———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSI原発閉塞隅角緑内障原発閉塞隅角緑内障あるいはその予備軍である浅前房,狭隅角眼は比較的眼軸の短い遠視眼や小眼球に高頻度に発症する.このような眼ではもともと隅角が狭いうえに,(1)相対瞳孔閉鎖,(2)プラトー虹彩形状が重なり,さらに(3)加齢による水晶体厚みの増加がいっそう隅角を狭細化し,最終的には隅角閉塞を生じ発症する.本症は中~高齢の女性に頻度が高く,さらに東アジア系人種で頻度が高い特徴がある.II原発閉塞隅角緑内障のわが国における頻度わが国においてこれまで行われた疫学調査には,日本全国を対象としたShioseらの1991年の報告2)と,Iwaseら(2004),Yamamotoら(2005)の多治見スタディ(2000~2001)1,3)がある.Shioseらの報告では全緑内障有病率は3.56%であり,そのうち原発閉塞隅角緑内障と診断された症例は0.34%であった2).多治見スタディでは全緑内障有病率は5%であり,そのなかで原発閉塞隅角緑内障と診断された症例は0.6%であった.なお,Shioseらの全国調査では参加者は40歳以上の成人で対象者16,078人中8,126人が受診し,受診率は50.54%であった.一方,多治見スタディでは40歳以上の成人の78.1%,3,021人が受診している.閉塞隅角の所見の判定はShioseらはvanHerick法で狭隅角眼をスクリーニングしその後,隅角鏡検査を行っはじめに多くの疾病の発症頻度,有病率には性差,年齢差だけでなく人種差や民族差,さらには同一民族においても地域差があることが知られている.たとえば,胃癌は日本において頻度が高く,大腸癌は欧米においてより頻度が高いことが知られている.眼科疾患に関して,加齢黄斑変性症は欧米では頻度が高く,成人の失明原因の主要な疾患であることはよく知られているが,一方で最近までわが国ではまれな疾患であったとされていた.しかし環境,特に食生活の欧米化や長寿社会の到来により,日本においても加齢黄斑変性症の頻度は急速に増加している.緑内障は房水の流出抵抗の機序から,開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2大病型に分類されているが,その発症頻度に民族差や人種差があることが報告されている.さらに開放隅角緑内障においても原発開放隅角緑内障の頻度と正常眼圧緑内障の頻度には明らかな人種差が認められることがこれまでの多くの疫学調査で報告された.特に,わが国においてはこの正常眼圧緑内障が諸外国に比べ際立って高頻度であることが2000~2001年に行われた多治見スタディにより証明された1).もう一つの病型である閉塞隅角緑内障に関してはどうであろうか.本稿では,これまでに報告された緑内障疫学調査を中心に各国における閉塞隅角緑内障の発症頻度の違いについてまとめてみる.(3)???*ShoichiSawaguchi,HiroshiSakai&YukoNakamura:琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野〔別刷請求先〕澤口昭一:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野特集●原発閉塞隅角緑内障のカッティングエッジあたらしい眼科24(8):987~992,2007日本人と原発閉塞隅角緑内障:PACGの人種差,地域差?????????????-????????????????????????????????:??????????????????????????????澤口昭一*酒井寛*仲村優子*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007ている.Becker-Sha?er分類で2度以下を狭隅角と分類し,grade1以下をclosedあるいはoccludableとしている.多治見スタディではスクリーニングは同様にvanHerick法で行い,vanHerick2度以下に関しては二面鏡で隅角を観察し,隅角を4分割して3象限以上の隅角線維柱帯色素帯が観察できない場合(Sha?er分類で2度以下の狭隅角)をoccludableangleと定義している.この結果,多治見スタディではvanHerick法でgrade2以下は4.5%(女性が6.5%,男性は1.9%)であった.このvanHerick分類で2度以下の4.5%のうち,Sha?er分類では69.8%がSha?er2度以下のoccludableangleであったとも述べている.この結果から,vanHerick法は臨床的には狭隅角のスクリーニングとして十分機能していることが改めて示された.Shioseらの報告を注意してみてみると,全体(全国平均)の原発閉塞隅角緑内障の頻度は0.34%であるが,北海道ではその頻度は非常に高く0.86%であった.それに対し受診率が高く,多治見市の住民に背景が近い愛知,山梨ではそれぞれ0.34%,0.32%であり,このことから国内においても原発閉塞隅角緑内障の発症頻度に非常に大きな地域差があることが推定された.ちなみに岩手のそれはその中間の0.49%であった.Shioseらの隅角所見の基準は多治見スタディのそれに比べ厳しく設定されており,一方,Yamamotoらの基準は最近の疫学調査の基準に沿っていることがこの差につながっている可能性がある.実際にYamamotoらはShioseらと同様の判定基準を用いた場合,多治見スタディにおける原発閉塞隅角緑内障の発症頻度は0.23%になると述べている.III原発閉塞隅角緑内障の人種差,民族差における発症頻度原発閉塞隅角緑内障の有病率はすでに述べたように人種,民族,さらには地域差があることが知られている.たとえば原発閉塞隅角緑内障はヨーロッパやアメリカの白人には少なく,南アフリカの黒人においてもその頻度は白人より若干高いものの低頻度の範疇に入ることが報告されてきた.ここではこれまでのおもな疫学調査の報告についてまとめる(表1).1.原発閉塞隅角緑内障が低有病率(0.5%以下)(1)アメリカのウィンスコンシン州の疫学調査4):43~84歳,5,925人の対象者で4,926人の受診.おもに白人で原発閉塞隅角緑内障は2名で,有病率は0.04%.(2)オーストラリアのメルボルンの疫学調査5):40歳以上,3,271人の参加者で受診率は83%.おもに白人(97%)で原発閉塞隅角緑内障は2名で,有病率は0.1%未満.(3)アメリカのアリゾナ州のヒスパニックの疫学調査6):40歳以上,4,774人の受診者で受診率は72%.原発閉塞隅角緑内障は5名で,0.1%の有病率.(4)南アフリカの黒人における疫学調査7):Zulu地方で行われた調査で,受診者は1,005人で受診率90.1%.原発閉塞隅角緑内障の有病率は0.1%未満.(5)南インド地方,TamilNaduにおける疫学調査8):40歳以上の5,150人が受診.原発閉塞隅角緑内障は0.5%.2.原発閉塞隅角緑内障の発症頻度が中等度(0.5~1.0%以下)(1)北イタリアの白人での疫学調査9):40歳以上の対象者5,816人中,4,297人が受診し,受診率は73.9%.全緑内障有病率5.0%のうち原発閉塞隅角緑内障の有病率は0.6%.ただし,Sha?ergrade1,2の狭隅角でも隅角閉塞の既往がない症例は開放隅角緑内障に分類.(2)東アフリカのTanzaniaで行われた疫学調査10):対象者3,641人中,3,268人が受診し,受診率は90%.全緑内障有病率は4.16%で,原発閉塞隅角緑内障は0.59%.注目すべきは診断基準が変わると有病率も変化するという趣旨が記載された.(3)シンガポールにおける中国系住民の疫学調査11):40歳以上の1,717人中,1,232人が受診し,受診率は71.8%.緑内障有病率3.2%のうち原発閉塞隅角緑内障は1%.(4)日本における疫学調査・多治見スタディ3):3,021人の住民の受診(78.1%の受診率)で,全緑内障有病率5%のうち原発閉塞隅角緑内障有病率は0.6%.(4)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007???3.原発閉塞隅角緑内障の発症が高頻度(1.0~2.0%)(1)北モンゴルにおけるモンゴル人の疫学調査12):40歳以上の住民1,000人中,942人が受診(受診率94.2%).原発閉塞隅角緑内障は14名で,有病率は1.4%.Occludableangleの頻度は6.4%〔PACG(原発閉塞隅角緑内障):1.4%+PAC(原発閉塞隅角症):1.9%+PACS(原発閉塞隅角疑い):3.1%〕であった.また原発閉塞隅角緑内障の14症例は全例,無症状であった.(2)南インドのハイデラバードで行われた疫学調査13):30歳以上の2,522人が受診し,受診率は85.4%.40歳以上に換算すると原発閉塞隅角緑内障の有病率は1.08%,原発閉塞隅角緑内障を含まないPACは2.21%.(3)グリーンランドのエスキモーの調査14):原発閉塞隅角緑内障は1.5%の頻度.疫学調査ではない.地域の病院受診者で原発閉塞隅角緑内障と診断された患者数と背景人口で推定された値.(4)南中国のリアン地方の疫学調査15,16):50歳以上の1,504人の参加(75.3%の受診率)で,全緑内障は3.8%,原発閉塞隅角緑内障は1.5%.注目すべきは全例に隅角鏡検査を施行し,PACSは11.0%,PACは2.4%.4.原発閉塞隅角緑内障の発症がきわめて高頻度(2.0%~)(1)北西アラスカのエスキモーでの疫学調査17):2,500人の対象者で受診者は1,923人,受診率は84%(内1,686人のエスキモーが検討対象).40歳以上の2.65%が原発閉塞隅角緑内障.Occludableangleは全体では2.8%だが,50歳以上では17%に達する.(2)南アフリカ,西ケープタウンのMamre地区の疫学調査18):40歳以上の1,194人中,987人(受診率82.7(5)表1閉塞隅角緑内障の有病率人種/民族報告者報告年国・地方対象年齢(歳)受診者数(受診率)PAC(PACS)AACGPACGアジアShiose2)1991日本40~8,126(50.5%)男性0.64%女性1.79%─0.34%Yamamoto3)2005日本多治見40~3,021(78.1%)1.3%(3.4%)─0.6%Foster11)2000シンガポール中国系40~1,232(71.8%)─61%Foster12)1996モンゴル40~942(94.2%)(6.4%)21.4%Dandona13)2000南インド30~2,522(85.4%)2.21%─1.08%He15)2006中国50~1,504(75.3%)2.4%81.5%Salmon18)1993南アフリカインド系混血40~987(82.7%)(9.0%)02.3%Ramakrishnan8)2003南インド40~5,150──0.5%ヒスパニックQuigley6)2001アリゾナ州40~4,774(72%)──0.1%白人Wensor5)1998オーストラリア─3,271(83%)──0.06%Boromi9)1998イタリア40~4,297(73.9%)──0.6%Klein4)1992ウィスコンシン州43~844,9260.9%20.04%黒人Rotchford7)2002南アフリカZulus1,005(90.1%)──<0.1%Buhrman10)2000東アフリカTanzania40~3,268(90%)──0.59%イヌイットArkell17)1987北西アラスカ40~1,923(84%)(17%)82.65%Cox19)1984アラスカ40~34,144(全住民)─422.12%Drance20)1973カナダ40~377──2.9%Alsbirk14)1971グリーンランド40~──1.5%PAC(PACS):原発閉塞隅角症(原発閉塞隅角疑い),AACG:急性閉塞隅角緑内障(症),PACG:原発閉塞隅角緑内障.———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007%)が受診.原発閉塞隅角緑内障の頻度は2.3%(定義は異なる,視神経・視野の障害は必須でない).Sha?ergrade1は9%.この地区はほとんどが南東アジア人種(南インド)およびその混血.(3)アラスカにおけるエスキモーの閉塞隅角緑内障の調査19):40歳以上の閉塞隅角緑内障患者(急性,慢性,間歇性,閉塞隅角眼を含めているが,視神経・視野障害の記載なし)から発症頻度を推定.有病率は2.12%.アラスカに住む34,144人のエスキモー住民のなかで閉塞隅角緑内障の病歴・通院歴のある患者を調べた.(4)カナダにおけるエスキモーの閉塞隅角緑内障頻度20):40歳以上の377人の調査で原発閉塞隅角緑内障有病率は2.9%.視神経・視野障害は含まれない.眼圧上昇あるいはその既往のある患者のみ対象.IV同一民族,人種における原発閉塞隅角緑内障の発症頻度の地域差閉塞隅角緑内障の発症頻度にこれまでの報告から人種差,民族差があることは明らかである.しかしながら同一の民族や人種のなかでの地域的な差はあるのであろうか.ここではいくつかの同一民族あるいは人種で行われた調査の結果についてまとめてみる.(1)イヌイット:Dranceによりカナダにおけるエスキモーの原発閉塞隅角緑内障の発症頻度は40歳以上では2.9%と報告された20).アラスカのエスキモーではCoxは同様に2.12%と報告している19).Alsbirkはグリーンランドエスキモーは40歳以上の女性で2.1%,40歳以上の男性で0.9%,全体で1.5%であったと報告した14).しかしながら本格的な疫学調査として行われたArkellの北西アラスカの調査では原発閉塞隅角緑内障は2.65%の有病率が報告されており17),グリーンランドエスキモーを除いては2%以上の非常に高い有病率であることが改めて明らかとなった.(2)アフリカ黒人:黒人を比較した検討としてZuluとTanzaniaで行われている.南アフリカのZuluでは原発閉塞隅角緑内障の有病率はきわめて低く,0.1%未満で7),一方,東アフリカのTanzaniaでは中等度の発症頻度である0.59%であった10).(3)インド:南インドではTamilNadu7)では0.5%,ハイデラバード13)では1.08%であった.興味深い点は民族的に近縁の南アフリカ西ケープでは2.1%の有病率が報告された点である18).原発閉塞隅角緑内障の有病率が民族差ばかりでなく地域的な違いがあることが明らかである.(4)白人:一般に白人は原発閉塞隅角緑内障の発症頻度が低く,ほとんどの報告では0.1%以下である4).しかし北イタリアでの疫学調査では0.6%と報告されている9).地中海地方のラテン系の白人と北方のゲルマン,アングロサクソン系の白人では原発閉塞隅角緑内障の有病率に違いがあるかどうか,今後の検討が注目されている.(5)日本人:Shioseらの報告2)では日本全国の平均は0.34%である.注目すべきは北海道における原発閉塞隅角緑内障の発症頻度は0.86%であり,一方,熊本では0.12%と単純に比較しても約7倍程度北海道のほうが高頻度であった.多治見スタディ3)では原発閉塞隅角緑内障の頻度は0.6%であったが,これをShioseらの診断基準に準拠すると0.23%の頻度であったと述べられており,逆に多治見スタディの基準(新しい基準)で北海道の原発閉塞隅角緑内障の有病率を推計すると約2.24%となり,北海道はエスキモーと同程度の原発閉塞隅角緑内障の好発地域となる(もっとも現在の診断基準で判定すればエスキモーはいっそう高い有病率になることは疑いもない).V急性閉塞隅角緑内障の頻度急性閉塞隅角緑内障の発症頻度はその実数が比較的把握しやすく,精度も高いと考えられる.いくつかの報告を述べる.Arkellら17)の1,686人のエスキモーの調査では8人が急性発作を起こしていた.Coxの報告19)では住民34,144人のなかで42名が急性発作を起こしていた.モンゴルにおける調査12)では942人の受診者のうち原発閉塞隅角緑内障は1.4%であったが,急性閉塞隅角緑内障は2名であった.南アフリカMamreでの987人の調査18)では原発閉塞隅角緑内障は2.3%と高頻度であるにもかかわらず急性発作はいなかった.シンガポールの中国系人種1,232人のなかで急性発作は4名であった11).Heらの南中国地方では1,804人の受診者のうち(6)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007???8名が発作眼であった15).多治見スタディでは3,021人の受診者で8名が急性発作を起こしていた3).年間で人口比当たりの急性閉塞隅角緑内障の発症頻度に関しては,Erieらのミネソタでの検討(96%が白人)では年間10万人で3.6人の発症頻度であったと報告した21).Seahらはシンガポールで1年間の急性発作の頻度を前向き調査で行い,発症者数189人,計208眼であり,人口10万人に12.2の高頻度であり,特に中国系で有意に高頻度であったと報告している22).沖縄では年間約200人弱が発作を起こしていることがアンケート調査で推計されており(人口130万人),人口10万人に15.4の高頻度であった23).VI疫学調査の問題点東アフリカのTanzaniaにおける緑内障の疫学調査で,それまで原発閉塞隅角緑内障の頻度が低いと考えられてきたアフリカの黒人で0.59%とかなり高い発症頻度が報告された.そのなかで著者らはこの結果について緑内障の有病率や病型は診断基準にかなり影響を受けると述べている.一方で,開放隅角緑内障の頻度はアフリカ系のアメリカ人であまり大きな変化がなかったとも記載している.緑内障の診断基準はFosterらにより2002年に定義され,閉塞隅角緑内障においてもその詳細が記載された24).これ以降は最近の疫学調査で用いられている原発閉塞隅角緑内障の分類,すなわち,PACS,PACとPACGの概念が用いられている15,16,24,26).この定義でFosterらは東アジア人種のなかで,中国系シンガポール人およびモンゴル人でoccludableangle(PACS)の頻度,周辺虹彩前癒着の頻度,およびGON(視神経障害)の有無との関連を報告した25).閉塞隅角緑内障の病因については初めに示したように相対瞳孔閉鎖とプラトー虹彩形状が関与し,最終的には白内障の進行(水晶体厚みの増加)が引き金となり発症する.しかしながらプラトー虹彩形状に関してはこの定義では触れられていない.今後,原発閉塞隅角緑内障を定義する際に考慮する必要がある.特にこれまでの多くの疫学調査における隅角検査は細隙灯顕微鏡検査で周辺前房が狭い対象のみ(vanHerick2度あるいは1度以下)を隅角検査の対象としており,プラトー虹彩形状はその多くが見逃されている可能性もある.実際,モンゴルでの全例で隅角鏡検査を行ったFosterらの報告12)では,64人のoccludableangleのうち5名がプラトー虹彩形状であるとされた.南中国で同様に施行されたHeらの報告では,調査した50歳以上の1,330人のうち,狭隅角(PACS)が11%に観察され,そのうち10.1%がプラトー虹彩であったとしている16).多治見スタディではvanHerick法での狭隅角眼を対象として隅角鏡検査を行っており,そのなかで原発閉塞隅角緑内障と診断のついた症例にプラトー虹彩形状はなかったと報告された3).今後,緑内障の疫学調査は原発閉塞隅角緑内障の病態を考えた場合,病型を確定するうえで対象者全例に隅角鏡検査を行うことが求められる.疫学調査の対象者のなかに調査中に新たに緑内障と診断される症例が非常に多いことが明らかにされてきており,今後の疫学調査では受診者数と受診率はこれまで以上に非常に重要となってくる.多くの疫学調査では,開放隅角緑内障のみならず閉塞隅角緑内障に関しても病歴がなく,調査によって初めて診断されることが圧倒的に多いという事実がある.今後,これまでの報告に比べ閉塞隅角緑内障の有病率,さらにPACSやPACの有病率がいっそう高頻度となる可能性がある.おわりに緑内障の診断基準にGON(緑内障性視神経障害)という概念が不可欠なものであり,原発閉塞隅角緑内障についてもその概念,診断基準も含め多くの修正が行われた.緑内障疫学調査においては,この新しい閉塞隅角緑内障の診断基準の下に,病型を正確に判定するために隅角鏡検査を対象者全員に行うことが求められる.沖縄県は急性閉塞隅角緑内障の発症頻度が高く,この点からも多治見スタディに引き続き日本人における緑内障の病型別有病率を含めた地域差を検討するうえで疫学調査のフィールドとしては非常に適した地域と考えられる.沖縄県の有人離島である久米島町で2005~2006年に日本緑内障学会,久米島町役場の共催で行われた久米島スタディは,参加した対象者全員に隅角鏡検査を行っており,新しい診断基準と定義の下に行われた大規模な疫学(7)———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007調査である.多治見スタディとの比較,国際的なデータとの比較を通じて新たな閉塞隅角緑内障の疫学と病態の解明への発展が期待される.文献1)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryopen-angleinJapanese:theTajimistudy.??????????????111:1641-1648,20042)ShioseY,KitazawaY,TsukaharaSetal:EpidemiologyofglaucomainJapan─Anationwideglaucomasurvey─.????????????????35:133-155,19913)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:Tajimistudyreport2.Prevalenceofprimaryangleclosureandsecond-aryglaucomainaJapanesepopulation.?????????????112:1661-1669,20054)KleinBEK,KleinR,SponselWEetal:Prevalenceofglaucoma.TheBeaverDamEyeStudy.?????????????99:1499-1504,19925)WensorMD,McCartyCA,StanislavskyYLetal:TheprevalenceofglaucomaintheMelbourneVisualImpair-mentProject.?????????????105:733-739,19986)QuigleyHA,WestSK,RodriguezJetal:Theprevalenceofglaucomainapopulation-basedstudyofHispanicsub-jects.???????????????119:1819-1826,20017)RotchfordAP,JohnsonGJ:GlaucomainZulus:apopula-tion-basedcross-sectionalsurveyinaruraldistrictinSouthAfrica.???????????????120:471-478,20028)Ram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