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コンタクトレンズセミナー:英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く コンタクトレンズ装用に伴う合併症(2)

2025年5月31日 土曜日

■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く17.コンタクトレンズ装用に伴う合併症(2)糸井素啓道玄坂糸井眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C9章はコンタクトレンズ装用に伴う合併症についてである1).今回はそのC2回として,代謝性合併症(角膜低酸素),メカニカルストレス,毒性および過敏症について紹介する.CMetaboliccomplications角膜低酸素に起因する合併症が「代謝性合併症」として紹介されている.コンタクトレンズ(CL)装用による角膜低酸素は,レンズ素材の酸素透過性や涙液交換の程度に左右される.そのため,近年のレンズ素材の進歩に伴って角膜低酸素による障害の頻度や重症度は低下しているが,高酸素透過係数(Dk)レンズの普及の遅れやレンズのデザイン,度数による厚みの制約,個人差の影響などにより,依然として低酸素関連の合併症が発生していることが述べられている.本章では,角膜低酸素に関連する各合併症について,その所見,可逆性の有無,発症の時間経過(短期的・長期的),および原因となりやすいレンズの種類が記載されているが,角膜内皮障害はCendothelialbleb,endo-thelialCpolymegethismCandpleomorphismとCcornealCexhaustionsyndromeに,角膜形状異常はCcornealwarpageとCchangesinrefractiveerrorに分けて記載されており,コンタクトレンズ診療ガイドライン(第C2版)2)に比べ,合併症の程度別に分けて詳しく書かれているのが特徴的である(表1).また,epithelialCmicro-cystsに似た病態をもつ合併症としてCepithelialvacuolesやCepithelialbullaeなど,わが国ではなじみのない合併症も紹介されているため,興味のある方は一読することをお勧めする.CMechanicallens-inducedcomplicationsレンズによる角膜への圧迫や摩擦などのメカニカルストレスに起因する合併症として,11種類が紹介されている(表2).これらC11種類のうち,superiorCepithelialCarcuatelesions(SEALs)などのソフトCCL(SCL)装用に伴う合併症は,素材の進歩により弾性が低下傾向にあるため,発症頻度は減少傾向にある.一方,ハードCCL(HCL)装用に伴う合併症は,素材の進歩にもかかわらず,依然として減少傾向に転じていないと述べられている.(87)C0910-1810/25/\100/頁/JCOPYToxicandhypersensitivitycomplicationsCL表面に結合,あるいはとりこまれた刺激物が眼表面に作用することによって引き起こされる合併症として,1)contactClens-inducedCpapillaryCconjunctivitis(CLPC:乳頭結膜炎),2)limbalCstemCcellCde.ciency(LSCD:角膜輪部幹細胞疲弊症),3)solution-inducedCcornealstaining(SICS:消毒液による薬剤性の角膜染色)のC3種類が紹介されている.CLPCは上眼瞼結膜に乳頭形成を引き起こす合併症であり,発症率はC0.4.21.3%と報告されている.発症にはCCLによる上眼瞼結膜への機械的刺激や,レンズ表面に沈着した変性蛋白に対する免疫反応が関与していると考えられている.近年のCCL素材やデザインの進歩にもかかわらず,CLPCは依然として装用中止のおもな原因の一つであり,本章でもその重要性から詳細に論じられている.CLPCの記述がとくに詳しい理由をCStapleton先生に尋ねた際,「感染症などの重篤な合併症だけでなく,装用中止に至る合併症も同じくらい重要だよ」と先生が熱く語ってくれたのが印象的だった.また,CLPCは治療だけでなく予防も重要であると考えられており,1日使い捨てレンズへの変更やCCL装用中止,消毒を行う場合は過酸化水素型消毒剤に変更することやCMPS使用時にこすり洗いを合わせて行うことなどが,有効な対策として知られている.外来診療をしていると,多くの患者が治療として点眼薬を処方している一方で,予防的な観点からCCLの種類やケア用品の選択に介入しているのは非常に少なく感じる.そのため,「CLPCの予防は治療と同じくらい重要である」というメッセージには強く共感する.LSCDは,CL装用に伴い角膜上皮幹輪部細胞が疲弊することで生じる合併症である.その発症には,①機械的ストレス,②角膜低酸素,③ケア用品による薬剤毒性が関与していると考えられており,とくに就寝時のCCL装用(連続装用)はリスクが高い行動とされる.発症率は約C2.4.5.0%と報告されているが,日本では連続装用あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025C587表1角膜低酸素に起因するコンタクトレンズ合併症症状所見時間経過CLimbalrednessEpithelialstainingEpithelialoedemaEpithelialvacuolesEpithelialbullaeEpithelialmicrocystsCornealwarpageChangesinrefractiveerrorVascularisationStromaloedemaEndothelialblebsPolymegethismandpleomorphismCornealexhaustionsyndrome(CES)輪部血管の拡張角膜上皮の染色角膜上皮の限局した浮腫上皮内の微小空胞(5.3C0Cμm)上皮内の微小液胞(4C0Cμm以上)変性細胞成分からなる上皮内の微小.胞CL装用による角膜変形角膜変形に伴う屈折異常(近視性変化)角膜への血管侵入角膜実質の浮腫角膜内皮のブレブ角膜内皮細胞の形態変化および減少CL装用時の不快感を伴う角膜浮腫短期・可逆性C短期・可逆性C短期・可逆性C長期的・可逆性だが再発しやすいC長期的・可逆性C長期的・可逆性だが再発しやすいC短期・回復に個人差ありC短期・回復に個人差ありC長期的・ゴースト血管の残存ありC短期・可逆性C短期・可逆性C長期的・完全には可逆性ではない長期的・可逆性だが再発しやすい(文献C1より作成)表2メカニカルストレスに起因するコンタクトレンズ合併症症状所見CCornealandconjunctivalabrasions角結膜の上皮障害CCLbindingレンズの固着CCornealwarpageCL装用に伴う角膜形状の変化CSuperiorepithelialarcuatelesionsシリコーンハイドロゲルレンズに多い,角膜上部における弧状の上皮障害CMucinballsシリコーンハイドロゲルレンズに多い,CL後面におけるムチンボールの形成CContactslens-inducedpapillaryconjunctivitisCL装用に伴う乳頭結膜炎CConjunctivalepithelial.apsシリコーンハイドロゲルレンズに多い,レンズ周辺部における結膜上皮フラップの形成C3and9o’clockstainingHCL装用に伴うC3時-9時方向の角膜上皮障害CVascularizedlimbalkeratitis血管新生を伴う輪部角膜炎CContactlens-inducedstemcellde.ciencyCL装用に伴う輪部疲弊症CPtosisHCLに多い,CL装用による眼瞼下垂(文献C1より作成)が一般的ではないため,発症率は欧米より低いと推測さPHMBを含まないケア用品や過酸化水素系消毒剤の使れる.用,こすり洗いにより軽減が可能とされている.SICSは特定のレンズ素材とケア用品の組み合わせによって生じる一過性の角膜染色である.その病態は未解文献明な点が多く,当初はケア用品の毒性による角膜上皮細1)StapletonCF,CBakkarCM,CCarntCNCetal:CLEAR–Contact胞の脱落増加と考えられていたが,近年はCCLケア用品ClensCcomplications.CContactCLensCandCAnteriorCEyeC44:の成分とフルオレセインの結合が強化されることで発生C330-367,C20212)日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドラすると考えられており,病的なものではなく無害であるイン編集委員会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第C2とする意見もある.また,病態に関係なくレンズへの沈版),第C6章コンタクトレンズ合併症.日眼会誌C118:着物が増えるとCSICSが悪化することが知られており,C575-578,C2021C

写真セミナー:癌性髄膜症による視神経症

2025年5月31日 土曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史盛崇太朗492.癌性髄膜症による視神経症神戸大学医学部眼科学教室図2図1の乳頭拡大写真のシェーマ①滲出性変化②乳頭出血③網膜出血図1症状出現2カ月後の右眼眼底写真当院初診時の右眼眼底写真とその拡大写真.左眼眼底写真は図3bに示す.視神経乳頭からの滲出性変化と乳頭出血,また乳頭近傍に網膜出血を認めた.b図3症状出現1カ月後と2カ月後の眼底写真a:前々医での眼底写真.b:当院での左眼眼底写真とその拡大写真.図4前医眼窩部MRI画像STIRによる脂肪抑制画像では,視神経周囲の視神経鞘部分に高信号を認めた.(85)あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025C5850910-1810/25/\100/頁/JCOPY胃癌手術歴と高血圧症がある74歳,男性の症例を提示する.3年前に手術した胃癌については,主治医から現在経過良好と説明されていた.2カ月前から両眼の視力低下を自覚し,近隣の眼科(前々医)を受診した.その際に脳外科病院で撮像した頭部CMRIでは異常が認められず,経過観察とされた.しかし視力低下が進行し,原因不明のまま総合病院(前医)を受診.そこで再度撮影したCMRIでは明らかな造影効果は認められなかったが,STIR冠状断画像(図4)において両側視神経鞘の信号増強が確認され,非典型的な視神経炎が疑われ,神戸大学医学部附属病院(以下,当院)に紹介された.当院初診時の矯正視力は右眼指数弁,左眼C0.2であった.当院と前々医での眼底写真(図1~3)および前医で実施されたCGoldmann動的視野検査結果(図5)を示す.眼底検査では視神経からの滲出性変化を示唆する白色病変と出血を両眼に認めた(図1,3b).このため,脳脊髄液由来疾患の可能性を考え,脳外科で髄液検査を依頼.髄液検査で異形細胞が認められ,細胞診により腺癌細胞と判明し,胃癌による癌性髄膜症(髄膜播種)と診断された.かかりつけの外科と腫瘍内科の協議により,髄膜播種の予後が非常に短いことから緩和ケアが選択され,当院受診からC6週間後に患者は永眠された.本症例は,原因不明の視神経乳頭腫脹を伴う急速進行性の両眼視力障害の患者である.前々医ではうっ血乳頭を疑いCMRI検査を実施したが,有意な所見は得られず,眼底所見から高血圧網膜症が疑われていた.しかし,降圧療法を行っても眼底所見および視機能の改善はみられず,原因検索と治療に難渋していた.本症例は,原因不明の視神経症例において,髄液検査が診断に果たす重要な役割を示唆している.実際,本症例のように髄液検査によって転移性腫瘍が発見されたり,髄液からアスペルギルスが検出され中枢神経アスペルギルス感染症による視神経症と診断された症例も報告されている1).癌性髄膜症は,癌細胞が脳や脊髄を包む髄膜に広がった状態で発生する.もっとも多い原因となる固形癌は肺癌である.癌性髄膜症による視覚障害の病態機序としては,腫瘍細胞による視神経や頭蓋内視路への直接浸潤,頭蓋内圧亢進による乳頭浮腫があげられる.また,腫瘍細胞の直接浸潤により視神経鞘の信号増強を認めることもある2).本症例の前医でのCMRI(図4)では視神経炎が疑われた.しかし多くの場合,MRIで明確な病変を特定することは困難である.眼底所見としては,本症例のように乳頭腫脹や乳頭からの滲出液,出血がみられる(図1~3).また,診断時の視力障害は指数弁以下や両眼の光覚喪失など,重篤である場合が多い3).全身の予後はきわめて不良で,癌性髄膜症の診断後の平均生存期間は約C4カ月とされている2).本症例は,原因不明の視力低下や視神経症例において,詳細な全身評価および髄液検査の重要性を改めて示した.文献1)MoriCS,CKurimotoCT,CKawaraCKCetal:TheCdi.cultyCofCdiagnosingCinvasiveCaspergillosisCinitiallyCmanifestingCasCopticneuropathy.CCaseRepOphthalmolC10:1-18,C20192)CzyzCC,CBlairCK,CBergstromR:LeptomeningealCcarcino-matosisCwithCdelayedCocularCmanifestations.CCaseCRepCOncolC14:98-100,C20213)SugaokaCS,CKandaCT,CItoCMCetal:ACcaseCofCmeningealCcarcinomatosisCdueCtoCsignet-ringCcellCcarcinomaCthatCdevelopedCsevereCvisualCimpairmentCwithCpapillaryCswell-ing.IntMedCaseRepJC13:153-158,C2020図5前医Goldmann動的視野検査結果右眼は周辺視野のみ残存しており,左眼も不規則な視野狭窄パターンで,視野からの病巣診断は困難であった.

視野検査─アイモvifa

2025年5月31日 土曜日

視野検査─アイモvifaVisualFieldTesting─imovifa野本裕貴*はじめに現在,緑内障診療における視野検査ではおもにCHum-phrey視野計などの自動静的視野計(standardautomat-edperimetry:SAP)が使用されている.緑内障におけるCSAP検査は診断から経過診察へと継続的に必要であり,日常臨床における緑内障患者数が今後も増えていくこともあわせると,さらに頻度の高い検査となることが考えられる.そもそもCSAP検査は眼科検査のなかでも時間を要するうえ,暗室内かつ片眼遮蔽で行うなど,検査条件に制約がある.患者と検査員の負担軽減という観点からも,制約を少しでも減らすことが重要であると考える.近年の光学機器の発展に伴い,新しいデザインの視野検査機器が開発されている.本稿では,明室で検査を行える検査機器・アイモCvifa(クリュートメディカルシステムズ)について紹介する.CIアイモvifaの概要従来のCSAP機器は,暗室にて箱型(ドーム型)機器の顎台に顔を乗せ検査を行う必要があった.両眼開放下で明室にて視野検査が行える機器としてC2015年にヘッドマウント型視野計アイモ1)が開発され,アイモCvifaはその後継機としてC2021年に登場した.ヘッドマウント型ではなく,図1aのようにディスプレイが内蔵された光学部と支柱で構成されるシンプルなデザインとなっており,アイモ同様に左右独立したディスプレイ(図1b)を有し,両眼開放下で明室にて検査が行える.被験者は機器をのぞき込む姿勢となり,検者はモニターにて固視状態を確認できる(図1c).また,検査時にアーチファクトの原因となりうる矯正レンズについて,機器に内蔵されたダイヤル(図1d)により,球面度数.3.0~+3.0Dの範囲で調節が可能である.これを超える球面度数および円柱度数については付属マグネット式レンズ(図1e)で矯正を行う.このように,矯正レンズ縁に起因するアーチファクトが生じにくい設計となっている.CII両眼ランダム検査とアイトラッキング前述のとおり,アイモCvifaは両眼開放下で視野検査が行えるが,従来の検査と同様に片眼のディスプレイにのみ視標を呈示する方法と,左右両眼のディスプレイにランダムに視標を呈示する方法(両眼ランダム検査)がある.両眼ランダム検査ではC1回で両眼同時に視野検査が行えるが,検査前に被経者が中心にある固視標を融像できるかを確認する必要がある点に注意が必要である.また,アイトラッキング機能を搭載しており,眼球移動位置に追従した視標呈示ができるようになっている.つまり,眼球運動および固視不良に伴う視野検査結果への影響をより少なくすることができる.アイトラッキングにより計測された眼球の動きの位置情報をもとに,刺激視標の提示位置の補正を行うことができる.この機能により,検査中の顔ずれや眼球運動の動きに伴う測定点のずれを補正できる2).*HirokiNomoto:近畿大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕野本裕貴:〒589-8511大阪府大阪狭山市大野東C377-2近畿大学医学部眼科学教室C0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(79)C579図1アイモvifaa:本体外観.b:アイモCvifa被験者側からの写真.左右C2つのレンズがある.c:検査時のイメージ.d:本体の調節ダイヤル(○).e:附属のマグネット式矯正レンズ.(CREWTMedicalSystemsのホームページより引用)図224plus測定点●:24plus(1),●+●:24plus(1-2)図3検査結果のプリントアウト24plus(1-2)の結果.図4アイモscan本体(CREWTMedicalSystemsホームページより引用)図5アイモscan測定点図6GAP/GAP-screener本体’C

視野検査─ Humphrey 視野検査

2025年5月31日 土曜日

視野検査─Humphrey視野検査VisualFieldTesting─HumphreyFieldAnalyzer(HFA)奥野周蔵*溝上志朗*はじめに視野検査は緑内障の診断や経過観察において,患者の視覚の質(qualityofvision:QOV)を守るために欠かせない検査である.緑内障性視野障害の検出には,初期の感度低下の検出力,精度と再現性,データ解析や評価の簡便性などの観点から,動的視野検査より静的視野検査が優れており1),緑内障ガイドラインでも推奨されている(1A)2).本稿では,緑内障診断と経過観察における静的視野検査の読み方と落とし穴について,広く普及しているHumphrey視野計を用いて概説する.54点に,10-2領域内で早期の緑内障性視野変化を生じやすい10点を加えた24-2Cも実用化されている(図1).II単一視野解析の読み方1.検査の信頼性(図2-①)固視状態,偽陽性,偽陰性の有無と程度を確認する.a.固視状態固視状態を赤外線により瞳孔を監視するGazetrack-ing法3,4)と,Mariotte盲点への刺激に反応するか否かで監視するHeijl-Krakau法がある.gazetrackingの監視IHumphrey視野計の測定点配置測定点配置は,中心30°内の76点を検査点とする30-2(6°間隔),中心24°内の54点を検査点とする24-2(6°間隔),中心10°内の68点を検査点とする10-2(2°間隔),の3種が基本となる.また,最近では,24-2のab状況は検査レポートの下部に記載される(図2-①視不良は検査結果に影響を及ぼす可能性があるため確認を要する.図3にラーニングエフェクトにより固視が改善したことで,みかけ上視野が悪化したことが示唆された症例を示す.cd).固’図1HFAの閾値測定点a:30-2(76点).b:24-2(54点).c:24-2C(64点),d:10-2(68点).*ShuzoOkuno&ShiroMizoue:愛媛大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕〒791-0295愛媛県東温市志津川454愛媛大学医学部眼科学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(69)569①図224-2の測定結果測定結果をプリントアウトしたもの.左眼,SITAStandard.図3固視不良の改善によるみかけ上の視野悪化が疑われる症例30-2ab10-2d図4中心感度が30-2のグレースケールで黒く塗りつぶされた症例(a,c)と白く抜けていた症例(b,d).ab図5水晶体再建術によりトータル偏差が改善した例a:術前.b:術後.図6緑内障半視野テスト表1Anderson-Patella分類・パターン偏差確率プロットにおいて,p<5%が最周辺部を除いて連続してC3点以上存在し,そのうちC1点がp<1%・パターン標準偏差(PSD)または修正パターン偏差(CPSD)<5%・緑内障半視野テスト(GHT)が正常範囲外(文献C1より作成)図7Visual.eldindex中心ほど係数が大きく,寄与が大きくなるよう設定されている.①②③図8GPAサマリー初期設定ではもっとも古いC2回の検査をベースラインとして,その後の検査で進行の有無を判定される.上段にベースラインのデータ(①),中段にCVFIのトレンド解析グラフ(②),下段に最新の検査結果とベースラインからの偏差(イベント解析)が表示され,自動解析CGPAアラートとしてコメントされる(④).表2視野進行判定に必要な検査期間2tests/yrCVariabilityCProgressionrate(dB/yr)CLowCModerateCHighC0.25C6.5C9.5C15C0.5C4.5C6.5C9.5C1.0C3C4.5C6.5C2.0C2.5C3C4.5C3tests/yrCVariabilityCProgressionrate(dB/yr)CLowCModerateCHighC0.25C4.3C6.3C10C0.5C3C4.3C6.3C1.0C2C3C4.3C2.0C1.7C2C3(文献C9より引用)表3視野進行判定に必要な検査期間Timetodetect(years)CPowertodetect(%)CMean±StandardDeviationC80%powerC90%powerC2yearsC5yearsCOnetest/yrC.0.25dB/yrC8.7±3.1C11.4C12.9C2C16C.0.50dB/yrC6.1±2.2C7.3C8.5C4C41C.1.00dB/yrC4.2±1.4C4.8C5.6C11C84C.2.00dB/yrC3.0±0.9C3.3C3.8C29C99CTwotests/yrC.0.25dB/yrC6.9±2.9C9.2C10.5C6C28C.0.50dB/yrC4.5±1.8C5.7C6.5C10C67C.1.00dB/yrC3.0±1.1C3.6C4.2C24C97C.2.00dB/yrC2.1±0.7C2.4C2.8C62C100CThreetests/yrC.0.25dB/yrC6.0±2.6C8.0C9.2C9C39C.0.50dB/yrC3.9±1.6C5.0C5.7C15C80C.1.00dB/yrC2.6±1.0C3.2C3.7C32C99C.2.00dB/yrC1.8±0.6C2.1C2.4C76C100(文献C10より改変引用)–

OCTAの緑内障診療における活用法

2025年5月31日 土曜日

OCTAの緑内障診療における活用法ClinicalApplicationsofOCTAinGlaucomaManagement庄司拓平*はじめに緑内障は,眼底写真では視神経乳頭およびその周辺部に特徴的な構造的変化を認めるため,眼底写真に基づく緑内障検査ではおもに視神経乳頭領域に焦点が当てられてきた.とくに眼底写真で撮像可能な視神経乳頭形状の立体所見やリムの形状,乳頭周囲の神経線維欠損が診断に重要な所見であった.その後に光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)が臨床応用され,網膜の断層情報が取得可能になって以来,緑内障の早期診断や進行評価には従来の乳頭周囲神経線維層厚に加え,黄斑部内層網膜厚も重要なパラメータであることが認識されるようになった.光干渉断層血管造影(OCTangiography:OCTA)は,非侵襲的に網膜毛細血管構造を描出できるイメージング手法である.緑内障では網膜神経節細胞死の進行とともに神経線維層厚が菲薄化するため,緑内障の進行とともに,表層毛細血管が脱落することは古くから知られていた1,2).また,視神経乳頭への血流障害が緑内障発症・進行の根本原因であると考える「血管説」は,いわゆる「機械説」とともに緑内障発症病態について古くから提唱されてきた.眼圧値が緑内障進行に重要な因子であることは過去の数多くの既報より明らかとなっているが,眼圧非依存性の緑内障患者が存在することもまた広く知られている.眼循環や全身循環の低下が緑内障の発症や進行と関連することは,疫学調査結果をはじめ多くの報告で示唆されている.OCTAは従来の網膜血管造影法や血流測定法3~5)と比較して,簡便かつ非侵襲的であること,層別解析が可能であること,定量解析が可能であることから,OCTAの普及とともに緑内障への臨床応用に関連する報告が近年急増している.しかし,OCT画像に比べて撮像時間が長く,画像不良例も多いことから,実際の日常臨床の現場でどのように利用すべきか悩まれている先生方も少なくないようである.本稿では,市販機のOCTAをどのように使用すれば緑内障診療(診断と管理)に役立つのか,既報をまとめたうえで解説する.I市販機のOCTAの互換性現在国内で使用可能なOCTAは表1に示すとおり多岐にわたり,血管情報を抽出する方法も異なる.同一人の眼を異なる機種で撮像すると,得られる血管情報も異なるが,その理由の一つとして,そもそもの抽出アルゴリズムが異なることがあげられる.加えて,血管情報を抽出する際にノイズを除去するためのフィルター処理や血管の有無を判別するための2値化処理を行う必要があるが,これらについても数多の方法が報告されている.どのような画像処理を行っているかは各社のブラックボックスになっている.結果として,それぞれの機器で抽出されるOCTA情報(たとえば血管密度)は,機器間で大きく異なる.異なる機器で算出される血管情報の互換性はほとんどないことには注意が必要である.また,OCTAを用いた緑内障関連の論文は2022年こ*TakuheiShoji:小江戸眼科内科白内障・緑内障・糖尿病クリニック〔別刷請求先〕庄司拓平:〒350-1196埼玉県川越市脇田本町15-13小江戸眼科内科白内障・緑内障・糖尿病クリニック0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(55)555(55)555表1現在市販されているOCTA機器一覧メーカー名機種名SD/SSスキャンスピードアルゴリズムA1SD-OCT70,000amplitudedecorrelationCanonS1SS-OCT100,000amplitudedecorrelationR1SD-OCT50,000amplitudedecorrelationHeiderbergSpectralisSHIFTSD-OCT85,000/125,000FullspectrumprobabilisticapproachRS-3000Advance2SD-OCT85,000CODAANidekGlauvasSD-OCT250,000CODAA2Mirante(Full)SD-OCT85,000CODAARetinaScanDuo2SD-OCT70,000CODAATopconMaestro2SD-OCT50,000OCTARATritonProSS-OCT100,000OCTARATowardPi(Nikon)BmizarSS-OCT400,000HMDAYAlkaidSS-OCT100,000HMDAVisionixoptovueSolixSD-OCT120,000SSADACirrus5000SD-OCT68,000OMAGZeissCirrus6000SD-OCT100,000OMAGPlexEliteSS-OCT100,000/200,000OMAG図1放射状傍乳頭毛細血管密度と緑内障進行放射状傍乳頭毛細血管(RPC)領域の血管密度は,緑内障の低下とともに減少する.(文献7より引用)ab2015年2016年2017年2018年図2傍乳頭深層微小血管脱落の1例Enface画像での傍乳頭部に毛細血管が脱落した部位を認める(a).同部位のBスキャン画像を確認しても,血管信号は認められない(b).(文献11より改変引用).この所見は傍乳頭深層(parapapillarydeep-layer)微小血管脱落(MvD)とよばれ,緑内障との関連が示唆されている.また,MvDは経時的に進行することも示されている(c).(文献15より改変引用)ab図3緑内障眼における乳頭内血管脱落と撮像法の違いによる血管描出の変化通常のOCTA撮像方法(aの上段,bの上段)とenhanced-depthimaging(EDI)法(aの下段,bの下段)を用いた乳頭内OCTA画像比較.正常眼(a)に比べ,緑内障眼(b)では乳頭内血流信号が脱落している.また,EDI法(a,bの下段)で撮像したほうが多くの乳頭内血管信号が描出される.(文献17より一部改変)ab図4放射状傍乳頭毛細血管密度,黄斑血管密度と緑内障片眼緑内障の1症例.黄斑部(a)・乳頭部(b)ともに同一症例でも正常眼に比べ緑内障眼では明らかな血管密度の低下を認める.(文献19より引用)abMD(dB)MD(dB)図5黄斑部OCTとOCTAパラメータと視野感度a:OCTで測定した乳頭周囲網膜神経線維層厚(cpRNFL)では.14dBより悪化した症例ではほぼ変化がない(フロア効果あり).b:OCTAで測定した傍中心窩血管密度では,進行した例でもフロア効果を認めずに低下している.(文献23より改変引用)-ab図6緑内障眼と中心窩無血管領域の1例緑内障眼のC1例.緑内障を認める右眼(Ca)の中心窩無血管領域(FAZ)は,視野変化を認めない左眼(Cb)と比べCFAZ面積は拡大している.ab図7緑内障術前後の黄斑部OCTA画像比較a:術前のCOCTA画像.Cb:術後のCOCTA画像.Cc:術前後のCOCTA画像の重ね合わせ.自動計測したCFAZ面積()は縮小している.(文献C31より改変引用)図8OCTA画像におけるアーチファクトによる画像不良例OCTA画像にはさまざまなアーチファクトが生じうる.Ca:眼球運動.b:中心位置ずれ.c:焦点ぼけ.d:中間透光体混濁.e:瞬眼.Cf:Bスキャン画像欠損.Cg:セグメンテーションエラー.(文献C44より改変引用)aLocalOtsuNiblackPhansalkarSauvolaPLEXElite1stscan2ndscanbLocalOtsuNiblackPhansalkarSauvolaTriton1stscan2ndscan図9測定機器と2値化法による描出画像の変化測定機器とC2値化方法により描出される画像は大きく異なる.(上段)PLEXElite9000(Zeiss社)(上段)とCTriton(Topcon社)(下段)を用いて,同一被検者をそれぞれ2回撮像した画像.2値化方法は左からCLocalOtsu,Niblack,Phansalkar,Sauvola,GlobalOtsu,Mean法を用いた.出力された画像は機器やC2値化方法により大きく異なる.また,2値化方法によっては再現性が低下することもある.(文献C47より引用)を事前に確認することが重要と報告している44).現在は数社からCOCTA機器が販売されているが,血管描出方法やノイズ処理方法は各社で異なる(表1).また,層別解析に必要な自動セグメンテーションも,各社とも発展途上である.2値化方法の選択も,画像の再現性を確保するうえで重要である.同じ目を測定しても,測定機器とC2値化の方法の相違によって作成される画像や血管密度値は大きく異なる(図9).おわりに本稿では現時点で報告されている緑内障に関連するOCTA画像所見を述べてきた.従来のCOCTで解析する構造変化は,前視野緑内障から初期緑内障にかけての早期変化を鋭敏に検出可能である反面,進行期ではほぼ変化を示さない「フロア効果」が問題となってきた.一方,OCTAで得られる毛細血管情報は視野感度との相関がより高く,進行期緑内障の管理にも有用であるとする報告が増えてきた.OCTAは緑内障の病態理解に大きく貢献しているが,課題もまだ多い.診断や予後予測,緑内障管理等の臨床現場に真に有益な情報をもたらす機器なのかは現時点では不明である.OCTAのソフトウエアの更新は毎年のように行われ,現在各社熾烈な競争を繰り広げている.今後の展開は現時点では予測できないが,この開発競争はまだしばらく続くと思われる.今後さらなる新知見の蓄積が期待される.C■用語解説■MvD:乳頭周囲の深層血管脱落所見はCMvDとよばれ,篩状板への血流脱落所見として,緑内障および強度近視との関連が報告されてきた.古くから剖検眼の研究で,進行した緑内障眼では篩状板厚が薄くなるとともに,Tinn-Halar動脈輪から篩状板へ向かう側副血管路が脱落していることが知られていた.MvDはこの側副血管路の脱落を非侵襲的に検出しているとして,緑内障の発症・進行に関連する所見として注目されてきた.当初は横断研究での解析が主だったが,このCMvDが部分的な篩状板欠損や近視と関連があること11,45)が報告された.近年は,縦断解析により経時的変化も報告されている.Michelettiらは,MvD面積およびCMvD角度の経時変化率はCPOAG眼におけるCcpRNFLの消失率と関連していると報告している15).MvDは近視の強い眼ほど有病率が高く,中心視野欠損を生じている確率も高いことも示し,乳頭出血の既往もCMvDの有病率や中心視野欠損と関連していたと述べている16).Minらは,SS-OCTAとCProjectionアーチファクト除去プログラムを用いて,PPAをもつ緑内障眼の乳頭所見を報告した46).乳頭縁の中にあるCMvDをMvD-D,乳頭縁の外にあるCMvDをCMvD-Pと評価し,focallaminacribrosadefectとの関連を報告した.ただし,これらの判定は評価者がそれぞれ独立して手作業で判定する必要がある.本研究ではC2名の独立し,マスクされた評価者がそれぞれの所見を評価し,意見が合致しないときには除外した.乳頭深部の所見は現在のCOCT技術では自動解析を行うだけの解像度を得るのはむずかしいようである.文献1)WeinrebCRN,CKhawPT:PrimaryCopen-angleCglaucoma.CLancet363:1711-1720,C20042)WeinrebCRN,CHarrisA:OcularCbloodC.owCinCglaucoma,CWGACConsensusCSeriesCVolumeC6,CKuglerCPublications,CAmsterdam,20093)SchumanJS:MeasuringCblood.ow:SoCwhat?CJAMACOphthalmol133:1052-1053,C20154)HarrisCA,CChungCHS,CCiullaCTACetal:ProgressCinCmea-surementofocularblood.owandrelevancetoourunder-standingCofCglaucomaCandCage-relatedCmacularCdegenera-tion.ProgRetinEyeResC18:669-687,C19995)HarrisCA,CKagemannCL,CCio.GA:AssessmentCofChumanCocularChemodynamics.CSurvCOphthalmolC42:509C-533,C19986)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:COpticalcoherencetomographyangiographyvesseldensityinChealthy,CglaucomaCsuspect,CandCglaucomaCeyes.CInvestCOphthalmolVisSciC57:OCT451-459,C20167)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:CRelationshipCbetweenCopticalCcoherenceCtomographyCangi-ographyvesseldensityandseverityofvisual.eldlossinglaucoma.OphthalmologyC123:2498-2508,C20168)RaoHL,PradhanZS,WeinrebRNetal:Acomparisonofthediagnosticabilityofvesseldensityandstructuralmea-surementsCofCopticalCcoherenceCtomographyCinCprimaryCopenangleglaucoma.PLoSOne12:e0173930,C20179)MoghimiS,HouH,RaoHetal:Opticalcoherencetomog-raphyCangiographyCandglaucoma:aCbriefCreview.CAsiaPacJOphthalmol(Phila)C8:115-125,C201910)AkagiT,IidaY,NakanishiHetal:Microvasculardensityinglaucomatouseyeswithhemi.eldvisual.elddefects:CanCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCstudy.CAmJOphthalmolC168:237-249,C2016566あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025(66)11)SuhCMH,CZangwillCLM,CManalastasCPICetal:DeepCretinalClayerCmicrovasculatureCdropoutCdetectedCbyCtheCopticalCcoherencetomographyangiographyinglaucoma.Ophthal-mologyC123:2509-2518,C201612)LeeEJ,KimTW,KimJAetal:Centralvisual.elddam-ageandparapapillarychoroidalmicrovasculaturedropoutinCprimaryCopen-angleCglaucoma.COphthalmologyC125:C588-596,C201813)AkagiT,ZangwillLM,ShojiTetal:Opticdiscmicrovas-culatureCdropoutCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCmea-suredCwithCopticalCcoherenceCtomographyCangiography.CPLoSOneC13:e0201729,201814)ParkCHL,CKimCJW,CParkCK:ChoroidalCmicrovasculatureCdropoutCisCassociatedCwithCprogressiveCretinalCnerveC.berClayerCthinningCinCglaucomaCwithCdiscChemorrhage.COph-thalmologyC125:1003-1013,C201815)MichelettiE,MoghimiS,NishidaTetal:Ratesofchoroi-dalmicrovasculaturedropoutandretinalnerve.berlayerchangesCinCglaucoma.CAmCJCOphthalmolC241:130-138,C202216)MichelettiCE,CEl-NimriCN,CNishidaCTCetal:CentralCvisualC.elddamageinglaucomaeyeswithchoroidalmicrovascu-latureCdropoutCwithCandCwithoutChighCaxialCmyopia.CBrJOphthalmolC108:372-379,C202417)YoshikawaCY,CShojiCT,CKannoCJCetal:OpticCdiscCvesselCdensityCinCnonglaucomatousCandCglaucomatouseyes:anCenhanced-depthCimagingCopticalCcoherenceCtomographyCangiographystudy.ClinOphthalmolC12:1113-1119,C201818)ParkCHL,CHongCKE,CShinCDYCetal:MicrovasculatureCrecoveryCdetectedCusingCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyandtherateofvisual.eldprogressionafterglaucomasurgery.InvestOphthalmolVisSciC62:17,C202119)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:CPeripapillaryCandCmacularCvesselCdensityCinCpatientsCwithCglaucomaandsingle-hemi.eldvisual.elddefect.Ophthal-mologyC124:709-719,C201720)PenteadoRC,ZangwillLM,DagaFBetal:Opticalcoher-enceCtomographyCangiographyCmacularCvascularCdensityCmeasurementsandthecentral10-2visual.eldinglauco-ma.JGlaucomaC27:481-489,C201821)ShinJW,LeeJ,KwonJetal:Relationshipbetweenmacu-larCvesselCdensityCandCcentralCvisualC.eldCsensitivityCatCdi.erentCglaucomaCstages.CBrCJCOphthalmolC103:1827-1833,C201922)ShojiT,ZangwillLM,AkagiTetal:ProgressivemaculavesselCdensityClossCinprimaryCopen-angleCglaucoma:aClongitudinalstudy.AmJOphthalmolC182:107-117,C201723)MoghimiCS,CBowdCC,CZangwillCLMCetal:MeasurementC.oorsanddynamicrangesofOCTandOCTangiographyinglaucoma.OphthalmologyC126:980-988,C201924)MoghimiS,ZangwillLM,PenteadoRCetal:MacularandopticCnerveCheadCvesselCdensityCandCprogressiveCretinalCnerveC.berClayerClossCinCglaucoma.COphthalmologyC125:1720-1728,C201825)NishidaT,MoghimiS,WuJHetal:AssociationofinitialopticalcoherencetomographyangiographyvesseldensitylossCwithCfasterCvisualC.eldClossCinCglaucoma.CJAMACOph-thalmolC140:319-326,C202226)YoshikawaY,ShojiT,KannoJetal:Glaucomatousverti-calCvesselCdensityCasymmetryCofCtheCtemporalCrapheCdetectedwithopticalcoherencetomographyangiography.CSciRepC10:6845,C202027)KwonCJ,CChoiCJ,CShinCJWCetal:AnCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCstudyCofCtheCrelationshipCbetweenfovealavascularzonesizeandretinalvesselden-sity.InvestOphthalmolVisSciC59:4143-4153,C201828)KwonCJ,CChoiCJ,CShinCJWCetal:AlterationsCofCtheCfovealCavascularCzoneCmeasuredCbyCopticalCcoherenceCtomogra-phyangiographyinglaucomapatientswithcentralvisual.eldCdefects.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:1637-1645,C201729)ChoiJ,KwonJ,ShinJWetal:Quantitativeopticalcoher-enceCtomographyCangiographyCofCmacularCvascularCstruc-tureCandCfovealCavascularCzoneCinCglaucoma.CPLoSCOneC12:e0184948,C201730)IshiiH,ShojiT,YoshikawaYetal:Automatedmeasure-mentofthefovealavascularzoneinswept-sourceopticalcoherenceCtomographyCangiographyCimages.CTranslCVisCSciTechnolC8:28,C201931)ShojiCT,CKannoCJ,CWeinrebCRNCetal:OCTCangiographyCmeasuredchangesinthefovealavascularzoneareaafterglaucomasurgery.BrJOphthalmolC106:80-86,C202232)CaprioliJ,deLeonJM,AzarbodPetal:TrabeculectomycanCimproveClong-termCvisualCfunctionCinCglaucoma.COph-thalmologyC123:117-128,C201633)BerishaF,SchmettererK,VassCetal:E.ectoftrabecu-lectomyConCocularCbloodC.ow.CBrCJCOphthalmolC89:185-188,C200534)NishidaCT,CMoghimiCS,CWalkerCECetal:AssociationCofCfovealCavascularCzoneCchangeCandCglaucomaCprogression.CBrJOphthalmolC108:1101-1106,C202435)MahmoudinezhadG,MoghimiS,NishidaTetal:Associa-tionCbetweenCrateCofCganglionCcellCcomplexCthinningCandCrateCofCcentralCvisualC.eldCloss.CJAMACOphthalmolC141:C33-39,C202336)MohammadzadehV,MoghimiS,NishidaTetal:Associa-tionofratesofganglioncellandinnerplexiformthinningwithCdevelopmentCofCglaucomaCinCeyesCwithCsuspectedCglaucoma.JAMAOphthalmolC141:349-356,C202337)KamalipourCA,CMoghimiCS,CKhosraviCPCetal:CombiningCopticalCcoherenceCtomographyCandCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyClongitudinalCdataCforCtheCdetec-tionofvisual.eldprogressioninglaucoma.CAmJOphthal-molC246:141-154,C202338)KamalipourCA,CMoghimiCS,CJacobaCCMCetal:Measure-mentsofOCTangiographycomplementOCTfordiagnos-(67)あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025C567

OCTによる緑内障との鑑別診断

2025年5月31日 土曜日

OCTによる緑内障との鑑別診断DifferentialDiagnosisfromGlaucomaUsingOCT齋藤瞳*はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は緑内障の診断に欠かせない補助診断機器となって久しい.OCTを用いると,乳頭周囲や黄斑部の網膜内層厚の評価はもちろん,断層像から構造変化の観察や定量化も可能であり,さまざまな情報を眼科医にもたらしてくれるツールである.本稿ではOCTの応用編として,緑内障の診断に迷う症例をいくつかとりあげ,OCTがどのように役立つかを解説する.I前視野緑内障静的視野検査は緑内障診断に必須の検査であるが,通常の静的視野検査では網膜神経節細胞が2~3割障害されて初めて視野異常が検出される.しかし,緑内障は連続性病変であるため,静的視野検査で異常が出現する5年以上前からOCTで検出できる構造障害が始まっていることが知られている1).「緑内障診療ガイドライン」では,通常の静的視野検査ではまだ異常がないにもかかわらず,眼底所見などから緑内障性障害が始まっていると推測される患者を前視野緑内障(preperimetricglau-coma:PPG)と分類している.PPGは定義からもまだ視野異常がない(もしくは通常の検査で検出できないレベルに軽微である)ため,機能検査ではなく,構造検査で診断するしかない.検眼鏡的眼底検査や眼底写真でもPPGを疑うことはできるが,障害が早期であればあるほど,変化が小さく,診察時に見落としてしまう確率が高くなる.その反面,OCTを使うと軽微な変化であっても視覚的に捉えやすく,PPGの非常に有用な補助診断ツールとなる.視神経乳頭スキャンでは,厚みマップにおいて,上下耳側の一番厚い神経線維束の厚みが対称になっているかを確認する.同一眼においては,上下の網膜神経線維層厚(circumpapillaryretinalnerve.berlayerthick-ness:cpRNFLT)の上下のピーク値は同程度であることが多いため,厚みの非対称性があれば局所的な菲薄化を疑う.乳頭の耳側領域に楔型に神経線維層欠損(nerve.berlayerdefect:NFLD)を認める場合はPPGである可能性が高い(図1).確率マップでNFLDが検出できる患者も多いが,正常眼のRNFL分布には幅があるため,RNFLの菲薄化がすでに始まっていても,ごく早期の場合はデータベースとの比較ではまだ異常判定がつかないこともある(図1c右).黄斑スキャンでも同様に確率マップよりも厚みマップの上下差に注目すると診断しやすい.黄斑部では中心窩をリング状に取り囲むように網膜内層の厚い領域がある.正常眼ではこのリングが中心窩耳側のtemporalraphe(上下の網膜神経線維が融合する境界線)まで届く(図2a).しかし,PPGを含む初期緑内障では上下のいずれかの領域から網膜内層の菲薄化が始まるため,temporalrapheの所で段差ができる.この状態をtem-poralraphesign陽性とよんでいる(図2b).Temporalraphesignは正常眼での陽性率が1.5%であったのに対*HitomiSaito:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学〔別刷請求先〕齋藤瞳:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(45)545図1前視野緑内障の症例50代,女性.検診で視神経乳頭陥凹拡大を指摘される.a:眼底写真.上耳側に細いNFLD()を認める.b:静的視野検査では明らかな緑内障性障害がない.c:確率マップ(左)ではまだNFLDが検出されていないが,厚みマップ(右)では上耳側のNFLD()が楔型に観察される.ab図2Temporalraphesignの例a:50代,男性.中心窩を取り囲む網膜内層の厚いリング()が上下ともにtemporalrapheまで届いているtemporalraphesign陰性の正常眼.b:60代,男性.上方,のリング()はtemporalrapheまで届いているが,下方のリング()は手前で終了しており,temporalrapheのところで段差ができている().temporalraphesign陽性の初期緑内障眼.ab図3緑内障性ではない神経線維層欠損40代,女性.20代の頃から高血圧,糖尿病を指摘されている.a:上耳側のNFLDを眼底写真(),OCT()で認めるが,乳頭縁まで届いていない.b:静的視野検査では異常を認めない.ab図4先天性視神経乳頭低形成40代,女性.コンタクトレンズ検診で視神経乳頭異常を指摘された.Ca:OCTで上耳側から鼻側まで幅広く拡がる連続した神経線維層の菲薄化を認める.Cb:静的視野検査ではCMariotte盲点と連続する下方の視野異常を認める().c:動的視野検査で下鼻側周辺の視野異常を認める.abc図5正常近視眼temporalshift40代,女性.右眼視力=(1.2C×.6.0D).検診で視神経乳頭異常を指摘される.Ca:乳頭周囲に大きな傍乳頭網脈絡膜萎縮(PPA)を認め,豹紋状様眼底を呈している.Cb:OCTの確率マップで異常表示()が出ているが,厚みマップでは上下耳側のもっとも厚い神経線維束は保たれている().TSNITgraph(右下)で上下の神経線維層厚のピークが耳側に偏位している().静的視野検査ではまだ異常がない.図6病的近視a:50代,男性.眼軸長C27.45Cmm,右眼圧=13CmmHg.OCTのCBスキャンで著しい脈絡膜の菲薄化()と耳側強膜の突出(),篩状板欠損()を認める.Cb:60代,女性.眼軸長C26.0Cmm,右眼圧=13CmmHg.OCTのCBスキャンで乳頭下方に乳頭周囲脈絡膜内洞様構造を認める.abc図7頭蓋底髄膜腫40代,女性.右眼の急激な視力低下.右眼視力=(0.15C×.2.5D),右眼圧=14mmHg.Ca:OCTでは明らかな異常なし.Cb:静的視野検査では中心を含む著しい視野障害.c:頭部CMRI(矢状断)で頭蓋底の髄膜腫を認めた.

OCTを用いた緑内障診断の基本

2025年5月31日 土曜日

OCTを用いた緑内障診断の基本BasicsofOpticalCoherenceTomographyinGlaucomaCases冨田遼*はじめに現代の緑内障診療において,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は網膜構造障害を評価するツールとしてすでに一般的に使用されている.本稿では,緑内障におけるOCTパラメータの評価に際しての知識を整理しつつ,注意すべきポイントを述べる.IOCTによる緑内障診断緑内障の診断には視神経と視野における特徴的変化の検出を要する.ただし,緑内障性視野障害が生じる前にも網膜構造変化が生じることはすでに広く知られ1),「緑内障ガイドライン」(第5版)では,「臨床的に検出できる視野障害が出現する以前の段階の緑内障性視神経症,いわゆる前視野緑内障においては画像解析装置による診断が主体となる」と述べられている2).視神経乳頭周囲の網膜神経線維層厚(circumpapillaryretinalnerve.berlayerthickness:cpRNFLT)や黄斑の網膜内層厚などの菲薄化に関して,眼底鏡や眼底カラー写真における所見よりOCTによる評価のほうが有用な場合が多く3),視野障害が出現する前の段階におけるOCTの有用性は非常に大きい.以下に詳説するOCTパラメータは診療で比較的よく用いられている.各OCT機器に内蔵されている正常眼データベースとの比較により,正常範囲内(正常眼データベースの5パーセンタイル以上),ボーダーライン(1~5パーセンタイル内),正常範囲外(1パーセンタイル以下)の判定がなされ,異常値の検出が視覚的にわかりやすく示される(図1).しかし,注意すべきは「赤くなったらすべて緑内障変化」とは限らないことである.まず,断層写真のBスキャン画像を確認し,機械による網膜の層別化の誤り(セグメンテーションエラー)が生じていないかを確認すべきである.OCTの機種によっては長眼軸眼の正常眼データベースを元にした解析が可能な機種もあり,正常眼データベースでは「赤」と表示された所見が,長眼軸データベースでは「緑」と判定されるようになる場合もある(図2).もちろん,緑内障以外の疾患により赤く表示されることもある.測定された値が,眼軸差による拡大率の影響を受けている場合もある.たとえば,cpRNFLTは視神経乳頭の中心に直径およそ3.4.mm(機種により異なる)の円を置き,その円周上の厚みを計測している場合が多い.この3.4.mmというのは,眼軸が約24.mmである模型眼を想定して設定されている.眼軸がそれより短い眼の場合は,カメラから眼底までの距離が近いことにより網膜の構造物は模型眼より大きく写る.そのため,直径3.4.mmと想定された円周上は,模型眼よりも乳頭に近い場所を示すことになり,逆に長い眼軸の場合は模型眼よりも乳頭から遠い場所を示すことになる.乳頭に近いほど神経線維層は厚くなり,遠いほど神経線維層は薄くなるため,短眼軸眼ではより厚く,長眼軸ではより薄く計測されることになる.OCTの機種により,撮像前に眼軸長を入力し撮像時に画角を補正するものと,撮像は同じ画*RyoTomita:名古屋大学大学院医学系研究科眼科学・感覚器障害制御学教室〔別刷請求先〕冨田遼:〒466-8560名古屋市昭和区鶴舞町65名古屋大学大学院医学系研究科眼科学・感覚器障害制御学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(35)535図1OCTによる視神経乳頭・黄斑の評価各パラメータは緑(正常範囲内:正常データベースの95パーセンタイル内),黄(ボーダーライン:1~5パーセンタイル内),赤(正常範囲外:1パーセンタイル以下)に分類される.中央に位置するデビエーションマップでは視神経乳頭周囲のcpRNFLTと黄斑におけるGCA(GCL+IPL厚)の菲薄化が容易に視認できる.ab図2眼軸補正と長眼軸データベースの活用a:初期設定である模型眼の眼軸長(24.38.mm),正常眼データベースによる解析画像.GChartにおいて下半球(88.μm)は赤(正常範囲外)で表示され,マップでも赤く表示される場所が散見される.b:同じ撮影に対して眼軸長(27.50mm)による倍率補正を行い,長眼軸長正常眼データベースによる解析を行った画像.赤く判定されていた箇所が緑(正常範囲内)で表示されている.(画像提供:株式会社ニデック)ab図3RNFLTピークのtemporalshift(耳側偏位)a:正常眼データベース(b)との対比では,上方におけるRNFLT菲薄化が検出されている.しかし,左の眼底像では網膜血管の耳側偏位がみられる.c:ピークマップを確認すると,正常眼データベースにおけるRNFLTピーク()に対して,この眼のピーク()が耳側に偏位していることが菲薄化検出の原因であることが確認できる.図4Temporalraphe(耳側縫線)サイン下方網膜に網膜内層の菲薄化が生じ,上方網膜との境界である耳側縫線に沿って赤と緑の境目が形成されている().ab図5網膜動脈分枝閉塞症におけるtemporalrapheサインOCT画像(a)ではtemporalrapheサインがみられるが,眼底写真(b)からは緑内障性変化ではなく網膜動脈分枝閉塞症であることがわかる.図6BMO-MRW視神経乳頭におけるBruch膜の断端からの最小リム幅が計測される(,).下部に表示されているように正常範囲眼データベースとの比較もなされる.で示される計測内には比較的太い血管が含まれてしまっている.図7GuidedprogressionanalysisによるRNFLT菲薄化の評価図上部の画像内には,イベント解析による進行評価が示されている.左下にはトレンド解析による経時的な菲薄化速度が評価されている.程度であるとしている24).年2回のOCT検査を行うとした場合に,cpRNFLTの有意な菲薄化を検出するのに約5年を要するとする報告もある25).また,OCTによる厚みのパラメータは視野検査よりも変動が少ないとされ,cpRNFLTと視野検査を同じ回数検査した場合に,cpRNFL菲薄化の検出率は視野増悪の検出率より10~15%高いとする報告もある26).これらの報告における数字の解釈には注意が必要であるが,正確な進行判定にはOCTでも多くの検査回数が必要であることが示唆される.おわりに「緑内障ガイドライン」(第5版)にはOCTに関して「測定結果を鵜呑みにせずに最終的な判断はあくまでさまざまな検査結果を総合してなされなければならない」と付記されている2).緑内障診療においてOCTの活用はすでに一般的となっているが,解釈上の注意点を十分認識する必要がある.また今後,光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)や超広角OCT,偏光OCT,補償光学OCTなどの新たな高機能OCT,人工知能などにより評価精度の向上がなされ,客観的指標による正確な緑内障の進行管理が可能となることに期待したい.文献1)WeinrebRN,FriedmanDS,FechtnerRDetal:Riskassessmentinthemanagementofpatientswithocularhypertension.AmJOphthalmol138:458-467,20042)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第5版).日眼会誌126:85-177,20223)YeC,ToE,WeinrebRNetal:Comparisonofretinalnerve.berlayerimagingbyspectraldomainopticalcoherencetomographyandscanninglaserophthalmosco-py.Ophthalmology118:2196-2202,20114)KuangTM,ZhangC,ZangwillLMetal:Estimatingleadtimegainedbyopticalcoherencetomographyindetectingglaucomabeforedevelopmentofvisual.elddefects.Oph-thalmology122:2002-2009,20155)BakE,KimYW,HaAetal:Pre-perimetricopenangleglaucomawithyoungageofonset:naturalclinicalcourseandriskfactorsforprogression.AmJOphthalmol216:121-131,20206)ReisAS,O’LearyN,YangHetal:In.uenceofclinicallyinvisible,butopticalcoherencetomographydetected,opticdiscmarginanatomyonneuroretinalrimevaluation.InvestOphthalmolVisSci53:1852-1860,20127)ChauhanBC,O’LearyN,AlMobarakFAetal:Enhanceddetectionofopen-angleglaucomawithananatomicallyaccurateopticalcoherencetomography-derivedneuroreti-nalrimparameter.Ophthalmology120:535-543,20138)AminiN,DaneshvarR,Shari.pourFetal:Structure-functionrelationshipsinperimetricglaucoma:comparisonofminimum-rimwidthandretinalnerve.berlayerparameters.InvestOphthalmolVisSci58:4623-4631,20179)ZhuangI,AshrafkhorasaniM,MohammadzadehVetal:Sourcesofdiscrepancybetweenretinalnerve.berlayerandBruch’smembraneopening-minimumrimwidththicknessineyeswithglaucoma.OphthalmolSci5:100601,202510)LeeEJ,HanJC,ParkDYetal:Aneuroglia-basedinter-pretationofglaucomatousneuroretinalrimthinningintheopticnervehead.ProgRetinEyeRes77:100840,202011)AndradeTS,AraujoRB,RochaAADNetal:Bruchmembraneopeningminimumrimwidthandretinalnerve.berlayerhelpsdi.erentiatecompressiveopticneuropa-thyfromglaucoma.AmJOphthalmol234:156-165,202212)LeeEJ,HanJC,ParkDYetal:Di.erenceintopographicpatternofprelaminarandneuroretinalrimthinningbetweennonarteriticanteriorischemicopticneuropathyandglaucoma.InvestOphthalmolVisSci60:2461-2467,201913)BoussionF,GuindoletD,DeschampsRetal:Retinalnerve.berlayerthickness/minimumrimwidthratiodi.erentiatesglaucomafromotheropticneuropathies.JGlaucoma32:435-441,202314)ChauhanBC,ViannaJR,SharpeGPetal:Di.erentiale.ectsofaginginthemacularretinallayers,neuroretinalrim,andperipapillaryretinalnerve.berlayer.Ophthal-mology127:177-185,202015)ViannaJR,DanthurebandaraVM,SharpeGPetal:Importanceofnormalaginginestimatingtherateofglau-comatousneuroretinalrimandretinalnerve.berlayerloss.Ophthalmology122:2392-2398,201516)MikiA,MedeirosFA,WeinrebRNetal:Ratesofretinalnerve.berlayerthinninginglaucomasuspecteyes.Oph-thalmology121:1350-1358,201417)MohammadzadehV,MoghimiS,NishidaTetal:Associa-tionofratesofganglioncellandinnerplexiformthinningwithdevelopmentofglaucomaineyeswithsuspectedglaucoma.JAMAOphthalmol141:349-356,202318)SwaminathanSS,JammalAA,BerchuckSIetal:RapidinitialOCTRNFLthinningispredictiveoffastervisual.eldlossduringextendedfollow-upinglaucoma.AmJOphthalmol229:100-107,202119)MahmoudinezhadG,MoghimiS,NishidaTetal:Associa-tionbetweenrateofganglioncellcomplexthinningand542あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025(42)

前眼部OCT

2025年5月31日 土曜日

前眼部OCTAnteriorSegmentOpticalCoherenceTomography上野勇太*はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)が眼科領域に導入されて久しく,眼底撮影用OCTは緑内障診断における重要な補助ツールとして汎用されている.一方で,前眼部OCTも市販化されて以降は前房隅角の形態評価や定量解析,緑内障術後濾過胞の他覚的評価に使用されている.前眼部構造は細隙灯顕微鏡や隅角鏡を用いることである程度の観察が可能だが,OCTは赤外線を用いて断面検査を行うために混濁組織の描出に優れるというメリットがあり,従来の検査ではわからない情報を取得することができる.また,隅角鏡は接触式であり,医師自身が観察する必要があるが,前眼部OCTは非接触式でコメディカルが簡便に検査可能である点も大きな長所である.近年では緑内障手術が転換期を迎えており,従来から施行されていた線維柱帯切除術に加え,眼内アプローチをメインとした線維柱帯切開術や各種インプラント手術も汎用されている.これらの術式において術後の前眼部観察の重要性が増しており,とくにインプラント手術においては細隙灯顕微鏡や隅角鏡検査で把握しきれない情報もあるため,OCTを用いた術後評価が不可欠になっている.本稿では,前眼部OCTを用いた前眼部形態評価について,緑内障診療にどう活かすか,とくに緑内障の周術期にどのような使い方が有効であるのかを中心に解説する.I隅角構造の形態評価前眼部OCTで隅角を観察する最大のメリットは,非接触かつ光刺激を抑えた状態で隅角開大度を評価できる点であり,これについては「隅角検査」の項に譲る.本稿では線維柱帯やSchlemm管,虹彩根部など隅角近傍組織の定性的な観察方法について述べる.前眼部OCTは輝度の情報により組織の形態評価が可能である一方で,質的な組織の弁別は不得手である.線維柱帯は強膜や角膜などの充実性組織に隣接しており,OCT断面像から特定するのはむずかしいが,もしSch-lemm管が確認できれば,その内側の領域が線維柱帯であるため識別可能となる.理論的には,Schlemm管は内腔が房水であることからOCT断面では低輝度のスリット状の構造物として描出されるはずであるが,生体では眼圧があるために内腔が狭くなっており,全例で観察されるわけではなく,一部で限定的にそれらしい構造物を視認することがある(図1).なお,近年では隅角近傍,Schlemm管の外側にあるbandofextracanalicularlimballamina(BELL)という組織についての報告がなされた1).BELLは,病理学的に線維組織が密になっている箇所である.線維組織はその光学特性によって光干渉信号に変化が生じることが知られている.同部位はOCT断面でノイズとして認識され,流通している前眼部OCTでは自動的に処理される仕様となっており,臨床現場で認識することはあまりな*YutaUeno:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕上野勇太:〒305-8575茨城県つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(29)529図1正常隅角の前眼部OCTa:正面視.b:側方視.CASIA2(トーメーコーポレーション)で撮影.異なるC2症例の隅角を提示した.症例によっては隅角にスリット状の低輝度構造()を認めることがあり,Schlemm管の可能性がある.Ca2.22[deg/μm]図2偏光感受型OCTで撮影した正常眼の隅角a:輝度画像.b:複屈折画像.CASIA2P(トーメーコーポレーション)で撮影.OCT輝度画像では隅角構造の詳細な弁別が不可能である.一方,複屈折画像においてCBELL()は周囲の強角膜より高複屈折(緑色部)に,その前房側に線維柱帯()が低複屈折(青色部)に描出される.0図3血管新生緑内障の症例a:細隙灯顕微鏡および隅角鏡検査,b:前眼部COCT(CASIA2で撮影).高眼圧により角膜浮腫があり,隅角鏡による観察が困難である.前眼部COCTでは隅角形態の評価が可能で,周辺虹彩前癒着(PAS)をきたしていることがわかりやすい().また,眼内レンズ(IOL)も描出されており,PASの影響で虹彩とCIOLの距離が長いことも確認できる.図4線維柱帯切開術後2カ月の毛様体脈絡膜.離の症例a:隅角鏡検査.Cb:前眼部COCT(CASIA2で撮影).術後C2カ月が経過して眼圧がC7CmmHgと低い症例.隅角鏡で一部隅角後退をきたしていることが確認可能であり,OCTでは同部位に前房-脈絡膜上腔の交通を認めた.III線維柱帯切除術後の濾過胞評価古典的な緑内障濾過手術である線維柱帯切除術では,良好な濾過胞が形成されることで眼圧下降が得られる.前眼部COCTは非接触式検査であるため,感染リスクなしで施行でき,開発当初から濾過胞評価に使用されている.赤外線で検査することにより濾過胞内部の情報を定性的に観察可能である.良好な濾過胞の条件として,内部が低輝度で大きな空間があり,微小.胞が多く存在することと報告されている6).つまり,房水を貯留するスペースが豊富で,微小.胞による拡散・吸水機能が良好であるために眼圧下降が得られるという考え方である.一方で,機能不全に陥った濾過胞は高さが低く扁平になっていることがあり,前眼部COCTでは線維柱帯切除部位や房水流出路の閉塞がみられる.また,ある程度の高さのある機能不全濾過胞において,OCTでは内部の微小.胞や水隙が消失して充実性の瘢痕組織で満たされていたり,内部水隙が高輝度の隔壁で覆われたエンキャプスレーションなどがみられたりするため,機能不全に陥った原因特定の一助として汎用される.追加治療としてはニードル法や観血的な濾過胞再建術があげられるが,その術式選択においてもCOCT所見を参照することが有用である.また,前述した偏光感受型COCTを用いることで濾過胞の瘢痕化を他覚的に評価することができる.正常な結膜は低複屈折である一方で,創傷治癒で生じる線維化組織は高複屈折であるため,偏光感受型COCTの画像上で両者のコントラストをつけることができる.既報では眼圧が上昇しはじめる前に濾過胞壁の線維化を検出できると報告されており,これまでより早い段階で濾過胞機能不全の徴候をとらえることが可能になると期待されている7).CIV緑内障インプラント手術後の評価緑内障手術は線維柱帯切除術がゴールドスタンダードであったが,多くのインプラント手術の登場によって潮流が変わりつつある.2025年C1月現在,国内で使用可能な緑内障手術デバイスはCiStentinject(グラウコス社),エクスプレス(アルコン社),プリザーフロマイクロシャント(参天製薬),Baeveldt緑内障インプラント(AMO社),Ahmed緑内障バルブ(ジャパンフォーカス)などがあげられる.デバイスの種類によって形状や眼圧下降の原理・効果が異なるが,共通しているのはいずれも結膜や強膜,隅角など混濁組織の下(後方)に固定するという点である.そのため術後診察において細隙灯顕微鏡や隅角鏡のみでは対応しきれない時代になっており,前眼部COCTを用いてデバイスの状態を正確に把握する必要があると思われる.とくに合併症を生じた患者においては追加治療を考えるうえで非常に有用な情報が得られるため,積極的に活用していくべき検査である.iStentは線維柱帯に刺入して房水流出抵抗を減じるデバイスであり,術後に隅角鏡検査を行うことでデバイスの位置や深さなどを観察できる.前眼部COCTを用いてもデバイスの描出が可能であり,もっとも有用と思われるのは迷入・埋没してしまった場合である8).隅角鏡検査では線維柱帯表面に顔を出していない限り観察できないため,デバイスが見当たらないと困惑することがあるが,OCTで位置を特定でき,前房・後房・硝子体腔への脱落など重大な合併症を生じていないことを確認できる.エクスプレスやプリザーフロマイクロシャントはトラベクレクトミーを代替する濾過手術デバイスであり,とくにプリザーフロは低侵襲濾過手術(minimallyCinva-siveblebsurgery:MIBS)として注目されている.強膜上から刺入して隅角を経由し,先端を前房に留置するデバイスであるため,前房内のデバイスの位置や角度,とくに角膜や虹彩との距離を評価するのが非常に大事で,この点において前眼部COCTは有用である.しかし,筆者がもっとも有用だと思うのは濾過胞の評価である.設計上,プリザーフロマイクロシャントのデバイス後端は角膜輪部から離れて固定されるため,術後濾過胞は円蓋部寄りにやや低くびまん性に形成される傾向にある(図5).従来の線維柱帯切除術では輪部付近に濾過胞が形成されていたので細隙灯顕微鏡を用いて高さや広がりの評価が可能であったが,プリザーフロマイクロシャント後の濾過胞は細隙灯顕微鏡で評価しづらいことが多く,OCTによる評価が適していると感じる.また,術532あたらしい眼科Vol.42,No.5,2025(32)図5プリザーフロマイクロシャント術後3カ月の症例a,b:細隙灯顕微鏡.c,d:前眼部COCT(CASIA2で撮影).チューブは前房内で角膜と虹彩の中間付近に固定されている().濾過胞は輪部に形成されておらず細隙灯顕微鏡ではわかりづらいが,OCTではチューブ後端から流出した房水が円蓋部に広がっている様子を確認することができる(*).図6プリザーフロマイクロシャントに挿入したナイロン糸の抜去前後の前眼部OCTa:前眼部写真.b:ナイロン糸抜去前のCOCT(CASIA2で撮影).c:抜去後のOCT.術後C2週の症例.内腔に挿入された黒ナイロン糸()はCOCTで高輝度に描出されている.抜去後には内腔が低輝度に変化した.図7ロングチューブシャントに硝子体線維が嵌頓した症例の前眼部OCTCASIA2で撮影.Ca:レーザー治療前,b:レーザー治療後.チューブ先端に嵌頓していた硝子体線維(Caの)に対してCYAGレーザーを施行した.施行後に硝子体線維はチューブの奥に移動し,強膜表面あたりのチューブ内にひっかかっていることを確認した(Cbの).本症例では硝子体切除術を行い,その際にチューブ内に鋭針を挿入し,嵌頓した硝子体線維を吸引・除去することに成功した.(文献C9より引用)

隅角検査

2025年5月31日 土曜日

隅角検査Gonioscopy高野史生*盛崇太朗*はじめに隅角検査は眼科診療における基本的な診察手技の一つとして位置づけられているものの,接触式検査であることもあり,日常診療でルーティンとして実施されるケースは少ないのが現状である.しかし,隅角鏡を用いた観察は診断・治療の観点からきわめて重要な意義をもっている.隅角鏡検査のおもな目的の一つは,緑内障の病型を分類し,開放隅角型か閉塞隅角型かを識別することである.とくに,閉塞隅角緑内障のリスクがある患者を特定することは早期介入の観点から不可欠である.さらに,隅角検査により色素沈着の有無や程度,新生血管,隅角後退や離開,隅角結節,前房内異物(たとえばシリコーンオイル)などを評価することで,続発緑内障の基礎疾患を推定することが可能になる.また,周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)や隅角蓄膿が確認された場合に,炎症性疾患の診断を補助する情報としても役立つ(図1).緑内障診療においては,新規の緑内障患者や緑内障の疑いのあるすべての患者に対して隅角鏡検査を実施することが推奨される.さらに,緑内障術後のPASの再形成や,低侵襲緑内障手術(minimallyinvasiveglaucomasurgery:MIGS)デバイスの位置確認にも隅角鏡検査が活用される1).本稿では,とくに隅角鏡を用いた古典的な観察手法とその実際について詳述する.I隅角検査の種類1.直接隅角鏡検査直接隅角鏡検査は,隅角手術時に使用されるSwan-Jacobレンズ(図2)やHillゴニオプリズムなどの手術用プリズムレンズを用いる方法で,わが国ではおもに手術時に利用される.乳幼児の隅角評価において,手もち細隙灯顕微鏡と組み合わせて使用されることもある.これらのレンズは光線をレンズのカーブで適切に屈折させ,観察者の眼に届ける設計となっている.直接隅角鏡検査の利点は観察部位のオリエンテーションが容易なことである.一方で,被検者を仰臥位にさせる必要があるため,成人における日常診療での使用頻度は低い傾向にあると思われる.2.間接隅角鏡検査間接隅角鏡検査では,Volk,Posner,Sussman,Zeiss,Goldmann,Ocularレンズなどが広く用いられている.また,森ゴニオトミーレンズのように手術時に使用される全周観察用レンズも存在する.これらのレンズには内蔵された鏡があり,隅角からの光線を反射させて観察者の眼に届けるようになっている.外来診療では,4面鏡が患者の負担軽減の観点からもっとも一般的に用いられている(図3).一方,新生血管など詳細な観察が必要な場合には2面鏡が適している.眼裂が狭い患者には,Sussman四面鏡など接眼範囲の小さいレンズが有効で*FumioTakano&SotaroMori:神戸大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕高野史生:〒650-0017兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学医学部眼科学教室0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(23)523図1隅角鏡での隅角写真テント状のCPASが見られる().図2Swan-Jacobレンズ隅角手術に用いる.図3OCULAR社の4面鏡図4静的隅角検査の写真図5動的隅角検査の写真毛様体帯は視認できない.図C4に圧迫を加え,毛様体帯までの確認が可能となっている.図6Sampaolesi線Sampaolesi線が見られる().図7小児緑内障患者の術中写真虹彩高位付着が見られる.表1Scheie分類Grade0すべての部位で毛様体帯まで観察できるCGradeI毛様体帯の一部が観察できないCGradeII毛様体帯が観察できない(強膜岬から後部線維柱帯網まで観察が可能)CGradeIII線維柱帯の後方半分が観察できないCGradeIVSchwalbe線が観察できない図8Sha.er分類に対応した前眼部OCTによる隅角評価図9隅角閉塞に関連する解剖学的異常の例a:プラトー虹彩形状を伴った狭隅角.b:ぶどう膜炎による膨隆虹彩.図10前眼部OCTによる全周の隅角評価図11サルコイドーシス患者の隅角鏡所見図12血管新生緑内障患者の隅角鏡所見隅角結節()が観察できる.隅角新生血管()が確認できる.C’C-

眼圧測定の基本と眼圧影響因子の新たな知見

2025年5月31日 土曜日

眼圧測定の基本と眼圧影響因子の新たな知見ProperMeasurementofandFactorsA.ectingIntraocularPressure寺内稜*はじめに緑内障の治療においては,眼圧下降が唯一の確立された治療法であり,眼圧に関する知識と測定技術の習得は眼科医にとって不可欠と考えられる.本稿では,前半で眼圧検査の基本を概説したうえで,後半では眼圧に影響を及ぼすさまざまな因子について最新の知見もあわせて紹介する.I眼圧検査の基本1.Goldmann圧平眼圧計眼科診療において眼圧検査は必須の検査の一つであり,Goldmann圧平眼圧計(図1)は眼圧計のなかでもっとも精度および再現性が高いと考えられている.そのため,精密な眼圧測定を要する患者にはGoldmann圧平眼圧計を用いるべきである.Goldmann圧平眼圧計はImbert-Fickの法則に基づいた眼圧計である(図2a).実際の眼球を考える際には,涙液による表面張力と角膜の抵抗力(眼球硬性)を考慮しなければならないが(図2b),Goldmann圧平眼圧計は圧平面積Aを15.09.mm2(直径3.06mm)に設定しており,この条件では表面張力と眼球硬性は同等で互いに打ち消し合い,結果的にImbert-Frickの法則をそのまま当てはめることができる.a.測定方法圧平プリズムを支持枠に装着し,目盛り0°または180°を支持枠の白線に合わせる.角膜乱視が3D以上あれば,弱主経線の角度を赤線に合わせる(図3).つぎに表面麻酔薬を点眼後,フルオレセインで眼表面を染色し,被験者には額帯と顎台にしっかりと顔を当てるよう指示する.Goldmann圧平眼圧計を細隙灯顕微鏡の前方にセットし,ドラムの目盛を1g(10mmHg)に合わせる.ブルーフィルターを使用し,スリット幅を全開にして約60°の角度から照明しながら,圧平プリズム先端を角膜に接触する直前まで近づけて観察を開始する.角膜に接触すると上下のフルオレセイン半円が観察できるので(図4),ジョイスティックで二つの半円が同じ大きさになるように位置を調整し,二つの半円の内縁が接触するまでドラムを回す.最後に圧平プリズム先端を角膜から離し,測定値と時間を記録する.測定は3回行い,誤差が±1.mmHg以内であるか確認する.b.測定時の注意点フルオレセインの半円幅は約0.2mmで,染色時は適量の生理食塩水または蒸留水を使用する.過度な染色では幅が太く,染色不足では幅が細くなる.半円が心拍に応じて動く場合は中央値を測定結果とする.ドラムを加圧方向に過剰に回したり繰り返し測定すると,マッサージ効果で眼圧が低く出やすい.Goldmann圧平眼圧計は中心角膜厚520μmでもっとも正確に測定できるが,角膜厚や剛性には個人差がある.中心角膜厚が薄いと眼圧は低く評価され,厚いと高く評価される.*RyoTerauchi:東京慈恵会医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕寺内稜:〒105-8461東京都港区西新橋3-25-8東京慈恵会医科大学眼科学講座0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(15)515図1Goldmann圧平眼圧計の外観abWssAiptW:角膜に加わる圧平力,A:角膜後面の圧平面積,P:眼球内圧,s:涙液による表面張力,b:角膜の抵抗力(眼球硬性).図2Imbert-Fickの法則(a)と角膜圧平時に作用する力(b)図3角膜乱視のある症例に対する圧平プリズムの設置角膜乱視がC3ジオプトリー以上ある場合は,弱主経線の角度を支持枠の赤線に合わせる.図はC60°に合わせた場合.abc図4Goldmann圧平眼圧計におけるフルオレセイン染色による半円の観察細隙灯顕微鏡のジョイスティックを操作して上下の二つの半円が同じ大きさになるように位置を調整し,二つの半円の内縁が接触するまでドラムを回転させる.フルオレセイン染色の多寡により半円の線幅が異なる.上の例ではCaが適切な線幅である.線の太いCbは染色が多いため,眼圧が高く測定される.細が細いCcは染色が少ないため,眼圧が低く測定される.図6iCareHOME2の外観図5非接触型眼圧計の外観図7Tono-PenAVIAの外観表1高眼圧をきたす代表的なリスク因子・高眼圧・緑内障の家族歴・糖尿病・高血圧・40歳以上・人種(African-AmericansCandHispanics)・強度近視・長期ステロイド使用・眼外傷・手術・落屑症候群・色素散乱症候群(文献C1より改変引用)飲酒の頻度飲まない飲酒既往者数日/週ほぼ毎日/週平均1日飲酒量飲まない0~2drink/日2~4drink/日>4drink/日累積飲酒量飲まない0~40drink.year40~60drink.year60~90drink.year>90drink.year0.81.01.21.41.6オッズ比1drink=純エタノール10g相当の飲酒.drink.year=平均1日飲酒量×飲酒年数.図8飲酒習慣と緑内障有病率の関係飲酒の頻度について「週に数日飲む」「ほぼ毎日飲む」群はオッズ比の有意な上昇を認めた.1日平均飲酒量ではC0.2Cdrink/day群でオッズ比が有意に上昇したが,それ以上の多量飲酒群では有意差はなかった.累積飲酒量に関してはC60Cdrink-yearsを超える群において有意なオッズ比上昇が示された.全体として,より高頻度または多量の飲酒を行う群で緑内障のリスクが高い傾向が示唆された.(文献C7より改変引用)眼圧,mmHg全体13.5<4013.340~4445~4913.150~5455~5960~6412.9.6512.712.5月火水木金土月火水木金土月火水木金土図9曜日ごとの眼圧値の比較曜日ごとの眼圧値を比較すると,とくにC65歳未満の男性において月曜日の眼圧が高かった.65歳以上では曜日ごとの眼圧に差はなかった.(文献C10より改変引用)-