———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS身体障害者福祉法および児童福祉法でいう補装具としての遮光眼鏡は,「主として短波長領域を有効にカットする眼鏡」と大まかに書かれており,該当する眼鏡は各自治体に裁量がゆだねられている.いわゆる「サングラス」は,光吸収フィルターを用いた眼鏡を総称する一般用語であり,このうち家庭用品品質表示法に基づく雑貨工業品品質表示規定での特定の基準(中心の15mmの範囲に著しい歪みがなく,平行度が0.166D以下)を満たさないものを「ファッショングラス」という.本稿での「遮光眼鏡」は,ロービジョン学会用語委員会が提案する定義に基づいたもののうち,入射光の特定波長範囲を吸収する機能をもつものとし,具体的には,HOYAのレチネックス,レチネックスソフト,東海光学のCCP(図1),CCG,CCP400,NoIR社製サングラス,コーニングCPF?,ニコンビーダハード5などをさす.はじめに遮光眼鏡は,ロービジョンケアの補助具のなかで最も高い頻度で処方されるエイドである.まぶしい,視界がぼんやりしている,全体が白っぽく見えるなど,いろいろな愁訴に対して効力を発揮することは経験的に知られている.ところが,明確な処方の基準がなく,患者の自覚的装用感や医師や検者の経験に基づいて処方されているのが実情である.そのため,選択した患者自身も選定に関わるわれわれもその患者にとって本当に遮光眼鏡が有効であるのかどうか,あるいは最適な色の選択ができているのかどうか確信をもって処方ができないことがある.また,根拠に基づく医療を行うという観点から,客観的な根拠を確認したうえでの選定,処方が望ましい.本稿では,これらに対する過去の研究の紹介と自験例から得た知見を報告する.I遮光眼鏡の定義遮光眼鏡とは,言葉が使われる状況により意味合いが異なりはっきりとした定義はいまだにない.日本ロービジョン学会用語委員会は「グレアの軽減,コントラストの改善,暗順応の補助などを目的として装用する光吸収フィルターを用いた眼鏡」という定義を提案している1).入射光の特定波長範囲または特定比率を吸収する機能をもち,カラーレンズ(グレーを含む),フォトクロミックレンズ(調光レンズ),偏光レンズといった種類がある.(47)????*SanaeAsonuma:大阪大学大学院医学系研究科眼科学**TakashiFujikado:大阪大学大学院医学系研究科視覚機能形成学〔別刷請求先〕阿曽沼早苗:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学特集●眼鏡の新しい展開あたらしい眼科24(9):1179~1186,2007遮光眼鏡とロービジョン??????????????????????阿曽沼早苗*不二門尚**図1テストレンズ(クリップオンタイプ)東海光学CCP,全19色.板状のものもある.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007II遮光眼鏡の特性ロービジョン者の見えにくさの原因として,グレアや羞明,コントラストの低下,順応の低下などがある.Rayleighの法則から,波長の短い光線は,散乱光強度が強いためグレアを生じ,その結果,見え方の質を落とす症状が起こる.紫外線は角膜や水晶体でほとんど吸収されるため,眼内には届かず見え方には影響を及ぼさない.見え方の質を落とすのは,眼内に届く可視光中の短い波長である青色光である.遮光眼鏡はこれらの短波長光をカットして散乱を抑え,視感度の高い波長の光を選択的に透過させることから,コントラストや視力を改善させる効果をもつ.また,錐体の感受性が最も高い波長(550nm)以下をカットする種類の遮光眼鏡の装用によ(48)表1過去の報告著者遮光眼鏡の種類対象者の眼疾患視機能の変化コントラスト感度視力暗順応色覚その他グレア(-)グレア(+)Baileyetal(1978)Variousyellow?lters白内障↓↓LynchandBrilliant(1984)CPF?550網膜色素変性,白内障→↑↑↓Tupperetal(1985)SilverandLyness(1985)Red調光レンズ網膜色素変性→BarronandWaiss(1987)CPF?527いろいろ→Bremeretal(1987)CPF?527Conedystrophy→↓視野↑,EDT↑Leatetal(1990)CPF?527Pre-retinaldiseaseGratingacuity↑VandenBerg(1990)Redglass?lter網膜色素変性↑↑↑↓視野↑Zigman(1990)Seemore?lter白内障,加齢黄斑変性↑↑CohenandWaiss(1991)Gawandeetal(1992)PLS?530,540,550CPF?511,527,550網膜色素変性→→Zigman(1992)Seemore?lter白内障,加齢黄斑変性↑Fasceetal(1992)YelloworRed?lters加齢黄斑変性→LeguireandSuh(1993)CPF?527,NoIR?111いろいろ→FrennessonandNilson(1993)YellowandOrange加齢黄斑変性↑NguyenandHoeft(1994)CPF?450,511,527,550XDいろいろ→Provinesetal(1997)KodakWratten?ltersNo3andNo12白子症→Rosenblumetal(2000)Yellow(2種類),Amber,Orange白内障,無水晶体眼,白子症Congenitalmaculardystrophy↑↓↑Wol?sohnetal(2002)NoIR?yellow,orange,red,gray加齢黄斑変性↑↑→→仁科ら(2003)CCP各種いろいろ↑↑Langagergaardetal(2003)CPF?527,LVI527加齢黄斑変性↑石井ら(2005)CCP各種いろいろ↑↑阿曽沼ら(2007)CCP各種加齢黄斑変性↑↑↑↑:向上,→:変化なし,↓:低下,EDT:electro-diagnostictest.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????り,屋外ですでに暗順応をしているのと同じ状態となり,暗順応に時間がかかる症例では屋内にはいっての順応時間が短縮する.III過去の報告網膜色素変性症をはじめ各種網膜疾患,緑内障,視神経疾患,白内障術前後,各種角膜疾患,VDT(VideoDisplayTerminal)症候群など,多くの眼疾患において効果があるといわれており,過去より遮光眼鏡の効果についてのさまざまな報告がされてきている.そのほとんどは自覚的評価に基づく報告であり,客観的な評価を行った報告は多くはない.自覚的評価についての報告としては,おもに遮光眼鏡の装用前後での見え方を比較して評価したもの,疾患別に好まれるレンズの色合いを調査したものがある.他覚的効果についてはそれぞれの報告で用いられた遮光眼鏡の種類や検査条件や方法,対象者が異なるため,結果も一定していない(表1)2,3).科学的な処方を目的としていくつかの研究も行われているが,残念ながらいまだ処方の基準は確立できていない.この理由として,装用状況が異なることにより遮光眼鏡の効果も変化してしまうこと,遮光眼鏡装用による効果を判定する適切でスタンダードなロービジョン者用の検査装置がないことがあげられる.予防効果についての見解は,網膜色素変性症の進行防止については明確なエビデンスは得られておらず,加齢黄斑変性については有意な関連があると報告されている4).IV自験例大阪大学医学部附属病院眼科(以下,当科)では,遮光眼鏡の紹介時には,色の選定や有用性の客観的な根拠の確認のために可能な限りコントラスト感度や視力測定を行っている.加齢黄斑変性の症例について,これらの結果をレトロスペクティブに総括し,正常高齢者との比較検討を行った結果を紹介する.1.対象および方法対象は,当科に来院した加齢黄斑変性症例のうち遮光眼鏡を紹介した症例のなかで,遮光眼鏡によるコントラスト感度と視力,ND(neutraldensity)フィルターによるコントラスト感度を測定した37例と,軽度白内障以(49)図2分光透過率CCPは,短波長域の光の透過率が低く500~550nm付近からの透過率が高いが,NDフィルターは,全周波数域において透過率が一定である.①SC:スプリングカラー.②AC:オータムカラー.③LY:ライトイエロー.④YL:イエロー.⑤OY:オレンジイエロー.⑥RO:レッドオレンジ.⑦BR:ブラウン.⑧FL:フォーリンリーブス.⑨YG:イエローグリーン.⑩UG:アンバーグリーン.1.02.03.04.06.07.000105)%()%(0010500080070060050040530SCACLYYLOYROBRFLYGUGCCPNDフィルター———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007外に問題のない正常高齢者8例.加齢黄斑変性症例の年齢は62~88(75.9±6.4)歳,視力は,良いほうの眼が0.01~0.8(中央値0.1=1.0logMAR,平均0.92±0.34logMAR),視力の良いほうの眼が滲出型であったのが18例で,非滲出型が19例,同じく白内障眼が19例,眼内レンズ眼が18例であった.正常高齢者は,年齢が62~73(66.3±4.7)歳で,視力は(1.0)以上であった.対象者に遮光眼鏡とNDフィルターを用いて,各フィルター装用前後のコントラスト感度と視力を測定し,遮光眼鏡とNDフィルターとの比較,正常高齢者との比較を行った.用いた遮光眼鏡は東海光学CCPシリーズ,NDフィルターはFUJIFILM製の0.1~0.8(図2)であり,白色光に対する輝度低下率が最も近いCCPレンズとNDフィルターを比較した.コントラスト感度はCSV-1000(図3)装置にて,ロービジョン用の文字チャートのCSV-1000LV,縞視標チャートであるCSV-1000Eを用いて測定した.CSV-1000LVは2.5mでの測定であり2.4cycles/degreeの低周波の感度を表す.また24万cd/m2のグレア光を負荷したCSV-1000HGT(図3)装置においても同様の測定を行った.CSV-1000の背景輝度は85cd/m2に,CSV-1000HGTは1,480cd/m2に自動更正され,後者の輝度は晴天時屋外のアスファルト路面の輝度(1,500cd/m2)とほぼ同一である.視力はETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)チャート(図3)を用いて測定した.2.屋内用遮光眼鏡の有効性の検討グレアがない状態でのコントラスト感度と視力を測定し,NDフィルター装用下との比較と正常高齢者との比較を行った.用いたCCPは,黄色系,緑系,茶色系それぞれの色のなかから過去において当科での処方率が高かった色を選んだ.結果であるが,コントラスト感度について,フィルターなしと比較して,AC(オータムカラー),SC(スプリングカラー),YL(イエロー)とND0.2を装用時には,有意にコントラスト感度の改善がみられた(AC:p≦0.001,SC:p=0.016,YL:p≦0.001,ND0.2:p=0.016)(図4).各CCPレンズとNDフィルターとを比較すると,ACとND0.1,YLとND0.2の比較において,それぞれCCPのほうが有意に(p=0.008,p=0.03)コントラスト感度の改善がみられた(図5).コントラスト(50)図4CCPとNDフィルター装用前後のコントラスト感度何も装用していないときと比較して,AC,SC,YLとND0.2を装用すると,有意にコントラスト感度の改善がみられた.AC:p≦0.001;Paired?-test,SC:p=0.016;Wilcoxonsignedranktest,YL:p≦0.001;Paired?-test,ND0.2:p=0.016;Paired??-test.****58.099.049.00.168.088.029.098.0なしlogコントラスト感度ND0.1ND0.2ND0.3FLYLSCAC*p≦~0.016Paired?-test,Wilcoxonsignedranktestn=141.41.210.80.60.40.20図3CSV-1000LVとCSV-1000HGTとETDRSチャート上段:コントラスト感度測定に用いたCSV-1000の背景輝度は85cd/m2に,24万cd/m2のグレアを負荷したCSV-1000HGTの背景輝度は1,480cd/m2に自動更正され,チャートを任意に取り替えて測定できる.左のチャートはロービジョン者用の文字コントラスト感度チャートであるCSV-1000LVであり,右のチャートはCSV-1000RNである.下段:視力はETDRSチャートにて測定を行った.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????感度の改善における正常高齢者との比較では,AC装用下におけるCSV-1000LVチャートによる文字コントラスト感度は,加齢黄斑変性群では有意に(p<0.001)向上していた(図6).正常高齢者群ではCSV-1000RNチャートの文字がAC装用有無にかかわらずすべて読めたため結果に変化がなく比較ができなかった.そこで,正常高齢者に対してCSV-1000Eチャートによる縞視標コントラスト感度検査を施行した結果,文字コントラスト感度と最も近い周波数域である3cpdではACの有無による差は認められなかった(図6).視力については,AC装用下でのETDRS視力は,加齢黄斑変性群において有意に(p=0.004)可読文字数が増加したが,正常高齢者では有意な変化はなかった.また,装用前後の可読文字数の改善量は正常高齢者よりも加齢黄斑変性群のほうが有意に(p=0.011)大きかった(図7).3.屋外用遮光眼鏡の有効性の検討グレア負荷下でのコントラスト感度を測定し,NDフィルター装用下との比較と正常高齢者との比較を行った.用いたフィルターはCCPの全7色である.フィルター装用後のコントラスト感度は,装用前と比較してCCPにおいてもNDフィルターにおいても改善はしていたものの統計学的に有意な変化ではなかった.また,各フィルター装用下でのコントラスト感度の変化量を比較したところ,すべてのCCPとそれに対応するNDフィルターにおける有意な差は認められなかった.正常者との比較では,加齢黄斑変性群ではCCP全色におい(51)図5CCP各色とNDフィルターの比較各CCPと輝度低下率が同程度のNDフィルター装用下でのコントラスト感度の変化を比較した.グラフ中の数値は,各フィルターについて装用後-装用前のlogコントラスト感度である.ACとND0.1,YLとND0.2の比較において,それぞれCCPのほうが有意に(p=0.008;Paired?-test,p=0.03;Wilcoxonsignedranktest)コントラスト感度の改善がみられた.logコントラスト感度*p=0.03Wilcoxonsignedranktest*p=0.008Paired?-testn=140.250.10.150.10.050ACSCND0.1YLND0.2FLND0.3**0.130.080.030.150.060.010.02図6正常高齢者との比較:コントラスト感度左図:AC装用下におけるCSV-1000LVによる文字コントラスト感度は,加齢黄斑変性群では有意に(p<0.001;Paired?-test)向上していた.正常高齢者群ではCSV-1000RNの視標の文字がAC装用有無にかかわらずすべて読めたため結果に変化がなく比較ができなかった.右図:そこで,正常高齢者に対してCSV-1000Eによる縞視標コントラスト感度検査を施行した結果,文字コントラスト感度と最も近い周波数域である3cpdではACの有無による差は認められなかった.●●**CACA●●●●●●logコントラスト感度*p=0.03Paired?-test0.230n=8n=8n=190.40.30.20.10加齢黄斑変性正常高齢者———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007てコントラスト感度は向上したが,正常者においては逆にコントラスト感度は低下した.特に黄色やオレンジ色のLY,YL,OYと赤色のROでは,加齢黄斑変性群のほうが正常高齢者群よりも有意に(p<0.05)文字コントラスト感度が改善していた(図8).CCP各色についてグレア負荷下における白内障群と眼内レンズ群の比較をしたところ,全色において両群間で有意な差(p≦0.01)が検出された(図9).4.まとめ以上より,加齢黄斑変性に対する遮光眼鏡(特に黄色,オレンジ系)は屋内外においてコントラスト感度や視力の改善に有効であることが確認できた.黄色やオレンジのフィルターによりコントラスト感度が改善される理由は,複数の因子の関与があるといわれている.色の処理経路への杆体の関与が低下するため5,6),黄色フィルターの装用で瞳孔径が大きくなり網(52)図7正常高齢者との比較:視力(ETDRS)左図:AC装用下でのETDRS視力は,加齢黄斑変性群において有意に(p=0.008;Wilcoxonsignedranktest)可読文字数が増加したが,正常高齢者では有意な変化はなかった.右図:装用前後の可読文字数は正常高齢者よりも加齢黄斑変性群のほうが有意に(p=0.011;Mann-Whitneysignedranktest)増加した.n=9**n=7n=9n=7加齢黄斑変性正常高齢者加齢黄斑変性正常高齢者なしACなしAC文字数43210文字数706050403020100*p=0.008Wilcoxonsignedranktestp=0.356*p=0.011Mann-Whitneyranksumtest2.560.2962.1461.9024.1121.56図8グレア負荷下における正常高齢者との比較:文字コントラスト感度装用後-装用前のlogコントラスト感度である.加齢黄斑変性群ではCCP全色においてコントラスト感度は向上したが,正常者においては逆にコントラスト感度は低下した.LY,YL,OYの黄色・オレンジ色と赤色のROでは,加齢黄斑変性群のほうが正常高齢者群よりも有意に(p<0.05;Unpaired?-test)文字コントラスト感度が改善していた.logコントラスト感度*p<0.05Unpaired?-test0.90.70.50.30.1-0.1-0.3-0.5LYYLOYYGBRUGRO****:加齢黄斑変性n=10:正常高齢者n=7logコントラスト感度*p≦0.01Unpaired?-test0.350.250.150.05-0.05-0.15-0.25-0.35LYYLOYYGBRUGRO*******:白内障群n=6:眼内レンズ群n=4図9グレア負荷下における白内障群と眼内レンズ群の比較CCP各色について白内障群と眼内レンズ群における装用後-装用前のlogコントラスト感度を比較した.全色において,両群間で有意な差(p≦0.01;Unpaired??-test)が検出された.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007????膜照度が上がるため7),色のスペクトルから青色を取り去ることにより,長波長の対象物のコントラストが上がるため8)などと説明されている.グレア下では,散乱光を最小にしてベールグレアを減じるため9),短波長光のブロックが眼内の散乱や自発蛍光を減少させるため10)といわれている.視力については,眼内への入射光量の減少を補正するために視覚分解能が上がる11)ことが原因であるといわれている.グレアなしの検討で有効性が認められたACは,本来白内障術後の使用を目的として開発されたレンズであり,光吸収特性はブルーライトフィルター眼内レンズとほぼ同一である.この眼内レンズの青色光の網膜障害に対する効果は実証されており,ACやこれと同等かそれ以上の短波長カット機能をもった他の色についても,網膜の保護効果が期待されるところである.V処方についてたくさんある色のバリエーションのなかから適切な色を選定するのはむずかしいと処方を敬遠する向きもあるが,遮光眼鏡は医師によって処方されるものである以上,選定も眼科で行われるのが理想的である.(53)図10症例左の症例は,網膜色素変性症,25歳.屋内用遮光眼鏡の選定に来院.自覚的な装用感は,何もなしよりは遮光眼鏡があるほうが自覚的にも良いが,色の決定に迷っていた.そこでコントラスト感度を測定し効果を比較してみた結果,3色の効果に大差はなく好みの色のFL:フォーリンリーブスに決定した.何もなしでは両眼視力は(1.0)だが,FL装用により(1.5)に向上した.右上は両眼視神経炎,右眼(0.08p),左眼(0.3p).CSV-1000LVチャートで測定すると,何もなしでは13文字しか読めないが,FLの装用により17文字読めた.何もなしでは両眼視力は(0.5)であったのが,FLの装用により(0.7p)に向上した.右下は糖尿病網膜症例,両眼とも汎網膜光凝固術を施行され右眼は牽引性網膜?離術後.視力は右眼(0.4),左眼(0.8),何もなしでは両眼視力(0.8)がACの装用により(1.0)に向上した.なしFLAC③FL②NL①なし④ACなし両眼網膜色素変性症両眼糖尿病網膜症両眼視神経炎———————————————————————-Page8????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007「カット」と「透過」の程度により遮光眼鏡の効能が左右されるため,処方に際しては分光透過率曲線を参考にして,患者の主訴のなかで最も解決したい問題を重視して色を選ぶ.羞明が強ければ,透過率が低くカット可能な波長の範囲が広いものが適切であり,色覚の変化ができるだけ少ないものが希望であれば,可視光範囲の透過率の高低差が少ないものが適切である.あるいは,暗くなりすぎるのが困るなら,視感透過率の高いものが勧められる.カットオフの曲線の角度がシャープであるほど効果的とされており,これは分光透過率曲線から読み取れることが可能であり,分光透過率や視感透過率のデータとともにパンフレットに記載してある.色の決定に迷うケースも多いが,このときにもコントラスト感度や視力の測定が利用できる(図10).いわゆるサングラスにも遮光眼鏡と類似した分光透過率をもつものがあり,見た目の色が同様であっても分光透過率が同じとは限らず,これを調べるには分光透過率測定器を用いるほか方法はない.自前のサングラスで問題がない場合はそれで構わないが,コントラスト感度や視力での他覚的所見により両者の効果を比較することができる(図10).以上のように,コントラスト感度や視力を測定することで遮光眼鏡の効果を客観的に評価することは可能であり,処方に際しては大いに活用されるべきであると考える.自覚的な装用感では気づきにくい変化もコントラスト感度などの他覚的な評価を行うことで効果が患者にも実感できることから,インフォームド・コンセントとして利用することもできる.もちろん,これらの検査は一状況下での評価にすぎないため,使用を想定した状況下での自覚的装用感を試すことは非常に大切であり,これに加えて客観的な評価を臨床でも行うということが今後の処方の方向として理想的であると考える.(54)文献1)日本ロービジョン学会用語委員会:ロービジョン関連用語ガイドライン,20062)EperjesiF,FowlerCW,EvansJW:Dotintedlensesor?ltersimprovevisualperformanceinlowvision?Areviewoftheliterature.??????????????????????22:68-77,20023)Wol?sohnJS,DinardoC,VingrysAJ:Bene?tofcolouredlensesforage-relatedmaculardegeneration.??????????????????????22:300-311,20024)TomanySC,CruickshanksKJ,KleinRetal:Sunlightandthe10-yearincidenceofage-relatedmaculopathy.TheBeaverDamEyeStudy.???????????????122:750-757,20045)阿曽沼早苗,長行司純子,前田江麻ほか:加齢黄斑変性に対する遮光眼鏡の有効性について.眼紀58(2007,印刷中)6)KellySA:E?ectofyellow-tintedlensesonbrightness.???????????????7:1905-1911,19907)KinneyJAS,SchlichtingCL,NeriDFetal:Reactiontimetospatialfrequenciesusingyellowandluminance-matchedneutralgoggles.??????????????????????60:132-138,19838)CheungSTL,PeasePL:Effectofyellow?ltersonpupilsize.?????????????76:59-62,19999)LuriaSM:Visionwithchromatic?lters.?????????????????????????????49:818-829,197210)YapM:Visionenhancementusingashortwavelengthlight-absorbing?lter.?????????????67:100-104,199011)Wol?sohnJS,DinardoC,VingrysA:Bene?tofcolouredlensesforage-relatedmaculardegeneration.??????????????????????22:300-311,2002■用語解説■Rayleighの法則:散乱の強さは波長の4乗に反比例する.視感透過率:レンズを通してみたときの明るさ感を示す値であり,レンズの波長特性に眼の比視感度を加重平均して求めた透過率.