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眼で見つかる免疫疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる免疫疾患ImmuneDisordersRevealedThroughOcularManifestations松宮亘*はじめに眼は中枢神経系と血管・免疫系に富む特殊な臓器であり,全身の免疫異常や血管炎症が鋭敏に反映される「全身疾患の窓」としての役割を担う.とくに免疫・炎症性疾患においては,関節,皮膚,腸管など他臓器症状に先行して眼症状が出現することも少なくなく,眼科医が最初に疾患の存在に気づく機会も多い.実臨床では,原因不明のぶどう膜炎,強膜炎,網膜血管炎,視神経障害などを契機に,背後に潜む全身性免疫疾患が診断される例をしばしば経験する.本稿では,「眼で見つかる免疫疾患」という視点から,サルコイドーシス,Behcet病,Vogt-小柳-原田病の三大疾患を除く,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophilcytoplasmicantibody:ANCA)関連血管炎(ANCA-associatedvasculitis:AAV),関節リウマチ(rheuma-toidarthritis:RA),全身性エリテマトーデス(system-iclupuserythematosus:SLE),大血管炎(巨細胞性動脈炎・高安動脈炎),炎症性腸疾患(in.ammatoryboweldisease:IBD),脊椎関節炎の6疾患をとりあげ,それぞれに併発するぶどう膜炎を含む代表的眼病変の特徴,眼症状の臨床的意義,そして全身症状に先行しうる可能性について概説し,日常診療における早期診断のポイントを整理する.I抗好中球細胞質抗体関連血管炎抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)は多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosiswithpolyangiitis:GPA),顕微鏡的多発血管炎(microscopicpolyangiitis:MPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilicgranulo-matosiswithpolyangiitis:EGPA)を含む小.中型血管炎であり,全身臓器に多彩な炎症をきたす.眼病変はAAVの重要な臓器障害の一つであり,GPAでは30%以上,EGPA・MPAでは約5.10%に認められる.GPAでは眼病変が初発症状となる割合は8.16%前後と比較的高いのに対し,EGPAでは約5%前後,MPAでは1.3%未満とされ,眼初発はGPAに特徴的である.EGPAやMPAでは多くの場合に喘息,好酸球増多,腎炎,肺病変などの全身症状が眼症状に先行するが,眼病変が全身症状に先行する例も少なくなく,診断の契機となることがある1,2).AAVにおける前眼部病変は結膜炎・上強膜炎・強膜炎・周辺部角膜潰瘍・虹彩炎(前部ぶどう膜炎)が主体である.とくにGPAでは強膜炎がもっとも多く,約25.40%を占める.強膜炎は壊死性に進展しやすく,強い眼痛とともに強膜菲薄化や穿孔をきたす重篤な病態で注意を要する.ぶどう膜炎はおもに前部ぶどう膜炎(虹彩炎)として出現し,眼内炎症に伴って前房混濁,羞明,霧視を呈し,強膜炎や角膜病変に合併することも多い.網膜病変については,網膜血管炎はEGPAで比較的多く(22%),GPAでは3%前後とされる.血管炎により血管漏出,黄斑浮腫,網膜出血が生じ,さらに網膜動静脈閉塞症へ進展すると急激な視力低下をきたす.視神経*WataruMatsumiya:神戸大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕松宮亘:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学医学部眼科学教室(1)(15)2430910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1関節リウマチに伴う壊死性強膜炎の症例(83歳,女性)a:左眼耳側上方にびまん性に広がる壊死性強膜炎を認め,強い菲薄化により脈絡膜がかすかに透見される.Cb:治療後.同部位の炎症は鎮静化したものの,強膜融解が進行し,強膜下の脈絡膜がより明瞭に透見されるようになった.bc図2全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う閉塞性網膜血管炎の症例(29歳,女性)a:カラー眼底写真.右眼耳側下方網膜に,白鞘化した血管に沿う網膜出血()を認める.また,上方および鼻側上方の網膜血管にも部分的な白色変化()を認める.Cb:フルオレセイン蛍光造影(FA).耳側下方網膜に無血管領域を認め,鼻側上方の網膜血管には血管炎を示唆する部分的な過蛍光を認める.c:OCTangiography(OCTA)画像.FAで確認された部位に一致して血流欠損領域を認め,同部の境界では網膜血管の蛇行や形態異常を認める.C-abc図3巨細胞性動脈炎に伴う前部虚血性視神経症の症例(70歳,男性)a:右眼視神経乳頭に腫脹・発赤を認め,視神経周囲には出血を伴う.b:視神経乳頭部の拡大像.c:FA.視神経乳頭上方に充盈欠損を認め,その他の部位では蛍光色素の漏出を認める.図4潰瘍性大腸炎に伴う虹彩炎の症例(36歳,女性)a:前眼部写真.左眼に毛様充血およびC6時からC9時に虹彩後癒着を伴う前部ぶどう膜炎を認める.Cb:カラー眼底写真.軽度硝子体混濁を伴うが,眼底に異常所見は認めない.図5強直性脊椎炎に伴う虹彩炎の症例(34歳,女性)a:前眼部写真.左眼に強い毛様充血およびC12時に虹彩後癒着を伴う前部ぶどう膜炎を認める.Cb:MRI所見(STIR法).仙腸関節で軽度の炎症を認める().’C—

眼で見つかる全身感染症

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる全身感染症CUveitisAssociatedwithSystemicInfectiousDiseases松田順繁*はじめにぶどう膜炎は,その病因から大きく感染性および非感染性(自己免疫性)に分けられる.どちらも眼局所に病変が留まらない場合も多く,眼所見を契機に全身疾患が見つかることがある.本稿では,眼局所だけではない全身感染,とくに結核・梅毒・転移性眼内炎・ウイルスについてとりあげ,日常診療でよく遭遇するものから,頻度は高くないものの鑑別に重要なものまで,各疾患概念や眼・全身所見,治療法につき概略をまとめた.CI結核再興感染症としても注目される結核によるぶどう膜炎は,他のぶどう膜炎と臨床所見が重複することが多いが,眼症状から全身の結核感染が判明することもあり,網脈絡膜炎の原因として常に念頭におくべき疾患である.豚脂様の角膜後面沈着物(keraticprecipitate:KP)や虹彩結節・後癒着,雪玉状硝子体混濁に代表される肉芽腫性の炎症を呈するが,特徴的なのは下記C3タイプの後眼部病変である.「脈絡膜粟粒結核」は全身の粟粒結核の眼所見としてみられ,網膜下レベルで黄白色円形病巣が散在する.「脈絡膜結核腫」は後極部を中心に隆起性黄白色病巣が孤立性ないしは多発性に形成される.そしてもっとも頻度が高いのは「網膜血管炎」であり,境界不明瞭な白鞘を伴った網膜静脈周囲炎と,蛍光眼底造影にて周辺部網膜に無灌流領域(non-perfusionarea:NPA)が認められる.全身検査所見としては,結核菌由来物質(puri.edCproteinderivative:PPD)に対する皮膚の遅延型過敏反応であるツベルクリン反応,血中結核菌インターフェロン(interferon:IFN)C-c(クォンティフェロン)やCT-SPOT陽性があげられる.眼外病変として肺病変を伴わない場合もあるが,とくにCNPAを伴う肉芽腫性の網脈絡膜炎をみた場合には,結核感染を想定した血液検査から実際に陽性が判明し,病変の所在を含めたさらなる全身検索へとつながることがある.治療はステロイドや散瞳薬の点眼に加え,イソニアジド(INH)やリファンピシン(RFP)を含む抗結核薬の内服,硝子体混濁が強い場合にはステロイド(プレドニゾロンC0.5Cmg/kg/日)の服用,そしてCNPAへは新生血管の破綻による硝子体出血を防ぐために網膜光凝固が必須である.CII梅毒梅毒トレポネーマ(Treponemapallidum)によって引き起こされる性感染症であり,駆梅療法や疾病予防対策により一時は患者数が減少していたが,近年再び増加傾向にある.先天梅毒と後天梅毒に分類され,先天梅毒では「角膜実質炎・内耳難聴・Hutchinson歯(上顎中切歯切縁の半月状切痕)」を代表徴候とする「Hutchinson三徴候」が認められる.*YorishigeMatsuda:信州大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕松田順繁:〒390-8621長野県松本市旭C3-1-1信州大学医学部眼科学教室(1)(3)C2310910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1黄色ブドウ球菌による細菌性眼内炎(78歳,女性)右眼の眼痛・霧視・充血を主訴に来院.前房蓄膿と,瞳孔領にはフィブリン膜が析出していた.既往歴に糖尿病があり,全身検査にて腎膿瘍が判明した.ab図2Candidaalbicansによる真菌性眼内炎(78歳,男性)既往歴に糖尿病・尿管結石・腎盂腎炎があり,尿道カテーテルが長期に留置されていた.左眼の飛蚊症を主訴に近医を受診したところ,ぶどう膜炎に対しトリアムシノロンCTenon.下注射が施行されたが悪化し当科紹介となった.Ca:前眼部.前房蓄膿と瞳孔領にフィブリン膜が形成されていた.Cb:眼底.大小不同の雪玉状硝子体混濁(真菌塊)が連なっていた.a治療前b治療後図3単純ヘルペスウイルス(HSV)樹枝状角膜炎に対し,アシクロビル眼軟膏が奏効した症例(80歳,男性)右眼の霧視・充血を主訴に来院.ゾビラックス眼軟膏C5回/日にステロイド点眼・眼圧下降点眼を併用.改善とともに漸減・終了した.Ca:治療前.右眼視力(0.5),右眼眼圧C32CmmHg.Cb:治療後.右眼視力(0.8),右眼眼圧C9CmmHg.図4水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)虹彩炎を繰り返し,部分的な虹彩萎縮と瞳孔の変形をきたした症例(81歳,男性)左眼C11時方向の虹彩が萎縮し菲薄化している.発症時,前房水CPCRからはCVZVが陽性であった.図5VZV-急性網膜壊死(ARN)に対し保存的加療が奏効した症例(17歳,男性)a:左眼の飛蚊症・霧視にて受診.周辺部網膜に多発する黄白色壊死病巣が認められた.左眼視力(0.4),左眼眼圧C43mmHg.Cb:病変は急速に癒合・拡大していき,閉塞性血管炎も生じた.Cc:アシクロビルの全身投与,ステロイド・抗血小板薬の内服を行うとともに,残存する健常部網膜に汎網膜光凝固を施行した.Cd:視神経萎縮により左眼視力(0.1)となったが,現在も網膜.離はなく経過している.d図6VZV-ARNに対し硝子体手術により網膜復位が得られた症例(47歳,女性)a:左眼のぶどう膜炎に対し近医でトリアムシノロンCTenon.下注射を施行されるも悪化.左眼視力(0.3).Cb:アシクロビルの全身投与を行うも,多発する網膜裂孔および増殖膜の牽引・収縮により網膜全.離となった.左眼視力(0.01).c,d:術後黄斑浮腫は残存するものの,最終的にシリコーンオイルタンポナーデにて後極部網膜は復位した.左眼視力(0.8).abc図7サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎に対し,1%ガンシクロビル点眼が奏効した症例(79歳,男性)既往に左眼の末期緑内障があったが,霧視・視力低下進行を主訴に来院.左眼角膜にコインリージョンを認め(.),前房水ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にてCCMV陽性であった.1%ガンシクロビル点眼C2回/日の継続にて改善した.a:初診時.b:治療前.左眼視力(0.01),左眼眼圧C21mmHg.c:治療後.左眼視力(0.2),左眼眼圧C10CmmHg.ab治療前治療後図8CMV網膜炎に対しバルガンシクロビル内服が奏効した症例a:後極血管炎型.72歳,女性.骨髄異形成症候群の既往あり,腋窩リンパ腫に対し化学療法後であった.血球減少に対し,顆粒球コロニー刺激製剤併用にて抗ウイルス薬を投与した.治療前の右眼視力(0.02),治療後の右眼視力(0.05).Cb:後極血管炎型.69歳,女性.重症筋無力症に対し長期にプレドニゾロンC10Cmg内服中.胸腺腫への化学療法後であった.治療前の右眼視力(0.3),治療後の右眼視力(0.5).c:周辺部顆粒型.72歳,男性.胃癌術後であり,頸部濾胞性リンパ腫へも化学療法後であった.治療前の右眼視力(0.4),治療後の右眼視力(0.7).右眼左眼ab図9HIV感染症および梅毒性ぶどう膜炎の症例(19歳,男性)両眼の飛蚊症を主訴に受診.両眼に硝子体混濁と網膜血管炎,網膜白斑が認められた.血液検査にてCRPR256倍,TPHA46,960倍の梅毒感染が判明し,HIVも陽性であった.抗CHIV薬にて改善し,現在も治療経過観察中である.a:治療前.右眼視力(1.0),左眼視力(0.9).b:治療開始後.右眼視力(1.5),左眼視力(1.5).’C

序説:眼で見つかる全身疾患

2026年3月31日 火曜日

眼で見つかる全身疾患SystemicDiseasesDetectableThroughtheEyes園田康平*眼は「全身の窓」といわれる.眼底を診ることで,古くから高血圧,糖尿病,腎臓病,脳圧亢進など,さまざまな全身疾患の存在を示しうることは広く認識されてきた.近年では,各種データ処理手法や人工知能(arti.cialintelligence:AI)の発展により,この事実が再び脚光を浴びている.「オキュロミクス(oculomics)」とは,眼科領域においてオミクス技術を活用した研究や診断の概念をさす新しい造語である.本特集では,現代的な視点から「眼で見つかる全身疾患」に焦点をあてた.ぶどう膜炎には多数の原因疾患が混在しているため,正確な診断が治療の成否を左右する.眼科医が診ている疾患であるが,もう一度「すべてのぶどう膜炎は眼だけの病気ではなく,全身病に起因する」という原則を思い出していただきたい.ぶどう膜炎を診たときに想起すべき全身疾患は大きく感染症,免疫疾患,悪性疾患の三つであり,早期に鑑別することはぶどう膜炎治療だけでなく,患者の生命予後にかかわる.眼科所見から,いかにこの三つを鑑別するのか?感染症については信州大学の松田順繁先生,免疫疾患については神戸大学の松宮亘先生,悪性疾患については高知大学の中島勇魚・岸本達真先生にまとめていただいた.眼底写真から連想される全身疾患には高血圧,神経疾患,動脈硬化など血管障害,糖尿病,心臓病などがある.たとえば神経疾患については,うっ血乳頭や視神経乳頭腫脹などから類推することが多かったが,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)や光干渉断層血管撮影(OCTangiog-raphy:OCTA)の発展によって正確な網膜厚が測定できるようになり,層別解析も進んでいる.また,さまざまな波長を用いたイメージング技術も新たな機器を創生している.現在の技術を用いることで,眼科から全身科にフィードバックできる情報が多くなっている.こうした観点から,神経疾患について九州大学の上田瑛美先生,全身血管障害について東京医科大学の坪田欣也先生,糖尿病について北海道大学の三田村瑞穂・齋藤理幸先生,AIの飛躍的な進歩と画像解析が生み出したオキュロミクスとその展望について,京都大学の三宅正裕先生にご寄稿いただいた.執筆者の多大な尽力により,本特集は非常に読みごたえのある充実した内容になったと自負している.本特集が,眼科医の担う全身疾患の診断・治療における役割について,改めて考える契機となれば幸いである.*Koh-heiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(1)229

見えにくさのある児童の困りごとと学習配慮に関する アンケート調査

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):216.221,2026c見えにくさのある児童の困りごとと学習配慮に関するアンケート調査鎌田さや花*1池田陽子*1吉井健悟*2柏井真理子*3外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都府立医科大学生命基礎数理学*3柏井眼科医院CQuestionnaireSurveyonDi.cultiesandLearningSupportforChildrenwithLowVisionSayakaKamada1),YokoIkeda1),KengoYoshii2),MarikoKashii3)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)KashiiEyeClinicC目的:見えにくさを有する児童が困っていることと学校における配慮の実態を明らかにすること.方法:2022年10月.2024年C2月に京都府内C91校の小学校または京都府内眼科医療機関を通じて,見えにくさが気になっている児童の保護者を対象にアンケート調査を実施した.眼疾患や見えにくさに関する困りごとおよび学習上の配慮について質問し,解析を行った.結果:アンケートに回答した保護者はC183人,検討の対象とした児童数はC194人で,A群:眼疾患ありC19人,B群:弱視C31人,C群:斜視C19人,D群:屈折異常C58人,E群:色覚異常C14人,F群:その他C53人であった.困りごとに関するC12項目の該当数はCA群が他の群に比べて有意に多かった(p<0.05,Steelの多重比較).結論:本調査で用いた困りごとに関する質問項目は,見えにくさを抱え学習配慮が必要であるロービジョン児童の拾い上げに活用できる可能性がある.CPurpose:Toelucidatetheproblemsthatchildrenwithvision-relateddi.cultiesexperienceatschoolandthetypesofsupporttheyreceive.SubjectsandMethods:AquestionnairesurveywasconductedfromOctober2022toCFebruaryC2024CtargetingCparents/guardiansCofCchildrenCwithCvision-relatedCproblems.CParentsCwereCrecruitedCthrough91elementaryschoolsandophthalmologyclinics.Thesurveyassessedtheiroculardiseases,vision-associ-atedCdi.culties,CandClearningCsupport.CTheC.ndingsCwereCthenCanalyzed.CResults:OfCtheCparents/guardiansCsur-veyed,C183CrespondedCtoCtheCquestionnaire.CTheCnumberCofCchildrenCwas194;i.e.,C19CwithCoculardiseases(GroupA),31withamblyopia(GroupB),19withstrabismus(GroupC),58withrefractiveerroronly(GroupD),14withcolorCvisionde.ciency(GroupE),CandC53CwithCotherCvision-relateddi.culties(GroupF).COfCtheC12Cvision-di.culty-relatedquestions,thenumberofthoseapplicablewassigni.cantlyhigherinGroupAthanintheothergroups(p<0.05).Conclusion:Thequestionnaireusedinthissurveystudywasfoundusefulforidentifyingchil-drenwithlowvisionwhohavevision-relateddi.cultiesandrequirelearningsupport.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(2):216.221,C2026〕Keywords:ロービジョン,視覚障害,視覚支援,学習配慮,質問紙調査.lowvision,visualdi.culty,specialsup-portsforvision,learningsupports,questionnaire.Cはじめに見えにくさのある学齢期のロービジョン児は,生活上のロービジョンケアに加えて,学習におけるさまざまな配慮を要し,眼科医療と教育機関との連携が重要である1.5).とくに器質的眼疾患のある児童では,ロービジョン外来などで視機能を評価し配慮の要否を検討するのが望ましい6).しかし,多くの眼科主治医は,学齢期のロービジョン児にどのような困りごとがあるのかを知らず,視覚支援の必要性に気がつきにくい.また,ロービジョン児は自ら困っていると訴えることが少なく,何も視覚支援を受けずに過ごしている場合がある4).本研究では,見えにくさを有する小学生が困っているこ〔別刷請求先〕鎌田さや花:〒602-0841京都市上京区河原町通り広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:SayakaKamada,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine.465Kajii-cho,Kawaramachi-Hirokoji,Kamigyo-ku,Kyoto-shi602-8566,JAPANC216(98)表1質問紙の内容困りごとの質問C12項目・読み書きするときにかなり近づく(10cm以下)・読み書きするときの距離をC30Ccmほどに離すと小さい文字は見えにくい・ルビや地図帳など細かい文字が見えにくい・壁掛けの時計は見えにくい・3Cmの距離にいる友人の表情がわかりにくい・なぞり書きの薄い色が見えにくい・定規の目盛リが読みにくい・テレビを見るときにかなリ近づく(1Cm以下)・まぶしそうにする・暗いところで見えにくい・階段や段差がわかりにくい・色によって見分けがつきにくいことがある・座席の位置の配慮(席を前の方にする,など)・まぶしさに関する座席の配慮(まぶしくない席にする,カーテンやブラインドの使用)・遮光眼鏡の使用・プリントなどの文字サイズを大きくする・拡大鏡(ルーペ)の使用・書見台や斜面机の使用・拡大教科書(文字のサイズが大きい教科書)の使用・単眼鏡(小型の望遠鏡のようなもの)の使用・教科書閲覧アプリ(UDブラウザなど)の利用・学習資料やプリントなどはCPDFなどのデータで受け取る・タブレット端末などの利用(カメラで写して大きくして見る,書き込むなど)・音声読み上げの利用(音声図書,音声教科書,読み上げアプリの利用など)・音声入力(パソコンやタブレット端末などを利用)・拡大読書器(見たいものをモニターに大きく写す機器)の使用・色の見分けのつきにくさに対する配慮・移動時の配慮(教職員や友人と一緒に移動する,など)・給食時の配慮(配膳下膳を手伝ってもらうなど)・体育授業の配慮(一緒に参加てきるように工夫してもらう,など)・集団活動を行う上ての配慮(掃除のときに細かい汚れは見えにくいので周囲の理解協力を得る,一人でむずかしいことは手伝ってもらう,など)・理科の実験や課外活動などでの配慮(近づいて見ることができない場合や細かく観察するのがむずかしいときは周囲に言葉で解説してもらう,など)児童が見えにくさでどのようなことに困っているかの質問項目C12項目,現在受けている学習上の配慮の内容C15項目,学校生活上の配慮C5項目に分け,該当項目数を調べた.と,および学校でどのような配慮を受けているかについて,現状を明らかにするため調査を行った.CI対象と方法2022年C10月.2024年C2月に子どもの見えにくさが気になるという児童の保護者を対象に任意でアンケートを行った.京都府内で本調査に協力を得られたC91校の小学校を介してC2022年度の在籍児童計C26,416人に案内チラシを配布したほか,京都府内の眼科医療機関からも子どもの見えにくさが気になる保護者にチラシを配布した.アンケートの対象者は「子どもの見えにくさについて,気になる様子がある保護者」または「弱視やなんらかの眼疾患で眼科に通院中の子どもの保護者」とし,チラシ内のCQRコードからCwebフォームに回答する形式とし,研究への参加同意確認欄を設け,同意確認を行った.アンケートでは,児童の背景として,保護者が把握している範囲で眼疾患,矯正視力,在籍学校(学級),学年,発達に関して,児童が見えにくさでどのようなことに困っているかの質問C12項目,現在受けている学習上の配慮の内容C15項目,学校生活上の配慮C5項目について質問した.各質問項目(表1)は重複回答とし,そのほかに見えにくさに関して気になる様子や困っていることがあれば自由回答とした.児童C194人を眼疾患により以下のCA.FのC6群に分類し,上記質問項目の該当数についてCSteelの多重比較を行い,困りごとの該当項目数と受けている学習配慮の項目数の相関を調べた.A群:眼疾患(器質的眼疾患を有するもの,先天眼振を含む),B群:弱視(A群以外で弱視を指摘されているもの,弱視の既往があるが調査時点では矯正視力良好例を含む),C群:斜視(視線の位置がずれるものや斜視や斜位を指摘されているもの,AB群の対象者を除く),D群:屈折異常(ABC群の対象者を除く),E群:色覚異常(AB群以外で色覚異常があるもの,疑い例を含む),F群:その他(異常なし,わからないを含む)とした.CII結果アンケートに回答した保護者はC183人,検討の対象とした児童数はC194人,A群:19人,B群:31人,C群:19人,A群B群C群D群E群F群(人)8765432100.01未満0.010.020.030.040.050.060.070.080.090.10.20.30.40.50.60.70.80.9図1矯正視力1.0未満の児童の群別視力分布全対象児童のうちよいほうの眼の矯正視力がC1.0未満であるC36人について,各群別の矯正視力の内訳を示す.D群:58人,E群:14人,F群:53人であった.F群には,眼の異常を指摘されたことなしC25人,眼疾患の有無がわからないC23人,アレルギー性結膜炎C2人,睫毛内反C1人,心因性視覚障害C2人が含まれた.A群の眼疾患の内訳は,先天眼振C4人,角膜混濁C3人,家族性滲出性硝子体網膜症C2人,網膜色素変性C2人,緑内障C2人,黄斑低形成C2人,視神経萎縮C1人,コロボーマC1人,先天白内障C1人,虹彩異常C1人であった.すべて小学生で,1年生C48人(24.7%),2年生C33人(17.0%),3年生C49人(25.2%),4年生C19人(9.8%),5年生C17人(8.8%),6年生C28人(14.4%)で,児童の在籍学校は普通学校C188人,特別支援学校C6人であった.特別支援学校のうち視覚特別支援学校(以下,盲学校)はC2人,その他は4人であった.在籍学級は,特別支援学級C25人(うち弱視学級C5人,その他C20人),普通学級C163人で,普通学級のうち弱視通級指導教室や巡回相談などの視覚支援がある児童がC3人,学習障害(learningdisability:LD)通級指導教室利用がC1人,その他C159人はとくに支援を受けていなかった.計C12人がなんらかの視覚支援を受けており,いずれもCA群の児童であった.一方で,A群の児童で普通学級に在籍し,上述した視覚支援を受けていない児童がC7人だった.児童の神経発達症に関連した設問では,「発達がゆっくりであるなど診断を受けている」39人,「発達がゆっくりである可能性があるが診断は受けていない」20人,「発達について気になることはとくにない」121人,「わからない・その他」14人であった.A.F全例の矯正視力は,両眼とも矯正視力C1.0以上がC91人,少なくとも片眼の矯正視力C1.0以上(他眼は視力不明)がC22人,よいほうの眼の矯正視力C1.0未満がC36人,視力不明(矯正視力不明を含む)がC45人であった.よいほうの眼の矯正視力がC1.0未満であるC36人について各群別の視力分布を調べ,図1に示す.A群ではよいほうの眼の矯正視力0.6以上C1.0未満がC2例,1.0以上がC1例あり,矯正視力C1.0以上の症例は片眼性眼疾患で僚眼は健常眼であった.児童の見えにくさについてあてはまる質問項目が該当する割合を各群別のグラフに示す(図2).A群は多くの質問項目にあてはまった.「まぶしそうにする」の項目はCA群,C群に多くみられた.「色によって見分けがつきにくい」の項目はCE群が突出して多かったが,A群でもC4人(21.1%)が該当した.児童が学習上の配慮を受けている割合は全C194人中C100人(51.5%),とくに配慮はされていないC89人,わからない5人であった.児童が受けている学習上の配慮の内訳を図3に示す.配慮を受けている児童のうち,もっとも多い配慮内容は「席を前のほうにする」でC77人(77.0%)であった.それ以外の配慮内容はCA群の児童に対して行われている内容が多かった.12項目ある困りごとの質問項目の該当項目数と学習上の配慮内容の数の中央値(四分位範囲)はそれぞれA群C8.0(3.0,9.0),5.0(1.0,9.0)で,いずれもCA群が他群に比べて有意に多かった(Steelの多重比較:p<0.05).また,困りごとの該当項目数と学習配慮の項目数には正の相関があった(Spearmanの順位相関係数:Ct=0.39,p<C0.001).児童が学校生活上で配慮を受けている割合はC27人(13.9(%)1009080706050403020100A眼疾患B弱視C斜視D屈折異常のみE色覚異常Fその他図2児童の見えにくさについてあてはまる質問項目児童の見えにくさについてC12項目の質問項目(重複回答)で群別にあてはまる項目を示す.%),「とくに配慮はされていない」144人(74.2%),「わからない」23人(11.9%)で,群別にみると,A群ではC19人中C14人(73.7%)が学校生活上での配慮を受けていた.学校生活上での配慮の内訳を図4に示す.学校生活上の配慮の数について,A群の中央値(四分位範囲)はC2.0(0.0,3.0)で,A群が他群に比べて有意に多かった(Steelの多重比較:p<C0.05).また,学校生活上の配慮の数は困りごとの該当項目数と正の相関があった(Spearmanの順位相関係数:Ct=0.41,p<0.001).CIII考按本調査により,眼疾患がある児童では学習や学校生活において困りごとが多いことが明らかとなった.また,眼疾患があり,配慮や視覚支援が必要である可能性があるにもかかわらず,配慮がなされていないと回答した例があった.ロービジョンケアとして視機能評価に基づいて適切な視環境を整えること,医療機関と教育機関の連携が重要であることは以前より報告がある1.7).当院眼科ロービジョン外来でこれまでに多くの児童に対して必要な視覚支援の検討を行ってきた経験から,本調査で使用した困りごとの質問C12項目を作成した.質問項目の内容はロービジョン外来で学齢期の患者を担当した際の問診で聴取される頻度が高い内容を含めて,より具体的な設問になるように工夫して作成し,近見の見えにくさ,コントラスト不良による見えにくさ,遠見の見えにくさ,羞明や夜盲や移動の困難さ,色覚に関する項目から成り立っている.本調査の回答者は保護者であることから,これらの質問項目は,周囲の人がその児童の見えにくさに早く気がつくために重要な項目ともいえる.本調査にて,眼疾患のある児童において本質問項目の該当が多いことが明らかになったことから,少なくとも該当項目が多い場合には学習における配慮の要否を検討する必要があると考えられる.A群C19人のうち,学習における配慮を何も受けていなかったのはC2人で,1人は黄斑低形成で視力C0.9,もうC1人は網膜色素変性で視力C0.5であった.また,A群で学校生活における配慮を受けていない例はC5人あった.以上のことからも,見えにくさがあり配慮が必要である児童の拾い上げは(人)80706050403020100図3児童が受けている学習配慮の内訳学習配慮を受けている児童C100人について,その配慮内容(重複回答)を示す.(人)眼疾患(14/19)弱視(4/31)C斜視(1/19)D屈折異常(0/58)43210色覚異常(3/14)その他(5/53)その他理科実験や課外活動掃除や集団活動体育(一緒に参加できる工夫)給食の配膳など移動時の配慮図4児童が受けている学校生活上の配慮の内訳学校生活上の配慮を受けている児童C27人について,その配慮内容(重複回答)を示す.いまだ不十分と考えられる.見えない・見えにくい小児の相談先としては盲学校が知られており,各地域の盲学校が視覚支援のセンター的役割を担う8).ただし,盲学校は相談が入らなければつながることができない.このため,器質的眼疾患を有する児童は眼科医療機関で拾い上げ,必要に応じて教育機関と情報を共有して視覚支援の要否を検討し,支援につなげていく仕組みの構築が望まれる.本調査は子どもの見えにくさが気になっている保護者に対して実施したものであり,それらの保護者がかかわる児童は,器質的眼疾患や弱視のほか,屈折異常,斜視(眼位異常),色覚異常などを有する場合が多いことがわかった.また本調査では,発達に関するなんらかの診断を受けているまたはその可能性がある場合は合わせてC59例(30.4%)であった.知的障害を伴い視機能の評価が困難である場合や,神経発達症のなかには羞明9)や読み書き障害10)がある場合などで,児童の見えにくさが気になると推測される.本調査のリミテーションとして,以下の点があげられる.第一に,本アンケートは子どもの見えにくさが気になる保護者を対象として実施したため,児童本人の意見を直接調査できていない点である.また,保護者が子どもの見えにくさに気づいていない可能性も考慮する必要がある.第二に,今回の質問項目は眼疾患や弱視を有するロービジョン児の拾い上げを主目的として作成したものであるため,屈折異常や眼位異常,色覚異常のみで矯正視力が良好な児童や,神経発達症に伴う見えにくさのある児童の拾い上げには必ずしも適していない可能性がある.見えにくさを有する小学生が困っていること,および学校でどのような配慮を受けているかについてアンケート調査を行い,ロービジョン児には学習や学校生活上で多くの困難さがあること,ロービジョン児に対する視覚支援や配慮がいまだ不十分であることがわかった.今回用いた質問項目は,見えにくさがあり,学習や学校生活上での配慮が必要なロービジョン児童の拾い上げに活用できる可能性がある.本研究は第C78回日本臨床眼科学会一般講演で発表した.また,本研究は文部科学省科学研究費の助成を受けて実施した(課題番号:22K09817).利益相反外園千恵:【F】参天製薬株式会社,サンコンタクトレンズ株式会社,AurionBiotec,【P】あり池田陽子:【P】あり文献1)石井雅子,張替涼子,阿部春樹:就学にあたり読書検査を行なったロービジョン児C6例の検討.日視能訓練士協誌C37:179-186,C20082)川瀬芳克:眼科と盲学校の連携の経験.日眼紀C56:740-744,C20053)三井田千春,仁科幸子,石井杏奈ほか:医療機関と教育機関の連携による小児のロービジョンケア.眼臨紀C13:655-661,C20204)鎌田さや花,小西幸代,吉田麻里子ほか:小児の年齢別・視機能別ロービジョンケア内容の検討.眼臨紀C14:338-346,C20215)稲垣理佐子:弱視児の就学時前からのロービジョンケアと教育との連携.眼臨紀15:338-342,C20226)稲葉純子,村上美紀:ロービジョン児童生徒等の対応について.OCULISTAC103:55-63,C20217)松野希望,赤井田あかね,森隆史ほか:福島県立医科大学附属病院における小児ロービジョンケア.眼臨紀C16:443-449,C20238)稲葉純子:ロービジョン児のための公的支援と盲学校.臨眼C77:1479-1487,C20239)小野田有華,岩崎佳奈枝,篠野公二ほか:羞明のある発達障害児の遮光眼鏡の有用性について.日ロービジョン会誌C18:S6-S10,C201910)北洋輔,芦沢文子,稲垣真澄:発達性読み書き障害の早期発見に向けた行動観察項目の開発.小児保健研C78:191-198,C2019C***

安定的に経過している緑内障におけるimo 24plus(1-2) AIZE-EX のMD 値変動と予測区間

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):210.215,2026c安定的に経過している緑内障におけるimo24plus(1-2)AIZE-EXのMD値変動と予測区間北川厚子*1堀口剛*2野本裕貴*3井田直子*1清水美智子*1廣信麻友美*1上暁美*1手良向聡*2松本長太*3*1北川眼科医院*2京都府立医科大学大学院医学研究科生物統計学*3近畿大学医学部眼科学教室EvaluationoftheFluctuationandPredictionIntervalofimo24plus(1-2)AIZE-EXinStableGlaucomaPatientsAtsukoKitagawa1),GoHoriguchi2),HirokiNomoto3),NaokoIda1),MichikoShimizu1),MayumiHironobu1),AkemiUe1),SatoshiTeramukai2)andChotaMatsumoto3)1)KitagawaEyeClinic,2)DepartmentofBiostatistics,GraduateSchoolofMedicalScience.KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicineC目的:安定的に経過している緑内障におけるCimo24plus(1-2)AIZE-EXのCMD値変動と予測区間を調べる.対象および方法:2年以内にC3回,imoAIZE-EXを施行し,安定的に経過している緑内障および緑内障疑い例をCbettereye・worseeyeのC2群に分け,検査点ごとの閾値変動,およびベースライン閾値に対する再検査の変動および予測区間を算出した.また,病期別C4群に分類し,その予測区間を算出した.結果:検査点ごとおよび再検査の変動は閾値が大きいほど小さかった.予測区間は,病期により±0.85CdB.±1.56CdBであった.結論:予測区間は視野障害の進行評価を行う際の有用な指標となる.CPurpose:Toinvestigatethevariabilityand95%predictionintervalsofvisual.eldindicesobtainedusingtheAIZE-EXalgorithmontheimo24plus(1-2)perimeter(CREWTMedicalSystems)inpatientswithstableglauco-maCorCsuspectedCglaucoma.CPatientsandMethods:DataCfromC146CeyesCwithCthreeCtestsCoverCaC2-yearCperiodCwereCretrospectivelyCanalyzed.CResults:Point-wiseCsensitivityCvariabilityCdecreasedCwithChigherCthresholdCvalues.CMixed-e.ectsmodelingshowedminimaltime-relatedchangesinmeandeviation(MD),allowingestimationofpre-dictionintervalsacrossdi.erentglaucomastages.ThewidthofMDpredictionintervalsrangedfrom±0.85CdBinearlyCstagesCtoC±1.56CdBCinCmoderateCstages.CTheseCintervalsCprovideCusefulCreferenceCrangesCtoChelpCdistinguishCactualCdiseaseCprogressionCfromCmeasurementCvariability.CConclusion:AIZE-EXCdemonstratedClessC.uctuationCthanthepreviouslystudiedAIZE-Rapid,thussuggestingalgorithmicsuperiority.Whilehelpfulinclinicaldecision-making,predictionintervalsshouldbeinterpretedalongsideclinicalcontextandrepeatedtestingwhennecessary.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(2):210.215,C2026〕Keywords:緑内障,アイモ視野計,24plus(1-2)AIZE-EX,変動,予測区間.glaucoma,imoperimetry,.uctu-ation,24plus(1-2)AIZE-EX,predictioninterval.はじめにimo(クリュートメディカルシステムズ)はC2015年に開発されたヘッドマウント型自動視野計1)であるが,据置型がおもに使用されている.imoに搭載されている検査アルゴリズムCAnbientInteractiveZippyEstimatedSequentialTesting(AIZE)2)は,Humphrey視野計(HumphreyCFieldCAnalyz-er:HFA)のCSITAStandardより短い検査時間で同等の緑内障性視野障害が検出できることが報告されている3).また,その後開発されたCAIZE-EXは前回のデータを利用し効率的に閾値検査を行うことで,短時間かつCAIZEと同程度の異常検出ができる4).緑内障の早期発見や進行評価において中心C10°内の検査が〔別刷請求先〕北川厚子:〒607-8041京都市山科区四ノ宮垣ノ内町C32北川眼科医院Reprintrequests:AtsukoKitagawa,KitagawaEyeClinic,32Kakinouchi-cho,Shinomiya,Yamashina-ku,Kyoto-City607-8041,CJAPANC210(92)有用とされており5,6),imoでは従来のC24-2の検査点C54点にC10-2の測定点C24点を追加したC24plus(1-2)での検査が行える(図1).筆者らはCHFACSITA-FAST24-2とC10-2をあわせた結果とCimo24plus(1-2)AIZE-Rapidの比較を行い,検査データの一致度が高かった結果を踏まえ7),緑内障の経過観察はC24plus(1-2)で行っている.視野検査は自覚検査であり検査結果は常に変動するため8,9),緑内障の経過診察を行うに際しては,検査結果のとりうる変動範囲を知っておくことが重要となる.筆者らは過去に安定した経過を示す緑内障および緑内障疑い症例におけるCimo24plus(1-2)AIZE-Rapidの変動・予測区間について報告している10).本研究では新たな測定アルゴリズムであるCAIZE-EXでの予測区間を算出し,緑内障の経過において視野障害進行ではなく検査結果の変動と判断できうる範囲の検討を行った.CI対象および方法1.対象2020.2022年に北川眼科医院でCimo24plus(1-2)CAIZE-EX(据置型)による検査をC2年以内にC3回行えた(固視不良5%以下,偽陽性・偽陰性C10%以下),少なくともC1眼が経過中の視野状態が安定的に経過している(MDslope<C±0.5CdB/year)緑内障,および緑内障疑い症例を対象とした.除外基準は,矯正視力C0.5未満,明らかな網脈絡膜疾患を有するもの,急速な白内障進行例,期間中に眼科手術を施行されたものとした.ベースラインのCMD値に基づき両眼をCbettereye,worseeyeのC2群,および進行度によりC4群に分類し解析を行った.本後ろ向き研究は,京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認(ERB-C-2394)を受けている.C2.診断機器imoはCHFAと同じ条件下で視野検査を行うことが可能となっている.詳細については過去の論文1)に述べられているが,両眼開放下に同時に両眼検査を行えるのが特徴である.C3.評価項目MD値および各測定点の閾値を評価項目とした.C4.統計解析各対象者のベースライン時における患者特性について,分類変数は例数(割合),連続変数は中央値(範囲)で要約した.閾値と変動の関係をみるために,3回の検査結果に対して検査点ごとの平均閾値と標準偏差を計算し,平均閾値(5CdBごと)に対する標準偏差をプロットした.Bettereye,Cworseeye間の比較はCWilcoxon順位和検定を用いて行った.また,最初の検査とC2回目以降の再検査の変動を比較するた24-210-230°6°間隔54点2°間隔24点>合計78点図124plus(1-2)の配列めに,ベースラインの閾値ごとにC2回目以降の再検査の閾値の分布を箱ひげ図で示した.ベースラインの閾値はC2CdBごとに刻み,箱ひげ図はC5,25,75,95パーセンタイルと中央値で表現した.各症例C3回の検査で得られたCMD値の推移について,個人内相関を考慮するため,個人を変量効果,時間を固定効果とした混合効果モデル(ランダム切片モデル)を用いてC95%予測区間を算出した.時間効果の推定値が小さく統計的にも有意でなかった場合には,時間によるCMD値の変化が臨床的に無視できると判断し,MD値が時間に依存せず一定であるという仮定のもとで予測区間を解釈した.95%予測区間は,ある対象者におけるつぎの測定値がC95%の確率でとりうる区間を表す11).各対象者の推移を折れ線グラフで図示し,回帰直線およびC95%予測区間を追加した.予測区間については,ベースラインCMD値に基づく病期別C4分類(MD>.3CdB,C.6CdB<MDC..3CdB,C.12CdB<MDC..6CdB,CMD..12CdB)でも同様に算出し,グラフを作成した.なお,ベースラインのCMDに基づくC4分類については,標本サイズを確保するためにCbettereye,worseeyeを区別せずに分類した.そのため,同一対象者の両眼が同じグループに含まれる場合は,右眼の検査値を採用した.検査時間とCMD値の関係を調べるために,ベースラインにおける検査時間について,bettereye,worseeyeのC2群およびベースラインCMD値に基づくC4群ごとに中央値(範囲)を算出した.検定の有意水準は両側C0.05とし,すべての統計解析は表1ベースライン時における研究対象者の人口統計学的および臨床的背景bettereye(n=60)Cworseeye(n=86)検査眼.右眼:n(割合)28(C46.7%)59(C68.6%)年齢:中央値(範囲)68歳(2C0歳,8C8歳)65.5歳(C20歳,C90歳)性別:男性C/女性C18/42C33/53視力:中央値(範囲)1.0(C0.6,C1.5)1.0(C0.5,C1.5)等価球面度数:中央値(範囲)C.2.38D(C.13.0D,+3.75D)C.2.00D(C.16.75D,+3.50D)固視監視:中央値(範囲)0%(0%,5%)0%(0%,4%)偽陽性:中央値(範囲)1%(0%,1C0%)0.5%(0%,1C0%)偽陰性:中央値(範囲)0%(0%,4%)0%(0%,5%)検査:中央値(範囲)1.01年(C0.58年,C1.99年)1.03(C0.55年,C1.94年)グローバルインデックスMD:中央値(範囲)C.0.30CdB(C.15.26dB,2C.03dB)C.2.15CdB(C.23.30dB,1C.35dB)MDslope:中央値(範囲)0.07CdB/年(C.0.46CdB/年,C0.48CdB/年)0.12CdB/年(C.0.49CdB,C/年C0.49CdB/年)眼圧(CGoldmann圧平眼圧計)3回の平均:中央値(範囲)14.8CmmHg(C10.3CmmHg,C22.0CmmHg)C14.5CmmHg(9C.3mmHg,2C0.7mmHg)3回の標準偏差:中央値(範囲)1.2CmmHg(0C.0mmHg,4C.5mmHg)1.5CmmHg(0C.0mmHg,5C.3mmHg)COCT*RNFL厚C3回の平均,中央値(範囲)79.3Cμm(C55.7Cμm,9C8.7Cμm)(n=59)77.3Cμm(C51.0Cμm,C159.3Cμm)RNFLslope:平均値(標準偏差)0.46Cμm/年(C3.87Cμm/年)(n=59)C.0.07Cμm/年(C4.28Cμm/年)CGCL+IPL厚C3回の平均:中央値(範囲)70.0Cμm(C54.3Cμm,9C2.7Cμm)(n=58)68.0Cμm(C47.5Cμm,8C5.0Cμm)黄斑マップslope:平均値(標準偏差)C.0.15Cμm/年(C2.49Cμm/年)(n=58)C.0.41Cμm/年(C2.41Cμm/年)*CIRRUSHD-OCTplus(モデルC5000,CarlZeissMeditecInc).少なくともC1眼がCMDslope<C±0.5CdB/年の症例をCbettereye,worseeyeのC2群に分類し,ついで除外基準により選別しているため,2群の症例数は異なる.ab(dB)(dB)bettereye(dB)worseeye131211bettereyeworseeye3632363210282892424再検査の閾値再検査の閾値標準偏差2016122016127655%5%3825%825%214中央値75%4中央値75%0095%095%05101520253035024681012141618202224262830323436024681012141618202224262830323436閾値[dB]ベースラインの閾値[dB]ベースラインの閾値[dB]図2閾値の変動a:検査点ごとの平均閾値の変動.bettereyeおよびCworseeyeにおける検査点ごとの平均閾値に対する標準偏差を示す.Cb:ベースライン閾値(bettereyeおよびCworseeye)に対する再検査の変動.細い縦線は再検査のC90%区間(再検査閾値のC5.95パーセンタイルの幅)を示し,太い縦線は四分位範囲を示す.SASversion9.4(SASInstitute,Inc,Cary,NC)を用いて行った.CII結果解析対象の背景を表1に示す.abettereyeworseeye(dB)95%予測区間の幅:±0.992MD0-2n=600200400600(日)(日)時間bMD>-3-6<MD.-3(dB)95%予測区間の幅:±0.852MD0-2n=910200400600(日)(日)時間-12<MD.-6MD.-12(dB)95%予測区間の幅:±1.562MD0-2n=180100200300(日)400(日)時間図3予測区間a:対象者ごとの推移と予測区間(bettereyeおよびCworseeyeにおけるCMDのスパゲティプロット).グレーの塗りつぶしは予測区間を示す.b:ベースラインCMD別の予測区間.bettereye,worseeyeともに各症例の閾値の変動は検査点の平均閾値と関連しており,閾値が大きいほど変動は小さかった(図2a).15CdB以上では,bettereyeとCworseCeyeの変動はほぼ同等であったが,10.15CdBでは,betterCeyeの変動がCworseeyeよりも大きい傾向がみられた(p=0.024,図2a).検査機器のダイナミックレンジが限られているため,閾値がゼロに近い部分での標準偏差は低かったが,再検査分布の尾は長く,90%区間は大きかった(図2a,b).MD値について,混合効果モデルによる解析を行った結果,時間効果の推定値はCbettereye:0.00024(p=0.293),worseeye:0.00024(p=0.191),MD>.3のグループ:0.00020(p=0.176),.6CdB<MD..3:0.00021(p=0.564),.12CdB<MD..6:0.00022(p=0.763),MD..12:.0.00033(p=0.674)であり,時間の効果は非常に小さかった.したがって,予測区間を解釈するにあたり,時間による変化はないと仮定した.図3にCbettereye・worseeye別,およびベースラインCMD別の推移と予測区間を示した.予測区間の幅は,bettereye・worseeyeとも±0.99CdBであり,ベースラインCMD値別では,MD>.3CdB:±0.85CdB,.6CdB<MD..3CdB:±0.97CdB,.12CdB<MD..6CdB:±1.56dB,MD..12dB:±0.96CdBであった.ベースラインでの検査時間は,中央値がCbettereye:2.6分,worseeye:3.0分であった.また,ベースラインのCMD別では,MD>.3CdB:2.6分,.6CdB<MD..3CdB:3.3分,C.12CdB<MD..6CdB:3.5分,MD..12dB:3.9分であり,MD値が低いほど検査時間が長い傾向がみられた.CIII考按安定的に経過している緑内障症例の経過観察におけるCimo24plus(1-2)AIZE-EXの変動を解析した.過去のCHFAについての報告と同様に,各測定点の閾値変動は検査点の閾値が大きいほど小さかった8).また,3回の測定の変動から算出された予測区間の幅は,ベースラインCMD値別で±0.9.C±1.6CdBであった.以前筆者らが報告したCAIZE-Rapidの予測区間は±1.4.±1.8CdBであり10),AIZE-EXの優位性の可能性が示唆されたが,今後更に多くのデータをもとに緑内障の視野経過観察では,AIZE-Rapid,AIZE-EX,AIZE-RapidEXなどのいずれのアルゴリズムがもっとも短時間にかつ正確な経過判断が可能か検討を要する.95%予測区間は将来の測定値がC95%の確率で入る区間を表す.つまり,測定結果が予測区間外であった場合には,状態が改善もしくは悪化している可能性が高いと判断できる.そのため,検査結果が悪化した場合は,疾患進行によるものか,測定誤差による変動であるかを判別する指標として有用となる可能性がある.推定値の精度を表す指標としては信頼区間がよく用いられる.たとえば,本研究のデータに対してCMD値の平均値の95%信頼区間幅を計算すると,bettereyeで±0.09CdB,Cworseeyeで±0.08CdBとなり,予測区間の幅と比較すると非常に狭くなるが,これは個々の測定データのばらつきを考慮していないためであり,信頼区間は母平均などの母数に関する推測を意味する.一方で,個々のばらつきを考慮した予測区間は,標本に関する推測に対応する.また,データが正規分布に従う場合は,平均値±1.96×標準偏差の範囲にはデータのC95%が含まれることが知られているが,将来のデータがこの範囲に入る確率はC95%にはならない.これは,推定量(平均値と標準偏差)の不確かさを考慮していないためである.予測区間はこの不確かさを考慮しており,将来の測定値が含まれるであろう区間を表す.本研究ではこの予測区間を用いることで検査結果の変動を評価可能であると考えた.本研究の限界について,一つは安定的に経過している緑内障の定義があげられる.本研究では著明な眼圧変動もなく,CMDCslope..0.5dB/年,光干渉断層計(opticalCco-herencetomography:OCT)でも大きな変化の認められない症例とした12).また,今回算出した予測区間はデータに依存している点,また,MD..12CdBの後期症例については症例数が少ない点,症例を追加したうえでのさらなる検討が必要である(図3b).予測区間はあくまでも目安であり,予測区間に入っていても進行の可能性はある.逆に,予測区間に入っていなくても透光体の混濁の変化,患者の集中度,検査機器の誤差による変化である可能性もあり,これらを考慮したうえで予測区間を超える結果が認められた場合や,再検査を行い再現性のある結果が得られた場合は進行と判断し治療強化を行う必要がある.検査結果の変動から算出したCMD値の予測区間は,初期・早期:±0.9.±1.0CdB,中期:±1.6CdBであり,中期症例での予測区間が大きくなる傾向があった.各病期におけるCMD値の変動幅がこの値を超えると視野障害進行を疑う指標となり,緑内障進行の評価を行う際の有用な指標となると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatsumotoC,YamaoS,NomotoHetal:Visual.eldtest-ingCwithChead-mountedCperimeter‘imo’.CPLoSCOneC11:Ce0161974,C20162)NomotoH,MatsumotoC,OkuyamaS:Anewstaticvisu-alC.eldCtestalgorithm:theCAmbientCInteractiveCZEST(AIZE).SciRepC13:14945,C20233)KimuraCT,CMatsumotoCC,CNomotoH:ComparisonCofChead-mountedperimeter(imoCR)andCHumphreyCFieldCAnalyzer.ClinOphthalmolC13:501-513,C20194)NomotoCH,CMatsumotoCC,CYoshikawaCKCetal:EvaluationCofthevisual.eldtestalgorithm:theAmbientInteractiveZEST-EX(AIZE-EX)C.CSciRep(2026,Cinpress):https://Cdoi.org/10.1038/s41598-026-35696-y5)KimuraCY,CHangaiCM,CMorookaCSCetal:RetinalCnerveC.berlayerdefectsinhighlymyopiceyeswithearlyglau-coma.InvestOphthalmolVisSciC53:6472-6478,C20126)DeMoraesCG,HoodDC,ThenappanAetal:24-2visual.eldsmisscentraldefectsshownon10-2testsinglauco-maCsuspects,CocularChypertensives,CandCearlyCglaucoma.COphthalmologyC124:1449-1456,C20177)北川厚子,清水美智子,山中麻友美ほか:ヘッドマウント型自動視野計と従来型自動視野計の検査結果および検査時間の比較.あたらしい眼科C38:1221-1228,C20218)ArtesPH,IwaseA,OhnoYetal:Propertiesofperimet-ricCthresholdCestimatesCfromCFullCThreshold,CSITACStan-dard,andSITAFaststrategies.InvestOphthalmolVisSciC43:2654-2659,C20029)GardinerSK,SwansonWH,GorenDetal:Assessmentofthereliabilityofstandardautomatedperimetryinregionsofglaucomatousdamage.OphthalmologyC127:1359-1369,C201410)KitagawaCA,CHoriguchiCG,CNomotoCHCetal:EvaluationCofCthevariabilityofAmbientInteractiveZippyEstimationofSequentialCRapidCTestsConCthe“imo”perimeterCinCpatientsCwithCstableCglaucoma.CJCGlaucomaC33:849-854,C202411)FrancqCBG,CLinCD,CHoyerW:Con.dence,Cprediction,CandCtoleranceCinClinearCmixedCmodels.CStatCMedC38:5603-5622,C201912)LakhaniCBK,CGiannouladisCK,CLeightonCPCetal:De.ningCstableglaucoma:aCDelphiCconsensusCsurveyCofCUKCoptometristsCwithCaCspecialistCinterestCinCGlaucoma.CEye(Lond)35:2524-2534,C2021***

手洗いチェッカー直視による光傷害の1 例

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):205.209,2026c手洗いチェッカー直視による光傷害の1例岡本紀夫*1坂口裕和*2*1おかもと眼科*2広島大学大学院医学系科学研究科視覚病態学CACaseofLightDamageCausedbyDirectViewingofaHandwashingCheckerNorioOkamoto1)andHirokazuSakaguchi2)1)Okamotoeyeclinic,2)GraduateSchoolofBiomedicalSciencesDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,HiroshimaUniversityC目的:手洗いチェッカー直視による光傷害の長期経過を報告する.症例:患者はC38歳,女性.コンタクトレンズ処方希望でおかもと眼科を受診した.現病歴はC20歳のときに食品会社に勤務中,興味本位で手洗いチェッカーを直視したあとから視力低下を自覚した.視力は右眼(1.2),左眼(0.4Cp)で左眼の視力が低下していた.眼底検査で,右眼は正常,左眼は網膜下白斑がみられ,黄斑部の反射は不明瞭であった.光干渉断層計(OCT)で網膜色素上皮(RPE)ラインの菲薄化がみられた.フルオレセイン蛍光造影とインドシアニングリーン蛍光造影で脈絡膜新生血管はみられなかったが,眼底自発蛍光は低蛍光であった.X+5年C7月,半年前よりもやもやしたものが見えることで再診した.左眼(0.2)と低下していた.左眼の眼底所見で黄斑部の網膜変性が進行していた.OCTで初診時と比較して脈絡膜信号の増強がみられた.X+10年の左眼視力は(0.2)で,眼底所見は地図状萎縮を呈していた.OCTで,萎縮型加齢黄斑変性(AMD)でみられる外顆粒層の消失,外境界膜の途絶,脈絡膜信号の増強,RPEラインの菲薄化があった.結論:手洗いチェッカーを直視した場合は,長期間にわたって注意深く経過観察をする必要がある.CPurpose:ToCreportCtheClong-termCclinicalCcourseCinCaCcaseCofClight-relatedCocularCdamageCcausedCbyCdirectCviewingofahandwashingchecker.CaseReport:A38-year-oldfemalevisitedOkamotoEyeClinicforacontactlensCprescription.CWhenCsheCwasC20CyearsCold,CsheCwasCworkingCatCaCfoodCcompanyCwhenCsheCbecameCawareCofCvisionlossafterlookingdirectlyatahandwashingcheckeroutofcuriosity.Visualacuity(VA)was1.2intherighteyeand0.4inthelefteye,withdecreasedvisioninthelefteye.Fundusexaminationrevealednormal.ndingsintherighteyeandsubretinalwhitedotsinthelefteyewithabnormalmacularre.ection.Opticalcoherencetomog-raphy(OCT)showedCthinningCofCtheCretinalCpigmentCepithelium.CFluoresceinCandCindocyanineCgreenC.uorescenceCfundusexaminationrevealednochoroidalneovascularization,yetfundusauto.uorescencewashypo.uorescent.InJuly2015,thepatientwasseenagainduetoahazyappearancefrom6-monthsearlier,andVAinthelefteyehaddecreasedto0.2.Fundusexaminationofthelefteyerevealedprogressiveretinaldegenerationinthemaculararea,andOCTshowedenhancedchoroidalsignalcomparedtotheinitialexamination.Atafollow-upvisit10-yearslat-er,VAwas0.2inthelefteye,andfundus.ndingsshowedatrophyofthefundus.OCTshowedlossoftheoutergranularlayer,disruptionoftheouterlimitingmembrane,enhancedchoroidalsignal,andretinalpigmentepitheli-umCthinning.CConclusion:InCpatientsCwithClight-relatedCocularCdamageCdueCtoCdirectCobservationCofCaChandwashCchecker,carefullong-termfollow-upisrequired.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(2):205.209,C2026〕Keywords:手洗いチェッカー,ブラックライト,光傷害,黄斑萎縮,長期経過.handwashingchecker,blacklight,lightinjury,macularatrophy,long-termfollowup.Cはじめにーザー誤照射などの報告が散見される1).今回,コンタクト光が眼球に及ぼす作用は,熱作用,光化学作用,物理的作レンズ処方を希望にて筆者の施設(おかもと眼科)を受診し,用などがあげられる.レーザーポインターやCNd:YAGレ眼底所見で黄斑部に異常所見がみられたので,問診でC18年〔別刷請求先〕岡本紀夫:〒564-0041大阪府吹田市泉町C5-11-12-312おかもと眼科Reprintrequests:NorioOkamoto,M.D.,Ph.D.,OkamotoEyeClinic,5-11-12-312,Izumi-ChoSuita,Osaka564-0041,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(87)C205図1初診時および初診10年後の眼底写真a:初診時カラー眼底写真.黄斑部の反射は不明瞭で網膜下白斑がみられた(.).b:初診C10年後の眼底写真.地図状の萎縮がみられた.図2初診時IR画像網膜下白斑は強い高反射となっている(.).前に食品会社勤務中に手洗いチェッカーを直視したあとより視力低下を自覚したことから,手洗いチェッカーの使用されているブラックライトが原因で視力低下をきたしたと考えられたC1例を経験したので報告する.CI症例初診日:(X年C9月).患者:38歳,女性.主訴:コンタクトレンズ(contactlens:CL)処方を希望.既往歴:なし.現病歴:20歳のときに食品会社に勤務中,興味本位で手洗いチェッカーを,下から左に頸を傾け,左眼で約C10Ccmの距離より約C1分程度覗いた後から左眼の視力低下を自覚した.初診時所見:視力は右眼C0.03(1.2C×sph.7.25D),左眼0.05(0.4CpC×sph.6.00D).眼圧は正常で,前眼部,中間透光体に異常をみられなかった.眼底は,右眼は正常,左眼は網膜下白斑がみられ,中心窩の反射は不明瞭であった(図1a).赤外線画像(infraredimage:IR)では,網膜下白斑は高反射を示した(図2).光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で左眼の網膜色素上皮(retinalCpig-mentepithelium:RPE)ラインの菲薄化,網膜下線維性瘢痕(高さC145Cμm)がみられた(図3a).大学病院に精査目的にて紹介した.フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinCangi-ography:FA)とインドシアニングリーン蛍光造影(indocy-aninegreenangiography:IA)では脈絡膜新生血管(choroi-dalneovascularization:CNV)がみられなかったが,眼底自発蛍光は低蛍光であった.経過:半年前よりもやもやしたものが見えることでCX+5年C7月に再診した.視力は右眼C0.04(1.0C×sph.9.25D),左眼C0.01(0.2C×.7.5D)であった.変視はなかった.左眼の眼底所見で黄斑部の網膜変性が進行していた.OCTで,右眼は脈絡膜陥凹を認め,左眼は網膜下線維性瘢痕(145Cμm)に変化がなく,初診時と比較して脈絡膜信号の増強がみられ206あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026(88)ab図3初診時および5年後の眼底写真とOCTa:初診時カラー眼底写真とOCT.網膜色素上皮(RPE)ラインの菲薄化がみられ(),網膜下線維性瘢痕(高さC145Cμm)がある(.).b:5年後の眼底写真とCOCT.眼底写真は,初診時と比較して萎縮が進行している(.).OCTで網膜下線維性瘢痕に変化がないが,脈絡膜信号の増強がある(.).図4初診10年後の黄斑萎縮のOCT(水平断)CompleteRPEandouterretinalatrophy(cRORA)のCOCT所見と類似している.た(図3b).で認められる外顆粒層の消失,外境界膜の途絶,脈絡膜信号CX+10年C3月に精査希望で再診した.視力は右眼C0.04(1.0の増強,RPEラインの菲薄化がみられた.網膜下線維性瘢痕に変化はなかった(図4).プロジェクション画像で脈絡膜眼底所見は地図状萎縮を呈していた(図1b).OCTで,萎縮中大血管が明瞭にみられ,光干渉断層血管撮影(OCTCangi-型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)ography:OCTA)でも脈絡膜中大血管が明瞭にみられるが,5D)であった.左眼のC.7×.,左眼0.01(0.29.25D).sph×(89)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026207図5初診10年後のプロジェクション画像(a)とOCTangiography(OCTA)(b)脈絡膜中大血管が明瞭にみられる.脈絡膜新生血管(CNV)はみられない.CNVはみられなかった(図5).X+10年C6月軽度の白内障がみられた.CII考按食品を扱う会社では,衛生管理のため紫外線を使用した機器が設置されている.殺菌灯,害虫灯,手洗いチェッカーがあり,それぞれ紫外線の波長が異なっている.ブラックライトとは,おもに紫外線を放射するライトで,蛍光物質を光らせる性質を利用したものである.紫外線は可視域外であるが,蛍光物質に当たると可視光線として反射して見えるため,さまざまな用途で使用されている.手洗いの際に洗い残しをチェックするために使われるブラックライトは,特殊な蛍光ローション(汚れに見立てた蛍光物質)を手に塗ったあと,手洗いをし,ブラックライトで照射することで洗い残しが光って見えるようにする機器である.これにより,手洗いの正確さを確認し,より衛生的な手洗いを実践するのに役立つ.食品を取り扱う人の手洗いをチェックし,食品衛生管理の向上に貢献している.本症例の眼底所見は,尾花の光傷害の報告のうち,410nmのブラックライトの照射をC2日間受けた症例の眼底所見とCOCTが類似している2).受傷C2カ月後のCOCTでは網膜の菲薄化と脈絡膜反射の亢進がみられたと報告している2).本症例は,30年近く前のことであるのでブラックライトの正確な数値は不明である.手洗いチェッカーに市販されているブラックライトの波長はC365.405Cnmであり,本症例は手洗いチェッカーに使用されているブラックライトを直視したことが原因で網脈絡膜症を発症した可能性がある.尾花の報告例2)と異なり,受傷後C18年経過してからの所見であC208あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026るが,尾花らのCOCT所見と一致していた.本症例はC10年間経過観察し,黄斑部の網膜変性が進行し地図状萎縮を呈した.光化学作用による傷害程度は網膜上の照射強度と照射時間の積で決まる3).波長はC380.550Cnmの青色光が物質励起をきたす.本症例はブラックライトを短距離で直視したため光化学作用を起こしたと考えた.本症例は初診時C38歳であり,経過観察中に軟性ドルーゼンがみられなかったのでCAMDは否定的である.近視性黄斑症にみられる,牽引黄斑症,CNV,網膜分離症を,経過観察中のCOCTでみられなかったので否定的である.トキソプラズマ網脈絡膜炎については,血液検査を行っていないが,眼底に両眼性で,特徴的な限局性黒色色素沈着病巣と灰白色のグリア増殖からなる境界明瞭な陳旧性瘢痕病巣が黄斑部に観察される.本症例ではみられなかったので否定的である.黄斑ジストロフィについては,ガイドラインの眼底所見で両眼の黄斑部に対称性の萎縮性病変,黄斑分離,あるいは沈着物などがみられると記載されている.本症例は片眼なので否定的である4).萎縮型CAMDは,加齢によるCRPE,視細胞,脈絡膜毛細血管の萎縮性変化を特徴とする疾患である.Bruch膜の肥厚・変性に伴い視機能が低下する.進行は緩やかで,通常10.20年ほどかけて徐々に進行する4).本症例のCX+10年のCOCTの水平断の所見は,萎縮型CAMDに類似している.近年,OCTに基づいた黄斑部萎縮の新しい定義が提唱され6,7),AMDにみられる黄斑萎縮はC4分類された.そのなかでCcompleteCRPECandCouterCretinalatrophy(cRORA)は,C①C250Cμm以上の後方の脈絡膜信号の増強領域,②C250Cμm以上のCRPEラインの菲薄化,消失,③視細胞変性所見(90)(ellipsoidzone,interdigitationzone,externalClimitedmembrane,外顆粒層の消失),④CRPEに裂孔所見がない,以上のすべてを満たすものである.本症例は,日本の萎縮型AMDの新定義の眼底所見の必須所見と画像所見(cRORAの①.④,自発蛍光所見)が一致していることから7),除外規定の一つに加えられるべきと考えた.本症例はブラックライトを直視したことにより,数十年後には萎縮型CAMD様の所見になった.尾花1)は白熱球から蛍光灯,LEDへと変わるにつれ,光障害をきたしやすい青色光の曝露量は増加することから,一生に受ける青色光曝露量が確実に増加することを示唆している.近年,温暖化によりさらに青色光の曝露量も増加し,AMDの増加につながる可能性がある.Kimら8)は,夜間の屋外人工灯が滲出性CAMDの危険因子である可能性を示唆している.柳9)は,萎縮型AMDを漫然と眼底検査のみを行い経過観察することだけは禁物であり,少なくともCOCTを使ってフォローアップし,必要に応じてCOCTAを行うことと記載している.Teoら10)は,萎縮型CAMDについて,日本人,ハワイ在住日系人,ハワイ在住白人,のC3群で比較を行い,日本とハワイの比較で紫外線曝露量の違いがあげられている.本症例は一度に大量の紫外線を曝露したことにより萎縮型CAMD様の病変を発症したと考えた.本症例は,18年前に手洗いチェッカーのブラックライトを直視したため黄斑萎縮をきたし,筆者の施設受診C10年間で萎縮型CAMD様に進行していることから,今後もさらに進行する可能性が高いので注意深く経過観察をする必要がある.近年,ブラックライトは,電車の台車の点検,ネイルサロンのジェルネイルの硬化などにも使用されているので,直視しないよう啓発する必要がある.文献1)尾花明:光による眼の障害.照明学会誌C97:621-626,C20132)ObanaCA,CBrinkmannCR,CGotoCYCetal:ACcaseCofCretinalCinjuryCbyCaCvioletClightCemittingCdiode.CRetinCCasesCBriefCRepC5:223-226,C20113)尾花明:光が眼に与える影響.日レ医誌C32:438-443,C20124)近藤峰生,寺崎浩子,辻川明孝ほか:黄斑ジストロフィの診断ガイドライン.日眼会誌123:424-442,C20195)高橋寛二,白神史雄,石田晋ほか:萎縮型加齢黄斑変性の診断基準.日眼会誌119:671-677,C20156)SaddaSR,GuymerR,HolzFGetal:Consensusde.nitionforatrophyassociatedwithage-relatedmaculardegener-ationonOCT:classi.cationofatrophyreport3.Ophthal-mologyC125:537-548,C20187)上田奈央子:萎縮型加齢黄斑変性の診断と治療.あたらしい眼科42:23-30,C20258)KimCSH,CKimCYK,CShinCYICetal:NighttimeCoutdoorCarti.cialClightCandCriskCofCage-relatedCmacularCdegenera-tion.JAMANetwOpenC7:e2351650,C20249)柳靖雄:高齢者の網膜色素上皮隆起.診断力がアップする!OCT・OCTAパーフェクト読影法,p104-113,羊土社,202310)TeoCKYC,CFujimotoCS,CSaddaCSRCetal:GeographicCatro-phyCphenotypesCinCsubjectsCofCdi.erentethnicity:Asia-Paci.cCOcularCImagingCSocietyCWorkCGroupCReportC3.COphthalmolRetinaC7:593C604,C2023***(91)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C209

Microsporidia角結膜炎を繰り返し発症した1例

2026年2月28日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(2):201.204,2026cMicrosporidia角結膜炎を繰り返し発症した1例上松聖典*1井上大輔*1モハメド・タラアト・モハメド*1唐迪雅*1草野真央*1ヤッセル・ヘルミー・モハメド*1八木田健司*2大石明生*1*1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科・視覚科学分野*2国立感染症研究所寄生動物部CACaseofRepeatedMicrosporidialKeratoconjunctivitisMasafumiUematsu1),DaisukeInoue1),MohamedTalaatMohamed1),DiyaTang1),MaoKusano1),YasserHelmyMohamed1),KenjiYagita2)andAkioOishi1)1)DepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,NagasakiUniversity,2)DepartmentofParasitology,TheNationalInstituteofInfectiousDiseasesC目的:Microsporidia角結膜炎は,土や水への曝露により発症し,とくに東南アジアやインドでの報告が多いが,日本でも発症例が増加している.本報告では,5年間にC3回CMicrosporidia角結膜炎を発症した症例を経験した.症例:27歳,男性で屋外スポーツ選手であり,グラウンドの土や水が目に飛入する機会が多かった.初発時,左眼に結膜充血,眼瞼腫脹を認め,紹介受診となった.左眼矯正視力はC0.2,角膜上皮内に散在する混濁とフルオレセイン染色陽性所見を認めた.点眼治療によりC11日めで軽快し,視力はC1.2に改善した.2年後に左眼,3年後に右眼が再発し,PCR法で角結膜炎の原因となるCMicrosporidia(Vittaformacorneae)が検出された.発症後,多発性角膜上皮下混濁が持続した.練習後の洗眼やヨード製剤点眼の指導し,4年後は発症しなかった.結論:土や水の曝露を繰り返す環境では再発のリスクがあるため,注意が必要である.CPurpose:Toreportacaseofrepeatedmicrosporidialkeratoconjunctivitis,anemerginginfectioninJapanthatisCtypicallyClinkedCtoCsoilCandCwaterCexposure.CCase:ThisCreportCinvolvedCaC27-year-oldCmaleCoutdoorCballplayerCwhoCdevelopedCmicrosporidialCkeratoconjunctivitisC3CtimesCoverCaC5-yearCperiod.CInitially,CheCpresentedCwithCcon-junctivalhyperemiaandeyelidswellinginhislefteye,withdi.usecornealepithelialopacities.Treatmentwitheyedropsledtoresolutionin11days,improvingthevisualacuityinthateyefrom0.2to1.2.Twoyearslater,hislefteyeCrelapsed,CfollowedCbyCtheCrightCeyeC1CyearClater,Cwithmicrosporidia(Vittaformacorneae)identi.edCinCcornealCscrapingsandpractice.eldsoil.Histeammatesalsodevelopedsimilarinfections.Postinfection,multiplesubepithe-lialcornealopacitiespersisted.Preventivemeasures,includingeyewashandiodine-basedeyedropsaftersoilandwaterexposure,ledtonoreoccurrencesinthe4thyear.Conclusion:RepeatedsoilexposureincreasestheriskofmicrosporidialCkeratoconjunctivitisCrecurrence,ChighlightingCtheCneedCforCspecialCattentionCinChigh-riskCenviron-ments.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(2):201.204,C2026〕Keywords:微胞子虫,角結膜炎,再発,屋外スポーツ.Microsporidia,Vittaformacorneae,keratoconjunctivitis,reoccurrence,outdoorsports.Cはじめに微胞子虫(Microsporidia)は,真菌に近い特徴をもつ単細胞真核生物であり,ヒトを含む多様な宿主に感染し,おもに免疫不全者においては多臓器における感染症を引き起こす1).近年では,免疫正常者においても角結膜炎の原因病原体として報告されており,とくに東南アジアやインドでは多くの症例が報告されている2.4).Microsporidia角結膜炎は,特徴的な角膜上皮内の顆粒状浸潤を呈するが,非特異的な角膜炎と鑑別が困難な場合が多い.診断には塗抹標本による好酸性染色やポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction:PCR)検査が有用である5).治療に関しては未だ治療法は確立されていないのが現〔別刷請求先〕上松聖典:〒852-8501長崎県長崎市坂本C1-7-1長崎大学大学院医歯薬総合研究科眼科・視覚科学分野Reprintrequests:MasafumiUematsu,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,NagasakiUniversity,1-7-1Sakamoto,Nagasaki-city,Nagasaki852-8501,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(83)C201状である.自然軽快することもあるが,抗菌薬,抗真菌薬,殺菌消毒用点眼薬の点眼,アルベンダゾールの内服や角膜擦過による治療が有効とされている6).Microsporidiaはおもに汚染された土や水を介して伝播すると考えられており,農業従事者や屋外スポーツ選手に多く発症がみられる5).今回,5年間にC3回CMicrosporidia角結膜炎を発症した症例を経験したため,その臨床経過について報告する.CI症例患者:27歳,男性.主訴:左眼充血,羞明.既往歴:なし.眼科受診歴:なし.経過中も含めコンタクトレンズ使用歴なし.職業:屋外スポーツ選手.現病歴:患者は,屋外スポーツ活動中にグラウンドの土が頻繁に眼に飛入していた.X年C10月に左眼の結膜充血と眼瞼腫脹を認め,近医眼科を受診した.流行性角結膜炎が疑われ,1.5%レボフロキサシンおよびC0.1%フルオロメトロン点眼による治療を受けたが,症状は改善しなかった.数日後には他院眼科を受診し,左眼に毛様充血,点状角膜混濁,樹枝状潰瘍様の所見を認めた.ステロイド点眼は中止され,セフメノキシム点眼およびアシクロビル眼軟膏で治療が行われたが改善しなかった.アデノチェック検査は陰性であった.精査加療目的に長崎大学病院(以下,当院)へ紹介受診となった.初診時所見:視力は右眼C1.0(矯正C1.5),左眼C0.2(矯正不能)であった.眼圧は両眼ともC16CmmHgであった.眼瞼結膜の所見として,右眼に異常は認めなかったが,左眼には充血と乳頭形成を認めた.眼球結膜に関しても,右眼は異常なく,左眼に充血を認めた.角膜所見では,右眼は清明であったが(図1a,b),左眼では上皮内に散在する楕円形や勾玉状の浸潤が認められ,フルオレセイン染色で陽性を示した(図1c,d).前房は両眼とも正常深度であり,炎症細胞は認められなかった.水晶体および眼底所見にも異常はなかった.ウイルス感染の鑑別として実施したチェックメイトヘルペスアイ検査は陰性であった.経過:左眼星状角膜炎およびアレルギー性結膜炎を疑い0.1%ベタメタゾンおよびエピナスチン点眼を開始したところ,11日後に症状は軽快し(図1e,f),終診となった.後日に,特徴的な所見と経過からCMicrosporidia角結膜炎が疑われた.X+1年には発症はなかった.CX+2年夏には同じスポーツチームに属する同僚C5名が本症例と同様の所見を示す角結膜炎を発症し,うちC4例の角膜上皮擦過物とグラウンドの土からCPCR検査で角結膜炎の原因となるCMicrosporidia(Vittaformacorneae)が検出され,Microsporidia角結膜炎の集団発生と判断された7).X+3年夏にも同僚C9名も同様の症状を呈した.そのうち,本症例を含めたC2例の角膜上皮擦過物と,グラウンドの土から,PCR検査でCMicrosporidia(V.corneae)が検出された.本症例においてもCX+2年夏に左眼に同様の所見を示す角結膜炎を発症したが,当院は受診せずに近医で加療を受けた.X+3年春には左眼羞明を訴えたため当院を受診した.左眼多発性角膜上皮内混濁を認め,0.1%フルオロメトロン点眼を処方し,症状は軽減した.同年夏には右眼に同様の角結膜炎(図2a,b)を発症したため当院を受診し,Microspo-ridia角結膜炎と診断した.ボリコナゾール点眼液,ピマリシン眼軟膏,ガチフロキサシン点眼液,殺菌消毒用点眼薬(サンヨード),および多発性角膜上皮内混濁の予防のため0.1%フルオロメトロン点眼液を処方した.その後に受診はなかったが,症状は改善したとの報告を受けた.チームに予防のため点眼型洗眼薬(ウェルウォッシュアイ)および殺菌消毒用点眼薬(サンヨード)の使用を勧めた.X+4年夏には,同僚で感染者が生じたものの,本症例におけるCMicro-sporidia角結膜炎の発症は認められなかった.CII考按Microsporidiaによる眼感染症には,大きく分けてC2タイプがある.一つは,おもに免疫不全の症例で重度の感染を引き起こす角膜実質炎型,もう一つは健常者でも角結膜上皮に感染を生じる角結膜炎型である8).Microsporidia角膜実質炎に関しては,2016年に友岡らが,ステロイド点眼投与中に真菌感染を伴うCMicrosporidia角膜実質炎を発症した症例を日本で初めて報告した9).さらに,2019年にはCUenoらが,角膜内皮移植後にステロイド点眼を投与中の患者で,真菌感染を併発したCMicrosporidia角膜実質炎を報告している10).一方で,Microsporidia角結膜炎については,2020年に鈴木らが,シンガポールで感染し,日本に一時帰国中にMicrosporidia角膜炎を発症した症例を報告した11).さらに2023年には,筆者らがCMicrosporidia角結膜炎の集団発生を報告した7).本症例は,この集団発生のC2年前に発症しており,日本国内で感染したCMicrosporidia角結膜炎の初めての症例報告と考えられる.本症例はCX年に初発した際,Microsporidia角結膜炎とは診断されなかった.しかし,その後の特徴的な所見と経過を検討した結果,Microsporidia角結膜炎の可能性が疑われた.2年後,本症例と同様の所見を示すC5名の同僚が発症し,角結膜擦過物およびグラウンドの土からCMicrosporidia(V.Ccor-neae)が検出されたことから,集団発症と判断した.同時期に本症例も同様の角結膜炎を発症し,近医で加療した.さらに翌年には,本症例を含む同僚C9名が右眼にCMicrosporidia角結膜炎を発症し,近隣の別のチームの選手C1名にも罹患が認202あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026(84)b右眼cdef図1初診時および11日後の前眼部写真右眼は清明であったが(Ca,b),左眼では角膜上皮内に散在する楕円形や勾玉状の浸潤が認められ,フルオレセイン染色で陽性を示した(Cc,d).11日後には角膜は清明となり,フルオレセイン染色も陰性となった(Ce,f).められた.また,当院で確認されたCMicrosporidia角結膜炎の症例はすべて同一の屋外競技(サッカー)に関連しており,この競技の特性が発症に関与している可能性が示唆された.この競技では,ボールと頭が接触する機会があり,ボールに付着した水や土が眼に飛入する可能性がある.また,特定のプレーヤーは手でボールを扱うことができるが,捕球の際にグラウンドに寝そべることがあるため,その際にグラウンドの水や土が眼に入るリスクがある.本症例の所属チームは,養育された芝の上で競技を行っており,芝の上に寝そべる動作やボールを眼の前で扱う機会が多い.芝の養育には肥料が使用されるため,夏季の高温多湿の環境と相まってMicrosporidiaの増殖が促進された可能性も考えられる.最近では,関東地方の同じ競技のクラブチームでも集団発生が確認された(角膜カンファランスC2025,97,2025).他の競技では,ラグビー3)やゴルフ12)においてCMicrosporidia角結膜炎の発症が報告されている.また,Microsporidia角結膜炎の発症は夏季の高温多湿の環境下で多く,とくに降雨後の発症が多いとされており12),本症例の発症時期も同様の気候であった.感染の条件や経路の特定のため,今後さらなる調査が求められる.(85)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C203図2X+3年後の右眼前眼部写真右眼角膜上皮内に散在する楕円形や勾玉状の浸潤が認められ(Ca),フルオレセイン染色で陽性を示した(Cb).本症例の初発時にはCMicrosporidia角結膜炎の診断に至らず,ステロイド点眼および抗アレルギー点眼で治療が行われた.抗真菌薬や消毒薬の点眼や,アルベンダゾールの内服,角膜上皮擦過は実施されなかったが,11日後には角膜は清明となった.免疫不全のない本症例では,免疫反応によって病原体が排除され,自然軽快した可能性が考えられる.ステロイド点眼は感染の遷延や,重症なCMicrosporidia角膜実質炎の発症を引き起こす可能性があるため9,10),慎重に使用すべきである.本症例では,必要に応じて点眼型洗眼薬および殺菌消毒用点眼薬を推奨したところ,4年後は新たな発症は認められなかった.競技後の洗眼や異物飛入時の殺菌消毒用点眼薬の使用がCMicrosporidia角結膜炎の予防に有効であるかについては,今後さらなる検討が必要である.また,本症例はコンタクトレンズ(contactlens:CL)装用者ではなかったが,X+2年の集団発生ではC5例中C3例がCCL装用者であり7),CL装用との関連の検討も望まれる.Microsporidia角結膜炎は繰り返し発症する可能性があるため,リスクの高い環境にいる人々への予防策の啓発が重要である.本症例では,スポーツ活動中の土や水の曝露がおもな感染経路と考えられ,同僚にも集団発生が認められた.今後は,日本においてもCMicrosporidia角結膜炎の発症が増加する可能性があり,注意が必要である.利益相反上松聖典【N】,井上大輔【N】,モハメドタラアトモハメド【N】,唐迪雅【N】,草野真央【N】,ヤッセルヘルミーモハメド【N】,八木田健司【N】,大石明生【N】文献1)DidierCES,CWeissCLM.Microsporidiosis:currentCstatus.C204あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026CurrOpinInfectDis19:485-492,C20062)FanNW,WuCC,ChenTLetal:MicrosporidialkeratitisinCpatientsCwithChotCspringsCexposure.CJCClinCMicrobiolC50:414-418,C20123)KwokCAK,CTongCJM,CTangCBSCetal:OutbreakCofCmicro-sporidialkeratoconjunctivitiswithrugbysportduetosoilexposure.Eye(Lond)C27:747-754,C20134)MalikCS,CIshaqCM,CNayyarCSCetal:MicrosporidialCkerati-tis-FirstCcaseCseriesCofCaCrareCpathogenCinCtheCwakeCofC.ooddisastersof2022inPakistan.JCollPhysiciansSurgPakC32:SS165-SS167,C20225)SharmaCS,CDasCS,CJosephCJCetal:MicrosporidialCkerati-tis:needCforCincreasedCawareness.CSurvCOphthalmolC56:C1-22,C20116)SabhapanditCS,CMurthyCSI,CGargCPCetal:MicrosporidialCstromalkeratitis:clinicalCfeatures,CuniqueCdiagnosticCcri-teria,andtreatmentoutcomesinalargecaseseries.Cor-neaC35:1569-1574,C20167)UematsuM,MohamedYH,KusanoMetal:Microsporid-ialCkeratoconjunctivitis-FirstCoutbreakCinCJapan.CBMCCInfectDisC23:752,C20238)MoshirfarM,SomaniSN,ShmunesKMetal:Anarrativereviewofmicrosporidialinfectionsofthecornea.Ophthal-molTherC9:265-278,C20209)友岡真美,鈴木崇,鳥山浩二ほか:真菌感染を併発したMicrosporidiaによる角膜炎のC1例.あたらしい眼科C31:C737-741,C201410)UenoCS,CEguchiCH,CHottaCFCetal:MicrosporidialCkeratitisCretrospectivelyCdiagnosedCbyCultrastructuralCstudyCofCformalin-.xedCpara.n-embeddedCcornealtissue:aCcaseCreport.AnnClinMicrobiolAntimicrobC18:17,C201911)鈴木崇,岡野喜一朗,鈴木厚ほか:シンガポールから日本に一時帰国中に認められたCMicrosporidiaによる角膜炎の1例.あたらしい眼科C37:332-335,C202012)LohCRS,CChanCCM,CTiCSECetal:EmergingCprevalenceCofCmicrosporidialCkeratitisCinSingapore:epidemiology,Cclini-calfeatures,andmanagement.OphthalmologyC116:2348-2353,C2009(86)

基礎研究コラム:iPS細胞から視細胞を作製する

2026年2月28日 土曜日

iPS細胞から視細胞を作製する視細胞の分化誘導iPS細胞(inducedpluripotentstemcell;人工多能性幹細胞)は,ヒトの皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子(Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Myc)を導入し培養することによって作製されます.山中伸弥先生らのグループはC2007年C11月に初めてヒトCiPS細胞の作製に成功したと発表しました.iPS細胞はほぼ無限に増殖する能力(増殖能)と全身のさまざまな組織や臓器を構成する細胞へと分化する能力(分化能)という特徴をもっています.ヒト幹細胞から網膜オルガノイドを分化誘導する方法はC2012年に初めて報告され,それ以降多様なプロトコルが考案されてきました.オルガノイド(organoid)とは試験管内で幹細胞から作製されるミニチュアの臓器のことで,三次元構造をもつため生体組織に近い状態を再現できるメリットがあります.筆者のグループでは,2019年に神戸理化学研究所のチームにより考案された分化誘導方法1)を用いて網膜オルガノイドを作製し,網膜色素変性の疾患解析を行いました2).この方法では,iPS細胞を三つのステップを介してC180日間培養することで,内節,結合線毛(connectingcilium),外節といった微細構造をもつ視細胞を作製することができます(図1).しかし,網膜オルガノイドの作製には長期間の培養や複数のステップを要するという課題があります.そこで筆者のグループでは,より短期間かつ少ないステップで視細胞を作製することを目標とし,直接誘導法という技術に注目しました.この方法は,細胞の系統決定に重要な遺伝子を強制発現Ca網膜オルガノイドb視細胞の微細構造視細胞神経網膜双極細胞神経節細胞図1網膜オルガノイドと視細胞の微細構造a:180日間培養した網膜オルガノイドの明視野画像.神経網膜が表層部分に層状に形成されている.スケールバーは200Cμm.Cb:180日目の網膜オルガノイドを電子顕微鏡で観察した視細胞の微細構造.内節,結合線毛,外節が発達している.外節内には円板膜がみられるが,生体のようにきれいな多重構造にはなっていない.スケールバーはC1Cμm.大塚悠生兵庫県立尼崎総合医療センター眼科させることで,目的とする細胞へ転換させる技術です.具体的には,視細胞の発生過程に重要とされるCCRXとCNEU-ROD1という二つの転写因子をヒトCiPS細胞へ導入し培養することで,28日間という短期間で視細胞に特異的な遺伝子を発現する誘導型視細胞様細胞を作製できました(図2)3).今後の展望誘導型視細胞様細胞とオルガノイドはそれぞれメリット,デメリットが存在し,研究の目的によって両者を使い分けていく必要があります.直接誘導法は上述の通り短期間で視細胞マーカーを発現する誘導細胞を作製できますが,本来視細胞がもつ微細構造を形成することはできません.よって細胞内での詳細な分子の局在等を評価したい場合は,オルガノイドによる評価が必須となります.一方で,網膜オルガノイドにおいても視細胞外節は生体と同じ多重膜構造を再現することはむずかしいのが現状です.培養期間を延長してもこういった多重構造が形成されない原因ははっきりわかっていませんが,特定の成熟因子が不足している可能性,網膜色素上皮細胞が視細胞外節に隣接していない点などが考えられます.オルガノイドを網膜色素上皮細胞と共培養を行うなどして,より正確な構造の外節をもつ視細胞が作製できれば,今後疾患モデルとしての幅が大きく広がると予想されます.文献1)KuwaharaA,YamasakiS,MandaiMetal:Precondition-ingtheinitialstateoffeeder-freehumanpluripotentstemcellsCpromotesCself-formationCofCthree-dimensionalCretinalCtissue.SciRepC9:18936,C20192)OtsukaY,ImamuraK,OishiAetal:Phototoxicityavoid-anceisapotentialtherapeuticapproachforretinaldystro-phyCcausedCbyCEYSCdysfunction.CJCICInsightC9:e174179,C20243)OtsukaY,ImamuraK,OishiAetal:One-stepinductionofCphotoreceptor-likeCcellsCfromChumanCiPSCsCbyCdeliver-ingtranscriptionfactors.iScienceC25:103987,C2022iPS細胞視細胞マーカー細胞核CRX+NEUROD128日間図2直接誘導法による視細胞様細胞の作製iPS細胞にC2種類の転写因子(CRXとCNEUROD1)を導入し培養することで,視細胞マーカー(Recoverin)を発現した細胞を誘導できる.スケールバーはC50Cμm.(75)あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026C1930910-1810/26/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:273.Uveitis-glaucoma-hyphema(UGH)症候群(初級編)

2026年2月28日 土曜日

273Uveitis-glaucoma-hyphema(UGH)症候群(初級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめにUveitis-glaucoma-hyphema(UGH)症候群は,眼内レンズ開発期の隅角支持型前房レンズや虹彩支持型前房レンズなどにみられた合併症で,ハプテックスによる隅角への刺激などにより,ぶどう膜炎,再発性前房出血および緑内障を引き起こすものである1).後房レンズが主流となってからはほとんど見られなくなったが,硝子体手術関連では,眼内レンズ毛様溝縫着術後や眼内レンズ強膜内固定術後にCUGH症候群が発症したとする報告が近年散見される2).C●症例提示63歳,男性.アトピ-性白内障に対してC30歳時に両眼白内障手術を受けている.左眼の眼内レンズが下方に偏位した(図1)ため,眼内レンズ摘出+硝子体手術+眼内レンズ毛様溝縫着術を施行した.その後,再発性虹彩捕獲が誘因と考えられる前房出血,虹彩炎,眼圧上昇(38CmmHg)をきたした(図2)ため,角膜輪部からC30G針を前房内に刺入し,眼内レンズを後方に圧排して虹彩捕獲を整復した.そのC1カ月後に再発したため,同様の処置を施行した.その後は眼圧も下降し,前房出血も吸収して矯正視力はC1.2に改善している(図3).眼内レンズ毛様溝縫着術後のCUGH症候群と診断し,予防的周辺虹彩切除術を念頭に置きながら引き続き経過観察することにした.C●眼内レンズが関連するUGH症候群の特徴眼内レンズが関連するCUGH症候群には,Zinn小帯脆弱例,眼内レンズ偏位例,.外固定などで眼内レンズの光学部やハプティクスが虹彩や毛様体に接触している例,capsulartensionring使用例,虹彩.腫や毛様体.腫が眼内レンズと接触している例,などの報告がある.本提示例のように眼内レンズ毛様溝縫着術あるいは強膜内固定術後にCUGH症候群をきたしたとする報告も近年増加傾向にある.眼内レンズ毛様溝縫着術後はしばしば再発性虹彩捕獲をきたし,それが原因でCUGH症候群を(73)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1初診時の左眼細隙灯顕微鏡所見左眼の眼内レンズが脱臼していたため,眼内レンズ毛様溝縫着術を施行した.図2UGH症候群発症時の左眼細隙灯顕微鏡所見再発性虹彩捕獲が誘因と考えられる前房出血,虹彩炎,眼圧上昇をきたしていた.図3虹彩捕獲整復後の左眼細隙灯顕微鏡所見眼圧は下降し,前房出血も消退した.きたすことも多い.C●UGH症候群の治療眼内レンズ振盪や脱臼が原因の場合には,眼内レンズ摘出に加えて眼内レンズ毛様溝縫着術あるいは眼内レンズ強膜内固定術を行うが,それ自体がまたCUGH症候群の原因になることもあるので,注意深く経過観察する.治療のオプションとしては,再発性虹彩捕獲の誘因であるCreverseCpupillaryblockを解除するためのレーザー周辺虹彩切除術などがある3).文献1)DurrCGM,CAhmedIIK:IntraocularClenscomplications:Cdecentration,Cuveitis-glaucoma-hyphemaCsyndrome,Copaci.cation,CandCrefractiveCsurprises.COphthalmologyC128:e186-e194,C20202)KansalCV,COnasanyaCO,CColleauxCKCetal:OutcomesCofCusingsutureless,scleral.xatedposteriorchamberintraoc-ularlenses.CSeminOphthalmol34:488-496,C20193)SinghCH,CModabberCM,CSafranCSGCetal:LaserCiridotomyCtoCtreatCuveitis-glaucoma-hyphemaCsyndromeCsecondaryCtoCreverseCpupillaryCblockCinCsulcus-placedCintraocularlenses:CaseCseries.CJCCataractCRefractCSurgC41:2215-2223,C2015あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026191

考える手術:裂孔原性網膜剝離に対する強膜バックリング手術

2026年2月28日 土曜日

考える手術.監修松井良諭・奥村直毅裂孔原性網膜.離に対する強膜バックリング手術石田友香杏林大学医学部附属杉並病院眼科強膜バックリング手術(SB)は,硝子体手術に比べ白内障進行や増殖硝子体網膜症(PVR)の発症が少なく,術後体位制限を必要としない点が特徴である.一方で,術中・術後の疼痛が強いことや,複視,近視化・乱視増強などにより術後早期の視機能が不安定になりやすい点は欠点であり,術前の眼底検査や術中操作には高い経験が要求される.SBの適応は,とくに後部硝子体.離が未完成の若年者の裂孔原性網膜.離において重要性である.若年者で術前診察では,.離の形と広がり,裂孔位置,硝子体牽引,周辺部血管異常を丁寧に評価することが重要である.強膜圧迫を用いた鋸状縁までの観察とチャート作成,それを基に立てた手術計画が手術成否を左右する.術中は,出血を最小限に抑え,冷凍凝固を過剰に行わず確実に裂孔を押さえ,適切な位置にバックルを縫着することが重要である.術後は疼痛管理と慎重な経過観察を要し,微細な変化は広角光干渉断層計のマップ画像で比較するとわかりやすい.網膜.離は100%の復位が容易ではない疾患である.患者の不安に向きあい,「失ったもの」だけでなく「残せた視機能」を大切に使いながら社会復帰することもサージャンの重要な役割である.聞き手:裂孔原性網膜.離(rhegmatogenousretinal細な眼底検査が必要で,手術時間が長く,術中術後の疼detachment:RRD)に対する強膜バックリング手術(scler-痛が強いこと,眼球運動障害や近視化・乱視増強で一時albuckling:SB)のメリット・デメリットを教えてください.的に見えにくくなることがデメリットです.また,術者石田:SBは硝子体手術に比べて白内障や増殖硝子体網の経験により成績が左右されるため,十分な教育体制が膜症(proliferativevitreoretinopathy:PVR)の発症が重要です.少なく,術後のうつ伏せが不要で,術中駆逐性出血や術後眼内炎も起こりにくい点が利点です.一方,術前の詳聞き手:SBの適応はどのように考えていますか.(71)あたらしい眼科Vol.43,No.2,20261890910-1810/26/\100/頁/JCOPY考える手術石田:後部硝子体.離が未完成の若年者RRDではSBが推奨されます.中高年でも,小裂孔による古い.離や網膜下索が主体の軽度PVRはSBで治しやすいです.安易に硝子体手術で網膜下索を取りに行くのは危険です.また,術後の体位制限がむずかしい患者では,早期離床を目的になるべくSBを選択しています.聞き手:術前診察でとくに注意している点はありますか.石田:輪状締結の要否の判断のために,外傷歴,アトピー,スポーツ歴,家族歴は詳しく問診します.また,どこから視野が欠けてきたのか,中心視野に歪みが出て何日経過しているかを聞きます.眼底検査では①.離の範囲と形,②裂孔の位置と牽引,③周辺部血管異常を重点的にみます.下方の.離で胞状の場合は,実は上方小裂孔から下液が流れ込んでいる場合が多く,孔の位置に注意が必要です.どの症例も多発裂孔,鋸状縁断裂,毛様体裂孔などを見逃さないように,仰向けに寝てもらい,強膜圧迫子,20Dレンズと双眼倒像鏡を用いて診察しますが,小さな弁状裂孔は,後ろから前に圧迫子を動かすと硝子体側への小さな立ち上がりとして発見できます.裂孔不明例では,そのような硝子体立ち上がり部位をすべてSBに乗せることで治ることが多いです.術前日に仰向け圧迫診察をして,患者の体のどの位置から診察し,どの程度の深さの圧迫でみえる孔なのかを,自分の体に覚えさせることで,バックリング手術の際のマーキングや冷凍凝固がスムーズに行えます.聞き手:術前計画はどのように立てていますか.石田:アトピー・外傷・家族性滲出性硝子体網膜症(familialexudativevitreoretinopathy:FEVR)では輪状締結を選択します.古い下方.離では長期下液残存を考慮しバンドを用いて輪状締結を行うことが多いです.それ以外では侵襲を最小にしつつ,裂孔の深さや段差に応じてバックルの幅や配置を決定します.輪状締結は脈絡膜循環を悪化させる可能性があるため,高齢者ではとくに慎重に行います.聞き手:術中の手順で工夫している点を教えてください.石田:結膜とTenon.を一塊で切開し,ラジアル切開の断端はバイクリル糸で結膜とTenon.を縫合し,分離しないようにします.筋周囲のTenon.を筋の血管から出血しないように鈍的に丁寧に除去し,筋に制御糸をかけたのち,結膜と筋の間のTenon.を切除します.マーキング後に冷凍凝固を行います.古く浅い下液があるとプローベ先端が網膜に届きにくいですが,裂孔直下で軽く動かして待っていると下液がどいてくれます.凝190あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026固が重ならないように横滑りしながら打っていきます.前のほうの孔は助手にその付近の制御糸を軽く持ってもらうと眼球が動かずにプローベを当てることができます.裂孔はバックル頂点より前方に来るようマットレス縫合し,針は強膜を薄く,なるべく長く通します.脈絡膜貫通していないか,糸はそっと引いて色素がついていないかを観察します.排液は強膜を広く開け,脈絡膜が少し盛り上がってからレーザーで孔を開けます.網膜陥頓に備え,私はバックルのある部位で頂点よりやや前に排液孔を作製するようにしています.術中の眼圧上昇に対してはサイドポートから排液して対処します.その際は,虹彩が陥頓しないように注意が必要です.また,高眼圧で眼底の血管が拍動していないかを確認しながら手術を施行しています.バックルを縫着したのち,糸の結び目は後方に移動させます.前にあると糸の露出の原因になることがあります.結膜-Tenon.,Tenon.-結膜の順に針をかけ,結膜の間にTenon.が挟まらないように丁寧に縫合します(動画①).近年は,シャンデリア照明を用いた眼底観察が広まっています(動画②).この場合は,感染,ポートが抜けて硝子体陥頓による医原性裂孔,水晶体接触に注意が必要であり,20Dと双眼倒像鏡を組み合わせで使用し,シャンデリア照明は最小限に使用し,早めに縫合するほうがよいと思います.聞き手:術後管理で心がけていることはありますか.石田:術後は疼痛が出る前にフルルビプロフェンアキセチルとアセトアミノフェンの点滴を帰室時から開始し,睡眠薬を併用して夜間の疼痛対策をしています.これにより夜間疼痛の訴えは少なく,朝には糸による異物感の訴えだけになる場合が多くなりました.術後は下液の吸収に時間がかかる場合も多く,広角光干渉断層計のマップ画像を使用して下液の引きを評価しています.聞き手:最後にSBを行ううえで大切にしていることを教えてください.石田:網膜.離で100%の復位はむずかしく,SBでも硝子体手術でも患者には辛い治療です.「SBが苦手だから硝子体手術を選ぶ」のではなく,その患者にとってベターと思われる手術方法を選択する必要があり,常に謙虚な態度で手術技術を磨く必要があると思っています.さらに,技術の提供だけでなく,網膜.離という重大な病気に急になってしまった患者の不安や辛い気持ちに寄り添うことも重要です.とくに黄斑部の.離例で後遺症が残る場合は,「失ったもの」より「残せた視機能」に目を向けてもらい,社会復帰まで支援することがサージャンの使命だと考えています.(72)