———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSの分解能は10μm,スキャン速度は400Aスキャン/秒である.豊富な解析ソフトを搭載しているのが特徴で,緑内障解析ソフトには視神経乳頭周囲RNFL厚解析ソフト(“RNFLThickness(3.4)”と“RNFLMap”)と視神経乳頭解析ソフト(“OpticDisc”)がある.それぞれの測定モードには通常モードと測定ポイントを減らして短時間で測定するFastモードがあるが,固視微動の影響が少ないFastモードで測定することが多い.“(Fast)RNFLThickness(3.4)”は視神経乳頭中心から直径3.46mmの部位の網膜をサークルスキャンすることによってRNFL厚を計測する.解析には連続3回測定の平均値を用い,RNFL厚のグラフ表示のほかに30°ずつ時計軸に12分割した平均値と4分割した平均値も表示される.また,3回目の測定時の眼底像と最もSignalStrength(信号強度)が弱いOCT画像1枚が表示される.SignalStrengthは基本的に5以上あれば信頼度が高いが,AnalysisCondenceLowと表示される場合は信頼度が低い.さらに平均RNFL厚をはじめとする11のパラメータも表示され左右眼の差も計算される.なお,それぞれの値は年齢を補正した正常眼のデータベースと比較され,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示される(図1).“FastRNFLThickness(3.4)”の正常眼のデータベースのサンプル数は328眼(1885歳)であり,人種別の内訳は白人が63%,ヒスパニックが24%,黒人が8%と続き,アジア人はわずか3%である.問題点としては現在のソはじめに緑内障は網膜神経節細胞の細胞死によって生じる視神経症であり,わが国の中途失明原因の第1位を占める.組織学的には網膜神経線維層(retinalnerveberlayer:RNFL)の菲薄化や視神経乳頭陥凹の拡大が生じる.Opticalcoherencetomography(OCT)はその優れた分解能1)からこれらの解剖学的変化の定量が可能であり,解析することで緑内障の診断支援を行っている.解析を行ううえで重要なのは正常眼との比較である.特にRNFL厚は正常者でも加齢に伴い薄くなることが報告2)されており,RNFL厚を判定する際には同年代の正常眼との比較が必要になる.さらに,正常眼のRNFL厚は人種間で差があるという報告3)もあり,正常眼のデータベースのサンプルの内容にも注意が必要である.現在,OCTは多数の会社から発売されているが,第一世代(タイムドメイン方式)と第2世代(スペクトラルドメイン方式)に分類される.スペクトラルドメインOCTはタイムドメインOCTに比べ高速で高分解能の画像が取得できる.今回,緑内障解析ソフトを搭載しているタイムドメインOCT3機種,スペクトラルドメインOCT2機種について,それぞれの機種の特徴とソフトの内容について解説する.IOCT3000(StratusOCT):CarlZeissMeditec社タイムドメインOCTの代表的機種である.深さ方向(61)637Makotoanno9909585222特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):637645,2008緑内障検査とOCT検査の機種一AListofOpticalCoherenceTomographyDevicesinGlaucomaExamination菅野誠*———————————————————————-Page2638あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(62)図1OCT3000の“FastRNFLThickness(3.4)”の解析画面視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフ表示や11のパラメータが表示され,正常眼との比較が行われる.(出典:CarlZeissMeditec社)図2OCT3000の“FastOpticDisc”の解析画面6本のラインスキャンから視神経乳頭のパラメータを計算する.(出典:CarlZeissMeditec社)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008639(63)ト(角膜方向への移動距離)も任意の値が入力可能である.課題としては6本のラインスキャンのみで各パラメータを算出しているため情報量が少なく精度不足の点は否めない.また,正常眼のデータベースも搭載されていない.IIOCTオフサルモスコープ(C7):ニデック社OCT3000と同じタイムドメイン方式のOCTで深さ方向の分解能は8μmである.OCT3000が深さ方向(Z軸方向)へのAスキャンを重ね,横方向(X-Y軸方向)に移動することによって網膜断層像(Bスキャン)を得るのに対して,OCTオフサルモスコープでは,はじめにX-Y軸方向に平面としてスキャンし(Cスキャン),その後深さ方向(Z軸方向)へ移動することによって画像を取得する.また,OCTオフサルモスコープは,OCTと同一光源,同一光軸で走査レーザー検眼鏡(scanninglaserophthalmoscope:SLO)の鮮明な眼底画像を同時に取得できる特徴ももつ.このためOCT画像とSLO画像を組み合わせて表示することも可能である.緑内障の解析ソフトには“RNFL”があり,視神経乳頭を中心にサークルスキャンをしRNFL厚を計測すフトでは,RNFLの境界は自動描線のみで決定され手動での補正ができない(境界エラーがある場合,訂正ができない),1回分のOCT画像しか表示されない(他の2回分のOCT画像は不明であり,境界エラーの有無を判定できない)点があげられる.次期ソフトではRNFLの境界を手動で補正できるようになる見込みである.“(Fast)RNFLMap”は視神経乳頭中心から直径2.96.8mmまでの位置でサークルスキャンを6回行い,視神経乳頭周囲のRNFL厚をマップ化して表示する.マップ表示のほかに,視神経乳頭中心から直径2.9mmと6.8mmの部位での8分割した平均RNFL厚も表示される.“(Fast)OpticDisc”は視神経乳頭を放射状に長さ4mm,6本のラインスキャン(30°間隔)を行うことで,12方向の横断面から視神経乳頭の形状解析をする.OCTの断層像で網膜色素上皮の終端を検出し,網膜色素上皮の終端を結んだラインから角膜方向に150μm平行移動したラインで陥凹径を,網膜色素上皮の終端から垂直方向に延ばしたラインを視神経乳頭縁としてそれぞれの値を算出する(図2).色素上皮の終端は自動で検出されるが手動での補正が可能であり,陥凹径のオフセッ図3OCTオフサルモスコープの“RNFL”の解析画面視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフ表示や3回分のOCT像が表示される.(出典:ニデック社)———————————————————————-Page4640あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(64)ポイントと600ポイントの2種類があり“200”のモードでは短時間で測定できる.撮影すると連続6枚の画像がストックされ(図5),任意の画像1枚を選択して解析する.RNFLの境界は自動描線で行われるが手動での補正も可能である.日本人の正常眼486眼(1880歳)のデータベースが搭載されており,RNFL厚のグラフ表示の他に12分割と6分割した平均値も表示される.さらに平均RNFL厚のなど14のパラメータも表示され,左右眼の差も表示される.なお,それぞれの値は年齢を補正した正常眼のデータベースと比較され,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では桃色に表示される(図6).IV3DOCT1000:トプコン社世界初のスペクトラルドメイン方式のOCTである.分解能は5μm,スキャンスピードは18,700Aスキャン/秒でOCT3000(400Aスキャン/秒)の約47倍である.眼底カメラを搭載しているのが特徴で,OCT像と眼底写真や蛍光眼底写真などを位置合わせする(regis-る.サークルスキャンの直径は3.1mmと3.4mmの2種類がある.解析には連続3回測定の平均が用いられるが,オートトラッキング機能を装備しており連続3回の測定は同じ位置で測定できる.RNFLの境界は自動描線で行われるが,手動での補正も可能である.平均RNFL厚のほかに部位ごとに4分割,8分割した平均値も表示される(図3).同一眼の経過観察にはRNFL厚の2回の差分を表示する機能(図4)があり便利であるが,正常眼のデータベースが搭載されておらず正常眼との比較はできない.IIIEZSCANNER:マイクロトモグラフィー社国産初のOCTでタイムドメイン方式を採用している.深さ方向の分解能は1020μm,スキャン速度は400Aスキャン/秒でOCT3000とほぼ同等の性能である.緑内障解析ソフトは視神経乳頭を中心にした直径3.46mmの位置の網膜をサークルスキャンしRNFL厚を計測する.撮影モードは横方向の測定ポイントが200図4OCTオフサルモスコープの“RNFL”の比較画面2回分のRNFL厚グラフとその差が表示される.(出典:ニデック社)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008641(65)図5EZSCANNERの視神経乳頭周囲RNFL厚の測定画面6回分のOCT像が自動的にストックされる.(出典:マイクロトモグラフィー社)図6EZSCANNERの視神経乳頭周囲RNFL厚の解析画面ストックした画像から任意の1回分のRNFL厚を解析する.(出典:マイクロトモグラフィー社)———————————————————————-Page6642あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(66)図73DOCT1000の視神経乳頭周囲RNFL厚の解析画面RNFL厚のグラフや4,12分割した平均値も表示され正常眼との比較が行われる.(出典:トプコン社)図83DOCT1000の視神経乳頭を中心とした3Dスキャン画面3次元画像と視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップを表示している.また,RNFL厚のマップは眼底写真とregistrationも行っている.(出典:トプコン社)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008643(67)実しており,視神経乳頭周囲のRNFL厚(“RNFL3.45”)および視神経乳頭解析ソフト(“NerveHeadMap4:NHM4”)をはじめ,黄斑部の解析ソフト(“MaculaMap7:MM7”)も搭載しているのが特徴である.さらに視神経乳頭周囲を含む4×4mmの範囲を約2秒でスキャンし3次元化して表示する“3-DDisc”もある.それぞれのソフトでは経時変化の表示や比較解析機能も装備している.“RNFL3.45”は視神経乳頭中心から直径3.45mmの部位の網膜を0.16秒で4回連続サークルスキャンし平均化したRNFL厚を解析する.RNFL厚のグラフ表示とその下に2,6,16分割した平均値も表示され,正常眼との比較が行われる.平均RNFL厚や4,8分割した平均値は表内に表示される(図9).“NHM4”は視神経乳頭中心から放射状に長さ4mm,12本のラインスキャン(15°間隔)を行い24方向の横断面から視神経乳頭の形状解析をする.同時に直径2.54.0mmまでの6本のサークルスキャンを行い視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップ表示もする.視神経乳頭解tration)機能も装備している.このため,眼底写真からOCTの撮影部位を特定でき,毎回同じ部位での撮影が可能になり経過観察に有用である.緑内障解析ソフトには視神経乳頭中心から直径3.4mmの網膜をサークルスキャンしてRNFL厚を測定するソフトがあり,RNFL厚のグラフ表示と4分割,12分割した平均値が表示される.日本人正常眼200眼以上のデータベースを搭載しており,正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示される(図7).さらに3DスキャンモードではRNFL厚のマップ表示も可能である(図8).また,同一眼の経過観察に便利な差分マップ表示機能もある.黄斑部についてもRNFL厚の測定は可能であるが,緑内障解析ソフトは搭載されていない.VフーリエドメインOCTRTVue100:Optovue社スペクトラルドメイン方式のOCTである.深さ方向の分解能は5μm,スキャン速度は26,000Aスキャン/秒でOCT3000の65倍である.緑内障解析ソフトは充図9RTVue100の“RNFL3.45”の解析レポート視神経乳頭周囲RNFL厚のグラフや2,6,16分割した平均値も表示され正常眼との比較が行われる.(出典:Optovue社)図10RTVue100の“NHM4”の解析レポート視神経乳頭のパラメータが左下の表にまとめられ,視神経乳頭周囲RNFL厚のマップとグラフが右下に表示される.(出典:Optovue社)———————————————————————-Page8644あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008前述した“RNFL3.45”のRNFL厚のグラフはスキャンビームの中心から直径3.45mmの位置のRNFL厚であり“NHM4”のものとは厳密には異なる.このため,“NHM4”モードでは視神経乳頭中心を多少ずれてスキャンしても,乳頭中心から直径3.45mmのRNFL厚の解析には影響しない利点がある.“MM7”は黄斑部の7×7mmの範囲で,長さ7mmのラインスキャンを水平方向に1本,垂直方向に0.5mm間隔で15本スキャンし,網膜内層の神経節細胞複合体(ganglioncellcomplex:GCC)層を測定しマップ化して表示する.GCC層は網膜神経線維層,神経節細胞層,内網状層の3層の合計からなり,緑内障では神経節細胞の減少に伴い菲薄化すると考えられている.GCC厚マップのほかに,DeviationマップやSignicanceマップが選択でき正常眼のデータベースと比較が行われる(図11).正常眼のデータベースであるが,サンプル数は“RNFL3.45”および“NHM4”のRNFL厚は330眼(1880歳),“MM7”のGCC厚は300眼以上(1880歳)であるが人種別の内訳などの詳細は公開されていない.今後,日本人の正常眼のデータベースが搭載される予定である.なお,正常眼との比較ではそれぞれのパラメータが正常眼の1%以上5%未満では黄色,1%未満では赤色に表示されるのはOCT3000と同様である.おわりに今回取り上げたOCTの緑内障解析ソフトの種類および正常眼のデータベースの搭載の有無について表1にま析をする際には,視神経乳頭縁を手動で決定し解析する.視神経乳頭縁の決定にはOCT画像で網膜色素上皮の終端から決定する方法や“3-DDisc”の画面から決定する方法などがある.視神経乳頭周囲のRNFL厚のマップには16分割した各セクション内の平均値も表示され正常眼との比較が行われる.さらに,計算で視神経乳頭の中心を求め,そこから直径3.45mmの位置でのRNFL厚が再計算されグラフ表示される(図10).なお,(68)図11RTVue100の“MM7”の解析レポート黄斑部GCC厚マップのほかに,DeviationマップやSignicanceマップが選択でき正常眼との比較が行われる.(出典:Optovue社)表1各種OCTの緑内障解析ソフトと正常眼のデータベースOCT測定方式緑内障解析ソフト正常眼のデータベース視神経乳頭周囲RNFL厚視神経乳頭解析黄斑部GCC厚OCT3000(StratusOCT)タイムドメイン○○×○OCTオフサルモスコープ(C7)タイムドメイン○×××EZ-SCANNERタイムドメイン○××○3DOCT-1000スペクトラルドメイン○××○RTVue-100スペクトラルドメイン○○○○RNFL:retinalnerveberlayer,GCC:ganglioncellcomplex(神経節細胞複合体).緑内障解析ソフト,正常眼のデータベースは2008年3月時点での搭載の有無.———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008645今回の執筆にあたり,画像の提供ならびに協力をいただいたCarlZeissMeditec社,ニデック社,マイクロトモグラフィー社,トプコン社,Optovue社(国内販売:中央産業貿易)の関係者の皆様に深謝します.文献1)HuangD,SwansonEA,LinCPetal:Opticalcoherencetomography.Science254:1178-1181,19912)VarmaR,SkafM,BarronE:Retinalnerveberlayerthicknessinnormalhumaneyes.Ophthalmology103:2114-2119,19963)BudenzDL,AndersonDR,VarmaRetal:DeterminantsofnormalretinalnerveberlayerthicknessmeasuredbyStratusOCT.Ophthalmology114:1046-1052,20074)MedeirosFA,ZangwillLM,BowdCetal:ComparisonoftheGDxVCCscanninglaserpolarimeter,HRTIIconfocalscanninglaserophthalmoscope,andstratusOCTopticalcoherencetomographforthedetectionofglaucoma.ArchOphthalmol122:827-837,20045)QuigleyHA,DunkelbergerGR,GreenWRetal:Retinalganglioncellatrophycorrelatedwithautomatedperimetryinhumaneyeswithglaucoma.AmJOphthalmol107:453-464,1989とめた.なお,紹介できなかったCarlZeissMeditec社のスペクトラルドメインOCTであるCirrusHD-OCTにも緑内障解析ソフトが搭載されるのをはじめ,他のOCTでも緑内障解析ソフトの追加や更新がされると思われる.緑内障の画像解析装置には多数の種類があるが,ScanningLaserPolarimeterのGDx-VCC,Con-focalScanningLaserOphthalmoscopeのHRTⅡ,タイムドメインOCTのOCT3000の緑内障の診断能力はほぼ同等4)とされている.基本性能が向上したスペクトラルドメインOCTは,視神経乳頭と乳頭周囲RNFL厚に加え黄斑部の網膜内層厚(GCC厚,RNFL厚)の解析も可能になり,緑内障解析ソフトの精度の向上が期待されている.現在,緑内障の診断および進行の判定は自覚的検査である視野検査で行っている.自動視野計で5dBの感度の低下の出現までに20%の網膜神経節細胞が減少している5)とされている.緑内障初期では構造的変化が機能的変化(機能障害)に先行すると考えられており,診断能力が向上したOCTがどの程度,pre-peri-metricな診断(リスクの把握)から緑内障管理まで対応できるかは今後の検証が待たれる.(69)