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眼科医にすすめる100冊の本-6月の推薦図書-

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008837(87)0910-1810/08/\100/頁/JCLSこの本は50万部を超えるベストセラーになった.著者は100キロを超える肥満であった岡田さん.ところが奮起して“記録ダイエット”をすることだけで1年で50キロもやせたという嘘のような話である.しかし表紙の帯の写真がその事実を語っており,“おっ,これは何かあるな”と思わず手にしてみたくなった.軽い気持ちで読み始めたらあっという間に引き込まれて,気づいたら読み終えていた.最近はメタボリックシンドロームがさまざまな病気の根源にあると考えられるようになってきた.眼科でも糖尿病網膜症や静脈分枝閉塞症をはじめとして多数の眼科疾患に関連することがわかっている.眼科医にとってもメタボリックシンドロームは身近な問題である.そこで今回,僕のお勧めの一冊として紹介したい.最初の数十ページにわたって書かれているのは“なぜデブ(著者の表現に添っています)が損なのか”という話に尽きる.それは“デブの社会的意義”にまで踏み込んだ素晴らしい理論として展開されている.その中でも興味を引くのが“ファーストラベル”という概念.人にはそれぞれファーストラベルがあって,かっこいい人,かわいい人,センスのいい人,男らしい人,優しい人など,いろいろあるが,太っている人は社会からとりあえず“あの人はデブだから”というファーストラベルですべて論じられてしまう.ここから抜け出さないと,たくさん損をするというお話.そして,ダイエットや運動をしてやせるというローリスク・ハイリターンな“投資”がいかに価値があり理論的に正しいかと詳細に論じている.自分の生存確率を上げるためには,年収を増やす,良いセンスの洋服を着る,語学を身につける,良いポジションにつくなどたくさんあるが,一番効率的なのが“やせる”という行為だという.最終的には読者に「さあ,あなたもやせられますよ」と“記録ダイエット”を提唱するわけだが,何より“やせよう”というモチベーションがなければせっかくの方法論も使えない.このあたりは最近話題の勝間和代さんによる『お金は銀行に預けるな』にも似ている展開といえるだろう.勝間さんの本でも,まず最初に「金融リテラシーを持たないと大変なことになってしまう」という提言が本の半分以上にわたって理論的に解説されている.後半を読みすすむ時には読者の金融活動への意欲は満々になっているという構成だ.本書も同じように後半を読み始めるころには「デブっていたらまずい.何としてもやせるぞ」という気持ちにさせて,本気でダイエットをやる気にさせてくれる.さて,本書のメインテーマである記録ダイエットとは何か?これは単に毎日,毎日,食べた量を自分で記録していくというとっても簡単な方法なのだ.最初はやせようとか,デブはまずいとか思わずに単に記録していけばいいという.岡田理論によればデブでいることは大変なことであり,デブを維持するための秘密の食生活パターンを各人はもっており,それをこの記録ダイエットによって明らかにしていくのが第一ステップだという.岡田さんの経験でも記録をつけ始めて,“こんなに俺は食べていたのか”“こんなにデブを維持するための努力を続けていたのか?”と驚いたという.この段階を過ぎれば,次には目標を定めて介入することになる.満足度の低いものは食べない,夜寝る前は食べないなど,自分でやれるところからやる.そして記録する.岡田さんによればこれだけで確実にやせられるという.幸い僕はBMI(体重指数)が22で太っていないのだが,記録ダイエットはアルコールダイエットにもとても有効な方法だったので伝えておきたい.最近になって僕■6月の推薦図書■いつまでもデブと思うなよ岡田斗司夫著(新潮新書,新潮社)シリー82◆坪田一男慶應義塾大学医学部眼科———————————————————————-Page2838あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008はガンマGTPが急激に上がり,肝臓専門の先生から“坪田先生,シャンパンの飲みすぎですよ!”と言われていたのだが,つい夜になるとシャンパン,ワインと飲みすぎてしまっていたのだった.そこで,いったい自分は1カ月にどのくらいの量のアルコールを飲んでいるのか記録することにしてみた.シャンパン1杯,ワイン1杯,ビール1本(350cc)はアルコール10gを含むと仮定して毎日記録をつけてみた.すると2008年1月は1,350g,2月は1,360gとなり,平均1日45g,ワインでいうと4,5杯飲んでいることがわかった.だいたいワイン1本で8杯だから毎日ワインをボトルで半分飲んでいる計算である.それも1日も休む日がないこともわかった.これでも記録するぞというプレッシャーから,つけていなかった2007年と比べればすでに格段に飲む量が減っていると思われる.記録ダイエットの威力はすごい.しかしそれでもどんどんガンマGTPが上がるのでまずいと思って“惰性で飲むのはやめよう”とか“アルコールフリーデーを作ろう”とか工夫しながら記録を続けたら3月には1,120g,4月は1,140gと1日平均38gまで減った.ガンマGTPのデータも改善してノーマルに復帰.これで記録ダイエットの信者になったのだった.この方法はなんにでも使えると思う.体重,アルコールだけでなく,運動量,勉強量,親切量(他の人にどのくらい親切にしたか),社会貢献量,睡眠時間など,自分のライフパターンで改善したいところがあったら記録をつけてみることをおすすめしたい.とりあえず,体重が少しでもオーバーだなと思う人がいたらぜひやってみるといいと思う.PS:2008年9月14日,15日に開催される『第8回抗加齢医学の実際』で岡田斗司夫さんの講演があります.興味のある方はhttp://www.mediproduce.jp/info/seminars/またはTel:03-5775-2075までお問い合わせください.☆☆☆(88)眼科領域に関する症候群のすべてを収録したわが国で初の辞典の増補改訂版!〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544メディカル葵出版株式会社A5判美装・堅牢総360頁収録項目数:509症候群定価6,930円(本体6,600円+税)眼科症候群辞典<増補改訂版>内田幸男(東京女子医科大学名誉教授)【監修】堀貞夫(東京女子医科大学教授・眼科)本書は眼科に関連した症候群の,単なる眼症状の羅列ではなく,疾患自体の概要や全身症状について簡潔にのべてあり,また一部には原因,治療,予後などの解説が加えられている.比較的珍しい名前の症候群や疾患のみならず,著名な疾患の場合でも,その概要や眼症状などを知ろうとして文献や教科書を探索すると,意外に手間のかかるものである.あらたに追補したのは95項目で,Medlineや医学中央雑誌から拾いあげた.執筆に当たっては,眼科系の雑誌や教科書とともに,内科系の症候群辞典も参考にさせていただいた.本書が第1版発行の時と同じように,多くの眼科医に携えられることを期待する.(改訂版への序文より)1.眼科領域で扱われている症候群をアルファベット順にすべて収録(総509症候群).2.各症候群の「眼所見」については,重点的に解説.3.他科の実地医家にも十分役立つよう歴史・由来・全身症状・治療法など,広範な解説.4.各症候群に関する最新の,入手可能な文献をも収載.■本書の特色■

眼科専門医志向者“初心”表明

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088350910-1810/08/\100/頁/JCLS私は旅行が大好きだ.学生時代,本当にいろいろな所を旅行した.格安往復航空券だけを片手に,気の向くままにあっちへ行ったりこっちへ行ったり.ふらりと電車に乗り込みそのまま国境を越えてみたり.その日泊まる場所も現地に入ってから手配.まったくもって「自由気まま」な旅行.そのためパックツアーでは味わえない感動や冷や冷や感も体験できた.街を巡っているとき,電車で移動しているとき,歴史を感じさせる街並みや車窓からの風景すべてに感動した.その国の言葉に精通していないが故にコミュニケーションもままならなかったが,相手の表情やしぐさをみて言わんとすることを推測し,道に迷ったときは標識を頼りに目的地を目指した.そのなかで私は相手の表情を見ることに面白さを感じた.嬉しそうな顔,自信みなぎる顔,悲しそうな顔,恥ずかしそうな顔,無愛想な顔….同じ人でも別人かと思うくらい表情によって印象が変わってくる.「視覚」から得られる情報の多さを改めて認識した.仮に自分の視覚を失ってしまったとしたら,人生のほとんどの楽しみがなくなると言っても過言ではないだろう.外界から得るさまざまな情報の8割以上は目から入ってくるらしい.したがって実際視覚を失うとqualityoflife(QOL)がかなり低下する.社会生活で高いQOLを維持するために健全な目(正常な視覚)は必要不可欠である.視覚が低下もしくは不幸にも失ってしまった患者さんで治療により回復の見込みがある場合,自分がその場に携わり,幸いにも視覚を取り戻せた患者さんの笑顔を見ることができたら.共に喜びを共有しあえたらどんなにいいだろう.そう思い,私は眼科を志望した.患者さんに寄り添い,患者さんに頼りにしてもらえるような,そんな眼科医になれるよう励んでいきたい.最後に,まだまだ至りませんが皆様よろしくお願い致します.◎今回は愛媛大学出身の広越先生にご登場いただきました.視覚には1方向的に物を見るという側面だけでなく,表情から相手の気持ちを汲み取るというコミュニケーションの側面もあると思います.治療後の笑顔の患者さん,これがなによりの眼科の魅力です.(加藤)☆本シリーズ「“初心”表明」では,連載に登場してくださる眼科に熱い想いをもった研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生を募集します!宛先は≪あたらしい眼科≫「“初心”表明」として,下記のメールアドレスまで.追って詳細を連絡させていただきます.Email:hashi@medical-aoi.co.jp(85)眼科医志向者“初心”表明●シリーズ⑥患者さんの笑顔を目指して!広越亜希子(AkikoHirokoshi)済生会京都府病院1981年8月30日生まれの乙女座.出身地は岡山.出身大学は愛媛大学.現在は済生会京都府病院研修医.大学時代はバトミントン部所属.旅行が大好きです.(広越)編集責任加藤浩晃・木下茂本シリーズでは研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生に『なぜ眼科を選んだか,将来どういう眼科医になりたいか』ということを「“初心”表明」していただきます.ベテランの先生方には「自分も昔そうだったな~」と昔を思い出してくださってもよし,「まだまだ甘ちゃんだな~」とボヤいてくださってもよし.同世代の先生達には,おもしろいやつ・ライバルの発見に使ってくださってもよし.この連載もありがたいことに半年記念の第6回目.今回はこの先生です!同とにしい

私が思うこと

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008833私が思うことシリーズ⑪(83)無痛無汗症とは無痛無汗症(congenitalinsensitivitytopainandanhidrosis)の患者さんの健診会に4年前から参加しています.無痛無汗症というのは,先天的に,痛みを感じることができず,汗をかくことができないという,まれな難病です.原因遺伝子は1996年に熊本大学小児科の犬童先生が報告されていて,nervegrowthfactorの受容体の一つであるTRKAの遺伝子異常であることがわかっています.TRKAが神経の発生過程で正常に機能しないため,温・痛覚を伝える無髄線維と小径有髄線維,および自律神経のなかの汗腺を支配する交感神経節後線維が欠失し,痛覚を欠損することになり,また汗をかくこととができなくなってしまいます.痛みを感じることは人にとって大切なこととはよく耳にしますが,この疾患はそのことをよく教えてくれます.痛みを感じないために,小さい頃から自傷行為などで足や手に骨折をくり返したり,舌を噛み切ったりしてしまいます.また汗をかけないために,乳児期から体温調節ができず,原因不明の発熱が初発症状となることが多くあります.健診会への参加無痛無汗症の患者さんは,全身的なケアが必要で,特に小児科,整形外科,歯科などでの継続的な診療を必要とします.国内の無痛無汗症の患者さんの親の会が年1回,患児たちの全身的な健康診断のために,健診会を兼ねたシンポジウムを開いています.健診会には,小児科,整形外科,歯科,発達心理,眼科など各科のドクターやパラメディカルの方々が参加し,患者さんたちは,34時間をかけて,各科の診療ブースを巡回していきます.健診会のあとには専門家による講演があり,この疾患に関して,さまざまな知識を得ることができます.縁あって,4年前からこの健診会にボランティアで参加しています.例年,東大眼科のドクターと視能訓練士の計56名がお手伝いに伺い,眼の検査や診察を担当しています.シンポジウムは東日本と西日本で交互に行っており,これまでは,山梨の石和温泉,神戸のしあわせの村,秩父などの施設で行われた健診会に参加してきました.眼科機械のメーカーや業者の方々にも無償でご協力いただき,スリット,視力検査機器,オートレフなどを運び込んでいただき,前眼部,後眼部を含めて,できる限り詳細な診察や検査を行ってきました.これまでご協力いただいた会社は,中央産業貿易,ニデック,興和,などです.この場をお借りして,感謝の意を表したいと思います.検査ではできる限り,視力,眼圧,細隙0910-1810/08/\100/頁/JCLS天野史郎(ShiroAmano)東京大学医学部眼科学教室1961年山口県生まれ,東京育ちです.専門は角膜疾患,角膜移植,角膜再生医療,屈折矯正手術などです.先日は第32回角膜カンファランス・第24回日本角膜移植学会を担当させていただきました.東京大学眼科のチーム角膜,事務担当の会社,協力企業などの皆様のおかげで学会は大成功でした.ご協力いただいた皆様に深謝申し上げます.学会を担当させていただいたことは,とっても楽しい,貴重な経験でした.(天野)無痛無汗症の患者さんの健診会▲健診会にはじめて参加したときのメンバー前列中央が健診会の世話人である聖母病院小児科の粟屋豊先生.———————————————————————-Page2834あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008灯顕微鏡検査,眼底検査などを行い,さらに可能な場合は,角膜知覚検査,ドライアイ関連の検査,マイボーム腺観察などを行ってきました.患者さんは乳幼児を含めた若年者が大半であり,診察もなかなか大変です.視能訓練士の方々に活躍していただく場面が沢山あります.無痛無汗症の患者さんの眼科所見これまで延べ80名ほどの患者さんの診察を行ってきました.乳幼児期には特に異常所見はないのですが,6歳前後から点状表層角膜症が目立つようになってきます.ここから角膜感染症を起こしてしまい,自覚症状の少なさから治療が遅れて角膜混濁を強く残してしまう症例がみられます.角膜の合併症がなければ,通常は視機能の発達は問題ありません.検査所見として特徴的な点としては,まず角膜知覚が著明に低下している点です.去年,ニデックの協力により持ち込んだコンフォーカルマイクロスコープによる観察では,Bowman膜レベルで観察されるはずの神経線維叢がほとんどみられませんでした.角膜にあるはずの知覚神経がかなり欠損していると考えられました.涙液の検査ではSchirmerテストは正常範囲である一方,涙液のbreakuptimeが著明に短縮していることから,涙液蒸発亢進型のドライアイがあり,それが点状表層角膜症の原因の一つとなっていると考えられました.赤外線カメラと赤外線フィルターを用いた非接触型マイボグラフィーを開発して,無痛無汗症の患者さんのマイボーム腺を観察したところ,若い割にはマイボーム腺の短縮や脱落があり,これが涙液亢進型ドライアイの一因となっていると考えられました.角膜の知覚神経が減少していることから,neurotrophicfactorの欠損もまた角膜上皮へ影響を与えていることが予想されますが,詳細は依然不明です.無痛無汗症での角膜上皮障害の発生機序の解明にはさらなる研究が必要と思われます.無痛無汗症患者の眼科的異常に関してまとまった報告は過去に一つだけあります.砂漠の民であるベドウィン族にみられた無痛無汗症の患者の所見が,イスラエルのグループから1999年にAmJOphthalmolに報告されています.角膜潰瘍後と思われる角膜混濁が多くみられたことが報告されています.われわれが観察した角膜混濁と一致するものと思われますが,頻度は日本よりずっと多いようです.おそらく衛生状態がかなり違うためではないかと思います.われわれが気づいた角膜の異常以外にも,これまであまり検査してこなかった神経眼科学的な異常が潜んでいる可能性も大きいと思います.今後検討して行こうと考えています.おわりに無痛無汗症は,全身的には完治することのないむずかしい疾患ですし,眼の状態も簡単には治せないこともしばしばあり,それぞれの家庭でどのように対応していってもらえばよいか考えさせられることもあります.ただ,毎年,難病の子供たちやご家族の方々に少しでもお役に立てればと思い,健診会に継続して参加しています.今年は,10月12日(日曜日)の午後に宮城県岩沼市の施設で健診会が行われます.東大眼科から56名がお手伝いに伺う予定にしていますが,毎年人手が不足気味ですので,お近くに在住の眼科の先生や視能訓練士の方で,お手伝いしていただける方がいらっしゃるようでしたら,ぜひ天野(amanos-tky@umin.ac.jp)までご連絡ください.天野(あまの・しろう)1986年東京大学医学部卒業1986年東京大学眼科学教室入局1989年武蔵野赤十字病院眼科1995年ハーバード大学研究員1998年東京大学医学部講師2002年東京大学医学部助教授(84)☆☆☆

硝子体手術のワンポイントアドバイス61.固定内斜視眼に対する硝子体手術(中級編)

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088310910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに後天性固定内斜視は,強度近視に合併することが多い.発症機序に関しては不明な点が多かったが,近年横山らは,MRI(磁気共鳴画像)を用いた画像診断で,眼球後部が上直筋と外直筋の間に脱臼していること,その結果として外直筋が下方偏位,上直筋が鼻側に偏位していることを示した1).固定内斜視の手術法はこれまでさまざまな術式が考案されてきたが,横山らは固定内斜視の機序に即した術式,すなわち上直筋と外直筋を筋腹で縫合する方法を考案し良好な成績を得ている.高度の固定内斜視に網膜離を合併した場合の術式強度近視の合併症には,固定内斜視以外にも網膜剥離,近視性網脈絡膜萎縮がある.強度近視の網膜剥離は一般に網膜硝子体癒着が強固で,後極部から周辺部に至る十分な硝子体切除を必要とすることが多い.しかし高度の固定内斜視眼では,forcedductiontestで眼球を正位にもってくることが非常に困難である.このような症例では,硝子体手術時に硝子体カッターと眼内照明プローブで眼球を牽引し正位にもってくることもむずかしく,術野の確保に苦慮する.筆者らは以前に,片眼はす(81)でに失明,残された他眼がこのような状況の症例に遭遇し,横山法により眼位矯正を行った(図1)うえで,硝子体手術を施行した2).その結果,横山法により,硝子体手術には支障のない程度の眼位を確保することができた(図2).横山法施行後も外転と上転が困難で,耳側と上方の周辺部硝子体切除がやや困難な状況ではあったが,顕微鏡同軸照明下で強膜圧迫を併用しながら十分に周辺部硝子体を切除し,網膜を復位することができた(図3).高度の固定内斜視例に網膜剥離を合併し硝子体手術を必要とする場合には,本術式は有用と考えられる.文献1)横山連:固定内斜視の画像診断と手術.日本の眼科74:461-464,20032)片岡英樹,光辻辰馬,植木麻理ほか:固定内斜視手術(横山法)と硝子体手術を併用した高度近視網膜剥離の1例.眼紀57:695-698,2006硝子体手術の●連載固定内斜視眼に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図2術前後の眼位(正面)硝子体手術には支障のない程度の眼位を確保することができた.術前術後図3術後眼底写真網膜の復位が得られた.図1横山法のシェーマ本症例では右眼の内直筋を7mm後転し上直筋,外直筋を基始部から14mmでそれぞれ半筋幅結紮した.14mm14mm下直筋上直筋外直筋半筋幅結紮内直筋7mm

眼科医のための先端医療90.新しいレーザースペックルフローグラフィー(LSFG-NAVI)による網脈絡膜の血流測定

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088270910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに現在網脈絡膜の造影検査にはフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)とインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)が行われています.これらの検査は,得られる診断的な意義は多いのですが,リアルタイムでの血流の定量化が困難であり,疾患の超早期の血流値変化の観察や被験者の継続的なフォローアップには不向きな面が多くあります.また,造影剤投与によってときに薬剤性のショックで,重篤な状態に陥る危険性が指摘されています.造影剤の使用が不要で血流の定量的観察が可能な網脈絡膜の血流測定装置があれば,診断技術の向上だけでなく,それによる副作用の出現の問題は一切解決します.そこでレーザーを光源に利用しドップラー効果によるビート信号を観測するレーザードップラー血流計が開発されましたが,測定範囲が狭く時間分解能が十分でないなどの理由から,残念ながら広く臨床応用されているとはいえない実情です.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)は眼底の広い範囲をレーザーで照明し,イメージセンサーを検出系に用いた新しい網脈絡膜血流測定装置で,任意の点や広い領域を自由に設定しその網脈絡膜の血流動態の定量的観察が可能になりました.本稿ではLSFGの測定原理を解説し,その利点や問題点の検討を行います.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)の測定原理830nmのダイオードレーザーを光源にし,レーザーを生体組織のような散乱粒子の集団に照射すると,反射散乱光が干渉しあい,スペックルパターンとよばれるランダムな斑点模様を形成します.このスペックル信号は赤血球などの散乱粒子が移動することで,干渉条件が刻々と変化し,時間とともに光強度分布が変化する動的スペックルとなります.この反射光により形成されたスペックルパターンを,結像面に置いたイメージセンサーで検出し,この信号をコンピュータ処理することにより,変化率のマップを求め,二次元マップとしてカラー表示する装置がレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)です(図1).最新式の装置ではハードとソフトの改良により,空間・時間分解能が飛躍的に向上し,血流マップを毎秒30フレームの動画で表示することが可能になりました.LSFG(LSFG-NAVI)の特徴と利点本装置による測定では,安全に眼底血流を1回で広範(77)シリーズ第90回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊(九州医療センター眼科)新しいレーザースペックルフローグラフィー(LSFG-NAVI)による網脈絡膜の血流測定図2LSFG-NAVIによる測定の実際測定装置は光学系(カメラ)とPCにより構成されており,従来機と比較しコンパクトな形態となっている.図1LSFGの測定原理レーザーで生体組織を照射し,散乱光をイメージセンサー上に結像させ,スペックル(斑点模様)信号を検出する.レーザー結像レンズスペックル像点P物点(ある体積をもつ)網膜の散乱粒子———————————————————————-Page2828あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008囲を連続的に,しかも非侵襲的かつ定量的に測定でき,測定後に任意の点や広い領域を自由に設定しその網脈絡膜の血流動態を定量的に観察できます.開発当初は従来の眼底カメラに外付けの形態をとっており,測定画角や解像度も十分ではありませんでしたが,その後徐々に開発が進みコンパクトなLSFGの専用機が開発されました(図2).図3には実際の測定画面を示します.1回の測定には4秒程度を要します.測定画角は21°で,これまでの器機と比較し画素数も増加し,解像度も向上しました.測定領域はラバーバンドにより自由に設定でき,血流はブレ率(meanblurrate:MBR値)として表示されます.MBR値は計算式による相対値であるため,血流の増減の比較は,一般に初回測定の値を基準に,測定領域の血流の増減を百分率で評価します.血流の時間的変化を動画で観察できる点も,新しい情報として活用できる可能性があります.レーザー眼底血流測定装置で最も心配な点は,安全性です.安全レベルは第三者認証機関による試験においても,クラス1Mと認定されています.これは眼底に障害が発生する可能性のない,低レベルの光であることを示す国際規格であり,実際暗室内で本装置を使用すれば,無散瞳でも測定することが可能になりました.今後いくつかの問題点が克服できれば,本装置によりFAやIA以上の有用な血流の情報を得られる可能性があります.さらに,従来法でときに生ずる薬剤性のショックで,重篤な状態に陥る被験者の危険性の問題も回避できます.LSFGの問題点LSFGについては利点だけではなく,問題点も存在します.まず解像度が向上したとはいえ,従来の検査法(FAやIA)と比較し画質が劣る点です.実際に本装置単独では従来の診断レベルには及びません.現時点で本装置を用い臨床評価を行う場合は従来のFAやIAを併用し行わざるをえないのが現状です.また,測定原理が散乱分子の測定であるため,眼内レンズ挿入眼や高度の白内障を有する眼では測定が困難であり,測定値(MBR値)が絶対値でないため被験者間での比較が困難であるという欠点も存在しています.したがって,被験者1人について経時的観察を行うことは可能ですが,個々被験者間の比較は困難です.さらにレーザー光が単波長であるため,網膜と脈絡膜血管の分離が困難である点などがあげられます.(78)図3LSFGによる測定画像拡張期左眼の血流マップ(A)と収縮期の血流マップ(B)を示す.ラバーバンドにより自由に測定点や範囲を指定できる.1回測定分のデータの合成により再構成した血流マップ(C)では網膜血管は23分枝程度まで描出され,背景には一部脈絡膜血管の観察も可能である.血流値をグラフ化すると拍動による血流の変化が観察される(D).———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008829(79)にきわめて有用な情報が得られる可能性があります.すなわち,従来行われてきた緑内障などの臨床研究のさらなる発展が期待できるだけではなく,網脈絡膜の経時的な血行動態を正確に経時的に追跡できれば,生活習慣病などへの早期診断に応用できる可能性もあります.おわりにLSFGでは眼底血流を安全に低侵襲である程度まで定量的測定できる反面,上記のようにさらに技術的に改良する点が数多く存在するのも事実です.まだまだ発展途上の装置であり,これら問題点を克服することにより,今後使用用途も拡大しさまざまな疾患の診断と病態研究■「新しいレーザースペックルフローグラフィー(LSFG-NAVI)による網脈絡膜の血流測定」を読んで■今回は江内田寛先生による網脈絡膜の新しい血流測定技術についての解説です.江内田先生の紹介されたレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)は眼底の広い範囲をレーザーで照明して網脈絡膜の血流を測定する装置で,二次元の画像上に血流情報をスーパーインポーズできるので臨床的な有用性はきわめて高いと考えられます.このようにLSFGは眼底血流を安全に低侵襲である程度まで定量的測定できる画期的な方法ですが,示された図をみても解像度が従来の検査法(FAやIA)と比較し画質が劣っています.ただ,新しい画像技術は近年,長足に進歩しておりますから,解像度のよい眼底画像と血流情報の両方を提供する検査法は今後,開発される可能性は高いと考えます.臨床的には1回の測定が4秒というのはむずかしいです.もう少し高速化が必要かもしれません.現在,日本人での視力障害の約20%が糖尿病網膜症であり,加齢黄斑変性,網膜静脈閉塞症などの加齢や高血圧・動脈硬化症に併発する疾患の多くにおいて網膜血流障害が病態の中心です.これらの診療に大切な血流の動態は画像診断(FAやIA)が臨床の主流でした.われわれが診療をしていて,定量的に検査結果を解析できればと考えることが多くあり,これまで,血流の動態を測定する試みは多くありました.この問題を臨床の現場で解決するLSFGには大きな臨床的な有用性があると考えられます.さらに,われわれ眼科臨床医にとって不可欠のフルオレセイン蛍光眼底造影検査はきわめて鮮明な画像が臨床の現場で利用できるすぐれた検査法ですが,アナフィラキシーショックの可能性を完全に否定できないという点が臨床医のストレスになっています.LSFGといった低侵襲の検査の導入に伴い,多くの眼科診療施設で網脈絡膜血流動態についての安全に高度なデータが得られ,診療の質の向上に役立つものと考えます.もう一つの臨床的な意義は,治療薬開発における網膜血流への影響,治療効果の検証にきわめて有用ということです.現時点では糖尿病網膜症の治療のための薬剤の候補は多くありますが,認可された薬剤はありません.薬効の判定には網膜厚,視力をエンドポイントにしていますが,血流動態への影響を簡便に正確に測定し評価することが可能になればきわめて有用と考えられます.糖尿病網膜症の病態の研究が進歩したにもかかわらずその治療薬が認可されません.いろいろな理由があると考えますが,動物実験と異なり複雑なヒトの病態を臨床的に簡便に把握する検査法がまだ不足しているため,病態にあった治療薬の選択ができない可能性も考えられます.病態の把握には血流動態が部位により異なっていることを定量的に示されるLSFGは最適であると考えます.新しい治療法の開発には新しい検査法の開発は不可避です.今回,ご紹介いただいたLSFGは網脈絡膜疾患の診療を大きく変える可能性を示す検査法です.山形大学医学部情報構造制御学講座視覚病態学分野山下英俊☆☆☆

サプリメントサイエンス:サプリメントはどのように考えるべきか

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088230910-1810/08/\100/頁/JCLSサプリメントへの関心が高まっている.眼科領域では特に加齢黄斑変性に対して大規模前向き研究(AREDS)でサプリメントによる病状の進行抑制効果が証明されて以来,実際に臨床で使われることが多くなった.日本においてもボシュロム社,ロート製薬,ナチュメディカ社など数社がAREDSに基づいた内容のサプリメントの販売を始めており,患者からの問い合わせも増えているという.また一般に眼に良いとされるブルーベリーに含まれるアントシアニンなども,わかさ生活社の“ブルーベリーアイ”が市場で大きな反響をよぶなど,一般の関心も高くなっている.われわれ眼科医は今までおもに保険収載薬を中心に眼科診療を行ってきており,これらの薬剤については学ぶ機会も多い.一方,サプリメントについては概要は知っていても,詳細を学ぶチャンスが少なかった.しかしながらこれからの時代において,予防医学が重要視されることは明らかで,サプリメントについて正確な知識をもっていることが要求されてくるものと思われる.そこで今月号より“サプリメントサイエンスセミナー”として眼科医が知っておきたいサプリメントの基礎知識の講座を開設する.サプリメントとは?サプリメントは文字どおりに“補完食品”であり,ビタミンに加えて,必須微量ミネラル,ポリフェノールやカロテン類などの抗酸化物質,ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの必須脂肪酸,ラクトフェリンなどの整腸因子など多岐のものが含まれる.基本的なビタミンばかりでなく,アスタキサンチンなどに代表される食品の中の機能成分は現在フードファクターとして注目を集めているが,これらを抽出しサプリメントとして使われることも多くなっているのが,現在のサプリメントの大きな流れともいえる.これらのサプリメントは加齢黄斑変性など特定の疾患の予防目的に使われることもあるが,一般的には全身の健康保持やアンチエイジング医学の一環として使われることが多い.アンチエイジング医学は加齢に焦点をあてた予防医学と考えられる.近年アンチエイジング医学が認められるようになってきた背景には,エイジングのメカニズムが少しづつではあるが解明され,信頼できる仮説が提唱されてきたことが大きい.エイジングの2大仮説といわれるものに“酸化ストレス仮説”と“メタボエイジング仮説”とがあり,サプリメントについてもこの2つの仮説のなかで考えていくと理解しやすい.酸化ストレス仮説とサプリメント加齢の酸化ストレス仮説とは“身体の構成成分である,蛋白質,脂質,核酸などが酸化されることが加齢をひき起こす”という仮説である(図1)1).身体機能の維持のためには酵素類が効率よく働く必要があるが,酵素などの機能蛋白が酸化されると機能を失う.また本来なら分解除去されるべき蛋白質が酸化されると分解ができなくなり,異常蛋白として蓄積してしまう.Alzheimer病におけるbアミロイドや,加齢黄斑変性におけるドルーゼン蛋白などはまさにこの例である.そこで酸化ストレスを軽減させるために,(1)抗酸化物質の摂取,(2)抗酸化酵素の活性化が重要となる.この目的のためにサプリとしてはビタミンA,C,Eを中心としたAREDSサプリメント,ルテイン,アスタキサンチン,アントシアニン,亜鉛や微量ミネラルなどが含まれる24).これらのサプリメントについては本セミナーのなかで順番に取(73)サプリメントサイエンスセミナー●連載①監修=坪田一男1.サプリメントはどのように考えるべきか坪田一男慶應義塾大学医学部眼科図1酸化ストレス仮説の概念図酸エイジング———————————————————————-Page2824あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008りあげていく予定である.メタボエイジング仮説とサプリメント現在,厚生労働省は国民の健康保持のために,メタボリックシンドロームをターゲットに大きなキャンペーンを展開している.メタボリックシンドロームは体脂肪が増え,血圧が上がり,耐糖能が悪化し,血中脂肪酸が増える.これにより癌の発生率は増え,糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発生率が高まる.これはまさに加齢そのものといえる.そこでメタボリックシンドロームは加齢を促進する症候群ととらえることができる.これがメタボエイジングという仮説である.現在カロリーリストリクション(CR)といって摂取カロリーを6570%に減らすと寿命の延長がさまざまな動物でみられており,ヒトにおいてもCRの効果が証明されつつある5).CRのメカニズムについてはおもにインスリンIGF(インスリン様成長因子)シグナルの低下と,サーチュインの活性化であることがわかりつつあり,分子メカニズムからの対応ができるようになってきた(図2)6).これは逆に,メタボリックシンドロームはCRと逆方向のものということができる.メタボエイジングに対抗するためのサプリメントとしてはサーチュインを活性化するレスベラトロール,オメガ3脂肪酸,ラクトフェリン,糖吸収抑制ファイバーなどがある7,8).これらについても順に解説していく予定である.ビタミンにおける最低必要量と最適量ビタミンには最低限摂取しないと特定の疾患に罹患する“最低必要量”が決められている.たとえば,ビタミンCであれば1日の摂取量が100mg(アメリカでは60mg)ないと壊血病の危険が増えるといわれている.一方,ビタミンには最適量という概念があり,特定の疾病予防というよりも抗酸化機能の向上,免疫機能の向上のために用いるための“最適量(オプティマルドース)”という考え方がある.ビタミンCでいえば1日の摂取量として5002,000mgとなる.実際AREDSで使われているビタミンCの量は500mgと,最低必要量の5倍以上である.レモン1個に含まれるビタミンCの量は約30mgといわれているので,最低量であればなんとか摂取することは可能であろう.しかしながら最適量を摂取するためには多量の果物や野菜を食べなければならずカロリーオーバーになると考えられる.サプリメントが必要な理由がここにある.さらに各種のビタミンに対してすべてを網羅するように摂取するためには食品だけからは困難であり,ここでもサプリメントの有用性が指摘されている.エビデンスサプリの考え方サプリメントが身体に良いといわれる根拠には,細胞レベルの実験室のデータから動物実験,観察研究,そして無作為大規模前向き介入研究とさまざまなレベルのデータが存在する.動物実験で効果が証明されてもヒトではまったく効果がないこともあり,その解釈には慎重を要する.また“ビタミンEをたくさん摂取している群には心臓病が少なかった”という観察研究に対して,“ビタミンEを長期にわたって投与したところ心臓病の発生率に差がなかった”というように介入研究においてはその効果が否定されることもある9).オメガ脂肪酸については介入研究においてはっきりと心臓病に対する効果がわが国において証明された10).一方,ビタミンAとEについてはむしろ死亡率が増大するという大規模研究の結果も出ており,単に身体に良いといわれているから単独のビタミンを摂取するという時代は終わりを迎えようとしている.抗酸化サプリメントについてはAREDSのように複数のビタミンを組み合わせて使うという方法が一般的になりつつあり,研究においても,単独よりも複合物を対象とするものが多くなってきた.現在アメリカで進行中のAREDS2においては,ビタミンA,C,E,亜鉛,銅に加えてオメガ3や,ルテインの効果が検証されており,その結果が期待されている.サプリメントについてはエビデンスがしっかりとあるものを中心にわれわれ眼科医は(74)図2カロリーリストリクション仮説のメカニズムカロリーリストリクションインスリンシグナにるのサーイン———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008825(75)tion.JAMA297:986-994,20076)GuarenteL,PicardF:Calorierestriction─theSIR2con-nection.Cell120:473-482,20057)BaurJAetal:Resveratrolimproveshealthandsurvivalofmiceonahigh-caloriediet.Nature444(7117):337-342,20068)KotoTetal:Eicosapentaenoicacidisanti-inammatoryinpreventingchoroidalneovascularizationinmice.InvestOphthalmolVisSci48:4328-4334,20079)BjelakovicGetal:Mortalityinrandomizedtrialsofanti-oxidantsupplementsforprimaryandsecondarypreven-tion:systematicreviewandmeta-analysis.JAMA297:842-857,200710)YokoyamaMetal:Eectsofeicosapentaenoicacidonmajorcoronaryeventsinhypercholesterolaemicpatients(JELIS):arandomisedopen-label,blindedendpointanal-ysis.Lancet369(9567):1090-1098,2007導入していくのがやはり良いであろう.本セミナーで学べること本セミナーは第1期として表1のようなプログラムで進めていく予定である.おもなセクションにおいては,1)サプリメント名2)構造式3)一般的な薬理,生理作用4)1日必要量(最低必要量と最適量)5)含有食品6)眼科への応用7)摂取すべきエビデンスレベル(A:摂取すべき,B:リスクある人は摂取すべき,C:どちらともいえない)をカバーする予定である.よってこのセミナーにより,サプリメントの基本的な知識が得られるものと期待される.ぜひいっしょに勉強させていただければと思う.文献1)HarmanD:Aging:atheorybasedonfreeradicalandradiationchemistry.JGerontol11:298-300,19562)Arandomized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandEandbetacaroteneforage-relatedcataractandvisionloss:AREDSreportno.9.ArchOphthalmol119:1439-1452,20013)Izumi-NagaiKetal:Macularpigmentluteinisantiin-ammatoryinpreventingchoroidalneovascularization.ArteriosclerThrombVascBiol27:2555-2562,20074)OhgamiKetal:Anti-inammatoryeectsofaroniaextractonratendotoxin-induceduveitis.InvestOphthal-molVisSci46:275-281,20055)FontanaL,KleinS:Aging,adiposity,andcalorierestric-☆☆☆表1本誌連載「サプリメントサイエンス」セミナーの構成内容サプリメントはどのように考えるべきか学説学イン学スタサンン学レストロー学ントシニン学学メ酸と量ミ学クトリンー学イー学ビタミン内学ビタミンどどはにる

眼感染アレルギー:自然免疫と眼表面炎症性疾患

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088210910-1810/08/\100/頁/JCLS粘膜上皮は主として物理的バリアーとして働くとみなされてきたが,最近では,粘膜上皮そのものが各種サイトカインや抗菌物質を産生し,生体防御の第一線を担っていることがわかってきた.実際,眼表面の粘膜上皮である角膜上皮や結膜上皮はインターロイキン(IL)-6,IL-8などの炎症性サイトカインやディフェンシンなどの抗菌物質を産生する.また,眼表面を覆う涙液は,免疫グロブリンA(IgA),ラクトフェリン,リゾチームなどの抗菌物質,そして杯細胞の産生するムチンを含み,非特異的な感染防御機構を形成している.その一方で,眼表面には表皮ブドウ球菌やアクネ菌などの常在細菌も存在する1).細菌やウイルスなどの病原微生物の侵入に対する感染防御機構は,自然免疫と獲得免疫に分類される.獲得免疫は,抗原特異的Tリンパ球とBリンパ球によって誘導されるが,クローン増殖する必要があるために,機能するまでに数日の時間を要する.これに対して自然免疫は,獲得免疫が作動する前の感染早期に働く防御機構である.従来,この自然免疫は,好中球やマクロファージなどの貪食細胞,補体,抗菌物質などを中心とした非特異的防衛機構であると考えられてきた.しかし,近年Toll-likereceptor(TLR)が微生物の構成成分を特異的に認識し(図1),自然免疫において重要な役割を担っていることが明らかとなった.筆者らは,眼表面上皮細胞は,TLRsを発現するが,その局在や反応性はマクロファージなどの免疫担当細胞とは異なり,細菌に対して容易には炎症反応を惹起しないことを報告してきた.一般に,マクロファージなどの免疫担当細胞は,細菌,真菌,ウイルスなどの各種菌体成分をTLRsを介して認識し各種炎症性サイトカインを産生するが,角膜上皮細胞,結膜上皮細胞は,菌体成分に対して必ずしも炎症性サイトカインを産生しない25).実際,眼表面には常在細菌が存在するにもかかわらず,健常状態では炎症を認めない.すなわち,眼表面には炎症を制御する機構,つまり,眼表面固有の自然免疫機構が存在すると推測される.さらに,筆者らは,自然免疫応答の異常が眼表面炎症に関与しうると考えている.TLRのシグナル因子であ(71)眼感染アレルギーセナー感染症と生体防御●連載⑥監修=木下茂大橋裕一6.自然免疫と眼表面炎症性疾患上田真由美京都府立医科大学眼科眼表面は,常在細菌叢が存在するにもかかわらず,健常状態では炎症を認めない.眼表面には,炎症を制御する機構,すなわち眼表面固有の自然免疫機構が存在し,その破綻により眼表面炎症が惹起されうると推測される.筆者らは,Stevens-Johnson症候群の発症に自然免疫応答の異常が関与している可能性を示す.TLR2TLR5TLR9TLR4Myd88NF-kBIkB炎症性サイトカインの産生非メチル化CpGDNAフラジェリンペプチドグリカンLPSチモザンTLR8TLR3TLR1TLR6degradationTRIFIRF-3IFN-a/b産生(細菌)(細菌)(真菌)一本鎖RNA(ウイルス)(細菌・ウイルス)二本鎖RNA(ウイルス)(細菌)(polyI:C)TLR7図1病原体認識機構Tolllikereceptors(TLR)TLR2はグラム陽性菌の細胞壁に含まれるペプチドグリカンを認識する.TLR2とTLR6は真菌の細胞壁成分であるチモザンを認識する.TLR4はグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖(LPS)を,TLR5は細菌が遊走する際に使用する鞭毛の構成成分フラジェリンをそれぞれ認識する.TLR9は細菌が多くもつ非メチル化CpGDNAを,TLR7とTLR8はウイルス由来の一本鎖RNAを,TLR3はウイルス由来の二本鎖RNAを認識する.———————————————————————-Page2822あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008り,NF-kBのregulatorの一つであるIkB-zのノックアウトマウスでは,杯細胞の消失を伴う眼表面炎症と口周囲の皮膚炎を生じる6,7).この皮膚炎は,表皮にアポトーシス細胞を伴い,アレルギー炎症とは異なる様相を示している.このマウスの病態から示唆を得て,筆者らは眼表面炎症性疾患に自然免疫応答の異常が関与している可能性を考えた.その一つがStevens-Johnson症候群(SJS)である.SJSは,全身の皮膚・粘膜にびらんと水疱を生じる全身性の皮膚粘膜疾患である.眼科的所見として,急性期には,偽膜形成と広範囲の角結膜上皮欠損,睫毛の脱落を伴った重度の結膜炎を生じる(図2a).慢性期には,結膜上皮が血管・結合織を伴って角膜表面を被覆すると,著しい視力障害をきたす.また炎症の後遺症として瞼球癒着,睫毛乱生,高度のドライアイなどが生じる(図2b).筆者らが診療した眼合併症を伴うSJS患者の95%以上が急性期または亜急性期に手足の爪がはがれた既往があり,慢性期にも変形した爪が観察されることが多い.SJSは,重篤な視力障害を合併する急性発症の薬害と考えられているが,薬剤投与の前にウイルス感染症を思わせる感冒様症状を呈することが多く,感染症が発症に関与している可能性がある.筆者らは,SJS発症の素因として自然免疫応答異常が関与している可能性を考え,遺伝子発現解析ならびに遺伝子多型解析を行った.末梢血単球を用いた遺伝子発現解析では,リポ多糖(LPS)刺激に対するIL-4R遺伝子の発現がSJS患者と健常人で異なった(図3a).さらに,このIL-4Rについて遺伝子多型解析を行ったところ,IL-4RのGln551Arg(rs.1801275)について有意な差を認めた(図3b).大変興味深いことに,喘息などのアレルギー疾患では,Arg551が健常人と比較して有意に増加するのに対して,SJSではGln551が有意に増加していた9).さらに,(72)SJSの発症にウイルス感染が大きく関与している可能性を考え,ウイルス由来二本鎖RNAのレセプターであるTLR3の遺伝子多型解析を行った.その結果,TLR3のrs.3775296に有意な相関が認められた10).このことは,SJSの発症に遺伝的素因が関係し,自然免疫応答の異常がその発症に関係している可能性を示唆している.常在細菌の存在する眼表面においては,自然免疫応答を感染防御の視点のみならず,常在細菌に対して炎症を生じにくい機構の存在に着目し,その破綻と関連づけて眼表面炎症性疾患を模索する必要がある.文献1)UetaMetal:JMedMicrobiol56:77-82,20072)UetaMetal:JImmunol173:3337-3347,20043)UetaMetal:BiochemBiophysResCommun331:285-294,20054)HozonoY,UetaMetal:BiochemBiophysResCommun347:238-247,20065)KojimaK,UetaMetal:BrJOphthalmol92:411-416,20086)UetaMetal:InvestOphthalmolVisSci46:579-588,20057)UetaMetal:InvestOphthalmolVisSci,2008,inpress8)UetaMetal:JAllergyClinImmunol120:1457-1459,20079)UetaMetal:BrJOphthalmol91:962-965,2007図3StevensJohnson症候群の遺伝的素因a:末梢血単球の遺伝子発現解析.SJS患者ではリポ多糖(LPS)に対するIL-4Rの遺伝子発現変化が健常人と異なる.b:IL-4RGln551Arg(rs.1801275)の遺伝子多型解析.SJSではA(Gln)が有意に増加している.図2StevensJohnson症候群の眼所見a:急性期.眼脂,偽膜,角結膜上皮欠損を伴った著しい結膜炎を生じる.b:慢性期.角膜への結膜組織の侵入,瞼球癒着,睫毛乱生を認める.

緑内障:血管新生緑内障に対する抗VEGF薬

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088190910-1810/08/\100/頁/JCLSVEGF血管新生緑内障における眼圧上昇の原因であるルベオーシス形成には,血管内皮増殖因子(vascularendo-thelialgrowthfactor:VEGF)が深く関与している.これに関する最初の報告は,1994年にさかのぼる1).Aielloらは,増殖糖尿病網膜症による虹彩ルベオーシスを有する眼において前房水中のVEGF濃度が上昇していることを報告した.その後,サル眼の硝子体にVEGFを注入すると虹彩ルベオーシスが惹起されること2)や,網膜中心静脈閉塞症による血管新生緑内障における虹彩ルベオーシスの消長に前房水中VEGF濃度が密接に相関していることなどが報告され3),抗VEGF薬による血管新生緑内障の治療の可能性が期待されていた.と場する抗VEGF薬抗VEGF薬として最初に市販された薬剤は,Avas-tinR(bevacizumab)である.これは,VEGFに対するヒト化マウス抗体であり,転移性大腸癌の治療に対して2004年2月に米国FDA(食品医薬品局)に認可された.一方,眼疾患では,MacugenR(pegaptanib,VEGF165を特異的に阻害するRNAアプタマー)とLucentisR(ranibizumab,VEGFに対するヒト化マウス抗体断片)がそれぞれ2004年12月と2006年6月に滲出型の加齢黄斑変性症に対してFDAに認可された.さらに,現在米国で治験中のものとして,VEGF-Trap(VEGFレセプターの結合ドメインをもつデコイ蛋白)やSirna-27(VEGFレセプター遺伝子に対するsiRNA)がある.しかし,血管新生緑内障に対して現時点で適応のある薬剤はない.2008年1月現在のPubMedの検索では,ルベオーシス眼に対する効果の報告は,LucentisRの1例4)以外すべてAvastinRによる.さらに,AvastinRの報告は2006年3月のAvery5)をはじめとして16報(46例55眼)あるが,前房内注射の1報6)以外すべて硝子体内注射である.血管新生緑内障の治療におけるAvastinRの位置づけ血管新生緑内障の治療には,新生血管の消退と眼圧下降を同時にかつ速やかに図る必要がある(表1).新生血管と高眼圧は互いに悪影響を与えるため,一方の治療が不十分であると病態の遷延化や再発を起こし難治性となる.また,新生血管による隅角閉塞が進展すると観血的緑内障手術や毛様体破壊術が不可避となる.新生血管の治療として,その原因である網膜虚血の解消のために汎網膜光凝固術や網膜冷凍凝固術が従来から行われている.しかし,即効性でないことや光凝固では中間透光体の影響,冷凍凝固では炎症の惹起が問題となる.一方,AvastinRの硝子体内注射は即効性であり,中間透光体の影響を受けず,炎症などの合併症の報告もほとんどない.しかし,AvastinRは網膜虚血そのものを解消するわけではないので,虚血が遷延している場合には,効果の減弱とともに新生血管の再発をきたす可能性がある.(69)緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄96.血管新生緑内障に対する抗VEGF薬東出朋巳金沢大学附属病院眼科近年開発された抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor,血管内皮増殖因子)薬は,加齢黄斑変性症や黄斑浮腫などの新たな薬物治療として脚光を浴びている.血管新生緑内障に対してもAvastinR(bevacizumab)が,ルベオーシスの消退,眼圧下降や濾過手術に伴う出血抑制に有効と報告された.しかし,現時点では適応外使用であり,長期的安全性などさらなる検討が必要である.表1血管新生緑内障の治療における抗VEGF薬の位置づけ新生血管薬療抗薬薬生療血体生———————————————————————-Page2820あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008管新生緑内障に対するAvastinRの効果当科では,学内倫理委員会での承認と慎重な同意取得の下にAvastinR(1.25mg/0.05ml)の硝子体内注射を施行している.2007年12月の時点で血管新生緑内障に対する初回投与例17例20眼について検討したところ(経過観察期間=5.1±3.2カ月,111カ月),注射後14日に新生血管の明らかな消退が全例にみられ(図1),20%以上の眼圧下降が2/3にみられた.14眼には注射125日(6.4±6.9日)後にマイトマイシンC併用線維柱帯切除術が施行されたが,術中・術後の著明な出血はみられなかった.3眼において10日7.5カ月後に新生血管の再発がみられたが,網膜光凝固の追加によって消退した.これらの結果は,過去の報告によく一致していた.また,術後経過観察期間が3カ月以上の11眼について,当科での以前のAvastinR非使用例34眼と比較したところ,AvastinR使用例のほうが翌日の前房出血と7日を超えて持続する前房出血の頻度が有意に少なく,生命表解析において15mmHgを基準眼圧とした場合に有意に眼圧コントロールが良好であった.後の展と題AvastinRの硝子体内注射は,今までのところ比較的安全であり,速やかにかつ確実にルベオーシスを消退させうる.これによって,隅角閉塞進展の抑制,難治・進行例の減少,濾過手術の予後の改善などが期待される.(70)さらに,今後使用可能となる新しい抗VEGF薬との効果との比較も注目される.しかし,網膜光凝固が不要になるわけではなく,AvastinRによって一時的に病態が修飾され,新生血管の再発を見逃すと難治化するおそれもある.さらに,現時点では大規模な多施設臨床治験は報告されておらず,今後安全性など未知の問題が生じてくる可能性もある.何よりも適応外使用であることから,慎重な使用と厳重な経過観察が不可欠である.文献1)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendotheli-algrowthfactorinocularuidofpatientswithdiabeticretinopathyandotherretinaldisorders.NEngJMed331:1480-1487,19942)TolentinoMJ,MillerJW,GragoudasESetal:Vascularendothelialgrowthfactorissucienttoproduceirisneo-vascularizationandneovascularglaucomainanonhumanprimate.ArchOphthalmol114:964-970,19963)BoydSR,ZacharyI,ChakravarthyUetal:Correlationofincreasedvascularendothelialgrowthfactorwithneovas-cularizationandpermeabilityinischemiccentralveinocclusion.ArchOphthalmol120:1644-1650,20024)DunavoelgyiR,ZehetmayerM,SimaderCetal:Rapidimprovementofradiation-inducedneovascularglaucomaandexudativeretinaldetachmentafterasingleintravitre-alranibizumabinjection.ClinExpOphthalmol35:878-880,20075)AveryRL:Regressionofretinalandirisneovasculariza-tionafterintravitrealbevacizumab(Avastin)treatment.Retina26:352-354,20066)GrisantiS,BiesterS,PetersSetal:Intracameralbevaci-zumabforirisrubeosis.AmJOphthalmol142:158-160,2006図1AvastinRの硝子体内注射を行った血管新生緑内障の1例70歳,男性,左眼増殖糖尿病網膜症による血管新生緑内障.左:AvastinRの硝子体内注射直後.隅角新生血管から著明な前房出血をきたした.瞳孔縁にもルベオーシスがみられる.右:注射後4日目.前房出血とルベオーシスはかなり消退した.しかし,眼圧は50mmHgで角膜浮腫がみられる.

屈折矯正手術:老視矯正エキシマレーザー照射プログラム:PACの実際

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088170910-1810/08/\100/頁/JCLS視機能への欲求が増大しており,従来は当たり前として受け入れられてきた老視をも何とか矯正しようという試みが始まっている.老視に対する対策としては,古典的方法である遠近両用の眼鏡を装用する方法が現状でも最も普及している.しかし,近年,コンタクトレンズ世代の高齢化に伴い,遠近両用コンタクトレンズの装用を選択する症例も徐々に出現してきた.また,白内障術後成績の向上により,眼内レンズ(IOL)自体をマルチフォーカルに設計したものや,アコモダティブIOLといわれる虹彩の動きにより調節力を得ようとするレンズも開発されている.一方,LASIK(laserinsitukeratomileusis)の普及と安全性の確立に伴い,従来は見合わせることの多かった,調節力が低下している中高年者にLASIKが行われる頻度が高まっている.近見視力を維持するため意図的に軽度の近視を残存させたり,片眼を遠見,反対眼を近見にあわせるモノビジョンを応用し,一定の良好な成績が報告されている1,2).しかし,個々の生活や就労の環境,ライフスタイルは千差万別であり,現状では老視治療の選択肢は多様なことが望まれる.今回紹介するPAC(pseudo-accommo-dativecornea,偽調節角膜)は,加齢により失われた調節力を,角膜をマルチフォーカルな形状にすることにより焦点深度を増加させ,網膜上に多焦点イメージを与える原理になっている.つまり,角膜をPAC形状にする新しいLASIKである.PACの原理角膜をマルチフォーカルに切除する方法として,現在2種類の切除方式が考案されている.角膜中央部を近見用に,周辺部を遠見用にするものと,反対に中央部を遠見用に,周辺部を近見用に切除する方法があり,PACは後者の方法を選択している.老視矯正用切除形状の概略を図1に示す.中央部35mm径に遠見用のエリア,周辺部67mm径に近見用エリアを有し,10mm径のスムーズなトランジション・ゾーンを有する.PACCalculatorというソフトを用い,照射プログラムを作成する.患者の年齢,術後屈折値,近見の加入度(67)図1PACの原理中央部を遠見用に,周辺部を近見用にデザインされている.:遠視切除:近視切除?周辺部6~7mm径:近見用(大きなOZ径の遠視切除)?10mm径のスムーズなトランジション・ゾーン?中央部3~5mm径:遠見用近見用遠見用図2PACCalculatorの入力画面:患者データ年齢,度数,加入度,瞳孔径などを入力する.屈折矯正手術セースルアップ●連載監修=木下茂大橋裕一坪田一男97.老視矯正エキシマレーザー照射プログラム:PACの実際原祐子愛媛大学医学部眼科PAC(pseudo-accommodativecornea,偽調節角膜)は角膜をマルチフォーカルな形状に切除し,網膜に多焦点のイメージを与えることによって老視を矯正する新しいコンセプトのLASIK(laserinsitukeratomileusis)である.症例の選択,長期的な予後,術後視力のqualityなど今後さらなる検討が必要であるが,従来は“仕方がない”とあきらめられていた老視をも克服できる可能性がみえてきていることは間違いない.———————————————————————-Page2818あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008数と瞳孔径を入力する(図2).また,患者の日常生活についての問診入力画面があり(図3),生活労働環境,運転頻度,読み書き頻度などを確認し,遠方視,中間視,近方視のうち,どこを重要視するのかを決定すると,照射プログラムが自動的に作成される(図4).まず,円柱矯正をあらかじめ行ったのち,遠視矯正と近見加入度数分を矯正し,一旦過剰な遠視状態にする.その後中心部を遠見用に戻し,スムージングを行う.術前後のOPDマップを図5に示すが,中心部のグリーンの部分が遠見用,周辺の赤い部分が突出した近見用の部分になる.瞳孔径が極端に小さい症例は,近見用の部分が有効に使用できないため,良好な結果が期待できない.術成績PACを考案したTerandroらは,遠視83眼,近視77眼に対する成績を報告している3).術前平均度数は,遠視群は+1.54±0.90D,近視群は4.31±2.62D,術前の近見加入度数は,遠視群では2.40D,近視群は1.75Dであった.術後3カ月の屈折度数は,遠視群は0.19±0.58D,近視群は0.50±0.75Dであり,近見加入度数が遠視群では0.11D,近視群では0.07Dと劇的に減少するすばらしい成績である.すでに,フランス,ドバイ,フィリピンなどで約5,000眼以上がPACによる老視矯正手術を施行されている.長期的な予後,術後視力のqualityなど今後さらなる検討が必要であるが,老視矯正の新たな選択肢になる可能性は高い.文献1)GhanemRC,delaCruzJ,TobaigyFMetal:LASIKinthepresbyopicagegroup:safety,ecacy,andpredict-abilityin40-to69-year-oldpatients.Ophthalmology114:1303-1310,20072)ReillyCD,LeeWB,AlvarengaLetal:Surgicalmonovi-sionandmonovisionreversalinLASIK.Cornea25:136-138,20063)TelandroA:Pseudo-accommodativecornea:anewcon-ceptforcorrectionofpresbyopia.JRefractSurg20:S714-717,2004(68)☆☆☆図4PACCalculatorの照射プログラム画面必要事項を入力することにより照射プログラムが自動的に作成される.まず、円柱矯正近見用の矯正中心エリアを遠見用に戻すスムージング図3PACCalculatorの入力画面:問診患者の日常生活についての問診を入力し,遠方視,近方視のいずれを重視しているか確認する.図5術前後のOPDマップグリーンの部分が遠方視用,周辺の赤い部分が突出した近方視用の部分.

眼内レンズ:屈折型多焦点眼内レンズ

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.6,20088150910-1810/08/\100/頁/JCLS海外で,遠方のみでなく近方も裸眼で見ることができる多焦点眼内レンズが注目され,わが国でも2007年に,新世代の屈折型および回折型多焦点眼内レンズが厚生労働省の承認を受けた.どちらのタイプも20年前に使用された屈折型および回折型多焦点眼内レ(65)ンズと基本構造は同じである.これらのレンズの利点と問題点を理解しないで挿入すると,以前と同様に,多焦点眼内レンズという新しいレンズに飛びついたものの,十分な臨床結果が得られず,その後の挿入を断念するといった結果にもなりかねない.ここでは,わが国で使用ビッセン宮島弘子東京歯科大学水道橋病院眼科眼内レンズセー監修/大鹿哲郎262.屈折型多焦点眼内レンズ屈折型多焦点眼内レンズは,遠用と近用度数を同心円状に合わせたデザインで,わが国ではAMO社リズームが使用されている.回折型と比べ,遠方優位デザインなので,遠方視力は良好,近方視力は,近用度数部分を使える瞳孔径が必要なので,比較的若い症例で良好である.回折型に比べ夜間グレア,ハローがでやすい点に注意する.1リズームアクリル製スリーピースレンズ.光学部は単焦点眼内レンズのセンサと同じく,シャープエッジとなっており,後発白内障抑制効果が期待される.図2リズームの特徴と改良点シリコーン製アレイと基本的には同様の5ゾーンデザインである.近方視力について,第2ゾーン(近用)の面積を5%大きくしている.夜間のグレア,ハローについて,第3ゾーンの面積を大きくし,第4,5ゾーンを小さくすることで対処.各ゾーンの直径ゾーンリズームアレイ12.1mm2.1mm23.45mm3.4mm34.30mm3.9mm44.6mm4.6mm54.6mm~4.6mm~第5ゾーン(遠用)第1ゾーン(遠用)第2ゾーン(近用)移行部(非球面)第4ゾーン(近用)第3ゾーン(遠用)アレイより面積+5%アレイより面積-55%アレイより面積+80%54321←図3アレイ挿入後→図4リズーム挿入後———————————————————————-Page2可能なアクリル製屈折型多焦点眼内レンズについて,従来のシリコーン製屈折型多焦点眼内レンズ(アレイ)からの改良点などを含め,その特徴を紹介する.屈折型多焦点眼内レンズは,光学部が5ゾーンのポリメチルメタクリレート(PMMA)製PA154Nが1996年に,シリコーン製SA40Nが2000年に承認を受け,アレイという名称で,リズームが出るまでわが国で使用され,その臨床成績が報告された1.2).広く普及しなかった理由は,近方視力が期待ほどでなかったこと,夜間グレア,ハローを訴える例が多いことであった.PMMAからシリコーン素材となり小切開から挿入可能になったが,単焦点眼内レンズ挿入後より,視力が後発白内障に影響されやすく,YAGレーザーを必要とする例が多い印象であった.夜間グレア,ハローは,瞳孔が散大した際,近用ゾーンである第4ゾーンを通った光が影響することが危惧され,この部分の面積が大幅に減少された.実際のリズーム挿入例で,以前のアレイに比べて,グレア,ハローを訴える症例の割合は減っているが,単焦点眼内レンズや回折型多焦点眼内レンズよりも多い.遠方視力は,遠用ゾーンが中央にあり遠方優位の多焦点眼内レンズであるため,非常に良好である.単焦点眼内レンズ挿入後の遠方の見え方に比べ,昼間に関しては同等の視力結果が得られている.米国で,回折型多焦点眼内レンズが承認を受け,急速に挿入例が増加したが,術後の見え方に不満を訴える例が発生した.いわゆるwaxyvisionまたはvasalinevisionと表現されている見え方である.近方裸眼視力は明らかに屈折型よりも良好であるが,基本となる遠方視力に関しては,屈折型の利点が再認識された.筆者らは実際の挿入成績を報告したが,両眼挿入例において,遠方視力は裸眼および矯正とも単焦点と同等,近方裸眼視力は平均で0.4と単焦点の0.2より良好であった3).焦点深度測定では,なだらかな二峰性の焦点深度曲線が得られている4).グレア,ハローについては術前に十分説明しインフォームド・コンセントをとることで,術後に問題になった例はなかった3).文献1)NegishiK,Bissen-MiyajimaH,KatoKetal:Evaluationofazonal-progressivemultifocalintraocularlens.AmJOphthalmol124:321-330,19972)HayashiK,HayashiH,NakaoFetal:Correlationbetweenpupillarysizeandintraocularlensdecentrationandvisualacuityofazonal-progressivemultifocallens.Ophthalmology108:2011-2017,20013)中村邦彦,ビッセン宮島弘子,大木伸一ほか:アクリル製屈折型多焦点眼内レンズ(ReZoom)の挿入成績.あたらしい眼科25:103-108,20084)大木伸一,ビッセン宮島弘子,上野里都子ほか:多焦点眼内レンズの焦点深度.日本視能訓練士協会誌47:72,2006