‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

抗VEGF治療:OCTアンギオグラフィでみる抗VEGF薬と光線力学的療法の効果判定

2023年5月31日 水曜日

●連載◯131監修=安川力髙橋寛二111OCTアンギオグラフィでみる抗VEGF薬と木許賢一大分大学医学部眼科学講座光線力学的療法の効果判定光干渉断層血管撮影(OCTA)は低侵襲・簡便に黄斑部新生血管(MNV)の活動性を評価することができる.しかし,導入期に抗VEGF薬を3回連続注射してもMNVは再拡大するため,実臨床においてOCTAの所見のみを再治療の指標とすることはむずかしい.光線力学的療法の併用は単独治療よりもMNVの血管退縮効果が強く,治療回数を少なくできるが,長期観察中はMNV末端のループ形成などの構造変化に注意すべきである.はじめに光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA)による滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の黄斑部新生血管(macularneovascularization:MNV)の活動性の評価についてCoscasら1)は,1)扇状,車輪状の形態,2)多数の微細毛細血管に分岐,3)吻合やループ形成,4)末端の形状がアーケード状(枯れ木のようでない),5)病巣周囲のハローのうち,少なくとも三つ以上満たせば活動性があるとした.しかし,実臨床では個々の患者の血管構造をOCTAで詳細に解析し,治療方針を決定するのは困難で,通常の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による滲出の有無で治療方針を決定することがほとんどである.抗VEGF治療後のMNVは,治療後2週間前後にOCTAで血流が途絶え約4週間で再増殖が始まり2,3),その後滲出変化をきたすとさ網膜外層脈絡膜毛細管板れる.Takeuchiら4)の検討でも,初回の抗VEGF薬は未治療MNVの血管面積と血管分枝密度を減少させるが,抗VEGF薬を3回連続投与したにもかかわらず,MNVは再拡大していることが明らかになっている.光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)を併用するとMNV再疎通までの期間は抗VEGF薬単独治療よりも長いが,OCTで滲出のない時期に再治療の必要性をOCTAだけで判断するのはやはりむずかしい.自験例を提示して再治療時のOCTA像を検討してみる.症例1:Pachychoroidneovasculopathy47歳,男性.右眼視力(0.8).アフリベルセプト硝子体内注射(intravitrealinjectionofaflibercept:IVA)を3回連続で行ったが,効果が2カ月もたないため,PDTとラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealinjectionofranibizumab:IVR)の同日投与(PDT+IVR)を選択した.術前の網膜外層にみられた血管構造は術翌日には消網膜外層脈絡膜毛細管板図1Pachychoroidneovasculopathyに対するPDT+IVR後のOCTA変化治療翌日には黄斑部新生血管(MNV)は描出されず,光線照射野の脈絡膜毛細管板の低灌流が明瞭に観察される(.).17カ月目の再発時にMNV耳上側に円形のループ構造が形成されているのがわかる(.).(79)あたらしい眼科Vol.40,No.5,20236570910-1810/23/\100/頁/JCOPY術前術後6カ月図2ポリープ状脈絡膜血管症に対するPDT+IVBr+STTA後のOCTA変化黄斑部新生血管(MNV)構造は治療後半年経過しても消退したままである.22カ月目には再拡大したMNV末端がアーケード状になってきた(.).失しており,光線照射野の脈絡膜毛細管板の低灌流が明瞭に観察された(図1).この脈絡膜毛細管板の低灌流はPDTが適切に行われた確証でもある.Bスキャンでは急性滲出性黄斑症とよばれるPDT後の滲出変化が著明である.1カ月後にはMNVは再灌流しているが,MNVの中の微細な血管は消退している.以後16カ月再燃なく経過したが,17カ月目に漿液性.離とフィブリン析出をきたした.再発前後のOCTAを比較してみるとMNV耳上側に円形のループ構造が形成されているのがわかる(図1).IVAの追加で翌月にはこの血管構造は消退した.長期経過観察中はMNVの末端構造の変化に注意すべきことを示す症例である.症例2:ポリープ状脈絡膜血管症62歳,女性.初回治療でPDTとブロルシズマブ硝子体内注射(intravitrealinjectionofbrolucizumab:IVBr)とトリアムシノロンTenon.下注射(sub-Ten-on’striamcinoloneacetonideinjection:STTA)を併用した(PDT+IVBr+STTA).治療前にみられたMNV658あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023構造は治療後半年経過しても消退したままである.OCT上は滲出変化のないまま無治療で経過したが,22カ月目にはMNVは再拡大している(図2).MNV末端がアーケード状になってきたため今後は注意が必要である.文献1)CoscasGJ,LupidiM,CoscasFetal:Opticalcoherencetomographyangiographyversustraditionalmultimodalimaginginassessingtheactivityofexudativeage-relatedmaculardegeneration.Retina35:2219-2228,20152)LumbrosoB,RispoliM,SavastanoMC:Longtudanalopti-calcoherencetomography-angiographystudyoftype2nativechoroidalneovascularizationearlyresponseaftertreatment.Retina35:2242-2251,20153)HuangD,JiaY,RispoliMetal:Opticalcoherencetomog-raphyangiographyoftimecourseofchoroidalneovascu-larizationinresponsetoanti-angiogenictreatment.Retina35:2260-2264,20154)TakeuchiJ,KataokaK,ItoYetal:Opticalcoherencetomographyangiographytoquantifychoroidalneovascu-larizationinresponsetoaflibercept.Ophthalmologica240:90-98,2018(80)

緑内障:白内障手術併用線維柱帯切開術のQOVへの影響

2023年5月31日 水曜日

●連載◯275監修=福地健郎中野匡275.白内障手術併用線維柱帯切開術の廣岡一行広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学CQOVへの影響白内障手術併用線維柱帯切開術の術後は角膜高次収差が増大する.筆者らの研究では,線維柱帯をC120°切開すると角膜高次収差が術前のレベルに戻るのにC3カ月要し,180°切開ではC3カ月経っても術前のレベルには戻らない.それにもかかわらず,白内障手術併用線維柱帯切開術後にCQOVが向上するのは,術後視力の向上が大きく寄与するためと考えられる.●はじめに眼外法で線維柱帯切開術を行う場合は,①強膜の焼灼,②CSchlemm管を露出させるために強膜弁を作製するが,その時の切開線が角膜に入る,③強膜弁の縫合,などにより術後の高次収差の増大や惹起乱視によるQOV(qualityCofvision)への影響が懸念される.ところが現在では,眼内から線維柱帯を切開するため,白内障手術併用線維柱帯切開術では白内障手術で作製された切開創のみで線維柱帯を切開することが可能となった.小切開による白内障手術では高次収差にほとんど影響を与えないことから,眼内法による白内障手術併用線維柱帯切開術も,高次収差にほとんど影響を与えないと予想される.本稿では白内障手術併用線維柱帯切開術の高次収差に与える影響とCQOVの関連について述べる.C●白内障手術併用線維柱帯切開術後の高次収差の変化筆者らが白内障手術単独と白内障手術併用線維柱帯切開術後の高次収差を測定したところ(図1),白内障手術単独では術後に角膜高次収差,コマ収差,球面収差のいずれの収差も増大しなかったのに対して,白内障手術併用線維柱帯切開術後ではいずれの収差も増大し,術後C3カ月間にわたって増大していた1).高次収差の増大に影響を及ぼす因子として線維柱帯の切開範囲(120°切開と180°切開)が抽出され,180°切開が術後の高次収差の増大をもたらす危険因子であることが明らかになった1).散布図を見ると一目瞭然であり,180°切開では術前に比べ術後C3カ月で高次収差が大きく増大している症例が多数あるのがわかる(図2).それではC120°切開では高次収差は増大しないのであろうか?C120°切開とC180°切開に分けて検討したところ,180°切開では術後C3カ月を経過しても高次収差は増大したままであったのに対して,120°切開では術後C2カ月まで高次収差は増大していたが,術後C3カ月で術前のレベルに戻っていた(表1).C180°切開でもいずれは術前のレベルに戻るであろうと考えられるが,術後C3カ月以降は定期的な高次収差の測定をしていなかったため,術前のレベルに戻るのにどの程度の期間を要するのかは不明である.緑内障手術の最大の目的は眼圧下降である.そこでC120°切開とC180°切開で術後成績に差があるのかを調べたところ,両切開とも術前に比べて眼圧は術後有意に下降しており,その下降の程度は切開範囲による違いを認めなかったことから,120°切開とC180°切開では眼圧下降効果は同程度であると考えられる2).C●白内障手術併用線維柱帯切開術がQOVに与える影響白内障手術併用線維柱帯切開術のCQOVへの影響を調べるために,術前と術後C2カ月に視覚に関連した健康関連CQOL(qualityCoflife)を測定する尺度であるCVFQ(VisualCFunctionQuestionnaire)-25を用いてアンケート調査を行った3).白内障手術併用線維柱帯切開術後には裸眼・矯正視力とも向上し,緑内障点眼数の減少・眼圧下降を認め,その結果,視覚に関連したCQOLの向上を認めた(図3).白内障手術単独では裸眼・矯正視力は向上し,緑内障点眼数は減少したものの眼圧下降は認めなかった.しかし視覚に関連したCQOLは向上した(図3).手術による惹起乱視は,眼外法による線維柱帯切開術に比べて眼内法では小さい.白内障手術併用線維柱帯切開術後C2カ月では先に述べたように高次収差の増大が表1角膜高次収差120°切開p値180°切開p値術前C1カ月C2カ月C3カ月C0.227±0.128C0.309±0.196C0.287±0.131C0.251±0.131C0.008C0.01C0.12C0.216±0.9500.282±0.099C0.476±0.361C0.439±0.223C0.0280.0170.001C(77)あたらしい眼科Vol.40,No.5,20236550910-1810/23/\100/頁/JCOPYa.術前b.術後2カ月図1術前・術後2カ月(180°切開)のマルチマップとIOLセレクションマップ術後高次収差は増大しており,Landolt環シミュレーションでは,ブレの大きなCLandolt環が表示されている.角膜高次収差コマ収差球面収差術後3カ月0.40.20.10.10.200000.10.20.30.40.50.60.700.10.20.30.40.50.600.050.10.150.20.25術前術前術前図2術前・術後3カ月の角膜高次収差,コマ収差,球面収差線維柱帯をC180°切開すると,いずれの収差も術後大きく増大している症例が多数みられる.*線維柱帯を切開すると高次収差は増大するが,これは1.1180°2180°0.6180°11.8120°120°120°0.50.91.60.8術後3カ月1.40.70.41.20.61術後3カ月0.50.30.80.40.60.20.3VFQ-25総合スコア白内障単独手術および白内障手術併用線維柱帯切開術のいずれChookCabCinternoCtrabeculotomy.CJCClinCMedC10:3181,においてもCVFQ-25総合スコアが術後に上昇している.C20213)YuasaY,HirookaK,OkadaNetal:Vision-relatedquali-認められたものの,視力が向上したことが視覚に関連しCtyCofClifeCfollowingCtrabeculotomyCabCinterno.CUnderCsub-たCQOLの向上に大きく関与していると考えられる.CmissionC656あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(78)90.0080.0070.0060.0050.0040.0030.0020.0010.000.00白内障手術単独白内障手術併用線維柱帯切開術図3術前・術後2カ月でのVFQ-25総合スコア角膜の形状が変わることが原因と考えている.眼圧下降効果が同等であるのであれば,高次収差に対する影響の小さいC120°切開のほうがよいと考え,現在筆者の施設では線維柱帯の切開範囲はC120°としている.文献1)OnoeCH,CHirookaCK,COkumichiCHCetal:CornealChigher-orderCaberrationsCafterCmicrohookCabCinternoCtrabeculoto-myCandCgoniotomyCwithCtheCkahookCdualblade:prelimi-naryearly3-monthresults.JClinMedC10:4115,C20212)OkadaN,HirookaK,OnoeHetal:Comparisonofe.cacybetweenC120°CandC180°CSchlemm’sCcanalCincisionCmicro-

屈折矯正手術:LASIKフラップと翼状片手術

2023年5月31日 水曜日

●連載◯276監修=稗田牧神谷和孝276.LASIKフラップと翼状片手術森井勇介森井眼科医院LASIK術後眼はフラップ接着面が永続的に弱くなっているため,翼状片がフラップエッジを越えて進展してしまった場合の手術の際は,慎重に.離すべきである.頭部の.離の際に,過度に牽引するとフラップの部分.離を招く恐れがある.C●はじめにLaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)は,これまでもっとも多く施行されてきた屈折矯正手術である.翼状片もよくみる疾患であり,手術をする機会は多い.今回,LASIK術後眼に翼状片が発症し,手術が必要になった場合の注意点について,経験に基づいて述べる.C●当院での翼状片手術翼状片手術にはさまざまな手術方法があるが,筆者はいろいろな方法を試して紆余曲折を経た結果,京都府立医科大学眼科医局の研修医時代に教えてもらった術式に戻り,現在に至っている.簡単に述べると,頭部の鈍的.離後,初発であっても0.04%に希釈したマイトマイシンCC溶液を短時間作用させたのち,十分に洗浄を行う.異常結膜を切除して正常結膜部分を直筋付着部あたりの強膜に密着するイメージで,なるべくテンションをかけて数糸縫合(7-0シルク糸)することで,強膜が露出した状態で手術を終了する.縫合糸はC1週間後に抜糸する.詳細は割愛するが,当院ではこの方法で毎年C50.80件程度の執刀を行っているが,再発率は低く,個人的には満足な手術結果を得ている.C●LASIK術後眼の翼状片手術の特徴LASIK術後眼の最大の特徴は,角膜面にフラップが形成されており,そのフラップの接着面は正常角膜面に比べ,永続的に生体力学的に弱くなっている1)ことである.そのため,とくに注意が必要なのは頭部の鈍的.離の局面である.頭部がCLASIKフラップエッジに達していない,もしくはエッジで留まっている場合は通常どおりでよいが,頭部が瞳孔領近くまで達した翼状片の場合は,細心の注意が必要である.これまで当院で施行したCLASIK術後眼の翼状片手術はC5眼である.5眼中C3眼はCLASIKフラップエッジで(75)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY図1LASIKフラップエッジで進展が停滞している翼状片LASIKフラップエッジに沿って翼状片が進展しつつも,エッジを越えていない.進展が止まっていたが,2眼はフラップエッジを乗り越え,瞳孔領にまで侵入していた.このC2眼を観察すると,LASIKフラップに沿って翼状片が進展しつつもエッジで進展が停滞していたことから,フラップエッジの微妙な段差がCcontactinhibitionの効果を有している可能性を感じる(図1).幸い全例とも術後再発は認めていないが,1例だけ痛恨の経験をしたので報告する.C●痛恨の症例患者はC47歳,男性である.約C10年前に両眼にCLASIKを施行.数年前より翼状片が生じ,増大してきたため,手術目的にて当院を受診.右眼に瞳孔領に侵入した翼状片を認めた(図2a).翼状片頭部の血管が豊富で,活動性の高い翼状片であることが示唆された2).その患者まで,LASIK術後眼の翼状片手術はC4眼経験し(うちC1眼は瞳孔領に侵入していた),いずれも問題なく経過していたため,通常の翼状片手術と変わらない説明をし,手術予定とした.術前視力は右眼C0.6(0.9×sph+2.00D(cyl.3.00DAx160°),翼状片の圧迫による不正乱視の影響で,矯正あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023653abc図2痛恨の症例a:術前写真.翼状片がフラップエッジを乗り越え,瞳孔領に達している.鼻上側の薄い翼状片はフラップエッジに沿って進展しており,その段差が解消された後に,鼻側から,瞳孔領まで伸びる翼状片が成長してきているように見える.頭部の血管が豊富で強固な癒着が予想された.Cb:術翌日前眼部写真(フルオレセイン染色後).うっすらとフルオレセイン染色が残っているエリアが,LASIKフラップ.離部分である.c:術C1年C4カ月後.EyeBridレンズ(LCL社)を装用し,良好な矯正視力を得ている.視力はC1.0未満であった.こうしてる間に徐々に患者が状況に慣れてきたため,な先に述べた方法で翼状片手術を施行した.頭部を.離んとか日常生活はできるとのことで,いずれも施行せずする際,角膜面との癒着が強固で,鈍的.離が困難であに月日が経っていった.ったものの,なんとか.離した.ただし,フラップエッとはいえ,訴えがなくなったわけではないため,術後ジ側の角膜面に翼状片組織が依然として付着していたた1年C4カ月後,未認可の製品ではあるものの,センターめ,それを.離しようと有鈎鑷子で付着物を強く牽引しがハードコンタクトレンズで,周辺部がスカート上にシたところ,きれいに一層.離された.その後,型通りのリコーンハイドロゲルレンズとなっているハイブリッド手術を施行し終了した.レンズCEyeBridレンズ(LCL社)を提案し,試しに装用術中はとくに疑問もなく,翼状片組織の付着した角膜したところ,良好な装用感と視力を得たため,現在はそ表層面が.れたものと完全に思いこんでいたが,妙にきのレンズを装用していただいている(図2c).れいに.れたことと,実際の翼状片の範囲外のところも術後C1年半が経過した現時点で,EyeBridレンズ装着.離したので,帰宅してからよく考えると,LASIKフ下にて右眼視力はC0.7(1.2C×cyl.1.00DAx110°)であラップを部分的に.離していたのでは…と気づき,眠れる.翼状片の再発は認めていない.ぬ夜を過ごした.翌日診察時,瞳孔領を含むCLASIKフラップ部分を一部.離してしまっていることが発覚したC●苦い経験から得た教訓(図2b).LASIK術後眼の翼状片手術の際は,頭部の鈍的.離はフラップの.離を招かないように細心の注意が必要でC●その後の経過ある.可能ならば,翼状片がフラップエッジ縁で留まっ当然ながら激しい不正乱視を認め,当初はかなり視力ている状況で手術に踏み込みたい.角膜面に翼状片組織不良の訴えが強かったが,状態が安定するまでは我慢しの強固な癒着が残存している場合は,無理に牽引せず,ていただいた.その間,ゴルフ刀などで慎重に.離すべきである.・不正乱視矯正のためハードコンタクトレンズ装着筆者の苦い経験が,皆様の今後の診療に役立てば幸い・不正乱視の矯正は不能だが,正乱視面の矯正だけでもである.ということで,有水晶体眼内レンズによる矯正・残存フラップを除去してしまうフラップ除去文献などをリカバリー案として患者に説明した.ハードコ1)福岡佐知子:屈折矯正手術による組織学的変化.IOL&RSンタクトレンズは一度装用してもらったが,装用感が耐C29:497-504,C2015えがたいとのことで拒否され,有水晶体眼内レンズによ2)森洋斉:再発のリスクが高い翼状片に対する手術.眼科る矯正は視力矯正効果が不十分なため拒否された.そう手術32:200-206,C2019C654あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(76)

眼内レンズ:新規遺伝子変異が検出されたAlport症候群に伴う前部円錐水晶体の1例

2023年5月31日 水曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋438.新規遺伝子変異が検出されたAlport八塚洋之木許賢一大分大学医学部眼科学講座症候群に伴う前部円錐水晶体の1例Alport症候群はCIV型コラーゲン異常を原因とする遺伝性疾患である.筆者らは,新規遺伝子変異が検出されたCAlport症候群に伴う前部円錐水晶体による視力低下に対して,水晶体再建術を施行したので,経過と画像や検査所見を供覧する.●はじめにAlport症候群は,基底膜の主要な構成成分であるCIV型コラーゲンCa3.5鎖の異常を原因とし,進行性の慢性腎炎,感音性難聴をおもな症状とする遺伝性疾患である.遺伝形式はおもにCX連鎖顕性遺伝型であり,有病率はC5,000人にC1人1)とされる.眼症状は,後部多型性角膜ジストロフィ,前部円錐水晶体,後部円錐水晶体,水晶体混濁,白内障,網膜白斑2,3),黄斑耳側菲薄化4)などが報告されている.C●症例患者はC38歳,女性.両眼の前部円錐水晶体を伴う視力低下で当科に紹介された.Alport症候群に伴う慢性腎不全のため血液透析を受けており,Alport症候群に伴う感音性難聴がある.家族歴として妹にCAlport症候群があるが,両親と弟は健常である.矯正視力は右眼0.3,左眼C0.3.両眼に前部円錐水晶体があり,水晶体混濁はなかった(図1上段).前眼部三次元光干渉断層計CASIA(トーメーコーポレーション)では水晶体前部中央が膨隆し,前方へ突出している様子が確認された(図1下段).眼底には両眼とも黄斑部耳側にクリスタリン様沈着物と同部の菲薄化があった.ウェーブフロントアナライザーCKR-1W(トプコン)における眼球高次収差解析のカラーコードマップ(図2上段)では,両眼とも中心部分に遅い部分があり,その周囲をリング状に早い部分が取り巻いているカラフルなパターンを示し,白内障の単眼複視症例と類似したパターンであった.前部円錐水晶体による大きな高次収差が矯正視力低下の原因と考えられたため,両眼の水晶体再建術を施行した.手術では,前.組織は脆弱で,連続円形切.の際に切開線が赤道部に流れやすく,注意を要した.手術は両眼とも問題なく終了し,術後矯正視力は両眼ともC1.5と改善した.術後は高次収差の改善がみられた(図2下段).術中採取した水晶体前.を透過電子顕微鏡で観察(73)図1初診時の前眼部スリット写真(上段)と前眼部三次元光干渉断層計画像(下段)両眼とも水晶体前部中央が膨隆し,前方への突出がみられた.すると,前.の菲薄化と,特徴的な多数の裂隙・亀裂が確認された(図3).遺伝子検査ではCCOL4A3遺伝子変異(p.Thr911*Asnfster29)が検出された.この遺伝子変異は終止コドンをきたす新規のフレームシフト変異のホモ多型であった.妹も同様の遺伝子変異があり,患者の両親は同様の遺伝子変異のヘテロ多型であったため,遺伝形式は常染色体潜性遺伝と考えられた.両親の親族結婚はなかった.C●まとめAlport症候群では水晶体前.中央部が菲薄化することが知られており,前.の構造的異常と相まって,前部円錐水晶体を発症すると考えられる.本症例はCAlport症候群に伴う眼症状として,前部円錐水晶体と網膜クリスタリン様沈着物,耳側網膜の菲薄化があり,前部円錐水晶体に対して水晶体再建術を施行し,視機能の改善を得た.Alport症候群に前部円錐水晶体を合併した際には,同時に網膜の構造異常があっても水晶体再建術で良あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C6510910-1810/23/\100/頁/JCOPY右眼術前眼球高次収差左眼術前眼球高次収差図2本症例の眼球高次収差解析のカラーコードマップとLandolt環シミュレーション術後は,前部円錐水晶体に伴う大きな高次収差が改善した.Cab図3水晶体前.の透過電子顕微鏡写真a:コラーゲン異常なし.b:本症例.前.の菲薄化と特徴的な多数の裂隙・亀裂が確認された.好な術後視力を得られる可能性がある.本症例は新規の2)HentatiCN,CSelleamiCD,CMakniCKCetal:OcularC.ndingsCinフレームシフト変異のホモ多型であり,非常にまれな症AlportCsyndrome:32CcaseCstudies.CJCFrCOphtalmolC31:C597-604,C2008例であった.3)JacobsM,Je.reyB,KrissAetal:Ophthalmologicassess-mentCofCyoungCpatientsCwithCAlportCsyndrome.COphthal-文献mologyC99:1039-1044,C19921)HasstedtCSJ,CAtkinCL:X-linkedCinheritanceCofCAlport4)UsuiCT,CIchibeCM,CHasegawaCSCetal:Symmetricalsyndrome:familyprevisited.AmJHumGenetC35:1241-reducedCretinalCthicknessCinCaCpatientCwithCAlportCsyn-1251,C1983Cdrome.RetinaC24:977-979,C2004

コンタクトレンズ:読んで広がるコンタクトレンズ診療 円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方(その1)

2023年5月31日 水曜日

提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療9.円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方糸井素啓京都府立医科大学(その1)■はじめに近年,円錐角膜眼に対する強膜レンズ(強角膜レンズ),ハイブリッドレンズなどの特殊なコンタクトレンズを用いた視力矯正の有効性が報告されている1).しかし,一部の強度乱視用のソフトコンタクトレンズを除き,強膜レンズなどの特殊なコンタクトレンズは厚生労働省から製造・販売の認可を受けていない.そのため,わが国では円錐角膜眼の不正乱視に対する屈折矯正にはHCLが第一選択となっている.円錐角膜眼へのハードコンタクトレンズ(HCL)処方のポイントを,2回に分けて解説する.C■レンズデザインの選択円錐角膜眼に対しては,おもに球面レンズとよばれる二つないしは三つの球面カーブで構成されたレンズと,多段カーブレンズとよばれる四つ以上のカーブで構成されたレンズのC2種類がある(図1).多段カーブレンズは「角膜中央部と周辺部の曲率差が正常眼に比較して大きい」という円錐角膜眼の特徴的な角膜形状を模したデザインであり,球面レンズではレンズが脱落してしまうような重症例であっても良好な装用感を得ることができる.また,角膜形状に合わせて処方できるため,角膜への物理的ストレスを生じにくく,レンズ後面と角膜頂点部の摩擦に起因する上皮障害を軽減することが可能である.以上のような特徴により,重症例=多段カーブレンズという印象をもつ人が多いが,重症例であっても球面レンズのほうが好ましい場合がある.一つは,角膜の突出部が中心から離れている場合(図2a,b)である.一般に多段カーブレンズは球面レンズと比較して光学径が狭くデザインされており,センタリングが不良になれば瞳孔領をレンズの光学域が覆えず,視力低下や複視などを生じやすい.そのため,角膜の突出部が中心から離れている場合は,多段カーブレンズより球面レンズがよい適応となることが多い.また,頻度は少ないが,角膜全体(71)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY道玄坂糸井眼科多段カーブレンズ球面レンズ図1球面HCL(マイルドII,サンコンタクトレンズ)と多段カーブHCL(エムカーブ,サンコンタクトレンズ)のレンズデザイン多段カーブレンズは球面レンズに比較して,オプチカルゾーンを狭くすることで,周辺部に位置するカーブ数を増やしたデザインとなっている.が突出しているような最重症例(図2c)も多段カーブレンズのよい適応とはならない.突出範囲が大きい眼では,オプチカルゾーンの小さい多段カーブレンズが円錐部におさまらず,結果的に不安定な処方になりやすい.レンズデザインについては,重症度のみならず突出部位の大きさや位置に応じて柔軟に使い分けることが望ましい.C■ベースカーブの選択第一選択となるベースカーブ(basecurve:BC)はレンズのデザインによって異なる.球面レンズは,前眼部OCTに内蔵されたCHCL処方プログラムを用いると,精度の高いCBC選択が可能となる2)(図3).また,前眼部OCTがない場合は,Placido型角膜形状解析装置から得られるマイヤーリング像が参考となる(図4).一方,多段カーブレンズは,メーカー間のデザイン差が非常に大きいため,メーカーのフィッティングマニュアルを参考にするが,すでに球面CHCLを装用している場合は,そあたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C649図2多段カーブレンズより球面レンズのほうがよい適応となる症例前眼部COCTから得られたCInstantaneousCPowermap(Ca~c)とスケール(Cd).突出部位が暖色系で示されており,突出部位のなかでスケールでもっとも上方に示されている色の部分が頂点となる.突出部の頂点が中心から離れている場合(Ca,b)や突出範囲が広い場合(Cc)は,球面レンズのほうが安定したフィッティングが得られることが多い.軽度中等度重度若干の歪みを認めるのみリングの崩れが著明だが,外側のリングが投影外側のリングが投影されるされないBC:7.90mmBC:7.60mmBC:7.30mm図4マイヤーリング像に基づいた重症度分類とBC選択の目安マイヤーリング像に基づいて重症度をC3分類3)し,それぞれの重症度に応じてファーストトライアルレンズのCBCを選択する.次回は,引き続き「円錐角膜眼へのCHCLを処方」について,フィッティングの評価方法を中心に解説する.文献1)Santodomingo-RubidoCJ,CCarracedoCG,CSuzakiCACetal:Keratoconus:AnCupdatedCreview.CContCLensCAnteriorのフルオレセイン染色パターンに問題がなければ,球面CEyeC45:101559.C2022HCLのCBCも参考になる.筆者はエムカーブ(サンコン2)ItoiCM,CItoiCM,CHarigayaCACetal:CornealCRGPCcontactタクトレンズ)であれば球面レンズよりC0.6~0.9Cmm程Clens.ttingsoftwareforkeratoconusbuilt-inanteriorseg-mentCopticalCcoherenceCtomography.CEyeCContactCLens度小さいCBCから開始することが多い.いずれの方法にC48:503-508,C2022おいてもファーストトライアルレンズはあくまでも目安3)前田直之,岩崎直樹,細谷比左志ほか:円錐角膜の角膜形であり,以後のフルオレセインパターンの評価によるト状分類と臨床所見.臨眼45:1737-1741,C1991ライアンドエラーがもっとも重要である.図3前眼部OCTに内蔵された球面レンズの処方補助プログラムファーストトライアルレンズのCBCが,レンズの直径別に表示されている.

写真:EGFR阻害薬による角膜切迫穿孔

2023年5月31日 水曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史荻原由梨奈468.EGFR阻害薬による角膜切迫穿孔東京歯科大学市川総合病院眼科図2図1のシェーマ瞳孔領やや下方にCDescemet膜瘤(..)を認める.図1右眼の術前前眼部所見症例はCEGFR陽性腫瘍の術後再発に対してアファチニブを服用していたC76歳,女性.右眼に角膜潰瘍を発症したため,アファチニブを休薬し,抗菌薬治療を開始してC2カ月後.図3術前OCT(CASIA)画像270°方向に角膜の菲薄化を認める.図4術後前眼部所見全層角膜移植術+水晶体.外摘出術+眼内レンズ挿入術術後.(69)あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C6470910-1810/23/\100/頁/JCOPY症例は76歳の女性.2018年と2020年に右眼帯状角膜変性症に対して角膜表層切除(エチレンジアミン四酢酸使用)を受けた.2021年から上皮成長因子受容体(epidermalgrowthfactorreceptor:EGFR)陽性肺癌の術後再発に対してCEGFR阻害薬(アファチニブ)による治療が開始され,皮膚障害の副作用のため減量し,半量のC20Cmg/日を内服していた.2022年C7月,右眼角膜潰瘍と診断され当院を受診した.視力は右眼0.03(n.c.),左眼(1.2),眼圧は右眼C8CmmHg,左眼C13mmHg,右眼は角膜中央よりやや下方に潰瘍があり,非常に薄くなっていたが前房は保たれていた.Schirm-erテストCI法は右眼C13Cmm,左眼C8Cmm,角膜知覚検査は右眼C0.5Ccm以下,左眼C2.0Ccmと著明に低下していた.アファチニブによる角膜潰瘍と診断し,アファチニブの休薬と右眼ベガモックス点眼C1日C4回,タリビッド眼軟膏C1日C1回による治療を開始した.2カ月後,視力は右眼C0.02(n.c.),左眼(1.2),眼圧は右眼C7CmmHg,左眼12CmmHgで,右眼にCDescemet膜瘤と著明な角膜浮腫,Descemet膜皺襞があり(図1~3),治療用コンタクトレンズをC1週間装用したが改善しなかったため,右眼全層角膜移植術+水晶体.外摘出術+眼内レンズ挿入術を施行した(図4).角膜移植術後,肺癌の脳転移が増大傾向であったため,アファチニブを再開した.2023年C1月現在,右眼矯正視力(0.8)まで改善し,アファチニブの副作用もなく,経過良好である.アファチニブによる角膜潰瘍が生じた報告は,文献を渉猟するかぎりCMcKelvieらが報告したC1件のみである.しかし,ゲフィチニブやエルロチニブなど他のCEGFR阻害薬による角膜菲薄化や穿孔はC1件以上報告されている.McKelvieらは非小細胞肺癌の治療にアファチニブを使用したC85歳の女性に両眼性の角膜潰瘍と実質の菲薄化が生じたが,アファチニブの休薬,抗菌薬とステロイドの内服,点眼,治療用コンタクトレンズの装用により上皮欠損は治癒したと報告している1).Ibrahimらは肺腺癌治療のためゲフィチニブ内服中のC60歳の女性が片眼性の角膜穿孔を起こしたため,角膜移植を施行したと報告している2).Johnsonらは肺癌治療のためエルロチニブ内服中のC79歳の女性が遷延性角膜上皮欠損となり,エルロチニブ休薬後C2週間以内に改善したと報告している3).アファチニブによる角膜潰瘍の正確な機序はいまだに不明である.しかし,EGFR信号の変化に関連して角膜上皮の変化が起きていると考えられている.EGFR阻害薬はドライアイや角膜の創傷治癒の遅延と関係している4).EGFR阻害薬を内服中の患者に対しては,眼科医,内科医が慎重に患者の経過観察を行い,角膜潰瘍が生じた際にはCEGFR阻害薬との関連に早急に気づくこと,休薬を検討することが大切である.文献1)McKelvieCJ,CMcLintockCC,CElalfyM:BilateralCulcerativeCkeratitisassociatedwithafatinibtreatmentfornon-small-celllungcarcinoma.CCorneaC38:384-385,C20192)IbrahimCE,CDeanCWH,CPriceCNCetal:PerforatingCcornealCulcerationinapatientwithlungmetastaticadenocarcino-maCtreatedCwithge.tinib:ACcaseCreport.CCaseCRepCOpthalmolMedC2012:379132,C20123)JohnsonKS,LevinF,ChuDS:Persistentcornealepitheli-aldefectassociatedwitherlotinibtreatment.CorneaC28:C706-706,C20094)HoWL,WongH,YauT:Theophthalmologicalcomplica-tionsCofCtargetedCagentsCinCcancertherapy:whatCdoCweCneedCtoCknowCasCophthalmologist?CActaCOphthalmolC91:C601-609,C2013C

診断書・意見書の書き方

2023年5月31日 水曜日

診断書・意見書の書き方KeyPointsofWritingaMedicalCerti.cateandOpinion堀寛爾*I書類医師が交付する書類といえば,つまり診断書である.医師法第19条第2項に「(略)医師は,診断書(略)の交付の求があつた場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない」とある.診断名と簡単な経過だけを書く自由書式の診断書ならともかく,ここで取りあげるような公務所に提出する書類は,不慣れな様式で間違いがあってはいけないと心配になり,筆が進まない気持ちも理解できる.ただし,これらの書類は意見書としての性質が強く,公務所の判定,裁定の参考資料となるものであり,伝えるべき要点さえ押さえておけば些事にとらわれる必要はない.所見や検査結果については診療録に記載の通り転記すればよく,予後などの意見については記載日時点での医療水準に基づいて判断して構わない.つまり研究段階の治療法などがいくら世間を賑わせていても,具体的な臨床応用の時期が確定するまでは「改善は見込まれない」としてよい.以下に,制度自体については概略にとどめ,書類ごとの要点を解説する.なお,これらの書類の記載は,必然的に検査結果を踏まえ,経過観察を含めた療養上の指導管理を行うことになるため,ロービジョン検査判断料250点(保険点数は令和4年度診療報酬改定のもの.以下同様)の算定要件を満たしていると考えられる.II身体障害者診断書・意見書(視覚障害用)身体障害者手帳(以下,手帳)の診断書である(図1).手帳は障害者が諸々のサービスを受けるためのいわば入場券で,「障害者福祉は手帳申請から始まる」といってもあながち間違いではない.手帳を交付するのは都道府県の知事または政令市・中核市の市長であるため,地域によってわずかに様式が異なることもあるが,病院の所在地の様式で提出して受理されなかった,という話は聞かない.手帳の要点は,申請日現在の申請者の視機能が等級表にある障害程度にあり,傷病名からそれが妥当であることである.手帳の診断書は,身体障害者福祉法第15条指定医だけが書くことができる.1頁目の総括表は,他の障害用のものとおおむね共通の様式となっている.要点として,「①障害名」は視力障害,視野障害,またはその両方のみを記載する.具体的な疾患名は「②原因となった疾病・外傷名」に記載する.「③疾病・外傷発生年月日」は,明確なら記載するが,不明・不詳ならそのように記載して構わない.「④参考となる経過・現症」は疾病・外傷名を支持する情報を記載するとよい.「障害固定または障害確定(推定)」の年月日は,一定の障害程度に該当したから申請する,という建前から,診断書記載日で構わない.著変がないようなら,記載医療機関の初診日や,紹介状に記載の確定診断時期などの記載でもよい.「⑤総合所見」には「改善は見込まれない」ことや,再認定を要とするなら*KanjiHori:国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科〔別刷請求先〕堀寛爾:〒359-8555埼玉県所沢市並木4-1国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(59)637図1身体障害者手帳の様式記入例を赤字,コメントなどを他の色で提示する.QRコードは視覚障害者等級計算機のURL1)である.記載する.両眼中心視野角度および両眼中心視野視認点数は,4で割った商を四捨五入して整数で記入する.現症は傷病名と合致する所見を記載すればよい.白内障がある場合は,「⑤総合所見」の欄に「白内障の影響は軽微であり,手術によっても視力や視野の改善は見込まれない」などと記載するとよい.たとえば幼児や広義の発達障害,認知症などで検査が完遂できなかった場合に,測定できた数値をもって視機能を評価するのは適当ではない.「⑤総合所見」の欄に「黄斑を含む広範な網脈絡膜萎縮があり,視力はよくとも0.1を上回らないと考える」など客観的な情報を元にした意見を記載すれば,審査の際の参考となるだろう.また,詐盲が疑われる患者において,診断書記載医にそれが詐盲であるか否かを証明する責任はなく,それは更生相談所,ひいては知事・市長の責任の下にある.いずれにしても,現時点で判定不能であり時期をみて追加の検査が必要であることを説明しても,なお医師法第19条第2項を盾に診断書・意見書の交付を求められた場合は,前述の通り「該当しない」にチェックして発行してもよく,あるいは「⑤総合所見」に検査が完遂できていない旨を記載することでもよい.医師および医療機関は,悪質な詐病師の反社会的な行為の矢面に立つ必要はないのである.3頁目は視野検査結果の台紙であるが,検査結果の写しも一般的にはA4判のコピー用紙に複写すると思われ,糊づけするとむしろ収まりが悪い.添付書類の散逸や紛失を防ぐ目的では,ゼムクリップなどで留めれば十分である.筆者は添付忘れのないようにダブルチェックもしたうえで発行したはずの診断書について,役所から「視野図を添付してください」と照会が来た経験から,視野図と台紙の間で割印を捺す運用としている.とくに次節の障害年金などで,時期の異なる複数の現症日についての診断書を同時に発行する必要のある場合には,割印の位置や向きを変えることにより,どの診断書と添付資料がセットであるかという意思表示をしている.III国民年金・厚生年金保険の診断書(眼の障害用)障害年金の診断書は最終的に日本年金機構に提出するものであり,全国で一律の様式2)である(図2).用紙サイズはA3判であり,医療機関で診断書作成ソフトなどを使っている場合でも,原則A3判での印刷で,と指定されている.こちらは手帳の診断書と違って指定医や認定医などの要件がないため,眼科医であれば誰でも記載できる.障害年金は初診日と障害認定日が非常に重要である.1.初診日の時点で被保険者であり2.その前々月まで規定の保険料を納付しており3.障害認定日に一定の障害程度であった場合に,障害年金が受給できる.つまり,手帳は現在どうであるかが重要であるが,障害年金は認定日(初診日の1年半後)時点での状況もまたきわめて重要である.要点として,①欄に傷病名を記載する.「②傷病の発生年月日」欄は不詳であれば不詳との記載でよい.「③①のため初めて医師の診療を受けた日」欄が前述の通りとにかく重要である.診断書記載医療機関が初診医であるなら単純であるが,紹介元がある場合なら紹介状に初診日の記載があるか確認する.初診日がはっきりしないなら初診医に次節の受診状況等証明書の発行を依頼することになる.「④傷病の原因または誘因」欄は不明なら不明でよい.糖尿病網膜症の場合はここに糖尿病の記載が入り,その内科の初診日が障害年金でいう初診日になるため,ここにその日付を記入する.「⑤既存障害」欄は視覚障害以外の障害があるなら記載する.「⑥既往症」欄はその他の特記すべき既往症を記載する.「⑦傷病が治ったかどうか」欄は今後良くも悪くもならない傷病の場合は上段で,今後徐々に悪くなるものは下段の「症状のよくなる見込無」になる.眼科疾患の場合は,ほとんどの場合が下段の「無」になると思われる.⑧欄と⑨欄は診断書記載医療機関からの情報である(裏面の記入上の注意も参照のこと).「⑩障害の状況」欄からは現症を記載する.現症日の記入漏れに注意する.「(1)視力」「(2)視野」「(3)所見」は基本的には手帳のそれと同様である.「(4)その他の障害」については手帳にはない要件であるが,相当に悪い状態で厚生年金保険法の障害手当金相当の障害と記載する.該当のない場合は「該当なし」と記載するか斜線で欄を抹消する.「⑪現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄は「日常生活および(61)あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023639図2年金診断書と受診状況等証明書初診日と障害認定日の確定が最大のポイントである.QRコードは日本年金機構のそれぞれのページ2,3)である.労働に著しい支障がある」などと記載する.「⑫備考」欄は「改善は見込まれない」などと記載する.白内障について影響が軽微である旨もここに記載するとよい.⑬欄については障害程度が1級相当で改善が見込まれない場合には「永久認定で問題ないと考える」など記載してもよい.記載日,医療機関名,医師名を記載して,完成となる.障害状態確認届(障害年金の更新の診断書)はヘッダーに患者の住所や氏名,フッターに年金コードなどが印字された様式である.記載の要点は申請の診断書とおおむね同様であるが,すでに確定している初診日などの欄はなく,現症をありのままに書くだけである.障害年金は20歳前傷病の場合を除いてその受給に所得制限はない.意外と知られていないが働きながらでも受給でき,障害基礎年金だけでも2級なら老齢年金の満額と同等で,1級ならその1.25倍である.これに余命年数を掛けたものが生涯受給額と考えると,総額で数千万円が受給できることになる.障害厚生年金は「報酬比例の年金額」ということで平均標準報酬額と加入期間に比例するが,加入期間は300月未満であれば300月とみなす計算式であり,意外と大きな額となる.さらにいえば,障害年金は非課税であり,雑所得として課税対象となる老齢年金とは対照的である.IV受診状況等証明書障害年金の初診日を確定させるために重要な書類3)である(図2).基本的にはその傷病の初診医療機関から発行されるものであるが,カルテ破棄や廃業などで発行で640あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(62)図3補装具費支給意見書市区町村によって様式は異なる.かれているが,白杖は意見書を省略することができると規定されているので,この書類は義眼と眼鏡についてのものとなる.記載できるのは第15条指定医と視覚障害者用補装具適合判定医師研修会を修了した医師であり,難病患者にあっては難病指定医も記載することができる.国の制度であるが市町村が主体となって実施するので,自治体ごとに様式が異なる.制度の利用には,この意見書と補装具の処方箋(指示箋)および商品の見積書を添えて役所に提出することになる.氏名から手帳等級,現症,視力までは定型通り記載する.視野については有の場合は「求心性視野狭窄」など視野パターンを記載するとよい.処方する補装具が,制度のなかでどれに該当するかは確認が必要で,種目・名称などを意見書と処方箋で一致させることが重要である.よくある間違いは,いわゆる単眼鏡は「眼鏡弱視用焦点調整式」であり「焦点調節式」ではない.また,度入り色入り眼鏡は「眼鏡矯正用遮光機能の必要なもの」であり,「眼鏡遮光用掛けめがね式」は度なし色入り眼鏡のことをさす.使用効果見込として具体的に記載することと,他の手段ではその効果が得られないことを明記する.また,2個支給とする場合は,自治体に2個支給が認められるか問い合わせたうえで,2個支給が必要である旨とその理由を明記する.VI臨床調査個人票難病法の指定難病に関する診断書である(図4).難病指定医のみが書ける.難病ごとに様式が異なるが,いずれも患者の基本情報,診断基準と現症,重症度分類,人工呼吸器の情報,指定医の情報という作りになっており,基本的にはチェックボックスやマス目になった欄を埋めるだけで完成する様式である.新規と更新で同じ様式を用いる.細線欄は新規でも更新でも必須,太線欄は新規のみ必須とされている.点線欄は更新のみ必須とされているが,少なくとも眼科関連の臨床調査個人票で点線欄のあるものはないと思われる.難病情報センターのWebページ4)の臨床調査個人票は入力可能なPDFで掲載されているので,ここからダウンロードして入力し,プリントアウトすることもできる.難病法の対象となる難病患者は,診断基準を満たしていることと,一定の重症度を満たしていることが要件となる.たとえば告示番号90「網膜色素変性症」では重症度I度(矯正視力0.7以上,視野狭窄なし)は対象とならず,重症度II度(矯正視力0.7以上,視野狭窄あり)からが対象となる.ここで「視野狭窄ありとは,中心の残存視野がGoldmannI-4視標で20°以内」であることに注意が必要である.また,たとえば告示番号328「前眼部形成異常」,329「無虹彩症」,332「膠様滴状角膜ジストロフィ」ではIII度(罹患眼が両眼で,良好なほうの眼の矯正視力が0.3未満)からが対象となる.他の対象疾病についてもそれぞれ定められているので,記載の前には確認するべきである.対象となると,難病法のもとでの患者側のメリットとしては医療費の助成がある.また,障害者総合支援法では難病法の指定難病+aの疾病につき,手帳基準相当の視機能であれば手帳交付を受けていなくても障害福祉サービスなどを受けられる旨の規定がある.療養・就労両立支援指導料(初回800点)の算定要件のひとつである対象疾病には,難病法の指定難病が丸ごと含まれる.この指導料の算定には施設基準などの要件はないため,就労世代の難病患者には折をみて就労上の困りごとはないか確認するとよい.また,経過観察を含めて適切な時期の検査の必要性など療養上の指導を行うなら,難病外来指導管理料270点の算定も可能である.これはロービジョン検査判断料とも併せて算定できる.臨床調査個人票は毎年提出する必要があるが,医療費助成の自己負担上限額(月額)については世帯所得によって変わる.そのため前年所得に基づく市町村民税の課税額が確定した時期に臨床調査個人票が役所から送られてくることが多い.つまり,患者が医療機関に受診する時期が6.8月頃に集中する結果となる.障害状態確認届(障害年金の更新)が1年を通して分散することと対照的である.対象患者が多い医療機関にあっては,毎年当該時期にGoldmann視野検査などの検査予約枠の拡充も検討されたい.VII医師意見書・主治医意見書障害者総合支援法のもとで障害福祉サービス等を受け642あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(64)図4臨床調査個人票(090網膜色素変性症の様式)新規のときは太線欄と細線欄,更新のときは細線欄を埋める.QRコードは難病情報センターのページ4)である.図5障害福祉サービスの医師意見書介護保険の主治医意見書も似たような様式である.自由記述欄に視覚障害により必要なサービスの情報を記載する.

ロービジョンケアにおける多職種連携

2023年5月31日 水曜日

ロービジョンケアにおける多職種連携InterprofessionalCollaborationinLowVisionCare清水朋美*はじめに近年,超高齢社会や価値観の多様化などに伴った保健医療福祉をめぐる社会の変化は目覚ましく,多職種連携はますます重要視されている.ロービジョンケア(lowvisioncare:LVC)においてもまったく同様であり,連携の取り方も以前より多面的になってきている.しかも,自身が日常的に身を置いている医療以外の福祉,教育,行政などの他分野との連携が必要になる場面がしばしばあり,とくにLVC初心者には,連携といわれてもどこからどのように手を付けたらいいのか見当がつかず,困ることが多いのではないだろうか.一般的に,多職種連携は決して容易なものではないとされているが,筆者の経験上,LVCの連携にはいくつかのコツがあると思う.コツを押さえておくことで,不必要な苦手意識をもたずにすみ,むしろ円滑な連携に近づけるかもしれない.連携によってロービジョンの患者の前途が開けることも多く,連携のもつ力は想像以上に大きいのではないだろうか.本稿では,近年の連携を取り巻く知見と筆者が考えるコツを交えながら紹介する.I多職種連携と専門職連携教育多職種連携とはinterprofessionalwork(以下,IPW)のことであり,相互に尊重しあい,もちつもたれつの関係による協働の概念が土台となっており,真のチーム医療ともいわれている.IPWを実践する能力は,社会に出る前の卒前教育の段階から,その基盤教育となる専門職連携教育であるinterprofessionaleducation(以下,IPE)によって培うべきと提唱されている1).もともと,1988年に世界保健機関よりIPEを推奨する報告書が出版され,国際的に促進されるようになった2,3).一例だが,英国では医学部卒業時に有している専門職としての能力として,「コミュニケーションと対人スキル」が示されている4).さらに,多職種連携コンピテンシーという他の専門職と協働実践ができる能力と評価方法についても具体的に示されている.日本でも医学部卒業時の目標として「コミュニケーションとチーム医療」が示されているが,実際には他分野の学生とともに学ぶ機会は十分ではなく,一部の大学に限られている1).IPEは,「複数の領域の専門職者が連携およびケアの質を改善するために,同じ場所でともに学び,お互いから学び合いながら,お互いのことを学ぶこと」と定義されている1).複数の領域の専門職者のなかには,地域住民や当事者も含まれている.日本のIPEは十分に普及しているとはいえない段階だが,急速な少子高齢化を考えると,医療だけでなく,その人らしい生活を包括的に支援する福祉の視点から考えることができる医療人の育成が急務である.IPWをLVCに置き換えて考えると,患者および家族,眼科医療者,福祉,教育,行政など,あらゆる関連する人たちの技術と知識の提供を相互に行いながら,患者および家族が生活しやすくなるという共通目標を達成するために,関係者全員で行う協働活動といえる.そして,*TomomiNishida-Shimizu:国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部〔別刷請求先〕清水朋美:〒359-8555埼玉県所沢市並木4-1国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(51)629図1多職種連携のコア・コンピテンシー日本では協働的能力(collaborative)にとくに焦点が当てられている.(文献5より作成)役割,知識,意見,価値観を双方向に伝え合うことができるコミュニケーション力であり,円滑なCIPWを進めるためには欠かせない.架空例で考えると,医療では眼科医,視能訓練士,看護師,医療以外では歩行訓練士などがかかわる可能性がある.眼科医はこれまでの経過確認,視機能の評価を兼ねた診察,視能訓練士は保有視機能の検査,看護師は眼科以外のことも含めた日常生活全般の困り事の傾聴,がそれぞれの専門性から対応できる.現在の保有視機能の評価を行ったうえで,必要な補助具を選定と評価を行い,生活全般での困り事を関連スタッフ一同で把握することが可能になる.就労支援という側面も念頭に置く必要があり,歩行訓練士,ソーシャルワーカーをはじめとした医療以外の職種とのかかわりも生じるであろう.医療分野内部のCIPWが円滑でないのに医療以外の分野とのCIPWを円滑に進めるのは無理があり,日頃から自身の職場内職種間コミュニケーションを円滑にしておくことが,IPW全体をうまく進めるために重要である.C2.コア領域を支える四つの領域a.職種としての役割をまっとうする互いの役割を理解し,知識・技術を活かし合い,職種としての役割をまっとうする.眼科医,視能訓練士,看護師などの医療職のみならず,福祉分野の歩行訓練士,ソーシャルワーカー,教育分野の学校教諭,行政の事務担当者など,それぞれの役割を十分に理解し,それぞれの知識・技術を最大限生かすことである.架空例で考えると,医療分野では保有視機能の評価に基づいた補助具の選定と評価であれば対応できるが,今後の就労継続という最大の課題については,福祉分野の職員にかかわってもらう必要がある.身体障害者手帳は取得しているようだが,障害年金は請求できるのか,今後の視機能の状況によっては視覚リハビリテーションの専門的な訓練を受ける必要も生じるであろう.一例だが,就労支援の相談先として,おもに視覚障害の当事者が行っている認定CNPO法人タートルのロービジョン就労相談会への参加も検討できる可能性もある.円滑に連携を進めるためにもそれぞれがプロフェッショナルに役割をまっとうする必要がある.b.関係性に働きかける複数の職種との関係性の構築・維持・成長を支援・調整することができ,ときに生じる職種間の葛藤に,適切に対応することができる.架空例で考えると,たとえば看護師と歩行訓練士など,もともと医療と福祉の分野で異なる背景をもつ職種同士も,同じケースを中心に協働していく必要がある.職種間の関係性を良好に保つためにも,共通の話題をもつなど,日頃から積極的なコミュニケーションを図っておけると心強い.また,眼科医は全体の統括的役割を担い,視能訓練士,看護師に指示を出す立場にあるが,眼科医の発言が必ずしも正しいとは限らない.視能訓練士,看護師は,眼科医がいっているので……という理由のみでその指示通りに動くのではなく,自身でもその指示が適切か否かをともに考える力を磨き,必要時には意見を出し合いながらよりよい対応策をチームとして検討していく必要がある.Cc.自職種を省みる自職種の思考,行為,感情,価値観を振り返る力を意味する.振り返りをとおして,自身の強み・弱みを客観的に把握することで,他職種とコミュニケーションをとるうえで必要な自己コントロール能力を向上させることができる.架空例で考えると,福祉分野の歩行訓練士,ソーシャルワーカーから医療分野の視能訓練士,看護師に対して,就労継続のために眼科医に職場に提出する診断書を作成してほしいと依頼があっても,眼科医はどのような診断書なのかわからないので書けないというパターンがありえる.単に書けないと拒む前に,実際にどのような診断書なのか,メディカルスタッフの手を借りるとはしても,最終的には眼科医自身で確認を要するのではないだろうか.とくにロービジョンケアにかかわる診断書は,診断書の有無によって患者の就労に関する進退が決まるなど,重要な局面もあるので,不明な場合には断るという単純な解釈ではロービジョン患者の就労支援に支障をきたす.断るのであれば,具体的にどこでどのように作成を依頼すべきなのか,道筋を示す必要がある.「できない」「わからない」という言葉だけで止めないことも連携では大切なことである.また,断った経験があ(53)あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C631る場合には,どのようなときに断ったのかを自身でしっかり把握しておくとよいであろう.Cd.他職種を理解する他の職種の思考,行為,感情,価値観を理解し,連携協働に活かす.職種を越えて同じテーマで勉強会を行うというのも効果的である.架空例で考えると,合同カンファランスが相当する.つまり,眼科医,視能訓練士,看護師,歩行訓練士など,かかわった職種が一堂に会して,それぞれの立場で何をどのようにケアを進めたのかを共有し,課題を整理し合い,解決に向けて検討していく.リハビリテーション医療のなかでは日常的に多職種を交えた合同カンファランスが行われている.手術患者や入院患者を対象としたカンファランスは眼科でも日常茶飯事だが,LVC対応をしたケースがあれば,不定期でよいので,眼科医,視能訓練士,看護師などの眼科医療チームの中だけでも合同カンファランスを行ってみると,IPWも取りやすく,LVCに関する何か気づきがあるかもしれない.このように多職種連携コンピテンシーは比較的新しい概念であるが,LVCをチーム医療として考える際には大変役立つ内容が詰まっている.基本的なことだが慣れていないとむずかしいことも多く,日頃から学習できる機会を作っておきたい.CIII医療間連携とコツ眼科間連携,他科と眼科の連携が考えられる.医師同士を中心とした連携なので,医療以外との連携よりは手順がわかりやすい.つまり,紹介元は診療情報提供書を作成して患者に渡し,患者は作成された診療情報提供書を持参して紹介された医療機関を受診し,診察の結果を返書という形で紹介元に送るという基本の流れが定着している.これまでの多くは,検査,手術,入院,治療などが必要であるために他院紹介となることが多かったが,近年はCLVC目的で診療情報提供書を作成するということも増えていると思われる.LVC目的で紹介をする際のコツとしては,実施されていれば,古くてもよいので動的であれ静的であれ視野検査の結果を同封したほうが紹介先では参考になる.再検査を行う場合も多いが,最初の視機能評価の際に役立つ.また,紹介されてCLVCを行った側としても,LVCで行った結果は紹介元にフィードバックすることもLVCの啓発という観点からも必要であると考える.たとえば,新たにCGoldmann視野検査を行ったのであれば,その結果のコピー,LVCの中で紹介した福祉施設や患者団体があればその資料を同封して返書で送ると,紹介元の医師にとって新たな学びや気づきになり,ひとつの医療間連携になりえる.CIV福祉,教育,行政との連携とコツ医療以外の分野との連携はむずかしいといわれることも多い.実は,医療以外の福祉,教育,行政からみても医療は連携がむずかしいと感じられていることも多いことを知っておきたい.医療以外の分野から医療側へ連絡する際には,電話ひとつかけるにも,多忙な医療者にこんなことで連絡をしたら叱責されないだろうかなど,さまざまな気がねが生じやすい.医療側から医療以外に連絡をする際にも,そもそもどこの部署の誰に何を聞いたらいいのかなど,やはり気がねが生じやすい.気がねの原因として考えられるのは,文化の違いが大きいのではないだろうか.同じ分野であれば,1日のなかの時間の流れや担当者なども何となくでもイメージがつくが,分野が違うと想像してもむずかしいことが多い.いまは幸いにも全国の各都道府県でスマートサイト(ロービジョンケア紹介リーフレット)が整備されており,以前よりは福祉,教育,行政との連携がとりやすくなったところも増えてきたと思われるが,まだ十分とはいえない.しかし,各都道府県に何人かは眼科医や視能訓練士でロービジョンネットワークの仕事に従事している人がいるはずであり,まずはその人たちと地域のロービジョン関連の勉強会などを通して顔見知りになるのも一案である.また,とくに福祉,教育については,医療からの見学,問い合わせは予想以上に歓迎されることが多いため,行けるところには見学を兼ねて行ってみるのもよいであろう.行政については,人事異動が必ずあるので担当もしばしば変わるが,不明な点については積極的に電話で聞いてみるとよい.関係性ができてくれば,逆に行政の現場から眼科関連の不明点を電話で質問されること632あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(54)表1疾病によるおもな患者団体団体名CURL二次元バーコード日本網膜色素変性症協会(JRPS)Chttp://jrps.org/加齢黄斑変性友の会Chttps://sites.google.com/site/amdtomonokai/Chome?authuser=0Leber病患者の会Chttp://leber.web.fc2.com/緑内障フレンドC・ネットワークChttp://www.gfnet.gr.jp/ベーチェット病友の会Chttps://www.behcets-jp.net/サルコイドーシス友の会Chttps://www.ne.jp/asahi/h/sato/日本円錐角膜患者会Chttp://xn--w6q358i.fn1j.jp/C表2患者背景によるおもな患者団体団体名CURL二次元バーコード日本視覚障害者団体連合(日視連)C視覚障害者自身の全国組織http://nichimou.org/タートルChttp://www.turtle.gr.jp/視覚障害者の就労支援をおもに行っている団体視覚障がい者ライフサポート機構“viwa”Chttp://www.viwa.jp/視覚障害者やその家族,視覚障害関係の仕事をしている人たちを対象とした会.若い世代が多く,子育てや就学,就労に関する情報が多い.視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)Chttp://yuimaal.org/視覚障害をもつ医師やメディカルスタッフの会日本弱視者ネットワーク(弱視者ネット)Chttps://jakumonken.com/弱視者(ロービジョンの人)を対象にした会全国社会福祉協議会(全社協)Chttps://www.shakyo.or.jp/各地にある社会福祉協議会(社協)の中央組織.各地の社協は地域の患者グループ情報をもっていることがある.図3ロービジョン連携手帳の表紙A5サイズの見開きノート形式であり,14ページで構成されている.(日本ロービジョン学会連携委員会提供)

デジタルデバイスを用いるロービジョンケア

2023年5月31日 水曜日

デジタルデバイスを用いるロービジョンケアLowVisionCarewithDigitalDevices三宅琢*和田浩一*はじめに視覚障害者は移動障害を伴う情報障害者と表現されてきた.一方でロービジョンや全盲の視覚障害者がスマートフォン(以下,スマホ)やスマート家電を利用して,生活情報をインターネット経由で入手,発信する事例や視覚障害になった時点でデジタルデバイスを日常的に利用しているデジタルネイティブな事例が散見されるようになった.背景としてスマホやタブレット型パソコン(PC)をはじめとした情報通信技術(informationandcommunica-tiontechnology:ICT)端末は,障害の有無にかかわらず現代人の生活にとって情報の入手・発信デバイスとして欠かせない存在となったことが考えられる.本稿では上記状況を踏まえて患者のニーズの代表である視認(見たい),識字(読みたい),識別(知りたい)に関する困難さに応えるスマホやタブレット端末の紹介に加えて,スマート家電やウェアラブルデバイスの活用法について解説する.I視認ニーズに対する活用視認においては,視認対象を最適な拡大率およびコントラスト・輝度で視認できるまでの工程が少ないことが重要である.最新の端末では,背面カメラを利用して拡大鏡アプリを,音声コマンドによる操作で画面の操作に依存せずにアプリを起動することが可能である.拡大鏡アプリでは視認対象を静止させ,任意の拡大率まで拡大図1拡大鏡アプリを利用して対象を静止後,拡大し色調・コントラストなどを調整して視認している様子コントラスト強調,色反転により表示し視認している様子.アプリ名:明るく大きく,価格:無料.縮小して視認することや,コントラストや色調などの調整を行い,個別の視認特性や嗜好性に合わせた最適な視認環境を個別に設定することが可能である(図1).視認性を低下させる代表的な理由としては,1)対象物との距離がある,2)小さくて見えない,3)コントラストが悪い,4)視野が狭く全体の把握ができないなどがあげられる.原因に合わせて,1)望遠ズーム・デジタル拡大機能,2)拡大鏡アプリ利用,3)広角撮影機能などのスマホのカメラ機能を紹介することで困難さを軽減できる(図2).*TakuMiyake&KoichiWada:公益社団法人NEXTVISION〔別刷請求先〕三宅琢:〒650-0047兵庫県神戸市中央区港島南町2-1-8公益社団法人NEXTVISION0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(45)623abc15倍(ズーム)1倍(等倍)0.5倍(広角)図2デジタルズーム(a),等倍率(b),広角レンズ(c)で同一距離の対象を撮影した様子倍率により表示される範囲は大きく異なり,視野狭窄を伴う事例では広角レンズが有効に機能する.図3スマホの背面カメラを利用したOCR機能アプリ撮影された風景の状況説明,撮影画像内に存在するテキスト情報,顔認証による個人識別などを音声情報として受け取ることが可能である.アプリ名:Sullivan+,価格:無料,画像元:AppleAppStore.図4左から6.7インチ,8.3インチ,12.9インチの端末における電子書籍の比較図5背景カメラ機能を利用した物体認証アプリテキストの音声化,顔認証,紙幣識別,製品情報,照度レベル,色情報などを音声情報へと変換することが可能なアプリ.アプリ名:SeeingAI価格:無料,画像元:AppleAppStore.図6オンラインで支援者を繋ぎビデオ通話機能を利用して遠隔で視覚支援を受けられるアプリダウンロード後に視覚補助の支援を必要とする人か支援をするボランティアかを選択することで利用ができる.アプリ名:BeMyEyes.Helpingblindsee,価格:無料,画像元:AppleAppStore.図7もっとも普及しているスマートスピーカーであるAmazon製のechoシリーズ図8スマートウォッチ「Alexa」と話かけることで音声アシスタントを利用可基本設定内の障害者補助機能であるアクセシビリティ機能能である.左から標準タイプのEcho第4世代,高音質で,拡大表示や音声読み上げなどにも対応しており,弱視で立体音響に対応したEchoStudio.や全盲の患者でも操作が可能である.製品名:AppleWatchSeries5.図9ウェアラブルデバイスで掲示物を読み上げている様子AI搭載のウェラブル視覚支援デバイス,左からOrCamMyEye2,EnvisionGlass.

歩行に関するロービジョンケア

2023年5月31日 水曜日

歩行に関するロービジョンケアLowVisionCareforOrientationandMobility別府あかね*はじめに視覚に障害があると,日常のさまざまな場面で支障をきたしてくるが,おもな困りごととして,読み書きと歩行があげられる.「歩行訓練」や「白杖」と聞くとまったく見えない全盲の人のケアのイメージが強いかもしれないが,ロービジョンの人にとっても必要なロービジョンケアのひとつである.I視覚障害者の歩行視覚障害者の歩行というと白杖というイメージであると思うが,白杖歩行以外にも,屋内では白杖を使用しない屋内歩行や,介助者と同行する手引き歩行,盲導犬との歩行など,方法はさまざまである.また,最近ではさまざまな歩行デバイスが登場しており,白杖と併用するなど視覚障害者の歩行を取り巻く環境もIT化が進んできている.II歩行訓練目の見えない・見えにくい視覚障害者が歩行するとき,白い杖を持つだけで簡単に自由に歩行できるわけではない.視覚障害者の歩行訓練は英語で「orientation&mobility」といわれ「定位と移動」と表現されている.このように単なる歩くという意味の歩行ではなく,目的地まで安全・安心して移動するために,周囲の環境を確認しながら歩くことを意味する.そのため,視覚障害者の歩行訓練は白杖の持ち方や振り方といった白杖の操作技術だけでなく,目的地までの歩行ルート上の目印(ランドマーク)を確認し,今いる場所がどこかということを常に確認しながら移動をするための訓練となる.また,白杖を使用した単独歩行についても,完全に一人ですべてを歩くことだけをめざすのではなく,援助依頼をすることも含まれている.援助依頼についても歩行訓練の中で実施する場合がある.IIIロービジョン者の歩行訓練視力や視野など活用できる保有視覚がどの程度かにより,困りごとは異なってくる.ロービジョン者の歩行訓練は保有視覚を活用しながら,白杖はシンボル的な活用のみでよいか,また歩行する環境などにも合わせて,一人ひとりのニーズに合わせて実施していく.そのため訓練時には,見え方を把握することはとても大切である.たとえば,道路の白線は視認できるかどうか,信号機の色は判別できるのか,信号機の位置を把握するのに視野障害の影響はあるのか,これらの見え方は天候によって左右されるのかといったことを丁寧に確認しながら行う.眼科では,診察時や視力検査時に「信号が見えにくい」「車止めにつまずく」「目の前を自転車が横切ってびっくりした」「下りの段差が見えなくて怖い」「溝に片足を落とした」など,具体的なエピソードを聞く機会があるのではないだろうか.まずは眼科でできるロービジョンケアとして,所持眼鏡の矯正度数の確認や羞明があれ*AkaneBefu:岡本石井病院眼科(歩行訓練士・視能訓練士)〔別刷請求先〕別府あかね:〒425-0031静岡県焼津市小川新町5-2-3岡本石井病院眼科0910-1810/23/\100/頁/JCOPY(35)613ば遮光眼鏡の処方を行い,保有視覚を最大限に生かせるよう光学的なケアを行うことが第一歩である.所持眼鏡のチェックはどこのクリニックでもできることなので,ロービジョンケアを実施していない眼科でもぜひ確認をお願いしたい.眼鏡処方においては,矯正視力が裸眼視力とあまり変わらない場合に,眼鏡をしても意味がないと眼鏡処方をしてもらっていないロービジョンの人もいるが,拡大鏡を使うときも屈折矯正をきちんとしてから補助具を使うということはロービジョンケアの基本である.裸眼のほうが楽で見やすいという人もいるのでケースバイケースであるが,最初からあきらめずに眼鏡処方についても試していただきたい.そして,遮光眼鏡の処方ができない場合は,近隣のロービジョン外来のある眼科につないでもらいたい.眼科で視機能を最大限活用できるようにケアしてから歩行訓練士につなぐと,視覚を活用しながらの歩行訓練を効果的に行うことができる.また,高齢者の患者の場合,一人では外出しないという患者も少なくない.そのような場合でも,「ゴミ箱を蹴飛ばしてしまう」「引き戸が開いていると思ったら半分閉まっていて肩をぶつけた」など家の中での移動に不便を抱えていることもある.年齢に限らず,その患者の生活環境の中で,見えにくさのために困っていることがあれば,安全に安心して移動できるように,歩行訓練についての情報提供をしていただきたい.IV歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)視覚障害者の歩行訓練をする「歩行訓練士」という職種がある.視覚障害生活訓練等指導者ともいわれ,歩行訓練のみならず,調理訓練や掃除などの日常生活動作訓練や,文字の読み書き・点字や音声パソコンなどのコミュニケーション訓練など,見えない・見えにくいことが原因での生活の不便を解消するための視覚リハビリテーション全般を担っている.歩行訓練士は,日本で養成している機関が2カ所しかなく,養成課程の修了者は1,000人近くいるが,実際に職場で歩行訓練に携わっているのは半分の500人くらいといわれている.まだ1人もいない県もあるが,日本盲導犬協会など広域に訪問リハビリテーションを実施している施設がカバーしている状況である.また歩行訓練士は,視覚障害情報提供施設(点字図書館のある場所)などの福祉機関や視覚特別支援学校(盲学校)などの教育機関に在籍していることが多い.最近では眼科に在籍している歩行訓練士も少しずつ増えてきている.日本眼科医会が各都道府県の眼科医会に働きかけて整備された「スマートサイト」というロービジョンケア紹介リーフレットがある.現在はすべての都道府県で整備されており,このリーフレットには,各都道府県の歩行訓練士のいる施設なども紹介されている.スマートサイトがまだ眼科に設置されていない場合は,ぜひ地元の眼科医会から取り寄せて情報提供できるように整備していただきたい.V白杖身体障害者福祉法では「視覚障害者安全つえ」と表現されているが,一般的には白杖(はくじょう)とよばれている.白杖には三つの役割がある.1.白杖の役割a.安全の確保1.2歩前方を確認することにより,障害物を発見するバンパーの役割で身体を保護する.この役割を果たすためには杖の長さが重要である.一般的には白杖を直立したときに脇の下あたりにくる長さが必要である.歩行速度が速い人や,成長期の子どもの場合などは,基本の長さより少し長めの杖を使用する場合がある.b.情報の入手段差の発見や路面の変化,電柱や標識のポールなどの目印の情報を得ることができる.溝蓋を白杖で触れたときの音やスーパーの入口のマットなどから位置情報として情報を入手できる.また,道路横断後に歩道と車道の境の縁石を確認することによって「歩道に到着した」という情報から安全に道路横断を終えたということを確認している.c.シンボルの役割運転手や歩行者など,周囲の人に見えない・見えにくいことを知らせ,援助依頼や周囲の見守りなどの効果が614あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023(36)図1いろいろな種類の石突き(チップ)左からノーマルチップ,パームチップ(キノコ型),ティアドロップ,ミズノチップ(ティアドロップ),ローラーチップ.(写真は高知県視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン提供)図2一般的な白杖直杖(左)と折りたたみ式の白杖(右).(写真は高知県視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン提供)図3折りたたんだ白杖一般的な白杖の折りたたみ式(左)とシンボル用の白杖を折りたたんだ状態(右).比較するとシンボル用のほうがコンパクトである.(写真は高知県視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン提供)図4身体支持用の白杖長さ調節式で72.92cmまで9段階で調整可能である.このほか,スライド式で自由に長さが調節できるタイプや,購入時に長さを決めて注文するタイプなどがある.(写真は高知県視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン提供)図5盲導犬との歩行交差点で横断前の位置で停止している様子.(写真は関西盲導犬協会提供)図6暗所視支援眼鏡HOYAMW10HiKARI新モデル本体.コントローラーはケーブルで本体とつなががっている.(写真はViXion株式会社提供)図7暗所視支援眼鏡の見え方左から市販のビデオカメラの見え方,MW10標準カメラの見え方,MW10広角カメラレンズでの夜間の横断歩道の見え方の比較.(写真はViXion株式会社提供)図8視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」四角い箱の部分は5cm×4cm,厚みは1cmで,スマホとの通信機器やバッテリーが内蔵されている.靴の中に入れる部分は柔らかく,カカトから足の甲まで,足の側面に沿うようになっているため,足の裏には何もない形状となっており,重さは100g以下と軽い.(写真は株式会社Ashirase提供)図9スニーカーに装着した「あしらせ」装着時は四角い箱の部分のみが靴の外に出る.白色以外に青色もある.(写真は株式会社Ashirase提供)図10NaviLensタグの活用事例神戸アイセンター2階のビジョンパーク入り口にある検温と手指消毒につけられたNaviLensのタグ.専用アプリを開いてタグを読み取ると「2メートル先,消毒液」と消毒液があることとその距離について音声で情報を得ることができる.(写真は公益社団法人NEXTVISION提供)図11コード化点字ブロックの活用事例すでに敷設されている点字ブロックにコードを設置した実証実験中の点字ブロック.写真は高知県のオーテピア声と点字の図書館の入り口の点字ブロック.専用アプリで読み取ると点字図書館やトイレの位置を音声で情報を得ることができる.(写真は高知県視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン提供)