn.s.ハローサイズC─Cn.s.PanOptix挿入眼ハロー明度CスターバーストサイズC─C─Cn.s.n.s.スターバースト明度C─Cn.s.ハローサイズCy=1.4445x+0.2676C0.53<C0.01Synergy挿入眼ハロー明度CスターバーストサイズCy=0.1197x.0.0044Cy=0.0599x+0.3318C0.480.47<C0.01C0.01スターバースト明度Cy=0.1037x+0.1351C0.59<C0.01(logMAR)-0.30p<0.01p<0.05-0.20-0.100.00良好群(n=8)同等群(n=63)不良群(n=16)図2白内障手術前における混濁程度に対する矯正視力別の白内障手術後矯正視力図3単焦点IOL挿入眼の-3.0Dの見え方(瞳孔径2.0mm)図4単焦点IOL挿入眼の-2.5Dの見え方(瞳孔径2.0mm)図5単焦点IOL挿入眼の-2.5Dの見え方(瞳孔径3.0mm)表2アトピー白内障手術後のtoric軸回旋量翌日1週間1カ月有意差平均回旋量(°)C7.00±6.23C8.91±11.63C8.72±8.96Cn.s.表3アトピー白内障手術後のtoric軸回旋量(CTRの有無による比較)翌日1週間1カ月平均回旋量(°)CTR挿入群C4.60±3.56C4.50±3.10C3.25±0.83CTR非挿入群C7.71±6.67C10.56±13.13C10.29±9.59

多焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

多焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセントInformedConsentinCasesUndergoingMultifocalIntraocularLensImplantation荒井宏幸*Iインフォームド・コンセント(IC)は最大の防御壁である多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)に限らず,不可逆的な処置・手術を行うにあたり,事前のインフォームド・コンセント(informedconsent:IC)はトラブルを防止する最大の防御壁であると感じている.言い換えれば「最後の砦」である.術後の不具合が発生した場合,それが想定の範囲内であれば,大きなクレームやトラブルになることはまれであるが,医療者からみれば日常的に起こりうる軽微な症状であっても,患者本人にとって想定外の不具合であれば,大きなトラブルになる可能性がある.「見え方」は感覚的な要素が多く,われわれが日常的に使用する「視力値」とは乖離があることを認識すべきであろう.手術前後の「見え方」の違いを患者本人に的確に伝えることこそが,多焦点CIOLにおけるCICの本質であると考えている.正確なCICを担保するためには,術前検査において黄斑部における微細な異常の有無を光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)などで精査しておくことが前提となる1).みなとみらいアイクリニック(以下,当院)ではパンフレットを一緒に読み進めることによって,患者の理解が深くなるように工夫している.重要なポイントにはマークを入れ,帰宅後に再度読み返すように促している(図1~3).II多焦点IOLの特殊性一般的な白内障手術とは異なり,多焦点CIOLでは「日常生活において眼鏡を使用したくない」ために手術を受ける患者が多い.術前のCICにおいて「必ずしもすべてが見えるわけではない」「必要時には眼鏡を使うこともある」など,丁寧に説明している施設も多いと思われるが,患者の本質的な願望はあくまでも「眼鏡なしでの生活」なのである.術後に正視が達成され,遠方・近方ともに良好な視力値であっても満足が得られないという,現在の技術では解決されない感覚的な要因を含むのが多焦点CIOLである.したがって,「視力」と「見え方」は異なるものであり,現在の医療で解決できるのは「視力値」を改善するものであることを理解してもらう必要がある.同時視による多焦点性を理解してもらうことは非常にむずかしいが,当院では図を作成して比較的簡潔に説明している(図4).多焦点CIOL症例において,患者から直接聞かれる不具合としては「ものがにじむ・ダブる」「夜の光が散る」が多いと思われるので,次項にてこれらに対するCICを述べる.CIII「ものがにじむ・ダブる」に対するIC一般的な多焦点CIOLは回折型であり,回折構造により集光点をC2カ所ないしはC3カ所に分散させている.映画館のスクリーンに当たる網膜には,二つないしは三つの映像が写っている状態であり,どの映像を選択するか*HiroyukiArai:みなとみらいアイクリニック〔別刷請求先〕荒井宏幸:〒220-6208神奈川県横浜市西区みなとみらいC2-3-5クイーンズタワーCC8FみなとみらいアイクリニックC0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(21)C733図1当院で用いている白内障手術用パンフレット用途に応じてC3種類のパンフレットを準備している.左から保険診療用,主として屈折矯正手術用,自費診療用である.患者の受診動機により提供するパンフレットを選別し,手術の目的をより明確に理解してもらえるように工夫している.図2インフォームド・コンセント(IC)を得るための説明の様子約C30分をかけて手術の内容や注意事項,術後の検診スケジュールなどを説明する.会話を通じて,患者の希望,性格,手術への積極性などを観察し,医師に伝える.それぞれに質問事項があれば,その場で適切に回答する.最終的な判断は医師の診察後に患者により決定してもらう.図3説明会の様子当院では定期的に手術説明会を開催している.受診することに対してハードルが高く感じている場合には,説明会のほうがより参加しやすい.執刀医自身が説明会において話をすることも重要なポイントである.手術に対する恐怖心を和らげ,術後のケアの重要性や術後検診の大切さなども伝えておく.単焦点(遠く合わせの場合)単焦点(手元合わせの場合)3焦点図4単焦点と多焦点の光配分のシェーマ多焦点CIOLによる同時視の原理をわかりやすく説明するためのシェーマ.3焦点は遠方・中間・近方のものが見えるが,それぞれの光量(色の面積)が減るため,コントラストは低下するという説明にも使用している.希望する距離のものをハッキリと見たければ,単焦点のほうがよく見えるという説明にもなっている.図5FEMTISの眼内でのイメージ図Femtosecondlaserassistedcataractsurgery(FLACS)により正円の前.切除を行い,四つのフラップを前.縁上に固定する.IOLの光学中心と瞳孔中心がほぼ一致することで,IOLの光学性能を最大限に引き出すことができる.(TeleonSurgical社CHPより転載)図6ハロー・グレアのイメージ写真ハロー・グレアがイメージしやすいように,同じ背景写真を用いている.背景写真としては,対向車のヘッドライト,満月,店舗のネオンサインなども一般的によく用いられる背景イメージである.

多焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

多焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセントInformedConsentinMultifocalIntraocularLensCasesビッセン宮島弘子*はじめに多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)はインフォームド・コンセント(informedconsent:IC)のハードルが高いとされている.その理由は,通常の単焦点CIOLを用いる白内障手術に加え,多焦点CIOLにおいては,IOLの種類,術後の見え方の特徴,費用の説明,さらに現実的な期待度をもってもらえるような十分な説明が必要だからである.したがって,ICに要する時間を含め,患者に対応する時間は多焦点CIOLのほうが単焦点CIOLより長くなる1).このように手術前に時間を使って十分な説明をすることで,多焦点CIOL挿入例のC9割以上に高い満足度が得られるが,6~7%に不満を訴える患者があり2),その対応にさらに時間を要する場合がある.多焦点CIOLを選択し,術後の見え方に満足している患者は問題ないので,ICの鍵は,いかに不満例をゼロに近づけるかである.2008年に先進医療として導入され,約C15年を経た多焦点CIOLは,近年,新しい近方加入度,焦点数,光学デザインが加わり,患者のライフスタイルに合った選択が重視されている.また,費用面でC2020年より先進療養の全額自己負担から選定療養となり,多焦点CIOLに関する費用のみ自己負担ということで,経済的な負担が軽減した.筆者の施設では,多焦点CIOL挿入を受けた人の家族や友人の紹介で,多焦点CIOLを希望して受診する患者の割合が高くなっている.時代にあったCICを得るために,ぜひ知っておいてほしい情報や注意すべき点について説明する.CI進歩し続ける多焦点IOLの知識をアップデート眼科手術のCICは,術式が大きく変わらない限り,何年も同じ説明を繰り返すことができるが,多焦点CIOLは光学デザインが進歩を続けているため,眼科医は知識をアップデートし,説明内容を変更していく必要がある.日頃の診療において,患者が来院前にインターネットなどを通じて多焦点CIOLに関する新しい情報を得ており,診察時に眼科医レベルの質問をしてくることに驚かされることが少なくない.ICの本題に入る前に,眼科医に知っておいてほしい多焦点CIOLに関する新しい情報を紹介する.C1.PresbyopiacorrectingIOL多焦点CIOLは英語でCmultifocalIOLと訳されるが,国内で多焦点CIOLとされているCIOLすべてが,海外ですべてCmultifocalIOLとよばれているわけではない.近年,海外では老視矯正(presbyopiaCcorrecting:PC)IOLはCmultifocalIOL,焦点深度拡張型(extendedCdepthCoffocus:EDOF)を含む概念となり,学会や論文でCPCIOLという略語が多く用いられるようになっている3~5).米国眼科学会ウェブサイト(https://eyewiki.aao.org/Presbyopia-Correcting_IOLs)のCPCIOLの分類が参考になるので,抜粋したものを表1に示す.*HirokoBissen-Miyajima:東京歯科大学水道橋病院眼科〔別刷請求先〕ビッセン宮島弘子:〒101-0061東京都千代田区神田三崎町C2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(15)C727表1Presbyopiacorrecting(PC)IOLの分類1.Multifocal(多焦点)IOLs1)BifocalDi.ractive(回折型C2焦点)IOLs2)TrifocalDi.ractive(回折型C3焦点)IOLs3)Refractive(屈折型)IOLs2.ExtendedDepthofFocus(焦点深度拡張型)IOLs3.Accommodative(調節型)IOLs(https://eyewiki.aao.org/Presbyopia-Correcting_IOLsより改変引用)表2EDOFIOLの基準・症例数:100例以上で検討・コントロール:類似した背景因子の単焦点CIOL挿入例・臨床成績1.遠方矯正視力:同等2.焦点深度:logMAR0.2において.0.5D以上3.中間視力(66cm):術後C6カ月において遠方矯正下で有意に良好50%以上でClogMAR0.2以上(文献C6より改変引用)販売名CAcrysofPanOptixCClareonPanOptixCSynergyCFINEVISIONHPモデル名CTFNT00/TFNT30-60CCNWTT0/CNWTT3-6CDFR00V/DFW150-375CPODFGF加入度C3.25/2.17C─C3.5/1.75製造会社アルコンJ&JCBVI表4EDOFIOL販売名CSymfonyCVivityモデル名CDFR00V/DFW150-375CCNAET0製造会社J&Jアルコンまで良好な裸眼視力が得られる.近方に関しては,3焦点CIOLより劣るため,眼鏡を必要とする可能性が高い.参考までに,国内承認されているC3焦点CIOLの特徴をもつCIOLは,PanOptix(アルコン),Synergy(ジョンソン・エンド・ジョンソン),FINEVISIONHP(BVI社)(表3),EDOFIOLはCSymfony(ジョンソン・エンド・ジョンソン)とCVivity(アルコン)である(表4).CIII現実的な期待度を設定するIC1.見えるという感覚の個人差眼科医は,視力の数値で見え方を判断するが,多焦点IOLを挿入して感じることは,見えるという感覚の個人差が大きいことである.多焦点CIOL挿入後,多くの患者から,遠くも近くも見えて,若いころに戻ったようだという喜びの声をきく.一方,多焦点CIOLをある程度多数の患者に挿入していくと,視力検査の結果は良好でも不満を訴える患者を経験する.このような患者からわれわれ眼科医が学ぶべきことは,視力検査でCLandolt環の切れ目が判別できても,実際に見ているものがはっきりしないと感じる場合があることである.近方視力も同様で,裸眼でC1.0まで見えていても,近くが見えないと感じる場合がある.近方視の場合,Landolt環の切れ目やひらがなのC1文字がわかっても,実際に文章を読むときに,自分が以前文字を読んでいた見え方のレベルに達していないと感じるからである.ICで,多焦点CIOLは,術後に遠くが見える,近くが見えるとだけ説明すると,患者は自分が期待する見え方で受け止めがちである.すなわち,近くが見えると聞けば,本や新聞をすらすら読めると理解し,多少,文字のコントラストが薄かったり,にじんで見えると,見えないという気持ちとなり,そのことが日常生活で気になり,時間経過による順応が困難となる.手術前に,多焦点CIOL挿入後,近くは見えるけれど,人によっては多少文字が薄く見えると感じたり,眼鏡を使用したほうが見やすい場合があると説明しておくと,患者はそのレベルの期待度で手術に臨むことになる.術後の見え方が,術前の期待度と同等あるいはそれ以上であることで,多焦点CIOLを選択したことに満足してもらえる.2.夜間のグレア・ハロー多焦点CIOLの回折デザインでは,夜間のグレア・ハローを単焦点CIOLと同レベルにすることはできない.今後,多焦点CIOLの選択において,夜間のグレア・ハローが気になる患者には,回折デザインをもたないEDOFIOLの選択も検討すべきである.ただし,3焦点IOLに比べて近方の見え方は弱い.EDOFIOLでは,片眼の術後屈折を軽い近視に設定するモノビジョン法で,近方の見え方を向上させることができる.夜間に運転することが多い職業の場合,または夜間のグレア・ハローが気になる場合は,グレア・ハローが少ないCIOLを選択するのか,多少グレア・ハローがあっても,近くの見え方が良好なC3焦点CIOLを選択するか,先に述べたライフスタイルとのバランスでCIOLを決定する.C3.期待度の設定これまでの白内障手術では,混濁した水晶体を摘出し,IOLを挿入することで視力が改善するので,術後の見え方への期待度を考える必要がなかったといっても過言ではない.しかし,多焦点CIOLは,眼鏡への依存度を減らすことができ,患者にとっては差額を支払って遠くも近くも見えるCIOLを選択したということで,術後の見え方に対して,それなりの期待度をもつのは当然だと考える.最初に述べたように,挿入後に多くの患者が満足して快適な日常生活を送っている多焦点CIOLなので,1例でも不満例を減らすCICが重要である.海外では老視矯正目的で,水晶体混濁がない,あるいは混濁が非常に軽度な患者にもCPCIOLが使用されている.日本では,多焦点CIOLを挿入する患者のほとんどが白内障例なので,手術後に視力が改善する確率は非常に高く,そこで不満をもつのは,明らかに手術前に説明をきいて理解していた見え方,すなわち期待度より術後の見え方が劣っているからである.今回C2種類に分けたC3焦点IOLとCEDOFIOLの特徴を理解し,ぜひ患者のライフスタイルにあったCIOLを選択することで,多焦点CIOLを希望する患者に,よりよい生活の質(qualityoflife:QOL)を提供していただければと願う.730あたらしい眼科Vol.40,No.6,2023(18)

単焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

単焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセントInformedConsentinMonofocalIntraocularLensCases鈴木久晴*はじめに現在の白内障手術は屈折矯正手術である.よって,明るさを取り戻す時代から生活の質(qualityoflife:QOL)を向上させるために手術をするという時代となった.QOLの向上で問題となるのは眼鏡の使用法である.よって,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の選択がもっとも重要な起点となる.白内障手術を機会に眼鏡をかけたくないと考えている患者に対しては多焦点IOLを中心に考えるであろうし,眼鏡をかけてもよいが見え方の質的向上を求める場合には単焦点IOLを中心に考えていく.しかし,単焦点IOLといっても,現在はそれほど単純な選択ではない.目標度数の設定,トーリックIOLによる角膜乱視の矯正,IOLカラーの選択など,さまざまな項目を考慮して決めなければならず,どこまでの情報を患者に提供し理解してもらうかも非常にむずかしい.本稿では白内障手術を施行すると決まってからの患者への説明方法について,単焦点IOLの選択を中心に示す.I白内障手術に関する説明と理解善行すずき眼科(以下,当院)では,白内障手術に関して,一定の知識を習得していただくために全体説明会を開催している.ここで話を担当するのは視能訓練士である.目標屈折度数の説明や質問の受け答えの際に,やはり専門知識をもっている職員のほうが望ましいと思われるからである.全体説明会では当院で独自に作った冊子を用いている(図1).この冊子には手術の日程から術式の説明,目標屈折度数,そして点眼薬の説明まで,大切なことを項目立てて並べている.説明文は文字を大きく見やすくして,平易な言葉で簡潔にし,余白も多くとるようにしている.このようにすることによって,患者は全体説明会で聞いたことを冊子にメモしたり書き込んだりすることができ,理解を深める助けとなる.また,白内障手術患者は高齢者が多いため,説明の項目をプリントで分けてしまうとなくしてしまう恐れがあるため,なるべく大切なものはひとまとまりにしたほうがよいという考えである.冊子に沿って,大型モニターにパワーポイントでその項目を提示しながら説明し(図2),その後に質問タイムを設けるようにしておく.ここでは一般スタッフから看護師まで対応できるスタッフを増やしておくとよい.なぜなら質問項目は屈折に限るものではなく,術後の清潔度や安静度など看護師が答えたほうがよい項目もあるからである.また,個人的な質疑応答では,患者の性格も把握することができ,要望が細かいなど対応に注意が必要と判断した場合には,他のスタッフとも情報を共有することにしている.最初から一人の患者に一人のスタッフをつけて説明をする方法もよいが,時間的・人材的な制約もあり,また白内障手術において当院の考え方や一定の理解を共有してもらうためにも,全体説明会は有用であると考える.*HisaharuSuzuki:善行すずき眼科〔別刷請求先〕鈴木久晴:〒251-0871神奈川県藤沢市善行1-22-2善行すずき眼科0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(9)721図1説明会で用いる冊子字は大きく,色分けをして見やすくしている.書き込みができるように余白も多くしている.図2説明会視能訓練士がパワーポイントを用いて冊子の順番に合わせつつ説明する.図3目標屈折度数のアンケートアンケートは簡潔に具体例をあげてわかりやすくする.これをもとに,説明を加えて目標度数を決める際のたたき台にする.図4角膜形状解析(Fourier解析)角膜乱視が強い患者は,このようにさまざまな色が入っている図を見せるだけで,自身の眼が正常でないことを感覚的に理解することができる.

単焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

単焦点眼内レンズ症例のインフォームド・コンセントInformedConsentinMonofocalIntraocularLensCases長谷川優実*はじめに白内障手術は,手術機器や眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の進歩に伴い,手術時間が短縮され,安全性が高くなり,屈折矯正手術の側面が強くなってきた.知人の話やメディアの情報から「短時間で安全にできる簡単な手術」「(すべての距離で)よく見えるようになる手術」と認識している患者も多い.患者と医療者の両方で手術の実際や術後の見え方についての認識を同じにしておかないと,トラブルの原因になることがある.本稿では単焦点IOLの白内障手術における手術時期・術前検査,単焦点IOLの選択,術後の眼鏡の必要性・目標屈折値の設定について概説する.I手術時期・術前検査白内障の手術時期は,狭隅角などの特殊なケースを除くと,白内障による視機能低下が生じ,患者の生活に支障をきたすようになったときである.視力検査は一般的に行われる視機能検査で,患者の認知度も高く,視力が低下していれば患者に説明しやすい.しかし,視力検査が良好でもなんとなく見えにくい,かすんで見える,などと訴える患者も存在し,その場合は視力検査以外の視機能検査を行うとよい.視力が良好な患者でも,白内障によってコントラスト感度1,2)や実用視力(用語解説参照)2)が低下していることが報告されている(図1,2).また,白内障による高次収差(用語解説参照)の上昇は,波面収差解析装置で捉えることができる.水晶体の混濁が軽度で細隙灯顕微鏡では視力低下の原因が白内障であることがわかりにくい場合に波面収差解析は有用であり,Landolt環のシミュレーション像は患者の見え方をわかりやすく示してくれる(図3).このような検査結果を用いて白内障による視機能の低下を示し,白内障は薬物療法などで改善することはなく,視機能を改善させるには手術が有効な手段であることを伝える.しかし,手術は急いで行う必要はなく,最終的に手術をいつ行うかは患者本人が決めることである,迷ううちは手術しないでよいと伝えている.術前検査には,IOL計算に必要な角膜曲率半径や眼軸長,角膜内皮細胞数を測定しておく.視力予後の判断には角膜形状解析,網膜光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)などが有用であり,これらに異常がある場合は,術後の視力があまり改善しない可能性もあることを十分説明したうえで手術時期を決定する.II単焦点IOLの選択現在,単焦点IOLは,複数のメーカーからそれぞれ特徴のあるIOLが発売されており,多くの選択肢がある.たとえば,3ピースか1ピースレンズか,着色か非着色レンズか,球面レンズか非球面レンズか,などがあり,現在,筆者の施設では着色の非球面1ピースレンズをおもに用いているが,すでに僚眼がIOL眼で,僚眼のレンズが判明していれば,同じレンズを用いることもある.どの単焦点IOLを用いるかについて詳しく説明*YumiHasegawa:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕長谷川優実:〒305-8575茨城県つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(3)715検査チャート(CSV1000-E;VectorVision)図1白内障患者のコントラスト感度検査69歳,女性.矯正視力はC1.2と良好だが,左眼の霧視を訴えている.コントラスト感度を測定すると,高周波数領域(12,18cpd)では,各年代の正常範囲内よりもコントラスト感度が低下している.空間周波数(cyclesperdegree)通常視力:1.2通常視力:1.2図2白内障患者手術前後の実用視力実用視力はC1分間連続して視力を測定した平均値である.患者はC59歳,女性.矯正視力はC1.2と良好だが,連続した測定では視力が維持できず,実用視力はC0.51となり,視機能が低下していることがわかる.術後は視力がC1分間維持でき,1.13まで改善している.右眼視力0.4左眼視力0.8図3混濁が軽度の白内障症例の波面収差解析(KR-1W,トプコン)59歳,男性.右眼の視力低下を主訴に来院.矯正視力は右眼C0.4,左眼C0.8.細隙灯顕微鏡では水晶体の混濁に左右差はないように見えるが,波面収差解析を測定すると右眼では眼球高次収差のマップ(.)で緑やオレンジ色が混在し,高次収差が上昇している.角膜高次収差マップ(.)は全体に緑色で正常であるが,内部(水晶体)の高次収差によって眼球全体の高次収差は上昇していることがわかる.図4高次非球面IOLを近方合わせで挿入した症例の眼内レンズ度数計算(IOLマスター700,ZEISS社)47歳,女性.Vd=0.02(0.4C×.19.0D),Vs=0.02(0.7C×.17.0D(cyl.3.0DAx50°)の強度近視である.運転や読書は眼鏡があってもよいが,できるだけ裸眼で生活したいという希望があったため,両眼にCDIV00V(AMO社)+10.0Dを挿入した(赤枠).裸眼視力(小数)1.41右眼左眼0.6両眼0.2-0.21.01.00.60.4遠方2m70cm40cm測定距離図5図4の症例の術後裸眼距離別視力術後視力はCVd=0.4×IOL(1.2C×.1.75D(cyl.0.50DCAx180°)CVs=0.4×IOL(1.2C×.1.50D(cyl.0.50DAx180°)となり,両,眼での裸眼視力は,遠方C0.4,2Cm0.6,70Ccm1.0,40Ccm1.0となり,近方眼鏡は不要となった.図6角膜乱視が強い症例の角膜形状解析(CASIA,トーメーコーポレーション)74歳,男性.術前視力はC1.0(n.c)と乱視がないが,CASIAではCRealPowerでC3.2Dの乱視がある(.).XY1AT7(HOYA)を挿入し,術後の視力はC0.9×IOL(1.0×+0.5D)となった.この患者にトーリックCIOLを使用しなかったら,乱視が増加し不満の原因となった可能性がある.■用語解説■実用視力:1分間連続で複数回視力検査をした平均値を求めたもの.通常の視力検査で得られた視力の視標から開始し,正解すれば小さな視標になり,誤答したり,2秒回答がないときは大きな視標が表示される.高次収差:眼鏡で矯正できない屈折の成分.光の波長の違いや,光線がレンズを通過する位置や方向によって光束の集まる位置が多少異なる現象を収差という.光が波面として眼に入射したとき,眼に収差があると理想的球面からはずれた波面が形成され,この波面のずれを波面収差という.球面レンズ値や円柱レンズ値は低次収差であり,それ以外の収差(コマ収差や球面収差など)を高次収差という.

序説:白内障手術のインフォームド・コンセント

2023年6月30日 金曜日

白内障手術のインフォームド・コンセントInformedConsentforCataractSurgery宮田和典*松島博之**柴琢也***近年の白内障手術の進歩は目覚ましく,患者の負担が減る一方,良好な術後視機能を獲得することが可能になっている.現在では年間120万件以上の白内障手術が施行されており,眼科領域のみならず外科領域全般においてもっとも件数の多い手術の一つである.多焦点眼内レンズやトーリック眼内レンズなどの付加価値を有する眼内レンズも多数開発され使用されており,かつての開眼手術から屈折矯正手術の側面も有するようになった.このことは広く社会に認知されており,一部では手術を安易に捉えてしまい,現実を超えた過剰な期待を患者に与えてしまっていることも否定できない.しかし,術中・術後合併症により,著しい視機能の低下をきたす患者もいまだ存在することも事実であるため,手術施行に際しては患者に十分な説明を行い,知識と理解を与えたうえで同意を得ることが手術を行う側と受ける側の双方に重要であろう.わが国では江戸時代から「医は仁術」という言葉が医療倫理の標語として広く用いられている.「医は,人命を救う博愛の道である」(広辞苑)という意味のこの格言は,医療従事者の慈愛の気持ちを医療の中心に掲げており,現代においても大切にしなければならない精神であることは論をまたない.しかし,医療を受ける側のことについて直接は触れていないことから,以前はいわゆる「お任せの医療」が根付いていたことも否定できない.近年は医療を受ける側の自己決定権や知る権利,自律の尊重についても同じく重要視されており,インフォームド・コンセント(informedconsent:IC)と称され,医の倫理,あるいは法理として広く世界に広がり,誰もが知るところとなっている.ICは,米国において1960年代以降さまざまな権利運動の流れを受けて確立され,医療を受ける患者の権利に関するものであると同時に,臨床研究における被験者の権利を守るための原理にもなっている.わが国では,1980年後半になってからICの考えが知られることとなり,以後急速に広まった.1990年代に入りさまざまな法整備が行われて,2007年には「医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と医療法に明記された.臨床研究の分野でも2013年に再生医療安全性確保法,2017年に臨床研究法といったICを必須とする法律が制定されたことから,ICはより一層重要性を増している.本特集は,現代の白内障手術のICについてとりあげた.疾患およびその治療方法についての基本知*KazunoriMiyata:宮田眼科病院**HiroyukiMatsushima:獨協医科大学眼科学教室***TakuyaShiba:六本木柴眼科0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(1)713

汎ぶどう膜炎を伴う多巣性脈絡膜炎の1 例

2023年5月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科40(5):701.707,2023c汎ぶどう膜炎を伴う多巣性脈絡膜炎の1例福井志保*1木許賢一*2清崎邦洋*1加納俊祐*3嵜野祐二*4久保田敏昭*2*1別府医療センター眼科*2大分大学医学部眼科学教室*3加納医院*4豊後大野市民病院眼科MultifocalChoroiditisandPanuveitis:ACaseReportShihoFukui1),KenichiKimoto2),KunihiroKiyosaki1),SyunsukeKano3),CYujiSakino4)andToshiakiKubota2)1)DepartmentofOphthalmology,BeppuMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,OitaUniversity,3)KanoClinic,4)DepartmentofOphthalmology,BungoonoCityHospitalC目的:汎ぶどう膜炎を伴う多巣性脈絡膜炎(multifocalCchoroiditisCandpanuveitis:MCP)のC1例を報告する.症例:34歳,女性,視野障害を主訴に受診した.視力は両眼矯正C1.2,左眼鼻側の視野狭窄と右眼下方の軽度視野狭窄がみられた.両眼の汎ぶどう膜炎と眼底には同心円状に並ぶ黄白色円形の網脈絡膜病巣がみられ,汎ぶどう膜炎を伴う多巣性脈絡膜炎と診断した.両眼ともステロイドCTenon.下注射により消炎され鎮静化したが,炎症の再燃時に片眼に脈絡膜新生血管を合併した.抗CVEGF硝子体注射が奏効したが,すぐに再発し再発予防のため副腎皮質ステロイドの内服を行った.結語:ステロイドの内服治療によって,脈絡膜新生血管の再発は抑制された.CPurpose:Toreportacaseofmultifocalchoroiditisandpanuveitis(MCP)C.Casereport:A34-year-oldwom-anpresentedwithvisual.eld(VF)disturbance.Hercorrectedvisualacuitywas1.2forbotheyes,andnasal-sidenarrowingoftheVFinherlefteyeandmildinferiornarrowinginherrightwereobserved.AclinicalexaminationshowedCpanuveitisCandCconcentricCroundishCyellowish-whiteCchorioretinalClesionsCinCtheCfundusCofCbothCeyes,CandCsheCwasCdiagnosedCwithCMCP.CAfterCsheCunderwentCbilateralCposteriorCsub-tenonCinjectionCofCcorticosteroids,CtheCin.ammationreducedandultimatelysubsided,however,itrecurredandchoroidalneovascularization(CNV)devel-opedin1eye.AlthoughtheCNVwasinitiallye.ectivelytreatedwithintravitrealanti-vascularendothelialgrowthfactor,itquicklyrelapsed,sooralcorticosteroidswereaddedtopreventrecurrence.Conclusion:IncasesofMCP,treatmentwithsystemiccorticosteroidtherapymaybenecessarytopreventCNV.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(5):701.707,C2023〕Keywords:多巣性脈絡膜炎,脈絡膜新生血管,ぶどう膜炎,視野障害,急性帯状潜在性網膜外層症.multifocalCchoroiditis,choroidalneovascularization,uveitis,visual.elddisturbance,acutezonaloccultouterretinopathy.Cはじめに汎ぶどう膜炎を伴う多巣性脈絡膜炎(multifocalchoroidi-tisCandpanuveitis:MCP)はC1973年に初めてCNozikとDorschが眼ヒストプラズマ症候群に類似した前部ぶどう膜炎を伴う網脈絡膜炎のC2症例を報告した1).その後,1984年にCDreyerとCGassが網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管板レベルの黄色円形状病巣にぶどう膜炎を伴うC28例を報告して,現在の病名が付けられた2).自己免疫性の網脈絡膜炎と考えられ,平均発症年齢はC45歳で近視眼の女性に好発し,両眼性が多い3).約半数の症例で前房内や硝子体内に炎症を伴い,数個.数百個のC50.1,000Cμm大の黄白色の円形状病巣が乳頭周囲から中間周辺部に多発し,しばしば線状.曲線状に配列する.おもな病変部位は網膜色素上皮から脈絡膜内層で,経過とともに色素沈着を伴う瘢痕病巣を呈する.再発し慢性の経過をたどり,経過中にC30.40%で合併する脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)が視力低下の主因となる2.4).今回,炎症の再燃時に片眼にCCNVを合併し,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬硝子体内注射とステロイドの内服により経過良好である症例を経験した.〔別刷請求先〕福井志保:〒874-0011大分県別府市内竈C1473別府医療センター眼科Reprintrequests:ShihoFukui,M.D.,DepartmentofOphthalmology,BeppuMedicalCenter,1473Uchikamado,Beppu,Oita874-0011,JAPANCacb図1初診時,初診月の眼底所見a:初診時両眼眼底写真.視神経乳頭と後極を囲むように,同心円状に黄白色の円形病巣があった.Cb:初診月の黄斑部COCT.黄白色病巣は網膜外層.網膜色素上皮下に存在し,網膜内の浸潤病巣の程度は部位により異なっていた.Cc:初診時フルオレセイン蛍光造影像.黄白色病巣は初期(上)は蛍光ブロックによる低蛍光,後期(下)は組織染を呈し,乳頭過蛍光もみられた.I症例34歳,女性,2016年CX月,数日前からの左眼の視野狭窄を主訴に前医を受診後,別府医療センター眼科に紹介となった.既往歴はなく,出産後C2カ月半で授乳中だった.視力は右眼=0.02(1.2C×sph.10.0D(cyl.6.0DAx180°),左眼=0.04(1.2C×sph.11.0D(cyl.4.5DAx180°),眼圧は右眼14CmmHg,左眼C26CmmHg,両眼前房炎症細胞C1+,硝子体腔の強い炎症があった.眼底は両眼に視神経乳頭周囲と乳頭と後極を囲むようにC50.500Cμm大の黄白色の円形病巣が多発,配列していた(図1a).光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)では病巣は網膜外層.網膜色素上皮下に存在し,浸潤の程度は部位により異なっていた(図1b).フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)では黄白色病巣は初期は蛍光ブロックによる低蛍光,後期は組織染を呈し,乳頭過蛍光もみられた(図1c).前医でのCGoldmann視野検査では,左眼の鼻側の視野狭窄と右眼も軽度の下方視野狭窄があった(図2a).左眼鼻側の視野障害に一致してCOCTでCellipsoidCzoneの欠損がみられた.ぶどう膜炎の精査では血液検査,胸部CX線は異常なく,ツベルクリン反応は陽性,HLAはCDR4,DR9,A26,B60,B61だった.サルコイドーシス,HTLV-1感染,梅毒や結核の感染は否定的で,その他ウイルス抗体価の上昇もなかった.以上からCMCPと診断した.ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼両眼C1日C4回と左眼にトリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射20Cmgを施行した.1カ月後に右ab図2Goldmann視野検査a:前医.左眼鼻下側の視野狭窄,右眼下方の軽度視野狭窄があった.Cb:両眼トリアムシノロンアセトニドTenon.下注射後.両眼とも視野の改善がみられた.眼もトリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射20Cmgを施行したところ,両眼とも視野の改善がみられた(図2b).初診C3カ月後,OCTでは左眼の網膜外層にあった病巣は消失し,網膜内層の引き込み像を形成していた(図3a).FAでは初診時と同様に黄白色病巣は初期は低蛍光,後期は組織染を呈し,乳頭過蛍光はみられず,初診時より消炎されていた.インドシアニングリーン蛍光造影(indocyanine-greenangiography:IA)では病巣は初期から後期まで低蛍光を呈した(図3b).初診から半年,眼内の炎症は鎮静化し,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼両C1回としていたが,その後C1カ月間点眼を中止していた.ところが初診C7カ月後に左眼視力低下(0.05)をきたして受診した.左眼硝子体腔の炎症の再燃がみられ,OCTでは中心窩鼻側のC.brinの拡大,ellipsoidzoneは中心窩で断裂があった(図4a).FAでは再び乳頭過蛍光と中心窩鼻側の拡大する過蛍光があり,CNVを疑った(図4b).炎症の再燃に対しトリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射C30Cmgを行うも視力改善に乏しく,FAでは病巣を橋渡しするような形態の過蛍光巣(図4c)がみられ,OCTangiography(OCTA)でCCNVが確認された(図4d).抗CVEGF薬硝子体内注射を施行し視力C0.8に改善するも,2カ月後には再び視力C0.1に低下し,抗CVEGF薬硝子体内注射C2回目を施行した.その後,再発予防のためプレドニゾロンC30Cmg/日より内服を開始,漸減した.5カ月後(初診C1年C3カ月後),CNVの再発はなく,左眼視力はC0.9で,ellipsoidzoneも明瞭化した(図5).CII考按多巣性脈絡膜炎(multifocalchoroiditis:MFC)は全身疾患を伴わず,急性に網膜色素上皮から脈絡膜レベルの斑点状病変をきたす急性白点症候群の一つであるが,その疾患概念はいまだ確立されているとはいえず,多巣性脈絡膜炎(MFC)のなかに本症例のCmultifocalCchoroiditisCandCpanu-veitis(MCP),進行性の網膜下線維増殖を伴うCdi.usesub-a図3初診3カ月後の所見a:左眼COCT画像.上は初診月,下はC3カ月後(同部位).網膜外層にみられた高輝度病巣がC3カ月後には消失し,内層の引き込み像を形成していた.b:初診C3カ月後の初期フルオレセイン蛍光造影(FA)像(左上),インドシアニングリーン蛍光造影(IA)像(右上)と,後期(広角)FA(左下),IA(右下).FAでは黄白色病巣は初期は低蛍光,後期は組織染を呈し,乳頭過蛍光はみられず,初診時より消炎されていた.IAでは病巣は初期から後期まで低蛍光を呈した.bretinal.brosissyndrome(DSF),点状脈絡膜内層症(punc-tuateCinnerchoroidopathy:PIC)のC3疾患を含むともいわれている4,5).3疾患の頻度はCMCP>PIC>DSFとされ,MCPは白人女性に多く海外では多数の症例報告3.5)があるが,わが国での報告は少ない.わが国における多巣性脈絡膜炎としての報告はC10例ほどあり,そのうちC7例はCDSF,別名CmultifocalCchoroiditisCassociatedCwithCprogressiveCsub-retinal.brosisとしての報告で,MCPとしての報告はわずかC1例だった6).しかし,2016年にC66施設が参加したレトロスペクティブなぶどう膜炎の全国統計7)では,診断が確定されたC3,408例(63.4%)のうち,20例(0.4%)が多巣性脈絡膜炎だった.DSFは網膜下線維増殖が著明であること,PICは前房内炎症を伴わず,滲出斑の分布が後極中心であることがおもな鑑別点となるが,鑑別困難である症例も多数存在し,これらが同一疾患と考えるほうが妥当である4,8).近年はとくにCMCPはCPICの重症型であるという見方が強く,共通した遺伝背景があるという報告9)や,Spaideら10)はC22例C38眼(MCP23眼,PIC15眼)をレトロスペクティブに再評価し,7例は左右眼で診断が異なり,どちらも活動期における主病巣は網膜色素上皮下と網膜外層で,治療法も同じでab図4初診7カ月後(炎症再燃時)の所見a:左眼COCT像.中心窩鼻側のC.brinは拡大しCellipsoidzoneは中心窩で断裂していた.Cb:左眼CFA初期と後期.乳頭過蛍光と中心窩鼻側の拡大する過蛍光巣があり,CNVを疑った.Cc:トリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射後の左眼後期CFA.病巣を橋渡しする形態の過蛍光巣.d:OCTangiography.CNV(.)が確認された.図5抗VEGF硝子体内注射後(初診後1年3カ月)の左眼OCT像ellipsoidzoneは明瞭化した.あり両者を鑑別する臨床的実用性は限られているとしていれる部分や,網膜色素上皮の隆起ははっきりせず外網状層にる.OCTでは急性期の黄白色病巣は網膜外層や網膜色素上高輝度病巣がみられる部分もあった.そして時間とともに網皮下に炎症細胞の集簇による円錐形の高反射隆起性病変がみ膜内の病巣は消失し,網膜色素上皮は修復され内層の引き込られ,一部は色素上皮を貫いて網膜外層に滲出が及ぶ10).本み像を形成した.病巣により病期が異なっており,初診時に症例においても網膜色素上皮隆起の周囲に高輝度病巣がみら病期が異なる病巣が混在しているというのは既報でも散見された4).また,二つの瘢痕病巣を橋渡しするように生じたCNVの形態もCPICでみられる所見と同様で,病巣に隣接した部位では網膜色素上皮の反応性増殖や炎症反応が関与し,続発性CCNVは病巣を取り囲む領域に発症しやすいとされる8).本症例は前眼部と硝子体腔の炎症を伴い,滲出斑の分布からCMCPと診断した.黄白色病巣がおおよそ黄斑を中心に同心円状に配列した所見はCSchlaegelLinesといわれ,眼ヒストプラズマ症候群で赤道部にみられるCLinearstreaksに類似し,病巣が線状や曲線状に配列する11,12).本症例でも病巣が縦に配列する部分や両眼とも一部CDoubleSchlaegelLinesがみられ,非常に興味深い所見であるが,このように配列する理由は不明である.MCPやCPICではCIAにおいて検眼鏡所見よりも多くの低蛍光斑を呈し,脈絡膜の循環不全や炎症が病態の主座と考えられている.急性期の脈絡膜厚は厚く,脈絡膜血流速度は低下しているとされ13),低蛍光斑の原因として脈絡膜の低還流や血管閉塞などが想定されている.IAで曲線状に配列した低蛍光斑の下に脈絡膜中大血管が観察された報告がいくつかあり,本症例もCSchlaegelLinesや右眼乳頭脇の病巣部位では脈絡膜中大血管が描出されていた.病巣が配列する理由として,脈絡膜中大血管部位から同じ深さで広がった可能性などが考えられた.また,多巣性脈絡膜炎はCPICとともに,急性帯状潜在性網膜外層症(acuteCzonalCoccultCouterretinopathy:AZOOR)の類縁疾患(AZOORcomplex)の一つである.比較的若年の近視眼に急性の網膜外層障害を呈するなどの共通点があり,また同時に合併することもあり,同一スペクトラムにあると考えられている14).MFCではCMFCの病巣がみられない部位にもCOCTでCellipsoidzoneやCinterdigitationzoneの障害がみられ,視野障害を伴って発症することがある14).本症例においても左眼鼻側の視野障害を主訴に受診し,同部位に黄白色病巣はみられなかったが,ellipsoidzoneの消失がみられ,AZOORの所見と思われた.ステロイドのCTenon.下注射や内服により,AZOORによる視機能障害は改善されることが多く14),本症例もステロイドCTenon.下注射により比較的速やかにCellipsoidzoneの回復と視野の改善がみられた.また,ステロイド治療はMFCにおいて急性期の視力を改善させ,新たな病巣の出現やCCNVの発症を抑制するとされる.しかし,CNVに対しては効果が乏しいこともあり4,5),抗CVEGF薬硝子体内注射の有効性を示す報告は多く,数回の注射回数でCCNVはコントロールされるとしている15).本症例においても炎症の再燃時にステロイドCTenon.下注射では十分な視力の改善が得られず,OCTAでCCNVが明らかとなり,抗CVEGF薬硝子体内注射が奏効した.活動性の炎症病巣とCCNVはどちらも血液関門の破綻した浸潤病巣であるため鑑別困難なことがあり10),OCTAがその識別に有用とされる.また,MFCでは眼内の炎症がおちついている時期でも,病巣の拡大や新たな病巣の出現,CNVを発症するリスクは高く,これは炎症が網膜外層や網膜色素上皮に限局しているとされ12),Bruch膜の断裂がCCNV形成に関与する.本症例でも炎症の再燃がみられない時期にCCNVが再発し,ステロイドの内服により再発は抑制された.PICでは抗CVEGF薬硝子体内注射単独群と抗CVEGF薬硝子体内注射とステロイド内服の併用群を比較し,併用群ではCCNVの再発がなく,視力も明らかに改善したとする報告16)がある.MCPにおいても抗CVEGF薬とステロイドの併用がCCNV治療に有用と思われた.出産後C2カ月半でCAZOORを合併して発症しCSchlaegelLinesがみられ,CNVを合併した典型的なCMCPの症例を経験した.症例数が少なく,治療法については今後の症例の蓄積が望まれる.文献1)NozikCRA,CDorschW:ACnewCchorioretinopathyCassociat-edCwithCanteriorCuveitis.CAmCJCOphthalmolC76:758-762,C19732)DreyerRF,GassJDM:Multifocalchoroiditisandpanuve-itis.CACsyndromeCthatCmimicsCocularChistoplasmosis.CArchCOphthalmolC102:1776-1784,C19843)KedharCSR,CThorneCJE,CWittenbergCSCetal:MultifocalCchoroiditiswithpanuveitisandpunctuateinnerchoroidop-athy:comparisonCofCclinicalCcharacteristicsCatCpresenta-tion.RetinaC27:1174-1179,C20074)MorganCCM,CSchatzH:RecurrentCmultifocalCchoroiditis.COphthalmologyC93:1138-1147,C19865)BrownJJr,FolkJC,ReddyCVetal:VisualprognosisofmultifocalCchoroiditis,CpunctuateCinnerCchoroidopathy,CandCtheCdi.useCsubretinalC.brosisCsyndrome.COphthalmologyC103:1100-1105,C19966)永田美枝子,池田尚弘,鈴木聡ほか:MultifocalChoroi-ditisandPanuveitisのC1症例.眼紀C51:451-454,C20007)SonodaCKH,CHasegawaCE,CNambaCKCetal:EpidemiologyCofCuveitisCinJapan:aC2016CretrospectiveCnationwideCsur-vey.JpnJOphthalmolC65:184-190,C20218)BrownCJCJr,CFolkJC:CurrentCcontroversiesCinCtheCwhiteCdotCsyndromes.CMultifocalCchoroiditis,CpunctateCinnerCcho-roidopathy,CandCtheCdi.useCsubretinalC.brosisCsyndrome.COculImmunolIn.ammC6:125-127,C19989)AtanCD,CFraser-BellCS,CPlskovaCJCetal:PunctateCinnerCchoroidopathyCandCmultifocalCchoroiditisCwithCpanuveitisCshareChaplotypicCassociationsCwithCIL10CandCTNFCloci.CInvestOphthalmolVisSciC52:3573-3581,C201110)SpaideRF,GoldbergN,FreundKB:Rede.ningmultifocalchoroiditisCandCpanuveitisCandCpunctateCinnerCchoroidopa-thyCthroughCmultimodalCimaging.CRetinaC33:1315-1324,C201311)SpaideCRF,CYannuzziCLA,CFreundKB:LinearCstreaksCinCmultifocalchoroiditisandpanuveitis.RetinaC11:229-231,C1991C12)TavallaliCA,CYannuzziLA:IdiopathicCmultifocalCchoroidi-tis.JOphthalmicVisResC11:429-432,C201613)HirookaCK,CSaitoCW,CHashimotoCYCetal:IncreasedCmacu-larCchoroidalCbloodC.owCvelocityCandCdecreasedCchoroidalCthicknessCwithCregressionCofCpunctateCinnerCchoroidopa-thy.BMCOphthalmolC14:73,C201414)SpaideCRF,CKoizumiCH,CFreundKB:PhotoreceptorCouterCsegmentCabnormalitiesCasCaCcauseCofCblindCspotCenlarge-mentinacutezonaloccultouterretinopathy-complexdis-eases.AmJOphthalmolC146:111-120,C200815)FineCHF,CZhitomirskyCI,CFreundCKBCetal:Bevacizmab(Avastin)andranibizumab(Lucentis)forCchoroidalCneo-vascularizationCinCmultifocalCchoroiditis.CRetinaC29:8-12,C200916)WuCW,CLiCS,CXuCHCe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