———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSに接する部分が小さく第一眼位でも角膜の中央部を軽く圧迫し,水晶体と虹彩面を押し下げることで隅角底をみることができる(図2)が,角膜にひずみがでるとみえにくいので圧迫する力加減が必要である.また,隅角検査では対光反応による縮瞳の影響をできる限り受けないようにするため,スリット光の光源を絞って検査を行うように心がける.圧迫隅角検査は,Zeiss型四面鏡などの圧迫隅角検査専用の隅角鏡を用いることが基本である.一般的に普及しているGoldmann隅角鏡では眼球の位置をコントロールしないと狭隅角眼では第一眼位で隅角底はみえにくい.そこで,「みたいほうのミラーをはじめに隅角検査は,緑内障の診断で最も重要な検査の一つである.開放隅角か閉塞隅角かを診断するためには必須の検査といえる.しかしながら,接触式レンズを装着しなければ隅角は観察することができないことや圧迫隅角検査は熟練度により評価が一定しないこともあって実際には隅角検査を嫌う眼科医も多いのではないだろうか?近年,非接触式前眼部形状解析装置が開発され,隅角の評価がより簡便で定量的に計測可能となったが,機器は高価なものが多く,周辺部虹彩前癒着(PAS)の存在範囲までは検出できない.さらに,隅角検査は閉塞隅角眼でのみ重要なわけではなく,線維柱帯炎や血管新生緑内障などの続発緑内障の診断にも重要な検査となる.ここでは,具体的な圧迫隅角検査の手技のコツを示したい.I圧迫隅角検査の原理と手技のコツ(みみみの法則)細隙灯顕微鏡を用いた周辺前房深度を簡便に評価できるvanHerick法により周辺前房深度が角膜の厚みの4分の1以下であれば,隅角検査が必要である.圧迫隅角検査は,後述する機能的閉塞と器質的閉塞を見分けることができる有用な隅角検査法である.間接型隅角鏡にはGoldmann隅角鏡とZeiss型四面鏡があり(図1),どちらも検査前に点眼麻酔が必要であるが,前者はメチルセルロースを必要とし,後者ではメチルセルロースを必要としない.Zeiss型四面鏡(Sussmanレンズ)は,角膜(13)???*YasumasaOtori:大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)〔別刷請求先〕大鳥安正:565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)特集●隅角のすべてあたらしい眼科23(8):989~992,2006圧迫隅角検査の手技と実際???????????????????????????????????大鳥安正*図1間接型隅角鏡(Goldmann型とZeiss型)左がGoldmann型隅角鏡で,右がZeiss型四面鏡.Zeiss型四面鏡では,角膜の中央部を圧迫すると圧迫隅角検査ができる.Goldmann型隅角鏡では,検者がみたいほうのミラーをみてもらう(みみみの法則)のがコツ.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006みてもらう」(みみみの法則)を覚えておくと便利である.上方の隅角をみたい場合には,下方の隅角鏡を使う.第一眼位で上方の隅角底がみえなければ眼球をみたいほうのミラーすなわち,下方をみてもらうと上方の隅角底がみやすくなる(図3).この要領で,隅角鏡をたとえば12時方向から順番に3時,6時,9時,12時の順番で隅角を360?回転させて,隅角所見をPASの範囲,隅角色素の程度,虹彩突起,隅角結節やpigmentpelletの有無,新生血管の有無などに気をつけながらスケッチをしていく.記載方法は,隅角鏡でみえたとおりに記載する場合もあるが,隅角鏡でみえた所見を180?逆転させて記載したほうがわかりやすい.II閉塞隅角緑内障の新分類2003年11月に発行されたわが国の緑内障診療ガイドラインによると,原発閉塞隅角緑内障(primaryangle-closureglaucoma:PACG)の定義は,「隅角閉塞が証明されながら眼圧上昇あるいは視神経の変化をきたしていない初期症例を含めてすべてPACGとする」とある.すなわち,眼圧が上昇しておらずPASがある症例も含めてPACGとするということになる.この定義に基づき,多治見スタディのPACGの有病率は,1.3%となっていた.ところが,Fosterらが報告した新分類1)によると,緑内障という病名をつけるには,緑内障性視神経障害があることが必須であるとされ,PASのない単なる狭隅角眼は原発閉塞隅角症疑い(primaryangleclosuresuspect:PACS),眼圧が上昇しているいないにかかわらず狭隅角眼でPASがある場合は,原発閉塞隅角症(primaryangleclosure:PAC)と分類された(表1).欧米との有病率を比較するうえでもPACGの診断基準(14)図2圧迫隅角検査の原理(Zeiss型)圧迫隅角検査は,圧迫隅角専用の隅角鏡(Zeiss型四面鏡など)を用いるのが基本である.角膜の中央部を圧迫することで房水を実線矢印のように隅角底に押しやり,機能的閉塞(A)か器質的閉塞(B)かを見分ける.(Schields?TextbookofGlaucoma5thedition,p226より)AB図3Goldmann型隅角鏡検査のコツ第一眼位(正面視)のときには,虹彩が前彎しているため隅角底がみえない.そこで,検者がみたいほうのミラーすなわち,下方をみてもらうと隅角底がみえてくる.正面視下方視———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006???を統一する必要性があり,2005年わが国のPACGの有病率は,0.6%と変更され,40歳以上の緑内障有病率は5.0%(20人に1人)となった2).一般的に,相対的瞳孔ブロックを伴う場合には,眼圧が上昇していなくてもPASがあれば(すなわちPAC),レーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)の相対適応となっている.PACSからPACになるのは,5年間で22%3),PACからPACGになるのは5年間で28%4)と報告されている.しかし,約10%程度にPACSから急性原発閉塞隅角症(acuteangleclosure:AAC)を起こす場合がある5).本来,予防的レーザー虹彩切開術は,AACを予防するために行われるものであるべきであり,わが国ではLI後の水疱性角膜症の発症率が高いことが知られていることからも,LIの適応はより慎重に考えるべきであり,PACの状態ですぐにLIを行わず,経過をみながらPASの範囲が増加するなどの変化をみてLIを行う,あるいは白内障があれば白内障手術をまず行うという考え方もある.LIの適応は今後変わってくる可能性はある.III機能的閉塞(appositionalclosure)と器質的閉塞(synechialclosure)機能的閉塞とは,圧迫隅角検査でPASがない状態であり,暗室下で隅角は閉塞しており明室下では隅角閉塞が起こらないような場合をいう(図4).超音波生体顕微鏡(UBM)で観察するとこのような所見は狭隅角眼では比較的よくみられる.機能的閉塞が慢性化すると器質的閉塞であるPASの形成,すなわちPACとなる.一般的にPASの範囲が50%を超えると眼圧が上昇するとさ(15)図4機能的隅角閉塞のUBM所見暗室下では,散瞳に伴って虹彩根部は分厚くなり隅角は閉塞しているようにみえるが,明室では隅角は開いている.このような症例に圧迫隅角検査をすると隅角には虹彩前癒着はなく,器質的閉塞はない.暗室明室表1閉塞隅角緑内障の新分類(Fosterら,2002)Acuteangleclosure(AAC):急性閉塞隅角症急性緑内障発作,GON(-)Acuteangleclosureglaucoma(AACG):急性閉塞隅角緑内障AAC&GON(+)Primaryangleclosuresuspect(PACS):原発閉塞隅角症疑いPAS(-),GON(-)Primaryangleclosure(PAC):原発閉塞隅角症PAS(+),GON(-)Primaryangleclosureglaucoma(PACG):原発閉塞隅角緑内障PAC&GON(+)GON:glaucomaopticneuropathy,PAS:peripheralanteriorsynechiae.———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006(16)れており,眼圧上昇が慢性化し,緑内障性視神経障害を呈すると慢性閉塞隅角緑内障(chronicangleclosureglaucoma:CACG)となる.アジア人ではCACGになると,LIのみで眼圧コントロールができるのは約50%程度とされている6,7).閉塞隅角緑内障の発症機序として,相対的瞳孔ブロックによるものとプラトー虹彩形状によるものがあるとされているが,実際には両者を合併していることも多い.LI後に虹彩は平坦化するものの,プラトー虹彩形状が残存するために隅角底が閉塞したままになっているような場合では,眼圧コントロールが不良なことが多い.このような背景から最近ではCACGに対する治療に関しては,LIをせずに水晶体摘出をまず行うという考え方も出てきている.いずれにしてもLIの適応に関しては,今後も慎重に検討がなされなければならない.おわりに非接触で隅角を正確に評価できる診断機器が開発されれば,隅角検査はなくなるかもしれないが,それは今のところなく,隅角検査の重要性が変わることはない.医師が直接みて診断をつけることができるのが眼科学のすばらしい点の一つである.視神経乳頭の評価や隅角検査は,みる医師のスキルによって評価が異なりうる検査かもしれないが,逆に言うと眼科医の腕のみせどころでもある.いかに優れた診断機器が開発されたとしても,自分の眼でみることの重要性を忘れないようにしたいものである.文献1)FosterPJ,BuhrmannR,QuigleyHAetal:Thede?nitionandclassi?cationofglaucomainprevalencesurveys.???????????????86:238-242,20022)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreport2:prevalenceofprimaryangleclosureandsec-ondaryglaucomainaJapanesepopulation.?????????????112:1661-1669,20053)ThomasR,GeorgeR,ParikhRetal:Fiveyearriskofprogressionofprimaryangleclosuresuspectstoprimaryangleclosure:apopulationbasedstudy.???????????????87:450-454,20034)ThomasR,ParikhR,MuliyilJetal:Five-yearriskofprogressionofprimaryangleclosuretoprimaryangleclo-sureglaucoma:apopulation-basedstudy.?????????????????????81:480-485,20035)木下渥:狭隅角眼の長期観察結果.あたらしい眼科12:814-818,19956)Alsago?Z,AungT,AngLPetal:Long-termclinicalcourseofprimaryangle-closureglaucomainanAsianpopulation.?????????????107:2300-2304,20007)永田誠:わが国における原発閉塞隅角緑内障診療についての考察.あたらしい眼科18:753-765,2001