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当科における10 年間の感染性角膜潰瘍の起炎菌と薬剤感受性

2023年2月28日 火曜日

当科における10年間の感染性角膜潰瘍の起炎菌と薬剤感受性柴田学張佑子曽田里奈塚本倫子中路進之介南泰明鈴木智地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院眼科CAlterationofCausativeBacteriaandDrugSusceptibilityinCasesofInfectiousCornealUlcerGakuShibata,YukoCho,RinaSoda,MichikoTsukamoto,ShinnosukeNakaji,YasuakiMinamiandTomoSuzukiCDepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospitalC目的:感染性角膜潰瘍(ICU)の起炎菌と薬剤感受性についての検討.対象および方法:2010年C4月.10年間にICUと診断したC97例C101眼を対象に,患者背景,起炎菌とその薬剤感受性,臨床的特徴を診療録によりレトロスペクティブに検討した.結果:50歳未満(46例)は,コンタクトレンズ装用者がC91.3%を占め,起炎菌はメチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)が最多であった.50歳以上(51例)では,起炎菌は角膜上下方の感染ではCMSSE(27.6%),中央部ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が最多であった(17.4%).耐性菌は検出菌のC4割以上を占め,緑内障点眼使用者でその割合が有意に高かった(p<0.05).緑内障とマイボーム腺機能不全(MGD)の双方を合併したC6例中,4例で耐性菌が検出された.結論:ICUでは,常在細菌叢の加齢性変化に加え,緑内障やCMGDなどの患者背景,耐性菌を念頭において診療にあたることが重要である.CPurpose:ToCinvestigateCtheCcausativeCbacteriaCandCdrugCsusceptibilityCinCcasesCofCinfectiousCcornealCulcer(ICU)C.Methods:InC101CeyesCofC97CpatientsCdiagnosedCwithCICUCfromCAprilC2010CtoCMarchC2020,CpatientCback-ground,CcausativeCbacteriaCandCtheirCdrugCsusceptibility,CandCocularC.ndingsCwereCretrospectivelyCinvestigated.CResults:InCpatientsCunderC50Cyearsold(n=46cases)C,91.3%CwereCcontactClensCwearers,CandCtheCmostCcommonCcausativebacteriumwasMethicillin-susceptibleStaphylococcusepidermidis(MSSE)C.Inpatientsover50yearsold(n=51cases)C,themostcommoncausativebacteriuminupperandlowerregioncornealinfectionswasMSSE(27.6%)C,CwhileCinCcentralCcornealCregionCtheCinfectionCwasCMethicillin-resistantCStaphylococcusaureus(17.4%)C.Morethan40%CofCtheCcausativeCbacteriaCwereCresistantCtoCantibiotics,CandCtheCproportionCofCdrug-resistantCorganismsCwasCsigni.cantlyChigherCinCglaucomaCeyeCdropusers(p<0.05)C.CInC4CofC6CpatientsCwithCglaucomaCandCmeibomianCglanddysfunction,drug-resistantbacteriaweredetected.Conclusion:InICUcases,itisimportanttounderstandtheage-relatedalterationofcommensalbacteriaandthepatientbackground.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(2):243.247,C2023〕Keywords:感染性角膜潰瘍,起炎菌,薬剤感受性,緑内障,マイボーム腺機能不全.infectiouscornealulcer,causativebacteria,drugsusceptibility,glaucoma,meibomianglanddysfunction(MGD)C.Cはじめに角膜感染症は,早期に診断し効果的な治療ができなければ永続的な視力低下を生じうる疾患である.若年者ではコンタクトレンズ(contactlens:CL)の不適切な使用に伴う角膜上皮障害をきっかけとするケースが多い一方,高齢者では,ドライアイ,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddys-function:MGD),眼瞼内反症,緑内障点眼の長期使用など,さまざまな患者背景に起因する角膜上皮障害をきっかけに感染を生じることが多いと考えられている1).近年,周術期を含めた抗菌薬の過度な使用は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusaureus:MRSA)やキノロン耐性コリネバクテリウム属をはじめとする薬剤耐性菌を生じ,これらの細菌に起因した重症の角膜感染症へとつながることが報告されている2,3).一方,健常者のマイボーム腺,結膜.,眼瞼皮膚の常在細菌叢は加齢とともに変化し4),とくにCMGD患者では結膜.の常在細菌叢が変化する〔別刷請求先〕柴田学:〒604-8845京都市中京区壬生東高田町C1-2京都市立病院眼科Reprintrequests:GakuShibata,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospital,1-2MibuHigashitakadacho,Nakagyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto604-8845,JAPANC50歳未満50歳以上症例数,眼数46例49眼51例52眼年齢C30.4±9.4歳C70.2±11.5歳性別(男性/女性)C21/25C23/28マイボーム腺機能不全合併9例(1C9.6%)23例(C45.1%)(p=0.008)コンタクトレンズ装用42例(C91.3%)10例(C19.6%)(p<0C.001)緑内障点眼使用0例(0%)12例(C23.5%)(p<0C.001)(例)25201510500~910~1920~2930~3940~4950~5960~6970~79■症例数■MGD合併症例数■緑内障点眼使用症例数図1年代別感染性角膜潰瘍症例数80~8990~99(歳)各年代におけるマイボーム腺機能不全(MGD)合併症例数,緑内障点眼使用症例数を合わせて表示した.と報告されている5).また,緑内障点眼を使用している患者のC82%はCMGDを合併し6),長期間の緑内障点眼治療により眼表面常在細菌叢が変化することも報告されている7).そこで,今回筆者らは,当院で過去C10年間に経験した感染性角膜潰瘍の患者について,起炎菌とその薬剤感受性,患者背景(とくにCMGDの合併や緑内障点眼使用の有無)についてレトロスペクティブに検討したので報告する.CI対象および方法対象は,2010年4月1日.2020年3月31日の10年間に当院で感染性角膜潰瘍と診断されたC97例である.感染性角膜潰瘍の診断は細隙灯顕微鏡による角結膜所見(角膜細胞浸潤・潰瘍の部位,形状,深さ,前房蓄膿の有無,結膜充血など)から行った.ウイルス性角膜炎,慢性移植片対宿主病(graft-versus-hostdisease:GVHD)による重症ドライアイを合併した症例は除外した.結膜.培養および角膜擦過培養検査,検出菌の薬剤感受性,前眼部所見(角膜感染巣の部位,MGDの有無),CL装用歴,緑内障点眼使用の有無,診断日から治癒までの期間を診療録によりレトロスペクティブに検討した.感染巣の部位は,瞳孔径によらず角膜を上方・中央・下方と三つの部位に均等に分け,上方・下方をまとめて上下方とした.MGDは,2010年に日本で制定された分泌減少型CMGDの診断基準8)に基づいて,マイボーム腺開口部周囲異常所見(血管拡張,粘膜皮膚移行部の前方または後方移動,眼瞼縁不整),マイボーム腺開口部の閉塞所見,マイボーム腺分泌物の圧出低下から診断した.CL使用歴は発症時に装用していた症例を対象とし,緑内障点眼使用については,発症時より遡ってC1年間以上緑内障点眼を継続していた症例を対象とした.各数値は平均値C±標準偏差(standarddeviation:SD)で表記し,統計学的検討にはCt検定を行い,p<0.05を有意水準とした.CII結果対象の詳細を表1に示す.97例C101眼の平均年齢はC51.0C±22.6歳であった.50歳未満(46例C49眼)とC50歳以上(51例C52眼)の各群の平均年齢はそれぞれC30.4C±9.4歳とC70.2C±11.5歳であり,両群とも性差を認めなかった.MGDの合併は全体のC33.0%(32例)で認め,50歳未満のC19.6%(9例),50歳以上のC45.1%(23例)であった.CL装用歴は全体の53.6%(52例)で認め,50歳未満のC91.3%(42例),50歳以上のC19.6%(10例)であった.緑内障点眼の使用症例は全例がC50歳以上であり,23.5%(12例)を占めていた.診断か陰性51.2%MSSE30.2%陰性32.6%MSSE32.6%MSSA4.7%その他8.7%CCorynebacteriumその他S.lugdunensis4.7%CMSSACMRSA8.7%7.0%Corynebacterium2.3%6.5%8.7%MRSE2.2%図2結膜.培養検出菌MSSE:メチシリン感受性表皮ブドウ球菌,MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌,MRSE;メチシリン耐性表皮ブドウ球菌,MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌.Ca上下方(n=27)中央(n=23)CMSSE18.5%CMSSE不明不明26.1%51.9%CMSSA34.8%7.4%CPseudomonasaeruginosaCSerratia7.4%8.7%CSteptococcusspecies7.4%アカントアメーバCMRSECMRSA8.7%Corynebacterium3.7%4.3%4.3%CSteptococcusspeciesS.lugdunensis3.7%4.3%Moraxellacatarrhalis4.3%Enterococcusfaecalis4.3%Cb上下方(n=29)中央(n=23)CMRSA不明CMSSE不明17.4%27.6%27.6%26.1%CMSSECStaphylococcushaemolyticus13.0%CStenotrophomonasmaltophilia3.4%CMSSA4.3%CMRSEC.acnes3.4%13.8%肺炎球菌4.3%8.7%Serratia3.4%CMRSECMRSACMoraxellacatarrhalis真菌10.3%10.3%4.3%CMSSA8.7%CCorynebacterium4.3%8.7%図3角膜の感染部位別起炎菌a:50歳未満,Cb:50歳以上.MSSE:メチシリン感受性表皮ブドウ球菌,MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌,MRSE;メチシリン耐性表皮ブドウ球菌,MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌.ら治癒までの平均日数はC47.6C±57.7日で,50歳未満では症例数および各年齢層におけるCMGD合併症例数と緑内障点C27.9±26.7日,50歳以上ではC65.5C±70.0日であり,50歳以眼使用症例数を図1に示した.年代別症例数では,20歳代上の群でC2倍以上長い結果となった.10歳ごとの年代別のとC70歳代に二峰性のピークを認めた.また,MGD合併症例数はC60.70歳代で,緑内障点眼使用症例数はC70歳代でピークを示した.50歳未満50歳以上上下方中央上下方中央診断から治癒までの日数Cマイボーム腺機能不全合併コンタクトレンズ装用緑内障点眼使用19.2±17.1日C38.3±33.0日C(p=0.05)3例(1C2.5%)6例(2C7.3%)21例(C87.5%)20例(C90.9%)0例(0C.0%)0例(0C.0%)34.9±47.3日C91.7±74.8日(p=0.04)15例(C53.6%)9例(3C9.1%)5例(1C7.9%)5例(2C1.7%)4例(1C4.3%)8例(3C4.8%)結膜.培養検査による検出菌の割合を図2に示す.細菌は50歳未満の群のC48.8%,50歳以上の群のC67.4%から検出され,検出菌は,両群ともメチシリン感受性表皮ブドウ球菌(methicillin-susceptibleCStaphylococcusCepidermidis:MSSE)が最多となり,50歳以上の群ではコリネバクテリウム属,MRSA,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicil-lin-susceptibleCStaphylococcusaureus:MSSA),メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistantCStaphylococcusepidermidis:MRSE)と続き,ブドウ球菌属がC52.2%を占めた.一方で,角膜擦過培養検査では,50歳未満ではC16人中2人,50歳以上ではC24人中C10人が陰性であった.50歳以上からの検出菌のうちC60%がブドウ球菌属,20%がコリネバクテリウム属であった.50歳未満,50歳以上の症例において,各種培養結果や臨床経過から推察された起炎菌を感染部位別にまとめたものをそれぞれ図3に,部位別の臨床像の比較を表2に示す.起炎菌は,各症例の角膜潰瘍擦過塗抹鏡検および培養検査結果(角膜潰瘍部,結膜.,CL,CLケースなど)や,細隙灯顕微鏡による角膜所見(角膜潰瘍の部位,程度,前房蓄膿の有無)および結膜,眼瞼縁の所見,当科受診までの抗菌薬治療歴,当科での抗菌薬治療効果から総合的に推測した.50歳未満では(図3a),上下方,中心とも起炎菌はCMSSEがもっとも多く,中央部の感染でC2例アカントアメーバ角膜炎を認めた.50歳以上では(図3b),上下方の感染の起炎菌はCMSSEがもっとも多く,その他のブドウ球菌属を含めると全体のC60%以上を占めた.中央部の感染の起炎菌はMRSAがもっとも多く,ブドウ球菌属のほか,コリネバクテリウム属や真菌によるものも認めた.50歳以上の症例における診断から治癒までの日数の平均は,上下方の感染ではC34.9±47.3日,中央部の感染ではC91.7C±74.8日であり,中央部の感染で有意に長い結果となった(p=0.004).これら起炎菌のうち薬剤感受性が明らかとなった細菌はC31例から検出され,そのうちレボフロキサシン,ガチフロキサシン,セフメノキシムのいずれかに耐性を有する細菌はC14例で検出された.感染部位の違いやCMGDの有無では耐性菌の割合に明らかな差異を認めなかった.しかし,緑内障点眼の使用群では未使用群と比較して耐性菌の割合が有意に高い結果となった(p=0.049).また,緑内障とCMGDの双方を合併したC6例中,4例で耐性菌(うち,3例でCMRSA)が検出された.CIII考按正常角膜では角膜表面を重層扁平上皮細胞が覆い,上皮細胞間は多数のデスモゾームで連なり,とくに最表層上皮細胞はCZO-1やCclaudineなどのCtightCjunction関連蛋白の発現さらには膜結合型ムチンにより強固なバリア機能を保持している9,10).さらに角膜上皮細胞はCdefensinなどの抗菌物質の発現により細菌微生物の侵入を阻止しているが,何らかの原因で上皮細胞が障害を受けると,微生物の侵入,付着が起こりやすくなり感染症発症の誘引となる11).今回,年代別の検討では,既報と同様にC20歳代とC70歳代に二峰性のピークを認めた12,13).50歳以下の群のC91.3%にCCL装用歴を認め,検出菌はCMSSEが最多であったことから,若年者ではCCL装用による上皮障害をきっかけとした常在細菌による感染症がおもなものであることが再確認された.CL装用者に生じる重傷の感染性角膜潰瘍ではC35%程度でアカントアメーバが原因とされるが14),本検討では,放射状角膜神経炎など典型所見を認め,アカントアメーバ角膜炎の治療が奏効した症例はC2例のみであり,その他の症例では放射状角膜神経炎は認めず,抗菌治療が奏効したことからアカントアメーバの関与はないと考えた.一方,70歳代では,MGD合併例や緑内障点眼使用例の割合が高く(37.5%),コリネバクテリウムやMRSAの検出も増加していた.加齢に伴いマイボーム腺機能は低下しCMGD有病率が増加すること15),緑内障点眼使用によりCMGDの有病率が増加することも報告されている6).加齢や緑内障点眼に合併するCMGDによって常在細菌叢が変化し,角膜感染症の発症に影響している可能性が推測された.今回,結膜.培養検査で細菌が検出された症例では,50歳未満の症例のC90.5%,50歳以上の症例のC80.6%がグラム陽性球菌であり,既報(51.7%)と比べても割合が高く12),この結果も眼表面の常在細菌による角膜感染の割合が増加している可能性を示していると考えられた.一方,角膜擦過培養の検出率はC30.0%であり,既報(36.1%)と比べてやや低い結果であった12).当院では,感染性角膜潰瘍の患者の多くが紹介患者であり,すでに前医で抗菌点眼薬の処方が開始されており細菌の検出率が低くなった可能性が考えられた.角膜の感染部位別では,中央部の感染でキノロン系,セフェム系抗菌薬への耐性菌の割合が高く,上下方の感染と比べ治癒までの日数が有意に長い結果となった.これは,既報と同様に16),角膜中央部は,無血管なため生体反応が生じにくく,感染が成立,拡大しやすいためと考えられた.一方,角膜上方および下方は眼瞼縁との距離が近く,前部眼瞼縁の睫毛や皮膚,後部眼瞼縁のマイボーム腺や眼瞼結膜などの常在細菌叢の変化の影響を受けやすいと想像された.また,ドライアイやCMGDで生じうる角膜下方の慢性的な点状表層角膜症には17),細菌が感染しうると考えられる.緑内障患者では,緑内障点眼による角膜上皮バリア機能障害1)が感染のきっかけになる可能性,緑内障点眼によるCMGDの影響でマイボーム腺内常在細菌叢の変化が生じている可能性などが考えられる.ただし,緑内障点眼薬の長期使用による眼表面常在細菌叢の変化6)については,緑内障点眼の多くに防腐剤として添加されている塩化ベンザルコニウムの影響である可能性が指摘されている2).一般的に緑内障に対する点眼治療は両眼に点眼されている場合が多く,片眼の細菌性角膜潰瘍として治療を開始する際,僚眼のCMGDの有無や角膜上皮障害の有無などの所見が患眼の治療の手がかりとなる.今回の検討により,とくに高齢者の角膜感染症では,加齢に伴う常在細菌叢の変化に加え,緑内障点眼やCMGDなどの患者背景を考慮し,常に耐性菌の可能性を念頭において診療にあたることが重要であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)InoueCK,COkugawaCK,CKatoCSCetal:OcularCfactorsCrele-vanttoanti-glaucomatouseyedrop-relatedkeratoepitheli-opathy.JGlaucomaC12:480-485,C20032)DeguchiH,KitagawaK,KayukawaKetal:ThetrendofresistanceCtoCantibioticsCforCocularCinfectionCofCStaphylo-coccusCaureus,Ccoagulase-negativeCstaphylococci,CandCCorynebacteriumCcomparedCwithC10-yearsprevious:ACretrospectiveCobservationalCstudy.CPLoSCOneC13:Ce0203705,C20183)AokiCT,CKitazawaCK,CDeguchiCHCetal:CurrentCevidenceCforCCorynebacteriumConCtheCocularCsurface.CMicroorgan-isms9:254,C20214)SuzukiCT,CSutaniCT,CNakaiCHCetal:TheCmicrobiomeCofCthemeibumandocularsurfaceinhealthysubjects.InvestOphthalmolVisSciC61:18,C20205)DongX,WangY,WangWetal:Compositionanddiver-sityCofCbacterialCcommunityConCtheCocularCsurfaceCofCpatientsCwithCmeibomianCglandCdysfunction.CInvestCOph-thalmolVisSci60:4774-4783,C20196)KimJH,ShinYU,SeongMetal:EyelidchangesrelatedtoCmeibomianCglandCdysfunctionCinCearlyCmiddle-agedCpatientsCusingCtopicalCglaucomaCmedications.CCorneaC37:C421-425,C20187)OhtaniS,ShimizuK,NejimaRetal:Conjunctivalbacte-riaC.oraCofCglaucomaCpatientsCduringClong-termCadminis-trationCofCprostaglandinCanalogCdrops.CInvestCOphthalmolCVisSciC58:3991-3996,C20178)天野史郎:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科C27:627-631,C20109)木下茂:OcularSurfaceの神秘を探る.臨眼58:2086-2994,C200410)BanCY,CDotaCA,CCooperCLJCetal:TightCjunction-relatedCproteinexpressionanddistributioninhumancornealepi-thelium.ExpEyeResC76:663-669,C200311)FleiszigCSMJ,CKrokenCAR,CNietoCVCetal:ContactClens-relatedcornealinfection:Intrinsicresistanceanditscom-promise.ProgRetinEyeResC76:100804,C202012)阿久根穂高,佛坂扶美,門田遊ほか:2012年からC2年間の久留米大学眼科における感染性角膜炎の報告.あたらしい眼科37:220-222,C202013)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現状─.日眼会誌110:961-971,C200614)宇野敏彦,福田昌彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.日眼会誌115:107-115,C201115)DenCS,CShimizuCK,CIkedaCTCetal:AssociationCbetweenCmeibomianglandchangesandaging,sex,ortearfunction.CorneaC25:651-655,C200616)稲富勉:角膜感染所見を見落とさない所見の見方と考え方.あたらしい眼科19:971-977,C200217)鈴木智:マイボーム腺機能不全に関連した角膜症.COCULISTAC59:42-47,C2018***

多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳第4 版に対する アンケート調査

2023年2月28日 火曜日

《第27回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科40(2):237.242,2023c多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳第4版に対するアンケート調査大野敦粟根尚子佐分利益生廣瀬愛谷古宇史芳赤岡寛晃廣田悠祐小林高明松下隆哉東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科CQuestionnaireSurveyontheDiabeticEyeNotebook4thEditionamongPhysiciansintheTamaAreaAtsushiOhno,NaokoAwane,MasuoSaburi,AiHirose,FumiyoshiYako,HiroakiAkaoka,YusukeHirota,TakaakiKobayashiandTakayaMatsushitaCDepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversityC目的:2020年に第C4版に改訂された糖尿病眼手帳(以下,眼手帳)に対するアンケート調査を内科医を対象として行い,その結果に回答者が糖尿病を専門としているか否かで差を認めるかを検討した.方法:多摩地域の内科医に眼手帳第C4版に対するアンケートへの回答をC2021年に依頼し,回答者を糖尿病が専門のC38名(専)と非専門のC26名(非)に分け調査結果を比較した.結果:両群とも「眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感はない」がほぼC100%.受診の記録の記載内容は「ちょうど良い」がC70%前後,「詳しすぎる」もC20%前後認め,不要と感じる項目は中心窩網膜厚と抗CVEGF療法とする回答が多かった.福田分類は(専)で「無いままでよい」,(非)で「どちらともいえない」が最多であったが,復活を(専)のC12%が希望した.第C4版で「HbA1cが追加されてよかった」が(非)で多い傾向を認めた.結論:眼手帳の受診の記録が詳しすぎるとの回答をC20%前後認め,不要と感じる項目として糖尿病黄斑浮腫関連の回答が多く,内科医への啓発活動が必要と思われる.CPurpose:WeconductedaquestionnairesurveyofphysiciansontheDiabeticEyeNotebook(DEN,revisedtotheC4thCeditionCin2020)C,CandCexaminedCifCthereCwasCaCdi.erenceCinCtheCresultsCdependingConCwhetherCorCnotCtheCrespondentswerediabetesspecialists.Methods:In2021,wesentquestionnairesonthe4th-editionDENtophysi-ciansCinCtheCTamaCarea,CandCdividedCtheCrespondentsCintoCthoseCwhospecialize(S)indiabetes(n=38)andCthoseCwhodonotspecialize(NS)indiabetes(n=26)andcomparedthe.ndings.Results:InboththeSandNSgroup,nearlyCallCpatientsCagreedCtoCtheChandingCoverCtheCDENCophthalmologicalCdata.COfCtheCmedicalCrecordsCcollected,Capproximately70%CwereCadequate,CwhileCapproximately20%CwereCtooCdetailed,CandCfovealCretinalCthicknessCandCanti-VEGFtherapyweretheitemsmostfrequentlydeemedunnecessary.ThemostcommonanswertotheFuku-daclassi.cationwasthatitdidnotneedtobeS,neitherNS,yet12%ofSrespondentsstatedthatitwasacceptedifrevised.ItwasdeemedgoodthatHbA1cwasaddedinthe4thedition,butthattendencywasmorecommonintheCNSCresponses.CConclusion:About20%CofCtheCrespondentsCansweredCthatCtheCrecordsCofCconsultationsCinCtheCDENCwereCtooCdetailed,CandCmanyCrespondedCthatCdiabeticCmacularCedemaCrelatedCitemsCwereCunnecessary,CthusCindicatingthatthephysiciansneedtobefurthereducated.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(2):237.242,C2023〕Keywords:糖尿病眼手帳,アンケート調査,受診の記録,糖尿病黄斑浮腫,福田分類.diabeticCeyeCnotebook,Cquestionnairesurvey,recordofconsultations,diabeticmacularedema,Fukudaclassi.cation.C〔別刷請求先〕大野敦:〒193-0998東京都八王子市館町C1163東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科Reprintrequests:AtsushiOhno,M.D.Ph.D.,DepartmentofDiabetology,EndocrinologyandMetabolism,HachiojiMedicalCenterofTokyoMedicalUniversity,1163Tate-machi,Hachioji-city,Tokyo193-0998,JAPANC表1アンケート回答者の背景(人数)専門医非専門医p値【年齢】20歳代:3C0歳代:4C0歳代:5C0歳代:6C0歳代:7C0歳代1:7:8:12:7:1(無回答C2名)0:2:6:4:7:5(無回答C2名)C0.12【臨床経験年数】10年以内:1C1.C20年:2C1.C30年:3C1.C40年:4C1年以上4:10:12:9:2(無回答C1名)2:5:9:4:4(無回答C2名)C0.64【就業施設】診療所:2C00床以下の病院:2C00床以上の病院:大学病院22:1:1:8(無回答C6名)19:0:0:0(無回答C7名)C0.03【定期通院糖尿病患者数】11.C30名:3C1.C50名:5C1.C100名:1C01.C300名:3C01名.C500名:5C01名以上1:1:7:13:2:1C3(無回答C1名)11:6:4:2:0:0(無回答C3名)<C0.001はじめに糖尿病診療の地域医療連携を考える際に重要なポイントの一つが,内科と眼科の連携である.東京都多摩地域では,1997年に内科医と眼科医が世話人となり糖尿病治療多摩懇話会を設立し,内科と眼科の連携を強化するために両科の連携専用の「糖尿病診療情報提供書」を作成し地域での普及を図った1).また,この活動をベースに,筆者(大野)はC2001年の第C7回日本糖尿病眼学会での教育セミナー「糖尿病網膜症の医療連携.放置中断をなくすために」に演者として参加した2)が,ここでの協議を経てC2002年C6月に日本糖尿病眼学会より『糖尿病眼手帳』(以下,眼手帳)の発行されるに至った3).眼手帳は発行後C20年が経過し,その利用状況についての報告が散見され4.7),2005年には第C2版,2014年には第C3版に改訂された.多摩地域では,眼手帳に対する内科医の意識調査を発行C7年目,10年目に施行し,13年目には過去C2回の調査結果と比較することで,発行後C13年間における眼手帳に対する内科医の意識の変化を報告した8).第C3版においては糖尿病黄斑症の記載が詳細になり,一方,初版から記載欄を設けていた福田分類が削除され,第C2版への改訂に比べて比較的大きな変更になった.さらに2020年には第C4版に改訂されて「HbA1c」の記入欄が設けられ,「糖尿病黄斑浮腫の現状と治療内容」に関する詳細な記載項目が増えた.そこで多摩地域では,2021年C4.5月に眼手帳第C4版に対する内科医を対象としたアンケート調査を施行したので,その結果に糖尿病の専門性の有無で差があるかを検討した.CI対象および方法アンケートの対象は,多摩地域で糖尿病診療に関心をもつ内科医C65名で,「日本糖尿病学会員ですか,糖尿病について関心がありますか?」の質問に対する回答結果【①日本糖尿病学会の会員,②会員ではないが糖尿病が専門・準専門,③専門ではないが関心はある,④あまり関心がない】により,専門医(①C32名+②C6名)38名と非専門医(③C26名+④C0名)26名(1名は不明)のC2群に分けた.アンケート回答者の背景を表1に示す.年齢は,専門医が50歳代のC33.3%,非専門医がC60歳代のC29.2%がそれぞれ最多でも,両群間に有意差は認めなかった.臨床経験年数は,専門医・非専門医ともC21.30年がC30%台でもっとも多く,両群間に有意差は認めなかった.就業施設は,専門医が診療所C68.8%,病院C31.2%,非専門医は診療所C100%で,非専門医で診療所勤務者が多い傾向を認めた.糖尿病の定期通院患者数は,専門医はC101名以上の回答がC75.6%,非専門医はC50名以下の回答がC73.9%を占め,両群間に有意差を認めた.アンケート調査はC2021年C4.5月に実施した.眼手帳の協賛企業である三和化学研究所の医薬情報担当者が各医療機関を訪問して医師にアンケートを依頼し,直接回収する方式で行ったため,回収率はほぼC100%であった.アンケートの配布と回収という労務提供を依頼したことで,協賛企業が本研究の一翼を担う倫理的問題が生じているが,アンケートを通じて眼手帳の啓発を同時に行いたいと考え,そのためには協力をしてもらうほうが良いと判断し,依頼した.なお,アンケート内容の決定ならびにデータの集計・解析には,三和化学研究所の関係者は関与していない.また,アンケート用紙の冒頭に,「集計結果は,今後学会などで発表し機会があれば論文化したいと考えておりますので,ご了承のほどお願い申し上げます」との文を記載し,集計結果の学会での発表ならびに論文化に対する了承を得た.アンケートの設問は,以下のとおりである.問1.眼手帳の認知度・活用度問2.眼手帳を持参される患者数問3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感問4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見問5.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目問6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望問6-2).第C3版から「福田分類」が消えたことへの御表2眼手帳の認知度・活用度と持参される患者数眼手帳の認知度・活用度専門医非専門医1)2)すでに眼科医から発行されて,外来時に「眼手帳」から診療情報を得ている眼科医から発行されて外来時に見たことはあるが,活用はしていない31名(C91.2%)1名(2C.9%)3名(1C2.0%)8名(3C2.0%)3)外来とは別のところ(研究会等)で見たことや聞いたことはある1名(2C.9%)5名(2C0.0%)4)眼手帳の存在自体今回はじめて知った9名(3C6.0%)5)その他の状況1名(2C.9%)p<0.001無回答C4C1C眼手帳を持参される患者数専門医非専門医1)5名未満1名(3C.2%)6名(5C4.5%)2)5.C9名2名(6C.5%)3名(2C7.3%)3)10.C19名8名(2C5.8%)4)20名以上20名(C64.5%)2名(1C8.2%)p<0.001無回答C1表3眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感と「受診の記録」の記載内容眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感専門医非専門医1)全くない33名(C86.8%)22名(C88.0%)2)ほとんどない4名(1C0.5%)3名(1C2.0%)3)多少ある1名(2C.6%)4)かなりあるp=0.1無回答C1C眼手帳の「受診の記録」の記載内容専門医非専門医1)詳しすぎて理解しにくい項目がある8名(2C2.2%)4名(1C6.0%)2)3)必要な情報が入っていてちょうど良いもっと詳しい内容がほしい27名(C75.0%)1名(2C.8%)17名(C68.0%)4)わからない4名(1C6.0%)p=0.056無回答C2C1C意見問6-3).第C4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見各設問に対する結果は,無回答者を除く回答者数,カッコ内に百分比で示した.問C2は,問C1で眼手帳を活用中,診療で見るが未活用した回答の専門医C32名,非専門医C11名を対象に施行した.問C5は,問C4で詳しすぎると回答した専門医C8名,非専門医C4名を対象に施行した.両群の回答結果の比較は度数がC5未満のセルが多いため,統計ソフトCEZR(EasyR)を用いてCFisherの正確確率検定を行い,統計学的有意水準は5%とした.II結果1.糖尿病眼手帳の認知度・活用度(表2上段)専門医は「外来時に眼手帳から診療情報を得ている」の91.2%,非専門医は「眼手帳の存在自体今回はじめて知った」のC36.0%が最多回答で,専門医において有意に認知度が高く活用もされていた.C2.眼手帳を持参される患者数(表2下段)専門医は「20名以上」の回答がC64.5%,非専門医は「5名未満」の回答がC54.5%を占め,専門医で有意に多かった.C3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感(表3上段)両群とも「全くない」がC85%以上,「ほとんどない」を合わせてほぼC100%で,有意差を認めなかった.次回受診予定HbA1c矯正視力眼圧白内障糖尿病網膜症糖尿病網膜症の変化糖尿病黄斑浮腫中心窩網膜厚本日の抗VEGF療法抗VEGF薬総投与回数図1「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目問C4で「詳しすぎる」と回答した人のみに質問(専門医:8名,非専門医C4名).表4「受診の記録」の項目に対する御意見眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望専門医非専門医1)特にない30名(C88.2%)21名(C95.5%)2)ある4名(1C1.8%)1名(4C.5%)p=0.64無回答C4C4C第C3版から「福田分類」が消えたことへの御意見専門医非専門医1)無いままでよい16名(C47.1%)8名(3C8.1%)2)復活してほしい4名(1C1.8%)3)どちらともいえない14名(C41.2%)13名(C61.9%)p=0.17無回答C4C5C第C4版で「HbAC1c」が追加されたことへの御意見専門医非専門医1)追加されてよかった22名(C62.9%)18名(C90.0%)2)必要なかった3名(8C.6%)3)どちらともいえない10名(C28.6%)2名(1C0.0%)Cp=0.11無回答C3C6C4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見(表35.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目(図1)下段)問C4で「詳しすぎる」と回答した人が不要と感じる項目両群とも「必要な情報が入っていてちょうど良い」がC70は,両群とも中心窩網膜厚と抗CVEGF療法関連項目が多か%前後でもっとも多く,「詳しすぎて理解しにくい項目があった.る」はC20%前後認めた.6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望(表4上段)「特にない」との回答が両群ともC85%以上を占め,有意差はなかった.C6-2).第3版から「福田分類」が消えたことへの御意見(表4中段)専門医で「無いままでよい」,非専門医で「どちらともいえない」がそれぞれもっとも多く,一方復活希望は専門医で12%認めたが,両群間に有意差はなかった.C6-3).第4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見(表4下段)「追加されてよかった」が,専門医のC62.9%に比し非専門医はC90.0%と多い傾向を認めた.CIII考按1.糖尿病眼手帳の認知度・活用度専門医は眼手帳をC90%以上の回答者が活用中であったのに対し,非専門医はC12%にとどまっていた.今回のアンケート項目にないため推測の範囲内ではあるが,眼科への定期受診率が非専門医の方が低いために眼手帳を見る機会も少ないことが考えられる.また,今回のアンケートでは「眼手帳は眼科医から渡すべきか」との項目も設けたが,その回答において「内科医から渡しても良い」との回答が専門医は31.6%で非専門医のC16.0%の約C2倍を占めており,専門医では糖尿病連携手帳と眼手帳の同時配布率が高いことも非専門医との活用度の差につながっている可能性が考えられる.C2.眼手帳を持参される患者数眼手帳の持参患者数は専門医で有意に多かったが,糖尿病の定期通院患者数は専門医がC101名以上,非専門医はC50名以下の回答がそれぞれ約C75%を占めて有意差を認めているためと思われる.C3.眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感眼手帳を眼科医が渡すことへの抵抗感は,両群とも「全く・ほとんどない」がほぼC100%であったことより,糖尿病初診患者には,たとえ糖尿病連携手帳を未持参でも眼科医からの眼手帳の配布が望まれる.ただそのためには,外来における時間的余裕と眼手帳の配布ならびに眼手帳記載時のメディカルスタッフによるサポート体制の確保が必要と思われる.一方,多摩地域の眼科医に対する眼手帳のアンケート調査において「眼手帳は眼科医から患者に渡すほうが望ましいと考えるか」の設問に対し,「眼科医が渡すべき」の回答が2020年はC2015年に比べてC14.3%減り,「内科医から渡してもかまわない」の回答がC12.7%増えていた9).したがって,内科医も眼科医からの配布を待つ受け身の姿勢ではなく,糖尿病初診患者に糖尿病連携手帳と眼手帳を同時配布し,初診の段階での眼科受診を勧める姿勢が望まれる.C4.眼手帳の「受診の記録」の記載内容への御意見多摩地域の内科医における眼手帳発行C7・10・13年目の意識調査8)では,「必要な情報が入っていてちょうど良い」との回答がC71.75%で今回の結果とほぼ一致していたが,一方「詳しすぎて理解しにくい項目がある」はC3.3.8.5%にとどまり,今回のC20%前後の回答率とは差を認めた.C5.「受診の記録」の記載内容で不要と感じる項目詳しすぎて理解しにくいために不要と感じる項目としては,専門医でも中心窩網膜厚と抗CVEGF療法関連項目をあげていた.「眼手帳の目的」がC16頁に三つ記載されているが,そのなかでもっとも重要な項目は「③患者さんに糖尿病眼合併症の状態や治療内容を正しく理解してもらう」ことであると筆者は考えている.眼手帳第C3版への改訂にあたり,患者サイドに立った眼手帳をめざしてC1頁の「眼科受診のススメ」の表記を患者にわかりやすい表記に変更しただけでなく,糖尿病黄斑症への理解を助けるために眼手帳後半のお役立ち情報に光干渉断層計(OCT)や薬物注射を加えるなどの改変を行い.その結果患者さんにとってわかりやすくなったとの回答が多摩地域の眼科医においてC2015年のC54.5%から2020年はC64.9%とC10%増えていた9).今回の結果を踏まえて,第C4版への改訂にあたり糖尿病黄斑浮腫関連の情報提供に関し内科医が「受診の記録」を理解するのに十分であるのか,さらに先にあげた眼手帳の目的③を考えた際に,第C4版でも患者に正しく理解してもらうわかりやすさが確保されているのか今後検証していくべきと思われる.C6-1).眼手帳の「受診の記録」への項目追加希望「特にない」との回答が両群とも85%以上を占めていたが,眼手帳発行C7・10・13年目の意識調査8)でもC90%以上を占めており,今回の結果とほぼ一致していた.C6-2).第3版から「福田分類」が消えたことへの御意見専門医で「無いままでよい」がC47%でもっとも多いものの,復活希望もC12%認めた.多摩地域の眼科医でのアンケート調査では,眼手帳発行C10年目までの回答において,受診の記録のなかで記入しにくい項目として福田分類が多く選ばれていた10).福田分類は,内科医にとっては網膜症の活動性をある程度知ることのできる分類であるため記入してもらいたい項目ではあるが,その厳密な記入のためには蛍光眼底検査が必要となることもあり,眼科医にとっては埋めにくい項目と思われる1).また,糖尿病網膜症病期分類は,改変Davis分類,さらに国際重症度分類と主流が変わり,眼手帳の第C3版では受診の記録から福田分類は削除されたが,多摩地域の眼科医でのC2020年の調査では福田分類の復活希望が27.5%でC2015年のC2.9%より約C25%有意に増加していた9).福田分類に関しては,国際的には過去の分類の位置づけとなりつつも,一部復活の希望もあることより,内科・眼科連携の観点からも重要なポイントであるので,今後のアンケート調査においては復活希望の回答者にその理由を聞いてみたい.C6-3).第4版で「HbA1c」が追加されたことへの御意見(表4下段)HbA1cが追加されてことに対しては,とくに非専門医で9割の支持を得た.受診の記録に追加したい項目に関して多摩地域の眼科医においてCHbA1c記入欄の希望が多かった10)ことより,まずは内科医から糖尿病連携手帳の発行による臨床検査データの提供に心がけてきた.第C4版でCHbA1cの記載欄が追加されてことにより,連携手帳をまずは開いて直近のCHbA1c値を確認したうえで,眼手帳に転記していただく方式が確立できたと思われる.おわりに多摩地域の内科医に眼手帳第C4版に関するアンケート調査をC2021年C4.5月に施行し,回答者が糖尿病を専門としているか否かで結果に差を認めるかを検討した.その結果,眼手帳の認知率や持参する患者数は専門医で有意に高値であった.受診の記録が詳しすぎるとの回答をC20%前後認め,不要と感じる項目として黄斑浮腫関連の回答が多く,内科医への啓発活動が必要と思われた.HbA1cの追加に対しては,とくに非専門医での評価が高かった.謝辞:アンケート調査にご協力いただきました多摩地域の内科医師の方々,またアンケート用紙の配布・回収にご協力いただきました三和化学研究所東京支店多摩営業所の伊藤正輝氏,篠原光平氏,鈴木恵氏,林浩介氏,折小野千依氏,中尾亮太氏に厚くお礼申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野敦,植木彬夫,馬詰良比古ほか:内科医と眼科医の連携のための糖尿病診療情報提供書の利用状況と改良点.日本糖尿病眼学会誌7:139-143,C20022)大野敦:糖尿病診療情報提供書作成までの経過と利用上の問題点・改善点.眼紀53:12-15,C20023)大野敦:クリニックでできる内科・眼科連携─「日本糖尿病眼学会編:糖尿病眼手帳」を活用しよう.糖尿病診療マスター1:143-149,C20034)善本三和子,加藤聡,松本俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀55:275-280,C20045)糖尿病眼手帳作成小委員会:船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,C20056)船津英陽:糖尿病眼手帳と眼科内科連携.プラクティスC23:301-305,C20067)船津英陽,堀貞夫,福田敏雅ほか:糖尿病眼手帳のC5年間推移.日眼会誌114:96-104,C20108)大野敦,粟根尚子,小暮晃一郎ほか:多摩地域の内科医における糖尿病眼手帳に対する意識調査─発行C7・10・13年目の比較─.プラクティス34:551-556,C20179)大野敦,粟根尚子,赤岡寛晃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳の第C3版に関するアンケート調査結果の推移.あたらしい眼科39:510-514,C202210)大野敦,粟根尚子,梶明乃ほか:多摩地域の眼科医における糖尿病眼手帳に対するアンケート調査結果の推移(第C2報).ProgMedC34:1657-1663,C2014***

基礎研究コラム:69.糖尿病網膜症とアクロレイン

2023年2月28日 火曜日

糖尿病網膜症とアクロレインアクロレインとはアクロレインは反応性の高いアルデヒドで,蛋白などに結合することでその機能異常を惹起します.アクロレインが体内の蛋白に結合して生じる生成物はCFDP-lysineとよばれ,体内に長期間貯留して酸化ストレスを亢進することが知られています.アクロレインはタバコの煙や排気ガスなどに含まれる分子として知られ,以前は外因性の環境汚染物質と考えられていましたが,その後,内因性にも産生されることが明らかとなり,肺癌や脳梗塞,Parkinson病やCAlzheimer病などの神経変性疾患など,さまざまな疾患との関連が注目されるようになりました.糖尿病網膜症とアクロレインこれまで,糖尿病患者の血清および尿中でアクロレインが増加していること,増殖糖尿病網膜症(proliferativediabet-icretinopathy:PDR)の硝子体中でアクロレイン結合蛋白であるCFDP-lysineが増加していることが報告されてきました1).糖尿病網膜症においてアクロレインはどのように産生され,どのような役割を果たすのでしょうか.これまでの検討で,白血球接着分子であるCVAP-1/SSAOが酵素としてスペルミンを含む一級アミンを酸化させる経路や,低酸素下でスペルミンオキシダーゼという酵素が誘導されてスペルミンを酸化させる経路によって,眼内でアクロレインが産生されることがわかりました.また,PDR患者の線維血管組織において,FDP-Lysineは網膜グリア細胞に局在していました1).筆者らのグループは,培養網膜グリア細胞にアクロレインを負荷するとCCXCL1とよばれる炎症性ケモカインの産生増加1)やCRhoキナーゼの発現誘導2)を介して網膜グリア細胞の遊走が増加することを明らかにし,糖尿病患者の眼内で産生されたアクロレインが網膜グリア細胞の遊走を促進する分子の一つであると考えています.PDR患者の網膜組織では網膜グリア細胞の一つであるMuller細胞が組織内で遊走しており,Muller細胞の遊走が糖尿病網膜症の病態進展に寄与しているという学説が提唱されてきましたが3),その原因の一つが糖尿病によって眼内で産生されるアクロレインであったわけです.福津佳苗北海道大学大学院医学研究院眼科学教室今後の展望糖尿病網膜症の発症および進行には慢性炎症と酸化ストレスが深く関与することが知られていますが,アクロレインによって引き起こされる酸化ストレスは,糖尿病網膜症におけるグリア細胞の遊走だけではなく,炎症も惹起するのではないかと考えられています.これからさらなる検討が必要ではあるものの,アクロレインの阻害薬はすでに他臓器の疾患で臨床応用がなされており,糖尿病網膜症においてもアクロレインが新たな治療標的となる可能性があります.文献1)MurataM,NodaK,IshidaS:Pathologicalroleofunsatu-ratedCaldehydeCacroleinCinCdiabeticCretinopathy.CFrontImmunolC11:589531,C20202)FukutsuK,MurataM,KikuchiKetal:ROCK1CmediatesretinalCglialCcellCmigrationCpromotedCbyCacrolein.CFrontCMedC8:717602,C20213)NorkCTM,CWallowCIH,CSramekCSJCetal:MullerC’sCcellCinvolvementCinCproliferativeCdiabeticCretinopathy.CArchCOphthalmolC105:1424-1429,C1987(89)あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023C2270910-1810/23/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:237.硝子体アミロイドーシスに対する硝子体手術(初級編)

2023年2月28日 火曜日

237硝子体アミロイドーシスに対する硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめにアミロイドーシスとは,アミロイドとよばれる線維状の異常蛋白質が全身のさまざまな臓器に沈着して機能障害をきたす疾患である.複数の臓器にアミロイドが沈着する全身性のもの(全身性アミロイドーシス)と,特定の臓器に限局してアミロイドが沈着する限局性のもの(限局性アミロイドーシス)がある.アミロイドーシスには,1)原発性,2)続発性,3)腫瘍形成性,4)多発性骨髄腫に伴うものの4病型があり,硝子体アミロイドーシスはおもに家族性原発性アミロイドーシスにみられる眼合併症の一つとされている1).●症例提示74歳,男性.最近左眼の飛蚊症と視力低下を自覚し,近医で左眼の白内障および硝子体混濁を指摘され紹介となった.左眼の硝子体腔内には蜘蛛の巣様の硝子体混濁をほぼ全象限に認め(図1),細隙灯顕微鏡と前置レンズによる観察では厚みのある細線維状の硝子体混濁を認め(図2),加齢による後部硝子体.離の混濁とは異なっていた.右眼にも軽度であったが同様の混濁を認めた.眼圧は正常で,ぶどう膜炎の全身検索ではとくに異常所見を認めなかった.矯正視力が0.15に低下していたため,視力改善および診断を目的とした硝子体手術を施行した.術中所見として,黄斑部耳側に小出血斑を認めた.後部硝子体は未.離であったが,硝子体カッターの吸引で容易に人工的後部硝子体.離を作製できた(図3).術後,矯正視力は1.0に改善した.生検の結果,硝子体アミロイドーシスと診断された.●硝子体アミロイドーシスの臨床的特徴硝子体アミロイドーシスの硝子体所見は,蜘蛛の巣様,綿花様,膜様,細線維様とも表現されており2),加齢による後部硝子体膜の混濁とは異なる.眼底所見としては,血管周囲へのアミロイド沈着による網膜血管周囲炎,網膜血管白鞘化,網膜出血などを認めることがある1).また,アミロイドは水晶体後面のBergerspace(87)0910-1810/23/\100/頁/JCOPY図1左眼眼底写真硝子体腔内に蜘蛛の巣様の硝子体混濁をほぼ全象限に認めた.図2左眼細隙灯顕微鏡と前置レンズによる硝子体の観察所見厚みのある細線維状の硝子体混濁を認めた.図3術中所見後部硝子体は未.離であったが,硝子体カッターの吸引で容易に人工的後部硝子体.離を作製できた.に沈着しやすいとする報告もある3).アミロイドーシスによる他の眼症状としては,アミロイドの外眼筋沈着による眼球運動障害,毛様体神経沈着による瞳孔異常(瞳孔不同,対光反射減弱),隅角線維柱帯沈着による続発性緑内障などがある1).硝子体手術は多くの場合,単純硝子体切除術により眼底視認性および視力の改善が得られるが,残存硝子体へのアミロイドの再沈着をきたすことがあり,初回手術時に十分な硝子体切除を行うことが重要である.文献1)加藤整:硝子体アミロイドーシス.眼科診療ガイド(眼科診療プラクティス編集委員編),p428,文光堂,20042)岸茂,林暢紹,小浦裕治:硝子体手術を施行したアミロイドーシスの1例.眼科43:671-675,20013)MansukhaniSA,PulidoJS,KhannaSS:Nd:YAGcapsu-lotomyforthemanagementofposteriorcapsularamyloi-dosis.AmJOphthalmolCaseRep13:50-52,2018あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023225

考える手術:14.裂孔原性網膜剝離への強膜バックリング手術

2023年2月28日 火曜日

考える手術⑭監修松井良諭・奥村直毅裂孔原性網膜.離への強膜バックリング手術坂西良仁順天堂大学医学部附属浦安病院眼科裂孔原性網膜.離(RRD)は,1918年にJuleGoninによって網膜裂孔が原因であることが報告されてから徐々にその病態が解明され,1947年にはCustodisらがバックリング手術を報告し現在に至る.バックリング素材の変遷などはあるものの強膜バックリング(SB)手術は長い歴史があり,それだけに完成された術式といえる.RRDに対するSB手術の基本的な考え方は,網膜裂孔に癒着する硝子体の牽引を強膜側からの圧迫により解除することである.これを理解するには手術前に実際に患者を仰臥位にし,どの部位をどのように圧迫すると牽る.術中に裂孔部を同定する際,大きな網膜裂孔では裂孔の付け根の位置にもっとも牽引がかかっているため,この付け根の部分をしっかり同定してマーキングする.ピンポイントにマーキングができれば,その部位から後極側と周辺側が2:1になる部位にバックルのマットレス縫合を置くとバックルの隆起の途中に網膜裂孔が位置することになり,硝子体による網膜牽引を解除しやすい.一方,バックルの頂点では網膜牽引を解除する方向にベクトルがかからず,牽引が解除できない.また,萎縮性円孔も同様に2:1の位置に縫合することで円孔は閉鎖しやすく,この位置関係でのマットレス縫合は有用である.そして,バックル留置後に再び眼底を観察して網膜裂孔の閉鎖を確認する.もしバックルの位置と網膜裂孔が若干ずれて牽引が十分に解除できていない場合は,バックルの位置を修正することが望まれる.おおよその牽引が取れていればそのまま手術を終了したくなるが,そこでしっかりとした位置に修正し直すことで,よりよい手術結果が得られる.聞き手:硝子体手術が全盛の現在,バックル手術の適応時間が短く,シャンデリア照明など硝子体手術の周辺器や意義についてどう考えていますか?具も充実してきていることがその要因です.しかし,そ坂西:昨今の硝子体手術(parsplanavitrectomy:PPV)れでもすべてのRRDに対する手術がPPVになるとはの低侵襲化に伴い,確かに裂孔原性網膜.離(rheg-考えられません.SBの適応としては,若年者の萎縮性matogenousretinaldetachment:RRD)に対し強膜バッ円孔によるRRD,最周辺部裂孔,下方の陳旧性RRDなクリング(scleralbuckling:SB)手術が選択されることどがあげられます.若年者では後部硝子体.離が起きては少なくなってきています.PPVはSBに比べて手術いないため,PPVで後部硝子体.離(posteriorvitre-(85)あたらしい眼科Vol.40,No.2,20232230910-1810/23/\100/頁/JCOPY考える手術ousdetachment:PVD)を起こすのが困難であること,PVDを起こす際に新たに網膜裂孔が生じる可能性があること,また白内障を誘発する可能性があることがPPVのデメリットになります.また,最周辺部網膜裂孔ではPPVでは視認しづらく処理がしづらいものの,SBではむしろ周辺部のほうが強膜を露出しやすく縫合しやすいので,SBが有利です.さらに下方の陳旧性RRDでは,PPVはガスなどの眼内タンポナーデが下方の網膜裂孔に当たりづらく復位しにくいため,長期に裂孔部の牽引を解除できるSBが有利です.もちろん場合により術式の選択は異なりますが,このあたりの考えを基に術式を検討する必要があります.また,SBの意義として,一つ目に強膜圧迫による網膜と硝子体牽引の関係を知るためのトレーニングとして術者の教育的な側面があげられます.二つ目はPPVでも重症例ではSBを併用することがあるという点です.したがって,SBは硝子体術者にとっては初心者でも熟練者でも必須の術式であるといえます.聞き手:SB手術を習得するコツは何ですか?坂西:まだSBに慣れていない術者がまずこの術式を習得するのに必要なコツは,常に同じ状況で手術をできるように自分の型・姿勢を常に意識するという点です.結膜切開や外眼筋の同定は当然手順を理解したうえで何度も繰り返すしかありませんが,問題はその後の強膜圧迫です.双眼倒像鏡を用いて行う場合,常に同じ型で圧迫できるように留意する必要があります.具体的には,術者は必ず圧迫する部位の対側に立ち,強膜圧迫している右手,20Dレンズを持っている左手,眼内に入射している光が,すべて安定して一直線上にあることで安定して眼底の状態を詳細に観察できるようになります.この眼底を見るときの姿勢と距離感を自分のものにできれば,一気にSBが上達します.中心に向かって圧迫することで眼球が回転せず適切に強膜圧迫ができる.図1強膜圧迫の方向圧迫する方向が中心に向かっていないと眼球が回転し,かつ滑ってしまいうまく圧迫できない.聞き手:SB手術時に冷凍凝固がうまくできません.坂西:SBの手技の中で冷凍凝固はもっともむずかしい手技の一つです.網膜裂孔の同定であれば鈎付きのマイヤーシュビッケラート(Meyer-Schwickerath)氏強膜圧迫鈎などを用いるため圧迫部がずれることはありませんが,冷凍凝固の器具は先端が滑らかであるため,圧迫の際に滑ってしまって必要な部位をうまく圧迫できないことがあります.このとき,冷凍凝固器具の先端を眼球中心に向かって押すようにすると,眼球に対してモーメントがかからず,また先端が動かないので滑りにくくなります.この眼球中心を意識した圧迫をいかにできるかが重要です.とくに最周辺部の冷凍凝固を行う際は滑りやすいため注意して行うことが必要です.また,どうしても滑ってしまう場合には,圧迫する前に軽く冷凍凝固をかけはじめ,凝固してきたらそのまま圧迫を強めて眼球を制御すると固定がよいです.聞き手:SB手術でもっとも重要なことは何ですか?坂西:手技の細かいところは慣れていくとして,SBでもっとも大事なのは最終的にその状態で結膜を閉じて手術を終了してよいかどうかを判断する,という点だと思います.すなわちバックル縫合を行った後に,そのバックルの位置でよいのか,位置を変更する必要があるのか,強膜側からの網膜下液排液やガス注入をする必要はあるのかを含めて,終了の判断をする必要があります.SBに慣れていないとこの判断がむずかしいですが,バックルの位置が網膜裂孔にぎりぎり乗っているかどうかで迷った場合には,必ず再縫合で位置を変更して網膜裂孔がバックルにしっかり乗っていることを確認することが重要です.網膜下液の排液は,下方の網膜.離の場合,陳旧例で網膜下液の粘稠度が高く自然吸収に時間がかかりそうな場合,バックルの位置はよいがまだ復位していない丈の高い場合には必要だと思います.さらにガス注入は網膜下液を大量に行って脈絡膜.離が出るほど低眼圧になった場合や,裂孔部が.shmouthになって閉鎖していない場合,黄斑.離をきたしている場合などが対象になります.いずれも術中に判断しますが,やはり術前にしっかりシミュレーションを行い,排液やガス注入を行うかある程度術前に計画しておくことで,スムーズかつ正確な手術につながると思います.224あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023(86)

抗VEGF治療:加齢黄斑変性に対するトリアムシノロン併用ブロルシズマブ治療

2023年2月28日 火曜日

●連載◯128監修=安川力髙橋寛二108加齢黄斑変性に対するトリアムシノロン併用引地泰一ひきち眼科ブロルシズマブ治療ブロルシズマブは滲出型加齢黄斑変性の治療において,既存薬のなかでも投与間隔の延長や滲出性変化の良好なコントロールが期待できるものの,眼内炎症(IOI)に伴う網膜血管炎や血管閉塞による視機能障害が危惧される.唯一眼や優位眼への投与には,IOI予防を目的にトリアムシノロンTenon.下注射の併用療法が選択肢となる.はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)に対する治療は,血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の登場により,治療成績が飛躍的に向上した.しかし,導入期治療で改善した視機能を維持するには,病状を評価しながら継続的かつ半永久的な抗VEGF薬の硝子体内注射が求められる.病状のコントロールに必要な硝子体内注射の頻度は患者ごとにまちまちであり,頻繁な硝子体内注射を要する患者では頻回の通院や経済的な負担が問題となる.そのため,薬効が強力かつ長期間持続する薬剤の開発が求められている.ブロルシズマブの特徴ブロルシズマブは国内で4番目に承認された眼科用VEGF阻害薬で,血管内皮細胞表面に発現するVEGF受容体1および2へのVEGF-Aの結合を阻害することで,滲出型AMDに対する治療効果を発揮する.ブロルシズマブはヒト化一本鎖抗体フラグメントで,他のVEGF阻害薬と比べて分子量が小さい(約26kDa).そのため,既存薬と同程度の半減期であるものの,既存薬より10~20倍高いモル濃度での硝子体内注射が可能であり,高濃度投与による作用時間の延長が期待できる.さらに組織への透過性が高く,硝子体内注射後の網膜・脈絡膜への移行性がよいなどの特徴を有している.ブロルシズマブの有効性と安全性を評価したHAWKおよびHARRIER第III相試験1)で,ベースラインからの視力改善におけるアフリベルセプト(q8w)に対するブロルシズマブ(q12w/q8w)の非劣性が確認された.さらに,ブロルシズマブ6mg群で治療眼の50%以上が48週目までのq12w投与を維持することができ,網(83)0910-1810/23/\100/頁/JCOPY膜内および網膜下滲出液・色素上皮.離の消退については,アフリベルセプトよりもブロルシズマブ治療眼のほうが良好だった.2019年10月に米国,2020年2月に欧州でブロルシズマブの使用が承認され,その後,わが国をはじめ世界各国で承認された.ブロルシズマブ関連眼内炎症ブロルシズマブはその後の実臨床においても,第III相試験の結果と同様に薬剤投与間隔の延長と滲出性変化の良好なコントロールが可能であることが確認された.一方,ブロルシズマブ硝子体内注射後に眼内炎症(intra-ocularin.ammation:IOI)が生じ,網膜血管炎や血管閉塞のために視機能障害をきたした症例の報告が相ついだため,HAWKおよびHARRIER試験の事後分析調査2)が行われた.その結果,ブロルシズマブを投与した1,088眼のうち50眼(4.6%)に本薬剤に関連したIOIが発生し,このうち36眼(72%)が網膜血管炎を併発,さらに血管閉塞を併発したものが23眼(46%)で,IOIを発症すると高率に網膜血管炎や血管閉塞が生じること,重度(ETDRSチャートで30文字以上)および中等度(15文字以上)の視力低下が残った5眼および8眼は,すべて網膜血管炎を併発しており,中等度視力低下の1眼以外は血管閉塞を伴っていたことが報告された.以上より,ブロルシズマブを使用する際には,IOIの発生に留意する必要性が改めて確認された.ブロルシズマブによるIOIの発症メカニズムは不明であるものの,IOIはステロイドへの反応性がよく,消炎に伴う硝子体混濁や網膜血管炎の消退による視機能改善が報告されている.中心窩領域に血管閉塞が生じると,最終視力が不良となるため,初期のIOI所見を見逃さないように注意深い経過観察が必要であり,IOI発生時にあたらしい眼科Vol.40,No.2,2023221図1ブロルシズマブによる眼内炎症62歳,男性.滲出型加齢黄斑変性に対する治療として,ブロルシズマブ導入期3回目の硝子体内注射12日後から飛蚊感が増加.前房は清明で角膜後面沈着物や結膜充血は認められないものの,硝子体に軽微な炎症細胞の浮遊(a:.)と網膜血管炎(b:..)を認めた.トリアムシノロンアセトニドTenon.下注射20mgで消炎し,飛蚊症も消失した.(a:引地:ブロルシズマブと眼内炎症.大鹿哲郎ほか編:新篇眼科プラクティス4眼科薬物療法,文光堂,2022,図2Aを改変引用)はただちにステロイドの局所投与を開始する.とくに,網膜血管炎を併発している患者に対しては,後眼部への消炎効果が期待できるTenon.下投与が望ましい.トリアムシノロン併用ブロルシズマブ筆者はわが国でのブロルシズマブ認可後,他のVEGF阻害薬からブロルシズマブに投与薬剤を変更した14眼中4眼(28.6%)でIOIの発生を経験した(図1).3眼はIOIにより視力が低下し,とくに1眼は著しい硝子体混濁のため手動弁に低下した.全例にトリアムシノロンアセトニドTenon.下注射(sub-Tenon’striam-cinoloneacetonideinjection:STTA)20mgを行ないIOIは消退し,IOI発生前の視力に回復した3).そこで,4例目のIOI発生以降にブロルシズマブを投与する患者には,IOIの予防を目的にブロルシズマブ硝子体内注射と同時にSTTAを併施することとした.その結果,222あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023STTA併用ブロルシズマブ硝子体内注射を施行した連続する30眼でIOI発生を認めなかったことから,STTAを併施することでブロルシズマブによるIOIを予防できる可能性があると考えている4).IOIはステロイドへの反応性がよいものの,網膜血管閉塞による不可逆的な視機能障害をきたすリスクがあり,また仮に炎症が治癒し視機能が回復しても,IOI発症から視機能回復までの間は,患眼の視機能が低下する.したがって,唯一眼あるいは優位眼の治療にブロルシズマブを投与する際は,IOIの予防が求められるため,STTA併用ブロルシズマブ硝子体内注射が選択肢となる.おわりにブロルシズマブは実臨床においても,第III相試験と同様にtreatment-naive症例の病状の鎮静化が可能であり,他剤からの切り替えにおいても病状の鎮静化のみならず,薬剤投与間隔の延長が期待できるため,滲出型AMDの治療において貴重な薬剤である.ただし,IOIの発生頻度が他剤と比べやや高く,まれに網膜血管閉塞による重篤な視機能低下を招く.治療の選択肢が増えることは,患者はもとより治療を行う眼科医にとっても朗報である.他剤との兼ね合いを考慮しつつ,秀逸な本剤のベネフィットを活用し,かつリスクを極力抑えることで,患者の視機能や生活の質の維持向上を図る.まさに眼科医の腕の見せ所である.STTA併用ブロルシズマブ硝子体内注射の意義は大きいと考える.文献1)DugelPU,KohA,OguraYetal:HAWKandHARRI-ER:phase3,multicenter,randomized,double-maskedtri-alsofbrolucizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology127:72-84,20202)Mone.sJ,SrivastavaSK,Ja.eGJetal:Riskofin.ammation,retinalvasculitis,andretinalocclusionrelat-edeventswithbrolucizumab.PosthocreviewofHAWKandHARRIER.Ophthalmology128:1050-1059,20213)HikichiT:ThreeJapanesecasesofintraocularin.ammationafterintravitrealbrolucizumabinjectionsinoneclinic.JpnJOphthalmol65:208-214,20214)HikichiT:Sub-Tenon’scapsuletriamcinoloneacetonideinjectiontopreventbrolucizumab-associatedintravitrealin.ammation.GraefesArchClinExpOphthalmol260:2529-2535,2022(84)

緑内障:眼圧日内変動と調節機構

2023年2月28日 火曜日

●連載◯272監修=福地健郎中野匡272.眼圧日内変動と調節機構土屋俊輔金沢大学附属病院眼科眼圧日内変動は概日時計によって制御される生理現象の一つであり,近年は眼圧の低い緑内障患者において大きな眼圧変動は進行のリスクであることも示され,臨床的意義も大きい.最近の基礎研究によって眼圧リズムはグルココルチコイドやノルアドレナリンなどのホルモンによって調節されている可能性が示唆されている.今後さらなる解明が進むことで緑内障の新規治療法開発に期待したい.●はじめに眼圧日内変動研究の歴史は非常に古く,最初の報告は100年以上前まで遡る.それ以来そのメカニズムの解明のために研究がなされてきた.ヒトの眼圧変動は,体内時計によって制御を受けるリズム変動に加えて,体位,ストレス,運動など,さまざまな要因により影響を受けるため正確な測定がむずかしいが,その要因をできるかぎり除外した場合,明け方から午前中にかけて眼圧は高値を示し,それ以後低下するパターンをとることが知られている.マウスやラット,ウサギなどの実験動物を対象とした基礎研究では,昼行性・夜行性にかかわらず,夜間に高値を示すリズムパターンを示すことが知られている.この眼圧日内変動は一定期間,外部の周期的な光刺激がなくとも維持されるため,眼圧日内変動のリズムは生体内の概日時計に従っていることがわかる.近年はこの概日時計と眼圧日内変動との関連に着目した多くの報告がなされ,少しずつそのメカニズムが明らかになってきている.C●眼圧日内変動の臨床的意義眼圧日内変動は正常眼でも認められるが,とくに緑内障患者ではそのパターンが日中上昇型,夜間上昇型,もしくは変動がないなど多岐にわたることや1),これらの多彩な変動パターンが存在するために,約C7割程度の緑内障患者ではC1日における最高眼圧が診療時間外に記録されるという報告もある2).したがってわれわれが通常行っている外来診療では,変動のある一時点を捉えているに過ぎず,患者の眼圧を正確に把握できているとはいいがたい.さらに最近の報告では,5年以上経過を追えたベースライン眼圧の低い(≦12CmmHg)正常眼圧緑内(81)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPY障患者において,点眼治療開始前の眼圧日内変動が大きいことがその後の緑内障進行のリスクファクターであるということが明らかとなった3).よって,日本人緑内障患者の大多数を占める正常眼圧緑内障患者のマネージメントとして,眼圧日内変動の把握が非常に重要であることがわかる.C●眼圧日内変動と概日リズム哺乳類の体内時計の中枢は視床下部の視交叉上核(suprachiasmaticnucleus:SCN)に存在し,この部分が中枢時計として,全身の組織における固有の概日リズムを生み出す末梢時計の位相を調節し,全身のリズムを同期させている.さらに細胞レベルでは,概日時計は時計遺伝子(clockgenes)とよばれる一連の遺伝子群によって構成されている.時計遺伝子の一つであるCCry遺伝子をノックアウトしたマウスでは,眼圧日内変動が消失してしまうことや4),房水産生の場である毛様体に時計遺伝子が規則的に発現すること5),さらには盲状態のマウスは外部サイクルから独立して,SCNのリズムに沿った眼圧日内変動を示すこと6)などの数多くの知見から,眼圧変動は生体の概日時計によってコントロールされていることはほぼ間違いないと思われる.そのCSCNからどのようにして眼圧リズムが生み出されるのか,という問いに対しては,最近の研究で重要な示唆が得られている.まず,副腎から体内の概日リズムに合わせて規則的に分泌されるホルモンであるグルココルチコイドに着目した研究では,exvivoで副腎ホルモンを投与することにより毛様体の局所時計の位相調節ができることや,副腎を摘出したマウスは行動リズムが正常であるにもかかわらず眼圧リズムが消失することから,副腎の働きが眼圧リズム形成に必須であることが明あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023219図1眼圧日内変動の制御機構概日リズムは視床下部に存在する視交叉上核CSCNが中枢時計となって,各臓器などに存在する末梢時計の位相を調節している.外部の明暗サイクルを網膜が感受し,中枢時計に伝達することで,外部のリズムと体内時計のリズムを同調させている(光同調).近年の報告により,中枢時計からのシグナル伝達経路として副腎ホルモンであるグルココルチコイドや,交感神経系のノルアドレナリンの働きにより,眼圧リズムが制御されている可能性が示唆されている.らかになった7).その後,他の報告では副腎に加えて上頸神経節を外科的に切除すると眼圧リズムのとくに夜間の上昇が消失してしまうことが明らかとなり,グルココルチコイドだけでなく,ノルアドレナリンの関与も示唆された8).さらに同じグループは,眼局所でのホルモンの働きとCphagocytosis(食作用)の関連に着目し,とくにノルアドレナリンによる線維柱帯における食作用抑制を介して眼圧が変動するという可能性を示した9).上記のことから,眼圧リズムは体内時計の制御下におかれ,中枢時計からの副腎および交感神経を介したシグナルを受けとり,房水動態を変化させることでそのリズムが形成されていると考えられる(図1).C●おわりに本稿では眼圧日内変動の重要性,および基礎研究によって現在明らかになりつつある眼圧リズムの調節機構に関して述べた.今回は触れなかったが,近年はコンタクトレンズセンサーなども登場し,生活の制限をあまり設けずに眼圧に関連したパラメータをC24時間連続で測定できるようになってきた.現状ではまだ広く普及していないが,今までの眼圧連続測定における医療側,患者側の負担を軽減し,今後さまざまな眼圧変動と緑内障の病態との関連が解明されることが期待できる.また,日内変動の基礎研究がさらに発展することで,現在の緑内障標準治療である眼圧を低下させることだけでなく,将来的には眼圧リズムをコントロールし,変動を抑制することをターゲットとした緑内障新規治療につながることが期待される.文献1)RenardE,PalombiK,Gron.erCetal:Twenty-fourhour(Nyctohemeral)rhythmofintraocularpressureandocularperfusionCpressureCinCnormal-tensionCglaucoma.CInvestCOphthalmolVisSciC51:882-889,C20102)BarkanaCY,CAnisCS,CLiebmannCJCetal:ClinicalCutilityCofCintraocularCpressureCmonitoringCoutsideCofCnormalCo.ceChoursCinCpatientsCwithCglaucoma.CArchCOphthalmolC124:C793-797,C20063)BaekCSU,CHaCA,CKimCDWCetal:RiskCfactorsCforCdiseaseCprogressionCinClow-teensCnormal-tensionCglaucoma.CBrJOphthalmolC104:81-86,C20204)MaedaA,TsujiyaS,HigashideTetal:Circadianintraoc-ularCpressureCrhythmCisCgeneratedCbyCclockCgenes.CInvestCOphthalmolVisSciC47:4050-4052,C20065)DalvinCLA,CFautschMP:AnalysisCofCcircadianCrhythmCgeneexpressionwithreferencetodiurnalpatternofintra-ocularCpressureCinCmice.CInvestCOpthalmolCVisCSciC56:C2657,C20156)TsuchiyaCS,CBuhrCED,CHigashideCTCetal:LightCentrain-mentofthemurineintraocularpressurecircadianrhythmutilizesCnon-localCmechanisms.CPloSCOneC12:e0184790,C20177)TsuchiyaCS,CSugiyamaCK,CVanCGelderRN:AdrenalCandCGlucocorticoidE.ectsontheCircadianRhythmofMurineIntraocularCPressure.CInvestCOphthalmolCVisCSciC9:5641-5647,C20188)IkegamiK,ShigeyoshiY,MasubuchiS:Circadianregula-tionCofCIOPCrhythmCbyCdualCpathwaysCofCglucocorticoidsCandCtheCsympatheticCnervousCsystem.CInvestCOphthalmolCVisSciC61:26,C20209)IkegamiCK,CMasubuchiS:SuppressionCofCtrabecularCmeshworkCphagocytosisCbyCnorepinephrineCisCassociatedCwithCnocturnalCincreaseCinCintraocularCpressureCinCmice.CCommunBiolC5:339,C2022220あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023(82)

屈折矯正手術:外傷によるICL脱臼とその予後

2023年2月28日 火曜日

●連載◯273監修=稗田牧神谷和孝273.外傷によるICL脱臼とその予後小島隆司名古屋アイクリニックICL術後にまれに起こる合併症として,外傷による脱臼がある.スポーツ外傷が多く,脱臼すると患者は霧視を訴える.速やかな整復手術によって角膜内皮に与える影響を最小限にでき,予後は良好である.患者にはスポーツ時の眼球打撲について注意喚起するべきである.●ICLImplantablecollamerlens(ICL)は,後房型有水晶体眼内レンズである.1986年にロシアのフィヨドロフ医師が前房と後房にまたがるポリメタクリル酸メチル樹脂(polymethylmethacrylate:PMMA)製の有水晶体眼内レンズを開発したのが始まりといわれている.その後1990年代に入ってスターサージカル社(米国)とフィヨドルフ医師の共同開発が始まり,1993年に第一世代のICLが埋植され,デザインを幾度か変更して現在はバージョンC4に至っている.1997年にCCEマークを取得し,2005年には米国食品医薬品局の承認を得ている.日本ではC2010年にCICLが,2011年にトーリックCICLが厚生労働省に認可されている.現在までにC64カ国でC25万枚以上が埋植されている.ICLの最大の特徴は,コラーゲンとメタクリル酸ヒドロキシエチル(hydroxy-ethylCmethacrylate:HEMA)の共重合体という素材にある.生体適合性が高い素材で,虹彩など眼内組織への刺激がほとんどないのが特徴である.ICLは毛様溝に固定され,サイズがC0.5Cmm刻みでC11.5~13.0CmmのC4種類ある.光学径はレンズの球面度数によって異なりC4.65~5.50mmである.また,レンズ球面度数は-3~-23DのC0.5D刻みで注文可能で,実際の近視矯正可能量は-1.75~-19Dと広い範囲をカバーしている.乱視度数は+1~+6DのC0.5D刻みで注文可能で,実際の乱視矯正可能量は-0.75~-5Dである.ICLは,角膜のカーブを変化させるレーザー屈折矯正手術と異なり,元に戻すことが可能な手術である.また,術後に角膜が薄くならないために,角膜が薄い患者や円錐角膜疑いの患者でも手術可能である.ICL手術は若くて活動的な人が対象になることが多く,術後の外傷には注意が必要である.以前から屈折矯正手術ではlaserinsitukeratomileusis(LASIK)後の外傷によるフラップの偏位が知られているが,ICLに関しては眼科医の間でもまだ広く認識されていない現状がある.C●ICL脱臼の症状ICLが脱臼しても,ICLそのものが柔らかいため痛みなどの症状に乏しく,霧視だけの症状のことも多い.多くの患者は視力低下にセンシティブであることが多く,すぐに受診することが多いが,受診が遅れると後述するように角膜内皮障害を起こすことがあるため,筆者は手術が終わった患者に,今後気をつけることとして,鈍的外傷によるCICL脱臼について必ず話をしている.C●ICL脱臼の対処方法(整復術)虹彩上にハプティクスが出ている状態になっており,自然に軽快することはありえない.このため,速やかな手術による整復が重要である.術前には,トーリックICLであれば,元々どの位置に固定されていたのかをカルテからチェックしておく.また,術前にしっかり散瞳させておくことによって,スムーズに整復が可能になる.手術室では,術者の利き手側にC1Cmm程度の切開創を作製し,粘弾性物質を前房に注入する.この際に使用する粘弾性物質はCICL挿入時と同じオペガンが最適である.その他の粘弾性物質では,ICL裏面に残ることによって術後眼圧上昇や瞳孔ブロックを起こす可能性もある.粘弾性物質で前房を安定化させたら,切開創からICLマニピュレーターを挿入し,虹彩上に脱臼したハプティクスを虹彩下に入れていく.手技はCICL挿入と同じである.トーリックCICLの場合は,この時点でターゲット軸にCICLを合わせる.最後に前房洗浄を十分に行い,粘弾性物質を吸引除去する.(79)あたらしい眼科Vol.40,No.2,20232170910-1810/23/\100/頁/JCOPY受傷後受診時整復翌日図1ICL脱臼時および整復後の前眼部細隙灯顕微鏡写真フットサル中の打撲でCICL脱臼を起こし,その当日に受診した.ICLは片側のハプティクスが両方虹彩上に脱臼しており,瞳孔の変形を認めた.受診当日に整復術が行われ,瞳孔の変形も認めなかった.このように,ICL脱臼の整復には専用の器具と,ICL手術に習熟していることが必要であり,ICL手術の経験がない場合は,手術を施行している施設に緊急で紹介する必要がある.C●国内多施設研究からわかったICL脱臼の予後わが国のC4カ所の主要な屈折矯正手術施設におけるICL脱臼の発生率,患者背景,術後予後について検討した研究結果1)を解説する.調査期間中にC7件のCICL脱臼が発生し,ICL脱臼の発生率はC0.072%とその割合は非常にまれであると思われる.報告された症例は平均年齢がC29.2歳と若く,全員が男性であった.また,特筆すべきこととしてC2名の患者が同一眼にC2回CICL脱臼を経験している.ICL脱臼C7例のうちC5例は,スポーツ中の鈍的眼球外傷によるものであり,フットサルの試合中がC4例,バスケットボールの試合中がC1例であった.全世界でC100万枚以上のCICLが移植されていることを考えると,鈍的眼外傷のリスクがある球技の際には,保護眼鏡を使用するよう患者を教育することが重要である.今回調査したC7例は全例CICL位置修正術が速やかに行われ,ICL脱臼前の最終フォローアップとCICL位置修正手術後C3カ月の間に,裸眼視力や角膜内皮細胞密度に大きな差はなかった.しかし過去には,脱臼したCICLが角膜内皮に接触し,角膜内皮細胞障害を起こし,水疱性角膜症になった症例が報告されている2).この患者は受傷後C5日目に整復術が施行されている.筆者らの研究では,ICLは受傷後平均C2.1日で修正手術が行われた.C218あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023患者には受傷後できるだけ早く眼科医の診察を受けるよう促し,できるだけ早期に手術を行う必要がある.1名の患者は手術後C8日目に網膜.離を起こし,網膜手術が必要となっていた.眼瞼裂傷もあり,眼球衝突の外力はかなり強かったと思われる.網膜.離は周辺部のみであったため,ICLは摘出せず,強膜バックリング手術のみで網膜は修復された.術後は矯正視力の低下や屈折変化はほとんどなかった.また,別の症例では受傷後軽度の網膜振盪症を認めたが,2日後に消失した.やはりCICLを脱臼させるほど強い鈍的眼球外傷の場合,網膜障害が生じる可能性があり,受傷後は網膜を注意深く観察することが重要である.C●おわりにICLは健康な人を対象にする屈折矯正手術であり,術後スポーツを楽しむ患者も多い.ICL脱臼は非常にまれな合併症であり,遭遇する屈折矯正手術サージャンは少ないと思われるが,事前に起こりうることを頭に入れて,どのような対処をとるべきか覚えておくことが必要である.文献1)KojimaCT,CKitazawaCY,CNakamuraCTCetal:MulticenterCsurveyonimplantablecollamerlensdislocation.PLoSOneC17:e0264015,C20222)Espinosa-MattarCZ,CGomez-BastarCA,CGraue-HernandezCEOCetal:DSAEKCforCimplantableCcollamerClensCdisloca-tionCandCcornealCdecompensationC6CyearsCafterCimplanta-tion.OphthalmicSurgLasersImagingC43:e68-e72,C2012(80)

眼内レンズ:強膜内固定時に作製した周辺虹彩切除による不快光視症状

2023年2月28日 火曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋435.強膜内固定時に作製した周辺虹彩切除水戸毅金沢医科大学眼科学講座による不快光視症状Positivedysphotopsia(PD)は白内障手術時に挿入する眼内レンズに起因する異常な光視像として知られている.しかし,強膜内固定術の際に作製する周辺虹彩切除孔も,眼内レンズの光学部エッジとの位置関係によりPDの要因となりうることを術者は理解しておく必要がある.●はじめに近年,白内障手術件数の増加に伴い眼内レンズ(intra-ocularlens:IOL)強膜内固定術やIOL縫着術を行う機会が増えているが,術後にIOL虹彩捕獲やそれに伴う瞳孔ブロックによる眼圧上昇といった合併症が生じることがある.そのような術後合併症を予防するために術中に周辺虹彩切除(peripheraliridectomy:PI)を施行することがあるものの,その大きさや作製位置についてはこれまでのところ明確に定まったものはない.今回,強膜内固定術の際に作製されたPIが原因で,術後に単眼性の不快光視症状が生じた症例を経験した1).●症例患者は52歳,男性.両眼のIOL亜脱臼に対してIOL抜去と強膜内固定術を他院にて施行された.術後の右眼の見え方に異常はなかったが,左眼は屋内で光源が複数見える症状を自覚するようになった(図1).両眼とも強膜内固定の術中に作製された約2mm長のPI孔を鼻側に認め(図2),右眼のPI孔はIOL光学部に覆われていたが,左眼はIOLの光学部エッジがPI孔に重なっていた(図3).PI孔に入射する光がIOLの光学部エッジに反射して生じるpositivedysphotopsia(PD)と診断し,外科的にPI孔閉鎖を試みたところ不快光視症状は消失した(図4).●PositivedysphotopsiaとはDysphotopsia(異常光視症)は白内障術後の患者を悩ます視機能現象であり,異常な光の環が見えたり影が見えたりする症状で,前者をPD,後者をnegativedys-photopsiaという2).PDは1990年代後半から徐々に知られるようになり,具体的には夜間または屋内において(77)0910-1810/23/\100/頁/JCOPY光源が存在する場合に,弧状,放射状に広がる異常な光視像として自覚される.原因は外部からの入射光が瞳孔領を通過してIOLに入り,一部の光がIOLの光学部エッジ内面に反射して入射方向と異なる網膜に異常光として結像することによる3).多くは挿入したIOLの性状に起因するとされており,ラウンドエッジよりもスクエアエッジで発生しやすく,またシリコーンやPMMAよりも高屈折率であるアクリル素材で生じやすいとされる.術中の連続円形切.がきれいにIOL全周を覆っていれば,術後に前.が混濁し光学部エッジに到達する入射光量が低下するため,PDが時間経過とともに自覚されなくなることがある.これまでに白内障術後以外のPDの報告はなかったが,強膜内固定を施行された本症例ではPI孔のサイズが大きめであり,さらに作成位置が鼻側の瞼裂間に存在するため直接PI孔から入射する光がIOLの光学部エッジに反射して生じたものと考えられた.また,症状が片眼のみであった理由は,PI孔とIOLの光学部エッジが重なっていた位置関係が主要因と思われた.強膜内固定(あるいは縫着術)の術後眼では,通常IOLを覆う水晶図1患者が作成したグラフィックス左眼のみで見た場合に屋内の光源が複数に分裂(赤丸部分)して見えると訴えた.あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023215図2患者の前眼部写真右眼(a)と左眼(b)に大きさと作製位置がほぼ同じ周辺虹彩切除(PI)孔を認める.徹照像では右眼(c)は眼内レンズ(IOL)光学面で覆われているのに対して,左眼(d)はPI孔の中央にIOLの光学部エッジが確認できる.図4術後の前眼部写真周辺虹彩切除孔は閉鎖しており,徹照像では眼内レンズの光学部エッジは確認できない.体.は存在しないためエッジが露出しており,白内障手術以上にPDが発生しやすい状況とも考えられる.●おわりにPDはこれまでは白内障手術後に生じるものとされており,ときに強い訴えを引き起こすことがあるため術者を悩ます問題の一つとなっている.しかし,白内障以外の内眼手術においてもPDは生じうる.一般の眼科医に図3前眼部光干渉断層計所見暗所下にて右眼(上)は周辺虹彩切除(PI)孔の直下に眼内レンズ(IOL)光学面があるのに対して,左眼(下)はPI孔とIOL光学部エッジの位置が重なっている.とってはまだPDの認知度はそれほど高くないと思われるが,とくにIOL強膜内固定術や縫着術を施行する術者は,術中に作製するPI孔によって術後にPDが惹起される可能性を念頭において手術や経過観察を行う必要がある.文献1)MitoT,KawakamiH,IkomaTetal:Positivedysphotop-siaafterintrascleralintraocularlens.xation:acasereport.BMCOphthalmol22:263,20222)DavisonJA:Positiveandnegativedysphotopsiasinpatientswithacrylicintraocularlenses.JCataractRefractSurg26:1346-1355,20003)HolladayJT,LangA,PortneyV:Analysisofedgeglarephenomenainintraocularlensedgedesigns.JCataractRefractSurg25:748-752,1999

コンタクトレンズ:読んで広がるコンタクトレンズ診療 世界から見た日本のコンタクトレンズ

2023年2月28日 火曜日

提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療6.世界から見た日本のコンタクトレンズ糸井素啓京都府立医科大学大学院医学研究科■はじめにコンタクトレンズ(CL)診療は,製品の進歩に応じてアップデートされており,10年前と現在では,レンズやケア用品の選択傾向は大きく異なっている.また,時代のみならず地域ごとでもその傾向は異なっており,とくに日本と欧米諸国ではレンズの選択やケア用品の好みに違いがある.そこで本稿では,各国のCCL処方状況を毎年総括している“Internationalcontactlensprescrib-ing”1.2)(米国CContactCLensSpectrum誌に掲載)という記事をもとに,日本におけるCCL診療の傾向を,諸外国と比較しながら簡潔に解説する.C■平均年齢諸外国におけるCCLユーザーの平均年齢は,2003年にC30.6歳だったのが,2021年にはC33.1歳となっており,緩徐に上昇傾向にある.一方,同年の日本におけるCLユーザーの平均年齢は,それぞれC29.1歳とC29.6歳で,あまり変化していない1,2).これは,諸外国では老視矯正を目的とした多焦点レンズの普及に伴いC45歳以上のCCL装用者が増加傾向にある一方で,日本では多焦点レンズがあまり普及していないこと,日本ではサークルレンズを主体としたC20歳以下のCCL装用者が増加傾向にあることが要因として考えられる.C■RGPレンズの処方割合CL全体のうち,酸素透過性(rigidCgaspermeable:RGP)レンズが占める処方割合は国によって大きく異なる(図1)3).日本はかつて,諸外国に比較してCRGPレンズの処方割合が高いという特徴があった.日本はオランダと同様に,国産のCRGPレンズメーカーが数多く存在したため,RGPレンズが処方しやすい環境だったことが影響したと考えられる.その後,日本のCRGPレンズの処方割合は,諸外国と同様にソフトコンタクトレンズ(SCL)の普及に伴って大きく減少し,2021年には11%まで低下した.一方,欧米諸国では数年前からRGPレンズの一種である強膜レンズ・強角膜レンズが高い関心を集めており,その結果として,RGPレンズの処方割合は増加傾向に転じている1,2).(75)視覚再生機能外科学道玄坂糸井眼科C■シリコーンハイドロゲル(Si-Hy)レンズの処方割合シリコーンハイドロゲル(siliconehydrogel:Si-Hy)レンズは,2004年に日本の市場に登場して以降,数多くの製品が発売され,2021年にはCSCL全体の処方のうちC57%を占めるに至った2).一方で,欧米には,日本よりもCSi-Hyレンズの処方割合が高い国が多数存在する(図2)3).日本のCSi-Hyレンズの処方割合が諸外国に比較して低い理由として,日本ではカラーレンズおよびC1日使い捨てレンズの処方が多いことがあげられる.現在,日本で発売されるサークルレンズ・カラーレンズの多くがハイドロゲルレンズで,Si-Hy素材の製品は少ない.そのため,サークルレンズ・カラーレンズの処方割合の増加とともに,Si-Hyレンズの処方割合の増加が抑制されていると推測される.また,日本はC2週間交換型レンズに比較してC1日使い捨てレンズの処方割合が高いという特徴がある.1日使い捨てレンズはCCL関連眼障害の危険性が比較的低いと考えられているため,酸素透過性の高いCSi-Hyレンズより,安価なハイドロゲルレンズが好まれている可能性がある.日本と同様にCSi-Hyレンズの処方割合が少ないことで知られているデンマーク,台湾両国ともにC1日使い捨てレンズの割合が高いことも,上記の推測を裏付けるものである.C■トーリックSCLの処方割合2003年にC7%だった日本のトーリックCSCL処方割合は,2021年にはC18%と増加した1.2)が,依然として諸外国に比較して低い状況が続いている(図3)3).これは,乱視の程度や有病率の差などさまざまな要因が影響しているが,日本ではトーリックCSCLが眼科医から敬遠されていることも関係していると推察している.かつてのトーリックCSCLに対する「値段が高い,矯正効果が不十分,処方が煩雑」というイメージが残っているために,現在もなお処方を避けられているのだろう.しかし,近年発売された乱視用レンズは,従前の製品に比較して処方しやすく,矯正効果も優れている.そのため今後,乱視CSCLによる乱視矯正の有効性について,本セミナーで取り扱うつもりである.あたらしい眼科Vol.40,No.2,2023C2130910-1810/23/\100/頁/JCOPY〈%〉〈%〉601009050807040AUAUJP60JP処方割合処方割合NL5030NL40UKUK20US30US100〈年〉図1各国におけるRGPCLの処方割合の推移オーストラリア(AU)・日本(JP)・オランダ(NL)・英国(UK)・米国(US)の全CCL処方における酸素透過性(RGP)レンズの処方割合が示されている.赤色で示される日本のRGPレンズの処方割合は減少傾向にある.他のC4カ国ではC2003~2018年は減少傾向だが,2018年以降は増加傾向を認めている.(文献C3より一部改変)C6050201002003200620092012201520182021〈年〉図2各国におけるSi-HySCLの処方割合の推移オーストラリア(AU)・日本(JP)・オランダ(NL)・英国(UK)・米国(US)の全CSCL処方におけるシリコンハイドロゲル(Si-Hy)レンズの処方割合が示されている.赤色で示される日本のCSi-Hyレンズの処方割合は増加傾向にあるが,他のC4カ国に比較すると低値である.(文献C3より一部改変)ジにより眼科医から敬遠されているだけでなく,日本人200320062009201220152018202140AUが好むC1日使い捨てタイプの多焦点レンズが少ないことCJP30NLが原因として推察される.近年,1日使い捨てタイプのCUK20US多焦点レンズが増えており,多焦点レンズの処方の増加C10が期待される.C02003200620092012201520182021〈年〉■おわりに処方割合図3各国におけるトーリックSCLの処方割合の推移オーストラリア(AU)・日本(JP)・オランダ(NL)・英国(UK)・米国(US)の全CSCL処方におけるトーリックレンズの処方割合が示されている.日本のトーリックCSCLの処方割合は緩徐に増加傾向にあるが,他のC4カ国に比較すると低値である.(文献C3より一部改変)C■多焦点レンズ日本の多焦点CSCLの割合は緩徐に増加傾向にあるものの,SCL全体のうちC10%に満たないまま現在に至っており,諸外国に比較して低い値となっている1,2).また,45歳以上のユーザーに対する多焦点CSCLの処方割合も諸外国に比較して低く,老視の矯正手法として多焦点CSCLが選択されにくい状況にある.日本の多焦点SCLの処方割合の低さには,処方が面倒というイメー本稿と読者自身の処方状況とを照らし合わせることで,ご自身の処方を振り返り,今後の診療に役立てていただければ幸いである.文献1)MorganCPB,CEfronCN,CWoodsCCACetal:InternationalCcon-tactClensCprescribingCinC2003.CContactCLensCSpectrC19,C2004.Chttps://www.clspectrum.com/issues/2004/janu-ary-2004/international-contact-lens-prescribing-in-20032)MorganCPB,CEfronCN,CWoodsCCACetal:InternationalCcon-tactClensCprescribingCinC2021.CContactCLensCSpectrC37,C2022.Chttps://www.clspectrum.com/issues/2022/janu-ary-2022/international-contact-lens-prescribing-in-20213)MorganCPB,CEfronN:GlobalCcontactClensCprescribingC2000-2020.CClinExpOptom105:298-312,C2022