———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS慶應義塾大学医学部眼科学教室では,この4月に後期研修医12名が眼科医としての第一歩を踏み出しました.ごきげん教授として有名な坪田一男先生の指導の下,多忙ながらも充実した研修生活を送っています.今回はそんな私たち後期研修医の一日を追いながら,慶大眼科の後期研修プログラムを紹介したいと思います.眼科の朝は早い!起床時間の平均は6時半くらいでしょうか(女性研修医は化粧の時間を考慮してマイナス30分!?).手術件数が多かった日の翌日は起床時間が5時台に突入してしまうこともあります.病棟では8時から朝食が開始となるため,それまでに担当患者の診察を終えておく必要があり,朝はどうしても早起きにならざるを得ません.たまにはゆっくり朝寝坊したいなあ,と思ってしまうこともありますが,そこは若さと根性でなんとか乗り切っています!朝のラッシュアワーラッシュといっても東京名物の満員電車ではなく(実際ほとんどの研修医が病院から徒歩圏内に住んでいます),朝の眼科診察室でのことです.患者さんの朝食までに診察を終えなければいけないのは皆共通なのですが,できれば5分でも長く布団の中にいたいという気持ちもまた同じです.その結果研修医の出勤時間は見事に重なってしまい,朝の診察室は大混雑となります.5台あるスリット台が常にフル稼働で,さらに台が空くのを数人が待ち構えているという状態です.眼科病棟は朝からにぎやかです.朝の定例勉強会研修医は8時までに受け持ち患者の診察を終えますが,8時から外来開始までの時間を利用し朝の定例勉強会が行われています.これは各専門外来の医師によって行われる約30分間の講義のことです.講義内容の一例としては「視野検査の原理と解釈」,「双眼倒像鏡の構造と使用方法」など,実践ですぐに役に立つ知識や技術に加え,各分野での最新トピックなども盛り込まれています.この勉強会は週に3回行われていますが,勉強会がない日は朝の全体カンファランスがあるため,研修医に朝をのんびり過ごす暇はありません!研修医とオーベン慶大眼科では,研修開始の最初の2カ月はオーベンとよばれる2年目の後期研修医とペアを組んで診療を行っています.研修医は出勤から帰宅まで常にオーベンと一緒に行動するため,オーベンとはまさに寝食をともにする関係であり,非常に強い絆で結ばれています.眼科の基本的知識や技術,病棟業務などはすべてオーベンから教わるといっても過言ではありません.来年の今頃は自分もオーベンとして後輩の指導を行っているはずなのですが,自分が教えている姿は現時点ではまったく想像がつきません….(65)後期臨床研修医日記●シリーズ②慶應義塾大学医学部眼科学教室伴紀充▲朝の定例勉強会———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007手術・外来日中の業務はおもに担当患者の手術の助手,もしくは外来の手伝いです.手術室ではオーベンの下で第二助手として手術を支えるはずなのですが,多くの場合は支えるどころか完全に足を引っ張っています.眼科の手術器具は一度に覚えるには数が多すぎて(そして名前がとってもユニーク!),すでに頭はパニックです.オーベンの力を借りてようやく道具を並べたところで,術者から一言「□@?☆出しといて.」…それは一体何ですか?薬の名前でしょうか?それとも器具の名前でしょうか?もし器具だとしたらそれはどのような器具なのでしょうか?ってモタモタしているうちに術者が自分で用意しちゃったよ.なんだか自分がいないほうが物事がスムーズに進むような気がします,本当に.教育講演とiPod夕方には外部講師による特別講演も多数組まれており,徹底的に眼科知識の基礎固めをします.また,毎週1回は研究を中心とした講演会もあり,教室をあげて取り組んでいる抗加齢医学に関する最新の研究についての講演を多数聴くことができます.臨床のみならず研究にも触れることができるのは大学の良いところでしょう.ただし,少々オーバーワーク気味の研修医はこの頃になると椅子に座ったとたんに睡魔が襲ってくるため,一人また一人と夢の世界へと旅立っていきます.また,外勤などでどうしても講義に参加できない人もいます.そのために朝の勉強会を含めたすべての講義はビデオ撮影されており,その映像をダウンロードしてiPodで見ることができます.なんと,このiPodはオリエンテーション初日に坪田教授から後期研修医全員にプレゼントされたものなのです!坪田教授には本当に感謝ですが,IT技術の進歩にも頭が下がります.本当に便利な世の中になりました.夜の病棟にて病院には怖いうわさ話がつきものですが,4月の眼科病棟では夜の診察室から何やらあやしい物音が聞こえるという噂が.いいえ,噂じゃありません.消灯後真っ暗な診察室を覗いてみると,そこには多数の人影が….そう,それはお互いに診察練習をする研修医でした.日中の激務を終え気付けばもう消灯時間のため,夜の診察室で黙々と診察の練習です.当然ながらお互いに診察技術は未熟であるため,眼圧を測定すればチップが角膜にめり込むし,散瞳して眼底検査をすればやたらまぶしいだけでちっとも眼底は見えません.そして日付が替わろうとする頃にようやく研修医の長い一日が終わります.傷ついた角膜と開いた瞳孔は今日一日がんばった証.明日も朝は早いぞ,がんばろう!オーベンからの独立,そして今後の研修プログラム4月から手取り足取り指導してくれたオーベンもいつまでも私たちについてくれるわけではありません.オーベンは次々と関連病院へ出張となるため,独立の時が刻一刻と迫ります.この緊張感でとても胃が痛みますが,自分で考え行動するために必要なのはやはり日々の勉強であり,独立へ向け現在奮闘中です.また,後期研修プログラムはようやく2年目を迎えた(66)▲夜の病棟で診察練習▲歩きながらiPodで勉強する筆者———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.10,2007????ばかりで,まだまだ改善すべき点がたくさんあります.定期的に開催されるプログレスミーティングでは,研修の進行状況の確認と今後の研修プログラムについて,坪田教授を囲んでざっくばらんに議論をします(もちろんおいしいシャンパンを飲みながら!).忙しい毎日ですが,こういった“ごきげんイベント”が多いのも慶大眼科の特徴です.おわりに後期研修医の一日を追いながら,慶大眼科の後期研修プログラムについて紹介しました.研修開始から毎日があっというまに過ぎてしまいますが,12名で協力しながら一流の眼科医を目指して努力していきます.(67)☆☆☆?プロフィール?伴紀充(ばんのりみつ)平成17年慶應義塾大学医学部卒業,北海道北見赤十字病院にて初期臨床研修,平成19年4月より慶應義塾大学医学部眼科学教室後期研修医.教授からのメッセージ「ごきげんな研修医生活」研修時代は本当に大変です.覚えることはたくさんあるし,仕事も忙しい.僕も毎日,眠い目をこすりながら跳ね起きて病院に出かけたのを覚えています.でも,研修時代に習得した知識,経験は貴重.今ではよい思い出です.忙しくても毎日1時間はテキストを読む習慣をつけることを僕たちの時代は皆でやっていました.特に寝る前の学習は記憶に刻まれて効果的という脳の研究の報告を最近知って,今はさっそくこの方法でお勉強しています.スタートしたばかりの研修制度なので,改善すべき点も多々あると思うので,皆といっしょに新しい合理的で快適な研修システムをつくっていければうれしく思います.気づいたことがあったらぜひフィードバックしてください.とにかく貪欲に吸収してほしい.「ごきげんな研修医生活」の鍵は,自らのその貪欲さにあると僕は思います.慶應義塾大学医学部眼科・教授坪田一男