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序説:基本的な角膜上皮疾患の考え方と治療方法

2006年3月31日 金曜日

(1)281日常診療において,角膜上皮疾患に遭遇する機会はきわめて多い.なかでも,中高年齢者のドライアイとその関連疾患は,日々の診療で出会わないことはないほどである.また,コンタクトレンズによる角膜障害も,非常によく見かけるものである.さらに,点眼治療中の緑内障眼や,各種の眼手術の術後眼を注意して見れば,薬剤性の角膜上皮障害に出会う機会も多いに違いない.こうした角膜上皮障害のなかで最も一般的なパターンは,点状表層角膜症(superficialpunctatekeratopathy:SPK)であり,SPKの原因は,角膜の最表層上皮をメンテナンスする機構の異常による.また,今回取り上げたように,SPK以外にもさまざまな角膜上皮障害パターンが存在する.日常臨床において高頻度に出会う,SPKなどの角膜上皮障害を大したものではないと,感染予防の抗菌点眼液の処方で終わるか,病態生理を考えながら,それを最短の時間で治癒に導く方策を練るかでは,臨床の力や姿勢に大きな差があるのは当然のことである.また,常々,角膜上皮障害の病態生理を考える習慣は,より重症の角膜疾患に遭遇した場合に,それにアプローチするためのロジックを身につけるための日常のトレーニングともいえる.今回の特集では,単純なSPKから角膜感染症まで幅広く角膜上皮疾患を取り上げながら,今一度基本に戻って,病態生理と診断・治療のコツについて,エキスパートの先生方にまとめていただいた.まず,筆者の一人である横井は,涙液減少型ドライアイについてまとめた.涙が少ないと一言でいうのは簡単であるが,的確に診断することはそれほど容易ではない.近年の涙液減少型ドライアイにおける炎症の関与や,治療の選択についても言及した.点眼薬,全身薬の薬剤毒性については,川島素子先生・島﨑潤先生にお願いした.眼表面に対する薬剤の沈着,毒性,アレルギーとしての表現形や病態がまとめられており,注意すべき薬剤リストもあって日々の診療に役立つものと思われる.マイボーム腺および眼瞼関連の角膜上皮疾患では,マイボーム腺角膜上皮症の名づけ親の一人である鈴木智先生にまとめていただいた.眼瞼縁炎は前部のブドウ球菌性眼瞼結膜炎と後部のマイボーム腺疾患に分けられるが,よくわからないSPKや眼表面の炎症をみたら,マイボーム腺をチェックすることという重要なメッセージがこめられている.アレルギー性結膜疾患の角膜上皮傷害については,本病態に造詣の深い熊谷直樹先生にまとめていただいた.重症例である春季カタルとアトピー性角結膜炎の所見の見方と治療のコツが手に取るようにわかりやすくまとめられており,必読に値する一稿である.コンタクトレンズによる角膜上皮障害には,特徴的な所見がみられるが,日常診療で非常によくみかけるため,正確な知識を頭に入れておきたい.糸井0910-1810/06/\100/頁/JCLS*NorihikoYokoi&ShigeruKinoshita:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学●序説あたらしい眼科23(3):281~282,2006基本的な角膜上皮疾患の考え方と治療方法ComprehensionandTreatmentofEssentialCornealEpithelialDisease横井則彦*木下茂*282あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006素純先生に,その詳細をまとめていただいた.再発性角膜びらんは,しばしば患者を苦しめる疾患である.外傷性以外のものは,時に見逃されていることもある.原因や治療について,内野裕一先生・榛村重人先生にまとめていただいた.ウイルス性角膜上皮疾患,それ以外の角膜上皮感染症については,それぞれ,檜垣史郎先生・下村嘉一先生,鈴木崇先生にまとめていただいた.感染症のエキスパートによる執筆であり,特に角膜上皮を舞台とするヘルペス性角膜炎やブドウ球菌あるいはアカントアメーバによる角膜炎のポイントがまとめられており,非常に勉強になると思われる.角膜ジストロフィも見たことがないと,わからない難問になってしまいがちである.鑑別を要する重要な3つの角膜上皮のジストロフィについて,相馬剛至先生・西田幸二先生に解説していただいた.最後に古くて新しい話題,糖尿病角膜上皮症について,細谷比左志先生にまとめていただいた.糖尿病角膜上皮症は,変わらず,日常診療でしばしば経験するが,アンカリング・フィブリルの機能不全説から,新しいラミニンのAGE(advancedglycationendproducts,終末糖化産物)化説まで,かなり詳しくメカニズムがわかってきている.いずれの総説も力作ぞろいで,すべての角膜上皮疾患がカバーされており,日常診療に大いに役立つものと思われる.読者のみなさんも,今一度,基本に立ち返って,角膜上皮疾患について復習していただき,目前のSPKを完治させることからトライしていただきたいと思う.本特集を座右においてよく復習しておけば,角膜上皮疾患には,自信がついてくることは間違いない.(2)

眼科医にすすめる100冊の本-2月の推薦図書-

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLSAnti-agingmedicine(抗加齢医学)は,このところ話題の医療です.不老不死は,人間にとって永遠の願望です.これまで,いろいろなことが試されてきました.EBM(evidence-basedmedicine)という概念が定まらない時代には,経験知から,食べ物,薬,運動,祈祷に至るまで,さまざまなものが開発されてきました.あるものは,今でも珍重されています.この半世紀の間に,医療の進歩により,寿命は画期的に延びました.しかし,これまでanti-agingと医療は,別物として考えられてきたように思います.医療の目的から,anti-agingや不老不死は,どこかで切り離されたのでしょう.時の権力者たちが不老不死を求め,そして彼らがどこか利己的に映ったためか,不老不死という概念は一見荒唐無稽な願望と捉えられがちです.そんな願望を抱くよりは,日本人の平均寿命が80歳台であれば,およそそれを標準に自分の寿命を考えるのが普通のことなのです.しかし本書では,平均寿命という考え方,また,人間は少しずつ老化し,やがて身体は利かなくなる,およそ60歳ぐらいから衰えていく,といった思い込みに対して,「60歳を過ぎたら下り坂」とは限らない,という事例を紹介しつつ,今の生活を少し変えるだけで,50代の体力と元気のまま,80代を生きられると説いています.そのためには私たちは,身体にしかるべき信号を送らなければならない,と著者はいいます.著者は,ハリーという医師と出会い,健康や寿命に対して新しい考え方にふれる機会をもちます.最初は,普通の患者と医者の関係で治療を受けるのですが,その過程で彼は,ハリーにいくつか質問をします.「このお仕事で何が一番大事だと思われますか?」ハリーは答えます.「患者さんと長い関係を築き,患者さんにずっと健康でいてもらうことですね.病気を治すだけじゃなく,もっと健康になってもらうこと,これが大事なんです」「どういうことでしょう?」「実を言うと,私は内科の医療だけじゃなく,加齢の問題にも取り組んでいまして…」そこでハリーは,いかに老化に取り組むかについて3つの基本を説きます.その一つは運動です.「またか」と思いましたが,ハリーのいう運動とは,「無理せずゆっくりウォーキング」などというものではありません.運動は週に6日.そのうち筋力トレーニングは,最低週に2日.あとは,(220-年齢)×0.7~0.8の心拍数に上げる運動をすることを一番の条件にする.栄養やダイエットについてもふれますが,なんと言っても大事なのは運動だといいます.遺伝が影響するのは,せいぜい20%.残りの80%は自分次第です.ハリーは,加齢イコール老化だとは考えていません.現代の高齢者の病気や健康の衰えは,加齢のプロセスにあらわれる正常な現象ではなく,むしろ異常な現象だというのです.そして,私たちは異常な状態に慣れきってしまい,加齢の正常なプロセスに立ち戻ることを忘れているだけだというのです.年をとったからといって,QOL(qualityoflife)が衰えるわけではないとハリーは言います.さて,彼が運動を強く勧める理由は,単に身体のため,健康のためではありません.自分の身体へのコミュニケーション手段としての運動,つまり,心拍数を通して自分の身体とコミュニケートを試みようとする方法なのです.人間をとりまく環境は著しく進歩してきましたが,人間そのものは特に進化しているわけではありません.人間の身体も,脳も,自然界の法則には合致してい(65)シリーズ─62◆伊藤守株式会社コーチ・トゥエンティワン■2月の推薦図書■若返る人クリス・クロウリーヘンリー・ロッジ著沢田博佐野恵美子訳(エクスナレッジ)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006ますが,現代社会にマッチしているわけではありません.すべて現代のシステムができる前の世界に適応するように発達してきたものです.私たちの身体のパーツのほとんどは,荒野で生き抜くためにつくられています.だから,放っておくと,脳も身体も,現代社会の状況を読み違えてしまいます.危険な自然界で生き抜くようにプログラムされている人間が,コンビニエンスな社会に適応するには,本当はもっともっと時間が必要です.現代人は,今の社会に太古の脳と身体とプログラムで対処しているために,身体は現代社会の環境を読み違えてしまいます.たとえば,ストレス反応がいい例です.ストレス反応とは,もともと荒野で獣に出会ったときの心身の反応であり,獣に出会うことなどなくなった現代では,あまり必要とされる反応ではありません.しかし,私たちは,獣と出会わなくても,仕事の締め切りや人間関係でのプレッシャー,はたまた急に電話が鳴るだけで,ストレス反応を起こしてしまうという矛盾を抱えています.逆に,身体と脳が,いまだに荒野を想定しているときに,身体を動かさず,朝から晩まで机に向かったり,ごろごろしたりしていると,「衰え」のモードにスイッチを入れてしまうことになります.身体を動かす,特に心拍数を上げることは,元気信号を,脳や身体に送ることにほかなりません.一方,身体を動かさずにいると,確実に,衰退と,機能低下の信号が発せられることになるわけです.その理由について,本書では各所でふれています.自分の身体と脳に,生きようとしている意志を伝えることが,加齢に伴う老化を防ぐ唯一の方法であるとハリーは言います.そして,著者はそれを実践し,その効果を体験します.彼は,生きようという意志を自分の身体と脳に伝えるためには,週に6日の運動をしない理由は一切ないと言います.もし,今日運動しないのであれば,それは1日にタバコを2箱吸っているのと同じぐらい悪いと言うのです.このことについては,いかなる言い訳も受け付けられません.とにかく週に6日間の運動.それを仕事だと思って続ける必要があるのです.それだけではなく,止めたら終わりだというのです.今日始めたら,死ぬ日まで続ける.とにかく運動を続けること.それが身体と脳に,元気信号を送り続けることであり,それは1日として休んではならないことなのです.実は私たちは,身体を動かした後,例外なくある種の爽快感を体験していることを身をもって知っています.つまり,運動は身体のためだけではないということです.運動が心の健康に与える影響も大きいのです.それを,ハリーは「元気信号」と呼びます.もちろん,本書では,運動によって生じる活性酸素の問題も取り上げています.しかし,それ以上に,週に6日の運動の必要性が強調されるのです.長生きのためのもう一つの大切な要素は,人間関係です.どんなに食事に気をつけ,運動をしても,孤立してしまえば,老化を止めることはできません.その理由について,いまのところはっきりとしたデータはないのですが,心臓病の権威であるオーニッシュ博士は「慢性的なストレスがあなたの免疫機能を低下させる可能性があるように,利他主義や愛や同情は免疫を強化するかもしれない」と言います.現代では,核家族化が進み,それに反比例するようにペットブームが起こっています.それは,人間が生きるために必要なふれ合いや愛を,動物に求めるようになっているからなのかもしれません.いずれにしても,空気,食べ物,水,運動,そして,人との関わりやふれ合いも,老化と関係します.そして,最後の要素は「生きがい」です.私たちは,お金以外に仕事から得る大きな報酬として,「生きがい」を手にしています.もちろん,仕事の選び方,そして仕事の仕方によって異なってきますが,仕事から得る生きがいを簡単に手放さないことです.それは,単にポストに対するこだわりではありません.いい仕事を続けることに意味があるのです.さて,最近はanti-agingmedicineに注目が集まっています.本書は,自分がどんな生き方をするのか考え直すために,もう一つのanti-aging,つまり自分で取り組むことのできるanti-agingに目を向ける,とてもいい機会になるでしょう.(66)☆☆☆

硝子体手術のワンポイントアドバイス33.Terson症候群の硝子体手術(初級編)

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLSはじめにTerson症候群は,くも膜下出血に続発する硝子体出血である.発生頻度はくも膜下出血症例の3~20%程度とされており,発生時期はくも膜下出血2~3日後で,多くは2週間以内である.硝子体出血は自然吸収することもあるが,出血が遷延する場合や両眼性の症例では硝子体手術の適応となることが多い.●Terson症候群の発症機序Terson症候群の発生機序としては,頭蓋内圧の急上昇によって網膜中心静脈の潅流障害が生じ,その結果,網膜・視神経乳頭およびその周囲の毛細血管や小静脈が破綻して視神経乳頭周囲の内境界膜下に出血が生じ,さらに内境界膜を破って硝子体腔へ出血が流出するとする説が有力である.あるいは,視神経周囲には,くも膜下腔から連続する空隙が存在し,急激な脳圧上昇により,この空隙を伝ってくも膜下腔の出血が急激に内境界膜下に流入するという説もある.いずれにしても過去の報告から初発病変として内境界膜下血腫を伴うことが多いとされている.●Terson症候群の硝子体手術Terson症候群の硝子体出血は一般に単純硝子体切除術で除去できることが多く,硝子体手術の難易度としては比較的低い症例が多い.しかし,多量の出血遷延例では,茶褐色の出血が器質化しており,器具の出し入れの際に医原性鋸状縁断裂をきたしやすいので注意が必要である.高齢者ではすでに後部硝子体?離が生じていることが多いが,若年者では後極から周辺に向かって人工的後部硝子体?離を作製する必要がある.手術時期が早期であれば内境界膜下血腫が高頻度に認められる(図1a,b).内境界膜下血腫は内境界膜に一部強膜切開刃などで切開を加え,その部位からバックフラッシュニードルなどで吸引除去する.内境界膜は多少残存してもあまり問題はないようである.内境界膜下血腫を認めなくとも,術中に眼底を詳細に観察すると,内境界膜?離部位を確認できることが多い.本疾患で黄斑上膜や増殖硝子体網膜症の合併例を経験することがある(図2)が,手術時期が遅く,硝子体腔内に出血が遷延している間に,内境界膜の断裂部からグリア細胞が増殖することが原因と考えられる.(63)硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載○3333Terson症候群の硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1内境界膜下血腫の合併例a:術中.黄色調の内境界膜下血腫を認め,内境界膜を切開して血腫を除去した.b:術後.内境界膜?離部位が円形に観察される.ab図2黄斑上膜の併発例硝子体出血遷延例に黄斑上膜の合併が多い.

眼科医のための先端医療62.アトピー素因と遺伝子多型研究

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS全ゲノム上の体系的患者対照相関研究近年,遺伝子と疾病の関わりの研究は,遺伝子変異(頻度1%未満:rarevariants)により発症が規定される遺伝病の研究から,commondiseasesの発症が遺伝子多型(頻度1%以上:commonvariants)の研究に移行しつつあります.それにあわせて,遺伝子多型の検出方法もマイクロサテライトマーカーを使用した連鎖解析法から,ゲノム上でより高密度に存在する一塩基多型(SNP)のタイピングを用いた患者対照相関研究が主流になり,国際ハップマッププロジェクト1)の進行と商業ベースのタイピング法の進歩による全ゲノム領域にわたる体系的患者対照相関研究が,いよいよ現実味を帯びてきました.日本でも理化学研究所遺伝子多型センターから,いくつかのcommondiseasesに対する体系的患者対照相関研究の結果が発表されています2,3)が,本当に信頼性の高い患者対照相関研究を成し遂げることは非常に困難な作業です.現時点で信頼性十分と考えられる相関研究のガイドラインが,最近HumanMolecularGene-tics誌上にまとめられており,参考になります4).眼科領域のcommondiseasesと遺伝子多型研究2005年4月のScience誌上で3報の加齢黄斑変性症(AMD)に対する遺伝子多型研究が相次いで発表されました5~7).これらはすべて1番染色体上にあるcomple-mentfactor?遺伝子上の402番目のアミノ酸置換を伴う遺伝子多型(rs1061170)とAMD発症との相関を示した研究ですが,このうちの一報は,体系的患者対照相関研究法を用いて結果を出しています5).今後,全ゲノム領域をカバーする体系的患者対照相関研究,それに続くハプロタイプ地図および候補領域ゲノムの再シークエンスを用いた精密な疾患関連遺伝子多型の同定が研究の主流になることを示した好例と思います.アトピー素因と遺伝子多型アトピー素因(高免疫グロブリンE血症)は,多くの疾病の発症に関与していることから1980年代から数多くの遺伝子多型研究の対象となってきました.ごく最近,理化学研究所遺伝子多型センターで施行された日本人アトピー性皮膚炎患者(AD)を対象にした患者対照相関研究の結果から,Th2細胞(ヘルパー2型T細胞)の機能的マーカー分子であるST2をコードする??????遺伝子のプロモーター上の遺伝子多型とAD発症との間(59)◆シリーズ第62回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊松田彰(京都府立医科大学眼科学教室)アトピー素因と遺伝子多型研究図1ヒトマスト細胞におけるST2遠位プロモーター・レポータージーンアッセイ??????遺伝子プロモーター領域にある-26999Aアレルはアトピー性皮膚炎発症の危険因子である(相対危険度1.86)が,??????遺伝子転写誘導能が-26999Gアレルと比べ2倍高いことがレポータージーン解析で示された.(文献8より許可を得て転載).**———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006に強い相関が検出され,その機能的な意義も明らかになりつつあります(図1)8).遺伝子多型と疾病との間の相関が認められるということは,その多型が疾病発症の危険度に影響を与えるマーカーであるということを示しているにすぎず,機能的役割の解明はエクソン上のナンセンス変異などの場合を除き,多大な労力を要することが多いのです.イントロン上にある多型に関してはその意義の解析はさらに困難ですが,遺伝子の発現調節に関与している例も報告されており,より効率的な解析方法の確立が模索されているのが現状です.アトピー関連眼合併症の遺伝子多型解析筆者自身は,アトピー素因に合併する白内障,網膜?離,春季カタル,アトピー性角結膜炎といった病態に焦点をしぼり遺伝子多型解析を進めています.アトピー素因の強弱とこのような眼科的合併症の発症との間には相関がみられないことも多く,アトピー素因の遺伝的研究と同時に個々の疾病に関して着実な検討を積み重ねていくことが重要です.実際に現在施行しているプレリミナリーな検討の結果から考えると,アトピー素因に影響を与えている遺伝子多型と眼合併症の発症に影響する多型が異なる可能性が示唆されています.また,アトピー素因に合併する網膜?離およびアトピー性角結膜炎に春季カタル様の結膜増殖変化を認めることが多いといった日本特有の現状を,人種間の遺伝的多様性・環境因子との相互作用といった観点から検討することも大切です.最後に遺伝子多型研究における3S筆者は遺伝子多型研究において3つのSが大切であると考えています.それは,Sample(患者さん,健常対照ボランティアの定義・診断をいかに正確にするか),Strategy(どのような戦略で遺伝子多型を検出し,その多型の意義を分子生物学,生化学,免疫学,構造生物学などあらゆる分野の手法を用いて解析できるか),Spon-sor(この手の研究はとにかく,お金と時間がかかりますし,成果が出るという保証もありません)の3つです.人と情報のネットワークが大切です.今後,10年のうちに遺伝子多型研究の方法論はさらに進化するものと考えられます.イギリスおよび日本では数十万人のゲノムを収集し,体系的に疾患と遺伝子多型の相関を解析するプロジェクトが進行しており,commondiseasesの予防,病態解明の強力な手段となりそうです.文献1)InternationalHapMapConsortium:Ahaplotypemapofthehumangenome.??????437:1299-1321,20052)OzakiK,OhnishiY,IidaAetal:FunctionalSNPsinthelymphotoxin-alphagenethatareassociatedwithsuscepti-bilitytomyocardialinfarction.?????????32:650-654,20023)SuzukiA,YamadaR,ChangXetal:Functionalhaplo-typesofPADI4,encodingcitrullinatingenzymepeptidyl-argininedeiminase4,areassociatedwithrheumatoidarthritis.?????????34:395-402,20034)FreimerNB,SabattiC:GuidelinesforassociationstudiesinHumanMolecularGenetics.?????????????14:2481-2483,20055)KleinR,ZeissC,ChewEYetal:ComplementfactorHpolymorphisminage-relatedmaculardegeneration.????????308:385-389,20056)HainesJL,HauserMA,SchmidtSetal:Complementfac-torHvariantincreasestheriskofage-relatedmaculardegeneration.???????308:419-421,20057)EdwardsAO,RitteR3rd,AbelKJetal:ComplementfactorHpolymorphismandage-relatedmaculardegener-ation.???????308:421-424,20058)ShimizuM,MatsudaA,YanagisawaKetal:FunctionalSNPsinthedistalpromoterofST2geneareassociatedwithatopicdermatitis.?????????????14:2919-2927,2005(60)***———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???■「アトピー素因と遺伝子多型研究」を読んで■今回は松田彰先生による“commondiseasesの遺伝子診断研究”の展望をわかりやすく解説していただきました.ヒトゲノムプロジェクトの成果により塩基配列がすべて明らかになり,ヒト遺伝子総数は約3万個(いろいろな推計がありますが)といわれています.種々の遺伝子変異に伴う疾患の原因遺伝子の同定法は戦略的に行うことができるようになりました.基本的には変異をもつ家系がきちんと解析できれば原因遺伝子を突き止めることができます.しかしこのような戦略ではcommondiseasesの遺伝子変異をみつけることは多くの場合できません.糖尿病や高血圧がその代表であり,一部の遺伝子変異に基づく疾患を除くと多くの患者さんではそのような変異を見出すことができません.このような疾患の遺伝子診断にSNPs(松田先生の本文を参照)を用いることが現在,大きな期待とともに全世界で研究が急速に進展しております.これを可能にしたのが,遺伝子配列の同定の高速化,DNAチップなどのアレイ技術およびその情報を処理するバイオインフォーマティクスの進歩など,多くの技術革新が急速にみられることです.臨床検査として少量の血液を検査機関に送ることで,臨床家は煩雑な分子生物学的な研究手技から開放されて結果のみを受け取ることができるようになってきています.現段階でわれわれ臨床医に求められることは,遺伝子多型が疾患の病態にどのように関連しているのか,病態生理上意義があるのかというようなさらに高度な判断です.松田先生も述べておられますが,遺伝子多型がみつかった段階で分子生物学的に病態上の意義を検証すること,そして,環境因子など他の因子との関連を検証し,遺伝子多型が疾患診療上どれくらいの寄与があるのかを見きわめることです.さらに,遺伝子多型は人種差がかなり大きいようですので,日本人の診療をするわれわれは日本人で検証する必要があります.これは疾患の実態をよく知っている臨床医がやらなければならないことです.このように松田先生が示しておられるように,遺伝子医学研究において臨床医の行うべき仕事はかなり大きいことになります.これにより遺伝子研究の結果を盲目的に信じ込んでとんでもない診療を行うことを防ぎ,社会的に真に有益な医療を提供することができると考えます.山形大学医学部視覚病態学山下英俊(61)☆☆☆

新しい治療と検査シリーズ158.Wavefront LASIK

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS?バックグラウンドLASIK(laser???????keratomileusis)は精度や安全性が高く,現在屈折矯正術の主流であるが,ときに夜間の見え方などの視力の質が低下するといった問題がある.このように視力の質に影響を与えるのは高次収差(high-erorderaberration)と考えられている.近年,高次収差を術前に測定し,術後にその増加をなるべく起こらないように,あるいはもとから存在する高次収差を少しでも減らすようにレーザーを照射する方法,wavefrontLASIKが開発された1~3).?新しい治療法の原理中心窩に投影した光線が眼底で反射して射出光となる場合,収差が存在しなければ射出光の位相は揃って理想の波面(平面)と一致する.一方,不正乱視などのため収差が存在すると,射出光の位相がずれて不揃いな波面となる(図1).一般に屈折異常と称される球面成分(近視,遠視)と円柱成分(乱視)は低次収差,それ以外の不正成分を高次収差という.収差を測定解析する波面センサーのなかで代表的なものはHartmann-Shack方式波面センサー(図2a)で,射出光を等間隔に並んだ多数のmicrolensarrayを通過させ,位相のずれをarrayを結ぶ格子の歪みとしてとらえる.この像をコンピュータ解析し,マップ画像表示することができる(図2b).このデータをエキシマレーザー各社固有のプランニングソフトに移し,レーザーの照射データを作成する.?使用方法(適応と実際)基本的にはすべてのLASIK症例に適応となる.ただし,高次収差を除去する分,通常のLASIKよりも角膜切除量がやや多くなるため,角膜の厚さが薄い症例ではできないこともある.また,もともとの高次収差がそれほど大きくない眼では,術後の高次収差量や視機能が従来のLASIKと比較して差がないことから,当院では,術前高次収差がある程度高い例に積極的にwavefront新しい治療と検査シリーズ(57)158.WavefrontLASIKプレゼンテーション:戸田郁子南青山アイクリニックコメント:大鹿哲郎筑波大学臨床医学系眼科図2b収差の解析マップ収差のない眼収差のある眼眼外に出ると平面波になる波面形状が不整図1波面と収差収差があると射出光は位相のずれた不正波になる.網膜水晶体角膜ビームスプリッター1mmレーザービーム波面収差のイメージMicrolensArray図2a収差計(波面センサー)の原理———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006LASIKを推奨している.手術方法は従来のLASIKと変わりないが,wavefrontLASIKでは,プランニングソフトのシミュレーションマップと同じ位置に同じ形で照射をすることが必要であるため,従来のLASIKよりもさらにレーザーと患者のアラインメントが重要である.個々の眼の収差に合わせたオリジナル照射パターンであるので,予定照射位置からずれてしまえば逆に新たな収差を作り出すリスクがある.検査時の座位からレーザー照射時の仰臥位になると,頭の回転や眼球の回旋,さらに術中の眼球運動などによって,シミュレーションの位置からずれる可能性があるので,torsionerrordetec-tionsystemやeyetrackingの装備は必要不可欠である.さらに収差測定時とレーザー照射時では瞳孔中心のずれが起こることがあり,この補正ができるシステムも必要である.また,収差計および瞳孔径によって測定値が異なるため,術前後の比較評価などでは同一の器械でかつ同瞳孔径で測定することが重要である.?本法の利点WavefrontLASIKが開発された当初は視力3.0や4.0の「スーパービジョン」が期待されたが,現在は,そこまでのポテンシャルはないと考えられている.ただし,従来の方法と比較すると,術後の高次収差の増加がwavefrontLASIKでは抑制できる(図3).特に術前の高次収差が0.4?m以上になると,術前よりも高次収差が少なくなる例もあるため,術前高次収差0.4?m以上の眼にはwavefrontLASIKは特にメリットがあると考えている.また,従来のLASIK後にみられる術後数カ月間のコントラスト感度の低下もwavefrontLASIKではほとんどないことがわかっており,術後の視機能の改善に有効であると考えられる.文献1)KohnenT,BuhrenJ,KuhneCetal:Wavefront-guidedLASIKwiththeZyoptix3.1systemforthecorrectionofmyopiaandcompoundmyopicastigmatismwith1-yearfollow-up:clinicaloutcomeandchangeinhigherorderaberrations.?????????????111:2175-2185,20042)VenterJ:Wavefront-guidedLASIKwiththeNIDEKNAVEXplatformforthecorrectionofmyopiaandmyopicastigmatismwith6-monthfollow-up.??????????????21(5Suppl):S640-S645,20053)JabburNS,Kra?C:Wavefront-guidedlaserinsituker-atomileusisusingtheWaveScansystemforcorrectionoflowtomoderatemyopiawithastigmatism:6-monthresultsin277eyes.???????????????????????31:1493-1501,2005(58)術前術後**p<0.05:WavefrontLASIK:従来のLASIK0.00.20.40.60.81.0収差(μm)図3LASIK術前後の高次収差WavefrontLASIKでは収差の増加が抑制される.?本方法に対するコメント?従来の屈折矯正手術は,球面値や円柱値といった「低次収差」の矯正のみに焦点を当てていたが,波面解析の導入により,「高次収差」にも関心が向けられるようになった.「高次収差への関心」には二つの側面があり,分けて考える必要がある.一つは,手術によって高次収差が増えてしまうこと,その増加が矯正量に相関することが明らかとなったことにより,強度の屈折矯正は避けるべきと考えられるようになったことである.また収差と視機能の関係という問題にも目が向けられるようになった.二つめは,手術によって高次収差も矯正しよう,あるいは増加を抑えようという術式,wavefrontLASIKの登場である.理論的に大変優れた方法論であることは間違いない.しかしこれは,当初期待されたほどの効果をあげているとは言い難い.不正乱視眼の治療は別にして,通常症例における臨床的な視機能には従来法と大きな違いはみられず,高次収差の矯正より,まず低次収差の矯正が重要という事実が再確認されたということであろう.このあたりは,白内障手術における屈折誤差と高次収差の関係に似ている.とはいえ,wavefrontLASIKに伴って開発・導入された回旋・眼球運動追尾システムの効果は絶大であり,この点で屈折矯正手術が大いに進歩したことは間違いない.

眼感染症:塗抹鏡検

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS●塗抹・鏡検の意義感染症診療での塗抹鏡検の意義は,初期治療の方針決定,および治療方針の変更に際しての判断材料にある.1.初期治療方針の決定眼感染症での初期治療は,その症例の視力予後に少なからず影響する.特異的な病歴と典型的な臨床所見があれば,治療方針の決定に迷わないが,実際は判断に迷う症例が少なくない.細菌の分離培養には24~48時間必要であり,菌の同定まで数日かかることが多い.真菌やアメーバはさらに時間を要することがある.嫌気性菌や淋菌では,培養そのものが容易ではない.つまり,多くの症例で分離培養の結果を待たずして初期治療方針を決定しなければならない.その判断材料として,最も迅速に得られ,かつ有用なものが塗抹鏡検像といえる.もし塗抹鏡検で得られた情報と,後に分離培養で得られた情報に食い違いがある場合,検体の性状や症例の治療経過にもよるが,原則として前者を重視して治療方針を検討すべきである.塗抹鏡検で有用な情報が得られないときは,病歴と臨床像で方針を決め,後に分離培養の結果を考慮して治療方針の再検討をすることになる.2.治療方針の変更治療経過が長期にわたる場合,途中で治療方針の変更を検討せざるを得ないことがあるが,その際も塗抹鏡検の情報は有用である.もし標的微生物が誤っていた場合,経過途中で塗抹鏡検すれば,それを捉えられる可能性がある.菌交代現象を臨床像から判断することは困難だが,鏡検では判断できることがある.●塗抹鏡検のコツと落とし穴1.塗抹方法スライドグラスに検体を塗布し,しばらく風乾する.厚みのある検体は,脱水・脱色不良となり染色性のばらつきの原因になるので,滅菌済みのスパーテルかメスで薄く引き延ばす.風乾後エタノールで脱水固定し,各種染色方法に従う.2.染色方法通常は,ディフ・クイック?染色とグラム染色(ファイバーG?セット)を施行するのがよい.ディフ・クイック?染色はわずか20秒弱でギムザ染色相当の像が得ら(55)眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載○33監修=大橋裕一井上幸次33.塗抹鏡検江口洋徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部視覚病態学分野感染症診療での検体の塗抹鏡検は最も古典的な検査だが,新たな診断技術が台頭してもその迅速性ではいまだに群を抜いており,特異度も高い.日常診療ではとかく敬遠され,検体をすぐに分離培養しがちだが,培養では起炎微生物が検出されるとは限らない.感染症では塗抹鏡検像に基づいた必要最小限の薬剤使用が理想である.図1好酸球のディフ・クイック?染色像エオジン染色同様,好酸性顆粒が赤色に染色される.図2フルオロキノロン耐性????????????????結膜炎患者の眼脂染色グラム染色で,多核白血球への菌体の取り込み像がある.図3コンタクトレンズケース内保存液のファンギフローラY?染色像??????????がアップルグリーンに染色されている.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006れる.好酸球顆粒が染色され(図1),感染症とアレルギーの鑑別が可能なので,感染症であることが明らかな場合を除いて,グラム染色と併用するとよい.おおむね,この2種の染色法で症例の鑑別は可能だが,ウイルス感染を疑う場合は単染色も有用である.その場合も,必ずグラム染色を併用する.蛍光顕微鏡があり,真菌感染を疑う場合は,ファンギフローラY?染色を,ウイルス感染やクラミジア感染を疑う場合は,各種蛍光抗体法による染色をする.3.判定方法100倍か200倍でオリエンテーションをつけた後,400倍と油侵1,000倍で精査する.グラム染色の良し悪しは,人体由来組織がグラム陰性に染まることから判断できる.細菌や真菌感染の場合,多核白血球を見つけた後,その近傍を油侵1,000倍で観察すると菌を検出しやすい.多核白血球への菌体の取り込み像(図2)があれば,臨床的にはそれが起炎菌だと考えてよい.眼科領域で検出される細菌や真菌でおもなものは,光学顕微鏡レベルでの形態とグラム染色性(表1)について,つねに頭に入れておく必要がある.ウイルス感染の場合,リンパ球優位の像が得られる.蛍光抗体法での染色では,陰性が赤色に,陽性が鮮やかなアップルグリーンに染色される(図3).●コロニーの塗抹鏡検も忘れずに分離培養でコロニー形成を確認した場合,培地を検査機関へ提出する前に,コロニーを染色し鏡検すべきである.その理由は,分離培養で得られた情報が,塗抹鏡検のつぎに迅速で,かつ信頼できる治療方針決定のためのエビデンスとなる可能性がある.さらには,自らの鏡検像の判定能力が向上するからである.検体中の残?物と微生物を見間違わないために,常日頃から自ら検体を塗抹鏡検し,判定能力の向上に努める必要があるが,最も効率よく微生物を観察できるのは,分離培養で得られたコロニー染色である.均一な形態の微生物を間違いなく観察できるので,微生物の検出能力を向上させる格好の学習材料といえる.コロニー染色の際,培地に形成されたコロニーの色調や大きさや臭い,血液寒天培地であれば溶血の有無などを一緒に観察し,後に得られる結果と照らし合わせてみるとよい.おもに細菌培養でいえることであるが,培養条件が一定であれば,属によって形成されるコロニーの形態が均一なので,慣れるとコロニーを見ただけでおおざっぱな属の推定が可能になる.文献1)小栗豊子:感染症の迅速検査としての塗抹検査.臨床微生物検査ハンドブック,p8-18,三輪書店,20052)MahonCR,ManuselisG:Useofcolonialmorphologyforthepresumptiveidenti?cationofmicroorganisms.Text-bookofDiagnosticMicrobiology,p312-325,WBSaunders,Philadelphia,2000■コメント■塗抹鏡検は感染症の診断に古くから広く用いられている検査法であるが,筆者も述べているように迅速性・特異性にすぐれた方法で,今も臨床上の価値は低下しておらず,蛍光抗体法などの導入でさらにその有用性が高まっている.ただ,まったくの初心者だと何をみているかわからないので,特異性も何もないということになってしまうことから,やはり日頃から自分で塗抹鏡検を行って目を養っておく必要がある.その点で筆者の推奨しているコロニー鏡検は非常によい訓練になると思われる.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次(56)表1おもな細菌・真菌の光学顕微鏡レベルでの形態とグラム染色性細菌・真菌の種類形態と特徴グラム染色性ブドウ球菌ほぼ球形,直径0.5~1.5?m,ブドウの房状陽性肺炎レンサ球菌球形または卵円形,直径0.8~1.0?m,双球菌陽性コリネバクテリウム属菌0.3~0.8×1~8?mの桿菌,時にこん棒状陽性緑膿菌0.5~0.8×1.5~5.0?mの桿菌,両端が鈍な円形陰性淋菌腎形またはそら豆形,直径0.6~1.0?m,双球菌陰性モラクセラ菌約1.0×2.0?mの桿状または直径0.6~1.0?mの球状陰性インフルエンザ菌0.3~0.5×0.5の小桿菌,多形態性陰性カンジダ酵母型では3~5?mの円形ないし卵円形陽性アスペルギルス二分岐性真性菌糸陽性

緑内障:緑内障における前房容積(ペンタカムRによる解析)

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLSペンタカム?(オクルス社)はScheimp?ugカメラの原理を利用した多機能型3D前眼部解析測定装置である(図1).ペンタカム?はギリシャ語で5(ペンタ)から由来するが,実際本装置は5つの機能を有する.すなわち,Scheimp?ug画像,前房の3D解析,水晶体(白内障)のデンシトメトリー,パキメトリー,角膜形状解析である.(53)●連載○68緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄68.緑内障における前房容積(ペンタカム?による解析)結城賢弥大竹雄一郎慶應義塾大学医学部眼科ペンタカム?(オクルス社)はScheimp?ugカメラの原理を利用した多機能型3D前眼部解析装置である.ペンタカム?は約2秒間という短時間に前房容積,前房深度,隅角角度などの前房の状態を定量的に測定することができ,閉塞隅角緑内障のスクリーニングなど,さまざまな病態の把握に有用であると期待される.図1ペンタカム?の外観右が撮影部であり,左が操作用のラップトップパソコンである.他の前眼部解析装置に比較すると設置に必要なスペースは少ない.暗室座位にて測定し,測定時間は約2秒間である.固視追跡カメラを有しており固視がある程度不良でも撮影は可能である.図23Dスキャンの撮影図解Scheimp?ugカメラが眼球周囲を回転し0?から180?の範囲でSchei-mp?ug画像を撮影する.それにより中心部に測定ポイントが集中する.最大25,000点を測定することができる.図3白内障のScheimp?ug画像とデンシトメトリーScheimp?ug画像を解析することにより角膜や前房の状態を定量的に測定する.右は角膜,水晶体のデンシトメトリーである.デンシトメトリーにより白内障の進行を数値としてとらえることができる.図4各測定点における前房深度前房深度,角膜曲率半径などを各測定点ごとに表示することも可能である.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006ペンタカム?は患者の瞳孔サイズと固視状態を監視する中心カメラと,回転しながら角膜や前眼部の撮影をするScheimp?ugカメラを内蔵しており,0~180?の角度で回転しながら前眼部を撮影する(図2,3).約2秒間で最大25,000ポイントを測定し,前房容積,任意の点における前房深度,角膜厚,角膜前面ならびに後面の曲率半径,屈折力などを計測する(図4).アジアにおいては,原発閉塞隅角緑内障(primaryangle-closureglaucoma:PACG)が他地域に比較して頻度が多く重要な失明原因となっている1).わが国においても,PACGの頻度は開放隅角緑内障(open-angleglaucoma:OAG)には及ばないものの,いったん発症すれば重篤な視機能障害を生じる急性疾患であるため,そのスクリーニングと予防が重要であると認識されている2).これまでのPACGのスクリーニングとしては超音波AモードやScheimp?ug画像による前房深度の測定などが試みられ3,4),最近ではSPAC(scanningperiph-eralanteriorchamberdepthanalyzer)による周辺隅角深度測定なども期待されている5).筆者らはペンタカム?を用いてOAG17例33眼とPACG4例7眼の前房容積,前房深度を比較した.OAG眼の平均前房容積は141.55±43.97mm3,前房深度は2.69±0.46mm,PACG眼の平均前房容積は66.40±7.12mm3,前房深度は1.75±0.19mmであり,PACG眼で有意に前房容積,前房深度が少なかった.また,筆者らはOAG眼において散瞳により前房深度だけでなく前房容積も約10%程度増加することを報告した(第59回日本臨床眼科学会).ペンタカム?は約2秒間という短時間に前房容積,前房深度,隅角角度などの前房の状態を定量的に測定することができ,PACGのスクリーニングだけでなく,さまざまな病態の把握に有用であると期待される.文献1)AllinghamRR,DamjiK,FreedmanSetal:Puppillary-blockglaucomas.Shields?TextbookofGlaucoma,5thed,p217-234,Lippincott・Williams&Wilkins,Philadelphia,20052)ThomasR,ParikfR,MuliyilJetal:Five-yearriskofprogressionofprimaryangleclosuretoprimaryangleclo-sureglaugoma:apopulation-basedstudy.??????????????????????81:480-485,20033)NolanWP,BaasanhuJ,UranchimegDetal:ScreeningforprimaryangleclosureinMongolia:arandomisedcon-trolledtrialtodeterminewhetherscreeningandprophy-lactictreatmentwillreducetheincidenceofprimaryangleclosureglaucomainaneastAsianpopulation.???????????????87:271-274,20034)AungT,NolanWP,MachinDetal:Anteriorchamberdepthandtheriskofprimaryangleclosurein2EastAsianpopulations.???????????????123:527-532,20055)KashiwagiK,AbeK,TsukaharaS:Quantitativeevalua-tionofchangesinanteriorsegmentbiometrybyperipher-allaseriridotomyusingnewlydevelopedscanningperiph-eralanteriorchamberdepthanalyzer.???????????????88:1036-1041,2004(54)☆☆☆表1OAG眼とPACG眼の前房容積,前房深度OAG眼PACG眼前房容積(mm3)141.55±43.9766.40±7.12p<0.0002前房深度(mm)2.69±0.461.75±0.19p<0.0003

屈折矯正手術:Epi-LASIKの現状

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLSエキシマレーザーを使用した屈折矯正手術は,PRK(photorefractivekeratectomy),LASEK(laseras-sistedsubepitherialkeratectomy),LASIK(laser???????keratomileusis)など,その手技手法に工夫がなされ,技術の進歩とともにその安全性と安定性を確立してきた.現在,手術手技の主流はLASIKであるが,フラップ作製に伴う合併症はいまだ皆無ではなく,また角膜厚と屈折量の関係より,角膜が薄い症例や強度の近視では適応から外れることがある.今まではこれらの症例に対しtPRK(transepitherialphotorefractivekeratectomy)やLASEKを行ってきたが,LASIKに比較すると,術後早期の裸眼視力や術後の疼痛などの面で劣るところがあった.これらの症例に対し筆者らは昨年より新たに登場したEpi-LASIKを行っている1,2).Epi-LASIKは,epikeratomeを用いて角膜上皮フラップを作製し,Bow-man膜より直接レーザー照射を行い,再度フラップを戻す手術方法である.この上皮フラップには角膜上皮基(51)●連載○69屈折矯正手術セミナー監修=木下茂大橋裕一坪田一男69.Epi-LASIKの現状中井義典稗田牧バプテスト眼科クリニックEpikeratomeを用いた新しい屈折矯正手術Epi-LASIKを施行した術後早期の印象と,現在使用可能な各社のepikeratomeの使用経験について述べる.現状のEpi-LASIKは,当初期待されたように,LASIKに取って代わる手技には至っていない.術後早期の裸眼視力や術後の疼痛などにおいてはこれまで行われてきたtPRKやLASEKと類似した経過をみており,今後新しい手術手技の開発と術後長期の観察が望まれる.表1各種epikeratomeの特徴Norwood/EyecareGebauer/VisiJetMoriaAMO名称CenturionSESEpiLiftEpi-KAmadeusⅡセパレーターPMMAステンレスステンレスプラスチックOscillationrate(rpm)9,000~12,0005,000~20,00015,00011,000以上速度(mm/sec)0.5~3.00.4~3.00.5~3.51.5以下リングサイズ(mm)9.0,10.08.5,9.0,9.5,10.08.5,9.5,10.08.5,9.0,9.5,10.0ヒンジ位置鼻側鼻側鼻側鼻側PMMA:ポリメチルメタクリレート.図1CenturionSES(Norwood/Eyecare)図2EpiLift(Gebauer/VisiJet)図4AmadeusⅡ(AMO)図3Epi-K(Moria)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006底膜が残されており,これが上皮フラップの生着を促し,炎症や疼痛を抑制するとされている.tPRKと比べると,正確に上皮のみを除いた状態で屈折矯正のためのレーザー照射を開始するため,より術後の球面収差の増加を減らすことができると考えられる.また上皮フラップはepikeratomeによって機械的に作製されるため,LASEKで懸念されるようなアルコールによる角膜障害も考えられない.Epi-LASIKに使用できるepikeratomeは現在3種類が発売されており,各社の特徴は表1のようになっている.Centurion(Norwood/Eyecare)(図1)は,最も早くアメリカでFDA(食品医薬品局)の認可を得た機種で,フラップ作製時に強い吸引圧がかからないため,フラップの伸びが少ないようである.切除速度が速く,通常のLASIKで使用するマイクロケラトームと比べて時間的に違和感が少ない.またヘッドが小さく扱いやすい印象がある.EpiLift(Gebauer/VisiJet)(図2)は当院ではじめに使用した機種である.他機種に比べてややフラップが薄い印象がある.そのためかフラップの伸びがやや大きく,レーザー照射後フラップを戻す際に,これの処置に工夫がいるようである.Epi-K(Moria)(図3)の特徴は,切除速度を3段階に変化させるところにある.低スピードで切除をはじめ,途中から速度を上げていく.時間はかかるが見ていて安心感がある.この機種のみヘッドがディスポーザブルになっている.AmadeusⅡ(AMO)(図4)はまだ臨床での使用経験はない.現状でのEpi-LASIKは,上皮フラップの生着を一部では認めるものの(図5),術後早期の裸眼視力や術後の疼痛についてはLASIKのようにはいかず,上皮の修復までに要する日数や術後上皮下混濁(haze)の出現についても,これまで行ってきたtPRKに類似した経過をみており,術後の点眼も長期間必要である.今後上皮フラップの生着について取り扱いにさらに工夫が必要であろう.文献1)PallikarisIG,NaoumidiII,KalyvianakiMIetal:Epi-LASIK:comparativehistologicalevaluationofmechanicalandalcohol-assistedepithelialseparation.???????????????????????29:1496-1501,20032)PallikarisIG,KalyvianakiMI,KatsanevakiVJetal:Epi-LASIK:preliminaryclinicalresultsofanalternativesur-faceablationprocedure.???????????????????????31:879-885,2005(52)図5Epi-LASIK術後3日の角膜所見☆☆☆

眼内レンズ:完全嚢内固定2枚アクリル眼内レンズ間血管新生

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS症例は68歳,女性.右眼の白内障手術目的にて当院を紹介された.眼軸長15.81mmの小眼球で,正視化眼内レンズ(IOL)度数はSTK/T式で50.0D.5.5mm光学径アクリルIOL(アクリソフ?MA30BA,日本アルコン)の20.0Dと30.0Dを?内固定した.術後,紹介医にてフォロー中,約3年弱(33カ月)で血管新生を伴うIOL光学部間の後発白内障を認めた(図1,2).再び当院紹介となったが,新生血管は瞳孔領中心に及んでおらず,何ら自覚的訴えがなかったので,とりあえず経過観察とした.その約3カ月後に新生血管は破綻性出血をきたし,前置IOLの後面は均一な凝固血で覆われたため(図3),止むなく前置IOLを摘出した.本症例では,初回白内障手術時に浅前房を伴う全周虹彩後癒着を認めたため,術中に12時部の全幅虹彩切開と再縫合を行っている.IOL摘出の再手術時に術野を確保するため,同じ場所を再切開したが,このとき,虹彩(49)德田芳浩井上眼科病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎234.完全?内固定2枚アクリル眼内レンズ間血管新生短眼軸長眼で,2枚のアクリル眼内レンズを完全?内固定したところ,オプティクス間に血管新生をきたした症例を経験した.図1IOL間新生血管スリットの直接法で,IOL間の膜様増殖物と10時から3時に向かう太い新生血管が観察できる.図2IOL新生血管徹照法による観察.血管を複数本認めるが,瞳孔領中央部には及んでいない.図3破綻性出血前置IOLの後面に赤黒い無構造物があり,それより後方は透見不能.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006(00)裏面と前?切開縁の強い癒着を認め,さらにその癒着?離によって,前?切開縁裏面のドーナツ状線維性増殖膜と虹彩裏面とに連続性があることが判明した(図4).従来,前?切開縁後面のドーナツ状線維性増殖は通常の白内障例でもよくみられる現象であり,アクリルIOL間の上皮増殖もすでに複数の報告がある1,2).しかし,IOL間への新生血管増殖にまで至った症例の報告はいまのところみあたらない.本症例では短眼軸長眼で前?虹彩間距離が狭いという状況に加えて,2枚のIOLを完全?内固定したため,前?と虹彩裏面が術後も接触したままとなっていた.前?切開径は術後の瞳孔径よりも大きいので,術後に発生する前?裏面の水晶体上皮線維性増殖膜と近接した虹彩裏面との間に,組織学的な連続性が発生したものと推定した.新生血管はこの線維性増殖膜を足がかりとして前?裏面から?内に侵入し,さらにそこに連続性をもったIOL光学部間上皮増殖組織(IOL間後発白内障)に伸展したものと考えられる.アクリルIOLの2枚目を挿入する場合,光学部間後発白内障を防ぐために,あえて?外に固定するという選択もあるが,本症例のように前眼部構造がきわめて狭い症例で?外に固定すると,虹彩への接触による炎症惹起や虹彩の前方移動による隅角の狭細化(いずれ前癒着による閉塞)などが懸念される.1枚で40~60Dを超えるIOLも理論的には作製可能であるが,ほとんど需要がなく度数が増すほど収差も強くなるとの理由でメーカーは対応していない.しかし,本症例のように特注のハイパワーIOLが必要な症例ほど,眼軸長が短く前眼部構造も小さいことを考えれば,収差と採算性を犠牲にしても,そういうIOLがあることが望ましいと考える.文献1)GaytonJL,AppleDJ,PengQetal:Interlenticularopaci?-cation:clinicopathologicalcorrelationofacomplicationofposteriorchamberpiggybackintraocularlenses.???????????????????????26:330-336,20002)SpencerTS,MamalisN,LaneSS:Interlenticularopaci?-cationofpiggybackacrylicintraocularlenses.???????????????????????28:1287-1290,2002図4増殖性組織の広がり前?と虹彩裏面が接触.かつ,前?縁は瞳孔縁より外側.a:虹彩後面組織,b:前?切開縁裏面増殖組織,c:?赤道部からIOL光学部間への増殖組織の3者が連絡することで新生血管の伸展が起こり得たと推定される.aaccbb

コンタクトレンズ:コンタクトレンズによる視力補正(3)-定期検査時における視力補正-

2006年2月28日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS定期検査で視力測定を行った際に前回の結果と異なることがある.患者が見え方の悪さを訴える場合にはコンタクトレンズ(CL)の度数を変更しなければならないが,その原因を明らかにすることが大切である.●CL処方時の屈折検査CL処方時には調節が入らない正確な自覚的屈折値が求められるが,現実にはむずかしい.その結果,不適切な度数のCLを処方することがある.特に,近視眼の場合,患者が使用していた眼鏡やCLが過矯正であることが多い.図1に示す症例は,他覚的屈折検査(オートレフラクトメータによる検査)では両眼とも-5.25~-5.50Dの近視と-0.50Dの乱視であったが,雲霧法による自覚的屈折検査では両眼とも-4.50Dの近視であった.患者が使用している眼鏡は1カ月前に眼鏡店で購入したもので,眼鏡による視力は両眼とも1.5であったが,1.00Dの過矯正であった.患者には眼鏡の度が合っていないことを十分に説明したうえで,やや低矯正ぎみにソフトコンタクトレンズ(SCL)を処方したが,2週間後の定期検査ではSCLはまだ両眼とも0.50Dの過矯正であったため再処方した.●CLの汚れ,乾燥に伴う視力変化CLの表面が汚れていたり乾燥したりすると,レンズの光学性が低下して十分な矯正効果が得られないことがある.表1に示す症例は,初診時に2週間頻回交換SCLを処方したが,6カ月の定期検査に来院したときに両眼の視力低下を訴えた.実際に検査すると両眼とも0.6~0.7で,-0.25~-0.50Dの追加矯正で1.2の視力が得られたが,レンズを洗浄して再度視力検査をすると,1.2の視力が得られた.患者にはレンズケアの指導と人工涙液の頻回点眼の指導を行った.平成12年2~4月の3カ月間に当院を受診したディスポーザブルSCL,および2週間頻回交換SCLの装用者3,921名に対して,前回の受診時と3カ月後の定期検査でどう視力とレンズ度数が変化したのかを調べたところ,視力が低下したものが34.5%,視力がアップしたものが20.1%,視力が変化しなかったものが45.4%であった.レンズの洗浄や新しいレンズによる再検査をし(47)植田喜一ウエダ眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS260.コンタクトレンズによる視力補正(3)─定期検査時における視力補正─表1レンズの汚れが原因で視力低下を生じたと思われる症例初診:頻回交換型SCL処方VD=0.3(1.2×SCL)8.7mm/-0.50D/14.0mmVS=0.4(1.2×SCL)8.7mm/-0.50D/14.0mm6カ月後:両眼の視力低下VD=(0.6×SCL)(1.2×SCL-0.50D)VS=(0.7×SCL)(1.2×SCL-0.25D)?SCL洗浄後VD=(1.2×SCL)VS=(1.2×SCL)?レンズケアの指導?人工涙液の点眼を指導図1使用している眼鏡による矯正が不適切であったためSCLの度数を変更した症例———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.2,2006(00)て実際に度数の変更をしたものは,8.4%ときわめて少ないことがわかった.●角膜形状変化に伴う視力変化CLの装用によって角膜形状が変化することがある.したがって,オートレフラクトメータで屈折値をみるだけでなく,オートケラトメータで角膜乱視の変化をみることも大切である.角膜形状の変化はビデオケラトスコープで観察すると詳細な情報を得ることができる.特に,ハードコンタクトレンズ(HCL)の装用者は角膜形状が大きく変化することがあるので,十分な観察が必要である(図2).角膜形状の変化に伴って涙液レンズが変化した結果,HCLによる視力が変動することがある(図3).●CLの形状変化に伴う視力変化CLを長時間装用するとレンズの形状が変化することがある.表2はHCLを処方して1年後に眼精疲労を訴えて来院した近視の患者である.右眼のHCLは1.50Dの過矯正であった.処方時のベースカーブは角膜形状に対してパラレルなもの(7.85mm)を選択したが,計測すると8.15mmと0.30mm(6段階)扁平化していた.角膜形状はほとんど変化していなかったため,このHCLを装用すると涙液レンズは-0.25×6=-1.50Dとして働き,結果的に+1.50Dの過矯正になっていたわけである.CLの形状変化にも注意を要する.安易な検査で単純に屈折異常が変化したと判断して,不適切な度数のレンズを再処方しないようにしなければならない.患者の見え方が変化した原因を明らかにして,適切な対応を図ることが求められる.調節の問題で見え方が悪いようであれば,日にちを変えて,改めて屈折検査を行うか,調節麻痺剤の点眼による屈折検査を行って,適切なレンズ度数を選択する必要がある.表2長期装用に伴うHCLの形状変化により,過矯正の状態になった症例初診:HCLの装用を希望VD=(1.0×HCL)7.85mm/-6.25D/8.8mmVS=(1.0×HCL)7.85mm/-5.50D/8.8mm1年後:眼精疲労VD=(1.2×HCL)(1.2×HCL+1.50D)8.15mm/-6.25D/8.8mmVS=(1.0×HCL)7.85mm/-5.50D/8.8mmHCLのBCが7.85mmから8.15mmに扁平化したことにより,涙液レンズが-1.50Dに変化し,その結果1.50Dの過矯正となった.図2HCLの装用に伴う角膜形状変化を生じた症例a:装用前,b:装用24日後.ab図3角膜形状変化に伴う涙液レンズの変化HCLと角膜がパラレルな関係であるときは涙液レンズは0Dとして働くが,角膜曲率半径が0.10mm(2段階)扁平化すると,涙液レンズは+0.50D(2段階)として働く.