———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS緑内障治療薬の併用療法は急速に普及した.さらに,眼圧日内変動,日内変動幅,中心角膜厚など眼圧に関する因子の重要性が強調された.併用療法の普及により薬剤性角膜障害と緑内障薬物治療は切り離すことができない問題となって現在に至っている.最近の緑内障薬物治療について私見をまじえて述べる.I緑内障薬物治療の歴史(図1)緑内障薬物治療はあるサイクル(不定期)で大きな変化,進歩を生じている.まず最初の進歩は1980年代初めに市販されたb遮断薬のチモロールであった.縮瞳はじめに緑内障薬物治療は眼圧下降効果に優れた新しい薬物の登場と,精度が高く,客観性に優れた検査機器の臨床への応用により大きく進歩した.精度の高い検査機器による早期診断や眼科医の緑内障性視神経障害の診断能力の向上によって,多くの症例の中長期的な進行悪化の正確な評価が行われるようになった.また欧米の大規模スタディにより眼圧下降効果の長期的な有効性が再評価され,これによって目標眼圧の考え方が確立し日常臨床の場に広く普及した.実現可能,かつ数値化された目標眼圧の報告と,それに基づく厳密な目標眼圧達成のために(23)297*ShoichiSawaguchi:琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野〔別刷請求先〕澤口昭一:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野特眼科薬物治療トレンド2008あたらしい眼科25(3):297302,2008緑内障の薬物治療MedicalGlaucomaTreatment澤口昭一*????烱追????烱追????烱追????烱追????烱????烱????烱????烱????烱????烱????烱????烱?β遮断薬PG関連薬CAIその他????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????図1これまでに市販された緑内障治療薬の歴史(各製品添付文書より)———————————————————————-Page2298あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(24)の点眼,PG製剤の点眼が市販され,大きな進歩が緑内障薬物治療に訪れた.目標眼圧の概念は広く日常臨床の場へと普及したため,いっそうの眼圧下降は同時に多くの点眼薬を使用する併用療法の時代を迎えた.このため点眼薬のコンプライアンスという問題が新たに登場した.点眼回数を減らす方策としてb遮断薬の多くが1日2回点眼から1回点眼へとシフトした.最近の欧米での緑内障治療薬の市場占有率を図2に示す.II緑内障治療薬の効果と副作用1.眼圧下降効果a.単剤での効果眼圧下降に関する英語論文のまとめから,現時点ではラタノプロストが眼圧下降効果としては最も優れている1).チモロールを含めたb遮断薬は発売後,すでに30年近く経過しているが,いまだに多くの患者に使用されている.実際その眼圧下降効果は若干劣るもののラタノプロストに近い1)(図3).炭酸脱水酵素阻害薬のドルゾラミドやブリンゾラミドは単剤としての眼圧下降効果はラタノプロストやチモロールに劣るものの全身的な副作用は皆無であり,ラタノプロストでみられる眼瞼や虹彩色素沈着などの副作用も認めず使用しやすい点眼薬として評価された.現時点ではこのb遮断薬,PG製剤,炭酸脱水酵素阻害薬,あるいはその併用が緑内障薬物治療の中心となっている.縮瞳薬のピロカルピンは眼圧下降効果はそれほどではないが,閉塞隅角緑内障の隅角の開大に必須であり,また線維柱帯切開術後の虹彩の線維薬のピロカルピンと散瞳薬のエピネフリンしかなかった薬物治療に新たな変化がもたらされた.当時,アセタゾラミドの内服は尿路結石やしびれ,脱力感,食欲不振など多くの全身問題を抱えていながらも最後の切り札としてやむをえず処方されていた.チモロールが臨床の場に登場してから緑内障の薬物治療はいろいろな意味で大きな変化を迎えた.まず目標眼圧である.それまで緑内障は正常眼圧(21mmHg)以下にコントロールすることが治療の目標であり,それ以外はなかった.交感神経作動薬,副交感神経作動薬にb遮断薬を加えた3剤の組み合わせと眼圧下降への効果はまさに眼圧を21mmHg以下にコントロールできるかどうかぎりぎりのところであった.Goldmann視野測定は診断に有用ではあっても,進行悪化を定量的に評価することには少なからずの困難を伴った.一方,1980年代より,静的視野計の開発,臨床への導入が進み,客観性の高い,再現性のある視野計測により,病期と目標眼圧の概念が臨床の場に芽生え始めた.1990年代に入り,代謝型プロスタグランジン(PG)のウノプロストンが市販された.全身的な副作用がなく,b遮断薬の代用として,瞳孔への作用がないため縮瞳薬のピロカルピンや散瞳薬のエピネフリンの代わりにチモロールとの併用が行われた.この併用治療で角膜障害が高頻度で発症したことが後の薬剤性角膜障害,特に緑内障治療薬に含まれる防腐剤の問題や,点眼薬自体の角膜毒性の研究へと発展した.さらに1990年代後半から炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)図3メタ分析による各種緑内障治療薬の眼圧下降効果(文献1より)ラタノプロスト102030:Peak:Trough51525眼圧下降率(%)ドルゾラミド2%ブリンゾラミド1%チモロール0.5%31%28%27%26%22%17%17%17%図2最近の欧米の緑内障治療薬の市場占有率ザルコム?3.6%トルソプト?4.2%キサラタン?(G)67%コソプト?13.4%ルミガン?9%トラバタン?8.3%アルファガン?7.4%エイゾプト?4.3%———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008299(25)はあるものの全身的副作用の軽減,眼圧下降効果といった面からは評価されている(図4).一方,b遮断薬をファーストラインとして投与している患者でいっそうの眼圧下降を求める場合はどのように考えたらよいのであろうか.まず,b遮断薬は長期投与による効果の減弱が知られている.このため中期までの視野障害であればPG製剤への切り替えが勧められる.PG製剤は少数例であるがノンレスポンダーの存在が知られており,注意が必要である.一方で23カ月投与し続けていると次第に効果が強まってくる場合もあるので慎重に眼圧測定をくり返す必要がある.もちろん,b遮断薬に追加投与していっそうの眼圧下降を図ってもよい.さらに,3剤併用が必要な場合には現時点ではPG製剤(1日1回点眼),b遮断薬(1日1回点眼)と炭酸脱水酵素阻害薬(1日23回点眼)が行われる.ただ,b遮断薬が禁忌の場合,ブナゾシン,ジピベフリン,ピロカルピンなど3剤目として併用も可能である.例数は少ないが4剤目を追加することもある.2.眼圧下降以外の効果a.循環改善効果緑内障視神経障害に眼局所の循環障害が関与している可能性が指摘されてきた.降圧剤のカルシウムチャンネル阻害薬は末梢血管を拡張し,中枢血管系の支配下にある眼への循環改善を促すことが知られている.カルシウムチャンネル阻害薬のブロミンカミンの内服が正常眼圧緑内障の視神経障害の進行悪化をある程度予防できることが明らかにされている4).しかしながら一方で,その対象となる症例は限られ,すべての正常眼圧緑内障患者が対象となるものでないことも問題点として提起している.緑内障治療薬自体が眼局所の循環を改善する可能性について多くの点眼薬の眼循環への影響,効果が検討された.現時点では循環を悪化させる緑内障治療薬はなく,眼循環改善効果のあるといわれる点眼薬の視機能への有効性は確認されていないということが結論である.緑内障による視神経障害に循環説と機械説が対立して論争が行われてきたが,循環改善効果のある薬物の緑内障への効果は不明のままである.柱帯切開部への陥入を防ぐ意味から必要な薬物といえる.交感神経作動薬のジピベフリンは眼圧下降効果も強くなく,散瞳や充血などの眼の局所への副作用があり,次第に利用者は減少してきている.ブナゾシンはa1遮断薬で,副作用が少なく他の薬物への併用効果が認められることから,併用療法の一剤として使用される.b.併用療法の効果目標眼圧が日常臨床に普及し始めたことからいっそうの眼圧下降が薬物療法にも求められた.さらにわが国では正常眼圧緑内障の有病率が諸外国に比べて際立って高頻度であることも明らかにされ2),正常眼圧緑内障患者のいっそうの眼圧下降の必要性に迫られた.併用療法の基本は①作用機序の異なる薬剤の投与,②コンプライアンスを考えて点眼回数の少ない薬剤の選択,③全身ならびに局所への副作用を考えての選択がポイントとなる.PG製剤をファーストライン薬剤とした場合,一般的にはb遮断薬がその併用薬剤として考えられる.組み合わせとしてはラタノプロスト1日1回点眼に持続性b遮断薬1日1回点眼の追加によって,患者は朝,夕の2回点眼で済むためコンプライアンスの面からも有力な選択肢となる.しかしながら全身的な問題がある場合,たとえば心臓疾患,気管支喘息などでは,b遮断薬の追加投与は困難となる.炭酸脱水酵素阻害薬は全身的な影響はなく,セカンドライン薬としてラタノプロストへの追加投与が選択される.また最近の報告3)ではラタノプロストへの併用効果としては炭酸脱水酵素阻害薬の追加点眼のほうがb遮断薬の追加投与に比べ眼圧下降効果に優れているとされており,点眼回数が増えるという欠点図4ラタノプロストに追加投与した場合の眼圧下降効果(文献3より)1234(mmHg)β遮断薬併用5102015(%)<眼圧下降値><眼圧下降率>β遮断薬併用ドルゾラミド2%併用ドルゾラミド2%併用2.0mmHg3.9mmHg12.3%19.7%———————————————————————-Page4300あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(26)題点となっている.コンプライアンスの向上には医師・患者双方向の良好な関係の構築が重要であり,さらに①必要にして最小限の点眼薬数,点眼回数,②疾患,治療,副作用の十分な説明と理解,③正しい点眼指導,④若年者,高齢者などのコンプライアンス不良があらかじめ予想される年代層への対応,があげられている.2.全身および局所への副作用副作用の出現はコンプライアンスの悪化にも関与している.ファーストラインに用いられるPG製剤とb遮断薬にはそれぞれに特徴的な副作用が知られている.b遮断薬は心疾患の既往,喘息の既往を有する患者には注意を払う必要があり,慎重な問診が必要である.心肺機能の低下した高齢者では点眼開始時に問題はなくても数年後に症状が現れることもあり,十分な事前の説明が必要である.PG製剤には虹彩色素沈着,睫毛伸張,さらに眼瞼周囲の色素沈着が生じる.女性で若い患者では十分説明をしておく必要がある.黄斑浮腫,ぶどう膜炎再発や,ヘルペス性角膜炎の再発,悪化をひき起こす可能性があり,このような症例では慎重に投与を行う.薬剤性角膜障害も大きな問題として,特に多剤併用の場合には常に注意を払う必要がある(図5).防腐剤フリーの点眼薬への変更,一時的な内服への切り替え,防腐剤フリーの人工涙液の投与など,症状,所見と照らし合わせた処方の変更が必要である.最近,防腐剤フリーの点眼薬がb.神経保護効果緑内障の神経細胞死に神経保護因子や神経成長因子の不足,枯渇やグルタミン酸などの興奮性アミノ酸による神経毒性が注目された.これまでにブリモニジンの点眼で動物実験で神経保護因子のmRNAが誘導された報告や,いくつかのb遮断薬の神経保護効果が実験的に報告されたり,グルタミン酸に拮抗する薬物が神経細胞死を抑制したとする多くの基礎研究が行われたが,臨床応用された薬物はまだない.神経細胞死のうち,アポトーシスが緑内障視神経障害に関与している報告が相つぎ,虚血再還流モデル動物を用いて多くの報告が相ついだが,こちらも臨床に応用された薬物はない.唯一,Alz-heimer病の治療薬として市販されているグルタミン酸受容体拮抗薬のメマンチンの投与が欧米の緑内障患者を対象に臨床治験が行われているという報告があったが,いまだにその結果は公表されていない.III緑内障薬物治療の問題点1.コンプライアンス緑内障のように慢性に自覚症状がないまま,ゆっくりと進行していく疾患において点眼コンプライアンス(指示通りの点眼を行っているかどうか)は進行悪化の要因として重要である.実際,中長期的には多くの緑内障患者が治療からドロップアウトしていることが知られており,緑内障の視神経障害の悪化の原因として大きな問左眼右眼変更前変更後β遮断薬+PG製剤+CAI点眼による角膜障害内服CAI+防腐剤フリーのβ遮断薬と人工涙液による角膜障害の軽減←←図5緑内障薬物治療(併用)による薬剤性角膜障害———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008301(27)2.中心角膜厚中心角膜厚(CCT)は直接的に眼圧へ影響する7)(図6).正常眼圧緑内障や眼圧がコントロールされていると考えられる症例で進行悪化が速い場合は一度チェックする必要がある.高眼圧症例で逆にCCTが非常に厚い場合もあり,視神経乳頭所見,視野所見(正常範囲のはずだが)を考慮し,治療薬の選択を行う.正常のCCTを540μmとすると,角膜厚約90μmで眼圧は3mmHg影響されることが報告されている7).3.片眼トライアル眼圧には季節変動,日々変動,日内変動など多くの変動要因がある.それらの変動幅も個人差が大きい.さらに緑内障治療薬の眼圧下降効果にも個人差があることも知られており,かなり進行した高眼圧を伴う緑内障患者(中期以降)を除いては,まず,①月に1回程度で23回の無治療での眼圧測定(正常眼圧緑内障であれば23カ月に1回で6カ月1年程度)の基礎眼圧測定を行う,②ファーストラインのb遮断薬とPG製剤は片眼トライアルを4週間以上行う.炭酸脱水酵素阻害薬は基本的にはセカンドあるいはサードラインの薬物となるが,同様に併用したうえで可能であれば片眼の眼圧下降を測定する(もっとも実際はやることは少ない).4.目標眼圧眼圧の絶対値で考える場合はわが国では岩田の目標眼つぎつぎに市販されはじめており,薬剤の角膜障害と眼圧下降効果を慎重に考慮したうえでの処方が望まれる.IV新しい緑内障治療薬1.緑内障薬物わが国における新規薬剤は,PG製剤に関してトラボプロストが発売された.FP受容体の親和性がラタノプロストに優っており,これまでの報告でも眼圧下降効果は若干優れている.副作用に関しては多少多めに出現することも知られている.今後,PG製剤系ではビマトプロスト,タフロプストの市販が予定されており,これら同種の薬剤の今後のシェア争いが激化することが予測される.欧米ではすでに市販されているa2アゴニストのブリモニジンがわが国においても最後の臨床治験に入っており,これまでにないタイプの薬剤として期待されている.実際,眼圧下降効果はPG製剤に劣るものの欧米でのマーケットでの占有率は少なくない(図2).カルテオロールの1日1回点眼が市販され,b遮断薬のなかでも作用,副作用がマイルドで,差し心地も優れている本剤の市場での評価が注目される.2.緑内障薬物以外スタチンが緑内障の発症を抑制している可能性がある.有意差はわずか(p<0.04)であるが,スタチン内服群で緑内障の有病率が少ないことが報告された5).V緑内障薬物治療の注意ポイント1.1日眼圧現在薬物治療の中心となっている,b遮断薬,PG製剤と炭酸脱水酵素阻害薬の1日眼圧への効果,影響が報告された6).眼圧日内変動幅が大きいほど進行悪化しやすいとされており,眼圧下降の質の向上に努める必要がある.1日眼圧測定の対象として,①進行悪化の速い症例,②若年者,③正常眼圧緑内障患者を含めたすでに進行した視野障害緑内障患者,④視野と視神経乳頭が一致しない症例,などがあげられる.図6眼圧の実測値を角膜厚みで換算RT:右眼眼圧,LT:左眼眼圧.実測値(値)無治療RT15.5(18.8)LT15.6(18.9)mmHg遮断薬RT13.0(16.3)LT13.5(16.8)mmHgPG製剤RT11.4(14.7)LT12.2(15.5)mmHgJ.N.男性診断:正常眼圧緑内障———————————————————————-Page6302あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008おわりに1980年代初めにチモロールで始まった緑内障薬物治療の進歩は,1990年代のレスキュラRの市販で本格的な併用療法へと展開し,一方で,薬剤性角膜障害という負の合併症を生み出した.1990年代後半からのラタノプロストの市販は大きな進歩を緑内障薬物治療へ与えた.100年来の夢であった炭酸脱水酵素阻害薬の点眼も同時期に始まり,現在の薬物療法はほぼ完成の域に近づきつつあるように思える.これからの緑内障薬物治療はどこへ向かって進歩していくのか,期待したい.文献1)vanderValkR,WebersCAB,ShoutenJSetal:Intraocu-larpressure-loweringeectsofallcommonlyusedglauco-madrugs.Ameta-analysisofrandomaizedclinicaltrials.Ophthalmology112:1177-1185,20052)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryopen-angleglaucomainJapanese.TheTajimistudy.Ophthalmology111:1641-1648,20043)O’ConnorDJ,MartoneJF,MeadA:Additiveintraocularpressureloweringeectofvariousmedicationswithlatanoprost.AmJOphthalmol133:836-837,20024)SawadaA,KitazawaY,YamamotoTetal:PreventionofvisualelddefectprogressionwithbromincamineineyeswithNTG.Ophthalmology103:283-288,19965)McGwinJrG,McNeakS,OwsleyCetal:Statinsandothercholesterol-loweringmedicationsandpresenceofglaucoma.ArchOphthalmol122:822-826,20046)OrzalesiN,RossettiL,InvernizziTetal:Eectsoftimolol,latanoprost,anddorzolamideoncircadianIOPinglaucomaorocularhypertension.InvestOphthalmolVisSci41:2566-2573,20007)KaufmannC,BachmannLM,ThielMA:Intraocularpres-suremeasurementsusingdynamiccontourtonometryafterlaserinsitukeratomileusis.InvestOphthalmolVisSci44:3790-3794,20038)岩田和雄:低眼圧緑内障および原発開放隅角緑内障の病態と視神経障害.日眼会誌96:1501-1531,1992圧がよく用いられる8)(表1).カナダの目標眼圧設定に関するデータもわかりやすく(表2)参考になる.しかしながら実際の臨床では例外も多く,あまりにも厳密に目標眼圧への到達を求めた場合,かなりの症例で併用療法でも34剤が必要となり,さらには手術治療への選択が迫られることになる.治療は最初から厳密にする必然性はなく,長期的かつ定期的な眼圧測定と視野検査,それらの情報によってつぎの目標眼圧の再設定を考慮し続ける.(28)表1岩田の目標眼圧(1992)Goldmann視野原発開放隅角緑内障(POAG)視野正常19mmHg以下孤立暗点鼻側階段16mmHg以下1/4以上の視野欠損14mmHg以下正常眼圧緑内障(NTG)12mmHg以下表2目標眼圧への合理的アプローチ─カナダ緑内障専門医ワークショップ(2003)─1.緑内障疑い:OHTSスタディ25mmHg以下:20%以上の下降2.早期緑内障:CIGTS(EMGT)スタディ21mmHg未満:20%(25%)以上の下降3.中等度緑内障:CNTGS,AGISスタディ18mmHg未満:30%以上の下降4.進行期緑内障:AGISスタディ15mmHg未満:30%以上の下降日本人の平均眼圧は欧米に比べ1mmHg低い.OHTS:OcularHypertensionTreatmentStudy.CIGTS:CollaborativeInitialGlaucomaTreatmentStudy.EMGT:EarlyManifestGlaucomaTrial.CNTGS:CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy.AGIS:AdvancedGlaucomaInterventionStudy.