サイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎の病態解明白根茉利子図2眼内液から検出したUL40の特徴眼内から検出したCUL40は,NK細胞抑制能が強く,ホストのCHLAクラスⅠと一致するという特徴があった.サイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎の現状近年の眼内液CPCR検査の普及により,明らかな免疫低下のないホストにサイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎(cyto-megalovirusanterioruveitis:CMV-AU)を生じることが明らかとなりました.CMV-AUはわが国の感染性ぶどう膜炎の最多の原因であるにもかかわらず,根治的治療はなく,病態もほとんどわかっていません.一方,日本を含む東アジアで高頻度にみられることがわかっており,発症の地域差があることから,ウイルス・ホストの遺伝的背景が病態に関与していると考えられています.CCMV-AU発症におけるCMV蛋白UL40の意義CMVは初感染後,血球に潜伏感染し,血行性に眼組織へ進展しますが,眼組織には血管内皮による血液C-眼バリアがあることから,限られたウイルスのみ眼内へ進展していることが考えられます.CMVは約C250の遺伝子を有していますが,その多くは免疫逃避にかかわることが知られており,なかでもCUL40のシグナルペプチド(UL40signalpeptides:CUL40SP)は免疫制御に重要な蛋白として近年報告されました1).筆者らは患者の眼内液と末梢血で次世代シーケンスによるCUL40SP多型解析とホストの免疫機能解析を行い,眼内液に特徴的なCUL40SPがCNK細胞活性を強く抑制すること,患者CHLAクラスⅠCSPと一致することを見出し,これらのCUL40SPをもつCCMVが,中枢性・末梢性免疫回避を介し,血液C-眼バリアを越えて眼内へ侵入する可能性を提唱しました2).①NK細胞抑制能が強いNK細胞抑制能末梢血NKCD8+T免疫寛容眼内抑制UL40SPSP1SP3SP2CMVの眼内進展(91)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY九州大学大学院医学研究院眼科学今後の展望他のCCMV遺伝子についても眼内液と末梢血中で多型解析および免疫学的意義を検討することで,CMV-AUのより深い病態理解をめざします.そして将来的に治療予後予測や新たな治療法の開発につながることを期待しています.文献1)TomasecP,BraudVM,RickardsCetal:Surfaceexpres-sionCofCHLA-E,CanCinhibitorCofCnaturalCkillerCcells,CenhancedCbyChumanCcytomegalovirusCgpUL40.CScienceC287:1031-1033,C20002)ShiraneCM,CYawataCN,CMotookaCDCetal:IntraocularChumanCcytomegalovirusesCofCocularCdiseasesCareCdistinctCfromCthoseCofCviremiaCandCareCcapableCofCescapingCfromCinnateCandCadaptiveCimmunityCbyCexploitingCHLA-E-mediatedperipheralandcentraltolerance.FrontImmunol13:1008220,C2022図1サイトメガロウイルス(CMV)の眼内進展機序血管内皮でのCNK細胞やCCD8T細胞による抗ウイルス応答を免れたCCMVが眼内へ進展する.あたらしい眼科Vol.41,No.6,2024C695