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レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症-国内外の状況

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS数の約50%に及んでおり,本調査の結果は十分わが国の現状を反映していると推測された.なお,今回のスタディでは,以前に角膜移植の既往がある例(再移植)は検討に含めず,角膜内皮機能に影響を及ぼす因子が複数ある場合には,そのなかで主要と思われるものを原因とした.すなわち,たとえばLIに先立ってあるいはその後に白内障手術を行い,それによる内皮障害が大きかった例や,滴状角膜などで術前から内皮機能が強く障害されていた例は含まれていない.この全国調査の結果,3年間で報告されたBK症例数は963眼で,同期間の角膜移植全体の24.2%を占めていた.今回は,他の原因による角膜移植については調査をしていないため比較はできないが,BKが角膜移植の主要原因の一つであることは疑いがない.BKの主要原因は,数が多かった順に,白内障術後,LI,LI以外のはじめにレーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)術後の水疱性角膜症(bullouskeratopathy:BK)は,わが国では近年,大きな話題となっているものの,世界的にみるとそれほどでもない.文献検索をしてみても,これまでの同様な報告はほとんど1例もしくは数例の症例報告である1~5).欧米の眼科医と話しをしてみても,「例外的な事例だろう」「元から内皮障害があったのでは?」「レーザーの打ちすぎだと思う」といった反応ばかりでどうも話しがかみ合わない.わが国からの英文論文による報告も少数にとどまっている背景には,本疾患の存在そのものを疑問視する欧米の医師の見解が反映しているように思われる.本稿では,先ごろ日本角膜学会で行ったBKの全国調査の結果をもとに,わが国でのLI後BKの現状について述べたい6).併せて,これまでの報告と自験例のデータをもとに本疾患の臨床的特徴についても述べたい.I水疱性角膜症の全国調査日本角膜学会では,角膜移植の原因としてBKが増加していることに注目して,その現状を調査するためのスタディグループを2002年に立ち上げた.グループのメンバーが作成したアンケートを,角膜学会会員が所属する施設に配布して集計した.アンケートの回答が得られたのは86施設で全体の約20%であったが,それらの施設で施行された角膜移植件数は,同じ期間の全国施行件(3)???*JunShimazaki:東京歯科大学市川総合病院眼科〔別刷請求先〕島?潤:〒272-8513市川市菅野5-11-13東京歯科大学市川総合病院眼科特集●レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!あたらしい眼科24(7):851~853,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症─国内外の状況─????????????????????????-???????????????????????????島?潤*図1水疱性角膜症の原因(文献6より改変)白内障術後428その他83他眼疾患41佐藤氏法15分娩時外傷Fuchs変性症18硝子体手術21緑内障26外傷40緑内障手術51(単位=眼)LI225———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007緑内障手術,外傷,緑内障,ビトレクトミーであり,内眼手術を契機に発症したものが多かった(図1).欧米で主要原因にあげられるFuchs角膜変性症は,わが国では約2%を占めるにすぎず,BK原因が国や人種によって大きく異なることが示された.IILI後BKのプロフィール今回報告されたLI後BK(LI-BK)は,225眼とBK全体の23.4%を占めていた.患者の平均年齢は,71.7±7.8歳であり,184眼(81.8%)が女性であった.高齢で女性に多いという特徴は,狭隅角緑内障の患者背景を反映してのものと考えられた.LI施行から受診までの期間は,2カ月~20年(平均6.8年)と広範囲にわたっていた.既往症としては,糖尿病を有するものが13眼,虹彩炎が2眼含まれていた.IIILI施行の目的と条件LIの施行目的は,137眼(60.9%)で明らかであった.そのうち,急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)発症時に施行されたものは69眼と,約半数を占めていた.緑内障発作の他眼に施行されたものは17眼(12.4%)であり,残りの37.2%は,狭隅角眼(angleclosure)に対して予防的に施行されたものであった(図2).適応が明らかに記載されていなかった例の多くも,予防的な目的でLIが施行された例と推測され,過半数が緑内障を発症していない例に行われたものであると考えられた.LIの施行条件が明らかとなったものは,50眼(22.2%)に留まっていた.これは,LIの施行施設とBKの治療を行った施設が異なる場合が多かったことと,LI施行後の経過が長く,情報が残っていない例があったためと推測された.使用レーザーが明らかとなった例の大半(96.0%)でアルゴンレーザーが用いられており,YAGレーザー単独,あるいはアルゴンとYAGレーザーが併用されていたものは2眼にすぎなかった.LIの照射エネルギーの内容が明らかな16眼のうち,10J未満のものが8眼,10~20Jが5眼で,3眼が20J以上であった.多くの照射を必要としたものの大半は,緑内障発作時にLIが施行されていた例であった.日本人の大半を占める茶色~黒茶色の虹彩では,LIは100~300発の照射で完成するとされている7).今回の症例では,やや照射数の多い例も含まれていたが,全体としては過剰照射が明らかな原因とはいえない結果であった(表1).IVLI-BKの治療と予後LI-BKに対しては,大多数で角膜移植が行われており,特に全層角膜移植と白内障手術(典型的には水晶体?外摘出術+眼内レンズ挿入)の,いわゆるトリプル手術が行われていたものが195眼(86.7%)と多数を占めていた(図3).最終観察時での角膜透明治癒率は81.3%であり,同時に調査が行われた他の例によるBKよりも,その予後はむしろ良好であった.また,矯正視力が2段階以上向上した例が76.4%,不変(1段階の改善も含む)が4眼であった.視力不良例の原因としては,表2のようなものがあげられた.全層角膜移植後に緑内障(4)表1LI-BK症例でのレーザー照射数レーザー照射数(発)眼~3006301~5003501~1,00051,0013緑内障発作時69眼不明88眼予防的(狭隅角)51眼緑内障発作の僚眼17眼図2LI施行原因PKP+IOL縫着PKPと水晶体摘出(+IOL)不明PKP+ICCEPKPのみPKP+ICCE+ACIOL図3LI-BKの手術法の内訳———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???を認めた例は10.1%,拒絶反応,感染例は各々8.0%,2.2%であり,これも白内障術後など他の原因によるBKと比べて比較的良好な結果であった(表3).LI-BKの予後が比較的良好であることは,他施設の報告でも指摘されている.トリプル手術による虹彩と角膜の位置関係などの解剖学的変化が関係する可能性も考えられた.VLI-BKの頻度についてLI-BKが近年増加していると考えられることは,いくつかの発表がなされている.筆者らの施設で治療を行った自験例を,過去15年間さかのぼって調査をしたところ,2000年代に入ってから著明にLI-BKの割合が増加していることが確認された,LIによるBKが,どのくらいの頻度で生じるのかについては,直接的な調査がむずかしい.その理由は,厚生労働省から発表されるデータからは,LIのみの施行件数は明らかでなく,網膜光凝固を含めた例数が発表されているにすぎないためである.筆者らは,LIと網膜光凝固の年間施行件数を複数の施設で調べ,この両者の施行件数の比を調べ,そこからLI-BKの発症頻度を計算した.その結果,LI施行後のBK発症の頻度を約1.8%と推計した(未発表データ).LIの施行件数については,施行施設や地域によってかなりの差があることが予想され,正確な頻度の推計にはさらに大規模な調査が必要であると考えられた.おわりに初めに述べたように,LI-BKはわが国での発症例が他国に比べて圧倒的に多い.急性閉塞隅角緑内障,および狭隅角の頻度は,欧米に比べてアジア人で著明に高い.LI-BKの頻度の差は,LI施行件数の違いに起因するところが大きいと思われる.ところで他のアジアの眼科医と話しをすると,限定された角膜専門医のところでは,同様の症例が少しずつ経験されているようである8).わが国と他のアジアの国々とのLI-BK発症率の違いは,おそらくレーザーの普及率と,それに伴ったLI施行例数の差によるところが大きいと推測される.今後経済の発展に伴って,アルゴンレーザーを所有する施設が増えることで,わが国が経験したLI-BKの増加が,他のアジアの国でもくり返される可能性は十分ある.LI-BK発症のメカニズムとその予防策の解明は,こうした意味でも焦眉の急と考えられる.文献1)JengS,LeeJS,HuangSC:Cornealdecompensationafterargonlaseriridectomy─adelayedcomplication.????????????????22:565-569,19912)SchwartzAL,MartinNF,WeberPA:Cornealdecompen-sationafterargonlaseriridectomy.????????????????106:1572-1574,19883)WilhelmusKR:Cornealedemafollowingargonlaseriri-dotomy.???????????????23:533-537,19924)WuSC,JengS,HuangSCetal:Cornealendothelialdam-ageafterneodymium:YAGlaseriridotomy.??????????????????????31:411-416,20005)ZabelRW,MacDonaldIM,MintsioulisG:Cornealendo-thelialdecompensationafterargonlaseriridotomy.????????????????26:367-373,19916)ShimazakiJ,AmanoS,UnoTetal:NationalsurveyonbullouskeratopathyinJapan.??????26:274-278,20077)桑山泰明:レーザー虹彩切開術.眼科診療プラクティス(丸尾敏夫,本田孔士,臼井正彦,田野保雄編),Vol.3,レーザー治療の実際,p150-154,文光堂,19938)LimLS,HoCL,AngLPetal:Inferiorcornealdecompen-sationfollowinglaserperipheraliridotomyinthesuperioriris.???????????????142:166-168,2006(5)表2術後視力不良の原因不明20眼緑内障10眼拒絶反応8眼内皮機能不全4眼感染3眼角膜ヘルペス2眼Primarygraftfailure1眼混濁1眼表3BK全体,白内障術後BK,LI-BKの患者背景と予後原因眼数平均年齢(歳)手術例でのPKPのみの割合(%)拒絶反応発生率(%)術後眼圧上昇(%)透明治癒率(%)BK全体96368.8±12.351.610.815.575.6白内障42871.7±11.070.310.916.977.3LI22571.7±7.810.48.010.181.3(文献6より改変)

序章:レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!

2007年7月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(1)???Quigleyにより考案されたレーザー虹彩切開術は,非観血的かつ簡便な手技として,数多くの緑内障発作患者,あるいは発作予備軍を救済してきた.その大きな社会的貢献については多言を要さないが,一方で,角膜内皮障害という予期せぬ合併症を生むことにもなった.Quigleyの発表からわずかに5年後の1984年,Pollackによりレーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の1例が紹介されたが,その後の1988年には,Schwartzによって多数例が報告され,アルゴンレーザー虹彩切開術と角膜内皮障害との関連は動かしがたいものとなった.革新的な手術手技に予知不能な合併症はつきものではあるが,アルゴンレーザーを主体に行われてきたレーザー虹彩切開術も決してその例外ではなかったのである.以来,レーザー虹彩切開術後の角膜内皮障害の報告が相次ぐこととなる.特に,わが国における発生数は世界的にみても突出しており,最近では,角膜移植患者の原因疾患の第二位を占めるなど,大きな問題となっている.欧米との差を人種差(メラニン色素の違い)に求める考え方もあるが,他方,YAGレーザーを用いた虹彩切開術が主流を占める近隣の韓国あるいはシンガポールなどでは特に大きな問題とはなっていない.本特集では,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の国内外の状況について,島?潤先生(東京歯科大)が詳述している.また,この差異が,わが国におけるレーザー切開術施行例の圧倒的な数の多さに起因するかについては,コントロールされた疫学データがない点で結論は得られていない.レーザー虹彩切開術が必要以上に行っていないか?その適応と限界を緑内障専門医の立場から近藤雄司・山本哲也両先生(岐阜大)が論じている.さて,角膜内皮障害の発生メカニズムに関してはいくつかの考え方がある.その第1は,レーザー切開術の施行前から存在する要因に基づくもので,糖尿病,滴状角膜やFuchs角膜変性症などの角膜内皮異常があげられる.ただし,これらは発生メカニズムというより,むしろ角膜内皮障害を持続あるいは増幅させる危険因子である.ここでは,角膜専門医の立場から,レーザー虹彩切開術の適応と限界について,宇野敏彦先生(愛媛大)が解説する.第2は,術直前あるいは直後の要因に基づくものである.これには,急性緑内障発作に伴う低酸素環境,アルゴンレーザーによる過剰照射などがあげられ,術後に内皮細胞数を急激に減少させると考えられる.影響は一過性であるため,持続的な内皮障害メカニズムとはならないが,内皮細胞の残存数を低下させることによって,水疱性角膜症の発症時期を0910-1810/07/\100/頁/JCLS*YuichiOhashi:愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)●序説あたらしい眼科24(7):849~850,2007レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症を解剖する!???????????????????????????????????????????????????????????????大橋裕一*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007早める可能性がある.その代表として,「過剰凝固説」を妹尾正先生ら(独協医大)が解説する.第3は,術後も持続する要因に基づくものであり,多くの説が含まれる.大きくは,慢性炎症派と房水動態異常派に分かれるが,前者に属する「血液・房水柵破綻説」を東原尚代先生(京都府立医大),「マクロファージ説」を山上聡先生ら(東京大)に,後者に属する「房水ジェット噴流説」を山本康明先生(愛媛大),「内皮創傷治癒説」を加治優一先生ら(筑波大)にお願いした.以上のように諸説はあるものの,実際のところは,単一のメカニズムのみですべての臨床的事実を説明するのは困難である.たとえば,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症のなかにはかなりの年月を経てから発症する晩発性のものや,レーザー照射部位とは無関係な下方周辺部角膜から角膜浮腫を発症する例が含まれるが,これを「過剰レーザー照射説」だけでカバーするのはむずかしい.また,「慢性炎症説」の場合には,全層角膜移植後の移植片の予後が比較的順調である点や白内障手術のみで角膜内皮減少が停止する点が矛盾する.また,YAGレーザーでは生じにくい点,比較的大きな切開孔でも生じうる点は「房水動態異常説」の弱点である.結論的には,上記の各要因が相加的に作用し,限られた症例のみに水疱性角膜症が発症するのではないかと想像される.締めには,レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症に対する角膜移植の問題点と対策について,木下茂先生(京都府立医大)からそのこだわりを解説していただいた.わが国に特異的な合併症であるとはいえ,角膜内皮障害の発生機序をめぐって,これだけ大きな論争を巻き起こした疾患は近年なかったといってよい.この特集を通じて,専門家のホットな議論に触れていただければ幸いである.(2)

読者からの手紙

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1読者からの手紙あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS?読者から貴誌「あたらしい眼科」24巻1号(p107-110)の原著「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」1)を大変興味深く拝読いたしました.結果のコントラスト感度に関する記述と図1および2の表現に矛盾が認められる.結果の記述(Ⅱ結果の最終行から前3行分)では5mm群が6mm群に比してコントラスト感度が低いとあるが,図1および2のコントラスト感度の結果は矛盾し,5mm群で術後高くなっている.縦軸のスケールは,コントラスト感度なのかコントラスト閾値なのか?また,その数値は特別に変換した値なのか?縦軸がコントラスト閾値(あるいは感度)としても,その数値は腑に落ちない値である.コントラスト感度(あるいは閾値でも)であれば,縦軸の下限の値はゼロではなく1となるべきである.なお,コントラスト感度(あるいは閾値)を対数値(常用対数のべき指数)で表示する場合は,下限の値はゼロとなる(図1).通常コントラスト感度の表現には,横軸に空間周波数(cycles/degree),縦軸にコントラスト感度(コントラスト閾値の逆数)を両対数スケールで表示するのが一般的である2).この研究では,コントラスト感度測定装置としてタカギセイコーのCGT-1000を使用したとある(「Ⅰ対象および方法」の最後から前7行目~)が,視標として正弦波状の縞視標ではない特殊な同心円状のリング視標を用いているため,横軸の空間周波数の代わりに視標視角(degofarc)を使用し,縦軸にはコントラスト閾値を用いているはずである.表1の瞳孔径の結果については,どのような状態での値なのか?術前における明所での瞳孔径検査であれば,平均瞳孔径が6mmを超える対象に5mmのPIOL(Artisan有水晶体眼内レンズ)を挿入するのは無理があると思われる.PIOLの位置異常(偏心や傾き)がないとしても,明所でも瞳孔径が光学径を超えており,薄暮や暗所では,さらにその開きが大きくなることは必然である.今回の測定はグレアオフの条件で実施されているため,PIOLの光学径よりも瞳孔径が大きくなっても,良好な中心視力が得られていたものと考えられるが,コントラスト感度への影響は無視できなくなる.また,周辺視への影響やグレア・ハローの影響はさらに大きくなるものと思われる3).グレア光源をオンにすると,瞳孔径は縮瞳するためレンズエッジなどによるグレア・ハローの影響は少なくなり,コントラスト感度も上昇する.眼内レンズ径5mmに相当する角膜面上での光学領は約5.7mmに,6mmレンズでは約6.8mmに相当するため(入射瞳径に相当),LASIK(laser???????ker-atomileusis)などの角膜屈折矯正手術を行う場合には,眼内レンズ径よりも相当大きな切除域(あるいはopticalzone)が必要となる4,5).その意味で,PIOLは光学径の大きさから考えて有利である.今回の記述あるいは図が誤りであれば,もちろん著者の責任ではあるが,査読段階でも指摘できたはずである.改善を期待するとともに貴誌の発展を祈ります.魚里博北里大学大学院医療系研究科眼科学・視覚情報科学(107)本誌24巻1号に掲載の原著論文,「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」について空間周波数(cycles/degree)高低コントラスト縞幅大小コントラスト感度Contrastsensitivityfunction(CSF)可視領域(白色部)不可視領域(グレー部)視力限界視力1.00.0010.11.030(0.01ゼロではない!30図1コントラスト感度の結果表示例———————————————————————-Page2読者からの手紙???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007文献1)土田展生,辻一夫,荒井宏幸ほか:Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響.あたらしい眼科24:107-110,20072)魚里博:低コントラスト視力.????????15:200-205,20013)魚里博,清水公也:屈折矯正の実際とプロセス(水流忠彦監修),金原出版,19984)魚里博:瞳孔不同の眼光学的考察.神経眼科10:89-92,19935)UozatoH,GuytonDL:Centeringcornealsurgicalprocedures.???????????????103:264-275,1987?著者よりの返事このたびは原著「Artisan有水晶体眼内レンズの光学径の違いが視機能に与える影響」について,貴重なコメントをいただきましてありがとうございました.ご指摘のとおり,図1,2のコントラスト感度の数値の違い,表1の瞳孔径の詳細な記載につき不備がありました.それに伴い図1,2につきましては,「コントラスト感度に関する図1および図2の表現ですが,ご指摘のごとく縦軸の記載を訂正させていただきます.0.0,2.0,4.0,6.0,8.0,10.0,12.0は,下から順に1.0,3.12,6.25,12.5,25,50,100と訂正させていただきます.瞳孔径ですが,カルバードピューピロメーターを使用しており,暗所視状態の瞳孔径を測定しております.表1では暗所視状態で瞳孔径に両群間において有意差がないことを示しております.土田展生公立昭和病院眼科むずかしい統計がよくわかる!眼科での新薬開発の臨床治験データを例に解説!統計学米虫節夫(近畿大学農学部教授)【編著】寺嶋達雄(参天製薬株式会社臨床開発本部)・榊秀之(千寿製薬株式会社前臨床グループ)【著】A4変型総172頁図表243点定価(本体6,000円+税)Ⅰ序説1.症例報告から法則性の発見へ/2.臨床試験実施時のポイント/3.統計解析ソフトについてⅡデータのまとめ方1データの4尺度/2誤差の4条件/3中心的傾向の示し方/4ばらつきの数量的示し方/5ヒストグラムと分布Ⅲ検定と推定の考え方1計量値の分布:正規分布/2検定と推定の考え方/3母平均に関する検定と推定Ⅳ2つの平均値の比較12つの平均値に関する検定と推定(パラメトリック法)/22つの平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅴ3つ以上の平均値の比較13つ以上の平均値に関する検定(パラメトリック法)/23つ以上の平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅵ計数値1計数値の分布/2計数値に関する検定と推定Ⅶ多重比較13つ以上の平均値に関する多重比較-多重比較の考え方-/23つ以上の平均値に関する多重比較(パラメトリック法)-分散分析後の検討-/33つ以上の平均値に関する多重比較(ノンパラメトリック法)-KruskalーWallis検定後の検討-Ⅷ2つの変量間の関係1相関分析/2単回帰分析Ⅸ練習問題(問題1~11)【付録】統計的方法に関するJISとISOの動向■内容■医学におけるわかりやすい〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-0-69315電話(03)3811-0544メディカル葵出版株式会社(108)———————————————————————-Page3読者からの手紙あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007????読者から貴誌2007年Vol.24,No.2,249-252に掲載された谷口香織氏らの論文「光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例」1)を興味深く拝読させていただきました.われわれの論文を引用していただいており谷口氏らに感謝いたします.内容の一部について確認したい箇所があり,筆を取った次第です.論文で紹介されている症例はstage3の黄斑円孔とされています.「はじめに」の部分でGass分類について触れているので,いわゆるGass新分類2)を用いたのではないかと考えますが,明確な引用の記述はなく,また,参考文献にもありません.井上らの論文3)でも紹介されているようにGass新分類では,Weissringのない全層黄斑円孔はstage2またはstage3であり,両者の違いは円孔径の違いです.円孔径400?m未満であればstage2,400?m以上であればstage3に分類されるはずです.Gassの新分類を用いているのであれば,今回の2症例ともWeissringがなく円孔径が400?m未満であることから,stage2になります.(「考按」で引用されているTaday-oniらの論文4)自体がGass新分類を正確に用いておらず,OCT所見を加えて分類しています.)症例の分類は論文の根幹をなす部分であると考えますので,著者に確認していただけたら幸いに存じます.今澤光宏山梨大学医学部眼科学教室文献1)谷口香織,福島聡,三井あやほか:光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例.あたらしい眼科24:249-252,20072)GassJD:Reappraisalofbiomicroscopicclassi?cationofstagesofdevelopmentofamacularhole.???????????????119:752-759,19953)井上由希,中馬智巳,中島秀樹ほか:Stage分類を用いた特発性黄斑円孔の手術予後の検討.臨眼60:2055-2058,20064)TadayoniR,MassinP,HaouchineBetal:Spontane-ousresolutionofsmallstage3and4full-thicknessmacularholesviewedbyopticalcoherencetomogra-phy.??????21:186-189,2001?著者よりの返事われわれの論文1)での症例における黄斑円孔の分類についてご指摘をいただき,どうもありがとうございました.先生のご指摘のとおり,今回報告させていただきました2症例は円孔径が400?m以下であり,Gassの新分類2)に従えばstage2になります.しかし論文でも引用していますように,われわれはGassの旧分類3)に準じて今回の2症例の黄斑円孔はstage3と分類いたしました.円孔径は小さいですが,OCT所見では両症例ともに円孔周囲で後部硝子体?離が起こっており,旧分類のstage3であることが確認されています.Gassの新分類については,矛盾点も指摘されており4),今回もあえて旧分類を用いております.今回の報告の趣旨は黄斑円孔周囲で後部硝子体?離が起こっていても,円孔径が小さい症例では自然閉鎖することがあり得るという点であり,後部硝子体?離の観点からするとstage3と分類したほうが妥当であると考えます.谷口香織名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学文献1)谷口香織,福島聡,三井あやほか:光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例.あたらしい眼科24:249-252,20072)GassJD:Reappraisalofbiomicroscopicclassi?cationofstagesofdevelopmentofamacularhole.???????????????119:752-759,19953)GassJD:Idiopathicsenilemacularhole.Itsearlystagesandpathogenesis.???????????????106:629-639,19884)KishiS,TakahashiH:Three-dimentionalobserva-tionofdevelopingmacularhole.????????????????130:65-75,2000(109)本誌24巻2号に掲載の原著論文,「光干渉断層計で経過が追えた自然閉鎖した特発性黄斑円孔の2症例」について

眼科医にすすめる100冊の本-6月の推薦図書-

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS僕たちは“エビデンスに基づいた正しい医学”を展開していると信じている.自分のやり方と違う方法を見たり聞いたりすると“あれはおかしい.何を考えているんだ!”ということになる.しかしこの考えは正しいのだろうか?自分が正しいと信じているその根拠は何だろう?この本はのっけから“飛行機が飛ぶ原理は実はわかっていない”という衝撃的な話から始まる.中学生のときにこれを勉強して自分なりに理解していたと思っていた僕はとても驚いてしまった.翼にぶつかった空気は上と下に分かれて流れていくが,上のほうが曲がっている分(図1),後ろで合流するためには上の空気がたくさんの距離を流れなければならず,よって空気の密度が低くなり,気圧が低くなる.よって翼は上の方へ押し上げられる.これが揚力である.この揚力で飛行機は飛ぶ,というのが理論だ.しかしながら,翼にあたった空気が翼の後ろで合流するという証拠はなく(実際に合流はしないそうである),その他の理論を用いても,どうして飛行機が飛ぶのか明瞭には証明できないのだという.これは驚きだった.さらに歴史的な事実として,宇宙の理論が天動説から地動説に変わったことを例にとり,いかに世界の常識がその時代時代によって変わっていくものなのかを説明している.確かに昔は天動説だった.当時の人々はみんな地球のまわりを星がまわっていると信じていたということは学校で習った.それがコペルニクスやケプラーによって,天動説がでて,さらに軌道は楕円形であることなどがわかってくるのだ.そして現在も,さまざまな新しい仮説が誕生しているという.現在,正しいと思われているものは“その時代においてほとんどの人がそのように考えている仮説にすぎない”というのが本書の大きなメッセージである.医学の歴史のなかでもてんかん発作に対して行われた悪名高いロボトミー手術は,1949年にこの手術の治療的価値を発見したことによって,ノーベル生理学・医学賞をとったエガス・モニスというポルトガル人によって普及された.当時は画期的な方法としてみんなが最善の手術と信じていた.それが正しいと信じられていたからこそノーベル賞まで受賞したのだ.しかし現在ではご存知のようにロボトミーで前頭葉を破壊してしまうとその人の個性がなくなってしまうので人間の存在そのものを否定してしまう.絶対にやってはいけない手術となっている.眼科のなかでも僕が研修医だった30年前には“硝子体は触ってはいけないもの”という仮説が一般的だった.眼内レンズは異物なので入れてはいけないものだったし,近視の治療などは眼科医のやるべきものではなかった.今の眼科学では,硝子体手術はあたりまえ,眼内レンズは入れるのが常識,近視はLASIKで治るなど,仮説はどんどんと変化していくのがわかる.どうしても気の合わない人がいる.価値観がまったく異なる,なんていうこともある.これはどういうことなのか?著者の竹内薫氏によれば,それはその個人が持っている仮説が異なっているのでうまく合わないのだ,(105)■6月の推薦図書■99.9%は仮説思いこみで判断しないための考え方竹内薫著(光文社新書)シリーズ─74◆坪田一男慶應義塾大学医学部眼科図1飛行機の翼の揚力の解説図(「99%は仮説」より)空気飛行機の進行方向翼———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007ということになる.確かに“仕事は自分たちの成長のためにある”という仮説を持っている人と,“仕事は生活のためにお金を稼ぐ手段である”という仮説を持っている人では,患者さんへのサービス,職場の勉強会,超過勤務などについて話が合わないこともあるだろう.しかしこれらは,その人がいい人とか悪い人とかではなく,単に持っている仮説が違うからだと説明する.これはとても気分がいい仮説だ.とにかく何か問題があれば,仮説のせいにできるのだから.確かに竹内薫氏の言うように,みんなそれぞれ独自の仮説を持っている.人と違った変わった人は,ちょっと違った仮説を信じているにすぎず,もしかしたらその仮説のほうが真実に近いことだってあるかも知れない.今の医学会のなかにもたくさんの灰色仮説,黒い仮説が存在する.意見が合わない人がいた場合は“そうか,この人は私と違った仮説で動いているんだ”と思うのがいいようである.☆☆☆(106)JapaneseJournalofOphthalmologyの電子投稿・査読システム開設についてJJO編集委員会委員長三宅養三2007年6月1日よりJapaneseJournalofOphthalmology(以下JJO)は,電子投稿・査読システムの運用を開始いたしました.http://www.editorialmanager.com/jjoo/電子投稿・査読システム(EditorialManager?)導入後,論文の投稿・査読過程はすべてWeb上のシステムで行います.投稿した論文に関する情報はEditorialManager?にアクセスすれば,どこからでも確認することが可能です.今後,JJOへの投稿はEditorialManager?をご利用ください.日本語で操作方法をお読みになりたい方は,日本眼科学会のホームページをご覧ください.http://www.nichigan.or.jp/member/journal/jjo/index.jsp※5月末日までに投稿された方は,これまで通りの査読方法を行ってまいります.途中からWeb上に論文を載せることはできませんので,ご理解の程お願い申し上げます.

私が思うこと5.食いしん坊一家の休日の楽しみ

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???私が思うこと●シリーズ⑤(103)はじめに今年は年始早々胃腸を壊してしまい,食べられることのありがたさを再認識しました.ということで,今回は食をテーマに書かせていただきます.全員参加の家族料理私たち一家の休日の楽しみの一つに家族で料理をするということがあります.もともと家族一同食べるのが大好きで,いわゆる食いしん坊の一家なのです.以前,テレビ番組で日本一食いしん坊な県民は愛知県民と聞きましたが,わが家から類推する限りではなんとなくあたっている気がします.うちの料理などは質素なものですが,手作りの料理というのはやはり既製品とは違うおいしさがあるものですし,自分たちで作れば多少出来が悪くてもそこはご愛嬌で,実際以上においしく感じるものです.なにより料理を作るのは楽しいよ,ということで一家そろって料理を楽しんでいます.家族の会話も弾み,コミュニケーションにも一役買っています.こんなことになったのも,私の料理好きに端を発しているのでしょう.以前から料理を作るのが好きで,比較的よく台所に立っています.もっとも,男の料理というと大変凝った料理を作られる方が多いようですが(聞くところによれば某教授もなかなか凝った料理を作られるとか),私の場合どちらかというとあまり凝ったものは苦手で,お菓子類を除けば本当に普通の家庭料理が中心です.私の料理好きは子どものときからのもので,年季だけは入っています.小学校低学年のころから家の料理を手伝っていました.当時実家が青果商を営んでいたこともあり,食品に対する目もその当時に養われたように思います.テレビでも料理番組を欠かさず見ているような子でした.長ずるにつれだんだんに難しい料理やお菓子を作るようになり,高校のころには普通に家庭で食べるものはたいてい作れるようになりました.大学生のころは一人暮らしだったので時折自分で食事を作ることもありましたが,一人で自炊するのは何かと無駄も多く,思ったほどやりませんでした.結婚してからは妻と二人で台所に立つのが楽しくて,再びよく料理するようになりました.そして最近では家族全員で料理をするようになったというわけです.特にここ1年ほどは長女が料理好きになり,家族で料理をする機会が増えました.水上勉氏の「土を食う日々」に学んだこと話ががらっと変わりますが,私が大学生のときに水上勉氏の「土を喰う日々」という書物に出会いました.巻末に昭和53年12月に文化出版局から刊行されたとあり,私が今も持っているのは昭和57年8月に発行された新潮文庫版の初版本なので,おそらく私が大学1年生のころに手に入れたものと思われます.この本はコミック「美味しんぼ」でも紹介されたそうなので,読まれた方もあるでしょうが,ご存知でない方のために簡単にご紹介します.この作品は水上氏が軽井沢に家(仕事場)を持ち,仕事場の庭に畑を作ってこれを耕し,四季折々の旬の野菜を収穫し,さらには自ら料理するという(水上氏は少年のころ禅寺で修行したために精進料理にご堪能だったそうです)日常をエッセー風につづったものです.このエッセーには畑から生まれる野菜たちのみずみずしさと,それを思うままに料理し,味わいつくすさまが素朴な筆致ながら生き生きと描かれ,それだけでもすばらしいのですが,それに加えて食と料理を通じて,禅の心で人生の教訓を説いている点にまた感銘を受けま0910-1810/07/\100/頁/JCLS吉田宗徳(????????????????)名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学1988年京都大学医学部卒業,京都大学,市立岸和田市民病院,米国ハーバード大学スケペンス眼研究所,神戸市立中央市民病院などを経て2001年より名古屋市立大学講師.2003年より現職…と思ったら今年4月に助教授から准教授に役職名が変わってしまいました.専門は網膜硝子体疾患とぶどう膜炎.趣味は読書(娯楽もの中心),ウォーキング,その他もろもろ.歩くインドア派.(吉田)食いしん坊一家の休日の楽しみ———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007す.この本の中には曹洞宗を開いた道元禅師の「典座教訓」という古い書物がたびたび引用され,水上氏なりの解釈で解説を加えておられます.たとえば,「米を淘り菜等を調ふるに,自ら手づから親しく見,精勤誠心にして作せ.一念も疎怠緩慢にして,一事をば管看し,一事をば管看せざるべからず.功徳海中一滴も也た譲ること莫れ,善根山上一塵も亦積むべき袈歟」という道元禅師の言葉を「米を洗ったり,菜などをととのえたりする時,典座(禅寺の食事係のようなもの)は直接,自分の手でやらねばならぬ.その材料を親しく見つめ,こまかいところまでゆきとどいた心であつかわねばならぬ.一瞬とてなまけてはいけない.一つは見ていたが一つは見のがしていたということがあってはならない.功徳を積むことにかけては大海の一滴というべき小さなことでも,人まかせにしてはいけない.善根を積むことも,高い山の一個のチリほどのようなことでもなおざりにしないことだ.大海も滴の集まり,高い山も塵のあつまりではないか.」と解説してくれています(「土を喰う日々」より引用).私はこの言葉の典座を医師に置き換え,自分にとってありがたい教訓として肝に銘じています.ほかにもご紹介したいすばらしい言葉がたくさん書かれていますが,紙面の都合上ここまでにします.蛇足ですが,私なりの勝手な解釈を付け加えれば,食べるということは私たち人間にとって根源的に必要なことであって,その食べるということは決しておろそかにしてはならない.また,食べるということを真剣に考えることは私たちの生き方そのものを考えることに通じるということだろうと思います.私たちが食べさせていただいているということはほかの生きものや,さまざまなものの犠牲と多くの人や物のおかげの上に成り立っていることも忘れてはなりません.楽しみながら教育効果も話が回り道をしましたが,こんなことから家族で料理を作るのは子供の教育にもなると考えています.作るときは材料を無駄にしないように教えていますし,自分で作るようになってからは子どもたちが食べ物を残すことが減ったように思います.子どもとて,食事を作ることを人任せにしないで自分でやるようになれば,日ごろ三度三度の食事が取れることや,その食事を作ってもらえるありがたさがわかるのです.さらには食べる人に喜んでもらおうと一生懸命に工夫をして作ることは,人に対する優しい気持ちにつながっていくのではないかと思います.またこういう場面で役割を与えると,少々難しくても意外と子供はがんばるもので,なるべくそれぞれに責任を持ってやらせるようにしています.時に大変な結果に終わることもありますが.話が説教くさくなってしまいましたが,むろんこんなことを毎日考えているわけではありません.なんにせよ,家族みんなでわいわいと騒がしく作って,完成した料理を(時には完成前から?)奪い合いながら食べることが,わが食いしん坊一家の大きな楽しみであることは間違いありません.こんなことにささやかな幸せを感じている今日この頃です.皆様方もいかがですか?(104)図1家族で料理をしているところ私と次男と長女です.ちょっと演技っぽいですが,まあだいたいこんな雰囲気でやってます.妻は恥ずかしいからということで,長男は撮影者のため,その二人は写真には入っておりませんが,もちろん普段は参加しています.念のため.図2完成したクッキーを手にご満悦の長女見かけはともかく味は一級品?

硝子体手術のワンポイントアドバイス49.ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前嚢保存(初級編)

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに前回は,ガスタンポナーデ後の隅角癒着について述べたが,今回はその続編で,前?をリング状に温存することで隅角癒着を防止する方法について述べる.●ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前?保存増殖硝子体網膜症などの眼内増殖性疾患では,水晶体切除時に水晶体?もすべて除去するほうが,前部増殖性変化が発生しにくいとされている1)が,この方法では,ガスによって虹彩が角膜内皮面に圧排され,術後に閉塞隅角緑内障をきたすことがある(図1)(前号参照).この際に,水晶体?をリング状に残存させ,気圧伸展網膜復位術時に虹彩を前?側に癒着させることで,術後の隅角閉塞を防止することができる(図2a,b).気圧伸展網膜復位術後に角膜のサイドポートから前房内に人工房水を注入することで,容易にこの目的を達することができる.この際に重要なことは,必ず水晶体?の全周を確実に温存することである.リングが1象限以上にわたって欠損すると,その部分は角膜側に虹彩が癒着する危険性が高くなる.筆者らの報告では,前?保存群8眼では周辺部虹彩前癒着および続発閉塞隅角緑内障を生じた症例はなかったのに対して,水晶体?を全摘出した6眼では,5眼に周辺部虹彩前癒着を認め,そのうち3眼は続発閉塞隅角緑内障に進行した2).本法は,前?のみを残存させるので,周辺部硝子体は十分に切除可能で,術後の前部増殖性病変を惹起することは少ない.さらに前?を全部温存する方法もある3).この方法では虹彩と前?の癒着が少なく,角膜内皮保護や眼内レンズ二次挿入術の面では有利であるが,眼内のガスの量がやや少なくなるので,下方網膜のタンポナーデ効果がやや弱くなる.(101)文献1)LewisH,AabergTM,AbramsGWetal:Managementofthelenscapsuleduringparsplanalensectomy.????????????????103:109-110,19872)樋上泰成,佐藤文平,池田恒彦ほか:ガス注入眼における隅角癒着防止のための前?保存.眼科手術14:373-376,20013)MacCumberMW,PackoKH,CivantosJMetal:Preserva-tionofanteriorcapsuleduringvitrectomyandlensectomyforretinaldetachmentwithproliferativevitreoretinopathy.?????????????109:329-333,2002硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?49ガスタンポナーデによる隅角癒着防止のための前?保存(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1水晶体?を全摘出した場合ガスによって虹彩が角膜内皮面に圧排され,術後に閉塞隅角緑内障をきたすことがある.(文献2より)a.シェーマ図2水晶体?をリング状に残存させた場合水晶体?をリング状に残存させ,気圧伸展網膜復位術時に虹彩を前?側に癒着させることで,術後の隅角閉塞を防止することができる.(文献2より)b.術中写真

眼科医のための先端医療78.網膜中心動脈閉塞症への治療の試み -動脈内局所血栓溶解とNd:YAGレーザー血栓溶解,硝子体手術血栓除去

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに網膜中心動脈閉塞症(centralretinalarteryocclu-sion:CRAO)は心臓や頸動脈からの塞栓による網膜中心動脈(球後部)の血栓症で,cherry-redspotを特徴とする眼底所見をもちます.眼科のなかでは古典的な疾患で,眼科医であれば誰でも知っている疾患です.しかし,眼科治療が日進月歩であるのに対し,CRAOに対する治療法は確立されたものはありません.一方,網膜静脈閉塞症に対しては,組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissueplasminogenactivator:t-PA)の硝子体内投与,トリアムシノロンアセトニドのTenon?内投与や硝子体内投与,抗血管内皮細胞増殖因子抗体(抗VEGF抗体)であるアバスチンの硝子体内投与,硝子体手術による後部硝子体?離作製や内境界膜の併用などの治療が有効であるとの報告があります.本稿では,今までの行われてきた治療成績のレビューと,現在新たに行われている治療を紹介します.CRAOの予後と通常治療の効果Hayrehら1)は244例260眼を4群に分け,レトロスペクティブに検討しました.内訳は側頭動脈炎を伴わないnon-arteriticCRAO(NA-CRAO)が171眼,毛様体網膜動脈(cilioretinalartery)による回避があるNA-CRAOが35眼,一過性のNA-CRAOが41眼,側頭動脈炎を伴うCRAOが13眼でした.指数弁以下の視力であったが経過中に視力が改善した症例は,一過性のCRAOの82%,毛様体網膜動脈による回避があるNA-CRAOの67%,NA-CRAOの22%であり,閉塞するタイプによって視力予後が異なることを報告しました.Atebaraら2)は側頭動脈炎を伴わないCRAOに対する前房穿刺とCarbogen(95%酸素,5%二酸化炭素)の吸引の有効性を,治療を行った40眼と無治療群49眼で比較しました.発症24時間以内に来院した症例を治療群とし,24時間を超えて来院した症例は無治療群としましたが,2群間で有意差がみられず有効ではないと結論しています.Muellerら3)も眼球マッサージ,アセトゾラミドの内服,bブロッカーの点眼,前房穿刺とヘパリンの皮下注射などの最小侵襲治療法は自然経過と同じであると結論しています.局所動脈内血栓溶解術局所動脈内血栓溶解術(localintra-arterial?brino-lysis:LIF)は,Schumacherら4)によって1991年に報告された方法です.まず局所麻酔下で大腿部動脈より,内頸動脈と眼動脈分岐の近位端にカテーテル先端を挿入し,10分ごとに眼科医が眼底検査を行いながらウロキナーゼを約100万単位,もしくは組み換えt-PAの約50mgを1時間から2時間半かけて注入する治療です.Beattyら5)はLIFを行った既報(16の臨床報告)をまとめ,LIFを施行した100例のうち,最終視力1.0以上が14%,0.5以上が27%でしたが,0.05未満が61%あり,通常治療と比べて有効である可能性を示唆しました.Schmidtら6)はCRAO178例のうち,眼球マッサージや前房穿刺などの通常治療を行った116例とLIFを行った62例を比較検討し,LIF群で有意に視力が改善していたと報告しました.しかし,LIF施行群の年齢が若い傾向にあり,また発症から受診までの時間も短い傾向がありました.そこで,現在EAGLE(EuropeanAssess-mentGroupforLysisintheEye)studyという無作為前向き研究が進行中です7).この治療は放射線科との共同で行われなければなりませんが,全身的な合併症も多くはないとされ,今後の検討が待たれます.YAGレーザーによる血栓溶解Opremcakら8)は網膜動脈分枝閉塞症(branchretinalarteryocclusion:BRAO)に対して,血栓をNd:YAGレーザーで粉砕して,血流が改善し視力改善が得られた2例を報告しました.さらにFeistら9)は網膜中心動脈の分岐点に血栓がみられたCRAOの症例にYAGレーザーを行い,視力が指数弁から0.6に改善した1例を報告しました.BRAOに対してはこの治療は有効と考えられますが,血栓が少なくとも視神経乳頭上の網膜動脈内で視認されなければレーザーが施行できないといった(97)◆シリーズ第78回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊井上真(杏林アイセンター)網膜中心動脈閉塞症への治療の試み─動脈内局所血栓溶解とNd:YAGレーザー血栓溶解,硝子体手術血栓除去———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007症例の制限があります.硝子体手術による血栓除去Garcia-Arumiら10)は網膜動脈閉塞症(BRAOとCRAO)に対し,硝子体手術で網膜動脈を縦に切開し,動脈内の血栓を除去する術式の成績を報告しました(図1).7眼中6眼で血栓は摘出され,視力の中間値は0.05(手動弁~0.8)から0.5(手動弁~0.8)に改善しました.しかし,7眼中1眼に含まれたCRAOには,術前手動弁から術後手動弁と不変であり改善がみられてはいません.YAGレーザーの術式同様に視神経乳頭上に血栓が視認されねばならず,視神経内の網膜中心動脈内に血栓があれば治療のしようがありません.まとめ今後EAGLEstudyでLIFの有効性が確立されれば,どの場所に閉塞部位があっても治療の適応となるため,虚血?再灌流による組織障害は解決されていないものの,治療が広がる可能性があります.かつては脳梗塞などに対しては保存療法が原則とされてきましたが,血栓溶解療法が新鮮例に適応となったように同様の治療が眼科疾患に対しても広がってくる可能性があると考えられました.文献1)HayrehSS,ZimmermanMB:Centralretinalarteryocclu-sion:visualoutcome.???????????????140:376-391,20052)AtebaraNH,BrownGC,CaterJ:E?cacyofanteriorchamberpracentesisandCarbogenintreatingacutenon-arteriticcentralretinalarteryocclusion.?????????????102:2029-2034,19953)MuellerAJ,NeubauerAS,SchallerUetal:EuropeanAssessmentGroupforLysisintheEye.Evaluationofmin-imallyinvasivetherapiesandretionaleforaprespectiverandomizedtrialtoevaluateselectiveintra-arteriallysisforclinicallycompletecentralretinalarteryocclusion.???????????????121:1377-1381,20034)SchumacherM,SchmidtD,WakhlooAK:Intra-arterial?brinolysisincentralarteryocclusion.?????????31:240-243,19915)BeattyS,AuEongKG:Localintra-arterial?brinolysisforacuteocclusionofthecentralretinalartery:ameta-analysisofthepublisheddata.???????????????84:914-916,20006)SchmidtDP,Schulte-MontingJ,SchumacherM:Progno-sisofcentralretinalarteryocclusion;focalintraretinal?brinolysisversusconservativetreatment.?????????????????23:1301-1307,20027)FeltgenN,NeubauerA,JurkliesBetal;theEAGLE-StudyGroup:MulticenterstudyoftheEuropeanAssess-mentGroupforLysissintheEye(EAGLE)forthetreat-mentofcentralretinalarteryocclusion:designissuesandimplications.EAGLEstudyreportno.1.????????????????????????????????244:950-956,20068)OpremcakME,BennerJD:TranslumenalNd:YAGlaserembolysisforbranchretinalarteryocclusion.??????22:213-216,20029)FeistRM,EmondTL:TranslumenalNd:YAGlaserembolysisforcentralretinalarteryocclusion.??????25:797-799,200510)Garcia-ArumiJ,Martinez-CastilloV,BoixaderaAetal:Surgicalembolusremovalinretinalarteryocclusion.???????????????90:1252-1255,2006(98)図1硝子体手術による動脈内の血栓を除去する術式■「網膜中心動脈閉塞症への治療の試み」を読んで■今回は井上真先生(杏林アイセンター)による網膜中心動脈閉塞症(centralretinalarteryocclusion:CRAO)の最新の治療です.CRAOは眼科医であれば誰でも診断できる疾患ですが,なかなか治せない疾患です.病態研究をもとに局所動脈内血栓溶解術が考案され,成果をあげているというのは大変な技術の進歩です.t-PAによる治療は脳梗塞にも応用され,その治療成績を上げていることが知られていますが,問題─動脈内局所血栓溶解とNd:YAGレーザー血栓溶解,硝子体手術血栓除去─———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???(99)☆☆☆は眼科にしろ脳外科にしろ技術に裏打ちされた確かな診断というか適切な臨床的な判断をする能力が大切であるということです.また,眼底検査で血栓が視認されればYAGレーザーや硝子体手術で血栓を除去またはより末?側に移動させることにより視力予後の改善を図ることができるという治療も魅力的です.眼科の救急疾患として,眼球マッサージによる血栓の移動や前房穿刺による眼圧を降下させ灌流圧を確保することなどによって急場をしのぐ治療から今後,治療戦略が大きく変わる可能性を示しています.適切な臨床的な判断をする能力とはなんでしょうか?完全ではありませんが,いい参考資料になるのが臨床研究に基づいたエビデンスであり,それを臨床現場で利用する方法を説いたEBM(evidence-basedmadicine)ということになります.井上先生の紹介で,局所動脈内血栓溶解術についての検討ではSchum-acherらによって報告された方法をBeattyらが100例,Schmidtらが178例で既存の治療と比較して有効性,安全性を検証していること,さらにはEAGLEstudy(本文参照)という無作為前向き研究が進行中とのことから,海外における疫学研究の戦略的な取り組みのすばらしさを感じます.CRAOのように一施設では症例数が限られているので,有効な治療法を開発するためにはこのようなエビデンスを蓄積するための臨床研究がきちんと行える枠組みを今後日本でも確立していく必要があると考えます.日本人での医療に必要なエビデンスは欧米での臨床研究をそのままもってきて行うことは困難な面があります.たとえば,治療薬であれば,その用量や治療のタイミングなどは日本で独自に検証する必要があると考えます.ただ,これには膨大な費用がかかることであり,公的資金のみでは十分な研究費を確保できない可能性もあります.公的,中立的な機関があって臨床研究の質を上げるようにすること(アメリカのNIHのような組織),その機関が潤沢な研究費を使えるように公的な補助,研究費の寄付制度の改革,研究の倫理的な適正さを確保するシステムの工夫など今後,産官学が共同でシステム構築に努める必要があると考えます.そうしないと日本発の画期的な治療薬や治療法が臨床で使えない,治療薬などは輸入に頼り医療費の適正な執行が困難になるといった将来の問題が出てきます.遠い将来ではなく,近未来の問題であり,いまこそこの点をきちんと議論し実行していくことが重要と考えます.山形大学医学部視覚病態学山下英俊

新しい治療と検査シリーズ172.眼筋機能測定装置「Diploment Ver1.0」

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS入が必須であり,必要に応じて近用鏡・矯正眼鏡の上に赤緑眼鏡をオーバーグラスとする.測定はリング状ターゲットの中心に円形カーソルを入れる“玉入れ”法で行うが,リングの真ん中に点を入れるように誘導する.カーソルのサイズは測定点が周辺に移動すると距離に比例して拡大する注1).赤緑眼鏡は既製のHessscreen用(Haag-Streit社製)を用いる.赤・緑が完全に分離できるように被検者の視機能によってカーソル(ときにはターゲットも)のサイズ・輝度・明度を変更する.カーソルのゴーストがあると測定誤差と新しい治療と検査シリーズ(93)?バックグラウンド既報1)による試作器械「Diplomet」に対する多くのアドバイスをもとに改良を加えてVer1.0(以下,Dplとする)を完成させた.改良点は1)検査範囲を拡大するために25.5インチスクリーン(横径551×縦径344mm)を採用し水平方向の25?測定(図1),2)カーソル輝度を検査画面上で可変化,3)椅子にとりつけたヘッドバンドを用いて頭位を固定,4)被検者の疲労を考慮して自動計測では測定点を50cmで23点,35cmで18点とし,任意測定点の追加・再検査で補足,5)結果結線チャートに10?以内は1?間隔で実線,それより周辺では5?間隔で破線を表示,6)結果チャートに作用方向眼筋名を表示,7)ファイルデータをjpg/bmp形式で他の媒体に転送,などである.?装置の概要と検査の留意点装置はノート型PC,25.5インチ液晶ディスプレイ,プリンタ,デュアルマウス,医療用電源装置,電動光学台,頭位固定バンド付き椅子,赤緑眼鏡からなり,液晶画面に反射が入らない程度の暗室で操作する.測定は被検者が50cm・35cm各々の測定距離においてターゲット・カーソルを明瞭に識別できる屈折度の加172.眼筋機能測定装置「DiplometVer1.0」プレゼンテーション:平岡満里1)橋本有紀子1)渋谷英敏2)吉川眞男3)1)小金井眼科クリニック/2)ハナブサ電子工業/3)有)メイヨーコメント:佐藤美保浜松医科大学眼科学講座2520151050510152025151050510152520155051520253025201510505101520253050cm35cm図125.5インチスクリーンと50cm・35cmにおける視角等位線upward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rectabupward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rect図2測定距離50cm(a)と35cm(b)における正位のDiplometchart測定誤差は1?以内.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007なるので注意が必要である.測定点は“自動”50cmで中心(0点)と5?が8点・15?が8点・水平25?/垂直15?が6点の計23点(図2a),“自動”35cmで中心(0点)と10?が8点・20?が8点の計17点(図2b)とした.検査結果に不足・不明な箇所があれば“追加・再検査”で確認し,点削除で信頼できる結果を選択する.変位角度が大きく画面にカーソルが表示できない点または被検者が応答できない測定点はスキップボタンでスキップして次の測定点に進む.市販の画面では横径は大きいサイズのものがあるが,縦径は25.5インチと変わらない.特に斜筋麻痺では25?を8点計測するのが望ましいが既製品では困難なため,上下25?は測定に加えられなかった.測定点は各視角等位点においたターゲットにあるが,結果チャートには10?以内1?間隔,それより周辺は5?間隔の等間隔経線が記されているので定量的に読み取る.注1)Dplでは各測定点における網膜像の大きさが理論上一定になるようにするために,眼?測定点距離に比例してカーソルサイズを変化させている(表1).たとえば,水平20?・垂直20?で14%拡大する.ただし,この場合の“眼”は左右瞳孔中点においた仮の視点であることと周辺部に呈示するカーソルは中心部に呈示するものと相似な円であることから,真の意味では網膜上の大きさがすべての測定点で一定にはならない.さらに固視が鼻側と耳側でも異なり,平面スクリーンを使用している現段階では周辺は定量測定に限界がある.?測定結果の精度と信頼性中心固視点における交代プリズム遮閉テスト(APCT)を測定距離と同じ50cmで行いDplの変位角と比較すると,図2のAPCT正位では1?以内の誤差で一致していた.左固視APCT4△XP¢の症例で右眼Dpl0点2?外方(図3a),左固視APCT12△XP¢の症例で右眼Dpl0点6?外方(図3b)と,近似値であった.これら非麻痺性斜視では各測定点での変位角度は近似値であり左右差も少なかったが,麻痺性斜視は差がでた.脳内病変が検出されず糖尿病性末?神経障害と考えられた症例(77歳)では,左固視APCT;10△XTL/R6△HTの右眼Dplで0点が6?外方・3?下方変位が検出され,右上直筋・内直筋麻痺であった.この変位角は中心と5?は近似値であったが,周辺15?・25?で麻痺筋の作用方向変位に差があり外上方・外下方はカーソルが画面からはみ出すoverとなった.内下方が測定不能(*)となった理由は不明であった(図4a).中脳小梗塞症例(44歳)では,シノプトフォアで左固視中心;+6△R/L3△ex4?に対して右眼Dpl0点;3?外方・2?上方変位(内直筋・下直筋麻痺)に加えて,10?において下斜筋作用方向の内上方変位が内下方よりも大きく下斜筋麻痺による回旋が検出(94)表1測定点とカーソル拡大率50cm水平角度(?)35cm051015202530垂直角度01.001.001.021.041.061.101.151.001.001.011.031.061.101.1551.001.011.021.041.071.111.161.001.011.021.041.071.111.16101.021.021.031.051.081.121.181.011.021.031.051.081.121.18151.041.041.051.071.111.151.211.031.041.051.071.111.151.21201.061.071.081.111.141.191.261.061.071.081.111.141.191.26251.101.111.121.151.191.251.321.101.111.121.151.191.251.32301.151.161.181.211.261.321.411.151.161.181.211.261.321.41upward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rectabupward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rect図3斜位におけるAPCTとDiplometcharta:APCT4△XP¢の症例(40歳)で0点;2?外方変位,b:APCT12△XP¢の症例(17歳)で0点;6?外方変位.非麻痺性斜視では各測定点における変位角はほぼ近似値で左右差も少なかった.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???された(図4b).35cmは自動で0点・10?・20?であるが,手動で周辺の垂直25?・水平35?まで測定点を呈示することが可能である.しかし周辺では中心固視が不確実であるため定性検査となるので,目的に応じて測定点を追加する.?頭位固定について眼科では顎台に載せて頭位を固定する器械が多くコメンテーターからも指摘された1)が,不自然な頸筋の荷重,頸反射2)および筋固有反射3)の負荷を避けるために敢えて椅子にヘッドバンドをつけて,日常視に近い頭位で測定することとした.測定距離は鼻根部から中心0点ターゲットまでの距離で50cm・35cmとし,椅子と光学台の高さ調整を行った.小児では検者が椅子の後ろから軽く支えて特に横回転に注意した.マウスの操作については5歳ころから可能であり,高齢者では補助が必要な例もあったが検査不能例はなかった.まとめ本器械は,マウス操作が可能であれば僅少の誤差で交代プリズム遮閉テストに匹敵する定量測定が短時間で熟練を要せずに可能であり,定性測定においてもHessscreenのような労力を必要とせず,被検者の負担も少ない.検査結果の他の媒体への保存も可能であり電子カルテへの応用も容易である.また特殊な用途の検査項目が必要であればオプションプログラムの対応も可能であろう.(95)文献1)平岡満里,渋谷英敏,三村治:新しい眼筋機能測定装置「Diplomet」.あたらしい眼科23:59-62,20062)島村宗夫:運動の反射生理学─その基礎と臨床的応用─.p122-123&178,真興交易医書出版部,19763)DavsonH:Proprioceptiveneckre?exes.PhysiologyoftheEye.4thed,p438,AcademicPress,NewYork,1980?本方法に対するコメント?本装置は,コンピュータで記録することによって,Hessチャートを狭い場所でも設置可能になったこと,暗い場所でも記載が容易になったことがメリットである.今回は,スクリーンを大きなものにして,検査範囲を広げたこと,頭部を固定するための椅子をつけたこと,データを他の媒体でみられる形式にしたこと,などの改良が加えられている.確かにこの記録をみると,従来のHessチャートによく似た結果が得られており,一見,従来の装置と同等の結果が得られるようにもみえる.しかし,著者も指摘しているように,スクリーンの縦径が限られているため,斜筋異常などで重要な上下25?の測定が不可能である.麻痺があればともむき筋には,Heringの法則に従った過動がみられるはずなので,多くの症例で振り切れてしまうと思われる.麻痺の診断には,必ず左右眼のチャートを比較することが前提である.装置はコンピュータ化されても,検査結果の判断まではしてくれない.使用にあたっては医師が眼球運動に関する十分な知識を持ち合わせていることが不可欠である.overoverupward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rectabupward2010nasal1020302010downward102030temporalInf.OblSup.RectSup.OblInf.RectMed.RectLat.Rect*図4眼筋麻痺症例におけるAPCTとDiplo-metcharta:麻痺性斜視における左固視APCT;10△XTL/R6△HTの糖尿病性末?神経麻痺症例(77歳)でDiplometchartは右眼0点;6?外方・3?下方変位で右上直筋+内直筋麻痺.b:中脳梗塞症例(44歳)におけるシノプトフォアで検出された左固視の右中央眼位;+6△R/L3△ex4?に対してDiplometchart右眼0点;3?外方・2?上方,15?測定点で内上方>内下方3?差変位から右下斜筋・下直筋・内直筋麻痺.

眼感染症:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌(ESBLs)

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS■塗抹鏡検での見方のこつ基質特異性拡張型b-ラクタマーゼ産生菌(ESBLs)は,単一の菌種ではなく大腸菌やクレブシエラをはじめとする腸内細菌科の菌種,ブドウ糖非発酵菌,カプノサイトファーガなど多くのグラム陰性桿菌から検出される(表1).塗抹鏡検でESBLsを識別することは困難であるが,第三世代セファロスポリン系薬の治療に抵抗するグラム陰性桿菌感染症や,使用中の患者に発生したグラム陰性桿菌感染症においては,ESBLsやクラスC型b-ラクタマーゼ(AmpC)過剰産生菌,クラスB型b-ラクタマーゼ(メタロb-ラクタマーゼ:MBL)産生菌などの耐性菌を疑う必要がある(図1).■培養法眼感染症からの検体は微量の場合が多く乾燥しやすいため,滅菌密封容器や培地付き綿棒などで乾燥を避けて搬送する.ESBLsは尿,便,喀痰からの検出率が高く,まれに膿汁や血液などからも分離される.■耐性菌判定法ESBLsはクラスA型もしくはクラスD型b-ラクタマーゼの基質特異性が拡張し,セフタジジム(モダシン?;CAZ)やセフォタキシム(クラフォラン?,セフォタックス?;CTX)などのオキシイミノセファロスポリン系薬をも分解しうるようになった菌である1).しかし,一方でb-ラクタマーゼ阻害薬であるクラブラン酸(CVA)によって阻害される特徴を有する2).そのため,日常検査においてESBLsをAmpCやMBL産生菌と鑑別する際にはCVAによる阻害試験を実施する.米国のClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)が推奨するESBLsの判定基準(2007年M100-S16)は表2のごとくであり,現在対象菌種は大腸菌,クレブシエラ属,プロテウス・ミラビリスに限定されている.理由は,エンテロバクターなどでは複数のb-ラクタマーゼを産生する菌があり,耐性パターンが画一的で(89)49.基質特異性拡張型b-ラクタマーゼ産生菌(ESBLs)眼感染症セミナー─クライシスコントロール講座─●連載?監修=浅利誠志井上幸次大橋裕一川上小夜子*1斧康雄*2宮澤幸久*1*1帝京大学医学部附属病院中央検査部*2帝京大学医学部微生物学講座/内科感染症基質特異性拡張型b-ラクタマーゼ産生菌は,大腸菌やクレブシエラ属など多種のグラム陰性桿菌に存在する.第三世代セファロスポリン系抗菌薬の治療に抵抗するグラム陰性桿菌感染症例や使用中に生じたグラム陰性桿菌感染症では,本菌の可能性も考慮する.カルバペネム系薬,一部のセフェム系薬(セファマイシン系,オキサセフェム系),フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬などが有効である.表1ESBLsが報告されている菌種大腸菌サルモネラ属クレブシエラ属赤痢菌プロテウス属緑膿菌エンテロバクター属セパシア菌サイトロバクター属アシネトバクター属セラチア・マルセッセンスパラインフルエンザ菌モルガネラ・モルガニーカプノサイトファーガ属図1病巣から採取した膿汁の塗抹写真80歳,女性.12年前に裂孔原生網膜?離で手術.ESBLsではないが緑膿菌によるバックル感染を発症し,網膜復位術を施行.術中にはトブラマイシン(トブラシン?)90mgを静注,術後はホスホマイシン(ホスミシン?)1g/日×6(静注)にて治癒.このようなグラム陰性桿菌感染症で,セフォタジジムやセフォタキシムが無効な症例では,ESBLsなどの耐性菌も考慮する.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007ないため,耐性遺伝子を検索しなければ鑑別できないことによる.■治療薬剤選択大腸菌,クレブシエラ属,プロテウス・ミラビリスのESBLsでは,セファマイシン系薬(注射薬:注),オキサセフェム系薬(注),カルバペネム系薬(注),アミノグリコシド系薬(注,点眼薬:点),フルオロキノロン系薬(注,経口薬:経,点)が治療薬として期待できる3)(表3).しかし,それ以外の菌種のESBLsでは,AmpCも同時に過剰産生する株がみられることから,期待できる薬剤はカルバペネム系薬(注),アミノグリコシド系薬(注,点),フルオロキノロン系薬(注,経,点)になる.フルオロキノロン系薬は幅広い抗菌スペクトルを有し,房水内や眼組織内への移行性が優れることから点眼薬として広く使用されているが,近年分離される各種b-ラクタマーゼ産生菌のなかには,まれにアミノグリコシド系薬やフルオロキノロン系薬にも同時に耐性を示す菌が存在し,注意が必要である.文献1)川上小夜子,斧康雄,山本美和ほか:帝京大学医学部附属病院におけるcefotaxime耐性の????????????????と??????????????????????の検出状況─第1報─.感染症誌73(11):1110-1115,19992)川上小夜子,斧康雄,山本美和ほか:当院で分離された????????????????と?????????????????????の産生するExtended-Spectrumb-Lactamase(ESBL)に関する基礎的研究─第2報─.感染症誌74(1):24-29,20003)荒川宜親:ESBLs産生菌.感染と抗菌薬3(Suppl):37-46,2000次頁へ続く(「検査室から眼科医へ」,「眼科医から検査室へ」)(90)表2ESBLsの判定基準(CLSI:M100-S16)微量液体希釈法MIC(?g/m?)ディスク法阻止円直径(mm)スクリーニング試験スクリーニング試験下記のいずれかの薬剤で判定大腸菌クレブシエラ属プロテウス・ミラビリス下記のいずれかの薬剤で判定大腸菌クレブシエラ属プロテウス・ミラビリスセフポドキシム(CPDX)≧8≧2CPDX(10?g含有)≦17≦22セフタジジム(CAZ)≧2≧2CAZ(30?g含有)≦22≦22セフォタキシム(CTX)≧2≧2CTX(30?g含有)≦27≦27アズトレオナム(AZT)≧2AZT(30?g含有)≦27セフトリアクソン(CTRX)≧2CTRX(30?g含有)≦25確認試験CAZまたはCTXのMICが,クラブラン酸の添加で3管以上下がったらESBLsと判定確認試験CAZまたはCTXの阻止円直径が,クラブラン酸の添加で5mm以上拡大したらESBLsと判定ESBLs産生株は,「臨床的にはペニシリン系薬,セファロスポリン系薬およびAZTに耐性」として報告する.MIC:最小発育阻止濃度.表3b-ラクタマーゼの種類と治療効果が期待できる抗菌薬ESBLsAmpCMBL大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス・ミラビリスエンテロバクター属、セラチア属、サイトロバクター属過剰産生腸内細菌科産生腸内細菌科薬剤グループ代表薬剤略語ペニシリン系ABPCRRRR第一世代セファロスポリン系CEZRRRR第二世代セファロスポリン系CTMRRRR第三世代セファロスポリン系CTXRRRR第四世代セファロスポリン系CFPMRRSRセファマイシン系CMZSRRRオキサセフェム系LMOXSRRRモノバクタム系AZTRRRSカルバペネム系IPMSSSRb-ラクタマーゼ阻害薬クラブラン酸AMPC/CVASRRRアミノ配糖体系*AMKSSSSフルオロキノロン系*LVFXSSSSS:susceptible感性,R:resistant耐性.*:薬剤感受性試験結果がSの場合には使用可能.ABPC:アンピシリン,CEZ:セファゾリン,CTM:セフォチアム,CTX:セフォタキシム,CFPM:セフェピム,CMZ:セフメタゾール,LMOX:フロモキセフ,AZT:アズトレオナム,IPM:イミペネム,AMPC/CVA:アモキキシリン/クラブラン酸,AMK:アミカシン,LVFX:レボフロキサシン.(文献3より改変)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???(91)◎検査室から眼科医へ◎眼科領域の市中感染症では,大腸菌やクレブシエラ属などが起炎菌となる頻度は低く,ESBLsなどの耐性菌に遭遇することはまれです.しかし,ICU(集中治療室)に搬入された顔面外傷患者,衛生観念の低い痴呆患者や高齢者および小児などでは,術後の院内感染起炎菌として重要であり,創傷管理に注意が必要です.特に尿や喀痰からESBLsなどの耐性菌が検出されている患者では,患者自身が尿路や口に触れた手で創部に触れて感染する可能性もあるため,患者および医療従事者に接触感染予防対策を徹底させる必要があります.◎眼科医から検査室へ◎眼科ではフルオロキノロン系が主たる局所点眼薬として使用されているため,ESBLsについてはあまり大きな問題となっていませんが,それだけにESBLsに関する知識がわれわれ眼科医にあまりない点は問題です.しかし,大腸菌やクレブシエラは転移性眼内炎の起炎菌として知られていますし,ESBLsが報告されているその他の菌種に角膜炎の起炎菌として問題となっているセラチアや緑膿菌が含まれていることや,近年まれにフルオロキノロン系同時耐性の菌が出てきていることから,われわれ眼科医も注意をしないといけないと感じました.また,眼科手術に伴う術後眼内炎の治療の基本がバンコマイシンとセフタジジムを硝子体内に注射することになっており,これではESBLsには効果がないことになります.眼内炎の場合は,転移性にしろ術後にしろ,対応が遅れると重篤な視力障害を起こしますので,検査室のほうでも検査結果をすみやかに眼科医に知らせてください.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次☆☆☆年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

光線力学的療法(PDT):治療の実際:Occult with no classic CNV

2007年6月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSoccultwithnoclassicCNV(脈絡膜新生血管)は,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)上classic成分を含まないocculttypeのCNVで,造影早期から顆粒状過蛍光を認め,造影後期には緩慢な蛍光漏出を認める線維血管性色素上皮?離(?brovascularpigmentepi-thelialdetachment:FVPED)と,造影早期には蛍光漏出源は不明で網膜色素上皮(RPE)レベルの点状過蛍光がみられるが,造影後期の蛍光漏出は軽度である起源不明の後期蛍光漏出(late-phaseleakageofundeter-minedsource)の2つのタイプがある.FAにてCNVの境界は不明瞭なことが多い.欧米における光線力学的療法(PDT)の治験で,theVertepor?ninPhotodynamicTherapy(VIP)試験はおもにoccultCNVに対するPDTの効果を調査するプラセボを対照とした多施設二重盲検比較試験であるが,病変部面積が4MPS(MacularPhotocoagulationStudy)discareasより大きく,矯正視力がSnellen視力にて20/50以上の症例に対しては有意な効果を認めていない1,2).また,24カ月の経過中8%がpredominantlyclassicCNV,46%がminimallyclassicCNVに移行し,これらのclassic成分を有する症例に対してはPDTを行うことを考慮しなければならないとされている3).一方,日本における眼科PDT研究会の新ガイドライン作成を目的とした実態調査の速報値によると,occultwithnoclassicCNVについてもPDTが有効であり,視力改善率,蛍光漏出停止率,平均治療回数は病変タイプによる差異がなかったとされている.これは,occultwithnoclassicCNVの所見を示す症例が日本人では欧米人と比較しポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が多く,PCVが狭義の加齢黄斑変性(AMD)よりもPDTの効果を得られやすいことが関連していると考えられる.ここでは,occultwithnoclassicCNVの症例にPDTを施行し,治療後1年経過した時点で治療効果があった例,悪化した例について示す.●治療効果があった例(図1)〔症例1〕70歳,男性,右眼PCVの症例で,術前矯正視力(0.4),黄斑部から上方にかけてRPEの萎縮病巣,網膜色素上皮?離(PED)と網膜下出血を認め(図1a),FAでは境界不明瞭なoccultCNVと造影剤の(87)白神千恵子香川大学医学部眼科光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子9.治療の実際:OccultwithnoclassicCNV日本人は欧米人よりoccultwithnoclassicCNVに対して光線力学的療法(PDT)が有効である症例が多い.これは,日本人にポリープ状脈絡膜血管症が多いことに関連すると考えられる.しかし,PDTに抵抗を示す症例もあり,他の治療法を考慮しなければならない場合もある.提供aebcdhgf図1治療効果があった例(70歳,男性)a:術前カラー眼底写真,b:術前フルオレセイン蛍光眼底造影写真,c:術前インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)造影早期の写真(長矢印:ポリープ状病巣,短矢印:異常血管網),d:術前光干渉断層検査(OCT),e:術後2カ月目カラー眼底写真(矢頭:網膜色素上皮?離),f:術後1年目カラー眼底写真,g:術後1年目IA造影早期の写真,h:術後1年目OCT.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007poolingによるPEDの過蛍光所見(図1b)を認めた.インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)にて黄斑部にポリープ状病巣とその周囲に異常血管網を認めた(図1c).病変部の最大直径(GLD)は4,107?mで,FAの所見をもとに照射径5,100?mでPDTを施行した.術後2カ月目には網膜下出血と新しい小型のPEDが数カ所に発生した(図1e)が,そのまま経過をみていたところ,出血,PEDともに自然消退し,術後1年目には滲出性病変が完全に消失してIAでもポリープ状病巣が消失していた(図1f,g,h).1年後,矯正視力は(0.7)と改善しており,その後2年の経過にて再発を認めていない.●悪化した例(図2)〔症例2〕73歳,男性,左眼狭義のAMDの症例で,術前矯正視力(0.2),黄斑部に網膜下出血,辺縁不明瞭なRPE下の新生血管膜と,中心窩下に少量の漿液性網膜?離(SRD)を認めた(図2a,d).FAはoccultCNV(88)の所見で(図2b),IAの造影早期ではCNVの明瞭な血管網がみられた(図1c).GLDは3,530?m,照射径4,600?mでPDTを施行したが滲出が持続したため,その後3カ月おきにさらに3回の追加治療を施行した.GLDは2回目3,122?m,3回目2,628?m,4回目4,904?mと,初回治療後1年目には術前よりもGLDが大きくなり,検眼鏡所見(図2e),FA所見(図2f)で認められるCNVの範囲は拡大し,IAの造影早期のCNVの血管網がより明瞭に広範囲に発育している所見がみられた(図2g).光干渉断層検査(OCT)では術前よりもPED,SRDが増強し(図2h),矯正視力は(0.1)に低下していた.OccultwithnoclassicCNVの症例に,PDTが著効を示し初回治療のみで軽快した症例と,数回の再治療をしたにもかかわらず病変部面積が拡大し,滲出性病変が悪化した症例を示した.症例1のように初回治療後滲出が再燃しても,しばらく経過をみることによって自然軽快し,再治療が不要となる症例もある.しかし,PDT後完全に滲出が消失し,しばらく再発しない症例でも1年以上経過して急に滲出が再燃することがあるので継続的なフォローアップが必要である.また,症例2のように,数回PDTを施行したにもかかわらずFAにて蛍光漏出が停止せず,PDTに抵抗を示す症例がある.このような症例に対しては,トリアムシノロンや抗VEGF(vascularendothelialgrowthfac-tor)抗体などの薬剤を用いた他の治療法や,薬剤とPDTの併用療法なども考慮したほうがよいと考える.文献1)Vertepor?nRoundtableParticipants:Guidelinesforusingvertepor?n(Visudyne)inphotodynamictherapyforcho-roidalneovascularizationduetoage-relatedmaculardegenerationandothercauses:update.??????25:119-134,20052)Vertepor?ninPhotodynamicTherapyStudyGroup:Vertepor?ntherapyofsubfovealchoroidalneovasculariza-tioninage-relatedmaculardegeneration:two-yearresultsofarandomizedclinicaltrialincludinglesionswithoccultwithnoclassicchoroidalneovascularization-verte-por?ninphotodynamictherapyreport2.????????????????131:541-560,20013)PieramiciDJ,BresslerSB,KoesterJMetal:Occultwithnoclassicsubfovealchoroidalneovascularlesionsinage-relatedmaculardegeneration:clinicallyrelevantnaturalhistoryinformationinlargerlesionswithgoodvisionfromtheVertepor?ninPhotodynamicTherapy(VIP)Trial:VIPReportNo.4.???????????????124:660-664,2006図2悪化した例(73歳,男性)a:術前カラー眼底写真,b:術前フルオレセイン蛍光眼底造影写真(FA),c:術前インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)造影早期の写真(矢印:CNV),d:術前光干渉断層検査(OCT),e:術後1年目カラー眼底写真,f:術後1年目FA写真,g:術後1年目IA造影早期の写真(矢印:CNV),h:術後1年目OCT.agfedcbh