———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSの増加はそのまま糖尿病患者数の増加へとつながった.国際糖尿病連盟(InternationalDiabetesFederation:IDF)が予測した将来の2025年,わが国を含めた東アジアや南アジアにおける糖尿病患者数は,肥満大陸の北Iわが国における肥満および2型糖尿病患者の動向近年,欧米諸国同様にわが国においても過栄養や運動不足といった環境因子の変化により肥満が増加している.米国における肥満患者〔bodymassindex:BMI≧30,BMIは体重指数の意味で体重(kg)/身長2(m)2〕は1990年頃より著しい増加がみられた(図1)が,わが国においても同じ頃より,特に40歳代以降の男性肥満患者(BMI≧25)の増加は顕著となった(図2).アジア人はあまり極端な体重の増加がなくても糖尿病になりやすいと考えられている.すなわち大雑把に上記のBMI≧30(身長170cmで体重87kg)の米国人とBMI≧25(身長170cmで体重72kg)の日本人がほぼ同じ割合で糖尿を発症すると考えられていたが,こうした肥満(3)3*KazuhisaMaeda&IichiroShimomura:大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学〔別刷請求先〕前田和久:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学特集眼の病い生活習慣病が因あたらしい眼科25(1):37,2008太っていなくてもメタボリックシンドローム?─内臓脂肪症候群とアディポネクチンの発見─BodyWeightCannnotPredictMetabolicSyndrome─VisceralFatSyndromeandtheDiscoveryofAdiponectin前田和久*下村伊一郎*図1米国における肥満者(BMI≧30)の推移(19912000)19952000199120%:(BMI≧30)15~19%:10~14%:<10%:Nodata:60~6920~2930~3940~4950~5970~(歳)(%)35302520151050男性60~6920~2930~3940~4950~5970~(歳)女性:昭和55年(1980):平成2年(1990):平成12年(2000)図2国民栄養調査による肥満者(BMI≧25)の割合図3全世界における糖尿病患者増加の予測(20032025)(単位:百万人)IDFAtlas2003———————————————————————-Page24あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(4)ムの必須診断基準に取り入れられているが,1980年代より筆者らが提唱してきた「内臓脂肪症候群」こそが,メタボリックシンドロームの上流の基盤病態として,重要であることが実証されたといえよう(図6).すなわち,内臓脂肪症候群とは,本来高度の肥満でなくても糖尿病を起こしやすい日本人に対するきめ細かい臨床観察研究から発見された概念である.具体的にはBMIが高くない非肥満者でも,臍部での内臓脂肪面積が100cm2を超える場合,多くの合併症が集積することが示されている.III内臓脂肪型肥満者の割合これまで正確な内臓脂肪量の測定は腹部CT(コンピュータ断層撮影)測定による内臓脂肪面積値を算出す米を追い抜いて著しく増加すると予想されているのである(図3).その一方で,同じ1990年頃より20歳代から30歳代にかけての女性の体重減少傾向が認められることは注目すべきである(図2).実はこれら出産適齢の女性のやせがわが国における小児肥満者の増加と関連していることも指摘されている.妊婦の体重増加低下すなわち過少栄養は,胎児の相対的な飢餓状態を意味する.胎内でやせた胎児の体には,太ろうとする機構が働き,倹約遺伝子ともよばれる抗肥満ホルモンが低下する.すると出生後に豊富な人工乳などにより過栄養状態に曝露されると,肥満に対する防御機構が働かず,体重増加や糖尿病をきたしやすくなるという考えである1).IIメタボリックシンドロームの概念と内臓脂肪症候群2005年4月の日本内科学会において,内科系8学会で構成されたメタボリックシンドローム診断基準検討委員会により日本人のメタボリックシンドロームの定義と診断基準が公開された(図4).メタボリックシンドロームは耐糖能異常,高脂血症,高血圧が個々人に合併する心血管病の易発症状態と定義され,動脈硬化性疾患予防の重要なターゲットになると考えられている(図5).その必須項目にあるのがウェスト周囲径,すなわち腹部肥満である.WHO(世界保健機関)やIDFをはじめ,世界中でこのウェスト周囲径がメタボリックシンドローウェスト周囲径男性85cm以上女性90cm以上(内臓脂肪面積100平方cm以上に相当する)中性脂肪値150mg/d?以上HDL(善玉)コレステロール値40mg/d?未満のいずれか,または両方収縮期血圧130mmHg以上拡張期血圧85mmHg以上のいずれか,または両方空腹時血糖110mg/d?以上以下のうち,2項目以上+内臓脂肪蓄積血清脂質異常血圧高値高血糖図4メタボリックシンドローム(MS)の診断基準(日本内科学会,2005)図5危険因子の数と冠動脈疾患の発症(JpnCircJ,2001より)0102030400123~4危険因子の数(肥満,高脂血症,高血圧,糖尿病)1.05.19.731.3メタボリックシンドローム冠動脈疾患オッズ比図6内臓脂肪がたまるといろんな病気になる皮下脂肪型肥満インスリン抵抗性糖尿病高脂血症左室機能不全高血圧冠動脈疾患睡眠時無呼吸症候群内臓脂肪型肥満????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.1,20085(5)る方法しかなかったが,コスト面や被曝の問題がある.ウェスト周囲径の測定はウェストサイズが内臓脂肪蓄積と相関することから簡便な指標として用いられるが,皮下脂肪の多寡を考慮できない.最近,筆者らは内臓脂肪を従来のCT法ではなく,12分で簡易式かつ正確に測定可能とする腹部インピーダンス法によるベルト型装置の開発に成功した2).本装置の使用によって,ウェスト周囲径のスクリーニング調査では内臓脂肪型肥満が発見できない症例を検出することができ,内臓脂肪型肥満の早期発見に役立つことも示されている.筆者らの行った検討では,内臓脂肪蓄積はすでに40歳において一般健診者の60%にも達していることが判明した(図7).本装置は特に放射線被曝の懸念される小児科領域における生活習慣病検診にも役立てられている(図8).IVバイオマーカーアディポネクチンの発見ではこうして明らかにされてきた内臓肥満およびメタボリックシンドローム発症のメカニズムあるいは治療標的となる分子は何であるか.筆者らはこの問いかけに対する答えを得るべく,1990年代後半,その発症に際し最も重要な臓器と考えられる脂肪組織の網羅的発現遺伝子の解析を行った.そして見いだしたのが,脂肪組織こそが体内で最大の内分泌臓器であるという概念(図9)と,その脂肪組織から特異的に分泌され,メタボリックシンドローム進展のkey分子であるアディポネクチンである3).アディポネクチンは当初脂肪組織中に特異的に最も高頻度に発現している遺伝子として見いだされたことから,apM1=adiposemostabundantgenetranscript1図7内臓脂肪面積≧100cm2の比率男性1,803名,検診時簡易式測定装置による.(平成16年度未来医療センターより)02040608020歳代30歳代40歳代50歳代60歳以上内臓脂肪面積(%)図8大阪大学内分泌代謝内科ウェイトマネジメント外来外来において内臓脂肪面積,安静時代謝量,運動量モニター,血清アディポネクチン濃度を基盤に介入治療を行う.内臓脂肪面積代謝率測定過去現在図9脂肪組織から多くのホルモンや蛋白質が分泌されるTNF-aPAI-1LeptinアディポネクチンHB-EGFResistinインスリン抵抗性動脈硬化高血圧症Angiotensinogen図10apM1:ヒトアディポネクチン遺伝子(apM1:adiposemostabundantgenetranscript-1)Collagen-likeFibrousDomainC1q-likeGlobularDomain11841244heartbrainlungliverkidneyovaryuterusplacentaintestinemuscleadipose????????????????????????????????????????????????????????????????????107———————————————————————-Page46あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008かになった(図13).現在,世界中から2,000件を超える論文がアディポネクチンに関して報告されているが,メタボリックシンドローム以外にも過栄養や運動不足などにより低下したアディポネクチンが癌や非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholicsteatohepatitis:NASH),炎症性腸疾患(inammatoryboweldisease:IBD)といった消化器疾患,出生時低体重などに関与するという知見も報告されている.おわりにメタボリックシンドロームの治療に向けては,高血圧,高脂血症,耐糖能異常など各危険因子の治療が重要であることは言うに及ばない.しかし,減少させるどころか増加し続ける肥満患者を前にして,薬剤療法だけでは医療経済的にも破綻をきたす.運動療法により内臓脂肪を減少させ,食事療法によりアディポネクチンを増やと命名された(図10)4).ほぼ同時期にマウス脂肪細胞cDNAライブラリーから同定されたAcrp30,AdipoQはアディポネクチンのマウスホモログであり,ゼラチン結合能をもつ血漿蛋白として精製されたGBP28はアディポネクチンと同一分子である.ヒト脂肪組織ライブラリーからapM1がクローニングされたことにより血中レベル測定系確立とともにその後,臨床病態を中心とした解析が進められた.すなわちアディポネクチンの血中濃度は肥満者,特に内臓脂肪蓄積状態に伴って低下する(図11).そして臨床データに相応すべく,細胞実験やマウスを用いた検討などを中心に多くのアディポネクチンの作用機序の解析が進められ(図12)5),内臓脂肪の減少に伴って低下したアディポネクチンが直接心循環器疾患に対して,あるいは間接的に高血圧や糖尿病などを介してメタボリックシンドローム発症に関与していることが明ら(6)0内臓脂肪面積(cm2)20051015血中アディポネクチン(?g/m?)300200100図11内臓肥満者はアディポネクチン値が低い図14メタボリックシンドローム=脂肪不全?アディポネクチン内臓脂肪面積健常者前方障害後方障害メタボリックシンドローム100cm24.0μg/m?②運動療法①食事療法図12アディポネクチンは大阪大学で発見された善玉因子である〔2007年4月現在,アディポネクチンに関する論文2,000件以上(PubMed)〕糖尿病をよくする肝臓筋肉脂肪血圧を改善する血管癌細胞もやっつける動脈硬化を防ぐ図13アディポネクチンが減るとメタボリックシンドロームになる高脂血症高血圧糖尿病心血管疾患内臓脂肪過栄養運動不足アディポネクチン癌,NASH,IBD,出生時低体重———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.1,20087forthemeasurementofvisceralfataccumulationbybio-electricalimpedance.DiabetesCare28:451-453,20053)MaedaK,OkuboK,ShimomuraIetal:Analysisofanexpressionproleofgenesinthehumanadiposetissue.Gene190:227-235,19974)MaedaK,OkuboK,ShimomuraIetal:cDNAcloningandexpressionofanoveladiposespeciccollagen-likefactor,apM1(AdiPoseMostabundantGenetranscript1).BiochemBiophysResCommun221:286-289,19965)MatsuzawaY,FunahashiT,KiharaSetal:Adiponectinandmetabolicsyndrome.AnteriosclerThrombVascBiol24:29-33,2004す.これらを包括的に管理することがメタボリックシンドロームの制御に不可欠であると考えられる.今,その改善に向けて心不全の治療を行うがごとく科学的かつ簡便な指標が明らかになってきたと考えられる(図14).文献1)GluckmanPD,HansonMA,PinalC:Thedevelopmentaloriginsofadultdisease.MaternChildNutr1:130-141,20052)RyoM,MaedaK,OndaTetal:Anewsimplemethod(7)