■オフテクス提供■3.コンタクトレンズの湿潤性,洗浄,消毒土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科および涙液との相互作用(前編)松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C3章は,コンタクトレンズの湿潤性や洗浄・消毒,および涙液との相互作用をとりあげている1).今回は前編として,湿潤性や物性について解説する.はじめに今回は第C3章でとりあげているCCLのポリマーとレンズ表面について,また,これらと酸素透過性,湿潤性,涙液との相互作用について解説する.酸素透過性CLの素材は過去C20年間で大きな進歩をとげており,とくにシリコーンハイドロゲル素材の導入は注目に値する.その登場はCCL装用における低酸素症の問題を解決させた一方,とくにCCL装用時の快適性の追求など,CLの処方成功とその後の装用継続のための要因に関する研究はさらに必要だとしている.研究室レベルでの実験では,CLの酸素透過性の向上によって,レンズに吸着される蛋白質や脂質などの涙液成分の種類や,付着する微生物の種類に変化が生じた.これらの変化は,酸素透過性を高めるために使用されるポリマー固有の疎水性によって引き起こされた可能性がある.CLの生体適合性はレンズ表面の湿潤性と関連しており,湿潤性向上への取り組みが行われている.湿潤性の研究成果CLの湿潤性とCCL装用中の快適性に関する研究が展開されている.以下に湿潤性に関連する用語のいくつかを解説する.C①CDynamicCsessileCdropConCinclinedsubstrates:板上の水滴などの液滴が,板を傾け基板上を動き出す直前に,液滴の前進および後退接触角を測定する方法.その挙動を通じて,CL材料の湿潤性や液体との相互作用や表面特性の評価を行う.C②CDynamicCsessiledropCgoniometry:動的な液滴角度測定法(伸縮法)で,斜面での液滴の移動により液滴の体積を変化させ,接触角を前進および後退時に測定する方法.材料表面の湿潤性,液体の滴が表面をどれだけ速く拡散するか,液体滴の移動における相互作用,固体表面の特性などを評価する.C③CDynamicCcaptiveCbubblemethod:固体の表面に触れた気泡を拡大・収縮させて,前進および後退接触角を測定する方法.材料の表面特性や液体との相互作用の評価に有用である.C④CWilhelmyplate:サンプルを液体に浸すときと引き表1国際標準化機構(InternationalOrganizationforStandardization,ISO)による,ISO18369-1:2017に基づくソフトコンタクトレンズ(SCL)素材の分類2)グループレンズタイプ特性CIIIIIIIVVVAVBVC低含水率・非イオン性高含水率・非イオン性低含水率・イオン性高含水率・イオン性高酸素透過性素材(例:シリコーンヒドロゲル,シリコーンエラストマー)イオン性サブタイプ高含水サブタイプ低含水サブタイプ含水率がC50%未満であり,pH6.8で非イオン性のモノマーがC0.5質量%以下含まれている素材C含水率がC50%以上であり,pH6.8で非イオン性のモノマーがC0.5質量%以下含まれている素材C含水率がC50%未満で,pH6.8でイオン性のモノマーがC0.5質量%以上含まれている素材C含水率がC50%以上で,pH6.8でイオン性のモノマーがC0.5質量%以上含まれている素材C酸素透過率(CDk)がC40CDk単位以上であり,そのCDk値が材料の水分含有量のみを基準として予想されるCDk値よりも高い素材CグループⅤに該当し,pH6.8でイオン性のモノマーまたはオリゴマーを含むサブグループCグループⅤに該当し,含水率がC50%以上で,CpH6.C8でイオン性のモノマーまたはオリゴマーを含まないサブグループCグループⅤに該当し,含水率がC50%未満で,CpH6.C8でイオン性のモノマーまたはオリゴマーを含まないサブグループ注:FAD分類とは異なる(I.IVも一部異なっている)(81)あたらしい眼科Vol.41,No.3,2024C3170910-1810/24/\100/頁/JCOPY上げるときに必要な力を測定して,前進接触角と後退接触角を算出する方法で,界面活性剤の表面吸着や材料の浸透性,液体の湿潤性などの評価に有用である.湿潤性と快適性の明確な関連性は不明確であり,研究の方法や被験者の違い,環境要因などが影響している.湿潤性を測定する方法はいくつかあるが,臨床的に確立されたものはまだなく,さらなる研究が必要である.非侵襲的な表面乾燥時間(non-invasiveCtearCbreak-uptime:NIBUT)はCCLの湿潤性を評価するためのもっとも一般的な方法の一つであるが,再現性に課題がある.CLへの涙液成分の付着は装用開始後数分で発生する可能性があり,これがCCL表面の湿潤性に影響を及ぼすことから,湿潤性を維持し,眼へのCCL装用中の快適さを長期間保つ必要がある.湿潤性の維持レンズ表面の湿潤性は装用中に変化し,快適性に影響を与える可能性がある.個々の要因,たとえば涙液組成,瞬目に伴う涙液の蒸発,眼表面温度,レンズの材質,装用時間,レンズ交換スケジュールなどが湿潤性に影響を及ぼす可能性がある.①ブリスターパック内の保存液:CLの湿潤性を向上させる方法の一つは,ブリスターパック内の保存液の表面張力を低減させる手法である.以前は緩衝剤が使用されたが,最近では各種界面活性剤が使用され,CL装用時の快適性向上に寄与している.しかし,保存液の表面張力,粘度,pHなどの物理的特性も湿潤性に影響を及ぼす可能性がある点に要注意である.②瞬目と涙液の蒸発:CLの湿潤性を保つ実用的な方法の一つは,瞬目頻度を適切に保つことである.瞬目は眼表面で涙液を均等に広げることによりレンズ表面の湿潤性を向上させる.高度な作業やデバイスの使用は瞬目頻度を減少させ,涙液の不安定性を引き起こす可能性がある.瞬目不全は症状を悪化させ,快適性に影響を及ぼす可能性がある.③湿潤液:CL装用者の眼の乾燥と不快感を緩和するために湿潤液が使用されるが,その効果は一時的である.涙液の状態改善のために点眼薬も使用される.これらはそれぞれ特性が異なり,CLの材料とも相互作用が異なる.また,CLの湿潤性に対する影響は個人差があり,効果判定まで数カ月かかることもある.涙液や粘膜の分泌を促進する薬剤もCCLの湿潤性向上に寄与する可能性がある.CLの湿潤性向上には,点眼薬の種類や成分,使用期間による効果の違いがあり,とくにヒアルロン酸ナトリウムを含む点眼薬が有益であることが示唆された.④レンズケア剤:レンズケア剤は消毒と洗浄,保存を目的とし,一般に抗菌薬,界面活性剤,緩衝剤,キレート剤,保存料を含む.SCLの場合,保存中にもレンズを湿潤させる必要がある.レンズケア溶液は,湿潤剤やCCLの特性によって異なる相互作用が生じる.研究によってその効果はCCLの湿潤性についても一致した結論はまだ得られていない.おわりに今回はCCLEARの第C3章の前半を要約し解説した.日本では湿潤液の使用の有無やレンズケア剤の種類など,いくつかの点で英国での事情とは異なることに留意しておく必要がある.とくに表1の国際標準化機構(ISO)によるCSCLの分類2)は,米国食品医薬品局(FDA)による含水性CSCLの素材別に分類したCFDA分類とは異なる点に注意を要する.ISO分類では一部素材の割合が異なるほか,FDA分類にはまだないグループⅤとそのサブタイプがある.このグループⅤにはシリコーンハイドロゲル素材が,シリコーンエラストマーとともに分類されている.文献1)WillcoxM,KeirN,MaseedupallyVetal:CLEAR-Con-tactlenswettability,cleaning,disinfectionandinteractionswithtears.ContLensAnteriorEyeC44:157-191,C20212)ISO18369-1:2017.Ophthalmicoptics-contactlenses-part1:vocabulary,Cclassi.cationCsystemCandCrecommen-dationsCforClabellingCspeci.cations.C2017.Chttps://www.iso.Corg/standard/66338.htmlC