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よくわかる医療情報のお話2.電子カルテ その1-どのようにして導入されるのかな?

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS電子カルテ導入に関する国の施策の流れは,平成11年の「診療録等の電子媒体による保存について」の基準(カルテの電子保存が法的に認められた),平成13年の「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」(電子カルテの普及目標が具体的に定められた),平成14年の「診療録等の保存を行う場所について」の通知(オンラインで他の医療施設などに保存することが認められた),平成17年の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(電子カルテの運用に関する指針が定められた),平成18年の中医協の診療報酬改定答申での「電子化加算」の新設などとなります.その間には導入にかかる多額の補助金が補正予算として認められています.現在までのところ,必ずしもグランドデザインの目標通りには普及していないものの,医療現場における電子化は年々増加してきています.非常に高額なシステムであり,診療のスタイルがすっかり変わってしまううえに,業務の標準化,分析など,構築に向けて相当な努力が必要であるため,電子カルテの導入はいずれの施設においても負担が大きいということがいえます.では,実際にはどのようにして導入されるのでしょうか.ここでは公的な病院における導入についてお話しましょう.何のために電子カルテを導入するのかは施設ごとに異なるポリシーがあり,導入の方法も異なる部分があると思いますが,全体としての流れには共通したものがあります.最初に概算要求の段階でどのような電子カルテシステムを導入するのかを決めます.つぎに,複数のベンダーからの資料を基に仕様書を作成しますが,作成した仕様書に対するベンダーからの意見書の提示を求めて修正を行い,その後,入札となります.仕様書を作成する段階からは各部門の調整を行うプロジェクトチームが必要となります.サブシステムごとにワーキンググループが組織され,それらすべてに関係するコアメンバーが選出されることになります.プロジェクトチームは各現場の業務調査を行い,それらをシステムの要件としてまとめて仕様書を作成する重要な役割があります.仕様書次第で自らが望むシステムとなるかが決まるので,その作成には多大な労力を要するのが通常です.仕様書は最終的に検収の際にも用いられるので,システム導入全般に関わる最も大切なものということができます.ベンダーが決まった後は,仕様書に基づいたシステム全体の基本設計に続いて,具体的な性能や機能を決める外部設計やマスタ作成が行われます.ここではプロジェクトチームはベンダーと各現場の意見を調整する重要な役割を担っています.医療者がシステム設計に関係するのは通常はここまでです.その後はプロセスモデルにより少し違いがありますが,ベンダー内部で開発が行われ,導入となります.導入後はマニュアル類の作成,トレーニング・リハーサルなど,いよいよ運用を開始する準備へと進むことになります.(65)よくわかる医療情報のお話●連載(隔月)②若宮俊司*1山内一信*2電子カルテその1─どのようにして導入されるのかな?*1ShunjiWakamiya:川崎医科大学眼科学教室/川崎医療福祉大学感覚矯正学科/同医療情報学科/名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学教室*2KazunobuYamauchi:名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学教室電子カルテ診療の一情景

硝子体手術のワンポイントアドバイス39.弱毒菌性眼内炎に対する眼内レンズ温存硝子体手術(初級編)

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS●白内障手術後の遅発性眼内炎白内障術後の急性細菌性眼内炎は進行がきわめて速く,緊急硝子体手術が必要で,しばしば眼内レンズ摘出を余儀なくされる.一方,弱毒菌による遅発性眼内炎は,進行が緩徐で,抗生物質に一旦反応し鎮静化する例もみられる.しかし,このような例でも眼内炎症がくり返す場合には,最終的に硝子体手術が必要となることが多い.ただし,強毒菌による急性眼内炎と違って,このようなケースでは眼内レンズを温存できる可能性が高い.●遅発性眼内炎の原因白内障手術時に結膜?内の常在細菌を付着させたまま眼内レンズを挿入し,その後暫くの間は無症状に経過するが,YAGレーザー後?切開術を契機に,?内に潜んでいた細菌が硝子体腔内に散布され,眼内炎を発症することが多い.このような症例に対して硝子体手術を施行する場合には,硝子体切除に加えて,水晶体?内を灌流液で十分に洗浄することで眼内レンズを温存することができる1).●水晶体?内洗浄の方法まず硝子体カッターで眼内レンズが脱臼しない程度にできるだけ後?を大きめに切除する(図1a,b).ついで灌流針(27ゲージ鈍針)を角膜輪部から前房内に挿入し,前?切開縁と眼内レンズの間の癒着を解離する.その後,灌流針の先端から水晶体?内に人工房水を注入し,水流で水晶体?を開くようにしながら?内を可能な限り洗浄する(図2a,b).?内洗浄に用いた灌流液は硝子体カッターでできるだけ吸引除去する.●術後の経過観察弱毒菌性眼内炎では,本法によって術後比較的早期に炎症は鎮静化する(図3a,b).炎症が遷延する場合には,(63)水晶体?内の洗浄が不十分か,毒性の強い細菌の可能性があるので,眼内レンズ摘出を考慮する.文献1)阿部智美,佐藤文平,江富朋彦,池田恒彦:硝子体手術時に眼内レンズを温存した遅発性白内障術後眼内炎の3例.眼科手術15:233-236,2002硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?39弱毒菌性眼内炎に対する眼内レンズ温存硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1後?切除a:眼内レンズが脱臼しない程度に後?を大きく切除する.b:シェーマ.ab図2水晶体?内の洗浄a:灌流針を前?切開縁と眼内レンズの間に挿入し,癒着を解離しながら水晶体?内を洗浄する.b:シェーマba図3硝子体手術施行例の前眼部写真a:術前.前房内炎症とフィブリン析出を認める.b:術後.炎症は鎮静化している.ab

眼科医のための先端医療68.緑膿菌性角膜腫瘍の病変制御

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSはじめにグラム陰性桿菌の緑膿菌(??????????????????????)による角膜炎の特徴は輪状膿瘍を伴う軟らかい潰瘍で,輪状膿瘍の周囲はスリガラス状混濁を呈します.輪状膿瘍は集簇した好中球とラメラ構造の破壊にほかなりません.また,軟らかい潰瘍は角膜実質組織の液化壊死で,スリガラス状混濁は輪部血管網から角膜病変に向かって走化中の好中球によるものです.緑膿菌性角膜炎は病変の進行がきわめて速く,広範な角膜潰瘍から穿孔をきたすことがあります.角膜病変が重篤化する原因として,本菌がプロテアーゼや毒素などの病原因子を産生すること,それに対して好中球を主体とする炎症細胞の浸潤が強く起こることがあげられます.好中球は細菌を貪食・殺菌し,菌の増殖を抑えますが,一方において,好中球に含まれるライソゾーム酵素や活性酸素などが細胞外にも放出され,組織破壊をきたします.好中球の浸潤には走化性因子が必要で,緑膿菌の外膜を構成するリポ多糖(このなかでもリピドA)は,補体系を活性化してC5aやC3aなどの走化性因子を生じます.緑膿菌性角膜炎におけるサイトカイン,ケモカインの役割近年,主としてマウスを用いた緑膿菌性角膜炎モデルでの研究からサイトカインやケモカインの役割が徐々に解明されてきました.マウスには緑膿菌感染において違った反応を示すC57BL/6J(B6)とBALB/cがいます.B6マウスは緑膿菌感染に感受性があり,重篤な角膜病変を生じ,穿孔するのに対し,BALB/cマウスは緑膿菌感染に抵抗性を示し,病変は軽度で治癒します.この違いが何からくるのか?サイトカインレベルで検討しながら,臨床例への治療に応用できないか考えてみたいと思います.まず,緑膿菌性角膜炎において重要なサイトカインやケモカインはインターロイキン(IL)-1b,IL-6,mac-rophagein?ammatoryprotein(MIP)-2(ヒトのIL-8に相当します),macrophageinhibitoryfactor(MIF),IL-10,IL-12,IL-18とinterferon-g(IFN-g)です(図1).特に,IL-1bは炎症反応の主たるサイトカインであり,MIP-2(IL-8)の産生を介して好中球の浸潤を亢進させます.IL-1bは角膜上皮細胞からのIL-6やMIP-2(IL-8)の発現を調整します.さらに,IL-1bは角膜実質細胞からのmatrixmetalloproteinases(MMP)の発現を亢進させます.IL-6は多機能性サイトカインで,IL-1やtumornec-rosisfactor(TNF)と重なる機能をもちます.IL-6ノックアウト(KO)マウスでは,緑膿菌感染モデルにおいて角膜病変が重篤化することより,IL-6は病変の軽減化に働いています.その機序としては,IL-6が感染初期においてintercellularadhesionmolecule-1(ICAM-1)やMIP-2の発現亢進を介して効果的に好中球浸潤を促すことによると考えられています.MIP-2(IL-8)はCXCケモカインで,好中球走化活性があります.緑膿菌感染モデルで,角膜内のMIP-2発現が持続しますと角膜内の好中球浸潤が遷延化し,かえって角膜病変が重篤になります.たとえば,緑膿菌感(59)◆シリーズ第68回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊松本光希熊本大学大学院医学薬学研究部視機能病態学〔現・NTT西日本九州病院眼科〕緑膿菌性角膜潰瘍の病変制御図1緑膿菌性角膜炎におけるサイトカイン,ケモカインネットワーク実線→:亢進作用,点線:抑制.IL-1Ra:interleukin-1receptorantagonist,MIF:macrophagemigrationinhibitoryfactor,MIP-2:macrophagein?ammatoryprotein-2,KC:cytokine-inducedneutrophilchemoattractant,MMP:matrixmetalloproteinases,ICAM-1:intercellularadhesionmolecule-1,B6:C57BL/6Jmice,BALB/c:BALB/cBJmice,PMN:polymorphonuclearleukocytes,NK:naturalkiller,NKT:naturalkillerT,IFN-g:interferon-g,TNF-a:tumornecrosisfactor-a.IL-1bMIFCaspase-1MMPs↑KCMIP-2(IL-8)ICAM-1IL-6IL-10血管新生IL-12(B6)IL-18(BALB/c)IL-1RaPMN浸潤殺菌組織破壊Caspase-1inhibitorNK細胞Th1細胞IFN-gTNF-aNK細胞NKT細胞Th2細胞IFN-g穿孔殺菌1a,25-DihydroxyvitaminD3(VD3)———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006染に抵抗するBALB/cマウスにrMIP-2を投与しますと角膜内の好中球数が増加し,病変が重篤化します.一方,緑膿菌感染に感受性のあるB6マウスに抗MIP-2抗体を投与しますと角膜内の好中球数が減少し,病変が軽減されます.また,抗IL-1b抗体を投与しますとMIP-2とcytokine-inducedneutrophilchemoattrac-tant(KC)の活性が低下することより,MIP-2とKCはIL-1bによる調節を受けているといえます.MIFは最近発見された炎症性サイトカインで,好中球走化活性や血管新生を調節する役割が知られてきました.MIFは病変に関与しますが,これはIL-8やIL-1bの発現を介して起こっていると考えられます.IL-10は,微生物感染に対して,炎症メディエーターのバランスをとることにより,過剰な炎症や生体防御を調節していると考えられています.B6マウスに発現されるIL-12は,naturalkiller(NK)細胞やT細胞の増殖を亢進させるなど多くの生物活性を有します.たとえば,ヘルパーT(Th)1細胞への分化,他のサイトカイン,特にIFN-gの産生に影響します.緑膿菌感染に抵抗を示すBALB/cマウスはIL-12を発現しませんが,このBALB/cマウスにrIL-12を投与しますとIFN-gやTNF-aの発現を介して緑膿菌感染に感受性のあるB6マウスのような反応を示し,病変が重篤化します.BALB/cマウスに発現されるIL-18はIL-12といくつかの機能を共有します.すなわち,T細胞,NK細胞やNKT細胞によるIFN-gの産生を誘導します.IL-18はマクロファージや樹状細胞から産生されます.IL-1と同様に前駆体として放出され,IL-1g-変換酵素/cas-pase-1による活性化が必要です.BALB/cマウスでは,緑膿菌感染に伴い,角膜内にIL-18とIFN-gのレベルが上昇します.しかし,IL-12は検出されません.BALB/cマウスに抗IL-18抗体を投与しますとIFN-gmRNAが低下し,病変は悪化します.IFN-gKOマウスでは角膜内の菌数が有意に増加し,穿孔します.このことから,IL-18はIFN-gを誘導し,そしてIFN-gは殺菌に必要であることが示唆されます.以上を踏まえて,両マウスの緑膿菌感染に対する反応性を考察しますと,緑膿菌感染に抵抗するBALB/cマウスはTh2優位の反応を示し,IL-18駆動のIFN-gの発現を亢進させます.また,マクロファージが角膜内の好中球数を調節します.この系では効果的に菌の殺菌が行われ,組織障害も軽度であります.一方,B6マウスはTh1優位の反応を示し,IL-12駆動のIFN-gの発現を亢進させます.また,CD4+のT細胞によって角膜内の好中球数が調節されます.この系では角膜組織破壊,ひいては穿孔をきたします.サイトカイン,ケモカイン制御による緑膿菌性角膜炎の治療つぎに,緑膿菌性角膜炎におけるサイトカインネットワークを制御して治療効果を上げられないか考えてみます.抗IL-1b抗体を投与しますとIL-1bを介するIL-6やMIP-2(IL-8)の発現やMMP-9の産生が抑制され,角膜病変が軽減されることが予想されます.IL-1bの産生に必要なIL-1bconvertingenzyme(ICE)も重要で,そのKOマウスでは,感染病巣での好中球の減少,サイトカインやケモカインの低下,アポトーシスの増加,IL-1receptorantagonist(IL-1Ra)の増加をもたらします.このことからICEを抑制することにより生体反応を制御して病変の軽減化を図ることができると思われます.たとえば,抗菌薬にICE阻害薬を加えた治療は新たな治療法となる可能性があります.また,1a,25-dihydroxyvitaminD3(VD3)という物質を培養角膜上皮細胞に添加しますとIL-1b,IL-6とIL-8の発現が抑えられます.このことからVD3も新しい治療薬になる可能性があります.また,MIP-2を制御することにより病変を調節することが可能と考えられます.さらに,Toll受容体やneuropeptidesの役割を解明し,RNAsilencingのような新しい技術で疾患を制御する方法の開発も必要です.文献1)MatsumotoK,IkemaK,TaniharaH:Roleofcytokinesandchemokinesinpseudomonalkeratitis.??????24(Suppl1):S43-49,20052)RudnerXL,KernackiKA,BarrettRPetal:ProlongedelevationofIL-1in??????????????????????ocularinfec-tionregulatesmacrophage-in?ammatoryprotein-2pro-duction,polymorphonuclearneutrophilpersistence,andcornealperforation.?????????164:6576-6582,20003)ThakurA,BarrettRP,McClellanSetal:Regulationof??????????????????????cornealinfectioninIL-1bcon-vertingenzyme(ICE,caspase-1)de?cientmice.????????????29:225-233,20044)ThakurA,BarrettRP,HobdenJAetal:Caspase-1inhib-itorreducesseverityof??????????????????????keratitis(60)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????keratitis.??????????????????????????29:179-182,20019)ColeN,KrockenbergerM,StapletonFetal:Experimen-tal??????????????????????keratitisininterleukin-10geneknockoutmice.????????????71:1328-1336,200310)HazlettLD,RudnerXL,McClellanSAetal:RoleofIL-12andIFN-gin??????????????????????cornealinfection.?????????????????????????43:419-424,200211)HuangX,McClellanSA,BarrettRPetal:IL-18contrib-utestohostresistanceagainstinfectionwith??????????????????????throughinductionofIFN-gproduction.?????????168:5756-5763,200212)HazlettLD:Cornealresponseto??????????????????????infection.??????????????????23:1-30,2004inmice.?????????????????????????45:3177-3184,20045)XueML,ZhuH,ThakurAetal:1a,25-Dihydroxyvita-minD3inhibitspro-in?ammatorycytokineandchemokineexpressioninhumancornealepithelialcellscolonizedwith??????????????????????.?????????????????80:340-345,20026)ColeN,BaoS,StapletonFetal:??????????????????????keratitisinIL-6-de?cientmice.????????????????????????130:165-172,20037)XueML,ThakurA,WillcoxMDetal:Roleandregula-tionofCXC-chemokinesinacuteexperimentalkeratitis.???????????76:221-223,20038)ThakurA,XueML,WangWetal:Expressionofmacro-phagemigrationinhibitoryfactorduringPseudomonas(61)■「緑膿菌性角膜潰瘍の病変制御」を読んで■緑膿菌感染症はあらゆる細菌感染症のうちで,最も予防・治療がむずかしい疾患の一つです.それは,緑膿菌が広範な消毒薬や抗菌薬に対して抵抗性をもつからだけではなく,緑膿菌は低栄養下でも生存可能なため,医療現場を含むさまざまな環境下に存在し,完全に菌を消滅させることが不可能なことが理由としてあげられます.医療現場は緑膿菌の培地といってもよいほどなのです.治療に関していうと,近年は緑膿菌にも有効なチカルシリンやアミカシンなどの薬剤が開発されています.眼球外の臓器では,これらの薬剤は確かに有効ですが,「角膜の治療」には必ずしも有効とはいえません.なぜなら,緑膿菌は,ビオシアニンといわれる色素をはじめとしてさまざまな外毒素(エラスターゼ,アルカリプロテアーゼなど),溶血素,分泌酵素を出して宿主組織を破壊するので,きわめて強い組織反応が起こるからです.そして,その宿主反応自体が角膜の透明治癒を妨げます.つまり緑膿菌感染が治癒しても,角膜が混濁したならば「角膜の治療」に成功したとはいえないのです.緑膿菌感染に限らず,感染症に対する宿主反応は,破壊と再生の絶妙なバランスのうえに成り立っています.しかし,従来の方法ではこのバランスの理解が不十分でした.このバランスの解析は,マイクロアレイなどの網羅的研究により大幅に進歩し,宿主反応過程で働くサイトカイン,酵素,Toll-likereceptorなどの種類,発現時期などが理解されるようになりました.本稿で松本光希先生が述べられていることは,緑膿菌性角膜感染について,これらをわかりやすく解説されたものです.このことが理解されると,宿主反応をコントロールした「角膜の透明治癒」治療も可能になります.サイトカインネットワークというと,わかりにくく敬遠されがちですが,本稿ではこの点に関して重要な事柄が述べられています.鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆

涙点プラグ:Sjogren症候群に対する涙点プラグ治療のコツ-上下のプラグを行う必要性について-

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSSj?gren症候群の重症ドライアイに対し,治療後早期に,自覚所見の改善が得られる確実な方法は涙点プラグである1~3).反射性分泌の低下した重症ドライアイにおいて,防腐剤無添加の人工涙液の頻回点眼,ヒアルロン酸点眼,眼軟膏治療の継続により,ある程度の症状および所見の改善は得られるとはいえ,湿度の低下や体調不良など,ドライアイの増悪因子が重なると悪化し,重症例においては点眼治療のみでは限界があることを実感する.Sj?gren症候群におけるドライアイでは,涙腺の障害が基盤にあり,粘膜を潤わすための涙液の水分としての役割に加え,角結膜上皮の恒常性を維持するために不可欠な涙液に含まれる成分が減少あるいは欠如していることが考えられる.したがって,重症ドライアイに対し涙点プラグが点眼治療に比べ劇的な治療効果を発揮する要因としては,持続的な水分の補給だけではなく,涙液成分の供給という働きが大きいと考えている.今まで点眼治療では角結膜上皮障害の改善がみられなかった重症例においても,上下の涙点に涙点プラグを挿入することで,直後より,Schirmer値は上昇し,翌日から染色スコアの改善が始まり,1週間後には染色部位がほとんど消失し,角結膜上皮障害の著明な改善が認められる1).今まで長期にわたり症状がとれなかった重症ドライアイ患者にとって,涙点プラグは非常に満足度の高い治療法といえる.この劇的な改善を得るためには,眼表面への持続的な涙液の供給が重要であり,そのためには,涙点からの涙液の排出を完全に途絶させることで効果が高まることは容易に想像できる.実際,Sj?gren症候群における重症ドライアイで,人工涙液頻回点眼,ヒアルロン酸点眼,眼軟膏点入を数カ月間継続しても,角膜上皮障害が残存し,自覚症状の改善が得られなった症例(図1)に,上下の涙点にプラグを挿入したところ,挿入直後から,自覚症状が改善し,その後角結膜の染色がほとんどない状態が継続していた(図2).しかし,その後,片方の涙点プラグが脱落すると,角結膜の染色,自覚症状の急激な悪化がみられた(図3).また,計画的に一涙点ずつ,涙点プラグを挿入する場合,片方の涙点に挿入しただけでは,劇的な改善を得ることは少なく,多くの場合,上下両方の涙点が閉鎖されてはじめて患者さんの満足度が上がる.これらのことを考えると,重症ドライアイに対し,涙点プラグの効果を十分発揮するためには,上下の涙点プラグ挿入が必要である.しかし,涙点プラグの問題点はプラグが,自然に脱落してしまうことである3,4).今までの報告では約1年で半数の症例に涙点プラグの脱落が認められている.涙点プラグのサイズ,形状と涙点の大きさ,形状が一致しない,といったことは,涙点プラグがオーダーメードでもない限りなかなか解消されない問題点の一つである.プラグ挿入後1年未満で自然脱落が起こった場合,症状(57)涙点プラグセミナー監修/坪田一男高村悦子東京女子医科大学眼科5.Sj?gren症候群に対する涙点プラグ治療のコツ─上下のプラグを行う必要性について─涙腺の障害に基づくSj?gren症候群において,涙点プラグが点眼治療に比べ劇的な治療効果を発揮する要因としては,持続的な水分の補給だけではなく,涙液成分の供給という働きが大きい.重症例に対し,確実な治療効果を得るためには,上下の涙点にプラグを挿入し,涙液の排出を完全に途絶させることが必要である.ホワイトメディカル提供図1涙点プラグ挿入前フルオレセイン染色6点(9点満点)を認める.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006(00)の悪化は,すぐに現れる.自覚症状とともに角結膜上皮障害が出現する.しかし,挿入後数年たち,角結膜上皮の改善が得られ,ある程度時間がたっている場合は,一方の涙点プラグが脱落しても,急激な症状の悪化はないこともあり,点眼治療の追加のみで自覚症状の改善が得られることもある3).これには,プラグ脱落の原因として,プラグによる涙小管上皮の機械的刺激により,涙点に肉芽が形成されることが考えられている.しかし,場合によっては,この肉芽により涙小管が閉鎖され,涙点プラグと同様な閉鎖が起きているのかもしれない.いずれにせよ,上下の涙点が閉塞している状態が,重症ドライアイの症状改善には“必要”ということであろう.文献1)ShinozakiK,TakamuraE,YukariJetal:Siliconepunctalpluginsertionintreatmentofseveredryeye.LacrimalGland,TearFilmandDryEyeSyndrome3,BasicScienceandClinicalRelevance,p1273-1276,KluwerAcademic/Plenum,NewYork,20022)楊浩勇,五十嵐翔,後藤英樹ほか:新型シリコーン涙点プラグによるドライアイの治療.あたらしい眼科14:1825-1830,19973)小島健太郎,横井則彦,中村葉ほか:重症ドライアイに対する涙点プラグの治療成績.日眼会誌106:360-364,20024)篠崎和美:涙点プラグ─利点と欠点─.あたらしい眼科20:23-27,2003図2プラグ挿入後(上下涙点)プラグ挿入直後からフルオレセイン染色の著明な改善とともに自覚症状も改善した(上).上下の涙点にプラグが挿入されている(下).図3下涙点のプラグ脱落後フルオレセイン染色(4点)の悪化,自覚症状の悪化を認めた(上).下涙点のプラグが脱落している(下).

眼感染症:真菌培養検査

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS角膜真菌症や真菌性眼内炎などの眼科領域の真菌感染症は,ときに重篤化し視力予後が不良になる場合があるため,初期に的確に診断し,治療を開始しなければならない.早期診断において,特徴的な臨床所見を把握するのはもちろん,塗抹標本検査に加え,真菌の培養検査によって,真菌を検出することで確定診断に結びつくだけではなく,分離した真菌の菌種や薬剤感受性を調べることによって,的確な抗真菌薬の選択に有用な情報になりうる.しかしながら,真菌培養検査は,細菌培養検査のように一般化されておらず,検出までの過程や注意点について理解されていない場合もある.そのため,真菌の生物学的特徴を理解して真菌培養検査を進める必要がある.このセミナーでは,真菌培養検査と薬剤感受性試験について,方法や注意点について詳細に解説する.●検体処理と輸送培養検査全般的に通じることとして,検体量が多いほど分離率も向上する.しかしながら,眼科領域における検体は,眼脂などの分泌物,角膜擦過物,眼内液など量的に制限されている場合が多く,細菌培養検査,塗抹標本検査など他の検査と併用して行うなかでは,優先順位をつけて検査を進めていく必要がある.そのため真菌感染症が強く疑われる場合は,真菌培養検査に多くの検体を使用するのが望ましい.検体の処理や培地の接種の方法については,検体によって異なり,眼脂・膿などの分泌物は平板培地に画線塗布し,コロニーが容易に分離できるようにする.角膜擦過物は,平板培地もしくは斜面培地に,軽度刺すように培地に接種するのがよいが,微量であるため,正確に培地に接種していることを確認する必要がある.眼内液の場合は,遠心し,その沈渣を使用し,画線塗布することで分離率が向上する.真菌培養検査においては,可能なかぎり検体を直接培地に接種するのが望ましいが,培地が入手不能で輸送せざるを得ない場合は,分泌物・角膜擦過物の場合は0.5m?ほどの生理食塩水に,撹拌して輸送するか,輸送用培地を使用するのがよい.眼内液の場合は,血液培養用のカルチャーボトルを使用して輸送するのが最も効率的である.●培養条件原因となる真菌の分離率を向上させるには適切な培地を使用するのが重要である.臨床検体から初代に分離する培地としては,サブロー・グルコース寒天培地が一般的に汎用されており,入手も容易である.しかしながら,わずかな検体から感度よく真菌分離させるには,より栄養を強化した培地が適切であり,ブレイン・ハー(55)39.真菌培養検査眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=大橋裕一井上幸次鈴木崇市立宇和島病院眼科真菌培養検査においての注意点として,①できるだけ多くの検体を接種する,②適切な培地や輸送法を使用する,③糸状菌が疑われる場合は培地が乾燥しないように密閉し長期間培養する,などがあげられる.また,分離できた真菌に対して,菌種の同定,薬剤感受性試験を行うことで治療の選択のうえで貴重な情報となりうる.表1真菌の培養条件培地培養温度発育期間???????属サブロー・グルコース培地ブレイン・ハート・インフュージョン培地ヒツジ血液寒天培地CHROMagar????????室温と35℃数日糸状菌サブロー・グルコース培地ブレイン・ハート・インフュージョン培地室温(培地の乾燥を防ぐ)発育が遅いため,最低4週間の培養が必要———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006ト・インフュージョン培地がその一つとして適している1).また,明らかに細菌の存在が疑われるような検体から真菌を効率よく分離するには,クロラムフェニコールやゲンタマイシンなどの抗菌薬が含有されている培地を使用する必要がある.また,???????属の場合,血液寒天培地でも分離可能であるが,???????属の菌種特異的生化学的特性を利用し,コロニーの色によって????????属の菌種を分別することができるCHROMagar????????などの培地が便利である.使用する培地の形態としては,平板培地を使用してもよいが,糸状菌の場合は,長期間培養するため,培地が乾燥しないように,テープなどで平板培地を密封するか,栓ができる試験管培地を使用するのが望ましい.多くの真菌は,25~30℃で良好に発育できるため,検体からの真菌の分離には室温もしくは30℃が用いられる.糸状菌分離の場合は,室温のみでもよいが,????????属の分離の場合は室温と35℃の2つの温度で行うのがよい.???????属は通常1~2日で発育するが,糸状菌の場合は発育の遅い菌種もあるため,4週間は培養を続けるべきである.表1に培養条件をまとめた.●同定真菌の同定には,①培地上のコロニーの状態,②スライド培養法による形態の観察,③生化学性状,④遺伝子検査による同定などがあるが,通常は①と②で行う.???????属は通常の培地上では単細胞性の発育形式をとる(図1)が,コーンミール寒天培地上では菌糸をつくる.一方,糸状菌は,培地上で培養日数を増すにつれ,徐々にコロニーが大きくなる(図2).詳細な菌種同定は,経験のある検査機関に依頼するのが望ましい.●薬剤感受性試験???????属の場合は,通常市販されている微量液体希釈法のキット(ASTY?など)が用いられる.糸状菌の場合,微量液体希釈法での薬剤感受性の測定が手技的にむずかしいため,薬剤濃度が勾配になるよう調整されたストリップ(E-test?)を使用し測定する場合が多い.文献1)山口英世:培養検査.病原真菌と真菌症,改訂2版,p70~75,南山堂,2003(56)■コメント■どうみても角膜真菌症と思われる症例で,結局培養陰性となることを経験された先生方も多いことと思われる.真菌はどこにでも生えるので,培養しやすそうなものであるが,実際は増殖に時間がかかるので,そのことを度外視して細菌と同じような日数や条件で培養すると何も生えてこない.真菌培養の効率を上げるには,それぞれの施設で,検査室とのチームプレイでいろいろと工夫していくことが必要であろう.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次図2????????属による真菌性角膜炎の前眼部写真(左図)とサブロー・グルコース寒天培地による????????属の分離(右図)角膜中央の病巣部(左図)の角膜擦過物をサブロー・グルコース寒天培地の複数カ所に接種しテープで密閉した後,室温で培養した.培養3日目に培地上にコロニーを確認できた.スライド培養法にて????????属と同定できた.図1???????属による真菌性角膜炎の前眼部写真(左図)とヒツジ血液寒天培地による???????属の分離(右図)角膜中央の病巣部(左図)の角膜擦過物を生理食塩水に撹拌し,それを血液寒天培地に画線塗布し,35℃で培養した.培養1日目に,培地上の無数のコロニーを確認できた.生化学性状検査によって???????????????と同定できた.

緑内障:視野検査における眼優位性の影響

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS日常視下における緑内障性視野異常の自覚症状は乏しく,特に単眼性の場合は両眼視によって視野異常が補完されることで早期発見が困難となることが予想される.しかしながら,視野検査測定時に,測定眼に対する非測定眼の遮閉による干渉(測定眼視野が暗くなったり,固視標が薄れたり)を知覚すると訴える患者も多々見受けられる.正確な視野検査結果を測定するためには,視野検査時の両眼視機能の影響(特に片眼遮閉時)を正確に把握する必要がある.この現象は”blankout”とよばれ,Humphrey視野計・Goldmann視野計のようなGanzfeldドームを用いた視野検査において片眼遮閉などにより左右眼の輝度に差異がでた場合に生じる知覚現象である1).この知覚現象は両眼に異質図形(直行する格子縞)を投影した場合に知覚する視野闘争と似通った現象であり,blankoutと視野闘争は共通の機構によって制御されているという報告もある2).視野闘争は眼優位性(利き眼)の定量評価が可能であり,眼優位性の強さの個人差を評価することができる3~5).視野闘争の知覚を評価することで視野検査時における遮閉眼の干渉の影響について評価できる可能性がある.そこで,緑内障性視野異常を有する患者の視野検査時における遮閉眼の干渉の影響について,視野闘争を用いて眼優位性の強さに注目して検討した.(53)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄74.視野検査における眼優位性の影響半田知也庄司信行北里大学医療衛生学部視覚機能療法学緑内障性視野異常を有する患者の視野検査結果において優位眼の中心閾値は非優位眼よりも高く,その閾値差は眼優位性が強いほど大きくなる傾向を示した.非優位眼の測定時には優位眼からの強い干渉による影響が推察された.緑内障患者の視野検査結果においては眼優位性(強さ)が強く影響している可能性が示唆された.型旧)さ強の性位優眼:点転逆)価評るよに差間時覚知位優(COW(TEB社)トーャチ量定性位優眼式里北+型新>非優位眼優位眼100%60%20%100%・・・・100%100%Balancingtechnique図1眼優位性定量法(balancingtechnique)と装置60秒間の視野闘争刺激における優位眼・非優位眼それぞれの優位時間を各コントラストで測定し,非優位眼刺激優位時間が優位眼刺激優位時間を上回った際のコントラスト(逆転点)を“眼優位性の強さ”として評価する.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006●対象および方法対象は北里大学病院眼科に通院中で,中心10?以内に視野異常を有する緑内障患者14名,平均年齢59歳,遠見・近見視力ともに1.0以上であり,日常生活下において視野異常を自覚しない者とした.視野検査はHum-phrey自動視野計の中心10-2閾値測定プログラムにて単眼視下(優位眼・非優位眼),両眼開放下にて測定され,中心5?以内の平均閾値を用いて評価した.眼優位性は視野闘争を用いた眼優位性定量法(balancingtech-nique)を用いた.本法は左右眼に45?と135?の視角4?の直行する格子縞,サイズ:視角4?,空間周波数2c/deg優位眼刺激コントラストを100%から10%まで10%ごとに変化させ,非優位眼刺激コントラストは100%に固定した際の優位眼刺激と非優位眼刺激の知覚時間差によって評価する.図1に装置(旧型,新型)を示す.●結果と考察図2に中心5?以内の平均閾値の結果を示した.閾値は,優位眼が非優位眼より高値を示し,その閾値差は眼優位性が強いほど大きくなった.視野検査時に眼優位性の影響が示唆されるとともに,非優位眼測定時の優位眼遮閉による強い干渉が生じている可能性が推察される.図3には,優位眼と非優位眼の平均閾値差(優位眼閾値-非優位眼閾値)と両眼視下閾値を示した.両眼視下閾値は眼優位性の強さにかかわらず一定であった.これは,視野異常の進行に伴って眼優位性(強さ)に視野異常の補完を目的とした機能的適応変化,すなわち非優位眼に視野異常が生じた場合には優位眼をより優位に,優位眼に視野異常が生じた場合には優位眼の変化(非優位眼を優位眼に変化)が生じることで,両眼視下における視野異常の自覚を抑制している可能性が推察される.今後,眼優位性のさらなる研究が望まれるとともに,緑内障診断(特に視野検査)における眼優位性の影響について注目する必要性がある.文献1)BolanowskiSJJr,DotyRW:Perceptual“blankout”ofmonocularhomogeneous?elds(Ganzfelder)ispreventedwithbinocularviewing.??????????27:967-982,19872)HarradRA,WhitakerA,LaidlawDAH:Binocularrivalryinpatientswithunilateralcataract:apreviouslyunidenti-?edcaseofvisualdisability.?????????????????????????35(Suppl):1964,19943)HandaT,MukunoK,UozatoHetal:E?ectsofdominantandnondominanteyesinbinocularrivalry.?????????????81:377-382,20044)HandaT,MukunoK,UozatoHetal:Oculardominanceandpatientsatisfactionaftermonovisionbyimplantedintraocularlenses.???????????????????????30:769-774,20045)HandaT,UozatoH,HigaRetal:Quantitativemeasure-mentofoculardominanceusingbinocularrivalryinducedbyretinometers.???????????????????????32:836-841,2006(54)010203040両眼開放非優位眼優位眼平均閾値(dB)図2平均閾値単眼視下(優位眼,非優位眼)と両眼視下における中心5?以内の平均閾値の結果を示す.視野闘争によって決定された優位眼の閾値は非優位眼の閾値よりも高値を示した(Mann-WhitneyUtest,p<0.05).また両眼視下閾値は単眼視下(優位眼閾値,非優位眼閾値)よりも高値を示した(Mann-WhitneyUtest,p<0.05).100(n=0)80(n=4)60(n=4)40(n=2)20(n=1)noreversal(n=3)05101520253035平均閾値差(dB)図3平均閾値差・両眼開放閾値と眼優位性の強さ優位眼と非優位眼の平均閾値差(優位眼閾値-非優位眼閾値)と両眼視下閾値を示す.眼優位性が強い者ほど平均閾値差が大きくなる傾向が認められた(ANOVA,p<0.05).一方,両眼視下閾値と眼優位性の強さには有意差は認められなかった(ANOVA,p>0.05).:平均閾値差(優位眼平均閾値-非優位眼平均閾値).:両眼開放下平均閾値.

屈折矯正手術:最近の屈折矯正手術の適応

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSエキシマレーザーによるphotorefractivekeratecto-my(PRK)が正常ヒト眼に初めて行われたのが1988年1),Pallikarisがlaser???????keratomileusis(LASIK)を発表したのは1989年2)であるが,このLASIKがPRKにとってかわり屈折矯正手術の主流に躍りでたのは1996~1997年頃のことである.屈折矯正手術が世界的に広く施行されるようになって約10年が経過したことになる.この間の手術装置や器具,手術手技の改良は目覚ましく,ノモグラムの発達もあって,手術成績は著しく向上し,術中合併症の発生率は低下するなど安全性も増した.最近では,波面センサーや補償光学の導入によるwaverfront-guidedLASIKや角膜トポグラフィーにリンクしたtopography-guidedLASIKといった個々の眼に対応したカスタム照射による治療も可能となっている.新たな手術手技として,laser-assistedsubepithelialkeratectomy(LASEK)やepipolis-laser????????kera-tomileusis(Epi-LASIK)3,4)のようなPRKとLASIKの中間的な手術法が考案されて,一部ではsurfaceabla-tionへの回帰がみられ,さらには有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:phakicIOL)といったレーザー手術以外の術式も発展してきている.このように屈折矯正手術のなかでもいろいろな術式が出現してきたために,その適応をどのように決定するか,どの術式を選択するかの判断が非常に重要になってきた.今回は,最近のさまざまな屈折矯正手術の適応についてまとめてみたい.屈折矯正手術のなかで,いまだに最も高い頻度で行われている術式はLASIKである.確かに,開発当初の-15Dや-20Dといった強度近視も矯正可能か,といった期待や幻想は打ち砕かれ,さまざまな臨床データや研究の蓄積により,LASIKによる矯正の限界がみえてくると同時に,phakicIOLという術式の発展もあり,その適応範囲はさらに狭まりつつある.しかし,近視人口の多くを占める軽度から中等度の近視あるいは近視性乱視を広くカバーし,非常に精度と安定性のよい矯正効果(51)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男75.最近の屈折矯正手術の適応堀好子南青山アイクリニック屈折矯正手術にもさまざまな術式が現われ,主流は相変わらずLASIKであるものの,その適応範囲は次第に狭まってきた.LASIK,surfaceablation,phakicIOLなどから,個々の症例に応じた術式の検討・選択が必要である.表1LASIKの安全基準1)レーザー照射後の角膜フラップ下実質ベッド厚は250?m以上残す2)術後の中心角膜厚は最低400?m以上とする表2LASIK適応の目安1)20歳以上(保護者の完全な同意があれば18歳以上)2)屈折度数が安定していること3)-10~-12D以下の近視,-5~-6D以下の乱視+3~+4D以下の遠視(ただし,角膜厚や角膜形状などの条件により異なる)4)矯正視力1.0以上5)説明を十分に理解していること表3LASIK不適応の目安LASIKを行わないほうがよい症例1)円錐角膜2)角膜ヘルペスの既往がある3)前眼部・後眼部の急性炎症4)明らかな瞳孔偏位5)妊娠中6)向精神薬を服用している精神疾患患者LASIK施行にあたって特別な注意が必要な症例1)角膜形状の不整(突出部位や菲薄部位がある)2)内皮細胞の減少(内皮細胞密度が1,500/mm2以下)3)単眼の患者4)閉瞼異常5)全身疾患(膠原病,糖尿病など)がある6)他の眼疾患(緑内障,白内障,網膜疾患など)がある7)病的なドライアイ8)理解力不足9)極端な角膜曲率半径(40.0D以下,48.0D以上)10)瞼裂狭小,ディープセットアイ,小眼窩11)他の屈折矯正手術の既往がある———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006を短時間に,術後疼痛などのストレスも最小限のレベルで得られることを考えると,今後もLASIKが屈折矯正手術の主流として施行されていく可能性は高い.そして,通常のLASIKの適応から外れるもの,何らかの理由でLASIKではリスクを伴い,それを他の術式で回避できる可能性が高い場合に,他の術式が選択されるという状況が今後しばらくは続くであろう.では,どのような症例がLASIKの適応で,どのような場合に適応から外れるのだろうか.表1にLASIKを施行する際の安全基準,表2にLASIK適応の目安を示す.術後に医原性円錐角膜ともよばれるkeratectasiaを起こさないためには,一般に表1の安全基準を満たす必要があると考えられている.表2は,標準的な角膜厚や形状を前提とした目安であり,530?m程度の平均的な中心角膜厚があれば-10D程度の矯正が可能ではあるが,最近では矯正度数が大きくなるほど術後収差の増大による夜間視力の低下やコントラスト感度の低下など,視機能の質的な低下をきたすことが明らかになっている.矯正度数が大きくなるほど屈折の戻りや低矯正になる確率も高い.-8~-9D以上の強度近視や,角膜厚が薄めで安全基準内での完全矯正が困難な場合には,phakicIOLという選択肢もあることを説明し,患者にとっての手術のメリット・デメリットを十分に検討することが必要であろう.表3にはLASIK不適応の目安を示す.この表3のLASIKという単語は,そのまま角膜(あるいはエキシマレーザー)屈折矯正手術に置き換えてもよいかもしれない.角膜の疾患や他の眼疾患などがあれば,その疾患の治療が最優先であり,手術は不適応である.表3にはないが,スポーツなどで眼に対する打撲の危険性が高い場合,特に格闘技選手などに対しては,角膜フラップ創の脆弱性を考慮して,PRKやEpi-LASIKなどのsur-faceablationを選択する.小角膜径,瞼裂狭小,極端にスティープまたはフラットな角膜などの場合,マイクロケラトームやエピケラトームなどの手術器具が安定して作動しないことも想定されるので,危険度が高いと判断した場合にはPRKやLASEKなどを選択する.再発性上皮?離のような上皮接着の異常がある場合は,PRKが第一選択である.最近surfaceablationとして比較されるPRK,LASEK,Epi-LASIKの優劣評価はまだ定まっていないが,上皮がフラップ状にレーザー照射面をカバーするメリットはあまりなさそうというのが実情である.不完全な上皮が残ることによって生じる上皮創傷治癒の遅れやヘイズ発生などのデメリットも認められており,ステロイド点眼を数カ月間使用しなければならないことへの配慮も必要である.ただ,フラップ作製に伴う収差の変化やフラップ創の脆弱性などを回避できるメリットはあり,今後の改良を期待したい.文献1)McDonaldMB,LiuJC,ByrdTJetal:Centralphotore-fractivekeratectomyformyopia.Partiallysightedandnormallysightedeyes.?????????????98:1327-1337,19912)PallikarisIG,PapatzanakiME,StathiEZetal:Laserinsitukeratomileusis.???????????????10:463-468,19903)PallikarisIG,NaoumidiII,KalyvianakiMIetal:Epi-LASIK:comparativehistologicalevaluationofmechanicalandalcohol-assistedepithelialseparation.???????????????????????29:1496-1501,20034)PallikarisIG,KalyvianakiMI,KatsanevakiVJetal:Epi-LASIK:preliminaryclinicalresultsofanalternativesur-faceablationprocedure.???????????????????????31:879-885,2005(52)☆☆☆

眼内レンズ:モデル眼を用いた多焦点眼内レンズの評価

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS●多焦点眼内レンズの特徴多焦点眼内レンズ(IOL)には屈折型と回折型がある.IOL挿入後の細隙灯顕微鏡写真(散瞳後)で,それぞれのデザインが観察可能である.屈折型は同心円状に遠用度数と近用度数が交互に並んでいる(図1).瞳孔径が近用ゾーン(2.1~3.4mm)の大きさまであれば,中央で遠方,そのまわりで近方に焦点が合う,すなわち瞳孔径に依存するデザインである.回折型は細かい同心円の回折デザインで,瞳孔径にかかわらず遠方と近方の2点に焦点があう(図2).ここで紹介した回折型は3.6mm径が回折デザインで,そのまわりは単焦点になっている.全体が回折デザインになっているものもある.●瞳孔径の関与多焦点IOLの機能を検討するうえで,実際に遠方を見ているとき,近方を見ているときの瞳孔径を知っておくことが重要である.特に屈折型では瞳孔径によって近方のみでなく遠方の見え方も変わってくる.筆者らが実際に両眼開放下で近方視している際の瞳孔径を測定したが,特に白内障年齢層では2.1mmより小さい症例が多かった.屈折型多焦点IOLの選択に重要な要素である.●モデル眼今回使用したモデル眼のデザインを図3に示す.瞳孔径の影響をみるために,瞳孔を模擬した2.0mmから5.0mmのapertureを用い,明るさの条件を変え,異なった距離にある物体を撮影した.モデル眼の欠点は,角膜収差が考慮されていないことである.しかしながら,モ(49)ビッセン宮島弘子東京歯科大学水道橋病院眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎240.モデル眼を用いた多焦点眼内レンズの評価多焦点眼内レンズには屈折型と回折型デザインがあり,それぞれの特徴を理解するために,モデル眼を用い,近方および遠方画像を撮影し,瞳孔径による影響も評価した.モデル眼という限界はあるが,術後の視力のみでは知りえない全体の見え方を理解するのに有用と思われた.図1屈折型多焦点眼内レンズ挿入後中央が遠用,そのまわりが近用,さらに遠用,近用,遠用と5ゾーンになっている.図2回折型多焦点眼内レンズ挿入後中央3.6mmが回折デザインになっている.図3モデル眼各IOLを通しての画像をモニターで観察可能.CCDPhotographiclensIOLMonitorWatercell———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006(00)デル眼で撮影した画像を患者さんに見せると,ほとんどの人が実際の見え方と類似しているとの返答であった.さらに改良するためには,ヒトの角膜収差を考慮したものが必要となる.●昼間の見え方近方の物体としてモデル眼から40cmの位置に本を,遠方の物体として5mの位置に視力表をおき,両者が入るように撮影した.屈折型多焦点IOLでは,瞳孔径が2mmでは視力表ははっきり見えるが,近くの本の字の解読は困難である.しかし,4.5mmになると明らかに近くの本が読みやすくなるが,視力表は全体にぼやける(図4).一方,回折型多焦点IOLでは瞳孔径が2mmでも,本の字がはっきり見え,瞳孔径によらず近方視力が良好という臨床結果と一致している(図5).●コントラスト評価多焦点IOLによる見え方を全体のイメージとしてとらえるには,部屋の様子や外の風景を撮影するのが理解しやすい.しかし,それぞれのIOLの異なった瞳孔径や物体の位置での見え方を比較するには,コントラスト評価法がある.この場合は,物体を撮影するのではなく,Landolt環視力表を異なる距離に置いて撮影し,Landolt環と背景のコントラストを画像解析する.これによっても,屈折型と回折型多焦点IOLの特徴を理解することができる.●夜間の見え方夜間の見え方が最も危惧されている.グレアやハローを見るため,室内同様,屋外でモデル眼を用い,瞳孔径4.5mmの設定で撮影を行った.夜,車の走っている道路で,外灯や対向車のライトが撮影できる場所を選んで撮影したところ,屈折型多焦点IOLでは従来からいわれている明らかなグレアやハローが観察され,回折型多焦点IOL,単焦点IOLの順に軽減していた.多焦点IOLでは,夜間の見え方が心配されているが,術前の説明時にこのような写真画像が非常に役立つと思われる.おわりに以上,多焦点IOLを入れたモデル眼の画像は,角膜収差や眼から脳への情報部分まで考慮することができないが,異なる条件での見え方を理解するのに非常に有用と思われた.図5回折型多焦点眼内レンズによる画像瞳孔径2.0mm.図4屈折型多焦点眼内レンズによる画像左:瞳孔径2.0mm,右:瞳孔径4.5mm.

コンタクトレンズ:円錐角膜用ハードコンタクトレンズデザインのキーポイント

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSコンタクトレンズ(CL)は“安全性,視力,装用感”の3大要素を考慮する必要がある.特に円錐角膜の場合,視力と進行予防の観点からハードCL(HCL)は医学的適応となり,快適な終日装用を可能にすることが前提となる.角膜形状や眼瞼は個々によってさまざまであり,どのようなデザインが最良であるか限定することはむずかしい.したがって,本稿では,一般的に円錐角膜に処方されるHCLデザインについて述べることにした.図1は円錐角膜の形状をPKS1000で撮影したもので,進行程度によって3段階に分類した1).それぞれの円錐角膜に対して球面HCLおよび多段階カーブHCLの装用例を示す(図2).●球面HCLHCLデザインが多様化した現在でも円錐角膜に対して球面HCLの処方率は依然高い.球面HCLの長所はオプティカルゾーン(OZ)の広さにあり,処方レンズサイズ(LS)が8.5~10.0mmの場合,OZは7.3~8.5mmあれば,静止位置が極端にズレない限り瞳孔領はカバーできる.つぎにフラットに処方されればパワーも低くなり,静止位置も中央や上方に位置しやすくなるので光学的にも有利になる2).ベベルデザインはメーカーによってさまざまである(図3).弊社のベベルはインターメディエイトカーブ(IC)とペリフェラルカーブ(PC)の2段カーブで,PCはエッジの角度を決定する重要な役割をもち,レンズの曇りや異物感に影響する.ベベル全体の浮き上がり量を表すエッジリフト(EL)は標準タイプ以外にも必要に応じて大きいタイプが選択できることや,ELやベベル幅はLSと連動して変化するようなデザインが望ましい.また,アトピー性皮膚炎が眼囲にあるケースでは,眼瞼によるレンズの引き上げが強まることや,レンズ周辺に蛋白系の汚れが付着することがある.これらはフロントベベルを薄くデザインすると改善する場合がある.逆に突出が強く眼瞼によるレンズの引き上げが弱い場合など,フロント周辺に細い溝を入れて引き上げやすくする方法がある.●多段階カーブHCLOZを狭くした5.00~7.00mm程度の小さなベースカーブ(BC)に段階的にフラットになる2段以上の周辺カーブを幅広く配置することで,円錐角膜の形状に近似させたデザインにしているのが特徴である(図4).長所は下方の浮きが減ることでズレや脱落が少なくなること(47)山内直樹㈱サンコンタクトレンズコンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS266.円錐角膜用ハードコンタクトレンズデザインのキーポイントⅠ型(軽度)Ⅱ型(中等度)Ⅲ型(高度)図1円錐角膜の程度球面HCL多段階カーブ(エムカーブ)多段階カーブ(エムカーブ)図2図1に対してレンズを装用サイズオプチカルゾーンベベルエッジリフト図3球面レンズの各部名称———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006(00)や,円錐頂点部の接触が緩和されることがあげられる3).円錐角膜の頂点は耳側やや下方にあり,進行すればさらに顕著になる.BCが小さくなればレンズは下がりやすくなり,瞳孔領からOZが外れることもある.またBCが小さくなるほどパワーは高くなる.以上のことから一般的に光学性は劣ると考えられている2).しかし進行した円錐角膜の場合,装用感やフィッティングなどの問題から,球面HCLでは対応が困難な症例も存在する.そのような症例に多段階カーブHCLは有効である4).弊社では「エムカーブ」がそれにあたり,特徴は,①比較的広いOZと周辺3段カーブ,②周辺デザインは一つのBCに対してELの異なった5タイプから選択できる,③LSは8.0~10.0mm(0.1mmステップ)から選択できる.多段階カーブデザインのポイントは「①OZ,②第1周辺カーブの曲率半径とその幅」の設定である(図4).これらが視力,動き,角膜中央や周辺部の接触状態などに影響を与える.これは円錐角膜用に限らず「多段階カーブ」と称されるものに共通し,商品コンセプトを決定する.BC<第1周辺カーブが一般的であるが,BC>第1周辺カーブも考えられる.弊社では「ツインベルⅡ」がそれにあたり,中等度までの円錐角膜などは一つの選択肢ではないかと考えている.●非球面HCLHCLで使用される非球面は,ベベル部分を除きおもに楕円,放物線,双曲線が使われている.これらは円錐曲線(2次曲線)の離心率によって分類される.円錐角膜用としては中心から何φかを球面に設定し,それ以降を非球面にデザインするのが一般的である.多段階カーブHCLと非球面HCLの違いについていえば,前者は任意に曲率や幅が決められ自由度が高くなるが,各カーブのつなぎ方に工夫が必要である.後者は滑らかな曲面を形成できるが画一化しやすくなる.円錐角膜といっても通常角膜とほとんど変わらない軽度から,飛び出しの強い高度までさまざまである.むずかしい症例は中等度以上に多いが,軽度でも存在する.角結膜に異常なく快適に装用されているのであれば,どのようなデザインのHCLであっても,その方にとっては最良の円錐角膜用HCLといえる.筆者らは長年の苦情処理の経験から,どのような眼に対しても個々の眼に合ったデザインが最良だと考えている.文献1)須田秩史,松田司,眞鍋禮三ほか:円錐角膜に対するハードコンタクトレンズ装用の適応について.日コレ誌24:88-94,19822)糸井素純,前田直之,佐野研二ほか:円錐角膜に対するコンタクトレンズ処方.日コレ誌41:135-141,19993)糸井素純:多段階カーブハードコンタクトレンズ.あたらしい眼科19:411-417,20024)中川智哉,前田直之,西田幸二ほか:円錐角膜への多段階カーブハードコンタクトレンズ処方.日コレ誌45:184-188,2003第3周辺カーブ第2周辺カーブ第1周辺カーブBCBC<第1周辺カーブ多段階カーブ(エムカーブ)多段階カーブ(ツインベルⅡ)BC>第1周辺カーブ第3周辺カーブ第2周辺カーブ第1周辺カーブBC図4第1周辺カーブの曲率半径と幅の関係

写真:白内障術後前嚢収縮

2006年8月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS(45)林研林眼科病院写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦267.白内障術後前?収縮①②③図2図1のシェーマ①:前?切開縁下線維組織,②:前?の放射状の皺,③:Zinn小帯は引き延ばされて,疎になっている.←図1網膜色素変性で前?収縮を起こした例網膜色素変性の眼で,術後に強い前?収縮をきたした.前?切開縁の線維組織形成が著しく,前?は引っ張られて放射状の皺を形成している.ab図4前?収縮に伴うレンズ?内偏位閉塞隅角緑内障眼など?自体が大きいと,?収縮に伴ってレンズが?内で偏心・傾斜を示すことがある.←図3YAGレーザー前?切開後前?に,YAGレーザーで上下左右にrelaxingincisionsを入れたところ(a),術後1週で切開部が拡大した(b).前?切開では,レンズ縁まで切開を入れて,切開縁を浮き上がらせることが重要である.6~8本の切開を入れてもよい.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006(00)白内障手術で,continuouscurvilinearcapsulor-rhexis(CCC)を施行すると,前?切開をした面積が数カ月の間に縮小するが,これを前?収縮という(図1).前?収縮は,1)核皮質が除去されたemptycapsu-larbagの収縮と,2)前?下線維組織形成という2種の組織反応からなる.通常2つの反応は比例しており,?収縮の強いものほど,線維化の程度も強い.前?切開面積の縮小は,術直後から始まり,術後3カ月くらいが最も小さく,その後線維組織の自然退縮により若干拡大して6カ月までに安定する.前?収縮率は,正常眼では平均して10~15%程度である.前?収縮は,前?縁が瞳孔領に塞ぐほどにならなければ,視力には余り影響しないが,一部が瞳孔領にかかればコントラスト感度が低下する.前?収縮に関連する因子として,個体側の因子と挿入するレンズの因子が考えられる.個体側の因子としては,さまざまな疾患で前?収縮が強いことが報告されている.最も収縮率の高いものは,網膜色素変性症であり,この疾患眼での平均前?収縮率は50%に近い1).つぎに,落屑症候群で,収縮率は25%程度である2).これら以外でも,閉塞隅角緑内障,糖尿病,ぶどう膜炎,アトピー性白内障,硝子体手術後などでは,収縮率が高い.前?収縮が強い理由として,①Zinn小帯の脆弱性と,②血液房水関門の破綻のために線維組織の形成が強いことがあげられる.Zinn小帯の弱いものの典型として落屑症候群があり,血液房水関門の破綻によるものとして糖尿病,ぶどう膜炎があるが,網膜色素変性では,双方の原因が組み合わさっているため,収縮率が高いものと推察される.一方,レンズ側因子として,光学部素材,光学部デザイン,支持部素材,支持部デザインが考えられるが,有意な影響を及ぼす因子として,光学部素材のみがあげられている3).すなわち,シリコーンや親水性アクリルなど,水晶体?との癒着を起こさない素材では,poly-methylmethacrylate(PMMA)や疎水性アクリルなど?と癒着する素材に比べ,前?収縮は若干強い.一方,支持部の素材やデザインなどは,あまり影響しない.ただし,前?収縮が強いレンズとしてプレート型シリコーンレンズがいわれているが,?収縮に耐えきれず支持部が変形しやすいレンズでは,例外的に支持部の影響があるかもしれない.光学部素材の違いによる前?収縮率の差は10%以内であり,正常眼では臨床的に大きな差ではない.それでも,網膜周辺変性があったり,糖尿病眼で将来汎網膜光凝固をする必要があったりするような眼では,PMMAやアクリルレンズを挿入しておいたほうが安全と考えられる.文献1)HayashiK,HayashiH,MatsuoKetal:Anteriorcapsulecontractionandintraocularlensdislocationafterimplantsurgeryineyeswithretinitispigmentosa.?????????????105:1239-1243,19982)HayashiH,HayashiK,NakaoFetal:Anteriorcapsulecontractionandintraocularlensdislocationineyeswithpseudoexfoliationsyndrome.???????????????82:1429-1432,19983)HayashiK,HayashiH:Intraocularlensfactorsthatmaya?ectanteriorcapsulecontraction.?????????????112:286-292,2005