———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLSコンタクトレンズ(CL)装用者の10人中1人に眼障害が生じていると推測されている1).1991年,使い捨てソフトコンタクトレンズ(SCL)が市販され装用者が急増し,装用人口は全国で約1,500万人といわれている.1994年のCL装用者は867万人であり,2002年は1,463万人と増加している(図1)2).それに伴い,CLによる眼障害は増加している.今回,CLによる眼障害につき述べる.●CL装用者の約10人中1人は眼障害日本眼科医会(日眼医)の「CLによる眼障害アンケート調査」結果によると,CL眼障害者は,平成13年(2001年)3月までの1年間に68,045件3),平成15年(2003年)1~2月の2カ月間に26,137件であり1),類推すると1年間に約156,800件となる.アンケート回収率(10.4%)から推計すると,全国では1年間に約150万件が推計される.日眼医に属していない医療機関の報告はないため,さらに多くの眼障害者が推計される.CL装用者が約1,500万人であることから,CL装用者の約10人に1人の割合で眼障害が起こっていることが推計される.●CL量販店・メガネ店隣接診療所のCL処方は眼障害が多い日本コンタクトレンズ協議会(日本CL学会・日本眼科医会・日本CL協会)が行ったCLによる眼障害アンケート調査4)は,母集団を特定した日眼医に所属する46施設において,平成13年10月の1カ月間に受診したすべてのCL装用者に行った.CL装用者4,974名のなかでCL眼障害者は413名であった.その処方施設を図2に示す.CL装用者は眼科診療所・病院77.8%,CL量販店隣接診療所14.4%,メガネ店隣接診療所5.8%,その他2.0%であった.CL眼障害者は眼科診療所と病院53.7%,CL量販店隣接診療所26.2%,メガネ店隣接診療所15.7%,その他4.4%であった.眼科診療所・病院では装用者に比し,眼障害者は少ないが,CL量販店とメガネ店隣接診療所は装用者に比し,それぞれ約2~3倍の眼障害者を示す.日眼医に属した施設での調査のため,CL装用者は眼科診療所・病院で多く,CL量販店やメガネ店隣接診療所の多くは日眼医に属していないために少ない.CL量販店とメガネ店隣接診療所での処方は眼障害が多い傾向が推計される.診療・処方・処方後のケアの3つを適切に行う眼科専門医にCL処方を受けることが,眼障害予防の重要なステップである.●連続装用使い捨てレンズ装用者の眼障害発症率が高い表1のように,ハードコンタクトレンズ(HCL)よりSCLは障害が多く,なかでも1週間連続装用使い捨てSCLの年間発症率が高い4).2週間交換SCLは使用期限を守らない,不十分なケア方法などがある.●CL眼障害の原因眼障害の原因には,酸素不足,感染,レンズの汚れ,機械的刺激,アレルギー,ドライアイなどがある.要因(59)宇津見義一宇津見眼科医院コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS264.コンタクトレンズによる障害(全国障害調査)図1CL装用者ディスポ系SCL;1週間連続装用SCL,2週間交換SCL,毎日使い捨てSCL.(2003年版矢野経済研究所流通動向調査より)867836311,4638675960ディスポ系SCL従来型SCL総計装用者(万人):2002年:1994年1,6001,4001,2001,00080060040020014.426.25.815.777.853.72.04.40%CL眼障害者413名CL装用者4,974名:量販店隣接診療所:メガネ店隣接診療所:眼科診療所・病院:その他100%80%60%40%20%図2CL処方施設の割合日本コンタクトレンズ協議会コンタクトレンズ眼障害調査小委員会(糸井素純,植田喜一,宇津見義一,吉田博,岡野憲二):平成13年10月松本市・下関市・城陽市・横浜市における46施設内の全CL装用者の眼障害調査報告より.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006(00)としては,長時間装用,洗浄不良などレンズの使用方法に問題がある場合,レンズの汚れ・キズ・劣化・破損などCL自体に問題がある場合,定期検査などのフォローアップ不適,説明指導・処方ケアが不適切な場合などがある1).●眼障害患者の6割は適切な定期検査を受けずCL眼障害を起こした人では,3カ月に1回の定期検査を受けているのは40.1%1).眼障害を起こした人のうち6割の人が定期検査を受診していない.CLを装用して異常がなくても定期検査を受けると,度数やカーブ,デザインが合っていないケースは多い.眼障害やCLのキズ・変形・変色や,汚れが付着している場合がある.異常がなくても,3カ月に一度は,定期的に検査を受けることが重要である.●CL眼障害の種類眼障害は図3のように,アレルギー性結膜炎26.5%,点状表層角膜症19.2%,角膜上皮びらん14.5%の順であり,角膜潰瘍は3.3%であった1).文献1)日本眼科医会医療対策部(吉田博):コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成14年度).日本の眼科75:219-222,20042)コンタクトレンズの製品タイプ別市場規模推移:2003年版矢野経済研究所コンタクトレンズ&用剤に関する小売流通動向調査,p70-86,20033)日本眼科医会医療対策部(吉田博):コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成12年度).日本の眼科72:1341-1344,20014)日本コンタクトレンズ協議会CL眼障害調査小委員会(糸井素純,植田喜一,宇津見義一,吉田博,岡野憲二):コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査.日本の眼科74:497-507,2003表1CLによる眼障害の発症率(レンズの種類別)CL眼障害件数年間CL眼障害数(推定)CL装用者年間発症率ガス(酸素)透過性HCL1301,56027,9365.6%従来型SCL1021,22410,99111.1%1日使い捨てSCL222648,0923.3%1週間連続装用使い捨てSCL67248115.0%2週間交換SCL1531,83619,1719.6%合計4134,95666,6717.4%日本コンタクトレンズ協議会コンタクトレンズ眼障害調査小委員会(糸井素純,植田喜一,宇津見義一,吉田博,岡野憲二):平成13年10月松本市・下関市・城陽市・横浜市における46施設内の全CL装用者の眼障害調査報告より.6.3%7.4%26.5%11.4%19.2%14.5%1.5%6.2%3.3%4.3%0.7%1.6%2.4%1.2%4.2%毛様充血巨大乳頭結膜炎アレルギー性結膜炎乾性角結膜炎点状表層角膜症角膜上皮びらん角膜浮腫角膜浸潤角膜潰瘍角膜新生血管虹彩炎角膜内皮細胞減少低矯正過矯正その他01,0002,0003,0004,000件数5,0006,0007,000図3眼障害の診断名(n=26,137)(重複あり)CLによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(日本眼科医会,平成14年度)より.