●連載◯131監修=安川力髙橋寛二111OCTアンギオグラフィでみる抗VEGF薬と木許賢一大分大学医学部眼科学講座光線力学的療法の効果判定光干渉断層血管撮影(OCTA)は低侵襲・簡便に黄斑部新生血管(MNV)の活動性を評価することができる.しかし,導入期に抗VEGF薬を3回連続注射してもMNVは再拡大するため,実臨床においてOCTAの所見のみを再治療の指標とすることはむずかしい.光線力学的療法の併用は単独治療よりもMNVの血管退縮効果が強く,治療回数を少なくできるが,長期観察中はMNV末端のループ形成などの構造変化に注意すべきである.はじめに光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA)による滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の黄斑部新生血管(macularneovascularization:MNV)の活動性の評価についてCoscasら1)は,1)扇状,車輪状の形態,2)多数の微細毛細血管に分岐,3)吻合やループ形成,4)末端の形状がアーケード状(枯れ木のようでない),5)病巣周囲のハローのうち,少なくとも三つ以上満たせば活動性があるとした.しかし,実臨床では個々の患者の血管構造をOCTAで詳細に解析し,治療方針を決定するのは困難で,通常の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による滲出の有無で治療方針を決定することがほとんどである.抗VEGF治療後のMNVは,治療後2週間前後にOCTAで血流が途絶え約4週間で再増殖が始まり2,3),その後滲出変化をきたすとさ網膜外層脈絡膜毛細管板れる.Takeuchiら4)の検討でも,初回の抗VEGF薬は未治療MNVの血管面積と血管分枝密度を減少させるが,抗VEGF薬を3回連続投与したにもかかわらず,MNVは再拡大していることが明らかになっている.光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)を併用するとMNV再疎通までの期間は抗VEGF薬単独治療よりも長いが,OCTで滲出のない時期に再治療の必要性をOCTAだけで判断するのはやはりむずかしい.自験例を提示して再治療時のOCTA像を検討してみる.症例1:Pachychoroidneovasculopathy47歳,男性.右眼視力(0.8).アフリベルセプト硝子体内注射(intravitrealinjectionofaflibercept:IVA)を3回連続で行ったが,効果が2カ月もたないため,PDTとラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealinjectionofranibizumab:IVR)の同日投与(PDT+IVR)を選択した.術前の網膜外層にみられた血管構造は術翌日には消網膜外層脈絡膜毛細管板図1Pachychoroidneovasculopathyに対するPDT+IVR後のOCTA変化治療翌日には黄斑部新生血管(MNV)は描出されず,光線照射野の脈絡膜毛細管板の低灌流が明瞭に観察される(.).17カ月目の再発時にMNV耳上側に円形のループ構造が形成されているのがわかる(.).(79)あたらしい眼科Vol.40,No.5,20236570910-1810/23/\100/頁/JCOPY術前術後6カ月図2ポリープ状脈絡膜血管症に対するPDT+IVBr+STTA後のOCTA変化黄斑部新生血管(MNV)構造は治療後半年経過しても消退したままである.22カ月目には再拡大したMNV末端がアーケード状になってきた(.).失しており,光線照射野の脈絡膜毛細管板の低灌流が明瞭に観察された(図1).この脈絡膜毛細管板の低灌流はPDTが適切に行われた確証でもある.Bスキャンでは急性滲出性黄斑症とよばれるPDT後の滲出変化が著明である.1カ月後にはMNVは再灌流しているが,MNVの中の微細な血管は消退している.以後16カ月再燃なく経過したが,17カ月目に漿液性.離とフィブリン析出をきたした.再発前後のOCTAを比較してみるとMNV耳上側に円形のループ構造が形成されているのがわかる(図1).IVAの追加で翌月にはこの血管構造は消退した.長期経過観察中はMNVの末端構造の変化に注意すべきことを示す症例である.症例2:ポリープ状脈絡膜血管症62歳,女性.初回治療でPDTとブロルシズマブ硝子体内注射(intravitrealinjectionofbrolucizumab:IVBr)とトリアムシノロンTenon.下注射(sub-Ten-on’striamcinoloneacetonideinjection:STTA)を併用した(PDT+IVBr+STTA).治療前にみられたMNV658あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023構造は治療後半年経過しても消退したままである.OCT上は滲出変化のないまま無治療で経過したが,22カ月目にはMNVは再拡大している(図2).MNV末端がアーケード状になってきたため今後は注意が必要である.文献1)CoscasGJ,LupidiM,CoscasFetal:Opticalcoherencetomographyangiographyversustraditionalmultimodalimaginginassessingtheactivityofexudativeage-relatedmaculardegeneration.Retina35:2219-2228,20152)LumbrosoB,RispoliM,SavastanoMC:Longtudanalopti-calcoherencetomography-angiographystudyoftype2nativechoroidalneovascularizationearlyresponseaftertreatment.Retina35:2242-2251,20153)HuangD,JiaY,RispoliMetal:Opticalcoherencetomog-raphyangiographyoftimecourseofchoroidalneovascu-larizationinresponsetoanti-angiogenictreatment.Retina35:2260-2264,20154)TakeuchiJ,KataokaK,ItoYetal:Opticalcoherencetomographyangiographytoquantifychoroidalneovascu-larizationinresponsetoaflibercept.Ophthalmologica240:90-98,2018(80)