■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く9.オルソケラトロジー(2)土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C6章はオルソケラトロジーに関する第C6章のC2回目である.Ortho-Kによる眼の変化本章1)ではオルソケラトロジー(orthokeratology)はortho-kと略されており,本稿でも踏襲する.C1.角膜形状変化Ortho-kによる近視矯正では角膜中央部が平坦化し,中周辺部が急峻化する.目標とする屈折矯正量が多い場合は,矯正されるゾーンの直径は小さくなる傾向がある.一方,ortho-kによる遠視や老視の矯正に関する研究は近視矯正に比べて限られている.遠視や老視のortho-kでは角膜中央部の急峻化により角膜の屈折力を増加させる.老視の矯正はモノビジョンまたは多焦点矯正によって可能となり,優位眼を遠方視,非優位眼を近方視に矯正する.多焦点効果を得るためには,治療ゾーンを小さくして中央部急峻化と周辺部平坦化によって中心近用の光学効果をもたらすが,負の球面収差が増加する.これらの変化は角膜前面に限定され,角膜後面には影響を及ぼさない.C2.角膜厚変化Ortho-kによる角膜厚の変化は角膜上皮層の変化で,近視矯正では角膜中央部における菲薄化と中周辺部の厚み増加によって屈折矯正効果をもたらす.これらは可逆的である.2.50~2.75Dの近視矯正では角膜中心厚が15~17Cμm菲薄化する.C3.角膜の細胞変化共焦点顕微鏡を使用した研究では,ortho-k装用C1年後に角膜内皮細胞の多形性が増加し,その変化は装用中止C1カ月後に減少するものの,元のレベルには戻らないことが報告されている.角膜内皮細胞密度と実質中間層および深層のケラトサイト密度はC1年間のCortho-k装用後に大きな変化を示さないが,実質前層のケラトサイト密度の減少と活性化ケラトサイトの増加が報告されている.また,最大C5年の長期装用後には上皮基底細胞密度の減少がみられ,ortho-kによる上皮細胞層の圧縮が原因とされている.C4.色素沈着アークOrtho-k装用者の角膜下方に色素沈着アークやリング(55)がみられることがある.装用開始後C2週間ほどで現れ,1カ月で完全なリングになることもある.装用を中止すると約C2カ月で消退する.C5.FibrillarylinesOrtho-k装用者の角膜には灰白色のC.brillarylines(線維状線)が現れることがあるが,これは角膜神経の再編成やストレスによるもので,神経密度の減少と角膜感度の低下を伴う.視覚や健康に重大な影響はなく,装用を中止すると消退する.C6.角膜の生体力学Ortho-kは角膜形状変化によって生体力学的にも影響を与える.Ortho-k装用後に角膜の粘性と抵抗性が若干減少した.C7.眼圧の過小評価薄い角膜は眼圧の過小評価に,厚い角膜は過大評価になりやすいが,ortho-kが眼圧測定に与える影響を調査した研究では,測定方法にかかわらず平均C1CmmHg未満低く見積もられた.COrtho-kの安全性就寝時装用により深刻な角膜感染症のリスクが増加する可能性がある.以下にCortho-k関連のおもな眼合併症を示す.C1.角膜感染症(細菌性角膜炎)Ortho-kによる細菌性角膜炎は視力予後に影響を及ぼすもっとも重大な合併症で,とくに不適切なレンズケアや管理,使用方法の不遵守が原因とされている.ケア剤の継ぎ足しや水道水の使用はリスクを高める.C2.角膜上皮染色もっとも一般的に観察される.通常,角膜中心部にみられ,装用初期の数週間から数カ月間にピークを迎える.矯正量が多い場合にリスクが高まる.C3.レンズ固着と圧痕固着したレンズのエッジによる角膜の局所的な圧力が原因で,角膜に圧痕が生じることがある.固着防止には,適切な装用と適切なレンズケアが重要である.レンあたらしい眼科Vol.41,No.9,2024C10970910-1810/24/\100/頁/JCOPYズフィッティングの調整や,レンズ下の適度な涙液交換も有効である.C4.角膜マイクロシスト角膜マイクロシストは,角膜の低酸素状態を示す徴候であり,高酸素透過性の硬性レンズ素材を使用しているため,ortho-k装用者においてはまれにしかみられない.オルソケラトロジーレンズのケア方法1.レンズケアの重要性Ortho-kレンズのケア方法や手洗いにおける注意点はハードCCLのものと類似している.とくに,アカントアメーバ角膜炎の報告例があるため,水道水を使用しないことが重要である(注:日本の水道水は塩素を含むため,すすぎの際に使用可である).C2.多目的製剤(multi-purposesolution:MPS)MPSにはさまざまな界面活性剤や抗菌成分が含まれる.使用者は毎日のレンズのこすり洗いやすすぎの重要性を理解する必要がある.また,一部のCMPS成分の細胞毒性について注意が必要である.PHMBを含むケア剤は,抗菌効果と細胞毒性とで乖離がある場合がある.C3.過酸化水素消毒システム過酸化水素は,酸化によって有機物を不安定化させ,細胞膜や細胞成分を損傷することで抗菌活性を発揮する.真菌やアカントアメーバを含むすべての微生物に対して米国食品医薬品局(FDA)およびCISOの基準を満たしている.レンズケース内のバイオフィルム形成に対しても有効である.毎日のこすり洗いと生理食塩水でのすすぎが推奨される.とくにCMPSの成分に敏感な人々に適している.C4.ポビドンヨードポビドンヨードは,創傷治癒および手術前予防に何十年もの間使用されている.新しいポビドンヨードベースの消毒液は,効果的に微生物とバイオフィルムを除去する.長期使用でも耐性がなく,信頼性の高い消毒方法である.C5.消毒耐性防腐剤や消毒剤(第四級アンモニウム化合物やビグアニドなどの陽イオン性抗菌薬)の広範かつ長期にわたる使用により,消毒剤に対する病原体の耐性の発生が懸念されている.基本の実践処方医はCortho-kレンズを安全に装用させることに対しての責任がある.処方医は,患者や保護者に対して,アフターケアの頻度や一般的な合併症を含む潜在的リスクについてしっかり伝える必要がある.成人装用者および子どもの保護者の見解1.成人Ortho-kレンズを使用する成人は,視力の質は他の矯正方法と同等であるが,グレアの増加がみられることがある.近視が軽度のユーザーに好評である.C2.小児Ortho-kの利点,潜在的なリスク,制約事項などについての情報を提供し,本人や保護者の理解を深めることが重要である.保護者らはレンズの取り扱い手順,緊急時の対応方法について十分に学習し,定期検査を通じてレンズの適合状況や眼の健康状態を確認し,問題が発生した場合には迅速に対処することが求められる.C3.保護者の見解香港での調査では,保護者の多くがCortho-kは子の近視抑制するものと捉えており,おもな情報源は口コミ(52%)と新聞・雑誌(50%)で,医療提供者からの情報はC35%にとどまった.中国の調査では,保護者の最大の動機は子の近視進行抑制であり,おもな情報源は口コミ(56%)と眼科医(41%)であった.保護者の理解を深めるためには,眼科医が積極的に介入することが重要である.文献1)VincentCSJ,CChoCP,CChanCKYCetal:CLEARC-Orthokera-tology.ContLensAnteriorEyeC44:240-269,C2021