●連載◯164監修=安川力五味文144近視性黄斑部新生血管と脈絡膜渡辺研人松村沙衣子東邦大学医学部眼科学講座強度近視に伴う近視性黄斑部新生血管(mMNV)では,脈絡膜厚や血流など脈絡膜の状態が再発や治療予後と密接に関与することが明らかとなってきた.本稿では,脈絡膜厚・萎縮,血流,perforatingscleralvesselの観点から,mMNVの病態と再発予測における意義を概説する.cd近視性黄斑部新生血管の病態と脈絡膜強度近視の増加に伴い,近視性黄斑部新生血管(myo-picCmacularneovascularization:mMNV)は臨床的に重要な合併症として注目されている(図1).mMNVの発症機序として,眼軸長延長に伴うCBruch膜の断裂(lacquercracks),脈絡膜菲薄化,後部ぶどう腫による組織伸展があげられる.近年,脈絡膜循環の低下や脈絡膜構造の脆弱化が病態に関与するとの報告が増えており,脈絡膜の形態・血流はCmMNVの発症・再発と密接に関連すると考えられている.抗CVEGF治療は短期成績に優れるが,長期的にはC23~62%の症例で再発が報告され,治療回数や視力予後には個体差が大きい1,2).そのため,再発リスクの予測因子の同定がCmMNV管理の重要な課題となっている.脈絡膜厚・萎縮と治療予後脈絡膜厚はCmMNVの活動性や治療反応性を反映するCa図1近視性黄斑部新生血管a:眼底写真.豹紋状眼底,中心窩に網膜出血を認める.b:OCT.網膜色素上皮を貫くCPSVと出血(..)を認める.c:蛍光眼底造影.MNVからの蛍光漏出を認める.d:OCTA.同部位にCMNVを認める.指標として注目されている.BorrelliらのC3年追跡研究では,治療前の中心窩脈絡膜厚(subfovealCchoroidalthickness:SFCT)が厚い眼ほど視力改善が良好であり,再発率も低いことが示された2).脈絡膜がより保たれている眼では,虚血や構造脆弱性が軽度である可能性があり,治療後の瘢痕化や萎縮の進行も抑えられると推察される.Ahnらも,健眼と比較してCmMNV眼ではCSFCTが有意に薄く,再発例では再発前にCSFCTが増加することを報告している(図2).これは再発前に脈絡膜血流が一時的に亢進する,あるいは脈絡膜内の炎症・血管透過性亢進が起こる可能性を示唆している3).一方,治療後の脈絡膜萎縮は視力予後を悪化させる大きな要因であり,長期経過でC70%以上に萎縮が進行すると報告されている.萎縮の拡大は治療前のCMNVサイズや治療回数と関連する可能性があるが,確立した予測因子はない.いずれにせよ,脈絡膜厚および萎縮の程度はCmMNVの長期予後に影響する重要な要素といえる.(69)あたらしい眼科Vol.43,No.2,20261870910-1810/26/\100/頁/JCOPYPerforatingscleralvessel(PSV)の関与光干渉断層血管撮影(opticalCcoherenceCtomographyangiography:OCTA)の普及により,脈絡膜レベルの微細な血管構造を非侵襲的に観察できるようになった.近年,mMNVの発症部位周囲にしばしばCperforatingCscleralvessel(PSV)が認められることが報告されている.PSVは強膜を貫通して脈絡膜へ進入する血管で,病的近視眼では脈絡膜の菲薄化により突出して観察されることがある.Sheらは,PSV周囲に新生血管の血流シグナルを伴う症例では,1年以内の再発率が有意に高く,再発までの期間も短いことを報告した4).さらに,SFCTがC50Cμm以下であることも再発リスク因子として同定されている.このことから,PSVの存在はmMNVの病態そのものに関与し,再発予測の有力なマーカーとなる可能性がある.脈絡膜血流と再発のメカニズム脈絡膜の血流異常もCmMNVの再発や活動性に影響を及ぼすと考えられている.Dimitrovaらは,mMNV眼では脈絡膜血流の低下やCposteriorciliaryarteryの抵抗の上昇を報告しており,虚血環境がCMNV形成を促す可能性が示唆される.再発直前に脈絡膜厚が増加する報告や,OCTA上でCMNVの血管構造が微細に変化する所見が先行するケースもあり,脈絡膜血流変化はCmMNVの再燃の早期徴候となりえる5).臨床応用と今後の管理戦略抗CVEGF治療は短期的には良好な成績を示すものの,再発時期には大きな個体差があり,治療開始が早いほど良好な視力予後が得られる.Moonらは発症から治療まC188あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026図2mMNVと中心窩脈絡膜厚の変化a:再発C2カ月前.156Cμm.Cb:再発C1カ月前.173Cμm.Cc:再発時.238Cμm.中心窩脈絡膜厚()が再発時に厚くなっている.での期間が短い症例ほど再発率が低いことを示しており,早期介入の重要性が再認識されている6).OCTAを含むマルチモーダルイメージングを活用することで,脈絡膜厚の変化,PSV近傍の血流増加,MNV血管網の微細な変化など,従来のCOCTや蛍光眼底造影では捉えにくい早期の再燃サインを検出できる可能性がある.SFCTが薄い眼やCPSV関連所見を有する眼などの再発リスクが高い患者では,より短い間隔で長期フォローアップを行い,必要に応じて早期の追加治療を検討する必要がある.文献1)VictorAA,AndayaniG,DjatikusumoACetal:RecurrenceriskCofCmyopicCchoroidalneovascularisation:aCsystematicCreviewCofCcurrentCstudy.CBMJCOpenCOphthalmolC8:Ce001396,C20232)BorrelliCE,CBattistaCM,CVellaCGCetal:Three-yearCOCTCpredictiveCfactorsCofCdiseaseCrecurrenceCinCeyesCwithCsuc-cessfullytreatedmyopicchoroidalneovascularisation.BrJOphthalmol106:1132-1138,C20223)AhnSJ,ParkKH,WooSJ:SubfovealchoroidalthicknesschangesCfollowingCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCinCmyopicCchoroidalCneovascularization.CInvestCOphthalmolVisSciC56:5794-5800,C20154)SheCX,CYaoCW,CHuangCGCetal:MyopicCchoroidalCneovas-cularizationCwithCneovascularCsignalCaroundCperforatingCscleralCvesselCproneCtoCrecurCafterCanti-VEGFCtherapy.EyeVis(Lond)C11:6,C20245)DimitrovaG,TamakiY,KatoSCetal:Retrobulbarcircula-tionCinCmyopicCpatientsCwithCorCwithoutCmyopicCchoroidalCneovascularisation.BrJOphthalmolC86:771-773,C20026)MoonBG,ChoAR,LeeJCetal:Improvedvisualoutcomeandlowrecurrencewithearlytreatmentwithintravitrealanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCinCmyopicCchoroi-dalCneovascularization.COphthalmologicaC237:128-138,C2017(70)