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レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症の病態 血液・房水柵破綻説

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS剰照射によるものを15眼(34.9%)に認めた2).LI穿孔部が著しく大きい例も散見することから,レーザーによる角膜への直接的影響が推察される.通常,急性緑内障発作眼では可及的に発作状態を解除した後にLIを行うが,角膜浮腫や前房フレアの増加のためにレーザーエネルギーが虹彩に到達するまでに減衰しやすく,照射出力は高くなりがちで照射数も増加しやすい.また,麻痺性散瞳による虹彩根部の肥厚・浮腫によって一旦,穿孔が得られても再閉塞をきたしやすい.高浸透圧薬の点滴あるいは内服,b遮断薬などで眼圧下降が得られている場合には数日おいて穿孔を試みるため,治療が数回に及び,その結果,照射総エネルギーは過剰になる傾向がある.確かにレーザーの過剰照射は本症の発症誘因の一つと考えられるが,10J未満の症例や,予防的レーザー照射による症例,角膜浮腫がレーザー照射部位に一致しない角膜下方からの症例があり,レーザーの直接的影響以外にも角膜内皮が障害される何らかの機序があるようだ.2.既存の角膜内皮障害角膜内皮障害の原因には,原発性の角膜内皮障害や緑内障,加齢などがあげられる.初診時に角膜内皮スペキュラーを施行すると,瞭眼に角膜内皮細胞密度の減少や滴状角膜を認めることがあり,既存の角膜内皮障害の素因のある人が多いようである(ただし,瞭眼すべてに予防的LIが施行されており,レーザーの影響を考慮せはじめにレーザー虹彩切開術(LI)後の水疱性角膜症に対して角膜移植と白内障の同時手術を施行すると,術中からフィブリンが析出するなど強い炎症反応を生じる1,2).手術では虹彩後癒着の解除や瞳孔形成術を必要とすることが多く,手術手技の難易度が高いことは否めないが,角膜を打ちぬいた直後からフィブリンが析出するケースがある.こういった強い炎症反応は他の角膜移植術では経験しないことから,本疾患の特徴として血液・房水柵が破綻していることが推察される.これまでに筆者は,LI後の角膜内皮障害例に対して前眼部蛍光撮影法を行い,本疾患で虹彩血管の透過性が亢進していることを報告してきた.なぜLI後眼で虹彩血管の透過性が亢進するのか,血液・房水柵の破綻が角膜内皮にどのように影響するのか不明であるが,ここにLI後の水疱性角膜症の病態解明の端緒が隠されているように思う.本稿では,これまでに経験したLI後の水疱性角膜症の症例を振り返るとともに,本疾患の病態の一つとして血液・房水柵の破綻説を提唱すべく筆者の考えを述べたい.ILI後水疱性角膜症発症の危険因子1.レーザーの過剰照射水疱性角膜症発症の危険因子にレーザーの過剰照射がある.筆者の施設でもレーザーの照射条件が判明したLI後水疱性角膜症43眼中,総エネルギー10J以上の過(23)???*HisayoHigashihara:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕東原尚代:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):871~878,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症の病態─血液・房水柵破綻説─?????-???????????????????????????東原尚代*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007ねばならない).一方,緑内障の既往やguttataがなくても角膜内皮細胞密度が著しく減少している症例を経験することがあり,後に述べる偽落屑症候群(pseudoexfo-liationsyndrome:PEX)の合併についても留意が必要である.いずれにせよ,LIを施行する前には両眼の角膜内皮所見を評価しておくことは治療法の選択のうえで必須のものと考えられる.II角膜浮腫の発症部位(上方型,下方型,全体型)京都府立医科大学では,1992年からLI後の水疱性角膜症に対する角膜移植術を積極的に行っている.当時,紹介される患者のほとんどは角膜浮腫が全体に及んでおり,水疱性角膜症に至ってから,かなり時間が経過して角膜混濁や帯状角膜変性症を伴っているものが多かった.近年,LI後の水疱性角膜症が注目されるようになり,初期の角膜内皮障害例をみる機会が増えた.そこで,LI後の水疱性角膜症91眼を対象に初診時の角膜浮腫の部位を検討したところ,浮腫が角膜全体に及ぶもの(全体型)が66眼(72.5%),浮腫がレーザー照射部位に一致するもの(上方型)が12眼(13.2%),レーザー照射部位とは離れた角膜下方から浮腫を生じているもの(下方型)が13眼(14.3%)という結果を得た.角膜移植術目的の紹介であるため,角膜浮腫が全体に及ぶ症例が一番多いのは当然としても,上方型と下方型はほぼ同率であり,初期の角膜浮腫発症パターンは大きく,上方型と下方型に二分されることが予想される.角膜浮腫の部位別に原疾患の内訳を検討したところ,上方型は急性閉塞隅角緑内障が41.6%,狭隅角が58.4%であったのに対し,下方型は狭隅角(84.6%)を多く含み,下方型では上方型よりも予防的にLIを施行された例を多く含むことが示唆された(図1).一方,LI施行日と水疱性角膜症を発症した時期が判明した64眼について,LI施行から水疱性角膜症発症までの期間は,64眼すべての平均期間は6年10カ月(1年5カ月~10年)であり,浮腫の部位別には下方型の平均期間は8年1カ月で,全体型(5年5カ月)や上方型(7年1カ月)よりも水疱性角膜症に至る期間が長い傾向にあった(図2).以上より,レーザー照射による角膜内皮への直接障害だけが原因ではないことが再認識され,とりわけ角膜下方から浮腫を生じている例では,LI施行後にも持続して角膜内皮細胞が障害される何らかの機序が推測された.III前眼部蛍光造影法前眼部の蛍光造影(FA)は,虹彩腫瘍や網膜の血管閉塞,糖尿病性微小血管障害による新生血管の描出,緑内障など多くの眼疾患の病態把握や病期の進行を評価できる検査法であり,細隙灯顕微鏡検査では観察できない虹彩の血管異常を観察することができる.Brangatoら3)の報告によると,40歳以下の健常眼に前眼部FAを施行しても虹彩から蛍光色素の漏出は生じないが,60歳以上になると造影後期に瞳孔領にわずかな色素漏出を生(24)図1浮腫部位別の原疾患の内訳100806040200(%)全体型(66眼)上方型(12眼)下方型(13眼):狭隅角眼:急性閉塞隅角緑内障:不明:慢性閉塞隅角緑内障図2LI施行から水疱性角膜症発症までの期間LI施行日と水疱性角膜症を発症した時期が判明した64眼について検討した.**p=0.0401612840(年)全体型(44眼)上方型(10眼)下方型(10眼)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???じることがわかっており,こういった生理的な瞳孔領の蛍光色素漏出は,加齢による血液・房水柵の障害が関与していると考えられている.健常眼では,前房内に漏出した蛍光色素は前房水の対流とともに上方へ運ばれ,速やかに前房内から排出されてなくなるが,虹彩に新生血管を生じているなど血液・房水柵が破綻している例では,蛍光色素は造影初期から著しく漏出し,造影後期まで前房内に蛍光色素が滞留するとされる.IV前眼部フルオロフォトメトリー法による前房内蛍光強度の測定まだ角膜が透明なLI後の角膜内皮細胞障害例に対し,前眼部フルオロフォトメトリー法を用いて前房内の蛍光強度を測定し,同時に前眼部FAを行って虹彩血管の蛍光色素の漏出を観察した.前眼部FAを施行した角膜内皮細胞障害例10眼の内訳を表1に示す.10眼中8眼はLI部が穿孔していたが,2眼は不穿孔であり,10眼中2眼にPEXを合併していた.対照として,LIや内眼手術の既往のない健常眼8眼にも同様の検査を施行した.方法は,フルオレセイン10m?を静注し,前眼部FAおよび,アンテリアフルオロメータ(FL-500)による前房内フルオレセイン蛍光強度を静注10分後および30分後に測定した.結果を図3に示す.フルオレセイン静注10分後の前房内蛍光強度の平均(photoncounts/sec)は,LI後眼で659.0,健常眼で19.8,30分後はLI後眼で1,030,健常眼で88.3であり,いずれもLI後眼で有意に高値を示した.また,角膜内皮細胞密度と前房内フルオレセイン蛍光強度には有意な相関がみられた(図4).以下に代表例を紹介する.〔症例1〕63歳,男性.両眼ともに予防的LIを施行され,初診時の角膜内皮細胞密度は右眼が測定不能,左眼は309cells/mm2であった(図5).左眼の前眼部FAを示す.フルオレセイン静注40秒後よりLI部から色素の漏出を生じ,時間とともに瞳孔領からもフルオレセインの漏出を認めた(図6).〔症例2〕77歳,女性.両眼ともに予防的LIを施行され,角膜内皮細胞密度は右眼が704cells/mm2,左眼は角膜下方から浮腫を生じており内皮細胞密度は測定不能であった.この症例では,両眼ともLI施行部は虹彩の萎縮を認めるのみで,完全に穿孔していなかった(図7).右眼の前眼部FAを示す(図8).フルオレセイン静注27秒後から瞳孔領に色素の漏出を認めたが,穿孔していないレーザー照射部位からは色素の漏出は認めなかった.〔症例3〕76歳,女性.右眼は予防的LIを,左眼は急性緑内障発作に対してLIを施行された.角膜内皮細胞密度は右眼2,325cells/(25)図3フルオレセイン静注10分後と30分後の前房内蛍光強度10分後,30分後ともに健常者よりもLI後内皮障害例で前房内蛍光強度は有意に高値を示した.****p=0.0169**p=0.01893,5003,0002,5002,0001,5001,0005000Photoncounts/sec静注10分後静注30分後:LI後(n=10,うち2眼にPEXあり):健常者(n=8)図4前房内蛍光強度と角膜内皮細胞密度の関係r=0.607,p=0.0003(Pearson’scorrelationcoe?cient)3,5003,0002,5002,0001,5001,0005000Photoncounts/sec1,0002,0003,000ECD(cell/mm2)0:LI後(n=10,うち2眼にPEXあり):健常者(n=8)表1前眼部FAを施行した角膜内皮障害例10眼の内訳PEXなしPEXありLI施行穿孔7眼1眼不穿孔1眼1眼———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007(26)図5症例1の前眼部写真右眼は角膜全体に浮腫を生じている.左眼の角膜は透明であるが,内皮細胞密度は309cells/mm2にまで低下していた.両眼ともLI部は大きく穿孔しており,前房深度は浅い.図7症例2の左眼の前眼部写真(左より左眼/左眼フルオレセイン染色/LI部の拡大)左眼の角膜内皮細胞密度は測定不能で,角膜下方から浮腫を生じている.LI部は虹彩の萎縮を認めるのみで,完全に穿孔していないのがわかる.図6症例1の左眼の前眼部FAフルオレセイン静注30秒後よりLI施行部から蛍光色素の漏出があり,瞳孔領からも漏出を生じた.フルオレセイン静注30秒後40秒後50秒後60秒後———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???(27)図8症例2の前眼部FAフルオレセイン静注27秒後から瞳孔領に蛍光色素の漏出を認めたが,穿孔していないLI部からは蛍光色素の漏出は生じなかった.図9症例3の前眼部写真右眼の角膜は透明で,内皮細胞密度は2,164cells/mm2を維持していた.右眼の瞳孔形は歪で,写真での確認は非常に困難であるが,わずかに落屑物質を認めた.左眼はDescemet膜皺襞と角膜混濁を伴い内皮細胞密度は測定不能であった.図10症例3の左眼の前眼部FA造影初期から虹彩の広範囲より著しい蛍光色素の漏出を生じた.フルオレセイン静注30秒後40秒後50秒後60秒後———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007mm2,左眼は帯状角膜変性症とDescemet膜皺襞があり内皮細胞密度は測定不能であった(図9).写真での確認は困難であるが,右眼の瞳孔領にわずかに落屑物質を認め,PEXの合併がうかがわれた.左眼前眼部FAを示す(図10).フルオレセイン静注25秒後よりLI施行部から色素の漏出を生じ始め,時間とともに蛍光色素はLI施行部や瞳孔領だけでなく虹彩全面から著しく漏出した.〔症例4〕82歳,女性.約10年前に両眼に予防的LIを施行された.右眼のLI部は不穿孔であり,瞳孔領には落屑物質を認め角膜下方から浮腫を生じていた.角膜内皮細胞密度は右眼が測定不能,左眼は2,033cells/mm2であった(図11).前眼部FAを示す(図12).右眼は造影初期から虹彩の広範囲に著明な蛍光色素の漏出を生じた.興味深いのは,角膜が透明であった左眼にもLI部と瞳孔領から蛍光色素の漏出を認めた点である.今後,左眼の角膜内皮細胞も障害される可能性があるため,落屑物質の変化とともに長期的な内皮細胞の観察が必要と思われる.(28)V偽落屑症候群の合併近年,PEXが全身の血管異常を生じる疾患として注目されている.PEXの眼部の特徴として,落屑緑内障やZinn小帯の脆弱化はよく知られているところであるが,血液・房水柵の破綻やpseudouveitis,角膜内皮細胞の代償不全なども報告されており4~6),LI後水疱性角膜症の臨床像といくつかの共通点を有することに気づく.非常に稀ではあるが,筆者らの施設でも内眼手術やLIの既往がないのに,PEXだけで水疱性角膜症を生じた例を経験している(図13).こうした症例に対して前眼部蛍光撮影法を実施すると,LI後の角膜内皮障害例と同様に,虹彩の広範囲から著しい蛍光色素が漏出し,かつ,蛍光色素が造影後期まで長時間に及んで前房内に滞留することがわかった.注目すべきは,前房内に漏出した蛍光色素が時間とともに前房内下方へ溜まっていった点である(図14).血液・房水柵の破綻によって虹彩から持続的に低濃度の何かが放出される結果,角膜内皮細胞が障害されるのではないか?と強く想像させるのである.図11症例4の前眼部写真右眼は角膜下方から浮腫を生じている.LI部(虹彩の10時方向)は不穿孔であった.左眼の角膜内皮細胞密度は2,033cells/mm2で,瞳孔領には落屑物質は認めなかった.左:右眼,右:左眼.図12症例4の両眼の前眼部FA右眼は症例3と同様に造影初期から虹彩の広範囲より蛍光色素の漏出を認める.角膜内皮細胞密度が2,000cells/mm2を維持していた左眼にも,LI部および瞳孔領から蛍光色素の漏出を認めた(右下).———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???(29)本稿でも紹介したように,LI後水疱性角膜症のなかにもPEXを合併する症例がある.LI後の水疱性角膜症において,角膜浮腫と角膜混濁が強い場合,瞳孔領の偽落屑物質の確認が困難なことが多く,PEXを合併しているかの判断はむずかしい.瞭眼の観察で瞳孔領や水晶体前面にフケ状の落屑物質を確認できれば診断は容易で図13PEXのみで角膜内皮障害を生じている症例瞳孔領に落屑物質を確認できる.前房は浅く,LIの既往はない.フルオレセイン染色では,角膜下方から浮腫を生じているのがわかる.図14図13の前眼部FA造影後期まで観察すると,汗が滴るかのように蛍光色素が漏出し,長時間にわたって前房内に滞留しているのがわかる.———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007(30)あるが,PEXが片眼性あるいは初期の場合は細隙灯顕微鏡検査でPEX合併を診断できない.術後に瞳孔領の観察ができて初めてPEXを合併していたことに気づく例もある.これまでに経験した症例のうち,角膜内皮細胞密度が2,000cells/mm2以下に減少した症例をみると,わずかに瞳孔領の落屑物質が確認できるものがある.ごく初期のPEXも含めば,LI後水疱性角膜症のなかにかなりの頻度でPEXが合併しているのかもしれない.おわりに近年,LI後に水疱性角膜症を生じることが問題となり,LI施行の是非について議論がなされ,LIよりも早期の白内障手術が望ましいといわれている.しかし,LIを施行するすべての眼が水疱性角膜症を生じるのではない.実際にはごく稀なのである.LIは外来で施行できる非常に有用な術式であり,角膜内皮に対する影響は少ないとされるNd:YAGレーザーを併用してLIを行えば過剰照射になることはまずない.LIは正しく行えば安全な術式であること,現在も医原性水疱性角膜症の発症原因の第一位は白内障手術であることを忘れてはならない.LIを施行しても角膜内皮が正常な症例と水疱性角膜症に至る症例がある.その違いは,既存の角膜内皮障害あるいは血液・房水柵の障害にあるように思う.こういった脆弱性を有した眼に,LI施行がトリガーとなり,さらなる角膜内皮細胞障害あるいは血液・房水柵の障害が加速するのではないかと推察する.したがって,LI施行前に両眼の角膜内皮細胞やPEX合併の有無を確認し,水疱性角膜症に至るリスクの高い症例に対してのみ,周辺虹彩切除術や白内障手術を実施する必要がある.LI後水疱性角膜症に対して角膜移植術を施行すると,術後の角膜内皮細胞密度の経過は他の原疾患のそれと変わりがないことから,ステロイド点眼による消炎が角膜内皮保護に有用と考える.LI施行後に生じる目に見えない前房内炎症に対して,長期的な低濃度ステロイド点眼による消炎を推奨したい.文献1)KomuroA,YokoiN,NishidaKetal:PenetratingKerato-plastyforBullousKeratopathyafterLaserIridotomy.p203-208,PlenumPress,NewYork,19972)金井尚代,外園千恵,小室青ほか:レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症に関する検討.あたらしい眼科20:245-249,20033)BrangatoR,BandelloF,LattanzioR:Iris?uoresceinangi-ographyinclinicalpractice.???????????????42:41-70,19974)NaumannGO,Schlotzer-SchrehardtU,KuchleM:Pseu-doexfoliationsyndromeforthecomprehensiveophthalmol-ogist.Intraocularandsystemicmanifestations.??????????????105:951-968,19985)Schlotzer-SchrehardtU,NaumannGO:Ocularandsys-temicpseudoexfoliationsyndrome.????????????????141:921-937,20066)NaumannGO,Schlotzer-SchrehardtU:Keratopathyinpseudoexfoliationsyndromeasacauseofcornealendothe-lialdecompensation:aclinicopathologicstudy.??????????????107:1111-1124,2000

レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症の病態 過剰凝固説

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS原因と謎についてまとめてみた.I実際のALIにおける照射エネルギー量の謎Arレーザーによる緑内障治療であるlasergonioplas-ty,pupilloplastyでは,これまでに内皮障害の報告はない.Lasergonioplastyおよびpupilloplastyの両治療法とも緑内障発作時に用いられるものではないので一概に比較はできないのではあるが,この2者とALIによる実際のエネルギー照射量を北澤の方法16)をもとに算出してみた.まずALIでは6.16~8.24J(Firststep:スポットザイズ200?m,パワー0.2W,照射時間0.2秒,照射回数4~6回,Secondstep:スポットザイズ50?m,パワー1W,照射時間0.02秒,照射回数300~400),YAGレーザーLIでは0.06~0.16Jとなる.一方,lasergonioplastyおよびpupilloplastyでは0.5~1.5Jとなり,基本どおりレーザー照射を行ったと仮定しても,ALIは圧倒的に照射エネルギー量が多い.この点を考慮すると,過剰エネルギー照射はALIによる角膜内皮障害の一因となりうると思われる.これまでの報告では,ALIの総照射エネルギー量は少なくとも10~20Jに収めるべきであるとされている7~10).ALI後BKの症例報告では,緑内障発作時にかなり過剰なレーザー照射を施行されていたり,場合によっては虹彩の穿孔部が再閉塞したためにくり返しレーザー照射をされていたりした例が多く含まれている.しかし,Arレーザーの照射量と内皮細胞障害の程度やBK発症時期は必ずはじめにアルゴンレーザー虹彩切開術(argonlaseriridoto-my:ALI)はおもに閉塞隅角緑内障に対して施行される安全な非観血的治療法とされてきた.しかしALIの合併症として,術後早期では一過性の虹彩炎,眼圧上昇,白内障,角膜混濁,施行部位に限局した角膜内皮損傷,虹彩癒着などが報告されている1,2).長期的経過観察では数カ月から数年経過した後に,角膜内皮代償不全を起こし水疱性角膜症(bullouskeratopathy:BK)に至る重篤な合併症が報告されている3,4).このALI後のBKにおける,はっきりとしたevidenceに基づく原因究明は,いまだなされていない.ALI後BKの原因としては,急性緑内障発作(眼圧上昇)による内皮障害5~7),角膜内皮細胞の既存の異常(脆弱性など)8),過剰なレーザー照射による角膜内皮細胞障害7~11),そして房水循環不全4,12),物理的眼内変化13,14),術後慢性炎症や創傷治癒障害12,15)などが報告されているが,単一の原因で本疾患が発症すると考えるにはどの説にも矛盾点がある.つまり,多くの複合的な要素が重なることで発症すると考えたほうがreasonableである.アルゴン(Ar)レーザーが眼内に過剰に照射されることで直接に眼内に生じる障害は,前房内温度の変化や角膜のサーマルバーン,炎症反応,酸化ストレスによる障害,眼内房水動態の変化などが考えられている4,8,11).本項では,過剰なレーザー照射による角膜内皮細胞障害に的を絞って,特にALIによる前房内温度変化,および酸化ストレスを中心に,考えられうる(15)???*TadashiSenoo,RyoTakayama&KeizoChiba:獨協医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕妹尾正:〒321-0293栃木県下都賀郡壬生町大字北小林880獨協医科大学眼科学教室特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):863~869,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症の病態─過剰凝固説─????????????????????????????????妹尾正*高山良*千葉桂三*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007しも比例関係になく,予防的ALIのように比較的照射エネルギー量が低くても水疱性角膜症を起こす例もある17,18).これまでの可能な限りの症例報告に自験例を加えてまとめると表1のようになる.症例は圧倒的に女性が多く,41例中男性はわずか5例である.特に両眼発症例ではその差は顕著になる.表1aのうち両眼にALIを受け片眼のみに発症した症例で内皮異常や糖尿病の記載がないもののみをまとめたものが表1bになる.これを純粋にレーザー照射のみが原因で発症したBKだと考えると,面白いことに,男女差がなくなり,照射エネルギー量の平均はBK発症眼で37.5±26.8J,非発症眼で19.6±13.3Jとなり,先の文献7~10)と一致する.しかし一方で,片眼緑内障発作でALIを施行後もう片眼に予防的ALIを施行された症例で,両眼に対する照射エネルギー量に大きな差があるにもかかわらず,両眼ともにBKに陥った症例4,17)や,発作眼のほうが予防LI眼より少ない照射エネルギーであったにもかかわらず,発作眼のみにBKを生じたという報告もある7).さらに,ALI照射エネルギー量も3.76~101Jまでと幅広く,症例により千差万別である.この結果はArレーザー照射による角膜内皮障害の程度に個人差がある可能性や,何らかの条件下でArレーザーを照射するBKをひき起こす可能性を示唆している.IIArレーザー過剰照射による前房内温度変化とその謎Arレーザーは本来coagulatorをおもな目的として網膜疾患の熱凝固に用いられている.さらに,従来の観血的虹彩切除に代わってArレーザー虹彩切開術に用いられるようになった19).このようなArレーザーの特性より,Arレーザー照射が発する熱作用が,直接あるいは間接的に角膜内皮細胞に損傷を与え,水疱性角膜症発症の誘因になったとも考えられている8,11,20).この点を検証するために筆者らは,前房内に極小温度センサーを挿入してArレーザー照射による前房内温度変化を測定してみた21,22).家兎眼を用いた実験では,前房内温度はArレーザー照射によりセンサー近傍で50℃前後まで上昇するが,センサーから離れた部位ではほとんど温度上昇は認められなかった(図1,2).同様の実験をYAGレーザー照射で行ってみたが,前房内温度上昇はほとんど認められなかった(図3).さらに,実際臨床上でALI後の前眼部サーモグラフを測定したが,前眼部の熱放散は著しく速やかに正常温度に低下していた.さらに,以前から眼科的治療法として用いられている眼温罨法を同様の実験系で行うと前房内温度はほぼ同様(16)表1文献によるALI後BK症例(a)と両眼照射片眼発症例(b)a.文献によるALI後BK症例対象年齢性別総照射エネルギー糖尿病内皮異常発症期間発作・予防全体41例(62眼)68±9.3歳(40~84歳)男:5例(6眼)女:36例(56眼)27±25.2J(3.76~101J)9人6人4.1±2.9年(0.5~12年)発作:22眼予防:40眼片眼発症20例(20眼)61.5±8.8歳(40~76歳)男:4眼女:16眼32.4±24.0J(7~88.9J)6人3人4.6±3.3年(0.5~12年)発作:14眼予防:6眼両眼発症21例(42眼)71.6±7.7歳(49~84歳)男:1眼女:20眼22.7±22.4J(3.76~101J)3人3人3.1±1.3年(0.5~6年)発作:8眼予防:34眼b.両眼照射片眼発症症例両眼照射片眼発症9例(9眼)56.6±9.2歳(40~69歳)男:4例(4眼)女:5例(5眼)───3.2±1.2年(2~3.6年)発作:7眼予防:11眼発症眼9眼──37.5±26.8J(20~88.9J)───発作:7眼予防:2眼非発症眼9眼──19.6±13.3J(4~29.3J)───発作:0眼予防:9眼———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???に上昇した(図4).これまで温罨法による角膜内皮障害の報告はないことから,前房内温度が上昇すること自体が角膜内皮細胞を直接障害するとは考えにくい22).しかし,前房内温度が上昇することで化学的な反応はより起こりやすくなるし,本実験系ではArレーザーが角膜内を通過することによる熱凝固反応や,内皮細胞の直接的なサーマルバーンを評価しえていない13).また癌治療の一つで,癌細胞の増殖抑制を目的とした温熱療法は43℃前後の加温で用いられることが多く23),この点を加味すると緑内障発作といった特殊な状態での温度上昇が内皮細胞にまったく影響を及ぼしていないとは言い切れない.IIIArレーザー照射による酸化ストレスとその謎眼は常に光ストレスに曝されている組織であることは言うまでもないが,眼に対する光毒性の報告は多く24~28),ALI後BKの原因の一つとしてArレーザー照射による酸化ストレスの可能性が考えられる29,30).種々の誘因で(17)図1ALIと前房内温度変化の測定条件図に示すように極小温度センサーを前房内に挿入したうえで,センサー近傍とセンサーの反対側にALIを行った.温度センサー温度計温度センサーセンサー近傍センサー遠方レーザー照射図2アルゴンレーザー照射による前房温度変化センサー近傍ではレーザー照射量の増加に伴って温度上昇を認めたが,センサー反対側での照射では前房内温度は上昇しなかった.55504540353025500発400発300発200発100発照射前温度(℃):平均近傍:平均遠方n=5NSNSp<0.05p<0.05p<0.05図3Nd:YAGレーザー照射による前房温度変化センサー近傍,センサー反対側ともに前房内温度の上昇は認められなかった.353331292716発32発48発64発80発照射前温度(℃):平均近傍:平均遠方n=5Student?検定NS図4罨法による前房内温度変化眼科用罨法を用いて前房内温度変化を測定するとALI近傍とほぼ同等の温度上昇を認めた.4540353025前温度(℃):生体眼:摘出眼1分2分3分4分5分6分7分8分9分10分11分12分13分14分15分———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007活性酸素・フリーラジカル注1)は発生するが,緑内障発作時のレーザー照射によるラジカル発生としては,虹彩や角膜の緑内障による直接障害や炎症,これらの炎症に起因する白血球浸潤,レーザー照射によるショックウェーブの発生,眼圧上昇による眼内の虚血およびALI後の再灌流,ミトコンドリアによるエネルギー産生などが考えられる.一般的に生体内では,生じた活性酸素・フリーラジカルは速やかにラジカル消去系注2)によってscavenging(除去)される(図5).消去系の網から漏れた活性酸素・フリーラジカルは蛋白質,脂質(特に細胞膜脂質),核酸を傷害し次々と周囲の細胞に伝播し,大きな細胞障害をひき起こすラジカル連鎖障害をひき起こす(図6).ALIによるラジカル発生を調べた動物実験では,Arレーザー照射後7日間の前房水の過酸化反応関連物質は,非施行眼と比較して過酸化脂質(図7),過酸化水素(図8)が発生し,過酸化反応が進行していることが確認された21).過酸化水素は反応性に非施行眼でも上昇しており,これがレーザー照射量と内皮障害の非均衡につながっているのかもしれない.発生した活性酸素・フリーラジカルの消去酵素であるsuperoxidescavenging活性(SOD)の活性をみるとALI後に活性が上昇している(図9).YAG-LIとALIでSOD活性を比較すると明らかにALI後で高い活性を示しており,より強い酸化ストレスがかかった可能性が示唆される31)(図10).この結果を裏付ける報告として,SODノックアウトマウス(18)図5活性酸素消去系一度生じた活性酸素はスーパーオキシド消去系(SOD,L-アスコルビン酸,GSH,トコフェロールなど)によってH2O2に変換され,さらに過酸化水素消去系(カタラーゼ,グルタチオンペルオキシダーゼ,GSHなど)によってH2Oへと変換される.・O2-H2OH2O2スーパーオキシド消去過酸化水素消去スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)L-アスコルビン酸還元型グルタチオン(GSH)トコフェロールカタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼ還元型グルタチオン図6ラジカル連鎖障害一度生じた活性酸素・フリーラジカルは消去系の網から漏れると細胞の脂質を酸化し脂質ラジカルを形成する.これに酸素の修飾を受け脂質ペルオキシラジカルとなり不安定な脂質ペルオキシラジカルは近傍細胞の脂質をさらに酸化してゆく.こうして次々と周囲の細胞に伝播し,大きな細胞障害をひき起こす.O2O2フリーラジカル細胞膜(脂質)過酸化脂質脂質ペルオキシラジカルLH脂質(二重結合のある多価不飽和脂肪酸)?OHH2O脂質ラジカル脂質ペルオキシラジカルLHLOOHL?L?LOO?LOO?注1)「フリーラジカル」は不対電子を1個以上もつ分子または原子を意味する.「活性酸素」とは,われわれが呼吸する大気中の酸素よりも活性化された酸素およびその関連分子の総称で,スーパーオキシド(O2-),一重項酸素(1O2),過酸化水素(H2O2),ヒドロキシラジカル(・OH),などがある.本稿では便宜上すべて「活性酸素・フリーラジカル」に統一する.注2)ラジカル消去系:ラジカル代謝酵素や抗酸化物質による抗酸化作用のことでこれらを総称してradicalscavengerとよぶ,房水中にあるものとしては,アスコルビン酸,カタラーゼ,スーパーオキシドディスムターゼ(SOD),グルタチオンペルオキシダーゼ,グルタチオン還元酵素,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD),6-ホスホグルコン酸脱水酵素などがある.特にアスコルビン酸は血中の27倍,酸素濃度は50%と抗酸化状態に保たれている.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???では,眼内の炎症反応によって角膜内皮反応の障害が著明に認められたり,水晶体混濁を生じたりする29,32).この障害はカタラーゼなどのラジカル消去系の投与で抑制されることが報告されている30).一方,活性酸素・フリーラジカルの関与が多く報告されている白内障26)では,白内障の発生率が高いことで知られているプードル犬の純血系種で,同型の雑種プードル犬と比較して有意に血中SOD活性,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD),カタラーゼ活性が低いことが報告されている33).同様に女性では紫外線による白内障の頻度が有意に高い傾向があることが報告されており34),ALIのBKが女性に多い点を考えると,眼酸化ストレスには女性のほうが弱いのかもしれない.さらに,緑内障自体の房水内抗酸化能が低下しているという報告もある28).照射エネルギーの小さいYAGレーザーによるLIではBKは生じにくいと思われるが,ショックウェーブはYAGレーザーでも同様に生じておりYAGレーザーによる活性酸素・フリーラジカルの発生は考えられうる.これを裏づけるかのように近年YAG-LIによる角膜内皮減少の報告もされている35).さらに興味ある点として,審美歯科の治療法のなかに過酸化水素中でレーザーを照射することにより,ヒドロキシラジカル(・OH)を発生させる報告がある36).筆者らの実験でレーザー照射後にもう片眼にも反応性に過酸化水素が発生していた点を考慮すると,緑内障発作眼にALIを施行し,その後すぐにもう片眼に予防的ALIを施行すると,より毒性の高いヒドロキシラジカルが多く生じる可能性が示唆される.また,ALI後BKに対する角膜移植の経過はおおむね良好とされているが,他の疾患に対する角膜移植と比して術後の内皮減少率が高い傾向にあるといった報告もあり(図11),ラジカル連鎖障害が継続している可能性もある37).これらのことより,(19)図7房水中過酸化脂質含有量ALI直後から過酸化脂質は上昇し1週間後でも持続している.対照眼では検出されなかった.過酸化脂質(nmol(MDA)/m?)109876543210施行直後1日後2日後3日後7日後:ALI照射群:対照:測定限界以下n=5図8房水中H2O2濃度ALIにより房水中H2O2濃度は上昇したが,ALI後1日で消失していた.興味あることに,非照射眼でも同様な反応性の房水中H2O2濃度上昇が認められた.H2O2(nmol/m?)32.521.510.50施行直後1日後2日後3日後7日後:ALI照射群:対照群図9房水中のsuperoxidescavenging活性SOD活性を測定しているが房水中の他のscavenginerの影響も受けているために,表記はsuperoxidescavenging活性とした.ALI後3日目までsuperoxidescavenging活性は上昇していた.Superoxidescavenging活性(U/m?)302520151050施行直後1日後2日後3日後7日後:ALI照射群:対照群n=5図10ALI後のsuperoxidescavenging活性ALIはYAG-LIと比較してより高いsuperoxidescavenging活性の上昇を認め,酸化ストレスがより高いことが示唆される.SOD活性35302520151050アルゴンYAGコントロール———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007前房内温度の上昇や,活性酸素・フリーラジカルの発生が角膜内皮細胞の損傷をひき起こした結果,BKを誘発した可能性が示唆される.特に活性酸素・フリーラジカルによる内皮障害の仮説は,今日の多くの報告症例に対し矛盾なく本疾患を説明することができる.ただし,単独ですべてが生じているとは考えにくく,糖尿病などの疾患に代表される抗酸化状態の低下,狭隅角自体を含む緑内障発作による虚血,滴状角膜などの角膜内皮の脆弱性などに照射条件の悪影響が重なることにより発症すると思われる.臨床上は,これらの生体条件を十分に考慮し,照射量を軽減する方向でレーザー照射を行うべきで,可能ならばYAGレーザーの併用を行うべきであろう.文献1)桑山泰明:レーザー虹彩切開術.眼科診療プラクティス3:150-154,19932)白土城照,平田洋子:緑内障のレーザー治療.あたらしい眼科7:663-670,19903)PollackIP:Currentconceptsinlaseriridotomy.????????????????????24:153-180,19844)SchwartsAL,MartinNF,WeberPA:Cornealdecompen-sationafterargonlaseriridotomy.???????????????106:1572-1574,19885)SetalaK:Cornealendothelialcelldensityafteranattackofacuteglaucoma.???????????????(Copenh)57:1004-1013,19796)MarkowitzSN,MorinJD:Theendotheliuminprimaryangle-closureglaucoma.???????????????98:103-104,19847)JengS,LeeJS,HuangSC:Cornealdecompensationafterargonlaseriridectomy─adelayedcomplication.????????????????22:565-569,19918)WilhelmusKR:Cornealedemafollowingargonlaseriri-dotomy.???????????????23:533-537,19929)細谷比左志,大橋裕一,大黒信行ほか:アルゴンレーザー虹彩切開術後に生じた水疱性角膜症.臨眼48:420-422,199410)PollakIP:Useofargonlaserenergytoproduceiridoto-mies.???????????????11:506-515,198011)HongC,KitazawaY,TanishimaT:In?uenceofargonlasertreatmentofglaucomaoncornealendothelium.????????????????27:567-574,198312)PollackIP:Currentconceptsinlaseriridotomy:Histolog-icstudiesofanglestructuresafterlaseriridotomyinpri-mates.???????????????100:1665-1670,198213)KajiY,OshikaT,UsuiTetal:E?ectofshearstressonattachmentofcornealendothelialcellsinassociationwithcornealendothelialcelllossafterlaseriridotomy.??????24(8Suppl):S55-S58,200514)加治優一:LIと角膜内皮障害.眼科プラクティス11:289-291,200615)Malaise-StalsJ,Collignon-BrachJ,WeekersJF:Cornealendothelialcelldensityinacuteangle-closureglaucoma.???????????????189:104-109,198416)北澤克明,岡部いずみ:急性緑内障発作.眼科手術4:176-180,199117)松永卓二,阿部達也,笹川智幸ほか:アルゴンレーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の検討.眼紀52:1011-1015,200118)西沢仁志,喜多容子,西起史:アルゴンレーザー虹彩切開術後,水疱性角膜症を来した1症例.眼臨90:1168-1170,199619)AbrahamRK,MillerGL:Outpatientargonlaseriridecto-myforangleclosureglaucoma:atow-yearstudy.?????????????????????79:529-537,197520)東原尚代,木下茂:レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症.日本の眼科74:1017-1020,200321)高橋和晃:レーザー虹彩切開術による水疱性角膜症への前房内温度と過酸化反応の影響.獨協医会誌27:203-214,200022)高山良,妹尾正,高橋和晃ほか:レーザー虹彩切開術後の前房内温度変化.第59回日本臨床眼科学会講演抄録,p328,200523)GerweckLE:Modi?cationofcelllethalityatelevatedtemperatures.ThepHe?ect.??????????70:224-235,197724)大村まゆみ,小原喜隆,油井秀夫ほか:糖尿家兎角膜の脂肪酸組成.眼紀33:2345-2354,198225)RedmondTM,DukeEJ,ColesWHetal:Loclizationofcornealsuperoxidedismutasebybiologicalandhistocyto-chemicaltechnique.???????????38:369-378,1984(20)*角膜内皮細胞密度(cells/mm2)3,5003,0002,5002,0001,5001,00050001カ月(*p<0.05有意差ありMann-Whitney検定)術後3カ月6カ月12カ月24カ月:PI群:対照群図11術後角膜内皮細胞数の変化術後24カ月後の角膜内皮細胞密度はPI群で946/mm2,対照群で1,430/mm2とPI群で有意に少なかった.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???26)小原喜隆:活性酸素.フリーラジカルと白内障.日眼会誌99:1303-1341,199527)田中寧:糖尿病網膜症の発症に関わる硝子体の過酸化反応.日眼会誌102:576-582,199828)FerreiraSM,LernerSF,BrunziniRetal:Oxidativestressmarkersinaqueoushumorofglaucomapatients.???????????????137:62-69,200429)BehndigA,KarlssonK,BrannstromTetal:Cornealendothelialintegrityinmicelackingextracellularsuperox-idedismutase.?????????????????????????42:2784-2788,200130)HullDS,GreenK,ThomasLetal:Hydrogenperoxide-mediatedcornealendothelialdamage.Inductionbyoxygenfreeradical.??????????????????????????25:1246-1253,198431)高山良,妹尾正,高橋和晃ほか:レーザー虹彩切開術後の角膜内皮に及ぼす活性酸素の影響.第109回日本眼科学会総会講演抄録.日眼会誌109(臨増):190,200532)OlofssonEM,MarklundSL,KarlssonKetal:Invitroglu-cose-inducedcataractincopper-zincsuperoxidedis-mutasenullmice.???????????81:639-646,200533)BarrosPS,SafatleAM,QueirozLetal:Bloodandaque-oushumourantioxidantsincataractouspoodles.??????????????????39:19-24,200434)小原喜隆ほか:白内障診療ガイドライン.日本白内障学会誌16(別冊),200435)WuSC,JengS,HuangSCetal:Cornealendothelialdam-ageafterneodymium:YAGlaseriridotomy.??????????????????????31:411-416,200036)川本幸司,辻本恭久,飯田浩雅ほか:過酸化水素水に光或いはレーザー照射した際に発生するヒドロキシラジカルの発生量.歯科の色彩8:31-35,200237)丸山文子,島?潤,坪田一男:レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症.あたらしい眼科18:337-380,2001(21)年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

レーザー虹彩切開術の適応と限界 角膜専門医の立場から

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSたころには別の施設ないしは別の主治医にフォローされていることが多いはずである.一方,角膜専門医としてはいろいろな施設から水疱性角膜症に至った症例を紹介していただくために,LI後の水疱性角膜症が強く印象付けられる.昨今学会などで本疾患が取り上げられることが多くなり,この意識のギャップは次第に埋まりつつあると思うが,今回の企画もその一助になればと筆者も願っている.IILI後水疱性角膜症症例の臨床的特徴1.浮腫はさまざまな部位から発症する角膜全面に浮腫をきたした状態で紹介受診されることも多いが,ときに浮腫が限局した症例に出くわすことがある.LI切開窓付近から角膜浮腫ははじまる症例(図1)もあれば,逆に上方に作製された切開窓から離れた下方から発症する症例(図2)もある.ほとんどの場合,次第に浮腫の範囲は拡大し全角膜に及ぶのであるが,局所的に発症するさまは本疾患の発症機序を考えるうえで興味深い.2.前房が極端に浅い症例が多いLI術後に前房深度は改善するが,浅前房が続く症例も少なくない.今後慎重に検討していく必要があるが,浅前房そのものも角膜内皮に対してなんらかの影響を与える可能性があるのではないだろうか.図3は本題からそれるがLI施行眼ではなく,単なる浅前房眼の症例ではじめにレーザー虹彩切開術(LI)は非観血的で比較的簡便に施行することが可能である.瞳孔ブロックをバイパスするという大変わかりやすい奏効機序と緑内障発作に対する不安も手伝って,必要以上の症例に施行されてきた感がある.1988年にSchwartzらはLI後の重篤な合併症として水疱性角膜症をあげているが,わが国においてもLIは水疱性角膜症の原因として白内障手術後についで2番手に位置している1,2).この日本の現状については別項に譲るが,LIが水疱性角膜症の原因のトップに躍り出るのも時間の問題かもしれない.LIがどのような機序で水疱性角膜症の発症に関与するのか不明な点は多い.諸説入り乱れている感があるが,これについても別項で詳しく取り上げられている.本項では角膜専門医の立場で,また臨床現場からの視点でLI後の水疱性角膜症を概観してみたい.I角膜専門医の立場緑内障専門医とLI後の水疱性角膜症の話をすると,意識のギャップを感じることがある.これはLI術後に角膜内皮障害をきたす症例は全体のごくわずかであることと,LI後数年以上経過して発症することがその理由の一つに思える.緑内障専門医は,「自分の施行した症例に内皮障害を起こしたことはない」という立場であろう.一般の眼科医にとってもLI後数年以上自分で経過を追っていける状況は少なく,水疱性角膜症が顕在化し???(12)*ToshihikoUno:愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)〔別刷請求先〕宇野敏彦:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):860~862,2007レーザー虹彩切開術の適応と限界─角膜専門医の立場から─??????????????????????????????宇野敏彦*———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???ある.4時方向の周辺部角膜に対し虹彩が一部接触しているようにもみえるが,この部位から角膜浮腫が生じていた.浅前房特有の房水動態やときには眼球運動や体動などによって間歇的に虹彩が角膜に接触しているといった機械的な刺激も機序の一つにあげられるのかもしれない.3.角膜移植の手術中の炎症が強いLI施行眼における角膜移植では金井らも指摘しているように,術中,術直後の前房内フィブリン形成を含めた炎症反応が強い3).詳細は本特集の東原氏の項に譲るが,LI施行眼の前眼部では虹彩血管の透過性が亢進しており,炎症を促進するようなサイトカイン・ケモカインなどのケミカルメディエーターの作用が及びやすくなっていることが想像される.LI直後にレーザー照射により炎症が惹起されることは理解できるが,LI後数年以上経過しても炎症を起こしやすい状態が継続していることは非常に興味深く,持続的に前眼部を修飾しつづける因子の解明が待たれる.4.角膜移植術後の経過は良好なことが多い術中,術後の炎症は強いが,これを乗り切ればその後の経過は他の水疱性角膜症に対する角膜移植と比較して術後成績が悪いという印象はない.有水晶体眼であれば全層角膜移植術の際に水晶体再建術を同時施行することが多い.水晶体摘出により深い前房深度を確保できること,房水動態が通常の偽水晶体眼とほぼ同じになることが関係しているように思えるが,これについては今後の検討が必要であろう.IIILI後水疱性角膜症の予防に向けて1.角膜内皮障害の可能性を説明する緑内障発作に対応する際,角膜内皮障害の可能性についての説明も忘れないようにする.緑内障発作自体でも内皮障害が大きいこと,LIあるいは外科的虹彩切除によっても一定の内皮障害の可能性は避けられないこと,(13)図3狭隅角眼の水疱性角膜症4時方向を中心に虹彩と角膜内皮がほぼ接触している症例.同部位から発症した角膜浮腫はその後全面に拡大した.本症例はLIを施行されていない.図2LI部と離れた下方から水疱性角膜症を発症した症例10時方向のLI切開窓と離れた下方に限局した角膜浮腫を認める.図1LI部から水疱性角膜症を発症した症例LI切開窓付近から限局的な角膜浮腫が生じている.———————————————————————-Page3???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007将来的に水疱性角膜症に移行しうることなどがおもなポイントであろう.予防的LIを行う場合は十分時間をかけて説明する必要があるであろう.2.角膜内皮を観察する角膜内皮の状態を可能な範囲で把握する必要がある.緑内障発作による角膜浮腫で内皮が観察できない場合は僚眼の角膜内皮の所見を参考にする.スペキュラーマイクロスコープによる検査とともにスリットの鏡面法による観察で細胞密度,大小不同などとともに滴状角膜様の所見の有無を確認する.3.過剰凝固を避けるレーザーによる過剰凝固は水疱性角膜症発症の大きなリスクファクターである.YAGレーザーを併用し,照射するエネルギーを小さくすることを心がける4).ただし,YAGレーザーで施行すれば水疱性角膜症が発症しないと考えるのは早計である.なぜならばどのような種類のレーザーを用いようとも,虹彩切開により術前にはなかった異常な房水動態が生じることには変わりがないからである.角膜浮腫が強くLI施行が困難であれば外科的虹彩切除も選択肢に入れる.4.狭隅角の改善を目的とした白内障手術ピロカルピン点眼などメディカルな治療で緑内障発作を切り抜けた場合,LIの代わりに,あるいはLI後しばらくして白内障手術を行うことも提唱されている.水晶体を摘出すれば狭隅角の問題は根本的に解決する.さらに多くは遠視眼でもあり,白内障がない場合でも視機能の改善に寄与するという理由も成り立つ.角膜内皮の慎重な評価を行い,術中は内皮保護に努めることはいうまでもない.術中の前房形成不良やZinn小帯の脆弱化している可能性にも配慮して手術に臨む.LI後内皮障害が進行している症例に白内障手術を施行することにより内皮減少が停止したという報告がある5).この報告のなかで園田らは,水晶体摘出により後房から前房への房水の流れはLI切開窓からではなく,瞳孔領域から行われることになり,房水動態の正常化が図れると考察している.今後症例の蓄積をしていかないと確かなことはいえないが,LI施行後であっても水晶体摘出は内皮保護に有利に働く可能性を示唆するものである.IVLI後水疱性角膜症に対する角膜移植から考えられること水疱性角膜症の治療は角膜移植術である.治療の詳細は別項に譲るが,LI後水疱性角膜症特有の病態に関連する点についてのみ若干触れてみたい.くり返しになるが,本疾患の角膜移植の特徴として術中,術後の炎症が強いことがあげられる.浅前房,あるいは散瞳不良などのために虹彩への機械的侵襲が多くなるということもあろうが,LI施行眼は術中のフィブリン形成など,他疾患に対する角膜移植ではほとんどみられないような強い炎症反応を術中から起こしてくることが少なくない.金井らが指摘するように3),術前にメチルプレドニゾロン125mg程度の投与をあらかじめ行っておくと,術中のフィブリン形成などの問題点は大きく改善するので非常に有用である.上記の手術所見から明らかにいえることとしてLI施行眼はproin?ammatoryな状態であることであろう.LI施行時のレーザー照射そのものによる炎症が数年以上持続していると考えることは不自然であり,LI施行を契機として持続的な炎症を起こすなんらかの因子の関与があるはずである.その因子の候補について本特集ではこのあと複数の先生方により提示いただけるものと思われる.文献1)荒木美治,小室青,外園千恵ほか:水疱性角膜症の病因とその発生頻度.あたらしい眼科16:1563-1565,19992)池間宏介,松本光希,筒井順一郎ほか:熊本大学医学部眼科における水疱性角膜症の現況.臨眼59:735-738,20053)金井尚代,外園千恵,小室青ほか:レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症に関する検討.あたらしい眼科20:245-249,20034)SchwennO,SellF,Pfei?erNetal:ProphylacticNd:YAG-laseriridotomyversussurgicaliridectomy:aran-domized,prospectivestudy.????????????????4:374-379,19955)園田日出男,中枝智子,根本大志:白内障手術により進行が停止したレーザー虹彩切開術後の角膜内皮減少症の1例.臨眼58:325-328,2004(14)

レーザー虹彩切開術の適応と限界 緑内障専門医の立場から

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———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)が行われている.日本緑内障学会制定の緑内障診療ガイドライン(2006)3)においても相対的瞳孔ブロック解除の第一選択はLIとされており(図1),LIは外来で施行可能なこと,観血的手術にみられる感染症などの合併症がないこと,またその簡便さにより広く行われている手技である.しかし一方で,LI後の水疱性角膜症の発症がみられることやLIを施行した後も眼圧コントロールが不十分な症例がみられるなどLIの効果に限界があることも事実であり,LIと比較して相対的瞳孔ブロック解除に対する水晶体手術の優位性を唱える声も聞かれる.今回は緑内障専門医の立場からLIの適応と限界につき述べたい.はじめに近年,原発閉塞隅角緑内障の定義・分類が再検討され,緑内障性視神経症を有しているか否かという点が重視されるようになった1,2).すなわち,緑内障性視神経症を有している症例のみを原発閉塞隅角緑内障(prima-ryangle-closureglaucoma:PACG)とし,生じていない症例は原発閉塞隅角症(primaryangle-closure:PAC)と定義される.本稿では,読者の混乱を回避するためこうした用語変更以前の文献中に現れる原発閉塞隅角緑内障を原発閉塞隅角緑内障(旧義)と表示することにする.原発閉塞隅角緑内障の発症の3大要因として,相対的瞳孔ブロック・プラトー虹彩機序・水晶体要因(厚み増加,前方移動)がある.大多数の症例では相対的瞳孔ブロックが主因と考えられてきたが,近年超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscope:UBM)などの画像診断装置の発展に伴い,隅角閉塞へのプラトー虹彩機序の関与が以前考えられていたより大きいことが明らかにされてきている.しかしながら相対的瞳孔ブロックを主たる隅角閉塞機序とする症例が多いため,本稿では相対的瞳孔ブロックの解除に重点を置き述べる.相対的瞳孔ブロックは水晶体前面と虹彩後面間の房水流出抵抗が大きくなることにより房水が虹彩後面(後房)にたまり,その結果前方に膨隆した虹彩が隅角を閉塞するために起こる.そのため,相対的瞳孔ブロックの解除には前房・後房間に房水の連絡路を作ることで圧較差を解消する必要があり,その方法の一つとしてレーザ(7)???*YujiKondo&TetsuyaYamamoto:岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座眼科学分野〔別刷請求先〕近藤雄司:〒501-1194岐阜市柳戸1-1岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座眼科学分野特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):855~859,2007レーザー虹彩切開術の適応と限界─緑内障専門医の立場から─????????????????????????????????近藤雄司*山本哲也*図1緑内障診療ガイドライン第2版における原発閉塞隅角症・原発閉塞隅角緑内障の治療方針相対的瞳孔ブロック解除の第一選択はレーザー虹彩切開術である.(文献3より)相対的瞳孔ブロック機序レーザー虹彩切開術周辺虹彩切除術眼圧コントロール眼圧下降(薬物・手術)経過観察良好可能不可能不良———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007I狭隅角眼の経過LI施行の是非を考えるとき,狭隅角眼や隅角閉塞を起こしうると考えられる眼(occludableangle)に対して相対的瞳孔ブロックを解除せずに経過をみた場合の結果を知る必要がある.現在では緑内障発作の危険性のある眼に対して無処置で経過をみることは倫理的に問題であるが,瞳孔ブロック解除の意義が未確立であった頃にはこのような報告がみられ,そのうちの二つを紹介したい.Wilenskyら4)は中心前房深度が2.0mm以下,もしくは眼科医が十分狭隅角と判断した129例に対し1年ごとの経過観察を行い,その結果6.2%で急性発作をきたし,13.2%は慢性閉塞隅角緑内障(旧義)を起こしたと報告している.平均観察期間3年弱の間に約20%が隅角閉塞をひき起こし,狭隅角眼を無処置で経過をみることは閉塞隅角の危険性が高いことを示している(図2).また,Alsbirk5)は初回検査にてvanHerick2度以下もしくは前房深度2.7mm以下の眼を10年後に再検査を行いその経過を観察し,初回検査時に隅角鏡検査にてoccludableangleと判定された20眼中7眼(35%)に原発閉塞隅角緑内障(旧義)が発症しており,occlud-ableangleと判定されなかった49眼では4眼(8%)のみに発症していることに比べて統計学的に有意に高率であったとした(図3).この結果からも,隅角閉塞の可能性のある眼を無治療でみることは原発閉塞隅角緑内障(旧義)の発症の危険性が高いことがわかる.一方,初回検査時にはoccludableangleと判定されなかった眼が,10年後にoccludableangleになっていたものが14眼(29%)存在しており,単回の隅角検査だけでは隅角閉塞の発症の予測が困難なことを示しており,このことは経時的な注意深い経過観察が必要であることを示唆している.II緑内障発作眼の僚眼急性緑内障発作を起こした僚眼においては5~10年以内に40~80%に原発閉塞隅角緑内障(旧義)を起こすことは以前より知られており,さらに発作後1年以内に急性発作を発症することが多いとされている6~11).Sawadaら12)はUBMを用いて機能的隅角閉塞の出現率を緑内障発作眼の僚眼と狭隅角眼・慢性閉塞隅角緑内障(chronicangle-closureglaucoma:CACG)眼との間で比較し,緑内障発作眼の僚眼では有意に機能的隅角閉塞の部位が多いことを明らかにした.機能的隅角閉塞より器質的隅角閉塞〔周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)形成〕に進行する危険性が高く将来の眼圧上昇の可能性があり,また緑内障発作発症の危険性も高いことを示しているといえる.IIILIの効果と限界このように狭隅角眼,occludableangleまた緑内障発作を起こした眼の僚眼は,無処置で経過をみることにより高率に原発閉塞隅角緑内障をひき起こす.緑内障発作の僚眼全例に対してLIを施行した報告では,4年以上経過観察で急性発作を起こした眼はなく,88.8%が無治療にて眼圧コントロールも良好であったと(8)図2Occludableangleの経過Occludableangleを無治療で平均2.7年経過観察した場合,約20%に隅角閉塞緑内障の発症をみた.(129例)(文献4より)隅角閉塞(-)(80.6%)急性閉塞隅角緑内障(6.2%)慢性閉塞隅角緑内障(13.2%)図3浅前房眼の経過中心前房深度が浅く,VanHerick2度以下の症例を経過観察した結果,10年後occludableangleでは35%にPACGを発症し,非occludableangleでは8%にPACGを発症した.(69例)(文献5より)Occludableangle非OccludableanglePACG発症(8%)PACG発症(35%)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???報告されている13)(図4).このことから緑内障発作眼の僚眼へのLI施行は発作予防と眼圧コントロールにおいて有用な処置であるといえる.Alsago?ら14)はPACG83眼に対しLIを施行しその長期経過を報告している.急性発作の既往のある眼は35眼であり全例緑内障薬の点眼を必要とし,そのうち63%が濾過手術を必要としたのに対し,急性発作の既往のない眼では10%は無治療で経過観察が行え,また濾過手術に至った症例は46%で手術までの期間もより長期であった.さらに,LI施行後急性発作を起こした眼はなかった(図5).この結果から,LIは緑内障発作を起こした原発閉塞隅角緑内障眼に対しては眼圧コントロールが良好ではなく,さらに発作を起こしていないPACG眼においても完全に眼圧コントロールができていないことがいえる.また,Nolanら15)はモンゴルにおいてoccludableangleと判定した164眼に対してLIを施行し,原発閉塞隅角緑内障・原発閉塞隅角症における成績を報告している.濾過手術が行われたり視力低下をきたした時点で失敗と定義すると,LIの原発閉塞隅角緑内障での成功率は52%なのに対して原発閉塞隅角症では97%であった(図6).Alsago?らの結果とも合わせて考えると,急性発作や緑内障視神経症がみられるような進行した症例ではLIの効果が限定的であり,視神経症のみられない早期のPACの状態でLIを施行できれば良好なコントロールが得られる可能性が高いことが考えられる.続いて自験例を示す.PACsuspect・PAC・PACGに対して岐阜大学眼科においてLIを施行し3カ月以上経過観察可能であった246眼の眼圧コントロールについて解析をした.眼圧下降薬の使用の有無にかかわらず2回連続眼圧が20mmHgを超えた時点と緑内障手術を施行した時点を死亡と定義し生命表を作ると図7のようになる.PACGの生存率はPACsuspect,PACに比べ(9)図4緑内障発作眼の僚眼に対するLIの効果(シンガポール)(80例に対し全例LI施行)緑内障発作眼の僚眼に対してLIを施行したところ,緑内障発作は100%予防できた.また,88.8%は緑内障薬を使用せずに経過観察可能であった.(文献13より)緑内障薬(-)(88.8%)急性閉塞隅角緑内障(0%)LI施行時にCACG(2.5%)LI施行後眼圧上昇(8.8%)図5PACGの長期経過(シンガポール)緑内障発作の既往のある眼では全例緑内障薬が必要となり,62.9%が平均7.3カ月という短期間のうちに濾過手術を必要とした.対して,緑内障発作の既往のない眼では緑内障薬を必要としない症例が存在し,濾過手術施行の割合も低くまた手術施行時期も遅かった.(文献14より)緑内障点眼濾過手術施行62.9%7.3カ月後施行45.8%18.4カ月後急性発作既往(-)急性発作既往(+)89.6%100%図6モンゴルにおけるYAG-LILI施行時にPACGを発症していた眼では半数近くが追加手術が必要になったり視力低下をきたしていたが,LI施行時にPACであった症例は良好な経過を示した.(文献15より)?1995.1997初回検査とYAG-LI,1998に再検査?Occludableangle?追加手術,視力低下でLI失敗と定義PACGPAC失敗47.8%失敗3%———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007統計学的に有意に不良であった.また,病形とPASindexの関係は図8に示すように,PACからPACGへと病期が進行するにつれPASindexは有意に増えていくことがわかる.以上より,LIは相対的瞳孔ブロックを解除し緑内障発作が予防できるというプラス面がある一方,眼圧コントールに関してはPACsuspect・PACなどのPASが軽度の症例に対しては有効に働くが,PASが広範に存在しPACGに至った眼においては効果が限定的であるといえる.IVLIの適応手術・処置の適応を考えるときに個々の症例の眼科所見に加え,社会的な背景も考慮に入れる必要があり,ここではLIの適応を絶対的適応・相対的適応・禁忌と分類して考えたい.表1,2にその適応を示す.LIの適応を考える場合には相対的瞳孔ブロックが存在し,隅角検査においてSha?er2度以下の狭隅角が存在することが大前提である.絶対的適応としては現状では急性発作の発症の確率が高いことや慢性原発閉塞隅角緑内障の進行が考えられる眼があげられる.具体的には表1,2に示すように,急性発作眼およびその僚眼,PASの存在している眼(PACでありPACGへの進行が十分考えられる),緑内障性視神経症の存在する眼(開放隅角緑内障の合併が否定できている場合はPACGと診断可能),高眼圧症の存在する眼(開放隅角緑内障の合併が否定できている場合はPACと診断でき,今後のPACGへの進行可能性が大)などがあげられる.これらの症例においては禁忌となる所見がなければ速やかにLIを施行すべきである.また,絶対適応には当てはまらなくても治療可能な病院が自宅より遠方である場合や糖尿病の眼底管理が必要など,頻繁に散瞳検査が必要な眼に対しては相対的な適応を考えたほうがよい.急性緑内障発作は一度起こすと重篤な視機能障害をひき起こす可能性がある以上,できるだけその発症を予防する必要があるのは言うまでもない.先に述べたように,PASが広範囲に存在する場合やPACGに進行している症例では,LIを施行してもLIのみでは良好な眼圧コントロールが得られないことも明らかなので,LI適応有りと考えた場合にはいたずらにLIの施行を遅らせたりすべきではなく,またPASの明ら(10)表1レーザー虹彩切開術:絶対的適応(相対的瞳孔ブロックが存在し,Sha?er2度以下の狭隅角であることを前提とする)急性発作眼の僚眼周辺虹彩前癒着(PAS)の存在視神経症の存在(PACG,CACG)高眼圧の存在各種負荷試験の陽性表2レーザー虹彩切開術:相対的適応(場合により適応)散瞳検査の必要地理的条件精神,認知症など患者自身の問題緑内障発作の誘因となりうる薬剤の使用緑内障発作への不安の強い症例定期検査が困難な症例UBMによる機能的隅角閉塞確認例図7眼圧調整率LI後の生存率はPACGがPACsuspectやPACに比べ有意に低下した.*:Log-ranktestp<0.05:PACsuspect:PAC:PACG10080604020001224364860728496108120132経過観察期間(月)累積眼圧調整率(%)98.1±1.983.4±7.965.7±7.0**図8病形分類とPASindexPACsuspect,PAC,PACGの間ではPASindexに有意さがありPACsuspect,PAC,PACGと病期が進むにつれPASindexは有意に増えた.p<0.05PACsuspectPACPACGp<0.0543210PASindex(/12)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???かな増加を認めた場合には速やかなLI施行が良好な予後に結びつくものと考えられる.近年,LIの代わりに水晶体手術を施行する考えも支持を得つつある.筆者らは白内障手術適応のある症例ではLIを施行することはせず,LIの代わりに白内障手術を行い相対的瞳孔ブロックの解除を行う戦略をとることがある.しかし,白内障手術の適応を認めない眼に対してはLIを第一選択としている.おわりに狭隅角眼,occludableangleまた緑内障発作を起こした眼の僚眼など急性緑内障発作の発症や原発閉塞隅角緑内障の発症の危険性がある眼に対してLIを施行することは,簡便に相対的瞳孔ブロックを解消する方法であるが,すべての症例においてLIのみで良好な眼圧コントロールが得られるわけではなく,詳細な検査に基づいた適応を考える必要がある.文献1)山本哲也:原発閉塞隅角症と原発閉塞隅角緑内障─新しい疾患概念と管理基準を中心に─.日眼会誌111:59-67,20072)FosterPJ,BuhrmannR,QuigleyHAetal:Thede?nitionandclassi?cationofglaucomainprevalencesurveys.???????????????86:238-242,20023)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第2版.日眼会誌110:777-814,20064)WilenskyJT,KaufmanPL,FrohlichsteinDetal:Follow-upofangle-closureglaucomasuspects.???????????????(11)115:338-346,19935)AlsbirkPH:Anatomicalriskfactorsinprimaryangle-clo-sureglaucoma.Atenyearfollowupsurveybasedonlim-balandaxialanteriorchamberdepthinahighriskpopu-lation.??????????????16:265-272,19926)BainWES:Thefelloweyeinacuteclosed-angleglauco-ma.???????????????41:193-199,19577)LoweRF:Acuteangle-closureglaucoma.Thesecondeye:ananalysisof200cases.???????????????46:641-650,19628)RitzingerI,BenediktO,DirisamerF:Surgicalorconser-vativeprophylaxisofthepartnereyeafterprimaryacuteangleblockglaucoma.?????????????????????????164:645-649,19749)SnowTI:Valueofprophylacticperipheraliridectomyonthesecondeyeinangle-closureglaucoma.????????????????????????97:189-191,197710)WollensakJ,EhrhornJ:Angleblockglaucomaandpro-phylacticiridectomyintheeyewithoutsymptoms.?????????????????????????167:791-795,197511)HyamsSW,FriedmanZ,KeroubC:Felloweyeinangle-closureglaucoma.???????????????59:207-210,197512)SawadaA,SakumaT,YamamotoTetal:Appositionalangleclosureineyeswithnarrowangles:comparisonbetweenthefelloweyesofacuteangle-closureglaucomaandnormotensivecases.??????????6:288-292,199713)AngLP,AungT,ChewPT:AcuteprimaryangleclosureinanAsianpopulation:long-termoutcomeofthefelloweyeafterprophylacticlaserperipheraliridotomy.??????????????107:2092-2096,200014)Alsago?Z,AungT,AngLPetal:Long-termclinicalcourseofprimaryacuteangle-closureglaucomainanAsianpopulation.?????????????107:2300-2304,200015)NolanWP,FosterPJ,DevereuxJGetal:YAGlaseriri-dotomytreatmentforprimaryangleclosureineastAsianeyes.???????????????84:1255-1259,2000

レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症-国内外の状況

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS数の約50%に及んでおり,本調査の結果は十分わが国の現状を反映していると推測された.なお,今回のスタディでは,以前に角膜移植の既往がある例(再移植)は検討に含めず,角膜内皮機能に影響を及ぼす因子が複数ある場合には,そのなかで主要と思われるものを原因とした.すなわち,たとえばLIに先立ってあるいはその後に白内障手術を行い,それによる内皮障害が大きかった例や,滴状角膜などで術前から内皮機能が強く障害されていた例は含まれていない.この全国調査の結果,3年間で報告されたBK症例数は963眼で,同期間の角膜移植全体の24.2%を占めていた.今回は,他の原因による角膜移植については調査をしていないため比較はできないが,BKが角膜移植の主要原因の一つであることは疑いがない.BKの主要原因は,数が多かった順に,白内障術後,LI,LI以外のはじめにレーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)術後の水疱性角膜症(bullouskeratopathy:BK)は,わが国では近年,大きな話題となっているものの,世界的にみるとそれほどでもない.文献検索をしてみても,これまでの同様な報告はほとんど1例もしくは数例の症例報告である1~5).欧米の眼科医と話しをしてみても,「例外的な事例だろう」「元から内皮障害があったのでは?」「レーザーの打ちすぎだと思う」といった反応ばかりでどうも話しがかみ合わない.わが国からの英文論文による報告も少数にとどまっている背景には,本疾患の存在そのものを疑問視する欧米の医師の見解が反映しているように思われる.本稿では,先ごろ日本角膜学会で行ったBKの全国調査の結果をもとに,わが国でのLI後BKの現状について述べたい6).併せて,これまでの報告と自験例のデータをもとに本疾患の臨床的特徴についても述べたい.I水疱性角膜症の全国調査日本角膜学会では,角膜移植の原因としてBKが増加していることに注目して,その現状を調査するためのスタディグループを2002年に立ち上げた.グループのメンバーが作成したアンケートを,角膜学会会員が所属する施設に配布して集計した.アンケートの回答が得られたのは86施設で全体の約20%であったが,それらの施設で施行された角膜移植件数は,同じ期間の全国施行件(3)???*JunShimazaki:東京歯科大学市川総合病院眼科〔別刷請求先〕島?潤:〒272-8513市川市菅野5-11-13東京歯科大学市川総合病院眼科特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):851~853,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症─国内外の状況─????????????????????????-???????????????????????????島?潤*図1水疱性角膜症の原因(文献6より改変)白内障術後428その他83他眼疾患41佐藤氏法15分娩時外傷Fuchs変性症18硝子体手術21緑内障26外傷40緑内障手術51(単位=眼)LI225———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007緑内障手術,外傷,緑内障,ビトレクトミーであり,内眼手術を契機に発症したものが多かった(図1).欧米で主要原因にあげられるFuchs角膜変性症は,わが国では約2%を占めるにすぎず,BK原因が国や人種によって大きく異なることが示された.IILI後BKのプロフィール今回報告されたLI後BK(LI-BK)は,225眼とBK全体の23.4%を占めていた.患者の平均年齢は,71.7±7.8歳であり,184眼(81.8%)が女性であった.高齢で女性に多いという特徴は,狭隅角緑内障の患者背景を反映してのものと考えられた.LI施行から受診までの期間は,2カ月~20年(平均6.8年)と広範囲にわたっていた.既往症としては,糖尿病を有するものが13眼,虹彩炎が2眼含まれていた.IIILI施行の目的と条件LIの施行目的は,137眼(60.9%)で明らかであった.そのうち,急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)発症時に施行されたものは69眼と,約半数を占めていた.緑内障発作の他眼に施行されたものは17眼(12.4%)であり,残りの37.2%は,狭隅角眼(angleclosure)に対して予防的に施行されたものであった(図2).適応が明らかに記載されていなかった例の多くも,予防的な目的でLIが施行された例と推測され,過半数が緑内障を発症していない例に行われたものであると考えられた.LIの施行条件が明らかとなったものは,50眼(22.2%)に留まっていた.これは,LIの施行施設とBKの治療を行った施設が異なる場合が多かったことと,LI施行後の経過が長く,情報が残っていない例があったためと推測された.使用レーザーが明らかとなった例の大半(96.0%)でアルゴンレーザーが用いられており,YAGレーザー単独,あるいはアルゴンとYAGレーザーが併用されていたものは2眼にすぎなかった.LIの照射エネルギーの内容が明らかな16眼のうち,10J未満のものが8眼,10~20Jが5眼で,3眼が20J以上であった.多くの照射を必要としたものの大半は,緑内障発作時にLIが施行されていた例であった.日本人の大半を占める茶色~黒茶色の虹彩では,LIは100~300発の照射で完成するとされている7).今回の症例では,やや照射数の多い例も含まれていたが,全体としては過剰照射が明らかな原因とはいえない結果であった(表1).IVLI-BKの治療と予後LI-BKに対しては,大多数で角膜移植が行われており,特に全層角膜移植と白内障手術(典型的には水晶体?外摘出術+眼内レンズ挿入)の,いわゆるトリプル手術が行われていたものが195眼(86.7%)と多数を占めていた(図3).最終観察時での角膜透明治癒率は81.3%であり,同時に調査が行われた他の例によるBKよりも,その予後はむしろ良好であった.また,矯正視力が2段階以上向上した例が76.4%,不変(1段階の改善も含む)が4眼であった.視力不良例の原因としては,表2のようなものがあげられた.全層角膜移植後に緑内障(4)表1LI-BK症例でのレーザー照射数レーザー照射数(発)眼~3006301~5003501~1,00051,0013緑内障発作時69眼不明88眼予防的(狭隅角)51眼緑内障発作の僚眼17眼図2LI施行原因PKP+IOL縫着PKPと水晶体摘出(+IOL)不明PKP+ICCEPKPのみPKP+ICCE+ACIOL図3LI-BKの手術法の内訳———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???を認めた例は10.1%,拒絶反応,感染例は各々8.0%,2.2%であり,これも白内障術後など他の原因によるBKと比べて比較的良好な結果であった(表3).LI-BKの予後が比較的良好であることは,他施設の報告でも指摘されている.トリプル手術による虹彩と角膜の位置関係などの解剖学的変化が関係する可能性も考えられた.VLI-BKの頻度についてLI-BKが近年増加していると考えられることは,いくつかの発表がなされている.筆者らの施設で治療を行った自験例を,過去15年間さかのぼって調査をしたところ,2000年代に入ってから著明にLI-BKの割合が増加していることが確認された,LIによるBKが,どのくらいの頻度で生じるのかについては,直接的な調査がむずかしい.その理由は,厚生労働省から発表されるデータからは,LIのみの施行件数は明らかでなく,網膜光凝固を含めた例数が発表されているにすぎないためである.筆者らは,LIと網膜光凝固の年間施行件数を複数の施設で調べ,この両者の施行件数の比を調べ,そこからLI-BKの発症頻度を計算した.その結果,LI施行後のBK発症の頻度を約1.8%と推計した(未発表データ).LIの施行件数については,施行施設や地域によってかなりの差があることが予想され,正確な頻度の推計にはさらに大規模な調査が必要であると考えられた.おわりに初めに述べたように,LI-BKはわが国での発症例が他国に比べて圧倒的に多い.急性閉塞隅角緑内障,および狭隅角の頻度は,欧米に比べてアジア人で著明に高い.LI-BKの頻度の差は,LI施行件数の違いに起因するところが大きいと思われる.ところで他のアジアの眼科医と話しをすると,限定された角膜専門医のところでは,同様の症例が少しずつ経験されているようである8).わが国と他のアジアの国々とのLI-BK発症率の違いは,おそらくレーザーの普及率と,それに伴ったLI施行例数の差によるところが大きいと推測される.今後経済の発展に伴って,アルゴンレーザーを所有する施設が増えることで,わが国が経験したLI-BKの増加が,他のアジアの国でもくり返される可能性は十分ある.LI-BK発症のメカニズムとその予防策の解明は,こうした意味でも焦眉の急と考えられる.文献1)JengS,LeeJS,HuangSC:Cornealdecompensationafterargonlaseriridectomy─adelayedcomplication.????????????????22:565-569,19912)SchwartzAL,MartinNF,WeberPA:Cornealdecompen-sationafterargonlaseriridectomy.????????????????106:1572-1574,19883)WilhelmusKR:Cornealedemafollowingargonlaseriri-dotomy.???????????????23:533-537,19924)WuSC,JengS,HuangSCetal:Cornealendothelialdam-ageafterneodymium:YAGlaseriridotomy.??????????????????????31:411-416,20005)ZabelRW,MacDonaldIM,MintsioulisG:Cornealendo-thelialdecompensationafterargonlaseriridotomy.????????????????26:367-373,19916)ShimazakiJ,AmanoS,UnoTetal:NationalsurveyonbullouskeratopathyinJapan.??????26:274-278,20077)桑山泰明:レーザー虹彩切開術.眼科診療プラクティス(丸尾敏夫,本田孔士,臼井正彦,田野保雄編),Vol.3,レーザー治療の実際,p150-154,文光堂,19938)LimLS,HoCL,AngLPetal:Inferiorcornealdecompen-sationfollowinglaserperipheraliridotomyinthesuperioriris.???????????????142:166-168,2006(5)表2術後視力不良の原因不明20眼緑内障10眼拒絶反応8眼内皮機能不全4眼感染3眼角膜ヘルペス2眼Primarygraftfailure1眼混濁1眼表3BK全体,白内障術後BK,LI-BKの患者背景と予後原因眼数平均年齢(歳)手術例でのPKPのみの割合(%)拒絶反応発生率(%)術後眼圧上昇(%)透明治癒率(%)BK全体96368.8±12.351.610.815.575.6白内障42871.7±11.070.310.916.977.3LI22571.7±7.810.48.010.181.3(文献6より改変)

序章:レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(1)???Quigleyにより考案されたレーザー虹彩切開術は,非観血的かつ簡便な手技として,数多くの緑内障発作患者,あるいは発作予備軍を救済してきた.その大きな社会的貢献については多言を要さないが,一方で,角膜内皮障害という予期せぬ合併症を生むことにもなった.Quigleyの発表からわずかに5年後の1984年,Pollackによりレーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の1例が紹介されたが,その後の1988年には,Schwartzによって多数例が報告され,アルゴンレーザー虹彩切開術と角膜内皮障害との関連は動かしがたいものとなった.革新的な手術手技に予知不能な合併症はつきものではあるが,アルゴンレーザーを主体に行われてきたレーザー虹彩切開術も決してその例外ではなかったのである.以来,レーザー虹彩切開術後の角膜内皮障害の報告が相次ぐこととなる.特に,わが国における発生数は世界的にみても突出しており,最近では,角膜移植患者の原因疾患の第二位を占めるなど,大きな問題となっている.欧米との差を人種差(メラニン色素の違い)に求める考え方もあるが,他方,YAGレーザーを用いた虹彩切開術が主流を占める近隣の韓国あるいはシンガポールなどでは特に大きな問題とはなっていない.本特集では,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の国内外の状況について,島?潤先生(東京歯科大)が詳述している.また,この差異が,わが国におけるレーザー切開術施行例の圧倒的な数の多さに起因するかについては,コントロールされた疫学データがない点で結論は得られていない.レーザー虹彩切開術が必要以上に行っていないか?その適応と限界を緑内障専門医の立場から近藤雄司・山本哲也両先生(岐阜大)が論じている.さて,角膜内皮障害の発生メカニズムに関してはいくつかの考え方がある.その第1は,レーザー切開術の施行前から存在する要因に基づくもので,糖尿病,滴状角膜やFuchs角膜変性症などの角膜内皮異常があげられる.ただし,これらは発生メカニズムというより,むしろ角膜内皮障害を持続あるいは増幅させる危険因子である.ここでは,角膜専門医の立場から,レーザー虹彩切開術の適応と限界について,宇野敏彦先生(愛媛大)が解説する.第2は,術直前あるいは直後の要因に基づくものである.これには,急性緑内障発作に伴う低酸素環境,アルゴンレーザーによる過剰照射などがあげられ,術後に内皮細胞数を急激に減少させると考えられる.影響は一過性であるため,持続的な内皮障害メカニズムとはならないが,内皮細胞の残存数を低下させることによって,水疱性角膜症の発症時期を0910-1810/07/\100/頁/JCLS*YuichiOhashi:愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)●序説あたらしい眼科24(7):849~850,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!???????????????????????????????????????????????????????????????大橋裕一*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007早める可能性がある.その代表として,「過剰凝固説」を妹尾正先生ら(独協医大)が解説する.第3は,術後も持続する要因に基づくものであり,多くの説が含まれる.大きくは,慢性炎症派と房水動態異常派に分かれるが,前者に属する「血液・房水柵破綻説」を東原尚代先生(京都府立医大),「マクロファージ説」を山上聡先生ら(東京大)に,後者に属する「房水ジェット噴流説」を山本康明先生(愛媛大),「内皮創傷治癒説」を加治優一先生ら(筑波大)にお願いした.以上のように諸説はあるものの,実際のところは,単一のメカニズムのみですべての臨床的事実を説明するのは困難である.たとえば,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症のなかにはかなりの年月を経てから発症する晩発性のものや,レーザー照射部位とは無関係な下方周辺部角膜から角膜浮腫を発症する例が含まれるが,これを「過剰レーザー照射説」だけでカバーするのはむずかしい.また,「慢性炎症説」の場合には,全層角膜移植後の移植片の予後が比較的順調である点や白内障手術のみで角膜内皮減少が停止する点が矛盾する.また,YAGレーザーでは生じにくい点,比較的大きな切開孔でも生じうる点は「房水動態異常説」の弱点である.結論的には,上記の各要因が相加的に作用し,限られた症例のみに水疱性角膜症が発症するのではないかと想像される.締めには,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症に対する角膜移植の問題点と対策について,木下茂先生(京都府立医大)からそのこだわりを解説していただいた.わが国に特異的な合併症であるとはいえ,角膜内皮障害の発生機序をめぐって,これだけ大きな論争を巻き起こした疾患は近年なかったといってよい.この特集を通じて,専門家のホットな議論に触れていただければ幸いである.(2)

読者からの手紙

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1読者からの手紙あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS?読者から貴誌「あたらしい眼科」24巻1号(p107-110)の原著「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」1)を大変興味深く拝読いたしました.結果のコントラスト感度に関する記述と図1および2の表現に矛盾が認められる.結果の記述(Ⅱ結果の最終行から前3行分)では5mm群が6mm群に比してコントラスト感度が低いとあるが,図1および2のコントラスト感度の結果は矛盾し,5mm群で術後高くなっている.縦軸のスケールは,コントラスト感度なのかコントラスト閾値なのか?また,その数値は特別に変換した値なのか?縦軸がコントラスト閾値(あるいは感度)としても,その数値は腑に落ちない値である.コントラスト感度(あるいは閾値でも)であれば,縦軸の下限の値はゼロではなく1となるべきである.なお,コントラスト感度(あるいは閾値)を対数値(常用対数のべき指数)で表示する場合は,下限の値はゼロとなる(図1).通常コントラスト感度の表現には,横軸に空間周波数(cycles/degree),縦軸にコントラスト感度(コントラスト閾値の逆数)を両対数スケールで表示するのが一般的である2).この研究では,コントラスト感度測定装置としてタカギセイコーのCGT-1000を使用したとある(「Ⅰ対象および方法」の最後から前7行目~)が,視標として正弦波状の縞視標ではない特殊な同心円状のリング視標を用いているため,横軸の空間周波数の代わりに視標視角(degofarc)を使用し,縦軸にはコントラスト閾値を用いているはずである.表1の瞳孔径の結果については,どのような状態での値なのか?術前における明所での瞳孔径検査であれば,平均瞳孔径が6mmを超える対象に5mmのPIOL(Artisan有水晶体眼内レンズ)を挿入するのは無理があると思われる.PIOLの位置異常(偏心や傾き)がないとしても,明所でも瞳孔径が光学径を超えており,薄暮や暗所では,さらにその開きが大きくなることは必然である.今回の測定はグレアオフの条件で実施されているため,PIOLの光学径よりも瞳孔径が大きくなっても,良好な中心視力が得られていたものと考えられるが,コントラスト感度への影響は無視できなくなる.また,周辺視への影響やグレア・ハローの影響はさらに大きくなるものと思われる3).グレア光源をオンにすると,瞳孔径は縮瞳するためレンズエッジなどによるグレア・ハローの影響は少なくなり,コントラスト感度も上昇する.眼内レンズ径5mmに相当する角膜面上での光学領は約5.7mmに,6mmレンズでは約6.8mmに相当するため(入射瞳径に相当),LASIK(laser???????ker-atomileusis)などの角膜屈折矯正手術を行う場合には,眼内レンズ径よりも相当大きな切除域(あるいはopticalzone)が必要となる4,5).その意味で,PIOLは光学径の大きさから考えて有利である.今回の記述あるいは図が誤りであれば,もちろん著者の責任ではあるが,査読段階でも指摘できたはずである.改善を期待するとともに貴誌の発展を祈ります.魚里博北里大学大学院医療系研究科眼科学・視覚情報科学(107)本誌24巻1号に掲載の原著論文,「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」について空間周波数(cycles/degree)高低コントラスト縞幅大小コントラスト感度Contrastsensitivityfunction(CSF)可視領域(白色部)不可視領域(グレー部)視力限界視力1.00.0010.11.030(0.01ゼロではない!30図1コントラスト感度の結果表示例———————————————————————-Page2読者からの手紙???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007文献1)土田展生,辻一夫,荒井宏幸ほか:Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響.あたらしい眼科24:107-110,20072)魚里博:低コントラスト視力.????????15:200-205,20013)魚里博,清水公也:屈折矯正の実際とプロセス(水流忠彦監修),金原出版,19984)魚里博:瞳孔不同の眼光学的考察.神経眼科10:89-92,19935)UozatoH,GuytonDL:Centeringcornealsurgicalprocedures.???????????????103:264-275,1987?著者よりの返事このたびは原著「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」について,貴重なコメントをいただきましてありがとうございました.ご指摘のとおり,図1,2のコントラスト感度の数値の違い,表1の瞳孔径の詳細な記載につき不備がありました.それに伴い図1,2につきましては,「コントラスト感度に関する図1および図2の表現ですが,ご指摘のごとく縦軸の記載を訂正させていただきます.0.0,2.0,4.0,6.0,8.0,10.0,12.0は,下から順に1.0,3.12,6.25,12.5,25,50,100と訂正させていただきます.瞳孔径ですが,カルバードピューピロメーターを使用しており,暗所視状態の瞳孔径を測定しております.表1では暗所視状態で瞳孔径に両群間において有意差がないことを示しております.土田展生公立昭和病院眼科むずかしい統計がよくわかる!眼科での新薬開発の臨床治験データを例に解説!統計学米虫節夫(近畿大学農学部教授)【編著】寺嶋達雄(参天製薬株式会社臨床開発本部)・榊秀之(千寿製薬株式会社前臨床グループ)【著】A4変型総172頁図表243点定価(本体6,000円+税)Ⅰ序説1.症例報告から法則性の発見へ/2.臨床試験実施時のポイント/3.統計解析ソフトについてⅡデータのまとめ方1データの4尺度/2誤差の4条件/3中心的傾向の示し方/4ばらつきの数量的示し方/5ヒストグラムと分布Ⅲ検定と推定の考え方1計量値の分布:正規分布/2検定と推定の考え方/3母平均に関する検定と推定Ⅳ2つの平均値の比較12つの平均値に関する検定と推定(パラメトリック法)/22つの平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅴ3つ以上の平均値の比較13つ以上の平均値に関する検定(パラメトリック法)/23つ以上の平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅵ計数値1計数値の分布/2計数値に関する検定と推定Ⅶ多重比較13つ以上の平均値に関する多重比較-多重比較の考え方-/23つ以上の平均値に関する多重比較(パラメトリック法)-分散分析後の検討-/33つ以上の平均値に関する多重比較(ノンパラメトリック法)-KruskalーWallis検定後の検討-Ⅷ2つの変量間の関係1相関分析/2単回帰分析Ⅸ練習問題(問題1~11)【付録】統計的方法に関するJISとISOの動向■内容■医学におけるわかりやすい〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-0-69315電話(03)3811-0544メディカル葵出版株式会社(108)———————————————————————-Page3読者からの手紙あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007????読者から貴誌2007年Vol.24,No.2,249-252に掲載された谷口香織氏らの論文「光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例」1)を興味深く拝読させていただきました.われわれの論文を引用していただいており谷口氏らに感謝いたします.内容の一部について確認したい箇所があり,筆を取った次第です.論文で紹介されている症例はstage3の黄斑円孔とされています.「はじめに」の部分でGass分類について触れているので,いわゆるGass新分類2)を用いたのではないかと考えますが,明確な引用の記述はなく,また,参考文献にもありません.井上らの論文3)でも紹介されているようにGass新分類では,Weissringのない全層黄斑円孔はstage2またはstage3であり,両者の違いは円孔径の違いです.円孔径400?m未満であればstage2,400?m以上であればstage3に分類されるはずです.Gassの新分類を用いているのであれば,今回の2症例ともWeissringがなく円孔径が400?m未満であることから,stage2になります.(「考按」で引用されているTaday-oniらの論文4)自体がGass新分類を正確に用いておらず,OCT所見を加えて分類しています.)症例の分類は論文の根幹をなす部分であると考えますので,著者に確認していただけたら幸いに存じます.今澤光宏山梨大学医学部眼科学教室文献1)谷口香織,福島聡,三井あやほか:光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例.あたらしい眼科24:249-252,20072)GassJD:Reappraisalofbiomicroscopicclassi?cationofstagesofdevelopmentofamacularhole.???????????????119:752-759,19953)井上由希,中馬智巳,中島秀樹ほか:Stage分類を用いた特発性黄斑円孔の手術予後の検討.臨眼60:2055-2058,20064)TadayoniR,MassinP,HaouchineBetal:Spontane-ousresolutionofsmallstage3and4full-thicknessmacularholesviewedbyopticalcoherencetomogra-phy.??????21:186-189,2001?著者よりの返事われわれの論文1)での症例における黄斑円孔の分類についてご指摘をいただき,どうもありがとうございました.先生のご指摘のとおり,今回報告させていただきました2症例は円孔径が400?m以下であり,Gassの新分類2)に従えばstage2になります.しかし論文でも引用していますように,われわれはGassの旧分類3)に準じて今回の2症例の黄斑円孔はstage3と分類いたしました.円孔径は小さいですが,OCT所見では両症例ともに円孔周囲で後部硝子体?離が起こっており,旧分類のstage3であることが確認されています.Gassの新分類については,矛盾点も指摘されており4),今回もあえて旧分類を用いております.今回の報告の趣旨は黄斑円孔周囲で後部硝子体?離が起こっていても,円孔径が小さい症例では自然閉鎖することがあり得るという点であり,後部硝子体?離の観点からするとstage3と分類したほうが妥当であると考えます.谷口香織名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学文献1)谷口香織,福島聡,三井あやほか:光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例.あたらしい眼科24:249-252,20072)GassJD:Reappraisalofbiomicroscopicclassi?cationofstagesofdevelopmentofamacularhole.???????????????119:752-759,19953)GassJD:Idiopathicsenilemacularhole.Itsearlystagesandpathogenesis.???????????????106:629-639,19884)KishiS,TakahashiH:Three-dimentionalobserva-tionofdevelopingmacularhole.????????????????130:65-75,2000(109)本誌24巻2号に掲載の原著論文,「光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例」について

眼科医にすすめる100冊の本-6月の推薦図書-

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS僕たちは“エビデンスに基づいた正しい医学”を展開していると信じている.自分のやり方と違う方法を見たり聞いたりすると“あれはおかしい.何を考えているんだ!”ということになる.しかしこの考えは正しいのだろうか?自分が正しいと信じているその根拠は何だろう?この本はのっけから“飛行機が飛ぶ原理は実はわかっていない”という衝撃的な話から始まる.中学生のときにこれを勉強して自分なりに理解していたと思っていた僕はとても驚いてしまった.翼にぶつかった空気は上と下に分かれて流れていくが,上のほうが曲がっている分(図1),後ろで合流するためには上の空気がたくさんの距離を流れなければならず,よって空気の密度が低くなり,気圧が低くなる.よって翼は上の方へ押し上げられる.これが揚力である.この揚力で飛行機は飛ぶ,というのが理論だ.しかしながら,翼にあたった空気が翼の後ろで合流するという証拠はなく(実際に合流はしないそうである),その他の理論を用いても,どうして飛行機が飛ぶのか明瞭には証明できないのだという.これは驚きだった.さらに歴史的な事実として,宇宙の理論が天動説から地動説に変わったことを例にとり,いかに世界の常識がその時代時代によって変わっていくものなのかを説明している.確かに昔は天動説だった.当時の人々はみんな地球のまわりを星がまわっていると信じていたということは学校で習った.それがコペルニクスやケプラーによって,天動説がでて,さらに軌道は楕円形であることなどがわかってくるのだ.そして現在も,さまざまな新しい仮説が誕生しているという.現在,正しいと思われているものは“その時代においてほとんどの人がそのように考えている仮説にすぎない”というのが本書の大きなメッセージである.医学の歴史のなかでもてんかん発作に対して行われた悪名高いロボトミー手術は,1949年にこの手術の治療的価値を発見したことによって,ノーベル生理学・医学賞をとったエガス・モニスというポルトガル人によって普及された.当時は画期的な方法としてみんなが最善の手術と信じていた.それが正しいと信じられていたからこそノーベル賞まで受賞したのだ.しかし現在ではご存知のようにロボトミーで前頭葉を破壊してしまうとその人の個性がなくなってしまうので人間の存在そのものを否定してしまう.絶対にやってはいけない手術となっている.眼科のなかでも僕が研修医だった30年前には“硝子体は触ってはいけないもの”という仮説が一般的だった.眼内レンズは異物なので入れてはいけないものだったし,近視の治療などは眼科医のやるべきものではなかった.今の眼科学では,硝子体手術はあたりまえ,眼内レンズは入れるのが常識,近視はLASIKで治るなど,仮説はどんどんと変化していくのがわかる.どうしても気の合わない人がいる.価値観がまったく異なる,なんていうこともある.これはどういうことなのか?著者の竹内薫氏によれば,それはその個人が持っている仮説が異なっているのでうまく合わないのだ,(105)■6月の推薦図書■99.9%は仮説思いこみで判断しないための考え方竹内薫著(光文社新書)シリーズ─74◆坪田一男慶應義塾大学医学部眼科図1飛行機の翼の揚力の解説図(「99%は仮説」より)空気飛行機の進行方向翼———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007ということになる.確かに“仕事は自分たちの成長のためにある”という仮説を持っている人と,“仕事は生活のためにお金を稼ぐ手段である”という仮説を持っている人では,患者さんへのサービス,職場の勉強会,超過勤務などについて話が合わないこともあるだろう.しかしこれらは,その人がいい人とか悪い人とかではなく,単に持っている仮説が違うからだと説明する.これはとても気分がいい仮説だ.とにかく何か問題があれば,仮説のせいにできるのだから.確かに竹内薫氏の言うように,みんなそれぞれ独自の仮説を持っている.人と違った変わった人は,ちょっと違った仮説を信じているにすぎず,もしかしたらその仮説のほうが真実に近いことだってあるかも知れない.今の医学会のなかにもたくさんの灰色仮説,黒い仮説が存在する.意見が合わない人がいた場合は“そうか,この人は私と違った仮説で動いているんだ”と思うのがいいようである.☆☆☆(106)JapaneseJournalofOphthalmologyの電子投稿・査読システム開設についてJJO編集委員会委員長三宅養三2007年6月1日よりJapaneseJournalofOphthalmology(以下JJO)は,電子投稿・査読システムの運用を開始いたしました.http://www.editorialmanager.com/jjoo/電子投稿・査読システム(EditorialManager?)導入後,論文の投稿・査読過程はすべてWeb上のシステムで行います.投稿した論文に関する情報はEditorialManager?にアクセスすれば,どこからでも確認することが可能です.今後,JJOへの投稿はEditorialManager?をご利用ください.日本語で操作方法をお読みになりたい方は,日本眼科学会のホームページをご覧ください.http://www.nichigan.or.jp/member/journal/jjo/index.jsp※5月末日までに投稿された方は,これまで通りの査読方法を行ってまいります.途中からWeb上に論文を載せることはできませんので,ご理解の程お願い申し上げます.

私が思うこと5.食いしん坊一家の休日の楽しみ

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???私が思うこと●シリーズ⑤(103)はじめに今年は年始早々胃腸を壊してしまい,食べられることのありがたさを再認識しました.ということで,今回は食をテーマに書かせていただきます.全員参加の家族料理私たち一家の休日の楽しみの一つに家族で料理をするということがあります.もともと家族一同食べるのが大好きで,いわゆる食いしん坊の一家なのです.以前,テレビ番組で日本一食いしん坊な県民は愛知県民と聞きましたが,わが家から類推する限りではなんとなくあたっている気がします.うちの料理などは質素なものですが,手作りの料理というのはやはり既製品とは違うおいしさがあるものですし,自分たちで作れば多少出来が悪くてもそこはご愛嬌で,実際以上においしく感じるものです.なにより料理を作るのは楽しいよ,ということで一家そろって料理を楽しんでいます.家族の会話も弾み,コミュニケーションにも一役買っています.こんなことになったのも,私の料理好きに端を発しているのでしょう.以前から料理を作るのが好きで,比較的よく台所に立っています.もっとも,男の料理というと大変凝った料理を作られる方が多いようですが(聞くところによれば某教授もなかなか凝った料理を作られるとか),私の場合どちらかというとあまり凝ったものは苦手で,お菓子類を除けば本当に普通の家庭料理が中心です.私の料理好きは子どものときからのもので,年季だけは入っています.小学校低学年のころから家の料理を手伝っていました.当時実家が青果商を営んでいたこともあり,食品に対する目もその当時に養われたように思います.テレビでも料理番組を欠かさず見ているような子でした.長ずるにつれだんだんに難しい料理やお菓子を作るようになり,高校のころには普通に家庭で食べるものはたいてい作れるようになりました.大学生のころは一人暮らしだったので時折自分で食事を作ることもありましたが,一人で自炊するのは何かと無駄も多く,思ったほどやりませんでした.結婚してからは妻と二人で台所に立つのが楽しくて,再びよく料理するようになりました.そして最近では家族全員で料理をするようになったというわけです.特にここ1年ほどは長女が料理好きになり,家族で料理をする機会が増えました.水上勉氏の「土を食う日々」に学んだこと話ががらっと変わりますが,私が大学生のときに水上勉氏の「土を喰う日々」という書物に出会いました.巻末に昭和53年12月に文化出版局から刊行されたとあり,私が今も持っているのは昭和57年8月に発行された新潮文庫版の初版本なので,おそらく私が大学1年生のころに手に入れたものと思われます.この本はコミック「美味しんぼ」でも紹介されたそうなので,読まれた方もあるでしょうが,ご存知でない方のために簡単にご紹介します.この作品は水上氏が軽井沢に家(仕事場)を持ち,仕事場の庭に畑を作ってこれを耕し,四季折々の旬の野菜を収穫し,さらには自ら料理するという(水上氏は少年のころ禅寺で修行したために精進料理にご堪能だったそうです)日常をエッセー風につづったものです.このエッセーには畑から生まれる野菜たちのみずみずしさと,それを思うままに料理し,味わいつくすさまが素朴な筆致ながら生き生きと描かれ,それだけでもすばらしいのですが,それに加えて食と料理を通じて,禅の心で人生の教訓を説いている点にまた感銘を受けま0910-1810/07/\100/頁/JCLS吉田宗徳(????????????????)名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学1988年京都大学医学部卒業,京都大学,市立岸和田市民病院,米国ハーバード大学スケペンス眼研究所,神戸市立中央市民病院などを経て2001年より名古屋市立大学講師.2003年より現職…と思ったら今年4月に助教授から准教授に役職名が変わってしまいました.専門は網膜硝子体疾患とぶどう膜炎.趣味は読書(娯楽もの中心),ウォーキング,その他もろもろ.歩くインドア派.(吉田)食いしん坊一家の休日の楽しみ———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007す.この本の中には曹洞宗を開いた道元禅師の「典座教訓」という古い書物がたびたび引用され,水上氏なりの解釈で解説を加えておられます.たとえば,「米を淘り菜等を調ふるに,自ら手づから親しく見,精勤誠心にして作せ.一念も疎怠緩慢にして,一事をば管看し,一事をば管看せざるべからず.功徳海中一滴も也た譲ること莫れ,善根山上一塵も亦積むべき袈歟」という道元禅師の言葉を「米を洗ったり,菜などをととのえたりする時,典座(禅寺の食事係のようなもの)は直接,自分の手でやらねばならぬ.その材料を親しく見つめ,こまかいところまでゆきとどいた心であつかわねばならぬ.一瞬とてなまけてはいけない.一つは見ていたが一つは見のがしていたということがあってはならない.功徳を積むことにかけては大海の一滴というべき小さなことでも,人まかせにしてはいけない.善根を積むことも,高い山の一個のチリほどのようなことでもなおざりにしないことだ.大海も滴の集まり,高い山も塵のあつまりではないか.」と解説してくれています(「土を喰う日々」より引用).私はこの言葉の典座を医師に置き換え,自分にとってありがたい教訓として肝に銘じています.ほかにもご紹介したいすばらしい言葉がたくさん書かれていますが,紙面の都合上ここまでにします.蛇足ですが,私なりの勝手な解釈を付け加えれば,食べるということは私たち人間にとって根源的に必要なことであって,その食べるということは決しておろそかにしてはならない.また,食べるということを真剣に考えることは私たちの生き方そのものを考えることに通じるということだろうと思います.私たちが食べさせていただいているということはほかの生きものや,さまざまなものの犠牲と多くの人や物のおかげの上に成り立っていることも忘れてはなりません.楽しみながら教育効果も話が回り道をしましたが,こんなことから家族で料理を作るのは子供の教育にもなると考えています.作るときは材料を無駄にしないように教えていますし,自分で作るようになってからは子どもたちが食べ物を残すことが減ったように思います.子どもとて,食事を作ることを人任せにしないで自分でやるようになれば,日ごろ三度三度の食事が取れることや,その食事を作ってもらえるありがたさがわかるのです.さらには食べる人に喜んでもらおうと一生懸命に工夫をして作ることは,人に対する優しい気持ちにつながっていくのではないかと思います.またこういう場面で役割を与えると,少々難しくても意外と子供はがんばるもので,なるべくそれぞれに責任を持ってやらせるようにしています.時に大変な結果に終わることもありますが.話が説教くさくなってしまいましたが,むろんこんなことを毎日考えているわけではありません.なんにせよ,家族みんなでわいわいと騒がしく作って,完成した料理を(時には完成前から?)奪い合いながら食べることが,わが食いしん坊一家の大きな楽しみであることは間違いありません.こんなことにささやかな幸せを感じている今日この頃です.皆様方もいかがですか?(104)図1家族で料理をしているところ私と次男と長女です.ちょっと演技っぽいですが,まあだいたいこんな雰囲気でやってます.妻は恥ずかしいからということで,長男は撮影者のため,その二人は写真には入っておりませんが,もちろん普段は参加しています.念のため.図2完成したクッキーを手にご満悦の長女見かけはともかく味は一級品?

硝子体手術のワンポイントアドバイス49.ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前嚢保存(初級編)

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに前回は,ガスタンポナーデ後の隅角癒着について述べたが,今回はその続編で,前?をリング状に温存することで隅角癒着を防止する方法について述べる.●ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前?保存増殖硝子体網膜症などの眼内増殖性疾患では,水晶体切除時に水晶体?もすべて除去するほうが,前部増殖性変化が発生しにくいとされている1)が,この方法では,ガスによって虹彩が角膜内皮面に圧排され,術後に閉塞隅角緑内障をきたすことがある(図1)(前号参照).この際に,水晶体?をリング状に残存させ,気圧伸展網膜復位術時に虹彩を前?側に癒着させることで,術後の隅角閉塞を防止することができる(図2a,b).気圧伸展網膜復位術後に角膜のサイドポートから前房内に人工房水を注入することで,容易にこの目的を達することができる.この際に重要なことは,必ず水晶体?の全周を確実に温存することである.リングが1象限以上にわたって欠損すると,その部分は角膜側に虹彩が癒着する危険性が高くなる.筆者らの報告では,前?保存群8眼では周辺部虹彩前癒着および続発閉塞隅角緑内障を生じた症例はなかったのに対して,水晶体?を全摘出した6眼では,5眼に周辺部虹彩前癒着を認め,そのうち3眼は続発閉塞隅角緑内障に進行した2).本法は,前?のみを残存させるので,周辺部硝子体は十分に切除可能で,術後の前部増殖性病変を惹起することは少ない.さらに前?を全部温存する方法もある3).この方法では虹彩と前?の癒着が少なく,角膜内皮保護や眼内レンズ二次挿入術の面では有利であるが,眼内のガスの量がやや少なくなるので,下方網膜のタンポナーデ効果がやや弱くなる.(101)文献1)LewisH,AabergTM,AbramsGWetal:Managementofthelenscapsuleduringparsplanalensectomy.????????????????103:109-110,19872)樋上泰成,佐藤文平,池田恒彦ほか:ガス注入眼における隅角癒着防止のための前?保存.眼科手術14:373-376,20013)MacCumberMW,PackoKH,CivantosJMetal:Preserva-tionofanteriorcapsuleduringvitrectomyandlensectomyforretinaldetachmentwithproliferativevitreoretinopathy.?????????????109:329-333,2002硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?49ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前?保存(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1水晶体?を全摘出した場合ガスによって虹彩が角膜内皮面に圧排され,術後に閉塞隅角緑内障をきたすことがある.(文献2より)a.シェーマ図2水晶体?をリング状に残存させた場合水晶体?をリング状に残存させ,気圧伸展網膜復位術時に虹彩を前?側に癒着させることで,術後の隅角閉塞を防止することができる.(文献2より)b.術中写真