写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史484.Stevens-Johnson症候群と常在菌反応性坂田理恵東京歯科大学市川総合病院眼科眼表面炎症図1慢性期のStevens-Johnson症候群の角膜混濁結膜充血と全周性に新生血管を認める.図3図1のフルオレセイン染色所見ドライアイを伴うため水濡れ性が悪い.図4瞼結膜所見新生血管と瞼結膜瘢痕を認める.図5治療開始1カ月後の所見結膜充血の改善を認める.(53)あたらしい眼科Vol.41,No.9,2024C10950910-1810/24/\100/頁/JCOPY市販感冒薬の内服を契機にStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyndrome:SJS)を発症した症例を提示する.患者は57歳,女性.20歳時に市販感冒薬を内服しSJSを発症した.50歳ごろ,右眼視力低下と充血を自覚し近医を受診した.点眼治療(クロラムフェニコール点眼液・両眼C1日C2回,防腐剤無添加人工涙液点眼液・頻回)を受けたが改善せず,7年後(57歳)に当科を紹介受診した.初診時矯正視力は右眼C0.1,左眼C1.0で,両眼に結膜充血があり,右眼には瞼結膜瘢痕と全周性に新生血管,角膜傍中心に混濁を認めた(図1~4).結膜.培養からCCorynebacteriumとCSerratiaが検出され,モキシフロキサシン点眼液を処方し,結膜充血は改善した(図5).1年後の再診時,再度右眼の充血を訴え,結膜.培養からClevo.oxacin-resistantCCoryne-bacteriumが検出された.感受性のあるセフメノキシム塩酸塩点眼液に変更し充血は改善した.SJSは全身性炎症性疾患で,粘膜や皮膚に影響を与える多系統炎症性疾患である.急性期には発熱などの感冒様症状の数日後に全身の皮膚に多形滲出性紅斑と水疱が,眼や口唇・口腔内などの粘膜移行部にびらんと出血が出現し,さらには爪囲炎を伴う.これらの症状はC4.6週間持続する.眼症状としては,急性期には皮疹,粘膜疹とほぼ同時に両眼性の重度の結膜充血,角膜上皮欠損,偽膜形成を生じる.慢性期には重度のドライアイ,眼球癒着,睫毛乱生,角膜上皮幹細胞疲弊症,角膜混濁などをきたし,著しい視力障害を伴うこともある.SJSでは慢性期の眼合併症が進行し失明に至ることもあり,眼表面の治療が非常に大切である.ドライアイには人工涙液の頻回点眼に加えて,ムチン産生亢進ならびに抗炎症作用を有するレバミピドや涙点プラグ,涙点焼灼,睫毛乱生には睫毛抜去や毛根切除,瞼縁の角化には口唇粘膜移植などで総合的に治療する.これらを放置すると眼表面の炎症,感染症,遷延性上皮欠損など生じて瘢痕性変化や角膜上皮幹細胞疲弊症,角膜混濁が進行する可能性がある.SJSでは眼表面炎症と眼表面感染症を生じやすいことに加え,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantCStaphylococcusaureus:MRSA)またはメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusCepidermidis:MRSE)を保菌している場合があり,それが原因となって眼表面が悪化することがあるので注意を要する1).また,結膜.常在細菌であるCCorynebacteriumなどが起炎菌となることがある.通常では眼表面には常在微生物叢が存在し,眼表面の自然免疫が機能しているため病原性を有さないが,SJSなどの場合は自然免疫機構の破綻により病原性の低い常在細菌でも感染を生じる2).本症例では結膜.培養の結果,Corynebacteriumが検出され,適切な検査と抗菌薬使用で改善を得た.結膜.常在菌でもキノロンに対する耐性率は高く,慢性結膜炎の起炎菌になることがある3).眼後遺症を伴うCSJS患者の眼表面の常在菌を,次世代シークエンサーを用いてマイクロバイオーム解析で調べたところ,SJS患者は健常者と比較し眼表面の細菌の多様性が減少しており,常在細菌の構成も異なることがわかった.SJS患者ではCCorynebacterium属,Neisseri-aceae属,Staphylococcus属,および他の細菌の固有種が優勢なC4つのグループに分けられ,慢性期CSJSの眼表面の常在細菌の多様性が減少しているが,その中でもCorynebacterium属が多いと報告されている4).SJS患者の眼表面炎症,感染症において定期的な眼脂と結膜.培養の擦過を行い,キノロンなどの耐性菌の有無を把握し,適切な抗菌薬治療を行うことが重要である.そして眼表面の炎症管理,感染の発症予防を行い,感染症の発症時期に迅速に対応し治療することが大切である.文献1)外園千恵,上田真由美:Stevens-Johnson症候群の眼科的対処.アレルギー(日本アレルギー学会誌)C57:995-999,C20082)UetaM,KinoshitaS:Ocularsurfacein.ammationisregu-latedCbyCinnateCimmunity.CProgCRetinCEyeCResC31:551-575,C20123)荻原健太,北川和子,神山幸浩ほか:ディスク法で多剤耐性を示したコリネバクテリウム状グラム陽性桿菌が分離された前眼部感染症のC5症例の検討.あたらしい眼科C37:C619-623,C20204)UetaCM,CHosomiCK,CParkCJCetal:CategorizationCofCtheCocularCmicrobiomeCinJapaneseStevens-JohnsonCsyndromepatientsCwithCsevereCocularCcomplications.CFrontCCellCInfectMicrobiol11:741654,C2021