———————————————————————-Page10910-1810/09/\100/頁/JCLS因子であるvascularendothelialgrowthfactor(VEGF)が関与する.VEGFは網膜の低酸素状態が刺激となり血管内皮細胞に作用し血管の発育を誘導する3,4).低出生体重児では,出生時には網膜血管の発育はまだ中途である.出生直後の酸素投与や全身状態の影響により血液循環動態は大きく変わり,網膜は出生前と比べ相対的に高酸素状態となりやすい.高酸素状態はVEGFの産生を低下させ,網膜血管の発育は一時的に停止する(図1).早ければ修正週数30週頃には網膜は再び虚血状態となりやすく,VEGFの産生が亢進し網膜血管の発育が促される.網膜血管の発育が生理的な状態に近いときは周辺部に向かう血管の発育が再開し自然寛解となる.一方,高度の網膜虚血やVEGFの発現亢進があると病的な新生血管が硝子体に向かって形成される.新生血管とそれをとりまく増殖組織の形成は硝子体の変性による網膜の牽引を生じ,網膜離をひき起こす.網膜離が進行するに従い増殖膜は水晶体裏面に一塊となり,いわゆる白色瞳孔を形成する.2.活動期進行度分類活動期の未熟児網膜症は以上のような自然経過をとるが,国際分類では進行度をstage1~5の5段階に分けている(図1)5).Stage1~2は出生早期に網膜血管の発育が停止した際に無血管領域との境界に一致して境界線(demarca-はじめに未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)は網膜離の併発により失明を余儀なくされる代表的な乳幼児眼底疾患であり,網膜離への進行を回避するために網膜凝固による治療が行われてきた.近年,網膜光凝固の時期・適応を評価し,標準化する試みが奏効し,多くの症例で網膜離への進行を阻止することができている1,2).しかし,超低出生体重児の増加とともに,未熟児網膜症の管理と治療は変わりつつある.在胎週数が短く網膜症発症の危険性が高い児であっても,タイムリーかつ十分な光凝固治療により網膜離への進行が抑止できるが,重症例ほど適切な治療のタイミングは限られ,より早期の治療が必要である.光凝固は有効な治療法である一方,過剰に治療を行うと,患児が成長したのちに晩発性網膜離などの合併症を惹起する懸念もある.このため,未熟児網膜症の病態を理解し,各症例に適した光凝固治療の適応を考慮することがますます重要となっている.本稿では,活動期の未熟児網膜症の病期分類と重症度所見を整理し,光凝固治療の適応を概説する.I活動期未熟児網膜症の自然経過と病期分類1.未熟児網膜症の自然経過未熟児網膜症は生理的な網膜血管の発育を基盤として発症する.胎生初期には網膜は無血管であり,胎生14週より視神経を起点として周辺部へ向かう血管の発育が始まる.網膜血管の発育には,血管内皮細胞特異的成長(17)449irouiondo814018041特集●未熟児網膜症診療―最近の考え方あたらしい眼科26(4):449~453,2009光凝固の適応と病期分類StagingandIndicationsforLaserTreatmentofRetinopathyofPrematurity近藤寛之*———————————————————————-Page2450あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(18)tionline)が形成される時期である.境界線はグリア細胞の網膜内での増殖所見であり,白色で細く平坦な所見を呈する.境界線が出現した時期がstage1である.境界線の高さと厚みが増した所見を隆起(ridge)とよぶ.隆起がみられるとstage2と定義する.隆起は初め白色調でありやがて赤みを帯びる.この病変は蛍光眼底造影検査では動静脈シャントの所見を呈し,網膜内に限局した増殖性変化と考えられている.孤立性の球状の発芽病変tuftが隆起付近に散在することがある.Stage3は網膜外線維血管増殖を伴った隆起(ridgewithextraretinalbrovascularproliferation)とよばれ,線維増殖を伴う新生血管が硝子体に向かって垂直に立ち上がり,発芽病変も多発する.網膜内には滲出物が増加する.隆起の後極側では網膜血管の多分岐と怒張所見が顕著となる.新生血管が破綻すると硝子体出血を生じる.Stage3は網膜虚血の亢進が顕著となった時期であり,網膜症の予後を決定する分岐点であるため,一般的には光凝固療法の適応を考慮するタイミングである.す発症前自然寛解Stage1Stage2ABCDabcfdeeStage3Stage5Stage4図1未熟児網膜症の自然経過と進行度分類国際分類5)による進行度(stage1~5)を示す.出生後は血管の発育は一時的に停止するが,のちに再開して自然寛解となる症例がある一方(破線A),網膜虚血が高度となった症例では網膜症に進行する(実線矢印B).Stage1~3の時期では自然寛解が起こりうる(四角で囲んだ部分).Stage3は,自然寛解により網膜血管が再び周辺に向かって発育するか(破線C),増殖病変がさらに悪化して網膜離を併発するか(実線D),網膜症の予後を決定する分岐点であり,原則的には光凝固療法の適応を考慮するタイミングである.a:境界線(demarcationline),b:隆起(ridge),c:網膜外線維血管増殖を伴った隆起(ridgewithex-traretinalbrovascularproliferation),d:増殖膜,e:牽引性網膜離,f:水晶体裏面線維血管増殖(retrolentalbro-vascularproliferation).図2Stage3(網膜外線維血管増殖を伴った隆起)の眼底所見病変はzoneIIの後極寄りに位置し,隆起付近に網膜血管の怒張と発芽病変が多数みられる.後極部の動脈の蛇行がみられるが静脈の怒張は軽度であり,pre-plusdisease6)の所見を呈する.Stage3病変の範囲が拡大するか,plusdiseaseとなった場合には網膜光凝固の適応である.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009451(19)の改訂では,plusdiseaseよりも軽度な後極部動静脈の変化をpre-plusdiseaseとして重視し,plusdiseaseへの進行への注意を促した(図2)6).IIAggressiveposteriorROPAggressiveposteriorROP(AP-ROP)も2005年の国際分類の改訂により定義された概念であるが,これまでわが国でII型とよばれてきた劇症型の網膜症と同一である6~8).AP-ROPは隆起や新生血管の形成(stage2~stage3早期)の時期を経ることなく,急激かつ高度の硝子体出血や線維血管増殖所見を呈するもので,近年の超低出生体重児の増加に伴い増加傾向にある.AP-ROPは血管の伸びが悪い未熟な症例にみられ,網膜血管の発育はzoneIまたはzoneIIの後極側までである.後極部血管の怒張・蛇行(plusdisease)が顕著である一方,新生血管は平坦であるために見逃しやすい.蛍光眼底造影検査では隆起部以外にも網膜血管のシャントがみられることがあるが肉眼では観察しにくいなど,早期の診断は容易ではない.しかし,病変の進行が始まると光凝固治療に対する反応が悪く,網膜離を併発しやすい.このため,zoneI病変で,plusdisease所見を認めた場合はより早期,すなわちstage3となる前に光凝固を行うことが望ましい(後述).一旦網膜離を併発すると進行も早いため,stage4A早期での手術が推奨されている.III光凝固の適応Stage3は,未熟児網膜症が自然寛解して網膜血管がなわち,網膜症はこの時期を境として自然寛解により網膜血管が再び増殖領域を越えて鋸状縁に向かって発育するか,網膜離を生じるかに分かれる(図1,2).Stage4~5は網膜症の活動性が低下せず,網膜離を生じた時期をさす.網膜離が局所的な時期がstage4であり,網膜が全離となるとstage5と定義する.Stage4は,網膜離が黄斑部に及ぶ前までのstage4Aと網膜離が黄斑部に及んだstage4Bに分けられる.3.血管の発育度在胎週数が少ないほど網膜血管の発育は未熟である.出生時にみられる網膜血管の長さが短いほど,のちに網膜の虚血が高度となりやすく,血管の発育の悪さは重症度を反映する.国際分類では網膜血管の発育度を血管先端部の位置によりzoneI~IIIに分類している(図3)5).ZoneIは視神経乳頭-黄斑間の距離の2倍を半径とした円の内側,zoneIIは視神経乳頭-鼻側網膜端を半径とした円の内側,zoneIIIは残りの外側の領域をさす.Zoneの分類は網膜血管の伸びが一番短い部分で表記する.増殖組織が形成された場合,その範囲は時計の時間と同様に表し,1時間は30°である.4.Plusdisease後極部の静脈の怒張と動脈の蛇行は病変の進行が切迫していることを示す所見である.このような所見が2象限以上みられた場合をplusdiseaseと定義し,光凝固の適応を考慮する2,5).2005年の未熟児網膜症の国際分類12ZoneIII黄斑部視神経乳頭鋸状縁ZoneIIZoneI693右眼ZoneIII黄斑部視神経乳頭ZoneIIZoneI12639左眼図3未熟児網膜症のzone分類の記載法国際分類では網膜血管の発育度を血管先端部の位置によりzoneI~IIIに分類している.ZoneIは視神経乳頭-黄斑間の距離の2倍を半径とした円の内側,zoneIIは視神経乳頭-鼻側網膜端を半径とした円の内側,zoneIIIは残りの外側の領域をさす.Zoneの分類は網膜血管の伸びが一番短い部分で表記する.増殖組織が形成された場合,その範囲は時計の時間と同様に表示する.(原図「文献5」をもとに改変)———————————————————————-Page4452あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(20)たものをさす.Type2ROPは,(1)plusdiseaseのみられないzoneI病変がstage1または2となったものか,(2)plusdiseaseのみられないzoneII病変がstage3となったものをさし,注意深く観察すべきであるとした(表1).光凝固は無血管領域と隆起部を隙間なく埋めるようにする.光凝固により網膜症が改善されると網膜血管の怒張・蛇行が軽減するが,効果の発現は数日から数週間とばらつきも大きい.光凝固後に未施行部分に新たに増殖性変化がみられた場合には追加凝固を行う.一旦網膜離を併発した場合には凝固斑が網膜裂孔となる危険があるため,追加凝固は避ける.すでに凝固した部分への重ね凝固は行わない.AP-ROPなど活動性が高いと思われる症例では隆起の後極側に数列程度凝固を追加する9).このようにETROPStudyによる限界域前網膜症のtype1ROPが現在受け入れられている光凝固の適応である.CRYO-ROPStudyによる限界域網膜症と比べ,解剖学的な不良例は減少したが,視力予後不良例の減少は限られており,現在の治療適応には限界があることも銘記すべきである1,2).まとめ未熟児網膜症の活動期病期分類と光凝固の適応についてまとめた.病期分類はstage1~5の5段階に分けられ,stage3は網膜症の予後を決定する分岐点である.光凝固の適応はstage3が原則であるが重症例ではより早期に行う.その診断には病期(stage)だけでなく,網再び周辺に向かって発育するか,増殖病変がさらに悪化して網膜離を併発するか,予後を決定する分岐点であり,光凝固治療の適応を考慮すべき重要な時期である.このような考えに基づき,米国のCryotherapyforRetinopathyofPrematurity(CRYO-ROP)Study(多施設前向き研究)をもとに,光凝固の適応とされたのが限界域網膜症(thresholdROP)である(表1)1).限界域網膜症は血管先端部がzoneIかIIに位置し,stage3網膜症(線維血管増殖組織)の範囲が5時間(150°)連続,または合計して8時間(240°)を超えたものと定義された.しかし,実際には,網膜症の予後は進行度だけでなく,網膜の未熟さ(網膜血管の発育程度)や血管所見からみた病勢(plusdisease)も加えて評価する必要がある.網膜血管の発達が未熟であるほど網膜症は重症化しやすい(進行が早く治療が間に合わないために,網膜離を併発する危険が高い).実際のところ劇症型であるAP-ROPの多くはzoneI病変である.また,plusdis-easeを示す症例も重症化しやすい.このような考えから,現在は,重症化が予測される症例では限界域網膜症より早期〔限界域前網膜症(prethresholdROP)〕に光凝固を考慮することが一般的となっている(表1)2).米国のEarlyTreatmentforRetinopathyofPrema-turity(ETROP)Studyでは,限界域前網膜症をtype1ROPとtype2ROPにわけ,type1ROPを光凝固の適応とした.Type1ROPは,(1)plusdiseaseがみられるzoneI病変すべて(stage1~3),(2)zoneI病変でplusdiseaseはないがstage3となったもの,(3)plusdiseaseを示すzoneII病変がstage2または3に進行し表1進行度(stage分類)と血管の発育度(zone),病勢(plusdiseaseの有無)からみた光凝固の適応Zone分類進行度ZoneIZoneIIZoneIIIPlusdiseaseありPlusdiseaseなしPlusdiseaseありPlusdiseaseなしPlusdiseaseありPlusdiseaseなしStage1Type1Type2Stage2Type1Type2Type1Stage3(限界域前)Type1Type1Type1Type2Stage3(限界域)ThresholdThreshold光凝固の適応を灰色で示した.限界域前網膜症はType1ROPとType2ROPに分かれる2).Stage3は限界域前網膜症と限界域網膜症に分けた(二重線と矢印).限界域網膜症(Threshold)は血管先端部がzoneIかIIに位置し,stage3網膜症(線維血管増殖組織)の範囲が5時間(150°)連続,または合計して8時間(240°)を超えたものをさす1).———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009453(21)hypoxia’isthestimulusfornormalretinalvasculogenesis.InvestOphthalmolVisSci36:1201-1214,19954)SmithLE:Pathogenesisofretinopathyofprematurity.GrowthHormIGFRes14(SupplA):S140-144,20045)TheCommitteefortheClassicationofRetinopathyofPrematurity:Aninternationalclassicationofretinopathyofprematurity.ArchOphthalmol102:1130-1134,19846)InternationalCommitteefortheClassicationofRetinopa-thyofPrematurity.TheInternationalClassicationofRetinopathyofPrematurityrevisited.ArchOphthalmol123:991-999,20057)植村恭夫,馬嶋昭生,永田誠ほか:未熟児網膜症の分類(厚生省未熟児網膜症診断基準,昭和49年度報告)の再検討について.眼紀34:1940-1944,19838)森実秀子:未熟児網膜症第II型(劇症型)の初期像及び臨床経過について.日眼会誌80:54-61,19769)林英之:未熟児網膜症の光凝固療法.あたらしい眼科18:1467-1472,2001膜血管の発育度(zone)と活動性所見(plusdisease)も重要である.AP-ROPは近年増加傾向にあり,治療に難渋しやすいためより早期の光凝固治療を考慮すべきである.文献1)CryotherapyforRetinopathyofPrematurityCooperativeGroup:Multicentertrialofcryotherapyforretinopathyofprematurity.One-yearoutcome─structureandfunction.ArchOphthalmol108:1408-1416,19902)EarlyTreatmentforRetinopathyofPrematurityCoopera-tiveGroup:Revisedindicationsforthetreatmentofretin-opathyofprematurity:resultsoftheearlytreatmentforretinopathyofprematurityrandomizedtrial.ArchOph-thalmol121:1684-1694,20033)Chan-LingT,GockB,StoneJ:Theeectofoxygenonvasoformativecelldivision.Evidencethat‘physiological