———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS環境要因と喫煙や食事などの個人要因が修飾することにより発症する.外的要因のうち日光の紫外線や青色光およびタバコの煙は,活性酸素やフリーラジカルを発生させる.その発生を抑えるのが抗酸化物質である.喫煙は,抗酸化物質であるビタミンCを破壊する.II活性酸素,フリーラジカルと抗酸化物質活性酸素は老化の原因としても注目されている.われわれの生きていくうえでの必須エネルギーである酸素が細胞内のエネルギー代謝の過程で活性酸素に変化する.スーパーオキシド,過酸化水素,ヒドロキシラジカル,一重項酸素などの活性酸素は反応性の高い不安定な酸素分子である.そのなかでスーパーオキシド,ヒドロキシラジカルは,対になっていない電子をもつフリーラジカルで,まわりの分子から電子を奪い安定しようとする酸化反応を連鎖的にひき起こす.これら活性酸素を分解し,最終的に水と酸素にする酵素がスーパーオキシドジスムターゼ,グルタチオンペルオキシダーゼ,カタラーゼであり,これらの補酵素としてつぎにあげる体内の微量元素が存在する.亜鉛と銅とマンガンはスーパーオキシドジスムターゼ,セレンはグルタチオンペルオキシダーゼ,鉄はカタラーゼの補酵素で抗酸化ミネラルである.また,体内酵素のほかに,対外から補給されるb-カロチン(ビタミンA),ビタミンC,ビタミンE,ミネラルなどの抗酸化物質も活性酸素を消去する働きがあるとされている(b-カロチンは生体内でビタミンAにはじめにサプリメントとは「補足」という意味があり,食事で摂取しにくいあるいは不足しがちな必要栄養成分を錠剤などにした補助食品のことで,手軽に摂取できる利点がある.加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)のわが国での疫学調査である久山町研究でみるとAMDの頻度は,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)による滲出型が0.67%,地図状萎縮がみられる萎縮型が0.2%で合わせて0.87%である.一方,ドルーゼンや網膜色素上皮の異常のみの前段階の頻度は13.6%であり,予備群の管理と発症予防が重要である1,2).実際の診察で患者から進行の予防あるいは片眼のみAMDに罹患している場合に僚眼の発症予防のためになにか薬はないかと聞かれることがあるが,実際に処方できる薬はなくサプリメントならあると返答する.しかし,眼に良いと称して販売されているサプリメントは多種多様であり,それらの多くはエビデンスに基づいているわけでない.そのなかでOcuvite?は,米国で行われた大規模比較臨床試験によって滲出型AMDへの進行を減少できることが立証されたものを基準とした抗酸化物質とミネラルからなるサプリメントである.本稿では,その臨床試験に基づいたOcuvite?を中心に述べる.IAMDの発症要因AMDは,遺伝的な要因に日光曝露と受動喫煙などの(31)???*RyuzaburoMori:日本大学駿河台病院眼科〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台1-8-13日本大学駿河台病院眼科特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):297~301,2007サプリメント:Ocuvite???????????:????????森隆三郎*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007変わる)(図1).しかし,代謝のバランスが崩れると分解されなかった活性酸素は細胞を障害すると考えられている.フリーラジカルは,特に酸化しやすい細胞膜の脂質(不飽和脂肪酸)と反応する.視細胞外節は多価不飽和脂肪酸を豊富に含み障害されやすい.視細胞外節は網膜色素上皮細胞によって貪食され消化されるが,過酸化により残った残渣,いわゆるドルーゼンはBruch膜の脆弱化の原因となりCNV発生と関連がある.後述する黄斑色素(カロチノイド)であるルテインとゼアキサンチンも抗酸化物質であり視細胞外節に多く存在し3),酸化の連鎖的拡大を断ち切っている.IIIAge-RelatedEyeDiseaseStudy(AREDS)4)AREDSは,AMDと白内障に対して高用量の抗酸化物質と亜鉛の投与の臨床効果を検証することを目的として米国で行われた大規模な無作為プラセボ対照臨床試験である.AREDSreportNo.8によると調査は1992年からはじまりAMDの被験者は55~80歳の3,640名である.(この臨床試験は,対象者が多く,平均観察期間が6.3年で,脱落者が2.5%未満であることからevidence-basedmedicine:EBMでは信頼度が非常に高い.)被験者は黄斑所見と視力によって以下の3グループに分けられた(図2a).①初期グループ:多発する小さいドルーゼン(<63?m),単発の中程度の大きさのドルーゼン(63~124?m),網膜色素上皮異常,が少なくとも1つ(32)図1活性酸素と抗酸化物質?活性酸素スーパーオキシド,過酸化水素,ヒドロキシラジカル,一重項酸素?抗酸化物質活性酸素を消去する酵素と補酵素として働く抗酸化ミネラルスーパーオキシドジスムターゼ─亜鉛,銅,マンガングルタチオンペルオキシダーゼ─セレンカタラーゼ─鉄体外から補給される抗酸化ビタミンb-カロチン(ビタミンA),ビタミンC,ビタミンEa.被験者の黄斑所見と視力による分類図2Age-RelatedEyeDiseaseStudy(AREDS)reportNo.8:加齢黄斑変性への高用量の抗酸化物質と亜鉛の投与の大規模無作為プラセボ対照臨床試験①初期グループ多発する小さいドルーゼン(<63?m),単発の中程度の大きさのドルーゼン(63~124?m),網膜色素上皮異常,が少なくとも1つみられ,視力は両眼とも20/32以上.②中期グループ両眼ともにAMDの所見(中心窩にかかる地図状萎縮,またはCNV)はみられないが,少なくとも片眼が20/32以上の視力で大きなドルーゼン(≧125?m),広範囲にある少数の中程度の大きさのドルーゼン,中心窩外に地図状萎縮,が少なくとも1つみられる.③後期グループ対象眼はAMDの所見がみられず,20/32以上の視力を満たし,かつ他眼にAMDの所見あるいは20/32未満の視力低下を説明できるAMDに基づく異常所見がみられる.c.中期および後期グループの各投与群とプラセボ群との比較結果?AMDへの進行の抑制抗酸化物質オッズ比0.76p=0.03亜鉛オッズ比0.71p=0.008抗酸化物質+亜鉛オッズ比0.66p=0.001?視力低下を軽減(15文字以上の視力低下)抗酸化物質オッズ比0.85p=0.16亜鉛オッズ比0.83p=0.10抗酸化物質+亜鉛オッズ比0.73p=0.008?CNVの発生の抑制抗酸化物質オッズ比0.79p=0.09亜鉛オッズ比0.73p=0.02抗酸化物質+亜鉛オッズ比0.62p=0.001b.4種類の製剤①抗酸化物質(ビタミンC500mg,ビタミンE400IU,b-カロチン15mg)②抗酸化物質+亜鉛(ビタミンC500mg,ビタミンE400IU,b-カロチン15mg,酸化亜鉛80mg,酸化銅2mg)③亜鉛(酸化亜鉛80mg,酸化銅2mg)④プラセボ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???みられ,視力は両眼とも20/32以上を満たす1,063名.②中期グループ:両眼ともにAMDの所見(中心窩にかかる地図状萎縮,またはCNV)はみられないが,少なくとも片眼が20/32以上の視力で大きなドルーゼン(≧125?m),広範囲の少数の中程度の大きさのドルーゼン,中心窩外に地図状萎縮,が少なくとも1つみられる1,621名.③後期グループ:対象眼はAMDの所見がみられず,20/32以上の視力を満たし,かつ他眼にAMDの所見あるいは20/32未満の視力低下を説明できるAMDに基づく異常所見がみられる956名.これらの被験者に対してつぎの4種類の製剤が無作為に割付され,1日3回に分け投与された(図2b).①抗酸化物質(ビタミンC500mg,ビタミンE400IU,b-カロチン15mg)投与945名.②抗酸化物質+亜鉛(ビタミンC500mg,ビタミンE400IU,b-カロチン15mg,酸化亜鉛80mg,酸化銅2mg)888名投与.③亜鉛(酸化亜鉛80mg,酸化銅2mg)投与904名.④プラセボ903名.初期グループを除いた中期および後期グループにおける各投与群とプラセボ群との比較結果を図2cに示す.抗酸化物質+亜鉛の投与群が有意にAMDへの進行を抑制し(5年でAMDの割合はプラセボ群28%に対し,抗酸化物質+亜鉛群は20%と有意に抑制),視力低下を軽減させ,CNVの発生を抑制することが実証された.中心窩の地図状萎縮の発生は,各投与群ともプラセボ群との差はなく,抑制できていなかった.現在AREDSでは,後述するルテインと青魚に多く含まれ視細胞の再生や網膜の機能維持に有用であるw-3多価不飽和脂肪酸〔エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)〕を中期および後期グループの被験者に投与する無作為二重盲検臨床試験が予定されている.また従来の抗酸化物質+亜鉛の処方からb-カロチンを除去したもの,亜鉛を半減させたものの投与試験が予定されている.それら(AREDSⅡ)の結果からAMD患者へのより的確な処方が期待される.IVルテインルテインは,ゼアキサンチン(ルテインの構造異性体)とともに黄斑部の網膜に存在するカロチノイドで,太陽光線のうち波長が長く黄斑部まで到達し有害とされる青色光を吸収するフィルター効果があり青色光による酸化のダメージを軽減する.抗酸化物質でもあり,フリーラジカル還元機能により酸化の連鎖的拡大を断ち切っている.AMDの患者は黄斑部のルテインとゼアキサンチンの量が少ないことが報告されている5).また,ルテインとゼアキサンチンを摂取するとAMDのリスクが低くなるという報告もある6).ルテインは,老化や外的要因で欠乏する.しかも,体内で生成されないため,日常の食べ物やサプリメントから摂取する必要がある.ほうれん草やケールなどの緑黄色野菜に多く含まれるが,1日の必要量であるとされる約6mgを摂取するためには,ルテインを多く含むほうれん草でも60~80g食べなければならず,食事だけで毎日摂取することはむずかしい.そこでルテインを含むサプリメントが必要である.VOcuvite?Ocuvite?は,わが国では3種類が販売されている.(33)図3Ocuvite?の成分と価格表(Baush&Lombホームページより)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007成分と価格を図3に示す.1.OcuvitePreserVision?AREDSのAMDへの効果が臨床的に実証された<抗酸化物質+亜鉛>と等価の処方を日本人向けにしたものである(欧米人と日本人の体格差から標準処方量をAREDSの75%にしてある).AREDSでは亜鉛は酸化亜鉛を使用しているが日本では酸化亜鉛は使用できないことから亜鉛酵母の亜鉛に置き換えてある.AREDSでは亜鉛80mgに対して酸化銅2mgを加えているが,これは亜鉛による貧血防止のためである.銅はスーパーオキシドジスムターゼの補酵素として亜鉛とともに抗酸化物質であり,日本人向けの処方でも1.5mg含まれている.OcuvitePreserVision?摂取を勧める対象はAREDSの臨床試験のエビデンスに基づき,中期および後期グループの基準を満たす者である(図2a).具体的には,片眼あるいは両眼に軟性ドルーゼンや網膜色素上皮異常を認める場合,あるいは片眼がすでに中心窩にCNVまたは網膜色素上皮の地図状萎縮を認めるが,僚眼には認めない場合である.患者には,AREDSの臨床試験の結果は,5年間1日3回欠かさず服用した場合に得られたものであることと,AMDへの進行を完全に防止できたわけではないことを必ず説明する必要がある.OcuvitePreserVision?を患者に勧める際に,高用量のb-カロチンや亜鉛の摂取に伴うリスクを認識しておく必要である.高用量のb-カロチン投与の喫煙者では肺癌罹患リスクがプラセボより高くなるという報告があり7,8),喫煙者にはb-カロチンを含むOcuvitePreserVision?を勧められない.亜鉛を100mg/日の高用量摂取を続けると前立腺癌のリスクが高まる報告がある9).OcuvitePreserVision?のみでは30mg/日であるので問題はないが,他に亜鉛を含むサプリメントを服用する場合には注意が必要である.2.OcuvitePreserVision+Lutein?OcuvitePreserVision?に含まれるb-カロチンを除き,同じカルチノイドの一種であるルテイン9mgが追加で配合してある.前述したように,AREDSⅡのルテインの臨床試験の結果は出ていないが,OcuvitePreserVision?を摂取できない喫煙者には勧めることができる.3.Ocuvite+Lutein?OcuvitePreserVision?成分と同等のものが少ない量で配合され,販売価格が低くなっている.ルテインおよびビタミンB,ナイアシン,セレン,マンガンなども配合されているが,AREDSの臨床試験に基づいた配合ではないのでAMDの進行予防のエビデンスがあるわけではない.おわりに今回,数多くあるAMDのサプリメントのなかからOcuvite?に絞ったのは,OcuvitePreserVision?がEBMでは信頼度が非常に高いAREDSの臨床試験の結果に基づいて開発されたものであるからである.今後販売される(すでに販売されているかもしれないが)他のサプリメントがこのAREDSの臨床試験の結果に基づいたものであれば,同様にそれらを患者に紹介することができる.また,現在進行中のAREDSⅡの臨床試験の結果に基づいてルテインやw-3多価不飽和脂肪酸を含んだAMD患者のためのより有用なサプリメントの開発が期待される.稿を終えるにあたり,ご校閲いただきました湯沢美都子教授に深謝いたします.文献1)OshimaY,IshibashiT,MurataTetal:PrevalenceofagerelatedmaculopathyinarepresentativeJapanesepopula-tion:theHisayamastudy.???????????????85:1153-1157,20012)MiyazakiM,NakamuraH,KuboMetal:RiskfactorsforagerelatedmaculopathyinaJapanesepopulation:theHisayamastudy.???????????????87:469-472,20033)RappLM,MapleSS,ChoiJH:Luteinandzeaxantincon-centrationsinrodoutersegmentmembranesfromperifo-vealandperipheralhumanretina.?????????????????????????41:1200-1209,20004)Arandomized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandE,betacaro-tene,andZincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss.Age-RelatedEyeDiseaseStudyResearch(34)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???Group:AREDSreportNo.8.???????????????119:1417-1436,20015)BoneRA,LandrumJT,MayneSTetal:Macularpig-mentindonoreyeswithandwithoutAMD:acase-con-trolstudy.?????????????????????????42:235-240,20016)SeddonJM,AjaniUA,SperdutoRDetal:Dietarycarot-enoids,vitamineA,C,andE,andadvancedage-relatedmaculardegeneration.EyeDiseaseCase-ControlStudyGroup.????272:1413-1420,19947)TheAlpha-Tocopherol,BetaCaroteneCancerPreventionStudyGroup:Thee?ectofvitaminEandbetacaroteneontheincidenceoflungcancerandothercancersinmalesmokers.????????????330:1029-1035,19948)OmennGS,GoodmanGE,ThornquistMDetal:Riskfac-torsforlungcancerandforinterventione?ectsinCARET,theBeta-CaroteneandRetinolE?cacyTrial.??????????????????21:1550-1559,19969)LeitzmannMF,StampferMJ,WuKetal:Zincsupple-mentuseandriskofprostatecancer.??????????????????95:1004-1007,2003(35)