考える手術.監修松井良諭・奥村直毅下眼瞼内反症の手術木下慎介MIE眼科四日市下眼瞼内反症は,睫毛内反症と眼瞼内反症に分類される.睫毛内反症は,眼瞼の位置は正常であるが,眼瞼余剰皮膚が眼瞼縁に乗り上げることによって睫毛が眼球方向へ押されている状態であることが多い.一方,眼瞼内反症は,加齢による変化や瘢痕などのさまざまな原因により眼瞼自身が内反している状態である.本稿では,下眼瞼内反症の中でも,日常診療で遭遇する頻度の多い加齢性下眼瞼内反症について解説する.下眼瞼内反症のうち睫毛内反症は小児でよくみられ,その主たる原因は,capsulopalpebralfascia(CPF)離を行い,後葉を延長する必要がある.なお小児では,外科的介入を行わなくとも,成長とともに睫毛内反が改一方で,高齢者でみられる加齢性眼瞼内反症の原因は,CPFの弛緩による瞼板の易回転性と眼瞼水平方向の弛緩であり,その手術は多岐にわたる.わが国では,CPFをターゲットにしたJones変法(Kakizaki法,眼瞼下制筋前転法)が広く行われており,良好な術後成績が得られている.また,Ili.が報告した埋没法に改変を加えた術式であるmodi.edIli.suture(MIS)を用いても,Jones変法と同等の成績が得られることが知られている.加齢性眼瞼内反症に対する手術の長期結果を仔細に検討すると,手術が成功したとしても,手術のターゲット部位以外の加齢変化によって再発が生じる可能性があるが,Jones変法やMISでは,術後2年以内の再発例は認めず,再発例(4.6%)の多くは術後約3年で生じている.聞き手:一般的な穿通枝再建術,Hotz変法のコツがあったままとなるため,術者は切開線よりさらに下方,つれば教えてください.まり瞼板下縁と睫毛側皮下組織の縫合を行う必要があり木下:切開線の位置が非常に重要であると思います.不ます.しかし,この縫合により睫毛は眼球から離れます適切な位置で切開すると,その後の操作での修正が非常が,実際には縫合によって瞼板が屈曲して一時的に外反に困難になることがあります.切開線が睫毛に近い場合しているだけで,この外反が改善するとともに睫毛内反(1.2mm)は,切開線直下の瞼板と睫毛側皮下組織を症が再発します.縫合しても睫毛の向きは改善されず,睫毛が眼球に向か(75)あたらしい眼科Vol.41,No.2,20241850910-1810/24/\100/頁/JCOPY考える手術聞き手:適切な切開線の位置はどこなのでしょうか?木下:CPFの瞼板付着部位は瞼板前面ではなく瞼板下縁なので,睫毛側切開線が瞼板下縁に一致すれば,縫合によってCPFからの皮膚穿通枝が自然な位置で再建され,睫毛の向きが無理なく矯正されます.下眼瞼を反転して瞼板の高さをキャリパーで測定し,それと同じ長さで皮膚側にマーキングします.その位置が適切な切開線の位置になります.聞き手:Lidmarginsplitや皮膚切除はどのような患者に対して行うのですか?木下:Lidmarginsplitは,2008年にHwangによって鼻側の睫毛の向きを矯正するために報告された術式なのですが,私は今まで術中・術後に必要と感じた症例は1例も経験していません.鼻側に低矯正の傾向がみられlidmarginsplitが必要になるのであれば,鼻側への切開か,鼻側の瞼板前面の.離が不足していると思います.実際に当該論文の術中写真では,瞼板の露出や瞼板前面の展開が明らかに不足しています.私の場合,切開の全長は全例で涙点の手前から耳側輪部と外角部の中点付近までとしています.また,皮膚切除も全例で行っていません.適切な位置で切開を行えば,余剰皮膚が下眼瞼縁を越えて乗り上げることはありません.もちろん相対的に後葉,つまり眼瞼結膜側が短い患者や後葉側の引き込みが強い患者もいますが,その場合は後葉の引き込む力を弱めたり,後葉を延長したりすることで対応しているため,やはり皮膚切除は不要と感じています.聞き手:相対的に眼瞼結膜側が短い患者はどのように見きわめるのでしょうか?木下:下眼瞼の皮膚が下眼瞼縁を乗り越えているような所見があれば,相対的に眼瞼結膜側が短いと判断しています.かなり専門的になりますが,Khwarg分類のClassIIIとIVが相当します.聞き手:相対的に眼瞼結膜側が短い患者に対する術式を具体的に教えてください.木下:多くの場合,CPFを瞼板ならびに眼瞼結膜から.離すると,眼瞼結膜側を下方の円蓋部方向に引き込む力が相当減弱し,眼瞼結膜側の延長効果が得られます.この操作に加えHotz変法を行います.まれですが,眼瞼結膜側の引き込みが非常に強い場合は,シリコーンシートをスペーサーとして用いて,眼瞼結膜側を延長することもあります.186あたらしい眼科Vol.41,No.2,2024聞き手:下眼瞼眼瞼内反についてですが,Jones変法でも再発が多いと聞きますが,本当でしょうか?木下:Jones変法を適切な症例に適切に行えば,術後2年以内の再発は非常にまれです.術後3年でみても6%ほどの再発率なので,この数字をどう捉えるかによると思います.術後3年における再発に関しては手術のターゲット部位以外の加齢変化,具体的には眼瞼水平方向の弛緩によって生じる場合が多く,Jones変法の問題ではないと思います.もしJones変法で1年以内の再発が多いと感じている先生がいるなら,本術式の開発者である柿崎先生の原法とは異なるステップで手術をされている可能性があるため,まずは使用する手術器具を含め,原法を完全に再現することをお勧めします.聞き手:眼瞼水平方向の弛緩の評価方法を教えてください.木下:各テストの詳細は成書に譲りますが,眼瞼水平方向の弛緩はピンチテストで計測し,8mm以上で眼瞼水平方向の弛緩があるとされています.ただし,同一検者であれば検査結果の再現性が高いかも知れませんが,どの程度の力で眼瞼を引っ張るのか,一般的な定規を用いて目視で正確に1mm単位を計測できているかなど,再現性が低くなる要素があることを念頭において結果を判断する必要があります.私は眼瞼水平方向の弛緩の評価にはsnapbackテストを用いています.ちなみに私の経験から,snapbackテストが陽性であればピンチテストの結果は10mm以上であることがほとんどです.聞き手:Modi.edIli.Suture(MIS)とJones変法の成績は同等であるとの結果が出ているため,手技的に簡単なMISのみ習得すればよいのでしょうか?木下:ほとんどの加齢による下眼瞼眼瞼内反症にはMISのみで対応できると思いますので,下眼瞼眼瞼内反症についてはご指摘の通りMISのみ習得すればよいと思います.ただし,眼瞼水平方向の弛緩を認める患者に対しては,MISにlateraltarsalstrip(LTS)を併用する必要がありますので,MISに加えてLTSを習得することを強くお勧めします.もちろん,眼瞼をご自身の専門分野にしようと考えている先生は,Jones変法ができなければ瘢痕性眼瞼内反症や前述の相対的に後葉が短い睫毛内反症患者には対応できないため,Jones変法の習得は必須になります.(76)